ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 12月 19日

「未開期」「増加期」「過多期」など、地域によってインバウンドのステージは違う

今年1年間の訪日旅行市場に関する報道を振り返ってみながら思うのは、2015年に2000万人という訪日外国人数をほぼ達成し、その後も20%という伸びを見せてはいるものの、国内には外国人観光客の訪れていない「未開地」がまだまだたくさんあるということです。一方、政府が2003年にVJC(ビジットジャパンキャンペーン)を打ち出し、外国人観光客の誘致を行政主導で始めてから早13年。すでに多くの観光客が訪れ、むしろその増加が地域社会にとって問題を生み始めている場所もあります。

インバウンド市場には「未開期」「黎明期」「増加期」「隆盛期」「成熟期」「過多期」「減少期」とでもいうべき、いくつものステージがあり、どの段階にあるかは地域によって異なります。

「未開期」海外市場における知名度がなく、訪れる外国人も少ない時期
「黎明期」海外で知名度が生まれ、外国人が現れ始めた時期
「増加期」外国人が前年比で大きく伸び始めた時期
「隆盛期」国内外で外国人が多く訪れる地域として知られるようになった時期
「成熟期」訪れる外国人数と地域の受入キャパシティがほぼ飽和し、観光の内実が多様化していく時期
「過多期」外国人が多く訪れることで、地域社会に問題が発生する時期
「減少期」外国人からネガティブな評価が生まれ、減少傾向がみられる時期

※実は、これはインバウンドの時代を迎える以前の1960年代~90年代にかけて、日本の国内観光地で起きていたことでもあります。

それぞれの段階で課題ややるべきことは違うため、地域によってPRの手法は違って当然です。ところが、メディアはそれぞれの地域で起きていることを、国全体の話に乗せて(地域固有の現状や前述のステージについてはあまり触れないで)のっぺりと一様に報じてしまうことが多いように思います。

以下は、昨年春の北陸新幹線開通でいったん盛り上がったかと思われた北陸の旅行市場に「一服感」があるなか、新たに進めている外国客誘致について報じたものです。

外国人目線で北陸再発見 3県、集客へ留学生や海外雑誌活用(日本経済新聞2016/10/8)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO08144440X01C16A0LB0000/

北陸3県で外国人の視点や知恵を取り入れたインバウンド(訪日外国人)の集客策が広がってきた。福井県はSNS(交流サイト)で留学生らにお薦めの観光情報の発信を依頼。和倉温泉(石川県)の宿泊施設は米国の雑誌を活用し、サイクリングの魅力をアピールする。北陸新幹線の金沢開業効果に一服感があるなか、外国人目線で隠れた観光資源を掘り起こす。

観光庁によると2015年の北陸3県の外国人宿泊者数は計約78万人と全国の約1%にとどまる。海外からみた知名度の低さは否めない。県別では石川県の52万人、富山県の21万人に対し、福井県は約6万人。同県は巻き返しを狙い、県内の留学生や在住外国人から応援団「Fukui レポーターズ」を募る。

10月下旬からSNSを通じ、お薦めの観光地や飲食店、商品を週1回程度発信してもらう。英語と中国語で情報発信し、それ以外の言語を使う場合には英語か日本語の併記を求める。活動内容は基本的に自由。県は今後「県や市町の施設を入場無料にするなどして活動を促す」考えだ。

半年に数回程度、観光地ツアーや企業訪問も企画する。三方五湖(若狭町など)、アウトドア施設「ツリーピクニック アドベンチャー いけだ」(池田町)など、公共交通機関でのアクセスが不便な場所が候補になる。これらの施策によって19年度までに県内の外国人宿泊客数を10万人に増やす計画だ。

富山県を代表する宇奈月温泉。7つの宿泊施設が7月、台湾とタイの大学からインターンシップの受け入れを始めた。

海外の若者の声を接客の改善やSNSでの情報発信に生かして誘客を強化する。「客層が多様化するなか、外国人の『気づき』をサービスに生かしたい」と、宇奈月杉乃井ホテル(富山県黒部市)の後藤倫総支配人は説明する。

富山県の15年の外国人宿泊者数は前年比46%増えた。海外の口コミサイトでは立山黒部アルペンルートが国内観光地ランキングの上位に入った。県は外国人客を呼び込める観光地をさらに増やし、19年に外国人宿泊者数56万人を目指す。

海外メディアの活用に乗り出したのは和倉温泉旅館協同組合(石川県七尾市)。今月23日から、米国で年間3万部を発行する無料の自転車専門誌の記者らを七尾市周辺に招く。レンタサイクルで走行した体験や魅力を年明けの誌面で紹介してもらう。

今年度中に複数設定するサイクリングコースに米国人記者のアドバイスを反映するほか、英語版のコースマップも作製する。欧米への情報発信を強化し、17年度には外国人観光客を3万6000人に引き上げる計画だ。

石川県では外国人客の宿泊が金沢市に集中しがちで、和倉温泉での滞在時間は2~3時間というケースが多い。まず能登地方の自然を短時間で楽しめるサイクリングを知ってもらい「最終的には宿泊客増加につなげる」(同組合の担当者)。


この記事を読む限り、北陸地方はインバウンドの「未開期」あるいは「黎明期」にいることがわかります(一部地域を除く)。それは地域にとって不名誉というような話ではありません。日本海側という海外からのアクセスの不便さが太平洋側に比べて圧倒的な弱みになるがゆえです。インバウンドというのは残酷なもので、アクセスで大きく明暗が分かれるのが常です。さらにいうと、「国内観光地ランキングの上位に入る」立山黒部アルペンルートには観光客が集中しても、その近辺の観光地は素通りされてしまうというのも、インバウンドの残酷性といえます。

では、こうした弱みを抱えた地域の人たちは、どうずれば訪日客を誘致できるのか。上記記事は、そのために地元が考え出した取り組みがいくつも例示されています。ただし、この文面だけでは、それらにどれだけの効果があるのか。「集客へ留学生や海外雑誌活用」「SNSでの情報発信(強化)」「サイクリングコース」などの個々の事例をみる限り、他の地域で5年前くらいに行われた取り組みと変わらない気がしますが、それは北陸が「未開期」にあるゆえといえるかもしれません。むしろ、気になるのは、北陸の強みがどう打ち出されているのか、もうひとつわからないことでしょうか。

最近、岐阜県の観光関係者と知り合い、同県が自分たちの弱みを自覚し、逆に強みを徹底的に調べ上げ、PRにつなげてきたことを知りました。後日、その話を紹介したいと思います。

※先日、日経BPネットにその話を書きました。

知名度がなくアクセスも悪い観光地をどうプロモーションするか
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/122600027/
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by sanyo-kansatu | 2016-12-19 13:55 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)


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