ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 09月 08日 ( 5 )


2017年 09月 08日

広島のゲストハウスに泊まってみたら、なかなか楽しかった 話

前回広島に行った話を書きましたが、なるべく自分も外国人観光客になったつもりで旅してみることにしました。

2つも世界遺産がある広島県には欧米客が多く、インド人ツアーもいた
http://inbound.exblog.jp/27102301/
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そういうわけで、原爆ドームから徒歩5分の場所にあるジェイホッパーズ広島というゲストハウスに宿泊。なんと1泊2500円です。2006年11月開業といいますから、老舗のゲストハウスといえそうです。ゲストの8割は外国人だそうです。
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ジェイホッパーズ広島 ゲストハウス
http://hiroshima.j-hoppers.com/j_index.html
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元旅館を改装したものらしく、男女共用ドミトリーでは外国の女の子やイギリス人の青年と相部屋でした。実は、女の子と相部屋だったなんて知らなかったのですが、朝洗面台で歯磨きしているアジア系の女の子がいたので、最初は日本人かと思って声をかけたら、マレーシアから来たというんです。

午前中は宮島に行ってきたので、午後まで荷物を預かってもらっていたのですが、宿に戻るとちょうど部屋の掃除の最中。ここではスタッフの女の子たちが各部屋のシーツを取り替えたり、掃除機をかけたりしています。気さくで感じのいい子たちです。

ゲストたちはみな観光に出かけており、1階の共有スペースには誰もいなかったので、あちこち見せてもらいました。

これが共用のキッチンです。シェアハウスのようですね。
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冷蔵庫には自分の食べ物を入れてもいいけど、きちんと名前を書けだとか、分別ゴミの徹底だとか、周辺のお好み焼き屋さんの地図が置いてあったりとか…。ここに泊まっているゲストたちの過ごし方がうかがえて面白いです。
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この地図に書いてあった近所のお好み焼き屋さんに行ってみました。たまたま客はぼくひとりしかいなかったので、おばさんはいろんな話を聞かせてくれました。
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Jホッパーズのゲストもよくここに来るそうです。なかにはお好み焼きを注文しないで、ビールばかり飲む若い外国人がいて困ったとか、ある日突然知らないフランス人が店に入ってきたかと思うと、自分の写真をスマホで見せられてビックリしたとか。数年前にこの店に来たフランス人がおばさんの写真を撮っていて、友人に送ったのだそう。外国人もお好み焼きはいけるようですね。このおばさんの焼くのはもちろん広島風です。
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Jホッパーズは原爆ドームにも近いですが、宮島口行きの広電の土橋の停留所もすぐそばなので、とても便利です。

スタッフの子に宮島にもゲストハウスはあるかと聞いたら、宮島口にあるとのこと。朝食を食べ忘れていたので、覗きに行くと、ちょうどロビーにブッフェ式朝食が用意されていたので、いただくことにしました。
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すでに10時近くでしたが、ごそごそ起きてきた外国のゲストたちが自分でトーストを焼き、コーヒーを入れて、寝ぼけ眼で朝食を取っていたのがおかしかったです。
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バックパッカーズ宮島
http://www.backpackers-miyajima.com/

後日ネットで調べると、広島にはいくつものゲストハウスがあるようですね。やはり欧米客が多いと、ゲストハウスも続々できるんですね。

格安旅にもってこい!広島のおしゃれゲストハウス15選
https://retrip.jp/articles/44924/
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by sanyo-kansatu | 2017-09-08 17:21 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 09月 08日

2つも世界遺産がある広島県には欧米客が多く、インド人ツアーもいた

8月下旬、広島を訪ねました。広島といえば、原爆ドームと宮島という世界遺産が2つもあるというインバウンドでは恵まれた県です。

広島市内から宮島行きのフェリーが出る宮島口に行くには、JR山陽本線で行くか、路面電車(広電)に乗って行くかの2通りがあります。外国客の多くはJRレイルパスを持っている人も多いので、JRで行く人が多いそうですが、路面電車で沿線の風景を眺めながらのんびり行くのも乙なものです(所要時間:JR約30分、広電約1時間)。
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朝8時半過ぎ、土橋という停留所から路面電車に乗ると、外国人のグループがどっと乗り込んできました。
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中高生くらいの子供連れのツアーもいます。たまたまぼくの席の隣にお母さんらしい女性が座ったので、話を聞くと、イギリスのウェールズから来たみなさんで、日本の滞在は16日間。東京から日光、箱根、富士山、京都、大阪、そして広島に来たそうです。これが本当のゴールデンツアーです(中国人のゴールデンツアーは日程が短いため、広島や日光がはしょられるため)。

