ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 05月 31日

訪日外国客向けの都市観光にピッタリの楽師によるクルーズライブ

昨日の午後、チェロと声楽家による神田川のクルーズライブ演奏会に行ってきました。

神田川? クルーズ? ライブ? 東京湾クルーズなら聞いたことがあるかもしれませんが、いったいどのようなイベントなのか?

友人の鳥越けい子青山学院大学教授と都市楽師プロジェクトを主催する鷲野宏氏が2009年から実施しているイベントです。都市空間を舞台に楽師たちがライブ演奏を行うというものですが、いわゆる路上ライブではなくて、もっとディープな場所が選ばれるのが特徴です。なにしろ神田川でやるというのですから。えっ、神田川ってどこよ? そう思う人も多いに違いありません。

今回初めて体験したのですが、よくもまあこんな酔狂なことを始めたものだと思いつつボートに乗り込んだところ、約1時間のクルーズライブは想像していた以上に面白かったので、ぜひ紹介したいと思います。
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都市楽師プロジェクト
http://toshigakushi.com

イベントのタイトルは「名橋たちの音を聴く 2015年5月30日 神田川をゆく船上」。神田川下流にかかる和泉橋防災船着場(最寄はJR秋葉原駅)からボートを出して上流に向かって航行し、7つの橋をくぐり抜けながら、都市楽師のふたりの演奏と歌声を聴くというものです。

7つの橋というのは以下のとおりです(パンフレットの解説による)

和泉橋(1916(大正5)年、1927年拡張)
JR東北本線神田川橋梁(1925(大正14)年)
万世橋(1930(昭和5)年)
昌平橋(1923(大正12)年)
総武線神田川橋梁(1932(昭和7)年)
丸ノ内線神田川橋梁
聖橋(1927(昭和2)年)

すべてが大正から昭和初期にかけて架けられたものです。神田川とそれに架かる橋や堤は、古くは江戸開城から明治、大正、昭和と近代に到る歴史遺産なのです。しかし、今日川自体はJR御茶ノ水駅のホーム下に見えることくらいは知られていても、ほとんどその存在は忘れられていることでしょう。

そんな忘却された河川にゲリラ的にボートを浮かべて演奏会をやるというのが、このイベントの真骨頂ですが、もちろん無許可で行われているわけではありません。

実は、和泉橋防災船着場は、阪神大震災時に陸上交通が麻痺した経験から、水路を利用した交通インフラが見直されて開設されたもので、本来は被災時のみ利用されることになっています。その臨時船着場に発着するミニクルーズが実現したのは、東京五輪を控え、新たな都市観光を企画したいと考えている千代田区観光協会の協力によるそうです。

能書きはここまでにして、クルーズライブの様子を紹介しましょう。
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ボートは乗客30人乗りで、進行方向右手に声楽家の辻康介さんとチェロ演奏家の山本徹さんのためのささやかなステージが用意されています。

ボートは和泉橋防災船着場を離れ、いったん和泉橋の下に潜り込みます。ここで辻さんが『集まったのは橋の下』(鳥越けい子・辻康介作詞/辻康介作曲)を歌います。

歌が終わると、ボートは橋を抜け、神田川の上流に向かってゆっくり走り出します。ここで鳥越けい子教授と鷲野宏氏によるあいさつがあります。
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しばらくすると、巨大なコンクリートの洞窟のようなJR東北本線神田川橋梁(手前に最近開通した新幹線橋梁並行して架かっています)が見えてきます。満潮時に近いせいか、水位がずいぶん上がっています。この橋の下で山本さんが演奏するのは『トッカータ』(ジョバンニ・ヴィターリ)です。
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以下、この調子で橋の下にやって来るごとに、さまざまな演目のチェロ独奏や声楽を聴きます。面白いことに、橋の下はドーム状になっているため、まるでコンサートホールのようでもあるのです。
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次は万世橋です。演奏家の背後に秋葉原の電気街が見えます。楽曲は『113の練習曲集より第42番』(フリードリヒ・ドッツァウアー)と『無伴奏チェロ組曲より 2.サルダーナ』(ガスパール・カサド))。
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次の昌平橋に向かう進行方向左手に、元鉄道博物館(もともとは万世橋駅跡であり、のちに高架橋として使われた)のアーチ型のレンガ造りの建造物が見られます(写真は進行方向とは逆向きなので右手に見える)。現在はカフェやレストラン街になっています。
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昌平橋は大正後期に造られた堅牢な橋で、細かな装飾もあしらわれた都市建築ですが、その上空に鉄筋の総武線神田川橋梁が見えます。 
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こういう橋を下から仰ぎ見るような見方ができるのは、川の上にボートを浮かべているからこそです。ちょうど総武線が走って来て、鉄橋を渡る騒音が頭上から降りそそぐかのようです。ふだんはあり得ない場所に潜り込むことで、近代都市の激烈なノイズに視覚と聴覚もろともさらされてしまいます。そこに山本さんによる現代音楽的なチェロの不安な音色(『無伴奏チェロソナタより 1. ディアローゴ』(リゲティ・ジョルジュ))が加わると、ちょっとゾクゾクしてくるのを抑えられません。
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※この楽曲を書いたリゲティ・ジョルジュはハンガリー人で、スタンリー・キューブリック監督作『2001年宇宙の旅』『シャイニング』などに作品が使用されたこともあるようです。
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昌平橋をくぐり抜けると、総武線ガード下の飲み屋の看板などが見えてきます。
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総武線神田川橋梁ははるか高い頭上にあります。
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今回最も強烈だったのが、丸ノ内線神田川橋梁です。この至近距離の上を丸ノ内線が走り抜けていくのですから。耳がおかしくなりそうでした。
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少し離れると、こんな風に見えます。メガホンを持っているのが鷲野氏です。彼はそれぞれの橋の歴史的なゆかりを解説しています。
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そして、ついに最後の聖橋です。美しい巨大なアーチ型の橋梁です。この下で歌われるのは『ゴリアルドのアヴェマリア』(作曲者不詳(カルミナ・ブラーナ))。
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ここが折り返し地点です。先ほどくぐり抜けてきた橋を再びくぐり、和泉橋防災船着場に戻るのですが、歌と演奏は続きます。メガホンを持っているのが鳥越先生です。ここで先生は数分間、乗客に目を閉じてあらためて都市の音を聴くようにと話します。
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昌平橋・万世橋高架橋 『無伴奏チェロ組曲第1番より 第1の歌』(ベンジャミン・ブリテン)

万世橋高架橋・万世橋 『無伴奏チェロ組曲より 3.間奏曲とダンツァ・フィナーレ』(ガスパール・カサド)
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JR東北本線神田川橋梁・和泉橋 『きれいなねんちゃんよ』(ヴィンツェンツォ・カレスターニ)

さて、自分で撮った写真とプログラムを見比べながら、クルーズライブの流れを簡単に振り返ってみたわけですが、人によってはこういう趣向はクラシック音楽のたしなみ方として大いに不満、あるいは不愉快に感じる向きもあるかもしれません。

それは否定しませんが、このメタリックな動力騒音が飛び交う環境の中で耳に届くチェロや人の歌声というのは、なんと愛すべきものだろうとぼくは思ったものです。人間にとって抑圧的ともいえる都市空間に身を置く現代人としての境遇をあらためて思い知るというような経験でした。楽曲と歌声が送り届けられることで、まるで自分が映画のワンシーンにでもいるかのような軽い錯覚をおぼえたのも本当です。

好き嫌いはともかく、こういう趣向は、ぼくの個人的な関心に照していうと、訪日外国客向けの都市観光の素材としてピッタリではないか、と思います。

一般に日本では都市観光というと、ショッピングやグルメなどを中心に語られることが多いのですが、本来都市観光の2大主要テーマは「文化」と「歴史」です。ヨーロッパの旅行博覧会を視察すればわかりますが、メインとなるのが文化観光です。その担い手はそれぞれ固有の歴史を持った都市です。ヨーロッパの場合、それぞれの都市の人口規模はそれほど大きくなくても、自らの歴史の固有性を住民が理解しているからこそ、文化観光が成立するのです。これが可能となるのはインバウンドの歴史が長いゆえで、今後は日本もだんだんそうなっていくと思います。

