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2015年 07月 30日

歌舞伎町ルネッサンス~外国人観光客の来訪増で街は変わるか?

このところ、歌舞伎町周辺を訪ね回り、外国人ツーリストの動きをウォッチングしていました。その中間報告というわけでもないのですが、やまとごころに書いています。
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歌舞伎町は今日も多くの外国人ツーリストでにぎわっている。ここ数年、周辺でホテル開業ラッシュも起きている。新宿は都内で最も外国客に人気のホテル地区なのだ。世界的にも知られるこの歓楽街はこれからどう変わっていくのか。周辺のホテルに滞在している外国客にもっと街を楽しんでもらい、お金を落としてもらうには何が必要なのだろうか。考えてみたい。
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やまとごころ.jp
http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_15.html

新宿歌舞伎町のネオンの下には、今日も多くの外国人ツーリストでにぎわう光景が見られる。靖国通りで大型バスから降りてきた中国やタイの団体客たちは添乗員に先導され、セントラルロードから裏道まで列をなして散策している。ドンキホーテの前でスーツケースを広げて大量購入した土産の品定めをするグループもいる。キャリーバックを引きずるアジアの若い個人客も次々と横断歩道を渡ってくる。欧米のツーリストたちもそこかしこを頻繁に往来している。

今年上半期(1~6月)で914万人とますます増加する訪日外国人旅行者。日本政府観光局によると、年間を通じて1800万人前後の見通しと2020年に2000万人という政府目標も前倒しで実現しそうな勢いだ。

彼らの来訪が歌舞伎町の風景を大きく変えようとしている。でも、どうして彼らは歌舞伎町にやって来るのだろうか。

世界の観光地と呼ばれる場所には、誰もがそこで記念撮影を始めてしまうポイントがある。富士山の絶景もそうだが、渋谷センター街の交差点もいまや定番。こうした情報はネットにあふれていて、SNSを通じて世界に発信されている。

では、いまの歌舞伎町でそれはどこだろうか。

今年4月に開業した「ゴジラルーム」が話題のホテルグレイスリー新宿(新東宝ビル)か。あるいは、「歌舞伎町一番街ゲート」の下で自撮りする? いや、むしろ西新宿の高層ビルやヤマダ電機の巨大スクリーンをバックに撮るのがお好みか?

これらは確かに歌舞伎町でよく見かける光景である。いまや歌舞伎町は外国人ツーリストのための都内有数の“回遊”ゾーンとなっているのである。

では、ここで“回遊”した後、彼らはどこに向かうのだろうか。

ロボットレストランは日々進化する

そのひとつが、新宿区役所の裏にあるロボットレストランである。この話はもうよく知られているかもしれない。以前、やまとごころ.jpのインタビューでも紹介した、外国人ツーリストが殺到する都内でも数少ないナイトエンターティンメントスポットである。

歌舞伎町の「ロボットレストラン」になぜ外国客があふれているのか?
http://www.yamatogokoro.jp/inbound-interview/2013/index06.html

日本の女子ダンスチーム《女戦》と巨大アンドロイドが共演するダンスショーが楽しめるというふれこみの同レストラン。その開業3周年も近い6月初旬に訪ねたところ、入り口に以前はなかった多言語の歓迎表示が置かれていた。ロシア語やタイ語まであり、客層の多国籍化が進んでいることがうかがわれる。
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18カ国の多言語が表示されるロボットレストランの看板

きらびやかだが、キテレツというほかない待合室の様子は変わらないが、受付は日本語を話す外国人スタッフだった。そこでは東南アジアのリゾートホテルのラウンジでよく聴く洋楽のライブ演奏が行われている。21時50分開演のその日最後のショーで、観客は若い欧米人がほとんど。アメリカのTVコメディショーに出てくるような外国人司会者が「ようこそ、クレージーショーへ」とあいさつすると、照明が落とされ、ショーは始まった。
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ショーの観客席は外国客だらけ。最近はアジア客も増えてきた

実は、半年前にここに来たとき、早めの時間帯だったせいか、欧米の中高年のツーリストの姿が多く、また小さな子連れの母親もいて、客層は明らかに幅広い年齢層に広がっていた。おそらく彼らは滞在先のホテルのロビーに置かれたチラシを手にしてここに来たものと思われた。

見るからに善男善女である彼らは、海外旅行先の夜を過ごす常としてカップルで、あるいは親子で食事を含めたナイトライフに繰り出そうとしていたのだ。はたしてショーの中身は、彼らを心底楽しませただろうか? 少し違和感を覚えたものだった。

そこに一抹のあやうさを感じながらも、ロボットレストランは外国客の趣向に合わせたナイトライフの受け皿として日々進化しているようだった。もはや開業当初のような欧米メディアや文化人が訪れる特別のスポットではなくなっているかもしれないが、客足は遠のくばかりか増えている。はっきり言って、ショーの中身を除けば、そこはとても日本とは思えない。入場料は1人7000円と以前より値上がりしているが、この1年の円安で外国客にとってはチャラみたいなものかもしれない。

このような“クレージー”な外国客向けのナイトスポットは、実のところ、世界のあらゆる観光地で見られる普遍的な光景ともいえる。それが六本木や赤坂、銀座ではなく、歌舞伎町に見られることは、これからの日本のインバウンドの行方を象徴しているように思う。

エクスペディアが指摘する新宿の3つの魅力

ところで、歌舞伎町に現れる外国人ツーリストはどこから来るのだろうか。

その答えのひとつのヒントとなるのが、ホテル予約サイトの市場動向である。

今日どんなに無名の宿泊施設でも、ホテル予約サイトに登録すれば、外国客を呼び込むことができるといわれる。国内ホテルの外国客受入に実質的に最も貢献をしているのは彼らだろう。

なかでも2006年11月、米国発世界最大のオンライン旅行会社として日本法人を開設したエクスペディアの訪日旅行市場における存在感は日に日に増している。当初、彼らの日本参入の狙いは、日本人の海外旅行市場にあったが、ここ数年、海外、特にアジアからの国内ホテル予約が増えているからだ。

木村奈津子マーケティングディレクターによると「エクスペディアはアジア11カ国・地域に販売拠点があるが、その多くは12~13年にかけて設立されたばかり。円安と日本旅行ブームの時期が重なり、訪日予約が一気に増えた」という。実際、韓国や香港、台湾、タイのエクスペディアによる14年の海外ホテル予約件数はすべて日本がトップだった。

同社の作成した「都内国別人気宿泊エリアマップ」をみると、東京の南半分(東京駅周辺、銀座、赤坂、渋谷)は欧米客に人気で、北半分(新宿、池袋、上野、浅草)はアジア客に人気というエリアの住み分けがあるらしい。
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都内国別人気宿泊エリアマップ(エクスペディア提供)

だが、国籍を問わず最も人気があるのは新宿だ。同社は14年エクスペディア経由で予約件数の多かった宿泊施設を「ホテル」部門と「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門に分けてランキングしている。以下、「ホテル」部門10位までのランキングだ。

1位 ホテルサンルートプラザ新宿(南新宿)
2位 新宿グランベルホテル(東新宿/歌舞伎町)
3位 新宿ワシントンホテル(西新宿)
4位 京王プラザホテル(西新宿)
5位 ホテルモントレ グラスミア大阪
6位 ホテル日航成田
7位 新宿プリンスホテル(東新宿)
8位 品川プリンスホテル(品川)
9位 新宿区役所カプセルホテル(東新宿/歌舞伎町)
10位 ホテル日航関西空港

興味深いのは、ランキング入りした都内の7店中6店が新宿のホテルであること。またどちらの部門も1位(前者:サンルートプラザ新宿、後者:新宿区役所前カプセルホテル)は新宿なのだ。

なぜこれほど新宿のホテルが人気なのか。エクスペディアではその理由は「アクセス面」「街の魅力」「施設面」の3つだとして、以下のように分析する。

①アクセス面:新宿は都内の観光地へのアクセスがいい。また箱根に電車で一本、富士山にもバス一本で行ける。

②街の魅力:大都会を象徴する高層ビル群と、歌舞伎町や思い出横丁のような古き良き日本の雰囲気が両方体験できる。

③施設面:高級シティホテルからビジネスホテルまで選択肢が豊富。六本木や赤坂だと高級ホテルが多く、所得の高い欧米客が集中するが、近年増えているアジア客はリーズナブルなホテルを選ぶ傾向にあり、新宿が最適。

