ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 01月 11日

2016年の訪日外国人数は2400万人超ですが、もう数の増減だけの議論はやめてほしい

1月10日、石井国土交通大臣は記者会見で、2016年の訪日外国人数の推計値が2403万人であることを明らかにしました。日本政府観光局(JNTO)による各国別も含めた訪日外国人数(推計値)の公表は、来週の17日(火)の予定ですが、過去最高となる数値を政権与党としてはいち早く発表したかったものと思われます。日本の経済指標で二桁、しかも20%超で成長している分野は少ないことから、訪日外国人市場への取り組みを政権の看板政策のひとつとして見せたいのかもしれません。

NHKは以下のように伝えています。

去年の訪日外国人旅行者 2400万人超 過去最高更新(NHK1月10日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170110/k10010833931000.html

去年(平成28年)1年間に日本を訪れた外国人旅行者はアジア各国との間で航空路線が増えたことなどから推計で2403万人余りとなり、過去最高を更新しました。

国土交通省の発表によりますと、去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者は推計で2403万9000人となり、これまでで最も多かったおととし(平成27年)の1973万7409人より430万人余り、率にして21.8%増えて過去最高を更新しました。

これは、アジア各国との間で航空路線やクルーズ船が増えたことに加え、中国やベトナムからの旅行者向けのビザの発給要件が緩和されたこと、さらに外国人旅行者に対する免税制度が拡充されたことが主な要因です。

政府は、空港や港などのインフラ整備や地方の観光資源の掘り起こしなどを通じて日本を訪れる外国人旅行者を2020年に年間4000万人に増やすことを目標にしています。

石井国土交通大臣は閣議のあとの記者会見で「クルーズ船のさらなる受け入れに向けた環境整備や、富裕層などをターゲットとしたプロモーション活動などを戦略的に進め、目標の達成に向け政府一丸で取り組んでいきたい」と述べました。

官房長官「2020年に4000万人実現を」

菅官房長官は閣議の後の記者会見で「安倍内閣としては、観光を地方創生や成長戦略の切り札と位置づけ、ビザの戦略的緩和や免税制度の思い切った拡充など、大胆な取り組みをやつぎばやに実行しており、それが大台につながった。ことしも訪日外国人の勢いが止まることが無いよう、さまざまな対策をしっかり行って、2020年に4000万人を実現したい」と述べました。


朝日新聞も次のような記事を配信しています。

昨年の訪日客、2403万9千人 過去最多更新(朝日新聞2017年1月10日)
http://www.asahi.com/articles/ASK1B3CJBK1BULFA009.html

朝日の記事のポイントは「増加は5年連続だが、伸び率は15年(47%増)より鈍化」したと指摘していることでしょうか。ネット記事のタイトルは上記のとおりでしたが、11日の朝刊記事では「訪日2400万人 鈍る勢い 昨年最多 欧米富裕層にPRへ」となっているように、石井国交相の「目標に向かって堅調な伸びを示している」との認識を伝える一方、15年に比べ増え方が鈍ったことや1人あたりの消費額も前年割れする見通しを伝えています。また、とってつけたように「欧米の富裕層へのPRに力を入れる方針」にも触れています。

一方、日本経済新聞は前向きな捉え方をしています。

16年の訪日客2400万人超、最高を更新 5年連続の増加(日本経済新聞2017/1/10)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS07H0M_Z00C17A1MM8000/

(一部抜粋)中国や韓国からの観光客が堅調だった。ただ、全体の伸び率は、円安やビザ発給要件の緩和などで前年比約5割増だった15年に比べて緩やかになった。一時の円高傾向や熊本地震、中国経済の減速などが響いた。

一方、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムなど東南アジア各国からの観光客が大きく増えた。現地で実施した誘致のためのキャンペーンや新たな航空路線の開設などが寄与した。

政府は訪日客のさらなる増加に対応するため、受け入れ体制を整える。17年度予算案では、観光庁予算を過去最大の256億円としたほか、首相官邸主導で他省庁の予算でも観光関連分を拡充した。菅義偉官房長官は17年に取り組む重点施策の一つに観光分野を挙げており、特に地方経済の活性化につなげたい考え。

農林水産省は従来の農山漁村の振興交付金に50億円の「農泊」枠を新設した。政府は皇居や御所など全国の皇室関連施設の公開拡大も進める方針で必要な運営経費を新たに計上する。テロなど治安対策に向けては、国土交通省はボディースキャナーなど高性能な保安検査機器を19年までに国内の全ての主要空港に整備する。


東南アジア客の増加を強調しているところなど、朝日とは少し見方が違うようです。また受入態勢の整備への予算増や治安対策などについても触れています。

各国別推計値については、昨年12月に出た1~11月の訪日外国人数の推計値をみる限り、東南アジア各国からの観光客も増えていることは確かですが、トップ2の中国と韓国がダントツです(来週わかることですが、おそらく中国約650万人、韓国約500万人といったところ)。この政治関係の良好とはいえない二国がトップ2であることは、いつまでこの「堅調な伸び」が続くかを考えるうえで小さくない懸念材料です。

では、今年はどうなるのでしょうか。数日前の産経ニュースによると「旅行大手JTBは29年の訪日客数予想を2700万人とし、小幅な伸びにとどまると分析」していうようです。「小幅な伸び」(伸び率としては16年の半減)という現実的な数字を挙げているとはいうものの、昨年より300万人増加させるということですから、そんなに簡単ではないかもしれません。

28年の訪日客数は「2400万人前後に」 石井啓一国交相 前年比2割増 プロモーションやクルーズ船増で(産経ニュース2017.1.6 ) 
http://www.sankei.com/politics/news/170106/plt1701060037-n1.html

いずれにせよ、大手メディアは訪日旅行市場の数字について、政局とからめて論じたがるところがあるようなので、2400万人を達成しても「鈍る勢い」などと書きたくなるのでしょうけれど、もう増減をめぐる評価はいい気がします。またネット上でも、訪日中国客の伸びが昨年に比べて鈍化したことを「中国経済の減速」と結びつけて、大げさにもの言いする人をたまに見かけますが(要は、中国経済はもうダメだと言いたいだけ)、2015年が訪日旅行市場にとって特別の年であり、パイが増えれば伸び率が少し落ちるのも当然なのに、そういう全体像が見えていないがゆえのおっちょこちょいに思えてしまいます。

そもそも国際関係を含めた国内外のさまざまな要因が影響する訪日旅行市場は、時によって増えもすれば減りもします。特に今年は国際情勢の変化が気になります。である以上、政府もメディアも、そろそろ市場の具体的な中身や訪日客の増加がもたらす日本社会への影響などに議論を移してほしいものです。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-11 09:08 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 28日

実は香港客だった!?「新千歳空港で中国人観光客大暴れ」報道、中国側の反論

先日、新千歳空港で起きた「中国人観光客大暴れ」報道については、中国でも話題になっていたようです。

「「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ」の背景を考える
http://inbound.exblog.jp/26507044/

上海在住の友人はこう言います。

「中国のSNS上では、中国人の恥さらしだ、けしからん。そう嘆く人も多いのですが、一方で航空会社の不手際と空港側の対応を非難する声も多いです。事実かどうかわかりませんが、彼らの反論の主旨は「航空会社がホテルを手配せず、3日間も空港での缶詰め状態で、かつ中国だったら当然ある飲食の差し入れもなく、そして航空会社からの満足のいく説明がない。これなら乗客が怒って当たり前だ。これで黙っているのは、異常な忍耐力のある日本人だけだ。これでおもてなしとか、サービスが良いとか言ってる日本人が聞いて呆れる」というものです。

ここでのひとつのポイントは食事です。天候不順やよくわからない理由で航空機が遅延した際に航空会社の職員に詰め寄って、大声で抗議しまくるのは、中国大陸ではよくあることです。ニュースになるなんてありえないくらい、本当によくあることです。

ただそういった場合、中国の航空会社も慣れたもので、まずお詫びと誠意の印として弁当などの食事とミネラルウォーターを出してくれます。中国人の気を静めるのに「食事」が重要だということをわかっているからです。食への思い入れは、日本人には想像できないものがあります。だから、航空会社は乗客を絶対に空腹にさせないことをまず考えます。中国人に日本人のような忍耐力と自己犠牲を求めるのは不可能です。他のみんなも同じ状況なのだから、自分だけ不平不満をいうのはやめようなどとは、考えられない人たちです。

そういう事情をふまえて中国側の記事を読むと、少しでも中国事情に精通している人であれば、なるほど彼らが言いたいのはそういうこと(日本側にも落ち度があったに違いない)かと納得できます。そこがわからないと、また愚かで傲慢な中国人がバカをやらかしているという最近日本でよくある失笑誘いネタになってしまいます。

今後も、アジア、特に中華圏からの観光客が増えていくなかで、マナーうんぬんは別にして、空港など公共施設や交通機関は、リスク管理が必要だと思います。

ちなみに、今回トラブったのは、正確には中国大陸人ではなく香港人のようです。そのことに、日本のメディアがどこまで気がついていたのか。もしそれを承知で「中国人観光客」と書いているのだとしたら、最近の中国人を蔑んで喜んでる系の大衆迎合報道と受け取られても仕方がありません」。

そうなんです。騒ぎを起こしたのは、中国客ではなく、香港客だったというのです。あるいは、これでは中国報道をただうのみにしたことになるので、公平を期して言うと、香港便の乗客だったようなのです。ただし、香港便は広東省住民もよく利用するので、本当のところはわかりません。