その意味で、東京の景観は世界の主要な都市同様、醜美両面を持っていると思いますが、どうしようもなく固有の近代の歴史があります。そこには情けなく悲しい面もありますが、多くの日本人はそれを受け入れて暮らしているわけで、無理してかっこつけても始まらないし、またネガティブにのみ捉えても自意識過剰というものでしょう。日本が敗戦国の歴史を有する国家であることは、世界中誰もが知っています。外国のツーリストには、いまの姿を隠さず見てもらえばいい。そこにひとつの触媒としての楽師による演奏を加えることで、人は東京という都市について多くのことを感じるのではないでしょうか。そこに音楽の力があると思う。

都市楽師によるライブは、もっと手法を大胆に洗練させていけば、都市観光の2大テーマである「文化」と「歴史」をうまく融合していける可能性があるように思えます。こういうのが、本来の都市観光であり、文化観光ではないでしょうか。

クール・ジャパンもいいけれど、東京こそ、もっと大人向けの文化観光を創出していかなければならないと常々思います。だからといって、それがコンサートホールや劇場、博物館優先の発想になってしまうと、申し訳ないけど、いまの北京みたいで、ぼくは嫌なんです。

珍しく外国人観光客の減っている中国の観光PRのお寒い中身
http://inbound.exblog.jp/24475269/

このイベントの意味を考えるうえで、渋谷のスクランブル交差点が外国人ツーリストの間で人気となっていることは参考になるかもしれません。

イースター休みに渋谷スクランブル交差点に出没した外国人を逆観察
http://inbound.exblog.jp/24348359/

都市楽師をもっと街へ。このプロジェクトを通じて東京の街角や意想外の場所でライブ活動が次々と行われるようなことが起こると面白いと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-31 19:29 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 30日

サラリーマンからツーリストへ(新宿区役所前カプセルホテルの客層が変わった理由)

新宿区役所前カプセルホテルに泊まった翌日、同ホテル経営企画室室長の小川周二さんとフロントの川本レダさんにお話をうかがいました。

外国客に人気と噂の新宿区役所前カプセルホテルに泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24526002/

以下、そのやり取りです(敬称略)。

―昨日は、実際に泊まってみていろんな発見がありましたが、本当に外国客は多いですね。いつ頃からこんなに多く利用するようになったのですか。

小川「やはり増えたのは2年前でしょうね」
川本「でも、外国の方がいらしたのはもっと前からです」

―いつ頃ですか。

川本「震災の前からです。震災後は3か月ほど来ませんでしたが、すぐに回復しました」

―いまは毎日100人近い外国客が泊まっているようですね。

小川「そうですね。曜日にもよります。平日のほうが外国客の比率は高いと思います」

―どこの国の人が多いかなど、国籍に傾向はありますか。

小川「外国客はアジアと欧米半々です。アジアはタイがいちばん多く、マレーシア、シンガポール、最近はインドネシアの方が増えています。欧米は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンなどいろいろです」

―実は、共同スペースでマレーシアから来た7人組の若いグループと話しました。訪日初日からカプセルホテルに泊まっているそうです。

小川「その話を聞いて調べたのですが、あの方たちは、昨年の9月頃予約をされています」

―そんなに前からですか。リードタイム(予約から旅行実施までの期間)が長いですね。つまり、半年以上前から日本旅行を計画していた。でも、初日からカプセルホテル。なるべくお金をかけないで日本を体験したいというアジアの旅行者が増えているのですね。

ところで、外国客はどういう経路で予約して来るのですか。

川本「ExpediaやAgoda、Booking.comなどの海外の予約サイトを通してです。他にもHostelworldやJTBのJapanicanの利用もあります。これらのサイトには『Capsule Hotel』という独立したカテゴリーがあり、リーズナブルな宿を探したい方は簡単に見つけることができます。ありがたいのは、宿泊されたお客さまがご自身のブログやSNSで広めてくれることです」

―みなさん、カプセルホテルについてどんなことを書いているのでしょうか。

小川「スペースシップみたいだとか。あとは欧米の方は身体が大きいので、足がはみ出しちゃうけどOKとか。良かったこと、困ったことなど、いろいろ書き込まれています」

カプセルホテルのどこが外国客に人気なのだろうか?
http://inbound.exblog.jp/24532753/

―そういえば、ロッカールームの脇にポラロイドで撮った外国客の写真がたくさん貼ってありましたね。

小川「あれは4年ほど前、当時の支配人が外国客へのサービスとしてポラロイドで撮った写真を記念に渡していたのです。いまはやっていませんが」
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―外国客の対応のためにどんなことをやっていらっしゃいますか。

小川「フロントには英語を話せるスタッフを常駐させています。最近はアジアのお客さまも多いので、中国語や韓国語、タイ語、フィリピン語を話せるスタッフもいます。館内の英語表示も徹底しています」

―やはり外国語対応は大事なのですね。

小川「実際に予約をしてフロントに来られて、思っていたのとはイメージが違うと感じたのかキャンセルされる外国の方もたまにいます。そんなとき、外国語できちんと対応できれば、やっぱり泊まろうかという気になってもらえるかもしれません。またうちは食べ物の持ち込みOK」

―共同ルームで先ほどのマレーシア人たちはコンビニで買った焼き鳥を食べていました。風呂上りに何か軽くお腹に入れたい。そう思って買い込んでくるのでしょうね。そういうゆるさも、こちらが数あるカプセルホテルの中で外国客の予約件数がナンバーワンとなった理由なのでしょう。

「もうひとつ大きいのは、2年前(2013年7月)に女性フロアをオープンしたことです。それ以後、客層が大きく変わりました。以前は男性客のみでしたから、サラリーマンが大半。そこに女性客や外国客が加わることで、旅行者の比率が増えたからです。一般に女性の方はウォークインで利用されることはありません。地方から旅行で来た方や東京で就活しているという大学生もいます。女性客も外国客も事前に予約されるお客さまだという点で共通しています」
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―確かに、共同ロビーで見かけたのは若い方が多かったです。カプセルホテルでよく見かける酔客という感じの人はいませんでした。実際、外国の女性がたくさんいるような場所では、酔っ払いおじさんも気を抜いていられませんものね。もはやここは、外国人に限らず、旅行者のための宿泊施設になっているのですね。

ところで、もうひとつお聞きしたかったのは、一般に外国の個人客はひとつのホテルに連泊する傾向が高いといわれますが、こちらに連泊される方はいるのでしょうか。

小川「いますよ。2~3日は当たり前。長い人は2週間の連泊もよくあります。実は、ここ数か月連泊している外国人もいます。オランダの方です」

―数か月ですか。もうアパート代わりですね。よほどここが気に入ったのでしょうか。

もっとも、外国客が増えると、これまでになかった問題なども起きたりするのではないでしょうか。

川本「そうですね。カプセルの中でもwi-fiフリーなので、スカイプ電話をかけたり、グループでおしゃべりしたり、他のお客さまに迷惑なことがあります。あとみなさん荷物が大きいので、深夜にその整理をごそごそ始めたり」
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―彼らは海外旅行をしているのですから、それもまた楽しみでしょう。でも、それでは一般の日本のお客さまはたまらない。だから、『Please be quiet!』とあちこちに貼り紙してあるのですね。

小川「あとはタトゥーの方はチェックイン時にお断りしています。これを外国の方に説明するのが難しいですね。刺青のもつ社会的な意味が日本と外国では違うからです。外国の方にとってはおしゃれとしてタトゥーをしてらっしゃるのでしょうが、日本のお客さまにはアレルギーのようなものもあり、これは日本政府観光局でも、どう外国客に説明していくべきか検討していると聞きます」

―今後についてはどうお考えでしょうか。

小川「女性フロアを増やしたいと考えています。現在はワンフロアしかないのですが、おかげさまで予約がいっぱいだからです。またこことは別に女性専門のカプセルホテルもつくりたいですね。スタッフは全員女性です」

小川室長によると、同カプセルホテルの開業は1983年。80年代にこの業界は一気に成長したものの、バブル崩壊以降、斜陽業界と呼ばれてきたといいます。

「多少景気が良くなってきたといっても、これからは日本客相手だけではやっていけません。何より平日の稼働率を稼いでくれる外国客の存在は貴重です。2年前の女性フロアの新設も相乗効果となり、予想以上に外国のお客さまに来てもらえるようになりました。

