ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 10月 24日

朝鮮の「コスモス街道」と母への思慕

9月下旬、北朝鮮の咸興や開城を訪ねたのですが、印象に残ったのは、街道沿いに咲き乱れるコスモスでした。

激しく揺れる車の中からしか撮れないため、残念なピンボケ写真となってしまいましたが、これは元山から咸興に向かう道中のワンカットです。制服姿の女子学生が自転車に乗ってコスモスの咲く並木道を走っています。
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こっちはピンが多少合いましたが、このとおり。さしずめ「コスモス街道」とでも呼べばいいのでしょうか。
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これは平壌から元山に向かう沿道です。
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こちらは平壌から開城への沿道です。
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ちなみに、これは平壌空港から市内に向かう道路です。
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つまり、今回訪ねた平壌から元山経由で咸興へ、また開城への幹線道路沿いにはコスモスの花がほぼ途切れることなく咲いていたのです。これは明らかに自生ではなく、人為的に植えられたものでしょう。2年前の平壌から元山に向かう街道沿いにもコスモスが咲いていた記憶はありますが、いまよりまばらだった気がします。

いったいこれはどういうことだろう。ガイドに聞くと「金正恩第一書記が国民の目を楽しませるために、朝鮮全土の街道沿いにコスモスを咲かせるよう指導したものですが、金正日元帥の時代から少しずつ始まっていた」そうです。

この風景、確かに目に美しいとは思いましたが、最初ぼくはちょっと意地悪な見方をしていました。この写真のように、朝鮮の農地には主に稲とトウモロコシが栽培されています。その比率は地域にもよりますが、車に揺られて沿道を見た印象では、トウモロコシの多さが目につくのです。特に山間部に入ると圧倒的にトウモロコシ畑ばかりとなり、この国の農業生産についていろいろ考えてしまいます。8月に来たときには、稲もトウモロコシも緑に染まっているので、作付場所が鮮明にはわからなかったのですが、この時期トウモロコシの刈入れが始まっていて、はっきりわかるのです。
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食糧事情に問題があるとされるこの国で、コスモスなど植えている場合なのだろうか…。金正恩体制になってスキー場やローラースケート場など遊興施設の建設が各地で進んでいますが、それと同じ疑問です。

帰国してある人にこんな話を聞きました。金正恩第一書記の母親である高英姫はコスモスが好きだったそうです。一般に朝鮮では高英姫を指す花はクロフネツツジのようですが、初秋になると朝鮮全土に咲き乱れるコスモスは、第一書記の母への思慕(同じことは金正日元帥にも言えそう)を表しているのだそうです。

朝鮮の専門家でもないぼくがこんなことを言っても確たる根拠はないのですが、9月に朝鮮を訪ねたら、誰もがこの国の至る場所で「コスモス街道」を見かけるはずです。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-24 10:25 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 10月 23日

ムスリム・ジャンピング・ガール目撃!? ようこそ、21世紀の新宿御苑へ

仕事がうまくはかどらず、無気力症候群に陥ってしまうことってありませんか? ぼくはよくそうなります。そんなとき、新宿御苑の芝生の上にごろりとしに行きます。仕事場から近いせいで、逃避グセがついてしまいました。困ったものです。でも、きっとぼくみたいな人も多いんじゃないかな、などと心の中で言い訳しながら、新宿門をくぐると、今日もたくさんの人たちが芝生に寝そべっていました。
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ふと見ると、西洋人のカップルがいます。新宿御苑では見慣れた光景です。その向こうには、子連れのママさんグループがいて、ハロウィンに近いせいか、オレンジのかぼちゃの衣装を着せられた赤ちゃんもいます。意外にひとりでやって来ている若い女性も多いです。

しばらくすると、頭にスカーフを巻いたマレー系と思われるカップルも来ました。お約束の自撮り棒を手にしています。新宿門の入口あたりでは、広東語も聞かれました。やはり、パッと見でわかるのは、西洋人とムスリムの人たちで、中国や韓国などの東アジアの人たちは話し声を直接聞かない限り、もう日本人の中に溶け込んでいます。ここは団体客が来るようなスポットではないので、香港やシンガポールなどの中華系の人たちものんびり過ごしているようです。

新宿御苑は外国人ツーリストが多いことで有名です。なにしろトリップアドバイザーによる新宿区の観光部門でトップにランキングされているくらいですから。
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新宿御苑 トリップアドバイザーによる「新宿区の観光」で 114 軒中 1 位
http://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g1066457-d479258-Reviews-Shinjuku_Gyoen_National_Garden-Shinjuku_Tokyo_Tokyo_Prefecture_Kanto.html

それにしても、若いマレー系のカップルを見ていると、時代は変わったなあとあらためて思います。彼らはノービザで日本に来ているのです。

これは20世紀の東京には見られなかった光景といえるでしょう。なぜなら、当時アジアから来日する人たちの多くは、留学生(厳密にいうと外交官やビジネスマンも)を除くとほぼ出稼ぎ目的だったからです。

都内の公園でくつろぐ外国人の光景について、いまでも思い出すのが、1980年代後半のある時期、毎週日曜になると、代々木公園にイランやパキスタン、バングラディシュなどのイスラム圏の人々が集まり、エスニック料理を出す露店が出てにぎわっていたことです。当時は、かの国々と日本の間で相互ビザ免除協定が残っていた関係で、多くのイスラム圏の若者が日本に出稼ぎに来ていたのです。彼らの多くは不法就労だったため、数年後、ビザ免除協定を日本政府が打ち切ると、帰国していきました。

しかし、いま我々が見ているのは、アジアの人たちが日本に遊びに来ている光景です。すでに海外旅行に出かけられる所得を有するミドルクラスがアジアには大勢生まれていて、気軽に日本旅行を楽しめるようになったのですね。

ようこそ、21世紀の新宿御苑へ。思わず、そんな言葉が口をついて出てきてしまいました。せっかく来たんだから、楽しんで帰ってくださいな。ぼくは彼らの姿を見ていると癒されるところがあります。
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ちなみに、この写真は今年の春、新宿御苑に来ていた若いマレー系のグループが記念撮影に興じていたワンシーンです。なぜだか彼女らはピョンと飛び上がって宙に浮いた瞬間をカメラに収めてもらいたいようで、何度もジャンプを繰り返していました。

