ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 04月 27日

世界の富裕層に日本の美食とアートをアピールしよう(ILTM2017報告)

GWが近づきましたが、最近少し時間の余裕が出てきたので、今年初旬以降に訪ねたインバウンド関係のイベントやセミナーの報告をぼちぼちしていこうと思っています。最初は都内で開催された富裕層旅行の商談会です。

富裕層旅行に特化した商談会「ジャパン・ラグジュアリー・トラベルマーケット(ILTM Japan)」が日本で初めて開催されたのが2013年。以来、毎年春に国内外から富裕層旅行の関係者たちが集まります。

今年は2月27日から3月1日まで、コンラッド東京で開かれました。商談会の様子については、これまで何度か書いてきたので、今回は初日に行われたセミナーについて簡単に報告します。いろんな情報が盛りだくさんなので、やたらとURLが多いですが、あくまで話題提供ということでご了承ください。

京都で日本初のラグジュアリー・トラベル商談会「ILTM JAPAN2013」開催(2013年 05月 20日)
http://inbound.exblog.jp/21590385/
富裕層旅行には先進国型と新興国型の2種類ある(ILTM2013 セミナー報告)(2013年 12月 20日)
http://inbound.exblog.jp/21681992/
「富裕層旅行市場」とは、どのような世界なのか?(日経BPネット2016年04月07日)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/040600010/

今回のセミナーのテーマは日本の美食とアート。最初のテーマのタイトルは「Gastronomy-The Clincher for attracting Tourism(美食は観光客を惹きつける決め手)」で、登壇したのは美食家として知られ、「世界のベストレストラン50」の評議員のひとりでもある中村孝則氏。
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office nakamura(中村孝則氏の公式サイト)
http://www.dandy-nakamura.com/index.html
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中村氏は、まず今日の世界のグルメトレンドに大きな影響を与えている「世界のベストレストラン50」というランキングと「美食の追っかけ」とも呼ばれるフーディーズという一群のグルメマニアの話を始めます。

彼が言うには、「世界のベストレストラン50」に選ばれたレストランのあるヨーロッパの町は、年間200万人の人々が訪れるようになったとか。それほど、美食は世界から人を呼び込む力があるというのです。

「世界のベストレストラン50」について
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/092900021/?P=3
フーディーズが語る「皿の中身が世界に発信される美食の時代」(日経BPネット2016年09月30日)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/092900022/

いま世界の美食シーンで注目されているのが、ちょっと意外かと思われるかもしれませんが、オーストラリアだそうです。オーストラリアでは、数年前から美食で観光誘致を進める戦略「レストラン・オーストラリア」というプロモーションを始めています。

Food and Wine - Campaigns - Tourism Australia
http://www.tourism.australia.com/campaigns/Food-Wine.aspx
Top 10 Restaurants of Australia
http://top10restaurants.com.au/

なぜオーストラリアがこのプロモーションを始めたかというと、同国を訪れる外国人客にオーストラリア旅行を選んだ理由についてアンケートを取ったところ、「食事とワイン」が3位になったこと。
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さらに、このプロモーションを続けていった結果、行く前と後の「perception gap」(行く前より行ってからの評価が上がった)の国別ランキングで、オーストラリアはフランスに次ぐ2位になったといいます。日本も4位にランクされているので決して悪くはないのですが、オーストラリアの人気はすごいのです。その理由が、かの国が美食のプロモーションに力を入れたことにあると中村氏はいうのです。
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もちろん、日本にも「世界のベストレストラン50」に選ばれるような名シェフはたくさんいます。なかでも有名なのは、土を素材にしたスープで知られ、世界第8位に輝いたレストラン『NARISAWA(ナリサワ)』のオーナーシェフの成澤由浩氏です。
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NARISAWA
http://www.narisawa-yoshihiro.com/

他にもいろんな方がいます。
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こうしたことから、もっと日本の美食を世界にアピールすべきだと中村氏は主張します。残念ながら、まだその価値が広く世界に知られていないとも。

