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2015年 02月 28日

思い出横丁で初めて日本に来た外国人の気持ちを考えてみる

トリップアドバイザーによる新宿区の観光名所の口コミ人気ランキングで、新宿駅西口にある思い出横丁が7位なんだそうです。
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トリップアドバイザー
http://www.tripadvisor.jp

トリップアドバイザーは米国発の世界最大の旅行口コミサイトで、圧倒的に欧米の利用者が多く、5人のうち4人はアジア系旅行者で占める日本の場合、口コミ数と実際に訪問する外国人観光客の数はリンクしているわけではないのですが、欧米の旅行者の好みを理解するうえではそれなりに参考になります。ちなみに新宿区の10位までのランキングは以下のとおりです。

1位 新宿御苑
2位 東京都庁舎
3位 新宿ゴールデン街
4位 神楽坂
5位 明治神宮外苑
6位 明治神宮野球場
7位 思い出横丁
8位 消防博物館
9位 東郷青児美術館
10位 新宿西口カメラ街

このうち新宿ゴールデン街と思い出横丁がいわゆるナイトスポットですが、外国人の書き込みをみるかぎり、前者が夜遅くまでにぎわうバーエリアと認知されているのに対し、後者は「Yakitori Heaven」などの言葉に代表される日本のローカルな情緒を味わう場所とみられているようです。
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実際、思い出横丁の焼き鳥屋には多くの外国人がいます。一部の店では、日本人より外国人の姿のほうが多く見られることもあるほどです。

大半はロンリープラネットのようなガイドブックやトリップアドバイザーのような口コミサイトを見て訪ねてくる日本は初めてという外国人だと思われます。そういう意味では、英語の情報ソースにアクセスできるシンガポール人や香港人、一部のタイ人などのアジア系も含まれます。

なかにはいろんな人がいて、「英国のMCM EXPO」について何やらつぶやきながら思い出横丁を散策し、ビデオを回している外国人もいるようです。MCM EXPOとはロンドンで開催されるコスプレとマンガのイベントです。

MCM EXPO
http://mcmcomiccon.com/london

そんなことを知ったのは、昨年5月に上海で開かれた「動漫美学双年展(ANIMAMIX BIENNALE)」という美術展で、ある英国人アーチストのビデオ作品を観たときです。
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動漫美学双年展(ANIMAMIX BIENNALE)2014.4.12~6.5

その作品は“ANJIN 1600 EDO WONDERPARK”といいます。アーチストは、1976年ロンドン生まれのDavid Blandy。
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David Blandy
1976 Born in London
1995-98 Chelsea College of Art BA (Hons) Sculpture
2001-03 Slade School of Art MA in Fine Art Media

David Blandy
http://davidblandy.co.uk/

ここでいうANJINとは、1600年に日本に漂着した英国の航海士ウィリアム・アダムズ(三浦按針 1564-1620)です。のちに徳川家康に外交顧問として仕えた按針ですが、David Blandyはいまから400年以上前に日本を訪れた英国人にとっていかに当時の江戸がワンダーランドだったか、想像力をふくらませています。わずか8分間ほどの作品で、上記の彼のサイトの「MENU」から「Films」に入ると観ることができます。

これは基本的にアニメーション作品です。奇妙なことに、David Blandy本人らしい英国人青年が『宇宙戦艦ヤマト』の古代進に似た白地に赤のクロスラインの入ったスーツを着て浮世絵の世界を歩いています。彼は江戸時代にタイムスリップして三浦按針になったつもりなのでしょうか。

ところが、途中から場面が急転回し、なぜか『宇宙戦艦ヤマト』の戦闘シーンが挿入されます。まあこういう作品は理屈抜きで観てもらうしかありません。

そして、後半6分40秒頃からエンディングまでの約2分間、彼は新宿の思い出横丁を歩くのです。そのとき彼はロンドンのコスプレイベントを思い出しながら、日本のサブカルチャーや歴史について考察し、何やらぶつぶつ、つぶやいています。
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ちょうどいま来日している英国のウイリアム王子がNHKを訪れ、女優の井上真央さんの隣でかぶとをかぶっておどけてみせるというおとぼけシーンがニュース配信されていましたが、どこかそれに似た脱力感いっぱいの作品です。

でも、おそらく日本を初めて訪ねた欧米の外国人の多くに共通する心の動きとはこういうものではないでしょうか。

目の前に広がる現代日本の風景の中から、日本に関する知識を頭の中で総動員させながら、知っているものならそれを参照してみる。一方、知らないものに出くわすと、それを理解する手がかりとして、近代以降の日本に大きな影響を与えてきたとされる欧米カルチャーに似た断片を見つけて、そこから類推しようとそっと拾い上げてみるものの、そこには本来持っていたはずの文脈は断たれてしまっているよう…。独自に日本で変容して現在に至ったであろう姿かたちは自分たちの理解をはるかに越えており、ついにお手上げとなってしまう。それはおかしいような、面白いような、不思議なことであり、彼らにとって現代日本におけるワンダーランド体験なのではないでしょうか。思い出横丁はなぜか、そんな象徴的なスポットのひとつとして選ばれているようなのです。

こんな話もあります。いまの思い出横丁の焼き鳥屋の多くは、中国人が切り盛りしているのが実態です。日本人経営の店は少なく、わざわざ日本の国旗を店先に張り出している店もあるほどです。
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そんなフェイクそのものともいうべき現実もそうですし、場所が新宿の高層ビル街に近いことから、思い出横丁は映画『ブレードランナー』の世界みたいに見えたりしないのかな、と思ったりもするのですが、トリップアドバイザーにはそのような書き込みはいまのところ見当たりません。

この作品を観てからというもの、ぼくは思い出横丁のそばを通るたび、初めて日本に来た外国人の気持ちを想像するようになりました。なるべく彼らの疑問やアメージングに感じるもろもろを説明し、納得させてあげたくなります。簡単じゃないですけど。

さて、David Blandyの作品が出展されていた「動漫美学双年展(ANIMAMIX BIENNALE)」が開かれた上海当代芸術館についてひとこと。そこは上海の人民公園の中にひっそりたたずむユニークなアートスポットです。

上海当代芸術館 
http://www.mocashanghai.org/

「アニマミックス(Animamix、動漫美学)」というのは、アニメーションとコミックを合わせたコンセプトで、上海当代芸術館のクリエイティブディレクターで、この美術展のキュレーターのビクトリア・ルー(Victoria Lu)による造語です。台湾出身の彼女は、アジアの現代アートに日本のアニメやマンガの影響が著しく見られることから、この新しい美術傾向を表現する言葉として2006年に「アニマミックス」を提起しています。

「動漫美学双年展(ANIMAMIX BIENNALE)」は、2年に1度、上海(上海当代芸術館)や北京(今日美術館)、台北(台北当代芸術館)、広州(広東美術館)で同時開催または巡回される美術展です。世界中のアーティストの作品が出展されていますが、その多くはアニメやマンガと共に育った1970年代~80年代生まれの若手で、日本人アーティストもいます。

かれこれ10年近く前のことですが、ぼくは彼女に会ってインタビューしたことがあります。

アニメ美術展で中国を変える「出戻り上海人」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20061201/114780/
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by sanyo-kansatu | 2015-02-28 16:44 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 02月 28日

Laoxに行けば“爆買い”中国本土客の欲しいものがすべてわかる

昨日、観光庁主催の「タビの産直イチ」という商談会があり、大坂から上京していた知り合いに会うため、会場のある秋葉原を訪ねました。

タビの産直イチ(「観光地ビジネス創出の総合支援事業」)
http://tabicollege.jp/

春節休みも終わったばかりの秋葉原でしたが、“爆買い”中国本土客を迎えるべく、各家電量販店の店先には中国語簡体字の呼び込みプレートやポップがあふれていました。
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もちろん、英語やハングルも申し訳ない程度には書き込まれているのですが、圧倒的に簡体字がスペースを占めていることから、その期待の高さが感じられます。
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知り合いがお昼休みに会場から出てくるまで30分ほど時間があったので、中国本土客といえばおなじみの中国系家電量販店Laoxに足を運んでみました。
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Laox秋葉原本店
千代田区外神田1-2-9
http://www.laox.co.jp/stores/akihabara

春節セールも終盤戦を迎えているようでしたが、Laoxの前には中国本土客を乗せたバスが何台か停車しています。
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店の前では「客待ち駐車」は禁止されているようですから、客を降ろしたバスは買い物タイムが終わるまで、周辺を回遊していなければなりません。
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個人客向けに羽田空港からLaoxのある銀座と秋葉原への無料送迎バスも走っているようです。
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店の前には買い物をすませ、バスを待つ中国客の姿が見られました。
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さて、入店しようとしてさっそく目撃してしまったのは、メディアで報じられおなじみの日本製炊飯器を6つも購入した中国ファミリー客です。ご両親たちが購入商品をうず高く積んだ場所から離れたとき、小学生くらいの男の子がしっかり身張り番していました。
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入口すぐに、春節期間中(2月16日~28日)のキャンペーン福袋が並んでいました。なんでも総額10億円、3000円から最高額888万8888円までの福袋を用意したそうです。
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店頭では着物姿の若い女性が「春节快乐 羊羊得亿」と書かれたちらしを渡してくれます。「羊羊得亿」というのは、今年が羊年であることから、中国語の慣用句「洋洋得意(意気揚々という意味)」とそれぞれ同じ発音の「羊」と景気を込めて「亿(億)」の字をかけているのだそうです。
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ちらしには「東京地区最大級免税店」「本店には7万点を超える商品を取り揃えています。中国人販売員も常駐していますので、お声かけください」などと記されています。

