ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 05月 23日

中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?

一般の日本人が知らないうちに、これほど広範囲に中国人観光客を乗せた「越境白タク」が広がっていた。では、この何が問題だと考えるべきでしょうか。

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/

日本の近隣諸国の国際空港に比べ、成田空港から都心部へのアクセスは極端なコスト高といえます。京急やバス会社など民間による格安な交通手段も登場し、LCC客などを中心に利用者は増えていますが、タクシーで2000~3000円も出せば市内に行ける中国をはじめとしたアジアからの観光客にすれば、10倍近いことにまず驚くでしょう。

最近のアジアからの旅行者は、家族や小グループが多い。1台のタクシーでは乗り切れず、ワゴンタイプの車が最適。こうしたなか、海外からスマホアプリで簡単に予約できて、適度な価格帯で利用できるワゴン車が支持されるのは、顧客のニーズに正対するという意味でも、当然のことだったのです。

そもそも成田空港は、日本人が利用する白タクの温床としても知られていました。こんな記事がネットにあります。

[成田空港アクセス2010]白タクの温床!?
https://response.jp/article/2010/01/11/134609.html

記事によると、

成田空港の白タクドライバーの逮捕事例は、年に数回ある程度。地元警察は「空港周辺に白タクが存在することは認めているが、通報や苦情がない限りは警察も動けない」ともらす。

成田空港で客を待つタクシー運転手は彼らを見て「白タクは今も多い。客引き自体が違反なのに堂々とやっていて、我々の仕事にも影響受ける。万が一事故にあっても何の保障もない。最後に損害こうむるのは客」「東京方面への客がほとんどだから、1人乗せれば確実に2万円が入る。終電を逃した人たちを乗せる白タクと違い、空港が動いている時間帯すべてが“営業時間”となる」という。


ここであらためて、なぜ白タクは違法となるのか整理しておきましょう。

ある法律事務所のサイトに、こんな説明があったので紹介します。

「白タク」はなぜ法律で禁止されてきたのか? 解禁のメリットとデメリットとは(シェアしたくなる法律相談所2015年11月20日)
https://lmedia.jp/2015/11/20/68379/

ポイントは以下のとおりです。

・タクシー事業の許可を受けた場合、緑地に白のナンバーを付けて運送するが、許可がない場合、一般の白地ナンバーを付けてタクシー営業をすることになるため、「白タク」という。

・白タクが違法である法令上の根拠は「道路運送法」にある。国土交通大臣の許可なくタクシー事業を行うと、「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」。

・この規制にはメリットとデメリットがある。メリットは、許可制により運転手に高い技能が求められることや過当競争が抑制され、一定のサービスレベルが確保されること。

・一方、規制をなくすことで、タクシー事業が行き届いていない過疎地域でサービスが供給されたり、従前よりも安価にサービスが提供される可能性が高い。

こうしたことから、昨年春、安倍首相は「白タク解禁」の意向を表明。ただし「過疎地での観光客の交通手段に、自家用車の活用を拡大する」との趣旨だといいます。一方、これを受けて、タクシー業界は「安全性に問題がある」とすかさず反対しました。

「ライドシェア」 “白タク合法化”に業界猛反発(テレ朝news2016/03/08)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000069848.html

とはいえ、過疎地の交通問題などを抱える日本では、ライドシェアの推進に対する期待もあります。その代表格のひとり、UberJapan社長はこう訴えます。

Uber、日本でも攻勢へ ライドシェア(相乗り)で地域を変える
髙橋 正巳(Uber Japan 執行役員社長)
https://www.projectdesign.jp/201602/logistics/002681.php

(以下、記事の一部抜粋)「白タクは運転手の素性が不明で、料金も不透明な営業形態で、何かあっても連絡先がわからない。きちんとした保険に入っているかも不明で、大変危険なもの。一方でUberは、ドライバーのバックグラウンド・チェックや評価システムが存在し、リアルタイムで走行データを記録しています。過去に問題があるドライバーは参加できませんし、ユーザーは事前にドライバーを知り、評価が低いときは乗車をやめることもできます。リアルタイムで運行を管理しているので、万が一の事故やクレームにも対応でき、保険も完備しています」

ポイントとなるのは、Uberのようなライドシェアは「白タク」とは別物という主張です。ただし、これは民泊のAirbnbと同様、ホストやドライバーとマッチング会社の関係性や社会的位置付けをどう了解するかによって見方が変わるでしょう。

あるシェアリングエコノミーの研究機関は、次のようなまとめ記事を配信しています。

【まとめ】ライドシェアリング事業は違法の「白タク行為」にあたるのか?
http://sharing-economy-lab.jp/share-ride-illigal-white-taxi

(以下、記事の一部抜粋)「素人ドライバーのマッチングサービスが日本で実現するようになると、地方の人口減少により公共交通機関の確保が難しくなった市町村では、住民にとって買い物や通院など日常を支える移動手段となり、新たな収入を得る場にもなり得ると言われています。また交通手段がないために、これまでたどり着くのが難しかったような場所も観光スポットになる、というような利用方法も期待されています」

こちらのポイントは、「素人ドライバーマッチングサービス」の可能性をどう評価できるかでしょうか。

政府による「白タク解禁」表明も、規制緩和に向けて、これらの意見をふまえたものだといえるでしょう。確かに、過疎が進む地方では地元住民の足の問題があるのに加え、たとえ魅力的な観光地があっても、交通機関が圧倒的に不足しているため、外国人観光客を送り込みたくても、できない現状があるのですから。

さて、ここらで冒頭の問いに戻りましょう。

中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?

それは、結局、こういうことではないでしょうか。

いま日本国内でライドシェアをめぐる議論や推進に向けた各方面の取り組みが進んでいます。ところが、これらの地道な努力を一切無視して、中国の「越境白タク」は増殖しています。このあまりに無頓着なフライングを見過していては、日本の社会にとって有用なライドシェアの実現をぶち壊しにしてしまうのではないか…。

たとえば、「過疎地での観光客の交通手段に、自家用車の活用を拡大」「人口減少により公共交通機関の確保が難しくなった市町村では、住民にとって買い物や通院など日常を支える移動手段」といった日本のライドシェア推進者たちの主張は、中国配車アプリサービスではほぼ省みられることなく、東京など大都市圏のど真ん中で運用されています。そこに中国客のニーズが集中しているからなのですが、この実態をまったく知らないことにしてまともな議論が進められるものでしょうか。

確かに、中国配車アプリでは、大都市圏から地方の観光地への中国客を乗せたドライブサービスも展開しています。リストに載っている観光地はニーズの多い有名観光地ばかりですが、個別のニーズでは、あまり多くの外国人観光客が訪れていない場所へのドライブサービスもありうるでしょう。外国客を地方へ分散させる足となっていることは否定できない面もあります。彼らが市場のニーズに直結したサービスを提供しているのは間違いないのです。

団体から個人へと移行した外国人観光客の移動のニーズを捕捉することはそんなに簡単ではありません。それゆえ、我々は外国客のニーズに即応したサービスを提供できずにいる。しかし、すでに自国で定着したシステムを持つ中国の配車サービスは、日本でこそ優位性を発揮し、好んで利用されているのです。

日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/

すでに触れたように、中国配車アプリのドライバーたちの大半は日本在住の中国人で、営業に必要な第2種運転免許を取得しているとは思えませんが、ライドシェアが解禁されると、、「素人ドライバー」自体は違法でなくなります。タクシー業界からの反発が強いのはそのためですが、現状の「越境白タク」は追認されてしまうことになります。

シェアリングエコノミーの信奉者の中には、こうした違法をものともしない果敢な中国のビジネス手法を評価する人もいそうですが、それは中国の特殊な国内事情をよく知らないからではないでしょうか。中国で配車サービスが普及した背景には、同国のそれまでの恵まれない交通事情、さらにアプリ会社の猛烈な競争があり、利用のためのインセンティブが強く働いていたことがあります。日本のIT企業がそこまでのサービス合戦に投資ができるとは思えません。それに、仮に白タクが合法化されたとして、国内にそれを正業にするような日本人がどれほどいるでしょう。

