ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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カテゴリ:気まぐれインバウンドNews( 95 )


2016年 05月 30日

中国人は自国の観光客マナー問題を煽る日本のテレビ番組に耐えられない!?

ある知り合いから、中国のSNSである微信(WeChat)上の一部で、5月23日に放映された「直撃コロシアム!ズバッとTV」(TBS)の「中国人50人と激論 酷すぎるマナー違反」が反響を呼んでいると聞きました。

直撃コロシアム ズバッとTV (TBS)
http://www.tbs.co.jp/chokugekicolosseum/

同番組では、近年急増している中国人観光客が日本で起こしているという驚きのエピソードが紹介されたそうです。

中国人観光客のマナーが世界中で問題となっていることは広く知られていますし、中国政府は海外旅行者向けに「やってはいけない行動」指南書を作成しています。そのせいか、以前ほどマナー違反は減っているという声もあります。
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たとえば、これは九州に多く寄航している中国発クルーズ客船の出発港である上海呉松口国際クルーズ港ではためく標語です。出国する自国民に対して「文明相伴 平安旅途 帯回美好印象 留下文明形象(マナーを守り、平安な旅路を。良い印象を携え、残して帰りましょう)」とPRしています。

しかし、この番組では以下のような「マナー違反」を挙げたそうです。これらの画像は、上記SNSから取りました。
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ここに出てくる事例は、中国の事情を知らない一般の日本人にはビックリ仰天でしょう。でも、ある程度事情を知る身としては、まあこんなことよくありそうな気がするし、確かに呆れちゃうとはいえ、言うほど深刻なものには思えないのですが、どうなんでしょう。やっぱり、許せませんか? 実際はもっとまずいこともいろいろあるけど、そっちは触れられていない気も。いえ、余計なことを言うのはやめましょう。

この種の番組を観るのは疲れるので、とてもYOU TUBE動画の内容をチェックする気にはなりませんでしたが、気になるのは、在日中国人を50人集めて意見を述べさせたという番組放映後、中国のSNS上で以下のようなエントリーが立ったことです。

难忍|在日中国人都在骂的日本某电视台(中国人をののしる日本のテレビ番組に耐えられない!) 原创 2016-05-23
http://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MjM5NDUzNjIyNA%3D%3D&mid=2656679608&idx=1&sn=f12482ad9c33603895524eee9e45ad1d&scene=2&srcid=0523ZTjQ3KYTPM4XjsLHlsGE&from=timeline&isappinstalled=0#wechat_redirect

この書き込みをめぐって、実際、いろんな意見が出ているようです。正直、こちらもあまり読む気にはなれないのですが、なぜ中国人たちはそんなに苛立っているのでしょうか。その理由について、少し考察してみたいと思います。

その前にひとこと。番組で紹介された「マナー違反」のエピソードのひとつは、ぼくが去年の夏に書いた以下の都内某焼肉屋で中国人観光客が見せた光景によく似ています。

焼肉食べ放題「味仙荘」は今日も中国ツアーバス客であふれていました(2015年 08月 01日)
http://inbound.exblog.jp/24747719/

以下に出てくるエピソードなんて、テレビ局にパクられちゃったかな!? という気もしないではありません。…冗談ですよ。

中国内陸客の増加がもたらす意味を覚悟しておくべき(2015年 09月 01日)
http://inbound.exblog.jp/24845817/

上記の記事の最後で、ぼくはこう書いています。

「安いツアーに参加し、バスに乗って団体旅行しているような人たちが大半である中国の内陸客は、言ってみれば、10年、15年前の上海人であり、北京の人たちといえるでしょう。中国の発展は地域によるタイムラグがあるためで、沿海部の人たちが少しずつ成熟してきても、内陸部の人たちが後から来るようであれば、Oくんのいう「マナーの欠けた中国人」イメージは簡単には消えることはなさそうです。

そもそも銀座の百貨店を訪れるような個人客とバスツアーの団体客には、その行動様式や消費活動などの面で大きな落差があります。今後ますます中国内陸客が増えることを想定し、受け入れ側もこの落差を受けとめる覚悟が必要だと思います」。

そうなのです。いま日本には中国の内陸都市からの観光客が増えているのです。内陸都市は上海や北京などの沿海都市に比べ、経済発展が遅れており、そこに住む彼らは初めての日本旅行組が大半です。そのため、マナーに問題があるのも致し方ない面があるのです。こうした背景については、以下を参照ください。

中国「爆買い」の主役は内陸都市からの団体ツアー客
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/010400002/
中国沿海都市から新タイプの個人客、ニーズが多様化し新たな商機生まれる
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/011800003/
東アジア航空網に新時代、訪日客増大の本当の理由は地方路線の大拡充
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/022600007/

一方、番組に出演した中国人の多くは、こうした内陸都市に住む中国人とは違って、ある意味「意識高い系」の人たちです。日本社会のルールもそれなりに精通しているはずです。そのため、彼らは同胞がこうして小バカにされると、自分も同じように思われてしまうのではないかと焦り、憤りを隠せなくなるのでしょう。

ただし、日本に住む中国人の中には、自国に対する自虐的で偽悪的な言動を取る人たちもいます。この複雑な心理は、なかなか一筋縄には説明できませんが、在外中国人にはよくある無国籍者的な態度のひとつです。中国の体制や政府に対する批判が背景にあります。

そして、彼らが抱えるひときわ高い自尊心の問題があります。これは中国人特有の面子に関わるものです。さらにいうと、「新興国メンタリティ」というべきものもある。これは中国に限らず、短期間で発展した国の人たちによく見られるものです。ご本人の生活は豊かになったのでしょうけれど、社会における富の偏りは激しく、自国及び自国民がしばしば見せる困った現実が、自らの自尊心とつりあわなくなることが多い。今回のように、公開の場で笑いものにされてしまうと、過去の自分を思い出すところもあり、その傷がうずき、苛立ってしまいます。いち早くかつての姿から抜け出したつもりの本人としては、忘れたい過去なのです。この感覚自体は理解できないものではありません。

実は、これも昨年起きたことですが、ある在日中国人が都内でタクシーの乗車拒否にあったことで、SNS上で大騒ぎした一件です。ここにも最近の中国人の自尊心問題がよく表れています。

中国富裕層の壊れやすい自尊心の取り扱いには要注意!(2015年 09月 03日)
http://inbound.exblog.jp/24851796/

こうしたことから私たちは、ある教訓を読み取らなければならないと思います。

中国人の壊れやすい自尊心の取り扱いに要注意! です。

とはいえ、こうした彼らの訳あり内面事情は、中国とは縁のない一般の日本人には理解しにくいことでしょう。最近、一部の人たちが中国人の訪日旅行の志向が「モノからコトへ」変わってきたというようなもっともらしいことを言っています。確かに、2000年に解禁された中国人の訪日旅行はすでに15年の月日がたち、先行した上海や北京の人たちはずいぶん洗練されてきたことは事実です。しかし、繰り返しますが、最近は内陸部からの中国人観光客が増えていることで、国際的な常識の身についていない人たちも確実に増えています。これが中国人のマナー問題を複雑にしているのです。

ですから、メディアが中国人のマナー問題を扱う際、中国社会というのは、出身地や階層などにより、人間の落差が日本人の想像以上に大きいことを前提とすべきです。ひとからげに良し悪しを議論するのではなく、なぜそうなるかを視聴者に理解させることが必要ではないでしょうか。

ちょっと優等生すぎますか。…でも、この種の話題で口論することほどばかばかしく、後味の悪いものはないからです。その意味では、わざわざこういう番組を企画する日本のテレビ局はいかがなものか、という声が出るのももっともかと思います。たぶん、中国のSNS上では、それが話題になっていると思われます。
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by sanyo-kansatu | 2016-05-30 15:52 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(6)
2016年 05月 22日

「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」を続けてはいけない理由

今日もこんな記事が報じられています。要するに、現在の民泊市場の実態は「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」だということです。

民泊 35自治体、緩和せず フロント設置義務付け(毎日新聞2016年5月22日)
http://mainichi.jp/articles/20160522/ddm/041/010/126000c

個人宅を旅行者に有料で貸す「民泊」について、国が今年4月からフロント(玄関帳場)を設置しなくても営業許可が得られるよう規制緩和したにもかかわらず、47都道府県、20政令市、東京23区の約4割に当たる35自治体が今も条例でフロント設置を義務付けていることが、毎日新聞の調査で分かった。このうち都内の9区を含む17自治体は近隣トラブルの懸念などから当面は条例改正しないとしており、民泊の需要が高い都心部などで普及のめどが立っていない実態が浮かぶ。【熊谷豪、黒田阿紗子】

政府は、今後さらに民泊の規制緩和を進める構えだが、近隣トラブルの増加や既存の旅館・ホテルの反対を懸念して拡大に慎重な自治体が、国に歩調を合わせるかどうかは不透明だ。

空き家や空き部屋を利用した民泊は、これまで事実上放置されていたが、国は外国人観光客の増加などを見越したルール化を検討。4月から民泊を旅館業法が定める「簡易宿所」と位置付けて営業できる場所などを制限する一方、一般住宅にはないフロントの設置は許可要件から外すことを決め、営業許可を出す自治体に必要な条例改正などを促す通知を3月末に出した。

しかし、厚生労働省のまとめや、毎日新聞の5月中旬の調査によると、12道県、13政令市、都内の10区が、条例でフロント設置を求めていた。このうち約半数の18自治体は条例改正や弾力的な運用で要件を緩和する意向だったが、残りは義務化を当面続けるとし、9自治体(2県6市1区)が「条例改正するか検討中」、8区が「条例改正しない」と答えた。フロント設置義務があると、現行の無許可営業の民泊のほとんどは許可を得るのが難しいとみられる。

国は6月にも、住宅地での営業も認めるなど民泊のさらなる規制緩和策をまとめる方針で、大阪市などは「住民の安全が保てるのか、国の動向を見たい」としている。一方、世田谷区は「良好な住環境を悪化させる必要はない」、渋谷区は「民泊利用者の安全確保にも必要な規制だ」と指摘。台東区は国の通知と逆行する形で、3月末に条例改正してフロント設置要件を加えた。

