ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 07月 17日

超マニア向けボーダーツーリズム「中ロ国境(ハバロフスク・撫遠)」を渡った日本人の話

これは先週の話です。知り合いの日本人から、ハバロフスク・撫遠という超マニア向けの中ロ国境を渡ったという報告を受けました。
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ここでいうハバロフスクとは、極東ロシアのアムール河(黒龍江)とウスリー河の合流地点にある都市のことです。そして、撫遠とは、その対岸にある中国黒龍江省の国境の町です。この地は、1960年代後半に中ソ両国が国境紛争のために起こした戦争の舞台に近い場所でもあります。そのようないわく付きの土地ですが、両国は2000年代に入り、「フィフティフィフティ」の原則に基づき、国境画定に至りました。

そして、最近になって、中ロ両国民以外の一般の外国人もこの国境を渡れるようになったのです。

とはいえ、このような国境があることを多くの日本人はご存じないことでしょう。ですから、この国境を渡った日本人というのは、これまでほとんどいなかったと思います。ちなみに、彼はウラジオストク在住です。

今回、彼は仕事でハバロフスクを訪ねています。少し時間があったので、視察も兼ねて、そのまま鉄道でウラジオストクに戻るのではなく、中国国内を通って帰ろうと考えたそうです。そのため、ハバロフスクの対岸の撫遠に船で渡り、そこからバスで黒龍江省東部の主要都市ジャムス(佳木斯)に出て、牡丹江、绥芬河と移動し、ロシアに戻ったそうです。結果的に、超マニア向けのボーダーツーリズムの旅を実践していたのです。

これからぼくがその日本人にぶつけた質問と、彼が答えてくれた内容を紹介します。

1)ハバロフスクから中国への出国、そして撫遠行きのプロセスについて詳しく教えてください。
2)撫遠はどんなところですか。ジャムス行きバスは所要何時間かかりますか。本数はけっこうありますか。
3)ジャムスから牡丹江へはどうですか。
4)綏芬河からロシアへはバスで帰ったんですか。
5)今回の移動中でトラブルはなかったですか。

以下、質問とその回答です。

1)ハバロフスクから中国への出国、そして撫遠行きのプロセスについて詳しく教えてください。

「ハバロフスクの郊外に、アムール川の中国行き船着乗り場があります。
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そこで中国行きのチケットを購入します。基本的に、日本人は中国への入国は15日以内に限り、ノービザですから、事前にビザの手配は不要です。
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チケットの購入には2つの方法があります。

ひとつは、普通の船運営会社の切符窓口で購入します。片道3150ルーブルです。

もうひとつは、船着き場の近くに数社の団体用旅行会社のプレハブのオフィスがあり、そこでも購入できます。ここでは団体割引が利きます。3000ルーブル(往復5000ルーブル)と少し安いです。
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船は1日2便、午前9時頃と午後3時頃に出るようです。

私が船着き場に行くと、そこには70人ほどの中国人、7~8人のロシア人がいました。日本人は私だけです。

出発の30分ほど前に入口が開き、①切符②パスポート③登録票(船会社チケット窓口が手書き)を見せた後、出国ゲートまで行きます。
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ロシア出国ゲートは淡々と進みます。

出国ゲートを出ると、船に乗ります。40人乗りくらいのボートなので、2艘に分かれて乗りました。
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約1時間半後、撫遠に着きます。

そこから船内を出る際に、人数確認などのために中国の入管関係者が乗船し、数が揃ったら入国検査に行きます。

船内で人数を数えているときに、すでに私は日本人だということで、入管が特別扱いしてました(よくない意味です)。

そして、入管審査の手前で5名ほどの係官と思われる男たちから「そこに座れ」と言われました。

そのとき、「何の目的で中国に来たのか。誰と会うのか。どこに住んでいるか」など、15分くらいかけて、さまざまな角度から質問されました。過去に訪れた訪問国なども聞かれました。なぜだかわかりませんが、タイに行ったことをやたらと気にしていました。

そして携帯、パソコン、メールなどすべて見られ、所持している現金などもチェックされました。免許証、住基カードなどもコピーを取られました。

今回の旅行のために用意していた、撫遠周辺のコピーした地図もやたらとこだわってしつこく質問されました。

これらのことに1時間半くらいかかって、ではすんなり行かせてくれると思ったら、中国人同様長蛇の列に並び、ようやくのことで入国です。ここまでしごかれたので、入国審査自体はすぐに終わりました」
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2)撫遠はどんなところですか。ジャムス行きバスは所要何時間かかりますか。本数はけっこうありますか。

「撫遠は、国境の町ですが、それほど経済的に潤っている印象はありませんでした。中国の田舎の町です。街にはロシア語の表記は一応ありますが、ロシア人の姿は数名しか見かけませんでした。
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街のはずれに、マルエツくらいの規模のの食品スーパーがあって、そこと町の中心部を結ぶ2線の無料バスが出ていました。この町には有料の公共バスはなく、このスーパーを中心としたバスが公共バスの役割を果たしています。

なにより困ったのが、人民元を入手しようとATMに行くと、500元しか引き出せないことでした。これはジャムスでも同じでした。
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ジャムス行きのバスは1日8本です。朝5時30分から14時30分まで1時間に1本です。距離は約420キロで、所要6時間半でした」

3)ジャムスから牡丹江はどうですか。

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「ジャムスから牡丹江まではバスが少なく、1日3~4本です。私が乗ったのは14時発で、牡丹江には18時10分着でした。約4時間かかりました。牡丹江から綏芬河へは鉄道で移動しました」
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4)綏芬河からロシアへはバスで帰ったんですか。

