ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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カテゴリ:“参与観察”日誌( 240 )


2017年 06月 01日

ガイド人生55年の集大成、ジョー岡田が案内する日本ガイドブック、ついに刊行!

2017年5月、日本最長老通訳ガイドのジョー岡田さんが書かれた英文ガイドブック『BEYOND SIGHTSEEING-The Ultimate Guide to JAPAN』が刊行されました。
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日本最長老ガイド、ジョー岡田さんは語る「訪日2000万人の半分は日本人と一言も話をしないで帰国する」
http://inbound.exblog.jp/26890168/
日本最高齢の通訳ガイド、「ラストサムライ」ことジョー岡田さんに話を聞きました
http://inbound.exblog.jp/25849969/

同書は、いまから50年前の1966年に刊行され、12版(1991)も版を重ねた岡田さんの最初の日本案内書『THIS IS YOUR GUIDE SPEAKING』を2年がかりで大幅改訂した渾身のニューバージョンです。

本文オールカラー、106ページの中にコンパクトにまとめられた題材は、超簡略日本史から日本の自然や風俗習慣、食文化、宗教、サブカルチャー、社会生活、教育、人生観に至るまでをカバー。ガイド人生55年の岡田さんがこれまで出会った何千何万人という外国人ツーリストとのやりとりの中で何度も聞かれたであろう質問に対する当意即妙な回答が収められています。

先日に続き、お電話で話を聞きました。

―手元に届いた新著を拝見し、20数年前の旧版と比べ読みさせていただきましたが、とても現代的に編集されており、斬新な内容です。今回の改訂のポイントは何でしょうか。

「旧版は、タイトルが『THIS IS YOUR GUIDE SPEAKING』であることからわかるように、観光ガイドが知っておかなければならない日本に関する知識をまとめた、半分プロ向けのテキストのような内容だった。改訂版ではむしろ観光客の目から見て、こういうことを知りたいと思うような内容に絞って書きました。もちろん、日本人なら知っておかなければならない内容がたくさんあります」

―だから、タイトルも『BEYOND SIGHTSEEING-The Ultimate guide to JAPAN』(観光を超えた究極の日本案内)なんですね。注目はどのページでしょうか。

「いまからページを言うからメモしてくださいね。25、26、43、50、55、72、94…」

―p25は「Beef or Veggies?」(ビーフor野菜?※岡田さんはアメリカ帰りですから、当然アメリカンイングリッシュです)。これは旧版でも書いてらっしゃいますが、日本の松坂牛と神戸牛のうまさと誕生秘話を紹介する内容ですね。ニューバージョンでは、これに精進料理の説明も加え、Beef or Veggies? とした。p26は「Kampai to The World」。

「世界のことばで『乾杯』は何と言うか。これは大事ですよ」

―p43は岡田さんお得意の「It’s a Joke!」、p50は旧版にもあった日本の近海の魚マップ、p55は旅行者のための10の掟。これらは岡田さんのオリジナル創作で、面白いですね。

※実は、新著が手元に届いた日(5月30日)、テレビ朝日で放映された『日本テッパン遺産』<あなたの町の爆笑名人大賞>に岡田さんは出演していました。番組では岡田さんが外国客をガイドするときの“テッパン”ジョークがいくつか披露されていて、そのうちのひとつが「Ohayo(おはよう)」と「Ohio(オハイオ)」を間違えるというくだり。p43に載っています。
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もうひとつがp26の「Kampai to The World」の応用編で「乾杯(Kmpai)しすぎて支払うお金がないよ(can’t pay)」。
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「俺は冗談ばかり言ってるわけじゃないんだよ。注目してほしいのは、p72の禅に関する解説。ツーリストからしょっちゅう聞かれるのが禅や仏教、神道に関する質問なのだが、これだけの短いフレーズに禅の奥義をまとめたというのは素晴らしい。これを書いた京都大仙院の尾関宗園閑栖は、50年前からの知り合いなんじゃ」

Each day in life is training
Training for myself
Though failure is possible
Living each moment
Equal to anything
Ready for everything
I am alive-I am this moment
My future is here and now
For if I cannot endure today
When and where will I? by Soen Ozeki

―う~ん。こんなことまで書かれているとは…。最後のp94は十二支の解説ですね。

「これは外国人みんな喜ぶよ。自分は何年生まれだから、どんな運勢、性格なのか。欧米人でも、当たっているみたいだなあ」

―他にも「Loveless, Sexless and Aging(日本人のセックスレスや少子高齢化問題)」や「Mascots for Everything(日本のキャラクター文化)」「Working in Japan(日本の労働問題)」など、現代日本社会をちょっぴり風刺的に考察する内容、ウォシュレットの使い方を解説するページもありました。

「いまでこそ、日本のトイレは世界でいちばんきれいということになっているが、50年前、私が外国人と一緒に東海道をバスで案内したとき、ドライブインのトイレは男女共用だった。そりゃもう評判が悪かったものだ」

―なるほど。この半世紀で、日本は大きく変わったんですね。日本がバブル経済に向かった頃、岡田さんはガイドの仕事をおやめになっていた。しかし、21世紀になって世界と日本を取り巻く環境が変わり、東日本大震災後に再びガイドを始められた。そして、この本も新たに蘇ったんですね。

「前回まではほぼ私が書いていましたが、今回は、私以外の執筆者も何人か加わっていて、多くの皆さんから印刷代を援助していただいて出来上がったんです。ぜひ多くのみなさんに読んでもらいたいと思っていますよ」

岡田さんの本は、旧版の頃から日本全国の通訳ガイドにとってのネタ帳として使われてきただけでなく、外国人ツーリストにも好評で、すでに12万部を売り上げています。

旧版までは、国内の有名ホテルのブックショップに置かれていたそうですが、洋書の取次会社が倒産したことから、今回は納品が難しいそうです。だとしても、めげずに多くの外国人ツーリストの手に届けたいものです。なにかいいアイデアはないでしょうか。

もうひとつ思うことがあります。この本の中国語版は出せないものだろうか。なにしろ昨年日本を訪れた2400万人の外国人のうち、2人に1人以上は中国語圏の人たちだったのですから。

何よりこの本の面白さは、外国人の日本に対する関心や目線のありかを、扱われるテーマや題材を通して気づかせてくれることです。読んでいくうちに、なるほど、外国人は日本のことをこのように見ているんだなと理解できるのです。彼らが繰り出しそうな素朴な質問に対してどう答えるかについても、多くのヒントがあります。英語で外国人と会話するためのネタ集といえます。通訳ガイドのようなプロだけでなく、いまの時代を生きる一般の日本人にとっても必携の書といえるのではないでしょうか。

『BEYOND SIGHTSEEING-The Ultimate Guide to JAPAN』の購入は、岡田さんのご好意により、定価1500円のところ、「通訳ガイド諸氏に限り3冊3000円の特価(送料込み)」でお求めいただけます。通常は1冊1500円+送料200円となります。

購入をご希望の方は samurai_joeokada@yahoo.co.jp までメールにてお申し込みください。

ちなみに、これが旧版の『THIS IS YOUR GUIDE SPEAKING』です。
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1ドル=360円時代、前の東京オリンピック開催のしばらく後に刊行された表紙のデザインからは、戦前から通じる昭和のモダニズムが感じられます。特に裏表紙の折り返しを4つ折にして、東海道から近畿、中国、九州に至るゴールデンルートをイラストマップにした装丁は、断然イカしています。ニューバージョン同様、外国人の目線のありかをよく理解した多彩なコンテンツが詰め込まれており、ニッポンのインバウンドのルーツを垣間見る思いです。

さらなる新情報があります。ジョー岡田さんは、かつて『日本の音と民謡』というソノシート付きの本を外国人向けにつくったことがあるそうです、ソノシートには、当時の京都の舞妓の話し声や梵鐘などを収録してあるとか。近日入手予定なので、今度紹介したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-06-01 16:30 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 31日

「180日ルール」の新法をふまえた「合法」的な民泊としての「マンスリー+民泊」って?