箱根と富士山のゲートウェイであることの優位性が新宿にはある。歌舞伎町が新宿を構成する一要素として欠かせない存在であることもわかる。さらに、新宿のホテルの価格帯のバリエーションの多さが、多様な層の外国客の受け入れを可能としているのだ。

一般に外国人ツーリストはよく歩くという。日本人なら地下鉄を利用する距離でも、彼らは歩くのを好む。そして彼らの行動半径はホテルを基点に形成される。こうしてみると、大型バスで乗りつけるアジア系団体客を除けば、歌舞伎町に現れる外国人ツーリストの多くが、新宿周辺のホテルに滞在している比率は高そうなのである。

外国人ご用達のカプセルホテルの世界

新宿人気の理由となっているリーズナブルな宿泊施設の代表といえば、前述のエクスペディアの「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門で1位となった新宿区役所前カプセルホテルだろう。

5月下旬、同ホテルを訪ねると、そこは外国人ツーリストご用達の宿になっていた。

ロビーでは英語が飛び交い、着替えのためのロッカーの脇にはスーツケースが並んでいる。軽食コーナーや自動販売機、コインランドリーなどが置かれた男女共用のラウンジに行くと、スマホを手にした外国客の姿が多く見られた。実際、その日の外客予約比率は39%。アジア客と欧米客の比率は半々という。
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ロッカーの脇に並ぶ外国客のスーツケース

小川周二経営企画室室長によると「外国客が増えたのは2年前から。女性フロアを開設したことでカップルでも利用しやすくなったことが大きいようだ。アジアはタイがいちばん多く、マレーシア、シンガポール、最近はインドネシアが増えている。欧米は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンなどいろいろだ。大半がエクスペディアなどの海外予約サイト経由。連泊が多く、なかには1カ月も泊まっていく外国人もいる」という。
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ポラロイドで撮った宿泊客の記念写真

カプセルホテルは1980年代に成長した業態だが、バブル崩壊以降、斜陽産業と呼ばれた。それでも同ホテルが盛況なのは、サラリーマンから国内外の女性も含めたツーリストへという客層の変化に対応し、ビジネスモデルの組み換えを行ってきたからだろう。

人知れず外客率8割のデザインホテルもある

ホテル予約サイトの驚くべき集客力は、異業種やベンチャー系のホテル事業への参入にも追い風となっている。PRコストいらずで、集客が可能となるからだ。

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある。2013年12月に開業した新宿グランベルホテルだ。
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ひときわ目につく17階建て、客室数380室

立地は歌舞伎町の東のはずれの、なんとラブホテル街の中。だが、ここはエクスペディアの人気ランキング「ホテル」部門2位という。

ロビーを訪ねると、それは一目瞭然だ。フロントの前のラウンジやソファーに多くの外国客がたむろしていて、特に午後のチェックイン・アウトの時間帯にはスーツケースが山のようにロビーに積まれている。

丸山英男支配人によると「周辺に東横インやアパホテル、サンルートホテルなど、同じカテゴリーが集中している。ホテル激戦区の東新宿で、知名度のない我々が生き残るには、思いきって個性的なホテルをつくるしかない」と考えたという。

そこで採用したのが、アジアの次世代アーティスト24名を起用してデザインさせた客室だった。世界的に有名な歓楽街としての歌舞伎町のイメージを具現化したかったという。設計を担当したのは、キッザニア東京で知られるUDS株式会社だった。
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NY在住のカンボジア人アーティストが近未来の女性をイメージした人気の客室

結果はどうだったのか。

「開業から3か月は苦戦したが、1年後には平均客室稼働率は8割を超えた。そのうち外客比率は8割以上。歌舞伎町の立地ということで、外国客の利用は多くなるだろうと考えていたが、これほどとは思わなかった。アジア系は6割で欧米系は4割。ビジネス客とレジャー客は半々。予約の半分以上はネット経由。圧倒的に海外の予約サイト経由が多い」(丸山支配人)。

同ホテルを支持したのは、海外の若い個人旅行者たちだった。価格とデザイン性に敏感な彼らのホテル選びは、まず予約サイトでエリアと価格帯で絞り込んでから、各ホテルの写真をじっくり見比べるという。

丸山支配人は同ホテルが外国客に人気の理由をこう説明してくれた。
「確実にいえるのは、ネットの世界は写真が大事ということ。私どものホテルは客室のデザインに特徴があることから、同じ価格帯のホテルと比べたうえで選んでもらえたのだと考えている」。

「歌舞伎町ルネッサンス」の転換点

ところで、歌舞伎町にはいまも「怖い」「汚い」「風俗のまち」というイメージがある。その認識を世間にあらためて印象づけたのが、多くの死傷者も出た2001年9月の雑居ビル火災だった。

この事故に端を発して歌舞伎町の再生に向けた動きが始まっている。それが05年に新宿区や地元商店街振興組合、都や国の関係省庁などが官民一体でスタートさせた「歌舞伎町ルネッサンス」だった。

ところが、発足当時から危ぶまれていた歌舞伎町の顔ともいうべき新宿コマ劇場が08年に、14年にはミラノ座も閉館となった。それまで歌舞伎町では、劇場や映画館、ライブハウスなどの集客施設に来た人たちが周辺の飲食施設に立ち寄ることで歓楽街を成り立たせていた。だが、主要な施設の消滅で来街者が減り、多くの人々が“回遊”することで生まれるにぎわいにも陰りが見え始めていた。

それだけに、今年4月、新宿コマ劇腸の跡地に開業した新宿東宝ビルの誘致は、歌舞伎町再生のための大きな転換点とみなされている。そこにはシネコンやホテル(ホテルグレイスリー新宿)などの新たな集客施設がテナントとして入居してきたからだ。

新宿区では、靖国通りから北に延びるセントラルロードや新宿東宝ビル前の北側道路などの歩道を順次拡幅している。街の混雑を緩和し、かつての歌舞伎町のイメージを刷新させ、女性や家族連れも呼び寄せたいからだという。

だとすれば、ホテルができることはいい話である。実は、歌舞伎町とその周辺では、ホテルグレイスリー新宿や前述の新宿グランベルホテルもそうだが、今年9月開業予定のアパホテルグループの旗艦店「新宿歌舞伎町タワー」など、ホテルの新規開業がここ数年続々と進んでいた。東新宿は今後、ビジネス客というよりもレジャー客の集まるホテルの街になりそうなのだ。当然これらのホテルには、多くの外国人ツーリストが宿泊することになるだろう。
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シックなストライプとゴジラの顔がラウンドマークとなった新宿東宝ビル

ホテルの宿泊客が街で消費を始めている

歌舞伎町商店街振興組合の城克事務局長は「歌舞伎町を再生させるうえで、我々ができることは、投資を誘致するということだけだった。あとは各々の事業者の皆さんが頑張ってくれる。ホテルができることで、宿泊客が歌舞伎町で飲食や買い物をしてくれるようになるといい」と期待する。

地元ではこれまで歌舞伎町に来る外国人は、街を散策しているだけでお金を落とさないという声もあったようだ。確かに、大型バスで乗りつけるアジアの団体客は、せいぜいコンビニで飲み物を購入するくらいだったろう。彼らの買い物は旅行会社が決めた特定の場所でなければならないからだ。

だが、歌舞伎町周辺のホテルに宿泊していれば、近所でお金を落とす機会は自然と増える。その兆しは、たとえば、新宿グランベルホテルのフロントスタッフらが作成したという自家製マップに表れている。

同ホテルのロビーには、以下のような数種類のホテル周辺マップ(英語併記)が置かれている。

「新宿駅までの周辺地図(SHINJUKU area map)」
「周辺のラーメン屋(RAMEN LIST)」
「24時間営業のお食事処(24HOUR OPEN RESTAURANT LIST)」
「周辺のお寿司屋さん(SUSHI RESTAURANT LIST)」

これらの地図はとてもシンプルで情報量も限られているが、宿泊客からの質問をもとに作成されている。地図に落とされているスポットは、歌舞伎町内にあるごく普通のラーメン屋やレストラン、寿司屋にすぎない。だが、これらを見ていると、ホテルを基点とした外国人ツーリストの活動領域が見えてくる。ホテルの宿泊客たちは、街で消費を始めているのだ。

地元の人と一緒に楽しめる体験がほしい

今年に入って歌舞伎町にはこれまで見られなかった女性のグループなども足を運ぶようになったという。外国客には家族連れも多いので、子供の姿も増えた。街の風景に静かな変化が起きているようにも見える。