ちらしの裏面はフロアガイドです。以下、フロアごとの商品群を挙げてみましょう。
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1階  海外向けデジタル機器。デジカメやビデオ、タブレット、PC、ヘッドフォン、電子辞書、スーツケースなど。

2階  海外向け家電機器。炊飯器、セラミック包丁、キッチン雑貨、電気髭剃り、美容商品、空気清浄器、便座ウォシュレット、変圧器など。
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3階  趣味・ゲーム・生活雑貨。プレイステーション、任天堂3DS&Wii、アニメフィギュア、マグボトル、爪切りなど。

4階  日本工芸品・食品・スポーツ用品。和服、Tシャツ、扇子、日本人形、こけし、南部鉄器、有田焼、健康食品、お菓子、日本茶、釣り具、ゴルフ用品(本間ゴルフ)、キティちゃんグッズなど。

5階  腕時計・ジュエリー・ブランドバッグ。高級腕時計(ロレックス、オメガ、カルティエ、ロンジン、パテックフィリップ、IWC、ジャガールクルト)、日本腕時計(セイコー、カシオ、シチズン)、ジュエリー(サンゴ、真珠)、ブランドバッグ(エルメス、ルイヴィトン、シャネル)など。

6階  化粧品・医薬品。化粧品(資生堂、コーセー)、美容商品、香水、タイツ(ストッキング)、ベビー用品、医薬品など。
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7階  ブランド関係。男性ブランドスーツ、アクセサリー、レザーグッズ、ラッキーアイテム、男性ネックレス、毛皮、ブランドバッグ(バーバリー、プラダ、グッチ、コーチ、MCM)など。

すでにお気づきとは思いますが、まさにこの商品ラインナップこそ中国本土客の“爆買い”ワールドの縮図といえるでしょう。Laoxに行けば彼らの欲しいものがすべてわかるというわけです。個々の販売商品については、それぞれ「なぜ中国客に売れるのか」、理由がしっかりあるようです。その話を始めたらきりがありませんけど、大いに研究すべき対象だといえそうです。

今日の日本人に比べ、彼らの物欲がいかに強いかは明らかです。であれば、我々はそれを冷静に観察し、相手が喜ぶものを用意してあげればいいというわけですから、お互いにとってこれは悪くない関係といえましょう。

それにしても、こんなことがいつまで続くのやら、と思わないでもありませんが、かの国の人口規模からみると、日本を訪れる中国人は過去最高となった昨年でさえ全体の0.2%程度にすぎないわけです(言うまでもありありませんが、13億の人口の中国である以上、1%でも1300万人というわけです)。昨年外客トップの台湾では人口の12%もの人たちが訪日したことからすると、まだまだ中国客は増えてもおかしくはありません。

最後にこんな話も。Laoxを出て向かいの通りを歩いていると、中国客を乗せたバスが停車するすぐ前で、いわゆる法輪功の関係者が「中国共産党による法輪功信者に対する臓器狩り」を非難するポスターと彼らが発行する新聞を手渡す姿が見られました。以前、タイのバンコクの王宮前でも、中国客を乗せたバスの前で抗議活動を続ける彼らの姿を見たことがあります。
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観光バスの発着場で出待ちする法輪功【タイで見かけた中国客 その2】
http://inbound.exblog.jp/21289829/

中国客の現れる場所には決まってみられる光景です。これもまた中国社会の縮図といえるかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2015-02-28 14:26 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 02月 27日

台湾のドラッグストア研究家、鄭世彬さんと知り合う

先日、上海の書店で面白い本を見つけました。

『东京美妆品购物全书』(中国軽工業出版社 2014年)という本です。「東京コスメショッピング全書」とでもいえばいいのでしょうか。
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内容をざっくりいうと、日本のドラッグストアで販売している医薬品や健康商品、化粧品、美容グッズなどから優れた商品をジャンル別に選んで分類し、紹介したガイドです。これは海外で刊行されている書籍という意味で、ある種、画期的なものではないでしょうか。訪日する中国人観光客がいま最も知りたい情報が一冊にまとめられているというわけですから。

同書は以下の6つの章に分かれています。

Part1 東京のドラッグストアの世界を紹介し、毎年3月に開催される日本ドラッグストアショーや10大人気商品(薬、化粧品)を写真入りで解説しています。

Part2 日本のドラッグストア業界は戦国時代にあると前置きし、都内の特色ある有名店を紹介しています。ぼくなど知らないような店(TOMOD'S東池袋店、OS DRUG渋谷店、AMERICAN PHARMACY、エッセンス池袋東口店、まかないこすめ神楽坂総店など)も出てきます。

PART3 これがメインコンテンツで、各効能・用途別の医薬品や化粧品、美容商品、健康食品、トイレッタリー商品などの図鑑形式の総目録です。これらの商品を著者がどうやってここまで詳しく調べ上げたのか、驚きを禁じ得ません。
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これは日本のドラッグストアで購入できるOCT医薬品ベスト10だそうです。
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こちらは化粧水・乳液のページです。

Part4 都内主要地区(新宿、渋谷、銀座、池袋、上野、川崎)のマップ

Part5 日本のコンビニで販売されている美容商品を紹介しています。

Part6 羽田と成田のショッピングエリアの紹介です。

とにかくやたらと詳しく、中国客が日本で間違いなく買いたいものを手にするための情報が満載した内容です。

誰がこんな本を書いたのだろうか……。もしや日本のドラッグストア業界がからんでいるのかなど、いろいろ考えてしまいましたが、奥付をみると、著者は台湾人の、しかも男性です。女性ではないのです。

いったいこの人物は何者なのか……。

帰国してしばらくして、googleで「鄭世彬」(最初は簡体字の「郑世彬」)検索してみました。すると、その人物の著作がいくつか中国のECブックサイトに出てきました。つまり、すでに台湾で刊行された彼の本を中国の出版社が版権を買い、簡体字版として刊行しているのです。奥付によると、この本の取材は2012年、台湾での刊行が13年、中国では14年のようです。

であれば、本家の台湾を調べようと、今度は繁体字の「鄭世彬」で検索すると、「日本薬粧研究家 鄭世彬」がすぐに見つかりました。ご本人とは別に彼の主宰する「日本薬粧研究所」のFacebookもあります。

日本GO! 藥品美妝購!
https://www.facebook.com/JAPAN.DRUGS.COSMETICS

ここまで調べると、ぼくはこういうときあまり躊躇しない人間なので、すぐに彼のfbを開き、メッセージを送りました。

「はじめまして。上海であなたの本を買いました。とても面白かったので、コンタクトを取りたいです」と、簡単に自己紹介も兼ねて友達申請したところ、わずか数分で彼から返信が届きました。

それが一昨日の午後のことです。

ぼくは鄭世彬さんに以下のような3つの質問を送りました。

①日本や韓国のドラッグストアの商品に関する書籍を執筆された動機やきっかけは何だったのですか。
②この本の読者はどのような人たちですか。台湾と中国で違いはありますか。どの内容にいちばん関心が強いですか。
③昨日、メールで日本のコスメメーカーのコンサルティングもしておられるとお書きでしたが、具体的にはどんなことですか。

以下が彼からの回答の概要です。

①日本や韓国のドラッグストアの商品に関する書籍を執筆された動機やきっかけは何だったのですか。

「これまで本は8冊出しています。以下は私が台湾で刊行したリストです。

鄭世彬著作リスト
http://search.books.com.tw/exep/prod_search.php?key=%E9%84%AD%E4%B8%96%E5%BD%AC&cat=all

前半の8冊が私の著作で、その下は私が翻訳した書籍です。

私は元々出版業界の人間でした。このような書籍を執筆するきっかけは、以前からよく家族や知り合いの人が日本で買ってきた薬のパッケージを持ってきて、翻訳してほしいと頼まれていたからです。きっと多くの台湾人にも同じ悩みがあると思い、翻訳を手伝っていた出版社に相談して、台湾初の日本OTC医薬品(処方箋の不要な市販の薬品のこと)を解説する買物ガイドを出版しました。

その後、読者から「コスメの本もほしい」といわれ、次にコスメガイドも作りました。ネットで拾った情報だけで本を作るのが嫌いなので、各メーカーにメールを出して、取材を申込みました。最初は相手されませんでしたが、最近では少しずつ私の存在が理解されるようになり、取材協力もしてもらえるようになりました。

