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2016年 03月 28日

日本より進んでいる中国ECサービス 支えているのは誰か?

「上班买, 下班收 当日达, 当日用(出勤中に買って、仕事がすんだら受け取る。当日届いて、その日に使える)」。
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3月中旬、上海の地下鉄車両内で見かけた中国のECサイト「天猫」の広告のコピーです。これは単なる煽り文句ではありません。いまの上海では、ECによる宅配サービスが社会に浸透していて、文字通り、「出勤中に買って、仕事がすんだら受け取る。当日届いて、その日に使える」状況が実現しているからです。

上海の地下鉄には、ホームも通路も車両内も、さまざまなECサイトの広告であふれていて、政府広報を除くと、かつては大半を占めていたアップルやサムソン、高級ブランド系などの海外メーカーの広告よりも数の上では多そうです。7割がたそうではないでしょうか。

たとえば、これは「京東商場」(JD.com)というECサイトの広告です。
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またこれは「1号店」(Yhd.com)というサイトです。
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なかでも圧倒的な広告スペースを誇っているのが「天猫」です。3月はちょうど長い春節休みが終わったばかりの時期だったため、「新学期向け」商品の割引をうたう広告が出ていました。
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全車両「天猫」でラッピングされた地下鉄も走っているほどです。
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「天猫」とは、中国最大のネット企業「アリババ」が運営する越境ECサイト「天猫国際(Tモールグローバル)」のことです。
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天猫国際(Tモールグローバル)
https://www.tmall.com/

「越境EC」については、先週発売された日経ビジネスの以下の特集で次のように説明されています。

個人輸入を含む、国境を越えて商品が取引されるECのこと。中国では、政府がECを使って海外製商品の個人輸入を促進する枠組みを2013年から段階的に制度化。一般貿易と比べて税率が低い、個人輸入の際に課せられる「行郵税」が越境ECにも課せられる。

越境ECサイトの運営会社が上海の自由貿易試験区などの「保税区」に倉庫を設置。そこに海外製商品を在庫し、ECサイトからの注文に応じて中国内の消費者に出荷する。海外から個別に消費者に直送する場合と比べて、保税区の倉庫への一括納入で輸送コストを抑えられる。中国国内の倉庫から出荷するため、配達時間も短縮できる。

課税逃れの並行輸入業者を締め出したり、品質の悪い中国製品に対する消費者の不満をガス抜きしたりするために導入されたと言われる。リスクは突然の税率変更。実際、2016年4月から一部の商品について税率が引き上げられると言われている
」(p30)

日経ビジネス2016.03.21 特集「100兆円市場 中国にはネットで売れ」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/031500264

つまり、いま上海では「天猫」を使えば、日本のドラッグストアで販売されているような商品などが、ECで手軽に購入できるというわけです。

同誌の特集では、中国のEC市場のランキングを載せていますが、「天猫」を運営するアリババが「2位以下を圧倒」しています。
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こうした中国のECビジネスの盛況ぶりについて、コンパクトにまとめられている記事をネットで拾ったので、全文を紹介します。筆者はジェトロの研究員です。

ECビジネス普及で再編期到来 中国流通業界の戦略とは(2015年12月19日 大西康雄(日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所・上席主任調査研究員)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5758


中国で流通業界再編の新しいうねりが起こっている。その直接的な契機となったのは、第1にインターネットの普及=ECビジネスの急成長である。

マクロ経済統計では、製造業が軒並み不振な中、全社会小売総額は二桁増を続けているが、その内容を見ると、デパートやコンビニ、スーパー、専門店など伝統的小売業態の売り上げ増加率は次第に低下している。

これに対してインターネット小売市場(Eコマース)売り上げ額は前年比で40%以上の急増ぶりを示し、15年上半期の売り上げ額は1兆6140億元で全商品小売額の11%となった。中でも携帯電話などの移動通信デバイス使った移動Eコマースがその4分の1近くを占めている。

第2には、消費者行動の大きな変化がある。特に都市部では、日用品に至るまでネットで注文するというライフスタイルが日常の光景となりつつある。

再編の間接的契機となったのは流通業界自身が、消費需要の把握や業態の近代化で出遅れたことである。確かに家電などの量販店、コンビニなどの先進国型業態が急速に普及したが、規模拡大で利益額を拡大する旧態依然な戦略が主流を占めてきた。消費者の要求が多様化する中で利益率が縮小し、15年上半期には、大手小売企業101社中42社がマイナス成長となった。

業界の対応は様々だ。第1は、店舗数縮小による「損切り」タイプの対応で、健康・美容商品の採活(VIVO)、高級スーパーOleなどを展開している華潤グループが代表例である。

第2は、逆に経営悪化の他店を買収し規模拡大を図るタイプで、チェーンストア大手の北京物美グループがその代表例。同グループは、廉美、新華百貨、江蘇時代スーパーなどを傘下に収め、売り上げを伸ばしている。

第3は、Eコマースを取り入れた新業態を模索するタイプで、これは上記の例を含め業界全体で採用されている。ネット上に取扱い商品を展示し、実体店舗にその実物を置いて消費者に体験させ、注文を受けると宅配で届けるというO2O(Online to Offline)方式はその典型例である。すでにウォルマートは「速購」、華潤は「e万家」というサイトを立ち上げている。

中国の世界に例を見ない規模で進む都市化や消費の高度化は止まることがない。流通業界の挑戦も終わることはないであろう。


ここでも、中国の都市部で「日用品に至るまでネットで注文するというライフスタイルが日常の光景」となっていることが指摘されています。

それが可能となった背景には、アリババが提供する「支付宝(アリペイ)」やテンセントの微信(WeChat)に組み込まれている「微信支付(ウイチャットペイメント)」などの決済サービスの普及があります。
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中国では国際的なクレジットカードを持っている人は多いとはいえませんが、こうした独自の決済サービスを広めたことで、ECの利用が日常化していったわけです。

