ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

inbound.exblog.jp
ブログトップ

カテゴリ:“参与観察”日誌( 233 )


2013年 05月 29日

世界一になったのに、なぜビザ緩和が進まないのか~中国の不満とその言い分(COTTM2013報告 その4)

フォーラム2日目の午後3時からパネルディスカッションがありました。
b0235153_113286.jpg

タイトルは「中国出境旅游运营商研讨&签证问题(Tour Operators & Visa)」。中国の海外旅行市場における今いちばんホットな話題、とりわけ個人旅行化とビザ問題について、業界としてどう考えるべきか、というのがテーマでした。

登壇したのは、北京の旅行会社2社のトップの男性ふたりと、ネット旅行社最大手C-Tripのマーケティングディレクターの女性、そして北欧に拠点を置くアフリカのサファリツアーで有名なアルバトロス・トラベル中国支社長で、彼だけが外国人です。司会進行はPATA(Pacific Asia Travel Association)中国支部の代表・常紅さんです。

今回討議されるテーマは、中国の旅行関係者の事前の投票によって決められたそうです。彼らがいまどんな問題に頭を悩ましているか。まさに一目瞭然の結果が出ています。

The most interested topics voted by Tour Operators
b0235153_11321519.jpg

そのうち上位6つの話題が以下のとおりです。

①半自助旅游(160 票)
②中国新型旅客(155票)
③ビザ問題(152票)
④人材育成(149票)
⑤アメリカの新ビザ制度について(赴美签证新规)(143票)
⑥オンライン購入について(129票)

では、ひとつずつ簡単に解説していきましょう。

まず、①「半自助旅游」ですが、要するに、航空券とホテルを旅行会社で予約するだけの自由旅行のことです。日程と宿泊場所だけが決まっていて、観光や食事は各自が自由に楽しむツアーのことで、日本の旅行業界では「スケルトン型」とも呼ばれます。
b0235153_1133890.jpg

中国の大手検索サイト「百度」によると、「半自助旅游」について以下の説明があります。
http://baike.baidu.com/view/1617048.htm

「半自助游是一种介于参团游与自助游之间的旅游方式,其特点是旅行社只负责交通和住宿等环节,而游览行程、餐饮等全让游客自己安排」

日本ではよくあるツアー形態のひとつですが、未だに団体ツアーが主流の中国では、「半自助旅游」が増えることで、旅行会社の営業にどんなダメージを与えるのか。それともこれは好機なのか、というのが討議の中心でした。「半自助旅游」が増えれば、旅行会社が顧客のために手配する仕事が減り、利益もそれに応じて減ると考えられるからです。

登壇者たちの多くは(こういう場に出てくる以上、当然なのかもしれませんが)、業界にとって「半自助旅游」が増えることは歓迎すべきだという趣旨の発言をしていたように思います。それが現在の中国の旅行業界の主流の考え方といえるかどうかは定かではありません。

次の②「中国新型旅客」も①につながるテーマです。COTRIのProf. Dr. Wolfgang Georg Arltが強調していた“New Chinese Tourist”問題です。旅慣れた新型旅客の要求に旅行業界はどこまで応えることができるか、というのがポイントでした。
b0235153_11334421.jpg

ここ数年、中国では「新型旅游方式」ということばは一種の流行語といっていいでしょう。ネットで検索すると、渡航先の珍しさだけでなく、滞在のスタイル、各種体験型など、いろんな旅行のスタイルが紹介されています。それらは、日本のような海外旅行の成熟した市場からみるとそれほど目新しいものではありませんが、問題はその大半が、中国の旅行会社が現在催行しているツアーでは実現することが難しい内容ばかりなので、彼らは頭を抱えることになります。

中国の「新型旅客」といえば、以前ぼくは若い世代のバックパッカーブームについて書いたことがありますが、もはやそれも若者だけの特権ではなさそうです。昨年、北京在住の老夫婦の旅が中国で大きな話題となったからです。

中国の中央電視台で放映された以下のニュース動画をご覧ください。

“花甲背包客”走红 新型旅游方式受追捧(央视国际:2012-10-02)

北京在住の張廣柱(63)さんと奥さんの王鍾津(61)さんは、定年退職後の2008年から11年にかけて北米や南米、ヨーロッパなど数十カ国をバックパッカーとして自由旅行しました。その旅行記は『花甲背包客(Happy Backpacker)』というタイトルで出版され、多くの読者を得たことで、ニュース番組にも取り上げられたのです。
b0235153_1135092.jpg

ご夫婦のブログ:花甲背包客(Happy Backpacker)
※YOU TUBE http://www.youtube.com/watch?v=c998WEjZq3k

中国で最も人気とされる同電視台の白岩松キャスターは、番組の中で「新浪微博(中国版ツィッター)」を利用して「あなたは普段どの旅行スタイルを採用しますか?」というアンケートを10月2日行なった結果、「自由旅行73.2%、団体旅行26.8%」と、圧倒的に自由旅行が支持されたことを伝えていました。 この数字は、現実と大きく乖離していますが、それだけいまの中国の人たちの願望を反映していると思われます。

番組の中で、若い記者のインタビューに快活に答えるご夫妻の微笑ましい様子を見ながら、ぼくはちょっとしたデジャヴュを覚えました。それは1980年代のことです。当時、こういう元気なシルバー世代のバックパッカーが日本でも話題になったものです。ここだけ切り取れば、いまの中国はかつての日本の雰囲気に本当によく似ていると思います。

しかしそれは、いまの中国の旅行業界が当時の日本と同じような新たな問題に直面していることを意味します。若い世代だけでなく、この老夫婦のような「新型旅客」ばかりになってしまったら、旅行会社はどうやって利益を得ていけばいいのか。どう生き延びていけばいいのか……。

一方、③④⑤については、中国固有の問題といえます。まず③と⑤ですが、共通の内容といえるのでふたつを足せば、いまの中国の旅行業界にとってビザ問題が最大の関心事であることがわかります。
b0235153_11353365.jpg

現在中国人が海外旅行に出かける場合、団体ビザを取得して旅行会社の催行するツアーに参加するのが一般的です。これだけ個人旅行や自由旅行への志向が強まっているにもかかわらず、それを実現できるのはまだ一部の層にすぎません。これは中国が世界の多くの国々とADS(Approved Destination Status)ビザ協定を結んでいることと大きく関係あります。これは、不法移民を防ぐために各国との間で結ばれた中国在住国民を対象とした特別な協定です(海外在住の中国人に対しては少しゆるい規定になっています)。詳しくは下記サイトに説明されていますが、1983年に香港・マカオとの間で始まったこの協定は、2000年代以降オーストラリアや日本との締結を皮切りに、欧米諸国や南米アフリカ諸国へと一気に広がっていきます。

Approved Destination Status (ADS) policy(China Outbound Travel Handbook 2008)
http://chinacontact.org/information/approved-destination-status-ads-policy

ADSビザ協定国増加の推移(中国国家旅行局) 
http://www.cnta.gov.cn/html/2009-5/2009-5-13-10-53-54953.html

一般にヨーロッパ諸国との締結は2004年以降、アメリカとは2008年。以後、多くの中国人団体観光客が欧米を旅するようになったのです。

今日の中国の人たちは、欧米とアジアに序列をつけて見ようとする傾向が強いため、最初は欧米に行けるだけで満足していたのですが、数年もすると、自分たちも日本人や香港人など他の国の人たちと同じように個人旅行や自由旅行に行きたいと思うようになります。実際、日本でも中国人に対する個人観光ビザが適用されたり、ビザ取得資格の緩和が行われたりしているように、欧米諸国でも同様の措置が徐々に進んでいます。今回のCOTTMに出展しているヨーロッパの旅行会社の中にも自由旅行専門の会社がいくつかありました。

それでも、多くの中国人にとっては公平とは思えないのです。「いまや中国は世界一の海外旅行大国になったのに、なぜビザ緩和が進まないのか」と感じているわけです。とりわけ、彼らの関心が集中するのが、アメリカのビザ制度に対してです。

というのは、欧米先進国の中で最後に中国人の団体観光ビザを解禁したアメリカは、いまだにビザ取得の条件として、領事館での個別面接を義務付けているからです。北京のアメリカ大使館の前によく行列ができているのを見かけますが、そこまで課していることに対して、彼らは大いに不満を感じているのです。

とはいえ、さすがに昨年、大使館での面接内容の一部が軽減されたと聞いています。それでもまだ十分ではないと彼らは考えているため、⑤の話題が独立して出てくるのでしょう。今回のフォーラムでも、欧米諸国とのビザ条件をどうしたら緩和できるかについて多くの時間を割いていたようです。

彼らの気持ちはわからないではありません。これはぼくが北京で知り合った多くの旅行関係者にも共通している思いです。彼らにすれば、中国人だけ差別されているように感じるからです。