また、都内各区に4月以降に民泊を簡易宿所として許可したケースがあったか聞いたところ実績はゼロだった。

■「無許可のまま営業が得」 条例で要件、改修の負担重く

4月から旅館業法に基づく合法的な営業が認められたはずの民泊だが、許可権限を持つ自治体の条例などが壁になり、違法営業が依然として横行している。東京都心部では、慎重姿勢を崩さない行政に業者も申請を尻込みし、民泊の「解禁」にはほど遠いのが実情だ。

「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」。今年3月から渋谷区の住宅地にある2階建て集合住宅(計9室)を仲介サイト「Airbnb」に登録した男性(35)は、違法を承知で旅行者に部屋を貸している。

シェアハウスだった物件を丸ごと借り、民泊を始めた。今月、所有者に促され、要件が緩和された「簡易宿所」の許可申請の相談に保健所に行った。だが、区はラブホテルの乱立を防ぐため、フロントの設置や会議室、食堂の整備など、条例で独自の要件を課している。これらを満たすには高額な設備投資が必要だ。窓口の職員からは「最低でも3カ月はかかる」「まずは近隣住民を集めて説明会を開いて」と言われ、申請をあきらめた。

「最大20人が集団で泊まれる」と人気の物件は、月の8割以上が予約で埋まり、許可が出るまで営業を中止するのは痛手という。男性は「お金のある大企業でないと民泊営業はできなくなるのでは」と悲観的だ。

浅草などの観光地を抱える台東区の条例も、3月の改正でフロント設置と営業中の従業員常駐が義務化された。マンションや集合住宅での民泊を事実上認めない措置だ。

区によると、2014年度に4件だった無許可民泊に関する苦情・相談は、15年度は25件に増えた。今もごみ捨てのマナーや騒音などの苦情が相次いでおり、斎藤美奈子・生活衛生課長は「住民の生活環境を守る対策が不十分。国は安全安心の確保を先にすべきだ」と指摘する。

ただし、こうしたトラブルは、民泊を合法化すればさらに増えるとは限らない。1月から国家戦略特区として独自の民泊制度を始めた大田区は、事前に近隣住民の理解を得ることを努力義務にした。今月17日までに一戸建て6軒とマンション8棟(30室)の計14物件が認定を受けたが、うち12物件を管理する業者によると、近隣からの具体的な苦情はないという。【黒田阿紗子、早川健人、柳澤一男】

フロント設置を義務化している自治体と今後の対応(○は条例改正などで要件緩和予定、△は検討中、×は改正予定なし)

<都道府県>
北海道○
群馬県○
神奈川県○
新潟県△
岐阜県○
愛知県○
三重県○
奈良県○
島根県△
徳島県○
高知県○
宮崎県○

<政令市>
札幌市△
仙台市△
さいたま市○
横浜市△
川崎市○
新潟市○
静岡市○
名古屋市○
京都市△
大阪市△
堺市○
北九州市△
福岡市○

<東京23区>
千代田区×
中央区×
新宿区×
文京区×
台東区×
大田区△
世田谷区×
渋谷区×
杉並区○
豊島区×


「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」。

これは、前にも言いましたが、中国人ツアーのガイド問題と同じです。今後規制緩和されるにせよ、現行においては違法となる就労資格や通訳案内士資格がなくても、ばれなければ気にせずガイドを続けている人たちが多数派を占めている問題のことです。

気になるのは、後者(中国人ガイド)の場合は、一般の日本人の預かり知らない場所で、よくわからないまま起きていることなのでピンとこない話だとしても、民泊の実態はいずれ広く一般の日本人の目にも明らかになると思われることです。

「民泊」の問題は、結局「非居住型」をどうするかにある
http://inbound.exblog.jp/25811104/

毎日新聞の調査のように、民泊の需要の高い東京などの大都市圏の自治体ほど、政府の規制緩和を受け入れようとしない背景には、「非居住型」民泊の増加が地元にもたらすであろう問題を避けたいと考えているからでしょう。もっとも、すでに新宿区や渋谷区などでは、無許可民泊が相当数あることがわかっている以上、規制緩和を受け入れないと言っていても、あまり意味がないともいえるわけですけれど。これらの区では、現状の市場をどう管理するかが問われています。

23区内でAirbnb物件が最も密集している新宿区が無法地帯になっている?
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/04/12/083740

地方自治体の取り組みとしては、京都市の事例が知られています。ただし、なかなか難しい問題もありそうです。なぜなら民泊サイトは海外に拠点があるからです。詳しくは以下をご参照ください。

外国の民泊仲介サイトに無視された「京都市民泊実態調査」
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/05/10/120000
違法民泊退治!京都市長・市議会あげての口コミ介入に成果?
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/05/12/120000

でも、もしこのまま何も手を打たずにいると、民泊のホストたちに対する世間の非難がいずれわき起こる日が来るかもしれません。なぜなら一般の地域住民は、小売店や飲食店の関係者とは違い、外国客との間に利害関係はないからです。彼らを受け入れなければならない理由はないのです。にもかかわらず、ホストたちが近隣住民の許可も得ず、「非居住型」民泊を始めたとしたら、いろんな声が出てくるのは当然でしょう。

違法民泊の監視は「近隣住民・宿泊者等からの通報」に頼らざるを得ない?
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/04/23/103713

これが未許可民泊の実態だ! 部屋をこっそり貸し出す入居者と管理会社の攻防を追った(産経新聞2016.5.2)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1605/02/news045.html

懸念するのは、こうした騒ぎが飛躍して、こんなことなら、もうこれ以上外国人観光客なんか誘致しなくてもいいではないか、という論調すら生まれるかもしれないことです。日本で多くの買い物をしてくれる外国人観光客なのだから、少々気になることはあっても歓迎すべきだろうとの国民的なコンセンサスが、これまではある程度共有されていたと思われますが、それが変わる可能性もあると思うのです。これは本来のインバウンド振興の意義からいって大変残念なことです。

※ぼくの考える日本のインバウンド振興の意義については以下のとおり。
戦前期も今も変わらない外客誘致の3つの目的(このブログの目的その4)
http://inbound.exblog.jp/22361086/

さらに別の視点でも、思うことがあります。この記事には触れられていませんが、そもそも地方では民泊の緩和よりも先にすべきことがあるのでは、と思います。

それは、地元旅館の外客受入を促進するための取り組みです。

以前、本ブログでも書きましたが、大都市圏のホテルをはじめとした宿泊施設の客室稼働率は高くなっていますが(それゆえ、民泊需要も高まっている)、地方に目を転じると、それほどでもないですし、旅館に関しては、おそろしく低い稼働率となっています。
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※2015年の全国の宿泊施設タイプ別の客室稼働率は、シティホテル(79・9%)、ビジネスホテル(75・1%)、リゾートホテル(57・3%)、旅館(37・8%)。加えて、都道府県別客室稼働率も見てください。地方によって稼働率が相当違います。

都道府県別延べ宿泊者数(2015年)
http://www.mlit.go.jp/common/001131278.pdf

中国人の旅館買収には理があり、背景には業界の長期低迷がある
http://inbound.exblog.jp/25808051/

なぜこうなるかという理由として、地方の場合、特に旅館業者らの間で、外国人を受け入れたくないという意向が未だ強いことが考えられます。ですから、このネット予約時代でも、外客も利用可能な宿泊サイトに登録していない施設も多そうです。民泊市場の急拡大は、AirBnBをはじめとしたマッチングサイト(事実上の予約サイト)がなければありえなかったことです。本当は地方の旅館こそ、宿泊予約サイトに登録すべきなのですが、そういったモチベーションがあまり感じられないケースが多そうです。いやむしろ、そんなことをして外国人が来られたら困るとすら考えている可能性があります。

ですから、地方では民泊を推進する前に、既存の旅館を外客に利用してもらうための手立てや支援策を打つべきだと思います。そうでないと、本末転倒の話だからです。自治体の関係者は、民泊市場が急拡大しているいまこそ、地元の旅館業界に働きかけて、外客の受入を促進すべきではないでしょうか。

旅館であれば、民泊の規制緩和でも問題になっていることなど、当たり前ですが、最初からクリアしています。こうした既存の施設をどう活用するかという議論ももっと必要だと思います。

【追記】
そんなことを思っていたら、6月に入り、こんな話になってきました。AirBnBが近隣問題の解決に向けて動き出そうとしたようですが、一方で政治的にはかなり厳しい裁定が下りそうなのです。

Airbnb、近隣民泊への苦情報告ツールを公開(2016.6.1)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1606/01/news095.html

民泊ビジネス終了か?「民泊180日以下」で閣議決定(2016.6.3)
http://airstair.jp/minpaku_180/

さあ、これからどうなるか。民泊推進派のため息が聞こえるようです。でも、もう少し状況を見ていきましょう。
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by sanyo-kansatu | 2016-05-22 16:18 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 05月 22日

インド人観光客が増えると、日本のインバウンドはどう変わるだろう?

