ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 12月 30日

HISのグローバル戦略の最前線がバンコクである理由

今年8月、タイのインターナショナル・トラベル・フェア(TITF2013)の視察の折、HISバンコク統括支店長の話を聞くことができました。今年、タイからの訪日客が増えた背景に、ビザ緩和や円高是正があったことは確かですが、民間企業の精力的な取り組みが大きく貢献していると思います。

なぜ同社のグローバル戦略の拠点はタイなのか。日本と同様、市内交通機関の中はスマホを手にした乗客であふれるバンコクで、あえて旅行店舗の出店を加速する意外な理由について。以下、今月中旬に刊行された産学社刊「産業と会社研究シリーズ トラベル・航空2015年版」に掲載したインタビュー記事を採録します。
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日本を取り巻くグローバルな観光マーケットが急成長するなか、日本の旅行業はどこに向かうべきか。ひとつのカギは「ツーウェイツーリズム」にある。それを地道に実践しているのがHISだ。

2013年8月中旬、タイの首都バンコクで開催されたタイ・インターナショナル・トラベル・フェア(TITF)の会場で、同社のグローバル戦略の現在について中村謙志バンコク統括支店長に話をうかがった。

この国では我々の知名度はない

中村さんがバンコクに赴任し、タイのローカル市場に取り組んで13年で4年目。その手始めが、国内外の旅行会社が集まる展示即売会のトラベルフェアへの出展だった。「この国では我々の知名度はない。HISといってもタイ人は誰も何の会社か知らない。ゼロからのスタートでした」という。
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初年度は小さなブースで、扱ったのは航空券とJRパスだけ。その後、本格的にツアーを造成し、ブースもだんだん大きくした。今回の展示即売の目玉商品は、就航したばかりのチャーター航空会社アジア アトランティック エアラインズ(AAA)を利用した大阪・東京ゴールデンルート。「4泊6日・29999バーツ(約9万3000円)という破格の料金で売り出したところ、1000名が完売でした」。
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旗艦店となるトラベルワンダーランドで年間通じて売れているのは、航空券+ホテル(+JRパス)。自由旅行の商品だ。一方ソンクラーン(タイの旧正月)の4月とスクールホリデー(夏休み)の10月の年2回のピークシーズンは、添乗員同行の団体ツアーが人気だ。

売れ筋は、東京、富士山、箱根の5日間、東京・大阪ゴールデンルート、大阪・京都5日間、北海道(道南)の順。最近、北海道でレンタカーを利用するタイの個人客も現れたという。「タイ人は普段から日本車に乗り、左側車線の国ですからね」。

バンコクの出店を加速する理由

ネット予約の普及などビジネス環境の変化で、日本では旅行店舗の整理縮小が進んでいるが、バンコクで出店を加速するのはなぜか。そこには意外な理由があった。

「ローカルを取り込む戦略の軸は店舗展開です。なぜなのか。広告効果が大きいからです。場所はスカイトレインの駅構内やショッピングセンターなど、消費者に目につきやすい場所限定です。実は、バンコクでは一等地に広告を出すのと家賃にかかるコストはたいして変わらない。であれば、店舗を出そう。ただし、常駐スタッフは1、2名の『KIOSK店舗』。それを量産することで、我々の存在を知ってもらう」。
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店舗ではHISの海外旅行商品のパンフレットを大量に用意している。タイでは、日本のようなセールスカウンターのある旅行店舗は少なく、パンフレットは流通していない。誰もがスマホを手にする時代でも、細かく旅行日程が書かれた紙のパンフレットはタイ人に好評だという。

一方、タイには旅行業法や約款が存在しない。キャンセルチャージも個々の旅行会社の裁量に任されている。「震災のような有事にガイドラインがないと困るが、HISは日本の会社だから信用できるといってくださるお客様が増えている。タイにはメイド・イン・ジャパンへの信認がある」と中村さんはいう。

ローカル客を取り込むためには、タイ人を理解することが不可欠だ。

「タイのお客様がどんな旅を望んでいるか、日本人の私はどんなに勉強してもわからない。だから、添乗にもよく同行します。お客様が何を喜んでいるのか、おいしいと思うのか、どの風景をバックで写真を撮りたいのか。勘が鈍るのはいちばんまずい」。

いくつかわかってきたことがある。「タイ人はタバコが嫌い。ほとんどの人が吸いません。ところが、日本のホテルはタバコ臭い。ですから、ホテルの手配は禁煙ルームが絶対条件です。タバコを吸えるレストランも選びません。タイのお客様は日本食好きで、滞在中すべて日本食でもいいのですが、気をつけないといけないのは生もの。タイで出回っているお寿司のネタは限られています。お店が気を利かしたつもりで珍しいネタを出しても、生ダコなどは気持ち悪がって決して食べようとしない。全員残すこともよくある。もし本当にタイのお客様を受け入れたいと思うなら、タイ人を理解して細かい気配りが必要です」

タイでは旅番組の影響が大きいこともわかった。「いい例が、いまタイ人が多く訪れている白川郷や高山、富良野のラベンダー、岩国の錦帯橋、瀬戸内のしまなみ街道、指宿温泉の砂蒸し風呂など」。「ある日、局地的な人気が起こる」だけに、訪日プロモーションはテレビを活用するのが効果的だという。

なぜタイが拠点として選ばれたのか

では、HISの海外戦略においてなぜバンコクが最前線の拠点として選ばれたのか。中村さんはこう即答する。「タイには大きなコンペティターがいないからです」。

重要拠点を選ぶ条件は、これから伸びる市場。しかも、インバウンドからアウトバウンドに旅行マーケットが移り変わる時期で、大手エージェントが不在の国。それがタイ、インドネシア、ベトナムだという。 

日本の旅行業界は一見国際的なイメージがありながら、実はドメスティックな体質が残っている。早くから海外で売上を生み出してきた製造業に比べ、海外営業所がありながら、売上に貢献してはいなかった。

「海外拠点をつくり、日本のお客様をきちんとご案内する。これが第一ステップ。でも、その役目だけで終わらせてはもったいない。企業のグローバル化はローカルに根付かなければ意味がない。それぞれの国でHISを発展させる。私はタイを任されていますが、インドネシアやベトナムに赴任した同僚もそう思っている。いまではHISジャカルタ支店で集客したインドネシア客をバンコク支店がインバウンド業務として受ける。またシンガポール支店とも、という日本をまったく介さないビジネスも始まっています」。

これはもはやツーウェイではない。マルチウェイツーリズムとでもいえばいいのか。いまHISバンコク支店で起きている仕事の現場を通じて、新しい旅行業の未来が見えてくる。


中村謙志(なかむら・けんじ)
1996年入社。いくつかの国内支店を勤めた後、「グローバル化戦略の一期生」として2009年、トラベルワンダーランド立ち上げのためにバンコク赴任。初めての海外駐在だった。支店長として現在にいたる。「目標は、タイでナンバーワンのトラベルエージェンシーになることです」。 

※産学社刊「産業と会社研究シリーズ トラベル・航空2015年版」p70~P73より抜粋http://sangakusha.jp/ISBN978-4-7825-3376-5.html
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by sanyo-kansatu | 2013-12-30 09:23 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 12月 30日

日本滞在おひとり様100万円の富裕層旅行市場

今年3月、日本初の富裕層旅行に特化した商談会「ジャパン・ラグジュアリー・トラベルマーケット(ILTM Japan)」が京都で開催されたことで、海外からの「富裕層旅行市場」がひそかに注目されています。

※関連記事
京都で日本初のラグジュアリー・トラベル商談会「ILTM JAPAN2013」開催
http://inbound.exblog.jp/21590385/
ジャパン・ラグジュアリー・トラベル・フォーラム 2013 セミナー報告
http://inbound.exblog.jp/21681992/

では、「富裕層旅行市場」というのはどんな世界なのか。日本の旅行最大手であるJTBでは、ブティックJTBという富裕層旅行に特化したセクションを設け、市場の取り込みを進めています。以下、今月中旬に刊行された産学社刊「産業と会社研究シリーズ トラベル・航空2015年版」に掲載した同室長へのインタビュー記事を採録します。
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日本の旅行業は長い間、パッケージツアーというマスツーリズムを前提にしたビジネスモデルに依存してきた。だが、旅行市場を取り巻く環境が変わり、グローバル化するなかで商品・チャネルが多様化し、富裕層市場も注目されている。その実態は? JTBグローバルマーケティング&トラベルの「ブティックJTB」室長、遠藤由理子さんに富裕層ビジネスの仕事の中身をうかがった。

富裕層マーケットは地上費100万円の顧客

訪日旅行事業のプロフェッショナルカンパニーとして知られる同社に、海外の富裕層向けブランド「ブティックJTB」事業が社内プロジェクトとして立ち上がったのが2007年。それまで国・地域別に訪日客に対応していた同社では、富裕層というセグメントを分ける認識はなかった。だが、同年12月にフランス・カンヌで開かれた「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット(ILTM2007 )」に出展。「海外には富裕層だけを専門に扱う業態があることを知り、日本を売る我々もその市場に正対した組織体制でやっていくべきと判断。08 年にグループとして発足した」と遠藤さんはいう。

では、富裕層とはどんなマーケットなのか? 

「明確な定義はないのですが、我々が目指す顧客像は、航空機を除く日本滞在の費用(地上費)として100万円くらい落とすお客様と定義しています。10日間の滞在で、1日おひとり様10万円程度使う計算です。その内訳は、宿泊は5つ星級ホテルで1泊5万円が相場。車とガイドを1日プライベートで手配すると10万円。さらに、食事や体験プランで5万円。おふたりでトータル20万円になります。ここでいう食事や体験とは、一般的なツーリスティックな内容ではなく、特別なプランになります」。

自分だけしか体験できない“本物”の旅

世界の富裕層は日本に何を求めているのだろうか? 