この問題に対する不満は、とりわけ中国メディアの記者などに強いように見えます。彼らはビザ問題を、中国人としての自尊心や面子の問題とすり替えようとしがちです。その主張を強く後押しするのが、前述の「いまや中国は世界一の海外旅行大国になったのに、なぜビザ緩和が進まないのか」という苛立ちです。

この点、中国の旅行業界の人たちは、メディアの人間に比べるといくぶん理性的に見えます、というのも、彼らは仮に欧米諸国や日本がビザ緩和を必要以上に進めると、不法移民が発生しかねない国情がいまの中国にあることを一方で理解しているからです。それは旅行業界の人たちが、中国の一般の人たちやメディアの人間に比べ、海外の事情をよく知っていて、冷静に物事を考えることのできる人材が多いからだと思います。

④人材育成の問題に彼らが高い関心を持っているのも、ビジネス上日常的に海外と中国の実情とを比較することができる立場にあるからでしょう。なんといっても、中国の海外旅行の歴史はわずか15年です。基本的に中国の旅行業界は長い時間、インバウンド(外客の受け入れ)で成長してきたわけですから、アウトバウンド・ビジネスに適応する人材は圧倒的に不足しており、その育成は急務となっています。さらに「新型旅客」の登場は、海外事情に詳しい人材を育てなければ業界そのものが生き残れないことを強く意識させています。

また、⑥オンライン購入の話題についても、ネットが旅行業のビジネスモデルを大きく変えようとしている中、時代の変化に適応した人材をこの業界でも必要としていることがわかります。

そうした事情は国家旅游局の役人も当然のことながら意識しているようで、以下のようなネットの記事も見つかりました。

新旅游业态呼唤新型旅游专业人才(2013-05-07)
http://www.lifedu.net/news/zhijiao/41092.html

この記事からもわかるように、いま中国の海外旅行マーケットはモデルチェンジとアップグレードの時代に向かっています。専門性の高い人材を育成するため、中国政府は大学の旅行専門学部や専門学校を急ピッチで開校させています。彼らは量だけでなく、人材の質を高めることが課題であることも認識しています。もっと日本との人材交流が進むと面白いと思います。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2013-05-29 11:37 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 05月 26日

中国の旅行業界に貢献したツーリズム大賞2013受賞者の顔ぶれから見えること(COTTM2013報告 その3)

この種の展示商談会には、この1年業界に貢献した企業・団体へのツーリズム大賞の授賞式がつきものです。COTTM2013(中国出境旅游交易会)では、どんな人たちが受賞したのでしょうか。

授賞式のプレゼンターは、ここでもCOTRI(中国出境旅游研究所)の代表のProf. Dr. Wolfgang Georg Arlt氏です。

以下、「マーケティング部門」「プロダクト・イノベーション部門」「インターネット部門」「サービス・クオリティ部門」「総合」の5つの部門の受賞者たちの顔ぶれを簡単に紹介しましょう。

COTTM2013 Award
http://www.china-outbound.com/fileadmin/template/pdf/Press_releases/2013/COTRIPress_ReleaseApril162013.pdf

●マーケティング部門
金賞 National Tourism Organisation of Serbia (NTOS) & National Tourism Organisation of Montenegro (NTOMNE) (Serbia & Montenegro)
http://www.serbia.travel/
http://www.visit-montenegro.com/
銀賞 Nicholas Publishing International (United Arab Emirates) http://www.npimedia.com/
b0235153_23325063.jpg

銅賞 Transaero Airlines(Russia) http://www.transaero.com/

●プロダクト・イノベーション部門
金賞 Travel Trade China(UK) http://www.traveltradechina.com/
銀賞 Fundatia Euro-Asia Promotion and Cultural Fundation (Romania)  http://culture360.org/members/euroasia/
b0235153_23337100.jpg

銅賞 Sun International (South Africa)   http://www.suninternational.com/
b0235153_2334162.jpg

●インターネット部門
金賞 Shanghai QinLu Electrical Technology Co., Ltd. & Xi'an HuaFan Instruments Co., Ltd. (China)  
http://www.shqinlu.com/
b0235153_2335819.jpg

銀賞 Tahiti Tourisme (Tahiti)    http://www.tahiti-tourisme.cn/
b0235153_23354661.jpg

銅賞 Central Hall Westminster (UK)

●サービス・クオリティ部門
金賞 Alila Hotels and Resorts (Bali, Indonesia)   http://www.alilahotels.com/
b0235153_23362474.jpg

銀賞 Abel Tasman Sea Shuttle (New Zealand)   http://www.abeltasmanseashuttles.co.nz/
b0235153_23371128.jpg

銅賞 The River Lee Hotel (Ireland)   http://cn.doylecollection.com/
銅賞 Himalayan Kingdom tours (Bhutan)   http://www.nepal-uncovered.com/tours/bhutan/bhkt.php
b0235153_23375414.jpg

●総合
金賞 Voortrekker Monument & Nature Reserve (South Africa)   http://www.voortrekkermon.org.za/
b0235153_23382968.jpg

銀賞 El Corte Inglés (Spain)    http://www.elcorteingles.es/
b0235153_2339178.jpg

銅賞 Uniline Croatia (Croatia)   http://www.uniline.hr/hrvatska/
b0235153_23393153.jpg

ぼくは一連の受賞風景を会場でずっと眺めていたのですが、受賞者たちは登壇しても短い挨拶程度のスピーチしかなかったこともあり、それぞれの受賞理由についてはあまりよくわかりませんでした。それでも、アフリカや東ヨーロッパなど、海外旅行先としてはまだ珍しいであろう国々の観光局や旅行会社などが多く受賞していることに、ちょっと驚きました。

こういう雰囲気は、旅行業界が次々と新しいディスティネーションを追い求めていた日本の1980年代~90年の感じに似ていると思いました。まだ誰も知らない、行ったことのない大陸や辺境へと勇んで出かけていこうとしている時代に、中国が向かおうとしていることを実感します。

マーケティング部門やインターネット部門の受賞者を選んでいることも興味深く思いました。中国の海外旅行マーケットでいま何が起きているかを知るには、これらの受賞者たちがどんな理由で評価されたかについて、もう少し調べてみる必要があるかもしれません。

ところで、JATA旅博でも「ツーリズム大賞」と称して、海外の旅行関係者の中から日本の海外旅行マーケットの促進に貢献した企業・団体を表彰しています。

JATA Tourism Awards(ツーリズム大賞)
http://www.jata-net.or.jp/tourism_awards/awards_record.html

ちなみに、2012年の受賞者は以下のとおりです。

●観光局部門 
台湾観光協会 
http://www.go-taiwan.net/
メルコスール観光局 ※南米4カ国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)の共同の観光局
http://www.mercosur.jp/

●特別賞
フィンエアー(フィンランド航空)
http://www.finnair.com/JP/JP/japan

●パブリシティ部門
日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」

受賞理由は話題性という意味でなんとなくわかる気はするのですが、サプライズはあまり感じられません。これが市場の成熟化というものかもしれませんが、少なくともいまの中国には海外旅行に対する熱気や期待が日本以上に感じられるのは確かです。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2013-05-26 23:42 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 05月 26日

2012年、中国は米独を抜いて世界一の海外旅行大国になった(COTTM2013報告 その2)

COTTM(中国出境旅游交易会)を視察して興味深かったのは、国内外の業界関係者が登壇し、さまざまなテーマで意見を交わすフォーラムでした。ここで議論される内容は、現在の中国の海外旅行市場を理解するうえでいろいろと参考になります。
b0235153_1652596.jpg

COTTM2013 http://www.cottm.com/

3日間を通じたフォーラムの主要なテーマは、おおむね以下の4つでした。

①中国のラグジュアリー旅行の展望
②SNSの現在形(中国で海外旅行に最も影響のあるメディアのいま)
③業界の抱える6つの課題(査証問題を中心に)
④不動産投資旅行に対する業界の取り組み

このうち、残念なことに①だけ都合が悪くて出席できませんでしたが、②~④については、追って紹介しようと思います。とりわけ、④は日本の旅行業界ではあまり話題にならないような、中国らしい生々しいテーマといえるかもしれません。

さて、この4つのテーマに共通するキーワードは“New Chinese Tourist”です。今回多くの登壇者たちが語ろうとしていたのは、「いったい“New Chinese Tourist”とは何者か?」という問いを明らかにする試みだったと思います。

こうした問いが生まれるのは、十分すぎるほどの理由があります。2012年、中国がドイツ、アメリカを抜いて海外旅行マーケットで世界一の規模になったからです。この事実の意味するところを世界はどう受けとめ、対応するかが問われているというわけです。

「Are you ready?」。そう繰り返し問いかけるのが、COTTMのフォーラムの司会進行を務めるProf. Dr. Wolfgang Georg Arlt(以下、教授)です。
b0235153_167253.jpg

