ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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カテゴリ:のんしゃらん中国論( 43 )


2016年 03月 27日

今年6月にオープンする上海ディズニーの公式ショップを覗いてみた

今月中旬、上海出張に行っていました。これから少しずつ見聞を紹介していこうと思います。

まず軽い話から。今年6月16日、上海ディズニーリゾート(SDR)がついにオープンするそうです。以前は14年オープンと言っていたものが、2年遅れで実現します。
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いち早くオフィシャルショップがオープンしていました。場所は、地下鉄2号線「陸家嘴」駅下車、東方明珠塔と正大広場というデパートの間にあります。

店の前にプーさんのぬいぐるみのディスプレイがあり、お客さんたちが列をなして記念撮影に興じています。
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店内に入って正面には、SDRのメインキャッスルとなる「Enchanted Storybook Castle(魔法にかかったおとぎの城)」と名付けられた高さ60mとディズニー史上最大のお城のディスプレイがあります。
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店内は写真撮り放題で、いかにも中国らしい世界ですが、子供連れの家族や若い女の子たちであふれていました。昨年まで続けられた一人っ子政策で大事にされたこの国の子供たちは、わが世の春を迎えているという印象です。
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記念撮影や自撮りを楽しむ女の子たちもそこらかしこにいます。こっちの子たちは本気モードで自撮りしてしまう子も多いので、苦笑してしまいます。
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店内にはSDRのオリジナルグッズを販売するコーナーがあります。
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「アイラブシャンハイ」ロゴのついたマグカップやミッキー、ミニーのぬいぐるみ、Tシャツ、ピンバッジなどがありましたが、種類は少ないです。しかも、他の一般的なキャラクター商品に比べると、あんまり売れていない印象です。
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ショップの話はともかく、実際のSDRの中身はどんなものなのでしょうか。

上海ディズニーリゾート公式サイト
https://www.shanghaidisneyresort.com/

上海ディズニーランド 攻略ガイド 2016
http://tdrnavi.jp/tour/sdl/

上記サイトによると、「世界で12番目のディズニーパーク」「リゾートの総工費は55億ドル(6500億円) ※東京ディズニーシーは約3380億円」「リゾートの総面積は400haで東京(200ha)や香港(180ha)の約2倍の広さ(パークの広さではない)」「世界初となる『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマランド「Treasure Cove」が登場」などが特徴のようです。

実は知り合いに、SDRの設計や施工の一部を担当する上海の会社に勤める日本人の女性がいます。彼女によると「今回のオープンは1期工事なので、まだそんなに大きくありません。オーブン後も2期工事、3期工事と続き、結果的にアジア最大級の広さになる」そうです。

彼女に「今年の夏はすごく込みそうですか」と尋ねると「私は上海万博の混雑ぶりをイメージしています。ゲスト入場の仕組みがまだよくわからないのですが、TDRも夏はとても混んでいるので、こちらも同じように混雑するのではないのでしょうか」とのこと。

そして、こんなアドバイスをもらいました。

「もし日付指定のチケットやゲートで入場制限があるのならば、上海万博のときのような危ない感じのひどい混雑にはならないのかなと思いますが、それでもきっとアトラクションには長時間並ぶのではないかと想像しています。

ちなみに上海ディズニーもファストパスがあるようなので(設置した看板にファストパスマークがありました)、パークのまわり方は工夫できると思いますよ」。

ディズニー・ファストパス
http://www.tokyodisneyresort.jp/help/fastpass.html

さて、ちょうどぼくがSDRのオフィシャルショップを訪ねていた頃、日本ではこんな記事が出ていたようです。

15周年のUSJ、来場者急増 映画以外も取り込み躍進(朝日新聞2016年3月19日)
http://digital.asahi.com/articles/ASJ3K4JWZJ3KPLFA004.html

開業15周年を迎えたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市)の来場者が急増しているそうです。その理由として、同記事では「「クールジャパン」がテーマのアトラクションを展開するなど、USJは日本の若者文化の発信拠点に育った。漫画「ワンピース」「進撃の巨人」やゲーム「バイオハザード」など、幅広い作品をパークに取り込む。映画特化のこだわりを捨てたことが功を奏している」と解説しています。

さらに、同記事では以下のような興味深い指摘もしています。

USJ幹部が「尊敬の的」と仰ぎ見るのが、千葉県の東京ディズニーリゾート(TDR)。来場者は「ランド」と「シー」の両パークを合わせ、年約3千万人。USJの2倍超だ。

来場者の外国人比率をみると、TDRが6%で、USJは約10%と高い。関西空港への格安航空会社の相次ぐ就航を追い風に、アジアに近い地の利を生かす
」。

USJはアジア客の多い関西立地のテーマパークだけに、外国客比率が10%を超えているそうです。以前、大阪と東京のインバウンドの違いについて考察したことがありますが、ここ数年伸び悩むTDRと来場者を増やしているUSJの違いも、訪日外国人旅行者の動向を抜きにしては考えられないと思われます。

大阪と東京のインバウンドの特徴の違いを外国人の視点で考えてみる
http://inbound.exblog.jp/25315756/

もっとも、この記事によると、TDRの外国客比率は6%だそう。3年前に本ブログで以下のような記事を書いたことがありますが、年々わずかではあるけれど、TDRでも比率が上がっているのですね。

無敵の東京ディズニーリゾートも外国人客比率はわずか3%!?【2013年上半期⑧テーマパーク】(2013年 07月 24日)
http://inbound.exblog.jp/20769803/

HPで公開されている「ゲストプロフィール」では2014年までの数字(外国客比率5%)しか出ていないので、「6%」というのは、2015年の数字だと思われます。

ゲストプロフィール(TDR)
http://inbound.exblog.jp/20769803/

ところで、SDRのオープンは、日本のテーマパーク集客にも、なんらかの影響を与えたりするものなのでしょうか。

こればかりはしばらく様子を眺めてみなければわかりませんが、先ごろ発表された値上げのため、平日はTDRのチケット代はSDRより高くなったとはいえ、週末や夏休み(7~8月)はSDRのほうが高そうです。

上海ディズニーランドのチケット価格が決定!土日祝は9,000円
http://tdrnavi.jp/blog/5181

「東京ディズニーランド」「東京ディズニーシー」チケット価格改定(2016年4月1日実施)
http://www.olc.co.jp/news/olcgroup/20160208_01.pdf

いまの時代、価格優位性は上海より東京にあるのですね。あとは、よく指摘されるSDRの運営の問題でしょうか。オフィシャルショップで見られたような、海外ではありえない光景が現出するであろうことは想定内の話でしょう。意外と地元では冷めているという声も聞きます。上海の多くの消費者は、すでに日本旅行を経験済みなので、TDRの世界を知っているからかもしれません。

もっとも、中国の内陸都市は膨大な人口を抱えていますから、集客という観点では世界最大の市場規模であることは変わりません。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-27 10:48 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2016年 02月 24日

