2017年 10月 15日
一昨日、関西で中国「白タク」問題に警鐘を鳴らす以下の記事が報じられました。 奈良公園周辺にも「中国式白タク」進出 主要観光地で横行か、スマホで予約・決済、摘発難しく… (産経WEST2017.10.13) http://www.sankei.com/west/news/171013/wst1710130046-n1.html アジアを中心としたインバウンド(訪日外国人客)が急増する中、在日中国人が自家用車を使って有料で中国人観光客を運ぶ無許可の「中国式白タク」が、各地に広がっている。関西では関西国際空港のほか、奈良市の世界遺産・東大寺や奈良公園周辺でも横行していることが判明。バス停や交差点内で利用者を乗降させるなどの違法行為も目立つ。沖縄では摘発例もあり、近畿運輸局は実態把握に乗り出した。(神田啓晴) 各地の空港で横行 「友達を乗せている」と言われたら摘発難しく… この中国式白タクは、中国の業者が運営するインターネットサイトやスマートフォンのアプリに登録した在日中国人が、日本国内では無許可のまま、自家用車で有償で客を輸送するシステム。訪日客の増加に伴い、関空や成田空港など日本各地の空港で横行、今年6月には中国籍の男2人が道路運送法違反容疑で沖縄県警に再逮捕された。 だが、予約から支払いまですべてがモバイル決済可能で証拠がつかみにくい上、職務質問された運転手が「友達を乗せている」と答えれば、白タク営業として摘発するのは難しい。 関係者によると、奈良市内で中国式白タクが確認され始めたのは今年6月ごろから。世界各国からの観光客でにぎわう東大寺や奈良公園周辺で、特定のミニバンが中国人の一行を乗降させている様子が確認されているという。 正規タクシードライバー、苦々しい思い 近畿運輸局「対策急ぐ」 日本の正規タクシードライバーも苦々しい思いだ。関空で客待ち中の男性運転手(68)は「そもそも現金のやり取りがないと取り締まりできへんのやから、手の打ちようがない」とあきらめ顔。別の男性(70)も「ここ1年で特に増えた。白タクなのか、ほんまに友達の送迎なのかは分からない」。奈良市の大手タクシー会社の男性取締役(68)は「こちらは国の許可を得て責任を持って仕事しているが、白タクは事故に遭っても補償もない。外国に来たとき、母国語が通じるのが安心なのは分かるけど…」と話す。 近畿運輸局は「情報は入っており、早く対策を取りたい」。県の担当者も「警察に相談するなど対策を講じたい」としている。 やりたい放題? バス停・交差点で中国人が次々と乗降 先月下旬。「中国式白タク」が横行しているとされる東大寺大仏殿バス停周辺で取材を試みると、手持ちぶさたに座り込む中国人の一行を見つけた。 バス停にバスが止まっても、乗ろうとはしない。バスが発車して約10分後、1台のミニバンが停車。すると、1人の男性が「来了、来了(来た、来た)」と仲間を呼び、続々とミニバンに乗り込んだ。ナンバーは白、つまり自家用車だ。 平日のこの日、午後1時半から同3時半までの間、記者が確認しただけでも11台の白ナンバーのミニバンが、このバス停に駐停車。同様に中国人観光客の一行を乗せていった。バス停周辺は今月12日まで整備工事をしており、バスとタクシー以外は駐停車禁止だったが、現場で交通整理にあたった男性作業員(66)は「駐停車する車はいずれも白ナンバーで、乗降客はほぼ中国人」と証言する。 東大寺大仏殿に近い「大仏殿交差点」内で中国人観光客を乗降させている白ナンバーの車も。観光シーズンには常に渋滞する交差点内での悪質な行為は、違法行為であるのに加え、さらなる渋滞にもつながりかねない。 中国では昨年11月、「配車サービス」として自家用車で客を有償輸送するビジネスが合法化されており、最大手の「滴滴出行」の登録ユーザーは3億人超とされる。中国の配車業者のサイトやアプリには、奈良観光コースとして東大寺や奈良公園周辺が記載されており、中国企業による違法な白タク行為が横行しているのは明らかだ。 昨年から奈良市内で中国人白タクを見かけるようになったという大手タクシー会社の男性運転手(54)は「どこでも車を止めるから通行の邪魔やし、中国人はやりたい放題や」と憤った。 これまで本ブログで何度も書いてきたように、この問題の実態は基本的にこの記事にあるとおりです。 ただし、問題の解決を考えるとき、漠然とした中国への反発のみをベースにした議論を煽るのは賢いやり方とはいえません。なぜなら、配車アプリやシェアサイクルなどの新しいマッチングサービスの社会における普及と実践面において、日本は圧倒的に中国に遅れを取っているからです。もちろん、日本の社会は中国よりはるかに進んでいることのほうが多いのですが、この方面についてはうまくいっているとは言い難く、それをまず認める必要があります。 それをふまえていうと、遅れている社会の側が法やルールを通じて現場を仕切ることで、自国の利益を守ろうとするのは当然のことです。中国はこれまで発展途上国という言い訳を使って、どれだけ国際的なルールを反故にし、自国のやり方を通してきたことか。いま日本の社会が中国「白タク」の横行になんらかの制限を加えようとするのは無理もないことだといえます。 とはいえ、やみくもに摘発を強化するというような乱暴なやり方には実りがありません。そもそも産経の記事にもあるように「友だちを乗せているんです」と言われればどうしようもないところがあります。土地勘のない海外で自国民のドライバーによるワゴン車のサービスを簡単に予約でき、モバイル決済できるという利便性を知ってしまった彼らに対して、どう制限を加えるかという問題は、相当理論武装したうえで、合理的な説明が必要でしょう。 そもそも国際的にみて、新しい時代の波に乗り遅れている日本としては、ライドシェアをどう実現していくかについての青写真をきっちり描いたうえでモノ申さなければ、みっともない話といえるのではないでしょうか。何が良くて何が良くないかを判断する基準を、将来を見据えて決めておく必要があると思うのです。 そのためには、ITや金融、交通行政、法の専門家、タクシー業界などの関係者に加え、中国の事情に詳しい人間の知恵の結集が欠かせません。なぜ中国はこれほど進んだサービスを実現できたかについて公平な理解や今後の見通しが必要だからです。 まずそれぞれの専門家の立場からこの問題がどう見えるのか。どうすれば解決につながるのか。意見を重ね合わせていくことが大切です。原則論だけでは問題の解決にはなりません。それぞれが専門的な見地から解決策を提示しつつも、当座の施策は妥協の産物でもかまわないので、どこまでを許容し、どこまでを禁じるかを決める必要があると思います。 この問題は、おそらくいずれ他の国々でも話題になるはずです。日本は中国に近いぶん、どうしても問題が先駆けて起こってしまうのです。
by sanyo-kansatu
| 2017-10-15 13:39
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