日本と中国では制度や環境があまりに違い、人々のニーズも異なる以上、どんなに優れたサービスでも、その国に合った運用法を見つけるしかないのです。

中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/

中国の「越境白タク」の問題は、すでに書いたように、このサービスを仕切る事業者は日本国内には存在せず、金銭のやりとりもない。おそらくドライバーへの支払いは、中国の電子決済システムによるのでしょう。ドライバーは日本在住者でありながら、在外華人なので、必要であれば、なんらかの日本円への換金手段があると思われます。そして、顧客へのドライブサービス活動の実態だけが、日本国内で行われる(実際には在日中国人らがすでに事業化しているという話もありますから、実態は別のステージに移りつつあるかもしれません)。この事態を黙認していいかどうか、という判断になるのだと思います。

(参考)
なぜ次々と中国人観光客の周辺で違法問題が起こるのか?
http://inbound.exblog.jp/26880001/
タクシー運転手に聞く「日本のライドシェアが進まない理由」と今後すべきこと
http://inbound.exblog.jp/26891045/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-23 16:23 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 12日

日本語の美しさに見合わない雑な外国語併記は残念です

今年の初め、友人と始めた以下のブログで、日本に住む中国人や中国から来た観光客が街角で見つけたおかしな中国語表示を紹介しつつ、日本人が苦手とする多言語表記の問題の改善のための啓発活動を進めています。

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp
http://inbound.exblog.jp/26776127/

そのブログの記事から転載します。

これは友人が高尾山に出かけたとき、見つけたものです。
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「想い出とゴミは持ち帰ろう」。なんという美しい日本語でしょう。

ところが、中国語は「不把垃圾扔掉,回去吧」。あえて直訳すると「ゴミを投げ捨てるな、立ち去れ」でしょうか。その語気の強さに一瞬ビックリです。

それに、中国語だけでなく、英語もちょっとおかしい気が……。

この看板をつくった方は、そんな命令口調で言うつもりなどなかったでしょう。なにしろ「想い出とゴミは持ち帰ろう」ですから。でも、この中国語表示には「想い出」に当たることばもありません。

このくらいの言い方がいいのではないでしょうか。

「请把垃圾和美好的回忆带回家」(ゴミと美しい想い出を持ち帰りましょう)

ここでは「想い出」より「ゴミ」を先に言っているのは、本来の目的がゴミの持ち帰りだからです。そのほうが中国人にはわかりやすいのです。

日本語の美しさに見合わない、あまりに雑な外国語併記はとても残念です。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-12 13:42 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 03日

下田発グルメミステリー『伊豆下田料理飲食店組合事件簿』の実在登場人物、真理子さんに会ってきた

今回伊豆下田に来て、古い友人で地元在住作家の岡崎大五さんに町を案内してもらったことはすでに述べましたが、そのとき彼は街場の飲食店に貼られた1枚の小さなポスターを見せてくれました。
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伊豆下田のユニークな歴史が持つインバウンドの可能性と気になる2、3のこと
http://inbound.exblog.jp/26831205/

そこには「伊豆下田料理飲食店組合事件簿(連載中)」と書かれています。翌日、ひとりで下田の町を歩いたときも、あちこちでみかけました。飲食店だけでなく、お茶屋さんや八百屋さんにも貼ってあります。
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これどういうこと? なんで大五さんの新刊案内のポスターが町中に貼られているんですか?

実はこういうわけです。なんでも下田で人気の旅行サイト「伊豆下田100景」で彼の小説が連載されるからだそう。このサイトは下田温泉旅館協同組合と料理飲食店組合が運営していて「下田の魅力を〝旅行者目線〟で発信します!」がモットー。

伊豆下田100景
http://shimoda100.com/

この旅行サイトに連載される大五さんの書き下ろしユーモア・グルメ・ミステリーは「小説に登場するのは下田に実在の人物、店、料理。次期組合長の座をめぐるドタバタ事件を老舗そば屋の女将が街中を駆け巡り、名物料理を食べながら真相を追う!」という設定。

タイトルは『伊豆下田飲食店組合事件簿』。全11回の連載を読むには、以下のページから各回100円でダウンロードするか、地元飲食店・書店などで200円で購入することになります。
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伊豆下田料理飲食店組合事件簿
http://shimoda100.com/jikenbo/

で、事件の発端を告げる序章「むさし・天城そば」が4月25日に公開されたばかり。舞台は、下田駅前にあるそばとうどんの店「むさし」です。
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むさし
http://shimoda100.com/restaurant/musashi/

これを読んだぼくは、思わず「むさし」を訪ねてみたくなりました。この連載小説の主人公ともいうべき、同店の店主、別の名を「下田のパパラッチ」こと真理子さんに会ってみたいと思ったからです。

店はごく普通のおそばやさんでした。席に座ると、注文を取りにきたのは、大五さんに聞いていたとおり、アルバイトのフィリピン人のおばさんでした。
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小説にも出てくる「天城そば」を注文。老舗らしく、店内は常連さんが多くいました。

この店のそばは、自分でわさびをするのが決まりです。小説に出てくる新米刑事の新庄誠のように、ぼくもわさびをすりすりしながら、そばを食べました。
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常連さんが会計をしたとき、店の奥から真理子さんがついに現れました。ぼくは思わず「おお、この人か」と思い、会計がすむと、声をかけてしまいました。

「ぼく、この小説を見て来ました」

すると、真理子さんはまんざらでもないというにんまり笑顔で「でも、これフィクションなんですよ」。そう言って足早に厨房に戻るのでした。

4月25日に序章が公開された、この超ローカルな、町の実在店主が登場するミステリー小説は、これから半年かけて、隔週で公開されます(9月25日が最終回)。

この企画は、地元の若いウェブデザイナーらと岡崎大五さんが話し合って実現させたそうです。

この企画の話を聞いて、ついにシーズン6に突入してしまった『孤独のグルメ』(テレビ東京)や喫茶店文化を誇る名古屋ローカルの『三人兄弟』(メ~テレ)などのご当地グルメドラマを思い出しました。

孤独のグルメ http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/
三人兄弟 http://www.nagoyatv.com/3ninkyodai/
http://www.nagoyatv.com/3ninkyodai2/

食が人を呼び込む決定打になる時代です。ネットで調べていたら、こんなグルメイベントもある時代です。

全国ふるさと甲子園公式サイト http://furusato-koshien.jp/

こうしたなか、人口2万3000人にすぎない下田で、こんな企画が生まれるなんて、いい話だなあと思いました。大五さんによると、伊豆下田100景のサイトの運営もそうですが、今回の連載小説企画も、下田の飲食店のみなさんからのささやかな運営費でまかなっているのだそうです。

大五さんは言います。「下田も少子高齢化で若い人は少ない。シャッター商店街だよ、本当に。仕方がないじゃない。全国どこでもそうなんだから。でも、若い人が全然いないわけではない。下田のような小さな町にも、主婦をしながらデザイナーをしてくれる若い人材もいるし、彼女もこれで食えてるわけではないけれど、地元のために何かやりたい気持ちはある。そういう思いで生まれた今回の企画、登場人物の名物店主の全員にお会いして、話を聞きがら物語のあらましを伝えて、小説にしてもいいかと聞いたら、いいよという話になった。みんな魅力的な人たちなんだ」。

その話を聞きながら、こういうことってできるんだなと思いました。大五さんはこんなことも言ってました。ネタバレにならない範囲で、書いてしまいます。

「ミステリー仕立てにするとなると、殺人事件というのが相場なんだけど、実在人物を登場させると、いくらフィクションといっても、殺人はどうかとなった。だいたい伊豆では、事件といっても、せいぜいオレオレ詐欺くらい。でも、登場人物の当の本人は、それでもいいと言ってたんだけどね」

