ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 12月 30日

タトゥーが入っていてもOKの日暮里「斉藤湯」でひと風呂浴びてみた

先日のとある午後、タトゥーが入っていても入浴OKで知られる斉藤湯でひと風呂浴びてきました。場所はJR日暮里駅から徒歩3分。住宅街のちょっとわかりにくい場所にあります。80年前の創業だそうですが、今年4月に改装したばかりのきれいな銭湯でした。
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斉藤湯
http://saito-yu.com

なぜこの銭湯がタトゥー客OKだと知ったかというと、以下のネット情報からです。

タトゥー入っててもOKな温泉・銭湯・プールまとめ【関東編】(Find Travel)
http://find-travel.jp/article/18883

訪日外国人の増加で全国の温浴施設やプール、海水浴場でタトゥーを入れた外国人観光客と管理者の間で入店・入場をめぐってトラブルが起きているようです。その問題に関する報道は以前、本ブログでも紹介しています。

入れ墨・タトゥーの外国人の入浴、やっぱり気になりますか?
http://inbound.exblog.jp/25180252/

そんな事情もあり、都内でタトゥーOKをうたう銭湯というのはどんなところなのか、気になっていたのです。

午後2時開店とほぼ同時にぼくは斉藤湯に入りました。すでに2、3人の利用客はいて、その後も続々入店してきます。この銭湯の売りは、高濃度人工炭酸泉と超微細粒気泡がシルクのように身を包む露天風呂です。ぼくはまず通常のお湯風呂に浸かって、常連の誰かにこの銭湯について尋ねることにしました。

しばらくすると、映画『テルマエ・ロマエ』の銭湯シーンで見かけたちょっとふやけたスルメのような(ごめんなさい!)おじいさんが隣に入ってきました。映画を思い出し、笑いをこらえつつ、聞いてみました。

―あのぉ、こちらの常連さんですか。
「そうだよ。でも、最近はたまにだけどね」
―この銭湯、外国人がよく来るんですか?
「そうなの? 俺は知らないね。家族連れはよく来るよ。いろんな風呂があるからね。ここは昔からある銭湯だから」。

あまりご存知ないようです。そこで、次にシルキー風呂に行ってみました。天井には屋根がありますが、露天気分を味わえます。ひとりの若い男性がいたので声をかけてみました。

―この銭湯、外国人が多いんですか?
「どうかなあ。ぼくは週末しか普段は来ないから」
―なんでもタトゥーを入れた外国人さんもこの銭湯は入浴OKだと聞いて、どんなところだろうと思ってきたんです。
「ああその話ね。ここ、改装する前からずっと入れ墨OKでしたよ」
―あっ、そうなんですか。

どうやら日暮里という土地柄で古くから銭湯を営んできたことから、外国人観光客うんぬんとは関係なく、その筋の人も含め、ずっとOKだったようです。実際、ここの客層は中高年のおじさんおばさんを中心に子供連れなど、昔ならではの光景です。たまにその筋の人が見えても、皆さん普通にお風呂に入っているのでしょう。

風呂上りに入浴客のおじさんたちにならってビールを注文し、オーナーの奥さんに話を聞いてみました。

―こちらは外国人のお客さんが多いんですか。
「まあそうね。けっこういらっしゃいますよ。夏休みなんか、家族連れで韓国や中国の人たちが来て、ここはどこなのかしらという感じになります。でも、普段はふつうの銭湯ですよ」
―インターネットでこちらは入れ墨やタトゥーのお客さんの入浴もOKと聞きました。
「ここは下町だから。昔からねえ、そうなんですよ」

奥さんは「中国の人」と言っていますが、たぶん台湾や香港の個人客なのでしょう。彼らが多く宿泊している上野のホテル街に近いことから、彼らも利用しやすいと考えられます。

オーナーの息子さんが英語で紹介する以下の動画をYOU TUBEで発信していることも影響があるに違いありません。

Visiting a japanese bath house
http://saito-yu.com/publicBath.html

いまや日本人のよく知らないラーメン屋がトリップアドバイザーなどで外国人に広まり、行列ができる時代です。この銭湯が外国人であふれるようになってしまうと、地元のお客さんは困ってしまいますが(たぶん、そんなことにまではならないでしょう)、タトゥーうんぬんの問題も、土地柄しだいでクリアできる面もあるのだと思いました。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-30 16:50 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 12月 27日

中国独立電影は中国版ヌーヴェルヴァーグだと思う

今日は中国インディペンデント映画祭2015の最終日です。

その後、以下の2本を観ました。それぞれまったく異なる世界で、飽きさせることがない映画祭です。

幻想曲 / Fantasia
2014年 / 86分 / 字幕 JP
監督:王超(ワン・チャオ)
http://cifft.net/gensou.htm

この作品は中国出張によく同行する友人とふたりで観にいきました。友人は同じ王超監督の『安陽の赤ちゃん』も観ていて、監督のトークショーを聞いたそうです。彼によると、王監督は実生活でも相当苦労した人で、作品からは中国庶民のある種救いのない悲哀と、それでもなんとか生きていこうとする思いが伝わってくるそうです。

4人家族の大黒柱だった父親が白血病で倒れ、輸血や治療が必要なため、そのたびに2万元(40万円)相当の治療費がかかります。最初は職場が負担してくれていたのですが、何度も倒れることから、職場の上司は今後半分しか治療費を負担できないと妻に告げます。

昔中国歌劇の女優だった妻は牛乳配達を始めますが、そんなことでは治療費はとても足りません。その姿を見て、長女はナイトクラブに勤めます。ホテルからの朝帰りでタクシーから降りると、牛乳配達している母親と鉢合わせてしまうシーンが印象的です。その後、長女は1万元を友人から借りたと言って手渡しますが、それを素直に受け取ることができない母は厨房で涙にくれます。しかも長女は後日、クラブの客から妊娠させられ、堕胎手術のために母と病院に行くことになります。

家族が崩壊していくなか、弟は学校に行くのをやめてしまいます。重慶が舞台のこの物語では、長江の風景がしばしば映し出されます。彼は学校をさぼって、廃品回収業者の仕事を手伝い、小銭を稼ぐことを始めます。その業者の仲間に同じ年ごろの娘がいます。彼女は人身売買で売られた少女でしたが、彼はほのかな思いを寄せます。物語は弟が彼女に会うため、長江のほとりに行くと、業者の船はすでにこの地を去ったことがわかるというシーンで終わります。

作品を観たあと、友人は言いました。「まったくこれが中国庶民の世界だよね。これまで自分が出会ってきた中国人を見ていると、この物語ほど深刻でないとしても、だいたいこのような境遇に近く、こういう人たちが普通に生きているのがいまの中国だ」というのです。「そうなんだよねえ…」。ぼくもそう応えるほかありませんでした。

でも、彼はこんなことも言います。「王監督の作品は、まるで自分が映像の中に入って、物語の登場人物のそばにいるような感じがする。たとえば、街のシーンで耳に飛び込む車のクラクションや人々の声など、自分が中国にいるときに聞いているものと同じで、不思議な懐かしさを覚えてしまう」。

これも同感です。中国独立電影の作品の中には、カメラを街に持ち出し、世界をそのまま切り取ろうとしているものが多く、「ロケ撮影中心、同時録音、即興演出などの手法」を駆使するヌーヴェルヴァーグの中国版と呼びうるのではないかと思います。

もちろん、中国独立電影の作品はそのようなものばかりではありません。昨日観た『K』は、カフカの小説『城』を内モンゴルに舞台を置き換えた不条理劇でした。

K
2015年 / 88分 / 字幕 JP+EN
監督:Emyr ap Richard、額德尼宝力格(ダルハド・エルデニブラグ)
http://cifft.net/k.htm

監督は内モンゴル在住の英国人と、ゴーストタウンで有名になったオルドス出身のモンゴル族の共作で、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)がプロデューサーをしているそうです。物語自体はカフカの世界の映像化ですから、だいたい想像がつくと思いますし、実際そのとおりなのですが、ロケ地も登場人物も内モンゴル自治区の砂漠地帯で行っているというのが興味深いです。

せりふも当然モンゴル語でしたし、学校の教室のシーンで黒板に書かれているのは、縦書きのモンゴル文字でした。モンゴル語の発音というのは、少し韓国語に似ている気がしましたが、登場人物の中にはずいぶんエキゾチックな顔立ちをした人たちもいます。ロシアと中国にはさまれたモンゴルというマージナルな世界の実像をよく知らない自分のような人間には、不条理劇の舞台としてこれほどふさわしい場所はないのではないかとすら思わせます。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-27 16:28 | リアルチャイナ:中国独立電影 | Comments(0)
2015年 12月 26日

ラオックスの不法就労と中国人観光客500万人問題、どう考える?

