ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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カテゴリ:気まぐれインバウンドNews( 95 )


2016年 12月 09日

じわじわ増えている医療観光だが、盲点を突くあの手この手の不正も明らかに

ここ1、2年で、海外、特に中国からの医療観光がじわじわ増えてきているのを実感します。以前は、観光の合間にPET検診などを組み込む検診ツアーが多かったのですが、最近では、中国での治療を諦めていた重度のがん患者が日本の医療機関を利用するというケースも出てきています。「検診」から「治療」への切実なニーズの変化です。

医療の現場の国際化が叫ばれて久しいなか、高額な治療費の支払いをいとわない富裕層が訪日するのは、自然の流れだと思っていたのですが、いいことばかりでもないようです。いろんなことが起きています。

こんな記事がありました。

来日中国人が日本の医療費を不正受給している…国民健康保険に加入できる「経営・管理ビザ」を悪用!?(日刊SPA!2016.12.09)
http://nikkan-spa.jp/1246002

国民医療費が40兆円を突破し、日本の財政は危機的な状態にある。こうしたなか、一部の来日中国人が日本の医療制度に“タダ乗り”しようとしている。噂を聞いて取材を開始したところ、とんでもない実態が浮かび上がった!

■治療目的で来日して、国保に加入で恩恵享受!

中国人 爆買いが収束に向かうなか、安倍政権が見据える新成長戦略が医療ツーリズムだ。日本政策投資銀行は、’20年の潜在的市場規模を5500億円と見積もっている。

今や日本の医療の信頼性は世界の知るところとなり、日本での検診や治療を希望する外国人も増えている。しかし中には招かれざる客も紛れているようだ。

中国・広東省出身の40代の中国人女性Wさんは、3年前から患っているC型肝炎の治療のため、2か月前に夫を伴って日本にやってきたばかりだ。

「中国で1年ほどインターフェロン投与による治療を続け、一旦は治ったように見えたのですが、半年後に再発。そんななか、ほぼ完治するという特効薬・ハーボニーの存在を医者から聞いた。ただ、その薬は中国国内では承認されておらず、海外の医療機関で治療する必要があるとのことでした」

興味を持ったWさんは、海外への医療ツアーを斡旋する複数の業者に接触した。ちなみに中国のC型肝炎患者数は約4000万人以上おり、国民病だ。こうした事情を受け、海外でハーボニーによる肝炎治療を仲介する業者は数多く存在するという。ただ、欧米での投与は完治までの滞在費を含め1000万円近くかかる。上位中間層に属するWさんにとっても、即断できる金額ではなかった。

「後発薬が使用されているインドや東南アジアなら100万円以下で済むらしいのですが、不安で踏み切れなかった。そんなとき、ある業者が日本での治療という選択肢を提案してきた」(Wさん)

問題は彼女が支払う費用だ。

「医療費に業者への費用、滞在費をあわせて200万円ほどです」

国が定めるハーボニーの薬価は5万5000円で投薬期間は12週間。完治までには薬代だけで最低465万円がかかる計算となる。

「国民健康保険のおかげです。薬代は月に1万円までしか取られないですから」(同)

実は彼女の在留資格は、医療滞在ビザではなく、会社経営のために滞在する場合に発給される経営・管理ビザなのだという。留学ビザや経営・管理ビザ、就労ビザなどで日本に3か月以上合法的に在留するすべての外国人は、国民健康保険(会社員なら社会保険)への加入が義務づけられている。同時に、日本人加入者と同様の恩恵を受けることができる。ハーボニーは肝炎医療費助成制度の対象となっており、国保もしくは社保の加入者は、所得によって自己負担限度額が月額1万円もしくは月額2万円までに制限される。つまり薬価ベースでは465万円かかる投与が、最低3万円で受けられるのだ。さらにハーボニーの薬代以外の診察料や各種検査費用なども、国保なので「3割負担」で済む。Wさんが依頼した業者は、この制度に目をつけ、格安でC型肝炎治療を受けられる方法を彼女に売り込んでいたのだ。

ちなみに医療滞在ビザで来日し、ハーボニー投与を受けた場合、滞在費を含めて600万円以上になると業者から言われたという。

薬価と患者の負担額の差額は、保険料と税金によって賄われていることは言うまでもない。Wさんは「保険料はきっちり払っている」と強調するが、前年に日本で所得のない彼女の保険料は、最低額の月4000円程度だ。

多くの日本人は、健康状態にかかわらず国保や社保の保険料を一生支払い続けなければいけない。治療目的で来日して国保に加入し、支払った保険料を大きく超えるような医療サービスを受けるというのは、公正とはいえない。

ちなみにWさんのビザ申請は「業者任せなのでわからない」と言う。どういうわけか。中国人ジャーナリストの周来友氏が明かす。

「経営・管理ビザは、資本金500万円以上の会社を設立し、その代表取締役になる場合に申請できる在留資格で、まず1年間滞在することができる。500万円の“見せ金”を用意できれば、割と簡単に発給されるため、日本でマンションを爆買いして移住する中国人にも人気のビザです。ビザ申請のためのペーパーカンパニーまで用意してくれる行政書士もいる」

■薬の新薬オプジーボも1回約6万円で済む

国保への加入を目当てにしているのはC型肝炎患者だけではない。北京市出身の50代のFさんは、都内で親族が経営する貿易会社に就労ビザのスポンサーとなってもらい、3か月前に来日した。しかし、Fさんに勤務の実態はない。来日前からステージ3の肺がんを患うFさんは、通院と療養の日々を過ごしているのだ。

Fさんが難病を押して来日したのも、がん免疫薬のオプジーボと、日本の国保の手厚さを知ったのがきっかけだ。

夢の新薬とも言われるオプジーボだが、薬価は100mgで約73万円(来年2月以降に半額になる)。1回の投与では、体重1kgに対して3mgを点滴するため、体重60kgの人であれば約131万円分のオプジーボが必要となる。2~3週間に1回のペースで回復が見られるまで投与する。

「中国でも並行輸入されたオプジーボを1回40万円ほどで投与してもらえる。しかし、どのくらいで治るか見当がつかない。そこで、がん医療が発達しており、中国よりも医療費の安い日本で治療を受けることにしました」(Fさん)

オプジーボの投与には、ハーボニーのような医療費助成制度はない。しかし国保には、一定以上の医療費支払いが免除される高額療養費制度がある。東京都港区国保年金課に問い合わせしたところ「来日したばかりの外国人で、前年度の所得がない場合、高額療養費制度により限度額は月に5万7600円になる」とのことだった。

保険適用を巡り、薬価の高額さゆえ「亡国の劇薬」とも揶揄されたオプジーボ。2か月前にやってきたばかりのFさんは現在、保険適用によるオプジーボ投与の前提となる診察や治療を受けている途中だという。

一部とはいえ、こうした来日中国人の行いは言語道断だろう。

<医療費を圧迫!狙われる高額薬剤と手術>

●オプジーボ…点滴静注100㎎72万9849円
小野薬品工業のがん免疫薬。来年に半額になるが、それでも高額なことには変わりない

●ハーボニー(1錠)…5万5000円
米ギリヤド社が開発したC型肝炎治療薬。3週間の投薬による治癒率は90%以上とも

●副鼻腔炎手術…100万~150万円
蓄膿症を改善するための手術。一般的に2時間未満で終わり、日帰りも可能なため人気だ

●冠動脈バイパス術…200万~400万円
狭心症・心筋梗塞の治療を目的とした手術。天皇が受けたことで、中国でも有名になった

●脊椎固定術…100万~200万円
脊椎の問題部分を固定する、腰痛治療のための外科手術。中国では東洋医学的治療が主流


日本の国民健康保険ほどありがたいものは、世界を探してもそうあるものではありません。こんなにお得な制度をちゃっかり悪用することに躊躇がないところは、免税店からのマージンをもらっても確定申告もせず、帰国してしまうスルーガイドと同じでしょう。いずれも、彼らの存在を知っていながら、それを利用している日本人がいるところも共通しています。彼らがいる以上、今後もこうした「言語道断」はなくなりそうにありません。