重慶は坂道と階段のまち。香港によく似ています

ここはどこだと思いますか?
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中国内陸部にある重慶です。階段を下りていくと、嘉陵江という河のほとりに至り、目の前には三峡クルーズの客船が停泊しています。
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上を見上げるとこうです。
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周辺は巨大な高層マンション群です。この感じ、どこかで見たことがないでしょうか。そう、香港にとてもよく似ているのです。そういえば、九龍側にある有名な雑居ビルが重慶(「チョンキン」とここでは広東語)マンションと呼ばれていましたね。ビルの見かけもよく似ています。
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人口約3000万人を抱える重慶は、長江沿いの起伏に富んだ山がちの地形が続くにもかかわらず、高層ビルだらけです。よくもまあこんな場所に都市を建設したものだと思います。当然、そこらじゅうが坂道と階段だらけです。
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古い街区(住宅地)も階段がないところはほぼありません。
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これは山をくり抜いてつくった有名なエスカレーターで、繁華街から重慶駅まで所要3分(料金2元)でつないでいます。
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起伏の大きい都市の東西南北を貫くようにモノレールが走っています。現在、4路線あり、空港や高鉄(新幹線)駅ともつながっているので、市内の移動はとても便利です。
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ここは長江と嘉陵江が合流するポイントにある朝天門広場からの眺めです。この周辺から三峡クルーズの客船が出航します。
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現在、広場の裏は再開発の真っただ中で、将来はこのようになるそうです。
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最後に、重慶がいまほど発展していなかった当時、長江を渡る貴重な交通手段で、唯一現役で運行しているロープウェイ(長江索道)の写真です。いまは長江の夜景を見るための観光スポットになっています。
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香港同様、このまちに暮らす人たちの大半は高層マンションに住んでいるはずです。そのような環境に暮らす人たちが海外旅行に行こうというとき、どんなものを求めるものなのか。現地の人たちと何人か知り合ったので、今度じっくり話を聞いてみようと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-24 16:44 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2016年 02月 24日

重慶火鍋は食事というより格闘だ

重慶といえば火鍋が名物です。山椒とトウガラシがどっさり入ってグツグツ煮えたぎっている本場の激辛スープは、口に入れるとすぐに舌がしびれ、味も何もあったものではありません。
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ですから、ぼくにとって火鍋は食事というよりまさに格闘です。汗は半端なく吹き出す。鼻水もあてどなく出る。テーブルの脇にはすぐに鼻水をかんだティッシュの山ができてしまうほど。間違って器官にトウガラシが入り込むようなことになれば、咳き込んでむせび返ってしまう…。それでも、食べ続けるのは、闘志をかきたてられる体験だからなのです。

ところが、地元の人たちは涼しい顔をして鍋をつついているのだから、驚きです。
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しかも、真冬でもコートを着たまま野外で鍋をつついているのです。
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重慶の旅行会社の知人に聞くと、重慶人は冬でも夏でも、たいてい週に1回くらいは火鍋を囲むそうです。スプリングジャパンの成田・重慶線で隣の席にいた地元の女子大生も「日本に1ヵ月くらい滞在していて、重慶に帰ったらまず食べたいのは火鍋」と話していました。これほど刺激の強い料理を食べるとホッとするという感覚は、ぼくにはまったく理解できないものです。

もともと重慶は長江沿いの山がちの地形のまちで、荷を運ぶ底辺の労働者たちが食べてきたのが、この激辛火鍋の起源だそうです。臓物などの素材が多いのもそのためです。四川省全域に火鍋はありますが、成都の味は少しマイルドで、やはり重慶がいちばん強烈のようです。

実際、重慶は火鍋と坂道のまちだと思いました。街中いたるところにこのふたつがあるからです。坂道の話はまた別の機会に。

重慶は坂道と階段のまち。香港によく似ています
http://inbound.exblog.jp/25388159/

中国独立映画の張律監督作品『重慶』の冒頭に火鍋屋が出てきます。地元のヤクザが高利貸しにはまって金を返せない男を脅してリンチする手段として、その男の腕をつかみ、煮えたぎる火鍋のスープに手をぶちこみ、火傷を負わせるというシーンです。今回、初めて火鍋屋に来たとき、「これがあの火鍋か…」とそのシーンを思い出して、一瞬ブルッとしてしまいました。
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結局、地元の人に連れられ、よせばいいのに、2回も火鍋に行ってしまいました。最初の1軒は観音橋という繁華街にある火鍋屋。お店の中は普通の食堂風です。知人はぼくのことを気遣って、激辛スープと清淡スープの2種類を選んでくれました(冒頭の写真)。

重慶最後の夜に行ったのは、屋台風の火鍋屋でした。
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実際、みなさん本当に楽しそうです。若者のグループもいれば、おっさんグループもいる。
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重慶火鍋はスープに味がついているのですが、タレとしてごま油に、にんにくのすりおろしと香菜(パクチー)を入れたりするようです。
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これが煮えたぎる前のスープです。どす黒くてすごいでしょう。
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翌朝、ホテルに近い街区の朝市を訪ねてみました。調味料売り場に行くと、火鍋のもとがたくさん売られていました。
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火鍋に限らず、いろんな料理のもとがあるようです。
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要はこれをカレーのルーのように鍋に水を入れて溶かして沸かすのです。
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いろいろあるうち、「最好(いちばんいい)」と言われたのがこれです。確か13元くらいでした。見た目もカレーのルーのようです。一応お土産に買って帰ったのですが、まだ使ってみる勇気はありません。
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重慶や成都の旅行関係者らといろんな話をしたのですが、彼らは一様に「日本の食事には味がない。やっぱり食は四川のほうが上」と、なぜか申し訳なさそうに言うのです。ちょっと待って…。そうぼくは心の中で思いました。普段からこんなに刺激の強いものを食べていたら、日本の繊細な味がわかるわけないでしょう。

でも、それはあえて口にはしませんでした。言っても詮無いことだからです。ただ彼らにも理解してほしいと思うのは、自分の味覚を唯一の基準にしていると「井の中の蛙大海を知らず」になってしまいますよ、ということ。

ある重慶人は言いました。「親戚に調理人がいて、彼は以前アフリカで店を開いていたのだが、最近中国に戻ってきた。その彼が日本で四川料理レストランを開いたら、儲かるんじゃないかと言うんです。どう思いますか?」。

ぼくは答えました。「日本人は基本的に四川料理の「麻(ma)=しびれる」が苦手です。有名な四川料理店は「麻」を抜いた味付けで成功しています。確かに、東京とその近郊には在日中国人80万人の半数近くが住んでいますから、彼らを相手に本格的四川料理店を開くという手はあるかもしれませんけど、一部の日本人を除くと、刺激が強すぎて口に合わないのではないか。日本人が好きなのは広東料理なんですよ」。

彼は「なるほど」と納得していました。

今回、ぼくが成都に来て、興味深く思ったことのひとつが、チベット族の姿をまちで多く見かけたことです。で、ついチベット料理店に入った話をすると、成都の人は「せっかく成都に来たのに、チベット料理なんて…」と言うのです。まあこれは、日本に来た外国人が大久保のコリアン街で韓国料理を食べたという話に似ていますから、当然なのかもしれません。

でも、はっきりいえることは、食に優劣はないことです。土地ごとに固有の素材や調理法、好みの風味があって、人によって口に合うか合わないかというだけなのですから。そういう「普遍的」な価値観がいまだに身についていないことが、海外で支障をきたしている理由のひとつだということに彼らが気づくのはいつの日でしょうか。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-24 10:21 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2016年 01月 17日

中国の台湾人アイドルへの謝罪強要が総統選挙に影響!?

