ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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カテゴリ:気まぐれインバウンドNews( 105 )


2017年 09月 22日

中国はついに日本への渡航制限を始めるのか?

今週、日本政府観光局(JNTO)による8月の訪日外国客数が公表されました。

訪日外客数(2017 年8 月推計値)
◇ 8 月 : 前年同月比20.9%増の247 万8 千人
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/170920_monthly.pdf

トップは中国で「前年同月比21.1%増の81万9,700人」で過去最高となっています。今年上半期、韓国が一時中国を追い抜いていた時期もありましたが、夏休みの家族旅行が多かったこと、クルーズ客船の寄航数が相変わらず伸びていることなどから、1~8月までですでに488万2200人となっています。この調子でいけば、年間800万人に近い数になりそうな勢いです。

日本を訪れる韓国人観光客が中国客を追い抜く勢いで増えています (2017年 03月 16日)
http://inbound.exblog.jp/26722251/

ところが、昨日TBSは中国政府が日本への渡航制限を通達したと報じています。

中国当局、旅行会社に日本行き観光ツアー制限を通達(TBS News2017.9.21)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3164671.html

中国当局が今月中旬、北京などの旅行会社に対し、日本行きの観光ツアーを制限するよう通達を出したことがJNNの取材でわかりました。

関係者によりますと、当局からの通達の内容は地域によって異なっていて、首都・北京では一部の旅行会社に対して今月中旬、「日本への団体旅行を減らすよう」口頭で通達があったということです。山東省や大連市などでは、各旅行会社に今年1年間に許可する具体的な人数の割り当てが伝えられていて、すでに割り当て分を販売したとして、日本向けのツアーの受付をストップする会社も出始めています。

「当局から通達がありました。『(日本への)団体ツアーを停止せよ』と。数日前から販売を停止しています。(通達の)理由は分かりません」(山東省の旅行会社)

制限の理由は明らかにされていませんが、資本の海外流出を食い止めるための措置との見方が出ています。中国は10月1日から建国記念日の大型連休で、日本への航空便もほぼ満席状態ですが、年間600万人を超える中国からの観光客のおよそ4割が団体客で、今後、影響は避けられないものとみられます。


これは中国政府が昨年以降台湾に、そして今年韓国に仕かけた渡航制限を日本に対しても実施するということを意味します。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです (2016年 11月 10日 )
http://inbound.exblog.jp/26367228/

その後、台湾や韓国を訪れる中国客が大きく減ったことはすでに知られています。

もちろん、ここでいう渡航制限は旅行会社を通じて予約する団体ツアーに対するものなので、現状6割を占める個人客への縛りはないのですが、リーダーが世界に対して「自由貿易の推進」と「保護貿易への反対」の姿勢を公言した国とはとても思えないふるまいです。

【ダボス会議】中国が自由経済圏の救世主という不条理(Newsweek2017.1.18)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/01/post-6754.php

中国の場合、常に自らの外交や政治目標を押し通すためにこの種の渡航制限を行うわけですが、韓国に実施する際、実に嫌な混乱もありました。

中国クルーズ船乗客の済州島の下船拒否には呆れたが、今後困るのは中韓双方の民間業者(日本への影響 も) (2017年 03月 24日)
http://inbound.exblog.jp/26740314/

周辺国との友好や民間人の交流をぶち壊しにしてまで押し通さなければならない中国政府のやり方は、実に哀れといえます。

しかし、いまの中国、ますますおかしなことが起こり始めています。これも昨日のニュースです。

ヤフージャパン、中国で検索不能に=規制強化、在留邦人に戸惑い(時事通信2017.9,21)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017092101030&g=eco

【上海時事】上海や北京など中国各地で、19日ごろから「ヤフージャパン」の検索サービスが利用できなくなり、現地に住む日本人の間で戸惑いが広がっている。

中国ではグーグルの検索サービスが使用できないため、多くの日本人がヤフージャパンを使っており、駐在員の間では「仕事に支障を来しかねない」と不安の声も聞かれる。

中国当局は今年6月、「ネット空間の主権と安全保障の確保」を目的に、インターネット安全法を施行。10月の共産党大会を控え、ネット規制を強化している。

当局の規制をかいくぐり、海外の情報にアクセスする手段として多くの日本人が利用する「仮想プライベートネットワーク(VPN)」も非常につながりにくい状況。

一方、ヤフーニュースの閲覧には、今のところ問題は生じていない。

ヤフージャパン広報は取材に対し「中国でサービスが利用できなくなったことは把握しているが、当社のトラブルが原因ではない。状況の推移を見守っていきたい」と回答した。


こんな報道もあります。

S&P、中国格下げ=債務の伸びを不安視(時事通信2017.9,21)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017092101284&g=int

【北京時事】米格付け大手S&Pグローバル・レーティングは21日、中国の長期信用格付けを上から4番目の「AAマイナス」から「Aプラス」に1段階引き下げた。5年に1度の共産党大会を1カ月後に控える習近平指導部の反発も予想される。

S&Pは格下げの理由として、長期にわたる融資の伸びで債務が増大したことを挙げた。融資拡大が力強い経済成長を支えてきたとしながらも、「それによって経済と金融のリスクが高まっている」と不安視した。


まもなく10月の中国の国慶節休みが始まります。直近での影響はないかもしれませんが、数字の上では過去最高を重ねている訪日中国客、伸びはここ数年に比べて大きく減速しているのも確かです(今年1~8月の前年同期比は1桁の8.9%)。

今年春、中国政府は「日本は放射能汚染で危険」との広報活動や「APAホテル」問題など、あの手この手で自国民の日本旅行に影響を与えようとしましたが、今後同じようなことを始めるかもしれません。

日本が危ない!? 福島原発の放射能フェイクニュースが拡散中(Newsweek2017年02月20日)
http://www.newsweekjapan.jp/lee/2017/02/post-17.php
アパホテルとデモ騒動、これじゃ中国の為政者に踊らされすぎです (2017年 02月 08日 )
http://inbound.exblog.jp/26616851/

来春以降の影響が気になります。
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by sanyo-kansatu | 2017-09-22 07:28 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 09月 08日

北海道の女性失踪事件からわかる中国人のまったく新しい日本旅行の姿

先月末、北海道でとても残念なニュースがありました。
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釧路の海岸に女性遺体 先月から不明の中国人教師か(TV Asahi2017/08/27 17:30)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000108641.html

北海道釧路市の海岸で27日朝、女性の遺体が発見されました。この女性は先月から行方不明になっている中国人の危秋潔さん(26)の可能性があります。危さんは先月、北海道の札幌市や阿寒湖温泉を訪れました。その後、JR釧路駅の近くで危さんとみられる女性が確認されたのを最後に行方が分かっていませんでした。

午前6時ごろ、釧路市の砂浜で女性の遺体が打ち上げられているのを近くを歩いていた男性が発見しました。警察は遺体の衣服の特徴から、先月に北海道内を観光中に行方が分からなくなった中国人女性の危さんの可能性があるとみて、身元の確認を急いでいます。

遺体を発見した男性:「(Q.遺体はどこにあったか?)ここに寝てる状態だった。女の子だとすぐ分かった、服装を見て。若い服装だった。びっくりした」

危さんは先月22日に札幌市内のゲストハウスを出た後、阿寒湖温泉のホテルに泊まり、先月23日の正午すぎ、JR釧路駅の近くの防犯カメラに危さんとみられる姿が映っていたのを最後に足取りが分からなくなっていました。


テレビのワイドショーでも報じられたこのニュース。番組を見ながら、以下のような疑問をおぼえた人もいるかもしれません。

なぜ中国の若い女性がひとり旅? 
卒業旅行? なぜ7月? 26歳で卒業? 
彼女はゲストハウスに泊まっていた? 
そもそもなぜ彼女は北海道に行ったのか? 

