ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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カテゴリ:気まぐれインバウンドNews( 95 )


2016年 10月 11日

「外国人多くご不便を」とアナウンスした車掌さん 訪日客急増で日本人はストレスをためてる?

今日、ネットでこんな記事を見つけました。訪日外国人が街に増えて、日本人はストレスをためてしまっているのでしょうか。  

以下、記事を転載します。

「外国人多くご不便を」 南海電鉄40代車掌が不適切アナウンス…乗客クレーム発端 「差別の意図なかった」と釈明(産経WEST 2016.10.10)
http://www.sankei.com/west/news/161010/wst1610100055-n1.html

「南海電鉄の40代の男性車掌が日本語で「本日は外国人のお客さまが多く乗車し、ご不便をお掛けしております」との車内アナウンスをしていたことが10日、同社への取材で分かった。車掌は「差別の意図はなかった」と釈明。同社は「客を区別するのは不適切」と車掌を口頭で注意した。

同社によると車内アナウンスは10日午前11時半ごろ、難波発関西空港行き空港急行が天下茶屋を発車した直後の車内で流れた。

車掌は同社の聞き取りに「日本人乗客の1人が車内で『外国人が多く邪魔だ』との内容を大声で言ったのを聞き、乗客間のトラブルを避けるため、所定の案内を放送した後、付け加えた」と話したという。

関西空港駅到着後、乗客の日本人女性が駅員に「社内ルールに定められた放送なのか」と問い合わせて発覚した。同社は「日本人も外国人もお客さまであることには変わりない。再発防止を図りたい」としている」。


面白いと思うのは、このアナウンスを耳にして黙っていられなかった「日本人女性」がいたことです。なぜ外国人が多いと不便なのか。彼らも我々と同じ人間ではないか……。(実際のニュアンスはわかりませんが)そう問い正さなければ気がすまない義憤をおぼえたのだとしたら、それはぼくも賞賛したいと思います(自分はそこまで絶対できないと思うので……)。それとも、そのとき彼女は外国の友人か誰かと一緒に電車に乗っていたのかもしれません。

ただこの車掌さんも差別意識があったというより、外国人の存在が目には見えていても、自分の生活圏には無縁の存在でしかなく、だから無意識のうちに「私たち(自分のいる側)」と「外国人(そうでない側)」という切り分けをしてしまったのだろうと推察します。大声でどなったおじさんのように、「外国人が多く邪魔だ」と感じている「私たち」が大勢いるかもしれない。彼としては、そこに気を遣ったつもりなのではないでしょうか。

さすがにこの車掌さんも「子供が多くご不便を」、あるいは「女性が多くご不便を」などとは言わないでしょう。昭和の昔には、そんなことも平気で言う車掌さんがいたかもしれませんが、さすがに平成の時代です。

いまは過渡期なんだと思います。多くの日本人にとって、これほどたくさんの外国人が普通に街を歩いていたり、乗り物に乗っていたりする時代というのは初めてなので、そのような社会の変化に慣れていないのだと思います。

それが日本人にとって目に見えないストレスになっているかどうかは、個人や世代によるかもしれません。

だから、しょうがなかったではすまないわけですが、かつてこの車掌さんのようなおじさんたちは「女子供」で同じ過ちを繰り返してきた過去があったのではないでしょうか。今回のことで、このおじさんも「外国人」が「女子供」と同じジャンルなのだと理解したことでしょう。

それにしても、こういうことをつい言ってしまうなんて、やはり40代だなあと思いましたね。さすがに若い人だと、もう少し外国人の存在に身近に触れている気がします。子供の頃から、学校教育の場面でも外国人教師がいたと思われるし、これは都会の一部に限られるかもしれませんが、クラスにひとりやふたりは日本人と外国人のハーフの子や中国人2世がいたと思うからです。

「慣れている/いない」というのは、一般的には責任ある立場の人が粗相をしたときの言い訳にはならないかもしれませんが、慣れていない事情を無視して、頭ごなしに責めるのもどうかとも思います。ポリティカルコレクトネスを楯に「言葉狩り」のように思考停止を人に強いるやり方ではなく、だんだん慣れていくというプロセスが大事ではないか。そうやって社会はこれまでも変わってきたに違いないからです。

【追記】
その後、ネットにこの件に関する以下の続報がありました。

南海電鉄「外国人乗客に辛抱を」車掌アナウンスやっぱりアウト!? 街で聞いてみたら...(J-CASTニュース2016/10/12)
http://www.j-cast.com/tv/2016/10/12280375.html

テレビのワイドショーでこの件が扱われたようです。タイトルにもあるように、アウトかセーフかという問いたてがあり、日本人乗客と外国人観光客の双方にインタビューした結果、両論あるとレポーターが伝えた後、番組のコメンテーターはアウトだと発言したようです。

でも、ここでのポイントはここにありそうです。以下、記事の一部です。

「外国人向けマナー喚起も効果なし

空港急行の乗客はだいたい30%近くが外国人だという。いっぽうで、この路線は堺、岸和田を通る生活路線でもある。なんば駅には外国人向けに、「食事はしない」「携帯は使わない」「床に座らない」など車内のマナーを守るよう呼びかけがある。しかし、たくさんのスーツケースで社内は大混雑となり、声がうるさい、マナーが悪いなどの苦情は多いという」。

ぼくも何度か関空から大阪市内に向かう南海電車(ラピート)に乗ったことがありますが、確かに日本人の現在の感覚では、一部の外国人の姿はこう映る場合もあるだろうなと思います。

だから、視聴者の中には、コメンテーターの発言に、逆になんらかの違和感をおぼえたりするのかもしれません。なにかきれいごとで丸め込まれたかのような……。

ぼくの感じ方は、正直なところ、少々「お行儀の悪い」外国人の様子を見ても、「自分の若い頃はこんなもんだったよなあ」という思いしかありません。これも個人差なので、他人に強制はできませんけれど。

あるひとりのコメンテーターが「修学旅行生が多くてご不便とは言わないでしょう」と指摘していましたが、そのたとえはうまいなと思いました。日本人であれば、誰でも修学旅行の経験はあるからです。その意味では、海外旅行で日本に来ている外国人に対して「修学旅行生」のようなまなざしを向けることは、誰もができることではないかもしれません。でも、これも慣れだと思うのですけれど。
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by sanyo-kansatu | 2016-10-11 22:05 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 09月 12日

台湾のバス事故で亡くなったは大連からの旅行者だった(その影響は?)

昨晩、ネットで以下の記事を見つけました。今年7月下旬、台湾で中国遼寧省大連からの団体客を乗せたバスから火災が発生し、乗客や運転手など全員が死亡したニュースの続報です。

なんと、この事故を起こした運転手が「自殺願望」の持ち主だったというのです。なにしろ乗客には6歳の子供までいたそうで、その痛ましさには言葉がありません。
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台湾の観光バス炎上、「自殺願望」の運転手が放火(AFP 2016年09月11日)
http://www.afpbb.com/articles/-/3100539?cx_part=topstory

【9月11日 AFP】台湾で今年7月、中国からの観光客を乗せたバスの車内で火災が発生し、その後、ガードレールに衝突して、乗客乗員26人が死亡した事故について、捜査当局は10日、「自殺願望」があった運転手が故意に火を付けたことが原因だったと発表した。

今回の発表に先立ち当局は、バスの運転手だった蘇明成(Su Ming-cheng)容疑者が飲酒運転していたと発表していた。

捜査当局によると、中国人観光客を乗せ空港に向かって高速道路を走行していた蘇容疑者は、運転席および出口付近の床にガソリンをまき、ライターで火を付けたという。

地元の検察当局は10日に発表した声明で、「(蘇容疑者は)飲酒運転をしており、ガソリンをまき、火を付けて自殺し、乗客らを死亡させた」と述べた。

捜査では、事件前の数日間、蘇容疑者とその家族らの数十回の通話記録から、自殺を思いとどまるよう同容疑者に訴えていたことが明らかになった。

また、蘇容疑者には飲酒癖があり、飲むと暴力的になっていたという。ツアーガイドとの乱闘騒ぎや、性的暴行でそれぞれ裁判沙汰になったことがあり、捜査当局によれば、そのどちらも酒に酔った状態だった。(c)AFP


事故が起きた7月下旬、ぼくは大連にいました。この話を最初に聞いたのは、大連の親しい旅行関係者からでした。

彼女の知り合いの同業者がこのツアーを催行していたそうで、事故始末に大変なことになっているそうでした。「その会社はもう営業を続けることはできないかもしれない。でも、そこだけではなく、しばらく台湾ツアーは集客できなくなる」とぼやいていました。

あとで知りましたが、このニュースは日本でも報道されていたようですね。

観光バスが衝突・炎上、中国人観光客ら26人死亡 台湾(AFP 2016年07月19日)
http://www.afpbb.com/articles/-/3094460

【7月19日 AFP】台湾で19日午後1時前、中国本土からの観光客らを乗せて台北(Taipei)郊外の台湾桃園国際空港(Taiwan Taoyuan International Airport)に向かっていたツアーバスが衝突事故を起こして炎上し、乗っていた26人が死亡した。台湾内政部(内務省)が明らかにした。

地元メディアの映像では、バスが走行中に高速道路のフェンスに激突して車両の前方から炎が上がり、その後、激しい煙を出しながら炎上して黒こげになったバスの車体が捉えられている。

内政部によれば、バスに乗っていた団体客は、中国北東部遼寧(Liaoning)省大連(Dalian)から訪れた男性8人、女性16人の計24人。また運転手1人とツアーガイド1人も死亡したという。

乗っていた団体客は今月12日に台湾を訪れ、19日午後4時30分発の便で中国へと帰国する予定だった。(c)AFP


BBCの中国語版でも報道されていました。

台湾桃园陆客团旅游大巴失事着火26人死(BBC中文網2016年7月19日)
http://www.bbc.com/zhongwen/simp/china/2016/07/160719_taiwan_coach_fire

同中国語版をみると、今年2月に江蘇省のツアー客も台湾でバス事故に遭っていたようです。

江苏旅游团游览巴士台湾高速公路出车祸(BBC中文網2016年4月25日)
http://www.bbc.com/zhongwen/simp/china/2016/04/160425_taiwan_china_bus_crash

ただでさえ、蔡英文政権になって中国政府は台湾への中国客を減らしていたのに、こんなことが起きると、ますます減りそうです。

大連の旅行関係者はこんなことも話していました。「こういう事故があると、台湾だけでなく、海外旅行市場全体にも影響が出るのが気がかりです。ただでさえ、最近の中国は景気が悪く、以前のような贅沢旅行をする人は減っています。8月はそれでも夏休みなので、ファミリー旅行が盛況でしたが、9月以降は海外旅行者が伸び悩むのではないかと心配しています」

秋からの動向が少し気がかりです。
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by sanyo-kansatu | 2016-09-12 15:57 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 07月 05日