「国によって、お客様によって求めるものが違います。アメリカのお客様は比較的インテリの方が多く、リゾートには飽き飽きしているといいます。だから体験プランの場合も、一般に茶道や着付け、料理体験などが人気ですが、通常のパッケージコースに組み込まれるような場所でやるのは面白くないということで、たとえば、ミシュランの2つ星を取っているシェフのサロンを訪ね、個人レッスンを受けていただく。京都のお寺の一般公開の終わった後、VIPルームで住職さんから寺の歴史を説明していただき、本堂をご案内。篠笛と尺八の演奏と庭園を見ながら、茶会席のお食事をしていただく。日本の伝統芸能のバックステージを理解していただくために、歌舞伎役者の方にお願いして、お化粧や着付けのシーンを見せていただき、最後に簡単な演目を演じていただく。もちろん、そのお客様のためだけに、です」。

彼らが求めているのは、自分だけしか体験できないこと。「あなただけのための旅行をつくりました」というオーダーメイドのプランである。

だからといって、すべてが綿密につくり込まれたプランでなければならないというわけではない。たとえば、最近全米でヒットした映画『二郎は鮨の夢を見る』を観たアメリカ人から「すきやばし次郎に行きたいが、ブッキングはできるか?」といった問い合わせがくるそうだ。ミシュランの3つ星が付いたお寿司屋の主人の物語。飛行機に乗ってでも、それだけを食べに行きたいという。

14室のスィートしかない豪華列車、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」も話題である。鉄道旅行は海外でも人気が高く、今後の海外富裕層の動向が注目される。石川県にあるかよう亭という温泉旅館は、わずか10室の宿だが、ご主人が外国人客を近所の焼き物の工房や合鴨農法の農家に案内するなど心のこもった接遇をすることから、送客すると必ず「パーフェクト!」といわれるそうだ。

重要なのは“本物”であること。ストーリー性があることが大切で、なぜそれが素晴らしいかという物語=ヒストリーがあるものでなければ、彼らは納得しない。 
   

「難しいのは、どんなスペシャルな提案をしても、そのお客様の心に刺さらないと意味がないこと。また中国では万里の長城でパーティができるじゃないか。ドイツでは古城でできるのに、なぜ日本ではできないのかと、他国と比較されることもしばしば」。

公平を重んじる日本の社会は、VIPに対する特別な接待の提供が難しい面も多く、対応してくれるコネクションとの関係構築を日々進めているという。 

海外のバイヤーとのネットワークが不可欠

日本に富裕層を呼び込むためには、海外の富裕層専門のバイヤーとのネットワークが不可欠だ。北米や中南米、オセアニアの富裕層バイヤーを束ねるエージェント組織「VIRTUOSO」の関係者との商談会のため、先日遠藤さんはラスベガスを訪ねた。そこは、ひとりでも多くのバイヤーに会い、その場で顔を売っていくことでビジネスを広げていく世界だ。

「日本の旅行会社は規模が大きく安心安全なイメージがありますが、富裕層マーケットの場合、海外のバイヤーは個人で年間10名程度のお客様を扱うような世界。その代わり、一人ひとりのお客様とは友人のような親密な関係になる。だから、誰に頼むのか、顔が大事になる。組織はむしろ小さくて、あなただけのためにやりますよ、というのでなければ、仕事は来ないのです」

それは、これまでのマスツーリズムに注力することで成長してきた日本の旅行業のビジネスモデルとは、ある意味真逆の世界といえるかもしれない。

遠藤さんは「ブティックJTB」の目指すべきビジョンとして次のように語る。

「世界の富裕層が求める本物の和を伝えるプロフェッショナルとして、世界と日本の心を結び、訪日インバウンド富裕層事業の牽引役として日本ブランド価値向上とインバウンドビジネスの活性化に貢献する」。

残念ながら世界の富裕層市場での日本の認知度はまだ低い。もっとアピールすべきだし、伸びしろもあるはずだ。富裕層マーケットは、取り扱い人数は少なくても、世界の旅行業界に与える影響は大きい。世界の旅行シーンに新しいトレンドをつくり出すのは、実は富裕層なのだ。日本のブランド価値向上のため、「ブティックJTB」に与えられたミッションは大きいのである。

遠藤由理子(えんどう・ゆりこ)
1986年日本交通公社(現JTB )入社。2000年、国際旅行事業部。04年からエージェンシー営業部で米国マーケットを担当。08年よりJTBグローバルマーケティング&トラベルで「ブティックJTB」室長として現在にいたる。「富裕層ビジネスは、日本の価値の伝道師であるという気概を持つことが大事です」

※産学社刊「産業と会社研究シリーズ トラベル・航空2015年版」p74~P77より抜粋http://sangakusha.jp/ISBN978-4-7825-3376-5.html
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by sanyo-kansatu | 2013-12-30 09:18 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 12月 26日

26回 祝!訪日外客1000万人達成。その理由と来年の展望は?

12月20日、成田空港で訪日外国人旅行者1000万人の達成を記念するセレモニーがありました。太田昭宏国土交通省大臣は「東日本大震災もあり、政府目標だった2010年から3年遅れたが、東京オリンピックの開催される2020年には、さらなる高みの2000万人を目指したい」とコメント。インバウンド関係者のこれまでの努力が報われる日が来たことを心から喜びたいと思います。
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1000万人目となったのは、タイから来たパッタラプラーシットご夫妻。「今年来日するのは3回目。ニューヨークに留学した娘と日本で合流し、北海道でスキーをする予定です」とのこと。タイ人観光客の存在感が目立ったこの1年でした。
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今年は、富士山のユネスコ文化遺産登録やオリンピック開催決定、また今月に入り「和食」の無形文化遺産登録も決まり、訪日外客数の統計も毎月のように過去最高を更新。関係者を大いに勇気づけました。.

ポスト訪日外客1000万人時代を迎えたいま、2013年の総括とともに、今後の課題や展望について整理してみたいと思います。

1000万人達成、観光庁の公式見解は

まず今年の総括です。11月27日~29日、横浜みなとみらいのパシフィコ横浜で開かれた「Visit Japan Travel Mart 2013」の報告から始めましょう。トラベルマートは、海外の旅行会社やメディアを招聘して行う観光庁主催のB2B商談会です。

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トラベルマート2013開会式

主催者発表によると、今回海外から304社(21カ国・地域)の日本旅行を企画販売している「バイヤー」が来日。彼らに日本を売り込む国内の観光業者や自治体などの312社・団体が出展したそうです。

トラベルマートでは、毎回恒例の外国人記者を集めた会見があります。この日の報告は、観光庁参事官による「日本のインバウンドツーリズム促進のための対応措置」というものでした。

そこでは、今年訪日客が過去最高となった理由として以下の4つの点を挙げています。

①アセアン諸国を対象としたビザ緩和
②円高是正
③オープンスカイにともなう国際線フライトの増加
④日本の景気回復(Japan is back!)
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オープンスカイ協定によって羽田や成田の航空供給量が大幅に増加した

このうち①②はすでに指摘されているとおりですが、③については、特に台湾、香港、そして東南アジア諸国からの新規フライトが大幅に増えたことが大きかったといえます。島国である日本では航空供給量が拡大しなければ訪日客を増やすことはできないからです。それを後押ししたのが、台湾など近隣諸国と結んだオープンスカイ協定でした。

④については、その評価をめぐって議論はありますが、結局のところ、①②③の相乗効果によって、これまで敷居の高いと見られていた日本が行きやすい国になったというイメージがアジア各国に広く伝わったことが大きかったと思います。そのイメージを実感させる円安やビザ緩和が効果的に結びついたといえそうです。
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実は、「Visit Japan Travel Mart」は今年で最後の単独開催でした。来年からは、元海外旅行博の「JATA旅博」と国内旅行博にあたる「旅フェア日本」が統合され、「ツーリズムEXPOジャパン」(2014年9月25日~28日/東京ビッグサイト)となり、これにB2B商談会の「Visit Japan Travel Mart」も同時開催として加わることになるそうです。

ツーリズムEXPOジャパン
http://www.t-expo.jp

開会式の質疑応答で、観光庁長官はこれら3つの旅行イベントをひとつに統合する理由について「世界を代表する旅行博覧会であるITBベルリンやWTMロンドンに負けないよう、アウト/イン/ドメスティックの日本の旅行市場のさらなる発信力アップを図りたい」とコメントしています。

※トラベルマートについての詳細は、中村の個人blog「「普遍的な日本の魅力」って何だろう?(トラベルマート2013報告 その1)」、「実際、商談はどれほど進んでいるのか?(トラベルマート2013報告 その2)」を参照。

流れが大きく変わったアジアインバウンド市場

トラベルマート会期中の11月28日の夜、一般社団法人ASIO(アジアインバウンド観光振興会)の総会がありました。AISOはアジアからの訪日客の手配を担当するランドオペレーターを中心にしたインバウンド業者が加盟する団体です。

一般社団法人ASIO(アジアインバウンド観光振興会)
http://www.shadanaiso.net/

官の公式見解に対して、民間事業者は今年をどう振り返っているのでしょうか。AISO理事長である日本ワールドエンタープライズ株式会社の王一仁社長は最初にこう挨拶しました。

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王一仁AISO理事長

「AISO創立から今年で7年目。震災から2年たち、今年はアジアインバウンドの流れが大きく変わった年といえるでしょう。円安効果も大きいですが、東京オリンピック開催決定や富士山の世界文化遺産登録など、さまざまな追い風が吹いています。

AISOの加盟団体は現在約160社。半分はランドオペレーターで、残りはホテルやテーマパーク、レストラン、運輸業者などの方々です。お互い協力して日本のインバウンドを盛り上げていきましょう」。

次に株式会社ジェイテックの石井一夫常務理事による今年のアジアインバウンド市場に関する報告がありました。

「今年のアジアインバウンドに弾みをつけたのは、やはり7月のアセアン諸国に対するビザ緩和の影響が大きかったといえます。なかでも大きな伸びを見せたのは、台湾やタイといった親日国だったように思います。

それでも、現状でいえば、訪日外客の6割を占めるのは、韓国、台湾、中国本土です。韓国はいったん回復してきたかに見えましたが、秋口から伸び悩んでいます。一方、中国市場は概ね回復基調にあると思います。

今後は、アジアの個人客向けの商品、特に来日してから各自が参加する『着地型』のツアー商品の開発などに力を入れていくべきでしょう。ここにいらっしゃる関係者の皆様には、ぜひ我々ランドオペレーターに新しいコンテンツをご提案いただきたいと思います。それを海外の旅行会社につなげていくのが我々の仕事ですから」。

報告を聞きながら、今年は「アジアインバウンドの流れが変わった」ことをあらためて実感しました。何より一時期、中国本土に過度に集中していた訪日旅行市場の取り組みが世界各地に分散化してきたことは基本的にいい流れだと思います。逆にいま、その反動で中国離れが進んでいることは、ムードに流されやすい日本人の問題だと思いますけれど、いずれバランスを取り戻す動きも出てくるでしょう。