2016年1月16日、台湾総統選挙が投開票され、民進党の蔡英文主席が当選しました。

すでに早い時期からこの結果は予想されているものでしたが、投票日の午後、日本薬粧研究家の鄭世彬さんからこんなメールが届きました。

「実はここ数日、台湾で炎上している事件があり、昨日(1月15日)はそのピークに達しました」

彼とはいま、一緒に単行本の仕事をしていて、そのメールのやりとりの文中にあったものです。ちなみに、来月13日に彼の日本での最初の著書(『爆買いの正体』(飛鳥新社))が刊行される予定で、ぼくは本文の構成を担当しています。

「韓国のアイドルグループに所属している16歳の若い台湾人(周子瑜)が中国のプレッシャーによって謝罪する映像を公開させられたのです。

これを見た台湾の世論、特に若い世代の間で、反中、反韓の感情が強烈に盛り上がっています。韓国の芸能事務所は、なぜ責任を若い子に押しつけたのか。あまりにも卑怯ではないかというわけです。

私のFACEBOOKでも、ここ数日この事件への評論ばかりです。

今日の選挙は緑(民進党)が勝つだろうと思います」。

この事件については、韓国や日本のメディアも報じています。

TWICEツウィが台湾独立主義者? JYP側「政治的観念を論じるにはまだ幼い」(中央日報2016年1月15日)
http://japanese.joins.com/article/824/210824.html

この記事によると「ツウィ(周子瑜)はMBC(文化放送)の芸能バラエティ番組『マイリトルTV』に出演して台湾(中華民国)の国旗を振ったが、これに対して中国の作曲家ファンアンが「ツウィは台湾独立主義者でないことを証明しなければならない」と主張して問題が大きくなった」と、謝罪に至る背景を説明しています。

そして、これが問題の謝罪映像です。

쯔위 공식 사과 / 周子瑜公开致歉(2016/01/15)
https://www.youtube.com/watch?v=t57URqSp5Ew

これに台湾の世論が強く反応したのです。YOUTUBEで彼女の名前を入れて検索してみたところ、中国に対する怒りを伝える動画が次々に見つかります。

周子瑜道歉全台人震怒 藝人開砲聲援│三立新聞台
https://www.youtube.com/watch?v=gdmkOGhWe9k

こういう外国人に中国への反発を仮託して語らせるバージョンもあります。

老外看周子瑜事件: Unite We Stand Divide We Fall
https://www.youtube.com/watch?v=Xl6-o3woKd4

民進党の蔡英文主席や国民党の馬総統にもメディアはマイクを向けていますが、馬総統も「彼女は謝る必要はなかった」と明言しています。

周子瑜事件 蔡英文:嚴重傷害台灣人民的感情
https://www.youtube.com/watch?v=rvoPq_igpn8

周子瑜事件 馬英九:她沒有必要道歉
https://www.youtube.com/watch?v=_ooFBIeuVME

選挙結果の出る直前の16日の夕刊には日本のメディアもこの件を報じています。

台湾人アイドル「私は中国人」 独立派と非難され謝罪(朝日新聞2016年1月16日)
http://www.asahi.com/articles/ASJ1J1BVBJ1HUHBI038.html

韓国のアイドルグループ「TWICE」で活躍する台湾人、周子瑜さん(16)が台湾独立派と非難され、所属事務所が15日、周さんが「私は中国人であることを誇りに思う」などと語る謝罪ビデオを公表した。台湾では強い反発が出ており、16日投開票の総統選にも影響が出るのではとの指摘が出ている。

台湾メディアによると、周さんは韓国のテレビ番組に出た際、韓国の旗と台湾を実体的に統治する「中華民国」の旗を掲げた。これが、中国で活動するほかの台湾人芸能人に「台湾独立派」と非難され、中国のテレビ出演取り消しなどの動きが広がっていたという。

だが、「台湾と中国は別」と考える人が増えている台湾では、周さんが中国の圧力で謝罪を強要されたとの見方が強い。台湾人としてのアイデンティティーを踏みにじられたとの受け止めで、親中路線を採った馬英九(マーインチウ)政権の与党・国民党にも批判の矛先が向けられる。投票で怒りを示そうという声も上がる。

国民党の総統候補、朱立倫主席は交流サイト・フェイスブックに「16歳に対してこれはひどすぎる。周さん、帰っておいで」と書き込むなど、火の粉を払うのに懸命なようすだ。(台北=鵜飼啓)


今朝、鄭世彬さんから次のようなメールが届きました。

「選挙結果は予想通りに緑が勝ちました。国民党はもともと勝ち目がなかったのに、アイドル謝罪事件はまさに致命的な一撃となりました。多くの台湾の芸能人が民進党を応援し、みんなに投票に行こうと呼びかけたからです。

でも、ちょっと気になるのは、今回の事件によって台湾で反中の若者が激増したと思われることです。これによって中台関係の適切なバランスが崩れてしまうことを懸念しています」

穏健な親日家の鄭さんの心配はよくわかります。

ぼくも同じことを感じていました。日本のメディアも、むしろ台湾の盛り上がりを気にしているようです。

中台、静かな緊張 蔡氏圧勝、議会も民進党過半数 台湾総統選(朝日新聞2015年1月17日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12163290.html

以下は、ネットでは読めないようですが(紙面のみ)、朝日の中国総局長は「中台のきしみは避けられない」と題された解説文の中で、中国側に「「台湾人の台湾意識」といった微妙な感情を感じ取る繊細さはない」「台湾の民意を直視するよう求める国際社会の声に対しても反発しかない」と書いています。これが現実です。

鄭さんは以前、台湾で反国民党、反中の意識が強いのは比較的高年齢層で、若い世代はそれほどではないと指摘していましたが、今回のことで状況が少し変わってきたのかもしれません。1996年に李登輝国民党主席が台湾初の民主的な総統選挙に勝ったときも、中国が台湾海峡をミサイルで威嚇したことの反発が大きかったのですが、この投票前の敏感な時期に、なんと愚かなことをしでかした中国人の音楽家とやらがいたものです。これに見る鈍感さ、頑迷さこそ、残念ながら、いまの中国人の平均的な態度です。ぼくもそれはよく知っています。知っているからこそ、今回の成り行きを手放しでは喜べないのです。

今後、台湾がどんな困難にさらされるか気になるところですが、冷静に関心を持ち続けていく必要がありそうです。

【追記】
その後、また鄭さんからメールが来て、この作曲家というのは、もともと台湾生まれだそうで、現在は中国に活動の拠点を移しているのだとか。いま台湾メディアは、この人物がすでに中国国籍を取得しているのではないかと報じているそうです。

それにしても、このタイミングの悪さといい、この男はむしろ国民党を負かせるために確信犯的にやったのではないかと思えるほどです。もしそうでないなら、粗忽にもほどがある。でも、こういう周りが見えず、逆効果なことしちゃう人、中国によくいるんですよね。

この作曲家の中国版ブログ(微博)は現在、コメントができなくなり、本人の投稿も削除されたそうです。いま頃、彼は中国当局からお仕置きされているのかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2016-01-17 13:03 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2015年 10月 09日

旅する画伯が描いた36年前の江南水郷の原風景

目を見張る発展を遂げてきた21世紀の中国。では、いまから60年前はどんな世界だったのだろうか。あるいは、あなたの子供の頃にはどんな風景が広がっていたか、覚えていますか。 

これは長江下流域に点在する江南水郷の36年前の姿を描いたものである。
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「疏影横斜」(1979)高斉環 水彩画

ガイドブックで紹介される観光地化の進んだ今日の水郷ではもう出会うことの難しい、人と水辺の暮らしが溶け合う優美な原風景。うたたねを催すような夢心地の記憶がこうして作品に残されたことは、いまとなっては僥倖と言わねばならないと思う。

高斉環画伯は1935年中国遼寧省遼陽生まれ。幼少より地元の高名な水墨画家から手ほどきを受け、瀋陽に魯迅美術学院が建学された1951 年、わずか15歳ながら1期生として入学を認められるほどの神童だった。卒業後は、黒龍江省ハルビンの美術出版社に画家兼編集者として着任し、東北三省をはじめ桂林や水郷、雲南など全国各地を旅しながら絵筆を執った。1980年代に来日し、日中を往来しながら創作活動を続けてきた。

現在の瀋陽魯迅美術学院
http://www.lumei.edu.cn/

その画歴60年間の集大成となる画集が今年7月東京で刊行された。同画集は、画伯が大学時代にロシア美術を通じて学んだ油絵や水彩画、そしてフランス印象派の手法を中国の水墨画と大胆に融合させた彩墨画のパートに分かれている。独自の作風で描かれる作品世界は、中国の土地でありながら、どこか異国のようでもあり、人を旅に誘う不思議な力を有している。
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■『高斉環画集』(日本芸苑水墨画研究会 定価3000円+税)をお求めになりたい方、また画伯の他の作品についてお尋ねになりたい方は、以下にご連絡ください。

日本芸苑水墨画研究会 gaohong021016@gmail.com
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by sanyo-kansatu | 2015-10-09 15:02 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2015年 09月 07日

ついに中国金融トップが「バブルはじけた」と口にした!?