ついに報道された中国系「民泊」の実態~でも、正式解禁がアダとなりそうな気配も……

このところ、日経の古山和弘記者が「民泊」をめぐる実態を精力的に報道しています。今朝のネット記事では、ついに中国系「民泊」の実態が明かされました。

本ブログでも、この動きを身近な知り合いを通じて観察していました。中国ではすでにさまざまな「民泊」サイトが存在し、日本に中国客を送り込んでいることがうかがわれていました。

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた
http://inbound.exblog.jp/25579904/

この記事を読むと、東京や大阪の一部エリアでは「民泊」が一気に拡がっていることがわかります。以下、転載します。

「ヤミ民泊」中国系が荒稼ぎ 新宿・心斎橋を侵食
インバウンド裏街道を行く (日本経済新聞20160704)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO03920240S6A620C1000000/?n_cid=MELMG002

一般住宅に旅行者を有料で泊める「民泊」。訪日外国人(インバウンド)の急増でホテルが足りず、政府は民泊を解禁する方針だが、すでにフライング気味の「ヤミ民泊」は全国で急増している。最近目立ってきたのは中国人や台湾人などのアジア勢だ。泊まる側ではない。貸す側として、もうかる「民泊ビジネス」に押し寄せているのだ。その過熱ぶりにバブルを懸念する声も上がり始めた。

■新築マンションに観光客ゾロゾロ

「またや、まちごうて入ってきたで」。大阪市中央区の町工場「東洋タイマー製作所」の社長、北村久雄は事務所のドアを開けて入ってこようとする外国人の姿を見て声を上げた。工場のすぐ隣に新しい賃貸マンションができたのは昨年の秋だ。同時に近所でスーツケースをゴロゴロと引っ張りながら歩く外国人旅行者が増え始めた。いまでは毎週、1~2組の旅行者が間違えて事務所に入ってくるようになったという。

「大阪の台所」とされる「黒門市場」は事務所の目と鼻の先だ。外国人に人気の観光スポットは格好の民泊エリアでもある。民泊の仲介サイトで示されたマンションの場所をみてみると、確かに事務所と同じ場所に誤表示されていた。「マンションで民泊をしとるからや」。北村はため息をつくと、けげんな顔でドアの前に立っている来訪者に説明を始めた。

このマンションは全室が賃貸であるため、入居者が観光客を有料で泊めているとしたら「転貸」に当たる。賃貸契約上問題はないのか。管理会社に取材すると、「実際、マンションで民泊が行われていた」と認めた。どういう風に部屋を利用しているのか、入居者に確認を取っているという。

いま、世界で最も注目されている民泊エリアが大阪市中央区だ。民泊仲介の世界最大手、米エアビーアンドビーは「2016年に訪れるべき16の地域」の第1位に大阪市中央区を選び、世界中のゲスト(宿泊者)に滞在を薦めている。心斎橋や道頓堀といった、「ディープ大阪」を体感できる人気スポットが多いためか、現地はものすごい数の外国人観光客であふれかえっていた。道行く外国人に声をかけたら2人目で民泊の利用者が見つかった。

「オーサカの民泊は快適だったよ」。6月16日、台湾から彼女と来日した大学院生の林(25)は心斎橋のアーケード街にあるロブスターロール専門店の前で取材に応じた。1週間の日本滞在のうち、大阪市内のマンションに民泊で3泊した。エアビーアンドビーのサイトで予約。ワンルームの部屋は狭かったが、宿泊料は2人で1泊6000円。京都や神戸で泊まったホテルに比べると3分の1の安さだ。「学生だから安いほうが助かる」

■中国版エアビーアンドビー

年間2000万人規模の外国人が日本を訪れるようになり、東京や大阪などの都市部ではホテル不足が深刻だ。稼働率の上昇による宿泊料の値上がりも懸念されている。こうした事態を打開しようと浮上したのが民泊の活用だ。ただし、現在の法律のもとでは民泊は旅館業法に基づいた許可を受ける必要がある。民泊の仲介サイトに登録されている物件の多くは、許可を受けていない「ヤミ民泊」とされている。ただ仲介サイトの登録物件には許可を得ずに自宅やマンションを登録しているケースが目立つ。

民泊の仲介サイトは米エアビーアンドビーが有名だが、同じようなサイトは中国企業も運営している。そのひとつが「自在客(じざいけ)」だ。日本版サイトには1万4000室を超える物件が載っている。日本人だけでなく、外国人も登録しているようだ。その多くが中国人という。ほかにもいくつかの中国系サイトが日本に展開している。実際にどのような人物が登録しているのだろうか。あるサイトに掲載されている物件の住所をたよりに現地を訪ねてみた。

物件の住所が示していたのは東京都新宿区。JR山手線の駅から歩いて10分ほどのところにあるマンションだ。築40年という建物は、にぎやかな駅前とはうって変わって静かな場所にあった。目的の部屋にたどり着いてインターホンを鳴らすと若い日本人男性が出てきた。驚いた様子の男性に事情を話すと、この部屋で民泊をやっているのは同居している中国人男性で、「彼はいま、大学で授業を受けている」と教えてくれた。

連絡先を残して帰ったところ後日、男性(25)が電話をかけてきてくれ、会って話をきくことができた。男性は都内の大学に在籍する留学生だ。日本人2人と2LDKのマンションにシェアハウスで住んでおり、1部屋を民泊に使っている。物件は自在客とエアビーアンドビーに掲載している。新宿という場所柄、中国からの旅行者が利用するという。「多い月で25日くらい埋まり、家賃を差し引いて5万円程度の利益が出る」と話す。

■「双方が得ならいいじゃないか」

部屋は賃貸物件だという。賃貸で借りた部屋を民泊として貸している。「部屋のオーナーからOKもらっている」と説明するが、法的な問題について聞くと、「日本人は繊細だね。貸し手と借り手の双方にメリットがあるからいいのではないか」という答えが返ってきた。

いくつかの民泊仲介サイトをみると、賃貸物件を使っているケースが多くみられる。それらは部屋の大家であるオーナーから了解を得てから使っている場合もあるが、不動産会社と契約を交わす際に第三者に貸し出す契約を結んでいるとは限らない。なかには不動産会社にも大家にも無断で民泊として使っている物件も少なくない。そのため、「もし見つかったらすぐに退去させられる」(都内の不動産会社)というリスクを伴っている。

日本の大手企業で働く都内の台湾人男性(36)が副業として手がける民泊ビジネスも賃貸物件だ。昨年に東京の赤坂と新宿で民泊用にマンションを賃貸で借りた。めざましい稼働率をみせているのが新宿の物件で、家賃が月13万5000円のマンションは広さが2LDK。これを1人あたり1泊3000~4000円で貸している。外国人が多いエリアのため、多いときには月の9割ほどは埋まっている。5~7万円が利益として入ってくる計算だ。男性は「“利回り”は30%以上だ」と胸を張る。

オーナーから民泊で使うことの了解は得ているというが、「法律上はグレーということは知っている。でも、法律に合わせるとビジネスが成立しない」と男性は言う。今月には京都市内に4件の物件を見つけた。

なぜ京都かと聞くと、「もう東京は価格競争になっているし、バブルでしょう。京都はそこまでじゃない」と話した。その後も物件をもっと増やしたいと男性は語った。「日本はアジアの中でもマネーが集まりやすいし、東京オリンピックなど投資の条件がそろっている。民泊ビジネスやるなら、今がチャンスだ」

■分譲マンションにも波及

はたして賃貸物件を民泊として使うことは可能なのか。大阪市の心斎橋駅に近い不動産会社の担当者によると、「普通はNGですよ」と即答した。民泊と知っていて貸す不動産会社はほとんどないという。「客の話を聞いて怪しい場合に『民泊ですか』と聞くと、ズバリだったりする」。それでも不動産業界で今、引く手あまたなのが「民泊可能物件」だという。

「民泊可能物件を紹介してほしい」。大阪市内の不動産会社には同業他社からこうした問い合わせの電話が時々、かかってくる。電話の主は「賃料20万円でも30万円の物件でも借りたい。外国人旅行者の多い難波や梅田で民泊物件を出したら明日にでも契約が取れる」と持ちかけてくるという。それだけ民泊をやりたい人が多いということだ。仲介する不動産会社にとっては家賃が入ってきさえすれば、賃貸収入なのか民泊収入なのかは問わないようだ。

「民泊目的で分譲マンションを購入する外国人は増えていると思う」。大阪市内で不動産の仲介や販売を手がけるユーシン(大阪市)の高橋宏知は昨年に扱ったある物件のことをよく覚えている。それは築30年の1LDKだった。リフォームして1600万円でフィリピン人女性に販売した。その後、エアビーアンドビーにその物件が載っていると知らされ、サイトを見て驚いた。「最初から民泊目的で買うたんや」

日本の不動産を「爆買い」する外国人投資家。その勢いは衰えていない。不動産投資の多くは購入したマンションや一軒家を貸し出して賃貸収入を得ている。ところが、いま彼らの狙いは「民泊」に移っている。「チンタイよりもうかる」。そう信じているのだ。

「ここは駅から近くていいですよ」。中国人との取引がほとんどという都内の不動産会社社長は5月、上海から来た投資家の男性をJR山手線の駅に近い中古のワンルームマンションに案内した。最寄りの駅から徒歩10分という立地を気に入った投資家は築15年の物件を1800万円で購入した。「民泊でやりたい」と話していたという。

「10%は欲しい」。民泊を考えている中国人投資家が求めてくる利回りだ。年間の賃貸収入を購入価格で割った数字のことで、物件がどのくらいもうかるかを示している。都内では中古の場合「賃貸だと5~8%」(不動産会社社長)とみられ、10%の水準が高い要求ということがわかる。

■ホテル・旅館から規制の声

都市部ではバブルの声が上がり始めている民泊ビジネス。政府は民泊を全面的に解禁する方針で、これが追い風になると思いきや、民泊への熱気が一気にしぼみかねない「制限」が検討されている。観光庁と厚生労働省が設置した「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」は6月20日に最終報告書をまとめた。そこでは年間の提供日数に180日の上限が設けられている。これは単純に年間の稼働率が50%に制限されることを意味しており、民泊サービスの事業者からは「これでは利益が出ない」と悲鳴の声が出始めている。

一方、ホテルや旅館などの業界団体はさらに厳しい「年間30日」の制限を設けるべきだと主張している。既存の宿泊施設にとっては、お客を奪い合う存在と映っている民泊ビジネス。だが、ホテルや旅館などの宿泊施設を予約する旅行サイトの世界では、もはや両社を区別するのが難しくなっている実態があった。

たとえば、大手サイトの「エクスペディア」。宿泊施設を選ぶジャンルにホテルや旅館と一緒に「アパートメント」という項目がある。これをクリックすると、「○○アパート」「△△マンション」などの物件がずらりと並ぶ。写真ではマンションの外観や部屋がみられ、多くの物件の紹介ページで「この施設にはフロントデスクがありません」と表記してある。まさに民泊そのものといえる。