夕刊をぼんやり眺めていたら、以下の小さな記事が目に入りました。以下、転載します。

ラオックス、書類送検 不法就労させた疑い 大阪府警(朝日新聞2015年12月26日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12136296.html

大阪・ミナミにある免税チェーン店「ラオックス」(東京都港区)の2店舗で中国人留学生を不法就労させたとして、大阪府警は同社と羅怡文(らいぶん)社長(52)を出入国管理法違反(不法就労助長)などの疑いで25日に書類送検し、発表した。

同社は中国人観光客の増加で売り上げを伸ばしており、羅社長は今年の流ログイン前の続き行語大賞「爆買い」で受賞者に選ばれた。羅社長は府警の調べに、「人事管理を徹底せず、責任を感じている」と話しているという。

外事課によると社長は昨年6月~今年9月、大阪道頓堀店(大阪市中央区)と心斎橋筋店(同)で、中国人留学生の男女3人を雇用し、法定時間(週28時間)を超えて働かせた疑いがある。週60時間以上のときもあったという。

府警は10月、大阪道頓堀店で1~8月に中国人留学生の男女3人を法定時間を超えて働かせたとして、当時の店長の男性(50)を出入国管理法違反の疑いで逮捕。男性は処分保留で釈放され捜査が続いている。同社はホームページで25日、「事態を重く受け止め、再発防止に万全の策を講じている」とのコメントを出した。

この記事を見たときの第一印象は、そりゃそうだろうなあというものでした。だって、今年500万人もの中国人観光客が日本に来たのです。そして、その大半は「爆買い」する人たちで、中国系のラオックスに殺到したのですから。人手はいくらでも必要だったでしょう。中国語を話せる日本人なんてほとんどいないといっていいのですから、留学生にアルバイトさせるしかなかったと思います。

この種の摘発を全国的規模で本気にやり始めたら、ラオックスだけではなく、多くの小売店、飲食店がパニックに陥ってしまうことは疑う余地はありません。

今年1月、ラオックスの大阪道頓堀店と日本橋店を訪ねています。

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ラオックス大阪道頓堀店
http://www.laox.co.jp/stores/osaka-dotonbori/
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ラオックス大阪日本橋店
http://www.laox.co.jp/stores/osaka-ss/

日本にありながら、日本人客のまったくいないこの不思議な小売り施設の面白さは、実に多国籍の外国人が訪れていることです。たまたまぼくが訪ねたときには、オレンジの袈裟を着たスリランカのお坊さんのグループが買い物を楽しんでいました。
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昨日、一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の王一仁会長とお話する機会があったのですが、ラオックスのことも話題になりました。王会長が言うには「ラオックスが店を訪れる外国人団体観光客を手配する旅行業者に売り上げに応じたキックバックを支払っていることは、いまでは公然の事実として広く知られているのだが、最近、それが中国でも知られるようになり、中国団体客からラオックスで買い物したくないという声が出ている」のだそうです。キックバックを支払わなければならないぶん、他の家電量販店や免税店に比べて割高になることに彼らは気がつき始めているからです。

もっとも、なぜこんなに多くの中国人観光客が日本を訪れることができるかというと、ラオックスのようなキックバックを支払ってくれる小売店があるから、そのぶん中国で安いツアーが造成できるからでもあるのです。つまり、中国団体客はラオックスに行きたくないなんて虫のいい話はできないはずです。そして、彼らも実はそれはわかっている。だから、王会長の話では、中国団体客は昼間はガイドに従ってラオックスに行くのにつきあうけど、夜ホテルにチェックインしたあと、こそこそドンキホーテに買い物に行くのだそうです。そっちのほうが安いと彼らは知っているからです。

聞けば聞くほどなんだかなあという状況のなか、日本の監督官庁はいろいろあっても、ラオックスのような小売業者に厳しいことは言いにくいでしょう。王会長はこの種の日本のインバウンドが抱える矛盾に満ちた裏話をいつも笑いながら聞かせてくれます。

ですから、今回のささやかな書類送検報道。監督官庁もそうですが、報道する側もどこまでことの次第を理解したうえで報じているのか、興味深く思った次第です。

ラオックスという存在は、訪日中国旅行市場を考えるうえで、欠かせないキープレイヤーであることは間違いありません。今後もウォッチングしていきたいと思います。

新しく新宿にできたLAOXを訪ねてみました(ここは消耗品がおみやげとして販売される店です)
http://inbound.exblog.jp/24791419/

Laoxに行けば“爆買い”中国本土客の欲しいものがすべてわかる
http://inbound.exblog.jp/24187492/

中国クルーズ客専門ドラッグストア「ドラッグオン」を福岡に開店した理由
http://inbound.exblog.jp/24733460/
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by sanyo-kansatu | 2015-12-26 23:52 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 12月 26日

クリスマスの山手線で見かけたアジア系ツーリスト、いい話と気になる話

今年のクリスマスは、去年にもまして都内でたくさんの外国人ツーリストの姿を見かけました。いかにも外人向けバーというような雰囲気の店だけでなく、ごく普通の日本人の多いレストランや居酒屋にも、欧米人客の姿がありました。彼らの存在はちょっぴりクリスマス気分を盛り上げてくれます。

都内の交通機関でも外国人ツーリストは当たり前のように見かけました。これからする話は、どちらもJR山手線の話です。まずいい話から。

昨日の正午過ぎ、ぼくは大塚駅から新宿駅に向かう内回りの山手線の中にいました。車両は比較的すいていました。見ると、座席にアジア系のツーリストの家族と小グループが一列に並んで座っていました。話し声からすると、香港人か東南アジア華人の人たちです(もしシンガポール人なら英語を話すからで、彼らは南方中国語を話していました)。

同じ車両に一組の日本人の老夫婦が乗ってきました。すると、彼らはすぐに立ち上がり、ことばもかけずにふたりに席を譲るのです。「ありがとうね」と日本語でおばあさんはお礼していました。

目の前で起きた出来事だったので、つい「香港か東南アジアの皆さんだと思いますよ」とぼくはご主人に伝えたくなりました。「そうですか」。ご主人は不思議そうに彼らを見つめていました。

彼らのように個人旅行で訪日しているアジア系のツーリストは若い家族連れやグループが多く、みんな明るく楽しそうです。彼らの文化圏の作法では、老人に席を譲るのはごく自然のことなのでしょう。いい光景だなあと思いました。

おそらく彼らは日本に来ると、社会に占める老人の多さに気づくのではないでしょうか。ぼくも東南アジアの旅行から帰ってきて都内の交通機関に乗ると、日本は老人大国だと実感します。日本に比べ、アジアの国々は社会に占める若者の数が多いからです。確か、ベトナム人の平均年齢は29歳だったと思います。

さて、次はちょっと気になる話です。おとといの夜、新宿駅の外回りの山手線ホームは大混雑でした。なんでも高田馬場駅で乗客が荷物を線路に落としたため、10分以上電車が停まっていたからです。

しばらくすると、ようやく電車が動き出し、大勢の乗客を乗せた車両がホームに入ってきました。ドアが開き、乗客が吐き出されてきたのですが、ぼくが乗ろうとして列を待っていたドアの近くで、その出来事は起きました。ドアのそばに立っていたふたりの女性が決して降りようとしないため、乗客同士が次々とぶつかり、一触即発のような険悪なムードになりかけていたのです。

なぜいったん車両の外に出ようとしないのか…。ぼくは思いました。彼女たちは中国人観光客であるに違いないと。いったん車両の外に出て、降りる人を降ろして再び乗り込めばいいという作法を知らないのです。

最近、中国の主要都市には次々と地下鉄が開通しています。特に北京と上海ではすでに20路線近い地下鉄網が広がっています。ぼくもよく利用するのですが、中国の乗客にはドアに近い人がいったん外に出て、中の乗客を降りやすくするというような作法は身についていません。毎回駅に着くたびに、ドアの近くで乗客同士が押し合いへしあい、ぶつかり合うのです。降りる人がまだいるのに、乗り込んでくる輩もいるほどです。ぼくはそんな光景を見るに見かねて、駅に着くと、いったんドアの外に出て、乗客を降りやすくする日本式の心遣いをパフォーマンスしてみせるのですが、その意図はこの国の人たちには伝わりません。基本的に、中国は引いたら負けの社会だからでしょう。いったん誰かが身を引けば、別の誰かがすぐに割り込む、そういう社会なのです。これはいい悪いの問題ではなく、社会の特性というほかありません。