5月27日に都内で開催されたバケーションレンタルexpoの会場では、新法施行後、民泊を取り巻く環境が激変することをふまえた新しいビジネストレンドの提案がテーマでした。

中国系民泊サイトが続々出展「バケーションレンタルEXPO」って何?
http://inbound.exblog.jp/26889680/
ゲストとの鍵の受け渡しが不要となるスマートロックとは?
http://inbound.exblog.jp/26898163/

なにしろ民泊専門の行政書士である戸川大冊氏によるセミナーで明らかな通り、民泊新法の狙いは「ヤミ民泊」の絶滅を目指すもので、これまで旅館業法や特区民泊の許認可を持たない違法民泊が主流だった時代は続きそうもないからです。自治体のみならず、観光庁も苦情窓口を設置し、訴訟や罰金のおそれも増大します。その対象にはairbnbのような民泊仲介サイトや「住宅宿泊管理業者(民泊代行業者)」も含まれます。

民泊新法でビジネスチャンスが拡大は大ウソ!by行政書士の戸川大冊氏
http://inbound.exblog.jp/26893431/
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会場にブースを出展していた関係者は、当然のことでしょうが、それを強く意識しているようでした。民泊ホストの側も、最近の民泊に関する報道などから事情をよく理解しており、いかに民泊で利益を出すかという視点から、どうすれば合法的に運用できるかという観点に関心が移ってきていると思われます。

こんなストレートなチラシを用意した代行業者もいたほどです。
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↑民泊運営代行サービス「エアサポ」 http://air-sapo.com/

会場内で行われた計25のセミナーのテーマも、外資系の民泊仲介サイトの戦略から民泊運用ノウハウに関する話まで幅広いトピックにわたっていました。

なかでも民泊代行業者3社の関係者が登壇し、会場の一般客からの質問に答える「民泊のシャベリ場」と題されたセミナーは、新法施行後の見えにくい民泊の行方についての本音が伝わるものでした。登壇していたのは、以下の3社のトップです。

Zens http://www.zens.tokyo/
ファミネクト https://www.faminect.jp/
オックスコンサルティング http://ox-consulting.jp/

同社らが事業を始めたのは、airbnbが日本法人を設立した2014年の翌年だそうです。質問の前の挨拶で、オックスコンサルティングの代表は「民泊新法施行後、これまで従事していた一定数の民泊ホストは運営ができなくなるでしょう。民泊は昔のように、やれば儲かるという時代ではなくなります」と言います。

では、どうすればいいのか。

たとえば、サービスアパートメントやマンスリーマンションの運用であれば「180日ルール」は適用されません。また地方の眠っているリゾートマンションの活用も考えられるとのこと。

さらには、繁忙期を民泊にし、残りの時期をマンスリーマンションで回すというような運営もあるのだとか。これを業界では「二毛作」というそうです。そんなにうまくいくものかしら…と思わないではありませんけれど。
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※「マンスリー+民泊」について
https://minpaku.yokozeki.net/shinpouminpaku-business/

会場で出会ったひとりの関係者によると、妙高高原や白馬でオーストラリア人が眠っていたホテルやペンションを買い取り、スキーシーズンのみ運用しているそうです。従業員はワーキングホリデーのオーストラリア人を活用。夏場は営業を休むので、「海の家」の逆シーズン版です。

激変する地方観光地 外国人が…(NHK2017.2.4)
http://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2017/02/0204.html

これは民泊の例ではありませんが 「180日ルール」については、繁忙期のみの運用と割り切ればクリアできるわけです。それで投資を回収できるかどうかは別の話ですが、確実に外国人が訪れる地域であれば、やれることはあるのかもしれません。

地方への分散化が進んでいるとはいえ、外国人の宿泊ニーズは圧倒的に大都市圏に集中しており、それがここ数年のairbnbのような民泊サイトの躍進やヤミ民泊ホストを増殖させたわけですが、新法施行直後はかなりの混乱が起きるかもしれません。合法的にやろうとすれば、それなりの投資が必要となるため、摘発をおそれ、運営をやめるホストは相当数になるのではないでしょうか。会場でもそんな声を耳にしました。

ところが、会場には外資系、特に中国系の民泊サイトが軒並み出展していたことはすでに述べたとおりです。彼らは、新法施行後の市場環境の変化をどう捉え、日本で何をしようと考えているのでしょうか。正直なところ、いまの時期に進出して大丈夫なのだろうかと思わないではありません。彼らもまた今後は摘発の対象になるからです。

次回は、中国系民泊サイトの関係者らのセミナーのコメントなどを通して、その点について考えてみたいと思います。

民泊新法、衆院可決。中国民泊サイトは「合法」「ホテルより安い」「物件は自社管理」と言うけど、大丈夫?
http://inbound.exblog.jp/26898006/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-31 16:25 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 31日

「民泊新法でビジネスチャンスが拡大は大ウソ!」by行政書士の戸川大冊氏

5月27日に開かれた「バケーションレンタルEXPO」では、民泊に関わる関係者による大中小3つの会場で合わせて25本ものセミナーが繰り広げられました。

中国系民泊サイトが続々出展「バケーションレンタルEXPO」って何?
http://inbound.exblog.jp/26889680/

なかでも大盛況だったのが、民泊許可業務の第一人者である特定行政書士の戸川大冊氏のセミナーでした。少々民泊ビジネスを煽りぎみの出展者らが多いなか、実際のところ、法的に見てどうなのか。民泊新法施行後に、状況はどう変わるのか、知りたいと考える人が多かったからでしょう。

そんな疑問に応えるべく、セミナーのタイトルは以下のようなものでした。

「住宅宿泊事業法」を正しく理解し、合法的に運営する
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戸川氏は、テレビ朝日の『ビートたけしのTVタックル』4月30日放送で、旅館業許可を取らないで営業している「ヤミ民泊」の問題点や罰則規定について解説しました。また、「住宅宿泊事業法」(いわゆる「民泊新法」)の立法趣旨や、旅館業の「許可」と民泊新法の「届出」に関する法的性質、特区民泊との違いにも触れています。

この日のセミナーも、まさにこのテーマを番組より詳しく解説した内容でした。以下、戸川氏の運営する「民泊許可.com」などの資料を参考にさせていただきながら、民泊新法の中身を中心に紹介します。

戸川氏の運営するサイト「民泊許可.com」
https://民泊許可.com/

開口一番、彼は言います。「民泊新法でビジネスチャンスが拡大は大ウソ!」。新法成立後は、これまでのような民泊ビジネスはできなくなるとして、近年増えている「ヤミ民泊」摘発事例を挙げます。

2016年7月 旅館業の営業許可を得ずに、無許可で「ヤミ民泊」営業をしたとして、不動産関連会社「ハイブリッド・ファシリティーズ」(東京都港区)と親会社「ピクセルカンパニーズ」が摘発

2016年6月 民泊代行業者(ハイブリッド・ファシリティーズ)が捜索・差押を受け民泊運営支援事業を廃止

2016年4月 大阪府警は大阪市生野区の韓国籍の飲食業の女(71)、中国籍のレンタルビデオ店経営の夫(37)と韓国籍の妻(55)を、旅館業法違反(無許可営業)の疑いで書類送検