民泊の運営代行サービスを手がけるオックスコンサルティング(東京・品川)社長の原康雄は「利用者にとっては泊まる場所がホテルなのか、民泊なのかはあまり意味がない。旅行サイトに民泊の物件が出ていたり、民泊の仲介サイトに旅館が出ていたりする」と説明する。ホテル側にとっても民泊サイトに載せることで、稼働率を上げられるメリットがあるという。もちろん民泊にとっても同じだ。

中国の仲介サイト「自在客」に掲載している京都市内の老舗旅館は「『楽天』や『じゃらん』と同じつもりで載せている。旅行者を紹介してくれるサイトなので違和感はない」(旅館の経営者)と話す。旅館組合から抗議されたこともないという。

政府は2020年に訪日旅行者数を4000万人に引き上げる計画で、さらに6000万人超えも視野に入れる。東京オリンピックに向けて過熱しつつある民泊サービス。アジア勢の投資熱が入り交じり、ホテルや旅館、民泊事業者らの様々な思惑にも翻弄されている。=敬称略(古山和弘)

この記事のポイントはいくつかあります。まず利用者側の事情。「いま、世界で最も注目されている民泊エリアが大阪市中央区だ。民泊仲介の世界最大手、米エアビーアンドビーは「2016年に訪れるべき16の地域」の第1位に大阪市中央区を選び、世界中のゲスト(宿泊者)に滞在を薦めている」。実際の利用者に聞くと「ワンルームの部屋は狭かったが、宿泊料は2人で1泊6000円。京都や神戸で泊まったホテルに比べると3分の1の安さだ。「学生だから安いほうが助かる」」というわけです。

若い世代の旅行者にとっては当然そうでしょう。リーズナブルな価格帯の宿泊施設として、ゲストハウスなどのホステル系宿も増えていますが、多くの旅行者との共同部屋では落ち着かないという人もいそうです。カップルの場合は、特にそうでしょう。

一方、供給する側の動きとして「民泊目的で分譲マンションを購入する外国人は増えている」こと。結局、在日外国人は自国から来た旅行者の受け入れが当て込めるぶん、ビジネスになるのでしょう。

だから、外国人投資家が民泊用のマンションを次々と購入する動きが起きているのです。

「日本の不動産を「爆買い」する外国人投資家。その勢いは衰えていない。不動産投資の多くは購入したマンションや一軒家を貸し出して賃貸収入を得ている。ところが、いま彼らの狙いは「民泊」に移っている。「チンタイよりもうかる」。そう信じているのだ」。

もっとも、皮肉なことに、政府が正式に「民泊」を解禁したとたん、野放図なまま増殖してきた「民泊」ビジネスが一気にしぼむ可能性があるというのです。

「都市部ではバブルの声が上がり始めている民泊ビジネス。政府は民泊を全面的に解禁する方針で、これが追い風になると思いきや、民泊への熱気が一気にしぼみかねない「制限」が検討されている。観光庁と厚生労働省が設置した「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」は6月20日に最終報告書をまとめた。そこでは年間の提供日数に180日の上限が設けられている。これは単純に年間の稼働率が50%に制限されることを意味しており、民泊サービスの事業者からは「これでは利益が出ない」と悲鳴の声が出始めている」。

なんだか笑ってしまいますね。この記事には、周辺住民の声などについては一部しか触れていませんが、今後はこのあたりの問題もクローズアップされていくことでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2016-07-05 10:29 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 23日

中国政府は相手が気に入らなければ観光客を減らす― 蔡英文当選後の台湾インバウンド事情

今年1月16日、台湾総統選挙が投開票され、民進党の蔡英文主席が当選しました。

数日後、台湾では以下のような報道がありました。中国政府は選挙結果を見て、訪台中国人観光客を減らすと通達してきたのです。

訪台中国人ツアー客3割削減か 、観光産業に打撃 (ys-consulting2016年1月22日)
https://www.ys-consulting.com.tw/news/61660.html

観光業界の対中窓口機関、台湾海峡両岸観光旅遊協会(台旅会)は、中国人の訪台ツアー客を3月20日から6月30日までの間、3分の1削減するという通知が、総統選後の18日以降、台湾の旅行会社に中国同業から相次いで伝えられていると明らかにした。住民に台湾自由旅行を許可する対象都市も現在の47都市から4都市へと大幅に減らすとみられ、事実となれば台湾の航空会社やホテルなど観光業界が打撃を受けることになる。22日付経済日報が報じた。

2008年に中国人による台湾観光が解禁されて以降、訪台中国人客は同年の延べ約33万人から昨年の430万人へと13倍に増加。うち自由旅行者は130万人だった。馬英九政権が「1992年の共通認識(92共識)」を基盤に中国と経済交流を進めてきた成果と言えるが、92共識を認めない民進党の蔡英文主席が総統選で当選すれば、中国が民進党政権を締め付けるために訪台中国人客を削減するとの観測は早くから浮上していた。

台旅会によると、中国は訪台中国人ツアー客に開放している1日当たり5,000人の割り当て枠を3分の1減らすほか、住民に台湾自由旅行を認める開放都市も北京、上海、広州、アモイの4都市のみとする方針を一方的に決めたとされる。

台旅会上海弁事処の李嘉斌主任は、同会も関連業者も正式な通知は受け取っていないと指摘し、中国側の海峡両岸旅遊交流協会(海旅会)を通じて確認中だと説明した。

中国では訪台ツアーや自由旅行の割り当て枠は中国国際旅行社など国営の大手旅行会社が握っており、中国や台湾の旅行会社が業務を請け負っている。上海錦江旅遊などは、上海や周辺都市での訪台ツアー客の出境申請は現在正常だが、問題の政策が実施されれば、それに合わせて訪台ツアー客数を調整することになると説明した。

■「過度の動揺は不利」
旅行業界団体、台北市旅行商業同業公会(TATA)の柯牧洲副理事長は、訪台中国人が減少すれば、台湾のホテル、飲食店、ギフトショップなどが比較的大きな打撃を受けると指摘。一方で旅行関連業者に対し、過度の動揺を見せれば蔡新政権が中国人旅客に対する依存度を下げようとする上で不利になるとして、冷静な対応を呼び掛けた。

■ホテルの供給過剰悪化も
なお交通部観光局が21日発表した統計によると、台湾の観光ホテル全体の昨年の客室稼働率は69.3%で前年比3ポイント下落した。1日1室当たり客室売上高(RevPAR)は2,641台湾元(約9,200円)で、32元の減少となった。減少は10年以降で初めて。経営効率悪化の背景にはホテルの供給過剰がある。昨年の訪台外国人旅行者は前年比1%増加して延べ1,000万人を突破したが、宿泊業の総客室数は昨年末に20万5,000室へと7.3%増えており、増加ペースは供給が需要を大きく上回っている。こうした中で訪台中国人客が減少すれば、ホテルの供給過剰はさらに深刻さを増し、業績への悪影響が懸念される。


まったく身もふたもない話です。相手が気に入らないので観光客を減らし、経済的なダメージを与えてやろうというわけです。

中国人観光客の“台湾離れ”が顕著に、総統選の“報復”か?―台湾紙(レコードチャイナ2016年3月25日)
http://www.recordchina.co.jp/a131693.html

訪台中国人旅行市場の解禁は、国民党政権になった2008年から。この数年で急増し、10年にそれまでトップだった日本を抜き、15年は約400万人になりました。日本に比べ国土の小さい台湾に400万人の中国客が来襲したというのは、受入面でさぞ大変だったことでしょう。
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一般に中国人の台湾旅行は7泊8日をかけて島を一周するそうです。
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これはある台湾の雑誌による少し古いデータ(2011年)ですが、日本客と中国客の台湾での費目別消費額を比較していて、ホテルや食費、交通、娯楽などは日本が多いのに、買い物だけ中国は2倍になっています。
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それゆえ、台湾でも日本と同様、いやそれ以上に徹底した免税店のコミッションに頼る激安ツアーモデルが横行しています。

中国客が増えても大歓迎といえないのは韓国、台湾でも同じらしい
http://inbound.exblog.jp/23872141/

そのせいか、台湾では次のような声も聞かれるそうです。

中国人客減少、ネット世論は大歓迎 (2016年6月17日)
https://www.ys-consulting.com.tw/news/64767.html

蔡英文政権への交代が決まって以降、台北市内の観光スポットでは中国人観光客を目にする機会は明らかに減った。今後夏休みの7~8月には中国人の訪台観光ツアーはさらに大きく減少し、自由旅行客も減ると報道されている。中国寄りの中国時報などのメディアは「ホテルが休業した」「観光バス会社が損失で悲鳴」といった影響を相次いで伝え、危機感をあおっている。

ところが、インターネットでの台湾市民の反応はほぼ歓迎一色だ。関連ニュースへのコメントは「よかった。もう1人も来なくていい」、「やっときれいな阿里山や日月潭に行ける」、「中国人観光客は増える方がよほど迷惑だ」といったものが続々と並ぶ。


台湾では、日本よりはるかに中国に対する政治的な緊張や反感があるでしょうから、そうでも言ってやりたい気持ちはわかります。しかし、今年4月、中国政府はそれまで「事実上免税だった個人輸入扱いの荷物に一般貿易並みの税金」を課したことで、日本での爆買いは下火になりつつあります。これは日本に縁がない話ではないのです。

こうした中国政府の子供じみたふるまいによって被害を受けるのは近隣諸国ですが、実のところ、自国民もそうです。こんなことばかりやっていては、中国客の受入国が彼らを尊重しようとする意欲がなくなってしまうかもしれないからです。なにごとも為政者の面子が優先で、自国民の利益は二の次ですむと考えているからでしょう。

このように日本のインバウンド振興にとって、政治に影響されやすい中国市場は最大の不確定要因といえます。
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by sanyo-kansatu | 2016-06-23 11:10 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 19日

日本の「爆買い」報道は中国人の自尊心を傷つけた!?