今朝、ネットで以下の報道を知りました。

観光局、インド事務所開設へ=12億人市場で訪日客誘致(時事通信2016/05/21)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016052100174&g=eco

訪日外国人旅行者の増加に取り組む日本政府観光局(JNTO)が今年度中にインド事務所を開設することが21日、分かった。高度経済発展を続けるインドでは近年、中間所得層が急増。人口12億5000万人を抱え、今後も海外への旅行者が増え続けるとみられるインドを「重点市場」と位置付け、日本の魅力をアピールして観光客誘致に力を入れる。

インド観光省によると、2014年に海外を訪問したインド人旅行者は約1800万人で、10年前の3倍近くに増加。最も多い訪問先としては、サウジアラビアやタイ、シンガポール、米国が90~100万人で上位を争う。

一方、14年に日本を訪れたのは約8万8000人にとどまった。中国(13年で約67万人)や韓国(同約12万人)と比べても「かなり少ない」(日印外交筋)。

日印両国は政治、経済両面で結び付きを強めつつある。その半面、日本へのインド人留学生は15年5月時点で約880人で、訪日観光客と並んで低調だ。外交筋は「両国関係の緊密さに比べ、人的交流は後れを取っている。今後は相互交流を活発化させることがさらなる関係強化につながる」と話す。

以前、インドの旅行会社の人に話を聞いたことがあります。ムンバイの人です。

インド人の日本旅行の訪問地が東京・大阪プラス広島の理由(アセアン・インドトラベルマート2014その2) (2014年6月9日)
http://inbound.exblog.jp/22757002/

彼によると、日本旅行のゴールデンルートは東京、大阪、広島で、東アジアの人たちと比べ、日本に対する認識もずいぶん違うようです。教育もあるのでしょうが、広島の原爆ドーム訪問はたいていツアーコースに入っているそうです。

ちなみに、2015年の訪日インド人は約10万3000人でした。これまで訪日インド客が少なかった背景には、日本への航空運賃の高さがありました。彼らはヨーロッパや東南アジアにはよく旅行に出かけていますが、それは航空運賃が安いからです。

もう6、7年前のことですが、観光庁の主催するトラベルマート(訪日旅行促進のために各国からエージェントを呼んで行う商談会)の海外メディアを集めた記者会見でのある出来事を思い出しました。

※トラベルマートの記者会見とはこういう世界です。以下の話とは関係ありません。
外国人記者説明会(トラベルマート2011 その2)(2011.11.26)
http://inbound.exblog.jp/17093532/

まだ尖閣諸島沖漁船衝突事件(2010年)の起こる前のことで、当時から観光庁は中国市場に大きな期待をかけていました。そこで打ち出されたのは、「中国集中プロモーション」というものでした。

会見場にいたぼくはちょっとびっくりしました。なぜなら、そこには世界各国の記者がいたからです。大きなポテンシャルを持つ中国市場に期待するのは理解できますが、あくまで内輪の話にすべき。中国向けプロモーションに注力するというような話は、なにもそこでするのではなく、中国の関係者だけどこかに集めてすればいいものを……。

実際、記者会見の質疑応答のとき、インドから来た女性記者は「中国の話はわかったが、インドにはどんなプロモーションを考えているのか」と質問していました。彼女がそう思うのも、無理はありません。日本側は「今後いずれ」というような回答でした。

でも、あれから何年もたち、ようやくインドに日本の政府観光局ができるようです。当然、インドの海外旅行市場の調査や研究も始まっていくことでしょう。

インド客が増えると、日本のインバウンドもずいぶん変わっていくことと思います。基本的に英語圏の人たちなので、多言語化の問題はなさそうですが、彼らの文化や習慣など、なかなか独特ですから、最初はいろんな戸惑いもあるでしょう。でも、日本に対する感情は概ね良好な人たちですから、中国や韓国の訪日客に対するような疑心暗鬼や複雑な感情を引き起こすことは比較的少ないと思われます。
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by sanyo-kansatu | 2016-05-22 10:18 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 05月 18日

「民泊」の問題は、結局「非居住型」をどうするかにある

今年に入り、メディアは訪日外国人市場の拡大にともなう政府の「規制緩和」をいくつも報じています。

資格不要の有償ガイドを認めるなら、せめて登録制にすべき (2016年 5月17日)
http://inbound.exblog.jp/25807497/

そして、今日は「民泊」の解禁です。以下、朝日のネット記事です。

民泊、住宅地で解禁へ 訪日客増にらみ新法 政府方針(朝日新聞2016年5月18日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12362375.html

空き部屋などに旅行者を有料で泊める「民泊」について、政府は住宅地でも一定の条件を満たせば営業を認め、本格的に解禁する方針を固めた。19日にまとまる規制改革会議の答申を受け、今月末に閣議決定する規制改革実施計画に盛り込み、今秋以降に「民泊新法」を国会に提出する。

民泊をめぐっては4月、旅館業法で許可を出す最低面積が5分の1に緩和されたが、都市計画法の「住居専用地域」では依然として営業は認められていない。

都市部で宿泊施設が不足する中、訪日観光客の増加に対応するため、政府は営業日数制限などを条件に対象地域を全面的に広げる。家主がいる場合だけでなく、ワンルームマンションなどで家主が不在でも騒音など近隣トラブルを防ぐ管理者が登録されれば、行政へ届け出ることで営業を可能にする。インターネット仲介サイトも登録制とし、取引条件の説明などを義務づける。

家主や新設される民泊管理者は、利用者名簿の作成保存のほか、マンションの管理規約や賃貸契約に違反しないことや、民泊営業の「表札」を掲げることなども義務化する。


民泊とは、一般住宅の空いている部屋を旅行者に貸し出すことで、近年の訪日外国人の急増で、大都市圏の客室不足や料金の高騰が背景にあることは広く知られるようになりました。米国系民泊サイトのAirBnBの日本法人の設立は2014年5月。空室を提供する登録数は急増し、2016年1月現在で約2万6000軒を超えたそうです。

実は、ぼくの仕事場の向かいにある一戸建てのお宅でも、数日おきに外国人ツーリストが入れ替わり来て、民泊している様子を窓越しに見かけます。たいてい西洋人のカップルで、彼らを迎え入れるホストであるその家のご夫婦が玄関先で若いツーリストたちと語らっている姿はとても楽しそうです。天気のよい日には、2階の物干しに白いシーツが干してあります。

一般に民泊には3つの類型があります。アイドルのコンサートが地方都市で開かれるときなどの大規模イベント時に臨時に部屋を貸し出す「イベント型」、ホストの自宅内の空いた部屋を提供する「ホームステイ型」、そしてホストの住んでいない賃貸マンションなどを貸し出す「非居住型」です。前述のご夫婦の場合は、「ホームステイ型」でしょう。

結局のところ、問題は「非居住型」民泊にあると思います。

ぼくの知り合いのひとりも、横浜の住人ですが、大阪の賃貸マンションを借りて民泊をやっています。こういうケースが、人ごとながら、とても心配なのです。

なぜなら、民泊を市場にまかせて運営していくうえでの課題を解決するための取り組みが圧倒的に足りないと思われるからです。これは日本に限った話ではなく、世界的にいえることです。

そのため、当然ホテル業界からの反発があります。「ホテルに義務付けられる環境・食品衛生・防火安全対策が(民泊のホストらに)免除されているのは不公平」だからです(実際は、民泊は「簡易宿所」という位置づけで、ホテルとまったく同じ基準ではないですけれど…)。

懸念事項の最たるものは、近隣住民へのケアがおざなりなことでしょう。もし自分の住むマンションの隣の部屋に、数日ごとに見ず知らずの外国人がやって来るとしたら、どう思いますか。

前述のぼくのご近所のケースのような「ホームステイ型」であれば、近隣住民へのケアはご本人たちの努力でそれなりに対処できると思いますが、「非居住型」の場合、旅行者と住民の間に何か問題が起きた場合、誰が対応するのか。

もともと「カウチサーフィン」のような無料で部屋を貸し合うSNSから始まったのが世界の民泊ムーブメントでしたが、AirBnBという金銭の授受を含む民泊サービスが登場してきて以来、状況は変わってきたといえます。要は、儲かるからと始めたホストたちが急増したことで、あやうげなことになってきたのです。彼らの目的ははっきりしているので、グレーゾーンなど気にしません。まずくなれば、すぐに手を引けばすむと考えているはずです。それは、中国人の団体ツアーのビジネスとよく似ています。彼らもまたグレーゾーンの存在をものともしないからです。そうこうするうちに、在日中国人による民泊ビジネスも相当な勢いでうごめき始めています。

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた(2016年3月27日)
http://inbound.exblog.jp/25579904/

こうした「非居住型」民泊に対する懸念の解消は、実際には、最近次々に生まれている民泊運営代行業者が担うことになるのでしょうが、市場の拡大にどこまで追いついているのでしょうか。彼らの取り組みが、今後民泊市場が日本社会に受け入れられるかどうかを決めるのだと思います。でも、大丈夫かしら?

だいたいAirBnBのサイト自体がお粗末なもので、自動翻訳でホストとゲストがやりとりするような世界でもあると聞くと、ゾッとしてしまいます。なぜそんなことで平気なのでしょう? こういうところに、日本のIT系の人たちの甘さを感じてしまいます。

熊本地震の直後、AirBnBが被災者に部屋を無料提供する募集をしていました。彼らとしては、非常時における民泊の意義をアピールし、イメージアップを図りたかったようですが、問題はそっちじゃないと感じた人も多かったのではないでしょうか。

熊本地震  被災者に家を無料提供 民泊サイトが募集(毎日新聞2016年4月16日)
http://mainichi.jp/articles/20160416/k00/00e/040/228000c

こうした客観情勢から、不動産業界でも民泊に対する姿勢は分かれるようです。

民泊、割れる不動産大手 規制緩和、商機狙う動き(朝日新聞2016年5月18日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12362264.html

「ライオンズマンション」を全国展開する不動産大手の大京が、戸建て住宅を使った「民泊」の事業化にこの夏にも乗り出す。政府が進める規制緩和が商機につながるとみる。一方で、新築の分譲マンションの管理規約で民泊を禁止する大手もある。

有料で自宅の空き部屋を旅行者に貸し出す「民泊」は、旅館業法で原則として規制されている。ただ、東京都大田区では1月、国家戦略特区の規制緩和を利用し、民泊が条件付きで認められることになった。

大京は7月にも、保有している大田区の2階建て中古住宅を使って民泊事業に乗り出す。羽田空港から乗り換え無しで行ける京急蒲田駅から徒歩10分。築17年で、ファミリー向けに賃貸していた。民泊ではより高い利益が見込めるという。

大田区の制度では1回の利用で7日以上の滞在が必要だが、周辺のビジネスホテルより割安な料金設定とすることで、「十分に稼げる」(青本隆担当部長)と自信をみせる。羽田、東京都心、横浜へのアクセスの良さが「売り」だ。

大京は、民泊は全国に広がるとみている。今年度には空き家になっている中古住宅100戸程度を買い取り、事業を拡大する計画を描いている。

■住民に配慮、禁止も

民泊の広がりは、不動産会社にとって良いことばかりではない。

管理会社は、マンションの住民たちから「うるさい」「ゴミが散らかっている」などの苦情を受けることが増えた。マンション販売の現場でも、「(民泊で使われると)防犯や衛生面で心配だ」「民泊に使われないマンションが欲しい」との声があがる。

東急不動産は1月下旬に売り出した大阪市内の二つのマンションの管理規約に、「対価を得て宿泊施設として使用することを禁止する」と明記し、民泊に使えないようにした。東京都大田区の物件(2月発売)と横浜市の物件(5月発売)でも、同様の対応をしたという。