※新千歳空港の香港便は、日本航空とキャセイパシフィック航空(共同運航)、そして中国の海南航空のグループ会社の香港航空です。

さらに、彼のいう「それを承知で「中国人観光客」と書く」という意味は、ちょっと込み入っています。中国では、香港も台湾も「ひとつの中国」として見ています。つまり、香港人も台湾人も中国人だというのが中国政府の主張です。一方、日本に限らず海外のメディアは、「ひとつの中国」という主張を一応受け入れながらも、実は香港も台湾も民主的な社会である以上、中国とは別物として見ています。実際、当の本人たちもそう考えている。ですから、今回日本のメディアが騒ぎを起こした香港客のことを「中国人観光客」と書くことは、中国政府の主張に立てば間違っていないのですが、中国のネットユーザーからみると、「普段は香港も台湾も中国とは別物」と言わんばかりの日本のメディアが、粗相をしたときに限って、香港客を「中国人観光客」と書くのは底意地が悪すぎる、というわけです(ああ、面倒臭さい)。

以下は、中国版SNSのWe Chat(微信)に転載された記事です。

100余名中国游客航班延误大闹日本机场?这些幕后细节你也要知道!(100名の中国客が日本の空港
で大騒ぎ? あなたはこの舞台裏の詳細を知らなければならない) (原创 2016-12-26)
http://mp.weixin.qq.com/s/m-9PhwJQNwt3RB5zhNlB4w

上海の友人の見解は、この記事を読んで書いたものでした。日本のメディアでは一方的に中国客が悪いと報じているけれど、日本の空港側にも不手際があったのではないか、という中国側の反論です。彼らがこのように言いたくなるのは、以下のような日本のテレビ番組に対しても見られたものと共通しています。彼らだって言われ放題ではたまらないと思うのは当然のことでしょう。

中国人は自国の観光客マナー問題を煽る日本のテレビ番組に耐えられない!? (2016.5.30)
http://inbound.exblog.jp/25834092/

彼のメールを読みながら改めて思ったのは、不測の事態に陥った中国人にケアする際の「食事」の重要性の認識です。このあたりは、日本人にはまったくわからないですよね。日本人なら、物事には優先順序があり、まず重要なのは正確な情報で、こんなときに食事のことなんて言ってる場合じゃない。それが普通の感覚でしょう。

でも、彼らはそうではないのです。ひとまず落ち着かせるためには、食事に最も気を使うべきだった、というわけです。だとしても、3日3晩も夜明かしした人がいたとしたら、それどころの話ではなかったでしょうけれど。

要は、彼が言いたいのは、これだけ中国客が増えた以上、中国客専用の「取り扱い説明書」をつくり、その内容を空港関係者も把握しておかなければ、今回のようなことがまた起きるということです。

空港側が実際に夜明かし客にどのような対応したか具体的に知らないのに、あれこれ書くのは気が引けますが、考えられることは、空港側と外国客との間のコミュニケーションが十分とはいえなかっただろうということです。

基本的に日本人には中国人のモノの考え方がよくわからないので、日常的にもコミュニケーション不全に陥りやすいわけです。である以上、こういう特殊な状況ではなおさら、マニュアル的な対応だけでは、中国の人たちに対して、こちらの配慮も届かないことをまずは知るべきなのでしょう。

一方、香港のような亜熱帯に暮らす人たちは、大雪で欠航という事態を頭ではわかっても、現実的に受けとめることは簡単ではないことが考えられます。彼らにとって大雪とは天変地異と変わらないでしょうから。それだけ彼らは精神的に追い詰められていたということでもあります。

日本人の感覚では、空港の滑走路を覆う大雪を見ながら「こういう状況なんだから、しょうがないでしょう」と暗黙のうちに、言葉をかけなくても、相手も理解してくれるだろうと期待するかもしれません。しかし、それが以心伝心で伝わるのは、国内客とサハリンから来たロシア客だけだったかもしれません。

まったく難しいものです。

【追記】
その後、この件の真相を解き明かす検証記事が出てきました。

興味深いことに、以下の記事では、中国側が指摘する「騒動を起こしたのは、中国客ではなく、香港客(正確にいうと、香港線の乗客)」は誤りのようで、「13:50発予定の北京行の中国国際航空のCA170便」の乗客であるかのように書かれています。

「新千歳空港で暴れた中国人乗客」騒動の真相(Wedge2017年1月17日)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8701

えっ、騒動を起こしたのは、やっぱり中国客だった? 

一方、この記事を受けて、ひとりの在日中国人の論客が以下の記事を書いています。

中国人観光客による新千歳空港での「暴動」、真相はこうだった(ダイヤモンドオンライン2017.1.19)
http://diamond.jp/articles/-/114700

これによると、「新千歳空港で3日間も足止めされた香港の女優ミッシェル・リー(李嘉欣)もいよいよ我慢できなくなったのか、12月25日未明の3時頃、SNSの微博にキャセイパシフィック航空を名指して、私たちは新千歳空港で3日間も待たされていたのに、キャセイパシフィック航空から情報の連絡や手配の一つも提供されていない。一方、他の航空会社は次々と運航を再開した、と批判の書き込みをした」とあり、おそらくこれに中国側が反応して、「騒動を起こしたのは香港客」という判断が生まれたでのはないか、という気がしないではありません。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-28 20:40 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(3)
2016年 12月 27日

「「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ」の背景を考える

年の瀬にこんな話を書きたくないのですが、また訪日中国客の騒ぎが報じられました。TBSが伝えています。

「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ(TBS系(JNN) 12/26(月) 14:10配信)
https://www.youtube.com/watch?v=3Og11ZvYUrM


大雪の混乱が続いた北海道の新千歳空港で、飛行機が欠航したことに腹を立てた中国人が、警察官に激しく詰め寄る騒動がありました。

中国人観光客がゲートを勝手に越え、駆け付けた警察官に激しく詰め寄ります。撮影されたのは24日午後8時ごろ、新千歳空港の国際線ターミナルで、大雪のため飛行機が欠航したことに腹を立て、100人ほどの中国人が騒ぎ出しました。さらに、数人がゲートを勝手に越えたため、警察官と小競り合いになりました。この騒ぎによるけが人はいませんでしたが、2人が気分が悪くなり病院に運ばれました。

新千歳空港では大雪の影響で、22日から24日の3日間で、1万1600人が空港で寝泊りしました。


いったいなぜこんなことが起きてしまったのか。現場で取材することはできないので、ネットなどで知りうる限りの情報から考えてみたいと思います。

まず北海道の天気から。確かに、今月22日(木)、23日(金)と札幌は大雪だったようです。

札幌の過去の天気(2016年12月)
http://weather.goo.ne.jp/past/412/

NHKも大雪による欠航や「新千歳空港では23日に284便が欠航し、空港で夜を明かした人がこれまでで最も多い6000人に上」るとすでに報じていました。「50年ぶりの大雪」ともなれば、夜明かしも無理はないことでしょう。

北海道で50年ぶりの大雪 交通への影響続く(NHK12月24日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161224/k10010818641000.html

北海道では各地でまとまった雪が降り、札幌市では12月としては50年ぶりの大雪となりました。JRが札幌駅を発着する24日午前中のすべての列車を運休するなど、影響が続いています。

札幌管区気象台によりますと、北海道の各地は23日、日本海側の南部を中心に大荒れの天気となり、雪が降り続きました。

札幌市では23日午後9時すぎに96センチの積雪を観測し、12月としては昭和41年以来50年ぶりの大雪となりました。

札幌市では24日午前中から除雪に追われる人たちの姿が多く見られました。このうち札幌市北区の住宅街では、住民が道路に出て、シャベルなどを手に、家の前に降り積もった雪を次々に片づけていました。

除雪された雪は場所によっては2メートルほどの高さにまで積み上げられ、山のようになっています。

雪の山が車道にはみ出して、車1台がやっと通れる幅しかないため、行き交う車が道を譲り合う様子などが見られました。

70歳の男性は「雪かきの作業を始めて2時間くらいたちます。今月は珍しいくらいに次々に降るので、除雪も大変です」と話していました。

また、28歳の男性は「クリスマスイブに雪があるということは、ロマンチックでいいことなのでしょうが、雪の量があまりにも多いので、半分くらいがちょうどいいですね」と話していました。

気象台によりますと、24日は冬型の気圧配置が緩み、天気は回復していますが、気象台は積もった雪による雪崩や交通への影響に注意するよう呼びかけています。

新千歳空港 混雑続き遅れも

23日に欠航が相次いだ北海道の新千歳空港は、24日もキャンセル待ちの人などで混雑し、発着便に遅れが出ています。

国土交通省新千歳空港事務所などによりますと、新千歳空港では23日に284便が欠航し、空港で夜を明かした人がこれまでで最も多い6000人に上りました。

24日も航空会社のカウンターの前にはキャンセル待ちをする人などで長い列ができています。

搭乗手続きに時間がかかっているほか、JRが運休している影響で、発着する多くの便に遅れが出ています。また、空港のバスの乗車券売り場は、JRが運休している影響で、バスで札幌などに向かおうと長い列ができていました。

空港事務所によりますと、24日は1日を通してまとまった雪は降らない見通しで、機材繰りで欠航となっている一部の便以外は運航する予定です。航空各社は、今後も発着に遅れが出るおそれがあるとして、最新の運航状況を確認するよう呼びかけています。


さて、この事件の背景がだんだん見えてきました。

問題は、すっかり晴れたという24日(金)になっても、乗れない人たちが続出したことだと考えられます。乗客たちの多くは当然、飛行機に乗れるだろうと思ったのに、そうならなかったこと。これが一部の中国客の混乱を呼んだものと思われます。