2015年11月 京都市右京区の賃貸マンションの44室中34室で、旅館業法の許可を得ずに観光客約300人を有料で宿泊させ、旅館業を営んだ疑いで書類送検

2014年5月 木造3階建ての自宅の1~2階部分にある3室(24.9m2)を1泊1人2,500~5,000円程度で旅行者に提供していた英国人男性(28)が旅館業法違反で逮捕、略式命令(罰金3万円)

ヤミ民泊の認知件数は以下のとおりです。

平成25年度 62件
平成26年度 131件
平成27年度 994件
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この認知件数は、保健所などが把握した件数にすぎませんが、最近は近隣住民によるチクリが急増しているそうです。

また自治体の摘発強化も進んでいます。

2016年5月 京都市、無許可民泊148件に営業停止を指導 http://airstair.jp/kyoto-148/
2016年7月 京都市、「民泊通報・相談窓口」開設 http://min-paku.biz/news/kyoto-minpaku-tsuihou-soudan-20160713.html
2016年10月 大阪市 、民泊専従チームを組織 http://mainichi.jp/articles/20161010/k00/00m/010/017000c
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そもそも「民泊」という事象は、①国家戦略特区の特例(特区民泊=外国人旅客の滞在に適した施設)と②旅館業(旅館か簡易宿所)、そして③今回の民泊新法(住宅宿泊事業法)で生まれる住宅宿泊の集合体というべきで、それぞれ営業するためには異なる要件があります。

戸川氏は言います。「民泊の許可を出すのは、大家ではなく自治体です。ですから、よく不動産会社が『民泊許可物件』などと表示していますが、このようなものは存在しません」

さらに、昨年6月、ヤミ民泊ホストに対してマンション管理組合からの差し止めが認められました(その後、今年に入り、損害賠償も認められたようです)。

2016.05.24 大阪地裁、初のマンション「民泊」差し止め
http://min-paku.biz/news/osakachisai-minpaku-sashitome.html

賃貸マンションを民泊に使うオーナーが増えているなか、こうした判決が出たのは、民法の「所有権」に関する規定とマンション標準管理規約の「用法の制限」(もっぱら住宅として使用する)をふまえ、区分所有法がいう「区分所有者の権利義務」「共同の利益に反する行為の停止の請求」が認められたものといえます。つまり、マンションのオーナーにとって「他人にとやかく言われる筋合いはない」という主張は間違いだということです。
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最近、外国人による都内のマンション購入が進み、民泊を始めているケースが知られていますが、もし彼らが住民の声を無視して民泊の営業中止を受け入れようとしなかったとしても、マンション管理組合からの訴えは有効だといえます。

民泊を合法的に行う場所を決めるうえで、もう一点考えなければならないことがあります。それは、各自治体による「上乗せ条例」です。たとえば、新宿区や渋谷区、台東区、京都市、大阪市では、それぞれ認可の条件が加えられます。これは民泊新法施行後も変わらないため、他の地域に比べ、ハードルが高いといえます。これらはすべて民泊人気集中地区で、摘発が強化されていることはすでに述べたとおりです。
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さて、ネガティブな話ばかりをしてきましたが、今年の通常国会で成立の見通しとされる「民泊新法(住宅宿泊事業法)」とはどのような内容なのか。
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ポイントは、「180日以下の運営」であることです。戸川氏は、その理由について「今回の新法は、あくまで住宅を一定の要件で他人の宿泊サービスに提供するものであり、1年の半分以上の期間を超えてしまうと、それは住宅とはいえないから」と説明。法的な見地からみて、今後民泊をこれまでのようにビジネスと考えるのはおすすめできない、というのが戸川氏の一貫したアドバイスといえます。
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さらに、民泊新法では、民泊事業者の「都道府県知事への届出」、特に「家主不在型の住宅宿泊事業者に対し、住宅宿泊管理業者に住宅の管理を委託すること」が義務付けられます。住宅宿泊仲介業(民泊仲介サイト)に対する規制も加わり、観光庁長官への登録が義務付けられます。これによって、airbnbなどが違法なヤミ民泊をあっせんすることは、施行後は不可能になります。加えて、観光庁で「民泊」苦情窓口を新設するようです。

こうしたことから、戸川氏は「もし民泊を年間を通じて合法的にやるなら、旅館業の営業許可を取るべきだ」と指摘します。民泊新法と同時に審議が進んでいる旅館業法の改正で規制緩和が進むことがわかっているからです。ここでのポイントは、客室数や寝具の種類、トイレ、最低床面積などの構造設置基準の緩和。これで旅館営業に以前より参入しやすくなるのは確かです。他方、無許可営業に対する罰金が3万円から100万円に引き上げるなど、ヤミ民泊の取り締まりは強化されます。
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冒頭で、戸川氏が「民泊新法でビジネスチャンスが拡大は大ウソ!」と言ったのは、180日間以内の営業では儲かるとは思えないからです。「民泊新法がビジネスに不向きであることは決定的」「よって合法的な民泊を事業として開始しようと考えている事業者は、民泊新法の成立を待たずに簡易宿所型民泊か特区民泊ですぐ事業を開始すべき」といいうのは、そのためです。

※特区外の簡易宿所型民泊や特区民泊の合法的な始め方については、民泊許可.com参照。

この図は、新法施行後の民泊の姿です。
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このセミナーを聞くかぎり、これまで自覚の有無はともかく「ヤミ民泊」に手を染めていた人たちは、訴訟や罰金を食らう恐れが増大することでしょう。airbnbなど民泊サイトへの影響も大きそうです。

ともあれ、ルールづくりは大事です。そのうえで、おかしなところは改正していけばいいのです。新法施行以降、これまでの「安かろう悪かろう」の日本の民泊イメージが大きく変わっていくことを期待します。

「180日ルール」の新法をふまえた「合法」的な民泊としての「マンスリー+民泊」って?
http://inbound.exblog.jp/26893756/
民泊新法、衆院可決。中国民泊サイトは「合法」「ホテルより安い」「物件は自社管理」と言うけど、大丈夫?
http://inbound.exblog.jp/26898006/
ゲストとの鍵の受け渡しが不要となるスマートロックとは?
http://inbound.exblog.jp/26898163/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-31 13:21 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 30日

タクシー運転手に聞く「日本のライドシェアが進まない理由」と今後すべきこと

中国の「越境白タク」の急増の背景には、同国での配車アプリサービスの普及があり、そのまま法を無視して日本国内で運用されている実情があります。

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/
日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/
中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/
中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?
http://inbound.exblog.jp/26876191/
なぜ次々と中国人観光客の周辺で違法問題が起こるのか?
http://inbound.exblog.jp/26880001/

では、日本ではどうして中国のようにライドシェアが進まないのでしょうか。

先日、タクシーを利用したとき、ライドシェアについて運転手とこんな話をしました。

-今年1月30日から東京23区と一部の地域で初乗り料金410円になりましたね。利用客は増えているのでしょうか。

「初乗り410円」きょうから 都心部のタクシー(朝日デジタル2017年1月30日)
http://www.asahi.com/articles/ASK1W6G7RK1WUTIL056.html

「どうですかねえ。ちょい乗りができるということで、最寄り駅から自宅へ乗る人が増えたので、我々の仲間は駅で客を拾いたがらなくなった。近距離のお客さんばかりですからね」