ネットで調べると、確かに最近、伊豆周辺でオレオレ詐欺が続出しているそうです。

・79歳女性110万円被害 “息子”にオレオレ詐欺(伊豆新聞2017/01/27)
伊豆市の女性(79)が25日、息子を名乗る男からの電話で110万円をだまし取られたと大仁署に届け出た。
・伊豆の60代女性 200万円詐欺被害(2016/07/08)
伊豆市の無職女性(67)が8日までに、息子を名乗る男からの電話で現金200万円をだまし取られた。

特殊詐欺防止へ本腰 静岡県警、きょうから注意喚起人形貸し出し(産経ニュース2017.4.1)
http://www.sankei.com/region/news/170401/rgn1704010062-n1.html
オレオレ詐欺被害が発生しています!|伊豆市 くらし・仕事・市政情報
http://www.city.izu.shizuoka.jp/gyousei/gyousei_detail005188.html

伊豆下田ではいま、こんなことが始まっています。地元を元気にするための方法は、お金がなくても、いろいろ考えられるのだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-03 19:35 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 03日

昔と比較して考えるからマズいんじゃないか

前回、伊豆下田に来て感じた日本のインバウンドの現場に共通する問題点として「国内レジャー市場とインバウンド市場の違いを明確に区別していないこと」について書きましたが、もうひとつ強く感じたことがあります。

伊豆下田のユニークな歴史が持つインバウンドの可能性と気になる2、3のこと
http://inbound.exblog.jp/26831205/

それは、全国の関係者に共通することで、特に年配の方たちにいえることですが、昔といまを比較して考えてしまうところが、実は問題ではないかと思うことです。
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今回、ある地元の方との世間話のつもりが、こんな会話の流れになりました。

-下田はいいところですね。海はきれいだし、外国の方も町でよく見かけましたよ。

-みなさん、こちらにいらした方はそうおっしゃるんですけどね。こっちに住んでる者にとってはねえ…。

そして、こちらが尋ねてもいないのに、こんなネガティブトークが始まるのです。

-下田のビーチには、この時期若いサーファーが多いんですね。みんな楽しそう。

-そう思われるかもしれませんが、昔はもっと多かったんですよ。

-いつ頃のお話をなさっていますか。

-バブルになる前の頃。バブルになって日本人がどっと海外に旅行に行くようになる前のことですよ。

-それは1970年代後半から80年代にかけてのサーフィンブームのことですね。

-バブル以降は、みなさん海外の海に行ってしまい、こっちにはもう戻ってきませんからねえ。ここ何年か外国の方もお見えになるようになったといっても、たいした数ではありませんしね。

なるほど、とぼくは思いました。その方は伊豆の海がサーフィンブームで盛り上がった30年以上前の話をしているようなのです。

地元の事情をよく知らない、外から来た人間に「いいところですね」と言われても、素直に「そうですね」と言えない心理はわからないではありません。ではなぜそうなのか。ご本人の認識では、いまより過去のほうが良かったと考えているからでしょう。

でも、その発想から抜けられないこと、昔と比較して考えてしまうことがマズいのではないでしょうか。

下田開国博物館の展示に、エンドレスで流される映像があります。これは同館がオープンした昭和60年(1985年)につくられたもので、その後のバブル期に向かって新しいリゾートホテルなどが建設されつつある下田の現況と21世紀に向けた未来への期待が語られる内容です。

下田開国博物館 http://www.shimoda-museum.jp/
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30年前の映像が未だに館内で流されていること、当時の期待がかなわなかったことに、皮肉を言うつもりはありませんが、いまの地方に暮らす年配の多くの人たちはこんなことになるとは思ってもみなかったのだろうと思います。

ただ、いまの若い人はそんな時代を知りません。だから、過去に比べてどんなに停滞しているように年配の人たちには見えても、彼らはそんな風には考えません。当時のことが忘れられないのは、年配の方々だけなのです。

おそらくこうしたことは、日本全国、地方に限らず、都会でもどこでも見られることでしょう。

この種の年配の人たちに対して批判的だからといって、「平等に貧しくなろう」と無神経に呼びかける脱成長派に組するつもりはありません(そういえば、この人も年配の日本人でした)。昔と比較して考えるのは自分たちだけで、世の中の人間はそうでもないことに気づいてほしいと思います。

過去に囚われずに、一から始められるという意味で、インバウンド市場への取り組みは面白いと思うんです。ところが、安易に、そして無自覚に過去のやり方を踏襲してきたこと、「国内レジャー市場とインバウンド市場の違いを区別」しないできたことがうまくいかない理由だと考えるべきです。なぜなら、相手がまったく違うからです。

そんなことをあれこれ思っていたら、地元在住作家の岡崎大五さんと若い世代の人たちがこの町で新しいことを始めているようです。その話は次回。
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下田発グルメミステリー『伊豆下田料理飲食店組合事件簿』の実在登場人物、真理子さんに会ってきた
http://inbound.exblog.jp/26831661/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-03 17:29 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 03日

伊豆下田のユニークな歴史が持つインバウンドの可能性と気になる2、3のこと

その日、伊豆急行下田駅を降りると、改札に岡崎大五さんが待っていて、そのまま2時間ほど、街を案内してくれました。大五さんは『添乗員騒動記』(旅行人)で作家デビューした元海外旅行添乗員ですから、街歩きガイドは手馴れたもの。

伊豆下田でよく見かけたインド人ツーリスト、なぜここに?
http://inbound.exblog.jp/26828882/

下田の街歩きのテーマは歴史です。幕末の日本の開国後の細かい約束事を決めた下田条約が締結されたことは知っていても、当時の日本の様子やその頃、唯一外国人が自由に歩き回ることのできた数年間の下田でどんなことが起きていたのか。いわば、江戸期以降の日本人の欧米人との最初の生身の接触と交流の場であり、それを物語る実在の舞台があちこちに点在しているのです。

駅から南に向かって10分ほど歩くと、1854年3月に日米和親条約が締結され、ペリー艦隊が下田に入港した後、彼らの応接所兼幕府との交渉場所となり、下田条約(同年5月)が結ばれた了仙寺があります。子供の頃、歴史の教科書に載っていたかもしれない『ペリー陸戦隊了仙寺調練の図』(1856年)が寺に飾られていて面白いです。
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了仙寺 http://www.izu.co.jp/~ryosenji/

次は、下田開港後、入港してくる外国船の乗組員たちに薪・水・食料などの「欠乏品」を提供する拠点として使われた欠乏所跡。大五さんによると「日本最初の免税店」だそう。こういうたとえは面白いですね。
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それからペリー一行が入港地から了仙寺に向かう水路沿いの参道だった現「ペリーロード」を抜け、長楽寺へ。実はここは、同じ年の12 月、ロシア使節海軍中将プチャーチンとの交渉の末、日露和親条約が調印された場所。日本はアメリカだけでなく、同じ年にロシアとの国交を始めていたんですね。
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長楽寺 http://shimoda.izuneyland.com/chorakuji.html
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この条約によって日露の北方領土(択捉以南は日本、以北の千島列島はロシア)が確定し、樺太は日露雑居を認めることが決まったわけで、大五さんによると「日本政府の北方四島が日本に属するとの主張はこれを根拠にしている」とのこと。
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それからペリーロードを港に向かって歩くと、ペリー艦隊上陸の地に着きます。彼の正式な肩書きはアメリカ海軍の東インド艦隊司令長官。周辺はヨットハーバーになっていて、ベビーカーを押した欧米人カップルが歩いていました。
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そこから大五さんの奥さんの運転する車で、最初の駐日アメリカ領事館として使われた玉泉寺に行きました。最初の総領事はハリスで、唐人お吉の物語の舞台でもあります。寺院内には遭難したアメリカの水兵の墓があります。
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玉泉寺 http://shimoda.izuneyland.com/gyokusenji.html
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その日の散策はここまで。それにしても、外国とのゆかりを持つ寺がこんなにある町は珍しいのではないでしょうか。当時、遠来の客を迎えることができる施設はお寺くらいしかなかったということでしょうか。外国人から見た日本の住宅環境の問題は、当時もいまも変わらない気がしますね。しかも、その後の国運を決める国際的な条約を締結した歴史的な場所でありながら、そんなこともすっかり忘れ去られたかのように、いまはのどかな港町にすぎないことが不思議な気がしてきます。