「だが、歌舞伎町に安心・安全ばかりをアピールするのはどうか。ちょうどいい緊張感は残したほうがいい。それがこの街の個性でもあったのだから」と前述の歌舞伎町商店街振興組合の城事務局長はいう。

確かに、ここは銀座でも渋谷でもない。それでもこれだけの来街者があるというのは、俗に“アジア最大の歓楽街”と呼ばれる独特の街の風貌が人を惹きつけるからだろう。それが薄まることを危ぶむ向きもあろうが、時代は変わる。かつて歌舞伎町は中国やアジアからの移民労働者が多く働く街だったが、いまやレジャー観光客に生まれ変わった彼らが押し寄せるようになった。それも宿命かもしれない。こうして生まれる“ちょうどいい緊張感”を満喫してくれているのは、いまや欧米客も含めた外国人ツーリストたちではないだろうか。彼らは固定観念にとらわれず、歌舞伎町とその周辺のホテルを選んでいるのだから。

そんな彼らはいま歌舞伎町に何を望んでいるのだろうか。

ここに来て、ただあてどなく“回遊”するだけでなく、立ち止まって地元の人たちと一緒に楽しめる体験、もっといえば思い出づくりがしたいのではなかろうか。お金をかけた大がかりなイベントである必要は必ずしもないと思う。もっとささやかで、気軽に日本人も外国人も参加できそうな趣向を考えたほうがよさそうだ。

ロボットレストランの営業担当者に以前こんな話を聞いたことがある。「新宿周辺と都内の主要なホテルにチラシを置いてもらうよう徹底して営業した。その結果がいま出ていると思う」。

せっかくこんなに多くのホテルが周辺にあるのだから、彼らに声をかけない手はないというわけだ。幸い歌舞伎町周辺のホテルの宿泊客には、スケジュールの決まった団体客は少ない。大半は個人旅行者だ。ロビーで退屈そうにスマホを覗いて暇を持て余しているツーリストはたくさんいる。彼らを街に連れ出すためのアイデアがいまこそ求められているのだ。

新宿グランベルホテルでは、新宿全景が見渡せるルーフトップバーで外国人を集めたイベントを始めようとしているそうだ。「ホテルは街と共存している。いまはSNSで情報が広がる時代。だから、ホテルの集客もいいデザインというだけではなく、次のステップはそこではいつも何かが起きていると思わせる場をつくり出すことが大事なのだと思う」。

これは同ホテルの設計を担当したUDS株式会社の寳田陵クリエイティブデザインディレクターのことばだ。

新宿歌舞伎町にあふれる外国人ツーリストにいかに街を楽しんでもらうか。そのためのネタはここにはいくらでもあると思う。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-30 15:46 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2015年 07月 30日

「博多には日本最初のチャイナタウンがあった」~クルーズ“来襲”も歴史の一コマと考えてみる

先月末、福岡にクルーズ客船の取材に行って、いろんな関係者のお話を聞いたのですが、とても印象に残っている話があります。それは「博多には日本で最初のチャイナタウンがあった」というものです。

この話をしてくれたのは、福岡市クルーズ課の小柳芳隆課長でした。彼は中国に外資系クルーズ会社が参入し始めた2000年代の後半の上海に市の職員として駐在されており、今日の中国発クルーズラッシュの礎を築いたといっていい方です。

「それはいつの話なんですか?」。福岡にまったく縁もゆかりもないぼくは小柳さんにそう尋ねたところ、地下鉄祇園駅のそばにある聖福寺のことを教えてもらいました。

聖福寺
http://www.shofukuji.or.jp/index.html
http://fukuoka-support.net/pre1303-2.html

この寺は日本で最初の禅寺で、鎌倉時代の建久6(1195)年に、明庵栄西禅師が開いたといいます。詳しい歴史の話はともかく、なぜ博多にこのような寺があるかという話が「博多は日本で最初のチャイナタウンがあった」につながるわけです。

ネットで検索していると、いくつか地元の博物館でこのテーマの企画展があったようです。

復元・博多津唐房(はかたつとうぼう)展
平成13年1月16日(金)~5月13日(日)
http://museum.city.fukuoka.jp/archives/leaflet/177/index.html

博多津唐房というのがチャイナタウンです。ここには「平安時代後期、11世紀後半になると、博多には「博多綱首(はかたこうしゅ)」と呼ばれる中国貿易商人を中心に、多くの中国人が住むようになり、当時の史料では「博多津唐房(はかたつとうぼう)」、後世の伝承では「大唐街(だいとうがい)」と呼ばれるチャイナタウンが形成されました。このチャイナタウンは、その後の国際都市博多の出発点となり、13世紀後半の蒙古襲来に至るまで、ほぼ200年間にわたり存在しました」とあります。

チャイナタウンといえば、まず長崎、そして近代以降の横浜と神戸しか知りませんでしたが、いまから900年前の博多に日本最初のチャイナタウンがあったというわけです。

そこで、取材の合間にちょこっと聖福寺を訪ねてみました。
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なんでもここは日本で最初のお茶の木があった場所なんだそうです。
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静かで広い境内を歩いていると、ふたりの若い女の子の外国人観光客がいました。おそらくこんな場所を散策しているのは台湾の子たちでしょう。クルーズ客は来るはずないからです。
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寺の門を出ると、若い欧米の女性が歩いてきました。年配の通訳案内士のおばあさんと一緒に。
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結局、福岡できちんと(というのもなんですが)観光しているのはこういう人たちなんだなと思いました。

さて、再び小柳さんの話に戻ると、彼はこんなことを言っていました。

「博多が栄えたのは、宋や明の時代。21世紀のいま、再び中国人パワーを活かして元気を取り戻すべきではないか」。

彼にとっては、いま起きていることも、歴史の一コマと考えられるというのです。ぼくは基本的にこういう話が好きです。このように考えれば、現在の波乱含みのクルーズラッシュをどう受け入れ、そこからどう実利を得ていこうかという主体的かつ能動的な発想につなげていけると思うからです。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-30 09:53 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 28日

中国クルーズ客専門ドラッグストア「ドラッグオン」を福岡に開店した理由

今年50万人の中国クルーズ客が押し寄せることになっている福岡で、LAOXに負けじとドラッグストアを開店した地元企業が現れています。

今年2月に開店したドラッグオン福岡(株式会社ケアルプラス)で、場所は福岡空港の裏手の住宅街にあります。
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ドラッグオン福岡(訪日外国人観光客インバウンド対応型大型免税ドラッグストア)
https://www.facebook.com/drugonfukuoka

今年上半期、中国客の“爆買い”のターゲットは、ドラッグストアで販売される日本の家庭常備薬や化粧品、健康・美容商品だったことは知られていると思います。当然、クルーズ客の購入ニーズはそこに集中します。

社長もビックリ! 「爆買い」で売れまくる日本の“神薬”
http://www.iza.ne.jp/topics/world/world-7309-m.html

だったら、誰かがその受け皿をつくらなければ…。すべてをLAOXに持っていかれてはたまらないし、もしそうなってしまうと、福岡の人たちはこう思うことでしょう。「所詮、中国人は中国人の店でしか買わない。それなら、我々には関係ない。勝手にすればいい」。

こうしたことから、福岡の人たちは現在のクルーズラッシュをどこかクールに受け流しているという声もあります。

その一方で、「せっかくこれだけ多くの人たちが福岡に来てくれるんだから、彼らのニーズに応えて儲けさせてもらおうじゃないの」。そう考える地元企業が出てきてもおかしくないでしょう。それがドラッグオン博多だというのです。

クァンタム・オブ・ザ・シーズが寄港する日の午前中、ドラッグオン博多を訪ねました。福岡空港からタクシーで15分近く走った場所にその店はありました。店頭に「热列欢迎皇家加勒比海洋量子号游轮贵宾」(ロイヤル・カリビアン社クァンタム・オブ・ザ・シーズのお客様を熱烈歓迎します)と書かれた垂れ幕が掲げられていました。
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店内にはまだクルーズ客は現れていませんでしたが、陳列される商品や中国語簡体字オンリーのポップなどを見る限り、そこは日本のドラッグストアとは思えません。
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昨年秋に中国のネット上で流通した「神薬12種」(日本で買うべき家庭常備薬リスト12種)をまとめた棚もあります。
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日本に行ったら絶対に買うべき12の“神薬”とは?
http://www.recordchina.co.jp/a96011.html