電車に乗り込み、件のふたりの女性の話し声を聞きました。案の定、中国語でした。山手線を利用しているくらいですから、個人ビザで訪日した北京や上海などの沿海都市部の中国人でしょう。

中国の個人客が増えるなか、誰かが彼らに日本での電車の乗り降りの仕方を教えなければいけないと思いました。日本では、車両が混雑している場合、ドアの近くに立っている人は、いったんドアの外に出て乗客が降りるのを手助けするという作法があることを。そうでないと、最近の日本人は切れやすい人もいるので、ひと騒ぎ起きてしまいかねません。中国人はちょっとぶつかったぐらいでは気にしませんが、日本人はそうはいきません。日本人の側が手でも出したら、彼らはとたんに狂ったように大声で騒ぎ立てるでしょう。彼らはなぜ自分が非難されているか理解できないからです。

もちろん、教えなければならない日本のルールはこれだけではありません。

先月でしたか、北海道のコンビニで商品を勝手に開けた中国の女性客を注意した店員が中国人の旦那から殴られるというような事件が発生したように、この種のトラブルがそこらかしこで多発することが予測されるからです。

中国の個人客の中には、基本的な日本の社会に対する理解が欠けている人たちがけっこういます。彼らが増えることで、つまらぬトラブルが起きないよう中国側の関係者はこうしたささいなこともぜひ自国民に知らせてほしいものです。

※以上の話とは関係ないですが、この写真はおととし訪ねた台北の地下鉄のホームの光景です。ぼくはこれを見て驚いたのですが、台湾の人たちは日本人以上に列にきちんと並ぶことです。同じ華人でも、台湾や香港の人たちと中国の人たちはまったく異なる旅客であることを我々も理解する必要がありますね。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-26 10:20 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 12月 24日

中国のろくでなしバックパッカー詩人は新疆ウイグルの辺境をさまよう

「中国インディペンデント映画祭2015」の続きです。

その後、年末のさすがに忙しいさなかですが、なんとか仕事の合間を縫って、東中野ポレポレに通っています。昨日までに以下の3本を観ました。それぞれまったくバックグランドの異なる物語ですが、映像を通じて地の果てまで連れていってもらえるので、ただただ感心したり、驚いたり、ときに呆れたりしつつ、毎回飽きずに眺めています。

まず「癡(ち)」という作品から。

監督は四川省出身の邱炯炯(チュウ・ジョンジョン)。中国で1950年代後半に起きた反右派闘争で強制収容所に入れられた実在の人物の人生を再現した作品です。ご本人の語りとスタジオで再現された舞台劇で構成されています。監督はもともと現代アートの作家でもあり、凝った舞台美術の世界は、1970年代の日本の小劇場のようでもありました。この監督、2年前の映画祭では、北京の自殺したゲイのダンサーの語りをノンフィクション作品(「マダム」)としてまとめています。
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「癡(ち)」
癡 / Mr. Zhang Believes
2015年 / 134分 / 字幕 JP
監督:邱炯炯(チュウ・ジョンジョン)
http://cifft.net/chi.htm

次は「最後の木こりたち」という作品。中国最北端に位置する黒龍江省の山にこもって厳寒の真冬に4か月かけて木を伐採する男たちの仕事と生活を延々と映像で記録したドキュメンタリーです。近年まれにみる男臭い世界でした。ぼくは最初、黒龍江省の西北端にある興安嶺が舞台かと思っていたら、ハルビン市の南にある五常市の山林の伐採の話でした。この映像が撮られたのは、2004年のことで、一度07年に公開した旧編集版があるのですが、監督は昨年になって新たな再編集版をつくり直したのだそうです。

ちなみに、なぜこんなに寒い時期に伐採をしなければならないのでしょうか。作品を観た後、映画祭の主催者である中山大樹さんがいらしたので、「素朴な質問なんですが…」と尋ねてみたら、「映像をご覧になったのでわかると思いますが、伐採した木材を山から下すには、雪があるほうが滑らせることができて楽だからです」。やっぱり、そういうことですか。ちなみに、その年をもって五常市では森林伐採は禁止されたそうです。だから「最後の木こりたち」というわけです。
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「最後の木こりたち(2014年版)」
木帮 / Timber Gang
2014年 / 111分 / 字幕 JP+EN+CH
監督:于広義(ユー・グアンイー)
http://cifft.net/kikori.htm

そして、昨日観たのが「詩人、出張スル」です。上海在住の30歳の詩人が新疆ウイグル自治区をひとり旅するロードムービーですが、実際の映像が撮られたのは2002年。監督は10数年後になってようやく編集に着手し、今年初めて作品化したそうです。現在の高層ビルが立ち並ぶ新疆の都市とはまったく違う素朴な風景が映しだされていて、いまとなっては貴重な映像です。2000年代に生まれた中国版バックパッカー「背包族」のはしりのような話ともいえます。
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「詩人、出張スル」
詩人出差了/Poet on a Business Trip
2014年 / 103分 / 字幕 JP+EN+CH
監督:雎安奇(ジュー・アンチ)
http://cifft.net/shijin.htm

さて、表向きの作品紹介はそこまでとして、このロードムービー、観る人がみたら、ろくでなし映画といえなくもありません。というのも、主人公は40日間新疆ウイグルを旅しながら、そこらかしこで買春をしているからです。上映後の監督の話では16人の女を買って、それをすべて映像に収めたそうですが(こういうとき、中国人というのは実に率直だなあと思います)、結局のところ、編集作業を通じて残された買春シーンは2、3の場面のみでした。もちろん、この作品は実録映画ではなく、あくまでフィクションという設定なのですが。

そのうちひとつは漢族の女とカラオケをするシーン。そこで女は中国最辺境の地、新疆にまで流れて身を売る女たちの生き方について語ります。東北や四川の女たちはお金が目当てだが、自分はそれだけではない。30歳までに幸せな結婚をしたいと語っていました。こういう境遇の女がいかにも言いそうな話です。

もうひとつは、ウイグルの女を買春するシーンで、これは無修正のまま、性交する姿が映されます。女は「あんたは新疆まで来てあちこちで女を買っているのだろう。どこそこ(いくつかの新疆の地名が出てきます)の女はどうだったか」などと聞いてきます。そして、ことがすんだあと、「私と結婚してくれ。そうすれば、上海でもどこでも好きな場所に行けるから」と冗談まじりに主人公に言います。

まったくこの映像をいまのイスラム国の人にでも見せたら大変なことになるぞ、といいたくなるような、あいかわらずの漢族の無頓着さが気になりますが(だって、この映像を公開することについて、登場してきた女たちに了解など取っていないでしょうから)確かに2000年代の前半は、まだ漢族と新疆ウイグル族の関係は、いまほど悪化はしていなかったのでしょう。

とはいえ、詩人というのは本当に役得というべきか、このろくでもない旅が、なぜかそんなに嫌味でもないのです。ロードムービーというのは、風景がどんどん変わっていくぶん、観る人を飽きさせないところがあるせいか、いつ終わりが来るともしれない男の旅を見入ってしまうのです。

この作品の特徴として、ストーリーの合間に16本の詩が挿入されます。とてもいいです。ただ、この作品を通して、40日間詩人に向かってカメラを回し続けた監督は何を伝えたかったのか。

まあそれが何かと口にしてしまうと、あっけない気もするので、聞く必要はないのかもしれません。

中国独立電影の世界は実に多種多様で、つかみどころがなく、でもなんとなく、いまの中国人がどのように生きているかを教えてくれます。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-24 10:03 | リアルチャイナ:中国独立電影 | Comments(0)
2015年 12月 17日

「中国インディペンデント映画祭2015」が始まりました

今年も今月12日から中国インディペンデント映画祭が始まりました。場所は東中野のポレポレです。2011年に初めてこの映画祭の存在を知り、中国のリアルな世界がとにかく面白く、その後、主催者の中山大樹さんにお話をうかがったり、中国インディペンデント映画界の中心地である北京の栗憲庭電影基金を訪ねたりしました。

