ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

inbound.exblog.jp
ブログトップ

カテゴリ:気まぐれインバウンドNews( 101 )


2016年 06月 19日

日本の「爆買い」報道は中国人の自尊心を傷つけた!?

為替が円高に振れ始めたと思ったら、メディアは中国客の「爆買い」にも影響が出てきたと報じ始めました。

「爆買い」に急ブレーキ インバウンド 変わる風景(日本経済新聞2016/6/18)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO03780060Y6A610C1SHA000/

5月の大型連休明け。家電量販店のヤマダ電機はJR新橋駅前(東京・港)の店舗をひっそりと閉めた。不採算60店を一斉閉店する一方、新たな「戦略店」として2015年春に開いた免税専門店だった。

■1年で見切り
「インバウンドは経営の核にならない」。山田昇会長は1年あまりで見切りをつけた。1台10万円近い炊飯器を何台もまとめ買いする中国人客。一本調子で増えてきたこんな「爆買い」にブレーキがかかった。

中国は経済成長が鈍り、15年夏には上海株が急落。円高・人民元安が進み、この1年で日本の商品の“お得感”は2割近くも失われた。ただ、爆買いがしぼむ理由をこれだけで片付けることはできない。

訪日観光ビザの4割を発給する上海の日本総領事館では1~4月の発給件数が前年同期比15%増。日本への旅行熱が冷める気配はない。沿岸部中心に給与水準は上昇。2桁成長が続く中国の消費市場では依然、日本製の人気は高い。実際、16年1~3月期に訪日中国人客の旅行消費額は客数の伸びが寄与し、前年同期を4割強上回った。ただ、1人当たりに換算すると、12%近くも減っている。

「税制が変わってコストが合わない」。九州に住む中国人の主婦、高園園さん(29)が話す。ドラッグストアなどで買い付けた商品を本国の客に販売してきた代購(代理購入)。いわゆるブローカーだ。

中国政府は4月、越境EC(電子商取引)に関する税制を変更した。事実上免税だった個人輸入扱いの荷物に一般貿易並みの税金が課される。税制の抜け道を使って荒稼ぎするブローカーを締め出し、正規の貿易業者の不公平感をなくすことが狙いとみられる。人海戦術で商品を調達してきた代講は関税引き上げと円高でうまみがなくなった。

日本百貨店協会がまとめた4月の全国の百貨店のインバウンド向け売上高は3年3カ月ぶりに前年割れとなった。客数は7%以上増えたにもかかわらず、単価が16%近く落ち込んだ。三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長は「ブローカーが減った」とみる。

■大きな振れ幅
免税店大手のラオックスは5月まで全店売上高が4カ月連続で前年割れとなった。店舗数は増やしても単価下落が補えない。8月をめどに日本行きのクルーズ船が発着する上海港に展示場を設ける。家電や化粧品など1000点超をそろえて、訪日前に予約販売。日本の店舗で手渡す。クルーズ旅行の富裕層を店舗に呼び込む苦肉の策だ。

免税販売は想定ほど伸びない。家電量販店のビックカメラは16年8月期の連結売上高を下方修正した。宮嶋宏幸社長は「インバウンドは1割程度が適切」と強調する。単体売上高に占める免税販売の比率は15年12月~16年2月期ですでに11%程度となっている。

15年には3兆4000億円に達し、百貨店や家電量販店を潤したインバウンド消費。振れ幅の大きさはリスク要因となりかねない。


この記事の興味深いところは、中国政府が「越境EC(電子商取引)に関する税制を変更」したことで、「爆買い」のもうひとりの重要なプレイヤーだったブローカーたちが「人海戦術で商品を調達してきた代講は関税引き上げと円高でうまみがなくなった」と指摘していることです。同様に、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長も「ブローカーが減った」とみていること。なんだ、これは観光客の話ではないじゃないですか、とつっこみを入れたくなります。

しかし、中国団体客ご用達免税店のラオックスが「5月まで全店売上高が4カ月連続で前年割れ」であるとしたら、中国客の買い物手控えは、すでに春節頃から始まっていたことがわかります。

昨年から中国政府があの手この手で中国客の「爆買い」阻止に動いていたことは知られています。決定的となったのは「事実上免税だった個人輸入扱いの荷物に一般貿易並みの税金」が課されたことでしょう。

これでは、以前のように、知人友人親族のために、あるいは自らの面子のために、炊飯器を6つも7つも買って帰るなんて、したくてもできません。高い関税がかけられたのでは、中国で購入するのと変わらなくなりますし、周囲に自分は「こんなに安く買ってきたのだ」と得意げに言い張ることができません。海外から帰国した中国人が周囲に土産物をばらまくときに見せる、あのご満悦の表情にケチをつけたのは、中国政府です。内需を拡大することが至上命題である中国の深刻な事情を知ってか知らずか、どこか浮かれた気分だった自国民に冷水を浴びせたというべきではないでしょうか。

気になるのは、中国の旅行会社から訪日客を預けられる在日中国人のガイドたちです。これまでのように売上がたたなければ、免税店から十分なコミッションをもらえないわけですから、ホテルやバス、食事の支払いに窮することになると一大事でしょう。仕事を放りだす人たちが出てくるかもしれません。

それでも、訪日中国客は増え続けています(16年1~5月の中国客はすでに249万人。前年度比45.3%増)。熊本地震も、いまのところ影響はないようです。

今年2月、四川省を訪ねたとき、現地の若い中国人たちが口をそろえてこう言っていたことを思い出します。「日本ではさかんに中国人の爆買いを報道しているようだけど、なんかバカにされている気がする」。

「べつにバカにしてるんじゃなくて、驚いているんだよ。だって、日本人はそんな買い方をしたことがないので、見ていて面白いし、商売人も売上アップでうれしい。盛り上がらないわけがないでしょう」

そうぼくが言うと「べつに日本で買わなくても…。これじゃ中国に買うものがないみたいじゃないですか」と答えるのです。

みんながそうだとはいいませんが、一部の中国人は、日本の「爆買い」報道で自尊心が傷ついた面があるようなのです。

確かに、日本の「爆買い」報道に一種のあざけりのようなニュアンスが含まれていなかったかといえば、ウソになるでしょう。長期デフレに沈む多くの日本人にとって、景気よく買い物をする中国客の姿を見るのは面白くない、という感情もあるはずです。これは上海に在住する日本人の友人がよく言うのですが、「日本のメディアの中国報道には、妬みが入っている」と。そうかもしれませんね。

一方、ネットでこんな記事もありました。

「日本製」買う中国人に、悩む中国人 「同じ物作れるのに」=中国メディア(サーチナ2015-12-10)
http://news.searchina.net/id/1596727

中国人が海外で「爆買い」する背景には「自国製品への不信」があることは、当の本人たちは自覚しています。しかし、それは自国の面子を失わせることでもある。そんなことをわざわざ外国人に言われたくない…。

彼らの複雑な心理を知ると、ちょっと気の毒に思えてくるところがあります。彼らには、買い物が単なる個人の楽しみとしての消費行動にはならないところがあるのです。中国政府もメディアを使って、そのようにうまく誘導してきたと思います。

その点、台湾の人たちは、実におおらかに「爆買い」を楽しんでいます。今年2月、日本薬粧研究家の鄭世彬さんと一緒に『爆買いの正体』(飛鳥新社)という本をつくったときも、彼は日本でたくさんの買い物をすることが自尊心に関わる問題だなどとは想像もつかないことのようでした。

『爆買いの正体』という本は、昨年新語・流行語大賞を受賞した「爆買い」はどうして起きたのか。その背景を台湾人の目を通して語ってもらうというもので、「爆買い」の当事者である華人自身が語る本質を突いた指摘があふれています。要するに、華人にとって「爆買い」は本能だというのです。

さらに、この本は台湾人によるあふれんばかりの日本愛の告白書です。なぜ台湾の人たちがこれほど日本の製品を愛好してくれるのか、その理由を熱く語ってくれています。
b0235153_18583224.jpg
http://goo.gl/DXhOMa

やはり、台湾人と中国人はまったく違うのですね。

とはいえ、「爆買い」が本能であるのは、中国人も同じ。本当は彼らにも気持ちよく買わせてあげたいものですが、一度ケチがついたら、これはけっこう長引くかもしれません。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2016-06-19 18:59 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 15日

韓国メディアが教えてくれた銀座のツアーバス駐停車90秒ルール

今朝、なにげにネットニュースを見ていたら、こんな報道がありました。しかも、これは韓国メディアの日本語版です。

観光客がバスを待つ東京、90秒で全員搭乗・5分以内に出発(朝鮮日報2016.6.14)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/06/14/2016061401144.html?ent_rank_news

今月1日、東京・銀座のラオックス(LaOX)免税店。中国人団体観光客が一日3000-5000人押し寄せるショッピング・スポットだ。大型観光バスが1分に1-2台ずつ、ひっきりなしに客を降ろしていくが、どのバスも1カ所に5分以上停車していることはなかった。1時間に80台以上のバスが停車して、出発していったが、そのうち5分以上止まっていたバスはたった1台、車いすに乗った観光客を降ろしたバスだけだった。

なぜそのまま停車させておかずに、すぐにバスを移動させるのだろうか。観光バス運転手のノガミさん(53)は「会社から『絶対に5分以上、車を止めておくな。すぐに車を移動させろ』と指示された」と話す。ノガミさんは免税店前に観光客を降ろした後、日比谷公園やお台場といった車の通行が少ない地域に20-30分かけて移動し、決められた時間に観光客が全員集合したらガイドから電話をもらい、再び迎えに行く。多くのバスが順に観光客を降ろした後、ほかの場所で待機して、また順に戻ってくるという一種の「回転システム」になっているのだ。

別の運転手Aさんは「違反したら警察に徹底的に取り締まられる。10分を超えると警告もなくすぐに反則金1万2000-1万5000円、違反点数2点が付けられる」と言った。警視庁職員は「2点ずつ3回違反し、合計6点になると1カ月の免許停止、15点を超えると免許取り消しになる」と言った。反則金は、道路での駐停車違反は1万2000円、横断歩道・交差点にかかっていれば1万5000円だ。運転手が車を離れる放置駐車違反になると、反則金が道路では2万1000円、横断歩道・交差点などでは2万5000円とさらに高くなる。

東京で20年以上営業している中堅旅行代理店のB代表は「日本では旅行代理店がバス会社に数日前までに日程表を渡すと、バス会社が駐車場の計画を組んで現場に出る」と語った。観光客が遅刻しても、バスは約束通りの時間ピッタリに出発する。周辺を一周して15分後にその場に戻り、遅れて来た人を乗せるのだ。ガイドや観光客は現場で「早く来て車を止めていてほしい」「もう少し待ってくれ」とイライラを爆発させたらどうするのか。B代表は「警察もいるし反則金があるし…。お客様が怒ってもバス会社はその通りにはできない」と言った。

ラオックスから500メートル離れたロッテ免税店前でも駐停車の混乱はなかった。ロッテ免税店は今年3月の開店に先立ち、3カ月間にわたり東京都中央区役所と駐車場問題について協議し、免税店前のタクシー乗り場で観光バスの乗客が乗り降りできるよう許可をもらった。「バス1台当たり90秒以上停車しない」という条件付きだった。