-ライドシェアは進んでいるんでしょうか。都内のタクシーでもスマホ向けの配車アプリが導入されていますね。

「いま配車アプリサービスを提供しているのは大手4社がメイン。でも、運転手の間では評判よくないんです。アプリで予約した後、目の前に別のタクシーが来ると、そのまま乗っちゃう人が多いからです。我々が駆けつけたときには、すでにお客さんはいないというわけです。これでは、我々も慎重にならざるを得ない…」

なるほど。そりゃそうですね。なぜそんなことが起きてしまうのか。想像できます。

配車アプリは、スマホの地図上で場所を指定すると、近くを走行中のタクシーを検索し、自動的に指定場所まで配車するサービス。事前に登録をせずに支払いは従来通りに行う方法と、あらかじめ登録を行い、ネット決済を使って支払う方法を選択できます。混雑時にはなかなか配車されないこともありますが、アプリの評判は総じて高く、ビジネスマンを中心に利用者が増えているといいます。問題は、事前登録しないで利用する一般客のドタキャンというわけです。

シェアリング・エコノミーと自動運転技術の発達で、近い将来、タクシーが無人化・無料化することを見据えた取り組みで、外国人観光客の増加で最寄の駅からホテルまでといった短距離需要が拡大しているという追い風もあります。

タクシー大手4社
http://タクシー転職ガイド.com/taxi_4/

日本交通株式会社
大和自動車交通株式会社
帝都自動車交通株式会社
国際自動車株式会社(kmグループ)

最初に始めたのは日本交通株式会社で2011年1月から。スマートフォン向けタクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車」を提供し、同年12月にはマイクロソフトと共同で「全国タクシー配車」アプリをスタート。17年10月31日以降は、「日本交通タクシー配車」のサービスを終了し、「全国タクシー配車」に統合します。

「全国タクシー」アプリへの統合のお知らせ
https://www.nihon-kotsu.co.jp/taxi/use/iphone/

先ほどの運転手が語ってくれたように、一部のビジネス需要には貢献していると思われる日本の配車アプリサービスですが、中国のように、広く一般の利用が広がっているという実感はありませんし、そもそも運転手が乗り気でなさそう。

なぜそうなるのかといえば、やはり日本ではモバイル決済が中国ほど進んでいないからです。しくみはあっても、運転手が懸念する「ノーショー(予約したのに利用しない)」のケースが出てくるからです。

中国でライドシェアが普及した背景には、WeChatPayやアリペイといったモバイル決済の日常化があります。そのため、客は予約した以上、他の車を利用できなくなり、運転手は取りっぱぐれが起こらないからです。中国の事例に学ぶなら、普及のためには、利用者とドライバー双方にインセンティブが必要だということになります(ここらのやり方は中国のうまいところです)。

もうひとつの理由は、国内に相乗りを日常的に提供するような日本人ドライバーがどれほどいるかという話です。実は、中国でも同じで、白タクの大半はその都市の戸籍を持たない出稼ぎ外地人たちでした。日本で在日中国人が白タクをやるのと似た話です。すでに中国の一部の都市では外地人の白タクは違法となり、摘発も始まっています(ただし、中国では白タク自体は合法)。配車アプリ会社同士のサービス競争で過熱していた数年前のように、市内の至る場所にタクシーと白タクが走り回っていたという状況には、上海ですら再び戻るとは思えません。

日本の一般市民が街角でライドシェアを利用することが普及するには、相当数のドライバーの存在が必要で、時間はかかりそうです。もちろん、便利なサービスですから、今後ゆっくり進んでいくことは間違いないとしても。

そして、結局、日本のライドシェアがいちばん進んでいる領域が、中国の「越境白タク」というわけです。そこにニーズがあるからですが、おかしな話です。

では、日本の国内事情にふさわしいライドシェアのあり方とは何か。

ここでは、国内の日本人が利用するライドシェアのあり方と訪日外国人市場における運用を分けて考えたいと思います。これをごちゃまぜにして議論しようとするのは、現状では賢いとは思えません。

国内向けには、まず地方でのライドシェアを進めることでしょう。迅速に使える利便性を追求するというより、公共の足として普及させる取り組みは、各地で始まっているようです。もちろん、これは過疎地の住民のためだけでなく、地方に出かけたい外国人観光客の利便性を高めることにつながります。大都市圏はモバイル決済の普及を待ちつつ、無理なく進めるしかありません。

過疎地こそ、ライドシェア
http://タクシー転職ガイド.com/kasochi_rideshare/
世界的な配車サービス「ウーバー」は、日本の過疎地を救えるのか? 京都丹後町「ささえ合い交通」を取材した
https://www.travelvoice.jp/20161114-77067
なかとんべつライドシェア(相乗り)事業実証実験
http://www.town.nakatombetsu.hokkaido.jp/docs/2016081800017/

一方、訪日外国人向けのあるべきライドシェアを考えるためには、現状の違法状態を是正することから考えなければなりません。

この問題を、もうかれこれ40年以上見つめてきた人物に、訪日外国人の受け入れを担ってきた国内老舗ランドオペレーターの団体であるAISO(一般社団法人アジアインバウンド観光振興会)の王一仁会長がいます。

王会長は言います。「日本のインバウンド市場にはモグリの業者が多すぎる。なぜそうなるかといえば、日本にはインバウンドに関わる法律がないことだ。香港や中国では当たり前にある外国人観光客受け入れ事業に関する規則を定めた法律が、先進国といわれる日本にはなぜかない。

ルールがはっきりしていないから、グレーゾーンだらけになり、モグリの業者は好き放題に暗躍してしまうのだ。なぜ日本政府はルールをつくろうとしないのか。PRにはあんなにお金をかけるのに、いちばん肝心なことはやろうとしない。これでは本末転倒だし、いったい何のために訪日外国人の促進を進めているのか意味がわからない。これは私に限らず、海外の旅行業者はみんな呆れている。

問題なのは、モグリの業者ばかりのせいで、本来お金が落ちるべきところにお金が落ちてこないので、まじめなインバウンド事業者に正当な利益が回らず、モグリの業者や外国人の中だけでお金が回り、きちんと税金が納められることもない。そのせいで、一般の日本人も外国人観光客の恩恵を知らないでいる。外国人の訪日の恩恵は買い物だけにあるのではない。ルールがないことで、いちばん損しているのは日本社会だ」

日本にも観光立国推進法はありますが、ここには外国人観光客の受け入れを推進する目的や意気込みしか書かれていないといわれても仕方ありません。インバウンドビジネスは国内で行う事業であるにもかかわらず、他の産業界にあるような業界を健全に発展させるための原則やルールがない。だから、不法ガイドや違法民泊、白タクなどの参入を安易に許すことになっているというのが、王会長の主張なのです。

王会長は白タク問題を解消するためのこんな提案をしています。

「これは皮肉な言い方かもしれないが、白タク暗躍で見えてきたのは、中国人観光客の個人化にともなう移動ニーズの実態だ。これを駆逐するためにも、税金を使って彼らのための格安の足の手配を官民が協力して用意することはできないか。

いま地方へ外国人観光客を呼び込むのに最も効果的なのは、交通インフラの改善だ。ひとつの手段として、地方への外国人向けの無料バスを走らせたらどうか。もちろん、国内のバス会社に平等に共同でやらせればいい。こういうことに税金を使うほうが、PRに使うより意味があるのではないか」

