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2016年 04月 26日

横浜中華街の魅力が半減!? ここはもうニューカマーの街なんですね

先週、取材で横浜に行き、仕事の後、元町と中華街を久しぶりに歩きました。平日のせいか、元町の閑散とした雰囲気に比べ、中華街は中国語を話す観光客が多く見られました。
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19世紀後半に生まれたこの街には、中国の洛陽にある三国志の英雄の関羽を祀る関帝廟があります。
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横浜 関帝廟
http://www.yokohama-kanteibyo.com/

この写真は洛陽にある本家の関帝廟です。昨年10月に現地で撮ったものです。
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ただし、横浜中華街はすっかり変わってしまった印象です。正直言って、魅力が半減してしまったといわざるを得ません。
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かつての魅惑的な広東料理店は激減し、1990年代以降に増えたニューカマーの中国東北三省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)出身者によって、都内の中華料理店と変わらない派手な写真入りメニューの看板ばかりが並ぶ金太郎飴のような食街になっていました。横浜中華街でなければ食べられないような特色あるメニューは一部の店を除き、残っていないようです。
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おそらくこの地で何代も続いてきた老華僑の跡を継ぐ世代が日本化していなくなり、代わりに彼らニューカマーがこの地に移り住み、営業し始めたからでしょう。やたらと占いとマッサージの店が増えているのも、興ざめです。

実は、同じことは全国で起きています。1950~60年代に地方から都会に出てきて調理学校や中華レストランで学び、70年代に独立開業した街場の中華料理屋さんの多くが、跡継ぎもなく、一斉に閉店していくなか、ニューカマーの中国人が店ごと買い取り、新華僑特有の「中国家常(家庭)料理」店に看板ごと架け替えていくという事態がこの10年くらいで一気に進んでいるからです。

通りではあちこちで中国語がよく聞かれました。週末こそ日本人客もそこそこ来ますが、バスでこの地に乗りつける中国人観光客が多いからです。わざわざ外国に来て、中華街を訪ねるという観光行動それ自体は、ちょっと興味深い現象だとは思いますが、実際、このように変質してしまった街は彼らにとって面白いものなのでしょうか。
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3月に上海の書店で『世界 唐人街(世界のチャイナタウン)』(広東人民出版社)という本を見つけました。世界各地の中華街の歴史と現状を紹介する内容ですが、なぜか旅行コーナーの棚に置かれていました。どうやら中国人の海外旅行の参考書とされているのです。いったいこれはどういうことでしょうか。
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ネットに同書の宣伝文が載っていました。

《世界唐人街》图书首发:一条唐人街就是一部华人奋斗史
http://www.oushinet.com/news/qs/qsnews/20151201/213956.html

ここでは、同書の出版記念パーティーが広州華僑博物館で開催されたこと。また同書が「世界5大陸、41カ国、67の」中華街を紹介することで、中国人の海外旅行のみならず、留学やビジネス、投資にとって貴重な情報を提供していると解説しています。

内容をざっと見てみましょうか。

まず「前言」で、今日の中国人にとっての「唐人街(中華街)」の位置付けについて以下の6つのポイントを挙げています。

①在外華人の出国の第一ステージ
②在外華人と中国本土人の連帯の絆
③華人文化の全世界的橋梁
④在外華人の愛国主義温床
⑤外国人のための中国文化理解の窓口
⑥在外華人の社会、経済、文化の中心

ちょっと気になる文言(「④在外華人の愛国主義温床」)も含まれていますが、同書は海外に点在する中華街をポジティブな存在として捉え直そうとしていることがわかります。華人の経済的、社会的、文化的な活動が海外で展開していくための拠点として位置付けようとしているのです。

しかし、それにはちょっと違和感があります。もともと中華街とは、早い時期では14、15世紀頃、中国本土の政変や自然災害などから国を逃れた人たちがたどりついた先に形成されたものでした。また、19世紀のアヘン戦争以降は、労働者として太平洋を渡り、北米や日本へ渡ってきた人たちがつくったコミュニティでもあります。それは、在外華人のネガティブな歴史そのもののはずです。

おそらく、彼らはこう思っているのでしょう。いまはもうそんな時代ではない。新時代の中華街とは、興隆する今日の中国人の海外発展のためにあるのだと。

同書には、他にも気になるところがあります。

たとえば、日本の中華街として横浜、神戸、長崎だけでなく、「東京中華街」が挙げられていることです。

いつのまに東京に中華街が? そう思うかもしれませんが、「东京唐人街:中国人的“银座”(東京の中華街:中国人の銀座)」と題されたページがあり、1980年代以降、多くの中国本土の学生が日本に留学し、その後日本で就職したこと。池袋駅北口の周辺に多くの中国人経営の料理店があることなどが書かれています。

実は、同じことはカナダやオーストラリアにもいえて、バンクーバーやトロント、シドニー、メルボルン、ブリスベン、アデレードなどの中華街も紹介されています。これらの中華街は、一部を除き、東京同様、1980年代以降の新華僑がつくったものです。

こうして中国人観光客の訪問先のひとつとして、それぞれ訪れた国の中華街が選ばれるのです。書店の旅行コーナーに『世界 唐人街(世界のチャイナタウン)』のような本が置かれていたのもそういうわけです。
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久方ぶりに横浜の中華街を訪ねて、釈然としないような思いにとらわれながら歩いていたのですが、横浜市立港中学校のそばに、子供たちの描いた龍の墨絵が展示されているのを見かけました。

よく見ると、絵の脇に書かれた名前の多くが簡体字表記だったので、少しびっくりしました。ニューカマーの子たちがこの地に多数実在することがあらためて実感されたからです。
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ネットでみると、すでに2010年にこんな記事が書かれていました。今回実感した中華街の変化はずいぶん前から起きていたことだったのです。

横浜市で増え続ける中国人転校生(中国網2010-06-18)
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2010-06/18/content_20290928.htm

記事では、ニューカマーの中国人の子供たちの進学や進路の問題が指摘されていました。確かに、自分の名前を簡体字でしか書けないようだと、いろいろ支障がありそうです。

「全日制高校合格を望めない生徒は、定時制を選ばざるを得ない。定員割れしていれば誰でも入学できるからだが、中途退学する率も高い。慣れない日本語への挫折、昼間高校に通う友だちとのすれ違い、アルバイト生活から来る疲れ、こうした原因がよく聞かれる。学校を辞めた子どもたちが職を求める先は、やはり中華街だ」(同記事より)。

ニューカマーの街となった横浜中華街。中国からこの地を訪れる観光客は、その現実を知るとき、何を思うのでしょう?
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by sanyo-kansatu | 2016-04-26 17:10 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 04月 11日

中国おばさん軍団、日本のホテルロビーで踊り出し、顰蹙を買うとの噂?

上海出張で拾った話をもうひとつ。

(上海出張で拾った話その1)
上海で個人旅行化が進んだ理由は貧乏人だと思われたくないから!?
http://inbound.exblog.jp/25647061/

なんでも中国の団体ツアーに参加したおばさんの一群が日本のあるホテルのロビーで突然音楽をかけて踊り出したのだそうです。

真偽のほどは確かめようがないのですが、日本のホテル予約の仕事をしている上海人に聞いたので、ガセとは思いにくいところがあります。

でも、これはどういうことなのか? なぜ彼女たちはいきなり踊り出したのか?