今年は台湾や香港、タイなどアセアンの国々のように、日本の文化的、経済的影響力の強い地域からの訪日客増加が顕著であった一方、中国や韓国という「近くて遠い」大市場は政治的な理由で萎縮してしまいました。その意味でも、日本の影響力が強くない国々の訪日旅行市場をいかに活性化すべきか、という課題が印象付けられた年でもあったと思います。さらに、インドやロシアといった未知の市場に対してどう取り組むか。来年に向けて新しいチャレンジが必要ではないかと思った次第です。AISOの関係者は、すでにこうした新規市場に対する開拓を始めており、心強い限りです。

※AISO総会でのアジア各国の市場動向については、中村の個人blog「流れが大きく変わった今年のアジアインバウンド市場(トラベルマート2013報告 その3)」を参照。

VJC10年の総括と課題

2003年に始まったビジットジャパンキャンペーン(VJC)は、昨年10年目を迎えています。平成25年版「観光白書」では、この10年間を総括し、いくつかの課題を挙げています。

平成25年版「観光白書」http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000183.html

「第3節 過去10年の国際観光振興政策の総括と課題」からその一部を抜粋して検討してみましょう。

「平成15年のVJの開始前後で訪日外国人旅行者数の推移を比較すると、近年は外的要因の影響を受けて増減の振幅が大きいものの、VJ開始後は、開始前と比べて目に見えて大幅な増加傾向を示している」「この10年の間に、国内の観光関係者の間のみならず、各地域でインバウンドへの取組の必要性についての意識が広まり、インバウンドが今後の日本の成長産業の一つであるという認識が国内で相当程度広がっている」とVJCの果たした役割を評価しています。

実際、10年前と比べると、インバウンド振興に対する認識が国内で広く共有されてきたことを実感します。北京オリンピックの開催された2008年がひとつのメルクマールとなり、中国をはじめアジア地域が訪日旅行の発地国として広く認知されたことが大きかったと思います。その一方で、「我が国は、“観光後進国”からようやく“観光新興国”になったに過ぎないのが現状である」とも白書は述べています。これはどういう意味でしょうか。その理由についてこう指摘します。

「外国人旅行者受入数について見ると、過去最高である861万人を記録した平成22年においても、日本は世界で30位、アジアで8位に過ぎない。また、同じく平成22年の国際観光収入を比較しても、日本は世界で19位、アジアで8位と低位に甘んじている」。

これはマスコミも好んで触れる外客数の国際比較の現状です。日本の総合的な経済力からみて、訪日外客数が近隣アジア諸国と比べても少ないことから、あえて「観光新興国」といった表現を採用したのかもしれません。

こうした「総括」をふまえ、白書は5つの「課題」を挙げています。

①訪日ブランドの構築
②外的要因の影響を受けにくい訪日外客構造の構築と戦略的なプロモーションの展開
③MICE分野の国際競争力の強化
④訪日外国人旅行者の受入環境の整備
⑤オールジャパン体制の更なる強化

ここで指摘された「課題」は、プロモーションに関するものと、受入環境の整備に関するものに大きく分けられます。

まずプロモーションに関する課題を簡単に見ていきましょう。①(訪日ブランドの構築)では「それぞれの関係者がばらばらに情報を発信することが多かったため、日本全体としてのイメージの訴求ができていなかった」「そのようなブランド確立がなされないまま、目先のプロモーションだけに力を注いでいる例が少なからず見られる」と指摘しています。

これは、本コラムで何回か紹介した海外のトラベルマートの現状からも感じられることです。各自治体・企業がそれぞれ自己の魅力をアピールするのは当然としても、「日本全体としてのイメージの訴求ができていなかった」としたら、世界の競合国の中から日本を選んではもらえない。国としての戦略があいまいだったという反省です。また、日本国内では有名でも、海外から見てブランドとしての認知のないまま「目先のプロモーション」に懸命になっても、集客につなげるのは難しいという現実があります。

②(外的要因の影響を受けにくい訪日外客構造の構築と戦略的なプロモーションの展開)では、前述の石井一夫AISO常務理事も指摘したように、今年いくらアセアン各国からの訪日客が増えたといっても、「東アジア4か国(韓国、中国、台湾、香港)で約65%」を占めるという訪日旅行市場の偏りは変わらないことを指摘しています。近年、一部の近隣諸国との政治的不和による訪日客の落ち込みから、「特定の市場に依存した訪日外客構造の脆弱性を身を以て学んだ」と白書は述べています。これまで多くの日本人は、国際理解や親善につながるはずの観光がこれほど政治の影響を受けるとは考えていなかったと思いますが、それが現実のものとなった今日、より高い戦略性が求められています。
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日本の訪日旅行市場は中韓台に偏重している

そうした「脆弱性」を克服する手立てとして挙げられるのが、市場の分散化に加え、政治的な影響を受けにくいFIT客への対応といえます。.

「近年、世界的に個人旅行が主流になりつつあり、多様な個人のニーズを的確に把握することが不可欠となりつつある。我が国の主要な市場である韓国、台湾、香港はもちろん、今後は、中国やタイも個人旅行が主流になることが見込まれる中、きめ細かなマーケティングがより一層欠かせなくなる。

プロモーションについても、そうした傾向を受け、これまで以上にきめ細かさが必要となってくる。市場類型や国・地域ごとに訴求対象を明確化した上で、より効果的な媒体を的確に活用しながら、個人旅行者に向けてはSNSを活用するなど、常に新しい手法を取り入れ、工夫していく必要がある」。

さらに、③(MICE分野の国際競争力の強化)や⑤(オールジャパン体制の更なる強化)が必要なことは言うまでもありませんが、東京オリンピック開催が決まったことで、④(訪日外国人旅行者の受入環境の整備)も喫緊の課題となっています。

JNTO(日本政府観光局)が実施した「訪日外国人個人旅行者が日本旅行中に感じた不便・不満調査」(平成21年)の結果は以下の図表のとおりです。
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訪日外国人旅行者が旅行中に感じた不便・不満(出典:平成25年版「観光白書」)

ここでは指摘されていませんが、昨今外客から不満の声として筆頭に挙げられるのが、Wi-Fi(無線LAN)整備の遅れです。今年ぼくは東南アジアを何度か訪ねましたが、海外に比べて日本の普及の遅れはウィークポイントであることを、身をもって感じました。それはこれまで訪日外客数が他国に比べ相対的に少なかったことに起因していると考えられます。そういう意味では、訪日客の増加は、日本の通信インフラの整備と進化を後押ししてくれると前向きに考えるべきだと思います。

期待したい民間の新しい取り組み

こうした「課題」をふまえ、国土交通省は「観光立国」に向けたアクション・プログラムに取り組んでいます。

「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」の取組状況について(2013年9月20日)
http://www.mlit.go.jp/common/001015986.pdf

東南アジア諸国における集中プロモーションや、欧州、ブラジル、トルコなどへの日本の認知度向上に向けた取り組みを行う「戦略的訪日拡大プラン」、大型クルーズ客船や空港における「出入国手続きの迅速化・円滑化」に加え、なかでも来年10月から実施される予定の「外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し」が注目されています。

外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000197.html

受入環境の整備は官の役割だとしても、実際にはインバウンドの推進役は民間です。

全国各地で日本のインバウンド市場を活性化する動きが起きています。

最初に挙げたいのが、FIT(個人旅行者)向けの旅行商品です。

たとえば、先日「やまとごころインタビュー」で紹介したクラブツーリズムの国内バスツアーは注目です。

いま海外のFIT客は航空券とホテルの予約はネットで入れるのが常識です。とはいえ、相当日本通のリピーターでもない限り、言葉がわからない外国人が日本でどれほど豊かな体験ができるでしょう? 多様化した外客のニーズに応えるFIT向け旅行商品やサービスが求められています。

もともと国内客向けに造成されたクラブツーリズムのバスツアーは、海外、とりわけアジアFIT客のニーズに直結したようです。いまや日本の国内客とアジアのFIT客が一緒にバスツアーに出かける時代になっています。

※FIT向けは、やまとごころインタビュー「アジアのFIT客が国内バスツアーに乗る時代になった」を参照。

外国人旅行者が集まる草の根スポットも各地に生まれています。面白いのは、必ずしも外客を意識していたわけでなかったのに、ピタリと彼らのツボにはまってしまうケースがあります。それが新宿歌舞伎町のロボットレストランでした。この少々ぶっ飛んだショーレストランは、結果的に、日本にまだ少ない外客向けナイトエンターテインメントのニーズを満たすことになったようです。

その一方で、これまでなかったタイプの宿泊施設をオープンさせる動きもあります。バックパッカー向けホステルの「カオサン東京」です。オーナーは豊富な海外旅行の経験をもとに、海外からの若いバジェット旅行者のニーズをくみ取り、低コストのサービスを提供しています。それが国際水準のもてなしといえるのは、外国人向け英字フリーペーパーでの高い評価からもうかがえます。

Khaosan World Asakusa Ryokan & Hostel
http://www.timeout.jp/en/tokyo/venue/23091/Khaosan-World-Asakusa-Ryokan-Hostel

※草の根スポットとしては、やまとごころインタビュー「歌舞伎町のロボットレストランになぜ外国客があふれているのか」、「ライバルはバンコクやクアラルンプール 世界水準のバックパッカー宿目指し」を参照。

さらに、新しい動きとして注目されるのが、富裕層旅行というこれまで認識されていなかったセグメントへの取り組みです。今年3月、京都で日本で初の富裕層旅行に特化した商談会「ILTM Japan」が開催され、この市場に対する関心が高まっています。

富裕層旅行は、実際には極めてクローズドで小さな市場なのですが、海外のVIPを日本のシンパにすることは、訪日旅行のスタイルに新しいインパクトを与える可能性があります。彼らが発見した日本の魅力が、世界の旅行トレンドに与える影響は大きいからです。海外の富裕層旅行者は、いわば広告塔となりうる存在なのです。ただし、我々はまだその誘致や受入ノウハウを十分に身に付けているとはいえません。このジャンルでも、新しいチャレンジが必要でしょう。

今後、訪日客が増えていくことで、このマーケットが持つ面白さや可能性がもっと理解されていくに違いありません。外国人観光客といっても、国籍や階層、年代によって求めるものは全く違いますから、個別のニーズごとにそれぞれを得意とする事業者の参入を呼び、多様なサービスを生み出すことになれば、市場は活気づくことでしょう。ポスト訪日外客1000万時代における日本ならではの新しいアイデア商品や旅行サービスが生まれていくことを期待したいと思います。