しかし、空港の除雪作業もあったでしょうし、何より3日間で「1万1600人」が空港で夜明かししたわけですから、当日客もいる以上、どんなに機材をやりくりしても、全員が乗れると考えるほうが無理があったと思われます。

空港で夜明かしした人は、国内客も含め、中国客ばかりではなかったことでしょう。新千歳空港の国際線は、中国線以外にも、ユジノサハリンスク(ロシア)やソウル、プサン、大邱、台北、高雄、香港、バンコク、クアラルンプール、シンガポール(ホノルルとグアムはアウトバウンド路線なので外国客は少ない)があります。

ちなみに中国路線は以下のとおりです。

北京
中国国際航空CA170(全日本空輸 NH5757) 13:50発 火・水・金・土・日曜運航(12月19日から毎日運航)
天津
天津航空GS7972 20:05発 金・日曜運航
上海
中国東方航空MU280(日本航空JL5633) 13:30発 毎日運航
春秋航空9C8792 13:50発 毎日運航

新千歳空港HP
http://www.new-chitose-airport.jp/ja/

これをみると、北京、天津、上海のすべてが木・金いずれかが運航日になっているので、中国客の多くが空港で夜明かししたことがわかります。

一般に天候などの理由で国際線が欠航した場合、乗客は航空会社が宿泊ホテルを手配し、そこで一夜を明かし、翌日便に振り返られます。実は、ぼくは北京空港で2年連続欠航の憂き目に遭い、航空会社が手配した空港に近いホテルに泊められたことがあります。

ただし、北京で欠航になったのは、大雪ではなく、PM2.5による視界不良で航空機の発着が不可能になったためでした。最近も改善していないようです。

北京の街が白く…PM2.5で大気汚染深刻(日テレNEWS24 2016年12月20日)
http://www.news24.jp/articles/2016/12/20/10349524.html

中国・北京で20日朝、大気汚染物質PM2.5の値が上昇するなど状況が悪化している。

16日から大気汚染警報としては最も重い「赤色警報」が発令されている北京では、20日朝、PM2.5の値が日本の環境基準の10倍以上になった。警報を受け、北京では車のナンバーによる車両規制を行ったり、一部の工場で操業を停止したりするなどの緊急措置がとられている。

市民「気持ち悪い気がするが、マスクをするとだいぶマシになる」

来年2月からは排ガス規制の基準を満たさない乗用車の中心部への乗り入れ禁止などが決まっているが、対策が追いついていないのが現状。


中国の新人類は日本の青空に魅せられている
http://inbound.exblog.jp/24302307/

そのとき、ぼくはチェックインをする前から遅延だと言われ、空港で5時間近く待たされましたが、結局、夕方になってようやく欠航だと告げられました。北京空港の空の事情ゆえに、日本から航空機を本当に飛ばして大丈夫なのか、決めかねていたものと思われます。大雪とか台風といった理由ならわかりやすいのですが、PM2.5による視界不良という事態は、中国ならではの特殊な事情だからです。実際、空港は深い霧に覆われたような世界でした。空港に向かうタクシーも50m先くらいしか見えない状態でした。

「いったい、どうなるの? まさか、ホテルを手配してくれないってことはないよね」。

こういうときに、どう適切に乗客に対応するかが航空会社のサービスの評価になるのですが、たとえ日系航空会社の便だとしても、北京線は中国系との共同運航も多く、実際は中国系と変わらない場合も多い。

で、当然のように、きちんとした説明もなく、いきなり数人の職員が現れ、「これからホテルに移動します」と声をかけられ、バスに乗ることになりました。特に欠航の理由を説明されたわけでもなく、まあひどい対応です。こういうとき、中国人はすぐに官僚的になり、サービスのことなど考える余裕すらないようです。実は、ぼくは同じことを2年連続で経験したため、2度目のときは、市内に戻り、昨日まで泊まっていたホテルに頼んで連泊扱いにしてもらいました。

あてがわれたホテルとそこで供された食事がひどかったせいもありますが、せっかく滞在が延びたので、友人と一緒に食事をするほうがずっと楽しいと思ったからです。

結局、こういう場合、地元客は自宅に帰って待機すればすむ話なのですが、外国客はそうはいきません。ぼくの場合も、通い慣れていた北京だったので、しかも同じことを2度も経験したことから、それなりの対処法をとることができたわけです。

でも、そうはいかないケースがほとんどでしょう。これは特に中国線にいえることですが、北京、天津、上海線のどれも大半の乗客は、日本客ではなく、中国客だからです。つまり、欠航した航空会社が彼らのためにホテルを用意できたかというと、(これは事実確認できない以上、よけいなことは書けませんが)当然難しかったでしょう。空港周辺のホテルの客室には限りがありますし、クリスマスシーズンを北海道で楽しみたいと訪れたいた外国客はハンパなく多かったからです。

また、はっきり言えば、海南航空のグループ企業にすぎない天津航空やLCCの春秋航空では、最初から対応することは考えていなかったでしょう。LCCは安価と引き換えに自己責任が伴うのは世界の常識です。

ところで、このニュースをぼくは最初、ヤフーで知ったのですが、コメント欄をみると、あるジャーナリストの以下のような書き込みがありました。

「こうした出来事によって、日本人の中国人全体に対する悪感情が強まるだろうと思うと、とても残念です。多くの日本人は「ああ、やっぱり中国人は・・・」と思うことでしょう。でも以前、私の上海の友人も新千歳空港でまったく同じ出来事に遭遇して、悲しい思いをしたことがあったと話してくれたことを思い出しました。その人は日本語ができるので、暴れる中国人たちを制止して、厳しく注意した上、日本のマナーを教えてあげるとともに、このような出来事によって、他のちゃんとした中国人が日本の旅行先で、どんなにつらい思いをしているかわかるか、と涙ながらに語った、と話してくれました。今回、現場がどのような状況だったかわかりませんが、暴れた中国人たちが、日本人の係員や空港関係者に迷惑を掛けただけでなく、中国人観光客全体のイメージも大きく下げていることに気づいてほしい、と願うばかりです」

う~ん、これどうなんでしょう。

これまでぼくは本ブログでも、訪日中国客の増加に伴いメディアなどでも扱われるようになったこの種の騒ぎについて書いてきました。特に今年に入ってその回数は増えています。

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は? (2016.3.5)
http://inbound.exblog.jp/25461430/
中国人は自国の観光客マナー問題を煽る日本のテレビ番組に耐えられない!? (2016.5.30)
http://inbound.exblog.jp/25834092/
韓国メディアが教えてくれた銀座のツアーバス駐停車90秒ルール (2016.6.15)
http://inbound.exblog.jp/25913731/
中国個人客の増加で電車内でのトラブルが増える予感 (2016.11.15)
http://inbound.exblog.jp/26380202/
〔TBS・Nスタ〕中国人観光客はなぜ民家に侵入して自撮りをするのか? (2016.11.16)
http://inbound.exblog.jp/26383490
中国客が挙動不審に見えてしまう理由(すでに個人比率54%というけれど) (2016.11.19)
http://inbound.exblog.jp/26390881/
じわじわ増えている医療観光だが、盲点を突くあの手この手の不正も明らかに (2016.12.9)
http://inbound.exblog.jp/26442310/
中国クルーズ客の失踪と不法就労摘発報道 なぜ彼らはそこまでやるのか (2016.12.16)
http://inbound.exblog.jp/26479516

この種の報道があるとき、いつも思うことですが、件のジャーナリストのような情に訴えるようなもの言いは、広く共感されるようには思えません。もちろん、ネットに安易に書き込まれる悪意のこもった文面をみると、そんな正義感もわいてくるのかもしれませんが、大半の日本人は中国の現状を知る限り、自分には関係ないし、彼らとは関わりたくはないと思うだけで、わざわざ罵声を浴びせたいとすら考えていないと思われます。事情をよく知る者としては、こうした状況をどう受けとめるべきか客観的な判断を示し、さらに悪化しないためにどうすればいいかという対処を考えるべきでしょう。

残念なことですが、中国ではこの種の騒ぎはままあるものです。そうはっきり言うべきです。

特に中国の国内線に乗ったとき、遅延などあろうものなら、今回のケースほど深刻でなくても、日本では考えられないことはよくあります。あるときなど、航空機が搭乗ゲートを離れ、出発準備態勢に入ったというのに、何らかの理由で管制塔から離陸の許可がなかなか出なかったため、乗客はシートベルトをしたまま滑走路の上で1時間近く待たされていたのですが、機内はもう大騒ぎ。隣の席の子供がトイレに行きたいというので、親が客室乗務員にそう伝えたところ、「いつ離陸許可が出るかわからないので、この段階でトイレに行ってはならない」と回答。「では子供が席でおもらししたらどうするのだ」と親が言うので、その男性客室乗務員は「これにおしっこを入れてください」と空のペットボトルを持ってくる始末です。呆れて眺めていると、親は安心したように、座席で子供におしっこをさせていました。

子供のせいだから仕方がない……。この感覚をよしとする風潮がいまの中国社会にはあります。国際社会の感覚とはかなりズレていることは疑いようがありません。こうした彼らのズレた感覚の実例とその背景については、上記のブログ記事で実情に即して説明してあります。

もちろん、説明を読んだところで、なるほどそうかと受けとめることができない面も多々あるでしょう。それが証拠に、実際もし今回と同じことが欧米の空港で起こった場合、逮捕者が出ていたかもしれません。日本は何事も穏便にすませたいと処理するのが普通です。