ここでいう踊りというのは、以前本ブログでも紹介したこともある「広場舞」を指します。もう数年前から中国で起きていることですが、中高年のおばさんたちが公園や広場などで音楽をかけて一斉に踊りまくるという一大ブームのことです。

中国のダンス(広場舞)おばさんと改革開放30年の人生に関する考察
http://inbound.exblog.jp/24252593/
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2月に重慶に行ったときも、知り合いと夕食をすませ、ホテルに戻ろうと繁華街を歩いていたら、「広場舞」に出くわしました。これまで見た中国東北地方で見た踊りに比べると、少し垢抜けている印象です。動画もつい撮ってしまいました。

重慶の広場舞その1
https://youtu.be/MUoOkUIj1Tk
重慶の広場舞その2
https://youtu.be/y2jimBNmxUc
重慶の広場舞その3
https://youtu.be/BjNPaeObRqg

土地柄もあるのか、音楽もずいぶん軽快なテンポの曲調です。おばさんだけでなく、若い子たちも一部加わっていて、もしかしたらご本人たちは自分のことをずいぶんイケてるように思い込んでいそうです。

こうしたことから、先ほどの噂の真相は、観光客となって日本を訪れた中国のおばさんたちが、いつもの調子で「広場舞」をやってしまったのだと思われます。

ふつうに考えたら、そういうことを外国に来てやっちゃダメでしょう……という話です。しかも、ホテルのロビーだなんて。せめて場所を選ぶべきでした。

この噂がなぜガセとは思いにくいかというと、実は同じことが世界で起きていたからです。

これは中国のネット記事です。「中国のおばさん、世界各国の名所で広場舞を踊り、見得を切る」という表題がついています。

中国大妈广场舞亮相各国标志性景点(中国侨网2015年09月21日)
http://www.chinaqw.com/hqhr/2015/09-21/64918.shtml

記事によると、中国おばさん軍団が、ニューヨークのサンセットパーク、モスクワの赤の広場、パリのルーブル宮殿前などで「広場舞」をやり、顰蹙を買ったのだそうです。そりゃそうでしょう。あの大音響が問題にならないはずはありません。

中国国内でも、さすがに彼女らに対する批判はあります。以下の記事は「環球時報」という国際ネタを扱うタブロイド新聞のネット版で、「中国おばさんは国外で広場舞をすべきか?」という表題がついています。

中国大妈广场舞该不该跳到国外?
http://opinion.huanqiu.com/opinion_world/2014-06/5023566.html

ここでは、なぜ海外で「広場舞」をすることがよくないかについて論じていますが、どうしてそんなに当たり前に思えることをいまさら大真面目に説いているのか、いぶかしく思うほどです。要は、やりたいなら、やるべき場所を選んでやればいいだけの話。また事前に関係者に話をつけて、許可をもらえばいいわけで、勝手にやっちゃうから問題になるのです。

中国のいい歳したおばさんたちが、なぜこんなに常識がないかというと、中国の国情にも関係がありそうです。何事もそうですが、中国では法やルールはそのときどきの権力者が上から決めるもの。民衆には決定権はありません。その代わり、法に定められていないことであれば、たいてい何でも好きにやっていい、といようなところがある(ただし、権力によってストップをかけられるまでは……)。

ですから、このような「権威主義体制」の社会の特性に合わせた処世や考え方が自然に身についてしまっているのです。ある意味、とても「自由」な人たちです。他人のやることを「気にしない」文化というのは、こうした社会が背景にあります。

ところが、この一見鷹揚に見えなくもない彼らの行動は、海外では理解されません。

「広場舞」をめぐる中国のネット論考をみていると、こんなことも感じます。いまの中国人は、自分たちは世界で実力どおりに認められていないという不満を抱えています。だから、いつか自分たちの力を誇示したいという思いもあり、自分ではけっこうイケていると思っている「広場舞」を海外で披露したくなる……。

冗談のように聞こえるかもしれませんが、そういう思いも彼女らの心の中にあるような気がします。だって、わざわざ赤の広場やルーブル美術館の前でやる必要があるでしょうか?

それは、無意識のうちに民族的な示威行為となっているのではないでしょうか。

そういう意味では、今回の日本での噂は、他の海外のケースに比べれば、そんなに大そうな話ではなさそうです。団体ツアーで日本に来ると、毎日バスに揺られてばかりなので、たまには身体を動かしたくなったということではないでしょうか。いつも中国でしているように。

でも、それをやっちゃうところが、いろんな意味で、いまの中国人らしいともいえます。

以上は、かなりの部分、ぼくの想像で書いているところがあります。実際の光景を目撃した人がいたら、ぜひ教えていただきたいものです。

ところで、この写真は3月に上海の魯迅公園を歩いたときに、社交ダンスのおじさんおばさんグループがいたのを撮ったものです。「広場舞」おばさんたちより一回り年齢が上の世代のようです。
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これは四川省成都の太極拳をするおじいさんおばあさんたちです。社交ダンスの世代よりさらに上の年齢でしょう。
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いま中国人は国中どこでも、踊り、舞っています。一種の国民運動といってもいいかもしれません。

だとしたら、せめてホテルのロビーで披露するのは、社交ダンスか太極拳だったらよかったのにね、と思わないではありません。しかし、いま大量に出国しているのは、その世代ではなく、改革開放時代に青春を送った「広場舞」世代なのです。
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by sanyo-kansatu | 2016-04-11 14:17 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 04月 10日

上海で個人旅行化が進んだ理由は貧乏人だと思われたくないから!?

上海出張に行くと、いろんな人に会います。現地に住む日本人もいれば、中国人もいる。中国人といっても、地元生まれの上海人と大学のときから上海に来て働いている「新上海人」では考え方も、行動もずいぶん違います。その違いは旅行の形態にも現れるものです。

さらにいうと、上海でオフィスワーカーをしている人とそうでない人、後者の中には出稼ぎ労働者に近い階層の知り合いもぼくにはいるので、それぞれの人たちとの付き合い方はまったく変わります。ぼくは所詮外国人なので、異なる階層を自由に縦断しながら付き合うことができるのですが、おそらく彼らにはできないことでしょう。なぜなら、中国人というのは、自分の属する階層の中に閉じた社会を生きているからです。

ですから、中国人といっても考え方は人によってずいぶん違います。誰もがそれぞれ自分の立場からモノを言うからですが、それぞれの立場が日本では想像できないほど違っているからです。ですから、知り合いの中国人がこう言ったという話を、さも中国全体の話のようにいうのはたいてい間違いなのです。

そんな階層縦断を日々体験することになる上海出張で拾った話の中から、いくつかの興味深いネタを公開してみようかと思います。

ポイントは、なぜ上海ではこんなに急速に個人旅行化が進んだのか、です。

2015年の上海の訪日客、個人が団体を逆転 その意味するものとは?
http://inbound.exblog.jp/25638388/

この点について、上海翼欣旅游咨询有限公司という訪日旅行のプロモーションを手がける会社の代表の袁承杰さんはこんな風に語っています。ちなみに、彼は上海生まれの上海人です。以前、現地で日系旅行会社の日本語ガイドをやっていた人です。

「上海人が団体ツアーで日本に行きたくないのは理由があります。団体だと、確かにツアー代は安いけど、行きたくもない免税店に必ず連れていかれること。帰国して、その場で成り行きで買わされた商品を確かめてみると、決していいものではない。車内販売で中国人ガイドに売られる商品もそう。そんな後悔は2度としたくないんです。こんなことになるなら、渡航費用が高くても個人ビザで日本に行くほうがいいと思っているのです」。

これは健全な市場化の流れを実感する話です。彼は1980年代生まれのいわゆる「80后」世代。彼らの多くはすでに30代になり、結婚し、子供も産まれています。そんな上海人の日本旅行とは。