コンビニなどはもちろん、ジュースの自動販売機などでも一部対応しているのを見かけました(これは余談ですが、上海では日本のように街中に販売機はほぼ置かれていませんが、地下鉄駅構内やホームにのみ置かれています)。
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しかも、その普及ぶりは、海を越えた銀座のドン・キホーテでも使えるほどなのです。

銀座のドンキ、LAOXに徹底対抗!価格以外でも負けません!?
http://inbound.exblog.jp/25347932/

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実際、上海人の「ライフスタイル」にECは定着していて、高価な外国製コスメや靴、電化製品だけでなく、お弁当やトイレットペーパーなどの日用品まで宅配で届けられているようです。

それを実感する場面として印象的だったのが、上海の知り合いに案内してもらった大学で、学生寮のそばにECで購入した商品を受け取るための特設施設があったことでした。中国の大学生は、基本的に寮住まいです。1部屋に数人が共同生活している環境です。ところが、豊かになった彼らは、ECを使って日常的に買い物をしているのです。
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その大学は、毛沢東の像がいまも鎮座する華東師範大学でした。女子学生が多いことで知られる名門大学です。
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さらに、「饿了吗(おなかすいた?)」というサイトがあり、これは市内のどこにいても近所の飲食店からお弁当や飲み物などを宅配してもらえるECサービスです。今回知人のオフィスを訪ねたとき、このサービスでお弁当を宅配してもらって、一緒に食事をしました。これは中国国内の他の都市部でもかなり普及していて、いまや中国は「出前パラダイス」といえそうです。

饿了吗
https://www.ele.me/home/

同じような話は、前述の「日経ビジネス」の特集でも書かれていました。

上海市の高級住宅地に住む専業主婦の滕綺達さん(45歳)の自宅には、1日に7~8回、宅配便が届く。段ボール箱の中身は、洋服から生活用品、家電から生鮮食品まで様々。どれも滕さんがECで購入した商品だ。

滕さんは11歳と7歳の2人の子供を育てている。忙しい生活の合間にも、スマートフォンを使ってアリババやJD.comなどのECサイトで買い物ができる。中国のECでは、既に5割強はスマートフォンなどのモバイル端末経由の購入。2019年にはこれが7割に達する見込みだ。支払いには、アリババの「支付宝(アリペイ)」などの決済サービスを使用。現金で物を買う機会はほとんどないという。滕さんは、「そのうち、リアルの店舗なんてどこにもなくなるんじゃない」と笑う
」(p30)

この記事は、海外事情をよく知らない読者向けの、ある一面のみを調子よく取り上げた印象がぬぐえませんが、エピソード自体はいまの上海では特別なことではありません。

冒頭の「出勤中に買って、仕事がすんだら受け取る。当日届いて、その日に使える」状況というのも、彼らが自分の勤めるオフィスに日用品の宅配を届けてもらっていることと関係あります。日本ではこうしたプライベートを職場に持ち込むようなことはちょっと考えにくいですが、彼らはそういうことを“気にかけない”文化といえます。つまり、そのような人が職場にいても、他人事として受け流すのが中国人社会なのです。これも中国でECが普及する背景のひとつでしょう。

こうしたことから、いまの上海では(中国では、とまではいえません)、日本に比べてはるかにECが身近なものとなっていることがわかります。

でも、話はそこで終わりません。

こうしたEC化の過度の促進は中国のリアル経済にとって良いこととはいえないと指摘する声は多いと聞きます。実際、前述のジェトロ研究者の記事でも「デパートやコンビニ、スーパー、専門店など伝統的小売業態の売り上げ増加率は次第に低下している」と指摘しています。ECがもらたす市場環境の変化から、これら巨大な売り場を必要とする業態が苦戦しているというのは世界的な現象ですが、中国は2000年代以降、いわば国を挙げた「不動産立国」と化してハコモノを量産し、GDPを増やしてきた国ですから、現状のように、全国どこでも高級ショッピングモールが閑古鳥という状況は、やはり心配なわけです。マクロ経済が不振となった根本的な問題が解決されているのではないからです。

それに、今回上海のECサービスのさまざまな便利さを体験し、その実情を垣間見てきたぼくがいちばん感じたのはこれです。

いったいECサイトで注文した商品を誰か運んでいるのか?

そりゃそうです。社会が便利になるためには、誰かがそれを支えているわけですから。そしてそれは、宅配便のバイク兄ちゃんたちなのです。 

実際、いまの上海の路上は、バイク便だらけです。彼らの多くは、建設労働が一段落したこの都市に居残ったと思われる上海戸籍を持たない地方出身者であることは間違いないでしょう。なぜなら、驚くほど安価でバイク便が運営されているからです。

この写真を見てください。いったい一度に何個の荷物を運ぼうとしているのでしょう。
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中国のECサイトを見ると、宅配手数料はわずか5~15元(100~200円)程度です。それで、利益を上げるためには一度にひとりが多くの荷物を運ばなければならないでしょう。ちなみに、日本のバイク便の料金相場をネットでみると、距離や重さで細かく料金が分かれていましたが、上海の10~30倍です。もちろん、ひとり1個が基本でしょう。人間ひとりの人件費で考えれば当然のことです。
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もちろん、中国にはたくさんの宅配業者があり、バイクだけが荷物を運んでいるわけではありません。問題はバイク便の彼らがどのような雇用条件で働いているかです。
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日本でもアマゾンの躍進は宅配手数料を引き下げています。しかし、それがどこまで可能かは、結局、荷物を運ぶ人たちの労働環境がどこまで担保されるかにかかっていると思われます。

それを考えると、中国のような地方出身者を外国人労働者同然に使える特異な階層社会でしか、現在上海で実現しているようなECサービスはありえないのでは、と思ったのも事実です。彼らのやることなすこと、持続可能性がどこまで考慮されているのか。それとも、彼らの存在はドローン宅配便が実現化するまでの時間つなぎということなのでしょうか?


