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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 07月 29日

中国客向けモバイル決済導入はどこまで進むだろうか?

先週、東京ビッグサイトで開かれていた展示会「インバウンドジャパン2017」に行ってきました。 
 
インバウンドジャパン2017
http://expo.nikkeibp.co.jp/ibj/2017/

日経BP社主催の同展示会には、越境ECや各種訪日客向けサービス、マーケティング系の企業が百数十社出展していました。全国の自治体などが多く出展する9月のツーリズムexpoジャパンとは違う、あくまでB2Bのイベントです。

さまざまな出展企業があり、それぞれ面白いのですが、注目はやはり、中国モバイル決済の雄であるアリペイ(支付宝)とWeChatPay(微信支付)の日本市場におけるシェア競争だったのではないでしょうか。日本の小売業界へ中国系モバイル決済の導入を進めるための代理店が何社も出展していたのです。

彼らのブースは入口正面右手にありました。

まずアリペイ系。謳い文句はこうです。

「インバウンド顧客の『爆買い』を呼び込むトータルソリューション
 アリペイ決済最強ツール! Cpay for Alipay in Japan」(日本恒生ソフトウェア)。
中国客向けモバイル決済導入はどこまで進むだろうか?_b0235153_16400468.jpg

加盟店のレジ処理の際の決済端末で、中国客の手にしたスマホのQRコードを読み込めばレシートが出て終わりというものです。

日本恒生ソフトウェア http://www.hundsun.co.jp

アリペイの本家本元アントファイナンスの日本法人ブースもありました。

アントファイナンスジャパン https://www.antfin.com/index.htm?locale=ja_JP

そのブースの中にはANA系の金融サービス会社もあります。

ANA Digital Gate http://www.ana-dg.com

アリペイ系の関係者に聞くと「今後、アリペイの決済は中国だけでなく、タイなど東南アジアにも普及するので、中国以外の訪日客でも利用が広がることでしょう」。

一方、WeChatPay系は「モバイル決済額はまだアリペイより小さいが、こちらは微信というSNSと連動した決済サービス。いずれシェアはアリペイを超えるといわれています」。
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以下のような関連企業が出展していました。

インタセクト・コミュニケーションズ http://www.intasect.com/
アプラス(新生銀行グループ) https://wechatpay.aplus.co.jp/

WeChatグループで、中国版食べログの「大衆点評」の日本法人も出展していました。

大衆点評 http://www.dianping.com/
同サービス東京のページ http://www.dianping.com/tokyo
中国客向けモバイル決済導入はどこまで進むだろうか?_b0235153_16413771.jpg
ざっと見た限り、まだ飲食店よりもショッピング施設の情報量のほうが多そうですが、ここでも中国国内向けのサービスがどんどん海外に「越境」していることがわかります。要するに、日本の飲食店も「大衆点評」に広告を出せば、中国客を集客できるというわけです。

今後、決済額でもアリペイをWeChatPayが超えるだろうという指摘は、以下の日本経済新聞でも報じられています。

スマホ決済 中国8億人に ネット大手テンセント
脱現金 利用者が急増 16年の市場倍増600兆円 (日本経済新聞2017/3/24)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDX23H1S_T20C17A3FFE000/

(一部抜粋)「もともと中国でスマホ決済の主役は、電子商取引最大手のアリババ集団だった。自社で展開するネット通販の商品購入時に「アリペイ(支付宝)」と呼ぶ決済機能を使ってもらうことを中心にユーザーを増やしてきた。

ところが、そこにテンセントが9億人近い微信ユーザーを連れ、昨年から本格的に攻めてきたのだ。自社のスマホ決済「微信支付」を主力に、すでに昨年9月末時点で8.3億人の決済ユーザーを獲得。同4億人のアリババの「アリペイ」を、あっさり抜き去った。

決済金額ベースでは、高額商品も扱うネット通販向けが主力のアリババにまだ及ばないが、2014年に79%あったアリババの市場シェアは昨年50%まで低下。逆にテンセントが38%を獲得し、猛烈な追い上げを見せている」


こうした中国での覇権争いが日本にまで波及しているわけです。ここに日本の金融サービスが見当たらないところは残念ですけれど、いまインバウンド市場において最もホットな話題といえるでしょう。

ところが、今年に入って訪日中国客が伸び悩んでいます。先週、日本政府観光局(JNTO)が公表した「訪日外客数(2017 年6月推計値)」によると、今年上半期(1~6月)の中国客の伸びは前年に比べ6.7%増にすぎないこともそうですが、6月に限ると、前年比わずか0.8%増。ここ数年、毎年倍増ゲームのように訪日客を増やしてきたことを考えると、大きな変化といえます。これほど伸びが縮んだのは震災以来、初めてかもしれません。

4年ぶりに中国を抜き、韓国が訪日外客数トップ! 中国は伸び悩み
http://inbound.exblog.jp/27007721/

さらに、観光庁が今年1月中旬に公表した2016年の「訪日外国人消費動向調査」によると、こちらも異変が起きています。「国籍・地域別にみると、オーストラリアが最も高く(24万7千円)、ついで中国(23万2千円)、スペイン(22万4千円)の順で高い。中国においては、1人当たり旅行支出が前年比18.4%減少し、全国籍・地域の中で最大の減少幅となった」。

つまり、もはや中国客は個人レベルでみると、日本でいちばんお金を使ってくれる人たちではなくなっているのです(数が多い分、全体ではトップですけれど)。

「モノ」から「コト」消費へ移行というのはデータからみれば、俗説じゃないかしら
http://inbound.exblog.jp/26654584/

はたして、こうした客観情勢の中で、中国系モバイル決済サービスの導入はどこまで進むでしょうか。かつて「爆買い」の恩恵を受けた百貨店や量販店、免税店の大手はほぼ導入が進んでいます。コンビニでも、ローソンがアリペイを全店導入。ファミリーマートでも一部店舗で導入を始めているそうです。

最後に、会場で知った情報を少し。まず今月、世界遺産になったばかりの宗像・沖ノ島(福岡県)の展示があり、現地の詳しい地図を入手しました。今後は沖ノ島への上陸自体が難しくなりそうですが、それ以外にもいくつかの美しい島があります。
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もうひとつは、都内新宿や浅草のハラルレストランマップを入手。最近、ヒジャブを巻いたムスリム客が増えていることもあり、この種の情報発信が大切になっていることを実感します。

インバウンド展示会は、世の中で次々といろんなことが起きていることを教えてもらえ、勉強になります。


by sanyo-kansatu | 2017-07-29 16:43 | “参与観察”日誌


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