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2014年 09月 20日

格安&仰天!中国「春秋航空」のおもてなし(プレジデント2014.9.29)

ビジネス誌「プレジデント」2014.9.29号で、春秋航空日本について書いています。中国資本のLCCがなぜ日本で法人設立に至ったのか。彼らはこの先、どんな戦略を描いているのか。以下、掲載記事を公開します。

「うちの広告宣伝費は0円なんです」
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「お代わりはいかがですか」

客室乗務員から訊ねられ、思わず2杯目を頼んでしまった。機内サービスで提供されるカフェ・カリアーリ社のコーヒーは100円で飲み放題。イタリアの地方都市モデナにある1909年創業のエスプレッソブランドで、日本国内ではわずか10数軒の認証店でしか味わえないそうだ。
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日本で4社目となるLCC(格安航空会社)の春秋航空日本(通称「スプリングジャパン」)の成田・佐賀線の初就航便に乗った。機体はボーイング737-800型機で全席エコノミークラスの189席仕様。ANAの同じ機体が176席だから、詰めて乗せるぶん、シートピッチは確かに狭い。もっとも、ボーイングの新造機の真新しいシートの座り心地は悪くないし、1時間半のフライトだ。「LCCは既存の航空会社とは別の乗り物」と割り切ることにする。
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同社の親会社は中国発LCCの春秋航空だ。日本の消費者の中国クオリティに対する信頼は極めて低い。搭乗前には安全面もそうだが、中国系エアライン特有の機内の雑然とした雰囲気や明らかに日系に劣るサービスが気がかりだった。
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離陸後、しばらくすると機内サービスが始まった。就航地の広島や佐賀のご当地ドリンクなどと一緒に販売されていたのが、前述のコーヒーである。客室乗務員は全員日本人。緊張した面持ちの彼女らのサービスは他の日系となんら変わらない。機内アナウンスも日本語と英語のみ。当初の予想に反して、まるで中国色の完全打ち消しを図ったかのような初就航便だった。

春秋航空日本の設立は2012年10月。同社は今年8月1日、成田と広島、佐賀、高松を結ぶ3路線で運航を開始した。これまでエアアジアなどの外資が国内線に参入したが、中国資本によるLCCの日本法人設立は初めてのことだ。はたして日本の消費者は春秋航空日本を受け入れるだろうか。

春秋航空日本が日本標準のエアラインとしてデビューした背景について、同社経営企画室の長谷川久仁江副室長は「我々はあくまで日本の会社。日本で当たり前のサービスの基準はクリアしたかった」という。実際、同社は中国から出向している数人の役員を除くと、パイロット20人、客室乗務員49人、すべて日本人社員で構成されている。

長谷川副室長によると「財務やマーケティングは中国側が仕切るが、人事や総務、営業、特にサービス面については日本側に任されている。中国的なサービスでは日本の消費者を満足させることはできないことを中国側はよく承知しており、むしろ日本のサービスを中国側に逆輸入したいと考えている」と語る。

法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科の小川孔輔教授は「(春秋航空日本の中国色打ち消しは)トヨタがレクサスを米国市場に販売する際のブランド隠し(出身国のイメージを消す)と同じで、ブランド戦略的には正しい」と評価する。

それでも、社内では中国側の営業戦略の考え方に戸惑うこともあったという。なぜなら、同社では宣伝広告費を一切かけないよう指令されているからだ。これは同じLCCのジェットスターとは対照的だ。設立直後、大手広告代理店が何度か訪ねてきたが、「うちの広告宣伝費は0円なんです」と説明するほかなかったと長谷川副室長は苦笑する。

親会社の春秋航空はなぜそこまで広告宣伝費に対してシビアなのか。ひとつには春秋グループ創業者の王正華会長が稀代の倹約家で、「教育と安全面のコスト以外は徹底してムダを省く」社風にある。同グループのコスト削減の徹底ぶりは中国でも有名だ。上海虹橋空港にある本社ビルでは、昼間は社員に照明や冷房は使わせないという。実際に訪ねたところ、その話は本当で、オフィスは暗いし、暑かった。
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理由はそれだけではない。春秋航空は初の国際線として10年7月に上海・茨城線を就航。続いて高松、佐賀、関空と日本路線を拡充し、今夏初めて上海以外の重慶、武漢、天津から関空線を就航させている。日本以外の国際線も、タイやカンボジア、シンガポールなど東南アジアのレジャー路線を中心に17空港と新規路線を着々と開拓。今年8月現在、国内41空港、106路線を有する中国最大LCCだ。同社は04年の設立後1年目で黒字化に成功したことから、LCCのマーケティングに絶対の自信を持っている。春秋航空日本市場開発部の孫振誠部長は、その理由として以下の点を挙げる。

①チケットはすべてネット販売
②1機あたりの1日の運航時間を11時間にする(通常は9時間)
③座席数は180とする(通常は157)
④オフィスビルは質素にするなど、余計なコストをかけない