※ILTM Japanについては、やまとごころイベントレポート「ジャパン・ラグジュアリー・トラベル・フォーラム 2013 セミナー~今、富裕層旅行市場を捉えるためには~」 、中村の個人blog「京都で日本初のラグジュアリー・トラベル商談会「ILTM JAPAN2013」開催」を参照。

※やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/column/2013/column_146.html
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by sanyo-kansatu | 2013-12-26 12:34 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2013年 12月 24日

池袋の「文革レストラン」再訪。紅衛兵コスプレ美女に会う

昨晩、仕事仲間と池袋の文革レストラン「東方紅」で忘年会をやりました。その日集った皆さんは中国通が多く、先日ぼくが文革レストランを訪ねた話をしたところ、すぐに食いついてきたので、お連れしたというわけです(大学で東洋史を専攻した皆さんばかりです。専門的に中国史や中国語を学んだことがないのは自分だけ。恐縮します)。
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エレベータの扉が開くと、最初に目に入るのが、毛沢東の大ポスター。皆さん、そこで「おぉー、これがそうか」と軽く反応しつつ、店内に入ると、文革ポスターやら標語の数々を物色しながら、席についたのでした。

席まで案内してくれた紅衛兵のコスプレ店員は、中国のネットに写真が出ていた例の彼女でした。大連出身の王さんといいます。お笑い芸人の青木さやか似の美女、といっておきましょう。明るくていねいな接客で好感度が高いです。
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在日中国人、池袋に文革レストランを開店
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2013-11/05/content_30500644.htm

店内には、若い中国人のグループが何組かと、今回初めて日本人のグループを2組見かけました。この手の中華料理屋にはよくいそうな年配の男性3人組(きっと中国の夜のお仕事の女性に連れてこられたのでしょう)と、ちょっと意外だったのは、若い女性の4人組でした。だんだん日本人客も増えているんですね。

中華料理はやはり大勢で行くのが楽しいものです。今回5名で行ったので、いろんな料理が注文できました。中国通の皆さんですから、それぞれお好みの料理があるようでしたが、「念のため言いますけど、ここは中国東北料理の店ですから」と、ぼくがひとこと付け加えると、では「酸菜の鍋にしましょう」と、Hさんがメニューを見ながら応じてくれました。
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これが酸菜カキ鍋です。酸菜は中国東北地方の名物の白菜の酢漬け。簡単にいうと、トウガラシ抜きのキムチのようなもので、ちょっと酸っぱいんです。それにこの季節旬のカキを入れて白湯風のスープにした鍋です。美味でしたよ。
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せっかくですから、コスプレ店員の王さんにおすすめを聞いてみると、面白い料理が出てきました。文革時代をイメージ化したアルミの弁当箱のようなものに入ってでてきた豚肉と野菜の田舎風煮込みです。野菜にはカボチャやトウモロコシも入っています。クミンやハッカクなども使われていて、いかにも東北料理らしい味付けでした。
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これは東北料理というわけではありませんが、インゲンの四川風辛味炒めです。日本人の口に合いますね。

他にもいろいろ頼んだのですが、皆さんの評価は、「この店で頼むべきは、東北料理。他の地方料理はちょっと予想した味付けと違う気がする」というところでまとまりました。こういうことって、中国でもよくあります。いまの時代、都市部ではいろんな地方料理レストランがあるのですが、たいてい地元の好みの味に変えられていて、本場の味を知る人からすると、「あれっ、ちょっと違う」となるものです。東北人が四川料理をつくると違った味になるという話で、池袋でもそれがいえるわけです。

とはいえ、ふだんは口の悪いことで知られるHさんから「こんな本場の料理が日本で食べられるとは、うれしいことですね」と言われたので、ぼくはほっと胸をなでおろしたのでした。そして、「そりゃそうですよ。本場の東北人がつくってるんですから」と応じたものです。
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中国語のわかる皆さんですから、店内にたくさん貼られたポスターや標語が気になるようです。たとえば、トイレの前に貼ってある「同志们,无论大小,记得冲(皆さん、大でも小でも流すことをお忘れなく)」や、厨房に入る従業員出口の「闲人免进(関係者以外立ち入り禁止)」は、当時のプロパガンダポスターから図柄を拝借し、言い回しを変えてパロディー化したものです。
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これは、2000年代半ば中国で一斉風靡したテレビのオーディション番組の人気投票でデビューした李宇春さんというアイドル歌手の新曲のタイトル「再不疯狂我们就老了」を拝借して、当時のポスターにはめ込んだもののようです。
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またこれは逆のパターンで、文革当時、毛沢東が紅衛兵に呼びかけた「战无不胜的,毛泽东思想胜利万岁」というメッセージ入りのプロパガンダポスターの、紅衛兵たちが高く掲げる(おそらく)毛沢東語録(だと思いますが)の代わりに米国アップル社のロゴをはめ込んでいます。

中国共产党第九次全国代表大会主席团秘书处新闻公报(1969年4月24日)
http://cpc.people.com.cn/GB/64162/64168/64561/4429452.html

これらに見られるように、「文革レストラン」に散りばめられた一見政治的かつノスタルジックな文化的意匠は、実のところ、当時への郷愁ではなく、むしろ2000年代の中国の都市部に多く現れた文化雑貨屋で売られていた他愛のない流行商品やキャラクターグッズのたぐいと変わらないものです。パロディーといっても、そこは用意周到毒抜きされています。

※これらのグッズについては「中国の文革系サブカル雑貨は日本の1970年風?」を参照。 

とはいえ、今月26日が毛沢東生誕120年にあたることを意識して書かれたと思われる今朝の朝日新聞の国際記事「文革 封印の過ち語る 毛沢東生誕120年 回顧の風潮に危機感」(2013年12月24日)が指摘するように、中国では「文革レストラン」という存在自体、単なる飲食施設ではなく、悲惨な歴史の記憶の回顧化、あるいは忘却化に貢献するものだという見方もあるようです。なんにしろ、そんなに遠い時代の話ではないからでしょう。同記事の中では、自分が密告したことで、母親が銃殺刑にされた弁護士の話がでてきます。中国の現代史のタブーを突いてにわかに出現したかのような「文革レストラン」には、まだまだ尾ひれの付く話が出てきそうです。

※そういう意味では、最近中国で文革時の蛮行を懺悔する元紅衛兵たちが現れていることに注目したいと思います。「文革時の蛮行をザンゲする元紅衛兵たち」 参照のこと。
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by sanyo-kansatu | 2013-12-24 10:45 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2013年 12月 20日

今日、訪日外国人旅行者1000万人を達成しました

2013年12月20日、訪日外国人旅行者が史上初の1000万人を達成したようです。
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その日の夕刻5時半、成田空港第一ターミナルの出発ロビーで記念セレモニーがあったので、見物に行ってきました。ニッポンのインバウンドに関心を持つ人間のひとりとして、その場でどんなことが起こるのか見てみたかったのです。

概要はこちらで(トラベルビジョン12月22日)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=60020

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セレモニーは、それほど特別なこともなく、30分ほどで終了。まず太田昭宏国土交通省大臣による達成宣言ののち、くす玉割りが行われました。そして、1000万人目の訪日客というタイ人のパッタラプラーシットご夫妻が登場し、観光庁長官らから記念品の贈呈がありました。
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今年7月、観光ビザが免除され、訪日客数の伸び率が最も高かったタイ人がこの場に登場するであろうことは、関係者も予想していたことでしたが、ご主人のパッタラプラーシットさんのスピーチがちょっと面白かったです。なんでも今年の来日はすでに3回目で、ニューヨークに留学しているお嬢さんと東京で落ち合い、親子3人で明日から北海道にスキーに行くそうです。アジアの富裕層の日本の旅というのは、こんな感じなのでしょうか。団体ツアーで百貨店や量販店に押しかけ、買い物している層とは明らかに違います。
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12月11日に行われた観光庁の記者会見で、1000万人の達成は可能の見込みという話は聞いていましたが、(1000万人達成の)Xデイはいつなのか。関係者らは気にしていたようです。1~11月までの累計が約950万人だったことから、もっと早いんじゃないか、と思う人が多かったようです。

当初は19日がその日だという情報がぼくにも届き、成田に駆けつける準備をしていたのですが、結局1日延期。セレモニーの会場が成田空港のどこなのかというのも、前日の夜になってようやく伝えられました。
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セレモニーのあと、大臣を囲んで、いわゆる「ぶら下がり」記者会見がわずかな時間ですが、ありました。そこではとりたてて新しい話はなかったのですが、少しだけ印象に残ったことがありました。まず、大臣は日本のインバウンドの弱点としてのWi-Fi整備の遅れを口にしていたこと(よくご存知ですね、といったら失礼でしょうか。でも、こういうインフラ整備はぜひ早急に進めてもらいたいです)。

また、これは冒頭のスピーチでの話ですが、「東京オリンピック開催の2020年に2000万人達成というさらなる高みを目指したい」という政府目標のお約束コメントのあとに、小さな声で「そうできたらいいなあと思う」といった控えめかつ素直な言葉をぽろっとこぼしていたことです。2000万人という数字が、そんなにたやすいものではないことを、大臣はご存知のようです。

何はともあれ、1000万人達成はひとつの弾みになることは間違いないでしょう。さて、来年はどうなることやら……。実際のところ、2000万人達成のためには、中国と韓国という近隣の巨大市場からの訪日客を換算に入れないことには、とてもじゃないけれど難しいことは、関係者はみんな知っているわけですけれど、こればかりは相手あってのこと。
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そういえば、成田空港のエレベーターに、“観光立国ナビゲーター”の肩書きをもつ嵐の「Thanks for visiting Japan!」のポスターが貼られていました。ネットなどで記事を見ていたのですが、意外に小さくて地味な感じでした。
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by sanyo-kansatu | 2013-12-20 23:50 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 12月 20日

富裕層旅行には先進国型と新興国型の2種類ある(ILTM2013 セミナー報告)

11月22日、青山学院大学IVY HALL「バンケットルーム・サフラン」で観光庁主催の「ジャパン・ラグジュアリー・トラベル・フォーラム 2013 セミナー~今、富裕層旅行市場を捉えるためには~」がありました。やまとごころの取材で、セミナーに出席し、関係者の話を聞くことができたので、報告します。