ドイツ出身のTourism Scientistである同教授は、2004年に自ら設立したCOTRI(中国出境旅游研究所)の代表として、中国の海外旅行市場に関する精力的で継続的な調査研究を行い、今回のCOTTMの企画運営にも参加しているという学者です。2004年12月から05年3月まで、日本学術振興会の研究員として筑波大学に招かれたこともあります。

COTRI(China Outbound Tourism Research Institute)
http://china-outbound.com/

フォーラムの冒頭で、教授はこう語ります。

UNWTO(国連世界観光機関)は、今年4月4日、中国は2012年に8300万人の出国者と1020億ドル超の消費を記録し、ドイツ(前年度1位)、アメリカ(前年度2位)を抜いて世界最大の海外旅行市場になったと発表しました。2013年には9500万人の出国者が推計されています。これはUNWTOがかつて予測した2020年までに1億人の中国人が出国するというスピードをはるかに超えたものとなっています」
b0235153_1638576.jpg

※とりわけ2012年の出国者数の伸びは大きく、前年度比約20%増。伸び率の高い国のランキングでいうと、タイ+62%、台湾+57%、スペイン+55%、アメリカ+41%となります。ちなみに、日本は1~9月までは+71%とトップなのですが、10~12月は-37 %という皮肉な結果となっています。また、消費額は前年度比40%増という驚くべき数字です。

※2012年の海外旅行消費額ランキング(UNWTO)

1位 中国 1020億ドル 40.5%増 ※伸び率でも他を圧倒。
2位 ドイツ 838億ドル 5.8%増
3位 アメリカ 837億ドル 6.4%増
4位 イギリス 523億ドル 4.1%増
5位 ロシア 428億ドル 31.8%増 ※中国に次ぐ高い伸び率。「新興国の中間層が世界の旅行市場を塗り替えようとしている」タレブ・リファイUNWTO事務総長のコメントより。
6位 フランス 381億ドル 6.4%減
7位 カナダ 352億ドル 6.7%増
8位 日本 281億ドル 3.1%増
9位 オーストラリア 276億ドル 2.9%増
10位 イタリア 262億ドル 1.0%減

これまで中国の海外旅行者数として挙げられる数字には、香港、マカオへの渡航者数も含まれており、その数が3000万人程度あったため、全体像をかなり割り引いて考えなければならないという指摘もあったのですが、2012年度においては、8300万人中3000万人ということで(これでも十分多いですが)、中国人の海外旅行に渡航先の多様化が起きており、その結果、香港・マカオの比率が減少していることがわかります。 

実は今回、多くの登壇者が合言葉のように共通して口にした話題ですが、教授はさらにこんな話をしました。

「4月7日、習近平主席は今後5年間、中国は4億人以上の中国客を海外に送ることになるだろうとコメントしました。中国の政治リーダーのこうした発言は、市場の拡大に向けた大きな推進力となります。
b0235153_16145414.jpg

以前は『中国の海外旅行市場にどんな意味があるのか』とよく聞かれましたが、いまはもう古い質問となりました。『Yes, No1 in the World』と答えるだけですむからです。

新しい質問はこうです。『中国の海外旅行市場はどのように発展するのでしょうか』。それに対する2013年の答えはこうです。『Scientifically solid forecasting needed』(科学的で実質的な予測が必要とされます)」

教授によると、劇的な成長を遂げる中国の海外旅行市場ですが、1978年の改革開放以降、以下の4つの時期をへてきたといいます。( )内は出国者数。

①1983-96 VFR and delegations(外交団と各種代表団の時代) (1996 8 mio)
②1997-2004 ADS and chaotic growth(ADSビザと無秩序な成長の時代) (2004 29 mio)
③2005-10 Gaining experience and scope(経験の獲得と渡航地域の広がった時代) (2010 57 mio)
④2011-? The second Wave of china’s Outbound Tourism: sophistication and segmentation(中国の海外旅行の2度目の波:洗練とセグメントの時代) (2012 70 mio ,12 83 mio)

※ADS(Approved Destination Status)は、不法移民を防ぐために各国との間で結ばれた中国在住国民を対象としたビザ協定のこと。現在の中国人と旅行業界にとっての最大の関心事でもあるので、詳しくは別の回で。

教授は言います。「いまや中国の海外旅行市場は“洗練とセグメントの時代”を迎えている。その主人公は、“New Chinese Tourist”である。そして、

“New Chinese Tourist”-becoming “noramal”(like us?)」と問いかけます。

私たち(先進国)と同様に、“New Chinese Tourist”は普通に存在している、というのが教授の主張です。その理由として、以下の事例を挙げています。

①1997年以降、15年間の海外旅行の経験
②1978年以降、150万人の留学生が帰国していること
③アメリカとヨーロッパに累計で各100万人の留学生がいたこと
④中国の富裕層の平均年齢は39歳であること
⑤100万ユーロの個人資産の所有者100万人
⑥1億元の個人資産の所有者6万人
⑦10億元の個人資産の所有者4000人
⑧5.5億人のインターネット利用者

さらに、“New Chinese Tourist”には以下のような特徴があると指摘します。

①団体ツアーに対してネガティブなイメージを持っている
②ブータンでバードウォッチングをしたいというような専門的な旅を求めている
③経験と語学を身につけることで、旅行会社の手配するビザや航空券、ホテルを利用する以外の別の形を求めるようになる
④とはいえ、たとえ中国人が個人旅行化しても欧米的な“individual” travellerとは同じではない
⑤“New Chinese Tourist”といえども中国人である。他国で中国語の表示やサインを見つけることで、その国から尊敬を得ていると感じる
⑥彼らは同じ中国人の仲間からの情報を信用する傾向にある
⑦彼らは単なる休暇ではなく、名声や教育、投資のためにアジア以外の国に旅行することを好む。「Money-rich, Time-poor」な人たちである

こうした特性を持つことから、2013年、中国の海外旅行者の30%以上が旅行会社の手配を必要としなくなるだろう、といいます。
b0235153_16193044.jpg

“New Chinese Tourist”とは「New customers(新しい顧客)」であり、彼らを取り込むには「new distribution, channels, new denmands(新しい流通とチャネル、そして新しい要求)」に応えていかなければならない。

そのためには、「Niche products and distinations」(ニッチな商品と渡航先)」が必要とされている。彼らは他人に自慢するために観光地でスナップ写真を撮るためだけの目的では満足せず、特別な場所で特別な体験をしたいと考えている。これからの中国の旅行業界が取り組むべきは、ニッチな商品の開発と新しい渡航先の開拓だ、と結論しています。

いかがでしょうか。前回紹介したCOTTMの渋すぎる出展国のラインナップは、中国の旅行業界がニッチな渡航先を開拓する段階に至っていることを意味していたのです。

もっとも、一連の教授の話を聞きながら、規模と実態をきちんと区別する必要がありそうだと感じたのも事実です。日本で目にする中国からの観光客の大半は、まだとても“New Chinese Tourist”と呼びうるとは思えないからです。

ニッチの市場規模をどの程度に見積もるべきかについては、依然考慮を要すると思われます。また教授が指摘するように、“New Chinese Tourist”といえども中国人であり、欧米や日本の個人旅行者と同じようにイメージしてしまうと、勘違いも起こりそうです。

CNNが同様のテーマについて以下の記事を配信しているのを見つけました。記事の中には、教授もコメンテーターとして登場しています。

Chinese tourism: The good, the bad and the backlash(CNN)  April 12, 2013

ここでは、基本的に中国の海外旅行マーケットの成長を歓迎しつつも、個別の受け入れ国の側に中国客のマナーやふるまいをめぐって戸惑いがあることや、逆に中国人の側にも、欧米先進国に対する複雑なコンプレックスがあることを指摘しています。

“Chinese tourists often say they feel treated like second class people, even when they spend a lot of money” (CNNの同記事より)

こっちはお金をたくさん使っているのだから、一等国民として扱うべきだ……。なんとも痛々しい叫びともいえますが、そういう態度が他国の人から見ていかに傲慢に映るのか。それに気づいたとき初めて、世界の人たちは中国客に対して普通に接するようになるということを、もっとこの国の知識層は国民に啓蒙したほうがいいのだろうと思います。すでにブログなどでは、そういう議論がよくなされているのも事実ですけれど。この問題は彼らの自尊心とビザの話にもつながってくるので、また別の機会で。

さて、それはそれとして、2012年、中国はドイツ、アメリカを抜いて海外旅行マーケットで世界一の規模になり、今年も出国者数を順調に伸ばしているにもかかわらず、ほとんど唯一の例外として、訪日旅行市場だけが減少しているという事態について、やはりあらためて考える必要はあると思います。

そのためにも、中国の旅行業界でいま何が起きているのか。どんなことを彼らが議論しているのかについて、ある程度知っておく必要があるはずです。それが、この記事をぼくがブログに書いている動機のひとつとなのですが、中国の事情に詳しくない方でも、たとえば、2012年のJATA旅博のフォーラムで日本の旅行業界関係者が議論したテーマと今回ぼくの紹介した中国のケースをちょっと比べてみてください。