こういう報道もありました。

中国人に処方箋薬を横流し容疑、業者・医師逮捕(読売新聞2016年8月26日)
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0826/ym_160826_1404838657.html

中国人観光客向けに処方箋が必要な医療用医薬品を横流ししたとして、警視庁が、医薬品卸売会社「美健ファーマシー」(東京都千代田区)の社長や医師の男ら計4人を、医薬品医療機器法違反容疑で逮捕したことが、捜査関係者への取材でわかった。

中国人ブローカーの自宅からは2万6000点を超える医薬品が押収されており、同庁は、同社が大量の薬品を組織的に横流ししていたとみている。

捜査関係者によると、逮捕されたのは同社社長の財間英信容疑者(49)のほか、40歳代の社員と60歳代の仲介役、40歳代の医師のいずれも男計3人。社員の男が、インターネットの掲示板を通じて中国人ブローカーと知り合い、財間容疑者に紹介したのがきっかけだったという。


この件については、同じ読売新聞で今年9月下旬、連載された特集「ニッポン観光の影」でも報じられていました。

処方薬 広がる横流し(読売新聞2016年9月26日)
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同記事では「訪日観光で爆発的に拡大した日中間の人の流れは、医薬品の『闇ルート』まで広げてしまった。厚生労働省の担当者は言う。『非正規の市場が広がると、偽薬の要綱などによる健康被害にもつながりかねない。不正流通の監視強化も検討しなければならない』」と述べています。

治療代640万 払わず帰国(読売新聞2016年9月28日)
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この記事によると「飛行機で脳卒中を起こしたベトナム系米国人の女性」が成田空港から緊急医療センターに運ばれ命を取り留めたものの、旅行保険に入っていなかったため、約800万円の治療費のうち、160万円分をクレジットカードで支払った後、帰国し、残りの640万円を踏み倒してしまったそうです。

同記事は「訪日観光の急拡大は、国内の医療態勢やサービス、交通網などに想定外の負荷をかけつつある」と指摘しています。

これからもいろんなことが起こるでしょう。情報の共有と態勢づくりがますます必要になってきました。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-09 15:08 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 01日

トリップアドバイザーにまつわる数字と日本のインバウンドの話

先日、恵比寿ガーデンプレイスの34Fにあるトリップアドバイザー日本法人オフィスで開かれた同社のメディアラウンドテーブルに出席しました。今年9月に着任した牧野友衛代表取締役の紹介も兼ねたものでした。
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トリップアドバイザーは、世界最大の旅行コミュニティサイトとして知られています。今回のメディアラウンドテーブルの内容は、同サイトが旅行業界にもたらすプラスの効果をはじめ、インバウンドビジネスのトレンド、さらに国内ユーザーに向けた取り組みなどの紹介でした。そのあたりの話は、他に出席していた記者の方々がいたので、おまかせします。ぼくはあくまで日本のインバウンドに関する話題だけを以下、紹介します。

トリップアドバイザー
www.tripadvisor.jp

まず牧野代表取締役の紹介がありました。AOLジャパンやGoogle、Twitter Japanなどの多国籍IT企業を転々としてこられた方のようです。
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そして、トリップアドバイザーにまつわる数字が次々挙げられました。パワポの数字は、若干古いものだそうで、たとえば、サービスを展開する国の数が48カ国とされていますが、最近、ポルトガルが加わり、49カ国になったとか。まあとてつもない数字が並びます。

旅行者からの口コミ情報数 4億3500万件以上
月間利用者数 3億9000万人以上
旅行者からの写真投稿数 8000万件以上
登録施設数(ホテル、レストラン、観光施設) 680万軒以上
49の国と28言語で展開
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本社は東海岸のボストンにあるそうです。日本語でのサービス開始は2008年10月。開設が訪日旅行市場が急拡大する時期と重なったこともあり、外国人が日本を旅行するときに利用する情報サイトとしての存在感を得ていったと思われます。

では、どこの国の人が日本の情報をよく見ているのか。
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トップは米国で17.1%、2位は中国10.9%、以下、台湾10.2%、香港8.0%、オーストラリア7.0%という順です。トップ5で、全体の50%以上を占めるようです。米国発のサービスだけに、米国がトップなのはもちろん、韓国を除くと、訪日旅行者数トップ5が入っているのは当然です。台湾や香港、韓国などは、トリップアドバイザー以外の自国の情報サイトやコミュニティが充実していそうですから、こんなものでしょう。

これはぼくの想像ですが、アジアのユーザーはトリップアドバイザーに北米ユーザーが多いことは承知でしょうから、普段利用している自国サイトとは別の観点からの情報を得たり、参考にする場合に利用するという感じではないでしょうか。また中国人の場合、日本語のわかるコミュニティの人たちではなく、大学で英語を学んだり、外資系に勤めているような人たちがトリップアドバイザーを利用している気がします。

次の円グラフはちょっとわかりにくいのですが、アジア太平洋地区の国々に絞って、どの国がよく見られているかを集計したものですが、左の図は全世界からみた割合で、右はアジア太平洋地区の国々からみた割合です。ともに日本がトップです。以下はインドやオーストラリア、タイなどです。
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ところが、米国ユーザーに絞ってどの国をみているかとなると、日本は大きくダウンします。全体のわずか2%でしかありません。メキシコや欧州の国々が上位に入るのは、まあ当然でしょう。
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一方、中国ユーザーの場合は、トップがタイと日本でともに13%です。
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そんなわけですから、トリップアドバイザーによる世界の人気観光都市ランキングでは、東京は21位といったところです。
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これらの数字は、やはりトリップアドバイザーのメインユーザーが北米であることに起因していると思われます。

ところで、日本のホテルやレストラン、観光施設などの登録物件は現在、70万件だそうです。そのうち、日本語による口コミは全体の92%を占めるそうです。
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トリップアドバイザーは多言語化が進んでいるので、これらの日本語の口コミも海外では自動翻訳されて読むことができます(すべての国・地域ではない)。

さて、この数字をインバウンドの観点からみると、トリップアドバイザーの日本の物件に関する外国人の口コミは全体の8%にすぎないともいえます。同サイトはよく「外国人に人気」の観光スポットやレストランといったプレスリリースを発信していますが、これも8%の口コミの中から集計したものです。

ぼくは、すでに国内にはさまざまな旅行情報サイトやコミュニティがあるため、トリップアドバイザーは日本人が海外に行くときの口コミをチェックするためのサイトかとずっと思っていたのですが、国内物件に関しても日本語の口コミが大半を占めるんですね。

実は、FBにこの話を書いたら、知り合いの旅フリークのひとりが「クチコミ1件で100マイル(月間400マイルまで)をもらえていた時は、地元の情報を含め国内のクチコミをたくさん書きました。今は、ほとんどもらえないので書いていません」なんて教えてくれました。そうか、開設当初はとにかく登録物件数を増やせということで、キャンペーンをやっていたのですね。

この点に関して、ぼくはまったく勘違いをしていました。トリップアドバイザーに登録されている物件に口コミ件数が載っていますが、これは日本語と外国語を合わせたものなのですね。であれば、各都道府県別や地区別のランキングも、日本人と外国人の口コミを合わせた件数で、その比率まではわからないということです。

えっ、そんなの当然だって? そりゃそうか。外国人に限る集計は、トリップアドバイザー内部でしかできないわけで、そうなると貴重です。実際、同サイトのプレスリリースのリストをみていると、なかなか興味深いものが多いです。