乗客数十人が90秒以内に乗り降りを完了させられるのだろうか。ロッテ免税店のイム・ヨンソプ東京事務所長は「やってみたらできた」と話す。事実、炊飯器と買い物袋を1つずつ持った中国人観光客20人が免税店前のタクシー乗り場にあらかじめ並び、自分たちのバスが来ると軍事作戦のように一糸乱れずに乗車した。中国人ガイドは中国語で「皆さん、銀座ではすぐに乗車してください」と繰り返し叫んでいた。

日本にもともと、駐停車に伴う混乱がなかったわけではない。近年、中国人観光客が急増した影響で、免税店に寄る観光バスの駐車場問題が社会問題になった。すると、日本の国土交通省は今年2月、日本バス協会(NBA)と共に免税店前の駐車場問題について「マナーアップ(manner up)キャンペーン」を展開した。バスが観光客を待つのではなく、観光客が事前に出てきてバスを待たなければならないというのが骨子だ。同協会から会員企業に「5分以上停車しないでください。ほかの所に移動・待機してから戻ってきましょう」というパンフレットを配布した。銀座・浅草・新宿など観光スポット周辺の駐車場情報も付けた。警視庁も賛同した。旅行代理店やバス会社が自主的にキャンペーンに従うよう誘導すると共に、規則に違反した場合は警察が反則金を科すというシステムが確立した。

それに伴い、観光客の行動パターンも変わった。ラオックス関係者は「以前はバスが先に来て、観光客が出てくるのを10分でも20分でもひたすら待ち続けたが、今は観光客が集まってから車が来るので、観光客の間でも『日本では交通の妨げになってはいけない』という認識が定着した」と語った。

東京=金秀恵(キム・スへ)特派員 , 東京=崔仁準(チェ・インジュン)特派員


へえ、そんなことになっていたのか…。そう思った人も多いかもしれません。「ツアーバス駐停車90秒ルール」、知りませんでした。

確かに、今年の春節(2月上旬)、銀座8丁目の中国人ご用達の免税店「ラオックス」の前は、路駐するバスが列をなしていました。
b0235153_1019985.jpg

店の前もこの混雑ぶりです。地元からの声もあったことでしょう。
b0235153_10192233.jpg

b0235153_10193377.jpg

さすがに、これだけのバスが一斉に路駐する状態は見逃せないと思ったのか、警察は動き出したようです。

同じことは、ぼくの仕事場に近い東新宿でも4月中旬頃から起きていました。

新宿5丁目ツアーバス路駐台数調査 2016年4月、5月、6月
http://inbound.exblog.jp/25630882/
http://inbound.exblog.jp/25812191/
http://inbound.exblog.jp/25873364/

記事にもあるように、バスの運転手は罰金を払わされてはたまらないというわけで、中国客にも協力してもらいながら、バスの乗り降りを迅速に行い、自らも彼らの買い物時間は店の前を離れ、付近で路駐できるスポットを探して身をひそめているか、あるいは周辺を回遊しながら約束の時間を待つことになったようです。ただでさえ、都心には路駐スペースがないのに、これはなかなか大変なことです。「みなさま、ご苦労様です」と言ってあげるべきではないでしょうか。

ところで、興味深いのは、日本のこうした出来事をなぜ韓国メディアが取り上げているか、です。彼らは区や警察、バス運転手らにも取材しています。

ネットを検索していると、同じ朝鮮日報でこんな記事が見つかりました。

渋滞する免税店周辺、ソウル市民の不満高まる(朝鮮日報2016.6.14)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/06/14/2016061401143.html

なんでもソウルの有名な免税店前の道路でも、バスが列をなして、地元市民が不満をもらしているとか。記事によると、夕刻一台のバスが違法駐車をしたものの、「警察やソウル市の取り締まりチームは現れず、地元の「模範運転者会」のメンバー4人がホイッスルを鳴らして交通整理しようとしていた。同団体のイ・ジンヨンさんは「バスが一度に詰め掛ければ交通整理は不可能に近い」と話した」と報じています。

さらに、こんなことも書かれています。

「外国人観光客を免税店に連れて行く観光バスが原因で、ソウル中心部のあちこちでひどい渋滞が頻発している。免税店が観光バスを吸い込む「ブラックホール」の役割を果たしているとして、免税店の責任を指摘する声もある。

現在、ソウル中心部には新羅免税店のほか明洞のロッテ免税店と新世界免税店、仁寺洞のSM免税店、光化門の東和免税店、東大門のドゥータ免税店など、大型免税店がいくつもある。ソウル市によると、市内の主な観光地を回る観光バスは1日平均1047台(2015年基準)に達するという」

えっ、1047台!?   これは相当なものではないでしょうか。訪韓中国客のソウル一極集中はすざまじいものがありますね。

「免税店周辺の交通渋滞に対し、ソウル市と免税店業界は互いに責任を押し付け合っている。ソウル市は「免税店の事業者が十分な駐車場を確保していないせい」と主張する一方、新羅免税店の関係者は「(奨忠体育館交差点一帯の)混雑は免税店とは関係なく、薬水高架道路を撤去したことが原因」と反発している。

不便をこうむっているのは市民だ。ソウル市麻浦区に住む女性(36)はこの日、ベビーカーを押して明洞のロッテヤングプラザを訪れたが、免税店前の観光バスの排ガスが気になりベビーカーにカバーをかけた。女性は「全部取り締まりの対象のはずなのに、どうして放置しているのか」と不満を口にした」。

どうやら朝鮮日報は、日本の免税店路駐問題の解決に向けた取り組みを見習え、とでも言っているようなのです。

さらに検索を続けると、別の韓国メディアのこんな記事が見つかりました。面白いことに、すべて同日配信です。

免税店に観光バス用の駐車場設置を義務付けへ=韓国 (聨合ニュース2016/06/14)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2016/06/14/0900000000AJP20160614005300882.HTML

韓国国土交通部は14日、市中免税店に観光バスの駐車場の設置を義務付ける内容が盛り込まれた駐車場法施行令一部改正案を立法予告したと明らかにした。(中略)これと関連してソウル市は先ごろ、市内の免税店7カ所に公文書を送付し、独自に用意した駐車場や公営駐車場に観光バスを誘導するなど対策を取るよう求めた。

まるでメディアと政府の連携プレーのような動きです。

それにしても、日本ではよその国の外国人旅行者の動向など、ほぼ関心がない話題だと思いますが、韓国では違うようです。そこには理由がありそうです。今年の初め、こんな報道がありました。

日本に奪われた中国人観光客 外国人訪問者数「韓日逆転」(聨合ニュース2016/01/27)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2016/01/26/0400000000AJP20160126004200882.HTML

記事によると「韓国観光公社とJNTOによると、昨年日本を訪問した外国人観光客数は1973万7000人で、韓国を訪問した外国人観光客数(1323万2000人)より多かった。訪韓外国人観光客数は09年に781万8000人を記録。679万人だった日本を超え、14年まで6年連続で日本を上回っていた」そうです。

つまり、昨年の外国人旅行者数において、韓国は日本に7年ぶりに追い越されてしまったのです。どうやら彼らはこの問題を気にしているようなのです。

ところが、中国人旅行者数に限っては、日本(499万人)より韓国(598 万人)が多い。当然、バス路駐問題は、韓国のほうがより深刻であることがわかります。これも彼らが日本のツアーバス路駐問題に関心を持った理由なのでしょう。

韓国メディアの危惧はそれだけではありません。訪韓日本人旅行者の減少問題です。昨年の訪日韓国人(400万人)に対して訪韓日本人(184万人)というダブルスコア以上の差となってしまいました。かつての韓流ブームは本当に過去のものとなってしまったのか。

しかしながら、皮肉なことに、こんな報道も見つけてしまいました。

ことし韓国人に最も人気の夏休み旅行先1位は大阪(中央日報2016年06月13日)
http://japanese.joins.com/article/813/216813.html?servcode=400§code=400
b0235153_1027899.jpg

これは先日、大阪の地下鉄に乗ったときに見かけたハングル表示です。いかに大阪に韓国人旅行者が多いか、よくわかりました。

では、日本人のこの夏の人気海外旅行先はどうなのか。

トラベルコちゃん海外ツアー検索で人気の海外旅行先(2016年夏)
http://www.tour.ne.jp/special/world/ranking/index_summer.html

このサイトによると「1位グアム、2位台北、3位ホノルル、4位ソウル、5位バリ島…」

良かったですね。4位にソウルが入っていました。

いまや韓国メディアの報道の一部は日本語で読める時代です。しかも、中国系のネットニュースのような記事を簡約したものではなく、そのまま翻訳されて掲載されているようです。他国の主要メディアの記事がふつうに読めるなんて、考えてみれば、すごいことです。

おかげで、彼らの考えていることがずいぶん伝わるようになりました。それが日本人の対韓イメージにどんな影響を与えているかについて考えると、疑問を感じることも多いのですけれど、韓国の事情に詳しくない自分のような人間でも、彼らが日本のいかなることに関心を持っているのか、またその理由について考察するうえで、それなりに役立つことは確かです。何より今回のように、日本の社会で起きている出来事について意外な視点を提供してくれることもあり、面白いものです。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2016-06-15 10:30 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 10日

ラブホ支援は施設改修より人材育成が課題

今朝、ネットで以下の報道を知りました。訪日客の増加で大都市圏の宿泊施設が不足しているため、ラブホテルの事業者向けに政府が支援するそうです。
b0235153_9233456.jpg

ラブホテル改装で訪日客受け入れ 政府が条件付きで後押し(サンケイBiz2016.6.10)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160609/mca1606090500019-n1.htm

政府は9日、訪日外国人旅行客の急増に伴うホテル不足の解消を目指し、比較的稼働率に余裕があるラブホテルの事業者が観光客向けの一般ホテルに改装する場合、条件付きで後押しする方針を固めた。改装のための融資が受けやすくなるよう政府系金融機関の対応を進める。一般住宅に有料で観光客らを泊める民泊の規制緩和とも併せ、受け入れ態勢整備を進める。

事業者が改装のための融資を受けやすいよう、ホテルや旅館業の受け皿となる日本政策金融公庫に対し、厚生労働省が4月、「資金に関する相談に特に配慮するよう」通達した。政府系金融機関は公序良俗に反する業者は融資対象外だが、「(観光立国に資する)一般ホテルへの改装という条件なら、一般ホテルへの融資に該当する」(厚労省)としている。

観光庁の調査では、訪日客増加などで、ビジネスホテルやシティホテルの平均稼働率は4月も7、8割で推移するが、日本中小ホテル旅館協同組合によると、全国で約1万2000店ともされるラブホテルの平均稼働率は平日で約4割。風俗営業法の規定で、利用客が従業員と面接せずに鍵が受け渡せる一方で、18歳未満の利用が禁じられるなどの営業規制を受ける。

訪日客の増加を受け、業者からは一般ホテルへの転換を模索する動きも出ている。ただ風営法の営業規制を外すにはフロントや客室の改装が必要だが、中小事業者も多く、改装資金の調達が課題となっていた。

政府の観光ビジョンでは2020年に訪日客数を4000万人とする目標を掲げているが、都市部を中心に宿泊施設の需給逼迫(ひっぱく)が課題となっている。民間の調査機関は、東京オリンピック・パラリンピックに向けた今後のホテル開業計画を加味しても、同年には全国の客室数が1万室以上不足すると試算している。


全国にラブホテルは1万2000店もあるのですね。実は、この動き、ちょうど1年半前に取材していて、ビジネス誌の「プレジデント」で、ぼくは以下のような記事を書いています。