「私と同世代の上海人は、土日をはさんで4泊5日で日本に行くというのが標準的です。安く行くためには、LCCを使った羽田深夜着便だと航空運賃も相当安い。

私たちの世代の中国人は、日本人のライフスタイルを経験したいんです。日本人が好むような隠れ家レストランに行くとか。団体はありえないんです」。 

彼の話を聞いていると、もはや上海人の日本旅行は台湾人とそんなに変わらないことがわかります。

こうしたことが可能となった理由については、日経BPネット<インバウンドBiz>の以下の記事で説明したように、日本政府のビザ緩和と中国からの日本路線の拡充が大きいのです。

ビザ緩和とLCC日本路線の拡充が日本旅行ブームをもたらした
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/031800009/

とはいうものの、同じ上海の同世代のオフィスワーカーでも、上海戸籍を持たない外地人だと、ビザの条件が少し違っていることを、ある日系広告代理店に勤める女性と話して知りました。

彼女は長江が東シナ海に注ぐ場所にある浙江省寧波出身で、これまで何度も日本に旅行に来ています。でも、彼女の話では、上海戸籍の人たちと違い、日本への個人マルチビザを取得するために、いったん沖縄に入る必要があるというのです。これは日本政府が数年前、3年間有効の個人マルチビザを発給するのに、沖縄と東日本大震災の被災地である東北3県に立ち寄ることを条件にしたからですが(そういうインセンティブを与えて沖縄や被災県への中国客を増やそうとしたわけです)、上海戸籍の人間が個人ビザを取るのに、いまはその必要はありません。彼女が浙江省出身だから、いまでもその条件が適用されるのです。冒頭で、上海人と「新上海人」では、旅行の形態が異なるといったのは、そういうことです。

出身地によってこういう分け隔てすることは、日本社会では差別として糾弾されがちですが、中国ではこのような見えない「区別」はいたるところに散見されます。ビザ発給条件というのは、日本政府が決めたことですが、この点を批判するのは間違っています。中国社会というのは、このようにでもしなければ統制・管理できない世界であることは否定しにくいからです。

実際、2015年1月にビザ緩和が実施されたといっても、個人ビザの発給用件として、その人物の資産がある一定以上であること、場合によっては銀行口座の残高の明細を提出させることは変わりません。日本では個人情報をこのように強制する無茶苦茶な条件など絶対許されないことですが、これも仕方がない面があるのです。

ですから、中国客を誘致したいと考える人たちであれば、こうした事情はある程度知っておくべきでしょう。いまだに団体客の人たちは、ツアー料金のほかに、多額の保証金を旅行会社に預けていることも事実なのです。

さて、こうした日本では考えられない発給「条件」は、当然上海人の旅行形態にも影響を与えることになります。なぜ上海ではこんなに急速に個人旅行化が進んだのかという理由について、ある現地在住の日本人はこう説明してくれました。

「上海人の多くは、団体で行くのは恥ずかしいと思っているんです。なぜなら、個人でないと貧乏人と思われるから。個人ビザが取れないということは、一定以上の資産がないとみなされたも同然だからです」。

この話をしてくれたのは上海の外資系企業で働く日本人です。彼の奥さんは上海人で、中国人に対する理解の深さは一般の日本人とは違います。そんな彼が日常的に接している上海人の言動から、これほど直裁に、個人旅行化が進んだ理由を解説してくれたことに、ぼくは唖然としつつ、なるほどと、うなづくほかありませんでした。

上海人にとって、団体、個人どちらのビザが発給されたかで資産のほどが知られてしまうことを意味するのですから、メンツに大いにかかわることなのです。だから、とても知り合いに「団体で行った」なんて言えないのです。

さて、最後のネタとして、前述した袁承杰さんの開発した面白いアプリを紹介します。

これは、日本に観光に来た中国人向けの音声ガイドのサービスで、「导游说(ガイドトーク)」といいます。
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导游说
http://www.daoyoutalk.com/
https://itunes.apple.com/cn/app/dao-you-shuo/id1062285581?mt=8

彼は以前上海を訪れた日本人観光客のガイドをしていました。いまは訪日中国人向けのサービスやプロモーションを手がけているのですが、彼の書いた企画書がちょっと面白いので、以下紹介させてください。

彼は訪日旅行に団体、個人ともにいろんな問題があることを指摘しています。
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これがこのサービスの概要です。おそらくネットによるサービスが普及している上海人には比較的受け入れやすい内容なのでしょう。この点、日本人のほうがピンとこないかもしれません。
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もしこのサービスに興味がある方がいたら、彼をご紹介しましょう。おそらく若い上海人向けのサービスとなると思うので、彼らの好きな日本アニメなどのカルチャー関連施設や商業施設などで使えるのではないでしょうか。

中国人といえば「爆買い」というイメージだけではもうすまない時代になってきていることを実感します。
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by sanyo-kansatu | 2016-04-10 19:59 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 04月 08日

2015年の上海の訪日客、個人が団体を逆転 その意味するものとは?

久しぶりに、3月中旬に上海出張に行ってきた話の続きです。

今年6月にオープンする上海ディズニーの公式ショップを覗いてみた
http://inbound.exblog.jp/25579060/

日本より進んでいる中国ECサービス 支えているのは誰か?
http://inbound.exblog.jp/25584174/

(公開されている情報ではないため)出所を明かせませんが、現地の事情通から興味深い情報を入手しました。

昨年(2015)、在上海日本総領事館が発給した訪日観光ビザのおおよその総数とその内訳です。

総数 約155万人
団体ビザ 66.7万人
個人ビザ 71.9万人
※これには上陸許可証で入国してくるクルーズ客は含まれていません。

訪日上海市場において、2015年に初めて団体客の数を個人客が上回ったのです。

在上海日本総領事館が担当している地区は、上海市だけでなく、江蘇省、浙江省、安徽省、江西省が含まれます。これらの省は上海に続く経済先進地域には違いありませんが、やはり旅行市場の成熟度は違いますから、団体客の比率はまだかなり高いと考えられます。つまり、上海市の住民が個人客の数を押し上げていることになります。

2016年1月の統計によると、個人化の勢いはさらに高まり、以下のような数字となっているようです。

2016年1月(在上海日本総領事館で発給した観光ビザ数)
総数 17万3000人
団体ビザ 5万4000人
個人ビザ 10万6000人

もはやダブルスコアで個人のほうが多いのです。上海の旅行関係者の言い方では「もう上海では8割は個人客」となるのも、この数字が物語っていたのです(彼らが上海というとき、江蘇省など上海以外は入っていないからです。実際、上海だけでしぼると、そうなるでしょう)。

これにはぼくもちょっと驚きました。こんなに早いスピードで個人旅行化が進んでいるとは……。

これはある上海の旅行会社の上海発九州行き個人客の手配の告知です。ビザと航空券と初日のホテル予約のみの料金です。これを見たとき、ぼくは1980年代の日本人の海外旅行がこんな感じだったことを思い出しました。実際、ぼくもこの当時、中国旅行に行くとき、ビザ(当時はまだ必要でした)と航空券と初日のホテル予約だけ旅行会社に頼み、あとは自由に旅行していたものです。
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この事実は日本で中国民泊サイトの利用が拡大していることを裏づけています。

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた
http://inbound.exblog.jp/25579904/

もはや上海人は、同じ中華圏の台湾や香港の旅行者とそれほど変わらない旅をするようになったといえそうです(厳密にいうと、まったく同じとは言えませんが)。

1980年代後半、バブル経済に沸く日本へ多くの上海人が就学生となって押し寄せました。日本が「失われた20年」に突入する90年代半ばくらいには、彼らの多くはさっさと帰国してしまいましたが、日本とのつながりは、その後の日本企業の上海進出ラッシュなどもあり、続いていました。その意味で、上海人たちは中国で最も日本をよく知る人たちでした。