ぼくは映画論やドキュメンタリーの世界に特に精通しているわけではないし、山形ドキュメンタリーフェスティバルのような場所に足を運んだこともなければ、普段インディーズ系の作品を上映している東中野ポレポレにも好んで行くようなタイプではありません。しかし、この映画祭は特別です。中国の独立系映像作家たちが見せてくれる多種多様な世界は、この国の生の感触に触れられる貴重な場だと考えて、なるべく多くの作品を観るようにしています。
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中国インディペンデント映画祭2015(12月12日~27日)
http://cifft.net/index.htm

初日(12日)は初っ端ということで、以下の2作品を観たのですが、相変わらず頭を抱えて考え込んでしまうような中国の重い現実を見せられてしまいました。今回も何人かの監督が来日していて作品上映後、舞台挨拶があります。これもとても興味深いです。
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トラップストリート
水印街 / Trap Street
2013年 / 94分 / 字幕 JP+EN
監督:文晏(ウェン・イェン)
http://cifft.net/trap.htm
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女流監督によるミステリー作品。舞台は南京。主人公は測量士の青年で、前半はほのぼのした恋愛ストーリーなのですが、後半状況が一変します。中国には地図から抹消されている通りがあり、たいてい国家機密に関わる場所だそうです。主人公の青年は無自覚のまま、その通りで出会った女性と恋に落ちますが、その後、機密情報にアクセスしたかどで身柄を拘束され、執拗な尋問を受けます。結局、彼は解放されるのですが、いったい彼女は何者だったのか…。謎は明かされぬまま物語は終わります。

今年春、日本でも上映された『薄氷の殺人』(14)、『春夢』(12)などのプロデューサーとして知られる文晏の監督デビュー作です。公安による尋問シーンを見ながら、今年スパイ容疑で何人かの日本人(実際は、帰化した北朝鮮人、中国人)が中国当局から拘束されましたが、彼らも同じような取り調べを受けているのだと思うと、ゾッとしました。上映後のプロデューサーインタビューのとき、この作品を欧米で上映したとき、会場からスノーデン事件との関連を聞かれたそうです。みんな同じことを考えるものなのですね。あまり知られていない中国社会の一面を知ることになる作品です。

シャドウディズ
鬼日子 / Shadow Days
2014年 / 96分 / 字幕 JP
監督:趙大勇(チャオ・ダーヨン)
http://cifft.net/shadow.htm

2011年の本映画祭で上映されたドキュメンタリー作品『ゴーストタウン(廃城)』(2008)の趙大勇監督による続編ともいうべき作品で、同じ雲南省の廃墟のまちを舞台としたフィクションです。

雲南省の廃墟の町でリス族の歌う賛美歌が美しい(中国インディペンデント映画祭2011 その9)
http://inbound.exblog.jp/20040432/

都会で事件を起こし、警察に追われたこのまち出身の男と彼の子を身ごもった女が叔父の家を訪ねるところからストーリーは始まります。美しい雲南省の山間部のひなびたまちには多くの少数民族が住んでいます。ところが、このまちで産児制限を進める当局は少数民族の妊婦たちを次々と強制堕胎させます。そのリーダーが町長である男の叔父であり、彼もその仕事を手伝います。

ぼくは以前、広西チワン族自治区出身の中国人留学生から自分の村で起きた強制堕胎の話を聞いたことがあります。当時彼の話を聞いても、実際にどんなことが起きていたのか想像できませんでしたが、この作品はまさにそれを映像化したかのような世界でした。当局の男たちが家々を訪ね、逃げ惑う妊婦を数人がかりで捕まえ、病院に連行します。10数人の妊婦たちをトラックの荷台に乗せて運ぶワンシーンが一瞬挿入されていて、これには衝撃を受けました。

しかし、不可解な出来事が続き、男の結婚相手である女も叔父の指示によって強制堕胎され、自殺します。怒りに震える男は叔父を刺し殺すというのが結末です。

今年中国政府は一人っ子政策を廃止することをついに決めましたが、かつて自分たちが着手していた恐るべき政策をどう総括するのでしょうか。この作品が中国で上映できないところをみると、なかったことにしてしまうつもりなのでしょう。監督はこうした非情な歴史を記録しておく必要があると考え、この作品を撮ったのだと思います。中国社会には我々の想像を越えた深刻なテーマが爆弾のように隠されたまま放置されていることをあらためて知らされます。

翌日(13日)は徐童監督の『えぐられた目玉』という作品を観ました。29年前に浮気相手の夫に両目をえぐられ失明するという壮絶な過去をもつ内モンゴルの旅芸人の日々を追ったドキュメンタリーです。

中国の地方都市にはいまでも旅芸人の世界があります。東北では「二人转」と呼ばれる歌う夫婦漫才のような見世物がありますが、内モンゴルでは「二人台」というようです。いかにも徐童監督らしい世界でした。

えぐられた目玉
挖眼睛 / Cut Out the Eyes
2014年 / 79分 / 字幕 JP+EN+CH
監督:徐童(シュー・トン)
http://cifft.net/medama.htm
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※徐童監督については、以下参照。

北京郊外村のシュールな異界(中国インディペンデント映画祭2011 その2)
http://inbound.exblog.jp/17462741/
北京の風俗嬢と農民工生活区のすべて(中国インディペンデント映画祭2011 その6)
http://inbound.exblog.jp/19990728/
中国の成長の代価を負わされた存在をめぐって(中国インディペンデント映画祭2011 その7)
http://inbound.exblog.jp/20015027/

メディアでは知ることのできない中国のリアルな実像に触れてみたい人は、ぜひ足を運んでいただきたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-17 15:26 | リアルチャイナ:中国独立電影 | Comments(0)
2015年 12月 16日

訪中日本人が減ったのは、日本人がサイレントクレーマーだから?

今年、訪日中国人は500万人規模に急拡大しました。一方、中国を訪れる日本人は年々減少しています。

*12月16日に公表された日本政府観光局(JNTO)の最新リリースによると、2015 年1~11 月の訪日外国人数(推計値)は1796 万人。なかでも中国本土客は前年比なんと2倍増の464万6700人。
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/avrsih000005ivl8-att/151216_monthly.pdf

各国別訪中者数(中国国家観光局 大阪駐在事務所)
http://www.cnta-osaka.jp/data/visitors/

日本人出国者数(JTB総合研究所)
http://www.tourism.jp/statistics/outbound/

訪中日本人客が減少した背景については、11月下旬に北京で開催された第11回北京−東京フォーラムの「環境保護・観光特別サブフォーラム」の中でも議論されたそうです。

訪中日本人客の減少、原因の総合的な分析が重要に(中国網2015-10-27 )
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2015-10/27/content_36904144.htm

以下、記事の一部を抜粋します。

中国国家旅游(旅行・観光)局の邵琪偉元局長は発言の中で、「中日の双方向の交流は、2005年の延べ450万人から、2014年の延べ555万人に増加した。そのうち訪日中国人客は2005年の111万人から2014年の延べ284万人(日本側の統計では延べ241万人)に増加した。しかし訪中日本人客はやや減少し、ピークの延べ397万人から昨年の延べ271万人に減少した」と指摘した。

この指摘からわかるのは、2015年は訪日中国人の数が訪中日本人を初めて超える年になることです。もうとっくにそうなっていたかと思われた方も多いと思いますが、日本から中国へはレジャー客は少なくてもビジネス出張需要は依然大きかったので、昨年まではトータルでみれば訪日中国人より多かったのです。今年訪中日本人数はさらに減りそうです。

それにしても、集計方法に違いがあるせいなのか、訪日中国人数が中国側と日本側で40万人も誤差があるのはびっくりです(中国側の統計によれば、訪日中国人数が訪中日本人を初めて抜いたのは2014年ということになるからです)。

それはともかく、逆転の背景について、日本側と中国側の見解が以下のように示されます。

京都府の山田啓二知事はその原因について、「訪中日本人客の減少は、まずPM2.5やスモーグなどで明らかになった中国の環境問題、メディアに過度に取り上げられた食品安全問題などが、日本人客の懸念を深めたためだ。他にも中国の日本人客の受け入れ態勢に不備がある。例えば多くの日本人は中国の古い歴史に興味を持つが、中国はこの需要に的を絞った特別な旅行プランを策定していない。また日本人は便を待つ間に中国の空港で映画を見たいが、日本語字幕や日本語吹き替え版の映画を一つも見つけることができない。中国はこれらの面の改善から取り組むべきだ」と述べた。

なんだかもやもやしてますね。「中国の日本人客の受入態勢に不備」があるのは、まったくそのとおりだと思いますが、旅行ガイドブック「地球の歩き方」の編集スタッフのひとりでもあるぼくからすれば、中国側にはもっと別の問題があるでしょうと言いたくなります。

ところが、中国側は、相変わらず、こんなすましたことを言っています。

邵氏は、「その原因については、総合的かつ理性的に検討・分析する必要がある。これは両国の所得、人口の規模、高齢化の程度などと関係している」と分析した。

まったくわかっちゃいませんねえ。まあ本当のことを認めるのは、ご本人にとっても都合が悪いからでしょうけれど。

でしたら、はっきり言いましょう。なぜ訪中日本人は減ったのか? 