実は、今まではずっと自腹取材だったので、出費が膨大で、新しいコスメガイドの制作は一時中断していました。しかし、今回多くの読者とメーカーの声に応えるべく、しかも一部のメーカーから取材経費をいただいたので、コスメガイド第三弾の制作を再開することになりました。3月初旬から、日本での取材がスタートします」。

②この本の読者はどのような人たちですか。台湾と中国で違いはありますか。どの内容にいちばん関心が強いですか。

「OTC医薬品の本でしたら、ターゲットはやや広く、20~60代までの読者がいて、性別は男女ほぼ5分5分です。コスメガイドのターゲットは20~40代の日本好きな人たちで、性別は女性が圧倒的です。台湾でときどき日本のコスメセミナーを行っています。その風景は↓の写真の通りです。やはり女性が多いですね。
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読者にとって関心が高い内容は、やはりコスメ・医薬品の解説です。買いたいけど、日本語が読めない! という方はかなり多いです。一部のメーカーは台湾のブロガーを採用し、情報発信していますが、ブロガーの中には日本語が読めない人も多いので、メーカーの提供した情報をそのままで紹介するケースが多いです。そのため、それが客観的な内容かどうかわからないという読者からの指摘もあります」。

③昨日、メールで日本のコスメメーカーのコンサルティングもしておられるとお書きでしたが、具体的にはどんなことですか。

「2013年に来日したときは、取材拒否されることが多かったのですが、14年の半ば頃から、急にインバウンドに関する相談が持ち込まれ、いくつかのメーカーからもオファーが来るようになりました。

そのコンサルの内容としては、台湾人がよく出没するエリア・店舗、台湾人の好み、台湾人向けの販促方法、景品のタイプなどです。

台湾人は中国人と違って日本にとても慣れていて、買物の習慣もより成熟していますから、実際に台湾人が訪れるショッピングエリアは中国人の場合とは大きな違いがあります。

最近になって日本の広告代理店とコラボして訪日外国人旅行(インバウンド)事業のお手伝いもさせていただいています。昨年秋の台北ITFでは、JAPANKURUというブースで、台湾の女性ECサイトのPAYEASYとコラボしましたが、これは私のセッティングでした」。

回答の中にもありましたが、3月上旬、彼は日本のコスメガイド執筆の取材のために来日するそうです。なんというタイミングでしょう。さっそく、東京でお会いすることになりました。

台湾には、鄭世彬さんのような日本のバリューをよく理解し、こちらから頼んでいるわけでもないのに、それを現地で伝えようとしてくれる人材がいるのです。本当にありがたいことです。

日本のドラックストア業界も、彼の存在に気づいたようで、今回は取材協力を惜しまないことでしょう。実際、台湾でならともかく、中国本土で日本の医薬品やコスメを販売するのは、法的な規制が大きく、相当難しいそうです。そのうえ、中国人はたとえ日本メーカーの商品でも、中国で製造されたものは好まず、日本で市販されているものが買いたいようなのです。

であれば、これからはこれだけ訪日客が増えているのだから、わざわざ中国に営業所を構え、販路を広げるようとするより、むしろ日本に来て買ってもらえばいい。日本の製薬メーカーも訪日客に絞った販促に切り替えようとしている動きがみられるという話を上海のPR会社の関係者からも聞きました。

ぼくも彼に「台湾人がよく出没するエリア・店舗、台湾人の好み、台湾人向けの販促方法、景品のタイプ」や「台湾客と中国客の違い」について、もっと詳しく話を聞いてみたいと思います。

彼の来日が楽しみになってきました。
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by sanyo-kansatu | 2015-02-27 10:09 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 02月 24日

上海のデパ地下では日本のお菓子が人気です

先日、デザイン事務所に打ち合わせに行ったとき、ひとりのデザイナーの女の子がこんな話をしてくれました。

「この前ドンキに行ったとき、中国人かどうかわからないけど、アジアからの観光客がチョコとかクッキーとかをまとめ買いしているのをみて驚いた。お菓子なんてかさばるだけだし、なぜわざわざ日本で買うのだろう?」。

中国からの訪日客の“爆買い”ぶりが日々メディアで話題になるなか、そういう疑問がわいてくるのはもっともかもしれません。

百貨店や家電量販店、ドラッグストアなどで売られるさまざまなメイド・イン・ジャパンの品々が人気というのはまだわかるとしても……。どうして?

実は、日本のお菓子も人気だからです。

これは中国客に限った話ではなく、台湾やタイなど東南アジアの人たちも同様です。彼らはバスで日本各地を周遊しながら、サービスエリアやドンキホーテのような量販店、そして最後のしめは空港で、ご当地モノをはじめとした日本のお菓子を買い込んで帰るのです。

タイ人留学生とお土産談義~なぜ日本の文房具は人気なのか?
http://inbound.exblog.jp/22471366

それはそうと、先日上海を訪ねたとき、驚いたのは、百貨店のデパ地下で日本のご当地銘菓が売られていたことです。
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あの有名な北海道の銘菓「白い恋人」がアジア客の間で人気だとは聞いていましたが、東京や信州、京都、大阪、姫路など、全国のご当地土産が大量に並んでいる光景をみながら、ぼくは中国人の商才にあきれるとともに、まさか近頃上海では日本旅行に行く人が増えているから、行ってもないのに見栄で行ってきたことにして、職場で同僚に配ったりする偽土産だったりするのだろうか……??? などとも思ったものです。

でも、どうやらそういうことではないようです。上海に暮らす知人の話では、経済水準の高い上海の人たちは、甘さやカロリー控えめで上品な味わいの日本のお菓子を純粋に好ましいと思っているようです。日本風にきれいにパッケージ化されているところも好評価となっています。

ほんの少し前まで、多くの中国本土客は丁寧に包装された日本の商品に対して若干違和感を持っていたようでしたが(そんな必要があるのか、と感じていたわけです)、いまではそれを良きこととして、自分たちも真似するようになりました。最近、中国人から土産としてもらう酒やお菓子は過剰に包装されていて、時代はずいぶん変わったと思います。

このデパ地下は、2004年に上海市中心部の静安寺に香港崇光と地元商業資本が合弁で開業した、いわゆる日本式デパートの久光百貨店にあり、日本の食材を豊富に扱っていることで知られています。よく日本の自治体が物産フェアなどもやっているので、この手の商品を仕入れることはたやすいのでしょうが、そんなものを誰が買うのでしょうか? どうやら地元上海人が購入していくようです。

実は、話はそれだけではなく、日本のふつうのスナック類やチョコなんかも売られています。

たとえば、カルビーのポテトチップ。1袋28gで約380円(18.9元)とずいぶん高いです。
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明治のきのこの山も1箱300円(14.9元)、メーカーはわかりませんが、くまモンのブドウキャンディ1袋350円(17.2元)。
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なかでも柿ピーは驚くなかれ、1袋830円(41.5元)もします。
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中国製のポッキーもありましたが、130円(6.5元)とこちらは日本と同じくらいでした。
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これら日本のお菓子は輸入品ですから、輸入食品チェーンのカルディなどで売っている洋モノ菓子同様、中国では高くなるのでしょうが、みなさんごっそり買い込んでいきます。
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ちょうどぼくが久光百貨店を訪ねたのがバレンタインデーで、きれいに包装されたチョコレートもずいぶん売れていました。春節前(歳末)の最後の週だったこともあり、普段よりはにぎわっていたことは確かでしょうが、まあこれだけみても、日本のお菓子が人気だとわかります。
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もちろん、上海といっても、どこの百貨店でもこのように日本のお菓子が売られているわけではないのですが、結局のところ、日本に旅行に来られるような豊かな階層が久光の顧客であることは間違いないわけです。

デザイナーの彼女の素朴な疑問に対して、ぼくはだいたいこのように説明したところ、う~んなるほどと、一応納得してくれたようでした(彼女は3年前にL'Arc〜en〜Ciel のワールドツアーで上海に一度遊びに行ったことがあるという人です)。
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by sanyo-kansatu | 2015-02-24 16:28 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 02月 23日

中国「新旅游法」は元の木阿弥―キックバックを原資としたツアー造成変わらず

中国の旧正月、春節を迎え、訪日中国客の“爆買い”報道が続きました。

「春節到来 円安好機」(朝日新聞2015年2月19日)

「中華圏で18日から旧正月の「春節休み」が始まった。円安や観光ビザの条件が緩和されたのを追い風に中国などから多くの観光客が日本を訪れ、百貨店やホテルは早くもにぎわっている」