ぼくは彼女のことを「ムスリム・ジャンピング・ガール」と命名しました。

一般にアジアの人たちは、カメラの前で過剰なポーズを取りたがるようですが、これは新しいバージョンなのかもしれません。それぞれの国で流行のポーズがあるのでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-23 15:09 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 10月 21日

北朝鮮ローカル鉄道ツアーの参加者からメールをいただきました

昨日のことです。ぼくのブログの読者という方から以下のようなメールが届きました。

「はじめまして。Nと申します。あなたがブログで紹介していたKoryo ToursのTRAIN TOURに参加しました」。
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Koryo ToursのTRAIN TOURというのは、ぼくが10月1日にアップした以下の記事のまさにそのツアーのことでした。

明日(10月2日)、北朝鮮のローカル鉄道ツアーが出発します
http://inbound.exblog.jp/24951297/

このツアーは、北京にある英国人経営のKoryo Toursが企画催行。10月2日から12月/13日(前者は空路で北京、後者は鉄路で丹東による出国)までの10日間をかけて北朝鮮をローカル鉄道でめぐるというものです。

TRAIN TOUR – ‘EASTERN ADVENTURE BY RAIL’
http://www.koryogroup.com/travel_Itinerary_2015_train_tour.php

9月下旬、ぼくは北京のKoryo Toursのオフィスを訪ね、同社のバイスプレジデントのサイモン氏にツアーの概要について話を聞いたばかりでしたが、まさか日本人の参加者がいたとは知らず、また今回そのご本人からご連絡いただくことになり、ちょっとびっくりしました。以下、Nさんの文面です。

「旅行の様子をYoutubeに何本かアップしておきました。たとえば、

North Korea Train Tour: From Pyongyang to Hamhung 北朝鮮鉄道の旅:平壌から咸興へ
https://youtu.be/ESGR8oSNhyY

詳しくはのちほど当方のブログで報告する予定です」。

辺境へ(Nさんのブログ)
http://chojiro22.blogspot.jp/  

さっそくNさんのメールに返信させていただき、このツアーについて話をうかがいました。以下、やりとりを整理します。

―このツアーにはどんな人たちが参加していたのですか。

「イギリス人女性の添乗員を含め、総勢15人。

国籍の内訳は次のとおりです。
アメリカ人 4人
イギリス人 6人
オーストラリア人 1人
カナダ人  1人
香港人   1人
ラトビア人 1人
日本人(私) 1人」

これが集合写真だそうです。
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―以前ぼくはブログの中でこのツアーのスケジュールをKoryo Tourのサイトの情報をもとに紹介しましたが、実際このとおりだったのでしょうか。

「ほぼそのとおりです。ただ、変更点も少なからずあります。

①平壌での宿泊は高麗ホテルではく、全泊羊角島ホテルでした。

②清津では予定されていた食品工場の見学はなし(私は昨年訪れました)。代わりにトロリーバスに試乗しました。
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③清津に着いた日の夕食は船員クラブではなく、宿泊先の清津観光旅館でした。したがってカラオケはなし。翌日の昼食を船員クラブでとりました。

④平壌での映画撮影所見学やトロリーバス試乗もなし。でも、路面電車にはかなり長時間乗れました。残念ながら地元民と一緒ではなく、チャーターしたものです。地下鉄も全路線を試乗しました。下車した駅は5つか6つでしょうか。
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⑤平壌でのマスダンスの参観は外国人不可ということでした。代わりに、結成されたばかりのチョンボン(青峰)楽団の公演を11日に見ることができました。オプションで100ユーロ。

⑥平壌での買い物は楽園百貨店ではなく、光復地区商業中心(ガイドはスーパーマーケットと説明していました)でした。ここでは外貨を現地ウォンに交換して(交換は最低5ユーロから)、現地の人に混じって買い物ができます」。

―ツアー料金はいくらでしたか? 直接Koryo Tuor にネットで申し込まれたのですか?

「ツアー代金は2890ユーロ+1人部屋代(相部屋なら不要)400ユーロ +ビザ代50ユーロ。私の場合はリピーター10%割引の289ユーロを差し引いた合計3051ユーロでした。Koryo Toursにはネットで申し込みました。代金は半額の1500ユーロを事前に銀行振り込みし、残額を事前説明会の際に現金で支払いました」。

―ツアーに参加されたご感想は?

「同行者にも恵まれ、いい旅ができました。唯一の不満は私にとってはじめての咸興での滞在が短く(午後4時ごろ到着して翌早朝に出発)、肥料工場の見学のみだったことです。添乗員によれば「咸興はまだまだ閉ざされている」とのことでした」。

Nさんから道中の写真をたくさん見せていただきました。特に列車の車窓から見える北朝鮮のローカルな世界(道行く人々の様子や暮らしが見えてきます)がとても魅力的でした。Nさんは自分の写真は著作権フリーなので、自由に使ってかまわないと鷹揚なことをおっしゃるのですが、やはり貴重な作品ですので、このツアーのメインテーマである乗り物関係の写真のみ一部使わせていただくことにしました。車窓の風景は、いずれNさんのブログにアップされることと思います。以下、鉄道ツアーの寝台車、食堂の様子などです。
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それにしても、北朝鮮では続々とユニークなツアーが実現しており、以前紹介した航空マニア向けツアー同様、欧米人グループに混じって日本人も参加しているようです。

北朝鮮の航空マニア向け旧型ソ連機搭乗ツアーの中身
http://inbound.exblog.jp/24952047/
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by sanyo-kansatu | 2015-10-21 16:24 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 10月 09日

旅する画伯が描いた36年前の江南水郷の原風景

目を見張る発展を遂げてきた21世紀の中国。では、いまから60年前はどんな世界だったのだろうか。あるいは、あなたの子供の頃にはどんな風景が広がっていたか、覚えていますか。 

これは長江下流域に点在する江南水郷の36年前の姿を描いたものである。
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「疏影横斜」(1979)高斉環 水彩画

ガイドブックで紹介される観光地化の進んだ今日の水郷ではもう出会うことの難しい、人と水辺の暮らしが溶け合う優美な原風景。うたたねを催すような夢心地の記憶がこうして作品に残されたことは、いまとなっては僥倖と言わねばならないと思う。

高斉環画伯は1935年中国遼寧省遼陽生まれ。幼少より地元の高名な水墨画家から手ほどきを受け、瀋陽に魯迅美術学院が建学された1951 年、わずか15歳ながら1期生として入学を認められるほどの神童だった。卒業後は、黒龍江省ハルビンの美術出版社に画家兼編集者として着任し、東北三省をはじめ桂林や水郷、雲南など全国各地を旅しながら絵筆を執った。1980年代に来日し、日中を往来しながら創作活動を続けてきた。