棚の上にはそれぞれのクスリに関する詳しい解説もあります。
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中国客を意識したPM2.5対策商品の棚もあります。
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この店の人気商品のラインナップも。よく中国客は事前に日本で買うべきものをリストにしているといわれますが、クルーズ客は消費が進んだ上海の人たちばかりではなく、内陸の人も多いので、店内には彼らが何を買うべきかについて懇切丁寧に情報提供されています。
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昨年10月以降、クスリなどの消耗品も外国客には免税扱いとなったことから手続きに関する解説です。
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そして、これがこの店の最大の特徴、店員のほとんどは中国人です。これでLAOXと同様に、大量のクルーズ客の受入を可能としたのです。
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ドラッグオン博多については、地元テレビ局のRKB毎日放送で平日の夕方に放映されている情報番組「今感テレビ」の中で紹介されていました。
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店内では、6月中旬に放映された「フクオカの外国人観光客 最新の人気店は免税ドラッグストア」が流されていました。

フクオカの外国人観光客 最新の人気店は免税ドラッグストアhttp://youtu.be/H6LoH61BbTo

この番組では、中国客の人気商品のランキングを伝えていました。

まず3位から。「サンテFXネオ」(参天製薬)。
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2位は「龍角散ダイレクト スティックタイプ」(龍角散)。
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そして1位は「液体ばんそうこう リュウバンS」(大木製薬)。
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この番組を中国客向けに編集した映像には音声がなく、簡体字の字幕が付いていました。それをみると「(中国人)中国国内商品不信任(中国人は国内商品を信用していない)」という番組内の解説コメントも簡体字訳されていました。確かにそれは事実なんですが、はっきり書くものですね。
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さて、同店の関係者にも話をうかがいました。以下、満園昌嗣副社長とのやりとりです。

―こちらの店をオープンされた経緯をお聞かせください。

「博多にはすでに9年前から中国のクルーズ船が寄港していたが、一般の福岡市民とクルーズ客が触れ合う機会は少なく、いわば彼らに場所貸ししているようなものだった。2012年キャナルシティにLAOXができると、クルーズ客は一気に押し寄せるようになった。

とにかく中国客は買い物がしたい。だが、一度にバス何十台ものお客様が来て対応できる店はLAOXしかなかった。それともうひとつはキックバックの問題がある。LAOXはクルーズ客を手配したランドオペレーターやガイドに自分の連れてきた客の売上に応じてキックバックを払う」。

―それは飛行機を利用した中国の団体ツアーの特徴ですが、クルーズ客も同じ構造にあるわけですね。

「そうしないと中国で安い料金のツアーを催行できないからだが、逆に安くしているから、これほどクルーズ市場が急拡大した。もし日本で彼らを相手に商売しようとしたら、この構造に合わせるしかない。つまり、LAOXと同じようにキックバックを支払うということだ」。

―いつごろから開店準備を始めたのですか。

「2014年の9月だ。とにかく中国のスピードは速いので、こちらもそれに合わせないとやっていけないところがあった」。

―そして、今年2月にオープン。クルーズ客はバスで来るから、市内に店舗を置かなくてもいいわけですね。実際のクルーズ客の買い物の様子を見て何か特徴がありますか。

「ひと口にクルーズ客といっても、ロイヤル・カリビアン社のような豪華客船の場合と中国資本の船で4泊5日のツアー代が2000元というような安いものある。客層はまったく違い、販売単価も全く違う。またバスによって旅行会社が違うので、客層も違う。もはやクルーズ客には上海人はほとんどいないといっていいかもしれない。多くは華中エリアの浙江省や江蘇省だが、最近は湖北省や四川省といった内陸からの団体が多くなった」。

―どんな商品をどれくらい買っていくのでしょうか。

「ふつうは1人1~3万円くらいだが、高い客だと一度に50万円お買い上げということもある。健康食品やサプリを1年分。498円の目薬を30個といった感じだ。

中国客は「神薬」のようにネットで流れた情報や口コミを頼りに買いにくる。そして大量購入する。となると、品揃えや在庫の考え方も、一般のドラッグストアとは店づくりも含め、変えなければならない。地元向けの店では、1商品在庫は5~6個でいい。多品種少量が基本だ。しかし、クルーズ客が来ると、1商品が1日で1000~2000個売れる。つまり、ここでは棚に置く商品を絞り込み、在庫を多く用意する必要がある。いまこの店では1200アイテムくらいに絞り込んでいる。一般の日本の店の10分の1だが、在庫は豊富に置いている。

中国客相手の商売は、彼らが欲しいものだけ用意するしかない。選択肢をなるべく減らさないと、在庫がふくれ上がるからだ。そして、最も重要なのが、店にどの商品を置くか。4月から上海事務所を置いて、現地で中国国内のSNSなどを通じて売れ筋商品のマーケティングを行うようにしている」。

―なるほど、このビジネスモデルだと、彼らが何を買いたいか事前につかんでおかないと在庫を抱えることになる。情報収集が最も重要といえるんですね。ところで、このビジネスの今後の展望についてどうお考えですか。

「はっきり言ってこのビジネスが10年続くとは考えていない。とにかく中国の変化のスピードは速いので、3~4年は続くかもしれないが、常にその先を考えておかなければならない。今後は、福岡以外の九州の寄港地にも出店を考えている。4月には長崎にオープンしたが、7月には鹿児島をオープンする予定。

実は、LAOXとは紳士協定を結び、あちらはドラッグストア関連商品を売らないかわりに、こちらも家電には手を出さないという住み分けをしている。もともと地元でクルーズ客専用のドラッグストアを出してほしいという話は中国関係者からずっとあった。彼らも中国客は福岡に来るけど、LAOXでしか買わないという状況は好ましくないと考えていたようだ。地元にも経済効果があるということでなければ、クルーズの受入にも支障をきたすからだ」。

―確かに、東京のLAOXは家電からブランド、宝飾品、クスリまで中国客の買うものはすべて揃えているという感じですが、キャナルシティのLAOXは違うんですね。それにしても、なぜ中国客はこんなに日本のクスリや健康食品を大量購入していくのだと思われますか。

「ひとことでいえば、中国人は自国商品に対する国民総不信任がある。それに加えて、輸入品が高い。関税もそうだが、中国では不動産価格の高騰で小売業が日本のように薄利多売できる環境にはない。流通コストもかかる。そこへきてこの円安。彼らはこんなに安ければ、日本に来て買うのが賢いと考えるようになるのは当然かもしれない」。

いつも思うことですが、中国人の“爆買い”の背後には、なんともいえない不遇なお国事情があるといっていいのです。中国政府もそれを承知しているので、いまのところはクルーズ客の大量送客に目をつぶっているところがあるのかもしれません。

実は、店内には血液検査のコーナーが併設してありました。
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―これは何のためですか。

「確かに、買い物にかけられる時間は限られているが、ここで血液検査をしていただき、その結果を送るので、また日本に来てもらえればと考えている。いまのクルーズ客の博多上陸の様子を見ていて、このやり方が長く続くかどうか疑問はある。なにしろ8時間の上陸で、買い物ばかりでは、ラーメンも食べられない。でも、現状ではそれを言っても仕方がないので、クルーズは次にまた福岡に来てゆっくり過ごしてもらうためのステップと考えるほかない」。

基本的に、中国人の訪日団体ツアーの現状は、クルーズ旅行についても共通していることがよくわかりました。こうした大いなる矛盾をはらみつつも急拡大する中国訪日旅行市場に向き合うには、そして実利を得るには、それらを承知の上で、ひとまず矛盾を呑み込むこと。そして、刻々と変わりゆく市場の行方をにらみ、臨機応変かつスピーディに対応していくという姿勢が必要とされるのだとあらためて思った次第です。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-28 10:13 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 27日

中国クルーズ客は博多に上陸後、どこへ行くのか?