やまとごころ http://www.yamatogokoro.jp/event_report/index12.html

今年3月、日本初の富裕層旅行に特化した商談会「ジャパン・ラグジュアリー・トラベルマーケット(ILTM Japan)」が京都で開催されました。会場のザ・ソウドウ東山では、日本の富裕層旅行マーケットの開拓を目指し、国内外のバイヤーと出展者が商談を繰り広げました。次期開催は、2014年3月17日~19日に決定しています。では、富裕層旅行とはどのようなものなのか。今回は、国内外の有識者による富裕層旅行セミナーを報告します。

※京都で日本初のラグジュアリー・トラベル商談会「ILTM JAPAN2013」開催
http://inbound.exblog.jp/21590385/

目次
セミナー報告
講演「富裕層旅行市場の現状と今後の動向」
講師:Alison Gilmore(Reed Travel Exhibitions社)
「アジアにおける富裕層旅行市場の中の日本」
講師:Stephen Junca(Seactet Retreat社)
パネルディスカッション「日本の地域性から見る富裕層旅行市場への取組み」
パネリスト:Alison Gilmore(Reed Travel Exhibitions社)
       Stephen Junca(Seactet Retreat社)
       遠藤 由理子(JTBグローバルマーケティング&トラベル ブティックJTB事業室長)
      Jens Moesker(シャングリ・ラ ホテル東京総支配人)
モデレーター:福永 浩貴(株式会社アール・プロジェクト・インコーポレイテッド)
Alison Gilmore 氏インタビュー
ILTM Japan 2014概要
<編集後記>


セミナー報告
「富裕層旅行市場の現状と今後の動向」 (Alison Gilmore/Reed Travel Exhibitions社)他
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今日の世界の富裕層が好むのは、必ずしもプライベートジェットやクルーズ客船、ファイブスターホテルのスタイリッシュな客室などにイメージされる豪華な旅というわけではありません。では、「ラグジュアリー旅行」の定義とは何でしょうか。

「ラグジュアリー旅行」には、クラシックモデルとニューモデルの2つのタイプがあります。以下、それぞれのキーワードを書き出してみます。

●クラシックモデル
High level of comfort(ハイレベルの快適性)
Status symbol(ステイタスシンボル)
The best service(ベストなサービス)
Privacy Guaranteed(プライバシーの確保)
Exclusive location(独占的なロケーション)

これは従来型の「ラグジュアリー旅行」のイメージです。一方、今日主流となっているのは以下のようなものです。

●ニューモデル
Experiential travel(体験旅行)
Authentic experiences(“本物”の体験)
Ecotourism(エコツーリズム)
Voluntourism(ボランティア旅行)
Sustainability(持続可能性)
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両者を比較すると、以下のようなキーワードで対比できます。

クラシック   vs ニューモデル
Product(製品)   Experience(体験)
Place(場所) Everyplace(どこでも)
Price(価格)     Exchange(交換)
Promotion(プロモーション)Evangelism(福音主義)

今日の富裕層が求めているのは、“本物”の体験です。インドやブラジル、中国といった新興国ではまだクラシックモデルが一般的かもしれませんが、日本をはじめとした先進国ではニューモデルの旅が求められています。

日本には“本物”があります。日本のラグジュアリーのDNAと私が呼ぶキーワードは以下のようなものです。

Heritage(遺産)
Culture(文化)
Craftsmanship(熟練した職人の技能)
Service(サービス)
Prestige(信望)
Privacy(プライバシー)
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こうしたDNAをすべて兼ね備えた日本には、富裕層旅行マーケットとしての大きな可能性があります。でもまだ海外ではよく知られていません。ILTM Japanは、こうした日本の魅力を世界にアピールする場となるはずです。
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“本物”の体験の重要性については、Seactet Retreat社のStephen Junca氏も「アジアにおける富裕層旅行市場の中の日本」と題された講演の中でも指摘されました。

パネルディスカッション「日本の地域性から見る富裕層旅行市場への取組み」の中で、JTBグローバルマーケティング&トラベル ブティックJTB事業室長の遠藤由理子氏は、同社の富裕層旅行者の受け入れ実績を通じて、彼らが求めるのは日本の文化や歴史に関する“本物”の体験であること。すべて顧客一人ひとりのリクエストに応じたテーラーメイドな旅程が組まれていること。今後重要となるのは、富裕層に“本物”の体験を提供してくれる日本各地の多様なサプライヤーとのネットワークであると述べています。


Alison Gilmore 氏インタビュー
「文化や伝統に富んだ日本は魅力的なディスティネーション」

ILTM Japanエキジビション・ディレクターのAlison Gilmore 氏は、過去20年間、富裕層旅行マーケットの現場で経験を積んできました。Gilmore 氏に話を聞きました。

――日本の富裕層旅行マーケットをどう捉えていますか。
「日本のポテンシャルはとても大きい。世界の富裕層旅行マーケットの潮流は、かつてのような豪華さを追求するだけでなく、本物志向の体験を大事にする旅行に変わりつつあります。文化や伝統に富んだ日本は魅力的なディスティネーションです」。

――日本では大手の旅行会社でも富裕層というセグメントを意識した顧客の取り込みを手がけたのは最近のことです。ヨーロッパでは富裕層旅行にも歴史がありますね。
「ヨーロッパでは19世紀にすでにグランドツーリズと呼ばれる富裕層旅行の歴史があります。富裕層旅行はもともとクローズドなマーケットなので、海外でも実際に手がけているのは、プライベート・コンシェルジュと呼ばれる、特定の顧客を持った小さなエージェントが多いです。ILTMはそうしたバイヤーたちが出会うプラットフォームを提供しているのです」。

――日本の富裕層旅行マーケットの現状についてどうお感じですか。
「日本の知名度はまだ低いと感じています。これまであまりインバウンドのプロモーションをしてこなかったこと。国内旅行客へのアピールが中心で、海外に対する情報発信ができていなかったと思います。しかし、世界の富裕層旅行のトレンドが豪華型から体験型に変わってきたため、日本の魅力が注目されています」。

――今春、日本でILTM Japanを開催した目的、経緯は?
「世界の富裕層旅行を扱うエージェントの多くが日本に興味を持っているのに、なかなか入っていくのが難しいマーケットと考えられていました。今回、京都市がとても協力的で、実現にたどりつけました」。

――手ごたえはどうでしたか。
「大成功だったと思います。今回参加いただいた海外のバイヤーの多くがすでにお客さまを日本に送っていただいています。何より彼らが日本について知ることができたのが大きいです。やはり、彼らに実際に日本を見てもらうことが重要です」。

――アジアからのバイヤーもいましたね。
「シンガポールや中国などですね。今回は初の開催でしたから、日本に近いアジアの国々のバイヤーが多かったですが、次回からは欧米諸国などもっとバランスをとることができると思います」。

――海外の富裕層は日本のどこに興味を持っているのでしょうか。
「やはり日本の文化や伝統です。海外から見て、日本は神秘的な国です。もっと誇っていいと思います」。

――海外に向けてプロモーションをするうえでのポイントは?
「言語は障害ではありません。日本は旅行のインフラも整っています。簡単に旅行できる国であることをもっとPRすべきでしょう。富裕層というとお金持ち相手というイメージが強いですが、ただ単にお金持ちをターゲットにしているわけではありません。日本には魅力的な素材がたくさんあるので、もっと映像やイメージを使って海外に情報発信すべきです。これ以上、なにか新しいものをつくるというのではなく、既存のものをアピールすることです」。

――商談会に参加するにあたって何か基準はあるのでしょうか。
「ILTMには独自の審査基準があって、それを満たした方のみご参加いただけます。それはこれまでの弊社の経験からその商品が富裕層にアピールするかどうかを判断するというものです。自分たちの商品に誇りをもってお話いただければ、ご相談に乗ります。私たちも商談に参加していただけるにふさわしいサプライヤーを独自で探しています」。

――来年のILTMについて教えてください。
「商談会の会場は今年と同じザ・ソウドウ東山ですが、パーティは来年2月にオープンするザ・リッツカールトン京都で開く予定です。もしこれから富裕層マーケットを手がけたいと考えていらっしゃる方は、ぜひ参加していただきたいです」。

ILTM Japan 2014概要

日時 2014年3月17日~19日
会場 ザ・ソウドウ東山(京都市)

ILTM Japanは、富裕層旅行の知識やネットワーク、ビジネスなどを国内外のバイヤーと出展者に対し提供する、日本で唯一のイベントです。来年で2回目の開催となります。

ILTM Japan日本事務局(株)アールプロジェクト内 
http://www.iltm.net/japan

※ILTMについて
International Luxury Travel Market (ILTM)は、毎年カンヌ(12月)と上海(6月)で開催され、主催者によって厳選された、世界の富裕層旅行のバイヤーやサプライヤーが一堂に会する商談会です。カンヌでは1300社以上の出展者と1300名のバイヤーが参加、上海でも500社以上の企業と500名のバイヤーが集います。出展者は高級ホテル、レストラン、リゾート、プライベートジェット、リムジン、クルーズ、カジノなど極上のラグジュアリー体験を提供できる上質なサプライヤーが選ばれています。

<編集後記>
これまで日本の旅行業界はマスツーリズムに傾注し、クローズドな富裕層旅行マーケットについてはPRも含め、経験不足だったことは否めません。こうしたなか、観光庁やILTM Japan関係者らが富裕層旅行マーケットの促進に取り組むのは、外国人富裕層がもたらす経済効果はもちろんですが、世界の旅行トレンドを先取りする富裕層の影響力に期待しているからでしょう。

日本人はどうも自分たちの魅力をよくわかっていないところがあるようです。価格に捉われず“本物”を追求する富裕層旅行者への取り組みは、日本のよさを再認識するいい機会にもなると思います。ILTM Japan事務局の福永浩貴氏によると、来年の開催に向けて、旅行会社やホテルだけでなく、伝統工芸の関係者からの問い合わせも増えているそうです。

今回のセミナーはかなりコンセプチュアルで啓蒙的な内容でしたが、今後は実際に富裕層の受け入れを行っている関係者の生の声を聞いてみたいと思いました。そういった方々こそ、海外の富裕層に喜ばれるポイントをいちばんご存知だと思うからです。
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by sanyo-kansatu | 2013-12-20 07:41 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 12月 08日

ついにインドネシア客もやってきました(ツアーバス路駐台数調査 2013年12月)