現在の瀋陽魯迅美術学院
http://www.lumei.edu.cn/

その画歴60年間の集大成となる画集が今年7月東京で刊行された。同画集は、画伯が大学時代にロシア美術を通じて学んだ油絵や水彩画、そしてフランス印象派の手法を中国の水墨画と大胆に融合させた彩墨画のパートに分かれている。独自の作風で描かれる作品世界は、中国の土地でありながら、どこか異国のようでもあり、人を旅に誘う不思議な力を有している。
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■『高斉環画集』(日本芸苑水墨画研究会 定価3000円+税)をお求めになりたい方、また画伯の他の作品についてお尋ねになりたい方は、以下にご連絡ください。

日本芸苑水墨画研究会 gaohong021016@gmail.com
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by sanyo-kansatu | 2015-10-09 15:02 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2015年 10月 09日

国慶節なのに新宿にバスが少ないのはなぜか(ツアーバス路駐台数調査 2015年10月)

国慶節がやって来ました。ところが、昨年までツアーバスが押し寄せていた新宿5丁目も、今年は思ったほど姿を見せていません。

特に数が少ないのが夕方で、9月中旬に中国人団体客をあてこんでオープンした中国人経営の居酒屋も集客の当てが外れたようです。

新宿5丁目に中国客向けインバウンド居酒屋がオープン
http://inbound.exblog.jp/24938094/

なぜ国慶節だというのに、新宿のような都心にバスが少ないのか。これは推測でしかありませんが、都心のホテル代金の高騰が影響しているのではないでしょうか。つまり、中国団体客の利用するホテルが都心からこれまで以上に離れた場所になってしまった関係で、昼間は新宿に立ち寄るとしても、夕方はホテルに近い東京郊外や埼玉、千葉といった場所で夕食を取っているのではないでしょうか。おそらく、そこでは新宿5丁目にあるような中国団体客専用の食堂が在日中国人らによって経営されているに違いありません。今度調べてみたいと思います。
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なお9月30日歌舞伎町にアパホテルグループの旗艦店とされる歌舞伎町タワー店が開業しました。料金もかなり高く、団体の利用はあまり考えられません。
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※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。

1日(木)未確認
2日(金)18:00 2台
3日(土)18:20 3台
4日(日)未確認
5日(月)17:50 0台
6日(火)11:50 5台、17:20 2台
7日(水)11:00 3台、12:00 6台、14:10 3台、17:20 3台
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※この日は今年の国慶節の最終日。ツアーバス客も比較的若い世代が目に付きました。

8日(木)18:20 3台
9日(金)11:30 5台
10日(土)未確認
11日(日)12:20 3台
※この日のツアーバス客はこれまでどおり中高年世代が大半。華東方言を使う人たちでした。

12日(月)未確認
13日(火)11:40 3台、12:20 8台
14日(水)12:00 4台
15日(木)未確認
16日(金)12:20 3台、17:20 0台
17日(土)未確認
18日(日)12:40 1台、18:10 5台

19日(月)12:10 4台
20日(火)12:10 6台、18:10 3台
21日(水)18:10 3台
22日(木)12:20 5台
23日(金)11:50 4台

24日~31日 海外出張のため、未確認。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-09 13:52 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2015年 10月 08日

ニッポンのインバウンドはここがおかしい!?(後編)AISO王会長、大いに語る

本稿は、9月中旬、インバウンドの裏も表も知り尽くした一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の王一仁会長にお聞きした話の続きです。

株価暴落は中国の訪日旅行市場にどんな影響を与えるか(前編)AISO王会長、大いに語る
http://inbound.exblog.jp/24963833/

王会長は上海生まれの香港育ち。日本でいえば団塊の世代にあたり、1970年代以降は日本に在住する香港人です。頭の回転が速く、そのぶんとりとめもなく話題があっちへこっちへと飛び交うような話をする方です。ですから、毎度話を聞いた後、あらためてその内容を整理する作業が必要です。でも、聞き取りメモを見返しながら、王会長の真意を探るのは、ちょっと楽しい作業でもあります。

そもそも今回中国の株価暴落に見られる経済の減速が訪日旅行市場にどのような影響を与えるか、という点について話を聞きにいったわけですが、誰もが簡単に答えることの難しいこの種の質問に対して、王会長は国内外のさまざまな状況をふまえつつ独自の観点を提供してくれました。さらには、今日大盛況を迎えた訪日旅行市場の現場で起きている問題点を率直に語っています。

インタビューの後半では、この点にしぼって内容を整理しようと思います。主に以下の5つが指摘されています。

①バスは本当に足りないのか?
②タイ人団体ツアーは問題多発中
③関空の入国審査に2時間はひどすぎる!?
④おかしな日本のTax Free
⑤日本の旅行会社の外国人取扱額1.8%は少なすぎるでしょう

それぞれ王会長の話をもとに説明しましょう。

①バスは本当に足りないのか?

近年アジアからの団体観光客の増加で、ランドオペレーターがバスを調達できないために、ツアーの受入をお断りしているケースが増えています。昨年ぼくもやまとごころ.jpの中でこの問題を取材したことがあります。

バスの不足が国際問題に!~今春、訪日旅行の現場では何が起こっていたのか
http://inbound.exblog.jp/22771778/

運輸局からも現場の事情をよく知るAISOに「本当にバスは足りないのか?」といった問い合わせがよくあるそうです。その際、王会長はこう答えることにしているといいます。

「バスが足りないのではない。ドライバーが足りないのです。外国客を乗せるインバウンドバスのドライバーのなり手が少なすぎることが問題なのです」。

王会長がこう話すと、たいてい誰もが「えっ、それどういうこと?」。そう問い返すそうです。

「バス会社や運転手の間で、インバウンドバスの評判が悪すぎるんです。夜遅くまで走らされるとか、運賃をダンピングされて賃金が安すぎるだとか。でも、昨年実施された貸切バスの制度変更は、運転手の労働環境の改善や安全対策を目的としたもので、これらの問題もかなり改善されたはずです。外国客を乗せて走るインバウンドバスの世界はやりがいもあるし、楽しいこともたくさんある。チップもけっこうもらえる。どうかもっと多くの関係者にインバウンドバスに取り組んでいただきたい」。