「綏芬河発ウラジオストク行きのバスは、朝8時30分と午後1時の2本。多くはすでに買い出しツアーできているロシア人に買い占められ、早朝6時30分にバス乗り場に行っても、午後1時の便しか買えませんでした。その日中にウラジオストクに戻る必要があったので、午前8時50分発のウスリースク行きのバスに乗りました。ウスリースクからも、ウラジオ行きのバスがたくさん出ているので。
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ウスリースク行きバスは、1時間に1本程度出ています。ウスリースクに着いたのがロシア時間の16時前、中国時間14時前ですので、国境審査も合わせて、5時間くらいかかりました。

私の場合、綏芬河からロシアに渡るのはこれで2度目でしたが、以前に比べ、荷物の検査のスピードが早くなっていました」

5)今回の移動中でトラブルはなかったですか。

「私はウラジオストクで働く日本人ですから、ロシアから中国、中国からロシアへと国境を渡ることに関して、ビザの問題はまったくありませんでした。

とはいえ、私が中国に入国すると、中国側のイミグレーションでたいてい30分くらいは事情聴取されます。私に何か問題があるというより、綏芬河や琿春、撫遠といったロシア国境を通って日本人が入国してくるということ自体がめったにないこともあり、彼らにとって注意対象となるようです。

それは彼らにとって深刻な問題というより、所詮ここらは中国の辺境で、田舎なので、珍しい日本人の来訪を面白がるようなところがあり、わざと事を大げさにしている雰囲気があります。ですから、私でなくても、日本人なら誰でも多かれ少なかれ似たような境遇になるはずです。

これも、団体旅行客であれば、話は別だと思いますが。

なにしろ撫遠では、1時間半近くチェックされました。

確かに、時が時なら私もスパイみたいなものですが、持参していたあらゆる書類、パソコン、所持品、日本の身分証など取り上げられました。おそらく、携帯は写真に中国国家に反するもの、入管手続き付近を撮影したもの、それらが入っていないかの確認だったと思います。もちろん、見せる前には削除しても、あとで復旧できるので問題ないですけれど。

PCも画面やメールを見られました。漢字で見て、中国に反するようなことが書かれていないかチェックしたようです」

大変ご苦労様でした。これは中国に限らず、日本人がめったに現れることのないような異国の国境では、同じようなことが起こるに違いありません。なかでも最近の中国は、日本人をスパイ容疑で拘束してしまうような国ですから、いろんな中央からの通達が辺境の地にも届いているのでしょう。

もし、今後この国境を渡ろうと考えるのであれば、それ自体は問題ありませんが、つまらない誤解を中国側の入管関係者に与えないような配慮は必要でしょう。つまり、相手はPCやスマホ、所持品のチェックまでするはずですから、そこに彼らの気になるものを残しておかないことです。あとで修復すればいいだけのことですから。

ところで、以前本ブログでも紹介しましたが、今年8月、この国境を訪ねる以下のツアーが実施されます。

ハバロフスクから中国に船で渡る「中露国境紀行2017」ツアー募集中
http://inbound.exblog.jp/26862674/

このツアーは、とても画期的です。なぜなら、先ほどの日本人のように、ただロシアのハバロフスクから中国の撫遠まで船で国境を渡るだけではなく、以下のように、これまで外国人には訪問を許されなかった両国にとって微妙なエリアを初めて訪ねるものだからです。

「ロシア側の国境、カザケヴィチェボ村を訪問し、中国の対岸烏蘇鎮の国境を遠望します。またこのカザケヴィチェボ村で村の人々とランチをいただきます。地域の博物館訪問も予定しています。国境に生きる人々の暮らしも垣間見える旅になるかと思います。

ロシア領の国境へは「観光ビザ」と「許可証」を取得し入ります。その許可証取得に2ヶ月もかかります。

一方の中国側国境烏蘇鎮へも参ります。中国側は国境画定から観光地として発展してきました。許可証などは不要です」。

この中にある「ロシア側の国境、カザケヴィチェボ村」へは「観光ビザ」と「許可証」が必要とありますが、この地は1960年代から続いた中ロ両国の国境画定事業において、きわめて敏感な場所でした。

詳しくは、北海道大学の岩下明裕教授の以下の著書をお読みください。

『中・ロ国境4000キロ』(角川選書、2003)
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/books_new/2003/iwasita/iwasi-hyo.html

そのうえ、このツアーで訪ねる「9月1日の中国側烏蘇鎮と黒瞎子島(ヘイシャーズ島)観光」が、あり得ない内容であることです。なぜなら、一般にロシアとの国境を展望できるこの地域に日本人は訪問できないからです。

こうしたことが実現できたのも、このツアーを催行するロシア専門旅行会社の裏技によるものなのかもしれません。

ちなみに、この地域については、以下の中国の旅行サイトが詳しく紹介しています。

黑瞎子岛
http://www.mafengwo.cn/poi/6704561.html
乌苏镇
http://www.mafengwo.cn/poi/6657226.html
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by sanyo-kansatu | 2017-07-17 19:58 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(1)
Commented by RMPL at 2017-07-21 11:32 x
興味深い記事でした。
来月、私もこの国境を渡る予定です。
ハバロフスクの船乗り場へは、どのようにしていくのですか?
タクシーに何と告げればいいのでしょう?
教えて頂けると幸いです。


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