訪日外国人はラブホやカプセルホテルがお好き!? 日本全国、ホテル業界大異変(プレジデントオンライン2015年8月31日号)
http://president.jp/articles/-/16082
http://president.jp/articles/-/16083

タイトルだけみると、ラブホテルの外客利用の話だけのように見えますが、記事全体としては、外国客の利用の多いビジネスホテルチェーンや最新デザインホテル、カプセルホテルやゲストハウスなどのエコノミータイプまで、さまざまなタイプの宿泊施設の新しい動向を紹介しています。

さて、ラブホがらみでいうと、プレジデントの取材の際、実際に訪ねたのが、大阪のレジャーホテルチェーン「ホテルファイン」でした。

ラブホテル? いえ、レジャーホテルで、いま外客の取り込みひそかに進行中 (2015年 07月15日)
http://inbound.exblog.jp/24691630/

このとき、ホテルファインの会長に話を聞いていますが、ラブホテルやレジャーホテルが外国客を受け入れていくには、施設改装コストだけではすまない、さまざまな課題があることを指摘し、以下のようにコメントしています。

「一般のラブホテルやレジャーホテルで外客受入ができるのは一部に限られるだろう。この業界は大半が個人企業。受入には初期コストがかかるし、社員教育が大変。宿泊客が病気になって、病院の手配をしなければならないとき、フロントで外国語対応ができるか。外国客はフロントにいろいろ聞いてくる。近くにおいしいレストランはないか。松坂牛の食べられる店はどこか…。そういうコンシェルジュ機能も求められる」。

―大阪市からラブホテル業界で外国客の受入ができないか相談があったそうですね。

「うちにも大阪観光局の人が来た。そのとき、私はこう説明した。ラブホテルやレジャーホテル業界の経営は、1室月額いくらの売上で組み立ている。それには1日2回転させることも計算に入れている。これらのホテルは初期投資がビジネスホテルより圧倒的にかかる。部屋の広さやお風呂、エンターテインメントの設備などが充実しているからだ。ビジネスホテルの売上額ではとうてい成り立たない。いくら市が施設投資に補助金を出したところで赤字になる。

しかも、うちがいまやっているような運営ができるラブホテルがどれだけあるか。社員教育はどうするのか。外客受入を始めるとなると、館内案内も多言語化のため全部新しく揃えなければならない。うちもあらゆる表示物を英語と中国語に多言語化した。「トイレは紙を流してください」といったこれまで必要のなかった表示も用意した。食事の問題もある。ベジタリアンやハラル対応だ。外国客は食に対するリクエストが多い。そこで、食事メニューも変更した。うちでは24時間ルームサービスをやっているし、宿泊客には朝食がつく。メニューの種類を増やすことになった。

24時間電話の通訳サービスも始めた。通訳と3者通話ができるシステムだ。フロントにはタブレットも用意した。

外客受入のためには、我々自身が変わらなければならない。経営者が率先して受入態勢をつくっていかないと。海外からお客様がどんどん来るから、なんでもいいから客を取るではいずれしっぺ返しが来る」。

館内の多言語化や通訳サービスなどの新規コストもそうですが、会長は何より人材育成の問題を指摘しています。ホテルファインでそれが可能となっているのは、チェーンの規模が大きいことから、予約システムの構築も一括でき、外国客の接遇を行うスタッフ教育などにも対応できるからだそうです。

個人経営者の多いラブホテル業界では、経営者の高齢化もそうですし、多言語化ひとつとっても、なかなか難しい面がありそうです。問題は、旅館業界と似ています。

とはいえ、、ラブホテルの客室はエンターテインメント性の高さがポイントだと思うので、外国客にウケる要素はあると思います。他のシティホテルに比べコストパフォーマンスはいいですし。先入観のない外国客にとっては、賢い選択肢と映るようです。

今後はホテルファインのような先行事例もあることから、チェーン化が進むかもしれません。
b0235153_923579.jpg

[PR]

by sanyo-kansatu | 2016-06-10 09:23 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 04日

ブラック免税店日中問答「それはおもてなしする側が解決すべき問題でしょ」

前回、前々回と5月末の中国メディアの「日本のブラック免税店」告発報道を紹介しました。

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/
ブラック免税店問題はもうずっと前からありました
http://inbound.exblog.jp/25875949/

この報道を教えてくれた中国語通訳案内士の彼女と、この問題をめぐってチャットしました。あとで残った文面を見ながら、なるほど日中のこの問題に関する感じ方はこんな風に違うんだなと思った次第。以下、その一部を公開します。(A:ぼく B:彼女)

A「こんばんは。ところで、Bさんはブラック免税店に行ったことありますか?」

B「行ったことないですよ。基本的にあそこに行くのは安いツアーに参加した団体客。経営は中国人や韓国人がしているそうですよ。東京だけでなく、大阪にもあります」

A「Bさんは団体客のガイドはやりませんものね。実は、ぼくは以前、知り合いの中国の旅行会社の友人の引率するツアーに紛れて、お台場の近くのブラック免税店に行ったことがあります。そのとき、友人から『店に入ったら、日本語しゃべらないでね』と言われていました。でも、一緒にいたツアー客は、ぼくが日本人であることを知っているので、『これは本物ですか? ここで買うべきですか?』と聞かれて、答えに窮した覚えがあります」

B「こういう免税店に行くようなツアーは、だいたい闇ガイドを使っていますよ。中国からの添乗員がそのままガイドする場合もあります」

A「確かに、友人は中国から来た添乗員でした。こういう人は、かつて中国で日本から来た観光客のガイドをしていました。ですから、日本語は堪能です。いまは日本から中国へ行く旅行者が激減しているので、彼らは仕事を失い、逆に中国客の添乗員として日本に来ているのです。

一応日本側のガイドもいましたが、在日中国人。彼が通訳案内士の資格を持っているかどうかはあえて聞きませんでしたが、たぶんないでしょうね」

B「闇ガイドを見分ける方法は簡単です。彼らは通訳案内士の有資格証がないので、名所や博物館に入る際、ツアー客と一緒で入場券が必要です」

A「なるほど。でも、実際のところ、中国の団体客はほぼこのような無資格ガイドによるツアーではないですか。まったくもって公然とルール違反しているのに、誰も取り締まらなかったことと、ブラック免税店を野放しにしているのは、同じですね」

B「それなのに、いま日本では通訳案内士制度の規制緩和を進めようとしている。もともと規制なんてないも同然だったのに。要するに、闇ガイドを容認するということですね」

A「通訳案内士法というのが、ちょっと古すぎて時代に合わない面もあります。ただ無資格ガイド問題とブラック免税店の問題は、野放しという意味では同じだけど、このしくみが温存されるのは理由があって、それはガイドが免税店からコミッションを受け取ることができるからですよね」

B「この業界は、有資格者ほどコミッションを取る団体の仕事をやりたくない人が多いので、生計を立てにくい。逆に、闇ガイドは年収1000万円台という話です」

A「でも、最近は中国の団体客は以前のように“爆買い”をしなくなってきたから、闇ガイドも前ほど儲けられなくなっていませんか? この稼業は団体客がブラック免税店で買い物してくれないと赤字になるというリスクがつきまとうので、このままいくと、彼らはいつか仕事を放り出すのではないかと思うんです。そんなことないですか?」

B「確かに、中国人はこの問題に対して相当警戒が強くなっているようです。中国の税関も厳しくなってきた。だから、私が案内する個人客は、日本人がふだん買い物するところへ連れていけ、と言います。実際、私もそういうところしか知らないので、特に困ることはありません。でも、団体客はそうはいかない。今後は中国から免税店の投資があるかもしれません」

A「そうなんですか。中国ツアーの構造として、ガイドはブラック免税店からコミッションをもらわないと、ツアー客のホテルやバス、食事の支払いができません。中国の旅行会社はほぼ一銭もガイドにお金をくれないのですから。中国では東京・大阪5泊6日のツアー代が安い時期で3500元(5万7000円)ほど。これでは往復の航空券代と中国側の旅行会社の利益だけです。だから、ガイドはブラック免税店に客を連れていき、コミッションをもらわないといけないわけです。この不幸な構図が変わらない限り、問題は解決しないと思います」
b0235153_10152447.jpg

B「そうそう、向こうではガイドは投資者です。ツアーを買ってその回収に必死ですよ」

A「なるほど、彼らはそういう投資感覚でガイドをしているんですね。確かに、中国側の旅行会社にお金を払ってツアー客をもらうケースもあるそうですから。まさにギャンブル的です。なかなか日本人には理解できないところがありますね」

B「ただこれから中国客は自分たちで旅程を組んで日本に来るようになると思います。でも、買い物はやみそうにない」

A「個人旅行になるということですね」

B「すでにそういうお客様が現れています。彼らの静かな“爆買い”は続くと思います。日本の百貨店やアウトレットが人気です」

A「結局、北京や上海のような経済先進地の人たちはそうなるのですが、いまの時代、中国の内陸都市から飛行機がどんどん飛んできているので、彼らは団体でくるしかなく、この構造は温存されていくのでしょうね」

B「だって彼らは言葉もわからないし、闇ガイド業者の言いなりですよ。まだまだ日本旅行のメインテーマは買い物です。だからこそ、日本政府は違法行為をある程度取り締まるべきですよ。法治社会の信用を守ることは日本の国益につながるはずです」

A「う~ん、それはおっしゃるとおりですね。これまで日本政府は観光客の数を増やすことばかりで、きちんとしたルールづくりを怠けてきました。さすがに2000万人時代となり、今年はそういう議論が起きてくると思います」

B「中国人観光客の多くは、自国にはない生活のクオリティや秩序など、日本に理想像を求めて来たのに、騙されて帰ったら、SNSでどんどん日本のブラック免税店問題を発信すると思いますよ。たとえ加害者は同じ中国人だとしても、帰国後、日本に通報するのは物理的に難しい。やはり国には責任がある。それはおもてなしする側が解決すべき問題でしょ」

A「確かに、ブラック免税店を野放しにしておいて、おもてなしはないですよね。基本的にはおっしゃるとおりかと思います。では、今日はこのへんで…」

昨年秋、中国の河南省の鄭州を訪ねたとき、地元で有名な麺料理(会麺といいます)の店で食事をしていたとき、給仕のおばさんから「日本ってきれいな国なんだってねえ」と言われたことがあります。失礼な言い方だけど、そのおばさんは海外旅行できるような階層には思えませんでしたが、「日本=きれいな国」というイメージは民間に広まっていると感じました。これがここ数年の中国の日本旅行ブームを下支えしていた面もありそうです。

しかし、この国のSNS文化の影響は、予測しがたいところがあります。これからは「日本=ブラック免税店」のイメージが、民間で語られるようになるかもしれません。彼らはこう思うことでしょう。「なんだ、日本も中国と大して変わらないんだね」と。

さて、ひとまずBさんの意見を支持したものの、この問題、実際に解決に向けた道のりに進むためには、ただ取り締まればいいという話でもなさそうです。なぜなら、すでに書いたように、この問題はいまに始まった話ではないからです。はっきりいえば、中国の団体観光客が解禁された2000年秋以降、我々日本人の目に見えない場所でずっと起きていたのです。