ですから、彼らが個人客となって日本を訪れるようになっても、それほど困ることはないのでしょう。内陸都市などから日本に来た中国客が環境の違いに戸惑うのに比べ、いち早く経済成長し、日本の情報も広く流通していた上海人は慌てることはなかったのです。

ただし、上海市場の動向をもって中国を語るのは大きな間違いといえます。訪日旅行市場全体が昨年約500万人だったことから、上海市場は中国の3分の1を占めることもわかりますが、逆をいえば残りの3分の2は上海以外の人たちなのですから。

メディアにあふれる中国人観光客像の多くは、この点に無頓着、あるいは知ってか知らずか、ボカして語ろうとする話が目につきます。

ともあれ、これだけ個人客が増えたのですから、これまでのようなバスで免税店に送り込み、「爆買い」させるというような商法は、少なくとも上海人には通じません。

では、どうやって個人客に売ればいいのか。これはそんなに簡単ではなさそうです。

ある上海在住の事情通はこんなことを話してくれました。

日本の人たちは、ひとりよがりなところがあると思います。

彼らは「中国の富裕層をターゲットにしたい」と言います。もう団体客なんて相手にしない、と。

さらにこうも言います。「富裕層であれば、自分たちのサービスやおもてなしの心を喜んでくれるはず。それだけの自負はある」と。

でも、本当にそうなのでしょうか?

多様化した中国の訪日客のうち、そのような都合のいいターゲットがどれだけいるのでしょうか。

そもそも中国人富裕層って誰のこと? そういうことをわかって言っているのでしょうか……。


確かに、そうですね。中国人富裕層ってよくいうけど、どこにいるのでしょうか?

その点について最も詳しい人物のひとりをぼくは知っています。その話はまた別の機会に。

(上海出張で拾った話)
上海で個人旅行化が進んだ理由は貧乏人だと思われたくないから!?
http://inbound.exblog.jp/25647061/

中国おばさん軍団、日本のホテルロビーで踊り出し、顰蹙を買うとの噂
http://inbound.exblog.jp/25650474/
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by sanyo-kansatu | 2016-04-08 14:44 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 04月 07日

イースターが来ると、1980年代のヨーロッパを思い出す

ここ数年、3月下旬から4月にかけてのイースター(復活祭)休暇の時節になると、多くの外国人ツーリストがまちをにぎわすようになりました。桜の開花も重なり、キリスト教圏以外の人たちも多いです。

ふとこのような光景は、日本列島の歴史が始まって以来のことではないだろうか、などと大げさに思ったりもします。

空気もぬるみ、まちに出かけるのが楽しくなるので、ぼくもつい仕事場を抜け出し、そこらをふらふらと散策してしまいます。

※ここ1、2年のイースターウォッチングの記録。

イースター(復活祭)休暇中の京都、大阪はにぎわってました
http://inbound.exblog.jp/25634021/

イースターも近い原宿では非英語圏の言葉があちこちで聞かれた
http://inbound.exblog.jp/24322287/

イースター休みに渋谷スクランブル交差点に出没した外国人をシューティング
http://inbound.exblog.jp/24348359/

自分の暮らすまちに外国人があふれる光景を見ていると、ぼくはよく1980年代のヨーロッパのことを思い出します。

いまでも鮮明に覚えているのは、1980年代半ばのイースターの頃に訪ねたウィーンの光景です。市の中心部に「リンク」と呼ばれる石畳の広場があり、その背後にはゴシック様式のシュテファン大聖堂の尖塔がそびえていました。

広場にはあふれんばかりの外国人ツーリストの大群衆がいたのです。ぼくもそのひとりでした。

当時は「ペレストロイカ」の時代。米ソ冷戦構造が雪解けを迎え、東側との境界に位置したウィーンには、周辺の国々から人々が集まっていました。

実は、同じ光景は、お隣のハンガリーの首都ブタペストでも見られました。学生だったぼくは、春休みを使って自由化の進む東ヨーロッパの国々を一つひとつ訪ねていたのです。イスタンブールからベルリンまでの旅でした。

ひとつの都市にこんなに大勢の外国人が姿を現わすということがあるものなのか……。

そして、思ったものです。日本にもこのような状況が起きる日は来るのだろうか……。

当時それはまったく考えられないことでした。80年代の東京には、確かにアジア系移民労働者の数が増えていましたが、彼らはツーリストと呼べる存在ではなかったからです。

ですから、2010年代半ばの日本の大都市に見られる状況は、驚きを禁じえないものがあります。

1980年代というのは、日本がグローバル・ツーリズムの大衆化を迎えた時期でした。

いまでは特別なことではありませんが、アルバイトで貯めたわずかなお金で、学生がヨーロッパを数ヶ月かけて旅して回れるようになったのは、この頃からです(それ以前の時代にもヒッピー的な放浪はありましたが、1980年代に起きたのは、大学のクラスの大半が卒業前に同じような旅行をしていたという意味で、大衆化していたわけです)。1985年のプラザ合意による円高が引き金であったことは確かです。

ちょうどいま、日本を訪れているアジアのツーリストたちの多くが、当時の日本のような時代の空気を吸って旅しているのだと思います。

ぼくが彼らの姿を写真に収めたり、ウォッチングをしたりしているのは、旅空の下にいる彼らの思いがよくわかる気がするからです。それが懐かしいからでもあるんです。
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by sanyo-kansatu | 2016-04-07 15:19 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 04月 07日

イースター(復活祭)休暇中の京都、大阪はにぎわってました

キリスト教圏に暮らす人たちにとってイースター(復活祭)休暇は、春の訪れを実感し、旅心を満喫させる旅行シーズンです。

今年は3月27日がイースターの日でしたから、3月下旬から4月上旬にかけて、全国各地に欧米の旅行者が出没しました。おそらく1年のうち、彼らがいちばん目につく時節ではないでしょうか。

3月末、ぼくは京都、大阪方面に出張に行く機会がありました。桜は七分咲きといった感じですが、まあどこに行っても欧米のツーリストの姿を見かけました。以下、各地の行楽風景のスナップを紹介します。

まず京都から。これは鴨川の桜です。川向こうに見えるのは、京都を代表するラグジュアリーホテル、ザ・リッツカールトン京都です。
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京都地下鉄も、スーツケースを引いた外国客だらけです。左は西洋の女の子ふたり、右は上海人の女の子グループのようでした。
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京都駅にも欧米の若い小グループがいました。
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京都駅の観光案内所の前には、タイ人の女の子グループがいます。
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観光案内所の中には欧米のバックパッカーたち。
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ここは大阪のUSJ。今年で15周年。入園者の10人に1人は外国人だとか。最近ちょっと入園者が伸び悩んでいるTDLに比べ、大躍進だそうです。
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15周年のUSJ、来場者急増 映画以外も取り込み躍進(朝日新聞2016年3月19日)
http://digital.asahi.com/articles/ASJ3K4JWZJ3KPLFA004.html
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USJで意外に目につくのは、スカーフを頭に巻いたマレー系、インドネシア系と思われる旅行者たちです。
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彼らは東南アジアから来た家族のようですね。
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欧米人のカップルもあちこちで見かけます。背後にいろんな国の人たちがいて、思い思いのポーズを取っているのが面白いですね。ポーズやしぐさによって国や民族の特徴が出ているように思います。
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人目も気にせず、こんな派手なポーズをするのはどこの国の人か? そう中国人です。
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彼女らはこんなモデルポーズも日常です。
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この手のキャップとファッション、おそらく韓国人ですね。
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えっ、スーパーマンのペアルック!?  話し声を聞くと、韓国人のようです。
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イースターと桜の季節が重なり、関西では欧米客だけでなく、アジアの皆さんも日本の春を楽しんでいました。関西国際空港に乗り入れるアジア系エアラインの数は尋常ではないですから、これも当然のことでしょう。

