2017年 09月 24日
今週金曜日、東京ビッグサイトで開催されているツーリスムexpoジャパンに行ってきました。 ツーリスムexpoジャパン http://www.t-expo.jp/ 会場では各種セミナーが行われています。そのひとつがボーダーツーリズム推進協議会のセミナーでした。 ボーダーツーリズム推進協議会 https://www.border-tourism.com/ ボーダーツーリズム(国境観光)って何だろう? (2017年 07月 14日 ) http://inbound.exblog.jp/26987824/ ボーダーツーリズムの魅力をテーマとしたこのセミナーでは、3つの話がありました。 第1部は、先月ロシアのハバロフスクから中国の撫遠の国境を渡った北海道大学の岩下明裕先生の旅報告でした。 ハバロフスクから中国に船で渡る「中露国境紀行2017」ツアー募集中 http://inbound.exblog.jp/26862674/ この国境は、昨年まで外国人が自由に渡航することができなかった場所で、1969年には中ソ国境紛争のため戦争まで起きていたのです。1990年代以降、この地域に頻繁に足を運び、中ロの国境画定に向けた辛抱強い取り組みを調査してきた岩下先生も「まさかこのような場所に、日本人が団体ツアーで訪れ、記念撮影をするような時代になったとは」と感慨もひとしおという感じでした。 この国境については、今年すでに数名の日本人が個人で渡っています。 超マニア向けボーダーツーリズム「中ロ国境(ハバロフスク・撫遠)」を渡った日本人の話 (2017年 07月 17日) http://inbound.exblog.jp/26994535/ 第2部は「ボーダーツーリズムの発信都市・稚内市からの報告」でした。 サハリン南部が日本領だった戦前期には、稚内とサハリンの港町コルサコフ(大泊)、ネヴェリスク(本斗)の間には定期航路がありました。1999年に開始されたコルサコフとの定期航路は、乗客不足に悩まされながらも細々と続けられています。 今年6月、ぼくはサハリンに初めて行ってきましたが、まさに「日本にいちばん近いヨーロッパの田舎町」で、とてもいいところだと思いました。本ブログにかなりの文章を載せています。 ノービザ解禁!極東ロシア http://inbound.exblog.jp/i33/ 第3部は「対馬・釜山の国境を見る、感じる、渡る。学ぶ<日本で最も手頃なボーダーツーリズム>」で、九州大学の花松泰倫先生の話でした。とても興味深い報告でした。 2012年以降、対馬を訪れる韓国人観光客は年々増えているのですが、今年はついに40万人近い人たちがこの島を訪れる勢いだそうです。なにしろ対馬と釜山の距離は福岡より圧倒的に近く、わずか50㎞です。しかも対馬の人口は3万人。一方釜山の人口はその100倍以上の345万人。いまや釜山の市民を中心に、韓国の人たちにとって対馬は近くて安くてお手軽な日帰り海外旅行先になっているのです。 彼らは自然の豊かな対馬で、トレッキングやキャンプ、サイクリング、海水浴、釣りなどのアウトレジャーを楽しむ人が多いとか。 なぜ対馬にこんなに韓国客が増えたかという理由について、花松先生は説明します。 なにしろ釜山からフェリーで1時間(料金は800円)。安くておいしい日本食と免税店の買い物。そして、expected unfamiliarity(似てるけどどっか違う)という国境地域特有の体験が彼らを惹きつけているといいます。 同じ体験は日本人が対馬から釜山に渡ったとき、感じるはずです。 あまりに韓国客が増えて「韓国客お断り」の表示を出す飲食店もあり、地元での社会的軋轢も生まれているとのこと。これだけ韓国客が訪れると、その経済効果は島にとってありがたい話ですが、わずか人口3万人の島に年間40万人の外国客が訪れるということは、しかもここ数年の話ですから、島民の人たちの生活に、さまざまなストレスを与えていることでしょう。 このセミナーでは、こうした現状も含め、もっと日本人も対馬を訪れることを推奨しています。地元の人たちから歓迎されることはうけあいですし、何より面白いのは、対馬を訪ねた後にフェリーで釜山も訪ねてみることで、まさにボーダーツーリズムの面白さを体感できるというわけです。 花松先生は現在の対馬の状況について「千島列島や竹島とは違い、対馬で両国民の往来がフリーとなっているのは、日韓の国境が画定しているからだ」といいます。確かに、国境係争地では人の往来は自由でありません。今日の対馬のにぎわいは、そのおかげといえます。 福岡から対馬経由で釜山に渡り、福岡に戻ってくるという旅は、必ずしもツアーでなくても体験できそうです。ただし、対馬の歴史を学んだり、地元のおいしい食を味わったりとなると、ガイドの人に案内されたほうがずっと面白そう。いつの日かぼくも行ってみたいと思います。
by sanyo-kansatu
| 2017-09-24 16:53
| ボーダーツーリズム(国境観光)
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