為替が円高に振れ始めたと思ったら、メディアは中国客の「爆買い」にも影響が出てきたと報じ始めました。

「爆買い」に急ブレーキ インバウンド 変わる風景(日本経済新聞2016/6/18)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO03780060Y6A610C1SHA000/

5月の大型連休明け。家電量販店のヤマダ電機はJR新橋駅前(東京・港)の店舗をひっそりと閉めた。不採算60店を一斉閉店する一方、新たな「戦略店」として2015年春に開いた免税専門店だった。

■1年で見切り
「インバウンドは経営の核にならない」。山田昇会長は1年あまりで見切りをつけた。1台10万円近い炊飯器を何台もまとめ買いする中国人客。一本調子で増えてきたこんな「爆買い」にブレーキがかかった。

中国は経済成長が鈍り、15年夏には上海株が急落。円高・人民元安が進み、この1年で日本の商品の“お得感”は2割近くも失われた。ただ、爆買いがしぼむ理由をこれだけで片付けることはできない。

訪日観光ビザの4割を発給する上海の日本総領事館では1~4月の発給件数が前年同期比15%増。日本への旅行熱が冷める気配はない。沿岸部中心に給与水準は上昇。2桁成長が続く中国の消費市場では依然、日本製の人気は高い。実際、16年1~3月期に訪日中国人客の旅行消費額は客数の伸びが寄与し、前年同期を4割強上回った。ただ、1人当たりに換算すると、12%近くも減っている。

「税制が変わってコストが合わない」。九州に住む中国人の主婦、高園園さん(29)が話す。ドラッグストアなどで買い付けた商品を本国の客に販売してきた代購(代理購入)。いわゆるブローカーだ。

中国政府は4月、越境EC(電子商取引)に関する税制を変更した。事実上免税だった個人輸入扱いの荷物に一般貿易並みの税金が課される。税制の抜け道を使って荒稼ぎするブローカーを締め出し、正規の貿易業者の不公平感をなくすことが狙いとみられる。人海戦術で商品を調達してきた代講は関税引き上げと円高でうまみがなくなった。

日本百貨店協会がまとめた4月の全国の百貨店のインバウンド向け売上高は3年3カ月ぶりに前年割れとなった。客数は7%以上増えたにもかかわらず、単価が16%近く落ち込んだ。三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長は「ブローカーが減った」とみる。

■大きな振れ幅
免税店大手のラオックスは5月まで全店売上高が4カ月連続で前年割れとなった。店舗数は増やしても単価下落が補えない。8月をめどに日本行きのクルーズ船が発着する上海港に展示場を設ける。家電や化粧品など1000点超をそろえて、訪日前に予約販売。日本の店舗で手渡す。クルーズ旅行の富裕層を店舗に呼び込む苦肉の策だ。

免税販売は想定ほど伸びない。家電量販店のビックカメラは16年8月期の連結売上高を下方修正した。宮嶋宏幸社長は「インバウンドは1割程度が適切」と強調する。単体売上高に占める免税販売の比率は15年12月~16年2月期ですでに11%程度となっている。

15年には3兆4000億円に達し、百貨店や家電量販店を潤したインバウンド消費。振れ幅の大きさはリスク要因となりかねない。


この記事の興味深いところは、中国政府が「越境EC(電子商取引)に関する税制を変更」したことで、「爆買い」のもうひとりの重要なプレイヤーだったブローカーたちが「人海戦術で商品を調達してきた代講は関税引き上げと円高でうまみがなくなった」と指摘していることです。同様に、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長も「ブローカーが減った」とみていること。なんだ、これは観光客の話ではないじゃないですか、とつっこみを入れたくなります。

しかし、中国団体客ご用達免税店のラオックスが「5月まで全店売上高が4カ月連続で前年割れ」であるとしたら、中国客の買い物手控えは、すでに春節頃から始まっていたことがわかります。

昨年から中国政府があの手この手で中国客の「爆買い」阻止に動いていたことは知られています。決定的となったのは「事実上免税だった個人輸入扱いの荷物に一般貿易並みの税金」が課されたことでしょう。

これでは、以前のように、知人友人親族のために、あるいは自らの面子のために、炊飯器を6つも7つも買って帰るなんて、したくてもできません。高い関税がかけられたのでは、中国で購入するのと変わらなくなりますし、周囲に自分は「こんなに安く買ってきたのだ」と得意げに言い張ることができません。海外から帰国した中国人が周囲に土産物をばらまくときに見せる、あのご満悦の表情にケチをつけたのは、中国政府です。内需を拡大することが至上命題である中国の深刻な事情を知ってか知らずか、どこか浮かれた気分だった自国民に冷水を浴びせたというべきではないでしょうか。

気になるのは、中国の旅行会社から訪日客を預けられる在日中国人のガイドたちです。これまでのように売上がたたなければ、免税店から十分なコミッションをもらえないわけですから、ホテルやバス、食事の支払いに窮することになると一大事でしょう。仕事を放りだす人たちが出てくるかもしれません。

それでも、訪日中国客は増え続けています(16年1~5月の中国客はすでに249万人。前年度比45.3%増)。熊本地震も、いまのところ影響はないようです。

今年2月、四川省を訪ねたとき、現地の若い中国人たちが口をそろえてこう言っていたことを思い出します。「日本ではさかんに中国人の爆買いを報道しているようだけど、なんかバカにされている気がする」。

「べつにバカにしてるんじゃなくて、驚いているんだよ。だって、日本人はそんな買い方をしたことがないので、見ていて面白いし、商売人も売上アップでうれしい。盛り上がらないわけがないでしょう」

そうぼくが言うと「べつに日本で買わなくても…。これじゃ中国に買うものがないみたいじゃないですか」と答えるのです。

みんながそうだとはいいませんが、一部の中国人は、日本の「爆買い」報道で自尊心が傷ついた面があるようなのです。

確かに、日本の「爆買い」報道に一種のあざけりのようなニュアンスが含まれていなかったかといえば、ウソになるでしょう。長期デフレに沈む多くの日本人にとって、景気よく買い物をする中国客の姿を見るのは面白くない、という感情もあるはずです。これは上海に在住する日本人の友人がよく言うのですが、「日本のメディアの中国報道には、妬みが入っている」と。そうかもしれませんね。

一方、ネットでこんな記事もありました。

「日本製」買う中国人に、悩む中国人 「同じ物作れるのに」=中国メディア(サーチナ2015-12-10)
http://news.searchina.net/id/1596727

中国人が海外で「爆買い」する背景には「自国製品への不信」があることは、当の本人たちは自覚しています。しかし、それは自国の面子を失わせることでもある。そんなことをわざわざ外国人に言われたくない…。

彼らの複雑な心理を知ると、ちょっと気の毒に思えてくるところがあります。彼らには、買い物が単なる個人の楽しみとしての消費行動にはならないところがあるのです。中国政府もメディアを使って、そのようにうまく誘導してきたと思います。

その点、台湾の人たちは、実におおらかに「爆買い」を楽しんでいます。今年2月、日本薬粧研究家の鄭世彬さんと一緒に『爆買いの正体』(飛鳥新社)という本をつくったときも、彼は日本でたくさんの買い物をすることが自尊心に関わる問題だなどとは想像もつかないことのようでした。

『爆買いの正体』という本は、昨年新語・流行語大賞を受賞した「爆買い」はどうして起きたのか。その背景を台湾人の目を通して語ってもらうというもので、「爆買い」の当事者である華人自身が語る本質を突いた指摘があふれています。要するに、華人にとって「爆買い」は本能だというのです。

さらに、この本は台湾人によるあふれんばかりの日本愛の告白書です。なぜ台湾の人たちがこれほど日本の製品を愛好してくれるのか、その理由を熱く語ってくれています。
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http://goo.gl/DXhOMa

やはり、台湾人と中国人はまったく違うのですね。

とはいえ、「爆買い」が本能であるのは、中国人も同じ。本当は彼らにも気持ちよく買わせてあげたいものですが、一度ケチがついたら、これはけっこう長引くかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2016-06-19 18:59 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 15日

韓国メディアが教えてくれた銀座のツアーバス駐停車90秒ルール

今朝、なにげにネットニュースを見ていたら、こんな報道がありました。しかも、これは韓国メディアの日本語版です。

観光客がバスを待つ東京、90秒で全員搭乗・5分以内に出発(朝鮮日報2016.6.14)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/06/14/2016061401144.html?ent_rank_news

今月1日、東京・銀座のラオックス(LaOX)免税店。中国人団体観光客が一日3000-5000人押し寄せるショッピング・スポットだ。大型観光バスが1分に1-2台ずつ、ひっきりなしに客を降ろしていくが、どのバスも1カ所に5分以上停車していることはなかった。1時間に80台以上のバスが停車して、出発していったが、そのうち5分以上止まっていたバスはたった1台、車いすに乗った観光客を降ろしたバスだけだった。

なぜそのまま停車させておかずに、すぐにバスを移動させるのだろうか。観光バス運転手のノガミさん(53)は「会社から『絶対に5分以上、車を止めておくな。すぐに車を移動させろ』と指示された」と話す。ノガミさんは免税店前に観光客を降ろした後、日比谷公園やお台場といった車の通行が少ない地域に20-30分かけて移動し、決められた時間に観光客が全員集合したらガイドから電話をもらい、再び迎えに行く。多くのバスが順に観光客を降ろした後、ほかの場所で待機して、また順に戻ってくるという一種の「回転システム」になっているのだ。

別の運転手Aさんは「違反したら警察に徹底的に取り締まられる。10分を超えると警告もなくすぐに反則金1万2000-1万5000円、違反点数2点が付けられる」と言った。警視庁職員は「2点ずつ3回違反し、合計6点になると1カ月の免許停止、15点を超えると免許取り消しになる」と言った。反則金は、道路での駐停車違反は1万2000円、横断歩道・交差点にかかっていれば1万5000円だ。運転手が車を離れる放置駐車違反になると、反則金が道路では2万1000円、横断歩道・交差点などでは2万5000円とさらに高くなる。

東京で20年以上営業している中堅旅行代理店のB代表は「日本では旅行代理店がバス会社に数日前までに日程表を渡すと、バス会社が駐車場の計画を組んで現場に出る」と語った。観光客が遅刻しても、バスは約束通りの時間ピッタリに出発する。周辺を一周して15分後にその場に戻り、遅れて来た人を乗せるのだ。ガイドや観光客は現場で「早く来て車を止めていてほしい」「もう少し待ってくれ」とイライラを爆発させたらどうするのか。B代表は「警察もいるし反則金があるし…。お客様が怒ってもバス会社はその通りにはできない」と言った。

ラオックスから500メートル離れたロッテ免税店前でも駐停車の混乱はなかった。ロッテ免税店は今年3月の開店に先立ち、3カ月間にわたり東京都中央区役所と駐車場問題について協議し、免税店前のタクシー乗り場で観光バスの乗客が乗り降りできるよう許可をもらった。「バス1台当たり90秒以上停車しない」という条件付きだった。

乗客数十人が90秒以内に乗り降りを完了させられるのだろうか。ロッテ免税店のイム・ヨンソプ東京事務所長は「やってみたらできた」と話す。事実、炊飯器と買い物袋を1つずつ持った中国人観光客20人が免税店前のタクシー乗り場にあらかじめ並び、自分たちのバスが来ると軍事作戦のように一糸乱れずに乗車した。中国人ガイドは中国語で「皆さん、銀座ではすぐに乗車してください」と繰り返し叫んでいた。