中国からの大型クルーズ客船が今年286回(7月1日現在)寄港する予定という博多港。豪華なクルーズ客船内で楽しんだ中国客も、上陸後は福岡市内にバスで繰り出します。

たいてい早朝に着岸し、夕刻には出発するクルーズの上陸時間は、長く見積もって8時間と言われます。

この間に彼らはどこに行くのか。1日に2隻同時に寄港する日は、100数十台のバスが福岡市内を駆け回ることになるのですが、この寄港地観光の訪問先は、太宰府天満宮と福岡タワー、キャナルシティ博多の3か所が最もポピュラーです。
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まず大宰府の様子を見にいきましょうか。

西鉄大宰府駅の西側に大型バス乗り場があり、何十台ものバスが停車していました。バスを降りたクルーズ客たちは大きなナンバープレートのボードを手にした添乗員について参道を抜け、太宰府天満宮に向かいます。
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首には自分が申し込んだ旅行会社のネームプレートをかけています。バスごとにスケジュールが違うので、道に迷って自分のバスに乗り遅れると大変です。
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参道のお土産屋には中国語のポップがあちこちに見られます。
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境内には中国客以外にも、個人で来たと思われる台湾客やタイ客も多く見られました。
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次に、福岡タワーです。高さ123mの展望台からは博多港全域が見渡せて悪くはないのですが、時間もないせいか、中国客たちはまず上らないそうです。
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で、何をするかというと、タワーを背景に記念撮影をするだけです。
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一応中国語併記の看板もありますが、ここでは買い物することはほとんどなく、近くのヤフオクドームのタウンモールに行くようです。
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この日、福岡市には大型バスがそこらじゅうを走っていました。
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博多港の寄港地観光のメインスポットがキャナルシティ博多です。
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中州にあるこのショッピングモールには大型バスを停めるスペースが十分ないため、周辺はバスで混雑しています。
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キャナルシティ内は中国客であふれています。今年は週に4~5回はこの調子で彼らがやって来るので、地元の人はちょっとびっくりでしょう。
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バスを降りるとみなさん一斉にショッピングモールに向かいます。
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大人から子供、おじいちゃん、おばあちゃんまで、クルーズ客の年齢層は幅広いです。3世代ファミリー旅行も多そうです。

彼らの多くがLAOXの紙袋を手にしています。
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LAOXのある4階に行ってみました。そしたら、すごいことになっていました。
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中国客だらけです。
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店内もそうでした。
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炊飯釜の大量購入コーナーもありました。
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店の外では、買い物予定のない年配の方たちが所在無くベンチに座って家族の買い物を待っていました。
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はてさて、身もふたもない話ですが、LAOXでの買い物が中国クルーズ客の博多寄港地観光のメインイベントなのです。

今年約50万人のクルーズ客が福岡に来る予定ですが、LAOXは大繁盛でしょう。

なぜ中国客がLAOXを目がけてくるのかというと、わりと単純な理由があります。

これだけ大量の中国客の受入可能な家電量販店が他にないということ。ここでは大半の販売員が中国人なのです。

そして、これも身もふたもない話ですが、LAOXで買い物すると、寄港地観光を手配している現地の旅行会社と添乗員に売上に対するキックバックが支払われるからです。

この件については、別の機会に詳しく説明したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-27 17:00 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 24日

中国発クルーズ客船の最大の寄港地に博多港が選ばれる理由

今年、週4~5回というペースで外航クルーズ客船が寄港することになった博多港では、その受入に対応するため、今年5月17日「中央ふ頭クルーズセンター」をオープンさせました。
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博多港中央ふ頭クルーズセンター供用開始 
http://port-of-hakata.city.fukuoka.lg.jp/topic_pdf_1/55a8eadcf13132.15546053.pdf

場所は、博多港国際ターミナルのある中央ふ頭のさらに奥の5号岸壁にあります。
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これは6月27日のコスタ・アトランティカが寄港しているときの写真です。
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一般の日本人はクルーズセンターの中には入れませんが、クルーズ客の入国手続きの迅速化のために20の入国審査ブースを設け、バス80台が駐車可能となっています。現在、多くのクルーズ客船がここを利用しています。

ところが、ちょうど同じ日に博多に寄港していたクァンタム・オブ・ザ・シーズのような大型客船(全長347.8m)は、岸壁の水深や船の全長の関係で、本来はバナナなどの生鮮物を載せた貨物船の受入をしていた箱崎ふ頭5号岸壁を利用するほかありませんでした。

この写真はクルーズセンター方面からクァンタムを撮ったものです。
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現在、博多港にはクルーズ客船が利用可能な岸壁は3つあります。

・クルーズセンターのある中央ふ頭5号岸壁(水深 -10m 延長270m)
・中央ふ頭9号岸壁&10号岸壁(一部)(水深 -7.5m 延長196m)
・箱崎ふ頭4号岸壁(水深 -10m 延長185m)と5号岸壁(水深 -12m 延長240m)[合計延長425m]
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急増する市場拡大に対応するのは大変なことだと思いますが、中国発クルーズ客船の最大の寄港地に博多港が選ばれているのは、理由があります。

その理由について福岡市港湾局は以下のように説明しています。

「2014年1月に福岡市で開催された福岡クルーズ会議の場で、2012年に134万人だったアジア・クルーズ市場が、2020年には394万人に激増するだろうとの予測が発表されました。

東アジアのクルーズ市場が急成長するにつれ、博多港は日本のゲートウェイとして欠かせない寄港地となっています。

博多港は上海港から900㎞、釜山港から200㎞に位置しています。中国・韓国の主要港と近接しているため、博多港は日中韓3カ国をめぐる5~7日間のショートクルーズが可能です。この地理的優位性から、博多港は特に東アジア・クルーズの中で重要な港となりつつあります」。

この地理的優位性に加え、中国クルーズ客の上陸後の大きな目的がショッピングであることから、中国発のショートクルーズ圏内における日本最大の都市・福岡が寄港地として選ばれているわけです。大阪や横浜に行きたくても、そこまで寄港地を広げると5~7日間のショートクルーズが成立しないからです。

では、そろそろクルーズ客の上陸後の様子を見ていくことにしましょうか。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-24 12:28 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 24日

いまや東シナ海は中国クルーズ旅行の新ゴールデンルートです

2015年7月1日現在、博多港に寄港するクルーズ客船は286回の予定です(博多港HPより。ただし、これは諸事情で変わる可能性あり)。

その大半は中国発です。つまり、今年は1週間のうち4~5回というペースで博多に中国からのクルーズ客船が寄港することになります。

もちろん、そのすべてが米国ロイヤルカリビアン社の「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」のような豪華客船というわけではありません。
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6月27日中国発客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」が博多に初入港しました
http://inbound.exblog.jp/24648018/

大きく分けると、外資系と中国系の船会社があります。以下、ぼくが見た博多に寄港する中国発クルーズ船図鑑です。

まず外資系から。イタリアのコスタ・クルーズ社はロイヤル・カリビアン社より早く中国市場に参入しています。ぼくが博多を訪ねた6月下旬にはコスタ・アトランティカ(27日)とコスタ・セレーナ(28日)が寄港していました。
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どちらもクァンタムほどではありませんが、コスタ・アトランティカ(2680人)、コスタ・セレーナ(3780人)と乗客定員の多い大型客船です。

これは上海の旅行会社には展示されていたコスタ社のPRです。今年3月、世界一周86日間のクルーズ旅行が実施されています。
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そして以下は中国系。ここ数年、クルーズ市場の活況ぶりを見込んで中国資本のクルーズ会社も続々現れています。

そのひとつが昨年11月下旬から博多への寄港を始めたチャイニーズタイシャン(中華泰山:渤海クルーズ社)です。こちらは乗客定員927人と少し規模が小さいですが、これもちょうどぼくが博多にいた6月29日に来ていました。
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まだ現物は見たことはありませんが、他にも中国系クルーズ会社があります。

昨年4月下旬から博多への寄港を始めたヘンナ(海娜クルーズ社)で、中国資本初のクルーズ会社です。乗客定員1965人。こちらはそこそこ大きいです。

もうひとつが今年5月17 日から博多への寄港が始まったスカイシー・ゴールデン・エラ(天海クルーズ社)。同社は中国オンライン旅行社最大手のC-Tripとロイヤル・カリビアンなどが出資して設立されています。

これは上海のC-Trip本社を今年2月に訪ねたとき、ロビーに置かれていたPR展示です。
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中国のオンライン旅行社では以下のように、これらのクルーズ旅行を販売しています。

スカイシー・ゴールデン・エラ第1便
天海郵輪“新世紀號”上海+濟州+釜山+福岡+上海6天海上假期>面朝大海 春暖花開!
http://ship.big5.mangocity.com/0-12720.html

mango city.com
http://ship.big5.mangocity.com/cruise-line_0_791_0_0_0_0.html

いま中国のクルーズ市場では、国内外を含めて参入する船会社の増加と客船の大型化による一隻あたりの乗客数の増加が起きています。当然、これによって寄港回数が増えているわけで、博多を中心とした九州クルーズラッシュの背景になっています。