たとえば、これなんか面白いですね。

トリップアドバイザー『旅行者物価指数(トリップインデックス)2016』を発表(2016.7.20)
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/07/00da71d62a5a3bd076514bf66c0c1903.pdf

これは世界20都市における旅行費用のランキングです。トップはニューヨークで、2位は東京だそう。最も安いのはハノイです。

またこんなのもありました。

中国人旅行客向けにレストランのモバイルクーポンサービスを開始(2016.11.26)
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/11/20161125_TripAdvisorPressRelease.pdf

これはトリップアドバイザーの中国版「マオトゥイン(猫途鹰)」のモバイルサイトやアプリから利用できるそうです。モバイルサイトや店舗のオフラインQRコードからスペシャルクーポンをダウンロードし、それを提示することで割引や無料のサービスなどを受けられるとか。

リリースによると「中国版「マオトゥイン(猫途鹰)」にて中国人旅行者が検索できる日本国内のレストランは600,000軒以上で、そのうちの約88,000軒が東京のレストランとなります。現在、同サービスは東京のレストランを中心に展開をしており、引き続きサービスを提供するレストラン店舗の拡大を目指して参ります」とあります。

トリップアドバイザーはぐるなびと提携しているそうなので、こういうサービスが実現できるのでしょう。でも、中国人からいきなりスマホを見せられて対応できる飲食店はどれほどあるのでしょうか。そんなことが気にならないではありません。

ところで、3年前のことですが、トリップアドバイザーの別の関係者の話を聞いたことがあります。

台湾でいまホットな話題は「シニア旅行」と「自由旅行」(台北ITF報告その6)
http://inbound.exblog.jp/21417412/

台北で開かれていた旅行博のフォーラムに登壇したトリップアドバイザーアジア太平洋地区副総裁(当時)のCindy Tanさんで、「他の類似サイトの追随を許していないことから、世界のFITの支持を勝ち得ている。年間書き込まれる1億件のコメントのうち、51%はホテルに関するもの。膨大な口コミ情報をフィードバックできることが、弊社のホテル業界に対するマーケティング・ビジネスを支えている」とコメントしていました。

3年前の口コミ数は1億件だったようなので、いまは4倍以上に増えているのですね。それと、このサービスの収益の大半は、ホテル業界との関係によるものだと彼女も話していましたが、牧野社長も同様の話をしていました。要は「ホテル予約の際のクリック型広告による」ものだそうです。Booking.comと提携しているとか。ホテル予約サイトとは立ち位置が違うところが、このサービスの面白いところだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-01 13:09 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 30日

タイでも「ゼロドルツアー」摘発! キックバックに頼る中国人ツアーは万国共通

こんな記事をネットで見つけました。タイのインバウンド市場に関するニュースです。

タイ、12~2月の観光ビザ申請無料に(newsclip.be2016年11月23日)
http://www.newsclip.be/article/2016/11/23/31278.html

2016年11月22日、タイ国軍事政権は2016年12月1日から2017年2月28日までの3ヵ月間、観光ビザの申請料1000バーツを免除し、到着時ビザの申請料を2000バーツから1000バーツに引き下げることを閣議で承認した。

タイは例年、乾期の11月~2月が観光のピークだが、今年は中国人向けツアーの取り締まりや、プミポン国王死去にともなう自粛ムードなどから、観光者が減少してしまうことが懸念されている。今回の施策はそんな中で旅行者誘致が狙いとみられる。

タイは乾期の11~2月ごろが観光の書き入れ時だが、今年は中国人向け「ゼロドルツアー」の取り締まり、10月のプミポン国王死去にともなう自粛ムードなどで、客足が鈍ることが懸念されている。


えっ、「ゼロドルツアー」って何? 記事は以下のように説明します。

「ゼロドルツアー」はタイでの宿泊費、食費、ツアー費などが全て無料とうたった中国人向けツアー。ツアー参加者がタイ滞在中に宝石店、皮革製品店、絹製品店などに連れて行かれ、高値で商品を買わされるなどトラブルが多く、軍政が取り締まりを進めている。取り締まりの影響で、一部の観光地で中国人旅行者が激減したという報道がある。

なるほど。要するに、日本で行われているような免税店で購入した土産物の売上からキックバックをもらい、ホテルやバス代、食事代などのコストを切り盛りする中国人ツアーがタイでも行われているということです。

ネットで調べると、今年9月、タイでこの種のツアーを扱うランドオペレーターが摘発されたことがわかりました。

中国人向け「ゼロドルツアー」運営会社を摘発(グローバルニュースアジア2016年9月18日)
http://www.globalnewsasia.com/article.php?id=3756&&country=2&&p=2

2016年9月13日、タイ警察は資金洗浄取締法、旅行業法などの違反容疑でバンコクの大手旅行会社OAトランスポートの会長であるタイ人女性(61)と、その息子(26)で取締役の2人を逮捕した。

この逮捕に先立ち、タイ資金洗浄取締局(AMLO)は9日、OAトランスポートが所有する大型バス2000台以上、計90億バーツ相当の他、銀行預金、現金など42億バーツを差し押さえた。

OAトランスポートは「ゼロドルツアー」と呼ばれる、タイでの宿泊費、食費、ツアー費など全て無料とする中国人向けツアーを、中国の旅行会社と組んで運営し、巨額の利益をあげていた。

「ゼロドルツアー」に関しては、ツアー参加者がタイ滞在中に宝石店、皮革製品店、絹製品店などに連れて行かれて、高値で商品を買わされるケースが頻発し、タイ軍事政権が取り締まりを指示していた。


さらに検索すると、以下のブログの記事も見つかりました。

そのブログ「タイ字新聞、タイ語の記事をとりあえず日本語に」(http://taigoshinbum.blog79.fc2.com/blog-entry-1550.html)によると、

摘発されたのは「大手のゼロ・ドル・ビジネスを行っている会社、フーアン社、シンユアン社」の2社。「2社とも、違法にタイのIDカードを用いてツアー会社を設立し、秘密結社法に違反していた。資金洗浄取締局の財産没収罪となる。その後の拡大捜査で、広範なネットワークを持つ大手のオーエー・サーンサポート社に捜査が及び、ツアーバスが押収された」。

「5日間の飛行機代、車代、滞在費と食費を入れて、だいたい2,000~5,000バーツだ。ツアーの主催者はツアー料金があまりに安すぎると考えるが、中国人のツアー客を毎晩引き連れて買い物させ、商品価格の35-50%をサービス料として割り増している」と解説しています。

気になるのは、「フーアン社、シンユアン社」の実態です。あとでタイの知人に聞いてみたいと思います。

さて、これは日本に限らず、香港、台湾、韓国、オーストラリアなどのアジア太平洋地区、そして欧米諸国でも、万国共通で当たり前に行われていることですから、いまさら驚く話ではありませんが、「ゼロドルツアー」というネーミングがいかにもタイらしいというべきか。

結局、こうしたことは、中国国内のビジネス慣行を海外にもそのまま持ち出し、在外華人らと結託することから起きてしまうことですが、摘発による影響で中国人観光客が減少したことから、今度は観光ビザ代の申請料免除で、各国の旅行者を呼び込もうというわけでしょう(日本人はもとからビザ不要なので関係なし)。大挙して来れば問題を起こすし、来ないとなれば困る。それは周辺国の抱えるジレンマです。難しいものですね。

この人騒がせな中国人ツアーをめぐる各国の対応と攻防はこれからも続くことでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-30 14:54 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 30日

フィリピンでも「爆買い」!?  それは中国が観光を政治の取引に使ったという話にすぎない

昨日、ネットで以下の記事を見つけました。フィリピンを訪れる中国人観光客が増えているのだそうです。

ドゥテルテ訪中効果?中国人観光客増で”爆買い”期待(WEDGE2016年11月29日)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8321