ブラック免税店問題はもうずっと前からありました
http://inbound.exblog.jp/25875949/

翌日、またBさんとチャットしました。

A「昨日の話の続きですが、この問題はいまに始まった話ではなく、すでに日本でも何度も報道もされていて、なんら進展はないんです。日本の消費者庁は外国人消費者について守るべき法律はないという立場のようです。

こうなると、“爆買い”で恩恵を受けていた小売業界やJSTO(日本ショッピングツーリズム協会)のような団体がこの問題をどう考えるかということも、解決に向けた道のりにつながるのではないかと思うんです」

B「どういうことですか?」

A「要するに、日本のショッピングの悪評判がどんどん広まり、小売業が打撃を受けるというような事態にでもならないかぎり、彼らはこの問題を無視し続けるように思う。

だから、中国の消費者が日本旅行中、消極的に非買運動を続けてもらうことが良いかもしれません。そうなると、日本側の関係者も、少し慌ててブラック免税店を駆逐しようと動き出すのでは」

B「いまの中国の観光客に不買運動は難しいですよ。環境汚染でも団結できないくらいですから。やはり、日本に行ったら買い物したいわけだし。やはりルールをつくるべき」

A「そりゃそうなんだけど、日本人の理解を越えているのは、これだけたくさん中国客が来るのだから、何もニセモノまで売って評判を落とすこともないと思うのに、なぜブラック免税店はそんなことをするのだろう? 日本人ならいいものを売れば、もっと儲かるから頑張ろうとなると思うのだけど。彼らがやっていることは、ルール以前の問題のような気がする」

B「中国では横断歩道を守らない人が多いですが、警察官が立てば、日本人以上に守りますよ。日本は法治社会なのに、この問題はなぜか矛盾している気がする」

A「なるほど。それが中国的な法に対する認識なんですね。日本人は、法というのは国民の権利や利害を守るためにあると考えていると思います。規制緩和をめぐる議論もたいていそこが焦点になる。やはり、基本的な考え方がずいぶん違いますね。中国では、法は為政者が国民を統治するための道具ですね」

B「そうしないと、秩序が乱れるからです。中国人が日本に来て社会の整然とした秩序に驚くのは、そのためです。きっと厳しく統治されているのだろうと中国人は考えるのですが、実際は違いますよね。だから、中国人はなぜ日本ではブラック免税店を取り締まろうとしないのか、よく理解できません」

A「たぶん、自国民でない人たちだからかもしれませんね。彼らが自国民に直接害を与えているわけではないということもある。権威主義体制の中国では、為政者は外国人が自国で犯罪を犯しているのを放置するなんて考えられないとなるのでしょうかね」

B「でも、ルールはやはり必要です。闇ガイドの問題だって、このまま規制緩和されてしまうと、いま真剣に通訳案内士の資格を取ろうとする若者、必死に仕事を探している通訳案内士もそうですが、日本旅行に夢を見ている中国の観光客が可哀想ですよ。この問題で、暗躍しているのは中国人だけじゃないですよね」

A「個人的には、これだけ外国人旅行者が増え、さまざまなニーズが生まれているので、規制緩和はやむをえないと思っています。通訳案内士ほど高度な語学力がなくても、外国人を接遇する場面は増えているからです。ただし、規制緩和する以上、外国人を添乗するだけの仕事でも、団体客のガイドは監督官庁に登録させるようにすべきだと思います」

B「登録も必要ですが、やはりインバウト専門の苦情処理窓口と日本国内のメディアの力が必要です。取り締まるべきところは取り締まらないと。旅行者はいつか帰国してしまうので、圧倒的に弱者です」

A「そうですね。せめて苦情窓口は必要です。ただ現状でいえば、資格うんぬんの前に、登録させないと。いま誰がどこで何をやっているか、まったく監督官庁もつかんでいないため、取り締まりも何もできないですから。

昨年末、ある中国系免税店は自衛のためでしょうか、中国客を連れてくるガイドに「労働許可証」のない者には入店させないと通達を出したと聞いています。これはガイド資格以前の話ですが、実態の把握のためにも登録は最低限必要です」

B「いったん登録したら、観光客や関係機関に周知させ、ときどきチェックも徹底しないと、また無法状態。「杀一儆百」(少数を厳しく罰して見せしめにし、多数の人に警告すること。一罰百戒)。いまはこれがいちばん即効性があると思いますよ。検挙、検挙、また検挙…」

A「いかにも、中国的だなあ。ヨーロッパの一部では、確かにツーリストポリスがいて、現場の問題処理にあたります。ただ、中国団体客の問題となると、彼らもなかなか難しいのでは。まず言葉の問題があります。英語が通じればいいですけど。オーストラリアのような観光国でも、問題解決は難しそうです」

※澳洲“免税”店与旅行社勾结 专坑中国游客(新华国际 于 2016-05-29)
http://www.wenxuecity.com/news/2016/05/29/5244163.html
オーストラリアの免税店でも、旅行会社とグルになって中国客を陥れているという報道。

B「ブラック免税店の問題は、日中両国のずる賢い人たちが関与しているので、行政との知恵比べでしょう。日本の法治が問われていると思います。私は思うんですが、今回の中国のメディア報道や駐日中国大使館の苦情などを受けて、日本の関係機関は「丢面子」(メンツを失う)を感じていないのかしら? それとも故意に無視している?」

A「まだ十分に感じていないかもしれませんね。故意でもあり、むしろメンドウごとに関わりたくないという感じではないでしょうか。所詮、外国人の問題だからと逃げているのです。だからこそ、訪日中国客が消極的に非買運動することが、いちばん彼らを困らせるはず。なぜなら、“爆買い”がなくなれば、結果的に、中国人ツアーは減るほかありません。昨日書いた理屈で、在日ガイドが赤字になるような仕事は投げ出すため、中国側の旅行会社が送客しようとしても、受け皿がなくなるのですから。そうなると、これまで拡充した日中間の航空路線も縮小し、小売業にも影響が出る。そうなると、その原因をブラック免税店に求める動きがようやく起こるかもしれない」

B「わからないではないけど、やはり法治社会の日本の矛盾を関係者に注目してもらうようにすることも大事。孟子曰く『まず仁義が先にあっての利』です。私の見た日本の旅行業界には、利を先に求める人が多いようです。悲しいなあ」

A「人は利で動くものですからねえ。だからこそ、法という縛りが必要ということですね」

B「同感同感」

A「う~ん、まあそうかもしれないけど、今日はこのへんで」

結局、ふたりのチャットの内容は平行線をたどっているように思います。中国人の彼女からすれば、外国人による違法行為を野放しにすることは、日本政府のメンツに関わるはずで、そこをメディアの力や中国政府の苦情によって彼らのメンツを失わせることで、行動を促すことが問題解決になるという判断のよう。一方、ぼくにはどうやら日本側はそんなことでメンツを痛めたりすることもなく、むしろ日本国民に実害がないうちは、勝手におやりください。実害を受けているのは、中国の皆さんでしょう。そういう冷めた認識、あるいは底意地の悪さを感じないでもない。

やはり、日本人からすると、訪日旅行の周辺で起きている中国人のルールを無視したギャンブル的なやり方は、まるで「戦後のドサクサ」の時代を生きている人たちのようにも見えてしまいます。なぜ彼らはそこまでやるのか。こんなやり方では長く商売できないだろうに…。中国側の良識ある関係者らも、実は同じことを話しています。でも、結局のところ、中国人にはそのようなやり方しかできない、と彼らも同胞の姿をみて嘆いている。中国側にも問題の所在を理解している人たちもいるのですが、それを変えられない。

まあそんなことで、この問題はいろいろな見方ができるわけですが、彼女に言われた「それはおもてなしする側が解決すべき問題でしょ」という指摘から、我々も逃げることはできない道理はあるはずです。この数年間、中国客にたくさん買い物をしてもらうために、日本の小売業界を中心にしたさまざまな業界や自治体まで含め、あの手この手で中国市場も対応してきたのに、ブラック免税店問題は知らぬ存ぜぬでいるわけにはいかないと思うからです。

ひとまず問題の所在が社会に広く理解されないと、解決に向けて動き出すことはなさそう。だから、まずはそこから始めるしかないと思う次第です。

【追記】
数日後、実際にそれらの免税店を訪ねてみました。

中国メディアが名指しした新宿のブラック免税店を見に行ってみた
http://inbound.exblog.jp/25890462/

みなさんはこの現状をどう思いますか?
[PR]

by sanyo-kansatu | 2016-06-04 18:31 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 04日

ブラック免税店問題はもうずっと前からありました

前回、日本のブラッグ免税店問題に関する中国報道を紹介しました。

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/

この記事を教えてくれたのは、日本に住む通訳案内士の中国女性です。彼女はふだんは翻訳の仕事をするかたわら、通訳ガイドの仕事も最近は増えているようです。団体客をガイドすることはまずなく、ブラック免税店のこともよく知らなかったせいか、この報道を見て義憤をおぼえたようです。

でも、こうした問題は以前からずっとあったことでした。

日本のメディアも数年前から報じています。

たとえば、かの文春砲もすでに放たれていました。
b0235153_13264325.jpg

中国人が中国人をボッタクリ “日本観光”の醜悪現場 密着ルポ(週刊文春2013.3.7)
http://hello.ac/guide/bunshun2013.pdf

さらには、その前年にNHKも報じています。

NHK総合テレビ<追跡!真相ファイル>「中国人観光客訪日格安ツアーのカラクリ」(2012.8.21)
https://www.youtube.com/watch?v=jLeQfCrZg80

ある語学学校の経営者も、無資格ガイドに絡むこの問題を長く追及しています。

<「ALEXANDER & SUN」免税店」脱税事件>の真相と深層
https://www.facebook.com/Helloguideacademy/posts/433254933447543

一方、中国側からこの問題が初めて出てきたのは、おそらく在日華人紙「東方時報」2009年6月25日が報じた、悪質な旅行会社とガイドが結託したボッタリ免税店への上海人団体客の連れ込みの実態だったと思います。そう、2008、9年当時は、上海や北京などの団体客がブラック免税店に連れ込まれていたのです。

ボッタクリや無資格ガイド問題も浮上。日中双方が解決すべき中国人ツアーの課題
http://inbound.exblog.jp/iv/detail/?s=16998604&i=201111%2F20%2F53%2Fb0235153_13233726.jpg

こうした報道をうけ、ぼくも以下のような記事を書いたことがあります。

中国人の日本ツアーはメイド・イン・チャイナである(2011年)
http://www.yamatogokoro.jp/column/2011/column66/column_02_4.html
http://www.yamatogokoro.jp/column/2011/column68/column_02_2.html

この問題の語り方は、立場によって変わってくるところがありますが、ぼくの場合、当時は東日本大震災直後で、訪日客が大きく減るなか、それでも日本に来てくれる中国客に対して、せめて日本国内では日本人と同じように消費者として最低限度の保護すべきだという思いがありました。その頃の訪日中国市場はいまの5分の1の規模だったのです。また、中国客に対する免税店ボッタクリ問題は、2000年代に入るとすでに香港やタイで頻発していて、ツアー客とガイドが殴りあうとか、免税店に行くのを拒んだ客を置き去りする事件などがずいぶん報じられていたからです。こういうことが日本で起きるのは恥ずかしい。そう思っていたのです。