JATA国際観光フォーラム2012
http://www.b.tabihaku.jp/data/jataReport_ja.pdf

JATA旅博の場合、基調講演にしてもそうですが、シンポジウムの内容も「これでいいのか日本のインバウンド~真の観光立国となるために」「新たなマーケットの可能性と旅行会社の役割」(アウトバウンド部門)といった調子で、北京と比べると、テーマも抽象的でどこか予定調和的な印象が拭えません。あるいは、国際的なマーケットの動きや業界を超えたビジネスの広がりについてどこまで視野が及んでいるのか、ちょっと疑問です。

もちろん、国情や市場環境が違う以上、単純に比較しても意味はないのですが、いまや世界最大の海外旅行送り出し国となった隣の国の旅行商談会で繰り広げられている熱い議論についても関心を持つべきだろうと思います。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2013-05-26 16:30 | “参与観察”日誌
2013年 05月 23日

出展国が渋すぎる!? 北京のB2B旅行展示会(COTTM2013報告 その1)

4月9日~11日、北京で開催されたCOTTM2013(中国出境旅游交易会)(http://www.cottm.com/)に行ってきました。
b0235153_9373365.jpg

一般に旅行展示会といえば、日本ではJATA旅博(http://www.tabihaku.jp/)、中国では今年5月の開催で10年目を迎えたWTF(上海世界旅游博覧会 http://www.worldtravelfair.com.cn/)や、6月21日~23日に北京で開催予定のBITE(北京国際ツーリズム・エキスポ http://www.bitechina.com.cn/)などB2Cのイベントが知られていますが、COTTMはB2B、すなはち国内外の旅行業者だけが集まる商談会で、今年で9年目を迎えます。
b0235153_936576.jpg

会場は、北京市朝陽区にある農業展覧館。2012年のWTF会場だった上海展覧館と同様、社会主義を標榜した時代の中国を思い起こさせる石造りの重厚な建築(1959年開館)で、現在さまざまな業界の展示会や商談会が頻繁に行なわれています。

今回の展示会では、海外から62カ国、275団体・企業が出展し、4000名を超える中国の旅行関係者が来場したと公式サイトは伝えています。では、会場の様子を覗いてみましょうか。
b0235153_937368.jpg

正面玄関を抜けると、目の前の一等地に左右に分かれて巨大なブースを展開していたのは、メキシコ観光局とトルコ観光局でした。
b0235153_9375434.jpg

正面に向かって左に進むと、アフリカ諸国のエリアです。エチオピアやチュニジアなど、色鮮やかなブースが並びます。
b0235153_9382020.jpg
b0235153_9382668.jpg

アフリカの民族衣装を身につけたスタッフも多く、陽気な雰囲気です。もともと中国にはアフリカ諸国からの留学生が多く、経済協力関係の深い地域だけに、なるほどという感じもします。あまり深読みしても仕方ありませんが、中国では観光がマーケットの都合だけで動いているわけではなく、「政治」が大きく影響していることを実感する光景です。
b0235153_939563.jpg

一方、右側のエリアはヨーロッパや中近東諸国が中心です。もっとも、英仏独といった主要国ではなく、スロバキア(中国語で「斯洛伐克」)やクロアチア、アゼルバイジャンといった旧社会主義圏の国々を中心とした観光局のブースが続きます。
b0235153_9391772.jpg
b0235153_9392472.jpg

奥の広いスペースに、今回最大の出展数だったアメリカ各州観光局の共同ブースや中南米、アジア各国のブースがありました。
b0235153_9395153.jpg

b0235153_9401819.jpg

b0235153_10111781.jpg

以下、公式パンフレットに掲載されていた出展企業・団体の国別リストです。

●アジア(16)
UAE、イラン、インド、韓国、カンボジア、シンガポール、ネパール、バングラディシュ、フィリピン、ブータン、ベトナム、マカオ、マレーシア、モルジブ、モンゴル、オーストラリア
b0235153_9405351.jpg

●アフリカ(12)
エジプト、エチオピア、ガーナ、カメルーン、ケニア、セーシェル、タンザニア、チュニジア、ブルンジ、マダガスカル、マラウィ、モンテネグロ

●中近東(5)
アゼルバイジャン、イスラエル、ウズベキスタン、ドバイ、トルコ

●中南米・太平洋(5)
コスタリカ、タヒチ、フレンチポリネシア、ベネズエラ、メキシコ

●欧米ほか(28)
USA、アイスランド、アイルランド、イタリア、ウクライナ、英国、オーストリア、カナダ、ギリシャ、クロアチア、ジブラルタル、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベラルーシ、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、ロシア

※トータルすると、国の数が公式発表より多くなるのは、一部出展を見合わせた国・地域があるからかもしれません。すべてをつき合わせてチェックしているわけではないので、ご了承ください。

出展国のリストだけ見ていると、なんという渋すぎるラインナップだと思うかもしれません。また逆に、中国人はこんなマイナーな国々へも海外旅行に行くようになったのか、と驚かれるかも。だいいち、人気のハワイもNYも、パリや香港のブースもないのですから。すでにお気づきと思いますが、主要国の中で唯一日本からのブースだけがひとつもありませんでした。

もっとも、それはCOTTMが一般消費者を対象としたB2Cの展示会ではないからといえます。旅行業のプロだけが集まる展示会だけに、よく知られた人気ディスティネーションのブースは必要がないのです。消費者が来場しない以上、彼らもPRする意味がないからです。

それでも、個々のブースは小さいため目立ちませんが、ヨーロッパから28か国の出展者がいることは興味深いです。それらの出展者の特徴は、前述したスロバキアやクロアチアなど、中国市場における新しいディスティネーションが観光局中心であるのに対し、英仏独などの主要国では、極地旅行や海外ウエディング、欧州個人旅行などの専門ジャンルに特化した旅行会社が出展していることです。つまり、すでに団体ツアーが多数訪れている主要国では、個人客を対象としたSIT(スペシャル・インタレスト・ツアー:特別なテーマや目的に特化したツアー)向けの商品を販売する民間の旅行会社のブースだけが出展しているということです。
b0235153_9445975.jpg

さらに興味深かったのは、ラグジュアリー旅行を提供する海外の旅行会社のブースだけを集めた特設コーナーもあったことです。
b0235153_9493726.jpg

つまり、COTTMは、中国の旅行業者にとって、これまで知られていなかった新しい旅行先や新機軸の旅行ジャンルを開拓するための貴重な情報交換の場となっているのです。そのことは、中国の海外旅行市場がすでにアフリカや中南米、旧社会主義圏のヨーロッパなどの国々やSITの世界へ触手を伸ばそうとしていることを意味しています。

そういう意味では、確かに日中関係が悪化しているとはいえ、この場に日本からの出展者がないことはちょっと残念だといえます。中国から見て日本市場はもうヨーロッパと同様、個人客を対象としたSITの時代に入っているというのに、それをPRしようとする業者がいないというのですから。

実は、日本に代わって多くの中国客が訪れている韓国からのブースは、唯一DICAPACというカメラや携帯の防水ケースを販売する会社でした。どれだけアピールできたかわかりませんが、この場に出展すべきなのは、たとえばこういう業者なのだと思います。
b0235153_9475849.jpg

確かに、COTTMに出展する意義をどう考えるかについては、いろんな見方があるとは思いますが、これまでのように一般消費者を対象とした旅行博に自治体主導で横並びに出展するスタイルが効果的かどうか、いまいちど考え直す必要があると思います。もはや中国から見た日本市場は、ヨーロッパと同じように、個別のSITツアーを打ち出すべき段階に入っているからです。

そのことは、COTTM会場で連日繰り広げられたフォーラムに登壇した中国の旅行関係者らが語っていたことです。その内容については、次の機会に
[PR]

by sanyo-kansatu | 2013-05-23 09:52 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 05月 20日

京都で日本初のラグジュアリー・トラベル商談会「ILTM JAPAN2013」開催

3月上旬、京都で日本初のラグジュアリー・トラベル商談会「ILTM JAPAN2013」開催されたので、視察に行ってきました。以下は、「月刊宝島」2013年6月号に寄稿したレポートです。


3月11日~13日、京都市で日本初の富裕層向け旅行の商談会「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット・ジャパン(以下、ILTMジャパン)が開催された。

ILTMは毎年カンヌで開催され、世界各国から1300社以上の観光業者が集まる商談会だ。2007年からアジアでは上海でも開催されている。世界の富裕層旅行市場の重心が欧米からアジアに移行するなか、世界で二番目に富裕層が多く、観光資源に恵まれた日本がILTMを誘致した背景には、「富裕層旅行者の取り込みを強化したい」観光庁と、日本を代表する世界遺産都市・京都の連携があった。