野村不動産は、3月以降に販売開始の広告を出した分譲マンションのすべてで、あらかじめ民泊を禁止している。また、すでに分譲済みのマンションでも「専有部分は専ら住宅として使うこと」と定められている場合がほとんどで、民泊はできないと解釈するのが一般的だ。相談があれば明確に民泊を禁止するような管理規約の変更案を示して助言しているという。

マンション管理規約をめぐっては、国交省が現在の標準的な規約を改正しなければ民泊に使えない、と業界などに通達しようとしたところ、民泊を推進したい内閣府などから「待った」がかかった。現時点でも民泊に使えるかどうか、あいまいなままだ。

ニッセイ基礎研究所不動産市場調査室長の竹内一雅氏は、「不動産会社の住民への配慮は当然だ。不安をほぐせるルールが整備されなければ、民泊が大きな商機になるとは考えにくい」と指摘する。(下山祐治)

■民泊をめぐる不動産各社の対応

<大京>    東京都大田区の戸建てで7月にも民泊事業を開始。全国展開も検討
<東急不動産> 大田区や大阪市、横浜市で販売中の一部分譲マンションで民泊を禁止
<野村不動産> 3月以降に販売開始の広告を出した分譲マンションすべてで民泊を禁止
<三菱地所>  マンションの管理組合に対する相談体制の強化を検討
<三井不動産> 当面は大田区などの取り組み状況を見守る


日本には人口減にともなう深刻な空き家問題もあります。その対策として渡りに船ともいえる民泊だけに、政府も規制緩和を進めたいのでしょう。そのためには、民泊の存在を受容する社会のコンセンサスをいかにつくっていくか。いまの民泊をめぐる状況は、中国人団体ツアーのガイド問題にとてもよく似ています。グレーゾーンであることをいいことに、利益を得たい人たちだけが都合よく暗躍しているように見えるからです。

いろいろ気になることばかりではありますが、訪日外国人の増加が、これに限らず、国内へのさまざまな投資を生んでいることは確かです。それこそがインバウンド振興の意義のひとつといえるわけですから、個人的にはうまく進めてほしいと願うばかりです。

民泊の市場動向や問題について詳しい情報を発信しているのが、以下のサイトです。

マンション・チラシの定点観測
http://1manken.hatenablog.com/

このサイトを日々チェックしていると、「民泊」問題のさまざまな側面が見えてきます。

【追記】
あとで知ったのですが、この報道はすでに先週出ていたのですね。

民泊を全面解禁、住宅地で営業認める 政府原案 (日本経済新聞2016/5/13)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H3C_T10C16A5MM0000/

NHKでも以下の記事を配信していました。

民泊 管理者置けば届け出で営業可能に(NHKオンライン2016年5月13日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160513/k10010518831000.html

住宅の空き部屋などを有料で貸し出す「民泊」について厚生労働省と観光庁は家主が同居していなくても管理者を置くことを条件に都道府県への届け出を行えば営業を認める方針を決めました。

住宅やマンションの空き部屋を有料で貸し出す「民泊」を巡っては、外国人観光客の増加で宿泊施設の不足が深刻となる中厚生労働省と観光庁がルール作りを進めています。先月からは「民泊」をカプセルホテルなどと同様に旅館業法で「簡易宿所」と位置づけ、貸主が都道府県から許可を得れば営業が認められるようになりました。

このうち、一般の家庭で受け入れる「ホームステイ型」については家主がいるため宿泊者の安全管理がしやすいなどとして、今後、許可制ではなく都道府県への届け出だけで認める方針です。

さらに「民泊」を広げるため厚生労働省などは家主が同居していない場合でも管理者を置くことを条件に、旅館などと競合しないよう営業日数の制限を設けたうえで、「ホームステイ型」と同様に都道府県への届け出を行えば営業を認める方針を決めました。管理者は近隣とのトラブルの対応や宿泊者の名簿の作成などが義務づけられるということです。

厚生労働省と観光庁は今後、インターネットなどで仲介を行う業者への規制について検討することにしています。

ここで気になるのは「非居住型」民泊でも、「管理者」を置けば問題ないとのことのようですが、これはどのような存在を指しているのでしょうか。民泊運営代行業者でいいのでしょうか。もうひとつよくわからない内容です。
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by sanyo-kansatu | 2016-05-18 11:00 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(2)
2016年 05月 17日

中国人の旅館買収には理があり、背景には業界の長期低迷がある

ネットで興味深いレポートを読みました。中国人が地方の旅館を次々買収しているという内容です。

ポイントは、老朽化し、後継者もなく、売りに出された旅館を彼らが買い、急増する中国人旅行者の宿として使うこと。さらには、中国富裕層の「資産移転」になること。この種の話題が出ると、すぐに中国脅威論に結びつけたがる人がいますが、彼らの買収には、それなりの理があることを理解すべきだとぼくは考えます。

以下、転載します。

温泉宿を“爆”買収 中国人は地方観光の救世主か
インバウンド裏街道を行く(日本経済新聞2016.5.16)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO99915080R20C16A4000000/

 2015年度の訪日外国人(インバウンド)数が2000万人を超えた。観光地は盛り上がりをみせているが、その裏で異変が起きている。温泉地にある旅館やホテルの経営者が次々と外国人に入れ替わっているのだ。政府や自治体が「観光立国」に熱を上げる一方、経営難や後継者不足にあえぐ旅館やホテルの衰退は確実に進んでいた。経営を断念した売却物件を買っていくのは外国人ばかりで、その多くは中国人だ。日本の温泉旅館を狙う彼らの思惑はどこにあるのか。

■10億円の物件を即決

 「この場でサインしましょう」。中国人男性が3軒の旅館購入を決めた瞬間だった。総額10億円にのぼる。中国人男性は「詳細を詰めるために近いうちに来日する」といって中国に帰っていった。「最初から買うつもりの場合は値引き交渉をしない。そして即決する」。物件を仲介したホテル旅館経営研究所(東京・中央)代表の辻右資はあらためて強く実感した。

 東京・銀座にある辻のオフィスに、中国人男性が訪れたのは3月中旬のこと。約束の10時前に受付のベルを鳴らしたその男性は、上海で複数のホテルを運営している経営者だという。そこから4時間に及ぶ商談が始まった。

 「この旅館の敷地は建て増しできるか」「運営は誰かに任せられるのか」――。中国人の男性は電卓をたたきながら細かい質問をしていく。最大の関心事は投資に対するリターン(利益)がどのくらいあるかだった。辻が提案したのは日本各地の有名温泉地にある5カ所の旅館とホテル。売却額はどれも3億円以上になる。なかには高級旅館で知られる関東近郊の老舗旅館もあった。「いずれの物件も企業や個人が所有していたが、オーナーの高齢化で後継者がみつからず、やむなく手放すことにしたようだ」(辻)。

 金沢、箱根、蔵王……。中国人の男性は辻と面談する前、6泊7日の日程で5カ所の物件をすべて駆け足で視察し、うち2カ所は実際に宿泊した。通訳や物件の案内役など3人を引き連れた「視察ツアー」の目的は、購入する価値があるかどうか。その見極めだった。来訪の目的は旅館側に明かさず、あくまで一般の旅行者としてふるまったという。

 男性はもともと日本の温泉が好きで、観光でなんども来日していた。真剣な表情で建物の状態や客室スタッフのサービスなどを見ていた。夕食にも舌鼓を打った。同行した案内役は「本気で買うつもりできている」と感じたという。

■経営だけ入れ替わる
 外国人による旅館やホテルの買収は増えているが、正確な実態をつかむのは難しいとされる。昨年12月に「雲海テラス」で知られる星野リゾート・トマム(北海道占冠村)の全株式を中国企業が180億円で取得した買収劇。これは大きく報道されたが、通常は表に出ることは少ないという。宿泊客が知らない間にオーナーが入れ替わっているケースがほとんどだ。経営者が交代しても従業員はそのまま雇用されることが多い。

不動産シンクタンクの都市未来総合研究所(東京・中央)によると、公表された案件をまとめただけでも外国企業による旅館・ホテルの売買件数は2015年に46件と前年比2.7倍になった。主任研究員の下向井邦博は増加の背景について「訪日外国人が増え、大都市では旅館やホテルの稼働率が上がっている。客室単価も上昇し、投資先として魅力が高いと感じている」とみる。

 一気に増え始めたのは2020年の東京五輪・パラリンピック開催が決まってからだ。売買を仲介する辻のもとには毎日のように購入を打診する問い合わせが入る。売却リストには箱根や伊豆、金沢、湯布院など日本の代表的な温泉地が並ぶ。最近は中国人だけでなく、台湾やシンガポールの投資家からも問い合わせが増えている。「この物件の概要を送ってほしい」。資料を受け取って気に入ると、あとは現地を見て購入するかどうかすぐ決断する。一見すると強気にも思えるが、彼らが当て込んでいるのが急増する訪日外国人だ。
 
日本政府が政策として推し進める訪日外国人の誘致。その数は2015年度に2000万人を突破した。2020年には2倍の4000万人に増やす計画だ。外国人ツアー客の観光プランは東京、大阪、富士山などいわゆる「ゴールデンルート」を回るものだが、大都市ではホテルなどの部屋不足が深刻化している。その波は地方の温泉地にも波及し、各地で苦境にあえぐ旅館やホテルにとって「救世主」となる可能性を持っている。

■客も中国人に絞る
 「手を挙げたのは中国人だけだった」。2014年冬、大阪府内にある温泉ホテルを売却した不動産会社の関係者は当時を振り返る。大阪市内から離れた場所にあるホテルは客室数35、築40年以上で老朽化が目立っていた。客数も減少し、経営を立て直すには部屋のリニューアルや浴室の改修などに1億円以上が必要だった。ただ改修しても客数が上向く見込みはなく、この不動産会社は売却を決めたという。

 買い手を募ったが、名乗りを挙げた3人すべてが中国人だった。物件としての魅力はそれほど高くはなかったが、「ゴールデンルートにあったことで救われた」という。売却額は1億5000万円。購入したのは訪日外国人を専門に扱う旅行会社の中国人経営者だった。ところが所有権が移った直後、ホテルは様変わりする。宿泊客のターゲットを中国人に絞ったのだ。