もうそのこと自体は世界的な現象ですし、それほど新奇な話題でもない気がしますが、先日上海の旅行関係者らにヒアリングしたところ、少し気になる話が聞こえてきました。

それは、中国の「新旅游法」がすでに元の木阿弥となっていることです。

中華人民共和国旅游法(新旅游法)は、旅行商品の質向上と消費者保護を主な目的に、旅行業者が低価格でツアーを販売し、オプションや強制的な免税店連れ込みで利益を上げることを禁止するものでした。オプションというのは、ツアー代金をとにかく安く見せるため、旅行中のあらゆる観光アトラクションや食事を極力省き、現地でそのつど追加料金を請求することです。実際、ある時期まで中国人のツアーでは、オプションと称してツアー中に請求される総額がツアー代金と変わらなかったという話があります。オプション支払いをこばんた客がバスから置いてきぼりにされるという信じられないようなこともよく現地のメディアをにぎわしていたものです。

こうしたことから中国の消費者の不満が高まり、訴訟なども頻発したことから、中国政府は旅行業法の改正を打ち出します。しかし、その背景には、「中華民族の自尊心」をことのほか気にする政府が、国内外で不評を買っている自国の海外旅行者および旅行業者のありようを改善することがありました。その実態については、以前書いたことがあります。

ツアーバス運転手は見た! 悲しき中国人団体ツアー
http://inbound.exblog.jp/19743507

せっかく海外各地に送り込んだリッチな中国人たちのふるまいが、自国の名誉につながるどころか、反感と冷笑の対象になっていることに、政府は我慢ができなかったのでしょう。いきなり2013年4月下旬に以下の法令が公布され、半年後の10月1日には施行されました。
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中華人民共和国旅游法(新旅游法)
http://www.cnta.gov.cn/html/2013-4/2013-4-26-8-21-88078.html

なにしろ中国という国は、事前に関連業界へのヒアリングや検討会などほとんどなしに法改正を強制的に執行するものですから、13年夏ごろの中国の旅行業界の人たちは施行後に旅行商品の価格設定をどうすべきか、どこまで徹底した違反業者の取り締まりが行われるかなど、疑心暗鬼でした。

それでも、当時の中国メディアによると、違反した業者への取り締まりやツアー料金「適正化」の結果、ツアー価格の安すぎた韓国への旅客が一時減少した、といった報道も見られました。

中国《旅游法》生效后访韩游客数量锐减一半(2013.10.17)
http://www.ckbiz.net/news/show.php?itemid=3109

確かに、13年秋ごろの現地での関係者へのヒアリングでも「海外ツアー商品の料金の適正化が進む」というコメントが得られていました。

ここでいう「適正化」は、あくまで中国人が考えるものですから、日本から見て必ずしもそうとは思えませんでしたが、訪日ツアーの料金も軒並み「3~4割」アップすると言われていました。

そして、確かに2013年秋から14年の春節くらいまでは、落ちるところまで落ちた訪日ツアー料金は若干の「適正化」がみられました。中国の旅行会社のサイトに載っているツアー商品の料金表をみて、当時ぼくも一応確認していました。

新旅游法の施行で中国団体客はどうなるか?(ツアーバス路駐台数調査 2013年10月)
http://inbound.exblog.jp/21193424/

ところがです。14年の夏ごろになると、すでに日本国内のランドオペレーター関係者から、「新旅游法はもう終わった」という声が聞かれるようになっていました。一時「適正化」したと思われたツアー料金の下落が再び始まったからです。

なぜなのか。今年2月上旬に上海で会った現地の旅行関係者がこうはっきり証言してくれました。

「いま中国の海外旅行客は、旅行会社と2枚の契約書を取り交わします。1枚は旅行申込書、もう1枚は免税店立ち寄りとオプションの内容に関して意義は申し立てないという同意書です。中国の消費者は、免税店の立ち寄りがあってもいいから、ツアーが安いほうがいいと判断したのです。やはり市場に合うものしか存在できないということです」。

現在、中国の旅行会社のサイトをみるかぎり、訪日ツアーの料金は13年当時と変わらない価格帯に下がっています。「元の木阿弥」というのはそういうわけです。

おかげで、オプションを支払わないツアー客を置き去りにしたり、免税店立ち寄りをめぐるガイドと客のトラブルが起きたりというような中国の消費者側の問題はおおむね解消されたのかもしれません。ツアー客は、出発前からそれを承知のうえで、免税店に立ち寄っているからです。

その結果、中国人団体ツアー客の“悲しき”実態は最悪の状況を脱したといえるのかもしれません。そのかわり、免税店からのキックバックを原資にしたツアー構造は温存されてしまったのです。そのしわよせを被るのは、日本側の関係者でしょう。

さらにいえば、同じ問題は日本だけではなく、台湾や韓国など中国の周辺国でも起きています。

中国客が増えても大歓迎といえないのは韓国、台湾でも同じらしい
http://inbound.exblog.jp/23872141/

今年は昨年よりさらに多くの中国客が日本に訪れることが予測されるため、なんらかのかたちでこの問題が明るみに出てくるのでは、という懸念があります。

今度は日本の側がこの問題にきちんと向き合い、状況改善に向けて知恵を絞るべき段階に来ていると思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-02-23 11:32 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 02月 22日

日中の物価が完全に逆転しています(訪日客急増と「爆買い」の背景)

2月上・中旬に上海を訪ねて、強く実感したのは、日中の物価が完全に逆転したことでした。こうしたことは、中国に暮らしている人たちの間では、2年くらい前から徐々に顕在化し、昨秋の急激な円安によって、もう誰もが否定できない常識となってしまっていたようです。
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もちろん、中国は広く、いくつもの国が連邦のようにそれぞれ独自の事情で存在しているというのが実態ですから、中国全土の話をしているわけではありません。ただ少なくとも北京や上海、広州などの大都市圏において、日本に近い水準の衣食住を享受しようとしたら、いまでは2倍近いコストを見積もらなければならないようです。

たとえば、上海人たちが朝の通勤タイムによく手にして歩いているスタバのカフェラテは30元≒600円(いちばん安いショートでも27元≒540円)です。これは日本の2倍近い感覚です。
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※2015年2月12日、外灘にある租界時代の絢爛豪華な建造物に収まっている中国工商銀行で日本円を両替したところ、1元=19.89円(手数料を差し引かれているため、若干レートが悪い)でした。つまり、1万円両替しても500元相当です。正直、焦りました。

上海で暮らす知り合いの日本人に話を聞くと、「こんなに高くちゃ、スタバにはもう行く気がしない」とのこと。そりゃそうでしょう。上海でインフレが進んでいることもあるでしょうが、それ以上に円安が効いています。なにしろいまから2年ほど前、1元≒13円くらいだった頃に比べると、手持ちの人民元が半分近くに減ったように感じられるからです。

なかでも中国の観光施設の入場料のたぐいは高くてびっくりです。今回、わけあって上海市内の観光施設をいくつか覗いてきたのですが、こんな感じです。日本の似た施設の料金と比べてみましょう。

上海動物園 800円(40元)    cf. 上野動物園 600円
上海水族館 3200円(160元)  cf.すみだ水族館 2050円
東宝明珠塔 3200円(160元) 
環球金融中心(通称「上海ヒルズ」)展望台 3600円(180元)
cf.東京スカイツリー 3090円(2060円(展望デッキ当日入場券)+1030円(展望回廊))
※すべて大人一般料金。
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実は、この話を上海に長く暮らす友人のカメラマンにしたところ、撮影のため訪ねた広州タワーの展望台の料金はもっとすごくて、480元(9600円)だそうです。

こういう話はいかにも中国的といえるかもしれません。旅行ができるほど生活にゆとりのある階層からはたんまり取ってもいいだろうというわけですから。それだけ、旅行になんて行きたくても行けない人がたくさんいるんだぞ、という国情の反映とみることもできなくありません。1990年代くらいまでは、外国人料金と人民(自国民)料金を分けていたこともある国(つまり、外国人=リッチ、中国国民=貧乏 と国が認めていた)だったのに、いまや人民料金ですら、周辺国に比べ相当高いというのが実態となっています。

こうした日中の物価の逆転が、中国客が大挙して日本を訪れる大きな理由になっています。彼らにしてみれば、日本は何でも安くてたまらない。この機に日本に行かない手はない。そう考えるのは無理もありません。

この状況に至り、思い出すのが、ぼくが大学の頃に起きた、いわゆる「プラザ合意」(1985年)以降の急激な円高と、それに乗じて海外に遊びに出かけるようになった自分自身も含めた当時の日本人の気分でしょう。なにしろ1980年代前半までは1ドル≒200円台後半だったレートが、85年以降、劇的に変わり、1ドル≒100円台になっていったからです。

当然のように、ぼくは手持ちのドルが、自らの努力は何もともなわないまま増えていく感覚に浮かれていたことを告白しなければなりません。アルバイトで貯めたお金を手にし、海外を数か月間ふらつくというようなことが可能になったものですから、若いだけが取り柄で分別のなかったぼくは、迷うことなくそれを実践してしまうことになります。いまから考えれば、たいした額を手にしていたわけではないのですが、それでも強い円のおかげで、世界中あちこちに飛び回ることができたわけです。