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by sanyo-kansatu | 2016-03-28 09:52 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2016年 03月 27日

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた

上海から戻ってきた翌週、地下鉄の中吊り広告で目にしたのが、『ウェッジ』(4月号)の「中国民泊」の特集でした。
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特集「訪日外国人を囲い込む中国民泊」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6347

今年に入ってぼくは内陸都市の重慶や成都、そして上海を訪ね、現地の旅行関係者らにヒアリングを続けてきました。そのポイントは、中国では訪日客の個人旅行化のスピードが想像以上に早く進んでいるということでした。

その背景には、日本政府によるビザ緩和の推進があります。詳しくは以下参照。

ビザ緩和とLCC日本路線の拡充が日本旅行ブームをもたらした(日経BPネット2016.3.22)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/031800009/

で、その結果、何が起こるかというと、AirBnBを超える勢いの「中国民泊」市場の拡大だったのです。

同特集をざっと読みました。冒頭のレポート「日本でAirBnBを猛追する中国民泊」を執筆しているのは、現代中国事情の専門家の富坂聡さんです。さすがに情報が早いですね。

同記事は、上海に本社を置く中国最大の海外民泊サイト「自在客」の紹介から始まっています。「同社の提供している部屋は、台湾で21都市、韓国で27都市、中国大陸に46都市、そして日本に40都市、さらにアメリカにも4都市」。なかでも「予約の多い都市として挙げられた10都市のうち6都市が日本」「自在客のホームページで「日本」と入力すると、2090件、1万2760室と表示される」。これは「現在日本で2万6000室を提供しているAirBnBが1年前は1万件にも満たなかったことを勘案するとその存在感は既に甚大だ」といいます。

では、実際に「中国民泊」サイトにはどのようなものがあるのでしょうか。上海の旅行関係者に聞いたところ、海外民泊を扱う代表的なものは以下の3つです。
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自在客 http://www.zizaike.com/
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住百家 http://www.zhubaijia.com/
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途家 http://www.tujia.com/

実は、他にもいろいろあるのですが、以下の2つは中国国内の民泊がメインだそうです。
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游天下 http://www.youtx.com/
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蚂蚁短租 http://www.mayi.com/

いまの中国には数多くの民泊サイトがあります。前述の旅行関係者は「人気の理由は、ホテルより安くて、利用者の個別のニーズに応えられること。ホテルが取りにくいオンシーズンに役に立つサービスです。個人旅行の増加で、特に日本の民泊が大人気になっている」といいます。

では、もう少し「ウエッジ」4月号の記事を見ていきましょう。同誌の記事の一部はネットでも閲覧できます。

日本市場に吹き荒れる「中国民泊」旋風
最大手「自在客」CEO独占インタビュー
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6403

ここでは、同サイトの張CEOによるいくつかの興味深いコメントが載っています。一部抜粋してみます。

― 日本でのサービス開始はいつか? 現在どれぐらいの部屋数を提供しているのか?
張 日本では14年12月にサービスを開始した。現在、約2000人のホストがいて、約1万2000室を提供しているが、日々増加しており、1年後にはまったく違った数字になっているはずだ。

― 日本にいるホストは中国人が多いのか?
張 中国人、日本人、その他の国籍の人が、それぞれ3分の1ずつというイメージだ。以前は中国人ホストが多かったが、最近は日本人ホストが急増している。日本のホストのうち7割程度はAirbnbとの重複登録だと思う。

― 「自在客」以外にも、中国系民泊仲介事業者である「途家」や「住百家」なども日本市場へ参入している。
張 中国系民泊事業者のなかで比較すると、当社が日本でのシェアがもっとも高い。途家は中国国内での民泊に強く、住百家は富裕層に強いという特徴をもっている。当社はFIT(Free Individual Travel、個人手配の自由旅行)に強い。


AirBnBのホストたちの多くも、「自在客」に部屋を提供しているのですね。何人かのホストをしている知人がぼくにもいますが、部屋の回転率を上げたい彼らにすれば、窓口は多ければ多いほどいいということでしょう。実際、AirBnBでも中国本土客の利用が増えているからです。

張CEOはこんなことも言っています。

―― 現行の日本の法律では、特区等を除いて民泊は禁止されている。
張 その点は認識している。だが、中国では既に政府が民泊を許可しているなど、世界各国では合法化の流れがある。それに比べると、日本はやや法整備が遅れている印象をもっている。


この発言には少し違和感があります。確かに、中国では自国民を相手にした民泊ビジネスは盛んなのかもしれませんが、はたして外国人の受入は可能なのでしょうか。なぜなら、中国のホテルに泊まったことのある人なら誰でも知っていると思いますが、この国の宿泊施設では外国人のパスポートコピーを地元の公安に提出する義務があります。それは民泊でも同じはずです。そもそも中国では外国人を泊めていいホテルとそうでないホテルがいまだに存在します。それほど外国人の管理にうるさい国なのです。この状況を知る以上、張CEOの発言はずいぶん都合がよすぎる言い分だと思うからです。

さらに、彼はこうも発言しています。

Airbnbはホストとゲストの両方から手数料を取る仕組みだが、当社はゲストからは一銭も取らず、ホストから手数料10%を取る仕組みだ。中国の旅行者はホテルの仕組みに慣れており、「ゲストが手数料を徴収される」ということに慣れていない(笑)

おいおい、これは民泊本来の相互扶助の精神から逸脱するものではないでしょうか。ホテルと民泊は別物であるという感覚が麻痺しているように感じないではありません。経営者がこんな考え方で大丈夫なのでしょうか…。