いまだに業界関係者の間にインバウンドバスに対する偏見や先入観があるのだそうです。外国人を相手にするのが苦手という意識もまだあるでしょう。

王会長はこんな話もします。最近、現場で1日8時間の労働時間を厳守するあまり、道路渋滞やフライトその他の遅延などで夕食の時間が遅くなった場合、当初ホテルまでお客さんを送る予定だったのに、時間が来るとバスは車庫に帰らなければならないため、置き去りにせざるを得ない。添乗員は仕方なく何台ものタクシーにお客さんを振り分け、ホテルまで送るしかなくなる。そういうケースがままあるそうです。

ちょっとひどい話ではないでしょうか。しかし、バス会社に労働時間を管理されている運転手には、やむを得ない事情なのだそうです。もっと現実に即した弾力的なルールが必要ですよね。バス問題は一筋縄ではいかないところがあります。

王会長は言います。「でも実際は、こんなことばかりじゃありません。もっとインバウンドバスの世界を広く知ってもらうようにしないといけない。よくホテルを舞台にしたテレビドラマがあるけれど、インバウンドバスの運転手を主人公にしたドラマを誰かつくってくれないものか」。

もう5年も前のことですが、ぼくはインバウンドバスに乗り込んで運転手にじっくり話を聞いたことがあります。このとき思ったのは、バスの運転手にもいろんなタイプがいて、合う人合わない人いるでしょうが、必ずしもネガティブな話ばかりではないということです。

ツアーバス運転手は見た! 悲しき中国人団体ツアー
http://inbound.exblog.jp/19743507

ただ、ドラマの制作者たちがこの世界の面白さに気づくには、もう少し時間がかかるかなあ…。

②タイ人団体ツアーは問題多発中

これは前述のバス問題につながりますが、タイ人団体ツアーは運転手とのトラブルが多いそうです。

理由はいくつか考えられます。これは以前から指摘されていたことですが、一般にタイ人団体ツアーはスケジュールの変更が多い。タイから来た旅行会社の添乗員がツアー客の声に弱すぎるためで、予約していたレストランや訪問先のキャンセルも多発しがちだというのです。

しかも、添乗員は日本語がそれほど堪能ではない。いまタイ人団体客を連れてくる添乗員は、かつてタイを訪ねた日本人相手にガイドをしていた人たちで、多少は日本語ができたとしても、実際の日本のことはそれほど精通していないといいます。そのため運転手とのコミュニケーションも問題が多いとか。

「タイ語の日本語通訳案内士が全国に何人いるかご存知ですか? 全体(約1万8000人)のうち、わずか0.1%です。これで(今年1~8月ですでに)50万人を超えるタイ人観光客の受入が可能といえるのでしょうか」(王会長)。

タイの訪日市場は、事実上通訳案内士制度不在のまま拡大しているのです。こういう話を聞くと、アセアン諸国のビザ緩和もいいけれど、受入態勢はどうなっているのか。そういう批判がいつ出てきてもおかしくなさそうです。

③関空の入国審査に2時間はひどすぎる!?

インバウンド業界でさらに問題となっているのが、アジア路線が激増している関西国際空港の入国審査の時間がかかりすぎることだそうです。

「平均2時間かかる。せっかく日本に来たのに、こんなに待たされてはたまらない。バスの時間制限も気になるし、入国審査官が足りないのです」(王会長)。

ぼくは以前、羽田空港の入国審査官に事情を聞いたことがあります。もちろん彼らは人員を増やす必要を痛感しており、またお一人おひとりは激務をこなしています。ですから、特定の誰かを責め立てる気にはなれないのですが、この問題ももっと広く知られていい話ですね。

訪日1300万人を達成したものの、気がかりな入国管理の話
http://inbound.exblog.jp/23928048/

④おかしな日本のTax Free

昨年10月日本の免税品枠の拡大が実施され、訪日外国客の購買意欲をかきたてることに成功しているようです。しかし、この制度についても、王会長は違和感がありそうです。

「昨年の免税品枠の拡大で、化粧品や食品など、いわゆる消耗品も免税対象となったのですが、本来帰国後に封を開けることを前提に店で袋閉じしても、お客さんはホテルで袋を開けてしまっている。目の前にお菓子があれば食べちゃうのは仕方がないけれど、ひとりのお客さんが免税枠の5000円分でまとめ買いして、あとでみんなで分けることも公然と行われている。そんなことで目くじら立てることはないかもしれません。でも、日本の、特にインバウンドに関わる制度設計は、すごくいいかげんで場当たり主義に見えてしまう。日本人はある方面では厳格にルールを守ろうとするのに、ある方面では目的と手段が噛み合っておらず、肝心なことが抜け落ちてしまっている。外国人からみると、すごくおかしく思う」。

おっしゃるとおりですね。ただこの問題に関しては、それで誰が被害を被っているのか、日本の納税者だなどと息巻いても仕方がない気がしますし、要はアジア客にたくさん買ってもらいたい、その一心で始めた制度には違いなく、どう改善すればいいのか、もう少し時間を経て考え直してもいいのかもしれません。

少し前まで香港で起きていたように、中国本土客が根こそぎ日用品を買いつくし、市民生活に影響が出るというような事態になれば話は別ですが、さすがにそこまでの話ではないと思うからです。

⑤日本の旅行会社の外国人取扱1.8%は少なすぎるでしょう

最後の指摘は、旅行業界内の問題ですので、あまり多くの方には関係ない話かもしれません。要するに、JTBグループを筆頭とした国内の旅行会社は、訪日外国人マーケットにおいて驚くほど売上が上がっていないという話です。

以下は日本旅行業協会(JATA)の統計です。

主要旅行業者の旅行取扱状況速報 平成26年4月分~平成27年3月分(日本旅行業協会)
https://www.jata-net.or.jp/data/performance/2015/1_26042703.html

海外旅行 2,203,392,889千円(34.3%)前年度比98.4%
外国人旅行 112,515,653千円 (1.8%) 前年度比135.2%
国内旅行 4,103,644,939千円(64.0%)前年度比102.1%
合計 6,419,553,481千円   前年度比101.2%

日本の旅行会社の扱うマーケットは大きく「海外旅行」「外国人旅行」「国内旅行」の3つに分かれるのですが、その取扱額の内訳をみると「外国人旅行」、すなはちインバウンドの比率が全体の1.8%に過ぎないのです。