ところが、今年の8月は天候不順でしたから、箱根でも富士五合目でも富士山の姿を見ることができなかったとか。なんだか申し訳ない気になってきます。

その日は晴れていたのですが、空が霞んでいて、宮島口に近づいたとき、車窓から「あっ、鳥居が見える」と教えてあげたのですが、かなり遠く、くっきりと見せることができませんでした。
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電車を降りると、フェリー乗り場に向かいます。フェリーは松大汽船(宮島に向かって左側)とJRフェリー(右側)の2社があるのですが(料金はともに片道180円)、JRフェリーは海の中に立つ大鳥居の側を少し大回りする航路をたどるので、ひそかな人気です。
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船に乗ると、日本人よりも外国客のほうが鳥居をカメラに収めたい気持ちで満々です。
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宮島に着くと、鹿が出迎えてくれます。この女性、かわいいので鹿とのツーショットが絵になりますね。もちろん、彼女以外のさまざまな国の子供やおばさんたちが鹿ととわむれていました。
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宮島には、インド人ツアーも来ていました。広島には中国の人は少ないけれど、インドの人は多く見かけます。彼らの志向は欧米的なので、原爆ドームのある広島は必ず訪れるべき場所だと考えているからです。
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さて、宮島から戻ると、原爆ドームと資料館に行きました。実をいうと、ぼくがここに入るのは、小学生以来です。

平日のせいか、外国客が多いです。
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展示については、中国に数ある歴史記念館とは違い、特定の国を断罪するというより、原爆の悲惨さを訪問者に強くイメージ化させるしかけになっていました。子供の頃見たおどろおどろしい展示の記憶だけが残っていましたが、いまのはかなり理知的な展示です。
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これを見せられると、日本人だけでなく、外国客も原爆の意味を悟ることになるはずです。
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原爆ドームの周囲にも多くの外国客が来ています。
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資料館の書店の人に聞いたところ、やはり昨年のオバマさんの広島訪問の影響が大きく、外国客はぐっと増えているそうです。外国客にとって広島の持つ意味は、日本人が想像する以上に重要といえると思います。
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日本銀行による以下のレポートは、広島県のインバウンドの特徴について、以下のように分析しています。

・外国人延べ宿泊者数を地域別にみると、広島県は全国に比べて欧米の割合が高い一方、アジアの割合が低い
・訪日外国人一人当たりの旅行消費単価が全国平均より低い水準に止まっている。背景としては、ウェイトの高い欧米の観光客の宿泊需要を上手く取り込めていないことや、アジアでの認知度の低さが影響

広島県のインバウンド需要の現状と需要拡大に向けた取り組み(日本銀行広島支店2017年3月)
http://www3.boj.or.jp/hiroshima/Tokubetu-tyousa/inbound.pdf

広島県は国際的な知名度が高いわりには、買い物好きのアジア客の取り込みが他の地方より遅れていたこともあり、旅行消費額が低いようです。欧米客が多いと、ついインバウンドが盛り上がっていると思いがちですが、消費の面からみると、そうともいえないことがわかります。

とはいえ、毎日運航のチャイナエアラインの台北便に加え、2015年10月、香港エクスプレス(週3便)の乗り入れが始まり、さらに今年10月からシンガポール航空の子会社であるシルクエアー(週3便)が加わります。状況は少しずつ変わっていくことでしょう。

なにしろ中国四国地方は(知名度の点で広島を除くとしても)、外国人に日本で最後に発見されたインバウンドエリアといえます。何もかもがこれから。他県の事例を学んで、賢く誘客を進めてもらいたいものです。
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by sanyo-kansatu | 2017-09-08 16:01 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 09月 08日

投資や返還の話の前に、北方四島ツアーが気になります

ウラジオストクで開催されていた東方経済フォーラムにおける昨日の安倍プーチン会談、メディアは冷淡な書きぶりです。

「温度差」浮き彫り、「肩すかし」の訪ロ 日ロ首脳会談(朝日新聞2017年9月8日)
http://digital.asahi.com/articles/ASK975TSYK97UTFK00W.html