 部屋ごとに出していた朝食はバイキング形式になり、宴会場として使っていた大広間は客室に改装。家族客の自家用車がとまっていた駐車場は大型観光バスで埋まった。その結果、日本人客はあっという間に減っていったという。ただ、客室の稼働率は急上昇し、「ほぼ満室に近い状態になっている」(関係者)。運営コストをギリギリまで抑えることで格安の中国人ツアーを取り込み、利益を上げる戦略だ。

 買収された旅館やホテルの多くは中国人専門の宿泊施設へと変わる。それは地元にとっても決して悪いことばかりではないようだ。

■ある旅館の復活
 桃の産地で知られる山梨県笛吹市。東京から電車で1時間半ほどの「奥座敷」といわれる石和温泉がある。全盛期には年間300万人いた日本人の宿泊者は半分弱にまで落ち込んでいる。最近、目立つようになったのが外国人だ。なかでも6割を占める中国人は2~3割増で伸びている。そして、この地でも数年前から中国系企業による買収が相次いでいる。石和温泉で営業している旅館・ホテルは49。このうち6施設を中国人経営者が所有する。

 その一つが「緑水亭 やまぶき」だ。旅館は経営破綻した後、いったん日本語学校になったがそれを中国人が買い取った。旅館にはいまも日本語学校の名残を感じる看板が残されている。JR石和温泉駅前の観光案内所で「いまは営業していないと思いますよ」と言われたが、実際には営業は続いていた。なぜ地元では知られていないのか。

 元留学生だという中国人支配人に聞くと、「うちはPRする必要がない。中国の旅行会社から直接、ツアー客を紹介されるから」と説明する。毎日40人程度の中国人ツアー客が宿泊するという。昼過ぎの館内は電気が消されており、薄暗い。到着はいつも夜7時ごろで、翌朝には次の宿泊地へ慌ただしく出発する。滞在中はホテルの外に出ることがないという。「日本人のようにタクシーに乗って買い物や飲みに行くことはない。お金は落としていかないよね」。タクシー運転手は複雑な表情で話す。

 それでも地元で歓迎の声は少なくない。石和温泉旅館共同組合の理事長で、自らも旅館を経営する山下安広は「中国系の旅館とは共存共栄でやっている」と話す。日本人宿泊者が減り続けるなか、「外国人が来ないと経営が成り立たない」からだ。中国系の旅館だけでは対応できない宿泊客を紹介してもらうことがある。代わりに日本の接客スタイルである「おもてなし」を教えている。

■ステータス目的も
 中国人による旅館への投資は必ずしも利益を上げる目的だけではないようだ。東京都北区にある印刷会社、アールコーポレーション代表の舘正子は中国で生まれ、30年前に来日して日本国籍を取得した。中国の北京市にも事務所を持ち、日本企業の海外進出を支援するビジネスも手がける。彼女の幅広い人脈を見込んで最近、中国の富裕層から「日本の温泉旅館を案内してほしい」という要望が増えているという。

 1月に来日した中国・北京に住む不動産会社の男性経営者は、箱根や鬼怒川温泉、石和温泉に宿泊し、いたく気に入った様子だった。「いい物件があれば買いたい」と話したという。目的は旅館やホテルへの投資の見返りというより、「ステータス」にあると舘はみている。富裕層の多くは日本の食べ物や温泉が好きでしばしば観光に訪れている。ブランド価値の高い有名旅館を自分の所有にできることが、彼らのプライドをくすぐるようだ。

 そして、もう一つの理由が「資産の移転」だ。中国の富裕層は資産を国内だけでなく、海外にも分散して保有している。国内の不動産市場が冷え込んできており、資産を海外に移す動きが加速している。日本もその有力な候補となっているのだ。日本の地価はずっと下がり続けており、今が買い時と判断している。

 宿泊施設の経営に詳しい井門観光研究所(東京・千代田)代表の井門隆夫は「中小規模の旅館は老朽化した施設を改修する余裕がなく、客室の稼働率も低い」と指摘する。復活のカギとなるのが急増する訪日外国人だ。しかし、なかには外国人客のマナーの悪さを口実に積極的に受け入れをしない旅館も少なくないという。そうした旅館の姿勢が井門にはもどかしく見える。「客を増やす可能性があるのに動いていない」

 急増する訪日外国人は、投資家としても、顧客としても、地方の観光産業建て直しの鍵を握る。一方、このブームが去れば何が残るかという不安も残る。温泉地の旅館やホテルの経営者にとっては悩ましい選択だ。=敬称略(古山和弘)


中国の知人・友人から「旅館を買いたい。物件を知らないか」と聞かれることは、数年前からぼくにもありました。なにしろ、いま日本はホテル不足で、料金も高騰しています。中国の旅行関係者らは、自前の宿泊施設がほしいのです。安心して日本に送客したいからです。

一方、日本の旅館業界は、1990年代のバブル崩壊以降、長期低迷しています。

観光庁の宿泊旅行統計調査(平成27年)によると、2015年の延べ宿泊者数は前年比6・7%増の5億545万人泊と過去最高。そのうち訪日外国人は前年比48・1%増の6637万人泊(全体の約13%を占める)と大幅に拡大し、日本の国内客も円安で海外旅行から国内旅行にシフトしたことなどの理由で、2・4%増の4億3980万人泊と増えています。

その結果、宿泊施設全体の客室稼働率は全国平均60・5%と過去最高を記録しました。ところが、宿泊施設タイプ別にみると、シティホテル(79・9%)、ビジネスホテル(75・1%)、リゾートホテル(57・3%)、旅館(37・8%)と明暗が大きく分かれました。
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都道府県別延べ宿泊者数(2015年)
http://www.mlit.go.jp/common/001131278.pdf

観光白書(平成28年版)によると、国内の宿泊施設数は7万9519軒(14年)で、10年前の05年が8万9289軒だったことから、実は減少傾向にあります。ホテル建設は好調に進んでいるように見えますが(ホテルは11%増)、旅館はなんと25%も減少しているからです。この傾向は今後も続くと考えられます。

観光白書 平成28年版
http://www.mlit.go.jp/common/001131318.pdf

バブル期にふくらんだ旅館業界を国内市場で維持することはできなかったのです。そこに現れたのが、中国人でした。

記事の中に、山梨県の石和温泉の話がでてきますが、ここは10年前から中国人団体客の定宿になっていたことから人的交流があるはずで、買収が進むのは自然の流れでした。

しかし、いくら彼らの買収意欲が高いといっても、日本の旅館業を低迷から救うことは難しい話です。では、この事態をどう受け止めればいいのでしょうか。

おそらく彼らが購入した旅館の経営は、中国人スタッフのみで行われることでしょう。ちょうど都内の中華料理店と同じように、同じ出身地の中国人を呼び寄せ、同族経営をするのだと思います。

でも、そんなやり方に任せていてはいけないと思います。彼らの存在をアンタッチャブル化するのではなく、地元にいかに溶け込ませていくか考えるべきでしょう。

「中国系の旅館だけでは対応できない宿泊客を紹介してもらうことがある。代わりに日本の接客スタイルである「おもてなし」を教えている」(上記事より)。

こうした石和温泉旅館協同組合の理事長の言う「共存共栄」のあり方はもっと広く知られていいと思います。

そして、もし中国人投資家や地元の人たちに国際的な視野や経営の手腕があるなら、いっそのこと石和温泉を中国版のニセコリゾートのようにすることはできないものでしょうか。「共存共栄」のモデルケースにするのです。
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【追記】
世界に目を広げると、中国企業によるこんな巨額の買収話もあります。結局、話は流れたようですが…。こういう話に比べれば、日本の旅館買収なんて、かわいいもんじゃないでしょうか。むしろ、彼らの投資をうまく利用してやろうというくらいの心構えでいいのでは。そう思います。

高級ホテルも爆買いの中国 投資手腕はバブル期の日本以上
http://forbesjapan.com/articles/detail/9839

スターウッド買収提案を安邦が撤回(ウォールストリートジャーナル2016年4月1日)
http://jp.wsj.com/articles/SB12495755728542884874804581633713611137524

「中国の安邦保険集団は米ホテルチェーン大手スターウッド・ホテルズ・アンド・リゾーツ・ワールドワイドに対し、安邦率いる企業連合が先に提示した140億ドル(約1兆5800億円)での買収提案を撤回すると伝えた」。

マリオットのスターウッド買収が正式決定 -世界最大のホテル企業が誕生(2016年4月9日)
http://www.travelvoice.jp/20160409-64724

結局、マリオットが買収したようです。
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by sanyo-kansatu | 2016-05-17 15:02 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 05月 17日

資格不要の有償ガイドを認めるなら、せめて登録制にすべき

今朝、ネットで以下の報道を知りました。ついに政府は資格不要の通訳ガイドを認める方向に動き出すようです。

訪日旅行市場の実態にまったく合わなくなった通訳案内士制度を改正する動きは、すでに何年も前から地ならしが進んでいたのですが、2000万人時代を迎えた今年はひとつの節目といえるのでしょう。

以下、記事を転載します。

人手不足で規制緩和 保育士比率下げ・ガイド通訳資格不要(日本経済新聞2016.5.17)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO02405380X10C16A5MM8000/


 政府は保育や観光の分野で深刻な人手不足の解消に向け、実態に合わなくなった規制の緩和に動く。国家戦略特区の公立保育所で正式な資格を持たない職員を雇いやすくするとともに、非正規で働く保育士の給料を引き上げる。観光では、国家資格がなくても有償で通訳ガイドをできるようにする。人手不足が日本経済の成長を妨げないように、人材確保に本腰を入れる。

 政府が19日に開く国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三首相)や規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)で方針を示す。関連法の改正案を早ければ7月の参院選後の臨時国会に出す。

 保育分野では大阪府が認可保育所の設置要件の緩和を求めている。府によると、保育所の職員の3分の2以上は有資格の保育士にしなければならない規定がある。府はこの比率を引き下げれば、公的な資格はなくても経験豊富な保育ママや子育て支援員も活用できるようになるとみている。

 政府は要望を認める代わりに、公立保育所で働く正規職員と非正規職員の待遇格差をできるだけ減らすように府側に促す方向だ。大阪市は非正規保育士の処遇改善を進めてきたが、年齢など条件をそろえると年収ベースで正規保育士の5割にとどまるとの試算もある。