翌朝、ひとりで下田開国博物館と了仙寺の境内にある黒船ミュージアムを訪ねました。
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下田開国博物館 http://www.shimoda-museum.jp/
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黒船ミュージアム http://www.mobskurofune.com/

展示の中身については、各ウェブサイトを参照していただくとして、この2館を訪ねたことで、昨日大五さんに案内された下田の歴史背景があらためてよくわかりました。なかでも面白かったのは、黒船ミュージアム内のシアターで観た映像でした。

黒船来航を日本人が描いた絵巻物や肉筆画、錦絵やかわら版など使って当時の様子をわかりやすく解説しているのですが、アメリカ人の中には芸者の写真を撮ろうとしたり、彼女らを何人もはべらして酒を飲む水兵がいたり、とにかく彼らのやることなすこと、身につけているもの、手にしているもの、そのすべてを当時の日本人は面白おかしく絵にしているのです。彼らがどれほど好奇のまなざしをアメリカ人に向けて、彼らとの交流を楽しんでいたかわかるのではないでしょうか。昔学校で習った教科書の内容とは違い、庶民の間ではペリーと黒船は必ずしも怖がられていなかったというのです。その例として挙げるのが、ミュージアムの入り口にある、当時人気だった西郷隆盛似にされてしまったペリーの肖像画です。
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同館のキャッチフレーズは『日本人が見た外国人、外国人が見た日本』。アメリカ人絵師が描いた当時の下田の様子も面白いです。アメリカ人の周りに群がる地元の子供たちもそうですが、背中に赤ん坊を負った若い母親も、じっと彼らを見つめています。こういう絵を観ると、昔、自分がインドやバングラディシュに旅行に行ったときのことを思い出します。

この映像は、英語と中国語のバージョンもあるそうですが、外国人にウケる面白い素材ではないかと思いました。YOU TUBEで100年以上前の日本の風物を外国人が撮った写真がアップされるのをよく見かけますが、この種の写真は日本人のみならず、外国人にも魅力的で、一緒に観ていると、ほのぼのします。なぜなら、外国人にとって、目の前にいる21世紀の日本人と150年前の日本人の間に、我々が気づかない共通点を見つけたりするものだからです。そして、無邪気に外国人と交流する日本人の姿が好ましく思えるのです。

これはインバウンドにとって格好の素材といえます。

その本家本元が下田なのですから、このユニークな歴史を外国人相手にもっと前面に出したほうがいいのでは、と思いました。

駅前の観光案内所に置かれていた英語版の伊豆下田のパンフレットを見て思ったことがあります。本編全26ページのうち、表紙もそうですが、最初の12ページまでがビーチリゾートで、13ページ目がキンメダイに代表される下田のグルメ、15ページ目の見開きで初めて下田の歴史が紹介され、次の17ページは黒船祭り。以後は再び地元のローカル文化の紹介という構成になっています。

何を思ったかといえば、これでは日本国内客向けのPRをただ英語版にした焼き直しに見えてしまうことです。国内向けには、ビーチを前面に出す、この構成でいいのかもしれません。しかし、それでは下田の本当のユニークさが外国人相手に伝わらないのではないでしょうか。確かに、下田はビーチの美しい。それは国内向けには通じても(あるいは、日本在住欧米人やインド人には)、海外から日本を訪れる人たちには、ほとんど差別化になっていません。

なぜなら、日本でビーチリゾートといえば、沖縄なのです。下田のビーチの美しさは首都圏では定評がありますが、海外の特に欧米系や英語圏の人たちは、東アジアからの観光客のようなリピーターは少ないので、まず日本列島全体をみて目的地を決めますから、ビーチで売ろうとするのは厳しいのです。むしろ、下田にしかない別の顔を見せるべきでしょう。

その意味でも、1934 年に始まり、毎年5月に開催される黒船祭りは、下田のユニークな歴史を象徴するイベントです。

黒船祭り
http://www.shimoda-city.info/event/kurofune.html

問題は、それを海外に伝えるPRの発想の転換が必要なんだと思います。たとえば、先ほどの英文パンフレットの黒船祭りのページには、簡単な祭りの由来の英文と武士にコスプレした市民やペリー像の前に立つ米軍仕官の写真などが散りばめられていますが、残念ながら、これだけの説明では、祭りの意味を理解できる人は少ないのではないでしょうか。外国人のみならず、日本人にとってもそうなのでは。理解できなければ、訪ねてみようという気は起こりません。

この際、下田はインバウンド向けPRに限って、このユニークな歴史を伝えることに徹底したらいいのではないでしょうか。国内向けとはまったくPRの発想と中身を変えるのです。ビーチとグルメと宿の話は、最後に触れるだけでいい。あとは東京からの伊豆急行などの観光電車を使ったアクセスと。そうすることで、下田という町のオンリーワンの個性が明確になると思います。

もしその結果、多くの外国人が下田を訪れるようになったとき、初めて国内客向けと同じPR手法に変えていけばいいのです。現状では(国内向けと同様に)海もある、グルメもある、歴史もあるでは、個性が明快に伝わらないのです。「そんなの日本の他の地方と同じでしょう」と外国人には見られてしまうからです。
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ただし、外国語の説明文を新たにつくる場合、日本語の直訳ではダメです。一般の外国人には日本人が普通に知っている幕末開国の基礎知識がほぼないからです。説明の仕方も、日本人好みの人物や歴史ネタばかりでなく、あらすじをわかりやすく丁寧かつ簡潔に整理しなければならないため、一から外国語で文章をつくる必要があります。

「外国人目線を大切に」というわりには、最も基本的な情報発信の面で、日本のインバウンドは根本的に問題があると思います。それは、国内レジャー市場とインバウンド市場の違いを明確に区別していないことから起こるのです。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-03 15:00 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 02日

伊豆下田でよく見かけたインド人ツーリスト、なぜここに?

連休の前半、友人で作家の岡崎大五さんの住む伊豆下田に行ってきました。
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岡崎大五の作家生活
http://daigo-okazaki.cocolog-nifty.com/

いくつか面白いことがあったのですが、なかでも興味深く思ったのは、下田でインド人ツーリストをあちこちで見かけたことです。子供連れのファミリーインド人も多いです。
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この時期、サーファーだらけの白浜ビーチでは、下田駅行きの路線バスに突然乗り込んできたインド人の青年5人組と同乗しました。話を聞くと、彼らはインド南部のバンガロールから来たバックパッカーで1ヵ月日本を旅するそうです。バスの車窓から白浜ビーチが見えたので、昔行ったインド旅行のことを思い出して「このビーチ、ゴアみたいでしょう?」と聞いたら、「まだ自分は行ったことない」と言われてしまいました。彼らはこれから伊豆急行に乗って伊豆半島の西部を旅すると話してくれました。
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インド人バックパッカーが日本を旅する時代になったのですね。ぼくも若い頃にバックパックを背負ってインドを旅したことがあるので、とても感慨深いものがあります。
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下田駅では、伊豆急行に乗ってきたふたりの子連れのインド人ファミリーがホームを歩いていました。1854年に日米下田条約を締結した了仙寺の前でも、ベビーカーを押してきたふたりの小さな子連れファミリーが休んでいます。もっとも、彼らはインドから来た旅行者ではなく、首都圏在住のインド人なのではないかと思われます。
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連休の合間の平日だったせいか、下田の町には日本人客は少なく、インド人以外では、欧米人ファミリーや日本人女性と欧米人のカップルなどが目につきました。日本を訪れる外国人の2人に1人を占める中国語圏の旅行者はほぼ見られません。地元の関係者に聞くと「数年前までは河津桜を見に来る中国の団体バス客が多かったが、最近はめっきり減った。いまは個人の富裕層に変わった」とのこと。

