2017年 01月 11日

2016年の訪日外国人数は2400万人超ですが、もう数の増減だけの議論はやめてほしい

1月10日、石井国土交通大臣は記者会見で、2016年の訪日外国人数の推計値が2403万人であることを明らかにしました。日本政府観光局(JNTO)による各国別も含めた訪日外国人数(推計値)の公表は、来週の17日(火)の予定ですが、過去最高となる数値を政権与党としてはいち早く発表したかったものと思われます。日本の経済指標で二桁、しかも20%超で成長している分野は少ないことから、訪日外国人市場への取り組みを政権の看板政策のひとつとして見せたいのかもしれません。

NHKは以下のように伝えています。

去年の訪日外国人旅行者 2400万人超 過去最高更新(NHK1月10日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170110/k10010833931000.html

去年(平成28年)1年間に日本を訪れた外国人旅行者はアジア各国との間で航空路線が増えたことなどから推計で2403万人余りとなり、過去最高を更新しました。

国土交通省の発表によりますと、去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者は推計で2403万9000人となり、これまでで最も多かったおととし(平成27年)の1973万7409人より430万人余り、率にして21.8%増えて過去最高を更新しました。

これは、アジア各国との間で航空路線やクルーズ船が増えたことに加え、中国やベトナムからの旅行者向けのビザの発給要件が緩和されたこと、さらに外国人旅行者に対する免税制度が拡充されたことが主な要因です。

政府は、空港や港などのインフラ整備や地方の観光資源の掘り起こしなどを通じて日本を訪れる外国人旅行者を2020年に年間4000万人に増やすことを目標にしています。

石井国土交通大臣は閣議のあとの記者会見で「クルーズ船のさらなる受け入れに向けた環境整備や、富裕層などをターゲットとしたプロモーション活動などを戦略的に進め、目標の達成に向け政府一丸で取り組んでいきたい」と述べました。

官房長官「2020年に4000万人実現を」

菅官房長官は閣議の後の記者会見で「安倍内閣としては、観光を地方創生や成長戦略の切り札と位置づけ、ビザの戦略的緩和や免税制度の思い切った拡充など、大胆な取り組みをやつぎばやに実行しており、それが大台につながった。ことしも訪日外国人の勢いが止まることが無いよう、さまざまな対策をしっかり行って、2020年に4000万人を実現したい」と述べました。


朝日新聞も次のような記事を配信しています。

昨年の訪日客、2403万9千人 過去最多更新(朝日新聞2017年1月10日)
http://www.asahi.com/articles/ASK1B3CJBK1BULFA009.html

朝日の記事のポイントは「増加は5年連続だが、伸び率は15年(47%増)より鈍化」したと指摘していることでしょうか。ネット記事のタイトルは上記のとおりでしたが、11日の朝刊記事では「訪日2400万人 鈍る勢い 昨年最多 欧米富裕層にPRへ」となっているように、石井国交相の「目標に向かって堅調な伸びを示している」との認識を伝える一方、15年に比べ増え方が鈍ったことや1人あたりの消費額も前年割れする見通しを伝えています。また、とってつけたように「欧米の富裕層へのPRに力を入れる方針」にも触れています。

一方、日本経済新聞は前向きな捉え方をしています。

16年の訪日客2400万人超、最高を更新 5年連続の増加(日本経済新聞2017/1/10)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS07H0M_Z00C17A1MM8000/

(一部抜粋)中国や韓国からの観光客が堅調だった。ただ、全体の伸び率は、円安やビザ発給要件の緩和などで前年比約5割増だった15年に比べて緩やかになった。一時の円高傾向や熊本地震、中国経済の減速などが響いた。

一方、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムなど東南アジア各国からの観光客が大きく増えた。現地で実施した誘致のためのキャンペーンや新たな航空路線の開設などが寄与した。

政府は訪日客のさらなる増加に対応するため、受け入れ体制を整える。17年度予算案では、観光庁予算を過去最大の256億円としたほか、首相官邸主導で他省庁の予算でも観光関連分を拡充した。菅義偉官房長官は17年に取り組む重点施策の一つに観光分野を挙げており、特に地方経済の活性化につなげたい考え。

農林水産省は従来の農山漁村の振興交付金に50億円の「農泊」枠を新設した。政府は皇居や御所など全国の皇室関連施設の公開拡大も進める方針で必要な運営経費を新たに計上する。テロなど治安対策に向けては、国土交通省はボディースキャナーなど高性能な保安検査機器を19年までに国内の全ての主要空港に整備する。


東南アジア客の増加を強調しているところなど、朝日とは少し見方が違うようです。また受入態勢の整備への予算増や治安対策などについても触れています。

各国別推計値については、昨年12月に出た1~11月の訪日外国人数の推計値をみる限り、東南アジア各国からの観光客も増えていることは確かですが、トップ2の中国と韓国がダントツです(来週わかることですが、おそらく中国約650万人、韓国約500万人といったところ)。この政治関係の良好とはいえない二国がトップ2であることは、いつまでこの「堅調な伸び」が続くかを考えるうえで小さくない懸念材料です。

では、今年はどうなるのでしょうか。数日前の産経ニュースによると「旅行大手JTBは29年の訪日客数予想を2700万人とし、小幅な伸びにとどまると分析」していうようです。「小幅な伸び」(伸び率としては16年の半減)という現実的な数字を挙げているとはいうものの、昨年より300万人増加させるということですから、そんなに簡単ではないかもしれません。

28年の訪日客数は「2400万人前後に」 石井啓一国交相 前年比2割増 プロモーションやクルーズ船増で(産経ニュース2017.1.6 ) 
http://www.sankei.com/politics/news/170106/plt1701060037-n1.html

いずれにせよ、大手メディアは訪日旅行市場の数字について、政局とからめて論じたがるところがあるようなので、2400万人を達成しても「鈍る勢い」などと書きたくなるのでしょうけれど、もう増減をめぐる評価はいい気がします。またネット上でも、訪日中国客の伸びが昨年に比べて鈍化したことを「中国経済の減速」と結びつけて、大げさにもの言いする人をたまに見かけますが(要は、中国経済はもうダメだと言いたいだけ)、2015年が訪日旅行市場にとって特別の年であり、パイが増えれば伸び率が少し落ちるのも当然なのに、そういう全体像が見えていないがゆえのおっちょこちょいに思えてしまいます。

そもそも国際関係を含めた国内外のさまざまな要因が影響する訪日旅行市場は、時によって増えもすれば減りもします。特に今年は国際情勢の変化が気になります。である以上、政府もメディアも、そろそろ市場の具体的な中身や訪日客の増加がもたらす日本社会への影響などに議論を移してほしいものです。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-11 09:08 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)


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