ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 06月 01日

ガイド人生55年の集大成、ジョー岡田が案内する日本ガイドブック、ついに刊行!

2017年5月、日本最長老通訳ガイドのジョー岡田さんが書かれた英文ガイドブック『BEYOND SIGHTSEEING-The Ultimate Guide to JAPAN』が刊行されました。
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日本最長老ガイド、ジョー岡田さんは語る「訪日2000万人の半分は日本人と一言も話をしないで帰国する」
http://inbound.exblog.jp/26890168/
日本最高齢の通訳ガイド、「ラストサムライ」ことジョー岡田さんに話を聞きました
http://inbound.exblog.jp/25849969/

同書は、いまから50年前の1966年に刊行され、12版(1991)も版を重ねた岡田さんの最初の日本案内書『THIS IS YOUR GUIDE SPEAKING』を2年がかりで大幅改訂した渾身のニューバージョンです。

本文オールカラー、106ページの中にコンパクトにまとめられた題材は、超簡略日本史から日本の自然や風俗習慣、食文化、宗教、サブカルチャー、社会生活、教育、人生観に至るまでをカバー。ガイド人生55年の岡田さんがこれまで出会った何千何万人という外国人ツーリストとのやりとりの中で何度も聞かれたであろう質問に対する当意即妙な回答が収められています。

先日に続き、お電話で話を聞きました。

―手元に届いた新著を拝見し、20数年前の旧版と比べ読みさせていただきましたが、とても現代的に編集されており、斬新な内容です。今回の改訂のポイントは何でしょうか。

「旧版は、タイトルが『THIS IS YOUR GUIDE SPEAKING』であることからわかるように、観光ガイドが知っておかなければならない日本に関する知識をまとめた、半分プロ向けのテキストのような内容だった。改訂版ではむしろ観光客の目から見て、こういうことを知りたいと思うような内容に絞って書きました。もちろん、日本人なら知っておかなければならない内容がたくさんあります」

―だから、タイトルも『BEYOND SIGHTSEEING-The Ultimate guide to JAPAN』(観光を超えた究極の日本案内)なんですね。注目はどのページでしょうか。

「いまからページを言うからメモしてくださいね。25、26、43、50、55、72、94…」

―p25は「Beef or Veggies?」(ビーフor野菜?※岡田さんはアメリカ帰りですから、当然アメリカンイングリッシュです)。これは旧版でも書いてらっしゃいますが、日本の松坂牛と神戸牛のうまさと誕生秘話を紹介する内容ですね。ニューバージョンでは、これに精進料理の説明も加え、Beef or Veggies? とした。p26は「Kampai to The World」。

「世界のことばで『乾杯』は何と言うか。これは大事ですよ」

―p43は岡田さんお得意の「It’s a Joke!」、p50は旧版にもあった日本の近海の魚マップ、p55は旅行者のための10の掟。これらは岡田さんのオリジナル創作で、面白いですね。

※実は、新著が手元に届いた日(5月30日)、テレビ朝日で放映された『日本テッパン遺産』<あなたの町の爆笑名人大賞>に岡田さんは出演していました。番組では岡田さんが外国客をガイドするときの“テッパン”ジョークがいくつか披露されていて、そのうちのひとつが「Ohayo(おはよう)」と「Ohio(オハイオ)」を間違えるというくだり。p43に載っています。
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もうひとつがp26の「Kampai to The World」の応用編で「乾杯(Kmpai)しすぎて支払うお金がないよ(can’t pay)」。
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「俺は冗談ばかり言ってるわけじゃないんだよ。注目してほしいのは、p72の禅に関する解説。ツーリストからしょっちゅう聞かれるのが禅や仏教、神道に関する質問なのだが、これだけの短いフレーズに禅の奥義をまとめたというのは素晴らしい。これを書いた京都大仙院の尾関宗園閑栖は、50年前からの知り合いなんじゃ」

