ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 04月 24日 ( 2 )


2017年 04月 24日

「おいしい生活」は誰のもの? PARCOの前をベビーカーで歩くアジアからの観光客

昨日の夕方、池袋駅に向かって歩いていたら、双子の赤ん坊を乗せたベビーカーを押して歩くアジア系のファミリー旅行者の姿を見かけました。
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いまどき、特に珍しい光景でもないのですが、それがPARCOの前だったので、ふといろんなことを思い出してしまいました。

PARCOといえば、1980年代初頭、コピーライターの糸井重里さんの「おいしい生活」なる広告文に過剰なまでの意味が込められ、話題となった象徴的なスポットです。

糸井重里「おいしい生活」☆1980年代、西武池袋本店
https://middle-edge.jp/articles/lmVTC

当時は日本がバブル経済に向かう助走期のような時代でした。個人的には、この種の騒ぎを不機嫌かつ冷ややかにみつめていた自分ですが、それから30年以上たち、アジアから来た観光客が同じ場所で「おいしい生活」を満喫する光景を見かけることになるとは、さすがに思ってもいませんでした。そのことに気づき始めたのは、せいぜい21世紀に入ったばかりの頃です。

「おいしい生活」は、富裕層や特権階層ではなく、いわゆる一般「大衆」からなる社会が「総中流化」したとの「幻想」に多くの人が浸れる時代の到来を意味していたはずです。今日の中国やアジアの国々が、1980年代当時の日本ほど「総中流化」しているとは思えませんが、国単位でみたGDP比率は大きく変わり、アジアの国々でも、そこそこの割合の人たちが「中流化」し、アジアの近隣諸国だけでなく、日本へ海外旅行ができるようになったことは確かです。

彼らが大挙して日本に旅行に来てくれるという程度のことで、今後急ピッチで高齢化が進む日本社会の地盤沈下を押しとどめるには至らないのかもしれませんが、だからといて指をくわえているだけなんて。これを活かさない手はありません。そんな彼らの存在とその意味を考えることは、当ブログの一貫した関心事です。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-24 16:31 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2017年 04月 24日

万景峰号によるロ朝新航路とウラジオストクで増加する北朝鮮人の事情

国際社会の制裁強化やトランプ政権の対北政策で朝鮮半島が揺れるなか、先週こんなニュースが報じられています。
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ロシア、北朝鮮に新航路=万景峰号使い来月から(時事通信2017.4.20)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017042001014&g=prk
ロシア、北朝鮮間に新航路 月6回定期便 米けん制を狙う(東京新聞2017.4.20)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201704/CK2017042002000118.html

【モスクワ=栗田晃】ロシア極東のウラジオストクと、北朝鮮北東部の羅先(ラソン)特別市を結ぶ定期の貨客船が五月中旬に就航することが分かった。ロシア通信が十九日伝えた。旅客を乗せた両国間の定期航路は初めてという。核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対し、米国などが軍事的、経済的な圧力を強める中、ロシアによるけん制の意味合いもあるとみられる。

ロシアの運航会社「インベスト・ストロイ・トレスト」のバラノフ社長によると、対北朝鮮制裁で日本への入港が禁じられた貨客船「万景峰(マンギョンボン)号」を利用し、月六便を運航。ロシア、北朝鮮による石炭関連共同事業などのビジネス利用のほか、ロシアの沿海州で働く北朝鮮労働者や、ロシア人、中国人観光客の輸送も目的としているという。

バラノフ氏は「これまでは運賃の高い航空機か、混雑した電車しか行き来できなかった。船は夜間八~十時間で移動でき、とても便利になる」としている。

米トランプ政権による北朝鮮への軍事的な圧力に対し、ロシアのプーチン政権は「武力行使の警告はリスクが高い道で、国際法違反だ」(ラブロフ外相)と対話路線を主張する。定期船の就航は従来通りの経済的な関係を保って欧米と一線を画し、外交で存在感を示す思惑もありそうだ。


TBSでも報じていました。

北朝鮮の貨客船「万景峰号」、ロシアとの定期便に(TBS2017.4.19)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3033076.html
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この報道をみて、ぼくはちょっと違和感を覚えました。それ自体はたいして重要なことではないのでしょうが、万景峰号でウラジオストクから北朝鮮の羅先に行くのに「夜間八~十時間」かかると言っています。でも、そんなに時間がかかるものだろうか、と思ったのです。ウラジオストクから中国経由で羅先に陸路で移動した経験から、両都市間はそれほど離れているとは思えなかったからです。