そうしたすべてのことを差し引いても、今回のケースは、誰であれ、イライラが極限まで高まる状況にありました。その際、国内客であればまだ対処のしようがあったことも、日本に慣れていない外国客は、いかんともし難かった。彼らの多くには、なんの救いの手もなく、別の選択肢もなかったわけですから。なにしろ「50年ぶりの大雪」です。本来、いちばん同情されるべきは、夜明かし客の皆さんだったのに、それをぶち壊しにしてしまったことは、なんとも後味の悪い結末といえます。

実際、新千歳空港の職員も、さぞ大変だったことでしょう。今後、中国客をめぐるリスク管理から関係者は逃れることはできないという事実は静かに受け入れるしかありません。逆にいえば、中国客を相手にする際は、日本では起こりえないこの種のことは想定内と考えなければならないでしょう。

というのも、中国では人が多く集まる場所(空港や駅はもちろん、広場や公園、商業地などもそう)には必ず公安警察やときには武装警察まで多数配置されています。いついかなるとき、騒ぎが起こるかわからない社会であることをいちばん理解しているのは中国政府です。

ですから、観光庁はそろそろ中国国家観光局とのこの点についてもっと積極的かつ冷静に話し合いを持つべきではないでしょうか。

中国国家観光局 
http://www.cnta.jp/
http://www.cnta-osaka.jp/

【追記】
この一件について、中国側から反論が出ているようです。

実は香港客!?だった「新千歳空港で中国人観光客大暴れ」報道、中国側の反論
http://inbound.exblog.jp/26510740/
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by sanyo-kansatu | 2016-12-27 10:10 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 19日

「未開期」「増加期」「過多期」など、地域によってインバウンドのステージは違う

今年1年間の訪日旅行市場に関する報道を振り返ってみながら思うのは、2015年に2000万人という訪日外国人数をほぼ達成し、その後も20%という伸びを見せてはいるものの、国内には外国人観光客の訪れていない「未開地」がまだまだたくさんあるということです。一方、政府が2003年にVJC(ビジットジャパンキャンペーン)を打ち出し、外国人観光客の誘致を行政主導で始めてから早13年。すでに多くの観光客が訪れ、むしろその増加が地域社会にとって問題を生み始めている場所もあります。

インバウンド市場には「未開期」「黎明期」「増加期」「隆盛期」「成熟期」「過多期」「減少期」とでもいうべき、いくつものステージがあり、どの段階にあるかは地域によって異なります。

「未開期」海外市場における知名度がなく、訪れる外国人も少ない時期
「黎明期」海外で知名度が生まれ、外国人が現れ始めた時期
「増加期」外国人が前年比で大きく伸び始めた時期
「隆盛期」国内外で外国人が多く訪れる地域として知られるようになった時期
「成熟期」訪れる外国人数と地域の受入キャパシティがほぼ飽和し、観光の内実が多様化していく時期
「過多期」外国人が多く訪れることで、地域社会に問題が発生する時期
「減少期」外国人からネガティブな評価が生まれ、減少傾向がみられる時期

※実は、これはインバウンドの時代を迎える以前の1960年代~90年代にかけて、日本の国内観光地で起きていたことでもあります。

それぞれの段階で課題ややるべきことは違うため、地域によってPRの手法は違って当然です。ところが、メディアはそれぞれの地域で起きていることを、国全体の話に乗せて(地域固有の現状や前述のステージについてはあまり触れないで)のっぺりと一様に報じてしまうことが多いように思います。

以下は、昨年春の北陸新幹線開通でいったん盛り上がったかと思われた北陸の旅行市場に「一服感」があるなか、新たに進めている外国客誘致について報じたものです。

外国人目線で北陸再発見 3県、集客へ留学生や海外雑誌活用(日本経済新聞2016/10/8)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO08144440X01C16A0LB0000/

北陸3県で外国人の視点や知恵を取り入れたインバウンド(訪日外国人)の集客策が広がってきた。福井県はSNS(交流サイト)で留学生らにお薦めの観光情報の発信を依頼。和倉温泉(石川県)の宿泊施設は米国の雑誌を活用し、サイクリングの魅力をアピールする。北陸新幹線の金沢開業効果に一服感があるなか、外国人目線で隠れた観光資源を掘り起こす。

観光庁によると2015年の北陸3県の外国人宿泊者数は計約78万人と全国の約1%にとどまる。海外からみた知名度の低さは否めない。県別では石川県の52万人、富山県の21万人に対し、福井県は約6万人。同県は巻き返しを狙い、県内の留学生や在住外国人から応援団「Fukui レポーターズ」を募る。

10月下旬からSNSを通じ、お薦めの観光地や飲食店、商品を週1回程度発信してもらう。英語と中国語で情報発信し、それ以外の言語を使う場合には英語か日本語の併記を求める。活動内容は基本的に自由。県は今後「県や市町の施設を入場無料にするなどして活動を促す」考えだ。

半年に数回程度、観光地ツアーや企業訪問も企画する。三方五湖(若狭町など)、アウトドア施設「ツリーピクニック アドベンチャー いけだ」(池田町)など、公共交通機関でのアクセスが不便な場所が候補になる。これらの施策によって19年度までに県内の外国人宿泊客数を10万人に増やす計画だ。

富山県を代表する宇奈月温泉。7つの宿泊施設が7月、台湾とタイの大学からインターンシップの受け入れを始めた。

海外の若者の声を接客の改善やSNSでの情報発信に生かして誘客を強化する。「客層が多様化するなか、外国人の『気づき』をサービスに生かしたい」と、宇奈月杉乃井ホテル(富山県黒部市)の後藤倫総支配人は説明する。

富山県の15年の外国人宿泊者数は前年比46%増えた。海外の口コミサイトでは立山黒部アルペンルートが国内観光地ランキングの上位に入った。県は外国人客を呼び込める観光地をさらに増やし、19年に外国人宿泊者数56万人を目指す。

海外メディアの活用に乗り出したのは和倉温泉旅館協同組合(石川県七尾市)。今月23日から、米国で年間3万部を発行する無料の自転車専門誌の記者らを七尾市周辺に招く。レンタサイクルで走行した体験や魅力を年明けの誌面で紹介してもらう。

今年度中に複数設定するサイクリングコースに米国人記者のアドバイスを反映するほか、英語版のコースマップも作製する。欧米への情報発信を強化し、17年度には外国人観光客を3万6000人に引き上げる計画だ。

石川県では外国人客の宿泊が金沢市に集中しがちで、和倉温泉での滞在時間は2~3時間というケースが多い。まず能登地方の自然を短時間で楽しめるサイクリングを知ってもらい「最終的には宿泊客増加につなげる」(同組合の担当者)。


この記事を読む限り、北陸地方はインバウンドの「未開期」あるいは「黎明期」にいることがわかります(一部地域を除く)。それは地域にとって不名誉というような話ではありません。日本海側という海外からのアクセスの不便さが太平洋側に比べて圧倒的な弱みになるがゆえです。インバウンドというのは残酷なもので、アクセスで大きく明暗が分かれるのが常です。さらにいうと、「国内観光地ランキングの上位に入る」立山黒部アルペンルートには観光客が集中しても、その近辺の観光地は素通りされてしまうというのも、インバウンドの残酷性といえます。

では、こうした弱みを抱えた地域の人たちは、どうずれば訪日客を誘致できるのか。上記記事は、そのために地元が考え出した取り組みがいくつも例示されています。ただし、この文面だけでは、それらにどれだけの効果があるのか。「集客へ留学生や海外雑誌活用」「SNSでの情報発信(強化)」「サイクリングコース」などの個々の事例をみる限り、他の地域で5年前くらいに行われた取り組みと変わらない気がしますが、それは北陸が「未開期」にあるゆえといえるかもしれません。むしろ、気になるのは、北陸の強みがどう打ち出されているのか、もうひとつわからないことでしょうか。

最近、岐阜県の観光関係者と知り合い、同県が自分たちの弱みを自覚し、逆に強みを徹底的に調べ上げ、PRにつなげてきたことを知りました。後日、その話を紹介したいと思います。

※先日、日経BPネットにその話を書きました。

知名度がなくアクセスも悪い観光地をどうプロモーションするか
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/122600027/
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by sanyo-kansatu | 2016-12-19 13:55 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 16日

中国クルーズ客の失踪と不法就労摘発報道 なぜ彼らはそこまでやるのか

今日の午後、上海在住の友人が以下のニュースをメールで教えてくれました。

中国クルーズ客の失踪と不法就労摘発報道です。これは、いわばクルーズ市場の制度の裏をついた密入国です。なにしろ、クルーズ客には、観光ビザは不要だからです。

クルーズ客 上陸後帰船せず不法就労 入国審査簡略化あだ(毎日新聞2016年12月16日)
http://mainichi.jp/articles/20161216/k00/00e/040/250000c

クルーズ船客を対象に入国審査を簡略化した「船舶観光上陸許可」を使って来日した外国人客が、寄港中に相次いで失踪していることが法務省入国管理局への取材で分かった。2015年の制度導入以降、今年11月末までに全国で53人に上り、大半が中国人だった。半数近くは今も行方不明で、国内に滞在し働いている疑いがある。兵庫県警が11月に不法残留の中国人を逮捕すると、就労をあっせんするブローカーの存在や入国審査の甘さを突かれた背景が浮かび上がった。

兵庫県篠山市の山あいにあるキノコ園。11月下旬、県警の捜査員らが家宅捜索に入ると、中国人の男女15人が働いていた。県警は在留期間が過ぎていた7人を出入国管理法違反(不法残留)の疑いで現行犯逮捕した。

捜査関係者によると、うち男2人組と夫婦の計4人はそれぞれ中国からクルーズ船で来日。船舶許可による在留期間は2日間だけで、寄港した博多港(福岡市)で姿を消していた。