安倍晋三首相が訪問先のロシア・ウラジオストクで7日、プーチン大統領と会談した。経済連携の強化を弾みに、北方領土交渉を動かす糸口をつかみたいと臨んだ19回目の会談だが、ロシア側から投資活動の鈍さを指摘されるなど「温度差」が浮き彫りに。「肩すかし」の訪ロとなった。

「北海道とサハリンを結ぶ回廊のような巨大事業ができれば、クリル諸島(北方領土と千島列島のロシア側呼称)に、より柔軟な環境をつくれる」

7日、ロシア政府主催の「東方経済フォーラム」であった日ロのビジネスイベント。日本の経営者を前に、ロシアのシュワロフ第1副首相はこう切り出し、日本の対ロシア投資の規模の小ささに不満を示した。

日ロの経済連携は、北方四島以外での「8項目の経済協力プラン」と、北方四島での「共同経済活動」。この両輪を通して信頼関係を醸成し、領土交渉につなげる戦略を描いてきた。

首脳会談で、両氏は日本側が「平和条約締結に向けた重要な一歩」(首相)と位置づける「共同経済活動」について、海産物の増養殖▽温室野菜栽培▽島の特性に応じたツアー開発▽風力発電の導入▽ゴミ減容対策、の5分野に具体的に取り組むことで合意。10月初旬をめどに現地調査を実施することで一致した。

「8項目の経済協力プラン」の具体化では、医療・健康やエネルギー開発など56本のプラン文書に署名し、事業を進めていくことを確認。日ロ両国に進出した企業の収益にかかる税金を免除したり、税率を下げたりする日ロ租税条約を改正し、日本企業のロシア進出への環境も改善した。

また、人道的理由から日本側が重視してきた北方四島への初めてとなる空路による墓参を今月下旬に実施し、高齢の元島民らへの配慮から、訪問先の島で宿泊することで一致した。日本としてはこうした成果も領土交渉へのテコにしたい考えで、安倍首相は共同記者発表で「ともに利益を享受する形として結実するよう私たちの努力は続く」と前向きな姿勢を強調した。

ただ、ロシア側が領土交渉の前提となる経済協力に期待するのは、橋やトンネル、パイプライン、送電網など国家規模のプロジェクト。日本側は今回の会談で経済連携の成果を強調したが、ロシアの評価とはほど遠い。8月にメドベージェフ首相が北方領土で経済特区「先行発展地域」を創設する決定に署名したのも、日本の投資を待ち続けるより中国や韓国などの投資を呼び込む方が得策との判断があった可能性もある。

首脳会談前のフォーラムで、プーチン氏は同じ壇上にいた安倍首相を横目に、客席にいた中国の汪洋(ワンヤン)副首相を指して「汪氏に友好勲章を与えた。極東地域への投資の8割が中国だ」と披露。続いて安倍首相に、冗談交じりで語りかけた。

「(日本の)対ロシアの経済協力担当の大臣の地位を、副首相に格上げしたらどうか」(小野甲太郎、ウラジオストク=中川仁樹)


基本的に、北方領土の返還を背負ってのロシアとの交渉は、そもそも無理筋に近く、しんどいものだと思います。相手に見透かされていますし、ロシアは日米同盟のあるかぎり、手放さないでしょう。そのうえ、今回は「極東の投資の8割は中国だ」とあてこすりを言われたようで、安倍さんがどうのこうのではなく、日本は立つ瀬がないですね。

ロシアとの経済交流について、現地在住の日本人たちはどのように考えているのでしょうか。ある関係者は、以下のように整理してくれました。

①日露の経済協力では 資源(原油・ガス・石炭・鉱石)分野ではすでにお互いにメリットを見つけていますので これらについての協力はWinWinの関係にあります。しかしほとんどが大手に握られており、新規参入が出来ない状況。

②ところが、他の分野では日本側からみて新しく興味を持てる対象がない。すなわち、通常の輸出入で協力できるものがないということ。加えて、経済協力となると、日露間格差が大きく、ほとんどの場合、ロシア側が「おんぶにだっこ」の状況。これでは日本側のリスクが大きすぎ。特に日本の中小企業では手に負えず、一方大手にとってソ連時代の不良債権などネガティヴな事例が多く、社内の法務・審査部門の許可が出ず、前に進めない。