日本にもともと、駐停車に伴う混乱がなかったわけではない。近年、中国人観光客が急増した影響で、免税店に寄る観光バスの駐車場問題が社会問題になった。すると、日本の国土交通省は今年2月、日本バス協会(NBA)と共に免税店前の駐車場問題について「マナーアップ(manner up)キャンペーン」を展開した。バスが観光客を待つのではなく、観光客が事前に出てきてバスを待たなければならないというのが骨子だ。同協会から会員企業に「5分以上停車しないでください。ほかの所に移動・待機してから戻ってきましょう」というパンフレットを配布した。銀座・浅草・新宿など観光スポット周辺の駐車場情報も付けた。警視庁も賛同した。旅行代理店やバス会社が自主的にキャンペーンに従うよう誘導すると共に、規則に違反した場合は警察が反則金を科すというシステムが確立した。

それに伴い、観光客の行動パターンも変わった。ラオックス関係者は「以前はバスが先に来て、観光客が出てくるのを10分でも20分でもひたすら待ち続けたが、今は観光客が集まってから車が来るので、観光客の間でも『日本では交通の妨げになってはいけない』という認識が定着した」と語った。

東京=金秀恵(キム・スへ)特派員 , 東京=崔仁準(チェ・インジュン)特派員


へえ、そんなことになっていたのか…。そう思った人も多いかもしれません。「ツアーバス駐停車90秒ルール」、知りませんでした。

確かに、今年の春節(2月上旬)、銀座8丁目の中国人ご用達の免税店「ラオックス」の前は、路駐するバスが列をなしていました。
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店の前もこの混雑ぶりです。地元からの声もあったことでしょう。
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さすがに、これだけのバスが一斉に路駐する状態は見逃せないと思ったのか、警察は動き出したようです。

同じことは、ぼくの仕事場に近い東新宿でも4月中旬頃から起きていました。

新宿5丁目ツアーバス路駐台数調査 2016年4月、5月、6月
http://inbound.exblog.jp/25630882/
http://inbound.exblog.jp/25812191/
http://inbound.exblog.jp/25873364/

記事にもあるように、バスの運転手は罰金を払わされてはたまらないというわけで、中国客にも協力してもらいながら、バスの乗り降りを迅速に行い、自らも彼らの買い物時間は店の前を離れ、付近で路駐できるスポットを探して身をひそめているか、あるいは周辺を回遊しながら約束の時間を待つことになったようです。ただでさえ、都心には路駐スペースがないのに、これはなかなか大変なことです。「みなさま、ご苦労様です」と言ってあげるべきではないでしょうか。

ところで、興味深いのは、日本のこうした出来事をなぜ韓国メディアが取り上げているか、です。彼らは区や警察、バス運転手らにも取材しています。

ネットを検索していると、同じ朝鮮日報でこんな記事が見つかりました。

渋滞する免税店周辺、ソウル市民の不満高まる(朝鮮日報2016.6.14)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/06/14/2016061401143.html

なんでもソウルの有名な免税店前の道路でも、バスが列をなして、地元市民が不満をもらしているとか。記事によると、夕刻一台のバスが違法駐車をしたものの、「警察やソウル市の取り締まりチームは現れず、地元の「模範運転者会」のメンバー4人がホイッスルを鳴らして交通整理しようとしていた。同団体のイ・ジンヨンさんは「バスが一度に詰め掛ければ交通整理は不可能に近い」と話した」と報じています。

さらに、こんなことも書かれています。

「外国人観光客を免税店に連れて行く観光バスが原因で、ソウル中心部のあちこちでひどい渋滞が頻発している。免税店が観光バスを吸い込む「ブラックホール」の役割を果たしているとして、免税店の責任を指摘する声もある。

現在、ソウル中心部には新羅免税店のほか明洞のロッテ免税店と新世界免税店、仁寺洞のSM免税店、光化門の東和免税店、東大門のドゥータ免税店など、大型免税店がいくつもある。ソウル市によると、市内の主な観光地を回る観光バスは1日平均1047台(2015年基準)に達するという」

えっ、1047台!?   これは相当なものではないでしょうか。訪韓中国客のソウル一極集中はすざまじいものがありますね。

「免税店周辺の交通渋滞に対し、ソウル市と免税店業界は互いに責任を押し付け合っている。ソウル市は「免税店の事業者が十分な駐車場を確保していないせい」と主張する一方、新羅免税店の関係者は「(奨忠体育館交差点一帯の)混雑は免税店とは関係なく、薬水高架道路を撤去したことが原因」と反発している。

不便をこうむっているのは市民だ。ソウル市麻浦区に住む女性(36)はこの日、ベビーカーを押して明洞のロッテヤングプラザを訪れたが、免税店前の観光バスの排ガスが気になりベビーカーにカバーをかけた。女性は「全部取り締まりの対象のはずなのに、どうして放置しているのか」と不満を口にした」。

どうやら朝鮮日報は、日本の免税店路駐問題の解決に向けた取り組みを見習え、とでも言っているようなのです。

さらに検索を続けると、別の韓国メディアのこんな記事が見つかりました。面白いことに、すべて同日配信です。

免税店に観光バス用の駐車場設置を義務付けへ=韓国 (聨合ニュース2016/06/14)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2016/06/14/0900000000AJP20160614005300882.HTML

韓国国土交通部は14日、市中免税店に観光バスの駐車場の設置を義務付ける内容が盛り込まれた駐車場法施行令一部改正案を立法予告したと明らかにした。(中略)これと関連してソウル市は先ごろ、市内の免税店7カ所に公文書を送付し、独自に用意した駐車場や公営駐車場に観光バスを誘導するなど対策を取るよう求めた。

まるでメディアと政府の連携プレーのような動きです。

それにしても、日本ではよその国の外国人旅行者の動向など、ほぼ関心がない話題だと思いますが、韓国では違うようです。そこには理由がありそうです。今年の初め、こんな報道がありました。

日本に奪われた中国人観光客 外国人訪問者数「韓日逆転」(聨合ニュース2016/01/27)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2016/01/26/0400000000AJP20160126004200882.HTML

記事によると「韓国観光公社とJNTOによると、昨年日本を訪問した外国人観光客数は1973万7000人で、韓国を訪問した外国人観光客数(1323万2000人)より多かった。訪韓外国人観光客数は09年に781万8000人を記録。679万人だった日本を超え、14年まで6年連続で日本を上回っていた」そうです。

つまり、昨年の外国人旅行者数において、韓国は日本に7年ぶりに追い越されてしまったのです。どうやら彼らはこの問題を気にしているようなのです。

ところが、中国人旅行者数に限っては、日本(499万人)より韓国(598 万人)が多い。当然、バス路駐問題は、韓国のほうがより深刻であることがわかります。これも彼らが日本のツアーバス路駐問題に関心を持った理由なのでしょう。

韓国メディアの危惧はそれだけではありません。訪韓日本人旅行者の減少問題です。昨年の訪日韓国人(400万人)に対して訪韓日本人(184万人)というダブルスコア以上の差となってしまいました。かつての韓流ブームは本当に過去のものとなってしまったのか。

しかしながら、皮肉なことに、こんな報道も見つけてしまいました。

ことし韓国人に最も人気の夏休み旅行先1位は大阪(中央日報2016年06月13日)
http://japanese.joins.com/article/813/216813.html?servcode=400§code=400
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これは先日、大阪の地下鉄に乗ったときに見かけたハングル表示です。いかに大阪に韓国人旅行者が多いか、よくわかりました。

では、日本人のこの夏の人気海外旅行先はどうなのか。

トラベルコちゃん海外ツアー検索で人気の海外旅行先(2016年夏)
http://www.tour.ne.jp/special/world/ranking/index_summer.html

このサイトによると「1位グアム、2位台北、3位ホノルル、4位ソウル、5位バリ島…」

良かったですね。4位にソウルが入っていました。

いまや韓国メディアの報道の一部は日本語で読める時代です。しかも、中国系のネットニュースのような記事を簡約したものではなく、そのまま翻訳されて掲載されているようです。他国の主要メディアの記事がふつうに読めるなんて、考えてみれば、すごいことです。

おかげで、彼らの考えていることがずいぶん伝わるようになりました。それが日本人の対韓イメージにどんな影響を与えているかについて考えると、疑問を感じることも多いのですけれど、韓国の事情に詳しくない自分のような人間でも、彼らが日本のいかなることに関心を持っているのか、またその理由について考察するうえで、それなりに役立つことは確かです。何より今回のように、日本の社会で起きている出来事について意外な視点を提供してくれることもあり、面白いものです。
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by sanyo-kansatu | 2016-06-15 10:30 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 10日

ラブホ支援は施設改修より人材育成が課題

今朝、ネットで以下の報道を知りました。訪日客の増加で大都市圏の宿泊施設が不足しているため、ラブホテルの事業者向けに政府が支援するそうです。
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ラブホテル改装で訪日客受け入れ 政府が条件付きで後押し(サンケイBiz2016.6.10)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160609/mca1606090500019-n1.htm

政府は9日、訪日外国人旅行客の急増に伴うホテル不足の解消を目指し、比較的稼働率に余裕があるラブホテルの事業者が観光客向けの一般ホテルに改装する場合、条件付きで後押しする方針を固めた。改装のための融資が受けやすくなるよう政府系金融機関の対応を進める。一般住宅に有料で観光客らを泊める民泊の規制緩和とも併せ、受け入れ態勢整備を進める。

事業者が改装のための融資を受けやすいよう、ホテルや旅館業の受け皿となる日本政策金融公庫に対し、厚生労働省が4月、「資金に関する相談に特に配慮するよう」通達した。政府系金融機関は公序良俗に反する業者は融資対象外だが、「(観光立国に資する)一般ホテルへの改装という条件なら、一般ホテルへの融資に該当する」(厚労省)としている。

観光庁の調査では、訪日客増加などで、ビジネスホテルやシティホテルの平均稼働率は4月も7、8割で推移するが、日本中小ホテル旅館協同組合によると、全国で約1万2000店ともされるラブホテルの平均稼働率は平日で約4割。風俗営業法の規定で、利用客が従業員と面接せずに鍵が受け渡せる一方で、18歳未満の利用が禁じられるなどの営業規制を受ける。

訪日客の増加を受け、業者からは一般ホテルへの転換を模索する動きも出ている。ただ風営法の営業規制を外すにはフロントや客室の改装が必要だが、中小事業者も多く、改装資金の調達が課題となっていた。

政府の観光ビジョンでは2020年に訪日客数を4000万人とする目標を掲げているが、都市部を中心に宿泊施設の需給逼迫(ひっぱく)が課題となっている。民間の調査機関は、東京オリンピック・パラリンピックに向けた今後のホテル開業計画を加味しても、同年には全国の客室数が1万室以上不足すると試算している。


全国にラブホテルは1万2000店もあるのですね。実は、この動き、ちょうど1年半前に取材していて、ビジネス誌の「プレジデント」で、ぼくは以下のような記事を書いています。

訪日外国人はラブホやカプセルホテルがお好き!? 日本全国、ホテル業界大異変(プレジデントオンライン2015年8月31日号)
http://president.jp/articles/-/16082
http://president.jp/articles/-/16083