10月17日に上陸した山東省の男(34)は「船に乗り遅れ、途方に暮れていたら声をかけられた」と弁明したが、一緒に来た男(53)は「仕事をするため船で来た」と就労目的を認めた。ブローカーの手引きで車に乗せられ、港から480キロ離れたキノコ園にたどり着いたという。

11月4日に入国した遼寧省の夫婦は中国版ツイッター「微博」を使って船上でブローカーと連絡を取り、働き口を見つけたという。JR新大阪駅で関係者と合流したとみられ、妻(36)は「子どもの学費を短期間で稼ぎたかった」と供述した。

関係者によると、キノコ園はここ数年で何度も経営者が代わり、最近は休業しているように見えたという。近くの男性は「見慣れない車が出入りし、不審だった」と話す。

中国人らはプレハブ小屋で共同生活し、月給18万円でシイタケ栽培の作業をしていた。中はベニヤ板で仕切られただけの個室で、食事は自炊。ほとんど外出できず、1日12時間以上の労働が常態化していたという。

県警と入管当局は、園の経営者や中国人とみられるブローカーの捜査も進めている。捜査関係者は「就労目的で、審査が甘いクルーズ船を狙ったのだろう。今後も警戒が必要だ」と話す。【矢澤秀範】

大半が中国人、2年で53人

クルーズ船の乗客を対象にした船舶観光上陸許可は、インバウンド(訪日外国人)の増加を目指して2015年1月に導入された。入国審査が大幅短縮され、利用する外国人客が激増している。

船舶許可による上陸はビザが不要で、1寄港地につき最長7日の滞在が認められる。出入国記録の記入も簡略化された。顔写真の撮影も省略され、手続きは1時間ほど短くなった。

クルーズ船の訪日客は14年は約41万人だったが、船舶許可の制度ができた15年は3倍近い約111万人に。今年は既に160万人を超えている。寄港地では乗客がバスや電車で自由に観光に出かけるため、集合時間に現れず姿を消す客が後を絶たない。

入国管理局などによると、船舶許可を受けて失踪した外国人は15年が21人、今年は11月までで32人に上る。博多港(福岡市)や長崎港(長崎市)などからの入国が多いという。

うち27人は国内で見つかり、強制退去になった。観光中に規定の日数を超え、自身で帰国手続きを取った例もあったが、行方が分からないままの外国人も多い。

入管は「クルーズ船の運航会社には入念な乗客の管理を求める。厳格に手続きし、警察当局と協力して不法残留の摘発にあたりたい」としている。


同じことは、朝日でも報じています。

クルーズ船で入国、中国人は姿を消した キノコ園に潜伏(朝日新聞2016年12月16日)
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20161215004491.html

すでに9月下旬に読売新聞が「クルーズ船訪日客の失踪、福岡・長崎で計34人」(読売新聞2016年9月26日)と報じていたので、失踪者が摘発されるのは時間の問題かと思っていました。

中国事情についてある程度、精通している人なら、いまの中国、こんなことが起きてもなんら不思議はないと感じることでしょう。ぼく自身も、頭ではそう思いはするものの、なぜ彼らはそこまでやるのか、理解を超えたところがあります。

中国には、自分の住む村にいても、このままでは一生うだつが上がらない。だったら、密入国してでも金を稼いでやろう…。このように考える人間がいるのでしょう。このニュースを教えてくれた上海の友人も「いまの中国は、制度の網の目をかいくぐってでも、人を出し抜こうとする競争社会。この人たちも、まさにそういうことなんですかねえ」とぼやいていました。

興味深いのは、不法就労する彼らがスマホを手にして中国版SNSのWeChat(微信)で日本国内のブローカーたちと船上で連絡を取っていたことです。不法就労が多発した1990年代とは、通信事情という面でも隔世の感があります。もっとも、それが可能となるのは、在日華人という受け皿があるからです。

中国側の旅行会社は、今回のような失踪者を出すと、ペナルティとして一定期間、日本への送客ができなくなるはずですが、失踪予備軍からすれば、そこがダメなら別の会社に手配を頼めばすむことなので、この問題がすぐになくなるとは思えません。

もっとも、日本を訪れる大半の中国人観光客は、彼らのことをとんでもないヤツだと、まるで人ごとのように罵ることでしょう。彼らの存在が中国の足を引っ張っていることは確かだからです。しかし、自分とはまったく関係ない存在とみなすだけで、自らの属する社会の問題とは考えたがらないのが、たいていの中国人です。

先日も、ある在日上海人が大学時代の友人が日本に遊びに来たので、車で岐阜県の白川郷を案内した話を聞かせてくれました。彼によれば「友人たちは富裕層。金はいくらでもある。1年に2~3回は日本に来る。好きなときにいつでも来られるのは、2015年1月以降、取得要件が緩和された個人マルチビザのおかげだ」と言います。

その話を聞きながら、ぼくは思いました。2009年、中国で大ヒットしたラブコメ映画『非誠匆擾』(邦題「狙った恋の落とし方」)の世界を、いまの上海の富裕層なら誰でも実現できるようになったのだなと。

この映画では、主人公の中年男性が北海道を彼女と訪ね、日本在住の中国人の友人に運転させた車で道東を中心に旅するストーリーでした。

その一方、不法就労目的でクルーズ客船に乗って訪日する輩もいる。全体からみれば、わずかな人たちとはいえ、中国ではこの種のことが必ず起きてしまい、それを誰も止めることはできないようです。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-16 15:15 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 09日

じわじわ増えている医療観光だが、盲点を突くあの手この手の不正も明らかに

ここ1、2年で、海外、特に中国からの医療観光がじわじわ増えてきているのを実感します。以前は、観光の合間にPET検診などを組み込む検診ツアーが多かったのですが、最近では、中国での治療を諦めていた重度のがん患者が日本の医療機関を利用するというケースも出てきています。「検診」から「治療」への切実なニーズの変化です。

医療の現場の国際化が叫ばれて久しいなか、高額な治療費の支払いをいとわない富裕層が訪日するのは、自然の流れだと思っていたのですが、いいことばかりでもないようです。いろんなことが起きています。

こんな記事がありました。

来日中国人が日本の医療費を不正受給している…国民健康保険に加入できる「経営・管理ビザ」を悪用!?(日刊SPA!2016.12.09)
http://nikkan-spa.jp/1246002

国民医療費が40兆円を突破し、日本の財政は危機的な状態にある。こうしたなか、一部の来日中国人が日本の医療制度に“タダ乗り”しようとしている。噂を聞いて取材を開始したところ、とんでもない実態が浮かび上がった!

■治療目的で来日して、国保に加入で恩恵享受!

中国人 爆買いが収束に向かうなか、安倍政権が見据える新成長戦略が医療ツーリズムだ。日本政策投資銀行は、’20年の潜在的市場規模を5500億円と見積もっている。

今や日本の医療の信頼性は世界の知るところとなり、日本での検診や治療を希望する外国人も増えている。しかし中には招かれざる客も紛れているようだ。

中国・広東省出身の40代の中国人女性Wさんは、3年前から患っているC型肝炎の治療のため、2か月前に夫を伴って日本にやってきたばかりだ。

「中国で1年ほどインターフェロン投与による治療を続け、一旦は治ったように見えたのですが、半年後に再発。そんななか、ほぼ完治するという特効薬・ハーボニーの存在を医者から聞いた。ただ、その薬は中国国内では承認されておらず、海外の医療機関で治療する必要があるとのことでした」

興味を持ったWさんは、海外への医療ツアーを斡旋する複数の業者に接触した。ちなみに中国のC型肝炎患者数は約4000万人以上おり、国民病だ。こうした事情を受け、海外でハーボニーによる肝炎治療を仲介する業者は数多く存在するという。ただ、欧米での投与は完治までの滞在費を含め1000万円近くかかる。上位中間層に属するWさんにとっても、即断できる金額ではなかった。

「後発薬が使用されているインドや東南アジアなら100万円以下で済むらしいのですが、不安で踏み切れなかった。そんなとき、ある業者が日本での治療という選択肢を提案してきた」(Wさん)

問題は彼女が支払う費用だ。

「医療費に業者への費用、滞在費をあわせて200万円ほどです」

国が定めるハーボニーの薬価は5万5000円で投薬期間は12週間。完治までには薬代だけで最低465万円がかかる計算となる。

「国民健康保険のおかげです。薬代は月に1万円までしか取られないですから」(同)

実は彼女の在留資格は、医療滞在ビザではなく、会社経営のために滞在する場合に発給される経営・管理ビザなのだという。留学ビザや経営・管理ビザ、就労ビザなどで日本に3か月以上合法的に在留するすべての外国人は、国民健康保険(会社員なら社会保険)への加入が義務づけられている。同時に、日本人加入者と同様の恩恵を受けることができる。ハーボニーは肝炎医療費助成制度の対象となっており、国保もしくは社保の加入者は、所得によって自己負担限度額が月額1万円もしくは月額2万円までに制限される。つまり薬価ベースでは465万円かかる投与が、最低3万円で受けられるのだ。さらにハーボニーの薬代以外の診察料や各種検査費用なども、国保なので「3割負担」で済む。Wさんが依頼した業者は、この制度に目をつけ、格安でC型肝炎治療を受けられる方法を彼女に売り込んでいたのだ。

ちなみに医療滞在ビザで来日し、ハーボニー投与を受けた場合、滞在費を含めて600万円以上になると業者から言われたという。

薬価と患者の負担額の差額は、保険料と税金によって賄われていることは言うまでもない。Wさんは「保険料はきっちり払っている」と強調するが、前年に日本で所得のない彼女の保険料は、最低額の月4000円程度だ。