黒字化の背景には、ネットに習熟した中国の消費者がいたのだ。この点、日本の消費者は旅行会社による航空券流通が普及しているぶん、ネット販売のみでは集客が難しい面がある。それはエアアジアと全日空が販売戦略上の不和から合弁を解消した理由だった。

さらにいえば、春秋航空の母体の春秋国際旅行社は国内・海外を合わせた旅行取扱人数・売上ともに15年間連続1位(13年)という中国のナンバーワン旅行会社であり、上海を中心に全国に販売ネットワークを展開。中国では圧倒的な知名度を誇っているため、中国側の首脳部は「ネット販売だけで十分」との判断を下したと考えられる。

だが、春秋航空日本の社内では当初から「日本では我々には知名度はない。広告宣伝費を使わずどうやって営業活動すべきか」という危機意識があったという。結果的には、それが運航先の自治体や地元企業からのサポートや協力を最大限活用するという営業スタイルに結びつくことになる。

同社の営業担当者らは、他の先行するLCCとの差別化のために「アイデア会議」を立ち上げた。そこで議論されたのは「我々にできることは何か。スターバックスを300円で提供しても差別化にはならないだろう」。そんな折、提携先のJTBから前述のイタリアンコーヒーの輸入販売元を紹介してもらい、導入を決めた。「LCCの機内サービスは有料が基本だが、100円ならお客さまにも抵抗はないだろう。飲み放題にしたのも、わずか1時間半のフライトで何杯もお代わりする人はいないだろう」とのしたたかな計算からだ。

それ以外の機内サービスや販売商品は、運航先の地元企業の地産品を採り入れることにした。広島醸造の「カープチューハイ」などが売れ筋だそうだが、同社の販売品目一覧を見ると、まるで「空飛ぶ道の駅」だ。これも前述の「アイデア会議」から生まれた方針で、「福岡や新千歳といった主要路線ではなく、地方路線に運航する我々は機内サービスにも地方色を出していきたい」(長谷川副室長)と考えたからだった。

前述の小川教授によると「(春秋航空日本の地元と組んだ地方色打ち出しは)サービスの現地化という意味で効果がある。これは中国イメージの打ち消しにも役立っている。100円飲み放題も、すでに日本の消費者にとってなじみのあるファミリーレストランのドリンクバーのスタイルを真似ていることから、スマートなやり方」だという。

運航を軌道に乗せるには、首都圏だけでなく、就航地の乗客を増やすことが不可欠だ。地元テレビ局の番組でのPRも自治体の強いサポートがあったという。背景には、地方空港を運営する自治体の事情がある。全国の地方空港の赤字問題は深刻で、利用者促進と新規航空路線の誘致は大命題となっている。上海万博が開催された10年前後、春秋航空を誘致しようと全国の自治体関係者がこぞって上海詣でをしたのもそのためだ。全国の半分近い都道府県が同社に足を運んだという。

春秋側にとって就航先の選定は「自治体がコスト削減のためにどこまで協力してくれるかが条件」(孫部長)だった。古川康佐賀県知事は、上海線の誘致に佐賀空港が成功した理由について「佐賀県は早い時期から県庁職員が一丸となって空港セールスに取り組んできたことが評価された」と語る。その取り組みとして、佐賀空港では航空便利用者に限り最初の24時間を1000円でレンタカーを貸し出すキャンペーンや、県内および福岡県南西部で片道1000円~2000円のリムジンタクシーの運行を実施している。低価格のフライトを享受するLCC利用者にとって、空港までの交通アクセスは課題だが、その解決に向けた地方空港の取り組みはLCCの集客を後押しする。こうした双方の持ちつ持たれつの協力関係も、春秋航空日本の「お金を使わないで何とかする」営業スタイルを支えているのだ。
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初就航から1か月、佐賀・成田便の搭乗率は約70%と地元では順調な滑り出しとの声も聞かれるが、春秋航空日本の今後の見通しについては厳しい見方も多い。航空業界に詳しいバークレイズ証券の姫野良太氏は「成田を拠点としたLCCが軒並み苦戦するなか、需要を見込めない地方都市への新規就航はハードルが高い」と語る。オリンピック開催で今後さらに東京一極集中が進むことが予測されるなか、高まる羽田需要に対して成田発着組がどこまで対抗できるのか。低価格が売りのLCCのビジネスモデルは、運航回数と搭乗率にかかっている。昨年唯一黒字を出したのは関空を拠点にしたピーチ・アビエーションのみというのが実情で、日本の航空市場におけるLCCシェアは5%にも満たない。

では春秋航空日本は今後の展望についてどう考えているのだろうか。それを知る糸口になるのが、親会社の春秋航空が日本への国際線の運航に事足りず、法人設立まで考えた理由である。
 
春秋航空日本の王煒会長は率直にこう語る。「日本法人を設立した目的は、日本から国際線を飛ばすことにある」。これはどういう意味なのか。

「LCCである春秋航空は中国でも北京など主要空港にはなかなか乗り入れできない。同じ制約は日本にもあるが、中国から乗り入れの難しい成田や羽田を利用するには、日本法人の設立が不可欠と考えた。これは茨城線就航後、すぐに考えたことだった」。