これらの騒動から、中国政府は2013年に「新旅游法」を施行し、この問題の解決にあたったはずでしたが、結局もとの木阿弥に近い結果で終わりました。というのも、本来ツアー客の望まない免税店への連れ込みをした旅行会社は罰則を受けるという内容だった「新旅游法」なのですが、中国の旅行会社はその後、消費者に免税店への連れ込みをやめる代わりにツアー代金を上げるしかないが、それがいやなら連れ込みを承諾するという誓約書にサインを求めることにしたのです。

その結果、中国の消費者は、ツアー料金を安くするためには、免税店への連れ込みはやむ得ないという従来どおりの姿を選んだのです。中国では国内旅行でも、お土産のコミッションでツアー代が安くなるという仕組みは同じで、広く知られているため、それが無理なく受け入れられてしまったのです。逆に、ツアー代を安くしてくれたのだから、免税店での買い物も少し付き合わないとガイドさんが困るだろうというような感覚も彼らにはあるのです。

だからといって、法外な金額でニセモノをつかまされるのは許せないというわけで、今回の報道となったのでした。

中国「新旅游法」は元の木阿弥―キックバックを原資としたツアー造成変わらず
http://inbound.exblog.jp/24166349/

こうして結局のところ、問題はなんら改善されることもなく、月日だけがたちました。そのうち、上海や北京などに住む経済先進地域の人たちは、日本を個人ビザで訪れるようになり、ブラック免税店に連れ込まれることはなくなったのですが、いまでは内陸都市の地方客が同じ目に遭っているというわけです。時代を変えて、この問題は温存されているのです。

そんなわけで、個人的には、この問題をまじめに考えるのが少し馬鹿馬鹿しい気もして、2011年当時のような「中国客を消費者として保護すべき」と声を上げる気分にはなれないところがあります。

とはいえ、今回の中国報道が指摘する日本政府の不作為については、決してこのままでいいとは思えません。

日本側にはおそらくこんな言い訳があるかもしれません。もしブラック免税店の摘発を本気で行うと、彼らからのコミッションで支えられている中国の団体ツアーが成立しなくなり、市場の混乱が起こりかねない。そもそも中国の旅行会社が不当に安いツアーで客を集めるため、日本国内での宿泊や交通、食事に至るまで、そのすべてを日本側の手配会社が負わなければならないわけで、そこに無理があるのだと。日本側としたら、あえてそのモデルをぶち壊すことで、予測不能な事態を引き起こすことはなるべく避けたいし、中国側の航空・旅行業界もそれを望んでいるとは思えない。

昨年くらいから中国発の日本路線が驚くほど増え、国内の地方空港への運航も拡充しているなか、こうした動きを止めたくないとの思いは両国の関係者に共通しているはずです。その実、日本側の本音は、自国の消費者にまったく影響のない世界だから、わざわざ手をつける理由は見当たらないというものでしょうけれど。

今日の中国団体客の状況は以下を参照してください。

中国「爆買い」の主役は内陸都市からの団体ツアー客
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/010400002/
中国沿海都市から新タイプの個人客、ニーズが多様化し新たな商機生まれる
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/011800003/
東アジア航空網に新時代、訪日客増大の本当の理由は地方路線の大拡充
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/022600007/

こうしたなか、中国側では高額商品の「爆買い」の失速が伝えられています。

コラム:失速する中国人観光客の「爆買い」、ブランド品を直撃(ロイター2016年 05月 18日)
http://jp.reuters.com/article/column-china-shopping-idJPKCN0Y90CX

であれば、コミッションモデルもそのうち成り立たなくなるのではないか。そうすれば、ブラック免税店も消えていくはず…。そんな安易で希望的な観測も日本の監督官庁にはあるかもしれません。

おそらく中国側はそれらを承知のうえで、自国民の“爆買い”にいかに自制を効かせられるか、あの手この手で考えているのでしょう。確かに、状況はかなり進みつつありそうです。

中国が爆買い客に課税強化 空港で化粧品など廃棄も(Newsポストセブン2016.04.20)
http://www.news-postseven.com/archives/20160420_404278.html
アングル:中国が「国内爆買い」喚起、海南島を免税天国に(ロイター2016年 06月 1日)
http://jp.reuters.com/article/angle-china-duty-paradise-idJPKCN0YM028

であれば、今回の報道もこの問題を自国民がどう受けとめるかを探る観測気球のようなものかもしれません。はたしてブラック免税店問題は今後、中国側でどれほど盛り上がるでしょうか。それが訪日旅行市場になんらかの影響を与えることがあるのか。いつものことながら、中国の消費者の本音と建前、政府の顔色をうかがいながらも、そこに面子が絡むという独特の反応の行方を眺めていくほかありません。

ブラック免税店日中問答「それはおもてなしする側が解決すべき問題でしょ」
http://inbound.exblog.jp/25876810/
[PR]

by sanyo-kansatu | 2016-06-04 13:33 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 01日

トリップアドバイザーで和風エンターテインメントが人気の理由

今年3月末に配信された世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の外国人による東京の人気観光地ランキングをみると、2位にサムライミュージアムが堂々ランキングされています。

2015年にトリップアドバイザーの日本の観光地に寄せられた口コミを分析(2016.3.31)
http://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/03/20160331_TripAdvisorPressRelease.pdf

※このランキングには、トリップアドバイザ上の「観光情報」に登録されている旅行者が訪れるスポットを対象とし、(料理、お茶などの)教室やガイドツアー(通訳ガイドが企画したプライベートツアーなど)、地下鉄のような移動手段等はランキングから除いているそうです。

実は、京都府のランキングでも、サムライミュージアムに類似したスポットであるサムライ剣舞シアターが2位になっています。

こうしたことから、以前、新宿歌舞伎町の中にあるサムライミュージアムを訪ねた話を書きました。

トリップアドバイザーで人気のサムライミュージアムとふくろうカフェを覗いてみた
http://inbound.exblog.jp/25702798/

サムライミュージアムは、2015年7月にオープンしたばかりの施設で、館内には日本刀や鎧兜の展示があり、鎧兜を身につけて撮影できるスタジオがあります。外に広がる喧騒の歌舞伎町とは違い、館内は静寂なスポットだったことが印象に残りました。やはり、東京を訪れた外国人旅行者が必ず向かう最強デスティネーションである富士山と箱根へのゲートウェイとしての新宿というロケーションが圧倒的な強みになっていると思います。

サムライミュージアム
http://www.samuraimuseum.jp

では、なぜトリップアドバイザーのユーザーである外国人の間で和風エンターテインメントが人気なのでしょうか。

上記リリースを配信したトリップアドバイザーの広報担当者に聞きました。以下、その一問一答です。

-トリップアドバイザーに口コミを書く人たちの国籍または欧米、アジアなどの比率はどのくらいですか? やはりまだ欧米の割合が高いですか?

「具体的な比率は出していませんが、やはり欧米が多いです。アジアも近年ユーザーは増えてはきていますが、「口コミを書く」という文化はまだまだ欧米の方が主流のようです」

なるほど。だとすれば、和風エンターテインメントは、主に欧米の旅行者から支持されているといえそうですね。

-これらのスポットに関する口コミはどんな内容が多いのか。

「「ショーとして面白い」「見る価値のあるエンタテイメント」「日本の文化を体験できて興味深い」など」

これは誰もが思い浮かべる月並みなコメントにすぎない気もしますが、東京都のランキングをみると、3位は浅草、5位は明治神宮、6位は両国国技館、7位に東京都江戸東京博物館、8位は八芳園、9位はホテルニューオータニ庭園といった具合に、ほぼ和のスペースが選ばれていることからも、彼らにとって「日本の文化を体験」することが最重要関心事であることがあらためてわかります。

-和風エンタメはいつ頃から人気なのか? 人気ある施設に共通する特徴などあるか。

「ご指摘の通り、サムライミュージアムは最近非常に人気です。和の文化を体験できるところが、口コミで徐々に広まってきた面もありますが、同時にインバウンドの高まりを受け、全国的に和の体験を提供する施設自体も増えてきているように思います。

そういった施設は、上手にトリップアドバイザーのようなサイトやSNSを活用してインバウンド旅行者にアピールする術を知っているように思います。

人気のある和のエンタメ施設は外国人旅行者の「日本の文化を体験したい」というニーズを上手に汲み取って、その体験を提供しつつ、情報発信が非常に上手であると感じます。また、英語が話せるスタッフがいて、きちんと説明をしていることも重要なポイントのようです」

―彼らは情報をどのように発信しているのか。

「どんなに魅力的な施設であっても、そこがトリップアドバイザー上に掲載されていなければ、ユーザーの目には触れません。

たとえば、サムライミュージアムは、オープン当初からトリップアドバイザー上に施設の所在地、オフィシャルサイトへのリンク、メールアドレス、営業時間などの詳細を掲載し、館内ではトリップアドバイザー上に掲載されていることを告知しながら、口コミ投稿を促しているのだと思われます。

トリップアドバイザーのような口コミサイトやFacebook、InstagramのようなSNSは、いまや海外旅行する人たちにとって欠かせない情報源になっています。東京を訪れる外国人旅行者が自国で、あるいは訪日してホテルの中でリサーチをしているときに、しっかり目に留まるようにするには、まずはSNSに施設を掲載し、口コミを集めることが必要になってきます。

以下は、サムライミュージアムがFacebookとinstagram上で来場されたお客さんの写真を掲載したりして、外国人が楽しんでいる様子を積極的に発信している例です」
b0235153_1014719.jpg

https://www.facebook.com/samuraimuseum.jp/
b0235153_10141814.jpg

https://www.instagram.com/samuraimuseumtokyo/

こうしたことは、いまや施設の集客を図るうえで常識となっているような気もしますが、どこまで手を抜かず、徹底的にやるかということも大事なのかもしれません。やはり外国人旅行者の目を惹きつけるには、写真のインパクトは大きいですね。Facebookに載せられていた、西洋人の小さな男の子が兜を被っているような写真はとてもかわいくて、ぜひ行ってみたいとファミリー旅行者たちの心をつかみそうです。

-ところで、トリップアドバイザーの外国人による都道府県別口コミ数トップ3は東京、京都、大阪で、全体の58%を占めるそうです。その理由をどうお考えですか。

「東京は言わずもがな世界の大都市のひとつ、日本の首都であり、やはり日本を最初に訪れる人は東京に来るのだと思います。

そして東京から次に足を延ばす場所として京都があります。

また、東京にしか行かなかった2回目以降の訪問者は、大阪・京都と、関西を中心に旅行する人が多いのではないかと思います」

訪れる数がそのまま反映しているような結果であることは仕方がないですが、少し残念ですね。でも、このリリースには、地方のランキングも出ていて、興味深いです。
b0235153_1017459.jpg

[PR]

by sanyo-kansatu | 2016-06-01 10:17 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 05月 30日

中国人は自国の観光客マナー問題を煽る日本のテレビ番組に耐えられない!?