いま中国の人たちは、これに似た感覚を持っているのは間違いありません。これは日本に限らぬ話で、金融緩和は先進国が総じて着手している政策(米国が打ち止めにしたとしても)ですから、中国からみれば、世界中どこでも安く感じられるのです。

もっとも、ひとこと付け加えておくと、中国の国情からいって、すべての物価が日本より高いというわけではありません。地下鉄やバス、そして高速鉄道においても、交通機関の料金は相当(無理して)低く抑えられています。上海の地下鉄の最低区間は3元(60円)です。
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また地方出身者が働いているような食堂では、10元(200円)も出せばお粥やラーメン、ワンタンなどが食べられます。上海人の多くは朝食を自宅で取らないのか、通勤タイムにこうした食堂が繁盛しています。朝マックもあり、日本と同じようなマフィン系+ドリンクのセットメニューがありますが、最も安いのは、ソーセージマフィンと(コーヒーではなく)豆乳のセットが6元(120円)でした。コーヒーとのセットになると、10元を超えるので、日本(200円)より高くなります。ただし、世界の物価比較の指標とされるビッグマックの単品は16元(320円)で日本(370円)より少し安いようです。
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中国は日本の格差問題など話にならないほどの厳しい階層社会ですから、政策的にというだけでなく、民間ビジネスにおいても、低所得者向けの価格設定をなくすわけにはいかないものと思われます。

いずれにせよ、訪日中国客の増加は少なくとも、この夏くらいまでは続くだろうと、中国の旅行関係者も話していました。そして、「爆買い」も同様でしょう。
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by sanyo-kansatu | 2015-02-22 11:03 | “参与観察”日誌 | Comments(2)
2015年 02月 22日

浅草がすっかり外国人観光客のまちになっていた

2月上旬、書籍の企画である通訳案内士の方のインタビューのため、待ち合わせ場所の浅草を訪れたところ、すっかり外国人観光客のまちになっていたことをあらためて実感しました。

台東区周辺にお住まい、または働いておられる方たちは、そんなの知ってるよ、という話でしょうが、1月下旬に蔵前を訪ねたときのこと(バックパッカーのまち、蔵前で見つけたもの)で少し前に書いたように、ずいぶん前から台東区を中心とした隅田川沿いエリアが、東京の外国人向け観光スポットとして面白い変貌を見せているのです。
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待ち合わせの30分前に浅草に来て少し歩いたのですが、面白いと思えるポイントはふたつ。これまで1月、2月は外国人観光客の数が少ない時期と言われていました。多いのは、3~4月の桜と10~11月の紅葉のシーズンというのが相場。でも、どうやら浅草では一年中を通じて外国人が訪れるように変わってきたようです。

もうひとつは、訪日外国人の5人のうち4人を占めるアジア系の旅行者だけでなく、欧米系の人たちも多く見られること。
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欧米系の旅行者は見た目ですぐわかりますが、アジア系の特徴として、自撮り棒を手にする姿が浅草でもよく見られます。Wikipediaによると、自らを被写体として撮るための自撮り棒は1980年代に日本で発明されたもので、その後しばらく流行しなかったものの、2010年代になってアジアで利用者が急増したそうです。アジアの観光人口の爆発的増大の結果といえるかもしれません。もっとも、いまでは日本人や欧米人も使うようになったと言われていますが。
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個人的には、こういう昔ながらの制服姿の修学旅行生が記念撮影している光景のほうが好感をおぼえたりもします。

雷門の前や仲見世は外国客で込み合っていました。ツーリストインフォメーションの浅草文化観光センターはなかなかに斬新なデザインの建築です。
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浅草文化観光センター
https://www.city.taito.lg.jp/index/bunka_kanko/kankocenter/

噂に聞いていた浅草界隈のバックパッカー宿のいくつかを覗いてきました。
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これは「カオサン東京歌舞伎」です。
http://www.khaosan-tokyo.com/ja/kabuki/
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またこちらは「カオサン東京オリジナル」。
http://www.khaosan-tokyo.com/ja/original/

フロントに尋ねたら、その日はどちらも満室でした。

わずかな時間の散策でしたが、頭の中にいくつもクエスチョンがわいてきます。

浅草で外国人の人気のスポットはどこなんだろう?

人気のおみやげは何?

台東区では、いつごろからどのように外国人客向けの対応に取り組み始めたのだろうか? どんなまちづくりのビジョンがあり、課題は何なのか?

そもそも浅草には、なぜ世界各国の人たちが集まるのか?

おそらく、ここを訪れる外国人の大半は、初めて日本に来た人たちではないでしょうか。

メディアは、“爆買い”する中国客やアニメ好きの外国人を話題にしがちですが、実はそれがわかりやすいからでしょう。比較的イメージしやすい存在だからです。でも、実際には初めて日本を訪れる人たちの数のほうが多いと思われますし、だとすれば彼らの気持ちを理解することのほうが大事なのではないか。そう思える場面が増えています。

少なくとも、浅草は彼らの気持ちをつかむ何かを持っているらしい。あるいは、東京観光において「初めて」の外国人を受け入れる役割を担わされている、ということだと思うのです。

ちなみにその日、インタビューした通訳案内士の福田誠さんは、先日テレビ東京系で放映された「たけしのニッポンのミカタ!~誰も知らない!?ニッポンの新名所」(2015年2月20日放映)に出演しています。

「たけしのニッポンのミカタ!~誰も知らない!?ニッポンの新名所」
http://www.miomio.tv/watch/cc162852/

番組では、本ブログでも紹介したロボットレストランも出てきましたが、全体に個々の事例の紹介の編集の仕方がいまひとつだったように感じました。あまりに多様なFIT(個人旅行者)をひとつのわかりやすい代表例として見せようとするのは難しいですね。

今度、福田さんにあらためて外国人にとっての浅草の人気の理由を教えてもらおうと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-02-22 09:10 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 02月 20日

“爆買い”ばかりが騒がれているようですが…(ツアーバス路駐台数調査 2015年2月)

ついに2015年の春節がやってきました。今月の前半は上海出張に行っていたのですが、帰ってくると、さすがにバスがたくさん現れています。

それにしても、ここ数日のテレビ報道をみていると、中国客の“爆買い”話ばかりで、新鮮味がありません。少しは視点を変えるとか、別の角度からみるとか、報道のやり方に工夫があってもいいのでは、と思ってしまいます。

上海では、現地の旅行関係者に会い、なぜこんなに日本に大挙してやって来るのかについてヒアリングしてきました。これから少しずつ投稿していこうかと思います。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。

1日(日)未確認
2日(月)未確認
3日(火)18:20 3台
4日(水)11:20 5台
5日(木)12:20 4台
6日(金)未確認
7日(土)未確認
8日(日)未確認
9日(月)未確認
10日(火)未確認
11日(水)未確認
12日(木)未確認
13日(金)未確認
14日(土)未確認
15日(日)未確認
16日(月)18:20 2台
17日(火)16:30 2台
18日(水)未確認
19日(木)未確認
20日(金)11:50 7台
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※今日のお昼はおなじみ「林園」と「味仙荘」の前で中国客があふれていました。

21日(土)未確認
22日(日)未確認
23日(月)17:20 3台
24日(火)13:20 4台
※この日のバスのプレートをみると、三河ナンバーばかりだったので、中部国際空港から入国したツアー客ではないかと思われます。
17:20 2台

さて、この日は少し時間があったので、ひさしぶりに歌舞伎町方面を歩いてみました。案の定、たくさんの外国人観光客がいます。ドンキホーテの前にも、小さな鯉のぼりを手にした添乗員について歌舞伎町散策をしているアジア系グループがいました。
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記念撮影している人も。背後に4月24日オープン予定のホテルグレイスリーのシルエットが見えます。
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店先で別のグループが集まっています。何をしているのかな?
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あっ、こんなにいっぱい。
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おみやげ専用のスーツケースに丸ごと商品を詰め込んでいる中国系の人たちでした。ドンキのような量販店にはたいていスーツケース売り場があるので、現地調達することも多いそうです。これじゃ“爆買い”と言われても仕方がないですね。これではメディアが騒ぐのも無理もなさそうです。それにしても、こういう状況が続くと、さすがの中国政府の関係者も苦々しく思っていることでしょうね。なぜ自国で買わないで、日本で買うのか! と。

25日(水)13:00 3台、16:10 1台

26日(木)13:20 2台
27日(金)未確認
28日(土)未確認
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by sanyo-kansatu | 2015-02-20 13:50 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2015年 02月 06日

バックパッカーのまち、蔵前で見つけたおしゃれな外国人宿

先週の某日の午前中、ある会社を取材するために、台東区の蔵前を訪ねました。
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11時過ぎに取材を終えて、隅田川に並行して走る江戸通りの都営浅草線蔵前駅前あたりに立ったとき、まだお昼には少し早く、「孤独のグルメ」の井之頭五郎さんのような気分になって、このまちを歩いてみたくなりました。理由は、1年前にNui. Hostel & Barという外国人ツーリスト向けの安宿を訪ねたことがあり、この界隈がバックパッカーのまちだという噂を知っていたからです。