年間9000万人の中国市場をつかめ

中国から飛ばせないなら、日本から飛ばせばいい――。「国進民退(国有企業が増進し、民間企業が縮退する現象)」が進む中国で、ナショナルフラッグに比べ立場の弱い民間航空会社には、自国市場に執着しない複眼的な発想が求められるのだ。
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春秋航空の関係者が直近で注力しているのは、成田からの国際線の就航である。成田空港の就航セレモニーに出席した春秋グループ創業者の王正華会長は「中国から多くの観光客を呼び込みたい。我々は日本経済に貢献したい」と大胆に呼びかけていたが、日本法人設立の背景には国内需要のみならず、訪日旅行需要の取り込みがあるのだ。

その裏づけとなるのは、いまや年間9000万人超と世界一の規模となった中国の海外旅行市場だ。中国では、北京オリンピックが開催された08年前後に、インバウンド(外国人の中国旅行)からアウトバウンド(中国人の海外旅行)への市場の逆転が起きた。中国人の海外旅行時代の幕開けは、日本の観光立国政策にも影響を与えてきた。

13年、訪日外国人旅行者数は初の1000万人を突破。日本政府観光局(JNTO)によると、今年上半期も前年同期比26.4%増の626万400人と過去最多だった。背景には円安やアセアン諸国のビザ緩和があるが、昨年の反動で大幅回復している訪日中国人による押し上げも大きい。春秋航空が日本路線を加速する背景もここにある。

ところが、この数年の外国人旅行者の急増で、日本の外客受け入れ態勢の構造問題が露呈し始めている。端的にいえば、観光バスとホテルの客室不足である。今春「雪の壁」が人気の立山アルペンルートツアーで、予約を申し込みながら日本行きを断念した台湾客が続出した。今夏も外客の手配を行う旅行業者の多くは、アジアからの訪日客の受け入れをお断りしているのが現状だ。これではいくら日本の魅力を海外にPRしても意味がない。

この構造的な問題を解決するためにはインフラ整備が欠かせないが、短期的には、東京・大阪「ゴールデンルート」に見られる訪問地の偏りや、桜、夏休み、紅葉といった旅行シーズンの集中を分散化させ、団体旅行から個人旅行への転換の促進が求められている。

ひとつの解として期待されるのが、春秋グループの訪日旅行戦略だ。それは、拡充する春秋航空の日本路線と春秋航空日本の国内線を組み合わせた旅行ルートの多様化である。こうして中国客の訪問地の分散化が本当に起こるとすれば、歓迎すべきことである。
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春秋航空の上海・茨城線の就航直後、尖閣諸島沖漁船衝突事故が起こり、日中関係は悪化の一途をたどった。ところが、春秋航空は日本路線の運航を東日本大震災後の一時を除き、一度も中止していない。ビジネスが政治に翻弄されがちな中国で、国有企業に比べ立場の弱い民間企業が伸していくには、徹底した顧客目線とブレない姿勢が求められる。JTBとの提携や春秋航空日本の設立も「日中の人材交流を通じて日本のおもてなしや安全基準を取り入れる」(王煒春会長)ことが意識されている。日中は補完しあえるのだ。

春秋航空日本の国内線参入によって日本のみならず世界の空をどう変えていくのか注目したい。

ひとつだけ、私が日本でもやってみようと考えていたこと
春秋航空日本 王煒会長インタビュー

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国内線3路線の初就航にあたって、我々は春秋らしさを押し出すよりも、まずは日本のお客様に安心して乗っていただくことを第一に考えていました。ただし、ひとつだけ日本でもやってみようと考えていたことがありました。中国の春秋航空ではエコノミークラス症候群の予防のため、着陸の約30分前に客室乗務員がお客様と一緒にストレッチ運動を実施していて、これを「春秋体操」と呼んでいます。太極拳の動きを彷彿させるのでしょうか、お客様に強制するものではありませんが、私が乗った便では、体操が終わると、機内で拍手が起こりました。我々のやり方が日本でも受け入れられたような気がして思わず笑顔になりました。
 
1998年に留学生として来日した私は、卒業後日本企業に就職し、上海事務所に勤めていました。当時父(王正華会長)の会社で働く考えはなかったのですが、2011年3月、東日本大震災が起きたとき、上海・茨城線がこのまま運航できるのか現地視察に行くと父が言い出したので、年老いた父にそんなことはさせられないと、代わりに私が会社を休んで茨城空港に向かったことが、現在の仕事に就くきっかけとなりました。

春秋グループは、母体が旅行会社ですから、レジャー路線の開拓に注力していること。航空部門と旅行部門が対等な関係にあることが特徴です。運航先は両者の協議で決めます。

今年8月から上海に新設した人材訓練センターが稼動しています。日本からも教官を招き、自社によるパイロット育成や人材交流などを始めています。こうして日本の高いサービスや安全基準を取り入れていくことが、我々の国際戦略にとっても重要であると考えています。
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by sanyo-kansatu | 2014-09-20 16:02 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 09月 20日