多くの日本人は、健康状態にかかわらず国保や社保の保険料を一生支払い続けなければいけない。治療目的で来日して国保に加入し、支払った保険料を大きく超えるような医療サービスを受けるというのは、公正とはいえない。

ちなみにWさんのビザ申請は「業者任せなのでわからない」と言う。どういうわけか。中国人ジャーナリストの周来友氏が明かす。

「経営・管理ビザは、資本金500万円以上の会社を設立し、その代表取締役になる場合に申請できる在留資格で、まず1年間滞在することができる。500万円の“見せ金”を用意できれば、割と簡単に発給されるため、日本でマンションを爆買いして移住する中国人にも人気のビザです。ビザ申請のためのペーパーカンパニーまで用意してくれる行政書士もいる」

■薬の新薬オプジーボも1回約6万円で済む

国保への加入を目当てにしているのはC型肝炎患者だけではない。北京市出身の50代のFさんは、都内で親族が経営する貿易会社に就労ビザのスポンサーとなってもらい、3か月前に来日した。しかし、Fさんに勤務の実態はない。来日前からステージ3の肺がんを患うFさんは、通院と療養の日々を過ごしているのだ。

Fさんが難病を押して来日したのも、がん免疫薬のオプジーボと、日本の国保の手厚さを知ったのがきっかけだ。

夢の新薬とも言われるオプジーボだが、薬価は100mgで約73万円(来年2月以降に半額になる)。1回の投与では、体重1kgに対して3mgを点滴するため、体重60kgの人であれば約131万円分のオプジーボが必要となる。2~3週間に1回のペースで回復が見られるまで投与する。

「中国でも並行輸入されたオプジーボを1回40万円ほどで投与してもらえる。しかし、どのくらいで治るか見当がつかない。そこで、がん医療が発達しており、中国よりも医療費の安い日本で治療を受けることにしました」(Fさん)

オプジーボの投与には、ハーボニーのような医療費助成制度はない。しかし国保には、一定以上の医療費支払いが免除される高額療養費制度がある。東京都港区国保年金課に問い合わせしたところ「来日したばかりの外国人で、前年度の所得がない場合、高額療養費制度により限度額は月に5万7600円になる」とのことだった。

保険適用を巡り、薬価の高額さゆえ「亡国の劇薬」とも揶揄されたオプジーボ。2か月前にやってきたばかりのFさんは現在、保険適用によるオプジーボ投与の前提となる診察や治療を受けている途中だという。

一部とはいえ、こうした来日中国人の行いは言語道断だろう。

<医療費を圧迫!狙われる高額薬剤と手術>

●オプジーボ…点滴静注100㎎72万9849円
小野薬品工業のがん免疫薬。来年に半額になるが、それでも高額なことには変わりない

●ハーボニー(1錠)…5万5000円
米ギリヤド社が開発したC型肝炎治療薬。3週間の投薬による治癒率は90%以上とも

●副鼻腔炎手術…100万~150万円
蓄膿症を改善するための手術。一般的に2時間未満で終わり、日帰りも可能なため人気だ

●冠動脈バイパス術…200万~400万円
狭心症・心筋梗塞の治療を目的とした手術。天皇が受けたことで、中国でも有名になった

●脊椎固定術…100万~200万円
脊椎の問題部分を固定する、腰痛治療のための外科手術。中国では東洋医学的治療が主流


日本の国民健康保険ほどありがたいものは、世界を探してもそうあるものではありません。こんなにお得な制度をちゃっかり悪用することに躊躇がないところは、免税店からのマージンをもらっても確定申告もせず、帰国してしまうスルーガイドと同じでしょう。いずれも、彼らの存在を知っていながら、それを利用している日本人がいるところも共通しています。彼らがいる以上、今後もこうした「言語道断」はなくなりそうにありません。

こういう報道もありました。

中国人に処方箋薬を横流し容疑、業者・医師逮捕(読売新聞2016年8月26日)
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0826/ym_160826_1404838657.html

中国人観光客向けに処方箋が必要な医療用医薬品を横流ししたとして、警視庁が、医薬品卸売会社「美健ファーマシー」(東京都千代田区)の社長や医師の男ら計4人を、医薬品医療機器法違反容疑で逮捕したことが、捜査関係者への取材でわかった。

中国人ブローカーの自宅からは2万6000点を超える医薬品が押収されており、同庁は、同社が大量の薬品を組織的に横流ししていたとみている。

捜査関係者によると、逮捕されたのは同社社長の財間英信容疑者(49)のほか、40歳代の社員と60歳代の仲介役、40歳代の医師のいずれも男計3人。社員の男が、インターネットの掲示板を通じて中国人ブローカーと知り合い、財間容疑者に紹介したのがきっかけだったという。


この件については、同じ読売新聞で今年9月下旬、連載された特集「ニッポン観光の影」でも報じられていました。

処方薬 広がる横流し(読売新聞2016年9月26日)
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同記事では「訪日観光で爆発的に拡大した日中間の人の流れは、医薬品の『闇ルート』まで広げてしまった。厚生労働省の担当者は言う。『非正規の市場が広がると、偽薬の要綱などによる健康被害にもつながりかねない。不正流通の監視強化も検討しなければならない』」と述べています。

治療代640万 払わず帰国(読売新聞2016年9月28日)
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この記事によると「飛行機で脳卒中を起こしたベトナム系米国人の女性」が成田空港から緊急医療センターに運ばれ命を取り留めたものの、旅行保険に入っていなかったため、約800万円の治療費のうち、160万円分をクレジットカードで支払った後、帰国し、残りの640万円を踏み倒してしまったそうです。

同記事は「訪日観光の急拡大は、国内の医療態勢やサービス、交通網などに想定外の負荷をかけつつある」と指摘しています。

これからもいろんなことが起こるでしょう。情報の共有と態勢づくりがますます必要になってきました。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-09 15:08 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 01日

トリップアドバイザーにまつわる数字と日本のインバウンドの話

先日、恵比寿ガーデンプレイスの34Fにあるトリップアドバイザー日本法人オフィスで開かれた同社のメディアラウンドテーブルに出席しました。今年9月に着任した牧野友衛代表取締役の紹介も兼ねたものでした。
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トリップアドバイザーは、世界最大の旅行コミュニティサイトとして知られています。今回のメディアラウンドテーブルの内容は、同サイトが旅行業界にもたらすプラスの効果をはじめ、インバウンドビジネスのトレンド、さらに国内ユーザーに向けた取り組みなどの紹介でした。そのあたりの話は、他に出席していた記者の方々がいたので、おまかせします。ぼくはあくまで日本のインバウンドに関する話題だけを以下、紹介します。

トリップアドバイザー
www.tripadvisor.jp

まず牧野代表取締役の紹介がありました。AOLジャパンやGoogle、Twitter Japanなどの多国籍IT企業を転々としてこられた方のようです。
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そして、トリップアドバイザーにまつわる数字が次々挙げられました。パワポの数字は、若干古いものだそうで、たとえば、サービスを展開する国の数が48カ国とされていますが、最近、ポルトガルが加わり、49カ国になったとか。まあとてつもない数字が並びます。

旅行者からの口コミ情報数 4億3500万件以上
月間利用者数 3億9000万人以上
旅行者からの写真投稿数 8000万件以上
登録施設数(ホテル、レストラン、観光施設) 680万軒以上
49の国と28言語で展開
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本社は東海岸のボストンにあるそうです。日本語でのサービス開始は2008年10月。開設が訪日旅行市場が急拡大する時期と重なったこともあり、外国人が日本を旅行するときに利用する情報サイトとしての存在感を得ていったと思われます。

では、どこの国の人が日本の情報をよく見ているのか。
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トップは米国で17.1%、2位は中国10.9%、以下、台湾10.2%、香港8.0%、オーストラリア7.0%という順です。トップ5で、全体の50%以上を占めるようです。米国発のサービスだけに、米国がトップなのはもちろん、韓国を除くと、訪日旅行者数トップ5が入っているのは当然です。台湾や香港、韓国などは、トリップアドバイザー以外の自国の情報サイトやコミュニティが充実していそうですから、こんなものでしょう。

これはぼくの想像ですが、アジアのユーザーはトリップアドバイザーに北米ユーザーが多いことは承知でしょうから、普段利用している自国サイトとは別の観点からの情報を得たり、参考にする場合に利用するという感じではないでしょうか。また中国人の場合、日本語のわかるコミュニティの人たちではなく、大学で英語を学んだり、外資系に勤めているような人たちがトリップアドバイザーを利用している気がします。

次の円グラフはちょっとわかりにくいのですが、アジア太平洋地区の国々に絞って、どの国がよく見られているかを集計したものですが、左の図は全世界からみた割合で、右はアジア太平洋地区の国々からみた割合です。ともに日本がトップです。以下はインドやオーストラリア、タイなどです。
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ところが、米国ユーザーに絞ってどの国をみているかとなると、日本は大きくダウンします。全体のわずか2%でしかありません。メキシコや欧州の国々が上位に入るのは、まあ当然でしょう。
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一方、中国ユーザーの場合は、トップがタイと日本でともに13%です。
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そんなわけですから、トリップアドバイザーによる世界の人気観光都市ランキングでは、東京は21位といったところです。
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これらの数字は、やはりトリップアドバイザーのメインユーザーが北米であることに起因していると思われます。

