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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 08月 20日

中国客だけ数が増えても延べ宿泊者数が減少するのは民泊の影響と考えるべき

今年に入って訪日中国客が伸び悩んでいることはすでに報告しましたが、観光庁が集計する「宿泊旅行統計調査」や日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客統計」のデータを見比べると、奇妙なことに気づきます。

2017年7月、訪日客トップは中国が返り咲き。でも、中国客の伸びの減速は明らか (2017年08月18日)
http://inbound.exblog.jp/27057304/

調査国すべてが訪日客が増加するのとほぼ比例して延べ宿泊者数を伸ばしているのに対し、中国客だけが数は増えているのに、2月以降、ずっと延べ宿泊者数が前年度比マイナスなのです。

宿泊旅行統計調査(観光庁)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html
訪日外客統計(JNTO)
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/

以下、今年の月別の訪日外客数と中国客数の伸びと同じく延べ宿泊者数の伸びの前年同月比較を書き出してみます。

2017年1月
訪日外客数 +24.0%  延べ宿泊者数 +11.0%
中国客数 +32.7%   延べ宿泊者数 +14.9%
2017年2月
訪日外客数 +15.7%  延べ宿泊者数 -4.5%
中国客数 +17.0%   延べ宿泊者数 -14.1%
2017年3月
訪日外客数 +13.6%  延べ宿泊者数 +3.0%
中国客数 +12.0%   延べ宿泊者数 -13.4%
2017年4月
訪日外客数 +16.4%  延べ宿泊者数 +15.5%
中国客数 +9.6%   延べ宿泊者数 -15.6%
2017年5月
訪日外客数 +17.3%  延べ宿泊者数 +16.3%
中国客数 +8.0%   延べ宿泊者数 -7.0%

2月に関しては、訪日外客総数の伸びに対して延べ宿泊者数がマイナスになっていますが、なかでも中国客は前年同月比で17.0%も増えているのに、延べ宿泊者数は-14.1%。この開きは相当大きいといわざるを得ません。

これはいったいどういうことでしょう。

いかにも訪日中国市場の特殊性を感じさせるデータですが、理由としてひとつ考えられるのは、今年に入って中国内陸部の地方都市からの団体客が伸び悩み、沿海経済先進地域からの個人客が増えていることから、「安近短」志向の旅行者の比率が高まっているということです。そうなると、当然1人当たりの滞在日数は短くなります。

訪日中国客にはもともと九州に大量寄港する中国からのクルーズ客が多く含まれており、彼らは船上に泊まっているため、いくら数が増えても延べ宿泊者数を押し上げることがありません。そのぶん、他国と比べる際、差し引いて考えるべきなのですが、だからといって伸び率がマイナスになる理由にはならないでしょう。

今年5月下旬、朝日新聞が興味深い以下の記事を配信しました。

ユー、夜はどこに? 訪日客は増加でも宿泊者は伸び悩み(朝日新聞デジタル2017年5月24日)
http://www.asahi.com/articles/ASK5R55GBK5RULFA01M.html

この記事について、ぼくも以下の分析を試みましたが、今回あらためて中国客の延べ宿泊者数のデータをみる限り、民泊の影響がとりわけ中国市場に強いことを確信しました。

「夜に消える? 訪日客」。背景には民泊による宿泊相場の価格破壊がある(2017年05月24日)
http://inbound.exblog.jp/26877980/

流行りものに弱い中国客ですから、来年のいま頃はまったく違う話になっている可能性もありますが、他の国々の人たちと比べても、ホテルから民泊への流れが強まっていることを実感します。どおりで中国系民泊サイトが次々と日本法人を設立しているわけです。

中国系民泊サイトが続々出展「バケーションレンタルEXPO」って何? (2017年05月29日)
http://inbound.exblog.jp/26889680/
  

by sanyo-kansatu | 2017-08-20 20:01 | 気まぐれインバウンドNews


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