とはいえ、その時点ではNui以外になんの情報もなく、どちらに向かって歩いていけばいいのやら……と立ちつくしていると、目の前にしゃれたステーショナリーショップのような店があります。
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そこは「KONCENT」というデザイン雑貨のセレクトショップでした。

詳しくは同ショップのサイトを見ていただければわかりますが、アッシュコンセプトというデザイン会社が制作したアイテムをメインに国内外のデザイン雑貨を販売しています。仕事先に書類を送る際、ちょこっとしたメッセージを書き込んでしのばせておくようなメモ書きがほしかったので探してみましたが、地に真っ赤なバラがあしらってあったり、五線譜が印刷されていてステキな感じなのに細長すぎて使いにくかったりと、少々斬新すぎて実用には不向きというものが多く、残念ながら購入に至りませんでした。でも、また来たくなる店でした。

KONCENT REAL SHOP
http://www.koncent.jp/

レジの下にこの界隈のエリアマップが貼られていました。飲食店やショップが地図に落ちています。これはいい。「これ、もらえませんか」とショップの女の子に尋ねると、「すいません。この地図はすべてなくなっちゃったんです」とのこと。「だったら、写真撮ってもいい?」と聞くと、「ええ、どうぞ」と言われたので、撮りました。実際は浅草方面も含むもっと広域の地図なのですが、さすがに今日は時間もないし、そこまで歩くつもりはないので、近場に絞って撮ったのがこれです。
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白地に赤の数字が飲食店で、赤字に白抜きの数字がショップなのですが、ずいぶんいろいろあることがわかります。

さて、どこから訪ねてみようか。地図をみると、「バックパッカーズホテル ケイズハウス東京」とあります。ここはやっぱりバックパッカーのまちなんですね。覗きに行ってみよう。散策開始です。

ゲストハウスの手前に蔵前神社がありました。ビルの谷間にぽっかりと存在している涼しげな空間。現代の日本らしくて、外国人にとっても面白いのではないでしょうか。
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これがケイズハウス東京。ホテルの前には欧米系の女の子ふたり組のバックパッカーがいました。なるほどね。
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外からじろじろ見ているだけだとかえって怪しいので、思い切ってホテルの中に入ってみました。小さなフロントとロビーがあって、若い外国人ツーリストのみなさんがいっぱいいます。

ホテルの女性スタッフが顔を出したので、「あのぉ、こちらのゲストハウスはいつごろオープンされたのですか」とぶしつけに尋ねると、「2006年です」と言って、ホテルのブローシュアを手渡してくれました。それをみると、都内にもう1か所と京都や富士山、高山、広島など全国9か所に系列ホテルがあるようでした。料金はドミトリーで2500円前後から。

「どこの国からの旅行者が多いんですか」。この際、ずうずうしく聞いてしまいました。「時期によっても違うんですが、いまは韓国とオーストラリアが多いですね」。確かに、ロビーには欧米系とアジア系の旅行者がぞろぞろ同居していましたが、大半はその両国のみなさんのようです。「ぼく日本人で、泊まるつもりもないのに、すいませんね」と、いまさらながら言い訳すると、「たまによくそういう方来られるんですよね。大丈夫ですよ」と笑って返してくれました。

バックパッカーズホステル ケイズハウス東京
http://www.kshouse.jp/tokyo-j

さて、この界隈を歩いていると、どうしても目に留まってしまうのが、ベーゴマや凧、けん玉などの懐かしのおもちゃを並べた古いお店です。こういうのが何軒もあります。
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ネットで調べたところ、この界隈は昭和30年代頃から玩具問屋を中心に発展したまちで、「東京下町問屋街」と呼ばれているそうです。以前は玩具や文具、花火などのお店が中心でしたが、いまはビーズや装飾品、手芸など雑貨系のお店も加わり、その筋では知られているとか。
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以前、都内の地下鉄に日本に旅行に来ていた欧米人の家族が乗り込んできて、小学校の高学年くらいの男の子の背中におもちゃの日本刀が指されていました。「これは絶対忍者になりきってるな…」と思いましたが、彼にこのまちのことを教えてあげたくなります。浅草寺の仲町で売られているみやげの一部は、ここから仕入れられているに違いありません。
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こういう昨年流行った型落ち的なグッズを見かけるのも、いかにもな感じです。

昭和の子どもたちを夢中にさせた野球盤のゲームで有名なエポック社もありました。
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東京下町問屋街
http://www.tonya-gai.com

実は、この界隈には近年、若手のクリエイターが集まり、彼らの工房兼ギャラリーショップも増えていて、「カチクラ」(御徒町と蔵前の頭から採った造語)と呼ばれるものづくりのまちとしても注目されているそうです。冒頭の「KONCENT」も、このまちを代表するスポットのひとつです。

「KONCENT」の入居しているビルも、元玩具問屋だったとか。江戸時代からものづくりのまちとして知られた台東区らしい変身ぶりが面白いですね。

歴史という意味では、1984(昭和59)年9月場所千秋楽を最後に閉館された蔵前国技館があったのもこのまちです。蔵前国技館は1954(昭和29)年9月以降、昭和の相撲黄金期の舞台でした。跡地は現在、東京都下水道局の処理場と「蔵前水の館」になっています。

さて、江戸通りをはさんで元国技館のあった隅田川沿いに足を運ぶと、一軒の老舗風食堂をみつけました。「ぶためし」と貼り紙があります。やっぱり下町のお昼はこの手の店だろうと思って入ってみると、ラーメン屋さんでした。ちょっと意外。
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中はそこそこ混んでいました。券売機の前にふたりの女の子がいて、メニュー選びに思案している様子です。そのあとに並ぼうとすると、ひとりの子が「ワタシ、漢字読めないんです」と日本語で言って、ぼくに先を譲ろうとします。ん? 彼女、どうやら外国人のようですが、「漢字が読めない」ってことは? 「まあまあそう言わず、あなたたちが先なんだから」とかなんとか、そんなやり取りがあって、たまたま空いていたのが、彼女たちの隣の席だったので、「どこの国から来たの?」。そう日本語で聞くと「韓国です」。やっぱり、そうなんだ。

彼女たちは韓国の光州から来たそうです。1週間ほど、東京を旅行するとか。「お泊りは?」と聞くと、これからぼくが訪ねようと思っていたNui. Hostel だそう。「このホテルは韓国でとても有名です。値段が安いのに、とてもきれいでおしゃれだから」「へえ、そうなんだ」「ドミトリーにいるの?」「へへへ、そうです」。

この店の人気メニューがラーメンとぶためしのセットでした。かなりのボリュームです。背脂系っていうんですか、すごいこってりスープです。あとでネットで調べたら、人気店のようでした。
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元楽
http://www.genraku.com

彼女たちも同じメニューをチョイスしていたので、「これ女の子には量が多いね。食べられる?」と聞くと、「もちろんですよ」。こういう返しはいかにも韓国の人らしいですね。なんだか面白くなったので、「写真撮ってもいい?」と聞くと、「もちろんですよ」でカシャ。左の彼女はポーズを決めてくれました。
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食事を終え、ふたりと別れると、Nui. Hostel を覗きに行きました。客室の窓に布団を干してる光景は安宿らしくていいですね。

冒頭の写真は1階のラウンジで撮った欧米のカップルですが、先ほどの彼女たちが言うように、宿泊客には韓国人が多そうです。
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Nui. Hostelについては、ネットにいろいろ書かれているのでそれに譲るとして、このスペースではライブもやってるそうです。
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Nui. Hostel & Bar
http://backpackersjapan.co.jp/nui/

コーヒーを頼んでしばらくのんびりしていると、ベビーカーを押したママさんふたりがお茶を飲みに来ました。なるほど、ここは外国人ツーリストだけでなく、ご近所の住人も遊びに来るんですね。青山とか六本木でもないのに外国人がいっぱいたむろしている独特の空間……。なんとなく気持ちはわかります。

蔵前はすっかりバックパッカーのまちになっていました。でも、玩具問屋や人気ラーメン店、おしゃれな雑貨屋などもあり、個性的なまちです。今度時間がもっとあるとき、じっくり歩いてみようと思います。

最後に極私的に気に入った店を紹介します。ちょっと話の流れからはズレるようですが、江戸通りに面して古色蒼然たるたたずまいを見せていた古本屋です。
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「浅草 御蔵前書房」。「大江戸、大東京関係、相撲文献」の専門店だそうです。
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そこで一冊の古本を見つけてしまいました。少々値のはる買い物だったのですが、「大東京の魅力 名所名物案内」。1935(昭和10)年刊行の東京のガイドブックです。
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実はこの本、いまから80年前に書かれたものですが、訪日外国人を意識した内容になっています。のちに戦争で中止となってしまうまぼろしの東京オリンピックを控え、これから日本の首都、東京をPRするぞ、という案内書です。ちょうどいまの東京と似た気分があふれていて、興味深いです。内容については、後日また。
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by sanyo-kansatu | 2015-02-06 05:14 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 02月 05日