いまや東シナ海は中国クルーズ旅行の新ゴールデンルートといえるでしょう。

実は、このスカイシー・ゴールデン・エラの第1便に乗船した日本人がいます。公益社団法人福岡貿易会上海代表の奥田聖さんです。

彼は同法人のHPに詳細な乗船記を書いています。

中国発クルーズ船旅行体験記~クルーズ船のビジネスモデルを考える~
http://www.fukuoka-fta.or.jp/uploads/attachments/1_1436424001_1.pdf

この乗船記は、なぜ中国でクルーズ旅行が人気となったのか。ここまで市場が急拡大したのか。その理由を教えてくれます。かなり長いレポートなので、今度簡単に解説しようと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-24 12:14 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 23日

上半期900万人超えで、45年ぶりの出国/訪日の逆転が起こる見通し

今日の朝刊で、日本政府観光局(JNTO)による今年6月および上半期の訪日外国人旅行者数動向のリリースが報じられていました。

訪日外国人4割増 上半期900万人(朝日新聞2015年7月23日)

「増加が続いている訪日外国人旅行者について、観光庁所管の宣伝組織・日本政府観光局(JNTO)は22日、今年上半期(1~6月)の推計値が、過去最高だった前年同期から46%増え914万人に上ったと発表した」。

「国・地域別に見ると、最も多かったのは、217万人の中国で、前年の2.16倍。181万人の韓国、179万人の台湾が続いている。欧米諸国からの来日も増えており、JNTOが調査をしている20カ国中、19カ国で過去最高数を更新した。観光庁は、円安基調が続いていることやビザの緩和、消費税免税制度の導入などが奏功したと見ている」。

ついに中国がトップとなったようです。まあ市場規模が他国と比べケタ違いなので、これまでそうでなかったのが不思議といっていいような話ですが、JNTOの中国市場に関するコメントは以下のとおりです。

「中国は、前年同月比167.2%増の462,300 人で、単月として過去最高を記録し、全市場を通じて初となる単月50 万人に迫る勢い。クルーズ市場も好調で、コスタ・セレーナ(乗客定員3,780 人)、クァンタム・オブ・ザ・シーズ(乗客定員4,180 人)をはじめ30 本が寄港した。韓国でMERS の感染拡大が取りざたされた6 月中旬以降は、訪問先を韓国から近隣国へ変更する動きがあり、訪日についてもFIT(個人旅行者)を中心に需要が上乗せされたほか、クルーズでも韓国から日本に寄港地を変更したケースが見られた。鄭州-関西便(週3便)、鄭州-静岡便(週2 便)、合肥-名古屋便(週3 便)など地方都市からの新規就航も相次いでおり、旺盛な訪日意欲が日本各地に需要を広げている」(同リリースより)。

ここで出てくるクァンタム・オブ・ザ・シーズについては、以前本ブログでも紹介しました。

6月27日中国発客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」が博多に初入港しました
http://inbound.exblog.jp/24648018/
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これは6月28日に博多港に寄港したコスタ・セレーナです。

さて再び、朝日の記事に戻ると、こう指摘しています。

「観光庁の久保成人長官はこの日の会見で、1年間の総数が1800万人前後に上るとの見通しを示した」。

それはつまり、1970年以来45年ぶりに訪日外国人が出国日本人の数を上回ることを意味しています。

今年、45年ぶりに訪日外国人数は出国日本人数を超えるだろうか?
http://inbound.exblog.jp/24317982/

気がかりは、9月以降の中国の動向です。ここまで盛り上げておいて、ドスンということはないでしょうね……。レジャーをそこまで政治と結びつけると信用を失うのは誰か、わかっているはずです。

そう念を押してみたくなるものの、ちょっと気になる今日この頃です。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-23 18:00 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 07月 23日

こんなに暑いのに路上で待たされるのは気の毒です(ツアーバス路駐台数調査 2015年7月)

先日、九州で台湾からの家族旅行者に会ったのですが、台湾では7月に入ると、もう夏休みのようです。上旬は中国客を乗せたバスはそんなに増えていませんが、下旬になると目立って増えてきました。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。

1日(水)13:20 3台
2日(木)12:40 4台
3日(金)18:20 2台
4日(土)未確認
5日(日)未確認
6日(月)18:20 3台
7日(火)12:50 4台
8日(水)未確認
9日(木)13:40 3台
10日(金)未確認
11日(土)未確認
12日(日)未確認
13日(月)12:20 4台
14日(火)12:10 2台
15日(水)未確認
16日(木)12:20 4台
17日(金)18:00 4台
18日(土)未確認
19日(日)未確認
20日(月)未確認
21日(火)12:20 6台
22日(水)11:50 3台
23日(木)未確認
24日(金)19:20 3台
25日(土)未確認
26日(日)未確認
27日(月)未確認
28日(火)13:10 6台
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※梅雨明け後の暑さは耐え難いものがありますが、今日も中国客の皆さんはこの炎天下、2軒の食堂前に並んで食事を待っていました。暑いので、医大通りに入って日陰で休んでいます。気持ちはわかります。でも、駐車場もないこんな場所の食堂を使わなければならないのは、とにかくツアー代金を安くしているからなんでしょうが、ちょっと気の毒に思えてなりません。

29日(水) 12:40 5台
30日(木) 12:10 6台
31日(金) 19:10 4台
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by sanyo-kansatu | 2015-07-23 17:57 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2015年 07月 20日

自家製地図でわかる外国人ツーリストが知りたいこと(新宿グランベルホテルの例)

以前、歌舞伎町のラブホテル街の中にある人知れず外国人ツーリストであふれるホテルのことを紹介しました。

2013年12月に開業した新宿グランベルホテルです。

このホテルのロビーには、いつも多くの外国客がたむろしています。特に午後のチェックイン・アウトの時間帯にはスーツケースが山のようにロビーに積まれています。

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある
http://inbound.exblog.jp/24676453/

なぜこんなに外国人ツーリストばかりになったかという理由はすでに書いてしまったので、今回はこのホテルに置かれた宿泊客向けの数種類の自家製地図について触れたいと思います。これらの地図はこのホテルのスタッフたちが宿泊客からよく聞かれる質問を元に作ったものだそうです。だから、この地図を見ていると、外国人ツーリストたちが知りたいことがよくわかるんです。

同ホテルの丸山英男支配人に許可をいただいたので、その一部紹介したいと思います。

「新宿駅までの周辺地図(SHINJUKU area map)」。これは新宿グランベルホテルの周辺にある3つの駅(JR新宿駅、副都心線・大江戸線東新宿駅、副都心・丸ノ内線・都営新宿線新宿3丁目駅)へのアクセスです。実は西武新宿線の新宿駅も近いのですが、マーキングされていません。想像するまでもありませんが、西武新宿線に乗るというニーズはほぼないのでしょう。しかし、最寄りの駅が3つもあるいうことは、外国人ツーリストからすると、とても便利なロケーションだと思うのではないでしょうか。
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地図には、ドラッグストアやドンキホーテ、ゴールデン街、両替所、郵便局、すし屋などがポイントされています。ツーリストの日常にとって必要なモノやコトがうかがえます。

面白いのはこの「周辺のラーメン屋(RAMEN LIST)」でしょうか。歌舞伎町内の7つのそれぞれタイプの異なるラーメン屋が地図に載っています。
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実は、ぼくも自分の仕事場のある東新宿界隈を歩いていると、周辺のホテルに泊まっていると思われる若い欧米のツーリストに「この近くにラーメン屋はない?」とよく聞かれます。ホントにいま日本のラーメンは外国人に人気のようです。何度か新宿3丁目のラーメン屋に連れていったことがありますが、この地図さえあれば、渡せばすむのですから便利というものです。

もうひとつが「24時間営業のお食事処(24HOUR OPEN RESTAURANT LIST)」。やよい軒や松屋などの和風ファストフード店が載っています。確かに、最近この手の店にも外国人が増えてきた気がします。他にも「周辺のお寿司屋さん(SUSHI RESTAURANT LIST)」があり、歌舞伎町内の回転すしなどを載せています。せっかく日本に来たのだから、一度はすしを食べたいでしょうからね。
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その他、新宿区役所のそばのCITI BANKへのアクセス地図や羽田・成田空港へのアクセス方法などが書かれたものもあります。始発から終電の時間、所要時間、料金など詳しく書かれています。便利ですね。

こちらは観光用です。東京スカリツリーと東京ディズニーへのアクセス方法です。わかりやすいです。
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観光用では、築地市場へのアクセス方法もあります。マグロの解体ショーは朝3時半までにタクシーで駆けつける必要があると書かれています。