ILTMジャパンには、国内外のラグジュアリーホテルや高級旅館などの出展者と、バイヤーである旅行会社の約120社が集い、海外と日本それぞれの富裕層旅行者獲得のための商談会が繰り広げられた。
b0235153_12593270.jpg
会場は、出展者でもあるコンサルティング会社のプラン・ドゥ・シーが運営するThe SODOH Higashiyama Kyoto。京都画壇を代表する竹内栖鳳の旧邸宅を改装した高級結婚式場だ。

初日に観光庁主催で外国人富裕層受入に関心のある宿泊・観光業者を対象としたセミナーが開かれたが、テーマは「富裕層旅行とは何か」。俗に個人資産100万ドル、年収30万ドルで、プライベートジェットを乗りこなすといわれる富裕層旅行について、ILTMジャパン日本地区代表の福永浩貴氏は「『本物』の価値を理解し、さらなる豊かさを追い求める人たち」と定義する。彼らが求めているのは「一生に一度の体験」という。

ILTMディレクターのアリソン・ギルモア氏は「日本にはポテンシャルがある。しかし、世界に知られていない」と指摘する。

相変わらず「アピール下手」とされる日本だが、海外バイヤー30社中、中国7社、シンガポール4社など、中華系が半数を占めるように、日本の高品質の旅行資源に対する近隣諸国の関心は高い。マスを対象としない富裕層旅行市場だが、米国帰りの中国人富裕層の婚活ラブコメ映画『非誠勿擾』のヒットが中国客の北海道旅行を急増させたように、新たなビジネストレンドを生み出す起爆剤となる。商談会を通じて多くの関係者が語っていたように、日本をどうアピールするか、今問われている。

ILTM Japan日本事務局
http://www.iltm.net
b0235153_1301637.jpg
初日夜に建仁寺で開催されたオープニングパーティ。中央の着物姿の女性はILTMディレクター、アリソン・ギルモア氏
[PR]

by sanyo-kansatu | 2013-05-20 12:56 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 05月 01日

沖縄外客トップ2、台湾客と香港客のツアーについて

これまで沖縄を訪れる台湾や欧米のクルーズ客船や中国本土客のツアーの現状を見てきました。
b0235153_9242162.jpg

文化観光スポーツ部観光政策課が2013年1月に発表した「平成24年 沖縄県入域観光客統計概況」によると、沖縄の海外入域観光客数は「年間37万6700人となり、対前年比で9万6,700人増加、率にして+34.5%となった」とあります。

そのうち、外客のトップは台湾で約14万人、2位は中国で約7万人、3位は香港で5.8万人です。ただし、昨年秋以降、中国からの訪問客は激減していますから、少なくとも2013年の上半期において沖縄外客トップ2は、台湾客と香港客だと言わざるをえません。

そこで、沖縄外客トップ2の台湾と香港のツアーについて見ていきたいと思います。

台湾からは、那覇に寄港するクルーズ客船のオプショナルツアーを担当している太陽旅行社。香港からは日本への送客ナンバーワンのEGLツアーズ(東瀛遊旅行社)にしましょう。ちなみに、EGLツアーズは、2011年の東日本大震災の後、香港で最も早く日本ツアーを再開させた旅行社で、以前ぼくはあるビジネス誌で同社の袁社長にインタビューしたことがあります。

殺し屋と批判されても日本ツアーを再開したわけ
感動の復興ドラマ【香港EGLツアーズ】 PRESIDENT 2011年7月18日号
http://president.jp/articles/-/1369

太陽旅行社
http://www.okaking.com.tw

EGL Tour(東瀛遊旅行社)
http://www.egltours.com

一般に台湾や香港の沖縄ツアーは3泊4日か4泊5日が主流のようです。まず台湾の太陽旅行社の沖縄ツアーから。

■沖繩繽紛精選四日遊
4月下旬~5月中旬発(料金不明)

第一天台北~沖繩(琉球)~建築奇景『樹屋』~『波之上神宮』、『孔子廟』~半潛水艇『銀河探險號』~『福州園』~那霸西門町『國際名人通』~新都心
參考班機 CI 120 0815/1045

第二天 安保之丘(嘉手納基地が望める)~『夢幻森林公園BIOS』~暢遊人氣主題公園『國營沖繩紀念公園』(海豚表演)、世界之最 (美之海水族館) ~『亞熱帶水果樂園』(熱帶果園、蝴蝶樂園、飛鳥樂園)

第二天『守禮門』~藥妝購物店(ドラッグストア)~『玉泉洞』鐘乳石 ~『王國村』傳統工藝~造酒場~『琉球傳統大鼓隊』~北谷町『美國村(アメリカンビレッジ)』自由逛街購物。

第三天沖繩( 琉球 )~台北 參考班機 CI 121 1155/1230

宿 SOUTHERN BEACH RESORT 
RIZZAN SEA-PARK HOTEL海景皇宮 
PS:或MOON BEACH、SOUTHERN LINKS、KARIYUSHI RESORT、SUN MARINA、MURASKI MURA、TOKYO DAI-I-CHI、殘波岬など。

食 中餐:1.沖繩麵套餐 2.沖繩傳統料理 3.琉球王國自助餐
晚餐:1.健康食彩自助餐(或)日式料理 2.燒烤無限暢吃(或)精選BAR.B.Q套餐 3.琉球御膳料理(或)海鮮火鍋+沖繩豬肉吃到飽 (或) 日式料理
b0235153_9252419.jpg

※嘉手納基地を一望する小さな丘は「安保の丘」と呼ばれています。「道の駅 かでな」のすぐそばにあります。

次に、EGLツアーズの沖縄ツアー。
b0235153_9263668.jpg

■港龍直航沖繩4天
5 月6日発 6699香港ドル

第一天 香港~直航沖繩~波之上神宮
宿 國際級MARRIOTあるいは萬豪SEA VIEW海景房洒店

第二天海洋博水族館~觀賞海豚表演~水果樂園試食時令水果~有趣蝴蝶溫室~雀鳥天地館~著名電影『戀戰沖繩』拍攝地萬座毛
食 網燒燒肉地道美食+多款飲品自助餐
宿 LOISIR HOTEL NAHA 海底露天溫泉及溫泉泳池酒店
連續2晚入住同一酒店享受旅遊舒適樂趣包海底露天溫泉及溫泉室內泳池 (請帶備泳衣)

第三天 漁港海鮮市場~金鎗魚SHOW~海底玻璃生態觀光船~守禮門~世界遺產『首里城』~建築奇觀『樹包厝(樹屋)』~國際通商店街
食 有機名菜健康自助餐+琉球海鮮鍋餐

第四天 玉泉鐘乳石洞~琉球王國村~熱帶果樹園~玻璃陶器工房~元氣大鼓表演~MAIN PLACE 購物城~機場~香港
b0235153_22473527.jpg

※香港映画『恋戦沖縄』(2000)は陳嘉上(ゴードン・チャン)監督、主演は、いまは亡きレスリー・チョン(張國榮)、フェイ・ウォン、レオン・カーフェイ、ジジ・ライ、加藤雅也らの出演する娯楽作。万座毛が撮影地のひとつ。

最も安い定番ツアーを選んだせいか、両者の違いはほとんどないようです。中国本土客のツアーもだいたいこんな感じです。

それでも、沖縄のある旅行業者によると、沖縄のインバウンドはまず台湾市場が新しい商品や方向性を打ち出すと、その3か月後くらいに香港市場も呼応して動き出す。そして、しばらくすると上海市場にも飛び火していく、というような連動した動きがあるそうです。

もともとツアー客の比率の高かった台湾(2003年は全体の64%が団体。しかし、現在は半々)も、すでに個人客の多い香港も、ツアー以外の個人客の動きを見ていかなければ全体像を捉えることはできません。

今回、ビーチリゾートが集中している恩納村のホテルをいくつか訪ねたのですが、ANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾートのフロントで、明らかに香港の人だろうなと思われる個人の宿泊客を見かけました。きっと『恋戦沖縄』の影響もあり、このリゾートは人気なのだろうと思われます。
b0235153_9272632.jpg
b0235153_9273422.jpg

香港の人たちというのは、台湾の人たちに比べ、欧米的なセンスを身につけているというのか(あるいは、そう見せたがりたいのか?)。たまたま波之上宮で出会ったツアー客のガイドと少しだけ会話を交わしたのですが、「最近、香港のお客さんが多いようですね」というぼくの問いに対して、「いまはイースターの休みに入っていますから、香港のお客さまは多いんですよ」と彼は答えるのです。中国や台湾、沖縄でさえ、これから清明節だといっている時期に、香港ではあえてイースターだという。こんなところからも「ぼくらは中国本土の人間とは違うんだよ」とさらりとアピールしているように見えてしまいます。
b0235153_9295447.jpg