「外国人向け無料バス」と聞いて、外国人優遇なんて言わないでください。その費用は、海外へのPR費を削って、相殺すればいいのです。

日本は、中国のように勝手にラインやインスタグラムを禁止するような無法な国ではないので、中国の配車アプリを国内で使えなくさせなくすることはできない以上、彼らの違法営業をやめさせるためには、空港での摘発強化に加え、市場のニーズに対応した代替サービスを提供することが必要になります。原則とルールを決めたら、違反する者をきちんと取り締まる。これが第一歩ですが、それだけでは不十分で、市場を動かすためのインセンティブを考えることを忘れてはいけないのです。

この種のリアルなニーズに即したサービスは、宣伝しなくてもSNSであっという間に海外に広まっていくことが考えられます。中国系の人たちは、利用者のインセンティブを直接引き出すやり方をよく知っています。我々も、もう少しそれに学ぶ必要がありそうです。

たとえば、中国配車アプリで定番となっている成田や羽田からの都心部へのワゴン車による送迎サービスで、現行に近い価格帯を実現させることはできないでしょうか(ちなみに、DingTAXI日本包車旅遊の場合、成田空港から都内へは16500円、羽田からは9500円)。

ただし、摘発を同時に進めない限り、配車アプリサービスは個人ドライバーのすることですから、利用客へのキャッシュバックなどで割引するなど、取り込みのための策は続くでしょう。そういう駆け引きをするのが中国人です。その一方で、中国では何事も当局は問答無用で摘発をするのが常ですから、彼らはそういう仕打ちに慣れています。もちろん、中国と同じようにやれという意味ではないですけれど。

乱暴に思えるかもしれませんが、こうしたことは長く外国人観光客を受け入れてきた欧米やアジアの国では常識です。日本人がまだ状況に慣れていないだけなのです。

※ところで、「越境白タク」といえば、その本家はuberといえます。本来はまずuberについて考えるべきところですが、実のところ、国内でどの程度の市場規模になっているのか、よくわかりません。

とはいえ、中国客に限らず、重いスーツケースを持ち、家族や子連れ、小グループで旅する多くの外国客にとって、uberは重宝するに違いないことは理解できます。土地勘がなくても使えるからです。今後の宿題にさせてください。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-30 11:31 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 29日

日本最長老ガイド、ジョー岡田さんは語る「訪日2000万人の半分は日本人と一言も話をしないで帰国する」

先週、国会で改正通訳案内士法が成立したことを受け、どうしても話を聞いてみたい方がいました。

通訳案内士法改正は一歩前進だが、現状では海外から評価されない(無資格を合法にするなら登録制にすべき)
http://inbound.exblog.jp/26889249/
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それは、御年88歳という日本最長老通訳ガイドであるジョー岡田さんです。

日本最高齢の通訳ガイド、「ラストサムライ」ことジョー岡田さんに話を聞きました
http://inbound.exblog.jp/25849969/

今日の午後、岡田さんの携帯に久しぶりにお電話しました。以前と変わらず、お元気そうな声です。

-ついに国会で改正通訳案内士法が成立しましたが、何をお感じになりましたか。

「これで、通訳案内士を守るバリアーがなくなった。研修制度を設け、ガイドのスキルアップをすると言っているが、50年以上ガイドをやってるワシでも、十分な説明ができないときがある。十人十色の外国人相手にガイドをするのは、生半可な気持ちではできない」

-年間2000万人を超える外国人が日本を訪れるようになり、通訳案内士を取り巻く状況も大きく変わりましたね。

「いま2000万人以上の外国人が日本に来るが、半分の1000万人は日本人と一言も話をしないで帰国すると言われている。日本はただのハコモノで、心の交流がない。とても残念なことだ」

岡田さんのことばの重さが身に染みます。いまや85%がアジアからの旅行者です。彼らのほとんどは、ホテルのフロントや飲食店で、片言の英語で事務的な会話をすることはあっても、生身の日本人と心を開いてじっくりおしゃべりする機会はほとんどありません。岡田さんはそれを50年以上続けてきました。ところが、今日どんなに多くの外国人観光客が日本に来ても、その大半は外国語を操る通訳案内士とはまったく接点がなく、日本のことをよく知らない外国人の自称ガイドに案内されているのが実態です。

団体から個人へ旅行形態が変わっても、それは変わりません。そもそも大半の外国人観光客は、日本の通訳案内士制度について知らないでしょう。なぜなら、彼らの旅行手配は日本人ではなく、外国人が手がけているからです。

そういう事態を野放しにしてきたのは、日本の監督官庁です。外国人観光客を増やすことばかりに注力し、受け入れ態勢についてどこまでまじめに考えていたのか。その結果が、今回のなし崩し的な法改正です。古びた法を改正するのは当然のことだと思いますが、いったいそれで何が改善されるのでしょうか。

そのこと自体を岡田さんはいまさらどうこう言う考えはなさそうです。すでに我々とは次元の違う境地にいらっしゃるからでしょう。

毎週、京都で行うThe Last and Only Samurai Showを精力的にこなす日々。88歳というお歳とはとても思えない奮闘ぶりに、ただただ感服してしまいます。
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残念ながら、日本のプロ通訳ガイドは、大きくうねる訪日旅行市場の蚊帳の外に置かれています。もはや違法とはいえませんが、日本のことをよく知らない外国人の無資格ガイドが跋扈しているのが実情です。

本当にこんなことでいいのでしょうか。

それは、日本の大切な価値を粗末に扱うのと同じではないか。

確かに、一般の日本人にとって外国語を操る彼らは縁のない存在でしょう。でも、どんな人物が日本の価値を外国人に伝えようとしているか。こういう肝心なことに、もっと関心を持っていただきたいと思います。

実は、ジョー岡田さんは先ごろ、英文の日本案内書を上梓されました。

タイトルは『Beyond sightseeing the Ultimate-Guide to Japan(観光を超えた究極の日本案内)』です。

近日中に入手する予定なので、あらためて紹介します。

ガイド人生55年の集大成、ジョー岡田が案内する日本ガイドブック、ついに刊行!
http://inbound.exblog.jp/26896088/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-29 23:16 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 29日

中国系民泊サイトが続々出展「バケーションレンタルEXPO」って何?

先週土曜(5月27日)、新宿NSビルで「バケーションレンタルEXPO」が開催されました。
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バケーションレンタルEXPO
http://minpaku-expo.com/visitor/
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民泊事業を行っている、あるいはこれから行う個人事業者や法人を主なターゲットとした商談会です。主催者によると「3000名を超える人々が来場」「民泊仲介サイトや民泊運用代行会社、清掃代行会社、不動産会社、スマートロック、民泊IoT、民泊支援アプリなど民泊に関わる業種の事業者54社が出展」したといいます。
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同イベントを主催したのは、民泊に関わるあらゆる事業を手がけるメトロエンジン株式会社と株式会社オックスコンサルティングで、両社は情報サイトも運営しています。

メトロエンジン株式会社
http://airstair.jp/
株式会社オックスコンサルティング
http://min-paku.biz/
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確かに、会場は多くの人であふれていました。これだけ多くの外国人が日本を旅行する時代になり、彼らを泊めて趣味と実益を兼ねたビジネスができたら面白そう、と考える人たちの気持ちはよく理解できます。いまブームの民泊をこれから始めてみようという若いカップルやアパート経営に代わる資産運営を考えていそうな中高年の方たち、そしてそこかしこで中国語が聞かれたように、会場の中国人比率はかなり高い印象もありました。

イベントの概要は、主催者発表の以下の記事を参照していただくとして、会場で見たこと、感じたことを以下、思いつくまま報告します。

来場者3,000名超「バケーションレンタルEXPO」民泊事業者ら一堂に会する(MINPAKU.Biz ニュース編集部2017.05.29)
http://min-paku.biz/news/vr-expo.html