こうした地図も、ホテルスタッフの皆さんにしてみれば、日々の業務を軽減するための必要に応じて作られたものだったのでしょうけれど、外国人ツーリストの生活圏がほのかに見えてきて面白いです。せっかく歌舞伎町の中のホテルに泊まっているのですから、近所の飲食店を利用してほしいものです。

歌舞伎町に来る外国人は、周辺をふらふら回遊しているだけで街にお金を落とさない、なんて声もあると聞きますが、ホテルがこれだけ増えれば、宿泊客がお金を落とす機会は増えるようになると思います。あとは彼らにとってわかりやすい情報提供のあり方ではないでしょうか。この際、すべてがネットである必要はない気がします。この手の自家製地図は、ツーリストの立場に立ってみると、好ましいものに感じる気がします。

2年前、ラオス北部の小さなトレッキングの町のゲストハウスに泊まったとき、手渡された地図がこれに近いシンプルなものでしたが、情報が絞られているぶん使いやすいと感じたことを思い出します。

ツーリストという生き物は、地図に載っているスポットをすべて制覇してみたいという欲望にかきたてられるところがあります。時間はもてあますほどたっぷりあるからです。でも、情報が多すぎると、最初からそんな野心を持とうとは思いません。豊富な情報の中からどれを選ぼうか、それもときには楽しいことですが、そこまでいらないと思うものなのです。日本に来て、やりたいこと、食べたいもの、いくつもあるとしても、たとえば、ラーメンは1回食べればいい。すしだってそう。たいていのツーリストは、いろいろチャレンジしてみたいのです。日本人向けのガイドマップとはニーズが違うのです。

日本にあふれる外国人向けフリーペーパーの情報満載ぶりを見るにつけ、そんなことが気になります。

外国人ツーリストにとってうれしい地図とは?
http://inbound.exblog.jp/21998151/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-20 15:07 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 15日

ラブホテル? いえ、レジャーホテルで、いま外客の取り込みひそかに進行中

ここ数年、訪日客の増加で東京や大阪などの大都市圏のホテルの需給がひっ迫しています。とりわけ大阪は客室不足が深刻なため、市は外客向けに市内のラブホテルの活用をまじめに検討したそうです。「交通の要所である京橋や天王寺などのラブホテル街を対象拡幅などの設備更新に補助金を出して業態転換を促せないか模索」(朝日新聞2014年8月4日 大阪版)したと報じられています。

ところが、関係者によると「進展はなかった」ようです。ラブホテルは個人経営者が多く、新規施設の投資や多言語化の対応などに難があるためです。

こうしたなか、いわゆるラブホテルではなく、清潔でくつろげる客室やカラオケ、ジャグジーバスなどのエンターテインメント設備を備えたレジャーホテル(ファッションホテル、ブティックホテルともいう)の中に、外国客の受入に取り組む施設が現れています。もともとこの種のホテルでは、カップル利用だけでなく、ファミリーやビジネスマン、さらには女子会といったシティホテル的な使われ方もしていました。

関西を中心に47軒のチェーンを展開する「ホテルファイン」(株式会社レジャー計画・大阪市)では、ここ数年順調に外客の取り込みに成功し、宿泊客数を倍々ゲームで伸ばしています。

ホテルファイン
http://www.hotels-fine.com/

今年1月、ぼくは同社を訪ね、以下のレポートの中で一部紹介しました。

訪日客増加で客室も足りない!?  多様化する宿泊ニーズに対応した新サービスや業態転換はどこまで進むか
http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_11.html

そして先月、同社を再訪し、関則之会長にあらためて話を聞くことができました。

ここでひとつの誤解を解いておく必要があります。同社が展開する「レジャーホテル」という業態は、一般にラブホテルが風俗営業法の管轄にあるのとは違い、一般のシティホテルと同じ旅館業法の管轄の施設です。ただし、立地はたいていラブホテル街などの歓楽地や郊外のロードサイドにあるため、世間は両者を同じジャンルの業態とみなしがちです。これはやむを得ないことだと思いますが、興味深いことに、外国客にはその種の誤解や先入観がないため、受入に際しても影響はまったくなかったといいます。

以下、会長とのやりとりです。

―ホテルファインの外国客取り込みのきっかけや経緯を教えてください。

「弊社はレジャーホテル以外にリゾートホテルの運営もやっている。2008年頃、すでにリゾートホテルではネットで海外のお客様がぽつぽつとお見えになっていた。この年、政府が観光庁を設立させ、これからは海外のお客様を取り込む機運が盛り上がると思った。

そこで、2011年ホテルファインでも自社HPを立ち上げ、一部の客室のネット予約を開始した。当時、この業界では予約を取るという発想はなかった。ウォークインで来るお客様を1日何回転かさせるというのがビジネスモデル。いったん予約を取ってしまうと、部屋を押さえておかなければならない。これは機会損失につながるのではないか、という危惧もあった。だから、全室ではなく、まずは1割程度からネット予約に対応してみようかということでスタートした。

多くの方に誤解されていると思うが、レジャーホテルはラブホテルのように風俗営業の届出をしている施設ではない。ところが、国内の旅行会社やオンライン旅行会社は我々との商談に乗ってくれない(一部取引は始まっている)。関西では「ホテルファイン」という名前が広く知られているのも問題なのだと思う。

その点、海外のホテル予約サイトは理解があった。自社サイトを立ち上げると、エクスペディアやBooking.comなどの営業担当者がすぐに訪ねてきて、登録した。その結果、外国客の予約が入ってくるようになったというわけだ」。

―外客の受入を始めるにあたってどんなご苦労がありましたか。

「最初は外国客のフロントや電話応対が難しかった。外国客は予約を入れた後、よく問い合わせてくる。もちろん、外国語でだ。たとえば、荷物を事前にホテルに送っていいか、ホテルへの行き方など。最初のうちはもたもたしていたが、2年前くらいからようやく対応できるようになった。

海外からどんどん予約が入るが、決済は旅行会社経由の場合もあれば、フロントの場合もある。当然、為替のことを知る必要が出てくる。支払いは事前決済とカードの現地決済があるが、決済トラブルはゼロに近い。海外のサイトでは予約時にクレジットカードを入力する必要があるからだと思うが、むしろ国内客のほうがノーショーがある。

これまでのように、毎日同じ価格で出せなくなった。シーズンや曜日によって価格調整しなければならない。こういった受入態勢づくりはスケールメリットがないとできるものではない。従業員教育やシステム構築には時間とコストがかかるからだ。幸いうちは本社機能があるので、専属でインバウンド担当、予約担当などを配置できた。

こうしたことから、一般のラブホテルやレジャーホテルで外客受入ができるのは一部に限られるだろう。この業界は大半が個人企業。受入には初期コストがかかるし、社員教育が大変。宿泊客が病気になって、病院の手配をしなければならないとき、フロントで外国語対応ができるか。外国客はフロントにいろいろ聞いてくる。近くにおいしいレストランはないか。松坂牛の食べられる店はどこか…。そういうコンシェルジュ機能も求められる」。

―大阪市からラブホテル業界で外国客の受入ができないか相談があったそうですね。

「うちにも大阪観光局の人が来た。そのとき、私はこう説明した。ラブホテルやレジャーホテル業界の経営は、1室月額いくらの売上で組み立ている。それには1日2回転させることも計算に入れている。これらのホテルは初期投資がビジネスホテルより圧倒的にかかる。部屋の広さやお風呂、エンターテインメントの設備などが充実しているからだ。ビジネスホテルの売上額ではとうてい成り立たない。いくら市が施設投資に補助金を出したところで赤字になる。

しかも、うちがいまやっているような運営ができるラブホテルがどれだけあるか。社員教育はどうするのか。

外客受入を始めるとなると、館内案内も多言語化のため全部新しく揃えなければならない。うちもあらゆる表示物を英語と中国語に多言語化した。「トイレは紙を流してください」といったこれまで必要のなかった表示も用意した。食事の問題もある。ベジタリアンやハラル対応だ。外国客は食に対するリクエストが多い。そこで、食事メニューも変更した。うちでは24時間ルームサービスをやっているし、宿泊客には朝食がつく。メニューの種類を増やすことになった。

24時間電話の通訳サービスも始めた。通訳と3者通話ができるシステムだ。フロントにはタブレットも用意した。

外客受入のためには、我々自身が変わらなければならない。経営者が率先して受入態勢をつくっていかないと。海外からお客様がどんどん来るから、なんでもいいから客を取るではいずれしっぺ返しが来る」。