これらの問いを通じて見えてくるのは、中国人の日本旅行が以前とはまったく変わったものになりつつあるということです。

そうなんです。以前のようなバスに乗って団体で免税店を押し寄せるというような弾丸旅行はもう過去のものになりつつあるということです。

もちろん、中国の地方都市から来る団体ツアーはなくなったわけではありませんから、一部従来型の旅行を残しながら、全体的にみると、個人化、リピーター化が進んでいるということです。福建省出身の彼女は、新しい中国人の日本旅行のスタイルそのものだったのです。

では、先ほどの問いに答えていきましょう。

なぜ中国の若い女性がひとり旅? 

実はもうこれは5~6年以上前から中国では起きているブームのひとつなんです。以下の記事は4年前に書いたものですが、ぼくが北京のブックカフェで偶然見かけた「独立女生旅行分享会(女の子のひとり旅オフ会)」という集まりについて書いた一文です。

日本の1980年代を思い起こさせる中国のバックパッカーブーム(2013年04月27日)
http://inbound.exblog.jp/20348104/

その集まりでは、大学を1年間休学して北欧をヒッチハイクしながらひとり旅した22歳の女性の書いた紀行本『我就是想停下来,看看这个世界 』の著者である陈宇欣さんと、自らも70リットルのザックを担いで旅するカルチャー雑誌『OUT』の女性編集者の座談会がありました。

なにしろ中国のこの世代はほぼ一人っ子ですから、若い女性がひとりで旅に出るというのは自然のことだったのです。といっても、日本をひとり旅できるような若者は、大都市部の恵まれた階層に限られることは確かです。

今回の彼女の旅行が卒業旅行だったというけれど、なぜ7月? 26歳で卒業?

これについては、中国の卒業シーズンは6月で、7月~8月は夏休みだからです。

そして、彼女は大学院まで修了した高学歴の女性です。今日の中国では大卒の半分くらいしか就職できないという日本では信じられない状況で、恵まれた家庭の子弟は、よりよい就職先を目指して大学院まで進みます。彼女は卒業後、教師になるはずでした。

以下の中国のネット記事は、今年中国で卒業旅行が大きな話題になっているというものです。

2017毕业旅行报告发布:高中生更愿意与家人出游(人民網2017年06月15日)
http://yuqing.people.com.cn/n1/2017/0615/c394872-29341564.html

なにしろ85.6%もの卒業生が旅行に出かける計画があるというのですから。

この記事は「蚂蜂窝」という中国の若者に人気のオンライン旅行サイト大手の調査によるもので、旅行日数は7~9日というのが最大だとか、1人あたりの予算は2000~4000元が一般的だが、なかには8000元(約13万円)以上という人も15.6%いるとか、いろいろ報告しています。
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旅行の内容も、かつてのビンボー旅行スタイルから、個性的な旅を志向する傾向が強まり、民泊を利用し、数名で泊まるのが最も人気で、一般のホテルやゲストハウスを利用するより多いのだそうです。

前述の質問に戻ると、ではなぜ彼女はゲストハウスに泊まっていたか? ということですが、卒業生の大半が旅行に出かけるといっても、クラスの誰もが海外旅行を選べるというわけではありません。日本旅行の場合も、なるべく宿泊コストを抑えるために、彼女はゲストハウスを利用していたのだと考えられます。

なぜなら、中国国内ではゲストハウスはすでに若者の宿として一般化しているからです。たいていの都市、特に雲南省や四川省などの観光地に恵まれた都市にはたくさんのゲストハウスができています。ぼくもいくつか利用したことがありますが、基本的にこの世界は万国共通です。

ハルビンの「中華バロック」文化街が面白い(2016年12月23日)
http://inbound.exblog.jp/26496822/

女性のひとり旅もそうですが、中国では2000年代初め頃から若者の間でバックパッカーブームが起きていたのです。その頃は、まだ海外に行く人は少なくて、中国国内のバックパッカー旅が主流でした。中国にはチベットや雲南省、シルクロードなど、冒険心あふれる若者が旅立ちたくなる場所がたくさんあるからです。

2010年に中国人の日本への個人旅行が解禁され、15年1月にビザが大きく緩和されたことから、中国の若い世代がバックパッカーとして日本を旅行に訪れるようになっていたのです。

すでにアジア系のバックパッカーとしては、台湾や香港、タイ、マレーシア、シンガポールなどの人たちがいたので、ちょっと遅れて中国の若者もその流れに加わったのでした。

さて、最後の質問。なぜ彼女は北海道に旅立ったのか? 

それは一部メディアでも指摘していましたが、2008年の中国の大ヒット映画『非誠勿擾』の舞台が北海道で、彼女はその風景に惹かれて旅先を決めたようです。

とても痛ましい結末を迎えた事件でしたが、彼女の存在は、ひとりで日本を旅している中国の若い女性が増えていることを私たちに教えてくれます。

最後に、危秋潔さんとそのご家族のみなさまに、心よりお悔やみ申し上げます。

【参考】
中国の新人類は日本の青空に魅せられている
http://inbound.exblog.jp/24302307/

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by sanyo-kansatu | 2017-09-08 08:57 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 09月 05日

日本はナイトエンタメの魅力に欠ける国? 飲み屋はいっぱいあっても、それだけでは訪日客は満足しない

日本は夜を楽しく過ごすエンターテインメントが乏しい国だといわれて久しいものがあります。

居酒屋やバーはたくさんあるので、日本人としてはそんなに困っていなかったと思いますが、外国から来た旅行者にしてみれば、夜もめいっぱい楽しみたい。それは自分が海外旅行したときのことを思い出せば、気持ちもわかるというものでしょう。

昔メキシコのバハカリフォルニアのカボサンルーカスに行ったとき、現地の少し日本語のわかるガイドに、食事の後、「どこか行きたいですか?」と聞かれたときのこと。ぼくは大きな間違いをしてしまいました。

というのも、カボサンルーカスはアメリカ西海岸の人たちの最も近くて気軽に行けるリゾートなので、高校生くらいの若者たち、いや悪ガキどもがいっぱい押し寄せていて、当時はレストランやクラブのテーブルの上に女の子たちが上って踊りまくるというのが流行していたのです。だから、こっちは落ち着いて食事もできません。

それでぼくはガイドに「もっとアダルトな店がいいな」と言ってしまったのでした。目の前の女の子たちの騒ぎっぷりから、つい…。

そして、連れて行かれたのは、いわゆるストリップバーでした。

いや、そういうのじゃなくて…。同行したカメラマンのSくんも大笑いで「アダルトだなんて言うからだよ」。おっしゃるとおり。和製英語化している英語を不用意に使うのはいけませんね。で、すぐに店を出たのでした。

ちょっと前ふりが長かったですけど、要するに、日本でナイトエンターテインメントを楽しもうとするとき、お酒とともにお色気方面もたっぷりあると思いますが、家族で旅行しているお父さんがひとり抜け出してというわけにもいきませんから、もっと健全とはいいませんが、みんなで明るく楽しめるエンタメが確かに求められているのです。その意味で、歌舞伎町のロボットレストランは出し物がちょっときわどいところもあるのですが、いまでもそこそこにぎわっているようです。

歌舞伎町の「ロボットレストラン」はなぜ外国客であふれているのか? (2013年11月15日)
http://inbound.exblog.jp/21470518/

さて、今日の朝刊にこんな記事がありました。

訪日客、夜も観光しまショー 歌舞伎やエイサー、通訳・解説付き 消費増、政府も後押し(朝日新聞2017年9月5日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S13117493.html

訪日外国人による消費が伸び悩む中、その一因ともされる夜の娯楽不足を改善しようとする動きが広がってきた。演劇や舞台を催し、伝統芸能を採り入れたり、同時通訳を付けたりと工夫をこらす。政府も観光資源づくりの後押しに乗り出す。

4日午後7時半、東京都港区の東京タワー近くにある結婚式場で「歌舞伎ディナーログイン前の続きショー」が始まった。くま取りをした出演者が「今日は歌舞伎の楽しみ方を教えます。私のような赤いくま取りの人はヒーローのあかし。青は悪役です」と英語で解説した。