この点について、この地域に精通した事情通に聞くと「まあそんなものですよ。ウラジオと羅先は130マイルほどですが、一般にコンテナ船は10ノットなので、13時間かかるんです。フェリーなら25ノット程度で、万景峰号はもう少し早いとしても、6時間はかかるのではないか」とのこと。さらに、ある知人は「万景峰号は(波の揺れに対する復元力の指標である)GM値が高いので、波に弱く、そんなにスピードが出ないんですよ」と、どこから仕入れた情報かわかりませんが、おっしゃいます。

なるほど、そういうものかと思うほかなかったのですが、境港から韓国の東海経由でウラジオストクへ向かうDBSクルーズフェリーも、境港を毎週土曜の19時に出港し、翌9時半東海入港。午後2時に出港し、ウラジオストクに入港するのは月曜日の午後2時です。日本海を渡るフェリーというのは、実にのんびりしているのです。

DBSクルーズフェリー
http://www.pref.tottori.lg.jp/116802.htm

さて、本題に入ります。この報道からうかがえるのは、「ロシア、北朝鮮による石炭関連共同事業などのビジネス利用のほか、ロシアの沿海州で働く北朝鮮労働者や、ロシア人、中国人観光客の輸送も目的」(東京新聞)とあるように、極東ロシアと北朝鮮間の人の移動に関する事情です。ウラジオストク在住の友人に話を聞きました。

-ウラジオストクには北朝鮮の人たちが相当数いるようですね。

「その多くは建設労働者です。しかしここ数ヶ月、なにしているかわからない、つまり建設労働のような力仕事はしないで、ぶらぶらしているような人をよくみかけます。彼らの顔つきをみると、日焼けした様子がないのでわかるんです。彼らは単独行動はせず、常に2~4人でつるんで行動しています。

先日もウラジオストク駅に行ったら、北朝鮮行き(豆満江駅行き)の国際列車の車両は北朝鮮人で満席でした。ウラジオストクにはこんなに北朝鮮人がいたのかと、あらためて思いました。

北朝鮮からの留学生も増えています。彼らは、北朝鮮の富裕層や幹部の子弟で、その多くが甘やかされて育っているようです」

※ちょうど1980年代後半に日本に留学に来た中国共産党幹部の子弟に近い存在なのかもしれません。権威主義体制の国にはこの種の甘やかされた人間がいるもの。いかにも、という気がします。

-どうして彼らはウラジオストクにそんなに多くいるのでしょう。今後増えていきそうですか。

「増えそうな気がします。これはあくまでも個人的な意見ですが、今後も彼らがウラジオストクに出没しそうな理由として以下のことが考えられます。

・昨年4月、北朝鮮領事館がナホトカからウラジオストクに移ってきたこと。
・ウラジオストクの建築作業員は慢性人不足で、外国人労働者に依存しているが、その中で北朝鮮人が一番真面目で腕もいいというのが地元での評判。極東ロシアにとって貴重な外国人労働者といえること。
・北朝鮮人の行き先として、中国よりも極東ロシアのほうがビザが取りやすそうなこと(中国では脱北者問題もあり、貿易などに従事するビジネスマンを除くと、北朝鮮の労働者は徹底して管理された工場内などでの労働に従事するほかない)。
・ウラジオストクでは、北朝鮮人だという理由で差別を受けることは基本的にない。たまに北朝鮮との文化交流イベントなども開かれるほど。
・(そのせいか)ウラジオストク経済サービス大学の北朝鮮留学生が昨年2倍になり、今年も増えていると聞く(2017年4月現在)」

これは面白い話です。日本では、中朝や中ロの関係については、それなりに報道されますが、ロ朝の関係や人の移動に関するこうした事情は、あまり知られていないのではないでしょうか。

確かにロシア人からみて、中国人よりも朝鮮人のほうがまじめで付き合いやすいと感じるのは理解できなくありません。拉致問題についても、一般のロシア人はほとんど知らないそうです。国家間の関係はともかく、極東ロシアに住む民間人の感覚では、ウズベキスタンなど旧ソ連圏の中央アジアから来た労働者の質が良いとはいえないこともあり、北朝鮮人は「貧しい国から来た、よく働く外国人労働者」という存在としてみなされているのでしょう。