中国側、日本側の双方に理由があると思いますが、日本人消費者に対する中国観光プロモーションの最前線にいるひとりとして、中国国家旅游局の問題をまず指摘したいと思います。

それは中国側が日本の市場ニーズをふまえたマーケティングやプロモーションをしていないことです。もちろん、中国側にその努力がまったく見られないわけではありませんが、いまだに古い手法でのPRしか採用しておらず、魅力に欠けています。中国に比べはるかに成熟している日本の海外旅行市場に対する理解が著しく足りないのです。その点については、以前本ブログでも書いたことがあります。

アジアで珍しく外国客数の減っている中国の観光PRのお寒い中身
http://inbound.exblog.jp/24475269/

では、日本側はどうか。中国情報サイトのサーチナがこんな記事を配信していました。

日本人の訪中旅行客が「引き潮のごとく」減少=中国メディア(サーチナ2015-10-03)
http://news.searchina.net/id/1590699

同記事では、訪中日本人が減少している事実に触れたうえで、その理由について以下のように結んでいます。

「日本国外では「日本人はサイレントクレーマーだ」と言われることがある。日本人は中国で起きた反日デモのような行動はなかなか起こさないが、日本人消費者は政治面や中国の環境問題などに対し、「何も言わずに中国を敬遠し、離れて行ってしまった」ということなのかも知れない」。


※サイレントクレーマー Silent Claimer
商品やサービスに不満がある場合に直接提供者にはクレームを言わず、自ら顧客であることを止め、更には口コミでその提供者の悪評を流す者の事を、商品やサービスなどに対して直接的苦情などを述べるクレーマーと対比して用いられる。この場合、企業側にはクレームの存在が明らかにならないため、知らぬ間に商品・サービスなどにとってマイナスの影響が発生する。
https://www.dipartners.co.jp/glossary/detail.php?id=360

この記事を書いたのは日本人らしく、なるほどと思いました。一般に異文化理解が苦手で、政治的な見方が縛られがちな中国人記者には気づきにくい論点でしょう。

でも、ここではなぜ日本人が「何も言わずに中国を敬遠し、離れて行ってしまった」かについては、「政治面や中国の環境問題」としかいっていません。

はたしてそうでしょうか? ぼくは違うと思います。

PM2.5も食の安全問題もいわば方便みたいなもので、実際のところは、リーダーが率先して歴史問題を掲げて日本にクレームして来る中国に多くの国民が嫌気がさしているからでしょう。この点については一部の保守が騒ぐくらいで、多くの日本人は中国に表だってクレームしたいとは思っていないと思います。嫌な相手にわざわざ自分からからんでますます不愉快になるのはくだらないと思うからです。関わりたくないのです。そんな国にわざわざ行きたくないのです。

中国国家旅游局の担当者はこんなことは立場上、認められないでしょうね。であれば、せめてマーケティングをしっかりやるべきでしょう。これまで手を抜きすぎでした。

たいていの日本人は、訪中日本人が減った理由について口に出さなくてもわかっています。わかっていても、あえて口に出したがらないのが日本人の心性でしょう。だとしたら、日本人がサイレントクレーマーだから云々という指摘は的外れではないのかもしれませんね。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-16 09:01 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(2)
2015年 12月 15日

入れ墨・タトゥーの外国人の入浴、やっぱり気になりますか?

最近、訪日外国客の受け入れをめぐる報道が増えてきたと感じます。昨年くらいまで日本のメディアが好んで扱うのは「外国人の消費による経済効果」の話ばかりだったことを思えば、いいことだと思います。それだけ一般の日本人も訪日外国客と日常的に接触する場面が増えており、ただ経済効果の話として説明するだけではすまない社会の変化が生まれているからでしょう(実際、一部の小売店を除けば、経済効果なんてぴんとこない話ですから)。

今日の朝日新聞の朝刊で報じられたのが、「入れ墨・タトゥーの外国人の入浴」をめぐる話題です。以下、転載します。

入れ墨お断り、見直す動き 外国人増え「隠せばOK」も(朝日新聞2015年12月14日)
http://www.asahi.com/articles/ASHD346LTHD3UTIL014.html

入れ墨・タトゥーの方の利用はお断りします――。公衆浴場や旅館で、こうした表示を見直す動きが出ている。風習やおしゃれで彫る外国人や若者が増えているからだ。観光庁も海外の風習を周知する考えだ。

「タトゥーのある方の利用を試験中」。さいたま市の温浴施設「おふろcafe utatane」は入り口に貼り紙を出した。フロントで200円のシール(約13×18センチ)を買い、入れ墨に貼って隠せば入浴できるようにし、8月から月10人前後の利用がある。

広報担当の野村謙次さんは「日本人と外国人観光客が半々。2020年の東京五輪を前に、若者のファッションや外国人の文化としてのタトゥーを受け入れる必要がある」と話す。

高級旅館を運営する星野リゾートも10月、一部の温泉旅館で同様の試みを始めた。「タトゥーに抵抗感があるお客様に安心してもらう狙い。半年間試行して続けるか決める」という。

対応に悩む施設もある。河口湖温泉(山梨県)の観光案内には年9万人近くの外国人が訪れるが、ホテルや旅館は入れ墨禁止。「何でだめなの」との問答も時にある。河口湖温泉旅館協同組合の功刀(くぬぎ)忠臣事務局長は「タトゥーを認めなければ時代に追いつかないが、クレームもある。行政がルールを示して欲しい」。

一方、北海道恵庭市の温泉施設は、あごに入れ墨をしたニュージーランドの先住民族の女性の入浴を一昨年断り、「時代遅れ」と抗議を受けたが、今も同じ対応だ。「国際化も大切だが常連客を犠牲にできない」と話す。

入れ墨はいつから嫌われるようになったのか。

関東弁護士会連合会が昨年出した冊子によると、入れ墨は江戸時代まで黙認されたが、明治時代に禁止された。軽犯罪法の前身の「警察犯処罰令」に規定され、1948年の同令廃止まで規制された。

一般社団法人・日本温泉協会によると、公衆浴場法に入れ墨に関する規定はないが、禁止する施設は「衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない」の条文を踏まえている。

約500万円かけて全身に蛇などの図柄を彫った元暴力団員の40代男性は「入れ墨の男がいれば周りは怖いと思う。時間帯によってはOKにするといったやり方もあるんじゃないか」。

東京を観光していたポーランド人のクジェストフ・ベプフアさん(34)も両腕や背中にタトゥーがびっしり。来日後、温泉の入れ墨禁止を聞いてがっかりした。「日本の文化を尊重しルールは守る。でも、タトゥーは子どもの誕生記念や親への思いをこめたものでもある」と訴えた。

3度目の来日というイタリア人古物商エミリアーノ・ロレンツィさん(38)も左腕の手首近くまでタトゥーがある。「最初は温泉に入れず戸惑ったが、今は入れ墨と日本のマフィアの関係が深いことも理解している」。松山市の道後温泉に行く前にネットで入浴できる施設を調べるという。(岩崎生之助、後藤遼太)

日本政府観光局によると、昨年の訪日外国人は10年前の約2倍の1341万人。観光庁の1~3月の外国人への調査で「最も期待していたこと」は日本食、ショッピングに次いで温泉入浴が3位だった。

観光庁は6月、温泉や旅館など3768施設にアンケートし、581施設が回答。入れ墨がある人に対し、325施設(56%)は入浴を断り、178施設(31%)は受け入れていた。シールで隠すなど条件付き許可は75施設(13%)だった。

断る経緯について59%が「風紀・衛生面で自主的に」、13%は「業界・地元事業者で申し合わせた」と答えた。入れ墨をした人の入浴でトラブルがあったと回答したのは19%だった。

田村明比古長官は「観光立国を目指す中、一律お断りがいいのか。それぞれの事情に配慮があってもいい」と述べた。同庁は今後、業界団体と連携し、タトゥーはファッションや宗教的慣習の一つと周知する方針だ。(中田絢子)