9月に入ると、バスはかなり減りました(ツアーバス路駐台数調査 2014年9月)

9月に入ると、雨が多く急に涼しくなりましたが、ツアーバスは夏の盛りに比べるとずいぶん減りました。1日1、2回バススポットを通るのですが、1~2台の日がほとんどです。

それでも9月下旬に入ると、若干増えてきたようです。国慶節が近づいてきたからでしょうか。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。

1日(月)12:20 2台、18:30 1台
2日(火)12:50 1台
3日(水)19:20 0台
4日(木)12:40 1台
5日(金)12:20 2台、18:50 1台
6日(土)未確認
7日(日)未確認
8日(月)12:40 1台、19:20 2台
9日(火)未確認
10日(水)11:50 2台
11日(木)未確認
12日(金)未確認
13日(土)未確認
14日(日)未確認
15日(月)未確認
16日(火)未確認
17日(水)18:20 2台
18日(木)18:10 2台
19日(金)18:40 3台
20日(土)11:30 5台
21日(日)未確認
22日(月)未確認
23日(火)未確認
24日(水)12:20 2台
25日(木)12:50 2台
26日(金)未確認
27日(土)18:50 4台
28日(日)未確認
29日(月)17:20 2台
30日(火)12:20 3台
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by sanyo-kansatu | 2014-09-20 15:15 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2014年 09月 09日

バイキングのパイオニア「すたみな太郎」はいかに外国客の取り込みに成功したか

寿司と焼肉が食べ放題の「すたみな太郎」チェーンでは、外客の来店が年々倍増に近い勢いで増えています。その理由は何なのか。飲食店における外客受け入れのためのオペレーションや工夫はどうあるべきか。株式会社江戸一の岩月賢治営業企画部長に現場のお話をうかがいました。

―「すたみな太郎」はどんな飲食チェーンなのですか?

創業は1964年。先代が足立区五反野駅前に開業した居酒屋「江戸一」です。78年に寿司と焼肉の食べ放題の「すたみな太郎」1号店(環七店)をオープンし、現在全国154店舗をチェーン展開しています。

当時、食べ放題レストランという業態はなく、弊社はバイキングのパイオニアを自認しています。

以前はロードサイド型の店舗展開で主力はバイキングでしたが、昨今は業態を多様化し、駅前や商業ビル内に店舗を置く都市型の「すたみな太郎NEXT」や、女性向けの自然食ブッフェレストラン「森のめぐみ」、スイーツブッフェの「デザートフェスティバル」なども展開しています。

―訪日外客の受け入れはいつ頃からですか?

本部にインバウンド客の取り込みのための営業企画部を立ち上げたのが2010年12月です。それ以前は、アジアからの団体客を連れたツアーガイドが直接店舗に予約を入れ、送客しているケースが大半でした。

「すたみな太郎」の特徴は、全国の主要国道に面した店舗展開なので、駐車場も広く、バスも4、5台は駐車できる。バイキングの料理を置くスペースの必要などから店舗面積も他の飲食チェーンに比べ広く、席も250~350名様分を用意しています。メニューも老若男女に受け入れられるように、130品揃えています。うどんやラーメン、丼もの、そして季節のメニューも随時採り入れているので、ガイドさんたちから「“すたみな”に入れておけば安心」と思っていただいているようです。

こうした店舗戦略はもともと国内客向けにはじめたものです。価格も均一で、外客向けの特別なオペレーションが必要ないことは、インバウンドにフィットしているのは確かです。現在、年間約1300万人のご利用がありますが、そのうち外客は25~35万人です。国籍別にいうと、台湾5割、タイ2割、中国と韓国が1割ずつで、その他が1割といったところです。国内客に比べれば外客比率はまだ小さいですが、年々倍増に近い勢いで増えており、伸びしろの大きさを実感しています。

―訪日客の来店が増えている理由は何でしょうか?

訪日外客の国内旅行手配を行う業者団体の一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の会員になってから、ランドオペレーター経由で予約が入るケースが増えました。また最近は海外の旅行会社から直接予約をいただくようになっています。「食のワンダーランド」と私どもは呼んでいるのですが、バイキングは海外のお客様に向いています。アセアンのお客様の中には「豚はダメ、鶏ならOK」といった方も多く、メニューが豊富なので、食の好みや習慣の異なる方にもご利用いただけるからです。

一昨年の夏、中国や韓国から大型クルーズ客船が福岡や長崎に多数寄港しました。一度に2000人近くの乗客が何十台ものバスに乗って市内観光に出かけられるのですが、それだけの規模に対応できる飲食チェーンはなかなかありません。1台のバスが乗客40人として、最大でバス4台、時間をずらして2回転受け入れるとすると、一店舗で320人の集客ができることになります。「すたみな太郎」は九州に19店舗(うち福岡県は7店)あり、 それだけのキャパシティでも受け入れ可能ということから、ご利用いただきました。

体験できる店作りも魅力といえます。自分でラーメンを作ったり、綿菓子を作ったり、単純なバイキングではないのです。家族連れにも人気です。しかし、うどんとラーメンのスープの違いなど、日本人なら見ればわかることが、外国人には混乱をさせてしまうこともあるようです。どのようにサポートするのか、今後の課題でしょう。

―海外の団体客受け入れにはどんな点に気を使われていますか?