フィリピンを訪れる中国人観光客が急増している。比中関係は2012年4月以降、南シナ海における領有権争いの問題で長らく冷え込んでいたが、ドゥテルテ大統領による10月半ばの訪中で関係が回復した。また、中国当局がフィリピンへの渡航自粛勧告を解除したことも追い風になり、今後はさらなる増加が予想されている。

フィリピン観光省の統計によると、今年1~8月の中国人観光客数は約48万4500人に上り、韓国人(約97万6400人)、米国人(約58万4100人)に次いで3番目に多かった。

フィリピンへの外国人観光客数は昨年まで、上位3カ国は韓国、米国、日本の順で長らく変わることはなかった。日本と僅差で4位につけた中国は今年、現段階で4位の日本(約36万7100人)を大きく引き離しているため、通年で中国が3位にランクインするのはほぼ確実な情勢だ。中国人観光客の前年同期比の伸び率は50%と突出して高く、2位の米国をも抜く勢いで増え続けている。

フィリピン観光省によると、中国人観光客が急増している背景には、数年前からチャーター便を利用した団体客が増えたことが大きい。300人程度の団体客が、北京や上海など、中国各地の大都市からフィリピンの有名リゾート地であるボラカイ島やセブ島へ大挙して押し寄せているという。

3泊4日のツアーで客層は中年が多く、1日当たりの出費額はホテル代込みで80ドルに上る。日本で一時期話題になった「爆買い」には及ばないが、この勢いを受けて昨年、フィリピンと中国を結ぶ便数も増え、観光客増に拍車を掛けることになった。

ドゥテルテ大統領が今回の訪中で取り付けた中国からの経済協力は240億ドル(約2兆5000億円)という莫大な額だ。この影響で中国からの観光客増はさらに見込まれるが、観光省の担当者は「これまで通りボラカイ、セブ両島だけでなく、他の魅力ある島への誘致も進めたい」と意気込む。

ただし、昨年末にはボラカイ島のホテルで中国人観光客のグループ約30人が乱闘騒ぎを起こして警察に拘束される事件が起きており、マナーという点で懸念も残されている。


この話、どう思いますか? ぼくはこれを聞いて、呆れてしまいました。なぜなら、香港、台湾、韓国でいま中国政府が何をやっているかと思うと、あからさますぎるからです。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです
http://inbound.exblog.jp/26367228/
韓国は無視? 東京で日中観光大臣会談の気になる背景
http://inbound.exblog.jp/26408250/

中国政府は、自分の気に入らない国には観光客を送るのをブレーキをかけさせ、ドゥテルテ大統領の登場で対中関係を表向き改善したフィリピンには、観光客を送るよう仕向けているわけです。

この記事では、フィリピンでも「爆買い」か!? と面白がっているのかもしれませんが、 それは中国が観光を政治の取引に使ったという話にすぎません。まったくシラけた話です。

それに、増えているのは中国の団体客です。要するに、来るのはキックバックモデルの安いツアーばかり。それを成り立たせるために、土産の大量買いが起こるのでしょうが、数年もすれば、他のアジアの国々と同じように問題も出てくることは必至です。

中国客が増えても大歓迎といえないのは韓国、台湾でも同じらしい
http://inbound.exblog.jp/23872141/

フィリピンを訪れる外国人数で、昨年まで韓国、米国に次ぐ3位だった日本は、今年中国に抜かれるそうです。もっとも、昨年フィリピンを訪れた日本人は37万人相当だったようなので、今年は日本を訪れるフィリピン人の数と変わらなくなるかもしれません(2016年1~10月の訪日フィリピン人数は前年比30.9%増の27万6500人)。

こちらは時代の変化を感じさせる話です。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-30 14:31 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 26日

韓国は無視? 東京で日中観光大臣会談の気になる背景

今週、以下の記事が配信されていました。今年9月に中国の武漢で開催される予定だった日中韓3ヵ国の観光大臣会合が中国側の事情で延期になっていましたが、メディアによると「(中国側代表は)米国での観光イベントに出席した帰路、会談のために日本を訪問」(トラベルヴィジョン2016年11月24日)し、日中のみでの会談が実現したようです。

「ぼったくり追放」も合意 日中両国が観光拡大の覚書(産経ニュース2016.11.24)
http://www.sankei.com/world/news/161124/wor1611240041-n1.html

石井啓一国土交通相と中国の李金早国家観光局長は24日、日中観光の活性化について意見交換し、観光交流の拡大や観光サービスの質向上に向けて協力するなどの内容を盛り込んだ覚書に署名した。また、来年の日中国交正常化45周年、翌年の日中平和友好条約締結40周年の節目に合わせ、共同イベントを企画する方向で合意した。

覚書の合意事項は、(1)地方間交流や青少年交流、文化・スポーツ交流の3分野での観光交流促進(2)東アジア域外からの観光客誘致(3)観光サービスの質向上(4)「ぼったくりツアー」といった違法行為の是正など観光市場の監督と協力の強化(5)重要事項を定期的に協議するメカニズムの整備-の5点。

会談で、石井氏は中国からの訪日客が10月までに551万人に達したと説明し、「双方向の観光交流を一層拡大することが重要」との認識を示した。


両国の合意事項として挙げられる5点のうち、興味深いのは、(2)東アジア域外からの観光客誘致と(4)「ぼったくりツアー」といった違法行為の是正など観光市場の監督と協力の強化でしょうか。これはどういうことを指すのか。

産経の記事は大雑把なので、別の記事を見てみましょう。

中国から国家旅游局長が来日、石井大臣と会談、MOUも(トラベルヴィジョン2016年11月24日)
http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=75421

記事の一部を以下、抜粋します。

「東アジア域外からの観光客の誘致」については、15年の3大臣会合で決定した「ビジット・イースト・アジア・キャンペーン」の推進をはかるとともに、20年夏の東京オリンピックと22年冬の北京オリンピックについて情報と経験を共有することで一致。「観光サービスの質の向上」「観光市場の監督と協力の強化」では、観光客にとってより安全で快適な環境を作るため、不合理な格安ツアー、買い物の強制、ぼったくり行為などの減少に向けて連携することを確認した。観光庁は啓発のための新たなポスターを、近日中に制作する予定。

ここでは両国の合意事項の中身についてもう少し詳しく書いています。(2)については、2020年夏の東京オリンピックと2022年冬の北京オリンピックの開催が決定していることから、東アジア全体で海外からの旅行者の集客について協力しようということでしょう。
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そして(4)については、以前本ブログでも解説した中国のキックバックスキームに依存する安価なツアーの問題と、そのようなツアーがキックバックを得るために客を連れて行かなければなかった日本国内にある「ブラック免税店問題」を指していると思われます。今日、日本を訪れる中国人観光客は日本人の訪中客よりダブルスコア以上に多いことから、中国側としてはこの問題についての日本側の姿勢を問い正したいと考えていても不思議ではありません。要は、多くの訪日中国客を騙す「ブラック免税店」を日本の監督官庁はきちんと取り締まってほしいということなのでしょう。

中国「新旅游法」は元の木阿弥―キックバックを原資としたツアー造成変わらず
http://inbound.exblog.jp/24166349/

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/

それにしても気になるのは、なぜここに韓国側代表がいないのか? お国の事情がそれどころではないのかもしれませんが、なんだか韓国だけ除け者にされているような感じです。2018年には平昌冬季五輪もあるというのに…。

「日中韓観光大臣会合」は2006年から毎年行われていましたが、尖閣諸島「国有化」で、12年以降、中国側が一方的に開催を拒絶していたものの、15年4月、4年ぶりに第7回目として再開され、冒頭で述べたように今年も9月に開催される予定でした。ところが、今夏の中国、特に内陸部は大雨で被災したことから、延期となっていました。