先ごろ(9月4日)、トルコのアンカラで開催された主要20カ国・地域(G20)財務省・中央銀行総裁会議で、中国人民銀行の周小川総裁が、6月中旬から4割近く株価が下落したことを受け、「バブルはじけたような動き」(朝日新聞2015年9月6日)と表現したそうですね。

ついに中国金融トップが「バブル」の崩壊を口にしたということなのか。

昨年夏、大連を訪ねたとき、絵に描いたようにバブリーなホテルに泊めてもらったことを思い出しました。

それがキャッスルホテル ラグジュアリーコレクションホテル大連(大連城堡豪华精选酒店)でした。場所は星海広場を一望にできる晩霞山の山腹に建っています。
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大連城堡豪华精选酒店
http://www.starwoodhotels.com/luxury/property/area/index.html?propertyID=3557&language=zh_CN

ご覧のような中世の古城の巨大なレプリカのような外観で、2014年9月に開業しました。ぼくはプレオープン時に泊めてもらいました。トリップアドバイザーをみると、実際の宿泊客の感想が書き込まれていますが、ロビーから客室、レストランの個室に至るまで、呆れるほどバブリーな造りです。
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実際の宿泊客のコメント(トリップアドバイザー)
http://www.tripadvisor.jp/Hotel_Review-g297452-d5483653-Reviews-The_Castle_Hotel_A_Luxury_Collection_Hotel_Dalian-Dalian_Liaoning.html

ここまではホテルの広報写真ですが、以下はぼくが手持ちのカメラで撮ったものです。
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ラグジュアリーコレクションが買収する前、この建物は大連貝殻博物館でした。大連海洋漁業グループの張毅理事長(故人)が集めたコレクションを展示していたそうです。
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ホスピタリティに難があるといわれる中国国内の他のホテルとは一線を画すべく、スタッフたちは笑顔を常に絶やさず、客をもてなす姿が印象的でした。ただし、慣れないことをちょっと無理している感じがして、窮屈な印象もあります。
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申し訳ないですけど、あらゆるものがレプリカでしかない安っぽさが気になったのも確かです。せめてTDR的なストーリーがあれば、所詮ファンタジーとして受けとめられるのですが、マジっぽいところがかえっていただけません。
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ホテルの目の前にある洋館風の建物はマンションです。星海湾を橋でつなごうとしていますが、地元大連の人たちも景観が壊れるのでやめてほしいと話していました。
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エクスペディアで調べると、このオーシャンビューのデラックスルームで1泊2万5000円相当でした。スターウッドグループの高級カテゴリーであるラグジュアリーコレクションでこれほど安い価格帯はありえないのではないでしょうか。でも、ここまで下げないと客室が埋まらないのでは、と思われます。

膨れ上がった資産価格と人々の日々の消費活動が不釣合いとしか思えなかった中国。今後それが徐々に調整されていくのであれば、結果的には庶民にとっては悪い話ではないと思うのですが、はたしてそんな悠長な話なのか。いったいこれから何が起こるのでしょうか。
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by sanyo-kansatu | 2015-09-07 15:21 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2015年 06月 01日

困るよな。習近平の時代になってますます世の中は厄介になってきた

今日の朝刊の第1面「南シナ海埋め立て『主張の範囲』中国、軍事利用も明言」(朝日新聞2015年6月1日)をみて、世の中ますます厄介になってきたと思った人は多いのではないでしょうか。

朝日新聞2015年6月1日
http://www.asahi.com/articles/DA3S11784651.html

記事の内容はおくとして、これで先日の人民大会堂での日本の訪中団を前にして発せられた習近平総書記による対日関係改善へのメッセージも意味をなさなくなってしまったように思います。
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と同時に、これまで以上に中国のリーダーが何を考えているのか、正しく理解することが必要な時代になったと言わざるをえません。

自分が特別な情報ソースを持っていない以上、ぼくは中国に限らず政治向きの話、特に権力闘争や政局動向といった話題に必要以上に関心を持っても仕方がないと普段は考えている人間です。しかし、さすがにここ数年、つまり胡錦濤政権が退陣し、習近平政権になったとたん、中国社会の様子がずいぶん変わってきたことは、訪ねるごとに実感していました。民意によって選ばれていないリーダーが公然と権力を握る国柄というのを理解するには、興味の有無はともかく、リーダーについて少しは知っておくことが必要だろうと考えるに至っています。

その意味で、5月28日に専修大学で開催された「習近平と文革―現代に落とす文化大革命の影」と題された公開研究会では、多くの示唆を得ることができました。

講演者は、日本を代表する現代中国研究者の矢吹晋横浜市立大学名誉教授。研究会を主催したのは、専修大学社会科学研究所で、<中国60年代と世界>研究会との共催です。進行はこの研究グループリーダーの土屋昌明教授です。

最初のあいさつで、土屋教授は1960年代の日本にも影響を与えた中国の文化大革命がいまもなお日中両国で偏向した見方が流通しているなか、1980年代という早い時期に『文化大革命』という著作を上梓された矢吹先生に習近平総書記と文革の関係について語っていただく今日的な意義について触れました。確かに、現代の中国の政権首脳部の大半は文革時に「下放」経験をもつ世代です。リーダーが文革をどう評価するかが現代に影響を与えるというのはそのためです。

矢吹先生の講演内容については、「中国60年代と世界」第2号(2015.5.28発行)という機関誌の中で論文にまとめられているので、詳しくはそちらを参照いただきたいのですが、先生はまずこんな話から始められました。

「習近平についてはよくわかっていないことが多い。その人物像については極端にイメージが分かれている」として、以下の2冊を紹介します。

『習近平 共産中国最弱の帝王』(矢板明夫 2012.3 文藝春秋)
『習近平の政治思想 「紅」と「黄」の正統』(加藤隆則 2015.1 勉誠出版)

前者の著者は現役の産経新聞記者で、1972年天津生まれの残留孤児2世。15歳まで中国で育ったせいで、中国語が群を抜いて達者なことが他の中国駐在記者とは違うといいます。ただし、先生によると「中国最弱の帝王」という習近平の評価は、江沢民側のネガティブな情報ソースに頼ることが多いことから、正しいといえるのか。むしろ、いまの習は江や胡より強いのが現実ではないか、といいます。そして、現在の日本のメディアの主流がこの見方に足並みを揃えてしまっていることは問題だと指摘します。

一方、後者の著者は読売新聞記者ですが、習近政権発足前後からの取材をもとに同書をまとめていて、矢板記者とは対照的に、習に対する肯定的な見方をしているそうです。

先生の立場は、ある時期までは矢板記者に近かったが、2014年7月に周永康前政法委員会書記、徐才厚軍事委員会副主席を処分して以降、見方を変えたといいます。

その後、習近平による「虎退治」=曽慶紅常務委員の処分をどう読むかという話になりました。この種の話題は自分にはよくわからないのですが、いくつかの気になる指摘がありました。