つまり、日本の既存の旅行会社はこれだけ訪日客が増えているのに、本業であるはずの国内の旅行手配サービスの分野で外国客の取り込みができていないのです。

なぜこんなことになってしまうのか。日本の旅行会社は、中国の団体ツアーに象徴されるような免税店へのキックバックを前提にした薄利多売のビジネスモデルを受け入れることができない。そうでなくてもアジア客が全体の8割近くを占める「外国人旅行」は利益が薄いため、参入できないなど、いろんな理由を指摘するのは簡単ですが、日本の旅行会社のサービスが外国人にとって、現状としては魅力的とは受け取られていないことは認めなければならないでしょう。

AISOのような団体に、従来の旅行業の垣根を越えたさまざまな業界の会員が集まることでインバウンドビジネスの新たな裾野を広げていること。その会長が香港人であることには、理由があるのです。
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さて、これらニッポンのインバウンドの数々の問題点は、王会長が5~6年前からずっと指摘していたことです。「でも、日本はなかなか変わらないことがよくわかった」と半分笑いながらおっしゃいます。

そして、最近の決まり文句はこうです。自ら鼓舞するようにこう語るのです。

「インバウンドは、昔はスキマ産業。リーマンショックがあり、震災があり、尖閣があり、それでもいまや王道となった。このマーケットは絶好のチャンスであることはかわらない。だから、皆さん、制度設計もそうだし、実際の運営もあまり杓子定規にならず、もっとうまく利益を上げることを考えましょう」。

これはランドオペレーターの社長でもある王会長の本音でしょう。

王会長、ぜひまた話をお聞かせください。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-08 17:49 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 10月 05日

株価暴落は中国の訪日旅行市場にどんな影響を与えるか(前編)AISO王会長、大いに語る

一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の王一仁会長は、日本で訪日外国人旅行市場がひそかに動き出した1980年代の黎明期から大盛況を迎えた今日に至るまでのすべてを知り尽くした人物です。

一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)
http://shadanaiso.net/index.html

総合ワールドトラベルとAISOのこと(トラベルマート2011 その6)
http://inbound.exblog.jp/17150936/

ぼくは年に何度か王会長の話を聞きにいくことにしています。

今回(9月中旬)どうしても王会長に尋ねてみたかったのは「株価暴落は中国の訪日旅行マーケットにどんな影響を与えるだろうか」という質問でした。

7月の訪日客の伸び率減速は正常に戻ったとみるべき

それに対する王会長の答えは以下のようなものでした。

「日本のメディアが騒ぐほど、中国の人たちは株価暴落後の世界をそれほど心配していないようだ。確かに、個人投資家の多くは資産をいくぶん目減りさせたとはいうものの、株価は去年の今頃の水準に戻ったようなもの。不動産バブルについても、一年前に政府が投資用のマンションの購入を事実上禁止したことから、すでに景気の後退は実感していたと思う。それでも、訪日旅行は増える一方だった」。

―つまり、影響は少ないということでしょうか。

「その前にふまえておくべきことがある。今年上半期の中国の訪日旅行市場はご存知のように異常な伸びでした。それは円安もあるが、それ以上にMERSの影響で、韓国から日本へ旅行先を変える中国人が増えたことが大きい。夏以降、若干訪日客の伸び率が減っているのは、株価暴落のためというより、韓国にも7月下旬頃から人が戻りつつあることで、いまはむしろ正常に戻ったと理解すべき」。

―確かに、今年7月の中国の訪日客数は前年同月比105.1%増と6月に比べて伸び率が落ちています。でも、総数は57万6900人と単月で60万人近い過去最高を記録。会長は上半期までが異常だっただけで、下半期に入ると、正常に戻るだろうという認識なんですね。

7月の訪日外客数、単月過去最高192万人を記録(JNTO)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/150819_monthly.pdf
※ところが、8月は前年同月比133.%増の59万1500人と伸び率を増やしています。話をお聞きしたときはまだ発表前だったので、7月の伸び率の低下をみて王会長は「正常に戻った」と指摘しているものと思われます。

「だいたい今年1月頃は、訪日中国客が初めて単月で30万人超えたと騒いでいたのですよ。それがいまは60万人近い。大化けといっていい。実際のところ、日本のホテルやバスなどの受け入れ側は、正常に戻って(訪日中国客の伸びが減速して)かえって良かったと思っているのではないか。上半期は海外からの集客を断ってばかりだったのだから」。

人民元切り下げは関係ない

「9月に入ると、訪日客の勢いはだいぶ落ち着いたと思う。もともと9月は夏休みと国慶節のはざまのオフシーズン。だが、今年の中秋の名月は9月27日。国慶節より少し前倒しで中華圏からの予約が入っている。いま中国の長期休暇は、旧正月と国慶節の大きくふたつ。以前は5月の労働節もそうだったが、3つもいらないということで、政府が5月の長期休暇は取りやめにした。今年の国慶節は10日以上の連休を取る中国人も多いと聞いている。今年の国慶節は例年並みだと思う」。

―人民元の切り下げもありましたが、どうですか。

「切り下げたといっても4%程度。すでにこの数年間で30%以上円安になっているので、中国人にとっては大した影響はない」。

―では、“爆買い”には影響なさそうですね。

「いま中国では、自国で買い物をするように働きかける施策が打たれている。6月にまず一部の輸入品の関税を下げた。そして、8月には深圳に海南島と同じような免税店をつくったという報道もあった。そこでは香港と同じ価格で輸入品を購入できるそうだ」。

爆買いを見るにみかねた中国政府は輸入品の関税を引き下げるもよう
http://inbound.exblog.jp/24564700/

「実は、いま香港の景気は良くないようだ。昨年以来の反中デモや今年2月に起きた中国の運び屋に対する市民の反発もあり、中国政府は中国人の香港訪問を週に1回に制限するなどしたことから、かえって香港経済は影響を受けている。おそらく今後香港の不動産価格は下落に向かうだろう。もちろん、これまで高すぎたことが是正されるともいえるが、これまで好調だった香港の訪日客に影響が出るかもしれない」。