武漢での日中韓観光大臣会合が延期に、理由は水害(トラベルヴィジョン2016年8月7日)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=73790

武漢市各所が豪雨のため冠水、「航海」する車や人々(人民網日本語版2016年06月02日)
http://j.people.com.cn/n3/2016/0602/c94659-9067233.html

当時中国メディアは、被災地の正確な状況や被災者数などを詳しく伝えず、人民解放軍らが復興支援で活躍する様子ばかりをテレビに映すので、知り合いの中国人たちは不安を隠せないと話していました。9月上旬、日本旅行業協会(JATA)の知人から「会合が延期になり、武漢行きがなくなった。どういうことだろう?」と聞かれ、場所が武漢であれば仕方がないと答えたことがあります。この時期、海外メディアには武漢に来てもらいたくないという事情もあったかもしれません。

今年、中国とアメリカは「中米観光年」を迎えていました。両国の観光交流を相互促進しようという年だったのです。

習近平主席が「中米観光年」閉幕式に祝辞(人民網日本語版2016年11月22日)1
http://j.people.com.cn/n3/2016/1122/c94474-9145227.html

米国で開催されたイベントの「帰路」に中国の国家観光局長が日本に立ち寄ったというのは、そういうわけです。

いま中国は香港、台湾のみならず、THAAD配備を決めた韓国に対しても徹底して報復措置を実施しているところですから、お呼びではないということなのかもしれません。日本側もわざわざ声をかけるという気にならなかったということか。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです
http://inbound.exblog.jp/26367228/

ここ数年、日本を訪れる外国人観光客が増えている反面、中国を訪れる外国客は伸び悩んでおり、北京冬季オリンピックに向けて、この方面については日本と協力したいという思惑が彼らの側にはあるのかもしれません。

アジアで珍しく外国客数が伸び悩む中国の観光PRのお寒い中身
http://inbound.exblog.jp/24475269/

だとしても、ここまで露骨に観光を政治の取引に使う中国との協力を、どこまで本気に進めればいいものか、考えてしまいます。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-26 14:14 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 19日

中国客が挙動不審に見えてしまう理由(すでに個人比率54%というけれど)

最近、都内でも中国本土の個人客が増えてきたことを実感します。こんな記事がありました。

中国人訪日観光客の買物は次第に理性的に(人民網日本語版 2016年10月05日)
http://j.people.com.cn/n3/2016/1005/c94473-9123124.html

ビザ制度の緩和、交通の整備、日本のサービス業や商品の良い評判にともない、近年日本を訪れる中国人観光客は過去最多を更新し続けている。今年の状況を見ると、中国人訪日観光客の買物は次第に理性的になり、以前のような「爆買い」ではなくなっている。新華社が伝えた。

2015年に中国人の海外旅行者数は延べ1億2000万人で、うち499万人が日本を訪れた。中国国家観光局駐日代表処の羅玉泉首席代表は取材に「今年、中国人訪日観光客は依然として比較的高い伸びを維持し、8月まですでに延べ450万人に達した。年間では延べ700万人近くになる見通しだ」と述べた。

目薬から便座まで、カメラから腕時計まで、中国人訪日観光客は元々たくさん買い物をすることで有名で、日本語にはこうした買物を専門に指す新語「爆買い」まで生まれた。だが、今年中国人訪日観光客の平均消費額は減少した。羅氏は、円高や中国人の買物がより理性的になっていることと関係があると考える。

2015年の中国人訪日観光客の1人当たり旅行支出は28万4000円近くで、うち買物の支出は16万円を超えた。一方、訪日外国人の平均買物支出は約7万4000円だった。だが今年上半期、中国人訪日観光客の1人当たり買物支出はすでに約12万4000円にまで減少した。

羅氏によると、中国人訪日観光客の変化はこれだけではない。観光客の居住地を見ると、以前は上海、北京、広東省が中心だったが、現在は江蘇省、浙江省、天津市、四川省、重慶市、遼寧省在住の観光客が増えてきている。2015年、上海、北京、広東省在住の観光客の割合は48.8%にまで下がった。

もう1つの大きな変化は自由旅行者の割合が次第に増加していることだ。2011年には自由旅行者の割合は4分の1に過ぎなかったが、2012年には30%に近づき、2013、2014年には40%に近づき、2015年には44%に達し、今年上半期は54%まで増加した。

また、中国人観光客の訪日目的も多様化してきている。伝統的な日本の風情と文化だけでなく、より日常生活に近い体験も望んでいる。新浪微博(ウェイボー)上の「日本で何をしたいか」に関する調査では、「買物」「日本料理を食べる」「温泉に入る」以外に、和服を着ての写真撮影、花見、スキー、民宿への宿泊などが挙がった。美容、そば作り体験、AKB48の握手会などへの参加を希望する若者も多かった。


この記事では、中国客の「買物は次第に理性的になり、以前のような「爆買い」ではなくなっている」としれっと書いているところに苦笑してしまいます。あの手この手で「爆買い」を「強制終了」させたのは、誰だったのでしょう? 

中国客の「爆買い」はこうして終わった で、今後はどうなる?
http://inbound.exblog.jp/26190593/

「爆買い」騒ぎで、海外から驚きと呆れ交じりのまなざしを向けられていた中国客でしたが、それは彼らの本能のようなもの。そうなる理由もいろいろあったはずです。でも、中国メディアはそれを非「理性的」だと否定的に捉えていたのです。

では、その後彼らが買い物をしなくなったかというと、そうでもないようです。

先日も中国から友人が東京に来ていましたが、ホテルの部屋に届け物をしに訪ねると、超ビッグなスーツケースを持ってきていて、「いろいろ頼まれるので、買い物が大変」と話していました。建前上、関税がかからないようにするためには、5000元(約8万円)以内に土産代を収めなければならないのですが、そういうわけにもいかないそうで、粉ミルクやもろもろ頼まれたものは、すでに郵便局から送ったそうです。

「訪日目的も多様化」していると記事にあるように、だんだん台湾や香港、タイの人たちに交じって中国本土客もこれまでとは違うスポットに出没していくのでしょう。中国メディアは、すでに全体の54%は個人ビザ客だといっています。

それはそれで心配です。その結果、何が起きているかというと、他の国々の観光客とは違い、街中で独特の異質感を漂わせる中国客の姿が目につくようになるからです。

正直なところ、香港や台湾の人たちは日本の社会に溶け込んでいるので、なかなか外国客だと気がつかなくなっているのですが、中国客は彼ら特有のどこか挙動不審の顔つきや荒っぽい話し方、洗練からはほど遠いふるまいから、すぐにそれとわかってしまうところがあります。単に言葉の問題ではなく、台湾や香港、タイの人なら、電車の座席の隣に座って「どっから来たの?」と話しかけても、ごく普通にお互いの意思や好意が伝わり、物腰の柔らかさを感じるのですが、中国の人相手では会話もこわばり、なかなかそうならない印象があります(日本に住んでいたり、日本語を話せる中国人は別ですけれど)。

台湾人やタイ人なら、日本を楽しんでいる感じが伝わってくるのです。ところが、中国客の場合、いったいこの人たち誰? 何しに来ているの? なんとも場違いな印象を周囲に与えてしまう。そのくせ、自撮りのときだけ、派手なポージングを見せるものだから、引いてしまう。結局、「爆買い」も、いろんな人から頼まれ、たくさん買わなきゃならないという理由はわかるとしても、なぜそこまでするのか。およそ外国人からすれば、理解不能に見えたことでしょう。