ある知り合いから、中国のSNSである微信(WeChat)上の一部で、5月23日に放映された「直撃コロシアム!ズバッとTV」(TBS)の「中国人50人と激論 酷すぎるマナー違反」が反響を呼んでいると聞きました。

直撃コロシアム ズバッとTV (TBS)
http://www.tbs.co.jp/chokugekicolosseum/

同番組では、近年急増している中国人観光客が日本で起こしているという驚きのエピソードが紹介されたそうです。

中国人観光客のマナーが世界中で問題となっていることは広く知られていますし、中国政府は海外旅行者向けに「やってはいけない行動」指南書を作成しています。そのせいか、以前ほどマナー違反は減っているという声もあります。
b0235153_14251367.jpg

たとえば、これは九州に多く寄航している中国発クルーズ客船の出発港である上海呉松口国際クルーズ港ではためく標語です。出国する自国民に対して「文明相伴 平安旅途 帯回美好印象 留下文明形象(マナーを守り、平安な旅路を。良い印象を携え、残して帰りましょう)」とPRしています。

しかし、この番組では以下のような「マナー違反」を挙げたそうです。これらの画像は、上記SNSから取りました。
b0235153_14253932.jpg

b0235153_14255916.jpg

b0235153_14261463.jpg

b0235153_14264594.jpg

ここに出てくる事例は、中国の事情を知らない一般の日本人にはビックリ仰天でしょう。でも、ある程度事情を知る身としては、まあこんなことよくありそうな気がするし、確かに呆れちゃうとはいえ、言うほど深刻なものには思えないのですが、どうなんでしょう。やっぱり、許せませんか? 実際はもっとまずいこともいろいろあるけど、そっちは触れられていない気も。いえ、余計なことを言うのはやめましょう。

この種の番組を観るのは疲れるので、とてもYOU TUBE動画の内容をチェックする気にはなりませんでしたが、気になるのは、在日中国人を50人集めて意見を述べさせたという番組放映後、中国のSNS上で以下のようなエントリーが立ったことです。

难忍|在日中国人都在骂的日本某电视台(中国人をののしる日本のテレビ番組に耐えられない!) 原创 2016-05-23
http://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MjM5NDUzNjIyNA%3D%3D&mid=2656679608&idx=1&sn=f12482ad9c33603895524eee9e45ad1d&scene=2&srcid=0523ZTjQ3KYTPM4XjsLHlsGE&from=timeline&isappinstalled=0#wechat_redirect

この書き込みをめぐって、実際、いろんな意見が出ているようです。正直、こちらもあまり読む気にはなれないのですが、なぜ中国人たちはそんなに苛立っているのでしょうか。その理由について、少し考察してみたいと思います。

その前にひとこと。番組で紹介された「マナー違反」のエピソードのひとつは、ぼくが去年の夏に書いた以下の都内某焼肉屋で中国人観光客が見せた光景によく似ています。

焼肉食べ放題「味仙荘」は今日も中国ツアーバス客であふれていました(2015年 08月 01日)
http://inbound.exblog.jp/24747719/

以下に出てくるエピソードなんて、テレビ局にパクられちゃったかな!? という気もしないではありません。…冗談ですよ。

中国内陸客の増加がもたらす意味を覚悟しておくべき(2015年 09月 01日)
http://inbound.exblog.jp/24845817/

上記の記事の最後で、ぼくはこう書いています。

「安いツアーに参加し、バスに乗って団体旅行しているような人たちが大半である中国の内陸客は、言ってみれば、10年、15年前の上海人であり、北京の人たちといえるでしょう。中国の発展は地域によるタイムラグがあるためで、沿海部の人たちが少しずつ成熟してきても、内陸部の人たちが後から来るようであれば、Oくんのいう「マナーの欠けた中国人」イメージは簡単には消えることはなさそうです。

そもそも銀座の百貨店を訪れるような個人客とバスツアーの団体客には、その行動様式や消費活動などの面で大きな落差があります。今後ますます中国内陸客が増えることを想定し、受け入れ側もこの落差を受けとめる覚悟が必要だと思います」。

そうなのです。いま日本には中国の内陸都市からの観光客が増えているのです。内陸都市は上海や北京などの沿海都市に比べ、経済発展が遅れており、そこに住む彼らは初めての日本旅行組が大半です。そのため、マナーに問題があるのも致し方ない面があるのです。こうした背景については、以下を参照ください。

中国「爆買い」の主役は内陸都市からの団体ツアー客
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/010400002/
中国沿海都市から新タイプの個人客、ニーズが多様化し新たな商機生まれる
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/011800003/
東アジア航空網に新時代、訪日客増大の本当の理由は地方路線の大拡充
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/022600007/

一方、番組に出演した中国人の多くは、こうした内陸都市に住む中国人とは違って、ある意味「意識高い系」の人たちです。日本社会のルールもそれなりに精通しているはずです。そのため、彼らは同胞がこうして小バカにされると、自分も同じように思われてしまうのではないかと焦り、憤りを隠せなくなるのでしょう。

ただし、日本に住む中国人の中には、自国に対する自虐的で偽悪的な言動を取る人たちもいます。この複雑な心理は、なかなか一筋縄には説明できませんが、在外中国人にはよくある無国籍者的な態度のひとつです。中国の体制や政府に対する批判が背景にあります。

そして、彼らが抱えるひときわ高い自尊心の問題があります。これは中国人特有の面子に関わるものです。さらにいうと、「新興国メンタリティ」というべきものもある。これは中国に限らず、短期間で発展した国の人たちによく見られるものです。ご本人の生活は豊かになったのでしょうけれど、社会における富の偏りは激しく、自国及び自国民がしばしば見せる困った現実が、自らの自尊心とつりあわなくなることが多い。今回のように、公開の場で笑いものにされてしまうと、過去の自分を思い出すところもあり、その傷がうずき、苛立ってしまいます。いち早くかつての姿から抜け出したつもりの本人としては、忘れたい過去なのです。この感覚自体は理解できないものではありません。

実は、これも昨年起きたことですが、ある在日中国人が都内でタクシーの乗車拒否にあったことで、SNS上で大騒ぎした一件です。ここにも最近の中国人の自尊心問題がよく表れています。

中国富裕層の壊れやすい自尊心の取り扱いには要注意!(2015年 09月 03日)
http://inbound.exblog.jp/24851796/

こうしたことから私たちは、ある教訓を読み取らなければならないと思います。

中国人の壊れやすい自尊心の取り扱いに要注意! です。

とはいえ、こうした彼らの訳あり内面事情は、中国とは縁のない一般の日本人には理解しにくいことでしょう。最近、一部の人たちが中国人の訪日旅行の志向が「モノからコトへ」変わってきたというようなもっともらしいことを言っています。確かに、2000年に解禁された中国人の訪日旅行はすでに15年の月日がたち、先行した上海や北京の人たちはずいぶん洗練されてきたことは事実です。しかし、繰り返しますが、最近は内陸部からの中国人観光客が増えていることで、国際的な常識の身についていない人たちも確実に増えています。これが中国人のマナー問題を複雑にしているのです。

ですから、メディアが中国人のマナー問題を扱う際、中国社会というのは、出身地や階層などにより、人間の落差が日本人の想像以上に大きいことを前提とすべきです。ひとからげに良し悪しを議論するのではなく、なぜそうなるかを視聴者に理解させることが必要ではないでしょうか。

ちょっと優等生すぎますか。…でも、この種の話題で口論することほどばかばかしく、後味の悪いものはないからです。その意味では、わざわざこういう番組を企画する日本のテレビ局はいかがなものか、という声が出るのももっともかと思います。たぶん、中国のSNS上では、それが話題になっていると思われます。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2016-05-30 15:52 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(6)
2016年 05月 22日

「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」を続けてはいけない理由

今日もこんな記事が報じられています。要するに、現在の民泊市場の実態は「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」だということです。

民泊 35自治体、緩和せず フロント設置義務付け(毎日新聞2016年5月22日)
http://mainichi.jp/articles/20160522/ddm/041/010/126000c

個人宅を旅行者に有料で貸す「民泊」について、国が今年4月からフロント(玄関帳場)を設置しなくても営業許可が得られるよう規制緩和したにもかかわらず、47都道府県、20政令市、東京23区の約4割に当たる35自治体が今も条例でフロント設置を義務付けていることが、毎日新聞の調査で分かった。このうち都内の9区を含む17自治体は近隣トラブルの懸念などから当面は条例改正しないとしており、民泊の需要が高い都心部などで普及のめどが立っていない実態が浮かぶ。【熊谷豪、黒田阿紗子】

政府は、今後さらに民泊の規制緩和を進める構えだが、近隣トラブルの増加や既存の旅館・ホテルの反対を懸念して拡大に慎重な自治体が、国に歩調を合わせるかどうかは不透明だ。

空き家や空き部屋を利用した民泊は、これまで事実上放置されていたが、国は外国人観光客の増加などを見越したルール化を検討。4月から民泊を旅館業法が定める「簡易宿所」と位置付けて営業できる場所などを制限する一方、一般住宅にはないフロントの設置は許可要件から外すことを決め、営業許可を出す自治体に必要な条例改正などを促す通知を3月末に出した。

しかし、厚生労働省のまとめや、毎日新聞の5月中旬の調査によると、12道県、13政令市、都内の10区が、条例でフロント設置を求めていた。このうち約半数の18自治体は条例改正や弾力的な運用で要件を緩和する意向だったが、残りは義務化を当面続けるとし、9自治体(2県6市1区)が「条例改正するか検討中」、8区が「条例改正しない」と答えた。フロント設置義務があると、現行の無許可営業の民泊のほとんどは許可を得るのが難しいとみられる。

国は6月にも、住宅地での営業も認めるなど民泊のさらなる規制緩和策をまとめる方針で、大阪市などは「住民の安全が保てるのか、国の動向を見たい」としている。一方、世田谷区は「良好な住環境を悪化させる必要はない」、渋谷区は「民泊利用者の安全確保にも必要な規制だ」と指摘。台東区は国の通知と逆行する形で、3月末に条例改正してフロント設置要件を加えた。

また、都内各区に4月以降に民泊を簡易宿所として許可したケースがあったか聞いたところ実績はゼロだった。

■「無許可のまま営業が得」 条例で要件、改修の負担重く

4月から旅館業法に基づく合法的な営業が認められたはずの民泊だが、許可権限を持つ自治体の条例などが壁になり、違法営業が依然として横行している。東京都心部では、慎重姿勢を崩さない行政に業者も申請を尻込みし、民泊の「解禁」にはほど遠いのが実情だ。

「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」。今年3月から渋谷区の住宅地にある2階建て集合住宅(計9室)を仲介サイト「Airbnb」に登録した男性(35)は、違法を承知で旅行者に部屋を貸している。

シェアハウスだった物件を丸ごと借り、民泊を始めた。今月、所有者に促され、要件が緩和された「簡易宿所」の許可申請の相談に保健所に行った。だが、区はラブホテルの乱立を防ぐため、フロントの設置や会議室、食堂の整備など、条例で独自の要件を課している。これらを満たすには高額な設備投資が必要だ。窓口の職員からは「最低でも3カ月はかかる」「まずは近隣住民を集めて説明会を開いて」と言われ、申請をあきらめた。

「最大20人が集団で泊まれる」と人気の物件は、月の8割以上が予約で埋まり、許可が出るまで営業を中止するのは痛手という。男性は「お金のある大企業でないと民泊営業はできなくなるのでは」と悲観的だ。

浅草などの観光地を抱える台東区の条例も、3月の改正でフロント設置と営業中の従業員常駐が義務化された。マンションや集合住宅での民泊を事実上認めない措置だ。

区によると、2014年度に4件だった無許可民泊に関する苦情・相談は、15年度は25件に増えた。今もごみ捨てのマナーや騒音などの苦情が相次いでおり、斎藤美奈子・生活衛生課長は「住民の生活環境を守る対策が不十分。国は安全安心の確保を先にすべきだ」と指摘する。