「習は文革のポジティブな面を引き継ごうとしている」。

「一般に毛沢東の評価は「七三」とか「六四」とかいわれるが、特に文革の評価が難しいのは、当初は紅衛兵として加害者だった者が、のちに下放されるという被害者となる両面を持っていることにある。総括しにくいのは理解できる」。

「ところが、習は1966年に文革が始まった時期、父親の習仲勲が右派とされていたことから、紅衛兵運動に参加して加害者となることはなかったはず」。

これは興味深い指摘です。現在の中国の政治リーダーの多くが紅衛兵世代でもあるなか、習近平は「加害者」としての責任を免れているらしいのです。では、そのことは彼の政治思想にどんな影響を与えるのか。文革の負の側面に負い目を持つ必要がないということなのか。先生が習を「プチ毛沢東」と命名するのも、そんな事情と関係あるのかもしれません。

もうひとつ知ったことは、日本のメディアで取りざたされる太子党vs共青団(共産主義青年団)といった対立軸で中国の政治動向を見るのは間違いで、すべては「太子党内の権力闘争」だということでした。なるほど、やっぱりそうか、と思わず手を打ちたくなりました。

先生は言います。「紅二代(建国に尽力した共産党高級幹部の子弟)はお互いを身内のように知り合う関係にある」。この話を聞いて思うのは、それはちょうど清朝の八旗のようなものではないかしら、ということです。つまり、建国に携わった共産党幹部の子弟たちこそがこの体制(王朝?)の権力を継承し、支えるべきだという強い考えを習が持っているのではないか。そんなことを思いました。

その後、質疑応答に入り、いろんな質問がありましたが、印象に残っているのは、ある中国人留学生による以下のようなものでした。

「習政権の汚職退治は中国の政治改革を進めることにつながるか?」

言うまでもなく、この問題を自分ごととして考えるのは、我々より、まずは中国の人たちであるべきです。

先生はこう答えます。「習は2つの100年ということを言う。ひとつは、1921年の共産党結党から100年の2021年。もうひとつが、1949年の新中国建国後からの100年。習は少なくとも2049年までは共産党独裁を守るという意思を持っているということでしょう。それが可能かどうかは誰にもわからないけれど、今後の注目は2017年までに習が自前の政権体制を確立したとき、何をやるかです」。

習近平政権になって中国国内のイデオロギー弾圧が強まっていることは周知の事実ですが、これは彼が政権を安定化するまでの話で、それ以後少し状況は改善されるのか。

中国のリーダーの権力闘争や政局という普段はあまり考えることのない話題だけに、はたしてどこまでこの場で討議された内容をぼくが理解できたかわかりませんが、ひとつ思ったことがあります。

それは習近平と関係者らの生年についてです。

習近平(1953~)
習仲勲(1913~2002)
江沢民(1926~)
毛沢東(1893~1976)

習近平は父親が40歳のときの子どもなのですね。建国前夜であったことから、遅い子どもであることは理解できます。その意味では、江沢民は習近平の父親世代に、また毛沢東は祖父の世代にあたると言ってもよさそうです。

だとしたら、父親世代に反駁し、祖父の世代を肯定したくなるというような心性は、ひとりの人間として理解できなくもないという気がしてきます。

矢吹先生によると「江沢民こそ、中国を汚職大国にした張本人」です。「プチ毛沢東」こと習にも、同じような考えがあるのかもしれません。

これはなんら根拠のない思いつきに過ぎません。政局話というのは、所詮なんとでも言えてしまうので、好みではありません。それでもこの研究会に参加したのは、先日本ブログでも書いたように、今年2月に上海で見た「自由」「民主」「法治」といったスローガンを掲げる広報ポスターが街にあふれる光景をを見ながら、なんともいえない違和感や気分の悪さをおぼえたことは確かなので、自分には不似合いと思いつつ、足を運んだのでした。
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いまの上海には「自由」や「民主」があふれてる!?
http://inbound.exblog.jp/24529923/

この写真は、ある上海市内の焼き小龍包屋の厨房にかかっていたカレンダーなのですが、そこに描かれた習近平の肖像画がまるで毛沢東のようにも見えたので、思わず写真を撮ったものです。もっとも、中国のリーダーの肖像画はいつの時代も、たいていこんな感じかもしれません。
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【追記】
この日の夜、友人の広東人と会ってここで書いた話をしたところ、彼はこんなことを言っていました。

「習近平が習仲勲の40歳の子だというのは、建国直後は党の幹部ということで当時は英雄。彼には前妻もいたはずだが、そのとき若い妻を手に入れたからだろう。習近平の母親はまだ生きているでしょう」

「なるほど、そういう見方もあるんですね」

「それから2017年に習近平が本当に権力基盤を安定できるかどうかはまだわからないと思う。昨日ネットでこんな記事をみましたよ」。

そう言って彼が微信で検索してくれたのが以下のボイスオブアメリカ中文版の記事でした。

焦点对话:王岐山访美取消,摩根大通调查引联想?(VOA2015.6.1)
http://www.voachinese.com/content/VOAWeishi-ProandCon-20150529-jp-morgan-wang-qishan/2797451.html

王岐山即将访美谈反腐猎狐行动(BBC中文網2015.3.17)
http://www.bbc.co.uk/zhongwen/simp/china/2015/03/150317_china_us_wangqishan

これは(上の記事)習近平の命を受けて汚職退治の急先鋒を務める王岐山が、9月の習の訪米に先駆けて、6月に訪米する予定(下の記事。BBC中文網3月17日時点)が中止になったことを伝えるものです。王はアメリカで中国の汚職官僚(裸官)の引き渡しなどを交渉するはずでした。ところが、彼自身の汚職をリークする勢力がいて、それどころではなくなったのだそうです。

「それってもしかして江沢民一派がたれこんだから?」

「そうですよ。いま中国では『選択反腐』ということばが流行っています。相手を選んで汚職退治している政権の姿勢を批判するものです。もし本当に汚職退治をしようと思ったら、すべての高官を捕まえなければならなくなるわけで…」

習政権もすぐには安泰とはいかないようです。そうなると、今の状況は続くということか。なんだかなあ…。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-01 11:05 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2015年 05月 29日

いまの上海には「自由」や「民主」があふれてる!?

中国に行くと、街で見かけるいろんなものが気になって、つい路上写真を撮るのが習慣になっています。2月に上海を訪ねたとき、いちばん気になったのが、地元政府が作成した広報ポスター&グッズの数々でした。
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というのも、上海の街角に「自由」や「民主」ということばがあふれていたからです。

市政府だけでなく、各区がそれぞれ趣向を凝らした広報ポスターをつくって、街に貼り出しているのです。

まず黄浦区から。
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興味深いのは、「自由」「平等」「公正」「「法治」などのことばについて、すべて中国の古典からの出典先を添えて説明していることです。これらはもともと中国出自の概念であると言いたいのでしょう。
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中国の切り絵をデザイン化したしゃれたものもあります。ただし、メッセージは「愛国」。いくらデザイン性が高くても、この手のストレートなナショナリズムの表出に対しては心理的抵抗を感じざるを得ません。
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たいてい再開発から取り残された古い住宅街に貼られています。現代的な高層マンションやショッピングモール、インテリジェントビルの多い地区にはあまり見られません。
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これは人民公園の中に置かれていたものです。公園を散歩していて、いきなり「法治」といわれても…。
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これは外灘でいま再開発が進む円明園通りで見かけたポスターです。メッセージはおなじみの「中国夢」。場所は元英国大使館の跡地にできたザ・ペニンシュラ上海の裏手で、1930年代当時の租界建築を再生し、高級なショッピングストリートにつくり変えようとしています。