さて、東京に戻ってきて、昨日は久しぶりにいい天気だったので、仕事場に近い新宿御苑に足を運んでみました。すると、入口は大行列。アルコールの持ち込みが禁止なので、入場前に持ち物チェックしています。
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チケット売り場の前もこの混雑。芝生に寝転がって桜を眺めようと思っていたのですが、これではのんびりできそうもありません。入園を諦めました。
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新宿御苑は新宿区を代表するインバウンドスポットだけあり、外国人の姿も多く見られました。ベビーカーを押す子連れのカップルもたくさんいます。
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ここでもスカーフ姿のマレー系とおぼしき家族の姿を見かけました。お土産もずいぶん買っているようです。
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春が来たんですね。にぎやかな春が。

※最近の新宿御苑はこんなことになっています。

ムスリム・ジャンピング・ガール目撃!? ようこそ、21世紀の新宿御苑へ(2015年 10月 23日)
http://inbound.exblog.jp/25020925/
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by sanyo-kansatu | 2016-04-07 10:13 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 03月 27日

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた

上海から戻ってきた翌週、地下鉄の中吊り広告で目にしたのが、『ウェッジ』(4月号)の「中国民泊」の特集でした。
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特集「訪日外国人を囲い込む中国民泊」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6347

今年に入ってぼくは内陸都市の重慶や成都、そして上海を訪ね、現地の旅行関係者らにヒアリングを続けてきました。そのポイントは、中国では訪日客の個人旅行化のスピードが想像以上に早く進んでいるということでした。

その背景には、日本政府によるビザ緩和の推進があります。詳しくは以下参照。

ビザ緩和とLCC日本路線の拡充が日本旅行ブームをもたらした(日経BPネット2016.3.22)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/031800009/

で、その結果、何が起こるかというと、AirBnBを超える勢いの「中国民泊」市場の拡大だったのです。

同特集をざっと読みました。冒頭のレポート「日本でAirBnBを猛追する中国民泊」を執筆しているのは、現代中国事情の専門家の富坂聡さんです。さすがに情報が早いですね。

同記事は、上海に本社を置く中国最大の海外民泊サイト「自在客」の紹介から始まっています。「同社の提供している部屋は、台湾で21都市、韓国で27都市、中国大陸に46都市、そして日本に40都市、さらにアメリカにも4都市」。なかでも「予約の多い都市として挙げられた10都市のうち6都市が日本」「自在客のホームページで「日本」と入力すると、2090件、1万2760室と表示される」。これは「現在日本で2万6000室を提供しているAirBnBが1年前は1万件にも満たなかったことを勘案するとその存在感は既に甚大だ」といいます。

では、実際に「中国民泊」サイトにはどのようなものがあるのでしょうか。上海の旅行関係者に聞いたところ、海外民泊を扱う代表的なものは以下の3つです。
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自在客 http://www.zizaike.com/
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住百家 http://www.zhubaijia.com/
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途家 http://www.tujia.com/

実は、他にもいろいろあるのですが、以下の2つは中国国内の民泊がメインだそうです。
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游天下 http://www.youtx.com/
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蚂蚁短租 http://www.mayi.com/

いまの中国には数多くの民泊サイトがあります。前述の旅行関係者は「人気の理由は、ホテルより安くて、利用者の個別のニーズに応えられること。ホテルが取りにくいオンシーズンに役に立つサービスです。個人旅行の増加で、特に日本の民泊が大人気になっている」といいます。

では、もう少し「ウエッジ」4月号の記事を見ていきましょう。同誌の記事の一部はネットでも閲覧できます。

日本市場に吹き荒れる「中国民泊」旋風
最大手「自在客」CEO独占インタビュー
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6403

ここでは、同サイトの張CEOによるいくつかの興味深いコメントが載っています。一部抜粋してみます。

― 日本でのサービス開始はいつか? 現在どれぐらいの部屋数を提供しているのか?
張 日本では14年12月にサービスを開始した。現在、約2000人のホストがいて、約1万2000室を提供しているが、日々増加しており、1年後にはまったく違った数字になっているはずだ。

― 日本にいるホストは中国人が多いのか?
張 中国人、日本人、その他の国籍の人が、それぞれ3分の1ずつというイメージだ。以前は中国人ホストが多かったが、最近は日本人ホストが急増している。日本のホストのうち7割程度はAirbnbとの重複登録だと思う。

― 「自在客」以外にも、中国系民泊仲介事業者である「途家」や「住百家」なども日本市場へ参入している。
張 中国系民泊事業者のなかで比較すると、当社が日本でのシェアがもっとも高い。途家は中国国内での民泊に強く、住百家は富裕層に強いという特徴をもっている。当社はFIT(Free Individual Travel、個人手配の自由旅行)に強い。


AirBnBのホストたちの多くも、「自在客」に部屋を提供しているのですね。何人かのホストをしている知人がぼくにもいますが、部屋の回転率を上げたい彼らにすれば、窓口は多ければ多いほどいいということでしょう。実際、AirBnBでも中国本土客の利用が増えているからです。

張CEOはこんなことも言っています。

―― 現行の日本の法律では、特区等を除いて民泊は禁止されている。
張 その点は認識している。だが、中国では既に政府が民泊を許可しているなど、世界各国では合法化の流れがある。それに比べると、日本はやや法整備が遅れている印象をもっている。


この発言には少し違和感があります。確かに、中国では自国民を相手にした民泊ビジネスは盛んなのかもしれませんが、はたして外国人の受入は可能なのでしょうか。なぜなら、中国のホテルに泊まったことのある人なら誰でも知っていると思いますが、この国の宿泊施設では外国人のパスポートコピーを地元の公安に提出する義務があります。それは民泊でも同じはずです。そもそも中国では外国人を泊めていいホテルとそうでないホテルがいまだに存在します。それほど外国人の管理にうるさい国なのです。この状況を知る以上、張CEOの発言はずいぶん都合がよすぎる言い分だと思うからです。

さらに、彼はこうも発言しています。

Airbnbはホストとゲストの両方から手数料を取る仕組みだが、当社はゲストからは一銭も取らず、ホストから手数料10%を取る仕組みだ。中国の旅行者はホテルの仕組みに慣れており、「ゲストが手数料を徴収される」ということに慣れていない(笑)

おいおい、これは民泊本来の相互扶助の精神から逸脱するものではないでしょうか。ホテルと民泊は別物であるという感覚が麻痺しているように感じないではありません。経営者がこんな考え方で大丈夫なのでしょうか…。

そもそもAirBnBが登場する前から国を超えた個人同士が無料で部屋を貸し借りするというSNSは存在していました。カウチサーフィンといいます。
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カウチサーフィン
https://www.couchsurfing.com/
http://find-travel.jp/article/4012

上記サイトは、このサービスについて「直訳するとカウチ(ソファ)でサーフィンの意味。カウチゲスト(旅人)がカウチホスト(宿泊地提供者)を見つけることで旅が手軽になります。お金のやりとりはなく、無料でソファーに寝かせてもらうイメージ」と説明しています。

上海に住む友人のカメラマンもよくこのサービスを利用するといいます。地方出張に行くとき、カウチサーフィンに登録している中国人の家に泊まったり、地方から上海に遊びに来た中国人を部屋に泊めてあげたりするそうです。このサービスは2000年代の早い時期から存在していました。

ところが、AirBnBという金銭の授受を含む民泊サービスが登場してきて以来、状況は変わってきたといえます。

「中国民泊」について気になることは他にもいろいろあります。

上海でC-Tripのホテル予約を担当している関係者に話を聞いたところ、同サイトをよく利用する香港人と中国人ではホテル選びの考え方がまったく違うといいます。香港人は「要求がとても細かい。ロケーションはもちろん、部屋は何平米で、ベッドサイズはどうかなど、いろいろ聞いてくる。料金が少々高くても、自分の好みの部屋を探す傾向がある」のだとか。