タイトルだけみると、ラブホテルの外客利用の話だけのように見えますが、記事全体としては、外国客の利用の多いビジネスホテルチェーンや最新デザインホテル、カプセルホテルやゲストハウスなどのエコノミータイプまで、さまざまなタイプの宿泊施設の新しい動向を紹介しています。

さて、ラブホがらみでいうと、プレジデントの取材の際、実際に訪ねたのが、大阪のレジャーホテルチェーン「ホテルファイン」でした。

ラブホテル? いえ、レジャーホテルで、いま外客の取り込みひそかに進行中 (2015年 07月15日)
http://inbound.exblog.jp/24691630/

このとき、ホテルファインの会長に話を聞いていますが、ラブホテルやレジャーホテルが外国客を受け入れていくには、施設改装コストだけではすまない、さまざまな課題があることを指摘し、以下のようにコメントしています。

「一般のラブホテルやレジャーホテルで外客受入ができるのは一部に限られるだろう。この業界は大半が個人企業。受入には初期コストがかかるし、社員教育が大変。宿泊客が病気になって、病院の手配をしなければならないとき、フロントで外国語対応ができるか。外国客はフロントにいろいろ聞いてくる。近くにおいしいレストランはないか。松坂牛の食べられる店はどこか…。そういうコンシェルジュ機能も求められる」。

―大阪市からラブホテル業界で外国客の受入ができないか相談があったそうですね。

「うちにも大阪観光局の人が来た。そのとき、私はこう説明した。ラブホテルやレジャーホテル業界の経営は、1室月額いくらの売上で組み立ている。それには1日2回転させることも計算に入れている。これらのホテルは初期投資がビジネスホテルより圧倒的にかかる。部屋の広さやお風呂、エンターテインメントの設備などが充実しているからだ。ビジネスホテルの売上額ではとうてい成り立たない。いくら市が施設投資に補助金を出したところで赤字になる。

しかも、うちがいまやっているような運営ができるラブホテルがどれだけあるか。社員教育はどうするのか。外客受入を始めるとなると、館内案内も多言語化のため全部新しく揃えなければならない。うちもあらゆる表示物を英語と中国語に多言語化した。「トイレは紙を流してください」といったこれまで必要のなかった表示も用意した。食事の問題もある。ベジタリアンやハラル対応だ。外国客は食に対するリクエストが多い。そこで、食事メニューも変更した。うちでは24時間ルームサービスをやっているし、宿泊客には朝食がつく。メニューの種類を増やすことになった。

24時間電話の通訳サービスも始めた。通訳と3者通話ができるシステムだ。フロントにはタブレットも用意した。

外客受入のためには、我々自身が変わらなければならない。経営者が率先して受入態勢をつくっていかないと。海外からお客様がどんどん来るから、なんでもいいから客を取るではいずれしっぺ返しが来る」。

館内の多言語化や通訳サービスなどの新規コストもそうですが、会長は何より人材育成の問題を指摘しています。ホテルファインでそれが可能となっているのは、チェーンの規模が大きいことから、予約システムの構築も一括でき、外国客の接遇を行うスタッフ教育などにも対応できるからだそうです。

個人経営者の多いラブホテル業界では、経営者の高齢化もそうですし、多言語化ひとつとっても、なかなか難しい面がありそうです。問題は、旅館業界と似ています。

とはいえ、、ラブホテルの客室はエンターテインメント性の高さがポイントだと思うので、外国客にウケる要素はあると思います。他のシティホテルに比べコストパフォーマンスはいいですし。先入観のない外国客にとっては、賢い選択肢と映るようです。

今後はホテルファインのような先行事例もあることから、チェーン化が進むかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2016-06-10 09:23 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 04日

ブラック免税店日中問答「それはおもてなしする側が解決すべき問題でしょ」

前回、前々回と5月末の中国メディアの「日本のブラック免税店」告発報道を紹介しました。

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/
ブラック免税店問題はもうずっと前からありました
http://inbound.exblog.jp/25875949/

この報道を教えてくれた中国語通訳案内士の彼女と、この問題をめぐってチャットしました。あとで残った文面を見ながら、なるほど日中のこの問題に関する感じ方はこんな風に違うんだなと思った次第。以下、その一部を公開します。(A:ぼく B:彼女)

A「こんばんは。ところで、Bさんはブラック免税店に行ったことありますか?」

B「行ったことないですよ。基本的にあそこに行くのは安いツアーに参加した団体客。経営は中国人や韓国人がしているそうですよ。東京だけでなく、大阪にもあります」

A「Bさんは団体客のガイドはやりませんものね。実は、ぼくは以前、知り合いの中国の旅行会社の友人の引率するツアーに紛れて、お台場の近くのブラック免税店に行ったことがあります。そのとき、友人から『店に入ったら、日本語しゃべらないでね』と言われていました。でも、一緒にいたツアー客は、ぼくが日本人であることを知っているので、『これは本物ですか? ここで買うべきですか?』と聞かれて、答えに窮した覚えがあります」

B「こういう免税店に行くようなツアーは、だいたい闇ガイドを使っていますよ。中国からの添乗員がそのままガイドする場合もあります」

A「確かに、友人は中国から来た添乗員でした。こういう人は、かつて中国で日本から来た観光客のガイドをしていました。ですから、日本語は堪能です。いまは日本から中国へ行く旅行者が激減しているので、彼らは仕事を失い、逆に中国客の添乗員として日本に来ているのです。

一応日本側のガイドもいましたが、在日中国人。彼が通訳案内士の資格を持っているかどうかはあえて聞きませんでしたが、たぶんないでしょうね」

B「闇ガイドを見分ける方法は簡単です。彼らは通訳案内士の有資格証がないので、名所や博物館に入る際、ツアー客と一緒で入場券が必要です」

A「なるほど。でも、実際のところ、中国の団体客はほぼこのような無資格ガイドによるツアーではないですか。まったくもって公然とルール違反しているのに、誰も取り締まらなかったことと、ブラック免税店を野放しにしているのは、同じですね」

B「それなのに、いま日本では通訳案内士制度の規制緩和を進めようとしている。もともと規制なんてないも同然だったのに。要するに、闇ガイドを容認するということですね」

A「通訳案内士法というのが、ちょっと古すぎて時代に合わない面もあります。ただ無資格ガイド問題とブラック免税店の問題は、野放しという意味では同じだけど、このしくみが温存されるのは理由があって、それはガイドが免税店からコミッションを受け取ることができるからですよね」

B「この業界は、有資格者ほどコミッションを取る団体の仕事をやりたくない人が多いので、生計を立てにくい。逆に、闇ガイドは年収1000万円台という話です」

A「でも、最近は中国の団体客は以前のように“爆買い”をしなくなってきたから、闇ガイドも前ほど儲けられなくなっていませんか? この稼業は団体客がブラック免税店で買い物してくれないと赤字になるというリスクがつきまとうので、このままいくと、彼らはいつか仕事を放り出すのではないかと思うんです。そんなことないですか?」

B「確かに、中国人はこの問題に対して相当警戒が強くなっているようです。中国の税関も厳しくなってきた。だから、私が案内する個人客は、日本人がふだん買い物するところへ連れていけ、と言います。実際、私もそういうところしか知らないので、特に困ることはありません。でも、団体客はそうはいかない。今後は中国から免税店の投資があるかもしれません」

A「そうなんですか。中国ツアーの構造として、ガイドはブラック免税店からコミッションをもらわないと、ツアー客のホテルやバス、食事の支払いができません。中国の旅行会社はほぼ一銭もガイドにお金をくれないのですから。中国では東京・大阪5泊6日のツアー代が安い時期で3500元(5万7000円)ほど。これでは往復の航空券代と中国側の旅行会社の利益だけです。だから、ガイドはブラック免税店に客を連れていき、コミッションをもらわないといけないわけです。この不幸な構図が変わらない限り、問題は解決しないと思います」
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B「そうそう、向こうではガイドは投資者です。ツアーを買ってその回収に必死ですよ」

A「なるほど、彼らはそういう投資感覚でガイドをしているんですね。確かに、中国側の旅行会社にお金を払ってツアー客をもらうケースもあるそうですから。まさにギャンブル的です。なかなか日本人には理解できないところがありますね」

B「ただこれから中国客は自分たちで旅程を組んで日本に来るようになると思います。でも、買い物はやみそうにない」

A「個人旅行になるということですね」

B「すでにそういうお客様が現れています。彼らの静かな“爆買い”は続くと思います。日本の百貨店やアウトレットが人気です」

A「結局、北京や上海のような経済先進地の人たちはそうなるのですが、いまの時代、中国の内陸都市から飛行機がどんどん飛んできているので、彼らは団体でくるしかなく、この構造は温存されていくのでしょうね」

B「だって彼らは言葉もわからないし、闇ガイド業者の言いなりですよ。まだまだ日本旅行のメインテーマは買い物です。だからこそ、日本政府は違法行為をある程度取り締まるべきですよ。法治社会の信用を守ることは日本の国益につながるはずです」

A「う~ん、それはおっしゃるとおりですね。これまで日本政府は観光客の数を増やすことばかりで、きちんとしたルールづくりを怠けてきました。さすがに2000万人時代となり、今年はそういう議論が起きてくると思います」

B「中国人観光客の多くは、自国にはない生活のクオリティや秩序など、日本に理想像を求めて来たのに、騙されて帰ったら、SNSでどんどん日本のブラック免税店問題を発信すると思いますよ。たとえ加害者は同じ中国人だとしても、帰国後、日本に通報するのは物理的に難しい。やはり国には責任がある。それはおもてなしする側が解決すべき問題でしょ」

A「確かに、ブラック免税店を野放しにしておいて、おもてなしはないですよね。基本的にはおっしゃるとおりかと思います。では、今日はこのへんで…」

昨年秋、中国の河南省の鄭州を訪ねたとき、地元で有名な麺料理(会麺といいます)の店で食事をしていたとき、給仕のおばさんから「日本ってきれいな国なんだってねえ」と言われたことがあります。失礼な言い方だけど、そのおばさんは海外旅行できるような階層には思えませんでしたが、「日本=きれいな国」というイメージは民間に広まっていると感じました。これがここ数年の中国の日本旅行ブームを下支えしていた面もありそうです。

しかし、この国のSNS文化の影響は、予測しがたいところがあります。これからは「日本=ブラック免税店」のイメージが、民間で語られるようになるかもしれません。彼らはこう思うことでしょう。「なんだ、日本も中国と大して変わらないんだね」と。

さて、ひとまずBさんの意見を支持したものの、この問題、実際に解決に向けた道のりに進むためには、ただ取り締まればいいという話でもなさそうです。なぜなら、すでに書いたように、こういうことだからです。

ブラック免税店問題はもうずっと前からありました
http://inbound.exblog.jp/25875949/

翌日、またBさんとチャットしました。

A「昨日の話の続きですが、この問題はいまに始まった話ではなく、すでに日本でも何度も報道もされていて、なんら進展はないんです。日本の消費者庁は外国人消費者について守るべき法律はないという立場のようです。