Each day in life is training
Training for myself
Though failure is possible
Living each moment
Equal to anything
Ready for everything
I am alive-I am this moment
My future is here and now
For if I cannot endure today
When and where will I? by Soen Ozeki

―う~ん。こんなことまで書かれているとは…。最後のp94は十二支の解説ですね。

「これは外国人みんな喜ぶよ。自分は何年生まれだから、どんな運勢、性格なのか。欧米人でも、当たっているみたいだなあ」

―他にも「Loveless, Sexless and Aging(日本人のセックスレスや少子高齢化問題)」や「Mascots for Everything(日本のキャラクター文化)」「Working in Japan(日本の労働問題)」など、現代日本社会をちょっぴり風刺的に考察する内容、ウォシュレットの使い方を解説するページもありました。

「いまでこそ、日本のトイレは世界でいちばんきれいということになっているが、50年前、私が外国人と一緒に東海道をバスで案内したとき、ドライブインのトイレは男女共用だった。そりゃもう評判が悪かったものだ」

―なるほど。この半世紀で、日本は大きく変わったんですね。日本がバブル経済に向かった頃、岡田さんはガイドの仕事をおやめになっていた。しかし、21世紀になって世界と日本を取り巻く環境が変わり、東日本大震災後に再びガイドを始められた。そして、この本も新たに蘇ったんですね。

「前回まではほぼ私が書いていましたが、今回は、私以外の執筆者も何人か加わっていて、多くの皆さんから印刷代を援助していただいて出来上がったんです。ぜひ多くのみなさんに読んでもらいたいと思っていますよ」

岡田さんの本は、旧版の頃から日本全国の通訳ガイドにとってのネタ帳として使われてきただけでなく、外国人ツーリストにも好評で、すでに12万部を売り上げています。

旧版までは、国内の有名ホテルのブックショップに置かれていたそうですが、洋書の取次会社が倒産したことから、今回は納品が難しいそうです。だとしても、めげずに多くの外国人ツーリストの手に届けたいものです。なにかいいアイデアはないでしょうか。

もうひとつ思うことがあります。この本の中国語版は出せないものだろうか。なにしろ昨年日本を訪れた2400万人の外国人のうち、2人に1人以上は中国語圏の人たちだったのですから。

何よりこの本の面白さは、外国人の日本に対する関心や目線のありかを、扱われるテーマや題材を通して気づかせてくれることです。読んでいくうちに、なるほど、外国人は日本のことをこのように見ているんだなと理解できるのです。彼らが繰り出しそうな素朴な質問に対してどう答えるかについても、多くのヒントがあります。英語で外国人と会話するためのネタ集といえます。通訳ガイドのようなプロだけでなく、いまの時代を生きる一般の日本人にとっても必携の書といえるのではないでしょうか。

『BEYOND SIGHTSEEING-The Ultimate Guide to JAPAN』の購入は、岡田さんのご好意により、定価1500円のところ、「通訳ガイド諸氏に限り3冊3000円の特価(送料込み)」でお求めいただけます。通常は1冊1500円+送料200円となります。

購入をご希望の方は samurai_joeokada@yahoo.co.jp までメールにてお申し込みください。

ちなみに、これが旧版の『THIS IS YOUR GUIDE SPEAKING』です。
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1ドル=360円時代、前の東京オリンピック開催のしばらく後に刊行された表紙のデザインからは、戦前から通じる昭和のモダニズムが感じられます。特に裏表紙の折り返しを4つ折にして、東海道から近畿、中国、九州に至るゴールデンルートをイラストマップにした装丁は、断然イカしています。ニューバージョン同様、外国人の目線のありかをよく理解した多彩なコンテンツが詰め込まれており、ニッポンのインバウンドのルーツを垣間見る思いです。

さらなる新情報があります。ジョー岡田さんは、かつて『日本の音と民謡』というソノシート付きの本を外国人向けにつくったことがあるそうです、ソノシートには、当時の京都の舞妓の話し声や梵鐘などを収録してあるとか。近日入手予定なので、今度紹介したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-06-01 16:30 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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