一方、中国人が追求するのは安さのみだというのです。

これはひとことでいうと、香港と中国の消費者の成熟度の違いからくるものだといえるでしょう。海外のホテルの利用に慣れている香港人と、自分では慣れているつもりでも、実際はたいしてよくわかっていない中国人との違い。安さしか求めないというのは、残念ながら、それ以外の選択の基準を知らないからなのです。細かいリクエストを伝えることが身についていないわけです。

こうした中国人の消費感覚は、民泊市場の拡大につながっていると考えられます。いま東京や大阪のホテルは予約が取りにくいだけでなく、価格は高騰し、彼らが考える宿泊相場とは乖離が生まれています。だったら、どんな部屋でもかまわないから、安いところを見つけたい。

では、彼らはいくらくらいで泊まっているのか。

知り合いに池袋のマンションを数室借りて「住百家」で民泊ビジネスを始めた在日中国人がいます。彼は昨年、勤めていた会社をやめ、この商売に乗り換えました。彼によると、ワンルームマンション一部屋を1日800元(約1万5000円)相当で提供しているそうです。

ただし、たいてい家族4人、多い場合は6人くらいが1部屋に泊まるそうです。みんなで雑魚寝のイメージですが、かなり安上がりといえます。最低2泊以上を条件にしているようですが、実際、中国人の個人旅行は、カップルというより5~6人の小グループや家族が多いので、民泊は訪日中国市場に合っているという言い方もできそうです。

なにしろ100万人に近い在日中国人がいるので、できれば知人や親戚の家に泊まって安く上げたい、というのが彼らの本音なのです。本来AirBnBなどの民泊サービスは、海外のふつうの家に泊まって、現地で暮らすように滞在を楽しみたいというニーズから市場が拡大したはずですが、大半の中国人のニーズはそういうことではなさそうです。

実際、1泊800元ではホストである彼も、それほどの利益にはなりません。そこで、彼が始めたのは「空港からの送迎」です。家族や小グループで来日した中国個人客は、東京の交通機関に慣れていません。タクシーは片道数万円と法外な高さだし、香港人や台湾人には可能なレンタカーも利用できない。それゆえ、送迎サービスにはそれなりの需要があり、確実に利益も取れるからというわけです。

前述の富坂さんは記事の中で、在日中国人企業家の民泊ビジネスの実態について、「マンション丸ごと買い取るケースが多い」「外国人向けの寮、さらにはシェアハウスを買い取るか借り上げてしまうパターン」があると指摘しています。確かに、薄利とはいえ、今後も数の増加が見込める中国客相手に利益を上げようとすると、そういう発想になって当然かとは思いますが、彼らだって誰もがそんな資本力を持っているとは限りません。C-Tripや春秋国際旅行社などの中国の旅行会社が日本のホテルや宿泊に利用できる施設を買い上げる動きは起きていますが、民泊用に買い上げることがどれほど進むか、ちょっと疑問です。そもそも安く上げたい人向けのサービスだからです。

それに、言うまでもありませんが、民泊の法的規制の問題はまったく解決していないからです。これは日本に限った話ではなく、全世界的にいえることですが、ホテル業界の反発があります。彼らにしてみれば「ホテルに義務付けられる環境・食品衛生・防火安全対策が(民泊のホストらに)免除されているのは不公平」(「ウエッジ」4月号p31 英国のホテル業界のロビー活動の事例)だからです。

もうひとつは、近隣住民へのケアがおざなりなことです。自分の住むマンションの隣の部屋に、数日ごとに見ず知らずの外国人がやって来ることを、誰しも心よく思わないからです。

こうしたこともあり、富坂さんの記事でも、日本における「中国企業不在の民泊ルールづくり」を批判しており、これには大いに同意します。数の上では、いずれAirBnBを追い抜くかもしれない中国民泊の関係者らが、これまで政府の法規制のルールづくりの会合に呼ばれたことはなかったからです。彼らが外国人であったとしても、日本国内で事業を営む以上、本来は関係ないではすまされません。

中国民泊の話は今月初旬、九州で逮捕された中国人不法ガイドの問題と重なってきます。これほど訪日中国市場が拡大しているのに、団体ツアーの国内手配を実際に手がけている在日中国人関係者らは、日本の旅行業界の蚊帳の外、アンタッチャブルな存在として放置されてきたからです。だから、彼らは気兼ねなく中国式ビジネスを日本国内で続けてこれたわけです。

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は?
http://inbound.exblog.jp/25461430/

もっとも、民泊に関してはAirBnBのホストの多くが日本人でもあるように、ガイド問題とは少し事情が違うのも確かです。市場が拡大し、儲かるとわかっていて、在日中国人らがこのビジネスに手を出さないわけがありませんが、それは日本人も同じなのですから。

いずれにせよ、訪日旅行市場の拡大をうまく仕かけたわりには、この領域に関する日本政府の法制度の整備を進める態度は、あまりに初心でおっかなびっくりという印象がぬぐえません。確かに、年間2000万人の外国人が訪れるということは、日本列島の歴史上初めてのことでしょうから、前例がなく、適正かつ果断な判断が難しいという面はあると思います。でも、これだけ外国人観光客を呼び込むことに成功した以上、それを日本社会の利益になるよう運営していかなければ、何のためにやってるの? という話になりかねません。AISOの王会長ら、外国人関係者ほど、この問題に関する政府の姿勢に首をかしげています。

お役所任せではもうどうにもならないのが、いまの日本なのかもしれせん。だとしたら、残念なことです。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-27 14:40 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 03月 10日

「コミッションに頼らない個性的な旅をつくりたい」(by中国旅行業界の若手有志)

ここ何回か、2月中旬に訪ねた中国内陸都市の重慶や成都(四川省)の訪日旅行市場について書いてきました。

「重慶・東京5400円から」「日本旅行5泊6日6万3000円」~重慶、成都の街角にて
http://inbound.exblog.jp/25425180/

中国内陸都市でも若い世代を中心に個人旅行化の機運が起きている
http://inbound.exblog.jp/25481978/

成都のイトーヨーカドーと伊勢丹は気軽に旅行に行けるようになった日本のイメージと重なって見える
http://inbound.exblog.jp/25483824/

スプリングジャパンの成田・重慶線の就航で、この地域の人たちも気軽に日本に来られるようになったこと。そして、驚くほどの安値で東京・大阪ゴールデンルートのツアーが販売されていることがわかりました。

もっとも、こうした安値のツアーが成り立つ背景に、先日福岡で摘発された中国人不法ガイドと免税店の存在があることは、中国側の関係者は誰でも知っています。

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は?
http://inbound.exblog.jp/25461430/

そして、こうした健全とはいえない団体ツアーについて、中国側の旅行関係者らの間ではこれまで「必要悪」とする見方もあったようですが、一部の良識ある人たちは、市場が荒廃していくだけの愚かなビジネスだと主張し始めています。その点については、いまぼくが連載している日経BPネットで記事化したばかりです。

中国人不法ガイドが摘発された背景にあるものは? 訪日旅行市場に与える影響は?
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/030800008/

とはいえ、一部の有志がそう思ったところで、そう簡単に変わらないのも事実です。ツアー代金を安くすることで、これほど多くの中国人が日本旅行に行けるのだから、文句を言う筋合いではないだろう。そうした見方は、中国側だけでなく、日本側にもあるでしょう。

だからといって、ここで話を終わらせてはつまらない。なぜなら、重慶や成都といった内陸都市にも「コミッションに頼らない個性的な旅をつくりたい」と考えている若い旅行関係者らがいるからです。

そんな有志たちの話を聞いてみたいと思います。

まず中国旅行社総社重慶支社の日本市場担当、魯東さんの話から。彼は四川外国語学院日本語学科出身、1973年生まれの重慶人です。
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-春秋航空も成田に就航し、重慶ではこれから日本旅行がますます盛んになるのでしょうね。
 
「そうだと思います。でも、はっきり言って、いまの中国の旅行業は悪循環に陥っていると思います」

-悪循環というのはどういうこと?