そもそもAirBnBが登場する前から国を超えた個人同士が無料で部屋を貸し借りするというSNSは存在していました。カウチサーフィンといいます。
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カウチサーフィン
https://www.couchsurfing.com/
http://find-travel.jp/article/4012

上記サイトは、このサービスについて「直訳するとカウチ(ソファ)でサーフィンの意味。カウチゲスト(旅人)がカウチホスト(宿泊地提供者)を見つけることで旅が手軽になります。お金のやりとりはなく、無料でソファーに寝かせてもらうイメージ」と説明しています。

上海に住む友人のカメラマンもよくこのサービスを利用するといいます。地方出張に行くとき、カウチサーフィンに登録している中国人の家に泊まったり、地方から上海に遊びに来た中国人を部屋に泊めてあげたりするそうです。このサービスは2000年代の早い時期から存在していました。

ところが、AirBnBという金銭の授受を含む民泊サービスが登場してきて以来、状況は変わってきたといえます。

「中国民泊」について気になることは他にもいろいろあります。

上海でC-Tripのホテル予約を担当している関係者に話を聞いたところ、同サイトをよく利用する香港人と中国人ではホテル選びの考え方がまったく違うといいます。香港人は「要求がとても細かい。ロケーションはもちろん、部屋は何平米で、ベッドサイズはどうかなど、いろいろ聞いてくる。料金が少々高くても、自分の好みの部屋を探す傾向がある」のだとか。

一方、中国人が追求するのは安さのみだというのです。

これはひとことでいうと、香港と中国の消費者の成熟度の違いからくるものだといえるでしょう。海外のホテルの利用に慣れている香港人と、自分では慣れているつもりでも、実際はたいしてよくわかっていない中国人との違い。安さしか求めないというのは、残念ながら、それ以外の選択の基準を知らないからなのです。細かいリクエストを伝えることが身についていないわけです。

こうした中国人の消費感覚は、民泊市場の拡大につながっていると考えられます。いま東京や大阪のホテルは予約が取りにくいだけでなく、価格は高騰し、彼らが考える宿泊相場とは乖離が生まれています。だったら、どんな部屋でもかまわないから、安いところを見つけたい。

では、彼らはいくらくらいで泊まっているのか。

知り合いに池袋のマンションを数室借りて「住百家」で民泊ビジネスを始めた在日中国人がいます。彼は昨年、勤めていた会社をやめ、この商売に乗り換えました。彼によると、ワンルームマンション一部屋を1日800元(約1万5000円)相当で提供しているそうです。

ただし、たいてい家族4人、多い場合は6人くらいが1部屋に泊まるそうです。みんなで雑魚寝のイメージですが、かなり安上がりといえます。最低2泊以上を条件にしているようですが、実際、中国人の個人旅行は、カップルというより5~6人の小グループや家族が多いので、民泊は訪日中国市場に合っているという言い方もできそうです。

なにしろ100万人に近い在日中国人がいるので、できれば知人や親戚の家に泊まって安く上げたい、というのが彼らの本音なのです。本来AirBnBなどの民泊サービスは、海外のふつうの家に泊まって、現地で暮らすように滞在を楽しみたいというニーズから市場が拡大したはずですが、大半の中国人のニーズはそういうことではなさそうです。

実際、1泊800元ではホストである彼も、それほどの利益にはなりません。そこで、彼が始めたのは「空港からの送迎」です。家族や小グループで来日した中国個人客は、東京の交通機関に慣れていません。タクシーは片道数万円と法外な高さだし、香港人や台湾人には可能なレンタカーも利用できない。それゆえ、送迎サービスにはそれなりの需要があり、確実に利益も取れるからというわけです。

前述の富坂さんは記事の中で、在日中国人企業家の民泊ビジネスの実態について、「マンション丸ごと買い取るケースが多い」「外国人向けの寮、さらにはシェアハウスを買い取るか借り上げてしまうパターン」があると指摘しています。確かに、薄利とはいえ、今後も数の増加が見込める中国客相手に利益を上げようとすると、そういう発想になって当然かとは思いますが、彼らだって誰もがそんな資本力を持っているとは限りません。C-Tripや春秋国際旅行社などの中国の旅行会社が日本のホテルや宿泊に利用できる施設を買い上げる動きは起きていますが、民泊用に買い上げることがどれほど進むか、ちょっと疑問です。そもそも安く上げたい人向けのサービスだからです。

それに、言うまでもありませんが、民泊の法的規制の問題はまったく解決していないからです。これは日本に限った話ではなく、全世界的にいえることですが、ホテル業界の反発があります。彼らにしてみれば「ホテルに義務付けられる環境・食品衛生・防火安全対策が(民泊のホストらに)免除されているのは不公平」(「ウエッジ」4月号p31 英国のホテル業界のロビー活動の事例)だからです。

もうひとつは、近隣住民へのケアがおざなりなことです。自分の住むマンションの隣の部屋に、数日ごとに見ず知らずの外国人がやって来ることを、誰しも心よく思わないからです。

こうしたこともあり、富坂さんの記事でも、日本における「中国企業不在の民泊ルールづくり」を批判しており、これには大いに同意します。数の上では、いずれAirBnBを追い抜くかもしれない中国民泊の関係者らが、これまで政府の法規制のルールづくりの会合に呼ばれたことはなかったからです。彼らが外国人であったとしても、日本国内で事業を営む以上、本来は関係ないではすまされません。

中国民泊の話は今月初旬、九州で逮捕された中国人不法ガイドの問題と重なってきます。これほど訪日中国市場が拡大しているのに、団体ツアーの国内手配を実際に手がけている在日中国人関係者らは、日本の旅行業界の蚊帳の外、アンタッチャブルな存在として放置されてきたからです。だから、彼らは気兼ねなく中国式ビジネスを日本国内で続けてこれたわけです。