もともと外国人とのコミュニケーションに慣れていないところはありそうです。中国は多民族国家ですが、少数民族は「外国人」ではないので、本当の意味での異文化に慣れていないのが実情です。中国メディアも、海外との違いをごまかしがちです。しかし、問題は彼らがそもそも外国を訪ねておきながら、内輪で固まり、その国の人たちとコミュニケーションを取ろうとしている風に見えないところでしょうか。

このままでは、彼らはますます日本社会に誤解を与えてしまいそうです。こういう自らの異質性に気づいて、中国客のふるまいや態度を一般の国並みに変えるよう勧告することこそ、中国メディアに求められるのではないでしょうか。余計なお世話かもしれないけれど、やっぱり心配です。

中国個人客の増加で電車内でのトラブルが増える予感
http://inbound.exblog.jp/26380202/
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by sanyo-kansatu | 2016-11-19 18:20 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 10日

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです

昨日、中国黒龍江省から訪れた友人の旅行関係者に会ったのですが、突然こんなことを言い出しました。

「韓国はこれから大変ですね」
「朴大統領の支持率が急落し、デモが起きていること?」
「それもそうですが、11月上旬に政府から訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達があったからです」。
「ハルビンからも多くの観光客が韓国に行っているんですか?」
「ええ、そうです。日本に行くより多いです」
「ハルビン・ソウル線も多いのですか」
「はい。でも、こうなると、減便になるかもしれません」

この話は、すでに韓国メディアで報じられていました。

中国政府「韓国に行く中国人観光客20%減らせ…ショッピングも1日1回だけ」(中央日報/中央日報日本語版2016年10月25日)
http://japanese.joins.com/article/987/221987.html

一部を抜粋します。

「中国政府が韓国を訪問する中国人観光客数を昨年より20%以上減らせという指針を各省の一線の旅行会社に出したことが確認された。

在中大使館および各地域総領事館・旅行業界によると、先週、上海・江蘇・浙江・安徽・陝西など現地政府が管轄地域内の旅行会社の幹部を招集したり電話をかけたりしてこうした内容を口頭で伝えた。通知内容の中には▼韓国に送る旅行客を減少させる方法と対策を今月末までに報告▼格安団体観光の販促中止▼韓国現地ショッピングは一日1回に制限▼これを犯した場合は30万中国元(約450万円)の罰金--などの内容がある」。

同じ通達が少し遅れて黒龍江省にも発せられたということでしょう。

このようなお上からの民間企業への通達は、中国ではよく行われるものです。今回は、国家旅游局の省の部局が現地旅行関係者を集め、口頭で伝えたようです。中国では自国民の海外旅行者の名簿は旅游局に提出が義務付けられています。ですから、たとえば今年2000名の訪韓客を扱った旅行会社は来年は上限1600名以上は許可を出さないということです。まったく市場経済とはほど遠い世界ですね。

「なぜいま頃になって急に?」と彼に聞くと、「THAADの影響でしょう」と迷わず答えます。そりゃそうでしょう。中国メディアは連日のように韓国のTHAAD配備決定を批判し続けていたからです。中国の一般国民からすれば、間違いなく報復措置だというのが認識のようです。

それでも、上記記事には「中国当局がなぜこうした決定をしたのかはまだ疑問だ。韓国関連機関・業界は高高度ミサイル防衛(THAAD)体系の韓国配備決定に対する報復措置である可能性と格安観光の弊害を減らすための対策である可能性を分析中だ。ソ・ヨンチュン韓国観光公社北京支社長は「中国当局が今回の決定を出した理由についてはっきりと説明していない。いかなる理由であれ中国人観光客の減少による打撃が懸念される」と話した」とあります。韓国側は、それを報復措置だとは受け取りたくないのでしょうか。現実から目を背けたいのでしょうね。

もっとも、「通知内容には格安旅行に対する規制が含まれている。格安商品はビラやインターネット・SNSを通じた一切の広告活動ができないようにし、これを犯した場合は30万元の罰金を科して行政監視も強化すると警告した。一部の地域は価格基準を2000元(約3万1200円)と明示したりもした」とあるように、土産の売上からコミッションを得て成立させているようなツアーの弊害を根絶することが狙いという説明もあるようです。

しかし、それは受け入れ側の韓国の問題だけでなく、送り出し側の中国の問題でもあるわけで、結果的には訪韓中国人観光客を減らすことにつながることは変わりありません。

これをうけ、韓国メディアは「韓国のホテルと免税店の打撃は避けられない」と言っています。

中国当局、「遊客」の韓国行きを制限...泣き面に蜂の旅行・流通業(MK NEWS2016-10-27)
http://japan.mk.co.kr/view.php?category=30600004&year=2016&idx=5246

表向き、消費者保護を謳いながら、その実、観光を政治の取引に使うやり口は、台湾や香港ですでに見られたものでした。

中国政府は相手が気に入らなければ観光客を減らす― 蔡英文当選後の台湾インバウンド事情
http://inbound.exblog.jp/25941821/

いまのところ、日本への中国人観光客の制限は出ていないようです。黒龍江省の彼からすれば、韓国方面が減る以上、タイや日本への送客は増えるだろうといいます。

もっとも、今回の措置、中国側の表向きのロジックは「格安旅行の弊害を減らすための対策」ということですから、いずれ日本国内の「ブラック免税店」問題などを持ち出す日がくるかもしれません。

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/

今回のような韓国に対する報復につながる通達は、政権上層部から直接出ているというより、中国の場合、各行政機関が政権の意に沿うように自発的に打ち出しているのではないか。政権のおぼえをよくすることは出世につながる。少々訪韓客が減っても、天秤にかければ利は残るという自分都合の発想から出てきたに違いないでしょう。これまでの経緯をみていると、そう思ってしまいます。

でも、こうした中国政府のやり口で影響を受けるのは周辺諸国だけではありません。実際には自国民への不利益をもたらすはずです。なぜなら、中国政府は相手が弱いとみると、容赦なく弱みを突いてくるけれど、そんなことばかりしていては、中国人観光客の受入国は彼らを尊重しようとする意欲を失いかねないからです。「中国人観光客縮小」カード(中央日報)の安易な持ち出しは、周辺諸国から警戒されるだけで、尊敬されることはありません。そんなことに、いつになったら気づくのでしょう。

【追記】
中国政府も、いよいよ日本にも物申してきたようです。北朝鮮に対する防衛のため、THAADの配備を日本が検討し始めたとたん、黙ってはいられないようです。

「慎重な対応を」=日本のTHAAD導入検討で-中国外務省(時事通信2016.11.28)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016112800714
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by sanyo-kansatu | 2016-11-10 16:04 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 02日

「消費」が減れば「薄い恩恵」とは、ちょっと浅ましすぎないか

先月末の31日に、国土交通省は今年の訪日外国人数がこの時点で2000万人を突破したことを報告しました。

その翌日の11月1日、以下の記事が出てきました。

訪日2000万人、薄い恩恵 クルーズ船客が牽引、大台突破も… 地元商店寄らず・宿泊なし(朝日新聞2016年11月1日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12636227.html

今年に入って日本を訪れた外国人客が2千万人を超えたと、国土交通省が31日発表した。年間で2千万人の大台を突破するのは初めて。中国などアジアからのクルーズ船客が急増し、伸びを牽引(けんいん)している。ただ、訪日客の伸び率は鈍化しており、地域経済へのプラス効果も期待されたほどではないようだ。