12月に入り、ここ新宿5丁目に現れるアジアからのツアーバスの数が、また少しずつ増えてきました。

なぜ「アジアから」と言い換えているかというと、これまで圧倒的に団体客の主流だった中国客以外のアジア客を乗せたツアーバスが、最近見られるようになっているからです。

今年、訪日外客数はこのままいけば、初の1000万人を超えるといわれています。これまであまり目にすることのなかった訪日客のニューカマーたちが今後続々、姿を見せることになるのでしょう。面白い時代になってきたと思います。その一方で、中国本土客相手のときのようなずさんな受け入れ態勢が変わらないままでは、数だけ増えても彼らを満足させることができるのか、気になります。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒訪日客の動向)を記録しています。

1日(日)未確認
2日(月)未確認
3日(火)19:00 0台
4日(水)13:00 3台
5日(木)18:10 2台
6日(金)19:00 3台
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※この日のツアーバスはインドネシア客の団体でした。女性たちの多くがスカーフを巻いていたので、通りがかった添乗員らしき男性に話を聞くと、インドネシアから来たというのです。ツアー客のみなさんはとてもにこやかで楽しげなのですが、驚いたのは、彼らがなんと中国団体客専用食堂の「林園」で夕食を取っていたことです。ハラル問題で神経質になっているこのご時世なのに、大丈夫なんでしょうか? 日本の事情をよく知らない中国本土客相手に、コストを切り詰めた食事をツアー客に取らせるやり方は、今後東南アジアのツアーにも広まっていくのでしょうか。

7日(土)未確認
8日(日)未確認
9日(月)未確認
10日(火)12:50 2台
※この日、昼間伊勢丹新宿店に行ったのですが、その周辺でタイ語を話す旅行客の女性の一団に出会いました。東南アジア客が増えていることを実感します。

11日(水)18:00 3台
12日(木)17:40 2台
※新宿三丁目の「GU」には、いつもアジア客がたくさん来店しています。時間があったので、夕刻、ちょっと覗いてみると、いたいたタイ人のおばさん三人組です。ひとりのおばさんはルイヴィトンのバッグを持っています。そうかと思うと、中国系の顔の赤いおじさんが階段を上りながら、中国製のスマホに話しかけています。微信を使っているようです。「H&M」でも若いアジア系のカップルが何枚もシャツをまとめ買いしていました。新宿3丁目界隈は、いまやアジアFIT客のショッピングスポットとなっています。

13日(金)11:50 1台
14日(土)12:30 1台
15日(日)未確認
16日(月)未確認
17日(火)12:40 1台、18:40 4台
18日(水)12:40 1 台、17:40 0台(ただし「林園」のネオンが点いていたので、あとでツアー客は現れることでしょう)
19日(木)18:10 2台
20日(金)11:50 1台
21日(土)13:10 1台
22日(日)未確認
23日(月)未確認
24日(火)17:50 2台
※今日はクリスマスイブで、新宿三丁目界隈は人出でにぎわい、タイ語などもよく聞こえてきます。こうした中相変わらず中国客の皆さんは 「林園」に吸い込まれて行きます。せっかくイブなんだからもっと他の楽しみようもあるんじゃないかと思わないではありませんが、余計なお世話でしょうかね。

25日(水)17:50 0台(ただし「林園」のネオンは点いています)
26日(木)12:50 0台、18:00 1台
※新宿5丁目の東京医大通りは、今日も大きなスーツケースを転がしながらホテルに向かう欧米系ツーリストが行き交う姿を見かけます。おそらく東京ビジネスホテルあたりに予約を入れているのでしょう。このクリスマスシーズン、東南アジア客も多かったですが、欧米客も多く見られた新宿3丁目界隈でした。

27日(金)18:20 1台
28日(土)~31日(火)未確認
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by sanyo-kansatu | 2013-12-08 11:17 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2013年 12月 05日

大きな伸びを見せたのは、台湾やタイといった親日国(トラベルマート2013報告 その3)

トラベルマート会期中の11月28日の夜、一般社団法人ASIO(アジアインバウンド観光振興会)の総会がありました。

一般社団法人ASIO(アジアインバウンド観光振興会)
http://www.shadanaiso.net/index.html

そこでは恒例のセミナーがあります。アジア各国・地域にそれぞれ強いランドオペレーター関係者による「アジアインバウンドの最新動向」の報告です。

※今年6月上旬のセミナーについては「今年の夏、日本はアジア客でにぎわいそうです(社団法人AISO第1回総会報告)」)を参照。
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まず理事長の日本ワールドエンタープライズ株式会社の王一仁社長による開会の挨拶から始まりました。

「AISO創立から今年で7年目。震災から2年たち、今年はアジアインバウンドの流れが大きく変わった年といえるでしょう。円安効果も大きいですが、東京オリンピック開催決定や富士山の世界文化遺産登録など、さまざまな追い風が吹いています。

AISOの加盟企業は現在約160社。半分はランドオペレーターで、残りはホテルやテーマパーク、レストラン、運輸業者などの方々です。お互い協力して日本のインバウンドを盛り上げていきましょう」。

次に株式会社ジェイテックの石井一夫常務理事による今年の総括です。

「今年のアジアインバウンドに弾みをつけたのは、7月のアセアン諸国に対するビザ緩和が大きかったといえます。このままいけば、今年は初の訪日外客1000万人を達成することでしょう。なかでも大きな伸びを見せたのは、台湾やタイといった親日国だったように思います。

それでも、訪日外客の6割を占めるのは、韓国、台湾、中国本土です。韓国はいったん回復してきたかに見えましたが、秋口から伸び悩んでいます。一方、中国市場は概ね回復基調にあると思います。

今後は、アジアの個人客向けの商品、特に来日してから各自が参加する「着地型」のツアー商品の開発などに力を入れていくべきでしょう。ここにいらっしゃる関係者の皆様には、ぜひ我々ランドオペレーターに新しいコンテンツをご提案いただきたいと思います。それを海外の旅行会社につなげていくのが我々の仕事ですから」。

株式会社トライアングルの河村弘之常務理事からは、以下の3つの話題提供がありました。
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①ツアーオペレーター品質認証制度について

同制度は、「事業者(ツアーオペレーター)の品質を保証することにより、訪日旅行の品質向上と、訪日旅行者が安全、安心で良質な旅行を楽しんで頂くことを目的として作られ国からも推奨された品質認証制度」です。

ツアーオペレーター品質認証制度 http://www.tour-quality.jp/

株式会社トライアングルは最近、同制度の認証登録をすませたばかりですが、河村理事によると、中小企業の多いインバウンド業者にはかなりハードルが高いのが実感だといいます。認証の条件として、①旅行業登録していること、はともかく、②訪日ツアーにインバウンド旅行保険をかけること、そして何より③プライバシーマークの取得済み(1年以内に取得予定であること)が経営にとって大きな負担となるからです。

※プライバシーマーク(Pマーク)は、個人情報保護に関して一定の要件を満たした事業者(基本的には法人単位。ただし、医療関連については病院ごとなど例外あり)に対し、一般財団法人日本情報経済社会推進協会 (JIPDEC) により使用を認められる登録商標。

プライバシーマーク制度
http://privacymark.jp/

現在、AISO加盟企業の中で、認証登録をすませているのは、農協観光とアサヒホリディサービスの3社だそうです。

②タイからの訪日客の動向

「今年のタイ市場は、北海道が人気。ビザ免除で市場は活気づいています。ただし、募集ツアーは今後価格競争が激しくなることが予想されます。ですから、弊社はタイではインセンティブツアーを専門に営業しています。企業の社員旅行としての訪日ツアーの取り込みです。現在、タイに進出している日系企業は約3000社。そのうち、従業員数100名以上の企業は約半数。みなさん、現地の日本企業に営業に行かれたことはありますか。旅行博に行くのもいいですが、タイの場合、インセンティブ市場が大きいことを知っていただきたいと思います」。

※JETROによると、タイに進出した日系企業数:1,458社(2013年4月現在のバンコク日本人商工会議所会員数)ですが、実際は約3000社といわれます。

③シンガポールからの訪日客の動向

「震災後に韓国に次いで訪日客の戻りが遅かったシンガポール市場ですが、今年は北海道行きが7割を占めるほどの人気でした。もっと行きたいが、エアが取れないという話です。シンガポールの旅行業者は、中国などとは違い、日本のランドオペレーターとの関係を大切にしてくれます。シンガポール市場に商材を売りたいなら、AISOのランドオペレーターにまず声をかけていただきたいと思います。それが早道です」。

アメガジャパン株式会社の清水和彦理事からは、中国本土市場の話がありました。

「今年の弊社の中国本土客の取扱は、1~3月が前年比マイナス60%、4~6月がマイナス30%、7~9月でほぼ前年度の水準に戻り、9月はおそらく新旅游法の駆け込み需要で過去最高になりました。10月以降は、去年が尖閣問題でボロボロでしたから、前年度比ではプラスになると思います。そういう意味では、団体ツアーはほぼ回復したと考えています。

中国の訪日市場の動向は地域によって一様ではありません。広東省はすでに回復し、北京でもだいぶ戻ってきたようですが、最大のマーケットである上海の遅れが目立ちます。

新旅游法の背景には、中国の原価割れしたツアー商品の横行があります。オプショナルツアーや土産物店への連れ込み、ホテルの変更はすべてNGとなりました。その結果、弊社が多く扱う広東省の旅行会社のツアー料金の推移を見ていると、韓国や台湾、タイなどが軒並み2~3倍にアップしている一方、日本ツアーの価格上昇はそれほどでもないため、日本の割安感が出てきたと感じます。来年の春節がどうなるか、大いに期待したいと思いますが、依然日中間の政治問題が解決していないのが気がかりです」。

株式会社アサヒホリディサービスの和田敏男理事からは、マレーシア市場の話がありました。

「マレーシアの旅行業界は、タイなどと違い、大手数社が独占しているという市場です。東南アジアの中では訪日旅行市場は後発ですが、LCCも今後ますます就航するという話ですから、期待の持てるマーケットだと思います。最近、小グループの団体が増えてきました。以前なら30~40名の団体が多かったのですが、6~8名くらいのプライベートなツアーが多いのです。求められているのは、すでに定番のツアーコースではなく、個性的な旅です。

イスラム国ですから、ハラルを気にする方が多いと思いますが、一部の方を除くと、そこまで厳格に考えることはまだないのではと感じています。最近、六本木にハラル専門レストランができたと聞きますし、また東京大学にはハラル専門の学生食堂があるそうです。ハラル認証を取得するための協会も国内にいくつかできていますので、そこで研修を受けられることをおすすめします」。