おかげさまで現在、稼働率は8~9割と高推移していますが、課題は海外サイトによる予約が増えたことで、ウォークインが減り、割安な料金の利用が多くなっていることです。今後の課題はいかに客単価を上げるかです」

海外からのネット予約が増えることで稼働率は上がったものの、収益を上げるためには、客単価を上げる必要があるという状況は、今日のホテル業界に共通しています。国内外の予約サイトや自社サイトなど、売値の異なる複数のチャネルを通じた予約の配分をいかに調整するかは、予約担当者のレベニューマネジメントの腕にかかっています。

「見極めのポイントとなるのは、イベントと天候でしょうか。たとえば、東京マラソンや最近では嵐フェス、東京ドームでの東方神起のコンサート、年末のコミケの当日などは、数か月前から予約がいっぱいになります。また台風が近づいてくると、電車が止まることを予想して予約がどっと入ってくることもあります」

今後この傾向はますます強まり、ホテル経営におけるレベニューマネジメント担当者の責任が大きくなることでしょう。

サラリーマンから国内外の(女性も含めた)ツーリストへ。新宿区役所前カプセルホテルの人気の理由は、こうした客層の変化という市場のニーズに柔軟に対応し、ビジネスモデルの組み替えを無理なく行なってきたことにあるようです。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-30 10:17 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 05月 30日

カプセルホテルのどこが外国客に人気なのだろうか?

先日、新宿のカプセルホテルに泊まった話を書きましたが、なぜこれほど外国客に人気なのでしょうか。しかも、新宿に4つあるといわれるカプセルホテル(サウナ)の中で、新宿区役所前に集まってくるのか。

外国客に人気と噂の新宿区役所前カプセルホテルに泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24526002/

ネット上では、外国客のカプセルホテルに関する声がずいぶん拾えます。

【海外の反応】外国人:日本のカプセルホテルに泊まってみたよ!【雑学】
http://matome.naver.jp/odai/2141014320593335701

カプセルホテルが外国人観光客にウケてるらしい
https://www.youtube.com/watch?v=KU9ks47FgGU

ここには、たとえば、「囚人の部屋」「ハチの巣の中の幼虫になった気分」「映画『エイリアン』の宇宙船の寝床みたい」などなど、外国人の素直な印象が書き込まれています。実際に泊まった人がカプセルに収まった自分の姿を動画で撮っていて、笑えます。自分が初めてカプセルホテルに泊まったときのことを思い出します。
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このネット番組では、新宿区役所前カプセルホテルを取材して、利用法や楽しみ方を詳しく紹介しています。カプセルホテルは1970年代に建築家の黒川紀章が創案したものだという解説も加えられています。

Tokyo Capsule Hotel Experience ★ WAO✦RYU! TV ONLY in JAPAN #26 東京カプセルホテル体験
https://www.youtube.com/watch?v=S0-oNv51j9o

こうしておおむね好評を博していると思われるカプセルホテルですが、たまたま手元にある『lonely planet Tokyo 2004』を見てみると、2004年当時、その評判は必ずしもよろしくないようです。こんな風に書かれています。 

Capsule Hotels (p210)
More private, claustrophobic and coffinsized, the capsule hotel comes with bed, reading light, TV and alarm clock. Despite their size, prices still range from ¥3500 to ¥5000, depending on the area and the facilities (also cash only). Capsule hotels are rarely frequented by foreign guests, most of their business comes from drunken office workers who have missed the last train home. Many have a well-appointed bath area similar to a good local sento(public bath).

「よりプライベートで、閉所恐怖症的で、納棺サイズの空間。カプセルホテルはベッドと室内灯、テレビ、目覚時計からなる。そんなサイズでも、立地と設備のため、料金は3500円から5000円(しかもキャッシュオンリー)。カプセルホテルには外国客は頻繁に現れない。ほとんどの客は、終電に乗り遅れた飲んだくれのオフィスワーカーだ。そこには街場の銭湯(公衆浴場)と同様の設備が整った風呂がある」。

ずいぶんな言いようですね。ただし、この世界で最も普及しているといわれるガイドブックのライターたちは、もともとこういう恣意的な書き方をするのが特徴で、あくまでも欧米人から見た視点が貫かれているところが人気の理由でもありますから、これはこれで逆に興味を持つ読者もいるかもしれません。

なにしろ紹介される宿泊施設には限りがあるのに、新宿区役所前カプセルホテルをわざわざ載せているのですから。新宿のカプセルホテルとして、もうひとつグリーンプラザも載っています。新宿区役所前カプセルホテルに関する記述は以下のようなものです。

SHINJUKU KUYAKUSHO-MAE CAPSULE HOTEL(p178)
Yet another cheap option in Kabukicho. Not quite as nice as the Green Plaza, this spot will nonetheless sate your curiosity about the ergonomic challenge of spending the night in a space where you may not be able to sit up. Only men are admitted.

「グリーンプラザ(歌舞伎町にある別のサウナ)ほど良いとはいえないが、歌舞伎町にある別の安いオプション。このスポットは、にもかかわらず、このスペースで夜を過ごすという人間工学的な挑戦についてのあなたの好奇心を満足させるだろう。男性のみ利用可」。

これは実際に泊まったことのある人でなければよくわからない表現だろうと思います。

やはり、カプセルホテルに外国客が訪れるようになった背景として、動画の力が大きいと思われます。YOU TUBEやSNSで、この奇妙な宿泊施設が拡散されたことで、カプセルホテルに対する外国人の理解が、賛否両論を含めて、広がっていったのでしょう。

実際に泊まってみて面白いと思った人もいれば、体験してみたものの、もういいやと思う人も、当然いるでしょう。日本人だってそうなんですから。

次回は、新宿区役所前カプセルホテルの関係者にお聞きした話を紹介しようと思います。いつ頃から外国客が増えて来たのか。最近はどこの国の人が多いのかなど、いろいろ聞いています。

時代はサラリーマンからツーリストへ(新宿区役所前カプセルホテルの顧客が変わった理由)
http://inbound.exblog.jp/24532781/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-30 10:06 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 05月 29日

いまの上海には「自由」や「民主」があふれてる!?

中国に行くと、街で見かけるいろんなものが気になって、つい路上写真を撮るのが習慣になっています。2月に上海を訪ねたとき、いちばん気になったのが、地元政府が作成した広報ポスター&グッズの数々でした。
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というのも、上海の街角に「自由」や「民主」ということばがあふれていたからです。

市政府だけでなく、各区がそれぞれ趣向を凝らした広報ポスターをつくって、街に貼り出しているのです。

まず黄浦区から。
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興味深いのは、「自由」「平等」「公正」「「法治」などのことばについて、すべて中国の古典からの出典先を添えて説明していることです。これらはもともと中国出自の概念であると言いたいのでしょう。
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中国の切り絵をデザイン化したしゃれたものもあります。ただし、メッセージは「愛国」。いくらデザイン性が高くても、この手のストレートなナショナリズムの表出に対しては心理的抵抗を感じざるを得ません。
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たいてい再開発から取り残された古い住宅街に貼られています。現代的な高層マンションやショッピングモール、インテリジェントビルの多い地区にはあまり見られません。
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これは人民公園の中に置かれていたものです。公園を散歩していて、いきなり「法治」といわれても…。
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これは外灘でいま再開発が進む円明園通りで見かけたポスターです。メッセージはおなじみの「中国夢」。場所は元英国大使館の跡地にできたザ・ペニンシュラ上海の裏手で、1930年代当時の租界建築を再生し、高級なショッピングストリートにつくり変えようとしています。

オリジナル度の高い黄浦区に対して、徐匯区は中国政府がつくった天津名物の泥人形を使ったポスターを適当にアレンジして使っているようです。
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紅口区では、「自由」「平等」「公正」「「法治」という文字の踊るこのポスターが印象的でした。
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これは中央宣伝部が制作したもののようで、いろんなパターンがあります。版画や彩墨画(水墨画のタッチで描く水彩画)を使っているのが特徴です。
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これは市内の工事現場に残っていた古いタイプのポスターですが、数年前までは中央宣伝部がつくるポスターはこうした革命イメージを喚起するものが主流でした。習近平政権になって「中国夢」を謳い出したとたん、ビジュアルイメージが大きく変わっています。
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これは豫園近くの住宅地の広報ポスターで、上海市反邪教協会による法輪功に代表される宗教団体の活動の禁止を呼び掛ける内容になっています。
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いろいろ見てきましたが、今回ぼくがいちばん驚いたのが、冒頭に挙げた崇明県(島)のフェリー乗り場で見かけた投票による選挙をイラスト化したポスターです。崇明県(島)は上海の北、長江の中州にあたる中国で2番目に大きな島です。いまは橋が架かっていますが、市内との交通は現在もフェリーがよく使われます。

もともと「富強」「民主」「文明」「和諧」などのキーワードごとに子供を使ったイラストがあしらわれたポスターでした。
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でも、外国人がこれを見たら、いつから中国では投票による選挙が始まったのか? そう思うでしょう。もちろん、地方自治レベルでは一部で始まっているという話は聞きますが、投票風景の様子が広くメディアで紹介されたのを見たことがないせいか、いったいこれは何を言わんとしているのか。未来はこうなる、ということなのか?