③加えて、ロシアのさまざまな理解しにくい国内法が妨げとなっている。

また別の関係者は率直にこう話します。

「ウラジオストクではJETROや地方自治体経由で中小企業の視察や現地企業とのマッチングが盛んに行われていますが、まず実を結ばない。

極端な言い方かもしれませんが、日本からみると、ロシアは投資先でなく上納先。外交上、ロシアと日本政府は仲良くやりたいので、そのための上納です。

実際、ロシア人も日本から投資の話があると、それは日本が儲けるための投資でなくて、自分たちのために勝手にやってくれるもんだとみなす傾向があります。

ロシアの場合、プロジェクトが大きくなればなるほど国が絡んできて、そこでごっそりもっていかれるようなシステムらしく、そこを押さえるような関係性を築くのは生半可なやり方ではできません。

そもそも貿易も支払いや関税、運輸の問題など、一般企業にとってコストが高くつきすぎます」。

極東ロシアへの投資はリスクが大きすぎて、いまは彼らの望むようなことはすべきではないというのが現地の関係者の声です。そもそもウラジオストクといっても人口60万人の都市。極東全域あわせても数百万人。本格的な商売相手としては規模が小さすぎるのです。

ですから、日本側は北方四島以外での「8項目の経済協力プラン」には及び腰になりますし、北方四島の「共同経済活動」についても「海産物の増養殖▽温室野菜栽培▽島の特性に応じたツアー開発▽風力発電の導入▽ゴミ減容対策、の5分野」に取り組むというような、曖昧模糊としたしょぼい話にならざるを得ないわけです。

ただし、気になるのは「島の特性に応じたツアー開発」をどう進めるのか。6月にサハリンに行ったとき、北方四島へのツアーがいくつも催行されていることを知りました。択捉や国後へは同じサハリン州に属するユジノサハリンスクからのみ定期便が飛んでいて、豊富な北方の自然を生かしたエコツアーでした。

現地ではこんなパンフレットもできていて、国後島や択捉島、歯舞群島の地図の上には観光スポットが紹介されています。

ロシア側が打ち出す北方四島ツアーのキャッチフレーズは「手付かずの大自然」や「冒険」。オフロード車に乗って択捉島の指臼岳の温泉を訪ねたり、ボートで美しい入り江に繰り出し釣りをやったり。晴れた日には北海道から見えるという国後島にある北方四島の最高峰、爺々岳(標高1882m)や泊山の美しいカルデラ湖に歩いて登ったり。魅力的なスポットは盛りだくさんです。

もうそういう時代なのです。
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↑国後観光MAP&スポット紹介
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↑択捉観光MAP&スポット紹介
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↑色丹観光MAP&スポット紹介

※詳しくは、以下のウエブサイトを参照。

Amist. Tourism(Амист - Экскурсии на Сахалин )
http://amist.ru/upload/2017.pdf

現地の旅行会社を直接訪ねたところ、これらの北方四島ツアーは、グループに限り、日本人も参加できるといいます。サハリンで特別な入境許可書を発行するのに2ヵ月かかるそう。もっとも、ロシア側はウエルカムですが、日本政府は主権の問題がからむため、これまでどおり、北方四島へ入境しないよう自国民に要請するという立場でしょうか。

今月下旬に予定されている元島民の空路による墓参(当初は6月の予定が、濃霧で中止)では、初めて日本からチャーター便で国後島の空港に日本人が降り立つことになりますが、この件を「人道的」扱いとみるロシア側と北方領土返還の布石に見せたいという日本側の認識はかけ離れています。

なぜなら、ロシア人の頭には、サハリン州はこのクリル(千島)諸島とサハリン島のV字型のシルエットとして焼きついています。サハリンで売られているチョコレートのパッケージの地図にも、しっかり北方領土もサハリン州の一部として組み入れられていますし、昨年の戦勝70周年の記念ポスターもそう。すでに70年以上たっているのです。
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こうした現実を皮肉まじりではなく、まっすぐ受けとめたいものです。

リスクの大きい経済交流はともかく、観光を通じた人的交流を進めることは、現地の親日的な雰囲気を合わせて考えると、双方にとって意味はあると思います。現状では誰のための「ツアー開発」なのか判然と市内のですが、日本の手にかかれば、ロシア側の北方四島ツアーも、もっと多彩で面白い企画を打ち出せるはずです。特にウラジオにはさまざまな人材もいそうなので、交流が進むと、想像してなかった相乗効果が生まれるかもしれません。