最後に再び王理事長による香港とフィリピンの話がありました。

「今年は香港や台湾からの訪日客が激増しました。香港客の大半はリピーターです。航空券さえ安いものが出れば、必ず日本を訪れます。日本人のアジア旅行と一緒です。11月から香港エクスプレスの羽田便がデイリーとなりました。片道1万円と安いので、これからのクリスマスシーズン、たくさんの香港客が東京を訪れることと思います。
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フィリピンからの訪日客も増えてきています。12月からフィリピン航空が大幅に増便します。どうしてこんなに増便するのかというと、最近のフィリピンの台風被災地に対する日本の支援も影響があると思います。フィリピンから日本の自衛隊の視察ツアーもあると聞いています。フィリピンの人口は9000万人です。これからがチャンスです」

※フィリピン航空(PR)は12月15日から、成田発着のマニラ線とセブ線を増便。マニラ線は現在1日1便だが、これを1日3便に変更。セブ線は週6便のPR433便/434便に月曜日を加えてデイリー運航にした上で、さらに1日1便を追加しています。

関係者のみなさんの報告を聞きながら、今年は「アジアインバウンドの流れが変わった」ことをあらためて実感しました。何より市場の分散化が進んでいることがいい流れだと思います。

その一方で、こうした手放しの喜びようで、はたして来年本当にアジアインバウンドは順調に進展するのだろうか。中国政府の不穏な動きが続くなか、ひとたび何か起こればすべて吹き飛んでしまうのではないか、というあやうさもはらんでいるように思えてなりません。

また、今年は台湾やタイほかの東南アジアの国々のように、日本の文化的影響力が強い国々からの訪日客増加に大いに救われたところがありましたが、そうでない国々に対してどう訪日旅行をPRするべきか、という課題が印象付けられた年でもあったと思います。たとえば、インドやロシアといった未知の大市場に対してどう取り組むか。来年に向けて新しいチャレンジが必要ではないかと思った次第です。
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トラベルマート会場から桜木町駅に向かうみなろみらいの夜景はとてもきれいでした。
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by sanyo-kansatu | 2013-12-05 10:58 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 12月 04日

実際、商談はどれほど進んでいるのか?(トラベルマート2013報告 その2)

トラベルマートの会場は、日本の出展ブースが海外バイヤーのテーブルを取り囲むような構図で配置されています。B2Cのイベントではないため、出展ブース自体は地味なので、天井が高いぶん、ちょっと殺風景に見えなくもありません。
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それでも海外から招致した304社の内訳をみると、タイ20社、ベトナム30社、フィリピン29社など東南アジアの旅行会社が多く、参加国も21カ国とバラエティ豊かです。会場にはひと目でそれとわかるアジア系の人たちと商談を進める日本の関係者の姿があちこちで見られます。
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今回ぼくはアジアFIT向けの商材として面白いものはないかという観点で日本側のブースを見て回りました。海外の旅行博に出展するのはハードルが高くても、トラベルマートなら比較的低コストで参加できますから、まだ見たことのないどんな新しい出展者がいるか、興味があったのです。会場で拾った話をいくつか紹介します。

面白かったのが、「フェリーさんふらわあ」の関西と九州を結ぶナイトクルーズです。これは大阪⇔別府、大阪⇔鹿児島(志布志)、神戸⇔大分間を最安1万円で往復できる格安プランで、現地0泊、船中2泊でリーズナブルに旅行が楽しめることから、「弾丸フェリー」として知られています。
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フェリーさんふらわあ
http://www.ferry-sunflower.co.jp/

同社の営業担当者によると、2007年~08年頃、韓国で関西&九州周遊ツアーがヒットしたことから、外客利用は当時がピークで、今年は中国客の利用も減り、国内客がメインになっているそうです。しかし、最近は海外のバックパッカーの利用も見られるようになったとか。近隣国に比べ国内移動が割高な日本ですが、これからは海外のFITにもっと利用してほしいものです。ナイトクルーズでは見ることのできない瀬戸内海の美しさを知ってもらうためには、昼間の航路でも外客向けの格安料金を打ち出す必要があるかもしれません。

もうひとつは、六本木にある大型和風ニューハーフショーレストランの「香和」です。先日、新宿歌舞伎町の「ロボットレストラン」を訪ねて以来、東京にはもっと外客向けのナイト・エンターテインメントが必要とされていると感じていました。
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香和
http://www.kaguwa.com/

同社の営業担当者によると、「香和」のコンセプトは「歌舞伎ほど高尚でなく、気軽に和風エンターテインメントを楽しめるショーレストラン」だそうです。外客の来店は1割程度で、半数ははとバスの東京ツアーなどで来店する国内のおばさま族だとか。「東京は世界一ナイトライフの種類があふれる街だと思いますが、これまで外国人に対しては閉鎖的でした。言葉の壁が大きかったのでしょう。まだまだ海外のお客さんを楽しませることのできるスポットは少ないと思います」。

その担当者も欧米客であふれる「ロボットレストラン」の評判を知っていて、なんとかしたいと考えているようですが、どうやって外客にPRすべきか、まだ妙案は見つかっていないとのこと。トラベルマートへの出展は今年で4回目だそうです。外国人にとって、日本の何がウケるのか。やはりそれは「Japan is amaging!」ということではないかとぼくは思っていますが、では何がamagingなのか。もう少し考えてみる必要がありそうです。

自治体のブースでは、島根県隠岐観光協会が目を引いていました。というのも、PRスタッフが2名の外国人女性だったからです。
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隠岐観光協会Facebook
https://www.facebook.com/okikan

おふたりは隠岐在住のオーストラリアとニュージーランド出身の現地観光職員で、ニュージーランドの方は地元の日本人男性と結婚されているそうです。隠岐では「島ガール旅」という若い女性向けの観光キャンペーンを繰り広げていることを今回初めて知りました。やはり、PRに外国人を起用するといった意外性は有効ですね。取材していたのは、ユネスコの支援する「日本ジオパーク」のひとつに選ばれた隠岐の活動を紹介するために来たNHKの地元局だったそうです。

隠岐スタイル☆島ガール旅
http://www.kankou-shimane.com/mag/12/09/geo.html

あと気になったのは、福島県のブースでした。「Welcome to Fukushima!」という英語の大きなメッセージが印象的でした。今年、東北の国内旅行はほぼ回復されたとされるなか、外国客はまだ戻っていないといわれています。
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では、どうやって外国人観光客を呼び込めばいいのか。これは地元の人たちがただちに望むことではないのかもしれませんが、日本の事情を知らない外客相手には、正攻法の観光PRではなく、海外でも多くの事例のある「被災地ツーリズム」の手法を開発しなければならないのではないかと思います。

その点に関して、評論家の東浩紀さんの提唱する「ダークツーリズム」は参考になると思います。

福島原発事故、観光でイメージ回復を-東浩紀・石川和男対談
http://blogos.com/article/70569/

さらに、東氏は「福島第一原発観光地化計画」なるプロジェクトも推進しようとしています。実に興味深い動きです。

福島第一原発観光地化計画
http://ch.nicovideo.jp/fukuichikankoproject

さて、前回紹介したキム記者から聞いた最近の韓国のインバウンド市場の話も興味深いものでした。話を聞き出すには、相手を持ち上げるのもひとつの手ですから、キム記者にぼくはこう切り出しました。

――日本からみれば韓国はインバウンド先進国。日本は韓国から学ばなければならないことがたくさんあります。今年は中国からの訪韓客が450万人になりそうだとか。すごいですね。

「でもね、10月から施行された新旅游法の影響が徐々に出ていますよ。韓国の土産店は次々に倒産しています。同法では、ツアー客の土産店への連れ込みを禁止しているのですから。中国客を専門にしていたランドオペレーターも倒産しています。もちろん、中国のツアーが正常化していくのはいいことですが、韓国政府もジレンマに陥っています。

特にひどいのが済州島です。あそこは中国人のビザを免除している関係で、ツアー客も多いですが、中国からの投資で土産物店などもたくさんつくられ、結局、地元にはお金が落ちないんですから」

――日本も同じようなものですよ。それはともかく、日韓の観光客の往来もともに減少していますね。

「これは社会心理による影響が大きいと思いますよ。私も韓国から日本へお客さんをもっと送るため、あの手この手を考えていますから、日本からも韓国へ送客してくださいよ。やはりギブ&テイクでしょう。そうでないと、このままでは先行きが見えません。韓国の観光業者も頭を痛めていますよ」

こういう本音がもっと率直かつオープンに語られるべきだと思いますが、キム記者によると、最近韓国観光公社のある幹部が日本寄りだとの理由で降格されたといいます。こういうのは本当にくだらないですね。

さて、トラベルマートは、外客を呼び込みたい日本の関係者と日本に送客したい海外の旅行会社の、いわば“集団お見合い”ともいえるイベントです。実際のところ、どれほど商談が進んでいるのでしょうか?