歌舞伎の演目をアレンジしたショーや殺陣を見ながらの夕食は、約1時間半で1万9千円。この日が初開催で、旅行業界の関係者らを招待した。運営する観光コンサルタント会社アリュウコーポレーション(東京)の奥村謙一社長は「まずは知名度を上げ、いずれは中国語にも対応したい」。

旅行大手JTBも16日、和太鼓グループ「DRUM TAO」と組み、東京・品川で夜の舞台を始める。10月29日まで計60回を予定。すでに大阪・あべのハルカス近鉄本店で1~2月の夜、日本舞踊などの舞台を開き、盛況だった。

沖縄県の「沖縄観光コンベンションビューロー」は7月、エイサーなど沖縄の伝統芸能を催すショーを浦添市と宜野湾市で始めた。午後7時からで英語と中国語の解説付きだ。

海外からの訪日客数は順調に伸びているが、1人あたりの消費額は伸び悩んでいる。今年4~6月は14万9千円となり、ピークの2015年7~9月より2割ほど減少。20年に20万円に引き上げる政府目標は、達成が厳しくなりつつある。

観光庁によると、「日本では外国人が夜間に楽しめる娯楽が少ない」といい、消費低迷の一因ともされる。伝統芸能の多くは日本語が使われ、訪日客には理解しづらい。深夜営業のディスカウント店などがにぎわう一方、「買い物や飲食以外で、夜間の娯楽への要望は強まっている」(JTB)という状況だ。

このため、観光庁も訪日客が夜に楽しめる観光資源づくりの支援を始める。

米ニューヨークのブロードウェー劇場や仏パリのルーブル美術館など、海外で夜間も開く施設は、高い知名度を武器にする例が少なくない。こうした施設を参考に、PR動画の作成やネット上でのリスト化などを検討中で、来年度予算の概算要求に関連費用として約1億2千万円を盛り込んだ。チケット販売サイトの立ち上げなども検討していく方針だ。(森田岳穂)


「訪日外国人による消費が伸び悩む中、その一因ともされる夜の娯楽不足を改善しようとする動き」だなんて、ずいぶん硬い書き出しですが、確かに全国でいろんなことが始まっているようです。

ネットをみていると、この方面では大阪が熱いようです。

大阪城、夜も楽しんでや 訪日客、新劇場で伝統芸能
天守閣眺めながら飲食できる店も(NIkkei Style2017/5/2)
https://style.nikkei.com/article/DGXLZO15296420T10C17A4LKA001?channel=DF220420167266

買い物や食事が中心だった大阪観光に新たな魅力を加えようという試みが動き出す。官民ファンドのクールジャパン機構が吉本興業など12社と組み、伝統芸能などを夜まで上演する劇場を大阪城の周辺に新設することが明らかになった。インバウンド(訪日外国人)客の関心がモノからコトに移るなか「夜輝く大阪」を官民でアピールする。

「年250万人が訪れる大阪城に(これまで足りなかった)エンターテインメント性が増し(観光資源として)鬼に金棒となる」。吉村洋文・大阪市長は4月13日の定例会見で期待を語った。

新劇場には電通やエイチ・アイ・エス(HIS)、在阪民放5局、KADOKAWAやファミマ・ドット・コムも参画。20億円超を投じ、複数の劇場や屋外ステージの2018年春までの開業を目指す。落語や歌舞伎のほか、音や光、映像を駆使した殺陣や忍者のパフォーマンスも披露する。

大阪城周辺は重要な史跡が多く、飲食施設や娯楽施設の開発が抑えられてきた。だが市は「(大阪城周辺に)100ヘクタールもあるのに何もしないのはもったいない」(吉村市長)と観光振興への活用を歓迎する姿勢を示す。

今秋には天守閣そばの歴史的建造物を改装した飲食・物販施設「ミライザ大阪城」が開業する。2、3階、屋上に入るレストランは夜10時半まで営業する予定。天守閣を眺めながら料理やアルコールを楽しめる。

これらに新劇場が加われば大阪城の魅力は増す。4月13日、台湾から家族3人で大阪城公園を訪れた45歳女性は「夜のミュージカルもあれば出かけたい」と語った。

観光の全体的な厚みが増すとの期待も高まる。大阪観光局の溝畑宏局長は「大阪は(訪日客向けの)ナイトエンターテインメントに欠け、夜9時以降の消費が減る」と夜の魅力向上が課題と指摘。観光局は昨年に英文冊子を作り、立ち飲みの居酒屋、夜に営業している観覧車などを紹介した。

府・市が昨年11月にまとめた都市戦略でも「24時間おもてなし都市」を掲げ、観光施設の営業時間やランドマークのライトアップ時間の延長に官民で取り組むとした。夜も楽しめる観光地づくりをテコに、20年の来阪外国人の旅行消費額を1兆1900億円と15年の5781億円から倍増させる目標を打ち出した。

夜間営業も想定する新劇場はこうしたニーズに合致する。新劇場ができれば昼はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)、夜は芸能鑑賞という楽しみ方が広がり、滞在日数と消費額の拡大につながる。府・市が進めるカジノを核とした統合型リゾート(IR)の誘致を控え、夜の娯楽充実に一歩前進しそうだ。

吉本興業の戸田義人取締役も「夜遅くまで楽しみたいという訪日客のニーズに応えられる環境をつくりたい」と述べた。もっとも場所を含め新劇場の詳細は未定。人形浄瑠璃文楽の語り手の最高格である切場語りの豊竹咲太夫さん(72)は「基本的には結構な話だが、実際問題としてスケジュールが割けるか、充実した内容にできるかなど課題も多い」と指摘する。


先日、ぼくも大阪城公園に行ってきたのですが、夜はもっと楽しめるんですね。いまの大阪観光局長が元観光庁長官の溝畑宏氏だとは知りませんでした。吉本興業もあるし、大阪はこれでますます外国客の人気を集めることでしょう。東京はこの方面では、少しまじめすぎるかもしれません。こんな記事もありました。やはり大阪です。

訪日客もハメ外す「大阪の夜」 共通券でクラブはしご
USJのハロウィーンイベントではゾンビが大増殖(NIkkei Style2017/9/2)
https://style.nikkei.com/article/DGXLZO20265640S7A820C1LKA001?n_cid=LMNST014

JTB西日本は9月1日、訪日外国人向けに大阪市中心部の複数のナイトクラブに出入りできるパスを発売した。外国人に多い「夜まで遊びたい」というニーズに応える。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や高級ホテルも夜限定のイベントを充実させている。大阪市は全国のほかの都市に比べても夜の娯楽が充実しており、訪日外国人の消費を促す。

JTB西日本が発売するのは「OSAKA NIGHTCLUB PASS(オオサカナイトクラブパス)」。大阪中心部でナイトクラブ10店舗をプロデュース(監修)するトライハードエンターテイメントジャパン(大阪市)と組み、梅田や心斎橋周辺の全店舗で3日間自由に入退場できる。21歳以上の訪日客に限って利用できる。

価格は3500円で、関西国際空港などにあるJTB西日本の観光案内所4カ所で売る。半年で5000枚の販売を目指す。

毎年10月に入場者数が最も多くなるUSJは、9月8日から始めるハロウィーンイベントで夜のホラーを前面に打ち出す。夜になるとパーク内を練り歩くゾンビの種類を過去最多に増やし、言語を問わず楽しめるよう工夫する。訪日客のリピーターも増えており「季節ごとに異なる見せ方が重要」(USJ)という。

夜間営業の「ナイトプール」を関西でいち早く始めたホテルニューオータニ大阪では、宿泊する訪日客らにナイトプールの利用を促している。今年はプールサイドでのポールダンスやフラフープなどのショーを曜日代わりで用意しており、訪日客の利用は「昨年に比べて明らかに増えている」(同ホテル)という。