それだけに、沖縄観光に関するクレームは、やはり香港客がいちばん多いと、旅行関係者はいいます。

沖縄県香港事務所が出した「東南アジアから見た沖縄インバウンド業界の課題とは?」という資料では、香港の旅行業界からのクレーム事項として、以下の点を挙げています。

①那覇空港国際線ターミナルの設備
②外国語表記(案内表示、案内パンフレット、メニューなど)
③ショッピングの魅力…?
④食事(宗教上の制約)
⑤ナイトライフ
b0235153_930440.jpg

確かに、現状の那覇空港国際ターミナルは一昔前の離島の空港といった雰囲気です。でも、来年には新国際ターミナルが開港する予定です。ショッピングの魅力という点に関しては、世界を代表するショッピング都市である香港客の目から見れば、厳しい評価になるのも無理はありません。ナイトライフもどうでしょう。これは単なる夜遊びというだけでなく、文化観光にもつながるテーマだと思います。その点については、近年内地から移り住んできた若い世代と地元の人たちがともにこの地に根づかせつつあるアートやサブカルチャーの動きをうまくアピールしていくことで、香港とはまったく異なる新しい沖縄の魅力を打ち出すことはできないものでしょうか。

個人化、欧米化の進んだ香港の人たち相手には、他のアジアの地域の人たち向けの見せ方とは少し趣向を変えることが必要なように思います。それは、台湾の若い世代向けにも効果があるはずです。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2013-05-01 09:30 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 04月 30日

沖縄には欧米客を乗せたクルーズ客船も寄港します

台湾客を乗せたクルーズ客船「SUPERSTAR AQUARIUS」が那覇に寄港した翌日の2013年3月30日早朝、今度は欧米客を乗せた世界一周クルーズ客船「AMADEA」が来航しました。
b0235153_20244098.jpg

沖縄にはアジア客だけではなく、欧米客を乗せたクルーズ客船も寄港するのです。

「AMADEA」は、初代「飛鳥」を改装した3万トンクラスの客船で、台湾客を乗せた「SUPERSTAR AQUARIUS」に比べると小さいですが、約600名の欧米客を乗せています。Phenix Reisenというドイツ系のクルーズ会社の主催するコースで、今年2月26日バンクーバーからアメリカ西海岸を南下し、太平洋の島々を渡り、日本各地(大阪、別府、奄美、沖縄、石垣)を立ち寄った後、最終的には4月中旬にスリランカのコロンボまで行くのだそうです。乗客にはドイツ人の割合が多いそうです。

Phenix Reisen
http://www.phoenixreisen.com/

午前8時過ぎになると、乗客が船を降りてきました。
b0235153_20261080.jpg

船から降りてくると、クルーズのスタッフが記念撮影。約600名の乗客のうち、沖縄観光のオプショナルツアーに参加するのは約350名。10台のバスが待機しています。
b0235153_20263744.jpg
b0235153_20265530.jpg

オプショナルツアーの手配を担当するJTB沖縄の関係者によると、「今年欧米系のクルーズ客船が那覇に寄港するのは7~8本ほどの予定です。欧米客は台湾客や中国客と違って、買い物にはあまり興味がありません。DFSのような免税店に行くことはない。バスで訪ねるのも、首里城など沖縄の歴史や文化に関するスポットがほとんどです」とのこと。
b0235153_20271738.jpg

確かに、彼らは2ヵ月近い長期のクルーズを楽しんでいるわけで、寄港地でそのつど高額な買い物をするとは思えません。

「一般に日本人の参加するクルーズ旅行の1日の単価は約5.5万円といわれますが、こうした欧米系の世界一周クルーズは1日120ドル相当」だそうです。

長くゆったりした旅を楽しむ欧米系と短期間でめいっぱい楽しもうとするアジアのクルーズ客では、旅のスタイルや内実がずいぶん違っているのです。

さて、バスツアーに出かけない人たちはどう過ごすのか。もちろん、個人客として那覇市内に繰り出します。那覇市観光協会では、昨日と同じように英語表記のツーリストインフォメーションを臨時に開設。英語の観光資料を用意し、個人客の質問に答えたり、資料を手渡したりします。
b0235153_20281039.jpg

b0235153_20282892.jpg

面白いのは、欧米客は若狭バースから徒歩で約15分の距離にあるモノレールの県庁前駅まで歩いていく人が多いことです。確かに、2ヵ月近く客船暮らしをしていると、倹約というより、身体を動かしたくなるのは無理もないかもしれません。
b0235153_2028599.jpg

客層はやはりシルバー世代のカップルが多そうでしたが、彼らはずんずん歩いていきます。途中、福州園という中国庭園があり、そこには台湾から来たツアー客も訪れていて、彼らと一緒に庭園を歩く欧米客も見かけました。ここは入場無料なので、誰でも気軽に入れます。
b0235153_20291568.jpg

台湾客ほどの数ではありませんが、この日、国際通りや首里城など那覇市内には、欧米人旅行者の姿が多く見られたことは言うまでもありません。彼らは買い物をあまりしないため、経済効果としてはそれほどでもないのでしょうが、インバウンド振興を進める沖縄にとって大切なお客さんであることには変わりないでしょう。
b0235153_20293426.jpg

今年度、那覇港に寄港する国際クルーズ客船の入港予定は、那覇港管理組合のサイトに載っています。天候、運航スケジュールなどの事情により、変更となることがあるそうです。

那覇港クルーズ客船入港予定 (2013年)※2013年4月22日現在の予定
http://www.nahaport.jp/kyakusen/nyuukouyotei2013.htm
[PR]

by sanyo-kansatu | 2013-04-30 20:30 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 04月 30日

【後編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメント

前編では、台湾からのクルーズ客船「SUPERSTAR AQUARIUS」の乗客のうち、沖縄本島のオプショナルツアーに参加した人たちのことを紹介しました。では、残りの約650人はどう過ごすのでしょうか。

もちろん、個人旅行者として那覇市内に繰り出すのです。
b0235153_15573455.jpg

彼ら個人客の観光をサポートするのが、那覇市観光協会のみなさんです。クルーズ船の寄港する若狭バースの乗り場の入り口に臨時のツーリストインフォメーション(観光諮訽處)を開設。中国系、台湾系などネイティブのスタッフを揃え、これから市内に向かう個人客の質問に対応し、用意した観光案内資料や市内マップを渡します。
b0235153_15574887.jpg
b0235153_155817.jpg

b0235153_15582520.jpg

那覇市内観光に便利なのが、市内を走るモノレール「ゆいレール」です。しかし、これだけ大勢の台湾客が一気に駅に押しかけてチケット売り場の前に並んだら、那覇市民の利用にも支障がでてくるので、1枚600円の1日乗車券を販売しています。
b0235153_15584072.jpg
b0235153_15585021.jpg

なかにはタクシーを利用する人たちもいますから、運転手たちにきちんと行き先を通訳するのも仕事です。
b0235153_1559685.jpg

スタッフを統括する那覇市観光協会の国里顕史さんに話を聞きました。

――個人客のみなさんはどこに行くのでしょうか?

「那覇市内で買い物や食事をして過ごします。たいてい国際通りや新都心(おもろまち)のショッピングモールなどに行きます。リピーターも多いので、自分の足でどこでも行かれます。なかには日本人と同じように、レンタカーで遠出される方もいますよ。

クルーズのお客様は、那覇に宿泊はされませんが、わすかな時間で一度に買い物されるので、大きな経済効果が見込めます。沖縄は台湾や上海、韓国からも近いので、クルーズ市場において優位な立地にあります。来年春には、このふ頭に13万トン級の大型客船が接岸できる那覇港若狭バースが整備される予定になっています」

こうして慌しい対応が一段落するのが、10時過ぎくらい。インフォメーションのテントを撤収し、スタッフ一同は国際通りに向かいます。今度は通りにあふれる台湾客の案内や買い物のサポートなどをスタッフ総出で行ないます。

そこで、ぼくも国際通りに繰り出してみました。すると、いるいる(当たり前ですね)。あちこちから中国語が聞こえてきます。
b0235153_15594116.jpg

面白かったのは、公設市場です。ここでは1階の市場で買った魚介類を2階の食堂で調理してくれます。
b0235153_160515.jpg

家族連れの台湾客も多いようです。
b0235153_1602946.jpg

2階の食堂街は、この日、明らかに日本の観光客より台湾客と香港客のほうが多くいたように思います。
b0235153_1604015.jpg

各店にはたいてい英語とハングルに加え、「有中文菜単(中国語のメニューあります)」という中国語の表示があります。それはそうと、食堂のスタッフはどうやら地元の人だけではなさそうです。
b0235153_16138.jpg

ある食堂の日本人スタッフに聞いてみました。
「もしかして、お店で働いているのは中国の人ですか?」
「ええ、そうですよ。うちでは、ぼく以外は全員中国人です」
「それは台湾の人ということですか?」
「いえ、中国本土の人ですよ」