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は?
http://inbound.exblog.jp/25461430/

もっとも、民泊に関してはAirBnBのホストの多くが日本人でもあるように、ガイド問題とは少し事情が違うのも確かです。市場が拡大し、儲かるとわかっていて、在日中国人らがこのビジネスに手を出さないわけがありませんが、それは日本人も同じなのですから。

いずれにせよ、訪日旅行市場の拡大をうまく仕かけたわりには、この領域に関する日本政府の法制度の整備を進める態度は、あまりに初心でおっかなびっくりという印象がぬぐえません。確かに、年間2000万人の外国人が訪れるということは、日本列島の歴史上初めてのことでしょうから、前例がなく、適正かつ果断な判断が難しいという面はあると思います。でも、これだけ外国人観光客を呼び込むことに成功した以上、それを日本社会の利益になるよう運営していかなければ、何のためにやってるの? という話になりかねません。AISOの王会長ら、外国人関係者ほど、この問題に関する政府の姿勢に首をかしげています。

お役所任せではもうどうにもならないのが、いまの日本なのかもしれせん。だとしたら、残念なことです。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-27 14:40 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 03月 27日

今年6月にオープンする上海ディズニーの公式ショップを覗いてみた

今月中旬、上海出張に行っていました。これから少しずつ見聞を紹介していこうと思います。

まず軽い話から。今年6月16日、上海ディズニーリゾート(SDR)がついにオープンするそうです。以前は14年オープンと言っていたものが、2年遅れで実現します。
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いち早くオフィシャルショップがオープンしていました。場所は、地下鉄2号線「陸家嘴」駅下車、東方明珠塔と正大広場というデパートの間にあります。

店の前にプーさんのぬいぐるみのディスプレイがあり、お客さんたちが列をなして記念撮影に興じています。
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店内に入って正面には、SDRのメインキャッスルとなる「Enchanted Storybook Castle(魔法にかかったおとぎの城)」と名付けられた高さ60mとディズニー史上最大のお城のディスプレイがあります。
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店内は写真撮り放題で、いかにも中国らしい世界ですが、子供連れの家族や若い女の子たちであふれていました。昨年まで続けられた一人っ子政策で大事にされたこの国の子供たちは、わが世の春を迎えているという印象です。
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記念撮影や自撮りを楽しむ女の子たちもそこらかしこにいます。こっちの子たちは本気モードで自撮りしてしまう子も多いので、苦笑してしまいます。
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店内にはSDRのオリジナルグッズを販売するコーナーがあります。
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「アイラブシャンハイ」ロゴのついたマグカップやミッキー、ミニーのぬいぐるみ、Tシャツ、ピンバッジなどがありましたが、種類は少ないです。しかも、他の一般的なキャラクター商品に比べると、あんまり売れていない印象です。
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ショップの話はともかく、実際のSDRの中身はどんなものなのでしょうか。

上海ディズニーリゾート公式サイト
https://www.shanghaidisneyresort.com/

上海ディズニーランド 攻略ガイド 2016
http://tdrnavi.jp/tour/sdl/

上記サイトによると、「世界で12番目のディズニーパーク」「リゾートの総工費は55億ドル(6500億円) ※東京ディズニーシーは約3380億円」「リゾートの総面積は400haで東京(200ha)や香港(180ha)の約2倍の広さ(パークの広さではない)」「世界初となる『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマランド「Treasure Cove」が登場」などが特徴のようです。

実は知り合いに、SDRの設計や施工の一部を担当する上海の会社に勤める日本人の女性がいます。彼女によると「今回のオープンは1期工事なので、まだそんなに大きくありません。オーブン後も2期工事、3期工事と続き、結果的にアジア最大級の広さになる」そうです。

彼女に「今年の夏はすごく込みそうですか」と尋ねると「私は上海万博の混雑ぶりをイメージしています。ゲスト入場の仕組みがまだよくわからないのですが、TDRも夏はとても混んでいるので、こちらも同じように混雑するのではないのでしょうか」とのこと。

そして、こんなアドバイスをもらいました。

「もし日付指定のチケットやゲートで入場制限があるのならば、上海万博のときのような危ない感じのひどい混雑にはならないのかなと思いますが、それでもきっとアトラクションには長時間並ぶのではないかと想像しています。

ちなみに上海ディズニーもファストパスがあるようなので(設置した看板にファストパスマークがありました)、パークのまわり方は工夫できると思いますよ」。

ディズニー・ファストパス
http://www.tokyodisneyresort.jp/help/fastpass.html

さて、ちょうどぼくがSDRのオフィシャルショップを訪ねていた頃、日本ではこんな記事が出ていたようです。

15周年のUSJ、来場者急増 映画以外も取り込み躍進(朝日新聞2016年3月19日)
http://digital.asahi.com/articles/ASJ3K4JWZJ3KPLFA004.html

開業15周年を迎えたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市)の来場者が急増しているそうです。その理由として、同記事では「「クールジャパン」がテーマのアトラクションを展開するなど、USJは日本の若者文化の発信拠点に育った。漫画「ワンピース」「進撃の巨人」やゲーム「バイオハザード」など、幅広い作品をパークに取り込む。映画特化のこだわりを捨てたことが功を奏している」と解説しています。

さらに、同記事では以下のような興味深い指摘もしています。

USJ幹部が「尊敬の的」と仰ぎ見るのが、千葉県の東京ディズニーリゾート(TDR)。来場者は「ランド」と「シー」の両パークを合わせ、年約3千万人。USJの2倍超だ。