大阪市は全国のなかでも、夜に遊びやすい環境が整っているとされる。不動産情報サイト「ライフルホームズ」を運営するLIFULLが2015年に全国の主要都市(区部も含む)の住民を対象に調査したところ、「夜の盛り場でハメを外して遊んだ」という回答が多かった上位5カ所のうち3カ所が大阪市内だった。

日本人だけでなく訪日外国人も利用しやすいサービスが広がれば、大阪の夜は一段と盛り上がりそうだ。


ここ数年、USJの勢いはすごいですね。以前はTDLが圧倒的に強いと思われていたのに、やはり大阪はインバウンドの町ですね。

大阪と東京のインバウンドの特徴の違いを外国人の視点で考えてみる (2016年01月31日)
http://inbound.exblog.jp/25315756/

難波に近い黒門市場にも行ってきたので、そのときの様子も後日紹介しようかな。こちらは昼の強力なエンタメでした。

大阪インバウンドのにぎわいは日本最強か!? (2017年09月09日)
http://inbound.exblog.jp/27104053/
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by sanyo-kansatu | 2017-09-05 06:48 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(1)
2017年 08月 27日

メディアもようやく中国「白タク」問題を報じ始めたようです

今朝のネットニュースで以下の記事が報じられています。

中国人白タク 横行 来日前予約、空港にお迎え スマホ決済、検挙困難(毎日新聞2017年8月27日)
https://mainichi.jp/articles/20170827/ddm/041/040/129000c

【上海・林哲平】旅行熱が続く中国からの観光客を当て込んだ「中国式白タク」が、成田空港や関西国際空港など日本各地の空港で横行している。「中国人による送迎・ガイド」をうたい、中国の業者に登録した在日中国人が自家用車を運転。集客から支払いまでスマートフォン上で完結するため、取り締まりを免れるケースが大半だ。急速なキャッシュレス化が進む中国。日本側の対応が追いついていないのが現状だ。

◇来日前に予約 空港にお迎え

中国式白タクは、運営する中国業者のスマホアプリで客が出発地と目的地、利用時刻を選べば、業者から日本にいる運転手に手配が届く仕組みだ。運転手が中国系のため、客は同胞意識と言葉が通じる安心感を抱く。

関西方面を旅行した際に利用した男性によると、飛行機が関西空港へ着陸すると、スマホに中国語で「あなたの運転手です。外でお待ちしています」というメッセージが届いた。指定された送迎用エリアでは、黒いワンボックス車の前でスーツ姿の男性が出迎えてくれた。空港から新大阪駅までタクシーでは1万8000円程度かかるが、白タクなら630元(約1万円)だ。

日本旅行の際によく利用するという上海の医師(46)は「便利だから使う。中国で日本人運転手がいれば使いませんか?」という。中国ではスマホを使った決済が市場でも使われるなど生活に浸透しており、自家用車を使った送迎サービスのアプリも人気だ。

関西国際空港タクシー運営協議会の川崎孝治専務理事は「中国の生活空間が日本の中にそっくり移ってきたようなもの」と指摘。中国の大手業者のアプリには東京1800人、大阪1200人など、日本各地で数千人の在日中国人らが運転手として登録している。

日本での中国式白タクの目撃情報は数年前から集まり始めた。有償で客を運ぶのに必要な国の許可を得ておらず、道路運送法違反にあたる疑いが強い。川崎専務理事は「タクシーは客の命を預かっている。保険がなく、事故があっても客や相手方が守られない」と取り締まりを求める。

また、日本での売り上げを中国で計上する業者も多いとみられ、日本で納税されることはない。近畿運輸局などは今年2度、対策会議を開き、成田空港会社も「警察との情報共有を進めている」と明らかにした。

ただ、支払いを含めてやりとりはすべてスマホ上で進められ、日本では客を運ぶだけ。警察の職務質問に運転手が「友人を乗せている」と答えれば、それ以上の追及は困難だ。

沖縄県警は今年6月、白タク行為をしていたとして、中国籍の男2人を道路運送法違反容疑で逮捕した。中国式白タクの初検挙だった。ただ、県警によると、別の事件で逮捕された両容疑者の口座などを調べる中で証拠を確保できた珍しいケースだった。近畿運輸局は「実態把握が難しい」と指摘している。


実は先月、ぼくは産経新聞の記者の方にこの問題で取材を受けています。

その記事は産経新聞8月3日の社会面に出ています。
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中国人観光客向け 在日「白タク」横行
東京富士山~格安1人8000円 ガイド付きも(産経新聞2017年8月3日)

(一部抜粋)在日中国人による無許可の「白タク営業」が空港や観光地で横行していることが2日、関係者への取材で分かった。主に観光で日本を訪れる中国人を対象にしているといい、人気観光地の沖縄では旅行シーズンを前に業者が摘発された。ただ、国内での金銭の受け渡しがないため、警察当局による摘発や全容解明は容易でないという、専門家からは「中国人観光客のニーズに適応しきれていない日本側にも問題がある」との指摘も上がっている。

同紙の取材でぼくはこう答えています。「摘発も大切だが、日本側が中国人観光客の受け皿となるサービスを充実させることも急務だろう」。ちょっぴり優等生すぎる発言にまとめられてしまっていますが、まあそういうことでしょう。

これまで本ブログでもこの問題は何回かに分けて説明してきました。

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/
日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/
中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/
中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?
http://inbound.exblog.jp/26876191/
タクシー運転手に聞く「日本のライドシェアが進まない理由」と今後すべきこと
http://inbound.exblog.jp/26891045/

今後の議論の行方を注視していきたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-08-27 11:13 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 08月 21日

ついに起きてしまった。運転できないはずの中国人レンタカードライバー事故

先週、ついに起きてしまいました。日本では運転できないはずの中国人レンタカードライブ事故です。 

中国本土の観光客は日本でレンタカーの運転はできません (2015年09月05日)
http://inbound.exblog.jp/24859203/

地元メディアは以下のように報じています。

自転車の列 外国人運転レンタカー突っ込む 大学生4人重軽傷 北海道洞爺湖町(北海道ニュースUHB2017年8月17日)
http://www.uhb.jp/news/?id=2474

8月17日午後、北海道洞爺湖町の交差点で、ツーリング中の大学生の列に乗用車が突っ込む事故があり、4人病院に搬送され、うち1人は骨折の重傷です。

事故があったのは、洞爺湖町成香の道道と町道の交わる交差点です。

きょう午後2時30分ごろ、1列で走っていた5台の自転車の前から2番目に、交差点を曲がってきた乗用車がぶつかり、後続の3台も巻き込まれました。

この事故で、男子大学生4人が病院に搬送され、うち1人が骨折の重傷、3人が軽傷です。

車はレンタカーで、旅行に来ていた中国国籍の会社員の男性(37)が運転していました。

現場は、信号機のない交差点で、乗用車の側に一時停止の標識がありました。

警察は、運転手の男性から事故の状況を詳しく聞き、原因を調べています。


数年前からすでに沖縄や北海道では、外国人レンタカー事故が増えていたようです。

外国人観光客の交通事故激増が社会問題化…信号無視で日本人死亡事故も発生(Business Journal2017.01.16)
http://biz-journal.jp/2017/01/post_17726.html
外国人レンタカー事故急増 業界、ステッカーで対策強化(琉球新報2015年12月31日)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-196811.html
北海道では外国人観光客による交通事故の増加が深刻だった(Naverまとめ2017年02月18日)
https://matome.naver.jp/odai/2148734613224834201

今回の事故は、真夏に起きたものですが、北海道は雪道の運転がアジアの人たちには難易度が高いだろうという懸念はすでに指摘されていました。

外国人観光客と冬道事故(安全運転管理あれこれ記 交通コンサルタント小林實)
http://www.signal-net.co.jp/2011/02/post-460.html

この事故に関して、まだそれほど大きな反響はないようですが、ネットに少し反応が出ています。

中国の運転免許は日本で無効なのに中国人のレンタカー利用者が増加中(2017年8月18日)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kunisawamitsuhiro/20170818-00074684/