「赤字覚悟の安い料金でツアー客を集め、お土産店から得たコミッションで埋め合わせをするという悪循環です。これではツアーの質は下がる一方。でも、団体ツアーに参加する大半の人たちは初来日なので、それを受け入れているんです」。

彼の話を聞いていると、このモデルは日本の旅行会社の催行する中国ツアーでも採用されていたことがわかってきました。

中国旅行社総社重慶支社では、中国西部地区を訪れる日本客の手配を担当してきました。かつて四川省を代表する名勝である九塞溝に年間1万5000人の日本人旅行者が訪れた時期もあり、2007年がそのピークでした。しかし、それ以後、めっきり減ってしまいました。

「それでも、ある日本の大手旅行会社が今度、赤字覚悟のツアーを出してくるそうです。これでは仕事を受けてもこちらは赤字。四川省は翡翠が有名で、お土産販売のコミッションに頼る構造は、実はいま日本で起きていることと変わりません。我々も困っているんです」。

つまり、福岡で摘発された不法ガイドの問題は、日中で共通して起きていることだったのです。ツアー客を集客するために、見かけのツアー代金を下げて、その埋め合わせをお土産販売に頼るという構造です。

一般にメーカーが販売店に売り上げに応じた報奨金を出すことはよくあることだと思いますし、航空会社でも航空券の販売に応じた「キックバック」を旅行会社に支払うことは、ある時期まで普通のことでした。ですから、お土産販売にコミッションが発生することが問題というより、その比率や後先考えないその場限りの販売手法が見直されるべきなのでしょう。

「もうこんなことをいつまでも続けていても意味がない…」。

中国側の旅行会社の若手有志がそう考えるのも当然でしょう。

では、現状を少しでも変えていくためには何ができるのか。

「特色のあるツアーをつくっていくしかない。たとえば、海釣り体験はどうでしょう。長江のほとりに暮らす重慶人は釣り好きが多い。ただし、川釣りしか経験がないため、海釣りをしてみたい人は多いんです。

ただし、重慶には初めて日本に行く人がほとんど。だから、東京・大阪・富士山ははずせないんです。それら定番+特色。これでいくしかありません」。

重慶・成都地区の若い旅行関係者の多くは、九塞溝ツアーのガイド出身が多いことが特徴です。彼らは日本客の特性をよく知っています。

成都海外旅游公司の劉柯さんは言います。「世界のいろんな国のツアー客のガイドを経験したが、日本のお客さんがいちばん。礼儀が正しく、やさしい」。
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1977年成都生まれの劉柯さんは、2000年四川外国語学院日本語学科を卒業後、現地大手旅行会社に勤め、主に九塞溝のガイドを担当しました。ところが、前述したように、その後日本人客が激減し、失職の憂き目をみることになったのでした。

ちょうど同じころ、成都でも少しずつ海外旅行市場が動き始めていました。そこで、彼は個人客をメインとした個性的な日本の自由旅行の手配をする会社「HACHI TOUR(哈奇观光)」を立ち上げました。「HACHI 」というのは、渋谷のハチ公から取ったそうです。

実は、この会社は彼がいまもガイドとして在籍している団体ツアー専門の成都海外旅游公司の中にオフィスを置いています。

「資本力のない自分としては、このやり方が現実的でした。営業ツールは微信(We Chat)です。自分は日本語ができるので、さまざまな日本の情報をネットを通じて集めることができます。これを日々発信することで、日本に対する特定のテーマや関心をもつ人たちをグループ化することができます。こうしたグループごとに面白いツアーを企画していきたいと考えています」

これまでぼくは中国各地の旅行関係者らにヒアリングをしてきましたが、訪日旅行ビジネスの問題点として、日本語や日本のわかるスタッフが業務を担当しているわけではないという現状があります。日本語のできるスタッフは日本人客の手配を担当してきたインバウンド市場が激減し、多くは失職。北京や上海ではアウトバウンド担当に業務転換している人もいるのですが、多くの場合、日本の商慣行や日本人のメンタリティを理解している人たちが訪日ツアーを担当していないため、さまざまな問題が現れてしまっているように思います。日本を知らないから、客を送って日本側にお任せでも、気にならないのでしょう。

こうした状況はすぐに改善するとは思えませんが、中国の若い世代が団体ツアーではなく、個人による自由旅行を圧倒的に志向しているという現実は新しい可能性といえそうです。

ジャパンホリデートラベル(日本东瀛假日公司)成都事務所の文倩さんと廖欣さんは言います。ふたりもやはり四川外国語学院卒業生です。
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「成都で訪日旅行が始まったのは、東日本大震災後の2011年秋ころから。最初は団体ツアーだけでしたが、20~30代の若者は個人で自由旅行したい人が多いんです」。

中国における訪日個人旅行に火がついたのは、2015年1月の日本政府によるビザ緩和によるところが大きいといえます。これ以降、両親に一定の資産があれば子供の個人ビザ取得も可能になったからです。

四川大地探検旅行社の鄭磊さんも「いまの中国の若い世代が日本でしたいことは、観光地に行くことではない。買い物でもない。30代以上の人たちは最初は買い物が目的だけど、彼らもだんだん変わる。同じ趣味の友だちとゆっくり日本を旅してみたいとか、ホテルや飲食店での日本らしいサービスを体験してみたいとか、目的はいろいろです。若い人は間違いなく、個人旅行を選ぶ時代になっています」

その結果、中国の若い世代に日本を知ってもらうチャンスが増えるのだとしたら、悪くない話です。ぼくが中国旅行業界の若い有志たちをサポートしていきたいと思うようになったのは、そのためです。

これは前述の文倩さんが教えてくれたのですが、最近では以下のような在日中国人らの運営する個人旅行サービスも始まっているようです。

仙貝旅行
http://xianbei.cc/index.html
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by sanyo-kansatu | 2016-03-10 13:12 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 03月 09日

成都のイトーヨーカドーと伊勢丹は気軽に旅行に行けるようになった日本のイメージと重なって見える

2月中旬に四川省の成都を訪ねたとき、足を運んでみたかった場所があります。イトーヨーカドーと伊勢丹です。

理由は、以下のネット記事を読んでいたからです。

反日デモでイトーヨーカ堂がほとんど無傷だった理由
http://diamond.jp/articles/-/31996

2012年の荒れ狂った反日デモの渦中で、日系ショッピング施設でありながら「無傷」だったというのはどういうことなのか? 