そうあっさり答えられたので、ちょっと拍子抜けしてしまいました。ここは那覇を代表する観光名所、公設市場です。多くの観光客が沖縄のローカルな世界を味わうために来ているはずなのに、そこで働いている大半は中国本土の人たちだというのです(さすがに1階の市場は地元の人が多そうでしたけれど)。

公設市場の食堂でアルバイトする沖縄の若い人たちはもういないのでしょうか。これはかなりショッキングな出来事のようにも思います。でも……、よく考えてみれば、東京をはじめ日本の大都市の飲食店でも多くの中国本土の人たちがアルバイトをしています。同じことかもしれません。

もうひとつ気がついたのは、国際通りのお土産店などでも普通に中国語の表示があるのですが、たいてい簡体字表記になっていることです。簡体字を使う中国本土客は昨年秋以降、激減してしまっており、街にあふれるのは繁体字を使う台湾や香港の人たちなのに……。
b0235153_162221.jpg

市内を走るタクシーの運転手の何人かに聞いてみたのですが、普段から外国客を乗せて運ぶ彼らでさえ、中国本土客と台湾・香港客の区別がついていないようです。当然、一般の那覇の人たちもそうです。

まあしかしこれは内地でも同じことでしょう。東京を歩いている中国系の観光客を見て、それが台湾客なのか香港客なのか、それとも中国本土客なのか、ひと目でわかる人はほとんどいないでしょう。それに、全国どこでも中国語表示は簡体字が基本となっています。

なぜ那覇の人たちが、台湾客や香港客を見ても、ひとくくりに中国本土客と思ってしまうかというと、そこにはひとつの理由がありそうです。

それは昨年(2012年)7月、先ごろ東京港にも寄港して話題となった豪華大型客船ボイジャー・オブ・ザ・シーズ(巨大すぎてレインボーブリッジをくぐれなかったため、東京港のコンテナふ頭に接岸)が、那覇に入港したことのインパクトが大きかったからではないか、と推測します。

那覇港管理組合のHPでは、ボイジャー・オブ・ザ・シーズの大きさについてこう説明しているほどです。

「同船は、乗員乗客最大で約5000人が乗船することが可能で、沖縄県庁と比べると、高さはほぼ同じ高さ、全長はなんと、約2倍です」

そのボイジャー・オブ・ザ・シーズが、7月5日、16日、24日、8月1日と約1か月間に4回連続で入港し、3000人超の上海からの中国本土客がいっせいに那覇に繰り出したのです。特に16日は、ボイジャー・オブ・ザ・シーズ以外にも、欧米客を乗せたクルーズ船が寄港したため、その日は5000人近い外客が那覇に上陸したのです。その日、観光バス90台が那覇港に乗りつけたといいます。

その結果、那覇の人たちはこれからどんどん中国本土客が訪れるものだと思い込んでしまったのではないでしょうか。

ところが、実際には今年は秋までボイジャー・オブ・ザ・シーズが寄港する予定はありません。もちろん、日中の尖閣問題が影を落としているからです。
b0235153_16105876.jpg

さて、岸上観光を楽しんだ台湾客たちも、遅くとも出港時刻(17時)の1時間前には船に戻ってきました。乗船前にクルーズのスタッフに頼めば、記念撮影してくれます。
b0235153_16121352.jpg

いよいよ那覇ともお別れ。その前に、今年度の初寄港ということで、地元那覇の子供たちによるエイサーがクルーズ客を楽しませてくれます。いたいけな子供たちが精一杯踊り舞う姿は心を和ませます。多くの客が甲板に出て、子供たちのエイサーをいつまでも眺めています。
b0235153_16123339.jpg

そして定刻通り、17時の出港。客船は大きな汽笛を鳴らしながら、徐々にふ頭から離れていきます。
b0235153_16125466.jpg

でも、子供たちはすぐにはエイサーをやめようとしません。客船が那覇港を遠く離れていくまでずっと手を振り続けています。「バイ、バーイ!」。こういう姿を見せられると、大人はまいってしまいますね。こうしてクルーズ客船の寄港する長い1日が終わりました。

このあとこのクルーズ客船は石垣島に向かいます。翌朝、寄港すると、石垣島や八重山の離島を訪ねることになるでしょう。

沖縄では、この夏こうした光景が毎週のように見られることになります。

※那覇に寄港するクルーズ客船は台湾からのものだけではありません。実は、翌日(3月30日)にも、欧米客を乗せた世界一周クルーズ客船が寄港しています。この客船は、初代「飛鳥」を改装した3万トンクラスの「AMADEA」で、SUPERSTAR AQUARIUSに比べると小さいですが、約600名の欧米客が那覇に上陸しました。その話は、別の機会で。

「沖縄には欧米客を乗せたクルーズ客船も寄港します」http://inbound.exblog.jp/20366268/
[PR]

by sanyo-kansatu | 2013-04-30 16:12 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 04月 30日

【前編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメント

2013年3月29日早朝、台湾からのクルーズ客船「SUPERSTAR AQUARIUS」が那覇港新港ふ頭8号(若狭バース)に入港しました。あいにくの雨でしたが、今年度最初の入港になります。
b0235153_1124966.jpg

SUPERSTAR AQUARIUSは、ゲンティン香港(スター・クルーズ・ピーティーイー・リミテッド)が運航するカジュアルなクルーズ客船です。毎年4月から10月まで週1回、那覇港に寄港し、毎回約1500人の台湾客が観光のため上陸します。基本、3泊4日で基隆―那覇―石垣―基隆(基隆―石垣―那覇―基隆の場合もある。また基隆―那覇往復、基隆―石垣往復も)を航行します。料金は最も安いシーズンで、2泊3日の基隆―石垣往復が9900台湾ドル(約3万3000円)から。1日の単価は約1万円という破格の安さです。ただし、今回の客船に限っては基隆発ではなく、高雄発だそうです。
b0235153_113538.jpg
b0235153_114191.jpg

スタークルーズ日本語公式サイト
http://www.starcruises.co.jp
スタークルーズ台湾公式サイト
http://www.starcruises.com.tw/

日本ではまだクルーズは豪華客船だから料金も高いというイメージがありますが、アジアや欧米ではこうした格安クルーズが多いのです。しかし、格安クルーズだといっても、館内の施設はそれなりに揃っています。

多様な娯楽施設、各種レストラン、プール、スパ、そして台湾サイトには載っていませんが、カジノもあります。実はこれが台湾客を惹きつける理由のひとつだとか。まさに“動くアミューズメントモール”。台湾でクルーズ旅行が人気というのもうなづけます。

SUPERSTAR AQUARIUS 台湾サイトの紹介
http://www.starcruises.com.tw/aquarius/info.aspx

同船のフェイスブックを見ると、台湾客がクルーズ旅行を楽しむ様子がうかがえます。
https://www.facebook.com/StarcruisesTaiwan

さて、この日は約1300人の台湾客が沖縄に上陸しました。
b0235153_118445.jpg

b0235153_119781.jpg

そのうち約650人は、沖縄各地を周遊するオプショナルツアー(岸上観光)に参加します。お出迎えは、台湾系のランドオペレーター太陽旅行社のスタッフです。そのひとりはこう言います。「朝8時到着で17時には出港というスケジュールは、観光や食事、買い物についても十分とは言えないかもしれません。でも、一般のツアーでは移動が多くて、かえって自由時間が少ないのです。その点、クルーズではオプショナルツアーに参加しなければ、じっくり買い物を楽しむことができます。台湾のお客様は食品から家電、生活用品まで、いろいろ買っていかれますよ」。
b0235153_111034100.jpg

ふ頭にはずらりと大型バスが並んで待っています。
b0235153_11104650.jpg

乗客を乗せたバスからいざ出発。
b0235153_11112077.jpg

HPによると、以下のツアーの中から好きなコースを選べるようになっています。日本人の沖縄ツアーとさほど大きくは変わらない内容です。

①異國風情之旅 北谷町─美國村(アメリカンビレッジ沖縄
b0235153_11134294.jpg

②美食購物之旅 三郎伊勢海老專門料理店(老舗家海老料理 味の店 三郎本店 那覇市若狭1-14-10)─新都心商業圈(新都心「おもろまち」でショッピング)
b0235153_11141469.jpg

おもろまちにある那覇メインプレイスのフードコートには、たくさんの台湾客がいました。
b0235153_11144187.jpg

③海洋公園之旅 海洋博公園、水族館(沖縄美ら海水族館)、海豚秀(イルカショー)─超級市場(スーパーで買い物)

④采風探趣之旅 首里城、守禮門─新都心、藥粧店(ドラッグストアで買い物)─國際通/平和通
b0235153_11153030.jpg

⑤熱帶風情之旅 藍鯨號玻璃船(ホエールウォッチング)─萬座毛國立公園─北谷町購物(アメリカンビレッジ沖縄)
b0235153_11163897.jpg

⑥琉球傳統之旅 琉球村─沖繩婚禮教堂─北谷町美國村(アメリカンビレッジ沖縄)