まずいちばん感じたのは、出展者をみると、いわゆるプラットフォーム系(マッチングサイト)に関しては、日本勢は惨敗で、中国系の民泊サイトの途家、自在客、住百家、小猪、AsiaYoが勢ぞろいしていたことです。会場の入口正面のメインブースの大半を占めていたのは、まぎれもなく彼らだったからです。
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途家 http://www.tujia.com/
自在客 http://www.zizaike.com/
住百家 http://www.zhubaijia.com/
小猪 http://www.xiaozhu.com/
AsiaYo  https://asiayo.com/

※これら中国系民泊サイトについては以下参照。

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた
http://inbound.exblog.jp/25579904/

中国系以外はエクスペディア傘下のHomeAwayとホテル予約サイトのAgodaというわけで、日本勢は出展すらしていなかったのです。
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※HomeAwayについては、以下参照。
バケーションレンタルって何?
http://inbound.exblog.jp/26802073/

では、日本企業はどのような業種が出展していたかというと、民泊運用代行会社や清掃代行会社、行政書士などの皆さんです。
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↑民泊用の不動産を提供する「部屋バル」 http://ta-japan.com/
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↑民泊用の清掃を代行する「ハウスケア」 https://housecare.tokyo/
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↑民泊メディアを運営し、支援も行う「メトロエンジン株式会社」では、外国人ゲストとの多言語化サービスも行うhttp://airstair.jp/

昨年、Airbnbは370万件ものマッチングを発表したように、いま国内の民泊を支援するビジネスが必要とされていることはわかるのですが、日本勢は脇役ばかりという印象もぬぐえません。

いったい日本の民泊はどうなっているのか。今年施行されるという民泊新法によって、この市場はどう変わっていくのか。次回以降、探っていきたいと思います。

民泊新法でビジネスチャンスが拡大は大ウソ! by行政書士の戸川大冊氏
http://inbound.exblog.jp/26893431/
「180日ルール」の新法をふまえた「合法」的な民泊としての「マンスリー+民泊」って?
http://inbound.exblog.jp/26893756/
民泊新法、衆院可決。中国民泊サイトは「合法」「ホテルより安い」「物件は自社管理」と言うけど、大丈夫?
http://inbound.exblog.jp/26898006/
ゲストとの鍵の受け渡しが不要となるスマートロックとは?
http://inbound.exblog.jp/26898163/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-29 20:12 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 26日

中国の流行語をうまく使った翻訳なんだけど……ちょっと微妙かも?

友人と始めた以下のブログで、日本に住む中国人や中国から来た観光客が街角で見つけたおかしな中国語表示を紹介しつつ、日本人が苦手とする多言語表記の問題の改善のための啓発活動を進めています。

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp
http://inbound.exblog.jp/26776127/

そのブログの記事から転載します。

これまで街で見かけた中国語表記の間違いを探してばかりいましたが、なかには「これは中国人が翻訳しているな」と思わせる名作もあります。

それは「訪日外国人向けワンストップ観光情報サイト」のライブジャパンの中国人向けポスターの文面です。東京メトロのホームに貼られていました。
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ライブジャパン
https://livejapan.com/

そこにはこう書かれています。

「东京观光哪里详
导遍日本数我强」
(東京観光はどこが詳しい
ライブジャパンがナンバーワン」

これを見た中国人観光客の多くは、思わずニヤっとしたことでしょう。この中国語のコピーには元ネタがあるからです。

それは、中国山東省にある有名な工業専門学校の以下の宣伝コピーです。

「挖掘机技术哪家强,
山东技校找蓝翔」
( ショベルカーの技術はどこが優れている
 山東技校で探せばいい)

文章のリズムもそうですし、文末に韻をふんでいて、いかにも中国的なのです。その意味では、とても優れた翻訳例といえると思います。

ではなぜ中国人の多くがこのコピーを見てニヤっとしたかというと、この正式名称「山東藍翔高級技工学校」という工業専門学校のテレビCMはもうだいぶ前から、いろんな意味で評判になっていたからです。

そのCMの一例はYOU TUBEでも見ることができます。
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中国山东找蓝翔 #恐怖蓝翔
https://www.youtube.com/watch?v=YqmbLYWAki4

ご覧のとおり、このド派手な学校案内のためのプロモーションビデオの中で、何度も繰り返されるのが、先ほどの「挖掘机技术哪家强,山东技校找蓝翔」という掛け声です。そして、この仰々しいコピーは、いまどきの若い世代の中国人にとってほとんど流行語のように耳になじんでいるのです。

ただし、それは決して気が利いたコピーというわけではありません。この学校はこのCMで全国的に有名になったことは確かですが、所詮地方の専門学校、日本では信じられないくらい厳しい学歴社会の中国では、大学に行けない連中のための学校にすぎないからです。日本にいる留学生のような恵まれた中国人からすれば、専門学校生なんて、自分とは生きる世界がまったく違う人たちなのです。

ですから、このコピーをチャカしたラップ風のパロディー動画なんかもつくられています。

【蓝翔洗脑广告】挖掘机技术哪家强?中国山东找蓝翔!
https://www.youtube.com/watch?v=AAiZJNhGE0s

このCMは「洗脳広告」だというわけです。

こうしたことを考え合わせると、中国人の若い世代の耳に慣れ親しんだフレーズを元ネタにしたコピーというのは、実際にはかなり微妙といえなくもないのです。

ある中国人留学生はこう言います。「だって、本来東京はCool Japanで売りたいわけでしょう。それが全然coolじゃない山東技校の広告のフレーズに重ねられるなんて、どうなんでしょう?」
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by sanyo-kansatu | 2017-05-26 15:46 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 23日

中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?

一般の日本人が知らないうちに、これほど広範囲に中国人観光客を乗せた「越境白タク」が広がっていた。では、この何が問題だと考えるべきでしょうか。

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/

日本の近隣諸国の国際空港に比べ、成田空港から都心部へのアクセスは極端なコスト高といえます。京急やバス会社など民間による格安な交通手段も登場し、LCC客などを中心に利用者は増えていますが、タクシーで2000~3000円も出せば市内に行ける中国をはじめとしたアジアからの観光客にすれば、10倍近いことにまず驚くでしょう。

最近のアジアからの旅行者は、家族や小グループが多い。1台のタクシーでは乗り切れず、ワゴンタイプの車が最適。こうしたなか、海外からスマホアプリで簡単に予約できて、適度な価格帯で利用できるワゴン車が支持されるのは、顧客のニーズに正対するという意味でも、当然のことだったのです。

そもそも成田空港は、日本人が利用する白タクの温床としても知られていました。こんな記事がネットにあります。

[成田空港アクセス2010]白タクの温床!?
https://response.jp/article/2010/01/11/134609.html

記事によると、

成田空港の白タクドライバーの逮捕事例は、年に数回ある程度。地元警察は「空港周辺に白タクが存在することは認めているが、通報や苦情がない限りは警察も動けない」ともらす。

成田空港で客を待つタクシー運転手は彼らを見て「白タクは今も多い。客引き自体が違反なのに堂々とやっていて、我々の仕事にも影響受ける。万が一事故にあっても何の保障もない。最後に損害こうむるのは客」「東京方面への客がほとんどだから、1人乗せれば確実に2万円が入る。終電を逃した人たちを乗せる白タクと違い、空港が動いている時間帯すべてが“営業時間”となる」という。