 政府は非正規職員の賃金をめぐり、職種に限らず「正規職員の7~8割に早期に引き上げる」との目標を掲げる方針だ。特区内でもこの水準が目安になるとみられる。

保育士は都市部を中心に人手不足が深刻だ。東京都内では3月の保育士の有効求人倍率が5.45倍だった。大阪府の2014年1月時点の調査では8割の保育園が「5年前より保育士の確保が難しくなった」と答えた。待遇改善で非正規を含め人材を雇いやすくする。

 観光分野では、訪日外国人に観光案内をする通訳ガイドの規制を緩和する。現在は国家資格がないと有償でのガイドはできないが、資格がない人にも認める方針だ。5月末に閣議決定する規制改革実施計画に盛り込む。

 現在、報酬を得る観光案内の通訳は「通訳案内士」の資格を持つ人に限っている。資格がなくても観光ガイドとして報酬を得られるようにする。

 政府は訪日外国人客を20年までに今の2倍の4000万人に増やす目標を掲げる。一方、通訳案内士の数は約1万9000人にとどまり、訪日客のニーズに応えきれていないとの指摘が多い。

 日本に先行して通訳ガイドの規制を撤廃した韓国では、観光客が不当に高額料金を請求されるケースなどが発生している。団体客向けのサービスは資格保有者に限定するなどの規制強化に踏み切った。政府は海外の事例も参考に通訳の質を確保するための具体策の検討を進める。


この記事は、このところ国会でも話題となった保育士問題とからめて観光分野の規制緩和を報じています。通訳案内士の関係者からすれば当然いろんな意見や不満はあるのでしょうが、公平に見て時代の趨勢であり、有資格者たちはこれで職域を奪われるなどとネガティブには考えずに、高い語学力を活かし、現状をふまえた新しい仕事のあり方を模索していくべきだと個人的には思います。能力的にいって、無資格者のできる仕事は限られているからです。訪日市場の急拡大によって、語学力は十分ではなくても外国客を接遇しなければならない場面が増えたのです。本来、有資格者たちが取り組むべき世界は、もっと重要かつ高度な領域なのですから。もはや旅行会社からガイドの仕事をもらうだけの時代ではないのです。

実際、若い世代の通訳案内士たちは、すでに新しい仕事のスタイルを実践しています。

たとえば、以下の通訳案内士ユニットは、東京都内のユニークな建築案内に特化したガイド活動を始めています。

Showcase Tokyo Architecture Tour
http://showcase-tokyo.com
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こうした新しい動きは、主に英語の通訳案内士たちが取り組むケースが多いようです。資格不要の有償ガイドが認められた時代は、有資格者たちはテーマ性や特色のあるガイド内容で自ら仕事を取りにいく動きを進めていくべきでしょう。こういうユニット応援したいと思います。

もうひとつ大事なことは、日本のインバウンドの中身を大きく変えたアジア市場において、これまでグレーゾーンとなっていた、海外からツアー客に同行する添乗員や、国内でツアーに合流する在日アジア系ガイドたちの実態をきちんと把握するためにも、ガイドを登録制にすべきではないでしょうか。

彼らの中には、海外から日本に観光ビザで来て、滞在期間中、ツアーをいくつも請け負い、免税店からのコミッションもそうですが、さまざまな営業活動をしておきながら、確定申告もせず、そのまま帰国してしまう「スルーガイド」もいます。また今後規制緩和される通訳案内士資格の有無はともかく、就労資格のないのにガイドを務める輩もいるからです。

今回の規制緩和は、要するに現状追認にすぎないわけですが、彼らの存在を本当に法的に認めていいのか。せめて登録制にして違反者を減らし、市場の実態をつかむことができなければ、監督官庁としては無責任すぎると思うからです。九州の中国発クルーズ客の上陸観光ガイドの就労資格をめぐる問題はいまだ解決できていないですし。

中国人不法ガイドが摘発された背景にあるものは? 訪日旅行市場に与える影響は?(2016年3月9日)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/030800008/

通訳ガイドをめぐる問題については、以下の論考も参考にしてください。

通訳ガイド問題の解決の糸口は?
訪日客が増えて問題続出
http://www.yamatogokoro.jp/report/2016/report_23.html

「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」って何?
http://inbound.exblog.jp/24445622/

メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたか
http://inbound.exblog.jp/24446629/

通訳案内士になるには? 適性は?
http://inbound.exblog.jp/24449064/

通訳ガイドの働き方、海外ではどうなのか?
http://inbound.exblog.jp/24450294/

海外の観光ガイドサービスのモデルを日本に持ち込もう
http://inbound.exblog.jp/24460875/

通訳案内士制度をめぐる議論がかみ合わないのはなぜか
http://inbound.exblog.jp/24463450/

無資格ガイド問題とは何か?
http://inbound.exblog.jp/24472149/

訪日旅行市場最大の中国語通訳案内士の現場は大変なことになっていた
http://inbound.exblog.jp/24486566/

中国語通訳案内士を稼げる職業にするための垂直統合モデル
http://inbound.exblog.jp/24489096/
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by sanyo-kansatu | 2016-05-17 12:55 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 04月 11日

2016年の外航クルーズ客船の動向を占うための客観情勢

3月上旬、中国発クルーズ客船が多数寄航する福岡で、中国人不法ガイドが逮捕されたニュースが報じられたばかりですが、今年も昨年以上の勢いで外航クルーズが日本にやって来るようです。

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は?
http://inbound.exblog.jp/25461430/

これまで本ブログでも、沖縄や福岡、境港などのクルーズ寄港地を訪ね、現地の事情を報告してきました。

クルーズ寄港ラッシュで沸くインバウンド先進県、沖縄(日経ビジネスONLINE 2014年4月8日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140402/262219/
東シナ海クルーズラッシュの背景:博多港にいつ頃から現れていたのか?
http://inbound.exblog.jp/24665654/
4500人の中国クルーズ客が山陰の人口3000人の村に押し寄せ、住民を困窮させたというのは本当か?
http://inbound.exblog.jp/25247278/

こうした寄航数が増えている地域ばかりが話題になるのは無理もないことですが、日本全体に寄港する外航クルーズの客観情勢はどうなっているのでしょうか。

トラベルジャーナル2016年4月4日号の特集「激増する訪日クルーズ 恩恵を受けた地域、受けない地域」は、それを知る手がかりとなります。

ざっと同特集のポイントを整理してみましょう。

まず特集の冒頭で告げられる以下の一文に注目です。「訪日クルーズ旅客数が、昨年始めて100万人を突破した。20年に100万人の政府目標を5年も前倒しで達成した背景には、受け入れ環境整備の成果だけでなく、中国市場の急拡大がある。果たして、地域にはどのような影響を及ぼしているのか」。
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そうなんです。昨年日本を訪れた外国人旅行者のうち、約100万人はクルーズ客船で寄航し、上陸した人たちなのです。その数が多いかどうかはともかく、2015年の寄航数は昨年の1.5倍増(965回)、乗客数になると3倍増(111万6000人)に近い勢いで伸びたことがデータで示されます。

国土交通省が制作した以下のサイトをみると、クルーズ寄港地がわかります。2015年の寄航回数のランキングは以下のとおりです。

1位 博多(245回)
2位 長崎(128回)
3位 那覇(105回)
4位 石垣(79回)
5位 鹿児島(51回)
6位 神戸(42回)
7位 横浜(37回)
8位 佐世保(34回)
9位 広島(25回)
10位 大阪(18回)

CRUISE PORT GUIDE OF JAPAN
http://www.mlit.go.jp/kankocho/cruise/jp/

このランキングを見れば一目瞭然、上位を占めるのは九州と沖縄で、それぞれ中国発、台湾発のクルーズ客船が寄航回数を押し上げていることがわかります。

なかでもトップの博多港への外航クルーズ寄航回数のデータは以下のとおりです。

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東日本大震災の2011年と尖閣問題が再燃した2012年9月以降の影響で13年に数を減らしているものの、14年から15年にかけて2.5倍の伸びを見せています。福岡市では、「平成27年博多港寄港クルーズ船乗客実態調査」を実施していて、以下のような興味深い指摘をしています。

①乗客一人当たりの平均消費額 10万7000円
②福岡での購入品目 1位化粧品 2位健康食品 3位お菓子 4位医薬品 5位電化製品
③乗客の女性比率が61%と高く、30代と50代が多い。
④乗客の在住都市は上海が4割と最大だが、地方都市も増えている。
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15年博多港寄港クルーズ船乗客実態調査
http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/52066/1/cruise.pdf

この調査からうかがえるのは、10万円超という買い物購入額がクルーズ旅行商品を成り立たせていること。購入品目の大半がドラッグストア系商品であること。30代と50代が多いということは、1980年代生まれの「80后」世代とその親の世代のファミリー旅行がメインの客層として想定されること。そして、すでに半分以上は、上海以外の地方都市の住人であることがわかります。

ところで、同特集は次のようにも述べています。

「16年の寄航予定数は400回は箱崎ふ頭も駆使した格好で、博多港のキャパシティーはほぼ飽和状態にあるといえよう。そんななか、福岡市はポートセールスでやみくもに寄航回数を増やすのではなく、ラグジュアリータイプの船や日本人の海外クルーズを伴う寄航を促進するなど、利用者の幅を広げる施策にシフトしている」。

福岡市のクルーズ関係者に今年初め、話を聞いたことがあるのですが、やはり中国発クルーズ客船の勢いはすざまじいものがあり、今年は400回の予約がすでにあり、来年は700回などといわれているそうです。しかし、中国人不法ガイドに代表されるさまざまな問題をはらんだ中国発クルーズがこのままいつまで持続可能性のあるビジネスとしてあり続けるのか、中国側の事情もよく見ていく必要があるように思います。

さて、同誌では、逆に寄航回数が減少している北海道の事例も紹介しています。

同誌によると、北海道に寄航するクルーズ客船数は14年に過去最高の157回となりましたが、15年に半数以下の69回に落ち込みました。急増・急落の要因は、外国船社の寄航数の増減によるものだといいます。九州でこれだけ増えている中国発クルーズ客船は、長くても1週間程度のカジュアルクルーズがメインであるため、北海道は距離的に遠く、寄港地の候補からはずされているといいます。
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同誌はさらに次のような面白い指摘をしています。

「訪日クルーズ拡大は、日本人のクルーズ市場にも少なからぬ影響を及ぼしている。華やかな大型客船の寄航によるクルーズ旅行への関心の高まりが期待される一方で、日本人の乗船機会が奪われるとの懸念もある」。

これはどういうことでしょうか。
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実は、日本人のクルーズ旅行市場は、2000年代からずっと伸び悩んでいます。日本人にとってクルーズ旅行は「高価な贅沢旅行」「退屈」「船酔い」といったネガティブなイメージを引きずっているのだといいます。

中国発クルーズの増加は、日本人にクルーズ旅行は必ずしも「贅沢」とは限らないことを教えてくれたという功績はある一方、一部とはいえ寄航回数の激増した港のキャパが飽和状態だとしたら、日本人のクルーズ旅行にも支障が出るおそれがあるというわけです。同誌は触れていませんが、いくらカジュアルクルーズだからといって、中国客がたくさん乗船している客船には乗りたくないという気持ちも出てくる気もします。

日本のクルーズ市場を取り巻く客観情勢をざっと眺めてきましたが、寄港地でのさまざまな取り組みがもっと注目されてもいいと思います。もし機会があったら、長崎や鹿児島、北陸などを訪ねてみたいものです。
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by sanyo-kansatu | 2016-04-11 09:02 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 03月 05日

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は?