国内のお客様と同じ場所でお食事いただくことになるため、座席の指定にも工夫がいります。 家族旅行の場合、シニアの方とお子様の割合のどちらが多いかなど、細かく事前にチェックしておきます。ところが、アジアからのツアーは変更が多いので対応に注意が必要です。当初、シニアの方が何人で、お子様が何人と聞いていたのに、いらっしゃってみたら違っていたり、日程の変更やドタキャンも少ないとはいえ、ありますので。

一般に団体のお客様はお食事時間が60分前後。渋滞などの関係で時間通りいらっしゃるとは限りません。2回転を予定している日の場合、前のグループが遅れ、まだ食事をしているうちに後のグループの団体がいらっしゃることもあります。そういう場合は、お待ちいただかなければならないので、店のスタッフも対応に追われます。スタッフはガイドさんと携帯電話で密に連絡を取り合い、事前に情報をキャッチするようにして、現場に混乱がおきないよう、工夫をしています。さらに、バスの駐車スペースを確保しておくなど、経験による細かい対応力が増していると思います。苦労したからこそ、培ったとも言えますか。

―今後の展望やインバウンド業界への提言がありましたらお願いします。

現状ではなかなか難しいことですが、今後このような問題を解決していくためには、我々飲食業界も、ホテル業界のように統一したキャンセルポリシーの確立が必要だと思います。今春、外客向けの観光バス不足が問題となったことで、日本の受け入れ態勢は整っていないことを痛感しました。それは、飲食も同じです。

北陸では海外のツアー客が利用できる飲食店が少なかったため、本当に大変だったようです。これはこの夏にも起こることです。1000万人から2000万人の訪日外客を目指すということであれば、どこで食事をしていただくかも、重要な課題となっていくはずです。全国には飲食店の数はたくさんありますが、外客の利用に適していなければ使えません。これからはいかに飲食店が訪日客の多種多様なニーズに応えられるかがカギになると思います。

株式会社江戸一
東京都足立区西綾瀬2-23-22
http://edo-ichi.jp

<編集後記>
「すたみな太郎」を個人的に利用したことはまだないのですが、その存在を知ったのは2001年のことです。中国からの訪日団体ツアーが解禁された翌年、ある中国人ガイドに覆面インタビューをしたことがありました。7泊8日のホテルや飲食も含めた訪問先をすべて教えてもらうと、「すたみな太郎」という店名がよく出てきたのです。当時からすでに「すたみな太郎」では外客の来店がはじまっていたわけです。今回岩月部長の話を聞き、当時は個別のガイドが特定の店舗に予約を入れ、送客していただけだったことを知りました。何も手を打たなくても、ガイドが送客してくれたのは、それだけの理由があったからです。

「食のワンダーランド」としてのバイキングが外客のニーズに合っていたことは確かでしょう。アジア各国に進出した日本の外食チェーンの多くが、メニューのバラエティ化を図ることで現地化に成功するというのはよく聞く話です。アジアの人たちは、ワンジャンルの専門店より、いろいろな料理の中から選べる店の方が好きだからです。

しかし、「すたみな太郎」に来店する訪日客の利用が増えている理由は、それだけではありません。

全国の主要幹線道路のロードサイド型の展開は、訪日客のツアーの動線に沿って位置しており、利用しやすいことも大きいと思います。それ以上に重要なのは、オペレーションの担当者が全国の店舗の事情をよく知っていることだと、岩月部長はいいます。予約を入れてくるランドオペレーターや、海外の旅行会社の担当者が知りたいのは、主要観光地から店舗までの距離や所要時間、交通事情、駐車場や店舗の状態などの詳細だからです。岩月部長は営業部長の経験もあり、全国のほとんどの店舗に足を運んでいたことが活きているといいます。

日本の外客の受け入れ態勢が飲食においても十分整っていないということは、逆にいえば、今後新しい可能性が広がっているともいえます。新しい外客向けの業態やサービスが生まれることを期待したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2014-09-09 20:19 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 09月 05日

32回 (改題)「いつ安部政権は変わりますか?」と訊く中国人の本音

訪日中国客が大幅回復したといわれています。日本政府観光局(JNTO)の最新リリースによると、今年1~7月の中国からの訪日客は約129万人で、前年同期比約90%増。特に7月は前年同月比101%増の約28万人という多さで、台湾、韓国を上回り、月間の訪日外国人数のトップに2年ぶりに返り咲きました。この調子でいけば、今年は初の200万人台を突破しそうな勢いです。数値だけみると、昨年の反動による回復だけではなさそうです。

上海の日本総領事館の今年上半期(1~6月)の発給件数も、個人旅行ビザは前年同期比170%増といいます。団体旅行客から個人旅行客への移行が進むこうした動きは歓迎すべきでしょう。