ただし、こうしたトラブルは、民泊を合法化すればさらに増えるとは限らない。1月から国家戦略特区として独自の民泊制度を始めた大田区は、事前に近隣住民の理解を得ることを努力義務にした。今月17日までに一戸建て6軒とマンション8棟(30室)の計14物件が認定を受けたが、うち12物件を管理する業者によると、近隣からの具体的な苦情はないという。【黒田阿紗子、早川健人、柳澤一男】

フロント設置を義務化している自治体と今後の対応(○は条例改正などで要件緩和予定、△は検討中、×は改正予定なし)

<都道府県>
北海道○
群馬県○
神奈川県○
新潟県△
岐阜県○
愛知県○
三重県○
奈良県○
島根県△
徳島県○
高知県○
宮崎県○

<政令市>
札幌市△
仙台市△
さいたま市○
横浜市△
川崎市○
新潟市○
静岡市○
名古屋市○
京都市△
大阪市△
堺市○
北九州市△
福岡市○

<東京23区>
千代田区×
中央区×
新宿区×
文京区×
台東区×
大田区△
世田谷区×
渋谷区×
杉並区○
豊島区×


「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」。

これは、前にも言いましたが、中国人ツアーのガイド問題と同じです。今後規制緩和されるにせよ、現行においては違法となる就労資格や通訳案内士資格がなくても、ばれなければ気にせずガイドを続けている人たちが多数派を占めている問題のことです。

気になるのは、後者(中国人ガイド)の場合は、一般の日本人の預かり知らない場所で、よくわからないまま起きていることなのでピンとこない話だとしても、民泊の実態はいずれ広く一般の日本人の目にも明らかになると思われることです。

「民泊」の問題は、結局「非居住型」をどうするかにある
http://inbound.exblog.jp/25811104/

毎日新聞の調査のように、民泊の需要の高い東京などの大都市圏の自治体ほど、政府の規制緩和を受け入れようとしない背景には、「非居住型」民泊の増加が地元にもたらすであろう問題を避けたいと考えているからでしょう。もっとも、すでに新宿区や渋谷区などでは、無許可民泊が相当数あることがわかっている以上、規制緩和を受け入れないと言っていても、あまり意味がないともいえるわけですけれど。これらの区では、現状の市場をどう管理するかが問われています。

23区内でAirbnb物件が最も密集している新宿区が無法地帯になっている?
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/04/12/083740

地方自治体の取り組みとしては、京都市の事例が知られています。ただし、なかなか難しい問題もありそうです。なぜなら民泊サイトは海外に拠点があるからです。詳しくは以下をご参照ください。

外国の民泊仲介サイトに無視された「京都市民泊実態調査」
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/05/10/120000
違法民泊退治!京都市長・市議会あげての口コミ介入に成果?
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/05/12/120000

でも、もしこのまま何も手を打たずにいると、民泊のホストたちに対する世間の非難がいずれわき起こる日が来るかもしれません。なぜなら一般の地域住民は、小売店や飲食店の関係者とは違い、外国客との間に利害関係はないからです。彼らを受け入れなければならない理由はないのです。にもかかわらず、ホストたちが近隣住民の許可も得ず、「非居住型」民泊を始めたとしたら、いろんな声が出てくるのは当然でしょう。

違法民泊の監視は「近隣住民・宿泊者等からの通報」に頼らざるを得ない?
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/04/23/103713

これが未許可民泊の実態だ! 部屋をこっそり貸し出す入居者と管理会社の攻防を追った(産経新聞2016.5.2)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1605/02/news045.html

懸念するのは、こうした騒ぎが飛躍して、こんなことなら、もうこれ以上外国人観光客なんか誘致しなくてもいいではないか、という論調すら生まれるかもしれないことです。日本で多くの買い物をしてくれる外国人観光客なのだから、少々気になることはあっても歓迎すべきだろうとの国民的なコンセンサスが、これまではある程度共有されていたと思われますが、それが変わる可能性もあると思うのです。これは本来のインバウンド振興の意義からいって大変残念なことです。

※ぼくの考える日本のインバウンド振興の意義については以下のとおり。
戦前期も今も変わらない外客誘致の3つの目的(このブログの目的その4)
http://inbound.exblog.jp/22361086/

さらに別の視点でも、思うことがあります。この記事には触れられていませんが、そもそも地方では民泊の緩和よりも先にすべきことがあるのでは、と思います。

それは、地元旅館の外客受入を促進するための取り組みです。

以前、本ブログでも書きましたが、大都市圏のホテルをはじめとした宿泊施設の客室稼働率は高くなっていますが(それゆえ、民泊需要も高まっている)、地方に目を転じると、それほどでもないですし、旅館に関しては、おそろしく低い稼働率となっています。
b0235153_16145042.jpg

※2015年の全国の宿泊施設タイプ別の客室稼働率は、シティホテル(79・9%)、ビジネスホテル(75・1%)、リゾートホテル(57・3%)、旅館(37・8%)。加えて、都道府県別客室稼働率も見てください。地方によって稼働率が相当違います。

都道府県別延べ宿泊者数(2015年)
http://www.mlit.go.jp/common/001131278.pdf

中国人の旅館買収には理があり、背景には業界の長期低迷がある
http://inbound.exblog.jp/25808051/

なぜこうなるかという理由として、地方の場合、特に旅館業者らの間で、外国人を受け入れたくないという意向が未だ強いことが考えられます。ですから、このネット予約時代でも、外客も利用可能な宿泊サイトに登録していない施設も多そうです。民泊市場の急拡大は、AirBnBをはじめとしたマッチングサイト(事実上の予約サイト)がなければありえなかったことです。本当は地方の旅館こそ、宿泊予約サイトに登録すべきなのですが、そういったモチベーションがあまり感じられないケースが多そうです。いやむしろ、そんなことをして外国人が来られたら困るとすら考えている可能性があります。

ですから、地方では民泊を推進する前に、既存の旅館を外客に利用してもらうための手立てや支援策を打つべきだと思います。そうでないと、本末転倒の話だからです。自治体の関係者は、民泊市場が急拡大しているいまこそ、地元の旅館業界に働きかけて、外客の受入を促進すべきではないでしょうか。

旅館であれば、民泊の規制緩和でも問題になっていることなど、当たり前ですが、最初からクリアしています。こうした既存の施設をどう活用するかという議論ももっと必要だと思います。

【追記】
そんなことを思っていたら、6月に入り、こんな話になってきました。AirBnBが近隣問題の解決に向けて動き出そうとしたようですが、一方で政治的にはかなり厳しい裁定が下りそうなのです。

Airbnb、近隣民泊への苦情報告ツールを公開(2016.6.1)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1606/01/news095.html

民泊ビジネス終了か?「民泊180日以下」で閣議決定(2016.6.3)
http://airstair.jp/minpaku_180/

さあ、これからどうなるか。民泊推進派のため息が聞こえるようです。でも、もう少し状況を見ていきましょう。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2016-05-22 16:18 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 05月 22日

インド人観光客が増えると、日本のインバウンドはどう変わるだろう?

今朝、ネットで以下の報道を知りました。

観光局、インド事務所開設へ=12億人市場で訪日客誘致(時事通信2016/05/21)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016052100174&g=eco

訪日外国人旅行者の増加に取り組む日本政府観光局(JNTO)が今年度中にインド事務所を開設することが21日、分かった。高度経済発展を続けるインドでは近年、中間所得層が急増。人口12億5000万人を抱え、今後も海外への旅行者が増え続けるとみられるインドを「重点市場」と位置付け、日本の魅力をアピールして観光客誘致に力を入れる。

インド観光省によると、2014年に海外を訪問したインド人旅行者は約1800万人で、10年前の3倍近くに増加。最も多い訪問先としては、サウジアラビアやタイ、シンガポール、米国が90~100万人で上位を争う。

一方、14年に日本を訪れたのは約8万8000人にとどまった。中国(13年で約67万人)や韓国(同約12万人)と比べても「かなり少ない」(日印外交筋)。

日印両国は政治、経済両面で結び付きを強めつつある。その半面、日本へのインド人留学生は15年5月時点で約880人で、訪日観光客と並んで低調だ。外交筋は「両国関係の緊密さに比べ、人的交流は後れを取っている。今後は相互交流を活発化させることがさらなる関係強化につながる」と話す。

以前、インドの旅行会社の人に話を聞いたことがあります。ムンバイの人です。

インド人の日本旅行の訪問地が東京・大阪プラス広島の理由(アセアン・インドトラベルマート2014その2) (2014年6月9日)
http://inbound.exblog.jp/22757002/

彼によると、日本旅行のゴールデンルートは東京、大阪、広島で、東アジアの人たちと比べ、日本に対する認識もずいぶん違うようです。教育もあるのでしょうが、広島の原爆ドーム訪問はたいていツアーコースに入っているそうです。

ちなみに、2015年の訪日インド人は約10万3000人でした。これまで訪日インド客が少なかった背景には、日本への航空運賃の高さがありました。彼らはヨーロッパや東南アジアにはよく旅行に出かけていますが、それは航空運賃が安いからです。

もう6、7年前のことですが、観光庁の主催するトラベルマート(訪日旅行促進のために各国からエージェントを呼んで行う商談会)の海外メディアを集めた記者会見でのある出来事を思い出しました。

※トラベルマートの記者会見とはこういう世界です。以下の話とは関係ありません。
外国人記者説明会(トラベルマート2011 その2)(2011.11.26)
http://inbound.exblog.jp/17093532/

まだ尖閣諸島沖漁船衝突事件(2010年)の起こる前のことで、当時から観光庁は中国市場に大きな期待をかけていました。そこで打ち出されたのは、「中国集中プロモーション」というものでした。

会見場にいたぼくはちょっとびっくりしました。なぜなら、そこには世界各国の記者がいたからです。大きなポテンシャルを持つ中国市場に期待するのは理解できますが、あくまで内輪の話にすべき。中国向けプロモーションに注力するというような話は、なにもそこでするのではなく、中国の関係者だけどこかに集めてすればいいものを……。

実際、記者会見の質疑応答のとき、インドから来た女性記者は「中国の話はわかったが、インドにはどんなプロモーションを考えているのか」と質問していました。彼女がそう思うのも、無理はありません。日本側は「今後いずれ」というような回答でした。

でも、あれから何年もたち、ようやくインドに日本の政府観光局ができるようです。当然、インドの海外旅行市場の調査や研究も始まっていくことでしょう。

インド客が増えると、日本のインバウンドもずいぶん変わっていくことと思います。基本的に英語圏の人たちなので、多言語化の問題はなさそうですが、彼らの文化や習慣など、なかなか独特ですから、最初はいろんな戸惑いもあるでしょう。でも、日本に対する感情は概ね良好な人たちですから、中国や韓国の訪日客に対するような疑心暗鬼や複雑な感情を引き起こすことは比較的少ないと思われます。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2016-05-22 10:18 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 05月 18日

「民泊」の問題は、結局「非居住型」をどうするかにある

今年に入り、メディアは訪日外国人市場の拡大にともなう政府の「規制緩和」をいくつも報じています。

資格不要の有償ガイドを認めるなら、せめて登録制にすべき (2016年 5月17日)
http://inbound.exblog.jp/25807497/

そして、今日は「民泊」の解禁です。以下、朝日のネット記事です。

民泊、住宅地で解禁へ 訪日客増にらみ新法 政府方針(朝日新聞2016年5月18日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12362375.html