こうなると、“爆買い”で恩恵を受けていた小売業界やJSTO(日本ショッピングツーリズム協会)のような団体がこの問題をどう考えるかということも、解決に向けた道のりにつながるのではないかと思うんです」

B「どういうことですか?」

A「要するに、日本のショッピングの悪評判がどんどん広まり、小売業が打撃を受けるというような事態にでもならないかぎり、彼らはこの問題を無視し続けるように思う。

だから、中国の消費者が日本旅行中、消極的に非買運動を続けてもらうことが良いかもしれません。そうなると、日本側の関係者も、少し慌ててブラック免税店を駆逐しようと動き出すのでは」

B「いまの中国の観光客に不買運動は難しいですよ。環境汚染でも団結できないくらいですから。やはり、日本に行ったら買い物したいわけだし。やはりルールをつくるべき」

A「そりゃそうなんだけど、日本人の理解を越えているのは、これだけたくさん中国客が来るのだから、何もニセモノまで売って評判を落とすこともないと思うのに、なぜブラック免税店はそんなことをするのだろう? 日本人ならいいものを売れば、もっと儲かるから頑張ろうとなると思うのだけど。彼らがやっていることは、ルール以前の問題のような気がする」

B「中国では横断歩道を守らない人が多いですが、警察官が立てば、日本人以上に守りますよ。日本は法治社会なのに、この問題はなぜか矛盾している気がする」

A「なるほど。それが中国的な法の意味ですね。日本人は法は国民の権利や利害を守るためにあると考えていると思います。規制緩和をめぐる議論もたいていそこが焦点になる。やはり、基本的な考え方がずいぶん違いますね。中国では、法は為政者が国民を文字通り統治するための道具ですね」

B「そうしないと、秩序が乱れるからです。中国人が日本に来て社会の整然とした秩序に驚くのは、そのためです。きっと厳しく統治されているのだろうと中国人は考えるのですが、実際は違いますよね。だから、中国人はなぜ日本ではブラック免税店を取り締まろうとしないのか、よく理解できません」

A「たぶん、自国民でない人たちだからかもしれませんね。彼らが自国民に直接害を与えているわけではないということもある。権威主義体制の中国では、為政者は外国人が自国で犯罪を犯しているのを放置するなんて考えられないとなるのでしょうかね」

B「でも、ルールはやはり必要です。闇ガイドの問題だって、このまま規制緩和されてしまうと、いま真剣に通訳案内士の資格を取ろうとする若者、必死に仕事を探している通訳案内士もそうですが、日本旅行に夢を見ている中国の観光客が可哀想ですよ。この問題で、暗躍しているのは中国人だけじゃないですよね」

A「個人的には、これだけ外国人旅行者が増え、さまざまなニーズが生まれているので、規制緩和はやむをえないと思っています。通訳案内士ほど高度な語学力がなくても、外国人を接遇する場面は増えているからです。ただし、規制緩和する以上、外国人を添乗するだけの仕事でも、団体客のガイドは監督官庁に登録させるようにすべきだと思います」

B「登録も必要ですが、やはりインバウト専門の苦情処理窓口と日本国内のメディアの力が必要です。取り締まるべきところは取り締まらないと。旅行者はいつか帰国してしまうので、圧倒的に弱者です」

A「そうですね。せめて苦情窓口は必要です。ただ現状でいえば、資格うんぬんの前に、登録させないと。いま誰がどこで何をやっているか、まったく監督官庁もつかんでいないため、取り締まりも何もできないですから。

昨年末、ある中国系免税店は自衛のためでしょうか、中国客を連れてくるガイドに「労働許可証」のない者には入店させないと通達を出したと聞いています。これはガイド資格以前の話ですが、実態の把握のためにも登録は最低限必要です」

B「いったん登録したら、観光客や関係機関に周知させ、ときどきチェックも徹底しないと、また無法状態。「杀一儆百」(少数を厳しく罰して見せしめにし、多数の人に警告すること。一罰百戒)。いまはこれがいちばん即効性があると思いますよ。検挙、検挙、また検挙…」

A「いかにも、中国的だなあ。ヨーロッパの一部では、確かにツーリストポリスがいて、現場の問題処理にあたります。ただ、中国団体客の問題となると、彼らもなかなか難しいのでは。まず言葉の問題があります。英語が通じればいいですけど。オーストラリアのような観光国でも、問題解決は難しそうです」

※澳洲“免税”店与旅行社勾结 专坑中国游客(新华国际 于 2016-05-29)
http://www.wenxuecity.com/news/2016/05/29/5244163.html
オーストラリアの免税店でも、旅行会社とグルになって中国客を陥れているという報道。

B「ブラック免税店の問題は、日中両国のずる賢い人たちが関与しているので、行政との知恵比べでしょう。日本の法治が問われていると思います。私は思うんですが、今回の中国のメディア報道や駐日中国大使館の苦情などを受けて、日本の関係機関は「丢面子」(メンツを失う)を感じていないのかしら? それとも故意に無視している?」

A「まだ十分に感じていないかもしれませんね。故意でもあり、むしろメンドウごとに関わりたくないという感じではないでしょうか。所詮、外国人の問題だからと逃げているのです。だからこそ、訪日中国客が消極的に非買運動することが、いちばん彼らを困らせるはず。なぜなら、“爆買い”がなくなれば、結果的に、中国人ツアーは減るほかありません。昨日書いた理屈で、在日ガイドが赤字になるような仕事は投げ出すため、中国側の旅行会社が送客しようとしても、受け皿がなくなるのですから。そうなると、これまで拡充した日中間の航空路線も縮小し、小売業にも影響が出る。そうなると、その原因をブラック免税店に求める動きがようやく起こるかもしれない」

B「わからないではないけど、やはり法治社会の日本の矛盾を関係者に注目してもらうようにすることも大事。孟子曰く『まず仁義が先にあっての利』です。私の見た日本の旅行業界には、利を先に求める人が多いようです。悲しいなあ」

A「人は利で動くものですからねえ。だからこそ、法という縛りが必要ということですね」

B「同感同感」

A「う~ん、まあそうかもしれないけど、今日はこのへんで」

結局、ふたりのチャットの内容は平行線をたどっているように思います。中国人の彼女からすれば、外国人による違法行為を野放しにすることは、日本政府のメンツに関わるはずで、そこをメディアの力や中国政府の苦情によって彼らのメンツを失わせることで、行動を促すことが問題解決になるという判断のよう。一方、ぼくにはどうやら日本側はそんなことでメンツを痛めたりすることもなく、むしろ日本国民に実害がないうちは、勝手におやりください。実害を受けているのは、中国の皆さんでしょう。そういう冷めた認識、あるいは底意地の悪さを感じないでもない。

やはり、日本人からすると、訪日旅行の周辺で起きている中国人のルールを無視したギャンブル的なやり方は、まるで「戦後のドサクサ」の時代を生きている人たちのようにも見えてしまいます。なぜ彼らはそこまでやるのか。こんなやり方では長く商売できないだろうに…。中国側の良識ある関係者らも、実は同じことを話しています。でも、結局のところ、中国人にはそのようなやり方しかできない、と彼らも同胞の姿をみて嘆いている。中国側にも問題の所在を理解している人たちもいるのですが、それを変えられない。

まあそんなことで、この問題はいろいろな見方ができるわけですが、彼女に言われた「それはおもてなしする側が解決すべき問題でしょ」という指摘から、我々も逃げることはできない道理はあるはずです。この数年間、中国客にたくさん買い物をしてもらうために、日本の小売業界を中心にしたさまざまな業界や自治体まで含め、あの手この手で中国市場も対応してきたのに、ブラック免税店問題は知らぬ存ぜぬでいるわけにはいかないと思うからです。

ひとまず問題の所在が社会に広く理解されないと、解決に向けて動き出すことはなさそう。だから、まずはそこから始めるしかないと思う次第です。

【追記】
数日後、実際にそれらの免税店を訪ねてみました。

中国メディアが名指しした新宿のブラック免税店を見に行ってみた
http://inbound.exblog.jp/25890462/

みなさんはこの現状をどう思いますか?
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by sanyo-kansatu | 2016-06-04 18:31 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 04日

ブラック免税店問題はもうずっと前からありました

前回、日本のブラッグ免税店問題に関する中国報道を紹介しました。

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/

この記事を教えてくれたのは、日本に住む通訳案内士の中国女性です。彼女はふだんは翻訳の仕事をするかたわら、通訳ガイドの仕事も最近は増えているようです。団体客をガイドすることはまずなく、ブラック免税店のこともよく知らなかったせいか、この報道を見て義憤をおぼえたようです。

でも、こうした問題は以前からずっとあったことでした。

日本のメディアも数年前から報じています。

たとえば、かの文春砲もすでに放たれていました。
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中国人が中国人をボッタクリ “日本観光”の醜悪現場 密着ルポ(週刊文春2013.3.7)
http://hello.ac/guide/bunshun2013.pdf

さらには、その前年にNHKも報じています。

NHK総合テレビ<追跡!真相ファイル>「中国人観光客訪日格安ツアーのカラクリ」(2012.8.21)
https://www.youtube.com/watch?v=jLeQfCrZg80

ある語学学校の経営者も、無資格ガイドに絡むこの問題を長く追及しています。

<「ALEXANDER & SUN」免税店」脱税事件>の真相と深層
https://www.facebook.com/Helloguideacademy/posts/433254933447543

一方、中国側からこの問題が初めて出てきたのは、おそらく在日華人紙「東方時報」2009年6月25日が報じた、悪質な旅行会社とガイドが結託したボッタリ免税店への上海人団体客の連れ込みの実態だったと思います。そう、2008、9年当時は、上海や北京などの団体客がブラック免税店に連れ込まれていたのです。

ボッタクリや無資格ガイド問題も浮上。日中双方が解決すべき中国人ツアーの課題
http://inbound.exblog.jp/iv/detail/?s=16998604&i=201111%2F20%2F53%2Fb0235153_13233726.jpg

こうした報道をうけ、ぼくも以下のような記事を書いたことがあります。

中国人の日本ツアーはメイド・イン・チャイナである(2011年)
http://www.yamatogokoro.jp/column/2011/column66/column_02_4.html
http://www.yamatogokoro.jp/column/2011/column68/column_02_2.html

この問題の語り方は、立場によって変わってくるところがありますが、ぼくの場合、当時は東日本大震災直後で、訪日客が大きく減るなか、それでも日本に来てくれる中国客に対して、せめて日本国内では日本人と同じように消費者として最低限度の保護すべきだという思いがありました。その頃の訪日中国市場はいまの5分の1の規模だったのです。また、中国客に対する免税店ボッタクリ問題は、2000年代に入るとすでに香港やタイで頻発していて、ツアー客とガイドが殴りあうとか、免税店に行くのを拒んだ客を置き去りする事件などがずいぶん報じられていたからです。こういうことが日本で起きるのは恥ずかしい。そう思っていたのです。