航空便の増便と大型クルーズ船の寄港が背景

訪日中国客が増えた背景について、JNTOは「航空便の増便やチャーター便の就航、大型クルーズ船の寄航」があったと報告しています。7月18日に、中国発LCCの春秋航空の重慶、武漢、天津からの関空線が新規就航しましたし、昨年激減していた中国からの大型クルーズ客船も7月中、九州、沖縄などに17便寄航したそうです。一度に2000人規模の乗客を運ぶクルーズ客船がこれだけ寄航すれば、訪日中国客数を押し上げるのも当然です。今年5月に上海で開催された上海旅行博(WTF)の会場で、クルーズ客船を販売するブースが大盛況だったことを報告したことがありますが、実際にそのとおりになりました。
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春秋航空は上海から茨城、高松、佐賀、関空の4路線に加え、重慶、武漢、天津から関空の3つが加わり7路線になった

もっとも、こういうニュースを聞くたびに、これだけ日中関係が悪化しているというのに、なぜ中国客は戻ってきたのだろうか? どこか釈然としない人も多いのではないでしょうか。中国ではいまでも政府主導で日本という国家を政敵とみなして批判・糾弾する動きが続いています。これは日本でも似たところがないとはいえませんが、PM2.5や食の不安などの理由もあって、中国を観光目的で訪ねる日本人は激減してしまいました。それだけではありません。上海や北京などにいた駐在員もどんどん減っています。誰が強いたわけでもないのに、日本の中国離れは加速度的に進んでいるのです。

ところが、中国からの訪日観光客は増えている。いったいこれはどういうことでしょうか?

この7月、ぼくは中国の東北三省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)を取材で訪ね、多くの現地旅行関係者と会う機会がありました。約1か月かけて、大連、瀋陽、長春、ハルビンなどの省都にあたる主要な都市や地方都市を訪ねました。

今回は、現地旅行会社の関係者と交わした話を中心に、訪日中国客が戻ってきた理由と中国の旅行マーケットの現状、それについて彼らはどう考えているのか。今後の予測はどうか、といった話をしようと思います。

「いつ安部政権は変わりますか?」

面白いことに、今回会った中国の関係者から共通して聞かれる質問がありました。それはこうです。

「次の選挙はいつですか? いつ安部政権は変わりますか?」

中国には選挙なんてないくせに……。誰もが同じことを聞いてくるので苦笑してしまいました。要するに、日本人と長くビジネスをしてきた、いわゆる「親日的な」中国人の多くが、現在の日中関係の悪化は安部政権のせいだと信じ込んでいるのです。彼らは安部政権さえ変われば、日中関係は良好になり、以前のように日本からの観光客も中国に戻ってくるのでは、と淡い期待を抱いているようです。

「どうでしょう……。たぶん多くの日本人は、お宅のリーダーこそ日中関係の破壊の張本人だと考えていると思いますよ」。

思わずそう口から出そうになるのですが、グッと抑えることにしました。政治に無力な彼らを必要以上に傷つけるのは忍びないからです。もちろん、相手によっては、そうはっきり言う場合もありましたけれど。

では、なぜ彼らはこのように考えてしまうのでしょうか。それにはわけがあります。中国在住の方はよくご存知だと思いますが、いまの政権が誕生して以降、テレビニュースに日本の安部首相が登場する場合、首相の背後には必ず火を噴く戦車と空軍機が映されるのがお約束となっています。日本のリーダーが好戦的であるというイメージを中国国民に刷り込ませたいのでしょう。特定の政敵を設定し、相手が倒れるまで、あることないこと誹謗中傷を繰り返し、権力固めに利用するというのは、文革の頃に限らず、中国の建国以来の為政者の常套手段であることは広く知られています(こういうことは、それ以前にもなかったとはいいませんが、新政権後に顕著になったことは確かです)。

「いくらなんでも、これはやりすぎ」と、それを見た日本人なら誰でも思うことでしょう。まったく洗練さを欠いた一方的な映像で、こんな素人レベルの報道を中国の国営放送が日夜流しているのを見るにつけ、呆れを通り越して絶望的な気分になります。報道は「抗日ドラマ」じゃないんですから。中国のメディア人たちは、「反日」なら大方のことが大目にみられると安易に考えているのか、本来は彼らだって持っているはずの良識やバランス感覚を欠いているとしか思えません。こうしたプロパガンダ漬けのメディアに慣らされた(ゆえに、本来は疑り深い)一般の中国の人たちから「いつ安部政権は変わりますか?」という問いが自然に発するようになっても仕方がないかもしれません。

訪日旅行の促進は日本への恩返し

こんな話をどうして長々としたかというと、日本と付き合ってきた中国の旅行関係者たちが、ここ数年、自分たちのビジネスに行き詰まりを感じていることと、日中関係の悪化を結びつけて考えているらしいことがよくわかったからです。この問題に悩んでいるのは、我々日本側よりも、むしろ中国側なのです。