では、極東ロシアから北朝鮮への人の移動はどうなのか。ウラジオストク在住の彼によると「中国に比べるとそんなに多くはないが、旅行やビジネスで北朝鮮に行くロシア人はいる」ようです。

沿海地方に住むロシア人の中国旅行はよく知られています。日用品や衣料雑貨を買いに年に2度くらい中国との国境の町、琿春や綏芬河に行きます。また夏になると、大連あたりまで海水浴に行きます。鞍山にある日本時代につくられた湯崗子温泉が湯治のためのサナトリウムになっていて、ここでもロシア人の姿をよく見かけます。

極東ロシア人の中国旅行~買い出しバスツアーの訪問先は?
http://inbound.exblog.jp/20610573/

走遍中国 珲春俄罗斯人的幸福生活(CCTV4 20140419) ※琿春を訪れるロシア人観光客の中国TV報道
https://www.youtube.com/watch?v=AEkFq23gYDU

一方、北朝鮮へは国境を接している羅先から入ります。ロシアと北朝鮮は直接鉄道で結ばれているので、中国を経由せずに行けるのです。

欧米人の朝鮮旅行は、北京やロンドンにある英国系旅行会社が手配する北京からのフライトで入るものがほとんどなので、ロシア人が羅先から入るというケースは、全体からみると数は多いとはいえません。それでも、彼によると「たいてい10数名の団体客で羅先に数日滞在するか、羅先から平壌まで行き、帰りは平壌・ウラジオストク線のフライトで戻ってくるか、その逆もある」とのこと。ただし、北朝鮮に行くのは、珍しい物好き、比較的富裕層に限られるようです。この種の北朝鮮ファンは、日本でもアメリカでもそうですが、どこの国にもいるものです。
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ぼくは羅先には2012年と14年の2度訪ねており、市内には2軒のロシア料理店もあるなど、中国人ビジネスマン以外にロシア人ビジネスマンもいることを知っていました。また羅先には海水浴場があり、そこは中国人ではなくロシア人向けにつくられていました。

一般に外国人の北朝鮮旅行はどこに行くのも監視員付きで、自由行動はできませんが、貿易特区の羅先に限っては、しかもビジネスがからんだロシア人であれば、比較的自由に行動できるのかもしれません。

ただし、北朝鮮から極東ロシアに向かう人の移動は増える一方、逆の動きは減りつつあるようです。さすがに、北朝鮮の声高な威嚇をともなう核武装で、ロシアも中国同様、危機感が強まりつつあります。

先週は、米軍の北朝鮮包囲に対するロシア軍の動向を伝えるこんな報道もありました。

ロシア軍が北朝鮮に向け装備移動と報道、大統領府はコメント拒否(朝日新聞2017年4月21日)
http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN17N0Y2.html

同じように中国軍も中朝国境沿いに集結しているという情報もあります。

中国、北国境の警戒強化…兵士10万人展開か(読売新聞2017.4.24)
http://www.yomiuri.co.jp/world/20170424-OYT1T50159.html

両国ともに、それを表向きは否定しているわけですが、こうした軍の動きがあるのは、この地域ではごく普通のことでしょう。どこまで本格的なものかはともかく。

それはそうなのですが、人口の少ない極東ロシアにおいて、それこそ自由貿易構想の実現に必要とされるインフラ建設のためにも、北朝鮮労働者の存在は欠かせません。中ロは経済的にはまったく逆転していますから、(領土回復を胸に隠し持つ)中国による投資攻勢で極東ロシアをかき回されることに、ロシアは警戒的だと思います。ですから、ロ朝のささやかな新航路開設の話題も、この地域ならではの動静として興味深く思われるのです。

【追記】
万景峰号の運航開始が延期になったようです。

万景峰号 ロシア初出航延期、各所の許可調整つかず(TBS2017年5月4日)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3044490.html

延期の理由は「入港の申請を受理していたウラジオストクの沿海地方港湾管理当局が8日までに各所の許可をとる調整がつかないとして、再び、日程を組み直すことになった」からとか。いかにもロシアらしい話です。

現段階では、5月17日に羅先を出港し、翌日ウラジオストクに入港予定だそうです。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-24 10:23 | ノービザ解禁!極東ロシア | Comments(0)