ふつうに考えたら、この図柄は選挙による投票を推進する目的のように思われるからです。日本でいうところの「選挙に行きましょう」というメッセージが込められていると理解したくなります。上海市内の広報ポスターでは「民主」ということばは盛んに使われていますが、伝えようとしているのは、ここまで明確なものではありません。それとも、崇明県(島)ではすでに地方自治の選挙が実施されているということなのでしょうか(あとで調べてみたいと思います)。

いずれにせよ、いまの上海でこれらのことばが街にあふれていることをどう理解したらいいのか。こういう質問を上海人にするとたいてい嫌がるので、無理に聞こうとは思いませんでしたが、明らかに胡錦濤政権時代に比べると、一般的な意味での「自由」や「民主」は後退していることが周知されているなかで、なんともいじましい気がしてなりませんでした。汚職退治による権力闘争を終わらせ、政権運営が安定するまでは、「自由」や「民主」は待てというのなら、わかるのですが。まあそんな正直な姿勢を中国の為政者が見せるわけもないか。

でも、なんでこんなことするのかなあ……。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-29 13:57 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2015年 05月 28日

外国客に人気と噂の新宿区役所前カプセルホテルに泊まってみた

2014年、エクスペディア経由で最も予約件数の多かった「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門の宿泊施設が、新宿区役所前カプセルホテルだったそうです。

カプセルホテルが外国客に人気という話は聞いていましたが、実際の予約件数がトップとなると、これはどういうことなのか知りたくなります。

そこで、今週月曜の夜、泊まってみました。
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カプセルホテルに泊まるだなんて何年ぶりのことだろう…。そう思いながら、夜10時過ぎ同ホテルを訪ねると、いましたいました…3階のフロント周辺は外国客の皆さんばかりです。一般にカプセルホテルは、終電を乗り過ごしたサラリーマンの巣窟というイメージですが、ずいぶん印象が違うのです。フロントでは英語が飛び交っています。
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チェックインをすませると、まずはロッカーに荷物を収めてお風呂に入るのですが、スーツケースがこんなに並んで押し込まれています。外国客の荷物は大きくてロッカーに収まりきらないからです。

実はこの日、外国客比率は39%でした(87名 ※先週末の段階の数字なので、実際はもっといたかもしれません)。

このスーツケースの山を見ると、確かに大勢の外国客がいるのだなと実感します。

共同浴場は、お湯風呂とジャグジー、水風呂、サウナといったごく普通の施設でしたが、10人近い浴客のうち半分は欧米系ツーリストの皆さんです。みんな神妙な面持ちでお湯に浸かっています。よく外国客は裸で共同風呂に入るのが恥かしくて苦手だとか、逆に日本っぽくて珍しいから大人気、などと正反対のことが言われますが(それは両方正しい。つまり、どちらもいるということ)、ここに泊まっている皆さんはわざわざカプセルホテルを選んで宿泊している人たちなので、問題はないようです。
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風呂を出ると、4階の共同スペースでひと休み。ここには大画面テレビにソファ、軽食やバー、自動販売機、ランドリーなどが置かれています。Wi-fiも飛んでいるので、PCやスマホに夢中になっている外国人も多いです。

ここは男女共用なので、外国の女性客の姿も普通に見られます。そう、このカプセルホテルでは2年前から女性フロアを新設したところ、大盛況だそうです。

ちなみに料金はウォークイン(飛び込み)だと泊まりは4500円ですが、ネットで事前予約したので、1泊2800円でした。もっと早く予約すれば最安値は2200円です。

湯上りに生ビールを頼んでぼんやりしていたら、隣に男女7人組の若いアジア系のグループが座ってきました。欧米の人ばかりかと思っていたら、アジアの人もいるんだなあと思って見ていたら、女性たちはコンビニで買ってきたざるそばや焼き鳥を食べ始めます。そうか、ここは持ち込みOKなんだ。

このグループは男性4名女性3名なのですが、女性は全員華人のよう。話すことばは中国語(普通話)ではないものの、南方方言のようでした。アジアの人というのは日本人に比べ間の取り方を気にしないところがあるので、席を開けないで平気で隣に座ってくるものです。そこで、隣の女性にためしに中国語で話しかけみました。「どっから来たの?」

「マレーシア」(あっ、中国語通じた)
「そう、じゃあエアアジアで来たの?」(短絡的ですが、マレーシア人=エアアジアで来るというイメージがあったので)
「そうよ。今日着いたの」
「えっ、じゃあ初日からカプセルホテル?」
「……」

「初日から」うんぬんは余計なお世話でしたね。でも、そういう時代なんですね。KLから来た人たちで、エアアジアで片道5000円、東京に着いたらカプセルホテル1泊2200円。なんて安上がりなのでしょう。

「どのくらい日本にいるの?」
「10日間よ」
「東京だけ?」
「うん、まだ考えてないけど、たぶん箱根や日光にも行くつもり」
「そうなんだ。ところで、みんなはお友達なの? それともファミリー?」
「ファミリーよ」
「あっそう」

一般に欧米ツーリストはひとりかカップルか、子供連れの家族か、少人数で旅行する人がほとんどですが、アジアのツーリストは親戚家族で旅行するのが好きなようです。誰かひとり一度くらい日本に来たことのあるリーダーがいて、みんな彼におまかせで付いてきちゃうのでしょう。それがいちばん安心なのでしょう。

このグループも、兄弟とそのカップルの組み合わせという意味で「ファミリー」のようです。面白いのは、女性は華人だけど、男性は全員マレー系。もしかしたら、女性たちは姉妹なのかもしれません。ですから、女同士で話すときは中国南方方言(あとで聞くと、広東語と言っていましたが、香港人や広東人に比べ相当もったりした話しぶりです。マレーシアには福建華僑が多いと言われているので、福建語なまりかもしれません)を話し、男同士あるいはカップルで話すときは共通語のマレー語を使っています。そこにぼくが割り込むと、男性には英語、女性にはなんとか普通話は通じたので中国語とことばが入り乱れますが、多民族国家のマレーシアというのはそれが普通なのでしょう。

彼らマレーシア国籍の人たちは2013年夏の日本政府による観光ビザの撤廃で、簡単に日本に来られるようになりました。ノービザですから、休みができたらエアアジアの安チケットでふらっと東京に来られるのです。日本人は兄弟とそのカップルで海外旅行なんてあんまりやらない気がしますが、血縁の強いアジアの人らしい旅行スタイルだとあらためて思いました。

それにしても、ここには酔客が見当たりません。およそこれまで経験したカプセルホテルとは雰囲気が違います。

1時近くになったので「よい旅を!」と言って、7階にあるカプセルルームに向かいました。

エレベータを降りると、まあごく普通のカプセルホテルです。
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ちょっとよそとは違うのは、「Please be quiet」のような英語表示が目につくことでしょうか。
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それから、ここではカプセルの中でもWi-fiが使えて便利でした。

実をいうと、久しぶりのカプセルホテルであまりよく寝つけませんでした。それでも朝7時になったので、眠い目をこすり、お風呂に入ることにしました。けっこう外国の人も朝風呂しています。

風呂上りに共同ルームに行くと、ここにも外国客がたくさんたむろしていました。ぼくは200円のカプチーノを自販機で買い、しばらくぼんやりしていました。
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昨晩は見かけなかった日本の女の子がけっこういます。彼女たちはぼくのようにだらしない館内着姿ではなく、着替えを済ませ、サンドイッチを頬張りながらPCに向かっていて、レジャー客っぽさはありません。