“爆買い”が減るとツアー代が上がるという連鎖

―なるほど。株価暴落以外に中国の国内外の事情が与える影響も考える必要がありそうですね。

「こういう言い方ができるかもしれない。確かに、株価暴落で少し懐具合が寂しくなると以前に比べて一人当たりの中国客の“爆買い”量が減ることは考えられる。それは中国団体客が日本国内の免税店に支払うキックバックが減ることを意味する。そうなると、在日中国人を中心とした国内のランドオペレーターは中国客のホテルやバスの手配をカバーできなくなる。すると何が起きるかというと、これまでのような安いツアーを中国の旅行会社が提供できなくなる。つまり、ツアー代金が値上がりする。そうなると、これまでのようにお客が集まるとは限らない」。

―う~む。そういう連鎖でいずれ訪日中国客の伸びが鈍化する可能性もあるということですか。まさにインバウンドの裏表を知り尽くした王会長らしい指摘ですね。その兆しは見えているのでしょうか。

「実際、大阪などの大都市圏ではホテル料金が高騰していて、国内のランドオペレーターはホテルの確保に窮している。だから、いまは噴火の影響で観光客が減った箱根のホテルが穴場だという話も出てくる。訪日客の動向は、日本側の受入事情によるところも大きいといえる」。

今後は個人客の動きに注目すべき

「訪日中国旅行市場を考えるうえでもうひとつのポイントは、C-Tripに代表されるオンライン旅行社の勢いだ。いまや中国ではオンライン旅行社による予約が浸透していて、C-Tripの関係者によると、訪日市場の伸びは前年比で7倍増らしい。上海市場においてはすでに半分、北京で30%をオンライン旅行社が占めるという。彼らの多くは個人旅行者なので、これまでの中国団体客とはまったく違う動きをするため、これからは目が離せない」。
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C-Trip
http://www.ctrip.com/

―いよいよ中国も個人旅行者の時代になろうとしているのですね。もちろん、内陸からの日本路線も急増しており、おなじみの団体客も減ることはないのでしょうが、これからは訪日中国人マーケットは二極化した実態に対応しなければならないということですね。

※以下の記事は2年前に書いたものですが、いよいよ彼らが日本に上陸する時代を迎えたといえるでしょう。

日本の1980年代を思い起こさせる中国のバックパッカーブーム
http://inbound.exblog.jp/20348104/

「もっとも、不安要因もある。中国の日本路線は激増している。特に10月以降、羽田への日本路線は1日約20便になると聞いている。はたしてそれだけ増やして席が埋まるのか。ちょっと疑問もある」。

そんなに飛んでくるの!?  ちょっと驚いてしまいますが、今後の市場がどう動いていくのか。要注目です。

バブル崩壊後も海外旅行者の増えた日本と同じ道を進む!?

中国の株価暴落と訪日旅行市場の関係については、個人的に思うところがあります。日本がバブル崩壊を迎えた1990年代初頭、日本人の海外旅行者数は約1000万人でした。では、バブル崩壊で日本人の海外旅行者数は減ったのでしょうか。実は違います。その後10年にわたって伸び続け、頭打ちとなったのは2001年の米国同時多発テロの年でした。それ以降は1600万人前後で伸びは止まっています(そうこうしているうちに、今年は45年ぶりに訪日外国人が出国日本人を逆転しそうです)。

つまり、中国で仮にバブルが崩壊したのだとしても、海外旅行者数はしばらくは増え続けるのではないか。ただし、やみくもに増えるというのではなく、「安近短」のアジア方面への渡航が拡大するのだろうと思うのです。

これから中国でも日本と同じようなことが起こるのではないか…。そう思っていたところ、最近こんな記事が東洋経済オンラインに出ていたので、一部抜粋しておきます。

株価下落でも「中国爆買い団」が減らないワケ(東洋経済オンライン2015年10月2日)
欧米旅行は急減し、日本に人気が集中
http://toyokeizai.net/articles/-/86559

「中国での海外旅行需要が縮小しつつあることから、日本のインバウンド業界にもなんらかの影響を及ぼす可能性は否めない。ところがフォワードキーズは、「欧米など遠くに行くのをやめ、日本や台湾などの近場に行こうとする需要は堅調」と分析している。

たとえば、11月の国際線航空券販売数の予想を見ると、欧州行きが前年と比べて11%、南北アメリカが50%も落ち込んでいるにもかかわらず、アジア太平洋行きは35%増加と引き続き高い伸びを示している。つまり「中国で株価下落が起きたものの、当面は日本への爆買いの波は止まらない」と見るべきだろう」。

やっぱり一度バブルの味を知った国民は、すぐにはやめられないのです。ただし、そう遠くには行けないので、近場を目指す。その恰好の旅行先のひとつが日本であることは間違いないようです。

次回は、王会長の日本のインバウンド業界に対する辛口の指摘を紹介したいと思います。

ニッポンのインバウンドはここがおかしい!?(後編)AISO王会長、大いに語る
http://inbound.exblog.jp/24974742/
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by sanyo-kansatu | 2015-10-05 12:13 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 10月 04日

渋滞というのは大げさだが、平壌市内には車が増えている

前回、国際商品展覧会の報告の中でも少し触れましたが、平壌市内を走る車が増えています。

平壌には「消費者」と呼びうる人たちがいるらしい(第11回平壌秋季国際商品展覧会にて)
http://inbound.exblog.jp/24960989/

これはちょっとした驚きでした。2013年夏にこのまちを訪れたとき、高層ビルの並ぶ整然とした街並みに比べ車の数があまりに少ないと感じましたが、今回はそこそこ通りに車が走っていて、一部の交差点で長い信号待ちの列ができていたからです。

基本、ぼくらはマイクロバスでの移動しかないので、車窓から道路状況をうかがうしかないのですが、市内の信号はかなり機能していて、車列のできる様子がうかがえます。

これは普通門近くの道路です。
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これなど渋滞に見えなくもありません。
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きちんと頭を揃えて信号待ちしているところは、中国よりずっと交通マナーがいいといえるかもしれません。
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これは勝利通りの少年宮の近くです。このあたりもわりと混んでいます。
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タクシーの数も相当増えています。共同通信が2013年頃、以下の動画ニュースを配信していました。どうやら新体制の生まれたこの頃が転機となっているようです。

市民の足として普及始まる 平壌のタクシー(共同通信)
https://www.youtube.com/watch?v=i5caVOhorcY

外国人観光客はタクシーに乗る自由はほとんどないのに、市内にはそこらじゅうで中国と同じグリーンとイエローに塗り分けられたデザインのタクシーが走っているのです。
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平壌市内では現在、中国資本が入った2社と国営タクシーなどが数社運行しているそうです。高麗航空が運営する「高麗タクシー」や「KKGタクシー」などが知られています。