北海道の洞爺湖で中国の国籍を持つドライバーがレンタカーで自転車の列に突っ込み、大学生4人重軽傷という事故を起こした。このドライバーが日本で有効な運転免許証を持っていたのか不明ながら、基本的に中国の免許だと日本で運転出来ない。本来ならレンタカーも借りれないのだけれど、驚く状況が起きている。

海外からの観光客多い沖縄では、2015年に17,7%もの中国人がレンタカーを利用していたという。北海道でも徐々に増加していると言われており、危惧する声も多い。なぜ中国の免許が危険なのか? 交通法規の共通化をすすめている『ジュネーヴ条約』に中国は加入していないからだ。したがって運転の常識からして異なる。

ジュネーヴ条約に加入している国同士や、2国間で協定を結んでいる国(ドイツやフランス、台湾など)は相互の免許証が有効ながら、中国の免許証についていえば無効。つまり無免許運転ということ。なぜ日本でレンタカー出来るのか? 『レコードチャイナ』という中国の情報を伝えるネットメディアによると、偽造が多いという。

中国ではフィリピンや香港の免許をネットで買えるそうな。フィリピンはジュネーヴ条約に加入しているため、日本でも有効。香港の免許もイギリス統治時代からの継続措置で有効になっている。ちなみに日本人が中国でクルマを運転しようとしても、こういった脱法手段が無いため改めて中国の免許を取らないと運転出来ない。

いずれにしろジュネーヴ条約に加入していない国の免許は使えない。脱法行為で取得した国際免許も同じ。このあたり、レンタカー会社でキチンと確認し(基本的に中国パスポートでその他の国の免許を持っている人は希少)、無免許運転を防止すべきだと思う。海外からの観光客は大きな産業ながら、安全の担保はもっと重要だ。


これは自動車評論家の国沢光宏さんのyahoo!での連載「知らないと損する自動車情報」(https://news.yahoo.co.jp/byline/kunisawamitsuhiro/)で書かれたものです。

少し古いデータですが、中国では年間26万人が交通事故でなくなるそうです。

交通事故で年間26万人が死亡、日本に比べ中国の交通死亡事故が多いのはなぜか(レコードチャイナ2016年4月5日)
http://www.recordchina.co.jp/b132541-s0-c30.html

この記事によると「中国の2013年の交通事故による死者は26万1367人」だそう。

(以下、一部抜粋)「日本の人口は中国の約10分の1。2012年3月時点の自動車登録台数は4800万台で、1世帯当たりの平均保有台数は0.93台だった」「中国の自家用車保有台数(2015年時点)は1億2400万台、100世帯当たり31台を持っている計算」と紹介し、「日本の状況を見ると『車社会の到来イコール交通事故の多発』にはならないことが分かる」と指摘。中国で毎年2000万〜3000万人の新人ドライバーが路上に出ることで「確かにリスクは高まる」としながらも、交通事故が繰り返し発生する主な原因としてドライバーのルール違反や歩行者の信号無視、設備の不適切な設置など人為的な問題を挙げた。

気になるのは、中国のネットをみると、日本でレンタカーに乗るための裏ワザ情報が公然と紹介されていることです。簡単にいうと、日本と同じジュネーヴ条約に加入しているフィリピンで国際免許を取り、日本で使えばいいというのです。

有中国驾照,想去日本租车,可以吗?
想去日本自由行,想租车自驾,只有中国驾照,需要考国际驾照嘛?
https://www.wukong.com/answer/6438199906761965826/

ここまでやるか! という感じです。やはり、この問題も含め、中国人観光客の周辺で派生するさまざまな問題について、国レベルでの相互の話し合いが必要だと思われます。ただ、いまの習近平政権相手だと、簡単ではなさそうです。
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by sanyo-kansatu | 2017-08-21 11:28 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 08月 20日

中国客だけ数が増えても延べ宿泊者数が減少するのは民泊の影響と考えるべき

今年に入って訪日中国客が伸び悩んでいることはすでに報告しましたが、観光庁が集計する「宿泊旅行統計調査」や日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客統計」のデータを見比べると、奇妙なことに気づきます。

2017年7月、訪日客トップは中国が返り咲き。でも、中国客の伸びの減速は明らか (2017年08月18日)
http://inbound.exblog.jp/27057304/

調査国すべてが訪日客が増加するのとほぼ比例して延べ宿泊者数を伸ばしているのに対し、中国客だけが数は増えているのに、2月以降、ずっと延べ宿泊者数が前年度比マイナスなのです。

宿泊旅行統計調査(観光庁)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html
訪日外客統計(JNTO)
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/

以下、今年の月別の訪日外客数と中国客数の伸びと同じく延べ宿泊者数の伸びの前年同月比較を書き出してみます。

2017年1月
訪日外客数 +24.0%  延べ宿泊者数 +11.0%
中国客数 +32.7%   延べ宿泊者数 +14.9%
2017年2月
訪日外客数 +15.7%  延べ宿泊者数 -4.5%
中国客数 +17.0%   延べ宿泊者数 -14.1%
2017年3月
訪日外客数 +13.6%  延べ宿泊者数 +3.0%
中国客数 +12.0%   延べ宿泊者数 -13.4%
2017年4月
訪日外客数 +16.4%  延べ宿泊者数 +15.5%
中国客数 +9.6%   延べ宿泊者数 -15.6%
2017年5月
訪日外客数 +17.3%  延べ宿泊者数 +16.3%
中国客数 +8.0%   延べ宿泊者数 -7.0%

2月に関しては、訪日外客総数の伸びに対して延べ宿泊者数がマイナスになっていますが、なかでも中国客は前年同月比で17.0%も増えているのに、延べ宿泊者数は-14.1%。この開きは相当大きいといわざるを得ません。

これはいったいどういうことでしょう。

いかにも訪日中国市場の特殊性を感じさせるデータですが、理由としてひとつ考えられるのは、今年に入って中国内陸部の地方都市からの団体客が伸び悩み、沿海経済先進地域からの個人客が増えていることから、「安近短」志向の旅行者の比率が高まっているということです。そうなると、当然1人当たりの滞在日数は短くなります。

訪日中国客にはもともと九州に大量寄港する中国からのクルーズ客が多く含まれており、彼らは船上に泊まっているため、いくら数が増えても延べ宿泊者数を押し上げることがありません。そのぶん、他国と比べる際、差し引いて考えるべきなのですが、だからといって伸び率がマイナスになる理由にはならないでしょう。

今年5月下旬、朝日新聞が興味深い以下の記事を配信しました。

ユー、夜はどこに? 訪日客は増加でも宿泊者は伸び悩み(朝日新聞デジタル2017年5月24日)
http://www.asahi.com/articles/ASK5R55GBK5RULFA01M.html

この記事について、ぼくも以下の分析を試みましたが、今回あらためて中国客の延べ宿泊者数のデータをみる限り、民泊の影響がとりわけ中国市場に強いことを確信しました。

「夜に消える? 訪日客」。背景には民泊による宿泊相場の価格破壊がある(2017年05月24日)
http://inbound.exblog.jp/26877980/

流行りものに弱い中国客ですから、来年のいま頃はまったく違う話になっている可能性もありますが、他の国々の人たちと比べても、ホテルから民泊への流れが強まっていることを実感します。どおりで中国系民泊サイトが次々と日本法人を設立しているわけです。

中国系民泊サイトが続々出展「バケーションレンタルEXPO」って何? (2017年05月29日)
http://inbound.exblog.jp/26889680/
  
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by sanyo-kansatu | 2017-08-20 20:01 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 08月 18日

2017年7月、訪日客トップは中国が返り咲き。でも、中国客の伸びの減速は明らか

先日、2017年7月の訪日外客数統計(JNTO)が出ました。

それによると、今年上半期の圧倒的な勢いにより韓国に抜かれていた訪日客数トップの座をわずかですが、中国が取り戻しています。

2017年1~7月訪日客数
韓国 4039900(前年比42.8%増)
中国 4062500(前年比6.7%増)