毎年2月上旬から約1ヵ月間咲き続ける河津の桜は、春を先取りし、見ごろ期間がソメイヨシノと違って長いため、数年前まで中国をはじめとしたアジアの団体客がどっと押し寄せていました。団体ツアーを催行するアジアの旅行会社にとって、日本桜ツアーを銘打ってお客さんを集めたのに、年によって桜の開花時期が変わるのは悩みの種でした。その点、河津桜はハズレの少ないことから好都合だったのです。ところが、アジア客の団体から個人への移行にともない、バスで南伊豆を訪れる外国客は減ってしまったのです。おそらくこのときの大挙して現れた中国客のイメージが強く伊豆在住の人たちの記憶に残っているのでしょう。

伊豆河津桜まつり情報局
http://www.kawazuzakura.net/

下田に来る前に熱海で途中下車したのですが、駅前の観光案内所の隣の外国人向けボランティアの皆さんに話を聞くと、熱海を訪れる外国人はまだ少なく、たいてい中国人、いや実際には台湾人(そう言い直しておられました)がほとんどだそう。台湾の人たちは日本人が遊びに行く場所を好んで訪ねる人たちですから、熱海にも現れるのですね。実際、熱海の駅前の商店街は、この時期、まるで昭和のレジャー時代を思い起こさせるような、気取ったところのないにぎわいにあふれていました。

一方、先ほどの下田の関係者が言うように、欧米やインド系の個人客が「富裕層」といえるかどうかはあやしいところですが、いま伊豆半島の南端に位置する下田を訪れる外国客は、台湾や中国の人たちではなく、欧米人をメインとした個人や家族のようです。

ではなぜインド人ツーリストは下田を訪れているのでしょうか。

それは、彼らが、微信などの中国語圏のSNSとはまったく異なる情報ソースを頼りに旅しているからです。彼らの頭の中は、東アジアからではなく、欧米の英語圏から届く情報がつまっているのです。

以前、日本に来たムンバイの旅行会社のインド人に日本旅行の特徴について話を聞いたことがありますが、彼らの日本ツアーは欧米の人たちに近いコースをたどります。その一つのポイントが、中国人はほぼ訪れない広島の原爆ドームの訪問です。

インド人の日本旅行の訪問地が東京・大阪プラス広島の理由(アセアン・インドトラベルマート2014その2)
http://inbound.exblog.jp/22757002/

たとえば、下田市にある「和歌の浦遊歩道」は、フランスの旅行ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で2つ星を獲得しているそうです。

和歌の浦遊歩道
http://shimoda100.com/event/walking-shimoda-park-2011/

世界的に有名で欧米人はたいてい手にしているガイドブックシリーズのロンリープラネットも、伊豆半島のことを詳しく説明しています。その点を地元紙ではこう指摘しています。

伊豆の今=五輪・パラ絶好の機会 取り込め世界の個人客―伊東(伊豆新聞2017年01月13日)
http://izu-np.co.jp/feature/news/20170113iz0003000002000c.html

「“バックパッカーのバイブル”の異名で知られる「ロンリープラネット」(英語版)は、旅行ガイドブックの世界シェア・ナンバーワン。欧米を中心に英語圏から来る個人旅行者の利用率が非常に高いという。2015年発売の最新刊では熱海、伊東、下田、修善寺、松崎など伊豆各地区の観光ポイント、宿泊施設、飲食店などを詳しく掲載している」。

2016年に日本を訪れたインド人は12万3000人(JNTO推計値)で、中国、台湾、香港を合わせた中国語圏の総数約1240万人のわずか100分の1にすぎません。今年に入っても、1~3月統計で前年度比8.4%増というくらいですから、インド人観光客がすごく増えているとはいえません。

そうだとしても、下田に限らず、それぞれの地域は固有の魅力と地の利と歴史があり、それを基準に外国人は旅行先を選んでいるわけです。地域によってどの国の人たちと相性がいいか、悪いかというのはあって当然です。数年前まで河津の桜が中国団体客を惹きつけたことは、むしろ一時的な現象だったといえそうで、その理由は先ほど述べたとおりです。

次に、今回あらためて知った下田のユニークな歴史とインバウンドの関係を考えてみたいと思います。

伊豆下田のユニークな歴史が持つインバウンドの可能性と気になる2、3のこと
http://inbound.exblog.jp/26831205/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-02 13:23 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 04月 27日

世界の富裕層に日本の美食とアートをアピールしよう(ILTM2017報告)

GWが近づきましたが、最近少し時間の余裕が出てきたので、今年初旬以降に訪ねたインバウンド関係のイベントやセミナーの報告をぼちぼちしていこうと思っています。最初は都内で開催された富裕層旅行の商談会です。

富裕層旅行に特化した商談会「ジャパン・ラグジュアリー・トラベルマーケット(ILTM Japan)」が日本で初めて開催されたのが2013年。以来、毎年春に国内外から富裕層旅行の関係者たちが集まります。

今年は2月27日から3月1日まで、コンラッド東京で開かれました。商談会の様子については、これまで何度か書いてきたので、今回は初日に行われたセミナーについて簡単に報告します。いろんな情報が盛りだくさんなので、やたらとURLが多いですが、あくまで話題提供ということでご了承ください。

京都で日本初のラグジュアリー・トラベル商談会「ILTM JAPAN2013」開催(2013年 05月 20日)
http://inbound.exblog.jp/21590385/
富裕層旅行には先進国型と新興国型の2種類ある(ILTM2013 セミナー報告)(2013年 12月 20日)
http://inbound.exblog.jp/21681992/
「富裕層旅行市場」とは、どのような世界なのか?(日経BPネット2016年04月07日)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/040600010/

今回のセミナーのテーマは日本の美食とアート。最初のテーマのタイトルは「Gastronomy-The Clincher for attracting Tourism(美食は観光客を惹きつける決め手)」で、登壇したのは美食家として知られ、「世界のベストレストラン50」の評議員のひとりでもある中村孝則氏。
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office nakamura(中村孝則氏の公式サイト)
http://www.dandy-nakamura.com/index.html
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中村氏は、まず今日の世界のグルメトレンドに大きな影響を与えている「世界のベストレストラン50」というランキングと「美食の追っかけ」とも呼ばれるフーディーズという一群のグルメマニアの話を始めます。

彼が言うには、「世界のベストレストラン50」に選ばれたレストランのあるヨーロッパの町は、年間200万人の人々が訪れるようになったとか。それほど、美食は世界から人を呼び込む力があるというのです。

「世界のベストレストラン50」について
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/092900021/?P=3
フーディーズが語る「皿の中身が世界に発信される美食の時代」(日経BPネット2016年09月30日)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/092900022/

いま世界の美食シーンで注目されているのが、ちょっと意外かと思われるかもしれませんが、オーストラリアだそうです。オーストラリアでは、数年前から美食で観光誘致を進める戦略「レストラン・オーストラリア」というプロモーションを始めています。

Food and Wine - Campaigns - Tourism Australia
http://www.tourism.australia.com/campaigns/Food-Wine.aspx
Top 10 Restaurants of Australia
http://top10restaurants.com.au/