しばらくすると、昨日のマレー人の男性にも会いました。日本人もそうだし、外国客も若い人が多いように思いました。ここは酔客とは無縁のカプセルホテルなんですね。

そろそろチェックアウトしようかとロッカーに戻って着替えようとしたら、壁に外国客のポラロイド写真が貼られていました。みんな自分の寝起きしたカプセルの中でこちらを向いて笑顔を振りまいています。笑えますね。でも楽しそうです。
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その脇には、海外で報じられたこのカプセルホテルの英文記事が紹介されていました。いろいろ細かい施設の説明や利用の仕方、周辺の歌舞伎町の紹介など、これを見て外国客はやって来るのでしょう。
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着替えを済ませ、チェックアウトしようとフロントに向かうと、大きなザックを背負ったバックパッカーの若者が出て行こうとしていました。

その姿を見たとき、急に懐かしさがこみあげてきました。

そういえば、自分も学生の頃は同じようなことをしていたな。当時日本から中国に行く最も安い交通手段だった定期航路「鑑真号」で大阪から上海に向かう前日、ぼくは彼と同じような大きなザックを背負って、梅田のカプセルホテルに泊まったことを思い出しました。あれから何年たったんだっけ…。

当時は、朝起きてから1日中歩き通しでも、夜は寝床さえあれば、ちっともかまわなかった。とにかく好奇心の赴くまま外国のまちを歩いてばかりいました。それが面白くてたまらなかったのです。

若い旅行者にとって、カプセルホテルはまったく問題ないはずです。海外の安宿の2段ベッドが並ぶタコ部屋みたいなドミトリーに比べれば、ここは超快適、機能的、衛生的な巨大ドミトリー空間のようなものですから。閉所恐怖症の人だけはNGかもしれませんけれど。
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久しぶりにカプセルホテルに泊まって、外国のツーリストと話をして、つかの間の旅人気分を味わえたのでした。

新宿区役所前カプセルホテル http://capsuleinn.com/shinjuku/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-28 12:24 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 05月 28日

東新宿のビジネスホテルにはロシアや東欧の旅行者が多いらしい

2年前、本ブログで東新宿のビジネスホテルに多くの外国客が訪れていることを紹介したことがあります。

東新宿は新しい外国客向けホテル地区になりつつあります(2013年7月2日)
http://inbound.exblog.jp/20672715/
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そのとき、東新宿のビジネスホテルをいくつか訪ね、事情を聞いてまわりました。それ以降、この地区には外国客をあてこんだ新しいホテルが続々と誕生しています。最近はアパホテルなど、全国規模のチェーン系が増えています。

訪日客増加で客室も足りない!? 多様化する宿泊ニーズに対応した新サービスや業態転換はどこまで進むか
http://inbound.exblog.jp/24291533/

その後も東新宿には外国客の姿がますます増えていて、こうしたビジネスホテルは花園神社の明治通りをはさんだ反対側(東方面)に延びる医大通り周辺に集中しています。そこで今回、東新宿を代表する外国人宿、東京ビジネスホテルの橋本太乙代表取締役に話を聞きました。以下、そのやり取りです。

―いつ頃から外国客が来るようになったのですか。

「1995、6年頃からでしょうか。当時はフランスやドイツ、デンマークなど、ヨーロッパの人が多かったです」。

―ずいぶん早くからですね。その人たちはどうしてこちらを知ったのでしょうか。

「当時、東京のエコノミータイプのホテルを紹介した英語のパンフレットを政府観光局がつくっていたようで、うちを載せてくれていたんです。成田空港で置いてあるものです。広告費を出したわけじゃないんですけど。うちは都心にあって安かったからでしょう」

―本格的に外国客を誘致するようになったのは?

「2005年からです。その年、中国出身の20代の女性が支配人になりました。彼女が精力的に外国客の誘致を始めたのです。とはいえ、当時はHPもなく、実際にやったのは、お泊りになった外国の宿泊客全員に英文でお礼状を出すことからでした。もちろん、ネットでやり取りしている方にはメールを出しました。それから一気に増えました」。

―お礼状ですか。しかも指揮官は中国人。他にはどんなことをしましたか?

「彼女は2011年まで支配人で、いまは帰国していますが、とても優秀な人材でした。他には、まず館内を英語表示にしたこと。それからスタッフは英語を話せる人にした。これは徹底して取り組んだことです」。

―現在、外国客の宿泊比率はどれくらいですか。

「全体の2割ほどです。客室は178室。いろんなタイプの部屋があります」。

―国籍は?

「今日泊まっている外国客の国籍は、リトアニアやキルギスタン、フランスなどです。ロシア人も多いですよ。最近は東欧からの旅行者が多いです。うちにはロシア語を話すスタッフがひとりしかいないのですが、たいていグループのリーダーが英語を話すので、なんとかなっています」。

―ロシア語を話すスタッフがいるんですか?

「はい、でも基本は英語です。

東欧の方が来るようになったのは、4、5年前から。10年くらい前までは、フランスやドイツ、スウェーデンからが多かった。アフリカから来る人もいました。パスポートを見ても初めて見る国の名前ということもよくありました。

アメリカやオーストラリアからももちろん来ます。でも、東欧の方は10人以上のグループで10泊以上するのが特徴です。ベトナムや台湾などアジア系もいるけれど、彼らはたいてい3、4泊と滞在が短いので目立たない。

アメリカの方でうちに来るのは軍関係が多い。横須賀港に着いて六本木に遊びに来る人たちですが、最近は少ないです」。

―なるほど。医大通りを歩いていると、さまざまな旅人の姿を見かけますが、これほど多彩な国籍の人たちが宿泊していたからなのですね。そして、このホテルは彼らに見合った価格帯だということもいえるのでしょうね。

「1990年代は、フランスやスイスなどのバックパッカーが多かった。うちのように住宅街の中にあっても、安いとわかると地図を見ながら訪ね歩いてくるようなタイプの旅行者たちでした」。

―いまは浅草方面にそういう層が泊まるバックパッカー宿がたくさんできましたからね。

「そう、当時はなかったから。でもね、その時代から宿泊してくれるのは面白い方が多いですよ。あるスイス人の男性は日本に来るとき、毎回うちに泊まってくれるのですが、最初はひとりで来て、2年後彼女と来て、その後お母さんと来て、最近は子供連れで来ました。なんかうれしいですよね。またある台湾の貿易商の方は、最初は独身で、何度も来るうちに、だんだんお金持ちになってくるのが見ていてわかるんです。うちの部屋は狭いし、『あなたは本当はセンチュリーハイアットとかに泊まれるはずなのに、どうしてうちに来るの?』と聞いたら、『ぼくはここの精神を忘れない。一生懸命がんばっていた自分の原点の場所だから。ここが好きなんです』と言うんです」。

―客層が見えてくるお話です。外国客はずいぶん連泊するようですね。

「基本連泊が多いです。アジア方面とかいろんな国の方がいますから、平均すると3~4日になりますが、2週間以上のグループが実は多いです。このホテルを拠点に京都や日光に行く人も多い。一泊4100円から。1か月いても12万円。電気ガス使い放題ですから。

荷物を置いたまま、日光でも箱根でも行く。いまキルギス人のグループは京都に行っています。一つの部屋のみ残して、全員の荷物を置いている。昨日の夜、急に決まって出かけるというんです。予約はキャンセルですが、京都でも宿泊代がかかるでしょうからと、キャンセル料は取りません」。

―外国客を受け入れるために必要なことは?