オリジナル度の高い黄浦区に対して、徐匯区は中国政府がつくった天津名物の泥人形を使ったポスターを適当にアレンジして使っているようです。
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紅口区では、「自由」「平等」「公正」「「法治」という文字の踊るこのポスターが印象的でした。
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これは中央宣伝部が制作したもののようで、いろんなパターンがあります。版画や彩墨画(水墨画のタッチで描く水彩画)を使っているのが特徴です。
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これは市内の工事現場に残っていた古いタイプのポスターですが、数年前までは中央宣伝部がつくるポスターはこうした革命イメージを喚起するものが主流でした。習近平政権になって「中国夢」を謳い出したとたん、ビジュアルイメージが大きく変わっています。
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これは豫園近くの住宅地の広報ポスターで、上海市反邪教協会による法輪功に代表される宗教団体の活動の禁止を呼び掛ける内容になっています。
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いろいろ見てきましたが、今回ぼくがいちばん驚いたのが、冒頭に挙げた崇明県(島)のフェリー乗り場で見かけた投票による選挙をイラスト化したポスターです。崇明県(島)は上海の北、長江の中州にあたる中国で2番目に大きな島です。いまは橋が架かっていますが、市内との交通は現在もフェリーがよく使われます。

もともと「富強」「民主」「文明」「和諧」などのキーワードごとに子供を使ったイラストがあしらわれたポスターでした。
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でも、外国人がこれを見たら、いつから中国では投票による選挙が始まったのか? そう思うでしょう。もちろん、地方自治レベルでは一部で始まっているという話は聞きますが、投票風景の様子が広くメディアで紹介されたのを見たことがないせいか、いったいこれは何を言わんとしているのか。未来はこうなる、ということなのか?

ふつうに考えたら、この図柄は選挙による投票を推進する目的のように思われるからです。日本でいうところの「選挙に行きましょう」というメッセージが込められていると理解したくなります。上海市内の広報ポスターでは「民主」ということばは盛んに使われていますが、伝えようとしているのは、ここまで明確なものではありません。それとも、崇明県(島)ではすでに地方自治の選挙が実施されているということなのでしょうか(あとで調べてみたいと思います)。

いずれにせよ、いまの上海でこれらのことばが街にあふれていることをどう理解したらいいのか。こういう質問を上海人にするとたいてい嫌がるので、無理に聞こうとは思いませんでしたが、明らかに胡錦濤政権時代に比べると、一般的な意味での「自由」や「民主」は後退していることが周知されているなかで、なんともいじましい気がしてなりませんでした。汚職退治による権力闘争を終わらせ、政権運営が安定するまでは、「自由」や「民主」は待てというのなら、わかるのですが。まあそんな正直な姿勢を中国の為政者が見せるわけもないか。

でも、なんでこんなことするのかなあ……。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-29 13:57 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2015年 03月 17日

中国のダンス(広場舞)おばさんと改革開放30年の人生に関する考察

今朝の朝日新聞の「国際」欄に以下の記事が掲載されていました。
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中国の広場舞、騒音深刻 夜にダンス、住民とトラブル
http://www.asahi.com/articles/ASH3J5D82H3JUHBI01L.html

「中国の中高年女性の間で、楽しみながら健康づくりができるとして人気を集める「広場舞(広場ダンス)」が、社会問題になっている。毎晩のように音響機器を持ち込んで踊りまくる女性たちと、騒音に悩まされる近隣住民とのトラブルが絶えないのだ。話し合いでは解決できず、規制条例を定める動きまで出始めた」(朝日新聞2015年3月17日)

同紙によると、広場舞とはこういうものです。

「中国各地の公園や広場で音楽に合わせて踊るダンスの総称。健康維持やダイエットを気にする中高年女性の間で絶大な人気がある。特に決まった形式はなく、農村に伝わる伝統的な踊りから、社交ダンスやジャズダンス、少数民族風のものまで様々で、個人が好みのグループに入って踊る。参加費用は無料か少額。由来は諸説あるが、1980年代以降に各地で広場が整備されるようになり、広まったとも言われている」。

中国に住んでいる人、最近行ったことのある人なら、公園や広場で興じられる一群のダンスおばさんたちの姿を一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。ぼくは、中国の東北三省でしか見たことはありませんでしたが、どうやらそんなローカルな流行ではなく、全国的な規模で繰り広げられているのが、おばさんたちの広場舞のようです。
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これは中国黒龍江省牡丹江市にある江浜公園で見かけた広場舞のグループです。
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なんだかかわいくないですか。おばさんたちがスカートを翻し、真剣に踊っている姿は微笑ましくさえあり、これを怒鳴りつける輩の気持ちは理解できません。
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踊っているのは30~60代の女性ですが、たまにおじさんや子供が交じっていることもあります。たいていは「仕事や家事を終えて、家で夕飯を食べた後に集まってくる」ということで、夕暮れどきに出くわすことが確かに多いですが、実際には昼間から楽しんでいるグループもよく見かけます。
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広場には、1938年に満州国の軍隊に抵抗して追い詰められ、牡丹江に身を投じたとされる若い女性たちの像(八女投江記念像)が立っています。その先には、牡丹江がのどかに流れています。
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こちらは同じく黒龍江省綏芬河の広場です。ここはロシアとの国境のまちで、ロシア語の看板があふれています。特注でコスプレ風の衣装を揃えているように、かなり気合が入っています。どのグループにもリーダーがいて、音楽の選曲はもちろん、自ら習得したダンスをみんなに教えるそうです。全国各地にカリスマ的な師匠がいて、たいていどのリーダーもその師匠に踊りを習いに行き、ひととおりマスターしたら、地元に戻って仲間に教えるといいます。各地でコンクールもあって、みんなで精進し合うようです。いってみれば、中国おばさん版「ダンス甲子園」のような世界なのです。
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暇に飽かせて撮った動画もこのさい載せてしまいましょう。

黒龍江省牡丹江 江浜公園の広場舞(2014.7)
http://youtu.be/FdnhLssfSIc

黒龍江省綏芬河 中心広場の広場舞 昼間(2014.7)
http://youtu.be/alQOh-8AUvw

黒龍江省綏芬河 中心広場の広場舞 夕方(2014.7)
http://youtu.be/FDF6nLVH2Cs

それにしても、この朝日の記事、反日姿勢を隠さなくなったいまの中国(の為政者といっておきましょう)を好意的に見ることが難しくなった昨今、中国の民間事情を理解するネタとして繰り出された苦肉の策のはずだった、という気がしないでもありません。中国に駐在している者なら誰でも知っているであろう広場舞を、いつか記事にしたいと考えていたのでしょうけれど、そんなほのぼのしたネタでは東京のデスクに取り上げてもらえそうもない。

ところが、このところ各地で「近隣とのトラブル多発」し、「社会問題」が顕在化してきた。「おばさんたちが踊っている最中に何者かによってパチンコ玉を撃ち込まれた」り、「北京では2013年8月、苦情を聞き入れられなかった56歳の住民が激怒。不法所持していた猟銃を持ち出して空に向かって威嚇射撃した上、踊っている人たちに向かって飼っていたチベット犬を放ち、刑事事件に発展」という、何やら物騒な話になってきたことで、この記事はようやく取り上げられるに至ったのではないか。

海外の3面記事にすぎないネタを日本の全国紙の「国際版」で取り上げるには、それ相応の理由が求められるのでしょう。同紙は「広場舞」問題の背景として中国の大学教授の以下のコメントを採りあげ、こう解説しています。

「広場舞のグループと周辺住民の対立の背景には、急速な都市化のひずみがある。中国では、都市部の住宅問題は解消しつつあるが、公共スペースが圧倒的に不足している。みんなで余暇を楽しむことも必要なのに、開発業者が町づくりを主導する現状では、住宅以外は商業施設しかない状態だ。住民は広場や公園に行ってダンスや歌を楽しむしかない。