〈著書「いれずみの文化誌」がある皮膚科医の小野友道さんの話〉 反社会的とみなされてきた入れ墨と、ファッションや文化としてのタトゥーが混在し、線引きが難しい。シールのように大きさで区別するのは一つの手だ。東京五輪を控えて外国人が増える中、温かい目で見る必要がある。「入浴お断り」ではなく「お断りすることもあります」と表現を変えるだけで印象が違う。

〈暴力団に詳しいフリージャーナリストの鈴木智彦氏の話〉 暴力団員のうち入れ墨持ちは7割くらいの印象。近年は減少傾向だ。現役でも入れ墨が無ければ公衆浴場に入れるし、逆に暴力団から足を洗っても入れ墨持ちだと入れないなど、一律入浴禁止のルールは現実的でない面もある。入れ墨を背にした暴力団員が威嚇していた過去は覚えておくべきだが、彼らにいつまで我慢させるのだろうか。

ちょっとLGBT(性的少数者)をめぐる議論と似ているようにも感じるこの話題を朝日新聞が取り上げたのは、記事中にもありますが、観光庁が今年10月に公表した以下の宿泊施設に対する調査結果を受けてのものだと思われます。

入れ墨客の入浴、56%が拒否=外国人増で宿泊施設調査-観光庁(時事通信2015/10/21)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201510/2015102100737&g=eco

観光庁は21日、温泉や大浴場への入れ墨(タトゥー)客の入浴を認めるかについて、全国の宿泊施設を対象としたアンケート調査の結果を公表した。外国人観光客が入浴を断られるケースがあるためで、56%の施設が拒否していることが分かった。一方で、31%が許可、13%が入れ墨をシールで隠すなどの条件付きで認めていた。

近年はファッション感覚で入れ墨をする外国人が増えているほか、民族の慣習で入れる場合もあるという。観光客の入浴を一律に断ることについては議論があり、実態を調べていた。

アンケートはホテルや旅館など3768施設を対象に実施し、回答率は15.4%だった。入れ墨客の入浴に関するトラブルは19%の施設で発生。また、一般客から入れ墨に関する苦情を受けたことがある施設は47%だった。同庁は実態をより詳しく把握し、今後の対応を検討する。

「入れ墨・タトゥーの外国人の入浴」をめぐる議論は、実はずいぶん前から国内の宿泊&温浴施設関係者らの間で起きていました。

今年5月、外国客に人気の新宿区役所前カプセルホテルの小川周二経営企画室室長に話をうかがったときも、当然のようにこの話題が出てきました。小川室長はこの件について、以下のようにお答えになっていました。

「タトゥーの方はチェックイン時にお断りしています。これを外国の方に説明するのが難しいですね。刺青のもつ社会的な意味が日本と外国では違うからです。外国の方にとってはおしゃれとしてタトゥーをしてらっしゃるのでしょうが、日本のお客さまにはアレルギーのようなものもあり、これは日本政府観光局でも、どう外国客に説明していくべきか検討していると聞きます」

※いまどきの都心のカプセルホテルがどんなことになっているかについては、以下をご参照ください。

外国客に人気と噂の新宿区役所前カプセルホテルに泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24526002/
カプセルホテルのどこが外国客に人気なのだろうか?
http://inbound.exblog.jp/24532753/
時代はサラリーマンからツーリストへ(新宿区役所前カプセルホテルの顧客が変わった理由)
http://inbound.exblog.jp/24532781/

同じ問題は、ホステル系の宿泊施設だけではなく、高級温泉旅館でも起きていたことを知ったのは、最近トマムリゾートを買収した中国の投資会社トップが失踪したことで話題となった星野リゾートの以下の取り組みでした。

温泉旅館ブランド「界」では タトゥーカバーシールの試験運用を開始いたします(星野リゾート ニュースリリース2015年4月15日)
http://www.hoshinoresort.com/information/release/2015/04/9362.html

2015年10月1日より、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」の全施設で、タトゥーカバーシールを試験的に使用することにいたしました。

日本では社会通念として、タトゥーのある方が大浴場を利用することを制限しているケースが多いのが現状です。しかし、国内外の若い世代では、ファッションとしての小さなタトゥーが容認されてきており、温泉旅館の大浴場をご利用になったお客様から、タトゥーのある方と一緒に入浴することへのご不満をいただくこともあります。

このような状況から、一つの試みとして8cm✕10cmのシール1枚でタトゥーをカバー出来る場合に限り、入浴を可能とすることを10月より行い、今後の方針を考えていく契機にいたします。タトゥーカバーシールは、ご希望の方に無料で配布いたします。

海外顧客の増加に伴い、ニュージーランドのマオリの方々のような事例にあるように、民族文化としてタトゥーのある方が温泉入浴を希望されるケースが増えてきております。今回の試みが契機となり、このような方々にも日本の温泉文化を楽しんでいただける、新しいルールの模索に発展して行くことを願っております。


この取り組みについては、朝日新聞もすでに報道していました。

小さなタトゥー、隠せば入浴OK 星野リゾートの旅館(朝日新聞2015年4月16日)
http://www.asahi.com/articles/ASH4H51JPH4HULFA01K.html

小さな入れ墨(タトゥー)ならシールで隠せばお風呂に入れます――。高級旅館チェーンの星野リゾートは15日、自社で運営している13の温泉旅館で、小さな入れ墨がある人の大浴場への入浴を試験的に認めると発表した。

静岡県の熱海などにある高級温泉旅館「界」で、10月から6カ月間試行する。旅館が用意する白色の8センチ×10センチのシールで隠れる大きさなら入浴を認める。

「暴力団関係者のシンボルで、ほかの客に恐怖心を与える」などとして、日本では多くの宿泊施設や公衆浴場で入れ墨がある人の入浴を禁止している。ただ、若者の間でタトゥーがファッションとして広がり、民族や文化的な理由で入れている外国人も多い。星野佳路(よしはる)代表は「旅館や観光庁、温泉ファンも含め、ルールのあり方を考える契機にしたい」と話す。(土居新平)

さらには、産経新聞も埼玉県の温浴施設でのタトゥーシール導入の取り組みをすでに報じていました。

タトゥー隠せば入浴OK さいたまの浴場、11月まで試験運用 海外客増、認識も進む(産経新聞2015.9.15)
http://www.sankei.com/region/news/150915/rgn1509150025-n1.html

入浴施設の大半が「タトゥー(入れ墨)お断り」を掲げる中、さいたま市北区の温浴施設「おふろcafe utatane」で、小さなタトゥーならシールを貼って隠すことで入浴を受け入れる取り組みが始まっている。8月1日から1カ月間の試験的な運用だったが、「新しい層の来客があり、既存利用者の方からの批判的な意見もない」として11月末まで期間を延長した。県は「全国的にも珍しい取り組み」として注目している。

同店を運営する温泉道場(ときがわ町玉川)は、「おふろから文化を発信する」をモットーに県内3カ所で温浴施設を運営。中でも約2年前にオープンした同店は、宿泊施設を備えて駅に近いため、若者や外国人の利用が多いという。

シール導入の背景には、若い世代に小さなタトゥーがファッションとして認識されつつあることや、文化としてタトゥーを施す外国人旅行客の増加がある。大手宿泊事業会社「星野リゾート」が10月からの導入を決めたことも後押しし、「今まで店を利用したことのない人にも楽しんでもらおう」とスタートした。

シールは縦12・8センチ、横18・2センチのB6サイズで、申し出を受けるか、スタッフがタトゥーを見つけた際に声をかけ、1枚200円で販売。1枚以内で隠しきることが条件で、数カ所にタトゥーがあってもシールを切り分けて隠せれば問題ない。利用者には男女それぞれのスタッフが脱衣所まで同行し、シールからタトゥーがはみ出していないかをチェック。隠しきれない場合は入浴を断っている。

1カ月間で利用者は20人ほどだったが、「20年ぶりに大衆浴場に入れてうれしい」など好意的な意見が多かったほか、「術後の傷を隠せてありがたい」と想定外の利用者もいたという。

店を利用した同市の女性(41)は「タトゥーが見えないなら入っていても気にならない。外国人が利用できるのはいいかも」と理解を示した。一方、母親(68)は「やっぱりタトゥーには怖い印象がある。これも時代の流れなのかな」と話していた。

県生活衛生課などによると、県内の銭湯や公衆浴場は26年度で666カ所(暫定値)。多くの施設でタトゥーがある人の入浴を禁止しているが、県の条例や公衆浴場法では規制する法令はなく、あくまで浴場運営業者の判断という。