見えにくいですが、このタクシーの車列の前から2番目のブルーの車は「高麗タクシー」です。
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これがKKGタクシーです。
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タクシーから原油採掘事業まで…北朝鮮KKGは金正恩の資金窓口(ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2015年06月26日)
http://japanese.joins.com/article/372/202372.html

現地ガイドの女性によると、最近仕事でよくタクシーを利用するようになったといいます。(彼女が言うには)最低運賃は2ユーロで、市内の大半の場所なら5ユーロ以内で行けるそうです。

タクシーやトラック、バスなどの営業車以外の一般車も増えています。

以下の写真は、平壌国際商品展覧会で展示されていた朝鮮国産車ですが、ガイドの話では、「国産ではあるけれど、大半の部品は中国から取り寄せ、朝鮮で組み立てている」そうです。確かに、中国で走っている車とほとんど同じに見えてしまいます。
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これが朝鮮メーカーのロゴです。ここだけ貼り換えてるみたいといったら、怒られちゃうでしょうか。
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早く外国人も普通にタクシーを乗り回せるようにしてほしいものです。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-04 15:39 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 10月 04日

平壌には「消費者」と呼びうる人たちがいるらしい(第11回平壌秋季国際商品展覧会にて)

2年ぶりに平壌に来て、気がついたことがふたつあります。

いずれも表面的な見聞にすぎませんが、ひとつは市内を走る車が増え、一部の交差点で長い信号待ちの車列ができていること。もうひとつは、どうやら平壌に「消費者」と呼びうる人たちがいるらしいことです。

これまで咸鏡北道や羅先特別市などの地方都市ばかり訪ねていたのと、以前に平壌に来たときも、この国特有の「見せたいものだけ見せ、見せたくないものは見せない」管理された観光で、市民生活に触れるチャンスなどなかったせいか、今回あらためて平壌は北朝鮮国内ではきわめて特殊な場所だと感じました。

それを実感したのが、9月21日~24日に三大革命展示館で開かれた第11回平壌秋季国際商品展覧会(The 11th Pyongyang Autumn International Trade Fair)でした。

この展覧会は、朝鮮貿易省所属の朝鮮貿易国際展覧社が主催する商品展示即売会で、春と秋の年2回開催されます。最初の開催は1998年春で、2005年から春秋年2回の開催となりました。出展しているのは、地元朝鮮企業や中国をはじめイタリア、ポーランド、タイ、マレーシア、シンガポール、台湾などの海外企業です。ジャンルは幅広く、工作機械や設備、自動車、電子・電気製品、アパレル関連やバッグ、靴、調理器具などの軽工業日用品、食品、医薬品、健康食品などさまざまです。

詳細については、これまで開催された展覧会の各種メディアの報告や中国の旅行会社による視察ツアーの告知などがネットでも見られるので、参考になると思います。

北朝鮮でカップルに人気の「意外な商品」
なぜ平壌で「消費ブーム」が起きているのか(東洋経済オンライン2015年6月2日)
http://toyokeizai.net/articles/-/71575
北朝鮮に消費ブームがやって来た
副業で外貨稼ぎ、乗馬から自動車購入まで(東洋経済オンライン2014年11月5日)
http://toyokeizai.net/articles/-/51829
春の平壌国際貿易商品展示会観覧ツアー(大連富麗華国際旅行社)
http://www.dllocal.com/travel/item157.html

何より面白かったのは、平壌市民が大挙して買い物のために訪れていたことです。この展覧会は商品即売会場でもあるからです。

以下、会場と平壌市民の様子を見ていきましょう。

この巨大な地球儀が三大革命展示館のランドマークですが、展示即売会場はその奥にあります。
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これが展示即売会場です。
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中に入ると、それはものすごい人ごみです。
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2階に上がって、展示ブースを眺めると会場全体はこんな感じです。
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各種ブースに群がる女性の姿が目につきます。
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そこで、会場内の女性客を中心に見ていきましょう。彼女たちはアパレル関連やバッグ、キッチン、日用品などのブースを中心に押しかけています。

派手な柄物や色鮮やかなプリントのブラウス、ワンピースなどを身に付け、手にはバッグを抱える女性が多いです。これらはおそらく中国製でしょう。ここでの熱気は、市民が食べるためだけでなく、おしゃれや生活を快適で豊かにするための消費に目覚めたという意味で、日本の昭和30年代に近い感じでしょうか。
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彼女たちのファッションセンスは、いま日本を訪れている中国内陸出身の観光客のおばさんに近い気がします。
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炊飯器を手にしたお母さんに連れられた娘はこぎれいな白いシャツを着て、頭に飾りを付け、黒い靴を履いています。
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なかにはこんなホットパンツ姿の女性もいます。
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館内で床に座って“戦利品”を広げ、仲間と物色しているおばちゃんたちもいます。訪日中国人観光客がドンキホーテの前でやってるのと同じ構図に見えます。
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こうしてみると、どんな企業が出展していたのか気になりますよね。出展企業のリストは入場料40元を支払った際、手渡されたので、今度時間があったら分析してみようと思います。

会場の外も見てみましょう。

皆さん、いろんな“戦利品”を手にしています。これが他の国であれば、おばさんたちに「何買ったんですか?」とガイドに通訳させて聞くところですが、そんな当初からの予定のない市民との接触は許されるものではないのが残念です。彼らは我々の行動を逐一上部に報告しなければならないからです。
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ベビーカーを押して買い物に来たお母さんなど、子連れもけっこういます。
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これは家庭用マッサージ器でしょうか。両手に荷物をぶらさげた女性の姿は、どこか“爆買い”中国人観光客の姿を連想させます。とはいえ、実際には大半の市民はそれほどの懐具合であるはずはなく、ささやかな買い物を楽しんでいるように見えました。
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現地ガイドの女性の話では、「この展覧会で売られる商品にはニセモノが少ない」と平壌では言われていて、それが人気の理由となっているそうです。彼女も春の展覧会でバッグを買ったとか。つまりは、市場経済化が進む北朝鮮国内でも「ニセモノ」が氾濫している実態があるようです。

会場の周辺は、車でいっぱいです。
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とはいえ、多くの市民はさすがに自家用車で来るというわけにはいかないようで、タクシーやバスを貸し切って来場している人たちもいました。
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これだけの光景を見せられたら、平壌に「消費者」と呼びうる人たちがいることを認めざるを得ません。いったい彼らはどんな人たちなのでしょうか。このような市民の姿は、平壌以外の地方では(一部の特権階層を除き)まず見かけることはないからです。