ところで、日本のホテルやレストラン、観光施設などの登録物件は現在、70万件だそうです。そのうち、日本語による口コミは全体の92%を占めるそうです。
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トリップアドバイザーは多言語化が進んでいるので、これらの日本語の口コミも海外では自動翻訳されて読むことができます(すべての国・地域ではない)。

さて、この数字をインバウンドの観点からみると、トリップアドバイザーの日本の物件に関する外国人の口コミは全体の8%にすぎないともいえます。同サイトはよく「外国人に人気」の観光スポットやレストランといったプレスリリースを発信していますが、これも8%の口コミの中から集計したものです。

ぼくは、すでに国内にはさまざまな旅行情報サイトやコミュニティがあるため、トリップアドバイザーは日本人が海外に行くときの口コミをチェックするためのサイトかとずっと思っていたのですが、国内物件に関しても日本語の口コミが大半を占めるんですね。

実は、FBにこの話を書いたら、知り合いの旅フリークのひとりが「クチコミ1件で100マイル(月間400マイルまで)をもらえていた時は、地元の情報を含め国内のクチコミをたくさん書きました。今は、ほとんどもらえないので書いていません」なんて教えてくれました。そうか、開設当初はとにかく登録物件数を増やせということで、キャンペーンをやっていたのですね。

この点に関して、ぼくはまったく勘違いをしていました。トリップアドバイザーに登録されている物件に口コミ件数が載っていますが、これは日本語と外国語を合わせたものなのですね。であれば、各都道府県別や地区別のランキングも、日本人と外国人の口コミを合わせた件数で、その比率まではわからないということです。

えっ、そんなの当然だって? そりゃそうか。外国人に限る集計は、トリップアドバイザー内部でしかできないわけで、そうなると貴重です。実際、同サイトのプレスリリースのリストをみていると、なかなか興味深いものが多いです。

たとえば、これなんか面白いですね。

トリップアドバイザー『旅行者物価指数(トリップインデックス)2016』を発表(2016.7.20)
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/07/00da71d62a5a3bd076514bf66c0c1903.pdf

これは世界20都市における旅行費用のランキングです。トップはニューヨークで、2位は東京だそう。最も安いのはハノイです。

またこんなのもありました。

中国人旅行客向けにレストランのモバイルクーポンサービスを開始(2016.11.26)
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/11/20161125_TripAdvisorPressRelease.pdf

これはトリップアドバイザーの中国版「マオトゥイン(猫途鹰)」のモバイルサイトやアプリから利用できるそうです。モバイルサイトや店舗のオフラインQRコードからスペシャルクーポンをダウンロードし、それを提示することで割引や無料のサービスなどを受けられるとか。

リリースによると「中国版「マオトゥイン(猫途鹰)」にて中国人旅行者が検索できる日本国内のレストランは600,000軒以上で、そのうちの約88,000軒が東京のレストランとなります。現在、同サービスは東京のレストランを中心に展開をしており、引き続きサービスを提供するレストラン店舗の拡大を目指して参ります」とあります。

トリップアドバイザーはぐるなびと提携しているそうなので、こういうサービスが実現できるのでしょう。でも、中国人からいきなりスマホを見せられて対応できる飲食店はどれほどあるのでしょうか。そんなことが気にならないではありません。

ところで、3年前のことですが、トリップアドバイザーの別の関係者の話を聞いたことがあります。

台湾でいまホットな話題は「シニア旅行」と「自由旅行」(台北ITF報告その6)
http://inbound.exblog.jp/21417412/

台北で開かれていた旅行博のフォーラムに登壇したトリップアドバイザーアジア太平洋地区副総裁(当時)のCindy Tanさんで、「他の類似サイトの追随を許していないことから、世界のFITの支持を勝ち得ている。年間書き込まれる1億件のコメントのうち、51%はホテルに関するもの。膨大な口コミ情報をフィードバックできることが、弊社のホテル業界に対するマーケティング・ビジネスを支えている」とコメントしていました。

3年前の口コミ数は1億件だったようなので、いまは4倍以上に増えているのですね。それと、このサービスの収益の大半は、ホテル業界との関係によるものだと彼女も話していましたが、牧野社長も同様の話をしていました。要は「ホテル予約の際のクリック型広告による」ものだそうです。Booking.comと提携しているとか。ホテル予約サイトとは立ち位置が違うところが、このサービスの面白いところだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-01 13:09 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 30日

タイでも「ゼロドルツアー」摘発! キックバックに頼る中国人ツアーは万国共通

こんな記事をネットで見つけました。タイのインバウンド市場に関するニュースです。

タイ、12~2月の観光ビザ申請無料に(newsclip.be2016年11月23日)
http://www.newsclip.be/article/2016/11/23/31278.html

2016年11月22日、タイ国軍事政権は2016年12月1日から2017年2月28日までの3ヵ月間、観光ビザの申請料1000バーツを免除し、到着時ビザの申請料を2000バーツから1000バーツに引き下げることを閣議で承認した。

タイは例年、乾期の11月~2月が観光のピークだが、今年は中国人向けツアーの取り締まりや、プミポン国王死去にともなう自粛ムードなどから、観光者が減少してしまうことが懸念されている。今回の施策はそんな中で旅行者誘致が狙いとみられる。

タイは乾期の11~2月ごろが観光の書き入れ時だが、今年は中国人向け「ゼロドルツアー」の取り締まり、10月のプミポン国王死去にともなう自粛ムードなどで、客足が鈍ることが懸念されている。


えっ、「ゼロドルツアー」って何? 記事は以下のように説明します。

「ゼロドルツアー」はタイでの宿泊費、食費、ツアー費などが全て無料とうたった中国人向けツアー。ツアー参加者がタイ滞在中に宝石店、皮革製品店、絹製品店などに連れて行かれ、高値で商品を買わされるなどトラブルが多く、軍政が取り締まりを進めている。取り締まりの影響で、一部の観光地で中国人旅行者が激減したという報道がある。

なるほど。要するに、日本で行われているような免税店で購入した土産物の売上からキックバックをもらい、ホテルやバス代、食事代などのコストを切り盛りする中国人ツアーがタイでも行われているということです。

ネットで調べると、今年9月、タイでこの種のツアーを扱うランドオペレーターが摘発されたことがわかりました。

中国人向け「ゼロドルツアー」運営会社を摘発(グローバルニュースアジア2016年9月18日)
http://www.globalnewsasia.com/article.php?id=3756&&country=2&&p=2

2016年9月13日、タイ警察は資金洗浄取締法、旅行業法などの違反容疑でバンコクの大手旅行会社OAトランスポートの会長であるタイ人女性(61)と、その息子(26)で取締役の2人を逮捕した。

この逮捕に先立ち、タイ資金洗浄取締局(AMLO)は9日、OAトランスポートが所有する大型バス2000台以上、計90億バーツ相当の他、銀行預金、現金など42億バーツを差し押さえた。

OAトランスポートは「ゼロドルツアー」と呼ばれる、タイでの宿泊費、食費、ツアー費など全て無料とする中国人向けツアーを、中国の旅行会社と組んで運営し、巨額の利益をあげていた。

「ゼロドルツアー」に関しては、ツアー参加者がタイ滞在中に宝石店、皮革製品店、絹製品店などに連れて行かれて、高値で商品を買わされるケースが頻発し、タイ軍事政権が取り締まりを指示していた。


さらに検索すると、以下のブログの記事も見つかりました。

そのブログ「タイ字新聞、タイ語の記事をとりあえず日本語に」(http://taigoshinbum.blog79.fc2.com/blog-entry-1550.html)によると、

摘発されたのは「大手のゼロ・ドル・ビジネスを行っている会社、フーアン社、シンユアン社」の2社。「2社とも、違法にタイのIDカードを用いてツアー会社を設立し、秘密結社法に違反していた。資金洗浄取締局の財産没収罪となる。その後の拡大捜査で、広範なネットワークを持つ大手のオーエー・サーンサポート社に捜査が及び、ツアーバスが押収された」。

「5日間の飛行機代、車代、滞在費と食費を入れて、だいたい2,000~5,000バーツだ。ツアーの主催者はツアー料金があまりに安すぎると考えるが、中国人のツアー客を毎晩引き連れて買い物させ、商品価格の35-50%をサービス料として割り増している」と解説しています。

気になるのは、「フーアン社、シンユアン社」の実態です。あとでタイの知人に聞いてみたいと思います。

さて、これは日本に限らず、香港、台湾、韓国、オーストラリアなどのアジア太平洋地区、そして欧米諸国でも、万国共通で当たり前に行われていることですから、いまさら驚く話ではありませんが、「ゼロドルツアー」というネーミングがいかにもタイらしいというべきか。

結局、こうしたことは、中国国内のビジネス慣行を海外にもそのまま持ち出し、在外華人らと結託することから起きてしまうことですが、摘発による影響で中国人観光客が減少したことから、今度は観光ビザ代の申請料免除で、各国の旅行者を呼び込もうというわけでしょう(日本人はもとからビザ不要なので関係なし)。大挙して来れば問題を起こすし、来ないとなれば困る。それは周辺国の抱えるジレンマです。難しいものですね。

この人騒がせな中国人ツアーをめぐる各国の対応と攻防はこれからも続くことでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-30 14:54 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 30日

フィリピンでも「爆買い」!?  それは中国が観光を政治の取引に使ったという話にすぎない

昨日、ネットで以下の記事を見つけました。フィリピンを訪れる中国人観光客が増えているのだそうです。

ドゥテルテ訪中効果?中国人観光客増で”爆買い”期待(WEDGE2016年11月29日)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8321