⑦民俗文化之旅 王國村玉泉洞、大鼓秀─ASHIIBINAA OUTLET(あしびなーアウトレット)─藥粧店(ドラッグストアで買い物)、超級市場(スーパーで買い物)
b0235153_11161221.jpg

あしびーなアウトレットには、台湾客だけでなく、香港客の姿も見られました。

⑧沖繩風味之旅 國際通─BBQ吃到飽(含餐費)─AEON購物城

⑨那霸精華遊 Itoman魚市場─3A購物城─ASHIIBINAA OUTLET

SUPERSTAR AQUARIUSのオプショナルツアー(岸上観光)
http://www.starcruises.com.tw/aquarius/trip.aspx

コースによって所要時間は違いますが、朝9時頃に出発し、船の出航する17時の2~3時間前には戻ってきます。

実は、台湾からのクルーズ客船は1990年代から那覇に寄港していました。しかし、5万トンを超えるクラスの大型客船が入港するためには、それなりの規模の港湾施設が必要となります。そのため、もともとコンテナふ頭だった若狭バースを国際大型客船のふ頭として整備し、乗降を始めたのが2005年です。沖縄県の資料によると、SUPERSTAR AQUARIUSのような大型客船の定期運航が始まったのは2008年からのようです。以来、毎年4月から10月の夏季シーズンに毎週1回、年間で約30回台湾客が那覇を訪れるようになったのです。

台湾では、誰でも気軽に楽しめるクルーズ旅行として広く知られています。台湾客は日本への渡航がノービザなので、入国手続きも簡単です。船内でのパスポートチェックで終わりです(その点、上海からのクルーズ客は団体観光ビザが必要なため、入国手続きのための時間がそれなりにかかるのと、大きく違います)。

話は後編に続きます。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2013-04-30 11:18 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 04月 28日

新空港開港で石垣にインバウンド客は増えるのか?

3月下旬に石垣島に行きました。
b0235153_2226275.jpg

3月7日に開港したばかりの新空港は、さすがに真新しい南国的なロビーで、たくさんの観光客がいました。
b0235153_22263172.jpg
b0235153_22264099.jpg

南ぬ島 石垣空港
http://www.ishigaki-airport.co.jp/

八重山の離島に向かうフェリー乗り場に近い市街地では、あちこちに「祝!新石垣空港開港」ののぼりが出されていました。新空港は、2000mの滑走路を備え、国際線にも対応できるようになっています。3月現在、国際線の定期便はありませんでしたが、これで那覇経由ではなく、国際線の直行便の受け入れが可能となったのです。

※地元の情報では、復興航空の石垣―桃園定期便が正式に決定したようです。
5月23日から週2便。
GE686 台北桃園空港09:00 - 石垣空港10:55(※台湾時間9:55)
GE685 石垣空港12:00 - 台北桃園空港12:00(※日本時間13:00)
エアバス320(150人乗り)での就航予定だそうです。

b0235153_22271518.jpg

b0235153_22273792.jpg

石垣のホテル関係者は言います。
「石垣は立地がいい。東京からフライトで3時間ですが、もっとそばに台湾や香港、上海、ソウルという大都市圏があります。台北からはわずか45分のフライト。海の美しさは周囲のどのビーチリゾートにも負けませんから、今後はプロモーションに力を入れたい」。

観光には繁忙期と閑散期があります。これは全国どこでも同じですが、日本人のピークシーズン以外の時期に外客に来てもらうことで、年間を通じてコンスタントに集客したいと考えるのが観光業界です。そのための受け皿としての国際線対応の新空港開港でもあったわけです。

では、現在の石垣を来訪する外客の主力は誰かというと、台湾の人たちです。ここ数年、3月下旬から10月いっぱいまで毎週台湾の基隆発のクルーズ客船「Superstar Aquarius」号が寄港するからです。基隆―那覇―石垣―基隆(基隆―石垣―那覇―基隆の場合もある)を3泊4日で周遊するカジュアルなクルーズ客船で、毎週1回約1500人の台湾人客が石垣を訪れます。

那覇ではツアーバスに乗って沖縄本島観光に繰り出したり、国際通りで買い物や食事を楽しんだりする台湾客も、石垣ではたいてい好みの離島にフェリーで向かいます。朝早く石垣港に着いて、夕方5時には出航するため、その日は石垣と八重山の島々に台湾客がどっとあふれます。

今回ぼくは竹富島に行ったのですが、クルーズ船が寄港する日ではなかったため、彼らの姿を見ることはありませんでした。竹富島の名物で、集落をのんびり散策する水牛車の乗り場には、英語に加えて中国語の繁体字の注意書きが貼られていました。こうして竹富島には、週に1回台湾客も現れて、日本の観光客と一緒に水牛車に揺られて過ごすのです。
b0235153_22282713.jpg
b0235153_22283534.jpg
b0235153_22285311.jpg

ところで、竹富島には2012年6月に開業したばかりの「星のや 竹富島」というリゾートホテルがあります。全48棟の客室の建築は、竹富島の伝統建築の様式を踏襲して造られています。宿泊客は滞在型のゆったりしたリゾートライフを楽しむことができます。
b0235153_22292660.jpg
b0235153_2229456.jpg

b0235153_22434991.jpg
星のや 竹富島 http://www.hoshinoyataketomijima.com/

ここでも台湾客と思われる人たちを見かけました。韓国の方もいました。星野リゾートは海外の富裕層を相手にしています。クルーズ客とはまったく別のマーケットです。竹富島という恵まれた環境を舞台にどれだけ海外から宿泊客を呼び込めるかが問われています。

さて、そんな石垣と八重山諸島のインバウンド客誘致の行く末ですが、周辺からいろんな声が聞こえてきます。たとえば、沖縄のある旅行業者は、新空港のホームページの開設が開港ぎりぎりの2か月前まで遅れたことなどを例に挙げ、空港のセキュリティや外客受け入れ態勢が不十分ではないかと指摘しています。また、先日北京で会った中国のある旅行業者も「2000mの滑走路というけれど、3000mないと大型機の乗り入れはできない」とずいぶん厳しい指摘をしていました。2000mでは中型機の発着しかできないからだそうです。そんなこと、3000人を集客してから言えばいいのに…と思いますが、一般に中国の人は沖縄のビーチリゾートとしての価値に対して厳しい評定をする傾向にあります。彼らの自慢の(?)海南島に比べると、確かに大型のビーチリゾートホテルは少ないですから。でも、沖縄の良さはそういうことじゃないのにね。

我々内地の人間からすると、沖縄も石垣もその風土や人々の暮らしのゆるさが魅力で、どうしても採点が甘くなってしまいます。別に内地みたいにキチキチしていなくてもいいじゃない。そこに魅かれて沖縄に来るのだからと。

でも、インバウンドの観点に立って海外のビーチリゾートとの競合を考えると、そうも言っていられないのは確かです。

まあしかし、石垣と八重山諸島がバリやプーケット、海南島、あるいはグアムやサイパンのようになってしまうことがいいことなのか。内地の人間としては、そうではないと思うのです。この点は一部の地元の人たちの思いとは必ずしも同じではないのかもしれません。ただ、こうした自らの立ち位置について微妙なゆらぎがあること自体、島の人たちの自主性というより、グローバルな資本によって主導的に形成されたバリやプーケットといった一見華やかではあるけれど、きわめてポストコロニアルな現代のアジアのビーチリゾートと石垣の違うところでしょう。もちろん、本土資本をどう見るかによって見解の異なるところでしょうけれど。

星のやも、徹底して地元との共生を模索することで、竹富島の唯一の大型リゾートとしての開業を許されています。アジアの他のビーチリゾートにはない新しいリゾートのあり方を見せてほしいものです。

さて、今回新空港開港にわく石垣に来て、その一方であらためてこの島々が尖閣問題の舞台であることを知らされました。石垣からフェリーに乗ると、海上保安庁の巡視船が見えます。あれが、中国の監視船と海上で向き合っている船なのだなと。
b0235153_2233166.jpg

また竹富島の歴史資料館でもある喜宝院蒐集館には、4000点に及ぶ竹富の民芸品などが展示されています。その中に沖縄の本土返還前に琉球政府が発行した尖閣諸島の切手がありました。切手には地名は記されてはいないのですが、専門家によると、その図版は明らかに尖閣諸島だというのです。
b0235153_22325247.jpg
b0235153_2233504.jpg

2013年の石垣と八重山諸島は、我々内地の人間が心底くつろげる南の島であると同時に、日中の確執がぶつかりあう最前線でもあるんですね。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2013-04-28 22:33 | “参与観察”日誌 | Comments(0)