改革開放に舵を切った1980年代の中国が、最初広東省から経済自由化と外資の導入を進めたことで、他の地方とはまったく異なる都市空間をいち早く現出させたのと似て(その後、上海、北京などの沿海都市、さらには内陸都市も時間差を経て変容していきました)、この国ではまず平壌の都市空間とそこで暮らす人々の生活を変えようとしています。首都を真っ先に変えようという発想は中国にもなかったことを思うと、見かけに比べ北朝鮮は中国より市場経済の誘惑やそれがもたらすであろう影響に対して用心深くないといえるのかもしれません。

いずれにせよ、いまの平壌で起きていることは、北朝鮮のような国にとってだけでなく、アセアンの経済後進国であるラオスやカンボジア、そしてアフリカや南米などの国々と同様、結果的に中国経済の発展が後押ししているといえそうです。

結局、これまで先進国はこれらの国々を相手に援助はできても、同じ土俵で対等に経済関係を取り結び、市場とすることは難しかった。利益が釣り合わないからです。しかし、中国の場合、地方の中小企業の存在があり、彼らは北朝鮮の地元企業と対等とはいえないにせよ、かなり釣り合う形で合弁や投資が行える関係にあるように見えます(本当のところはよくわかりません。以前、丹東で「朝鮮でビジネスして利益を上げるのは簡単ではない」と語る中国人に会ったことがあるからです。彼は売上金の代わりに膨大な数の朝鮮絵画を受け取るほかなく、地元で北朝鮮美術専門の画廊を開いていました)。

実際、出展している中国企業は、東北三省、特に遼寧省や吉林省のローカル企業が多いようです。中国の国有企業や大手がこの国で中小企業と同じことをするのは無理でしょう。中朝の特殊な政治関係もありますし、そもそも経済関係では釣り合わないからです。中国からみれば、北朝鮮一国でもひとつの省より小さな経済体でしかないのです。人口300万人という平壌程度の都市は中国には地方にいくらでもあります。

それでも、これだけの日用品を求める「消費者」がいるわけです。その規模をあまり大きく見積もるのはどうかと思いますが、今後もこうして北朝鮮国内に中国商品があふれることになるのでしょう。地方に行ってもそうですが、この国の人たちの身なりが以前に比べ大きく変わったのは、安価な中国衣料が流通したからです。特に都市部に住む子供たちの身に着けているものは、中国の子供たちとそんなに変わらないスポーツシャツやパンツなど、一見貧困など感じさせません(ただし、足元を見ると、中国の子供はたいていスポーツシューズを履いていますが、こちらの子供はまだ布靴が多いなど、違いがないわけではありませんけれど)。
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こうしてみると、中国の影響力が、これまで援助対象としかみなされていなかった国々の経済を変えていくことに貢献しているという事実は否定できないように思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-04 14:43 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 10月 03日

2回目の高麗航空  CAの制服が変わり、以前よりあか抜けてきた!?

2013年夏、初めて乗った高麗航空のささやかな搭乗記を以前紹介しましたが、この夏、2年ぶりに乗ることになりました。

高麗航空の乗り心地はいかに?
http://inbound.exblog.jp/21481746
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航路は北京・平壌便の往復です。機材は、前回と同じTupolev Tu-204-100。機内に乗り込むと、おやっ。CAさんの制服が以前の真っ赤な目を引くものから、シックな紺色のものに変わっていました。
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チェックインカウンターにあれほど多くの欧米客がいましたが、先に飛んだぼくのフライトは中国客も多く、どうやらこの日、平壌便は2便あったようです。
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せっかくですから、CAさんの新しい制服をばっちり収めて帰ろうと思っていたのですが、着陸後、このちょっと勝気な感じの彼女にしっかり削除を命じられてしまいました。例の旧型ソ連機ツアーの皆さんは、きっと彼女らと記念撮影していたでしょうに…。つれないですね。
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仕方がないので、9月の北朝鮮のPR誌の表紙の写真で勘弁してください。
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胸元も広く開いたちょっと大人のイメージです。このPR誌には、新空港ターミナルの記事があり、彼女らの姿も紹介されていました。

さて、これが機内食です。基本、前回と同じ薄いパテの入ったハンバーガー。ビールも入れてくれました。
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実はこのハンバーガーについては、今年8月刊行された『北朝鮮の楽しい歩き方』(鄭銀淑著 双葉新書) という旅行記の中で、同行した日本人客の何人かが帰国後、食中毒になった話(正確にいうと、帰国後1週間あまり腹具合が悪くなったそう)が出てきます。この本は今年の春に訪朝した話を書いたもので、その後、機内食はキムパプに変わったとありましたが、再びハンバーガーに戻っていました。確かに微妙な味で、中国客などは手もつけようとしないそうですが、ぼくと同行者たちの間でひとまずお腹の調子が悪くなったという自覚症状はなかったです。きっと同書に出てくる方たちが食中毒になったのは、旅疲れの出た帰国便で供されたからではないでしょうか。…これでフォローになるかどうかわかりませんけれど。

機内のもうひとつの変化は、頭上のテレビで英語版の安全のための告知や平壌の楽団の演奏会、また2012年に平壌郊外にできた民俗公園というテーマパークのビデオを延々見せられることでしょうか。このテーマパークは、いわば朝鮮半島版の「東武ワールドスクエアー」、文化遺跡のミニチュアパークです。韓国側にあるものもすべてミニチュア化されています。

平壌サーカス公演のビデオも流されていました。アクロバティックな空中ブランコは手に汗握る大興奮もので、観客を飽かせることのないレベルの高いものですが、公演会場では撮影NGで(フラッシュは演技の邪魔になるからでしょう)、チマチョゴリを着た係員のおばさんが、禁を破る中国客に向かってすごい剣幕で問い詰めていたのが印象的でした。
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これらのビデオは海外向けの洗練された内容構成となっていて、もしかしたら海外に発注したものではないかと思ったほどです。

いずれにせよ、2年前に比べて高麗航空はいくつかの点であか抜けた印象があります。

これが平壌順安国際空港のターミナルビルです。これまでのイメージはかなり一新されたことは確かです。
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一部建設中の部分が残っていましたが、おそらく年内には完成するのでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-03 11:17 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)