双方で話し合い、音量を絞ったり、時間を限ったりという取り決めをすることもある程度は有効だが、根本的な解決にはならない。政府が都市計画の中で、みんなでサークル活動を楽しめる公共の場所を設けていくことが必要だ。こうした場所がない既存のコミュニティーでも、政府が一定のスペースを買い取って住民に提供する方法もある。

いきなり罰金を科すようなやり方は解決にはつながらないだろう。庶民にだって自由に歌ったり、踊ったりする権利はある。強制的な手段は、そういう場所を提供し、ふさわしい規則を設けた上で実施すべきだ」(「急速な都市化のひずみ 背景」中国人民大学公共管理学院 楊宏山教授(公共政策))

まあそりゃそういうもんでしょうけれど、これではよくある紋切り型の現代中国批評にすぎない気がします。確かに、日本であれば、この世代のおばさんたちは近所のジムに通ってエアロビクスをやっていることでしょう。一方、中国では庶民が手ごろな料金で利用できるジムなどの施設が普及していない。あるとしても、その手の施設は日本よりはるかに高額な会員制しかない。だから、「政府が一定のスペースを買い取って住民に提供」すべき、というような話になるのかもしれません。でも、「ひずみ」だなんていまさらそんなこと、これに限らず社会のあらゆる面で見られるのが中国です。

ぼくはダンスおばさん軍団を横目で見ながら、心の中でこうつぶやいていました。「なんでみんな踊りたいのだろう? きっと太極拳は古臭くてやりたくなかったんだな。やっぱりみんなが見ている広場で踊るんだから、おしゃれもしたいんじゃないかな…」。

いまでも中国では早朝に太極拳を楽しむおじいさん、おばあさんの姿を見かけますが、すでに広場の主役はダンスおばさんです。広場をめぐる世代交代はほぼ完了しているのです。

なにしろこの世代、中国の年代別人口構成の最大ボリュームゾーン。幼少期から青年期にかけては文化大革命のさなかで、社会主義と改革開放30年を生きてきた人たちです。紅衛兵世代といってもいい年代も含まれています。

また一方で、ダンスおばさんたちを見ていると、安い団体ツアーで日本にやって来る、あの“爆買い”中国人に似ているように思えてきます。実際、この世代の誰でも日本に来られるわけではありませんが、訪日団体客のメイン層であることは確か。

広場舞は、海外旅行に出かけられるほど豊かになった改革開放後の30年を生きてきた中国人にとって自分たちの人生とは何だったのか、という問いを改めて考えるうえで格好の題材のように思います。

この点について、中国でどのような議論がなされているのか、百度などで検索してみるのですが、基本的にネット世代をメインの読者とするせいか、もうひとつよくわかりません。いっそのこと、「ダンスおばさん100人に聞きました」的なインタビューを試みてみるのも面白いかもしれません。この30年間、彼女たちは何を考え、どう生きてきたのか。それぞれの個人ヒストリーを聞いたら、何を語り出すのでしょうか。こういうアプローチは、まさに中国のドキュメンタリー映像作家たちの得意とするところでしょう。

リアルチャイナ:中国独立映画
http://inbound.exblog.jp/i29/

少なくとも、前述の朝日の記事のように、大学の先生が上から目線で「庶民の権利」や政府の役割を論じている限りでは、中国庶民の実像には迫れないように思われます。中国が深刻な問題を抱えていないのでなければ納得しないというような姿勢、あるいは書きぶり。まあ気持ちはわからないではないですが、中国の市井の人たちがいま自分たちの人生や社会をどう認識しているのか。それが肯定であれ否定であれ、その心情をじっくり探ってみることは今日の中国理解にとって重要だと思います。

それに、この広場舞、ダンスおばさんに代わる世代交代も始まろうとしています。

彼女たちの子ども世代の「広場舞」はこうです。これも場所は牡丹江。中国の片田舎ですが、明らかにダンスおばさんとは目指すもの、ダンスに賭ける思いは違うようです。

中国「四線」級地方都市の夏の風物詩、広場に繰り出す若者たち(黒龍江省牡丹江市)
http://inbound.exblog.jp/23931622/

そもそも中国のおばさんや若者は、なぜ広場で踊るのか? どんな欲望にかられ、何を表現しようとしているのか? 彼女らのダンスに込められている何かは、いまの中国の庶民の内面が映し出されているに違いないという意味で、広場舞は研究に値する現象だと思います。

「社会問題」化されているという中国のおばさんたちのささやかな楽しみが今後どうなっていくのか。いつか彼女たちに話を聞いてみたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-03-17 10:43 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2014年 10月 16日

香港デモ雑感~今ほど日本のリベラル派と中国人の本音が隔たっている時代はない

昨今の香港のデモを見ていると、やりきれない思いがしますが、こうした状況をもたらした中国政府に対するわだかまりや義憤を感じる人たちが日本にもそれなりにいるようです。日本のリベラル派と目されている人たちの一部がこの問題に関心を持とうするのは理解できます。

たとえば、乙武洋匡さんもそのひとり。報道によると、彼はデモに参加する香港の若い世代のメッセージや本音をきちんと伝えるべきだと主張しているようです。

香港デモを訪れて
http://www.huffingtonpost.jp/hirotada-ototake/umbrella-revolution_b_5943106.html
乙武氏が香港でデモ応援 「学生側は一貫して平和的」と擁護 (大紀元)
http://www.epochtimes.jp/jp/2014/10/html/d93232.html

日本のメディアのような配慮のない在外中国メディア(大紀元)の生々しい乙武さんの写真が印象的です。

9月下旬、香港で前倒しのデモが始まったとき、誰もが「六四天安門事件」みたいなことが起こらなければいいが、と思ったことでしょう。と同時に、「六四天安門事件」のとき、香港市民はあれほど北京市民を応援したのだから、大陸側にも、もっと香港の若者たちを支持する動きがあってもいいのではないか。いろいろ事情があるのはわかるけれど、いまのままでは北京市民はひどすぎるんじゃないの!?  香港デモを支援しようとして政府に拘束された数十人の人たちを除くと、ここまで中国大陸人が冷淡なのはあんまりじゃないかと思います。

でも、こういう感覚を持つことは、いまでは中国大陸人に対する一種の挑発にしかなりません。時代は大きく変わってしまったのです。

今後のデモの推移は、事前に多くの人たちが想定したように、徐々に収縮に向かっていくことでしょう。香港の学生さんたちは、再起を胸に秘めて引き際をわきまえたほうが賢明でしょう。ずるずる続けるより、引くべきときはさっと引き、必要な時期には何度でも繰り出せるようにしたほうが効果的だと思うのです。彼らの意思は十分世界に広まったからです(もちろん、そんなの素人に簡単にできることではないのでしょうけれど)。

それに、なにしろ六四の時代とは違って、中国政府は香港に大陸人を動員させ、さまざまなネガティブキャンペーンを行いました。黒社会を活用した暴力による抑圧もそうです。しかし、これは今日も、そして昨日も明日も中国では日常的に起きることです。そういう同じことが香港でも起きたということが、すでに香港が中国の一部になっていることを証明しています。

こういう状況を見ながら、ひとりの日本人として思うのは、香港の若い世代が受けた教育というのは、我々に近いものなんだなあ、という実感です。明らかに大陸から来た留学生とは違う。日本に近い教育を受けた香港の若い世代にとって、今日の中国が土足で踏み込んでくることには耐え切れないであろうことも、日本人ならよく理解できます。

さて、心情的にはまったくそう思うのですが、あらためて考えなければならないのは、コトの舞台はいまや中国の一部となった香港だということでしょう。もう一方の当時者である中国大陸人たちの本音にも耳を傾ける必要があります。