来場者の外国人比率をみると、TDRが6%で、USJは約10%と高い。関西空港への格安航空会社の相次ぐ就航を追い風に、アジアに近い地の利を生かす
」。

USJはアジア客の多い関西立地のテーマパークだけに、外国客比率が10%を超えているそうです。以前、大阪と東京のインバウンドの違いについて考察したことがありますが、ここ数年伸び悩むTDRと来場者を増やしているUSJの違いも、訪日外国人旅行者の動向を抜きにしては考えられないと思われます。

大阪と東京のインバウンドの特徴の違いを外国人の視点で考えてみる
http://inbound.exblog.jp/25315756/

もっとも、この記事によると、TDRの外国客比率は6%だそう。3年前に本ブログで以下のような記事を書いたことがありますが、年々わずかではあるけれど、TDRでも比率が上がっているのですね。

無敵の東京ディズニーリゾートも外国人客比率はわずか3%!?【2013年上半期⑧テーマパーク】(2013年 07月 24日)
http://inbound.exblog.jp/20769803/

HPで公開されている「ゲストプロフィール」では2014年までの数字(外国客比率5%)しか出ていないので、「6%」というのは、2015年の数字だと思われます。

ゲストプロフィール(TDR)
http://inbound.exblog.jp/20769803/

ところで、SDRのオープンは、日本のテーマパーク集客にも、なんらかの影響を与えたりするものなのでしょうか。

こればかりはしばらく様子を眺めてみなければわかりませんが、先ごろ発表された値上げのため、平日はTDRのチケット代はSDRより高くなったとはいえ、週末や夏休み(7~8月)はSDRのほうが高そうです。

上海ディズニーランドのチケット価格が決定!土日祝は9,000円
http://tdrnavi.jp/blog/5181

「東京ディズニーランド」「東京ディズニーシー」チケット価格改定(2016年4月1日実施)
http://www.olc.co.jp/news/olcgroup/20160208_01.pdf

いまの時代、価格優位性は上海より東京にあるのですね。あとは、よく指摘されるSDRの運営の問題でしょうか。オフィシャルショップで見られたような、海外ではありえない光景が現出するであろうことは想定内の話でしょう。意外と地元では冷めているという声も聞きます。上海の多くの消費者は、すでに日本旅行を経験済みなので、TDRの世界を知っているからかもしれません。

もっとも、中国の内陸都市は膨大な人口を抱えていますから、集客という観点では世界最大の市場規模であることは変わりません。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-27 10:48 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2016年 03月 10日

「コミッションに頼らない個性的な旅をつくりたい」(by中国旅行業界の若手有志)

ここ何回か、2月中旬に訪ねた中国内陸都市の重慶や成都(四川省)の訪日旅行市場について書いてきました。

「重慶・東京5400円から」「日本旅行5泊6日6万3000円」~重慶、成都の街角にて
http://inbound.exblog.jp/25425180/

中国内陸都市でも若い世代を中心に個人旅行化の機運が起きている
http://inbound.exblog.jp/25481978/

成都のイトーヨーカドーと伊勢丹は気軽に旅行に行けるようになった日本のイメージと重なって見える
http://inbound.exblog.jp/25483824/

スプリングジャパンの成田・重慶線の就航で、この地域の人たちも気軽に日本に来られるようになったこと。そして、驚くほどの安値で東京・大阪ゴールデンルートのツアーが販売されていることがわかりました。

もっとも、こうした安値のツアーが成り立つ背景に、先日福岡で摘発された中国人不法ガイドと免税店の存在があることは、中国側の関係者は誰でも知っています。

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は?
http://inbound.exblog.jp/25461430/

そして、こうした健全とはいえない団体ツアーについて、中国側の旅行関係者らの間ではこれまで「必要悪」とする見方もあったようですが、一部の良識ある人たちは、市場が荒廃していくだけの愚かなビジネスだと主張し始めています。その点については、いまぼくが連載している日経BPネットで記事化したばかりです。

中国人不法ガイドが摘発された背景にあるものは? 訪日旅行市場に与える影響は?
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/030800008/

とはいえ、一部の有志がそう思ったところで、そう簡単に変わらないのも事実です。ツアー代金を安くすることで、これほど多くの中国人が日本旅行に行けるのだから、文句を言う筋合いではないだろう。そうした見方は、中国側だけでなく、日本側にもあるでしょう。

だからといって、ここで話を終わらせてはつまらない。なぜなら、重慶や成都といった内陸都市にも「コミッションに頼らない個性的な旅をつくりたい」と考えている若い旅行関係者らがいるからです。

そんな有志たちの話を聞いてみたいと思います。

まず中国旅行社総社重慶支社の日本市場担当、魯東さんの話から。彼は四川外国語学院日本語学科出身、1973年生まれの重慶人です。
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-春秋航空も成田に就航し、重慶ではこれから日本旅行がますます盛んになるのでしょうね。
 
「そうだと思います。でも、はっきり言って、いまの中国の旅行業は悪循環に陥っていると思います」

-悪循環というのはどういうこと?

「赤字覚悟の安い料金でツアー客を集め、お土産店から得たコミッションで埋め合わせをするという悪循環です。これではツアーの質は下がる一方。でも、団体ツアーに参加する大半の人たちは初来日なので、それを受け入れているんです」。

彼の話を聞いていると、このモデルは日本の旅行会社の催行する中国ツアーでも採用されていたことがわかってきました。

中国旅行社総社重慶支社では、中国西部地区を訪れる日本客の手配を担当してきました。かつて四川省を代表する名勝である九塞溝に年間1万5000人の日本人旅行者が訪れた時期もあり、2007年がそのピークでした。しかし、それ以後、めっきり減ってしまいました。

「それでも、ある日本の大手旅行会社が今度、赤字覚悟のツアーを出してくるそうです。これでは仕事を受けてもこちらは赤字。四川省は翡翠が有名で、お土産販売のコミッションに頼る構造は、実はいま日本で起きていることと変わりません。我々も困っているんです」。