中国発クルーズ客船が多数寄港する福岡で、中国客の上陸観光のガイドとしてバスに同乗し、免税店を案内する傍ら、売上に応じたコミッションを得ていた中国人不法ガイドがついに摘発されました。

この一件は、ガイドらが書類送検された3月3日夕方にはテレビのニュースなどでも報じられていました。
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無資格「観光ガイド」2人を摘発 免税店から報酬5,000万円(FNN2016/3/03)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00317893.html

爆買い中国人のガイド役の男女が摘発された。

入管法違反の疑いで摘発されたのは、中国人の無職の女(31)と留学生の男(25)。2人は、就労ビザがないのに、2014年から2015年にかけて、観光ガイドとして、中国人観光客を福岡市の免税店に案内し、見返りに報酬を受け取った疑いが持たれている。

2人は、ボランティアと称していたが、口座には報酬として、少なくともそれぞれ、およそ5,000万円が入金されていたという。2人のうち、女は2月、裁判所から罰金の略式命令を受け、国外退去処分になっている。


翌4日、大手各紙がさらに詳細に報じています。

不法就労助長:「爆買い」無資格ガイド 中国人摘発 福岡県警(毎日新聞2016年3月4日)
http://mainichi.jp/articles/20160304/ddh/041/040/004000c

大型クルーズ船で入国した中国人観光客を案内するツアーガイドに無資格の中国人を雇ったとして、福岡県警は3日、旅行代理店や免税店6店(いずれも福岡市)の支店長ら男女6人を出入国管理法違反(不法就労助長)容疑などで福岡地検に書類送検した。ガイドの中国人男女2人も福岡地検に書類送検するなどした。「爆買い」のガイドが摘発されたのは初めて。

6人の送検容疑は2014年9月〜15年9月に男(25)=福岡市=を、15年5〜11月に女(31)=神戸市=をガイドに雇用し、客を免税店に引率させたなどとしている。2人に就労資格はなく、県警は女を今年1月に同法違反(資格外活動)容疑で逮捕。女は2月に罰金50万円の略式命令を受け、国外退去処分になった。県警は男も2月に同容疑で書類送検した。

県警によると、旅行代理店が2人にガイドを委託し、報酬として女に約3000万円、男に約4500万円が支払われた。

関与した旅行代理店3店はいずれも中国系、免税店3店はそれぞれ中国、韓国、台湾資本という。


毎日新聞は、摘発の容疑が「出入国管理法違反(不法就労助長)」であること。関与した旅行会社や免税店が、昨年の訪日外国人旅行者数トップ3の中国、韓国、台湾資本であると指摘しています。

「爆買い」ツアー、無資格でガイド 入管法違反容疑で男女2人摘発(朝日新聞2016年3月4日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12240131.html

就労資格がないのに中国人観光客のガイドをして不正に報酬を得ていたとして、福岡県警は出入国管理法違反(資格外活動)の疑いで中国人の女を逮捕、男を書類送検し3日発表した。2人は免税店で観光客の買い物を支援する報酬として、少なくとも約7600万円を免税店側から受け取っていたという。県警によると、海外からのツアー客のガイド行為に同法を適用したのは全国初。

県警は3日、2人にガイドを委託した福岡市と東京都の旅行会社3社の役員計3人を同法違反(不法就労助長)容疑で、報酬を渡した同市と東京都の免税店運営会社3社の役員計3人を不法就労助長の幇助(ほうじょ)容疑でそれぞれ書類送検した。

外事課の説明では、自称無職の女(31)は昨年5~11月、就労ビザがないのに、中国人観光客らを福岡市内の免税店に案内するなどして、約3千万円を得ていたとして今年1月に逮捕された。2月に罰金50万円の略式命令を受けて国外退去になった。留学生の男(25)は2014年9月~15年9月、同様に計約4600万円の報酬を得たとして、今年2月に書類送検された。

免税店運営会社の役員2人は「就労資格は旅行会社が確認していると思っていた」などと容疑を一部否認。ガイド2人と旅行会社役員3人、免税店運営会社の役員1人は容疑を認めているという。

同課によると、旅行会社は2人に報酬は支払わず、「ボランティア」名目で委託。実際には免税店側から2人の口座へ入金があり、県警は報酬にあたると判断した。


朝日新聞は今回の摘発を「海外からのツアー客のガイド行為に同法を適用したのは全国初」。さらに「外事課」が動いていたことを報じています。

「爆買い」無資格案内、容疑の中国人ら摘発 福岡県警(日本経済新聞2016/3/4)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO98016980U6A300C1CC1000/

就労資格がないのに、中国などから買い物に訪れる「爆買い」目的の観光客らを免税店に案内し報酬を得ていたとして、福岡県警は3日までに、入管難民法違反(資格外活動)容疑で中国人の女(31)を逮捕したほか、中国人留学生の男(25)を書類送検した。

県警によると、同容疑で中国人ツアーガイドを摘発したのは全国初。

県警は同日、この男女をガイド役として雇った旅行会社3社と免税店の運営会社3社の幹部ら計6人を同法違反(不法就労助長)の疑いで書類送検した。県警によると、免税店の運営会社の2人は容疑を否認している。

県警によると、ガイド役の男女は2014年9月~15年11月、就労資格のないビザで日本に滞在し、買い物をする中国人観光客らをボランティア名目で案内。その見返りとして案内先の免税店から計約7500万円の報酬を受け取っていたという。

女は今年1月に逮捕され、簡裁から罰金50万円の略式命令を受け、国外退去処分となった。

外国人向けに観光案内をする場合は「通訳案内士」の資格が必要だが、この男女は取得していなかった。


日本経済新聞は「無資格」「就労資格がない」「入国管理法違反」などと各紙が説明する中国人ガイドらの摘発の理由として「通訳案内士」資格を持っていなかったことだと説明しています。

さて、本ブログでは昨年来、福岡に寄港する中国発の大型クルーズ客船の動向をウォッチングしてきました。
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いまや東シナ海は中国クルーズ旅行の新ゴールデンルートです
http://inbound.exblog.jp/24720904/

その経緯からすると、今回の摘発はいつ起きてもおかしくないと思っていました。この時期になったのは、摘発する側のなんらかの事情で決まったと思われます。

実をいうと、「観光立国」の推進役である観光庁を外局にもつ国交省は、2010年無資格ガイドを手配したとしてJTB系旅行会社を処分しています。このため、その後日系旅行会社は中国発クルーズの上陸観光手配からは一部を除きほぼ手を引いたため、現状はアジア系事業者と中国系ガイドの仕切る世界になっていたのです。

JTB系旅行会社を厳重注意処分に=通訳案内士法違反で初、中国人留学生バイト募集に問題―九州運輸局(レコードチャイナ2010年3月30日)
http://www.recordchina.co.jp/a40879.html

今回の摘発の理由となった「通訳案内士」資格をめぐる問題についても、これまで本ブログでは何度も指摘してきました。

NHK報道をめぐり思う。通訳案内士って何だろう?
http://inbound.exblog.jp/24442716/

メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたか
http://inbound.exblog.jp/24446629/

無資格ガイド問題とは何か?
http://inbound.exblog.jp/24472149/

こうした現状もそうですが、一般の日本人からみると、中国人不法ガイドが数千万円もの収入を得ていたことのほうが驚きかもしれません。中国人観光客による「爆買い」で最も利益を得たのは彼らだったかもしれないからです。

ある事情通は、彼らが法外な利益を得たカラクリについてこう説明してくれました。

「彼ら無資格ガイドが、免税店やアジア系旅行会社から無償または1日5000円程度でクルーズ客の上陸観光のバス1台分40名のガイド業務を引き受けるとする。免税店に連れてゆき、1人平均5万円のお買い上げで、売上総額は200万円。そのうち10%を免税店からコミッションとして受け取ると、20万円/日の実入りとなる。いまや福岡には毎日のようにクルーズ船は来るから、年間で約150日ガイドをやって、こつこつ貯めれば軽く3000万円を超える。免税店や商品によっては、コミッションが売上の20~30%の場合もあるので、もっと利益は増える。これを中国へ持ち帰ると、都市郊外のマンションが買える金額だ。まさに商才民族というべきだろう。

考えてみれば、これは中国人が中国人を食い物にする構造だ。日本人がそれをやれば、中国から袋叩きに遭うだろう。しかし、中国人同士がやっていることなので、関係者らは見て見ぬふりをしてきたというのが、これまでの経緯だったと思う」

こうしたことが起こりえた背景には、いうまでもなく中国人観光客の「爆買い」があったことは確かです。彼らが「爆買い」しなければ、こんなカラクリは成立しないからです。

実は、このニュースが各紙で報じられた昨日、ぼくはたまたま在日中国人の旅行手配業者の知り合いに会う約束になっていました。そのとき、当然この話が出たのですが、その業者によると、昨年末、ある中国系の免税店から各業者に一斉に通達があったそうです。その内容は「在留カードを持たない中国人ガイドが客を連れてきても、2016年1月1日からはコミッションは出さない」というものだったそうです。