実は、来年開催予定の「ツーリズムEXPOジャパン」に統合されることになったトラベルマートの今後についてこんな声がありました。

そもそも旅行博との一体化は、商談会の出展者にとって有益なのか、疑問だというのです。

ある出展者は言います。「現行のトラベルマートのブース出展料は5万円。だから、これまで出展してきたが、一体化によって料金が高くなるなら出展は難しい」。

国際的な旅行博としてグレードアップしたい主催者側の思惑はともかく、出展者にとって、これまでトラベルマートは商談会としてどれほどの収穫があったのか。これを機に、検討し直す動きが出るかもしれないというのです。このあたりの認識は民間事業者と自治体では当然違うでしょうが、より本格的な商談会として機能させていくためには何が必要か。あらためて議論することは意味があると思いました。
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by sanyo-kansatu | 2013-12-04 10:45 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 12月 03日

「普遍的な日本の魅力」って何だろう?(トラベルマート2013報告 その1)

11月27日~29日、みなとみらいのパシフィコ横浜で「Visit Japan Travel Mart 2013」が開かれました。海外の旅行会社やメディアを招聘して行う観光庁主催のトラベルマート(B2B商談会)です。

観光庁の資料によると、今回海外から304社(21カ国・地域)のいわゆる「バイヤー」が来日。彼らに日本を売り込む国内の観光業者や自治体などの312社・団体が出展したそうです。

※2011年のトラベルマートについては、「インバウンド商談会って何?(トラベルマート2011 その1)」
他を参照。
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28日の9時半から開会式がありました。今年8月に就任したばかりの久保成人観光庁長官やJNTO理事長、横浜市長、海外からの来賓がスピーチし、東京オリンピック開催決定や訪日客が今年初めて1000万人を達成しそうだと報告しました。

ちなみに久保成人観光庁長官はこの方です。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/about/message.html

開会を告げるテープカットの後、質疑応答がありました。まず、日本人記者が来年、開催される「ツーリズムEXPOジャパン」の狙いについて質問しました。

実は、「Visit Japan Travel Mart」は今年で最後の単独開催だったのです。来年からは、元海外旅行博の「JATA旅博」と国内旅行博にあたる「旅フェア日本」が統合され、「ツーリズムEXPOジャパン」(2014年9月25日~28日/東京ビッグサイト)となり、これにB2B商談会の「Visit Japan Travel Mart」も同時開催として加わることになるそうです。

ツーリズムEXPOジャパン
http://www.t-expo.jp

観光庁長官は、これら3つの旅行イベントをひとつに統合する理由について「世界を代表する旅行博覧会であるITBベルリンやWTMロンドンに負けないよう、アウト/イン/ドメスティックの日本の旅行市場のさらなる発信力アップを図りたい」とコメントしています。

もうひとつの質問は、韓国のキム記者です。彼は毎年トラベルマートに招聘されているベテラン記者です。彼は尋ねました。「来年4月、再来年と日本では消費増税が続きますが、外客への免税措置など、どんな優遇対応を考えているか」というものです。いい質問ですね。

長官のコメントは、現在検討中で、すでに決めた化粧品などに加え、免税品目の枠を広げるよう観光庁も政府に要求しているとのこと。

この点については、本ブログでも以前書いた「韓国政府は来年から外国客のホテル増値税10%を返還するそうです」からもわかるように、韓国の外客に対する免税措置は徹底しており、日本より進んでいるといえます。あとでキム記者に聞いたのですが、ホテル増値税の返還はこれまで韓国では何度かやってきたことで、来年の施策も期間限定だと思うという話でした。

さて、10時20分からは場所を移して外国人記者会見です。まず観光庁参事官から「日本のインバウンドツーリズム促進のための対応」という報告がありました。
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そこでは、2020年の東京オリンピック開催が日本の観光立国の推進に追い風となるという話から始まり、今年10月の段階で訪日外客数が過去最高だった2010年を超えたこと。今年、訪日客が増加した理由として以下の4つを挙げました。
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①ASEAN諸国を対象としたビザ緩和
②円高是正
③オープンスカイにともなう国際線フライトの増加
④日本の景気回復

さらに、観光立国を実現するための4つのアクション・プログラムとして以下を挙げています。

①日本ブランドの作り上げと発信
②ビザ要件の緩和等による訪日旅行の促進
③外国人旅行者の受入の改善
④国際会議等(MICE)の誘致や投資の促進
詳しくは、http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kankorikkoku/dai2/siryou1.pdf

そして、最後がビジットジャパンキャンペーン10周年を機に、海外プロモーションの抜本的転換を図るとして展開された「DISCOVER the SPIRIT of JAPAN」の紹介でした。詳しくは、観光庁の以下のリリースを参照していただくとわかりますが、要するに、日本の新しい売り方に対するひとつの方向性を観光庁が打ち出したということでしょう。

「震災から2年、ビジット・ジャパン事業10周年の新展開『DISCOVER the SPIRIT of JAPAN』」
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000163.html

そこには「6カ国8人の外国人を含む11人の委員で構成する『普遍的な日本の魅力の再構築・発信に関する検討会』がまとめた、『訪日観光3つの価値』を踏まえ、PR映像、ウェブサイト、ガイドブックについて、震災時に世界から称賛を浴びた『日本人』を切り口に一新した」と書かれています。ここでいう「3つの価値」とは、Character、Creation、Common lifeだそうです。

日本の魅力とは何か。外国人も含む有識者の委員会で話し合ったところ、「それは日本人そのものだろう」というわけです。委員会というのは、「「普遍的な日本の魅力」の再構築・発信に関する検討会」(座長:西村幸男東京大学副学長)というもので、そこに出席した委員や議論については、以下、簡単にまとめられています。
http://www.mlit.go.jp/common/000991842.pdf

これらの議論を経た成果として、新設された160本以上の動画を配信するサイト「DISCOVER the SPIRIT of JAPAN」がこれです。
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DISCOVER the SPIRIT of JAPAN
http://www.visitjapan.jp

次に、JNTO海外マーケティング部長による「2014年、日本のツーリズムのトピックス」という報告がありました。そこでは現在、今年の訪日プロモーションのラストスパートの段階にあり、その目玉として、12月1日~2月28日まで開催される「ジャパン・ショッピング・フェスティバル」の概要が話されました。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000187.html
「ジャパン・ショッピング・フェスティバル」公式Facebook
https://www.facebook.com/pages/Meet-The-New-JAPAN/422616404469024

また、外客による写真コンテストやSNSを活用したキャンペーンの強化、ムスリム客対応の新たな取り組み、今年年末から来年にかけて世界的なブランド力を持つホテルが次々に開業する話もありました(関連する話題として「東京・大阪のホテル稼働率は震災前を大きく上回る水準に【2013年上半期①ホテル】」)。

質疑応答では、前述の韓国キム記者が「今年、ASEAN客が増加した理由は?」「韓国FITにも人気のある白川郷へのアクセスをもっと便利にできないか」と質問しています。

それに対し、観光庁参事官は「今年、『東南アジア横断プロモーション』がスタートし、ビザ緩和が進んだため」「国内観光地のアクセス向上に今後も努める」と回答。

またカナダ記者から「『DISCOVER the SPIRIT of JAPAN』というが、日本ブランドをどうプロモーションするのか? カナダマーケットへの取り組みは?」という素朴な質問がありました。彼ら外国人記者の立場としては、当然の疑問だと思われます。そもそもネット配信と連動したどんな取り組みがあるのか、これだけではよくわからないからです。

ロシア記者からは「ロシア人にとって日本ビザの取得は大きな障害。東京よりNYのほうが行きやすい」という指摘もありました。

気持ちはよくわかりますが、こればかりは日露両国が相互に緩和していく必要があると思います。この記者はそのあたりの事情をどの程度理解しているのでしょうか。実際、日本人にとっても、ロシアはビザ取得のために宿泊先のバウチャーを必要とするなど、自由旅行をするのはとても面倒な国のひとつです。

とはいえ、ロシア人の海外旅行市場は想像する以上に規模が大きいことから、今後訪日旅行のターゲットとして重要になっていくと思います。相互理解を深めたいものです。
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さて、開会式と外国人記者会見の概要はざっとこんなところですが、いくつか気になったことを書き出します。まず、相変わらずの開会式の登壇者のうつ向きがちの英語スピーチ。これもう少しなんとかならないでしょうか。せっかくの開会式がお通夜のようだ、とまではいいませんけど、まったく盛り上がらないのです。これは毎回そうです。

韓国キム記者が質問した外客に対する消費税対応が今後どこまで進展していくか、というのも気になります。海外で我々も経験することですが、免税分の払い戻し手続きというのは面倒です。このあたり、韓国はけっこううまくやっているように思いますが、日本でこれを円滑かつシステマティックに進めていくのは、そんなに簡単ではない気がします。きっとキム記者からみると、日本の外客受入の整備はあらゆる面でまだまだと感じられるのでしょうね。

ある中国の旅行関係者にこんな話を聞いたことがあります。近年、パリのルイヴィトン本店に中国客がわんさか押しかけているのですが、問題は買い物をしたあと、VAT(ヨーロッパの付加価値税)払い戻しの手続きをするため、大勢の中国客が店内で大行列をなし、なかには床や階段に座って、ついにはおやつを食べ始めてしまうので問題になっているそうです。払い戻しのためのスタッフが2名しかいなくて、時間がかかるせいだとか。その様子が、中国のテレビニュースで流され、「こんなみっともないことはやめよう」と国民に対する啓蒙として報じられたそうです。

この悪夢のような光景は、日本でも起こる可能性がないとはいえません。

さて、今回の外国人記者会見は、以前に比べ、わかりやすくなったと思いました。なにしろ訪日旅行市場は好調ですし、ポイントも絞られていたからでしょう。ただし、ここは観光庁の業績をアピールする場といえなくもありません。どれだけ外国人記者にメッセージが届いたかについては少し疑問ですが、会見終了後、今回の参事官は会見場に長く留まり、記者たちと交流していた姿が印象的でした。

いろいろ考えさせられたのが、観光庁の新しいプロモーションのテーマである「DISCOVER the SPIRIT of JAPAN」です。観光庁が制作したプロモーションDVD「DISCOVER the SPIRIT of JAPAN 感受日本之心 领略东瀛之美」にはこんなメッセージが書かれています。

「日本観光の魅力とは『日本人』そのものではないでしょうか。
そのしぐさにこめた心配りに、
作品の細部に宿る職人の技に。
ささやかなこと『a little thing』のなかにある楽しみに。
『日本人』という切り口で眺めると
これまで観光資源になるとは思いもしなかった日常が
幾千もの魅力を持った、美しい輝きを纏うものであることに気付きます」

そもそも「普遍的な日本の魅力」って何だろう? そのひとつの回答として「日本の魅力は日本人そのものにある」というのは、同じ日本人として悪い気はしないのですが、はたして外国の人たちにそれがまっすぐ伝わるものだろうか、と思ってしまいます。日本に長く暮らしてきた在日外国人の方々が日本人に好感を持っていただけているというのはうれしいことですが、海外の日本を知らない人たちに同じレベルの理解を期待することはとても難しいと思うからです。ちょっと先走り気味という気がしないではありません。

少々皮肉めいていうと、昨今これだけ近隣諸国による日本に対する国際的なネガティブキャンペーンが続くと、「日本の魅力」を正当に評価してもらいたくなる気分はわからないではない。日本人は自分の良さをアピールするのが苦手だとさんざん言われてきたわけですし。

ただし、VJC事業10周年にともなう海外プロモーションの抜本的転換というわりには、この話、今年の春に始まったようですが、国内外でどこまで知られているのでしょうか。これはけっこう気がかりです。
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by sanyo-kansatu | 2013-12-03 12:42 | “参与観察”日誌 | Comments(0)