フィリピンを訪れる中国人観光客が急増している。比中関係は2012年4月以降、南シナ海における領有権争いの問題で長らく冷え込んでいたが、ドゥテルテ大統領による10月半ばの訪中で関係が回復した。また、中国当局がフィリピンへの渡航自粛勧告を解除したことも追い風になり、今後はさらなる増加が予想されている。

フィリピン観光省の統計によると、今年1~8月の中国人観光客数は約48万4500人に上り、韓国人(約97万6400人)、米国人(約58万4100人)に次いで3番目に多かった。

フィリピンへの外国人観光客数は昨年まで、上位3カ国は韓国、米国、日本の順で長らく変わることはなかった。日本と僅差で4位につけた中国は今年、現段階で4位の日本(約36万7100人)を大きく引き離しているため、通年で中国が3位にランクインするのはほぼ確実な情勢だ。中国人観光客の前年同期比の伸び率は50%と突出して高く、2位の米国をも抜く勢いで増え続けている。

フィリピン観光省によると、中国人観光客が急増している背景には、数年前からチャーター便を利用した団体客が増えたことが大きい。300人程度の団体客が、北京や上海など、中国各地の大都市からフィリピンの有名リゾート地であるボラカイ島やセブ島へ大挙して押し寄せているという。

3泊4日のツアーで客層は中年が多く、1日当たりの出費額はホテル代込みで80ドルに上る。日本で一時期話題になった「爆買い」には及ばないが、この勢いを受けて昨年、フィリピンと中国を結ぶ便数も増え、観光客増に拍車を掛けることになった。

ドゥテルテ大統領が今回の訪中で取り付けた中国からの経済協力は240億ドル(約2兆5000億円)という莫大な額だ。この影響で中国からの観光客増はさらに見込まれるが、観光省の担当者は「これまで通りボラカイ、セブ両島だけでなく、他の魅力ある島への誘致も進めたい」と意気込む。

ただし、昨年末にはボラカイ島のホテルで中国人観光客のグループ約30人が乱闘騒ぎを起こして警察に拘束される事件が起きており、マナーという点で懸念も残されている。


この話、どう思いますか? ぼくはこれを聞いて、呆れてしまいました。なぜなら、香港、台湾、韓国でいま中国政府が何をやっているかと思うと、あからさますぎるからです。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです
http://inbound.exblog.jp/26367228/
韓国は無視? 東京で日中観光大臣会談の気になる背景
http://inbound.exblog.jp/26408250/

中国政府は、自分の気に入らない国には観光客を送るのをブレーキをかけさせ、ドゥテルテ大統領の登場で対中関係を表向き改善したフィリピンには、観光客を送るよう仕向けているわけです。

この記事では、フィリピンでも「爆買い」か!? と面白がっているのかもしれませんが、 それは中国が観光を政治の取引に使ったという話にすぎません。まったくシラけた話です。

それに、増えているのは中国の団体客です。要するに、来るのはキックバックモデルの安いツアーばかり。それを成り立たせるために、土産の大量買いが起こるのでしょうが、数年もすれば、他のアジアの国々と同じように問題も出てくることは必至です。

中国客が増えても大歓迎といえないのは韓国、台湾でも同じらしい
http://inbound.exblog.jp/23872141/

フィリピンを訪れる外国人数で、昨年まで韓国、米国に次ぐ3位だった日本は、今年中国に抜かれるそうです。もっとも、昨年フィリピンを訪れた日本人は37万人相当だったようなので、今年は日本を訪れるフィリピン人の数と変わらなくなるかもしれません(2016年1~10月の訪日フィリピン人数は前年比30.9%増の27万6500人)。

こちらは時代の変化を感じさせる話です。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-30 14:31 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 26日

韓国は無視? 東京で日中観光大臣会談の気になる背景

今週、以下の記事が配信されていました。今年9月に中国の武漢で開催される予定だった日中韓3ヵ国の観光大臣会合が中国側の事情で延期になっていましたが、メディアによると「(中国側代表は)米国での観光イベントに出席した帰路、会談のために日本を訪問」(トラベルヴィジョン2016年11月24日)し、日中のみでの会談が実現したようです。

「ぼったくり追放」も合意 日中両国が観光拡大の覚書(産経ニュース2016.11.24)
http://www.sankei.com/world/news/161124/wor1611240041-n1.html

石井啓一国土交通相と中国の李金早国家観光局長は24日、日中観光の活性化について意見交換し、観光交流の拡大や観光サービスの質向上に向けて協力するなどの内容を盛り込んだ覚書に署名した。また、来年の日中国交正常化45周年、翌年の日中平和友好条約締結40周年の節目に合わせ、共同イベントを企画する方向で合意した。

覚書の合意事項は、(1)地方間交流や青少年交流、文化・スポーツ交流の3分野での観光交流促進(2)東アジア域外からの観光客誘致(3)観光サービスの質向上(4)「ぼったくりツアー」といった違法行為の是正など観光市場の監督と協力の強化(5)重要事項を定期的に協議するメカニズムの整備-の5点。

会談で、石井氏は中国からの訪日客が10月までに551万人に達したと説明し、「双方向の観光交流を一層拡大することが重要」との認識を示した。


両国の合意事項として挙げられる5点のうち、興味深いのは、(2)東アジア域外からの観光客誘致と(4)「ぼったくりツアー」といった違法行為の是正など観光市場の監督と協力の強化でしょうか。これはどういうことを指すのか。

産経の記事は大雑把なので、別の記事を見てみましょう。

中国から国家旅游局長が来日、石井大臣と会談、MOUも(トラベルヴィジョン2016年11月24日)
http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=75421

記事の一部を以下、抜粋します。

「東アジア域外からの観光客の誘致」については、15年の3大臣会合で決定した「ビジット・イースト・アジア・キャンペーン」の推進をはかるとともに、20年夏の東京オリンピックと22年冬の北京オリンピックについて情報と経験を共有することで一致。「観光サービスの質の向上」「観光市場の監督と協力の強化」では、観光客にとってより安全で快適な環境を作るため、不合理な格安ツアー、買い物の強制、ぼったくり行為などの減少に向けて連携することを確認した。観光庁は啓発のための新たなポスターを、近日中に制作する予定。

ここでは両国の合意事項の中身についてもう少し詳しく書いています。(2)については、2020年夏の東京オリンピックと2022年冬の北京オリンピックの開催が決定していることから、東アジア全体で海外からの旅行者の集客について協力しようということでしょう。
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そして(4)については、以前本ブログでも解説した中国のキックバックスキームに依存する安価なツアーの問題と、そのようなツアーがキックバックを得るために客を連れて行かなければなかった日本国内にある「ブラック免税店問題」を指していると思われます。今日、日本を訪れる中国人観光客は日本人の訪中客よりダブルスコア以上に多いことから、中国側としてはこの問題についての日本側の姿勢を問い正したいと考えていても不思議ではありません。要は、多くの訪日中国客を騙す「ブラック免税店」を日本の監督官庁はきちんと取り締まってほしいということなのでしょう。

中国「新旅游法」は元の木阿弥―キックバックを原資としたツアー造成変わらず
http://inbound.exblog.jp/24166349/

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/

それにしても気になるのは、なぜここに韓国側代表がいないのか? お国の事情がそれどころではないのかもしれませんが、なんだか韓国だけ除け者にされているような感じです。2018年には平昌冬季五輪もあるというのに…。

「日中韓観光大臣会合」は2006年から毎年行われていましたが、尖閣諸島「国有化」で、12年以降、中国側が一方的に開催を拒絶していたものの、15年4月、4年ぶりに第7回目として再開され、冒頭で述べたように今年も9月に開催される予定でした。ところが、今夏の中国、特に内陸部は大雨で被災したことから、延期となっていました。

武漢での日中韓観光大臣会合が延期に、理由は水害(トラベルヴィジョン2016年8月7日)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=73790

武漢市各所が豪雨のため冠水、「航海」する車や人々(人民網日本語版2016年06月02日)
http://j.people.com.cn/n3/2016/0602/c94659-9067233.html

当時中国メディアは、被災地の正確な状況や被災者数などを詳しく伝えず、人民解放軍らが復興支援で活躍する様子ばかりをテレビに映すので、知り合いの中国人たちは不安を隠せないと話していました。9月上旬、日本旅行業協会(JATA)の知人から「会合が延期になり、武漢行きがなくなった。どういうことだろう?」と聞かれ、場所が武漢であれば仕方がないと答えたことがあります。この時期、海外メディアには武漢に来てもらいたくないという事情もあったかもしれません。

今年、中国とアメリカは「中米観光年」を迎えていました。両国の観光交流を相互促進しようという年だったのです。

習近平主席が「中米観光年」閉幕式に祝辞(人民網日本語版2016年11月22日)1
http://j.people.com.cn/n3/2016/1122/c94474-9145227.html

米国で開催されたイベントの「帰路」に中国の国家観光局長が日本に立ち寄ったというのは、そういうわけです。

いま中国は香港、台湾のみならず、THAAD配備を決めた韓国に対しても徹底して報復措置を実施しているところですから、お呼びではないということなのかもしれません。日本側もわざわざ声をかけるという気にならなかったということか。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです
http://inbound.exblog.jp/26367228/

ここ数年、日本を訪れる外国人観光客が増えている反面、中国を訪れる外国客は伸び悩んでおり、北京冬季オリンピックに向けて、この方面については日本と協力したいという思惑が彼らの側にはあるのかもしれません。

アジアで珍しく外国客数が伸び悩む中国の観光PRのお寒い中身
http://inbound.exblog.jp/24475269/

だとしても、ここまで露骨に観光を政治の取引に使う中国との協力を、どこまで本気に進めればいいものか、考えてしまいます。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-26 14:14 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)