なぜ中国の旅行ビジネスはそんなにうまくいってないのか。中国はもはや年間9000万人超という世界最大の海外旅行マーケットの国です。この夏、アフリカを訪ねた友人が中国人観光客だらけだったと言います。いまや世界中に彼らは足を伸ばしています。なにしろ規模が大きいので、どこに行っても目につくのが中国客です。これで中国の旅行ビジネスが活況を呈していないというのは信じられません。

ある黒龍江省の地方都市の旅行関係者はこう説明してくれました。
「中国の旅行ビジネスが行き詰っている理由のひとつが政府の贅沢禁止令です。旅行会社にとって利益の大きかった公務員の視察や出張が減ったことが影響しています。街場のレストランやホテルも売上が減って困っています。国内の旅行市場も徐々に落ち込みつつあります」。

もともと中国の旅行会社が手がけてきた団体旅行は薄利多売のビジネスでしたから、この10年の激しいインフレで、いくら売り上げても収益の価値は下がるばかり。そのぶん、利益の大きい公務旅行で補てんしていたのですが、それができなくなった。海外旅行取扱者数がいくら増えても、不動産投資によって得られる莫大な経済的利益には比べようもなく、本業を続けるのがバカバカしくなるような気分が業界に蔓延しているようです。

今回会った旅行会社の社長の中にも、面会の約束をしているホテルにポルシェに乗って現れるような、いかにも成金タイプが何人かいました。彼らの本業はいまや旅行ビジネスではなく、副業として始めた不動産投資とノンバンク業(いま話題のシャドーバンキングです)でした。彼らは日本から訪ねてきたぼくに言います。「日本の無人島を買いたいので、どこか紹介してもらえないか。島を買って別荘を建てたい金持ちが中国には多い。これは儲かりますよ」。

その社長の部下に話を聞くと、「彼は数年前にチャーター便利用のツアーで成功し、手に入れた資金で国内だけでなく海外にもいくつも別荘を所有している。しかし、オフィスはこのとおり、雑居ビルの一室で、いくら儲かっても社員の労働環境を良くしようとか、給料を上げることなど考えていない。おそらく中国で何か起これば、海外に逃げ出すだろう」と話していました。社員はお見通しなのです。「彼は自分のことしか考えていない。国家や社会を良くしようとも思わない」。

こうした成金オーナーたちは、業界の健全な発展ということには関心がないようです。巷間伝え聞く中国経済の成長の減速は、当然旅行市場にも影響を与えていますから、まっとうに旅行業に取り組もうとしている人たちほど行き詰まりを感じざるを得ないのです。

もっとも、そのような人ばかりでないことも確かです。今回、ぼくは東北三省の旅行会社10数社を訪ねて回りました。上海や北京に比べて海外旅行市場の成熟度は遅れている東北三省ですが、最近は訪日旅行の取り扱いも少しずつ増えています。この地域の旅行業者の特徴は、1980年代から90年代にかけて、日本統治時代にこの地に住んでいた多くの日本人が“望郷”の旅と称して訪ねたので、その受け入れ、彼らの立場でいえば、インバウンド市場に大きく依存していました。しかし、2000年代に入り、この地に縁のあった日本人も高齢化し、渡航者は急速に減ってしまいました。

それに代わるものとして期待されたのが訪日旅行市場でした。

吉林省長春市の長白山国際旅行社の車作寛副社長は言います。
「私はこれまで旅行業者として29年間働いてきましたが、最初の23年は日本からの旅行者をお客様として受け入れてきました。しかし、最近の6年間は中国人の訪日旅行がメインのビジネスとなっています。この大きな変化について、私はこう考えています。これまで長く日本の方が中国に来て儲けさせていただいたので、これからはそのご恩返しと思って、日本にお客さんを送るつもりです」。
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長白山国際旅行社のスタッフの皆さん

車副社長のいう6年前とは、北京オリンピックの開催された2008年です。中国は国土が広いため、経済発展に地域差がありますが、2008年前後に中国の旅行マーケットのインバウンド(外国人の中国旅行)からアウトバウンド(中国人の海外旅行)への市場の逆転が起こっていたのです。

日中関係が良好なら今の2倍は日本へ

では、彼らはいまの訪日旅行市場をどう見ているのでしょうか。

一般に海外旅行の動向は、近場の市場と遠距離の市場に分けて考える必要があります。中国では、東アジアやアセアン諸国、オーストラリアくらいまでが前者で、欧米やアフリカが後者になります。数でいえば圧倒的に近場の市場が大きいですが、この5年くらいで急伸したのが遠距離の市場。10年前には存在しなかった市場が出現したことから、欧米をはじめ世界で注目を浴びたわけですが、問題は日本も含めた近場の市場の最近の動向です。

今年に入ってマレーシア航空の事故や南シナ海の領有問題など政治的な問題があり、東南アジア方面の渡航者が減少傾向にあります。昨年目立った伸びを見せたタイも、チェンマイのような観光地で中国客に対する反発が出てきたことから、去年ほどの勢いはないし、オーストラリアとの関係も微妙になっています。そのぶん、韓国だけが増えているのですが、こうした近場の市場の地域別の増減のバランスが影響して、数少ない選択肢となった日本が結果的に増えているのです。