彼らも今回の摘発を免れるための手を打っていたことがわかります。もっとも、それは「在留カード」の所持にすぎず、外国人に対してガイド業務を行う通訳案内士資格の有無ではありませんでした。各紙が報じる外国人の「就労」資格に関する判断は、単に「在留カード」があればすむことなのか、「通訳案内士」資格まで問うているのか、分かれているようにも読めます。

しかし、そんな通達は、急増する訪日中国人旅行市場の現状からいって、守られることなど到底、無理な話だったのです。

何はともあれ、パンドラの箱はついに開けられました。

はたして今回の摘発は、福岡以外の全国に波及するのか。そうなると、航空便で訪日する中国人ツアー全体に影響が出てくることが考えられます。

なぜなら、中国の訪日団体ツアーは、航空便利用の場合も、クルーズ同様、コミッションによるコスト補填で成り立っている状況は同じだからです。

だとすれば(あえてこんな言い方をしますが)今回の摘発以降、逮捕される危険を顧みず、ガイド業務を買って出る中国人がいなくなってしまえば、中国側の旅行会社ががいくら日本に客を送ってみたところで、ツアーが回せなくなってしまう可能性があるのです。

この摘発が、未曾有に拡大しつつあった訪日中国旅行市場にどんな影響を与えることになるのか。注視していきたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-05 14:43 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 02月 11日

2016年は名古屋のインバウンド躍進に要注目

名古屋というのは、日本の主な大都市の中で、これまでドメスティックなイメージがつきまとっていました。インバウンド市場が盛り上がるなか、これも首都圏と関西圏にはさまれたせいなのか、いまいちぱっとしませんでした。中部地区を売り込むため、中部国際空港をゲートウエイにした「昇龍道」という観光ルートを立ち上げて、ここ数年海外に向けてPRしてきましたが、もうひとつピンとこず、白川郷のような一部の世界遺産のようなスポットを除くと、他の地区の後塵を拝してきた印象は否めません。

そんな名古屋のインバウンドの躍進がようやく注目され始めています。

エクスペディアの国内都市別ランキングでは、名古屋は7位です。しかし、東京や大阪より伸び率は上がってきました。
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エクスペディアの名古屋支社は、昨年10月以下のリリースを配信しています。
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地方都市、札幌や福岡に比べた名古屋におけるアジアからの注目度

「上記の「主要都市における訪問客の構成」を比較してみると、アジア人の割合に差があることがわかります。韓国、香港、タイ、台湾というアジアの主要地域が占める構成比を見てみると、札幌の訪問客の72%、福岡の訪問客の83%をアジア人が占めていますが、名古屋はまだ60%とアジアからの注目度が低いことがわかります。これはアジアにおいて影響力の大きいLCCの便数がまだ名古屋では少ないことが要因のひとつと考えられるため、今後のLCCの就航により市場が成長していくことが予想されます」

名古屋が最も好きな訪日外国人は「香港人」で全体の約4割!

「名古屋に来ている訪日外国人を国別で比較してみると、香港からの旅行客が半数に近い42%も占めていることがわかります。

また名古屋における訪日香港人の2014年1-9月と15年の1-9月の予約件数を比べてみると、572%と急激に伸びており、香港における名古屋の注目度が高いことがうかがえます。

2014年9月に香港エクスプレスが名古屋・香港線を就航したことが要因のひとつであり、今後エアアジアやジェットスターが新たに名古屋と台北を結ぶ便の就航を予定していることから、台湾からの訪日が増え、アジアからの注目度が伸びることが予想されます」


中部国際空港における台湾便LCCの就航
・ジェットスター・ジャパン 2015年12月12日新規就航(週7便)
・Vエア 2015年12月15日新規就航(週4便)
・タイガーエア台湾 2016年1月29日より就航予定(週7便)
・エアアジア・ジャパン 2016年春就航予定

そんな期待の高まる中部国際空港でしたが、エアアジア・ジャパンの名古屋便が延期になることが昨日、発表されました。

エアアジア、中部空港就航先送りへ (日本経済新聞2016/2/10)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO97116790Z00C16A2L91000/

その背景については、以下のレポートを参照ください。

エアアジア・ジャパン就航への課題とは - CEO交代の裏で起きていたこと
http://news.mynavi.jp/articles/2016/01/22/airasia/

もっとも、中部国際空港へ運航する国際線は確実に増えています。背景には関空の入国手続きや大阪府内の宿泊施設はすでに「キャパオーバー」の兆候があり、中国系エアラインなどの新規就航が中部国際空港へとシフトする傾向も見られるからです。

実際、中部国際空港の中国路線は、すでに以下の24都市に就航しています。

北京、上海、長春、長沙、常州、大連、福州、杭州、貴陽、ハルビン、合肥、フフホト、昆明、南通、寧波、青島、瀋陽、石家荘、太原、天津、武漢、西安、煙台、銀川

中部国際空港フライトスケジュール(2016年2月1日~2016年2月29日)より
http://www.centrair.jp/airport/flight_info/monthly/1198613_1744.html

中国の地方都市からの路線は団体客が大半のため、エクスペディアを利用する層ではありません。しかし、訪日客の最大シェアである中国客の増加は名古屋のインバウンドに大きなインパクトを与えていることでしょう。また常に日本旅行の最先端を駆け抜けてきた香港人を乗せた香港エクスプレスの就航の意味は大きいと思います。中部国際空港からレンタカーを利用して「昇龍道」を走るというような動きが起こることも考えられます。

昇龍道
http://go-centraljapan.jp/ja/special/shoryudo/index.html
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by sanyo-kansatu | 2016-02-11 17:54 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 02月 11日

訪日客の沖縄、札幌、福岡のエクスペディア予約件数が伸びている

訪日外国人旅行者数の拡大に伴い、ホテル予約サイトのエクスペディアで地方都市の宿泊施設を予約する件数が増えています。

2015年の国内都市別の予約総数のランキングは以下の通り。
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東京、大阪、京都が圧倒的に多いですが、前年度からの伸び率でいうと、上記右上トップ5、特に熊本のような地方都市でも予約が増えています。なんでも「くまもん」人気で香港人の熊本訪問が増えたことも理由だそうです。もっとも、上記右上5都市はもともと母数が少なかったため、伸び率が大きく見えますが、全体でみると以下の5都市の伸びが要注目です。

沖縄 230%
札幌 203%
福岡 201%
名古屋 175%
大阪 172%

海外FITの地方への分散化にエクスペディアが貢献していることがわかります。同社はさらに地方の宿泊施設の取り込みを進めるため、昨年9月に九州支社、10月に名古屋支社、そして今年2月に沖縄支社を開設しています。

エクスペディアでは、各都市の外客の傾向についてリリースを配信していて、とても興味深い結果が現れています。

まず沖縄から。今年2月のリリースによると、以下のとおりです。
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「香港」と「韓国」からの訪日外国人が全体の約7割超え!

「エクスペディアの海外サイト経由で沖縄に来ている訪日外国人を国別で比較してみると、香港から38%、韓国から35%と、両国からの訪日客が全体の7割を超えていることがわかりました。

また沖縄における訪日外国人の予約件数を2012年から比較すると、14年から15年にかけて大きく伸びていることがわかります。その背景は、円安により日本に旅行がしやすくなったこと、そしてLCCの新規就航が挙げられます。2015年だけでも、ピーチのソウル・沖縄線、タイガーエア台湾の台北・沖縄線、春秋航空の上海・沖縄線が就航しました」


月別の訪日客の推移も出ています。
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「香港」は6月、「韓国」は12月が沖縄訪問のピーク

「月別に国ごとの訪問数を比較してみると、香港からの訪問は6月がピーク、韓国においては12月がピークということがわかります。香港においては6月に大型連休があること、韓国では12月の寒い時期に沖縄に来てゴルフをする方が多いことが要因になっています。

日本人が沖縄に旅行する際は、7~8月がピークになります。日本人が少ない4~6月に香港人、冬季に韓国人の旅行客が来ることによって、沖縄への旅行需要を年間を通して高めることにつながっているといえます」

もっとも、上記はエクスペディア出ホテル予約をした件数をもとにしたデータで、実際に沖縄を訪れる外国人のうち、最も数が多いのは台湾客です。
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平成27年入域観光客統計概況(平成28年1月21日発表)
http://www.pref.okinawa.jp/site/bunka-sports/kankoseisaku/kikaku/statistics/tourists/h27-c-tourists.html

ただし、台湾客の多い背景には、クルーズ客船による2泊3日のツアーが盛況なことがあります。彼らは客船内に泊まるため、ホテルを利用しません。エクスペディアの予約件数では韓国や香港より少なくなっているのはそのためです。

【前編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメント
http://inbound.exblog.jp/20363867/

札幌のリリースはまだ出ていないようなので、福岡のエクスペディア利用者の動向を見てみましょう。
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福岡が最も好きな訪日外国人は「韓国人」で全体の約4割!

「福岡に来ている訪日外国人を国別でみると、韓国人が半数に近い41%、そして全体ではアジア人が81%を占めていることがわかります。

また福岡における訪日外国人の予約件数を2012年から比較すると、14年から15年にかけて大きく伸びていることがわかります。その背景は円安により日本に旅行がしやすくなったこと、そしてLCCの新規就航が挙げられます。特に韓国と香港においては、チェジュ航空が2015年4月より福岡・釜山線、14年4月より福岡・香港線を就航している香港エクスプレスが15年10月から増便させています」


福岡でも、昨年約260回クルーズ客船が寄港し、中国客を中心に多くの外国人が上陸しましたが、沖縄の台湾客同様、彼らもホテルを利用しないため、エクスペディアの統計には入ってきません。また多くの台湾客が福岡を訪れていますが、彼らはFITではなく、ツアーに参加する比率が高いため、エクスペディアの予約件数は、タイより少なくなっています。

東シナ海クルーズラッシュの背景:博多港にいつ頃から現れていたのか?
http://inbound.exblog.jp/24665654/

沖縄や九州方面に海外の個人客が増えるのはとてもいい傾向だと思います。ここでも中国のFITの動向がよくわかりませんので、シートリップへのヒアリングが必要ですね。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-11 16:53 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)