「まずは外国語表示ですが、実はそれだけ。あとは話をじっくり聞いてあげること。たとえその人がスペイン人で、英語がまったく話せないとしても、彼はなんとか自分の意思を伝えようとしてくる。明日日光に行きたい、浅草に行きたい。どう行けばいいかという場合もそうですし、部屋のバスタオルがほしいという場合も、ホテルスタッフに伝わるまで何度も手段を変えて伝えようとする。伝わらないとわかると、最後には絵を描いてくる。これがほしいと。なんだ、バスタオルか。それを手渡すと笑っている。

地名などの案内はすべてローマ字で書いて渡します。彼らはそのメモ書きを持って、どこにでも行き、その場でいろんな日本人に見せている。現地でいろんな人の世話になっているのだなあと思いますが、朝出て行って、夜には帰ってくる。

あるとき、台湾人のグループが日帰りで高野山に行くと言い出しました。えっ、そんなことできるの? 日本人はふつう思いつかないスケジュールです。でも、彼ら外国人はJRレイルパスを持っているので、新幹線も安く利用できる。だから、日帰りで行ってこようと考える。実際、彼らは朝6時の新幹線で新大阪に行ったそうです。そこから御堂筋線で難波まで行って、南海電車で高野山へ。おそらく山に登った時間は短かったのでしょうが、深夜になって戻ってきた。 

『どうでした? 行けた?』と聞くと、『行けた。でも疲れた』と言うんです。こちらも、ホントに日帰りできるんだとびっくりしました。これも土地勘がないからできるんでしょうね。でも、彼らはすごく喜んでいましたよ」。

―なるほど。そういう旅をしているんですね。でも、楽しそうですね。

「でも、それが旅行ですから」。

―確かに。一般にシティホテルでは、旅行カウンターがあって、新幹線やフライト、ホテルの手配、オプショナルツアーなど申し込んでくれます。こちらでも旅行の手配をしてあげるのですか。

「京都のホテルでもなんでも頼まれれば取ってあげます。どこそこの行き方を聞かれても、その場でインターネットで調べて教えてあげる。別にお金を取りませんが、できることは何でもするのが仕事だと思っています。

ただ、ヨーロッパの人はすべて予約済みで旅行するのでは面白くない。自分だけのアドベンチャーがしたい。そういう人が多いです。少々うまくいかないことがあっても、それが楽しいという。

パスポートや携帯を紛失した場合でも、日本人は駅員から周りの乗客たちまで一生懸命助けてくれる。日本は車両に置き忘れた携帯が戻ってくる国です。実際に、駅員さんからホテルに電話がかかってきますから。彼らはそういう日本人の姿に感動するみたいです」。

―そのときは、駅ではなくフロントに紛失したことを言ってきたのですね。

「はい、それで駅の紛失係に電話を入れました」。

―大変そうですが、面白そうですね。

「実際、いろんなことが起きます。先日もお酒を飲みすぎて、警察官に補導されてきたお客さんがいました。ろれつが回らず、とにかく休ませて、翌日に旅行会社の人と通訳ガイドが来てもらいました。こんなことは初めてでした」。

―それはご苦労様でした。新宿は飲む場所に困りませんものね。彼らは旅空の下にいるのですから、そういう羽目を外すこともあるのは無理もないと思います。そんな人ばかりだと困るでしょうけれど。
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―ところで、ロビーでPCを見ながら旅行計画を立てている外国客がいますね。館内はWi-fiフリーなのですか。

「Wi-fiフリーはロビーだけで、客室の場合はパスワードを渡しています。国によってはフリーズさせられ、全員が使えなくなることがあるからです」。
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―外国客の方の予約はどういう経路が多いのですか。

「Booking.comやexpediaなどの海外ホテル予約サイト経由です。ただこちら経由で予約した方がリピーターになることは少ないようです。というのは、予約サイトを使うと、手数料が上乗せされるので割高になるからです。実際のリピーターは、自社サイトの英語ページで予約すれば安いことを知っています。

実は、うちは6割以上がリピーターなのです。これは国内海外含めてですが、よく不思議がられます。でも、理由は簡単。長く泊まると割安になるからです。要は、そういう連泊するタイプの旅行者が多いということです。

もし1泊しか利用しないのなら、少し高くても駅に近いなど便利な場所がいい。でも10泊するなら、安い方がいいし、少々駅から遠くても、歩いているうちにおいしいレストランを見つけるなど、楽しみもある。うちには、学生寮みたいに共同トイレ・浴場という安いカテゴリーの部屋もある。でも、これはこれでいいんです」。

―海外予約サイトの登録以外に、何か特別なPRは?

「昔から何もしてないです。

基本的にわかっていることは、いま泊まっているお客さんにちゃんとすること。それが最大のPRにつながると思う。うちがリピーターが多い理由は、お客さんが友だちを呼んでくれているということです。

知り合いに『今度東京に行くんだけど、どこに泊まればいい?』と聞かれたとき、自分の知ってるところを誰でも紹介するものでしょう。これはヨーロッパ人でも誰でも同じなんだと思う。うちに来られるのは、そういうつながりで来た方だと思うんです。

泊まってみて問題なければ、いやなことがなければ、友だちを紹介してくれる。その人がちゃんとした人なら、その友だちも決して問題を起こさない。

手を広げる必要はないんです。たくさん来たところで『満室です』とお断りするようなことになるなら、意味がないですから」。 

―今後についてはどうお考えですか?

「実はうちには外国客とは別に、長逗留している日本の年配の方がいます。地方在住の方で、毎月東京に出てきて1週間10日と滞在される。もと新宿に住んでいた方が伊豆や八王子の老人ホームに移り住んだものの、友達は訪ねてくれない。そこで東京に出てきて、友だちに会ったり、コンサートに行ったりして過ごしていらっしゃる。出張客も減っているいま、将来は元気な老人を相手にする宿泊施設になるのではと思っています。

ホテルは本来、人を集める場所です。ささやかですが、そのために美術のイベントや英語のイベントをやっています。『ひらがなタイムズ』という在日外国人向けの雑誌が主催する英語の交流パーティが毎週金曜の夜にあります。宿泊客は無料なので、参加する人もいます」。

―いろんなことをやってらっしゃるんですね。

「ええ、なんでもやります。実はテレビドラマの撮影も多いんです。ネットで『ロケ地 東京ビジネスホテル』と検索すると、たくさん出てきますよ。

できることは何でもしてしまう。外国のお客さんに対するのと一緒で、私は来るもの拒まず。何でも受け入れるタイプなんです」。 

ちょうどこの話をしていたとき、埼玉が震源地の地震発生。館内もずいぶん揺れました。ロビーにいたフランス人家族が慌ててホテルを飛び出そうとしたので、橋本さんはスタッフを呼びつけ、彼らに「中にいるほうが安全ですよ」と伝えさせました。

―びっくりしたでしょうね。

「地震のない国の人たちからすると、大地が揺れるというのは本当に恐怖だそうですよ」。

そして、橋本さんはそばにいた外国人スタッフに「部屋にいる人に大丈夫と言ってあげて」と伝えました。そのスタッフはベルギー人だそうです。このホテルには、中国系、韓国系など、アルバイトも含めて多くの多国籍スタッフがいます。

東京ビジネスホテルの開業は昭和48(1973)年。もともと地方からの出張客のためのビジネスホテルだったといいます。新宿のビジネスホテル開業のはしりで、当時は京王プラザができたばかり、新宿プリンスホテルはまだなかった時代です。

橋本さんは言います。

「この界隈でも廃れていく旅館が増えているが、いまの時代、個人経営の宿泊施設が生き残るには、浅草でもやっているように、オーナーが英語を話す。小グループの外国客を受入るというやり方しかなかった。これはうちも1990年代からやって来たこと。それしか手がなかったと思う」。

これまでぼくは海外で個人経営のホテルやゲストハウスにずいぶんお世話になってきましたが、橋本さんの話を聞いていると、その世界とよく似ているなと思いました。リピーターのスイス人や台湾人の話がまさにそうです。世界中で起きていることと同じことが、東新宿でも起きていることがわかります。そして、気のおけない宿というのは、オーナーのキャラクターによるところが大きいのは万国共通でしょう。

―訪日客が増えると、いろんなタイプの外国客がやって来る。そのぶん多様なニーズが生まれるけれど、お話を聞いていると、自らがどの層に見合った施設かをしっかり理解していれば、それ相応のやり方で対応できるということなんですね。
 
「たまにお客さんのスケジュールノートを見せてもらうと、ぎっしり書き込んである。それをこなす自分が好き。冒険している気分になれる。まったくことばが通じなくても、どこでも行ける。うちはそういうスタイルの旅人のための宿なんでしょうね」。

東京ビジネスホテル http://tbh.co.jp/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-28 11:55 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 05月 24日