ところが、大連の旅行関係者は言います。
「もし日中関係が良好なら、いまの2倍は日本に行ってもおかしくない。まだまだ少なすぎる。本来はこんなものではないが、多くの中国人はまだ政府に遠慮しています」

一見訪日中国客は増えているように見えるけれど、実際には政治的な理由でまだ相当抑制されているのが実際のところだというのです。

中国人の海外旅行時代の本格的な幕開けとなった2008年以降、今日に至る6年間、日中間には実にいろいろなことがありましたから、その意味は我々にも理解できます。

日本でにわかに訪日中国客に対する期待に火がついたのは08年でした。それが空前の盛り上がりを見せたのが、上海万博のあった10年でしょう。ところが、その年の9月に尖閣諸島沖漁船衝突事件が起きました。8月頃から徐々に反日デモが起き始めていたのですが、9月に入ってこの事件を機にデモがヒートアップしました。

翌11年3月、東日本大震災が起きます。新政権では未だに日中首脳会談すら開かれていないことを思うと不思議な気さえしますが、その年温家宝首相が来日し、被災地を訪ねています。ところが、12年9月に尖閣問題が再発しました。

よくまあこれだけのことが起きたものです。その間、訪日中国人数はアップダウンを繰り返しました。そして、今年の大幅回復です。

これまでのことを思えば、今後何が起こるかわからない……。仕事や人生が常に政治に翻弄されることに慣れている中国の人たちとは違い、ある意味潔癖な日本人の記憶にチャイナリスクはしっかりと刻まれてしまいました。

東北三省の旅行関係者らは、他の中国の地域に比べて歴史的にも日本と縁があるぶん、訪日旅行市場の拡大に全力を挙げて取り組みたいと考えていました。しかし、政治の影響で、当初の期待どおり市場が伸びていないと感じています。彼らがよく知る80年代、90年代のような日中関係であれば、こんなはずはないのに……。それが残念でたまらないのです。

この程度で留まるのが日本には好都合!?

上海に舞台を移すと、話は少し変わってきます。一般に中国人は南に行くほど政治の影響を受けにくいといわれますが、結局のところ、今夏の訪日中国人数を押し上げたのは、冒頭に挙げた大型クルーズ客船や春秋航空などの日本路線の拡充によるもので、上海とその周辺(一部重慶や武漢などの内陸も含まれますが)の市場の動きが大きかったのです。
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春秋航空(佐賀空港にて)

繰り返しますが、今年仮に200万人超の中国客が日本を訪れたとしても、中国の海外旅行市場のポテンシャルからすれば、本来の実力の半分にも満たない数字だと中国側の関係者は考えています。確かに、昨年韓国に約400万人の中国客が訪れたことを思えば、日本にはもっと訪れてもいいはずだ。そう考えるのも当然です。

ところが、これは皮肉な言い方になりますが、日本にとって訪日中国人数がこの程度に留まっているのは、むしろ好都合なのかもしれないのです。日本の外客受け入れ態勢は構造的な問題を抱えているからです。端的にいえば、外客向けの観光バスやホテルの客室不足です。

昨夏と今春、ツアーの予約を申し込みながら日本行きを断念したアジア客が続出したことから、今夏外客の手配を行う日本のランドオペレーターの多くは、アジアからの訪日旅行者の受注を抑える傾向にあったと聞きます。今春のような混乱は避けたかったからです。つまり、日本に旅行に行きたいという海外客が多くいるのに、現場ではお断りをしているのが現状なのです。さらに今年は消費税アップや国交省の指導によるバス料金の改定、客室不足によるホテル代金の上昇なども重なり、旅行費用に関して円安効果の相殺以上の値上がりが考えられるため、秋以降の訪日客数は鈍化する可能性もありそうです。

こうした状況で、中国客が本来の実力どおり日本を訪れるようなことになったら、日本の外客受け入れ態勢は文字通りパンクして立ち行かなくなるでしょう。つまり、日中関係が良くないことで、日本のインバウンドは救われているともいえるのです。なんてことでしょう。

だとすれば、この程度の数に留まっているうちに、インバウンドのためのインフラ整備や制度設計を始めるべきではないでしょうか。

あるインバウンド関係者は言います。
「今後本腰入れてインバウンド観光に推進するのであれば、海外へのプロモーション一辺倒のあり方や国内のインフラ整備の具体的な方向性について行政や関係省庁、メディアにももっと考えてもらわなければならない時代になったと思います」。

まったく同感です。いまは、そのターニングポイントに来ていると思います。

これまでぼくは本コラムにおいて、海外の訪日旅行客の送り出し側の事情を中心に、国内外のあちこちを訪ね、話を聞いてきました。

今後は、テーマを国内の外客受け入れに関するインフラ整備の問題にシフトし、少しずつ周辺事情を探っていこうと考えています。

※やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/column/2014/column_166.html
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by sanyo-kansatu | 2014-09-05 12:26 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)