日本を訪れる韓国人観光客が中国客を追い抜く勢いで増えています(2017年03月16日)
http://inbound.exblog.jp/26722251/
4年ぶりに中国を抜き、韓国が訪日外客数トップ! 中国は伸び悩み(2017年07月24日)
http://inbound.exblog.jp/27007721/

訪日外客数統計(JNTO)2017年8月16日
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/170816_momthly.pdf

中国では7月前半から夏休みに入ることから、家族旅行のシーズンになり、団体旅行も含めた訪日旅行が増加したことが考えられます。とはいえ、増加したといっても、前年度比でわずか6.8%増(7月)にすぎず、(母数が違うので、単純に比較できませんが)これは世界金融危機が発生した2008年(6.2増)に近い伸び率です。ここ数年の2014年(83.3%増)と15年(107.3%増)、16年(27.6%増)と比較すれば、訪日中国客の伸びの減速は明らかです。

この感じでいくと、9月以降の中国客はそれほど増えるとは思えません。

背景には、春秋航空などの中国の地方都市からの日本路線の減便や運休が続いているという事情がありそうです。たとえば、中国の最も多い都市からのフライトがある関西国際空港に乗り入れる春秋航空は、昨年夏よりなんと11便もの減便となっています。関空の国際線の便数はこの夏過去最高となっていて、中国路線の総数も減っているわけではないので、ここからうかがえるのは、中国客の中身がますます沿海経済先進地域の大都市部の個人客に片寄っていく流れが強まっていることでしょう。

KIX 2017 年国際線夏期スケジュール
http://www.kansai-airports.co.jp/news/2016/2482/2017summer.PDF.pdf

こうした沿海経済先進地域からの訪日客が増えるということは、リピーターや「安近短」志向の旅行者になるということです。

実際、その傾向は昨年から現れています。

観光庁が集計する「訪日外国人消費動向調査」の最新動向(平成29年4月~6月期)をみると「訪日外国人1人当たり旅行支出は14万9,248円で、前年同期(15万9,933円)に比べ6.7%減少」「国籍・地域別にみると、英国(25万1千円)、イタリア(23万3千円)、中国(22万5千円)の順で高い」というわけで、もはや日本でいちばんお金を使うのは中国人ではありません。これは2016年の段階で、すでにそうなっています(1位オーストラリア(24万7千円)、2位中国(23万2千円)、3位スペイン(22万4千円))。

訪日外国人消費動向調査(平成29年4月~6月期)
http://www.mlit.go.jp/common/001194019.pdf

こうした市場の変化は、我々が想像する以上に早く進んでいます。今後、中国客を見る視点も、変えていく必要があるでしょう。

とはいえ、ボリュームとしては、中国客は訪日客の4人に1人を占める最大市場であることは変わりません。

こうした「消費動向調査」の結果から、これからは「欧州客」が訪日客の主役だなどと言い出すメディアや識者も現れていますが、これもどうなんでしょう。ちょっと近視眼的で表層的すぎる見方ではないでしょうか。なぜなら、中国客の一人当たりの消費金額が大幅に下がっているだけで、欧州のような遠方から日本を訪れる外国客は、「安近短」の東アジア客に比べると、滞在日数も長く、1回の日本の旅行にお金をかけるのは、ある意味当然だからです。日本人だって、イタリアに旅行に行くのと、台湾に行くのでは、滞在日数も予算も考え方が別でしょう。欧州客も同じなのです。

訪日消費、主役は欧州客 「爆買い」より体験(日本経済新聞2017/8/13)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO19940990S7A810C1EA3000/

もちろん、世界の海外旅行シーンやトレンドを牽引している欧州客の受け入れに力を入れようという主張自体は間違っていませんし、そうすべきです。でも、日本社会にもっと大きな影響を与えているのはアジア市場だということを忘れては本末転倒だと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-08-18 17:05 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 07月 24日

4年ぶりに中国を抜き、韓国が訪日外客数トップ! 中国は伸び悩み

先週、日本政府観光局(JNTO)による「訪日外客数(2017 年6月推計値)」が公表されました。今年上半期(1~6月)の訪日動向が見えてきました。
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訪日外客統計 2017年6月推計値
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/170719_monthly.pdf

すでに3月の時点で見えていたことですが、4年ぶりに中国を抜き、韓国が訪日外客数トップとなっています。

日本を訪れる韓国人観光客が中国客を追い抜く勢いで増えています(2017年03月16日)
http://inbound.exblog.jp/26722251/

しかも、前年の上半期に比べ42.5%も伸びて339万5900人(以下、推計値)。この調子でいくと、年間で700万人近くなりそうです。韓国を訪れる日本人の数は減っているのに、対照的な現象です。

それにしても、なぜ韓国人はこんなに増えたのでしょうか。その理由については、今後関係者に話を聞いていくつもりですが、LCCの増加で関西方面、高速船で移動が安くて早い九州方面に増えていることは確かのようです。これまで多くの韓国人が中国を旅行していたのですは、今年に入って中国が不当な制裁をしてきたことから、韓国の人たちも嫌気がさして、旅先を中国から日本に振り返る動きが起きたのかもしれません。

一方、伸び悩んでいるのが中国です。前年の上半期に比べ6.7%増にすぎないこともそうですが、6月に限ると、前年比わずか0.8%増。ここ数年、毎年倍増ゲームのように訪日客を増やしてきたことを考えると、大きな変化といえます。これほど伸びが縮んだのは震災以来、初めてかもしれません。

では、中国客はなぜ伸び悩んでいるのか。この理由についても、今後調べていくつもりですが、明らかにいえることは、2015年に大幅拡大した中国の地方空港からの日本路線に減便、縮小傾向が見られることです。

実際、黒龍江省の旅行関係者に聞くと「今年の訪日客は昨年より減っている」と言います。やはり、中国経済の減速があり、それは上海や北京などの沿海先進地域ではなく、地方都市に影響しているものと考えられます。

その他、好調なのは香港インドネシアです。香港は上半期ですでに100万人を突破。その背景として、JNTOのレポートでは「昨今の世界情勢を受けて日本に対する安心感が相対的に高まっていることも、訪日旅行を後押ししている」と分析しています。

伸び率が最高なのがインドネシアで、上半期の前年比44.9%。最近、ビジャブを被ったムスリム系ツーリストの姿をよく見かけるようになったことは確かでしょう。ただし、18万4900人(上半期)と、この市場はまだ動き出したばかりです。

アセアン諸国では、さすがに伸び率は落ち着きましたが、タイは53万900人と、このままいくと年間で100万人を突破しそうです。このままいくと、タイに旅行に行く日本人より多くなる日が来るのかもしれません。隔世の感があります。

最後に、母数は小さいですが、ロシアも前年比40.6%と増えています。その理由に、今年1月ロシア人に対するビザ緩和が実施されたことと、4月末から成田・ウラジオストク便が毎日運航になったことなどから、日本を訪れるロシア人が増えてきたことがわかります。ここ数年、資源価格減による経済不振のため、ロシア人の訪日客は低迷していましたが、少し改善の傾向が見られます。

ロシア国民に対するビザ発給要件の緩和(外務省平成28年12月16日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_004069.html

【追記】
後日、韓国のランドオペレーターに、今年韓国客がこれほど増えた理由について話を聞いてみました。

韓国が訪日客数トップになった背景に出国率の著しい上昇がある
http://inbound.exblog.jp/27020112/
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by sanyo-kansatu | 2017-07-24 15:27 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 07月 17日

「民泊は5万件を超えるが、ほとんどがヤミ民泊」と報じられる by朝日新聞

先週、朝日新聞が「民泊の行方」と題する2本の記事を配信しています。前半(上)では、6月に成立した民泊新法を受けた民泊周辺業界の動き、後半(下)では、施行前の現在における民泊の実態について。「民泊は全国で5万件を超えるが、そのほとんどがヤミ民泊とされる」という、身も蓋もない記述も見られます。