なぜオーストラリアがこのプロモーションを始めたかというと、同国を訪れる外国人客にオーストラリア旅行を選んだ理由についてアンケートを取ったところ、「食事とワイン」が3位になったこと。
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さらに、このプロモーションを続けていった結果、行く前と後の「perception gap」(行く前より行ってからの評価が上がった)の国別ランキングで、オーストラリアはフランスに次ぐ2位になったといいます。日本も4位にランクされているので決して悪くはないのですが、オーストラリアの人気はすごいのです。その理由が、かの国が美食のプロモーションに力を入れたことにあると中村氏はいうのです。
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もちろん、日本にも「世界のベストレストラン50」に選ばれるような名シェフはたくさんいます。なかでも有名なのは、土を素材にしたスープで知られ、世界第8位に輝いたレストラン『NARISAWA(ナリサワ)』のオーナーシェフの成澤由浩氏です。
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NARISAWA
http://www.narisawa-yoshihiro.com/

他にもいろんな方がいます。
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こうしたことから、もっと日本の美食を世界にアピールすべきだと中村氏は主張します。残念ながら、まだその価値が広く世界に知られていないとも。

そのひとつの試みとして紹介されたのが「ダイニングアウト」という食のイベントです。

ダイニングアウトとは、日本のどこかで数日だけオープンするプレミアムな野外レストランのこと。食を通じて地方に残された美しい自然や伝統文化、歴史、地産物などを再編集し新たな価値として顕在化させるイベントだといいます。

日本のどこかで数日間だけ開催するプレミアムレストラン「ダイニングアウト」とは?
http://macaro-ni.jp/26926

中村氏が関わっていた佐賀県有田市のダイニングアウトの事例は以下のとおりです。

3夜限りの幻の野外レストラン「DINING OUT ARITA& with LEXUS」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000020902.html
http://www.onestory-media.jp/post/?id=464

次のスピーカーは、世界で最も老舗の美術品オークション会社であるクリスティーズの日本・韓国美術部門ディレクターの山口桂氏です。テーマは「ZIPANGU REVIVED(蘇る日本美術)」。
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クリスティーズ
http://www.christies.com/features/welcome/japanese/overview
山口桂氏
http://artscape.jp/blogs/blog3/1603/
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山口氏によると、日本の古美術は、日本刀から鎧、陶器、書画など、種類が豊富で、世界の古美術の中でも決してひけを取らない価値があるといいます。NYのメトロポリタン美術館でも、日本美術のコーナーがこれほど充実しているのは、そのためだと。そのわりには、あまり国際的に広くその価値が知られていないのが残念で、「国家としてのアナウンスが足りない」せいだとも。なんだか日本の美食と同じようなところがあるようです。

山口氏に言わせれば「クールジャパンなんてダサすぎる!」。日本の古美術も、つくられた当初は「現代アート」だったわけで、美術品はいわば「タイムマシン」。日本のアートの価値を理解し、それをうまく活用することで、世界の富裕層を日本に呼ぶことができるはずといいます。

山口氏は、世界の富裕層が見つめる日本の美術シーンに関する話題として、以下の3つを挙げています。

1)大阪の藤田美術館の収蔵品のオークションがすごいことに!

藤田美術館
http://fujita-museum.or.jp/
明治に活躍した実業家、藤田傳三郎のコレクションを所蔵(国宝9件、重要文化財52件)。展覧会は春季、秋季の年2回。

この話は、その2週間後、以下の記事によって明らかになりました。この10年、中国富裕層による中国アンティークの買い戻し運動が起きています。それを物語る話題といえます。

藤田美術館の中国画に49億円=30点超の美術出品-NY(時事ドットコム2017/03/16)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017031600963&g=soc

藤田美術館(大阪市)が所蔵する中国美術30点以上が15日、米ニューヨークで競売商クリスティーズのオークションに掛けられ、中国宋代の画家・陳容による絵巻「六龍図巻」(13世紀)が4350万ドル(約49億円)で落札された。

1954年開設の藤田美術館は明治時代の実業家、藤田伝三郎とその息子が収集した美術品を展示している。クリスティーズによると、美術館の改装や所蔵品の保全のため出品した。日本の美術館がこれだけの数の所蔵品を海外のオークションに出品するのは珍しい。

六龍図巻は、龍や風景の水墨画などが約5メートルにわたり描かれた作品。清朝の乾隆帝のコレクションの一つで、美術商の山中商会経由で藤田に渡った。

このほか、殷・周時代の青銅器などが出品され、1000万ドル(約11億円)以上での落札が相次いだ。手数料込みの総売り上げは約2億6300万ドル(約298億円)だった。

2)美術家の杉本博司氏が設立した小田原文化財団がによる芸術文化施設「江之浦コンプレックス」が2018年にオープン

小田原文化財団 江之浦コンプレックス
http://openers.jp/article/22862

3)2019年に京都嵐山に新たな美術館が誕生

京都・嵐山に美術館構想 アイフル創業者が私財
http://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20170329000059

個々の話を説明しだすとキリがないので、詳しくは各URLをご参照ください。また山口氏がわかりやすく解説してくれた世界の富裕層が注目するオークションビジネスの話については、別の機会に。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-27 13:27 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 04月 27日

「大腸癌」「ゴミ焼き」「蟹と強姦」……。もう翻訳ソフトはやめにしませんか

今年の初め、友人と始めた以下のブログで、日本に住む中国人や中国から来た観光客が街角で見つけたおかしな中国語表示を紹介しつつ、日本人が苦手とする多言語表記の問題の改善のための啓発活動を進めています。

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp
http://inbound.exblog.jp/26776127/

先日、友人が中国のネットで見つけたある記事を教えてくれました。

なんでも外国人観光客に人気の大阪黒門市場の食堂の中国語メニューが大変なことになっているというんです。街場の食堂のことですから、翻訳会社に頼むようなお金はかけられなかったのでしょうし、良かれと思ってやったことでしょうから、茶化すつもりもなければ、いちゃもんをつけたいわけでもありません。この中国のネットの記事の内容も、悪意というより、単純に面白がっているだけです。そして、記事の書き手の中国人も、こうしたことが起きた理由はgoogle翻訳を利用したことにあると明快に指摘しています。

それをふまえたうえで、いまどんなことが起きているのか。それを知っていただくため、前述のブログの記事の一部を整理してここに転載します。

(前編)中国人もビックリ! 大阪黒門市場の食堂の中国語メニューが大変なことになっていた(2017年4月24日)http://ramei.exblog.jp/25720748/

先週、中国のネットに以下の記事がアップされました。

最近,有家日本餐厅做了一份中文菜单,结果把中国客人全吓跑了!(日本の食堂の中国語のメニューを見て、中国人はビッグリ仰天!)
http://www.gzhphb.com/article/73/737572.html

記事には、大阪の黒門市場で中国人観光客が見かけた食堂のハチャメチャ中国語メニューに笑いが止まらなかったこと。こうなるのは、安易にグーグル翻訳を使っているせいだと指摘しています。
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これがその店のメニューです。記事では、10個以上の間違い中国語の実例を挙げています。いくつか見てみましょう。
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これは「親子丼」ですが、「一碗米饭配上肌肉和鸡蛋(一碗のご飯の上に筋肉と卵)」。「肌肉(筋肉)」と「鶏肉」は発音(jīròu)が同じなので、打ち間違いとも取れますが、これ以外のとてつもない過ちぶりからすると、どうなのでしょう。正しくは「鸡肉蛋盖饭」あるいは「亲子盖饭」です。「丼」は中国語で「おかずでご飯に蓋(ふた)をする」という意味から「盖饭」といいます。
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次は「明太子入りおにぎり」ですが、「经验丰富你的鳕鱼子(経験豊富なあなたのタラコ)」とまったく意味不明です。
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そして「天とじ丼」が「天堂碗翻转」。「天堂」は中国語で「天国」、「翻转」は「反転する」の意味ですが、なぜこうなってしまったのか??? 天丼は「天麸罗(あるいは炸虾)蓋飯」ですが、天ぷらを卵でとじるのをどう表現すればいいか、難しいですね。
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「(とろろいもの)山かけうどん」が「山药你该骄傲(あなたが誇りに思うべき山芋)」? もうわけがわかりません。

(後編)「大腸癌」「ゴミ焼き」「蟹と強姦」……。もう翻訳ソフトはやめにしませんか(2017年4月26日)http://ramei.exblog.jp/25726044/

後半は、前回以上に度肝を抜かれるような中国語が次々に登場します。まずこれ。
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豚肉のホルモン焼きだと思いますが、その中国語がなんと「猪肉大肠癌(豚肉大腸がん)」。エーっ、癌を食べさせられるんですか!? ここまでくると、もう冗談は超えています。
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さらには、沖縄でよく食べるスパム焼き。その中国語が「烤垃圾(ゴミ焼き)」??