1年間の訪日客数は、前年比2割増の2400万人前後になる勢いだ。とくにクルーズ船での訪日客が増えており、今年は前年の倍の200万人強になるとみられている。

クルーズ船は日本の地方都市にも寄港する。国交省は「地方創生」につながるとし、港湾整備費として2017年度予算で16年度当初比66%増の137億円を要求した。

だが、地域経済への恩恵は、政府の期待ほど広がっていないのが実情だ。

宮崎県日南市の油津港。10月中旬の朝、マンションのように多くの客室を備えるクルーズ船が岸壁に到着し、降りてきた訪日客が大型バスに乗り込んでいった。宮崎県内の神社を二つ回った後、地元商店街には寄らず、県外企業が運営する免税店に向かった。この店はクルーズ船が来港したときだけ開く。地域に恩恵を広げようと、地元商店などが出店する物産展を日南市などが港で開く動きもあるが、地元商店街のパン店で働く女性は「訪日客が増えても、私たちにはいいことがない」とこぼす。

日本に寄港するクルーズ船ツアーの多くは、中国の旅行会社が企画。韓国と日本を回るコースが典型だ。

寄港地での行き先を決めるのは、ランドオペレーター(ランオペ)と呼ばれる仲介業者。立ち寄る免税店からマージン(手数料)を受けとる。高額なマージンの店ばかりに行き、その店で割高な商品を売りつけられるなどのトラブルも報告されている。中国でも「ぼったくり免税店」と問題視する報道が出始めている。

ランオペを規制する法律は、日本にはない。観光庁は6月に実態調査を始めたばかりで、対応はおくれ気味だ。(柴田秀並)

■消費総額、前年割れ

観光庁の統計によると、8月の外国人の国内宿泊者数は3年半ぶりに前年同月比で減少に転じた。船内で寝泊まりできるクルーズ船による訪日客が増えていることも影響しているようだ。下船して宿泊しないと、国内での食事や買い物の機会も減る。7~9月の訪日客の消費総額は約5年ぶりに前年割れした。

中国当局の関税引き上げや円高などで「爆買い」ブームも去り、訪日客1人あたりの消費額も前年割れが続く。訪日が2回目以上の「リピーター」が買い物にこだわらずに観光を楽しみ始めたとの見方もあるが、リピーター率は50%台半ばから伸びていない。

一方で、ホテル不足は深刻なままだ。政府は年間の訪日客数を「2020年までに4千万人」に増やす目標を掲げるが、宿泊施設を確保できるかは不透明だ。

訪日客に人気の大阪市では、14年度に25件だった宿泊施設の建築計画届が、今年度は上半期だけで183件と急増している。三菱総合研究所によると、18年までに大阪市のホテル客室数は2割近く増え、新たに8500室ができる見通しだ。小泉洋平主任研究員は「それでも訪日客を倍増させる目標に照らすと十分とはいえない」と指摘する。

宿泊施設不足の打開策を期待される「民泊」の普及でも、政府の対応は後手に回っている。法案の提出は、来年の通常国会になる見通しだ。(奥田貫、田幸香純)


言いたいことはよくわかるけど、訪日外国人による消費額が前年割れしたとたん、「薄い恩恵」とは、いささか浅ましすぎるもの言いではないでしょうか。まるで、たくさん買い物しないようなら、外国客はお呼びでない、とでもいうのでしょうか。問い詰めれば、そんなつもりはないと答えるのでしょうが、外国の人たちからすれば、そう受け取れなくもない気がします。

このメディアがこのようなタイトルをつけるのは理由があるように思われます。安倍政権が「アベノミクス」の成果とばかりに持ち上げた訪日旅行市場の盛況について、これ自体は否定しにくいため、「経済効果」が広がらないことで、批判の対象にしたいのではないでしょうか。

自分の手柄のように持ち上げた政権側もどうかと思いますが、基本的に、インバウンドを政治イシューにすることは得策ではないと思います。相手がいる世界だからです。むしろ、インバウンドの本来の目的は「経済効果」ばかりにあるのではないことを説くことが必要ではないでしょうか。

少なくともこの数年、メディアはインバウンドの「経済効果」を、しぶしぶなのかどうかわかりませんが、伝えることに熱心でした。まるで、インバウンドの意義がそこにしかないかのように。

これからは「経済効果」のみにこだわらない議論を始めてほしいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-02 14:14 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 10月 22日

ランオペ登録制は一歩前進。ガイドも登録制にできるだろうか

今朝の朝日新聞の一面に以下の記事が掲載されました。

「ランオペ」業者、登録制に 旅行会社に代わってバスなど手配 観光庁方針」(朝日新聞2016年10月22日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12619915.html

観光庁は、旅行業者に代わってツアーバスやガイドの手配などをしている仲介業者の規制に乗り出す方針を決めた。仲介業者は「ランドオペレーター(ランオペ)」と呼ばれ、全国に少なくとも864社あるが、安すぎる運賃でバスを手配したり、不適切なガイドを派遣したりするトラブルが相次いでいた。旅行業法の規制の対象外ログイン前の続きだったが、登録制を導入して指導・監督する。来年の法改正を目指す。

■訪日客、トラブルも

ランオペは、旅行業法で登録されている旅行会社の依頼を受けて、バスやホテル、ガイドを手配する業者。自前の調達能力に乏しい中小の旅行業者にとって、欠かせない存在だ。旅行客と直接契約を交わさないことから、旅行業法の規制の枠外とされてきた。国や自治体への登録も必要なく、観光庁も実態を把握できていなかった。
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今年1月、長野県軽井沢町で15人が死亡したスキーバス事故も、ランオペがツアー会社とバス会社を仲介していた。バス会社は道路運送法に基づき、安全な運行に最低限必要な下限運賃を国に申請している。事故を起こしたバスは、それより安い料金で手配されていたが、規制対象外のため、観光庁はランオペには行政処分を科すことができなかった。

観光庁はランオペの実態を探ろうと6月以降、国内の旅行業者やバス、宿泊業者など約1万社に、ランオペとの取引状況を尋ねた。その結果、少なくとも全国で864社のランオペが営業していることがわかった。そのうち、業務範囲について調査に応じたランオペ223社は、訪日外国人旅行の専業が68社(30・5%)、日本人国内旅行専業が57社(25・6%)、両方が98社(43・9%)だった。

ランオペが絡むトラブルについては、旅行業者812社のうち46業者が「キックバックを前提とした特定の土産店などへの連れ回しへのクレームがあった」と回答。宿泊施設やバスなどの関連事業者186社への問いでは、43社が「直前でのキャンセルがあった」と答え、32社が「バス事業者への最低価格割れ料金での手配があった」、18社が「料金未払いがあった」と回答した。

訪日外国人からは、ランオペが手配したとみられるガイドに対し「酵素や納豆を不当に高い価格で薦められた」「熱心に薬を薦められたが偽物だった」などの苦情が相次いでいた。

2020年に東京五輪・パラリンピックを控え、近年、日本を訪れる外国人観光客が増えている。悪質な業者を野放しにしてツアーの質が落ちれば、好調な誘客に水を差すとの懸念も指摘されていた。

観光庁はランオペを登録制にすることで、不正が起きないように監督、指導していく方針。具体的な監督や指導の手法は固まっていないが、旅行中の安全確保などランオペの責任を明文化し、違反した場合にペナルティーを科すことなどを検討している。年内に取りまとめて、ツアーの質や、バス運行の安全性向上につなげる意向だ。(伊藤嘉孝)


9月下旬には、読売新聞が「ニッポン観光の影」という全6回の連載をしていましたが、メディアがいわゆる「外国客の消費力による経済効果」ばかりを報じていた去年までと違い、訪日外国人旅行者の増加にともなう負の側面を伝えるようになったことを歓迎したいと思います。

この記事では、「旅行業者に代わってツアーバスやガイドの手配などをしている仲介業者」である「ランドオペレーター(ランオペ)」が全国に少なくとも864社あることを観光庁が調査し、今後は「登録制を導入して指導・監督」すると報じています。

ランドオペレーターは「旅行業法で登録されている旅行会社の依頼を受けて、バスやホテル、ガイドを手配する業者」であり、「旅行客と直接契約を交わさないことから、旅行業法の規制の枠外とされてきた」とあります。