こうした問題を抱える民泊の現在形について、コンパクトにまとまっている記事だったので、以下、転載します。

民泊の行方:上 合法化で転機、大手参入(朝日新聞2017年7月14日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S13035500.html

6月下旬、東京都心のオフィスビルの一室に十数人が集まっていた。「新しい民泊物件で出会える! 新法180日対策」と題するセミナーだった。

講師を務める不動産会社の男性が強調した。

「民泊はこれからも有望な投資先であり続ける」

新法とは、6月上旬に成立した住宅宿泊事業法(民泊新法)だ。住宅に旅行者を泊める「民泊」のルールを定めている。来春にも施行され、部屋を民泊用に貸し出せるのは「年180日まで」に規制される。

セミナーは個人投資家向けだった。マンションの一室を購入するか借りるかして民泊用に貸してもうけるのが、いまや人気の投資になっている。講師の男性によると、家賃月7万円が相場の物件でも、民泊で貸せば月40万円近い収入を得られる場合もあるという。

新法施行後は半年ほどしか民泊用に貸せなくなるが、男性は「二毛作で高収益を望める」。残る半年はマンスリーマンションやイベントスペースとして貸し出せばよいのだ、という。

民泊物件の紹介サイトを運営するスペースエージェント(東京)の出光宗一郎社長は「法整備が進んだことで、投資先としての注目度は上がる」と期待する。

増え続ける訪日外国人客を中心に、昨年は国内で少なくとも370万人が民泊を利用したとされる。ただ、関連ビジネスを手がけるのは、米国発の仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」や、部屋の清掃や管理をするベンチャー企業にほぼ限られていた。これまでは有料で人を泊める事業をするには、旅館業法の許可が必要で、許可を得ない「ヤミ民泊」は違法だった。それが新法で合法化されることになり、慎重だった大手企業も動き出した。

京王電鉄は、国家戦略特区で民泊事業が認められている東京都大田区に、民泊専用マンションを開業した。地下1階地上6階建てで、全14室。新法施行後は沿線にも建てていく予定だ。訪日客が沿線の施設を利用すれば、鉄道の乗客増につながる。阪急不動産も、同じグループの阪急・阪神沿線の空き室所有者に民泊事業を働きかける。

一方、楽天は6月末、民泊の仲介サイトを新設すると発表した。約800万件の物件情報を持つ不動産サイトと組み、5万件超を掲載するAirbnbを上回る物件数をめざす。

オランダの「ブッキング・ドットコム」、中国の「途家(トゥージア)」、台湾の「AsiaYo.com(アジアヨードットコム)」……。海外で実績のある外資系の仲介サイトも、日本の物件数を増やそうと動く。米国の「ホームアウェイ」の木村奈津子・日本支社長は「地方の別荘や空き家を民泊物件にしたい」と意気込む。

だが、ビジネスの先行きを不安視する声もある。東京・新宿のマンションを民泊用に貸す20代男性は「大手が入れないようなグレーな商売だから、もうかった。大手が出てきたら勝ち目はない」とこぼす。ピーク時は10室を貸し、月100万~200万円を稼いでいた。それが今では周りの民泊物件との競争激化に加え、清掃やトラブル対応の費用が高くつき、もうけが出にくくなったという。

民泊利用者の宿泊マナーをめぐり、周辺の住民から苦情も相次ぐ。各地のマンションでは管理規約で民泊を禁じるところが増えている。独自の条例をつくって民泊可能な期間を180日より短くしようとしている自治体も少なくない。大手不動産幹部は「違法性のある民泊が難しくなり、物件数は急減するだろう。成長市場だとは思えない」と話す。民泊物件の家具の処分を請け負う「民泊撤退ビジネス」も登場している。


これまでグレーゾーンだらけだった民泊も、新法によって合法化されることから、不動産業界を中心に参入の動きが強まっているようです。彼らにすれば、ホテルであれ、民泊用マンションであれ、投資の中身は問わないからです。

新法を強く意識した民泊支援業者の動きも活発化しています。

「180日ルール」の新法をふまえた「合法」的な民泊としての「マンスリー+民泊」って?
http://inbound.exblog.jp/26893756/

一方、記事にもあるように、従来型のやり方ではビジネスチャンスは拡大しないとの専門家の声もあります。

「民泊新法でビジネスチャンスが拡大は大ウソ!」by行政書士の戸川大冊氏
http://inbound.exblog.jp/26893431/

後半(下)では、民泊集中地区のひとつである東京・渋谷のマンションに、実際に記者がAirbnbで予約して泊まっています。

民泊の行方:下 郵便受けに鍵、「禁止」すり抜け(朝日2017年7月15日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S13037547.html

東京・渋谷のスクランブル交差点から歩いて10分。大通りを少し入ったオフィス街に13階建てのこぎれいなマンションがある。6月下旬、民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」で予約し、取材目的で泊まってみた。

「1泊7400円」。立地もよく、約40平方メートルという広さから考えると手頃だログイン前の続き。申し込むと、部屋の貸主から、詳しい住所と4桁の暗証番号を書いたメッセージが携帯電話に届いた。

マンションの入り口にはオートロックがかかり、入れない。メッセージで指示された通り、泊まる部屋の郵便受けの投函(とうかん)口に手を差し込む。指に触れたワイヤを引っぱると、先に南京錠と部屋のカギがついていた。暗証番号で南京錠を外し、カギを使ってオートロックを開ける。

ガラス張りの1階エントランスを入ると、目に飛び込んできたのが「民泊禁止」の貼り紙だ。マンションの管理会社に聞くと、全室で民泊を禁じているという。しかし、Airbnbにはほかにこのマンションの4室が掲載されていた。Airbnb日本法人は「希望があれば掲載するのが基本で、許可の有無は確認していない」(広報担当者)。

予約時に宿泊代と別に清掃代の約8千円を支払い済みだ。だが、部屋の床には髪の毛が落ち、タオルはかび臭い。民泊用の部屋の管理は主にベンチャー企業や小さな不動産会社が引き受けているが、「SNS上で学生や主婦を集めて掃除させる業者も多い」と業界関係者はいう。

6月に成立した民泊新法(住宅宿泊事業法)は来春施行の見込みだ。それまでは、お金をとって繰り返し人を泊めるには、衛生面などの基準を満たしたうえで、都道府県などから旅館業法の許可を得る必要がある。記者が泊まった部屋は無許可だった。宿泊者が罰せられることはないが、泊めた側は違法な「ヤミ民泊」として処罰の対象になる。民泊は全国で5万件を超えるが、そのほとんどがヤミ民泊とされる。

6月下旬、ヤミ民泊の多さで知られた東京・代々木のあるマンションを訪ねた。約800室のうち、一時は50~100室がヤミ民泊に使われていたとされる。1室を借りて民泊用に2年間、又貸ししていた20代男性は「月10万円の家賃を払っていたが、50万円の収入があった」と明かす。

騒音やゴミ出しなどのトラブルが相次いだため、このマンションの管理組合は昨年4月、規約で民泊を禁止した。しかし今も5部屋以上の民泊が残り、大きなスーツケースを持った外国人が出入りする。

ある管理会社の社長はあきれ顔だ。「ヤミ民泊だとばれないような受け答えや、保健所の職員が来たときの対策を指南するマニュアルが出回っている」

自治体も対策に頭を悩ます。情報を得ても、マンションのどの部屋がヤミ民泊で使われているかを特定するのが難しいからだ。ヤミ民泊の情報を受け付けるウェブサイト「民泊ポリス」には連日、問い合わせが相次ぐ。運営する中込元伸さんは「海外の普段の暮らしを体験し、文化に触れるという本来の民泊の姿からは遠くなっている」と嘆く。