アセアン第二陣、フィリピンとベトナムの訪日旅行市場でいま起きていること

2014年の訪日外国人旅行者数1300万人突破で弾みのつく日本のインバウンド業界。

年末から年初にかけて関係者に話を聞いていると、中国、台湾、香港など訪日客の半分近くを占める中華圏市場への過度の偏りではなく、アセアンやオセアニア、欧米を含めた市場の分散化を期待する声が強いようだ。

なかでもここ数年、観光ビザの緩和で訪日客の増えているアセアン市場への関心は高い。

規模でいえば訪日客全体の1割強と、中華圏に比べればまだ小さいものの、タイを筆頭にマレーシア、シンガポールなど、すでにノービザ化が実現している国々も含め、基本的に「親日的」とされるアセアン市場に対する関係者の期待が大きいためだ。

2015年はアセアン統合の年。さらなる地域の経済発展が予測されるなか、昨年訪日数で中国に次いで高い伸びを見せたのがフィリピン(70.0%増)とベトナム(47.2%増)だ。アセアン第二陣ともいうべき両国の市場動向は他の国々と比べてどうなのか。新しい動きを中心に報告したい。

フィリピン客の特徴は英語を話し、ファミリー旅行が多い

1月20日に発表された日本政府観光局(JNTO)のリリースによると、2014年に中国に次ぐ高い伸びを示したフィリピンの訪日客数は、前年度比70.0%増の18万4200人。フィリピン市場の特徴をJNTOは以下のように解説している。

「フィリピンの訪日旅行者数は184,200 人で、10 年ぶりに過去最高を記録するとともに、前年比70.0%増と東南アジア市場で最も高い伸率を示した(これまでの過去最高は2004年154,588 人)。月別では4 月から6 月、9 月から12 月で、各月の過去最高を記録した。査証緩和に加え、円安の進行、羽田空港の国際線発着枠の拡大に伴う増便や新規就航など、航空座席供給量が大幅に増加したことや、旅行会社などとの継続的な共同広告の実施、旅行博でのプロモーションが、観光需要を大きく後押しし、2014 年の伸びに寄与した。なお、9 月30 日より、フィリピン国民に対する数次ビザの大幅緩和が実施された」。

ポイントは「東南アジア市場で最も高い伸率」と「10 年ぶりに過去最高を記録」したことだろう。フィリピン市場を考えるうえで在日フィリピン人の存在は大きい。2013年で約21万人と中国、韓国に次いで多く、親族訪問に限らず、日本とフィリピンの人的往来は以前から盛んだったからだ。

フィリピンから日本に乗り入れている航空会社も多彩で、日本航空や全日空、フィリピン航空だけでなく、LCCのセブパシフィック航空やジェットスター航空、ジェットスター・アジア航空がある。さらには大韓航空やキャセイパシフィック航空などの経由便も利用されてきた。

アセアン各国の訪日旅行を扱う株式会社ティ・エ・エスの下川美奈子さんは「(14年に訪日客が大幅に伸びた理由は)ビザが取りやすくなったことが大きい。数年前までフィリピンでは韓国旅行がブームだったが、それがひと段落して、いまは日本旅行がブームになってきた」と語る。

では、フィリピンの訪日旅行の実態はどのようなものなのか。

下川さんによると「団体ツアーはほぼ東京・大阪のゴールデンルートのみ。ただし、フィリピンの場合、全体でみると団体とFIT(個人客)は半々で、アセアンの中ではFITの存在感が大きい市場のひとつといえる。もともとフィリピンには中小の旅行会社が多く、不特定多数の人たちが参加する募集型ツアーよりも家族単位のグループが多く、個人手配の旅行に近い」という。

フィリピン客の特徴は英語を話すことだ。そのため、「欧米客と同じJTBのサンライズツアーやグレーラインのバスツアーに参加することも多い。国内移動も自分たちで新幹線に乗る」。

物怖じすることなく欧米客と一緒にバスツアーに出かけるのが、フィリピン人旅行者なのだ。その意味で彼らは英語圏の旅行者に近いといえそうだ。

訪日ベトナム人が増えた3つの理由

一方、フィリピンに次いで伸び率の高かったベトナムの訪日客数は14年に初めて10万人を突破し、前年度比47.2%増の12万4300人となった。

訪日ベトナム客が増えた理由について、JNTOは以下のように分析している。

「ベトナムの訪日旅行者数は124,300 人で、3 年連続で過去最高を記録し、初めて10 万人を突破した。月別では、2012 年1 月以降、36 カ月連続で各月の過去最高を更新し続けている。査証緩和に加え、円安の進行に伴う訪日旅行の価格低下、羽田便の増便をはじめとした座席供給量の増加、従来よりも手頃な価格での航空券の販売、共同広告、有名人歌手を起用したミュージックビデオの制作およびイベント実施、ベトナム語よる情報発信強化などのプロモーションが、増加要因として挙げられる。また、観光客だけでなく、留学生、技能実習生なども増加傾向にある。なお、9 月30 日より、ベトナム国民に対する数次ビザの大幅緩和が実施された」。

このうち、「査証緩和」や「円安の進行」など各国に共通する事項を除くと、ポイントは「羽田便の増便をはじめとした座席供給量の増加」「有名人歌手を起用したミュージックビデオの制作およびイベント実施」「ベトナム語よる情報発信強化」「留学生、技能実習生なども増加傾向」などか。

それぞれ具体的にみていこう。

まず航空座席供給量については、14年7月の羽田空港の国際線枠の拡大に伴い、ベトナム航空のハノイ・羽田線、ベトナム中部都市ダナンから初の成田線などが新規に就航。確実に拡充している。

この年末年始、関西空港にベトナムのLCC・ベトジェット航空のチャーター便が初就航したニュースも、この市場を知るうえでなかなか興味深い。

同エアラインは、定期便が就航する最初の便で機内に水着やドレス姿のキャンペーンガールを同乗させ、ダンスを披露するなど、およそお堅い社会主義国とは思えないサービスが話題となっているからだ。
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ベトジェット航空の機内で行われる就航記念イベント

ベトジェット航空の佐藤加奈さんによると、「2011年12月に運航を開始したベトナム第2のエアラインで、初めてのLCC。現在、国内16路線、国際線もタイやシンガポール、カンボジア、台湾、韓国などに運航している」。躍進著しい民営の新興エアラインなのである。
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ベトジェット航空
http://www.airinter.asia/

日本への定期便の運航は、15年1月現在未定だが、チャーター便を運航する計画がある。「今後、ベトナムからの訪日客は必ず増えると思う。ベトナム人は親日的で、何より平均年齢が27歳と若い国」と佐藤さんは期待をこめる。

大阪を旅する「ベトナム人気歌手」のPV撮影が話題に!

ベトナムの若さという意味では、「有名人歌手を起用したミュージックビデオの制作およびイベント実施」も気になるところだ。

これは昨年9月、ベトナムの人気歌手ヌーフックティン(Noo Phước Thịnh)さんの新曲のプロモーションビデオの撮影が大阪で行われたことを指している。

ヌーフックティンさんの新曲『be together forever』PV(動画)
http://www.tiin.vn/chuyen-muc/nhac/noo-phuoc-thinh-tung-mv-quay-o-nhat-ban-thach-thuc-son-tung-m-tp.html

ストーリーは、関西空港に降り立ったヌーフックティンさんが偶然知り合った日本の女の子に大阪をデート感覚で案内してもらうという設定。ロケ地としては、梅田スカイビルや大阪城、道頓堀、通天閣などが登場する。撮影には、ビジット・ジャパン事業の一環として日本政府観光局や地元大阪観光局が協力した。

PV制作を担当した大阪のイベント運営会社の担当者によると「ベトナムの人気歌手の新曲のPV撮影のロケ地に大阪を選んだことは、訪日促進プロモーションにつながっていると思う。昨年10月26日にホーチミンで開催された日越交流イベント『ジャパンデー2014』の会場でもこのPVは流された」という。

日本情報があふれるタイなどに比べるとまだこれからとはいうものの、ベトナムでは現地向けのベトナム語のフリーペーパーの発行が数年前からすでに始まっている。「きらら」は隔月刊の若いベトナム女性向けのライフスタイルマガジンで、ホーチミンを中心に5万部を発行。訪日旅行を喚起するさまざまなコンテンツを発信している。

「きらら」ウエブサイト
http://www.kilala.vn/cam-nang-nhat-ban.html

平均年齢27歳というこの国が今後、どんな消費シーンを見せていくのか、楽しみだ。

反中が「空前の日本語ブーム」に向かわせた?