温泉施設は減少傾向にあるが、「これまでの利用者も納得できて、新たなニーズを取り入れようという工夫は応援したい」と同課。同店は「取り組みの過程でタトゥーに対するイメージや感覚が変わってくる可能性もある。試験の結果次第では本格的な導入も検討したい」と話している。(川峯千尋)

外国人に入浴してもらうために、タトゥーをシールで隠しちゃおうというこのアイデア。このシールをめぐっては、「縦12・8センチ、横18・2センチでは小さすぎる(からすべてを隠せない)」とかいろいろ議論があるそうです。関係者らが大真面目に考えたことだと思うので、笑っちゃいけないのかもしれないけれど、外国人がシールを貼ってお風呂に入っている様子を想像すると……。

だいたい彼らも、日本人客の気持ちを理解して、こころよくシール貼ってくれるものなのでしょうか。自分が貼る側だとしたら、面倒くさい気がします。それ以上に、なぜ日本人がタトゥーを好まないかについて個別の外国人一人ひとりに理解させることはそんなに簡単なことではないのでは。この問題は日本人の感情だけでなく、外国人の気持ちも考えたうえでの相互理解が必要なように思えます。つまり、どう周知させるかについても双方に対して丁寧に行う必要がありそうです。

ところが、ネットでこの種の議論の意識調査をすると、このとおり。ネットの特性がもろに出てしまいますね。「ここは日本なんだから、郷に入れば郷に従え」。そう言いたくなる人の気持ちもわからないではありませんが…。

Yahoo!意識調査
「タトゥー・入れ墨のある外国人を入浴拒否」どう思う?

現在の総投票数252,462,630票(2015年12月15日現在)
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/domestic/17462/result

日本人も外国人も入浴拒否にすべき 59.9% 232,099票
日本人も外国人も入浴拒否にすべきではない 18.6% 72,221票
外国人については許可すべき 17.0% 65,981票
どちらでもない/わからない 4.5% 16,975票

それでも、世の中にはいろんな情報が発信されているようです。

タトゥー入っててもOKな温泉・銭湯・プールまとめ【関東編】(Find Travel)
http://find-travel.jp/article/18883

このサイトの記事では、関東のタトゥーOKな温泉・銭湯・プールのうち以下の8軒を紹介しています。

日暮里 斉藤湯
成田の命泉 大和の湯
伊香保石段の湯
ふくの湯
元町公園プール
千歳温水プール
本牧市民プール
目黒区民センタープール

実際、どんな感じなのか見てみたいものですね。

こんなサイトもありました。

Tatto Spot
http://tattoo-spot.jp/

「タトゥースポットは、近年厳しくなってきている"刺青お断り"ではないお店を掲載しているサイトです。タトゥーや刺青が入っていてもお店に入ることができ、各種施設を使うことができる店舗のみが全国のタトゥーユーザー達から投稿されるサイトです。

タトゥースポットでは、全国のタトゥーユーザーや、海外からの旅行者の方などが各店舗様のルールにのっとってご利用できるよう常に情報提供をお待ちしております」。

訪日外国客の増加は、我々の社会に、たとえば共同風呂に入るというような、きわめて個人的な生活の一場面の中で、外国人との相互理解をはかる必要を迫られることも意味しています。あんまり優等生的な発言はしたくないのですが(誰だって目の前に大きなタトゥーが現れたらびっくりしますから!)、なるべくこのような場面に出くわしても、穏健に対処する心構えというか、心の弾力性を身につけておきたいものだと思います。

もしそういう場面に出くわしたときは、映画『テルマエ・ロマエ』で阿部寛が扮するルシウス・モデストゥスが見せた爆笑お風呂シーンを思い起こして、気を紛らせてみたりすることは有効ではないでしょうか。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-15 07:53 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 12月 11日

銀座の中国人ツアーバス路駐問題、ついに報じられる

昨晩帰宅して、朝日新聞の夕刊を目にした瞬間、「ついに出た! 銀座の中国人ツアーバス路駐問題」と思いました。
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記事を転載します。

「銀座で爆買い 路駐バスの列 外国人客迎え「通行の邪魔」苦情」
朝日新聞2015年12月10日夕刊(東京版)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12111417.html

外国人観光客でにぎわう都心で、観光バスの路上駐車が問題になっている。中国人観光客による「爆買い」で潤う銀座では、目抜き通りにずらりと並ぶ光景が日常になってきた。警察や役所には苦情が寄せられているが、対策は見えていない。

免税店や高級ブランド店が並ぶ、東京・銀座の中央通り。先月中旬の夕方、駐車禁ログイン前の続き止区域にもかかわらず約500メートルに11台の観光バスが連なった。歩道には化粧品の紙袋や電化製品の段ボールで両手がふさがった中国人客たち。多くのバスは、外国人観光客が乗り込むのを待ち続けていた。

「近くに駐車場はほとんどないし、乗降場所もないから仕方ない」。中国人ツアー客を迎えに来たという運転手の一人はそう話した。警察から注意されることもあるが、周辺をぐるりと回って元の位置に戻る。予定時刻通りに戻ってこない客が多いことも、駐車が長引く理由の一つだという。「集合時刻から30分遅れは当たり前」と運転手はぼやく。

この地域を受け持つ築地署には昨年3月ごろから、「通行の邪魔」などの苦情が相次いでいる。客の乗り降りがないのに駐車しているバスには注意するが、すぐに移動するため、検挙には至らないという。

一方、全国一の地価を誇る銀座周辺での駐車場整備は進んでいない。大丸松坂屋百貨店などでつくる組合が銀座6丁目で進める再開発事業では、対策として観光バス乗降場の建設を計画する。だが、バス駐車場の計画はない。

銀座は国内の観光客が集まってもバスがあふれることは少なかったという。地元の町会・商店会などでつくる全銀座会の関係者は「これからもっと多くの外国人を迎えるというのなら、国や都は駐車場などの整備を進めてほしい」と訴える。

解決策として期待されているのが、16年秋に豊洲(江東区)への移転が決まっている築地市場跡の都有地23ヘクタールだ。

中央区の吉田不曇(うずみ)副区長は「周辺で再開発する事業者にはバス乗降場を造るよう要望してきている。バスの待機場所も必要で、銀座付近で広い土地は市場跡地しかない」と訴える。

■浅草や秋葉原でも苦心 訪日急増、都心の駐車場不足

日本政府観光局によると、11年に約622万人だった訪日外国人は昨年、倍以上の約1341万人に増加。今年は10月時点で1600万人を超えた。急増を背景に、観光バスの客待ち駐車は都心周辺の観光地の共通の問題になっている。

都内屈指の観光地、浅草寺周辺では現在、台東区が4カ所で観光バス57台分の駐車場や待機場を有料で貸し出している。区交通対策課の担当者は「それでも昼時は満車が続く。駐車場は足りていない」と話す。

区は、浅草寺周辺の観光バスの乗降場所を2カ所に限定している。その一つ、区民会館前で客を降ろす観光バスの1日平均台数は11年度は83・0台だったが、13年度は101・5台に増えた。周囲では渋滞も起きているという。担当者は「国や都の対応に期待したい」と話す。

千代田区によると、秋葉原周辺でも、バスに関する苦情がここ1、2年で増えた。秋葉原地域には大型バスの駐車場が無い。担当者は「駐車場を造ろうにも場所が無い。良い解決例があるなら教えてほしいくらいだ」と話す。(遠藤雄司)

新宿歌舞伎町に近い新宿5丁目で中国人ツアーバスの路駐台数調査を続けているぼくとしては、早晩この問題をメディアが扱うと思っていましたが、やはり12月に入ったこの時期でした。

新宿5丁目中国人ツアーバス定点観測調査(since2011.11)
http://inbound.exblog.jp/i17

というのも、クリスマスシーズンに銀座に殺到する中国人団体客の姿はすでに数年前から見られていて、バスの路駐問題もそうですが、街の雰囲気を大きく変えていたからです。昨年のクリスマスイブに銀座を歩いたときの印象を本ブログでも紹介しています。
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クリスマスイブの銀座は中国人だらけで、う~ん(ちょっと気がかり) 2014.12.26
http://inbound.exblog.jp/23928070/

朝日の記事でも指摘されているように、都内で中国人ツアーバスが殺到するのは、銀座や浅草、秋葉原、上野御徒町、新宿などです。浅草以外はほぼショッピング目的の来訪です。
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ネットで検索すると、今年夏ごろ、新宿の路駐問題を指摘しているメディアもありました。