そのひとつの試みとして紹介されたのが「ダイニングアウト」という食のイベントです。

ダイニングアウトとは、日本のどこかで数日だけオープンするプレミアムな野外レストランのこと。食を通じて地方に残された美しい自然や伝統文化、歴史、地産物などを再編集し新たな価値として顕在化させるイベントだといいます。

日本のどこかで数日間だけ開催するプレミアムレストラン「ダイニングアウト」とは?
http://macaro-ni.jp/26926

中村氏が関わっていた佐賀県有田市のダイニングアウトの事例は以下のとおりです。

3夜限りの幻の野外レストラン「DINING OUT ARITA& with LEXUS」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000020902.html
http://www.onestory-media.jp/post/?id=464

次のスピーカーは、世界で最も老舗の美術品オークション会社であるクリスティーズの日本・韓国美術部門ディレクターの山口桂氏です。テーマは「ZIPANGU REVIVED(蘇る日本美術)」。
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クリスティーズ
http://www.christies.com/features/welcome/japanese/overview
山口桂氏
http://artscape.jp/blogs/blog3/1603/
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山口氏によると、日本の古美術は、日本刀から鎧、陶器、書画など、種類が豊富で、世界の古美術の中でも決してひけを取らない価値があるといいます。NYのメトロポリタン美術館でも、日本美術のコーナーがこれほど充実しているのは、そのためだと。そのわりには、あまり国際的に広くその価値が知られていないのが残念で、「国家としてのアナウンスが足りない」せいだとも。なんだか日本の美食と同じようなところがあるようです。

山口氏に言わせれば「クールジャパンなんてダサすぎる!」。日本の古美術も、つくられた当初は「現代アート」だったわけで、美術品はいわば「タイムマシン」。日本のアートの価値を理解し、それをうまく活用することで、世界の富裕層を日本に呼ぶことができるはずといいます。

山口氏は、世界の富裕層が見つめる日本の美術シーンに関する話題として、以下の3つを挙げています。

1)大阪の藤田美術館の収蔵品のオークションがすごいことに!

藤田美術館
http://fujita-museum.or.jp/
明治に活躍した実業家、藤田傳三郎のコレクションを所蔵(国宝9件、重要文化財52件)。展覧会は春季、秋季の年2回。

この話は、その2週間後、以下の記事によって明らかになりました。この10年、中国富裕層による中国アンティークの買い戻し運動が起きています。それを物語る話題といえます。

藤田美術館の中国画に49億円=30点超の美術出品-NY(時事ドットコム2017/03/16)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017031600963&g=soc

藤田美術館(大阪市)が所蔵する中国美術30点以上が15日、米ニューヨークで競売商クリスティーズのオークションに掛けられ、中国宋代の画家・陳容による絵巻「六龍図巻」(13世紀)が4350万ドル(約49億円)で落札された。

1954年開設の藤田美術館は明治時代の実業家、藤田伝三郎とその息子が収集した美術品を展示している。クリスティーズによると、美術館の改装や所蔵品の保全のため出品した。日本の美術館がこれだけの数の所蔵品を海外のオークションに出品するのは珍しい。

六龍図巻は、龍や風景の水墨画などが約5メートルにわたり描かれた作品。清朝の乾隆帝のコレクションの一つで、美術商の山中商会経由で藤田に渡った。

このほか、殷・周時代の青銅器などが出品され、1000万ドル(約11億円)以上での落札が相次いだ。手数料込みの総売り上げは約2億6300万ドル(約298億円)だった。

2)美術家の杉本博司氏が設立した小田原文化財団がによる芸術文化施設「江之浦コンプレックス」が2018年にオープン

小田原文化財団 江之浦コンプレックス
http://openers.jp/article/22862

3)2019年に京都嵐山に新たな美術館が誕生

京都・嵐山に美術館構想 アイフル創業者が私財
http://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20170329000059

個々の話を説明しだすとキリがないので、詳しくは各URLをご参照ください。また山口氏がわかりやすく解説してくれた世界の富裕層が注目するオークションビジネスの話については、別の機会に。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-27 13:27 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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