日本に一番近いヨーロッパ「ウラジオストク」の意外な素顔(ForbesJapan2017/09/06 )
https://forbesjapan.com/articles/detail/17595

投資や返還の話はひとまずおいて、北方四島ツアーについて考えたい。そう思う今日この頃です。

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by sanyo-kansatu | 2017-09-08 10:55 | ノービザ解禁!極東ロシア | Comments(0)
2017年 09月 08日

北海道の女性失踪事件からわかる中国人のまったく新しい日本旅行の姿

先月末、北海道でとても残念なニュースがありました。
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釧路の海岸に女性遺体 先月から不明の中国人教師か(TV Asahi2017/08/27 17:30)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000108641.html

北海道釧路市の海岸で27日朝、女性の遺体が発見されました。この女性は先月から行方不明になっている中国人の危秋潔さん(26)の可能性があります。危さんは先月、北海道の札幌市や阿寒湖温泉を訪れました。その後、JR釧路駅の近くで危さんとみられる女性が確認されたのを最後に行方が分かっていませんでした。

午前6時ごろ、釧路市の砂浜で女性の遺体が打ち上げられているのを近くを歩いていた男性が発見しました。警察は遺体の衣服の特徴から、先月に北海道内を観光中に行方が分からなくなった中国人女性の危さんの可能性があるとみて、身元の確認を急いでいます。

遺体を発見した男性:「(Q.遺体はどこにあったか?)ここに寝てる状態だった。女の子だとすぐ分かった、服装を見て。若い服装だった。びっくりした」

危さんは先月22日に札幌市内のゲストハウスを出た後、阿寒湖温泉のホテルに泊まり、先月23日の正午すぎ、JR釧路駅の近くの防犯カメラに危さんとみられる姿が映っていたのを最後に足取りが分からなくなっていました。


テレビのワイドショーでも報じられたこのニュース。番組を見ながら、以下のような疑問をおぼえた人もいるかもしれません。

なぜ中国の若い女性がひとり旅? 
卒業旅行? なぜ7月? 26歳で卒業? 
彼女はゲストハウスに泊まっていた? 
そもそもなぜ彼女は北海道に行ったのか? 

これらの問いを通じて見えてくるのは、中国人の日本旅行が以前とはまったく変わったものになりつつあるということです。

そうなんです。以前のようなバスに乗って団体で免税店を押し寄せるというような弾丸旅行はもう過去のものになりつつあるということです。

もちろん、中国の地方都市から来る団体ツアーはなくなったわけではありませんから、一部従来型の旅行を残しながら、全体的にみると、個人化、リピーター化が進んでいるということです。福建省出身の彼女は、新しい中国人の日本旅行のスタイルそのものだったのです。

では、先ほどの問いに答えていきましょう。

なぜ中国の若い女性がひとり旅? 

実はもうこれは5~6年以上前から中国では起きているブームのひとつなんです。以下の記事は4年前に書いたものですが、ぼくが北京のブックカフェで偶然見かけた「独立女生旅行分享会(女の子のひとり旅オフ会)」という集まりについて書いた一文です。

日本の1980年代を思い起こさせる中国のバックパッカーブーム(2013年04月27日)
http://inbound.exblog.jp/20348104/

その集まりでは、大学を1年間休学して北欧をヒッチハイクしながらひとり旅した22歳の女性の書いた紀行本『我就是想停下来,看看这个世界 』の著者である陈宇欣さんと、自らも70リットルのザックを担いで旅するカルチャー雑誌『OUT』の女性編集者の座談会がありました。

なにしろ中国のこの世代はほぼ一人っ子ですから、若い女性がひとりで旅に出るというのは自然のことだったのです。といっても、日本をひとり旅できるような若者は、大都市部の恵まれた階層に限られることは確かです。

今回の彼女の旅行が卒業旅行だったというけれど、なぜ7月? 26歳で卒業?