都心の外資系ラグジュアリーホテルはまるで時代の先祖返りのよう

近年、都心で本格化しているのが、外資系を含む大型高級ホテルの新規開業です。先日、東京駅周辺に集中している外資系ラグジュアリーホテルを訪ねて歩いてみました。

一般に富裕層が顧客とされるこれらのホテルの宿泊料金は、最低でも一泊約5万円から。いや、客室不足の昨今はもっと上がっているとも聞きます。こうなると、もはや誰でも気軽に宿泊できる価格帯ではないですが、東京五輪の開催が決定し、新たな開業ラッシュが始まっているのです。

なかでも最近の目玉は、14年12月、丸の内に一部営業を開始した個性派ラグジュアリーリゾートチェーンのアマンリゾーツによる「アマン東京」でしょうか。客室数を絞り込んだ極上のリゾートホテルチェーンとして国際的に評価の高い同グループが手がける初の都市型ホテルというふれこみで、巨大な和紙で覆われたガーデンレセプションなど日本の伝統素材が使われた館内の優雅な意匠の数々は、海外からも注目されています。
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アマン東京 http://www.amanresorts.com/amantokyo
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場所は大手町タワー(千代田区)にあります。地下鉄丸ノ内線「大手町」を降りると、大手町タワーにつながっていますが、ホテルの玄関は「隠れ家リゾート」らしく、見えにくい場所にあります
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大手町タワーからJR東京駅方面に向かって歩くと、日本橋口にホテルメトロポリタン丸の内が見えますが、その向かって左手奥にこっそりとシャングリ・ラ東京の玄関が見えます。シャングリ・ラ東京は2009年3月に東京駅に隣接する丸の内トラストタワー本館27~37階に開業した中国系のラグジュアリーチェーンです。上海浦東地区の外灘に面した最も眺望のいい場所に立地しているシャングリ・ラ上海は国際的にも有名です。
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そこから八重洲口に向かって歩いていくと、有楽町方面にフォーシーズン丸の内が入ったパシフィックセンチュリープレイスが見えます。フォーシーズン丸の内の開業は2002年10月です。これを皮切りに、グランドハイアット東京(2003年4月 六本木)、コンラッド東京(2005年10月 浜松町)、マンダリンオリエンタル東京(2005年12月 日本橋)、ザ・リッツ・カールトン東京(2007年3月 六本木)、ザ・ペニンシュラ東京(2007年9月 有楽町)、そして前述のシャングリ・ラ東京と、2000年代の都心の外資ラグジュアリーホテルの開業が続きました。
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そして、2010年代に入り、新たな開業ラッシュを迎えています。

そのうちのひとつが、14年4月に開業したコートヤード・バイ・マリオット東京ステーションです。八重洲口から京橋方面に歩くとあります。
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コートヤード・バイ・マリオット東京ステーション http://www.cytokyo.com/

東京駅周辺には、丸の内口に東京ステーションホテルもあります。東京駅周辺は、いまや東京を代表する最高級ホテル地区へと変貌しているのです。
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これまで東京では、1990年代(パークハイアット東京、ウェスティン東京など)、2000年代(グランドハイアット東京、コンラッド東京、マンダリンオリエンタル東京、ザ・リッツ・カールトン東京、ザ・ペニンシュラ東京など)と外資系の進出が散発的に続いていましたが、五輪を控えた10年代はその第3期に入ったといえそうです。

一般に海外の富裕層は安心できる宿泊先として国際的に知られるホテルチェーンを選ぶ傾向があるといいます。どんなに日本国内で有名なホテルや高級旅館でも、宿泊先として選ばれるまでのハードルは高いものです。むしろ知名度の高い外資系ほど、東京五輪は商機といわれるのはそのためです。

しかし、こうした外資の相次ぐ進出で、日本の老舗高級ホテルは生まれ変わりを迫られています。たとえば、「御三家」のひとつ、ホテルオークラ東京は現在、本館の建て替えに着手しています。前回の東京五輪の2年前(1962年)に開業した同ホテルは老朽化が長く課題となっていましたが、約1000億円を投じて高さ200mと80mの2棟のビルを新設するようです。地上38階建ての高層棟をホテルとオフィスの複合施設にする計画です。
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旧赤坂プリンスホテル跡地でも再開発計画が進行中で、新たな高級ホテルが誕生します。アマン東京が進出したばかりの大手町では、「都市型(温泉)旅館」という日本ならではのカテゴリーを掲げる「星のや東京」も進出予定です。天然温泉を完備して外資との差別化を図るそうです。これらの連動した動きは、多様な外国客のニーズに応えることで、日本のホテルシーンの活性化をもたらすものと思われます。

2010年代の都内の主な大型ホテル開発

14年4月 コートヤード・バイ・マリオット東京ステーション
14年6月 アンダーズ東京 
14年12月 アマン東京 
15年4月 ホテルグレイスリー新宿
16年夏 旧赤坂プリンスホテル
16年中 星のや東京
19年春 ホテルオークラ東京リニューアル
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虎の門ヒルズに入居しているアンダーズ東京は昨年4月に開業

一般に外資系ラグジュアリーチェーンは、ホテル物件を所有せず、運営に特化する経営スタイルや、都心の再開発地区の超高層複合ビルの上層階に入居していること、そして客室数を極力絞り込んでいることが特徴です。アマン東京は84室、アンダーズ東京は164室。客室数だけみれば一般のビジネスホテル並みです。

ところで、外資系ラグジュアリーホテルなんて格差社会の象徴、自分には関係ない話と思ってしまうところがないとはいえませんが、ふとこんなことも思います。

いま起きていることは、時代の先祖返りなのではないだろうか。

前回の東京五輪(1964年)が開催された昭和のある時期まで、外資に限らず日本のホテルは一般庶民が足を踏み入れることのない世界でした。だって、当時の庶民は「駅前旅館」を利用していたのです。ビジネスホテルだって生まれてなかったのですから。

その後、かつて高嶺の花だったホテルで供されたサービスや食が大衆化され、特に1970年代以降、日本の社会に普及していきます。帝国ホテルで昭和30年代に始まったバイキングなんてのもそのひとつです。

こうした大衆化こそ、いまアジア客の“爆買い”の対象となっている日本の衣食住に関わるさまざまな消費財やサービスが生まれた原点だったといえるのではないか。昭和の時代の“ラグジュアリー”施設の代表だったホテルで提供されたコンテンツとその発展形が、今日多くのアジア客をひきつけるベースとなっているのだと思うのです。

これから東京にはどんな新しいホテルシーンが生まれていくのでしょう。かつてと同様、外資系ラグジュアリーホテルには、未来を先取りする役割を果たしてくれることを期待したいものです。

はたしていまの日本にそれをかつてのように大衆化させるだけの活力が残されているだろうか、そう否定的に見る向きもあるかもしれません。でも、そこに日本らしさがあると信じたい気がします。

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by sanyo-kansatu | 2015-05-24 10:35 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 05月 24日

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)

エクスペディアでは、今年3月下旬、訪日外国人の集客に成功したホテルを表彰する「エクスペディアアワード2015」を発表しています。国内の外国客に人気のホテルや日本政府観光局(JNTO)などを招いて表彰式を行なったそうです。

2014年、エクスペディア経由で外国人旅行者に予約された件数のランキングでトップとなったのは、ホテル部門で「ホテルサンルートプラザ新宿」、ホステル・ゲストハウス・旅館部門で「新宿区役所前カプセルホテル」でした。以下、10位までのランキングです。

1位 ホテルサンルートプラザ新宿(南新宿)
2位 新宿グランベルホテル(東新宿/歌舞伎町)
3位 新宿ワシントンホテル(西新宿)
4位 京王プラザホテル(西新宿)
5位 ホテルモントレ グラスミア大阪
6位 ホテル日航成田
7位 新宿プリンスホテル(東新宿)
8位 品川プリンスホテル(品川)
9位 新宿区役所カプセルホテル(東新宿/歌舞伎町)
10位 ホテル日航関西空港

エクスペディアのリリースによると、ホテル部門トップの「ホテルサンルートプラザ新宿」が人気の理由は、自社サイトのクチコミ返信を行なうなど、ネットを有効活用していること。ホステル・旅館部門の「新宿区役所前カプセルホテル」では女性専用フロアの設置や海外メディアの積極的な対応で、訪日外国人の関心を引き、差別化につながったといいます。