―取り組みを始めて4年、成果は出ているようですね。

「4年前に比べスタッフの語学力が格段に上がっている。最初はクレームも多かったが、最近は店長に宿泊客からお礼の手紙が来るようになった。これまで礼状をもらうなんてことなかった。外国客のリピーターも増えている。

2012年から今年にかけてのネット経由の月ごとの売上、販売客室数をみると、倍々ゲームで伸びている。特に今年3月は単月で約7000室、1室単価も上がり、1万7000円を超えている。
 
ネット予約の8割が外国客だ。やはり桜と紅葉シーズンの売上が高い。特に京都の桜のシーズンは1室単価が4~5万円でも満室になる。というのも、いまの京都の桜シーズンはシティホテルでも1泊10万円がざらになる。それに比べればうちはリーズナブルだからだ。鈴鹿サーキットのときも、ほぼ外国客で埋まる。1週間連泊する客もいる。

これからは限られた部屋をどれだけ高く売れるかが課題だ。レベニューマネジメントの専門スタッフがいて、日々細かく価格調整している」。

―ホテルファインが外国客に人気の理由は何だと思いますか。

「Booking.comでは顧客評価8点以上(10点満点)の施設にアワードを与えているが、うちは多くの施設でいただいている。チェーン47軒のうち外客受入は現在25軒のみ。大阪や京都、滋賀、奈良などだが、少しずつ増やしている。
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考えてみれば、外国客の評価が高いのは当たり前かもしれない。彼らには日本人のような固定観念や先入観はない。スペックそのもので評価するわけだから。なにしろお風呂はジャグジー、室内の音響施設はスピーカー6台装備、100インチのプロジェクタースクリーンがあり、カラオケ、マッサージチェアなど、至れり尽くせりだ。ルームサービスの飲食代も安い。冷蔵庫のドリンクもコンビニ価格。外国客の飲食の利用は多い。

外国客の特徴は連泊が多いこと。たいてい3~4日だが、なかには30日連泊の人もいる。ビジネス出張で利用されているようだ」。

―最近の外国客に新しい傾向は見られますか。また新たなサービスは何かありますか。

「レンタカー利用が増えている。レジャーホテルの特性のひとつが郊外のロードサイド型店舗があること。関西国際空港に14社のレンタカー会社があり、そのうち13社は外国客対応を始めている。そのため、空港からレンタカーに乗ってチェックインされるアジア客が現れるようになった。

日本の交通マナーは世界一。運転しやすい。日本の新車を運転したいというニーズもあるようだ。とにかくレンタカーは安い。関西の場合、大阪を中心に京都や神戸、奈良など各方面に観光地があるが、車で移動すると便利だし、2、3人が乗って移動すると、交通費はかからない。ナビゲーションも多言語化しているので、問題ない。市内に比べ、郊外立地のレジャーホテルは客室料金も安い。駐車場も広くて無料。買い物好きのアジア客は荷物が増えるが、車だと困らない。あとはLCCで来れば、日本の旅行がとことん安くなる。

これからLCCで大阪に来て、レンタカー利用でホテルファインに泊まろうというセットの旅行商品をPRしたいと思う。

また今年に入って中国からのカップルツアーを受け入れている。いわゆるハネムーン旅行で、中国のオンライン旅行会社のC-trip経由で毎月250~300組も予約が入る。中国でも個人旅行が動き出しているのを感じる。

Hotel Fine Garden Juso Osaka (大阪十三精品花园情侣酒店)
http://hotels.ctrip.com/international/686502.html?CheckIn=2015-07-29&CheckOut=2015-07-30&Rooms=2&childNum=2&PromotionID=&NoShowSearchBox=T#ctm_ref=hi_0_0_0_0_lst_sr_1_df_ls_11_n_hi_0_0_0

今年から館内で免税販売も始めた。ホテルのアメニティ、シャンプーや化粧品、香水などの商品に限っているが、客室にカタログを置いている。今後は売り方を工夫する必要がある」。

―今後新規開業などの計画はありますか。

「京都と十三に計画中だ。ただし、ここ数年の土地価格の上昇、特に建築コストの高騰を考えると、採算が合うかどうか頭が痛いところがある。五輪スタジアムが話題になっているように、いまゼネコンはすごい強気になっている。きちんとした技術を持った職人さんの数に限りがあることも影響している。この高値水準は2~3年は続くといわれている。

こうしたことから、新たに土地を買ってゼネコンに頼むと、いまの日本のホテル価格では採算が合わない。世界の主要都市に比べると、東京や大阪はいまでもホテル価格が安いほうだ。ニューヨークやパリでは高級ホテルは10万円台が当たり前。5万円では二流ホテルという感じだ」。

―今後の展望についてお聞かせください。

「結局、ホテルの運営は人の問題だ。施設はつくればいいが、維持管理・運営は難しい。いまの日本には投資したい人間は多いが、運営できる人材が少ないことが問題といわれる。

現在、ホテルファインでは85~90%が国内客(カップルやビジネス利用)、10~15%がインバウンドという比率だが、現在は海外サイトだけと契約している。いまだに国内の旅行会社は色眼鏡で見ているからだが、我々の実績をみれば、いずれ変わっていくだろう。今後我々もさらに変わり続けていく必要があると思っている」。
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ホテルファイン十三店は、大阪市淀川区十三のラブホテル街の一画にあります。
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フロントに置かれたメッセージボードに書かれた外国客による手書きのコメントを見ていたとき、ひとりのブロンドの若い女性がチェックインしてきたのを目撃しました。思わず「あっ」と声を上げそうになりましたが、確かにここは外国人ツーリストがふつうに泊まっているのです。

またホテルのスタッフに客室を案内してもらっているときも、大きなザックを背負ったバックパッカー風の欧米青年が廊下を歩いているのを見ました。実は、十三店にはシングルルームもあり、1泊約5000円で泊まれるのです。しかも、館内には外国客専用のラウンジが用意されています。ここでは食事もできるそうです。
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そもそもこの業態のホテルにフロントがあること自体、ちょっと面白い話ですが、フロントの裏にはスーツケースがいくつも並べて置かれていました。外国人ツーリストたちはチェックアウトした後、昼間は観光に出かけるので、荷物を預かってもらうからです。
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客室は広く、関会長が語るように、大型スクリーンやカラオケ設備、ジャグジー付きの風呂など、至れり尽くせりの環境です。大阪で最高級とされるザ・リッツカールトンやインターコンチネンタルなどの客室と比べても広いうえ、各種スペックに関しては凌駕しているといえます。
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ぼくが20代の頃、北欧から来た友人とその仲間たちが日本のラブホテルは面白いと聞いて、地方に旅行したとき、よく利用していたことを思い出します。彼らはラブホテルという空間に用意されたさまざまな設備や遊び心満点のユニークかつおとぼけデザインを楽しんでいました。

ホテルファインに対する外国客たちのコメントを見せてもらいましたが、多くの人が「ラブホテル」だという認識を持っているようでした。中国のCtripでも、ホテル名は「大阪十三精品花园情侣酒店」。日本名にはない「情侣(カップル)」ということばが添えられています。

たとえば、こんなコメントがありました。

「そう、ここはラブホテルです! しかし、不潔なことは全くありません。宮殿のような客室にプロジェクターが付いています。カラオケと完璧なサウンド設備。テレビの隣にはジャグジーがあります。立地は最高。地下出口のすぐ隣にあります」(梅田店)

コメントの書き手は、それこそ多国籍の人たちで、英仏独語に中国語、ハングル、タイ語もありました。一般に日本のホテルの客室は狭いことで知られているせいか、部屋の広さや設備、アメニティなど好評価のコメントが目立ちました。なかには「立地を除くすべてが良かった」(豊中店)というコメントもありましたけれど。これはラブホテル街という立地をうんぬんしているのではなく、最寄り駅からのアクセスがわかりにくいという意味です。

訪日客の増加で客室不足に悩む大都市圏では、レジャーホテルという業態が外客受入に貢献することが期待されています、ただし、いまの時代、海外予約サイトに登録すれば、予約は入るでしょうが、実際の受入態勢をつくっていくのは、並大抵のことではないことが関会長の話から伝わってきます。

だとしても、この業界にはさまざまな可能性が秘められているのでは、とあらためて思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-15 13:43 | “参与観察”日誌 | Comments(0)