ひとりの中国通の日本人経営者の存在があるようです。

詳しくはこの記事を読んでいただくとして、これ以外にも、2012年頃に配信されたネット情報をみると、同店が現地でいかに受け入れられているかを知ることができます。

城取博幸の 中国 成都のスーパーマーケット見聞録
https://www.shirotori-f.com/sp/data/21seito.pdf

場所は、成都市中心部に位置する天府広場に近い繁華街である利都広場にあります。
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これがイトーヨーカドーです。隣に伊勢丹があります。日系ショッピング施設が仲良く並んでいるのでした。
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まずイトーヨーカドーの中に入ってみましょう。
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なんだか日本のイトーヨーカドーみたいな雰囲気です。このセールの感じもそう。
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店舗は5階までで、1FにZARAが入っています。
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「新学期セール」をうたっていますが、中国では新学期は7月からのはず。どういうことでしょう。
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「朝9時から夜10時半まで」とは、さすが夜遊び好きの成都らしい営業時間です。
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成都伊藤洋华堂
http://www.iy-cd.com/

イトーヨーカドー海外店舗
https://www.itoyokado.co.jp/store/abroad.html

イトーヨーカドーが現地政府の要請で成都に開業したのは、1996年のことだそうです。現在、成都に6店舗。北京にも5店舗あるそうです。

さて、伊勢丹はどうか。8階建てで、日本食レストランも入っています。店内は、日本の地方の百貨店の雰囲気に近いです。
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ぼくは、上海や天津、そしていまは撤退してしまった瀋陽の伊勢丹にも足を運んだことがありますが、もしかしたら成都の伊勢丹がいちばんカジュアルというか、地元になじんでいる印象がありました。こちらは2007年の開業だそうです。
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成都伊势丹百货
http://www.isetan-chengdu.com/

伊勢丹海外店舗
http://www.imhds.co.jp/company/department_overseas.html

面白いのは、伊勢丹の周囲に屋台が出ていることです。これも成都らしいのかもしれません。
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ここに来るとき、ぼくは地下鉄を利用したのですが、2号線春熙路駅を降りると、地下から上海や北京にあるようなクールなショッピングモールにつながっていました。そこには海外の高級ブランド店が入っています。
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この高級ショッピングモールが伊勢丹の目の前にあるのです。おそらく数年前にできたというところでしょう。

これを見たとき、ふと思いました。ある時期まで、イトーヨーカドーはともかく、伊勢丹はこの街で最も輝いていた瞬間があったのだろうと。しかし、いまではプラダの入った高級ブランドショッピングモールができる時代を成都も迎えている。これじゃ伊勢丹の輝きもうせてしまったかもしれない…。

ところが、これらの高級モールにはそれほど客の姿が見えないのです。

こちらは重慶の最もにぎやかな解放碑という繁華街にある「協信星光広場」という高級ショッピングモールです。こういうの、よく北京や上海でも見かけます。でも、客はほとんどいません。その周辺の繁華街には人があふれているのに、です。
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中国もいまや低成長の時代を迎えています。2000年代のように高級ブランド品がバンバン売れる時代ではありません。これらのバブルな施設の命運は尽き果てそうな気配です。

今回、これらを見て思ったのは、ここ数年の高級モールの登場で色あせたかに見える伊勢丹は、成都の人たちにとって気軽に旅行で行けるようになった日本のイメージと重なって見えているのでは、ということでした。それは、日本が彼らの手の届く存在になったということです。

それは悪い話ではないと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-09 17:48 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 03月 09日

中国内陸都市でも若い世代を中心に個人旅行化の機運が起きている

2月中旬、中国の内陸都市である重慶や成都(四川省の省都)を訪ねたのですが、そこでいちばん感じたことは、上海や北京などの沿海先進経済地域に遅れて訪日旅行市場が動き出したばかりのこの地域でも、若い世代を中心に個人旅行化の機運が起きていることでした。

たとえば、重慶や成都の書店に行くと、個人旅行者を対象とした旅行ガイドが並んでいます。
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中国は国土が広いので、上海や北京に比べると数年遅れの内容からなるラインナップという気がしますが、東京や大阪だけでなく、沖縄や中部北陸地方限定のシリーズ書も並んでいます。
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中国人に比べはるかに日本旅行に精通した韓国人や台湾人による紀行エッセイなども多数発売されており、情報源となっていることがうかがえます。
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ネットによるさまざまな情報があふれる中国ですが、これらの情報は真偽のあやしい噂話も多いといえます。ぼくは微信(WeChat)で「日本特色深度游(日本の特色あるディープ旅行)」や「日本自由行(日本自由旅行)」といったグループに入って日々彼らがアップする情報を眺めていますが、そこには日本に関するさまざまな情報があふれてはいるものの、断片的なネタが多く、人によって本来目的の異なっているはずの滞在中の行動の充実度を高めるための戦略的かつ鳥瞰図的(とでもいいましょうか)な都市の構造のコンパクトな把握を行うための最も基本的な見取り図を提示することにおいては、現段階では、旅行書籍のほうがネット情報より秀でていると思います。

要するに、それが中国の旅行書のタイトルによく使われる「攻略」ということですが、これが頭に入っていないと、だた点と点をつないであてどなく移動していくほかないからです。要は、ネット情報は必ずしも「使える」とはいえないものも、多いのです。

ぼくはふだんからよく思うのですが、ネットの情報というのは、本当はよくわかってもいないのに、わかった気にさせてしまう面があるという自覚が利用する側に必要とされるメディアだということです。特に旅行情報については、その悪しき影響が強いと思います。

さて、海外旅行市場もかなり成熟してきた沿海地方とは違い、重慶や成都あたりでは、街場の旅行会社の店舗などにこうした旅行商品のリストを手書きにしたボードがよく置かれていました。
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最初の看板は中国青年旅行社のもので団体ツアーの情報ですが、下のボードは、国内外の手配旅行の情報です。いま中国の人たちは、お仕着せの団体ツアーではなく、自分の足でどこでも訪ねてみたい、そういう思いでいっぱいのようです。
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先ごろ成田・重慶線を就航させたばかりのスプリング・ジャパンの親会社にあたる春秋国際旅行社では、以下のようなチラシを配っていました。
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「日本自由行」とあるのは、先日本ブログでも紹介した重慶の街角の電子広告にもあった個人旅行の手配をうたうものです。

「重慶・東京5400円から」「日本旅行5泊6日6万3000円」~重慶、成都の街角にて
http://inbound.exblog.jp/25425180/

チラシの裏面を見ると、細かな料金表が載っていました。その内容は、「(日本までの往復)航空券」「ホテル(希望宿泊分)」「ビザ(団体ではなく個人ビザ)」「WiFi(日本でスマホを使うためのアプリ購入代金)」の組み合わせでした。
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これはあくまで個人ビザを取得した人たち対象のサービスですが、これを見てわかるのは、いまの中国人がどんな日本旅行をし始めたかということです。

最も割安な「航空券+ホテル1泊」(4泊5日 2799元)とは、往復の航空券と初日のホテル1泊分のみのサービスで、これを購入する人は、すでに個人のマルチビザを所有しているため、あらたにビザ申請する必要がなく、成田に到着したその日の夜だけ成田周辺か都内に1泊ホテルを予約するだけを旅行会社に依頼しているわけです。

このような「自由行」のスタイルは、日本では1980年代から一般化していたもので、ちょっと懐かしい気がします。ぼくも、20代のころ、往復航空券と初日のホテルのみ予約して海外に遊びによく行っていたものだからです。日本人の場合は、たいていどこに行くのもビザが不要だったので、中国人の場合のように、ビザ代行を旅行会社に依頼する必要もありませんでした。

ところで、彼らは初日だけホテルを予約して、残りの日の滞在はどうしているのか? 自分でネット予約しているのです。中国の最大手オンライン旅行会社のCTripを使ってもいいでしょうし、最近では中国版AirBnBである「住百家」という民泊サイトを利用する人も増えています。

住百家 http://www.zhubaijia.com/

このサイトは、在日中国人らが運営する民泊サービスです。法的にグレーゾーンとされるこのサービスの実態については、今後あらためて紹介したいと思います。

何はともあれ、我々が想像する以上の速さで、中国の個人旅行化は進みつつあり、今後訪日旅行市場にも影響していくことが予想されます。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-09 08:31 | “参与観察”日誌 | Comments(0)