路駐し放題!中国人観光客の大型バス。警察も見て見ぬふり!?
日刊SPA! 2015.07.12
http://nikkan-spa.jp/890566
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でも、実をいえば、この大都市圏の繁華街におけるツアーバス路駐問題はずいぶん前から大阪で騒がれていました。以下は、今年1月の記事です。

大阪ミナミの客待ち観光バス、路上駐車が常態化 (読売新聞2015/01/06)

円安や格安航空会社(LCC)の就航で来日外国人観光客が増えている大阪・ミナミで、客待ちの観光バスの路上駐車が問題になっている。

乗降スペースが2台分しかないために、バスが車線を塞ぐことが常態化しており、大阪府警は大阪市、近畿運輸局とともに、指導や取り締まりを強化した。繁華街からバスを排除すれば観光客減少につながりかねないが、新たに乗降場を整備できる適地はなく、市は対策に苦慮している。

◆5車線ふさぐ

大阪市中央区の堺筋(府道、7車線)にある日本橋観光バス乗降場。2台分しかないスペースに、10台近くのバスが集まる。

「出発時間を20分過ぎているのに」。時間を気にする運転手を尻目に、両手に買い物袋を抱えた中国人団体客がバスに乗り込む。

堺筋の乗降場は、大阪市が2004年に設置。それまで乗降に使われていた約500メートル西の御堂筋では渋滞が緩和されたが、最近、乗降場周辺でバスの路上駐車が増え始めた。

近くで客待ち中のタクシー運転手の男性(41)は、「夕方から夜にかけて、多い時には5車線分を塞ぐ。 タクシー乗り場に乗り入れてくることもある」と話す。

◆常に満車状態

円安に加え、関西国際空港には国内最多の12社のLCCが就航しており、府内を訪れる外国人旅行者は14年は約320万人と、前年を60万人近く上回る見込み。台湾、韓国、中国からのツアー客が8割を占め、大阪市観光施策担当課は「東京五輪開催の20年には約650万人になる」とする。

新規参入するバス事業者も増え、府内では2年前より23社多い172社が営業する。羽曳野市の貸し切りバス会社は、これまでにバス約30台を新規購入し、「東京五輪までにさらに増やす」と意気込む。

しかし、駐車場の整備は追いつかない。市内18か所の観光バス計約320台分の駐車場のうち、繁華街周辺は常に満車状態。時間を守らない外国人客の行動も混雑の要因で、中国人団体客を案内していた旅行会社の男性添乗員(26)は、「集合時間になってもだれも来ないことがよくある。文化が違う」と嘆く。

◆誘導員配置へ

「事故が起こりそう」といった市民の苦情を受け、府警や大阪市などは昨年9月末、乗降後の速やかな移動を求める要望書を全国のバス会社や旅行会社など約2000社に郵送した。しかし、改善はみられず、先月16日、合同取り締まりに踏み切った。今後も警察官らが巡回し、注意に従わないなど悪質なケースは道路交通法(駐停車禁止)違反容疑で摘発する方針だ。

観光客を呼び込みたい市は、新たな乗降場の整備を目指すが、繁華街だけに実現は容易ではない。今後、誘導員を乗降場周辺に配置し、駐車場を案内するなどして混雑を緩和する方針だ。

安井良三・市観光施策担当課長は、「せっかくの観光熱に水を差さないよう、バス会社に協力を 呼び掛けていきたい」としている。

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なぜ東京より早く大阪の路駐問題が騒がれていたかというと、関西国際空港に乗り入れる中国からのフライトがここ数年激増していたからです。これは関西国際空港に就航する東アジア路線マップ(2015年11月現在)です。中国からの定期路線が国内最多となる同空港では、約40都市からの定期便があります。なかには日本ではそれほど知名度のない江蘇省の塩城や貴州省の貴陽などの地方都市からの定期便が増えているのです。
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関西国際空港に就航する東アジア路線マップ(関西国際空港のHPより)
http://www.kansai-airport.or.jp/flight/flight_nw/swf/index.html

「爆買い」はいつまで続くのか? 500万人市場になった中国インバウンド大盛況の舞台裏
http://inbound.exblog.jp/25126195/
http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_19.html

東京の場合、それでも銀座以外にいくつかのショッピングエリアがあり、中国人団体客を分散させることができるのですが、大阪の場合は心斎橋周辺に一極集中してしまうため、大混雑となるのです。

日本の大都市は海外の主要観光都市に比べ、バスの駐車スペースが少ないことは以前から指摘されていました。少ないのは、これまでそんな需要がなかったし、想定していなかったからですが、いずれこうなることは、観光庁をはじめとした監督省庁は知っていました。

この問題を解決することはそんなにたやすくありませんが、いまや500万人市場となった中国人観光客の存在をどう受けとめ、その受入態勢を構築していくか。そろそろ本気で着手していく必要がありそうです。

【追記】
中国人ツアーバスの路駐問題は、クルーズ客船が寄港する福岡市内でも起きています。
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中国クルーズ客は博多に上陸後、どこへ行くのか?
http://inbound.exblog.jp/24731238/

12月12日の朝日新聞に、この問題に対する舛添東京都知事の定例会でのコメントが載っていました。

―銀座や渋谷、秋葉原などの都心部で買い物をする外国人観光客を待つバスの路上駐車が問題になっている。移転後の築地市場の跡地を駐車場にしては、という声もある。

「バスは車体が大きく、商業地の銀座や渋谷などでは交通の阻害要因になる。バスの駐車スペースをどうするかは大きな課題。まずは状況を把握し、警察や関係機関、地元商店街などと調整しながら緊急に打たないといけない手は打っていきたい。築地の跡地(利用)は今のところ何も決まっていない」。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-11 09:37 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 12月 03日

訪日中国客500万人越えなるか?(ツアーバス路駐台数調査 2015年12月)

12月に入り、再び新宿5丁目に現れる中国客を乗せたツアーバスが増えてきました。今年の中国人観光客は去年の2倍増の勢いで、年間500万人越えしそうです。ついに、訪中日本人の数を訪日中国人が越える年になりました。今月もウォッチングを続けてみようと思います。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。

1日(火)未確認
2日(水)12:30 4台、17:30 3台
3日(木)12:50 5台
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※今日のバスは、成田と堺のプレートでした。

4日(金)12:50 4台、17:50 2台
5日(土)未確認
6日(日)未確認
7日(月)12:40 0台、17:50 1台
8日(火)12:50 2台、18:20 2台
9日(水)13:00 1台
10日(木)13:50 3台、18:50 2台
11日(金)11:50 7台
12日(土)未確認
13日(日)未確認
14日(月)未確認
15日(火)未確認
16日(水)18:10 0台
17日(木)11:20 2台、13:10 2台
※この日、新宿5丁目の中華料理店「東順永」でお昼をとっていたら、中年4人組(男1人、女3人)の中国人観光客が来店してきました。聞くと、深圳から来たのだとか。北京、上海、広東省はすでに個人旅行の時代に入っていることを実感しました。ちなみに「東順永」は遼寧省瀋陽出身のご家族が経営している店で、例の山東省出身の人たちが9月に開店した中国団体客専用食堂のすぐそばにあります。

18日(金)13:20 1台
19日(土)未確認
20日(日)未確認
21日(月)13:10 1台
※12月に入って新宿5丁目に現れるバスの数は減っている気がします。中国からの日本路線がこの秋これだけ増えたことを思うと、どうしてなのかなと思います。減便が始まっているのか。少し気になります。

22日(火)13:20 2台、17:20 1台
23日(水)未確認
24日(木)11:40 1台、18:20 2台
25日(金)12:50 2台、16:40 1台
※今年のクリスマスはバスは少ないです。中国客は都心にホテルが取れないため、新宿に食事をするツアーが減っていることが考えられます。

26日(土)12:20 7台
※昨日までは少なかったバスが今日はたくさん来ていました。新宿5丁目のコンビには中国客でにぎわっています。
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このあたりは、中国団体客だけでなく、この界隈のビジネスホテルやゲストハウスに宿泊している欧米の若いツーリストの姿も多く見られました。交差点にある松屋には、ソースの種類を解説する英語の表示もありました。彼らがよく利用するからでしょうね。
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27日(日)17:00 1台
28日(月)12:30 5台
29日(火)未確認
30日(水)17:20 2台
31日(木)未確認
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by sanyo-kansatu | 2015-12-03 13:35 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)