このランキングをみて興味深いのは、都内のホテルとしてランキングされた7軒中、6軒が新宿に立地していることです。

エクスペディアでは、主要8カ国・地域の都内の予約件数の多いエリアをランキングしています。これをみても、欧米(アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス)、アジア(韓国、香港、タイ、台湾)すべてにおいて新宿がトップになっています。
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一方、2位以下は欧米系は銀座や東京駅周辺、アジア系や池袋や上野と、人気のエリアが分かれています。また2014年に前年対比で伸びているのが上野(247%)、浅草(246%)、池袋(186%)であることから、アジア系の利用者が増えていることもうかがえます。

リリースでは、以下のような「国別人気宿泊エリアマップ」を作成しています。
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これをみても、東京の南半分(東京駅周辺、銀座、赤坂、渋谷)は欧米系に人気で、北半分(新宿、池袋、上野、浅草)はアジア系に人気であることがわかります。新宿は国を問わず外国人旅行者に人気です。

エクスペディアの利用者は、あくまで海外の個人旅行者(FIT)であることから、中国本土から来た団体客などは含まれていません。ですから、これだけで訪日外国人旅行者のホテル利用の実態をすべて説明することはできませんが、こうした都内のホテル地区の可視化は、ますます色濃くなっていくものと思われます。

※エクスペディアが配信する海外からの訪日ホテル予約の多い国などのリリースは以下参照のこと。

エクスペディアではアジア各国からの訪日ホテル予約が急増している
http://inbound.exblog.jp/24509107/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-24 10:25 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 05月 23日

エクスペディアではアジア各国からの訪日ホテル予約が急増している

世界最大のオンライン旅行会社であるエクスペディアは2006年11月に日本法人を開設し、日本の消費者向けに海外ホテル予約サービスをスタートしています。

エクスペディア
http://www.expedia.co.jp/

もともと日本の旅行マーケットを対象に参入してきたエクスペディアですが、ここ数年海外からの外国人旅行者の国内ホテル予約が増えています。エクスペディアはマイクロソフトの旅行部門として設立された会社ですから、アメリカ市場の収益が最大で、訪日市場も現状ではアメリカ人の送客が大きいようですが、この2、3年でアジアからの送客もすごい勢いで増えているようです。

2015年3月24日付けの同社のニュースリリースによると、2014年のアジア各国の訪日ホテル手配件数の前年度比の数字は以下のような驚異的なものです。

1位 香港 740%
2位 タイ 416%
3位 マレーシア 288%
4位 台湾 281%
5位 フィリピン 253%

特に前年対比7倍以上となった香港、4倍以上のタイが注目されます。2014年の訪日外国人旅行者数の1位が台湾、5位香港、6位タイとくれば、その理由もわかるというものです。

現在、エクスペディアは日本やインド、オーストラリアなどの先行グループに加え、同上の国々などアジア11カ国に販売拠点を開設しています。その多くの国で2012~13年にかけて現地法人が設立されたため、アジアからの訪日予約が一気に増えたことが考えられます。

韓国、香港、台湾、タイのエクスペディアによる2014年の海外ホテル予約件数のランキングはすべて日本がトップです。
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またこの4カ国の人気海外都市(ホテル予約件数)のランキングも、台湾とタイで東京が1位、韓国と台湾で大阪が2位と上位を占めています。また他にも京都や沖縄、福岡などが10位までのランキングに入っており、地方都市への予約も動き出していることがわかります。

ちなみに2014年の日本の人気都市ランキング(ホテル予約件数)は以下のとおりです。

1位 東京
2位 大阪
3位 沖縄
4位 京都
5位 福岡
6位 札幌
7位 名古屋
8位 神戸
9位 長崎
10位 函館

言うまでもなく、エクスペディアを利用するアジア客は個人旅行者(FIT)です。彼らは格安なLCCなどを利用して訪日するリピーター層でもあります。前年対比でいうと、金沢(718%)、沖縄(515%)、長崎(462%)、名古屋(447%)、小樽/富良野/網走(436%)、高山(426%)、奈良(424%)、長野(362 %)、岐阜/富山(361%)、札幌(337%)などの地方都市が伸びているようです。

これからはアジア系の旅行者もどんどん地方都市へ個人旅行する時代になりそうです。ツアーバスで押し寄せる団体客とは違い、英語を話し、洗練されたアジア系個人旅行者が地方に増えると、外国客に対するイメージも変わっていくのではないでしょうか。

※エクスペディアが配信する都心の人気ホテルや地区については以下を参照のこと。

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)
http://inbound.exblog.jp/24510962/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-23 20:27 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 23日

外国客は日本のお宿に満足しているか?(海外予約サイト参入と日本のホテルシーン)

訪日外国人数が昨年(2014年)1300万人を超え、全国の観光地や都市部で多くの外国人旅行者の姿を見かけるようになりました。では、いったい彼らはどこに泊まって、旅の荷をほどき、休んでいるのでしょうか。

こうした素朴な疑問にすっきり答えるのは意外に難しいところがあります。なぜなら、外客全体の5人のうち4人を占めるアジア系、すでにFIT(個人旅行)化している成熟市場の欧米系、富裕層や訪日客のボリュームゾーンであるミドルクラス層、さらにはお金をなるべくかけずに長期旅行を楽しむバジェットトラベラー層に至るまで、我々が一般に想像する以上に、さまざまな国籍や階層からなる訪日外国客の宿泊実態は多様化しているからです。
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2014年6月虎の門に開業したアンダーズ東京
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開業以来100%近い客室稼働率を誇るというアパホテル新宿御苑店
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海外FITに人気のサクラホテル(池袋)

はたして外国客は、日本のお宿に満足しているのでしょうか? 

こうした多様な外国客と宿泊施設を直接結びつけているのが、ホテル予約サイトです。ホテル関係者によると、訪日客の増加にともない、海外からのサイト経由の予約が増えているといいます。

その認識は外資系ラグジュアリーホテルからゲストハウスの経営者に至るまで変わりません。ホテル予約サイトは、宿泊施設の特性やポジショニングに見合った顧客を選び出し、マッチングさせるしくみだからです。しかも世界中至るところにいる人たちに存在を伝えてくれるのです。

どんなに無名の宿泊施設でも、予約サイトのプラットフォームの上では、見せ方次第で外国客の目に留まる可能性があります。近年、外国客が多く宿泊するエリアとなっている東新宿の老舗ビジネスホテル「ホテルたてしな」の担当者も「昔は国内客がメインだったが、いまでは閑散期は外国客のほうが多くなる。海外からの予約はExpediaなどを使ったネット予約が大半だ」と語っています。

ここ数年で、海外の主要なホテル予約サイトはほぼ日本に参入してきたといえます。外国客が利用している主な海外ホテル予約サイトは以下のとおりです。

Expedia http://www.expedia.co.jp/
Agoda http://www.agoda.com/ja-jp
Booking.com http://www.booking.com/index.ja.html
Hotelbeds http://www.hotelbeds.com
HRS https://hotelservice.hrs.com/portal/
Ctrip http://jp.ctrip.com/

世界の3大ホテル予約サイトといえば、「Expedia」「Agoda」「Booking.com」でしょう。そのうち欧米系の利用者が多いのは「Expedia」、アジア系は「Agoda」、「Booking.com」はまんべんなくといった特性があるようです。宿泊施設によって顧客層が異なるので一概にいえませんが、客室単価は「Agoda」が高く、「Expedia」は低い傾向にあるといわれます。

ただし、これらの海外ホテル予約サイトはそれぞれ会員特性やサービスが微妙に異なるため、宿泊施設側もどこと契約すべきか、検討が必要です。

ホテル予約サイトの普及によって、宿泊施設側は需要が見込めない閑散期には価格を下げ、繁忙期には上げるなど、収益の最大化を図るレベニューマネジメントの導入や多言語対応が必須となっています。訪日客がますます多様化するなか、予約担当者はこれまで以上に市場の動きを読み解く知見が求められるようになっています。

また外国客の利用が増えれば、ホテル側も新しい施設やサービスを提供していくことでしょう。Wi-fiの導入が進んでいるのもそのためです。

海外ホテル予約サイトが日本のホテルシーンをどう変えていくのか。要注目です。

※エクスペディアが訪日客のホテル予約状況について、以下の興味深いリリースを配信しています。

エクスペディアではアジア各国からの訪日ホテル予約が急増している
http://inbound.exblog.jp/24509107/

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)
http://inbound.exblog.jp/24510962/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-23 12:15 | “参与観察”日誌 | Comments(0)