こうした民泊のあり方に不満を漏らす訪日客も出ている。「『民泊禁止』の貼り紙を見て歓迎されていないと不快になった」「ゴミや悪臭のひどい部屋で、ひどい経験だった」……。Airbnbの利用者の感想コメントには、こんな書き込みがある。

新法は、民泊用の部屋を提供する貸主に都道府県などへの届け出を義務づける。違反した場合、100万円以下の罰金や1年以下の懲役を科す。

ヤミ民泊は新法で一掃され、健全なビジネスに生まれ変われるのか。取り締まる側、される側とも、重い責任を負うことになる。(森田岳穂)


ヤミ民泊の急拡大によって、宿泊業界は大きな影響を受けています。2015年頃、ホテルの客室不足が話題となりましたが、状況は一変しており、特に訪日客を多く受け入れていたホテルでは、以前のように客室が埋まらない事態にまで至っているからです。理由は、米国系Airbnbだけでなく、中国系民泊サイトの利用者が急拡大したためです。

「夜に消える? 訪日客」。背景には民泊による宿泊相場の価格破壊がある
http://inbound.exblog.jp/26877980/

記事の最後にあるように、新法によって民泊は健全なビジネスに生まれ変わることができるのか。これから半年の動きに注目したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-07-17 11:32 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 05月 29日

通訳案内士法改正は一歩前進だが、現状では海外から評価されない(無資格を合法にするなら登録制にすべき)

先週、ついに改正通訳案内士法が成立しました。

本ブログでも、詳しく扱ってきた問題です。

http://inbound.exblog.jp/tags/通訳・多言語化

これまでは議論ばかりで、状況は変わらないどころか、ますます悪化していくばかりだったことを考えれば、インバウンド市場にとって欠かせないルールづくりのひとつとして一歩前進と評価できます。でも、依然問題は山積みです。

通訳ガイド、無資格でも 外国客急増で 質低下の懸念も(朝日デジタル2017年5月29日)
http://www.asahi.com/articles/ASK5C03BBK5BUTIL04F.html

「通訳案内士」の国家資格を持つ人にだけ認められてきた外国人旅行者への有償の通訳ガイドが、無資格者でも担えるようになる。外国人旅行者の急増を受け、改正通訳案内士法が国会で26日に成立した。1949年に制度ができて以来初めての大幅な規制緩和。観光業界は新たなガイドへの期待と、質の低下への懸念とが交錯している。

訪日外国人は昨年約2403万9千人で、4年連続で過去最多を更新。そのガイドを担い、正しく日本の歴史や地理を伝えるのが通訳案内士で「民間外交官」とも呼ばれる。試験は毎年1回あり、外国語に加え、地理や歴史、政治などの筆記テストと口述テストがある。専門言語は10カ国語で、昨年度の試験では2404人が合格した。合格率は21・3%だった。

昨年4月時点で約2万人が登録されているが、その約7割は「英語」が専門。旅行者は中国からが最多で約630万人(約26%)、次いで韓国の約500万人(約21%)。東アジアと東南アジアで全体の8割超を占め、ミスマッチが課題となっていた。さらに、有資格者の4分の3は首都圏や関西圏に住み、地方に外国人を呼び込みたい自治体や業界の思惑ともずれが生じていた。

そこで政府は、無資格者にも有償ガイドを解禁することにした。ただ国家資格は残し、より質の高い案内士として活用する方針。また、地域限定で活動する「地域通訳案内士制度」も新設し、地方の人材不足に対応できるようにする。

しかし法改正には、「悪質ガイドにお墨付きを与えるようなもの」と質の低下を懸念する声もある。日本観光通訳協会の木脇祐香理副会長は「外国語能力だけでは不十分。ガイドで日本の印象が決まる。下見など入念に準備して歴史、文化や魅力を紹介し、満足度を上げてリピーターになってもらうことが大切」と指摘する。「優秀なガイドを育て、質を保つための国の新たなサポートも必要になると思う」と話している。

観光庁はガイドをあっせんする仲介業者「ランドオペレーター(ランオペ)」を登録制として指導を強めるなどして、質の低下を防ぎたいとしている。

政府は東京五輪・パラリンピックがある2020年までに訪日客を4千万人まで増やす目標を掲げる。大手旅行会社幹部は「規制緩和が、人材の充実につながれば」と期待している。(伊藤嘉孝)

■通訳ガイドのルールはこう変わる
・有償ガイドを無資格者に解禁
・「地域通訳案内士」の資格を創設
・手配業者を登録制に。悪質業者に罰則も


正直なところ、改正法成立の報を聞いて最初に思ったのは「これで中国人の白タクドライバーによるガイド行為は合法になるんだな」ということでした。これまで「無資格ガイド」と呼んでいた対象、それはたとえば、中国の団体客相手のボッタクリガイドなども皆、資格の有無が問題でなくなるわけです。

もっとも、朝日報道にもあるように、これほど外国人が増えているのに、70年近く前にできた古いルールのままでいいはずはありません。通訳案内士団体など反対派の主張はとてもまじめで、あるべき理想の姿を示したものでしたが、一般国民からすれば、大勢からみて説得力がないとみなされても仕方がないものでした。

通訳案内士法の改正に関する要望書
http://www.ijcee.com/hiroba/guideinsti/demand01_100622.pdf

ただし、今回の改正は、とてつもなく時代錯誤だった大きなタテマエ(有資格者でなければ、有償通訳ガイドをするのは違法)を崩しただけにすぎません。より現実的な通訳ガイドのあり方のために決めたルールである以上、すでに指摘されている多くの懸念や問題を解消していく必要があります。

問題は、訪日外国人を対象とした通訳ガイドの周辺で起きている多くの違法状態について、広く一般国民に理解されていないことです。通訳案内サービスを受けるのはあくまで外国人であって、日本の一般国民ではないため、ピンとこないのは当然です。それでも、これだけ外国人が増えた以上、有資格者でなければ有償ガイドができないことを法で縛るのはどうかという一般社会の常識的は判断から、今回の改正に遅まきながら至ったのだと思います。

通訳案内士法改正は一歩前進だと考えますが、「誰がガイドをするのがふさわしいか」について、もっと議論が必要です。これまで多くの日本人がほとんど考えてこなかったことですが、外国人相手なら外国人がガイドするのがもっともだ、というような誤解をなくしていかなければなりません。

そうでないと、「悪質ガイドにお墨付きを与える」ことにしかならないからです。これまでボッタクガイドやブラック免税店の存在を批判していた中国をはじめとした海外の国々からも、今回の改正だけでは評価されないでしょう。問題の解決にはつながらないからです。通訳ガイドサービスは、海外の人たちから評価されてこそ、意味があるのです。

通訳案内士法改正とともに進んでいる旅行業法の改正案では、これまで規制の対象外だったランドオペレーターに観光庁への登録を義務付けるといいます。悪質な訪日ツアーの増加をふまえ、海外旅行客の安全や旅行の質の確保など、業務の適正化を目指すためのもので、ランドオペレーターには管理者の選任、業務に関する契約書面の作成などを求めることになっています。

ボッタクリツアーの温床となっていた中国系のランドオペレーターを登録制にすることは、ルールづくりの第一歩ですが、結局のところ、これらの問題はランドとガイドの連携で成り立っていた以上、せめて団体客が相手の場合、ガイドも登録制にすることが必要ではないでしょうか。いまは、白タクをはじめ、個人客相手の無資格ガイドが跋扈する時代だからです。

今後は在日中国人をはじめとした外国人のガイドに、研修や登録を義務付けるしくみを新たに加えていくことが求められると考えます。はたしてその外国人が日本を案内するのにふさわしい人物であるか、それを見極めるのは、我々の責任です。自国をガイドする外国人にライセンスを与えるのは、海外では常識ですが、これまで日本だけがなおざりにしてきたのです。無資格ガイドを合法とする以上、これは当然ではないでしょうか。

ランオペ登録制は一歩前進。ガイドも登録制にできるだろうか
http://inbound.exblog.jp/26296114/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-29 15:56 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)