つまり、福岡で摘発された不法ガイドの問題は、日中で共通して起きていることだったのです。ツアー客を集客するために、見かけのツアー代金を下げて、その埋め合わせをお土産販売に頼るという構造です。

一般にメーカーが販売店に売り上げに応じた報奨金を出すことはよくあることだと思いますし、航空会社でも航空券の販売に応じた「キックバック」を旅行会社に支払うことは、ある時期まで普通のことでした。ですから、お土産販売にコミッションが発生することが問題というより、その比率や後先考えないその場限りの販売手法が見直されるべきなのでしょう。

「もうこんなことをいつまでも続けていても意味がない…」。

中国側の旅行会社の若手有志がそう考えるのも当然でしょう。

では、現状を少しでも変えていくためには何ができるのか。

「特色のあるツアーをつくっていくしかない。たとえば、海釣り体験はどうでしょう。長江のほとりに暮らす重慶人は釣り好きが多い。ただし、川釣りしか経験がないため、海釣りをしてみたい人は多いんです。

ただし、重慶には初めて日本に行く人がほとんど。だから、東京・大阪・富士山ははずせないんです。それら定番+特色。これでいくしかありません」。

重慶・成都地区の若い旅行関係者の多くは、九塞溝ツアーのガイド出身が多いことが特徴です。彼らは日本客の特性をよく知っています。

成都海外旅游公司の劉柯さんは言います。「世界のいろんな国のツアー客のガイドを経験したが、日本のお客さんがいちばん。礼儀が正しく、やさしい」。
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1977年成都生まれの劉柯さんは、2000年四川外国語学院日本語学科を卒業後、現地大手旅行会社に勤め、主に九塞溝のガイドを担当しました。ところが、前述したように、その後日本人客が激減し、失職の憂き目をみることになったのでした。

ちょうど同じころ、成都でも少しずつ海外旅行市場が動き始めていました。そこで、彼は個人客をメインとした個性的な日本の自由旅行の手配をする会社「HACHI TOUR(哈奇观光)」を立ち上げました。「HACHI 」というのは、渋谷のハチ公から取ったそうです。

実は、この会社は彼がいまもガイドとして在籍している団体ツアー専門の成都海外旅游公司の中にオフィスを置いています。

「資本力のない自分としては、このやり方が現実的でした。営業ツールは微信(We Chat)です。自分は日本語ができるので、さまざまな日本の情報をネットを通じて集めることができます。これを日々発信することで、日本に対する特定のテーマや関心をもつ人たちをグループ化することができます。こうしたグループごとに面白いツアーを企画していきたいと考えています」

これまでぼくは中国各地の旅行関係者らにヒアリングをしてきましたが、訪日旅行ビジネスの問題点として、日本語や日本のわかるスタッフが業務を担当しているわけではないという現状があります。日本語のできるスタッフは日本人客の手配を担当してきたインバウンド市場が激減し、多くは失職。北京や上海ではアウトバウンド担当に業務転換している人もいるのですが、多くの場合、日本の商慣行や日本人のメンタリティを理解している人たちが訪日ツアーを担当していないため、さまざまな問題が現れてしまっているように思います。日本を知らないから、客を送って日本側にお任せでも、気にならないのでしょう。

こうした状況はすぐに改善するとは思えませんが、中国の若い世代が団体ツアーではなく、個人による自由旅行を圧倒的に志向しているという現実は新しい可能性といえそうです。

ジャパンホリデートラベル(日本东瀛假日公司)成都事務所の文倩さんと廖欣さんは言います。ふたりもやはり四川外国語学院卒業生です。
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「成都で訪日旅行が始まったのは、東日本大震災後の2011年秋ころから。最初は団体ツアーだけでしたが、20~30代の若者は個人で自由旅行したい人が多いんです」。

中国における訪日個人旅行に火がついたのは、2015年1月の日本政府によるビザ緩和によるところが大きいといえます。これ以降、両親に一定の資産があれば子供の個人ビザ取得も可能になったからです。

四川大地探検旅行社の鄭磊さんも「いまの中国の若い世代が日本でしたいことは、観光地に行くことではない。買い物でもない。30代以上の人たちは最初は買い物が目的だけど、彼らもだんだん変わる。同じ趣味の友だちとゆっくり日本を旅してみたいとか、ホテルや飲食店での日本らしいサービスを体験してみたいとか、目的はいろいろです。若い人は間違いなく、個人旅行を選ぶ時代になっています」

その結果、中国の若い世代に日本を知ってもらうチャンスが増えるのだとしたら、悪くない話です。ぼくが中国旅行業界の若い有志たちをサポートしていきたいと思うようになったのは、そのためです。

これは前述の文倩さんが教えてくれたのですが、最近では以下のような在日中国人らの運営する個人旅行サービスも始まっているようです。

仙貝旅行
http://xianbei.cc/index.html
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by sanyo-kansatu | 2016-03-10 13:12 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 03月 09日

成都のイトーヨーカドーと伊勢丹は気軽に旅行に行けるようになった日本のイメージと重なって見える

2月中旬に四川省の成都を訪ねたとき、足を運んでみたかった場所があります。イトーヨーカドーと伊勢丹です。

理由は、以下のネット記事を読んでいたからです。

反日デモでイトーヨーカ堂がほとんど無傷だった理由
http://diamond.jp/articles/-/31996

2012年の荒れ狂った反日デモの渦中で、日系ショッピング施設でありながら「無傷」だったというのはどういうことなのか? 