なぜこんな間違いが起きたのか、想像がつきます。中国語ではスパムメールは「垃圾邮件」。このスパム(ゴミ)とスパム(SPAM)を、翻訳ソフトが勘違いしたのだと思います。
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ホルモン炒めも無茶苦茶です。「把激素烧掉」の「激素」は確かにホルモンですが、これは女性ホルモンという場合の本当の意味のホルモンで、そもそも造語にすぎない日本語のホルモンを直訳してはいけません。
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次は確かに難しい料理名ですが、「菜の花と蟹の辛子和え」が「有强奸和螃蟹扔芥末」。これもおそろしい中国語です。直訳すると「蟹と強姦する……」??? なんでこんなことになったのか。「西兰花蟹肉芥末沙拉」でいいでしょう。
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そして、これも翻訳ソフト頼みのミスでしょうか。ジャンボ豚串の「ジャンボ」が「伟大(偉大なる)」になっています。中国ではよく「伟大的卫国战争(大祖国戦争)」などというときに使われますが、そんな大それたことばを使うのはおかしいのです。
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最後はこれ。フランクフルトが「猪肉的肠最后关头」。「肠最后关头」とは腸のお尻の出口、焼き鳥でいうぼんじりにも取れますが、そもそもこんな中国語はありません。「香肠」でいいでしょう。豚肉なら「猪肉香肠」。

実は、よく見ると他にもいろいろあったのですが、結局のところ、翻訳ソフトで訳した中国語をそのまま使っているからこんなことが起きてしまうのです。

もうこういうやり方はやめにしませんか?
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by sanyo-kansatu | 2017-04-27 11:47 | “参与観察”日誌 | Comments(3)
2017年 04月 20日

バケーションレンタルって何?

昨晩のワールドビジネスサテライト(テレビ東京)で、バケーションレンタルの世界最大手HomeAwayの日本進出が報じられました。

出張の会社員向けも… ユニークな民泊ビジネスが続々(2017/04/19)
http://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/newsl/post_130526

きょうから日本市場への本格参入を発表した、米・民泊仲介大手ホームアウェイ。都心を中心に少人数向けの物件が多い、同じく業界大手のエアビーアンドビーに対し、ホームアウェイは大人数向けに地方の一棟貸しをするのが最大の特徴です。リピーターが6割という訪日観光客が地方へと足を伸ばしているのに合わせ、民泊解禁と共に需要取り込みに期待を寄せます。3月から始まった民泊予約サイト「トリップビズ」は、審査を通過した企業だけが利用できるビジネスマンの出張に特化した仲介サービスで、約20社が契約しています。インバウンドの増加などでホテルの予約が取りにくい中、手ごろな料金で泊まれると言います。「トリップビズ」を展開するのはメガネチェーン大手のオンデーズ。自社の社員の出張が多かったため、宿泊施設確保の時間や費用を削減するため作りました。


昨日午後、都内のHomeAway日本支社で以下の記者会見もありました。
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世界最大級のバケーションレンタル会社 X 日本最大級のDMO HomeAwayとせとうちDMO、インバウンド観光推進で業務提携~歴史的な資源を活用した広域インバウンド誘致を目指す~(記者会見リリース)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000024333.html

この記者会見のポイントは、HomeAwayが瀬戸内海に面した7県の観光地経営推進組織「せとうちDMO」と提携して、この地域の古民家を外国人観光客にPRを始めるという話です。ワールドサテライトでも「地方の古民家丸ごと貸し出す!? 世界最大級の“民泊会社”が日本に」と報じていました。

提携したのは以下の両者です。
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HomeAway(日本語版)
https://www.homeaway.jp/
せとうちDMO
https://www.setouchi-bc.co.jp/setouchi-dmo

この記者会見は短時間でよくポイントがよくまとめられたものでした。その内容を紹介する前に、そもそもバケーションレンタルって何? という話から始めたいと思います。

解説してくれるのは、HomeAway日本支社の木村奈津子社長です。

彼女はバケーションレンタルを「オーナーが部屋を使用しない期間、物件を旅行者等へ短期間貸出するレンタルサービス」だといいます。ゲストハウスやシェアハウス、ホームステイなどの「個室」を扱う民泊はバケーションレンタルの一部にすぎないとも。そして、同社が注力するのは、「個室」ではなく、一軒家や別荘、古民家、マンション、ヴィラ、ロッジなどの「貸切り」だといいます。
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背景には、訪日外国人が利用する宿泊施設のニースの多様化があります。このデータはどこまで信憑性があるのかわかりませんが、訪日客の60%がリピーターであることから、新しいタイプの宿泊施設が求められているとも。
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ここで彼女は今日の宿泊施設を「サービスの充実度」と「ホストとの交流/プライベートへの志向」というふたつの軸で以下のようにマッピングします。もちろん、これはバケーションレンタルをメインにすえたものですから、ホテルや旅館といった既存の施設の多様性には触れません。興味深いのは、同社ではサービスの充実度よりセルフサービス寄り、ホストとの交流よりプライベートな空間を求める「ペンション、ヴィラ(1~3名)」「町屋、古民家(2~10名)」「家主不在型民泊 マンション(1~6名)」「家主不在型民泊 一軒家(2~20名」を重視していることです。
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これらの説明は、ここ数年民泊市場を席巻してきたAirBnBとの差別化を強く意識したものと思われます。彼女は両者の違いについてこのように説明しています。

         HomeAway     AirBnB
利用者の年齢層  中年層が中心    若年層が中心
宿泊人数      家族・グループ    一人旅
物件の立地     地方・リゾート地   都市部
予約単価・日数   平均1032$・6日間 平均584$・4日間
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つまり、都市部を中心に少人数向けの物件を提供するAirBnBに対し、大人数向けに地方の物件を一棟丸ごと貸し出すのがHomeAwayというわけです。

ここで示されるターゲット層や利用の状況については、アメリカで放映されているHomeAwayのCMをみるとよくわかります。
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Get HomeAway from it all(Home Away CM)
https://www.youtube.com/watch?v=G19cDebTd2s

このCMに見られるのは、おなかの出た中年のお父さんがパンツ一丁で登場するような、徹底的な大衆性です。家族がプライベートな空間を気取らず楽しむイメージであふれています。これでは到底若い世代にはウケませんが、それでいいのです。

今年に入って訪日外国人数は増えてはいるものの、その伸びが鈍化していることもあり、そもそも問題の多い「家主不在型民泊」で市場を席巻してきたAirBnBが伸び悩んでいると聞きます。

訪日外客数(2017 年3 月推計値)
◇ 3 月 : 前年同月比9.8%増の220 万6 千人(JNTO)
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/170419_monthly.pdf

訪日客の大半を占めるアジアからの旅行者の団体から個人への移行が進むなか、彼らの多くは一人旅やカップルというより、家族や小グループでの旅行を好むため、都市部のワンルームマンションのような狭い物件は使いづらくなっていることが考えられます。訪日客のニーズの変化とAirBnBが主に提供する物件のミスマッチングが起きているのです。

3月上旬、上海で現地の旅行関係者からこんな話も聞きました。「昨年まで中国の個人客は、安く上げられることを理由に民泊に夢中でしたが、日本のマンションは狭すぎるので、もう利用したくないというんです」。