ここであらためて、なぜ白タクは違法となるのか整理しておきましょう。

ある法律事務所のサイトに、こんな説明があったので紹介します。

「白タク」はなぜ法律で禁止されてきたのか? 解禁のメリットとデメリットとは(シェアしたくなる法律相談所2015年11月20日)
https://lmedia.jp/2015/11/20/68379/

ポイントは以下のとおりです。

・タクシー事業の許可を受けた場合、緑地に白のナンバーを付けて運送するが、許可がない場合、一般の白地ナンバーを付けてタクシー営業をすることになるため、「白タク」という。

・白タクが違法である法令上の根拠は「道路運送法」にある。国土交通大臣の許可なくタクシー事業を行うと、「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」。

・この規制にはメリットとデメリットがある。メリットは、許可制により運転手に高い技能が求められることや過当競争が抑制され、一定のサービスレベルが確保されること。

・一方、規制をなくすことで、タクシー事業が行き届いていない過疎地域でサービスが供給されたり、従前よりも安価にサービスが提供される可能性が高い。

こうしたことから、昨年春、安倍首相は「白タク解禁」の意向を表明。ただし「過疎地での観光客の交通手段に、自家用車の活用を拡大する」との趣旨だといいます。一方、これを受けて、タクシー業界は「安全性に問題がある」とすかさず反対しました。

「ライドシェア」 “白タク合法化”に業界猛反発(テレ朝news2016/03/08)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000069848.html

とはいえ、過疎地の交通問題などを抱える日本では、ライドシェアの推進に対する期待もあります。その代表格のひとり、UberJapan社長はこう訴えます。

Uber、日本でも攻勢へ ライドシェア(相乗り)で地域を変える
髙橋 正巳(Uber Japan 執行役員社長)
https://www.projectdesign.jp/201602/logistics/002681.php

(以下、記事の一部抜粋)「白タクは運転手の素性が不明で、料金も不透明な営業形態で、何かあっても連絡先がわからない。きちんとした保険に入っているかも不明で、大変危険なもの。一方でUberは、ドライバーのバックグラウンド・チェックや評価システムが存在し、リアルタイムで走行データを記録しています。過去に問題があるドライバーは参加できませんし、ユーザーは事前にドライバーを知り、評価が低いときは乗車をやめることもできます。リアルタイムで運行を管理しているので、万が一の事故やクレームにも対応でき、保険も完備しています」

ポイントとなるのは、Uberのようなライドシェアは「白タク」とは別物という主張です。ただし、これは民泊のAirbnbと同様、ホストやドライバーとマッチング会社の関係性や社会的位置付けをどう了解するかによって見方が変わるでしょう。

あるシェアリングエコノミーの研究機関は、次のようなまとめ記事を配信しています。

【まとめ】ライドシェアリング事業は違法の「白タク行為」にあたるのか?
http://sharing-economy-lab.jp/share-ride-illigal-white-taxi

(以下、記事の一部抜粋)「素人ドライバーのマッチングサービスが日本で実現するようになると、地方の人口減少により公共交通機関の確保が難しくなった市町村では、住民にとって買い物や通院など日常を支える移動手段となり、新たな収入を得る場にもなり得ると言われています。また交通手段がないために、これまでたどり着くのが難しかったような場所も観光スポットになる、というような利用方法も期待されています」

こちらのポイントは、「素人ドライバーマッチングサービス」の可能性をどう評価できるかでしょうか。

政府による「白タク解禁」表明も、規制緩和に向けて、これらの意見をふまえたものだといえるでしょう。確かに、過疎が進む地方では地元住民の足の問題があるのに加え、たとえ魅力的な観光地があっても、交通機関が圧倒的に不足しているため、外国人観光客を送り込みたくても、できない現状があるのですから。

さて、ここらで冒頭の問いに戻りましょう。

中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?

それは、結局、こういうことではないでしょうか。

いま日本国内でライドシェアをめぐる議論や推進に向けた各方面の取り組みが進んでいます。ところが、これらの地道な努力を一切無視して、中国の「越境白タク」は増殖しています。このあまりに無頓着なフライングを見過していては、日本の社会にとって有用なライドシェアの実現をぶち壊しにしてしまうのではないか…。

たとえば、「過疎地での観光客の交通手段に、自家用車の活用を拡大」「人口減少により公共交通機関の確保が難しくなった市町村では、住民にとって買い物や通院など日常を支える移動手段」といった日本のライドシェア推進者たちの主張は、中国配車アプリサービスではほぼ省みられることなく、東京など大都市圏のど真ん中で運用されています。そこに中国客のニーズが集中しているからなのですが、この実態をまったく知らないことにしてまともな議論が進められるものでしょうか。

確かに、中国配車アプリでは、大都市圏から地方の観光地への中国客を乗せたドライブサービスも展開しています。リストに載っている観光地はニーズの多い有名観光地ばかりですが、個別のケースでは、あまり多くの外国人観光客が訪れていない場所へのドライブサービスもありうるでしょう。外国客を地方へ分散させる貴重な足となっていることは否定できない面もあります。彼らが市場のニーズに直結したサービスを提供しているのは間違いないのです。

団体から個人へと移行した外国人観光客の移動のニーズを捕捉することはそんなに簡単ではありません。それゆえ、我々は外国客のニーズに即応したサービスを提供できずにいる。しかし、すでに自国で定着したシステムを持つ中国の配車サービスは、日本でこそ優位性を発揮し、好んで利用されているのです。

日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/

すでに触れたように、中国配車アプリのドライバーたちの大半は日本在住の中国人で、営業に必要な第2種運転免許を取得しているとは思えませんが、ライドシェアが解禁されると、、「素人ドライバー」自体は違法でなくなります。タクシー業界からの反発が強いのはそのためですが、現状の「越境白タク」は追認されてしまうことになります。

シェアリングエコノミーの信奉者の中には、こうした違法をものともしない果敢な中国のビジネス手法を評価する人もいそうですが、それは中国の特殊な国内事情をよく知らないからではないでしょうか。中国で配車サービスが普及した背景には、同国のそれまでの恵まれない交通事情、さらにアプリ会社の猛烈な競争があり、利用のためのインセンティブが強く働いていたことがあります。日本のIT企業がそこまでのサービス合戦に投資ができるとは思えません。それに、仮に白タクが合法化されたとして、国内にそれを正業にするような日本人がどれほどいるでしょう。

日本と中国では制度や環境があまりに違い、人々のニーズも異なる以上、どんなに優れたサービスでも、その国に合った運用法を見つけるしかないのです。

中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/

中国の「越境白タク」の問題は、すでに書いたように、このサービスを仕切る事業者は日本国内には存在せず、金銭のやりとりもない。おそらくドライバーへの支払いは、中国の電子決済システムによるのでしょう。ドライバーは日本在住者でありながら、在外華人なので、必要であれば、なんらかの日本円への換金手段があると思われます。そして、顧客へのドライブサービス活動の実態だけが、日本国内で行われる(実際には在日中国人らがすでに事業化しているという話もありますから、実態は別のステージに移りつつあるかもしれません)。この事態を黙認していいかどうか、という判断になるのだと思います。

(参考)
なぜ次々と中国人観光客の周辺で違法問題が起こるのか?
http://inbound.exblog.jp/26880001/
タクシー運転手に聞く「日本のライドシェアが進まない理由」と今後すべきこと
http://inbound.exblog.jp/26891045/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-23 16:23 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 12日

日本語の美しさに見合わない雑な外国語併記は残念です

今年の初め、友人と始めた以下のブログで、日本に住む中国人や中国から来た観光客が街角で見つけたおかしな中国語表示を紹介しつつ、日本人が苦手とする多言語表記の問題の改善のための啓発活動を進めています。