空き部屋などに旅行者を有料で泊める「民泊」について、政府は住宅地でも一定の条件を満たせば営業を認め、本格的に解禁する方針を固めた。19日にまとまる規制改革会議の答申を受け、今月末に閣議決定する規制改革実施計画に盛り込み、今秋以降に「民泊新法」を国会に提出する。

民泊をめぐっては4月、旅館業法で許可を出す最低面積が5分の1に緩和されたが、都市計画法の「住居専用地域」では依然として営業は認められていない。

都市部で宿泊施設が不足する中、訪日観光客の増加に対応するため、政府は営業日数制限などを条件に対象地域を全面的に広げる。家主がいる場合だけでなく、ワンルームマンションなどで家主が不在でも騒音など近隣トラブルを防ぐ管理者が登録されれば、行政へ届け出ることで営業を可能にする。インターネット仲介サイトも登録制とし、取引条件の説明などを義務づける。

家主や新設される民泊管理者は、利用者名簿の作成保存のほか、マンションの管理規約や賃貸契約に違反しないことや、民泊営業の「表札」を掲げることなども義務化する。


民泊とは、一般住宅の空いている部屋を旅行者に貸し出すことで、近年の訪日外国人の急増で、大都市圏の客室不足や料金の高騰が背景にあることは広く知られるようになりました。米国系民泊サイトのAirBnBの日本法人の設立は2014年5月。空室を提供する登録数は急増し、2016年1月現在で約2万6000軒を超えたそうです。

実は、ぼくの仕事場の向かいにある一戸建てのお宅でも、数日おきに外国人ツーリストが入れ替わり来て、民泊している様子を窓越しに見かけます。たいてい西洋人のカップルで、彼らを迎え入れるホストであるその家のご夫婦が玄関先で若いツーリストたちと語らっている姿はとても楽しそうです。天気のよい日には、2階の物干しに白いシーツが干してあります。

一般に民泊には3つの類型があります。アイドルのコンサートが地方都市で開かれるときなどの大規模イベント時に臨時に部屋を貸し出す「イベント型」、ホストの自宅内の空いた部屋を提供する「ホームステイ型」、そしてホストの住んでいない賃貸マンションなどを貸し出す「非居住型」です。前述のご夫婦の場合は、「ホームステイ型」でしょう。

結局のところ、問題は「非居住型」民泊にあると思います。

ぼくの知り合いのひとりも、横浜の住人ですが、大阪の賃貸マンションを借りて民泊をやっています。こういうケースが、人ごとながら、とても心配なのです。

なぜなら、民泊を市場にまかせて運営していくうえでの課題を解決するための取り組みが圧倒的に足りないと思われるからです。これは日本に限った話ではなく、世界的にいえることです。

そのため、当然ホテル業界からの反発があります。「ホテルに義務付けられる環境・食品衛生・防火安全対策が(民泊のホストらに)免除されているのは不公平」だからです(実際は、民泊は「簡易宿所」という位置づけで、ホテルとまったく同じ基準ではないですけれど…)。

懸念事項の最たるものは、近隣住民へのケアがおざなりなことでしょう。もし自分の住むマンションの隣の部屋に、数日ごとに見ず知らずの外国人がやって来るとしたら、どう思いますか。

前述のぼくのご近所のケースのような「ホームステイ型」であれば、近隣住民へのケアはご本人たちの努力でそれなりに対処できると思いますが、「非居住型」の場合、旅行者と住民の間に何か問題が起きた場合、誰が対応するのか。

もともと「カウチサーフィン」のような無料で部屋を貸し合うSNSから始まったのが世界の民泊ムーブメントでしたが、AirBnBという金銭の授受を含む民泊サービスが登場してきて以来、状況は変わってきたといえます。要は、儲かるからと始めたホストたちが急増したことで、あやうげなことになってきたのです。彼らの目的ははっきりしているので、グレーゾーンなど気にしません。まずくなれば、すぐに手を引けばすむと考えているはずです。それは、中国人の団体ツアーのビジネスとよく似ています。彼らもまたグレーゾーンの存在をものともしないからです。そうこうするうちに、在日中国人による民泊ビジネスも相当な勢いでうごめき始めています。

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた(2016年3月27日)
http://inbound.exblog.jp/25579904/

こうした「非居住型」民泊に対する懸念の解消は、実際には、最近次々に生まれている民泊運営代行業者が担うことになるのでしょうが、市場の拡大にどこまで追いついているのでしょうか。彼らの取り組みが、今後民泊市場が日本社会に受け入れられるかどうかを決めるのだと思います。でも、大丈夫かしら?

だいたいAirBnBのサイト自体がお粗末なもので、自動翻訳でホストとゲストがやりとりするような世界でもあると聞くと、ゾッとしてしまいます。なぜそんなことで平気なのでしょう? こういうところに、日本のIT系の人たちの甘さを感じてしまいます。

熊本地震の直後、AirBnBが被災者に部屋を無料提供する募集をしていました。彼らとしては、非常時における民泊の意義をアピールし、イメージアップを図りたかったようですが、問題はそっちじゃないと感じた人も多かったのではないでしょうか。

熊本地震  被災者に家を無料提供 民泊サイトが募集(毎日新聞2016年4月16日)
http://mainichi.jp/articles/20160416/k00/00e/040/228000c

こうした客観情勢から、不動産業界でも民泊に対する姿勢は分かれるようです。

民泊、割れる不動産大手 規制緩和、商機狙う動き(朝日新聞2016年5月18日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12362264.html

「ライオンズマンション」を全国展開する不動産大手の大京が、戸建て住宅を使った「民泊」の事業化にこの夏にも乗り出す。政府が進める規制緩和が商機につながるとみる。一方で、新築の分譲マンションの管理規約で民泊を禁止する大手もある。

有料で自宅の空き部屋を旅行者に貸し出す「民泊」は、旅館業法で原則として規制されている。ただ、東京都大田区では1月、国家戦略特区の規制緩和を利用し、民泊が条件付きで認められることになった。

大京は7月にも、保有している大田区の2階建て中古住宅を使って民泊事業に乗り出す。羽田空港から乗り換え無しで行ける京急蒲田駅から徒歩10分。築17年で、ファミリー向けに賃貸していた。民泊ではより高い利益が見込めるという。

大田区の制度では1回の利用で7日以上の滞在が必要だが、周辺のビジネスホテルより割安な料金設定とすることで、「十分に稼げる」(青本隆担当部長)と自信をみせる。羽田、東京都心、横浜へのアクセスの良さが「売り」だ。

大京は、民泊は全国に広がるとみている。今年度には空き家になっている中古住宅100戸程度を買い取り、事業を拡大する計画を描いている。

■住民に配慮、禁止も

民泊の広がりは、不動産会社にとって良いことばかりではない。

管理会社は、マンションの住民たちから「うるさい」「ゴミが散らかっている」などの苦情を受けることが増えた。マンション販売の現場でも、「(民泊で使われると)防犯や衛生面で心配だ」「民泊に使われないマンションが欲しい」との声があがる。

東急不動産は1月下旬に売り出した大阪市内の二つのマンションの管理規約に、「対価を得て宿泊施設として使用することを禁止する」と明記し、民泊に使えないようにした。東京都大田区の物件(2月発売)と横浜市の物件(5月発売)でも、同様の対応をしたという。

野村不動産は、3月以降に販売開始の広告を出した分譲マンションのすべてで、あらかじめ民泊を禁止している。また、すでに分譲済みのマンションでも「専有部分は専ら住宅として使うこと」と定められている場合がほとんどで、民泊はできないと解釈するのが一般的だ。相談があれば明確に民泊を禁止するような管理規約の変更案を示して助言しているという。

マンション管理規約をめぐっては、国交省が現在の標準的な規約を改正しなければ民泊に使えない、と業界などに通達しようとしたところ、民泊を推進したい内閣府などから「待った」がかかった。現時点でも民泊に使えるかどうか、あいまいなままだ。

ニッセイ基礎研究所不動産市場調査室長の竹内一雅氏は、「不動産会社の住民への配慮は当然だ。不安をほぐせるルールが整備されなければ、民泊が大きな商機になるとは考えにくい」と指摘する。(下山祐治)

■民泊をめぐる不動産各社の対応

<大京>    東京都大田区の戸建てで7月にも民泊事業を開始。全国展開も検討
<東急不動産> 大田区や大阪市、横浜市で販売中の一部分譲マンションで民泊を禁止
<野村不動産> 3月以降に販売開始の広告を出した分譲マンションすべてで民泊を禁止
<三菱地所>  マンションの管理組合に対する相談体制の強化を検討
<三井不動産> 当面は大田区などの取り組み状況を見守る


日本には人口減にともなう深刻な空き家問題もあります。その対策として渡りに船ともいえる民泊だけに、政府も規制緩和を進めたいのでしょう。そのためには、民泊の存在を受容する社会のコンセンサスをいかにつくっていくか。いまの民泊をめぐる状況は、中国人団体ツアーのガイド問題にとてもよく似ています。グレーゾーンであることをいいことに、利益を得たい人たちだけが都合よく暗躍しているように見えるからです。

いろいろ気になることばかりではありますが、訪日外国人の増加が、これに限らず、国内へのさまざまな投資を生んでいることは確かです。それこそがインバウンド振興の意義のひとつといえるわけですから、個人的にはうまく進めてほしいと願うばかりです。

民泊の市場動向や問題について詳しい情報を発信しているのが、以下のサイトです。

マンション・チラシの定点観測
http://1manken.hatenablog.com/

このサイトを日々チェックしていると、「民泊」問題のさまざまな側面が見えてきます。

【追記】
あとで知ったのですが、この報道はすでに先週出ていたのですね。

民泊を全面解禁、住宅地で営業認める 政府原案 (日本経済新聞2016/5/13)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H3C_T10C16A5MM0000/

NHKでも以下の記事を配信していました。

民泊 管理者置けば届け出で営業可能に(NHKオンライン2016年5月13日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160513/k10010518831000.html

住宅の空き部屋などを有料で貸し出す「民泊」について厚生労働省と観光庁は家主が同居していなくても管理者を置くことを条件に都道府県への届け出を行えば営業を認める方針を決めました。

住宅やマンションの空き部屋を有料で貸し出す「民泊」を巡っては、外国人観光客の増加で宿泊施設の不足が深刻となる中厚生労働省と観光庁がルール作りを進めています。先月からは「民泊」をカプセルホテルなどと同様に旅館業法で「簡易宿所」と位置づけ、貸主が都道府県から許可を得れば営業が認められるようになりました。

このうち、一般の家庭で受け入れる「ホームステイ型」については家主がいるため宿泊者の安全管理がしやすいなどとして、今後、許可制ではなく都道府県への届け出だけで認める方針です。

さらに「民泊」を広げるため厚生労働省などは家主が同居していない場合でも管理者を置くことを条件に、旅館などと競合しないよう営業日数の制限を設けたうえで、「ホームステイ型」と同様に都道府県への届け出を行えば営業を認める方針を決めました。管理者は近隣とのトラブルの対応や宿泊者の名簿の作成などが義務づけられるということです。

厚生労働省と観光庁は今後、インターネットなどで仲介を行う業者への規制について検討することにしています。

ここで気になるのは「非居住型」民泊でも、「管理者」を置けば問題ないとのことのようですが、これはどのような存在を指しているのでしょうか。民泊運営代行業者でいいのでしょうか。もうひとつよくわからない内容です。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2016-05-18 11:00 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(2)