昨日、ひとりの在日広東人の友人とこのテーマで話をしました。広東人というのは、面白いもので、北京や上海を中心とした中国大陸人の感覚とは少し違う観点からモノを考える傾向があります。

彼は言います。「今回の香港のデモをめぐって大陸の人間が何を考えているかについて、ぼくの意見はこうです。

なぜ大陸の人間はこれほど香港のデモに冷淡なのか。それは政府のメディア規制や監視のせいでもあるけれど、多くの大陸人の胸の内には、これまでずっと偉そうにしていた香港に仕返ししているという思いがあるんです」

えっ、それはどういうことですか…。

「かつて香港と中国の経済格差が大きかった時代、香港人は大陸人を明らかに見下していた。でも、いまや経済力は大陸がはるかに上回っている。それなのに、中国に反旗を翻すとはどういうつもりだ。今回のデモの失敗で香港人も現実を思い知るだろう、そんな風に思っているんです」

う~ん、そういうことか……。でも、それは思い当たる節があります。1980年代から90年代にかけて、中国では香港が憧れのまちでした。当時よく言われたのが、北京のテレビ局のアナウンサーやタレントたちが香港っぽいファッションや言い回しを好んで使っていたという話。それがカッコいいことだったからです。その一方、当時香港人が大陸人を見下す光景をよく見かけたものです。その露骨な態度にぼくは義憤を覚えて、よせばいいのに香港人と口論になったことさえあったことを思い出しました。

そう話すと、彼はきょとんとして、「なぜ日本人のあなたが? 中国人のために?」と怪訝な顔つきになったので、「目の前で人が人を差別していることにぼくは耐えられない人間なので、黙っていられないんだよ」とコトの経緯を説明すると、「日本人らしいですね」と笑いながらこう言いました。

「でもね、北方の中国人と広東人では少し感じ方も違うと思います。香港の言葉がわからない北方人と違い、広東人は香港といまや一体化している面がありますから、そこまで露骨に仕返しとは考えていないと思う。ただ最近の共産党は締め付けが厳しくなっているのは確かなので、下手に口出しして自分を窮地に陥れることは避けたいと考えるでしょう」

彼はこんなことも言います。「いまの中国政府がよく使うことばに“話語権”があります。要するに、世界は自分たちをもっと認めるべきだ。でも、そういう気持ちが強すぎて、結果的に国際社会で嫌われている」とも。

“話語権”というのは、2000年代半ば頃から中国政府の公式文書等に頻繁に使われるようになったことばで、日本語でいうと「発言権」という意味に近いけれど、そこにはより強い意志が潜んでいそうです。大国となった中国は、外交や経済交渉の舞台で自らの主張を押し通す権利があり、それを推進していかなければならない、という強い確信に基づくものです。数年前に退任された青山学院大学の高木誠一郎先生の最終講義「中国外交の新局面: 国際「話語権」の追及」の中で一部、その中身が検証されています。中国の外交姿勢の転換は2009年から始まったとする専門家の分析もあり、何事も自分たちの思い通りに押し通さなければ気がすまない、といういまの中国の対外的な姿勢やふるまいは、彼らが自覚的に推し進めているものです。

今回のデモをめぐって「これから中国も香港の民主化の道を取り入れて、我々と同じ価値観を共有できる国になることを望む」というような紋切り型のコメントを安易に口にする人が日本にけっこういることが気がかりです。その点で、今ほど日本のリベラル派と中国人の本音が隔たっている時代はない、と感じます。いや、もうそれはリベラル派に限った話ではないかもしれません。そういう人たちは、えてして香港を単純に同情し、中国を敵視する心情に陥りがちです。最近の中国のふるまいからすれば無理もないかもしませんが、彼らがそうなる背景には、一筋縄ではいかない彼らなりの事情をあることを知っておくことは必要です。そのうえで、言うべきことは言う、であるべきでしょう。その方が実際、彼らと議論するには有効です。

いずれにせよ、中国の側に、香港に対する同情はほとんどないこと。むしろ冷笑にも似た感情が潜んでいるというのは、今後の中国のふるまいを予測するうえでも、よく考えておかなければならないことだと思います。

それとはまた別の意味ですが、今日アップされた日経ビジネスの以下の記事は、香港の「反デモ隊」の若者にインタビューしている点で面白いと思いました。

香港騒乱で「デモ潰し」に参加する若者は何を思うのか
学生と若者と、蔑視と憎悪の応酬
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141015/272568

「社会の厳しさを知らない学生に、俺たち(反デモ隊)のような底辺の労働者の気持ちがわかるか」とマイクを向けると彼らは言うわけです。デモ学生たちに対する大陸の中国人とはまた異なる強い違和感が発せられています。デモをめぐる当事者たちの思いはさまざまなのです。

また以下は上海在住の姫田小夏さんというジャーナリストによる香港デモに関するレポートです。

上海エリートの目に
香港の民主化デモはどう映るのか
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41978

ここでは、上海の若い世代がデモに参加する香港の同世代に対してこう考えていると指摘しています。

「香港の学生たちの主張は「真の普通選挙の実現」である。しかしそんな抗議活動を、若い上海人エリートたちは「馬鹿げたことを」程度にしか思っていない。」

「「無邪気」に加えて「幼稚すぎだろ」「笑わせる」とさえ言う者もいる。その理由は明確で、「中央政府がそんなことを認めるはずはない」と確信しているからだ。」

やっぱり、でしたね。

さて、広東人の友人とそんな話をしたあと、彼はある在日中国人を紹介してくれました。その人物は、先頃中国政府の迫害から逃れて来日した中国人風刺漫画家“変態辣椒”こと、王立銘さん(41)です。

“変態辣椒”作品
http://biantailajiao.in/

彼は習近平をおちょくる風刺漫画をたくさん描いていて、中国にもこんな人物がいるのだなと、ほんの少しばかり我々をホッとさせてくれます。内容については、それこそ中国のニュースに日夜触れていないとすぐには理解できない作品も多いですが、こういうまっすぐな権力に抗する視線こそ、本来の中国人らしいものだと思います。ちなみに以下の作品は、習近平が総書記に就任した2012年11月の最初の演説で「中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現しよう」と述べた内容をからかっています。PM2.5で汚染された濃霧が「中国の夢」を覆い尽くしてしまいそうな現実に習はどう立ち向かうのか? 
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こういう政府に対する批判が大陸からほとんど表に出てこないといういまの状況はやっぱり異常です。デモが収束し、ほとぼりが冷めれば、少し変わってほしものです。広東人の彼も、中国人は黙っているばかりではないという思いで、王さんのことを教えてくれたのかもしれません。今度、彼は王さんと会うそうなので、紹介してもらうつもりです。

【追記】
この記事アップした翌朝(10月17日)の朝日の朝刊に王さんの記事が載っていました。

中国の漫画家、日本に滞在延長求める 風刺で批判浴び
http://www.asahi.com/articles/ASGBG5HKNGBGUHBI01N.html?iref=comtop_6_02

北京発のこの記事では、以下のような王さんの境遇を伝えています。

 「中国版ツイッター」の微博などで漫画を発表しつつ、食品のネット販売で生計を立てていた王氏は5月、日本製品の販売に向けたリサーチで来日。ところが8月、自身の微博アカウントが突然、封鎖された。

 その後、共産党機関紙人民日報傘下のサイトが王氏を「媚日」「売国奴」などと批判し、関係部門に「法に基づく調査」を求める文章を掲載。王氏が目にした日本人の礼節や日本の平和主義などについて好意的な感想をネットでつぶやいたことも批判された。

たぶん来週あたり、ぼくは都内で彼に会うことになりそうです。
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by sanyo-kansatu | 2014-10-16 16:06 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)