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp
http://inbound.exblog.jp/26776127/

そのブログの記事から転載します。

これは友人が高尾山に出かけたとき、見つけたものです。
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「想い出とゴミは持ち帰ろう」。なんという美しい日本語でしょう。

ところが、中国語は「不把垃圾扔掉,回去吧」。あえて直訳すると「ゴミを投げ捨てるな、立ち去れ」でしょうか。その語気の強さに一瞬ビックリです。

それに、中国語だけでなく、英語もちょっとおかしい気が……。

この看板をつくった方は、そんな命令口調で言うつもりなどなかったでしょう。なにしろ「想い出とゴミは持ち帰ろう」ですから。でも、この中国語表示には「想い出」に当たることばもありません。

このくらいの言い方がいいのではないでしょうか。

「请把垃圾和美好的回忆带回家」(ゴミと美しい想い出を持ち帰りましょう)

ここでは「想い出」より「ゴミ」を先に言っているのは、本来の目的がゴミの持ち帰りだからです。そのほうが中国人にはわかりやすいのです。

日本語の美しさに見合わない、あまりに雑な外国語併記はとても残念です。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-12 13:42 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 03日

下田発グルメミステリー『伊豆下田料理飲食店組合事件簿』の実在登場人物、真理子さんに会ってきた

今回伊豆下田に来て、古い友人で地元在住作家の岡崎大五さんに町を案内してもらったことはすでに述べましたが、そのとき彼は街場の飲食店に貼られた1枚の小さなポスターを見せてくれました。
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伊豆下田のユニークな歴史が持つインバウンドの可能性と気になる2、3のこと
http://inbound.exblog.jp/26831205/

そこには「伊豆下田料理飲食店組合事件簿(連載中)」と書かれています。翌日、ひとりで下田の町を歩いたときも、あちこちでみかけました。飲食店だけでなく、お茶屋さんや八百屋さんにも貼ってあります。
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これどういうこと? なんで大五さんの新刊案内のポスターが町中に貼られているんですか?

実はこういうわけです。なんでも下田で人気の旅行サイト「伊豆下田100景」で彼の小説が連載されるからだそう。このサイトは下田温泉旅館協同組合と料理飲食店組合が運営していて「下田の魅力を〝旅行者目線〟で発信します!」がモットー。

伊豆下田100景
http://shimoda100.com/

この旅行サイトに連載される大五さんの書き下ろしユーモア・グルメ・ミステリーは「小説に登場するのは下田に実在の人物、店、料理。次期組合長の座をめぐるドタバタ事件を老舗そば屋の女将が街中を駆け巡り、名物料理を食べながら真相を追う!」という設定。

タイトルは『伊豆下田飲食店組合事件簿』。全11回の連載を読むには、以下のページから各回100円でダウンロードするか、地元飲食店・書店などで200円で購入することになります。
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伊豆下田料理飲食店組合事件簿
http://shimoda100.com/jikenbo/

で、事件の発端を告げる序章「むさし・天城そば」が4月25日に公開されたばかり。舞台は、下田駅前にあるそばとうどんの店「むさし」です。
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むさし
http://shimoda100.com/restaurant/musashi/

これを読んだぼくは、思わず「むさし」を訪ねてみたくなりました。この連載小説の主人公ともいうべき、同店の店主、別の名を「下田のパパラッチ」こと真理子さんに会ってみたいと思ったからです。

店はごく普通のおそばやさんでした。席に座ると、注文を取りにきたのは、大五さんに聞いていたとおり、アルバイトのフィリピン人のおばさんでした。
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小説にも出てくる「天城そば」を注文。老舗らしく、店内は常連さんが多くいました。

この店のそばは、自分でわさびをするのが決まりです。小説に出てくる新米刑事の新庄誠のように、ぼくもわさびをすりすりしながら、そばを食べました。
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常連さんが会計をしたとき、店の奥から真理子さんがついに現れました。ぼくは思わず「おお、この人か」と思い、会計がすむと、声をかけてしまいました。

「ぼく、この小説を見て来ました」

すると、真理子さんはまんざらでもないというにんまり笑顔で「でも、これフィクションなんですよ」。そう言って足早に厨房に戻るのでした。

4月25日に序章が公開された、この超ローカルな、町の実在店主が登場するミステリー小説は、これから半年かけて、隔週で公開されます(9月25日が最終回)。

この企画は、地元の若いウェブデザイナーらと岡崎大五さんが話し合って実現させたそうです。

この企画の話を聞いて、ついにシーズン6に突入してしまった『孤独のグルメ』(テレビ東京)や喫茶店文化を誇る名古屋ローカルの『三人兄弟』(メ~テレ)などのご当地グルメドラマを思い出しました。

孤独のグルメ http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/
三人兄弟 http://www.nagoyatv.com/3ninkyodai/
http://www.nagoyatv.com/3ninkyodai2/

食が人を呼び込む決定打になる時代です。ネットで調べていたら、こんなグルメイベントもある時代です。

全国ふるさと甲子園公式サイト http://furusato-koshien.jp/

こうしたなか、人口2万3000人にすぎない下田で、こんな企画が生まれるなんて、いい話だなあと思いました。大五さんによると、伊豆下田100景のサイトの運営もそうですが、今回の連載小説企画も、下田の飲食店のみなさんからのささやかな運営費でまかなっているのだそうです。

大五さんは言います。「下田も少子高齢化で若い人は少ない。シャッター商店街だよ、本当に。仕方がないじゃない。全国どこでもそうなんだから。でも、若い人が全然いないわけではない。下田のような小さな町にも、主婦をしながらデザイナーをしてくれる若い人材もいるし、彼女もこれで食えてるわけではないけれど、地元のために何かやりたい気持ちはある。そういう思いで生まれた今回の企画、登場人物の名物店主の全員にお会いして、話を聞きがら物語のあらましを伝えて、小説にしてもいいかと聞いたら、いいよという話になった。みんな魅力的な人たちなんだ」。

その話を聞きながら、こういうことってできるんだなと思いました。大五さんはこんなことも言ってました。ネタバレにならない範囲で、書いてしまいます。

「ミステリー仕立てにするとなると、殺人事件というのが相場なんだけど、実在人物を登場させると、いくらフィクションといっても、殺人はどうかとなった。だいたい伊豆では、事件といっても、せいぜいオレオレ詐欺くらい。でも、登場人物の当の本人は、それでもいいと言ってたんだけどね」

ネットで調べると、確かに最近、伊豆周辺でオレオレ詐欺が続出しているそうです。

・79歳女性110万円被害 “息子”にオレオレ詐欺(伊豆新聞2017/01/27)
伊豆市の女性(79)が25日、息子を名乗る男からの電話で110万円をだまし取られたと大仁署に届け出た。
・伊豆の60代女性 200万円詐欺被害(2016/07/08)
伊豆市の無職女性(67)が8日までに、息子を名乗る男からの電話で現金200万円をだまし取られた。

特殊詐欺防止へ本腰 静岡県警、きょうから注意喚起人形貸し出し(産経ニュース2017.4.1)
http://www.sankei.com/region/news/170401/rgn1704010062-n1.html
オレオレ詐欺被害が発生しています!|伊豆市 くらし・仕事・市政情報
http://www.city.izu.shizuoka.jp/gyousei/gyousei_detail005188.html

伊豆下田ではいま、こんなことが始まっています。地元を元気にするための方法は、お金がなくても、いろいろ考えられるのだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-03 19:35 | “参与観察”日誌 | Comments(0)