「留学生、技能実習生なども増加傾向」というのも、ベトナム市場のもうひとつの実態といえる。どういうことか。

朝日新聞2014年9月5日によると、「南シナ海のベトナム沖から中国が石油掘削施設を撤収して1ヵ月半がたつが、ベトナム国内の「反中国」ムードが収まらない」「国営テレビは中国の連続ドラマの放送を打ち切り、観光業者による中国へのツアーの多くも中止されたままだ」(「ベトナム冷めない「反中」 政治的な対立は沈静化」)という。

ベトナムでは、南シナ海における中国との確執を契機に、これまでの依存し過ぎた対中関係のバランスを改めようとする動きがあるというのだ。それがベトナム人の関心を日本に向わせる背景となっているというのが、次の記事だ。

「ベトナムで空前の日本語ブームが起きている。昨年度の日本への語学留学生は前年度の4倍で、日本語試験の受験者も東南アジアで断トツだ。

ブームの背景にあるのは、国際環境の変化だ。日中関係の悪化で中国からベトナムへ拠点を移す日系企業が増え、商工会の加盟数は1299社(14年4月)と、5年で約1.5倍も増えた。いまや学生にとって日本語習得が「就職への近道」になっているのだ」(「ベトナム、日本語熱沸騰」朝日新聞2014年9月9日)。

ベトナムからの留学生も増えている。同記事では、「日本語教育振興協会(東京都渋谷区)によると、02年度に日本国内の日本語教育機関で学ぶベトナム人は198人で全体の0.5%。ところが13年度には前年度比4倍超の8436人になり、2386人の韓国を抜いて2位」という。

ベトナム国家観光局の統計をみると、13年のベトナム人の主な渡航先とおおよその数は、国境を接する中国100万人、カンボジア100万人、同じアセアン域内でビザが不要なタイ50万人、シンガポール30万人、マレーシア20万人、それ以外では韓国11万人だという。このうち、中国への渡航はビジネス目的が多いと考えられる。

昨年12万人を超えたベトナム訪日市場。この国の海外旅行の時代はまだ始まったばかりだが、今後の伸びしろは大きいといえるだろう。

神戸で神戸牛が重要! 訪日ベトナムツアーの9割はゴールデンルート

では、ベトナムの訪日旅行市場の現状はどのようなものなのか。HISホーチミン支店の井口唯さんに話を聞いた。以下、その一問一答。

――ベトナム人の一般的な日本ツアーのコースや日程、料金は。

「ツアーコースは9割以上が大阪→京都→名古屋→富士・箱根→東京、またはその逆をたどるゴールデンルート。

一般的な日本滞在中の日程は以下のとおり。
1日目 朝大阪着 神戸・大阪観光 大阪泊
2日目 京都観光 観光後名古屋へ 愛知県泊
3日目 富士・箱根観光 河口湖の温泉ホテル泊
4日目 東京観光 東京泊
5日目 早朝便で帰国または東京観光後、午後帰国
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ベトナムの日本ツアーのパンフレット(ゴールデンルート)

ゴールデンルートの料金は2,000ドル程度。この金額には全日程の宿泊や観光、食事、ホテル、査証、バス、保険などすべてが含まれる」。

――他のアジア諸国の訪日ツアーと比べてベトナムならではの特徴はあるか。

「いまのところベトナムの訪日ツアーの内容には他国と比べて特徴は少なく、どこの旅行会社も同じようなツアーを出し、同じような価格設定というのが現状。社会主義の国であるため、まだ規制が多く、自由な価格競争も難しい。たとえば、弊社がすべて5つ星ホテルに泊まるデラックスツアーや、札幌雪祭りやハウステンボスへ行くツアーなどのスペシャル企画を打ち出しても、なかなか売れないのが現状だ。

ちょっと面白いのは、ゴールデンルートでは必ず神戸に立ち寄ること。その目的は、瀬戸大橋を見て神戸牛を食べること。実際には神戸牛は大阪でも食べられるし、わざわざ往復2時間かけて神戸に行くより、大阪でじっくり時間をかけて観光したほうがいいと思うので、弊社では、たとえば大阪のインスタントラーメン発明記念館などを組み込んだツアーを企画してみるのだが、ツアーコースに神戸が入っていないと選んでくれない。宿泊についても、東京や大阪にこだわり、八王子や立川ならいいけど、横浜はダメだという。このようにベトナム人は先入観が強いというか、ちょっと頑固でミーハーなところがある」。

ベトナム客は神戸で神戸牛を食べないと気がすまない!?

「神戸牛を食べるなら神戸でなければならない」というような思い込みは、海外旅行が始まって間もない国の人たちに共通している傾向かもしれない。何度も日本に来られるわけではないから、来たからには当初の目的を貫徹したいという思いが強いと考えられる。情報豊富なリピーターの多い国から来た旅行者とは感覚が違うのは当然だろう。
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――ベトナム人は日本のどんなことに関心があるのか。それがツアー内容にどう反映されるのか。ベトナム人らしい立ち寄り先はあるか。どんなお土産が人気か。

「日本の伝統的なものより、まずは有名なことに関心があるように思う。たとえば、固有名詞でいうと、六本木、歌舞伎町、銀座、道頓堀、富士山、雪、寿司など。

一般にブランドものより100円均一やドンキホーテ、ヨドバシカメラなどの量販店での買い物を好むようだ。そのため、東京や大阪などで必ずショッピングフリータイムを2、3時間設けている。

ベトナム人らしい立ち寄り先というのは、神戸を除くといまは特にない。お土産はお菓子や食品などを買う傾向が強い。スーツケースや電化製品などを買う方もいるが、他の東南アジアのお客様より少ないように思う」。

――ベトナム人には日本食は問題ないか。またホテルやそれ以外で何かお困りのことは。

「日本食はほとんど問題ない。焼肉やしゃぶしゃぶ、寿司、和定食など、日本食としてよく知られているわかりやい料理が好まれる。ひとつ注意しなければならないのは、ベトナムではいま中国との関係が良くないため、中国客が多いレストランにお連れするとクレームを受けることがある。

ホテルでも特に困ったことはない。ただし、ベトナムではどんなに小さいカフェでも、家庭でもWiFiが当たり前のように普及しているため、WiFiがないホテルに泊まると驚かれてしまう。こういう点に関しては、あらかじめ日本の遅れているところとしてご理解いただくようご説明している」。

ベトナム客に留意するポイントはこれだ!

このようにベトナムの訪日旅行市場は、海外旅行の黎明期を迎えた国に共通して見られる微笑ましい特徴に加え、留意しなければならないいくつかのポイントがあるようだ。

昨年6月、アセアン・インドトラベルマート2014の商談会場で会ったハノイツーリストのLuu Duc Ke社長によると「これまでベトナム人の海外旅行先として人気の高かったタイで近年クーデターが起き、中国との関係も悪化したことから、両国を避ける動きが強まっている」という。

「現在、ベトナム人にビザが免除されているのはアセアン10カ国のみ。だから、もし日本でビザが緩和されたら、間違いなくベトナム人は日本へ行きたいと思うはず。日本の魅力は桜や紅葉に代表される自然の美しさ、近代的でありながらとても清潔な国であること。日本料理も食べたいし、買い物もしたい。ベトナムの経済水準はまだ低いので、リピーターが現れるようになるには時間がかかるが、少しずつ日本に行きやすい環境が整い始めている」と同社長は語る。

同じ会場にいた別のベトナム人関係者はこんな話を聞かせてくれた。「いまベトナムでは中国に対する反感が高まっていて、国内にあふれる中国製品を排斥する動きも強まっている。でも、ベトナムは親日、いや尊日の国だ」。

彼によると、訪日したベトナム客が家電量販店で電気製品を購入しようとしたとき、あまりのメイド・イン・チャイナの氾濫ぶりに唖然とするという。せっかく日本に来たのだから、メイド・イン・ジャパンを買いたいのに残念だと思うようだ。こうしたことから、これは家電量販店に限った話ではないが、ベトナム客の来店がわかったら、商品の薦め方に工夫が必要だ。レストランやホテルの客室の振り分けも、中国客とベトナム客がいたらフロアを別にするなど、細かい配慮も求められる。

気になるのは、日本側の受入態勢の問題だ。Luu Duc Ke社長は「ベトナムの旅行シーズンは4月、6月(夏休み)、10月。だがこの時期、日本ではバスやホテルの客室が取りにくい」と語っている。

この点について、株式会社ティ・エ・エスの友瀬貴也代表取締役は「華人ビジネスの影響を受けやすいタイのように、ツアー代金が急速に値下がりすることはあまり考えられないため、ベトナムは日本にとってはありがたい市場だ。しかし、9割のツアーがゴールデンルートというだけに、昨年すでにバスやホテル不足から予約を受けられない事態も発生している。これは対ベトナム市場に限ったことではないが、日本の受入態勢の問題をどう克服していくかが、今年ますます問われるだろう」と指摘する。

始まったばかりのアセアン第二陣。今回の内容はあくまで入門編に過ぎない。さらなる誘客を進めるためにも、それぞれの市場についてもっと理解を深めなければならない。

※やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_09.html
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by sanyo-kansatu | 2015-02-05 17:00 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)