これらの騒動から、中国政府は2013年に「新旅游法」を施行し、この問題の解決にあたったはずでしたが、結局もとの木阿弥に近い結果で終わりました。というのも、本来ツアー客の望まない免税店への連れ込みをした旅行会社は罰則を受けるという内容だった「新旅游法」なのですが、中国の旅行会社はその後、消費者に免税店への連れ込みをやめる代わりにツアー代金を上げるしかないが、それがいやなら連れ込みを承諾するという誓約書にサインを求めることにしたのです。

その結果、中国の消費者は、ツアー料金を安くするためには、免税店への連れ込みはやむ得ないという従来どおりの姿を選んだのです。中国では国内旅行でも、お土産のコミッションでツアー代が安くなるという仕組みは同じで、広く知られているため、それが無理なく受け入れられてしまったのです。逆に、ツアー代を安くしてくれたのだから、免税店での買い物も少し付き合わないとガイドさんが困るだろうというような感覚も彼らにはあるのです。

だからといって、法外な金額でニセモノをつかまされるのは許せないというわけで、今回の報道となったのでした。

中国「新旅游法」は元の木阿弥―キックバックを原資としたツアー造成変わらず
http://inbound.exblog.jp/24166349/

こうして結局のところ、問題はなんら改善されることもなく、月日だけがたちました。そのうち、上海や北京などに住む経済先進地域の人たちは、日本を個人ビザで訪れるようになり、ブラック免税店に連れ込まれることはなくなったのですが、いまでは内陸都市の地方客が同じ目に遭っているというわけです。時代を変えて、この問題は温存されているのです。

そんなわけで、個人的には、この問題をまじめに考えるのが少し馬鹿馬鹿しい気もして、2011年当時のような「中国客を消費者として保護すべき」と声を上げる気分にはなれないところがあります。

とはいえ、今回の中国報道が指摘する日本政府の不作為については、決してこのままでいいとは思えません。

日本側にはおそらくこんな言い訳があるかもしれません。もしブラック免税店の摘発を本気で行うと、彼らからのコミッションで支えられている中国の団体ツアーが成立しなくなり、市場の混乱が起こりかねない。そもそも中国の旅行会社が不当に安いツアーで客を集めるため、日本国内での宿泊や交通、食事に至るまで、そのすべてを日本側の手配会社が負わなければならないわけで、そこに無理があるのだと。日本側としたら、あえてそのモデルをぶち壊すことで、予測不能な事態を引き起こすことはなるべく避けたいし、中国側の航空・旅行業界もそれを望んでいるとは思えない。

昨年くらいから中国発の日本路線が驚くほど増え、国内の地方空港への運航も拡充しているなか、こうした動きを止めたくないとの思いは両国の関係者に共通しているはずです。その実、日本側の本音は、自国の消費者にまったく影響のない世界だから、わざわざ手をつける理由は見当たらないというものでしょうけれど。

今日の中国団体客の状況は以下を参照してください。

中国「爆買い」の主役は内陸都市からの団体ツアー客
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/010400002/
中国沿海都市から新タイプの個人客、ニーズが多様化し新たな商機生まれる
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/011800003/
東アジア航空網に新時代、訪日客増大の本当の理由は地方路線の大拡充
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/022600007/

こうしたなか、中国側では高額商品の「爆買い」の失速が伝えられています。

コラム:失速する中国人観光客の「爆買い」、ブランド品を直撃(ロイター2016年 05月 18日)
http://jp.reuters.com/article/column-china-shopping-idJPKCN0Y90CX

であれば、コミッションモデルもそのうち成り立たなくなるのではないか。そうすれば、ブラック免税店も消えていくはず…。そんな安易で希望的な観測も日本側にはあるかもしれません。

おそらく中国側はそれらを承知のうえで、自国民の“爆買い”にいかに自制を効かせられるか、あの手この手で考えているのでしょう。確かに、状況はかなり進みつつありそうです。

中国が爆買い客に課税強化 空港で化粧品など廃棄も(Newsポストセブン2016.04.20)
http://www.news-postseven.com/archives/20160420_404278.html
アングル:中国が「国内爆買い」喚起、海南島を免税天国に(ロイター2016年 06月 1日)
http://jp.reuters.com/article/angle-china-duty-paradise-idJPKCN0YM028

であれば、今回の報道もこの問題を自国民がどう受けとめるかを探る観測気球のようなものかもしれません。はたしてブラック免税店問題は今後、中国側でどれほど盛り上がるでしょうか。それが訪日旅行市場になんらかの影響を与えることがあるのか。いつものことながら、中国の消費者の本音と建前、政府の顔色をうかがいながらも、そこに面子が絡むという独特の反応の行方を眺めていくほかありません。

ブラック免税店日中問答「それはおもてなしする側が解決すべき問題でしょ」
http://inbound.exblog.jp/25876810/
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by sanyo-kansatu | 2016-06-04 13:33 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 01日

トリップアドバイザーで和風エンターテインメントが人気の理由

今年3月末に配信された世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の外国人による東京の人気観光地ランキングをみると、2位にサムライミュージアムが堂々ランキングされています。

2015年にトリップアドバイザーの日本の観光地に寄せられた口コミを分析(2016.3.31)
http://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/03/20160331_TripAdvisorPressRelease.pdf

※このランキングには、トリップアドバイザ上の「観光情報」に登録されている旅行者が訪れるスポットを対象とし、(料理、お茶などの)教室やガイドツアー(通訳ガイドが企画したプライベートツアーなど)、地下鉄のような移動手段等はランキングから除いているそうです。

実は、京都府のランキングでも、サムライミュージアムに類似したスポットであるサムライ剣舞シアターが2位になっています。

こうしたことから、以前、新宿歌舞伎町の中にあるサムライミュージアムを訪ねた話を書きました。

トリップアドバイザーで人気のサムライミュージアムとふくろうカフェを覗いてみた
http://inbound.exblog.jp/25702798/

サムライミュージアムは、2015年7月にオープンしたばかりの施設で、館内には日本刀や鎧兜の展示があり、鎧兜を身につけて撮影できるスタジオがあります。外に広がる喧騒の歌舞伎町とは違い、館内は静寂なスポットだったことが印象に残りました。やはり、東京を訪れた外国人旅行者が必ず向かう最強デスティネーションである富士山と箱根へのゲートウェイとしての新宿というロケーションが圧倒的な強みになっていると思います。

サムライミュージアム
http://www.samuraimuseum.jp

では、なぜトリップアドバイザーのユーザーである外国人の間で和風エンターテインメントが人気なのでしょうか。

上記リリースを配信したトリップアドバイザーの広報担当者に聞きました。以下、その一問一答です。

-トリップアドバイザーに口コミを書く人たちの国籍または欧米、アジアなどの比率はどのくらいですか? やはりまだ欧米の割合が高いですか?

「具体的な比率は出していませんが、やはり欧米が多いです。アジアも近年ユーザーは増えてはきていますが、「口コミを書く」という文化はまだまだ欧米の方が主流のようです」

なるほど。だとすれば、和風エンターテインメントは、主に欧米の旅行者から支持されているといえそうですね。

-これらのスポットに関する口コミはどんな内容が多いのか。

「「ショーとして面白い」「見る価値のあるエンタテイメント」「日本の文化を体験できて興味深い」など」

これは誰もが思い浮かべる月並みなコメントにすぎない気もしますが、東京都のランキングをみると、3位は浅草、5位は明治神宮、6位は両国国技館、7位に東京都江戸東京博物館、8位は八芳園、9位はホテルニューオータニ庭園といった具合に、ほぼ和のスペースが選ばれていることからも、彼らにとって「日本の文化を体験」することが最重要関心事であることがあらためてわかります。

-和風エンタメはいつ頃から人気なのか? 人気ある施設に共通する特徴などあるか。

「ご指摘の通り、サムライミュージアムは最近非常に人気です。和の文化を体験できるところが、口コミで徐々に広まってきた面もありますが、同時にインバウンドの高まりを受け、全国的に和の体験を提供する施設自体も増えてきているように思います。

そういった施設は、上手にトリップアドバイザーのようなサイトやSNSを活用してインバウンド旅行者にアピールする術を知っているように思います。

人気のある和のエンタメ施設は外国人旅行者の「日本の文化を体験したい」というニーズを上手に汲み取って、その体験を提供しつつ、情報発信が非常に上手であると感じます。また、英語が話せるスタッフがいて、きちんと説明をしていることも重要なポイントのようです」

―彼らは情報をどのように発信しているのか。

「どんなに魅力的な施設であっても、そこがトリップアドバイザー上に掲載されていなければ、ユーザーの目には触れません。

たとえば、サムライミュージアムは、オープン当初からトリップアドバイザー上に施設の所在地、オフィシャルサイトへのリンク、メールアドレス、営業時間などの詳細を掲載し、館内ではトリップアドバイザー上に掲載されていることを告知しながら、口コミ投稿を促しているのだと思われます。

トリップアドバイザーのような口コミサイトやFacebook、InstagramのようなSNSは、いまや海外旅行する人たちにとって欠かせない情報源になっています。東京を訪れる外国人旅行者が自国で、あるいは訪日してホテルの中でリサーチをしているときに、しっかり目に留まるようにするには、まずはSNSに施設を掲載し、口コミを集めることが必要になってきます。

以下は、サムライミュージアムがFacebookとinstagram上で来場されたお客さんの写真を掲載したりして、外国人が楽しんでいる様子を積極的に発信している例です」
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https://www.facebook.com/samuraimuseum.jp/
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https://www.instagram.com/samuraimuseumtokyo/

こうしたことは、いまや施設の集客を図るうえで常識となっているような気もしますが、どこまで手を抜かず、徹底的にやるかということも大事なのかもしれません。やはり外国人旅行者の目を惹きつけるには、写真のインパクトは大きいですね。Facebookに載せられていた、西洋人の小さな男の子が兜を被っているような写真はとてもかわいくて、ぜひ行ってみたいとファミリー旅行者たちの心をつかみそうです。

-ところで、トリップアドバイザーの外国人による都道府県別口コミ数トップ3は東京、京都、大阪で、全体の58%を占めるそうです。その理由をどうお考えですか。

「東京は言わずもがな世界の大都市のひとつ、日本の首都であり、やはり日本を最初に訪れる人は東京に来るのだと思います。

そして東京から次に足を延ばす場所として京都があります。

また、東京にしか行かなかった2回目以降の訪問者は、大阪・京都と、関西を中心に旅行する人が多いのではないかと思います」

訪れる数がそのまま反映しているような結果であることは仕方がないですが、少し残念ですね。でも、このリリースには、地方のランキングも出ていて、興味深いです。
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by sanyo-kansatu | 2016-06-01 10:17 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)