これはどういうことかというと、訪日ツアーの場合、ここでいう「旅行会社」は海外の旅行会社のことで、彼らが集客した海外のお客さんの日本国内の旅行手配業務をランドオペレーターが請け負うことになるわけです。そのため、ランドオペレーターはお客さんとは直接契約を交わしていないことから、消費者保護をうたう旅行業法には抵触しない存在だったということです。これまで観光庁は、海外のお客さんの消費者保護については、彼らが契約を交わした海外の旅行会社の責任で、ランドオペレーターの業務を管理監督する立場にはないという(少々言いすぎかもしれませんけれど)のが言い分でした。

しかし、今年1月に軽井沢で起きたスキーツアーバス事故(これは海外の旅行会社は無関係)などが再発したことや本ブログでも扱った「日本のブラック免税店」とランドオペレーターの関係などが明るみに出たことから、「観光庁はランオペを登録制にすることで、不正が起きないように監督、指導していく方針」となったようです。

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/
「中国客を陥れる日本のブラック免税店」の隠れた舞台裏(日経BPネット2016.07.13)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/071200017/

記事では全国にランドオペレーターが「864社」あったと書かれていますが、実際のところ、これを調べるのは大変なことだったと想像します。でも、海外の旅行客に直接サービスを提供する存在であるランドオペレーターが誰だかよくわからなかったというのは、考えてみれば、困ったことでした。

これで一歩前進。ただし、この先もっと大変なことが待ち構えています。ランドオペレーターから仕事を請け負うツアーのガイドとは誰なのか。その実態を調べていくことが次の段階でしょう。つまり、ランオペの次は、ガイドの登録制に向けた取り組みです。

ランオペ経由で調べていくことになるのでしょうが、これは簡単なこととは思えません。しかし、これをやらないと、観光ビザで来日し、滞在有効日数内にガイド業務を繰り返し、そのまま所得申告もしないで帰国する外国籍のガイド、いわゆる「スルーガイド」問題の解決には至りません。

もっとも、それをどこまでやるかのさじ加減も問われるところがありそうです。現在のアジアの多くの国々から訪れる団体ツアーのビジネスモデルの根幹に関わることだからです。
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by sanyo-kansatu | 2016-10-22 09:28 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 10月 12日

これ、嫌なニュースだな。ゲストハウスでバイトした旅行者を逮捕

これも、最近ちょっと増えてきたインバウンドがらみの報道のひとつ。嫌なニュースですね。

宿泊料代わりに働いた疑い 外国人観光客2人逮捕 札幌(朝日新聞2016年10月11日)
http://www.asahi.com/articles/ASJBC5W6YJBCIIPE02G.html

札幌市内のホステル(宿泊施設)で働く代わりに無料で宿泊したとして、北海道警は11日、観光客のマレーシア人の女(30)と中国人の女(19)を出入国管理法違反(資格外活動)の疑いで現行犯逮捕した。また、女2人に不法就労させたとして、道警は、ホステルの運営会社「万両」(東京都台東区)の社長の男(45)やホステル責任者の女(34)ら3人を同法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕する方針。

道警によると、2人は11日午前、同市中央区の「カオサン札幌ファミリーホステル」で宿泊料2千円をそれぞれ免除される代わりに、無資格で館内の清掃やベッドメイキングなどをした疑いがある。2人は容疑を認め、「観光ビザで働けないと分かっていたが、現金をもらっておらず大丈夫だと思った」などと供述しているという。

同社は主に外国人向けのホステルやゲストハウスを東京や大阪など6都道府県で計13店展開。ホームページに「就労資格がなくても清掃などに従事すれば無料で宿泊できる」との内容を英語で掲載しており、道警は組織的な犯行とみている。

札幌市によると、昨年度に市内で宿泊した外国人は191万8千人で、過去最多を記録。中国、台湾、韓国などアジアの客が多くを占める。北海道労働局によると、今年8月のホテル従業員らの有効求人倍率は2・63倍と全体の1・07倍を大きく上回り、人手不足の状態となっている。


この報道をネットで知って、最初に思ったのは、誰がふたりをチクったのだろうか、ということです。

すごく不愉快な感じがします。だって、これを不法就労などと言い出せば(まあ実際はそうなのかもしれませんけれど)、もっと悪質な不法就労をこれだけほっておいて、弱いものいじめはやめろよ、と言いたくなります。

例の免税店から中国人観光客の買い物の売上に応じてもらったマージンを所得申告しなかった不法ガイド(最近は国税局も調べ始めているようで、年間数千万円という人もいます)なんて、もう数え切れないほどいるのに、そちらは「実態を把握できていない」と頬かむりをしておいて、わずか1日2000円のドミトリー代金(1部屋にベッドがいくつも並んでいる部屋の料金)のことで不法就労とは……。

金額の問題ではないと言う人もいるでしょうが、このふたりが2000円を現金で支給されていたわけでもなければ、そもそもお金に困っていたとは思えません。彼らはかつて1990年代にいた不法就労者とは違い、いわばレジャー消費者なのです。いまどき不法就労する外国人は、ゲストハウスになんかいません。なんと時代の変化に鈍感すぎることか。やはり法の使い方が間違っている、いや下手すぎるのではないでしょうか。

マレーシア人は2013年7月以降、3ヵ月以内の滞在に限り、観光ビザが免除されています。また中国人には、2010年以降、個人観光ビザが発給されるようになり、昨年1月よりビザの種類によって15日から90日間の滞在が認められています。

マレーシア国民に対するビザ免除(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_000362.html
中国団体観光・個人観光ビザ (外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/topics/china.html

詳しい事情は知らないのでこれ以上本当は何も言えないのですが、今回いきなり逮捕の前に、いくつかの段階をふんで執行に至ったのかもしれません。執行に至る前に不法就労に当たることを口頭で知らせ、やめさせればすむことだったのに、そうならなかった理由があるのでは(そう信じたいです)。その理由いかんかとは思いますが(たとえばの話ですが、このゲストハウス経営者が警察に対してやたらと反抗的な態度を取り続けたとか。で、くだらない警察の面子が適正な判断より優先された? ちょっとテレビドラマの観すぎかな)、もしそうでないのなら、ここまでやる必要はなかったでしょう。それとも、やっぱりこのゲストハウスの存在を快く思わない誰かが密告した?

昔、友人の作家、岡崎大五さんがトルコのイスタンブールの絨毯屋兼ゲストハウスで、住み込みアルバイトをしていたことを思い出します。もちろん、彼は就労ビザなど持っていたはずがありません(こんなところで話を持ち出してすいませんねえ)。

1980年代の「第三世界(当時、アジアやアフリカ、中南米のことはそう呼ばれていました)」ことで、今日の世界情勢とはまったく違うのんきな話をしても仕方がないかもしれませんが、いつの時代も、ゲストハウスで繰り広げられるような浮世離れした世界があっていいとぼくは思います。彼らは旅空の下にいるのです。一生そんなことをするつもりもないのです。もちろん、若い人はときに羽目をはずすこともあるでしょう。でも、そんなことは、程度問題で、若い頃に同じような経験をしたはずの大人がどこかで判断を示せばいいはずです。いまの大人はそういう意味での判断力が低下している気がします。

同記事では、まるでエクスキューズのように、札幌のホテル業界の人材不足について触れていますが、どこまでこの件に関係があるのでしょうか。言外に、今回の逮捕はやりすぎと言いたいのでしょうか。

この問題を「今日の日本社会の寛容さの欠如」などといった一般論でどうこう言いたくはありませんが、ゲストハウスのような世界がいまの社会でどう受けとめられているのか、そして、どういう事情でこんなことが起きたのか知りたく思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-10-12 08:53 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)