これについては、中国の卒業シーズンは6月で、7月~8月は夏休みだからです。

そして、彼女は大学院まで修了した高学歴の女性です。今日の中国では大卒の半分くらいしか就職できないという日本では信じられない状況で、恵まれた家庭の子弟は、よりよい就職先を目指して大学院まで進みます。彼女は卒業後、教師になるはずでした。

以下の中国のネット記事は、今年中国で卒業旅行が大きな話題になっているというものです。

2017毕业旅行报告发布:高中生更愿意与家人出游(人民網2017年06月15日)
http://yuqing.people.com.cn/n1/2017/0615/c394872-29341564.html

なにしろ85.6%もの卒業生が旅行に出かける計画があるというのですから。

この記事は「蚂蜂窝」という中国の若者に人気のオンライン旅行サイト大手の調査によるもので、旅行日数は7~9日というのが最大だとか、1人あたりの予算は2000~4000元が一般的だが、なかには8000元(約13万円)以上という人も15.6%いるとか、いろいろ報告しています。
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旅行の内容も、かつてのビンボー旅行スタイルから、個性的な旅を志向する傾向が強まり、民泊を利用し、数名で泊まるのが最も人気で、一般のホテルやゲストハウスを利用するより多いのだそうです。

前述の質問に戻ると、ではなぜ彼女はゲストハウスに泊まっていたか? ということですが、卒業生の大半が旅行に出かけるといっても、クラスの誰もが海外旅行を選べるというわけではありません。日本旅行の場合も、なるべく宿泊コストを抑えるために、彼女はゲストハウスを利用していたのだと考えられます。

なぜなら、中国国内ではゲストハウスはすでに若者の宿として一般化しているからです。たいていの都市、特に雲南省や四川省などの観光地に恵まれた都市にはたくさんのゲストハウスができています。ぼくもいくつか利用したことがありますが、基本的にこの世界は万国共通です。

ハルビンの「中華バロック」文化街が面白い(2016年12月23日)
http://inbound.exblog.jp/26496822/

女性のひとり旅もそうですが、中国では2000年代初め頃から若者の間でバックパッカーブームが起きていたのです。その頃は、まだ海外に行く人は少なくて、中国国内のバックパッカー旅が主流でした。中国にはチベットや雲南省、シルクロードなど、冒険心あふれる若者が旅立ちたくなる場所がたくさんあるからです。

2010年に中国人の日本への個人旅行が解禁され、15年1月にビザが大きく緩和されたことから、中国の若い世代がバックパッカーとして日本を旅行に訪れるようになっていたのです。

すでにアジア系のバックパッカーとしては、台湾や香港、タイ、マレーシア、シンガポールなどの人たちがいたので、ちょっと遅れて中国の若者もその流れに加わったのでした。

さて、最後の質問。なぜ彼女は北海道に旅立ったのか? 

それは一部メディアでも指摘していましたが、2008年の中国の大ヒット映画『非誠勿擾』の舞台が北海道で、彼女はその風景に惹かれて旅先を決めたようです。

とても痛ましい結末を迎えた事件でしたが、彼女の存在は、ひとりで日本を旅している中国の若い女性が増えていることを私たちに教えてくれます。

最後に、危秋潔さんとそのご家族のみなさまに、心よりお悔やみ申し上げます。

【参考】
中国の新人類は日本の青空に魅せられている
http://inbound.exblog.jp/24302307/

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by sanyo-kansatu | 2017-09-08 08:57 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 09月 08日

058 草原に浮かび上がる夢の都市、満洲里の夜

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中国最果ての地でありながら、一時の木材バブルのおかげで、高層ビルなども建てられた満洲里。訪問客が来るのは、短い夏の間だけだが、輝かんばかりにネオンを点し、草原に浮かび上がる夢の都市の風情である。この時期、日が暮れるのも遅く、街には国内客だけでなく、お隣りから来たロシア客の姿も見られる。(撮影/2016年7月)

※満洲里の夏は短く、9月上旬の今頃はもうかなり気温が下がっており、観光客の姿も少なくなっていることでしょう。6月末から8月中旬くらいまでがシーズンで、この頃は日中40度近くにもなるというのに、今月末にはもう雪が降るというのですから、北方の草原地域の寒暖の差の激しさは、日本人にはなかなか想像できないものがあります。


ボーダーツーリズム(国境観光)を楽しもう(満洲里編)
http://border-tourism.jp/manzhouli/
Facebook:ボーダーツーリズム(国境観光)を楽しもう
https://www.facebook.com/bordertourism.jp/
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by sanyo-kansatu | 2017-09-08 06:53 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)