だからこそ、民泊ではなく、これからはバケーションレンタルでしょう。そう同社は訴えているのです。

こうした動きに乗ったのが、日本のインバウンド市場では後発だった瀬戸内海周辺の関係者でした。

今回の記者会見でも、せとうちDMOはHomeAwayとの提携の経緯について語っていましたが、そのひとつの理由が、全国に150万軒あるという江戸後期から近現代にかけての古民家の保存・再利用をきっかけにした地域振興でした。なんでも瀬戸内には30万軒もの古民家があり、その大半は朽ち果てていくのを待つばかりの状況だそうです。

今回の提携に基づく最初の取り組みとして、愛媛県の古民家を再生した宿のHomeAwayによる海外市場へのPRが始まります。
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記者会見会場には、けっこう多くの取材陣が集まっていました。昨年メディアで論議が盛り上がった民泊の次のステージを告げるバケーションレンタルに対する関心の高さからでしょうか。
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質疑応答のとき、週刊朝日の記者がいい質問をしていました。「古民家のオーナーたちはどれだけコストを負担する必要があるのか」。

せとうちDMOの関係者によると、理想的には行政からの補助なども含め、オーナーのコスト負担はなしを原則にしたいが、実際にはオーナーが物件の所有者なのか事業者となるかなど、ケースによって異なるとのこと。そして、以下のような目標も掲げていました。

HomeAwayとせとうちDMOが提携、21年までに年間5.5万人泊(Travel Vision2017年4月19日)
http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=77361

ここ数年、HomeAwayの親会社であるexpediaをはじめとした海外の宿泊予約サイトの日本市場参入によって、インバウンド宿泊市場は活性化してきました。どんな無名の宿泊施設でも、サイト上でうまくPRすれば外国客が押し寄せるという状況が生まれていたのです。その意味では、今後インバウンドのメインステージとなる地方でバケーションレンタルという新機軸を掲げるHomeAwayの展開には期待が持てます。

その一方で、どれだけ有望な施設を提供できるのか。せとうちDMO関係者の話では、新施設を開業させるのはそんなにたやすい話でもなさそうです。

実をいえば、すでに多くのマッチングサイトがこの市場に参入しています。バケーションレンタルというのは、そんなに新しいものではなく、日本人も以前からハワイでコテージなどを貸し別荘として利用するなどしていました。同じことを国内で外国人向けに始めようという話です。HomeAwayでも、たとえば、愛媛県のページをみると、すでにいくつかの物件が紹介されています。
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はたして日本のインバウンド向けバケーションレンタル市場は今後どう動いていくのでしょうか。

来月下旬には、バケーションレンタルのイベントもあるようです。巻き返しを図るべくということなのか、AirBnBも出展するとか。

バケーションレンタルEXPO
http://minpaku-expo.com/visitor/
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by sanyo-kansatu | 2017-04-20 12:17 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 04月 09日

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示

このたび、ある中国の友人とこんなブログを始めることにしました。
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街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp

これまで本ブログでも何度か指摘してきましたが、外国人観光客が増えるのにともない外国語による案内表示が街に増えているのですが、ずいぶん間違いが目につくようなのです。

これはやばい!? 日本にはおかしな中国語表示があふれている
http://inbound.exblog.jp/24370756/
日本にあふれる「恥ずかしい中国語」をついに中国人に指摘されてしまいました
http://inbound.exblog.jp/26343657/

そこで、ぼくも中国語の勉強を兼ねて、街で見かける中国語表示のチェックを始めてみようかと思ったのですが、実際のところ、どこがどう間違っているか、よくわかりませんでした。間違いに気づくには、それなりの語学力が必要です。その話を友人にしたところ、中国人留学生なども巻き込んで、「間違い中国語探し」を始めてみようかということになったのです。

以下は、そのブログの代表である羅鳴さんの口上です。※同ブログより

日本を訪れる中国人の気持ちに気づいてほしい

僕は羅鳴と申します。広東出身で、来日してもうすぐ30年になります。

日本に来たばかりの1980年代後半、東京にはすでに多くの中国人がいましたが、今日のように街で中国語の案内表示を見ることありませんでした。その頃の日本の社会では、中国人はまだ貧しく、来日するのも出稼ぎのためと思われていて、そのような人たちに買い物や観光の案内が必要だとは誰も思っていませんでした。確かに、その当時、多くの中国人は僕のような留学生か、不法滞在者ばかりで、生活のためだけで精一杯、遊ぶ余裕も時間もありませんでした。

そんな中国人も、この30年間の改革開放政策のおかげで、経済大国になるほど成長を遂げました。国民もだんだん経済力を持つようになり、以前は夢のようだった海外旅行にも行けるようになりました。いまでは世界のあちこちに中国人観光客がいて、日本でも、銀座や新宿などでは、中国語がうるさいほど聞かれます。

中村さんとは古いつきあいです。ある日、彼から「おかしな中国語表示が増えていることに気づいていましたか」と聞かれたので、思わず苦笑してしまいました。「もちろんですよ」。そう答えた僕は、以前ある公衆トイレに貼られていた中国語表示をスマホで撮った写真を見せました。「やっぱり、そうですか…」。彼はやれやれというような困った顔つきになりました。

僕はもう日本に長く住んでいるので、こうした中国語を見ても、そんなに驚いたり、ガッカリする気持ちはありません。むしろ、多くの日本人が中国人観光客のために中国語表示を用意している姿を想像すると、悪い気分ではありません。もちろん、多くの場合、中国人にたくさん買い物をしてもらいたいからという理由からなのでしょうが、それは当然だと思うし、日本人の側から発せられるメッセージとしては、つたないぶん、微笑ましくもあるのです。

これを機会に、日本を訪れる中国人の気持ちに気づいてもらえるとうれしいです。 

                                                
そして、以下は同ブログマネージャーとなったぼくのあいさつということで。

【マネージャーからのひとこと】
中国語の勉強のつもりで始めました


私は中国語の初心者で、毎週1回、都内の小さな語学教室に通い、中国人留学生の先生に中国語を教えてもらっています。あまりまじめな生徒ではないので、すぐにテキストとは関係ない世間話を先生とするのですが、ここ数年日本の街角でよく目につくようになった外国人向けの案内表示やポスター、パンフレットなどで使われる、ちょっとおかしな中国語のことがよく話題になります。

正直なところ、私はそう言われても、どこがおかしいのかよくわかりませんでした。先生によると、単語の使い方や文法が間違っている以上に、日本語的な発想で中国語を使ってしまっている例や外国人が知らない日本人だけが了解している事情を説明なしに、そのまま翻訳してしまっているという例が多いそうです。あとは、安易に翻訳ソフトを使いすぎではないのかとも。

これまでそんなことを考えてもいなかったので、私は街角の外国語表示が急に目に入ってくるようになりました。日本人がつい間違えてしまう外国語表示とは、それすなわち、自分自身が普段使っている英語や中国語であり、それがいかにあやしげなものか、気になるようになったのです。

そんな話を古い友人の羅鳴さんにしたところ、当然のことかもしれませんが、日本に長く住む彼はとっくに気がついていました。そのうち、お互い街でおかしな中国語表示を見かけたら、写真を撮って、それを勝手に添削してネットで報告するブログを始めてみようか、という話になりました。聞きようによっては、意地悪なたくらみに思えるかもしれませんが、逆をいえば、このことについて日本を訪れる中国系の観光客の大半はすでに気がついていたわけで、それを知らなかったのは我々日本人だけだったのです。しかも、これは中国語に限った話ではありません。英語はもちろん、最近増えてきたタイ語も同様です。

中国語の勉強のつもりで始めたブログですから、誰かの揚げ足を取ったり、貶めようとする意図はまったくありません。もしよろしければ、皆さんもおかしな外国語表示を見つけたら、ご一報いただけるとさいわいです。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-09 09:57 | “参与観察”日誌 | Comments(0)