ひとりの中国通の日本人経営者の存在があるようです。

詳しくはこの記事を読んでいただくとして、これ以外にも、2012年頃に配信されたネット情報をみると、同店が現地でいかに受け入れられているかを知ることができます。

城取博幸の 中国 成都のスーパーマーケット見聞録
https://www.shirotori-f.com/sp/data/21seito.pdf

場所は、成都市中心部に位置する天府広場に近い繁華街である利都広場にあります。
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これがイトーヨーカドーです。隣に伊勢丹があります。日系ショッピング施設が仲良く並んでいるのでした。
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まずイトーヨーカドーの中に入ってみましょう。
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なんだか日本のイトーヨーカドーみたいな雰囲気です。このセールの感じもそう。
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店舗は5階までで、1FにZARAが入っています。
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「新学期セール」をうたっていますが、中国では新学期は7月からのはず。どういうことでしょう。
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「朝9時から夜10時半まで」とは、さすが夜遊び好きの成都らしい営業時間です。
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成都伊藤洋华堂
http://www.iy-cd.com/

イトーヨーカドー海外店舗
https://www.itoyokado.co.jp/store/abroad.html

イトーヨーカドーが現地政府の要請で成都に開業したのは、1996年のことだそうです。現在、成都に6店舗。北京にも5店舗あるそうです。

さて、伊勢丹はどうか。8階建てで、日本食レストランも入っています。店内は、日本の地方の百貨店の雰囲気に近いです。
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ぼくは、上海や天津、そしていまは撤退してしまった瀋陽の伊勢丹にも足を運んだことがありますが、もしかしたら成都の伊勢丹がいちばんカジュアルというか、地元になじんでいる印象がありました。こちらは2007年の開業だそうです。
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成都伊势丹百货
http://www.isetan-chengdu.com/

伊勢丹海外店舗
http://www.imhds.co.jp/company/department_overseas.html

面白いのは、伊勢丹の周囲に屋台が出ていることです。これも成都らしいのかもしれません。
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ここに来るとき、ぼくは地下鉄を利用したのですが、2号線春熙路駅を降りると、地下から上海や北京にあるようなクールなショッピングモールにつながっていました。そこには海外の高級ブランド店が入っています。
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この高級ショッピングモールが伊勢丹の目の前にあるのです。おそらく数年前にできたというところでしょう。

これを見たとき、ふと思いました。ある時期まで、イトーヨーカドーはともかく、伊勢丹はこの街で最も輝いていた瞬間があったのだろうと。しかし、いまではプラダの入った高級ブランドショッピングモールができる時代を成都も迎えている。これじゃ伊勢丹の輝きもうせてしまったかもしれない…。

ところが、これらの高級モールにはそれほど客の姿が見えないのです。

こちらは重慶の最もにぎやかな解放碑という繁華街にある「協信星光広場」という高級ショッピングモールです。こういうの、よく北京や上海でも見かけます。でも、客はほとんどいません。その周辺の繁華街には人があふれているのに、です。
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中国もいまや低成長の時代を迎えています。2000年代のように高級ブランド品がバンバン売れる時代ではありません。これらのバブルな施設の命運は尽き果てそうな気配です。

今回、これらを見て思ったのは、ここ数年の高級モールの登場で色あせたかに見える伊勢丹は、成都の人たちにとって気軽に旅行で行けるようになった日本のイメージと重なって見えているのでは、ということでした。それは、日本が彼らの手の届く存在になったということです。

それは悪い話ではないと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-09 17:48 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 03月 09日

まもなく桜の季節が来ますが、今年はどうかな?(ツアーバス路駐台数調査 2016年3月)

3月に入って、寒暖の差が大きい日が続いています。いよいよ今月下旬頃には、外国人にとっての訪日旅行のメインイベントのひとつである桜のシーズンがやって来ます。

先日、訪日中国ツアーを手配しているランドオペレーター2社の関係者に話を聞いたのですが、「今年はそれほどでもないかもよ」と揃っておっしゃいたのが印象的でした。どういうことなのでしょうか。日本政府観光局(JNTO)の配信する統計データでは、今年もすごい勢いで訪日客が増えているのに、なぜ?

その理由として、「想像する以上のスピードで中国客の個人旅行化が進んでいるようだ」というコメントをしてくれた関係者もいました。この意味は今後じっくり検証する必要がありそうです。

さて、今年の桜シーズンはバスの数はどうなるのか? 

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。

1日(火)未確認
2日(水)20:10 2台 
3日(木)12:30 4台
4日(金)12:10 5台
5日(土)未確認
6日(日)未確認
7日(月)未確認
8日(火)12:50 6台
9日(水)12:40 5台

10日(木)~17日(木) 海外出張のため未確認

18日(金)18:20 2台
19日(土)未確認
20日(日)未確認
21日(月)未確認
22日(火)19:20 2台
※ただし、この日歌舞伎町方面、靖国通り沿いには東南アジアの団体客の姿が多く見られました。
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23日(水)13:10 6台、18:40 4台
※この日のお昼過ぎの新宿5丁目は中国団体客であふれていました。例の居酒屋「金鍋」の前も食事を終えた中国客が路上に群がっていました。さすがに東京も桜の開花が始まり、ツアー客が増えてきました。
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24日(木)13:15 7台、18:00 3台
25日(金)12:20 5台、17:10 3台
26日(土)未確認
27日(日)未確認
28日(月)12:20 6台、18:20 2台
29日(火)13:20 5台、19:10 2台
30日(水)未確認
31日(木)未確認
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by sanyo-kansatu | 2016-03-09 17:42 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2016年 03月 09日

ここまでやるとあっぱれか!?  銀座Laox vs.ドンキお土産商戦の一幕(続き)

春節のころ、中国人観光客専用免税店のLaoxに対してドン・キホーテ銀座本店が「徹底対抗」宣言していた話を以前書きましたが、3月に入って再び銀座を訪ねてみると、さらに過激化の様相を見せていました。

銀座のドンキ、LAOXに徹底対抗!価格以外でも負けません!?
http://inbound.exblog.jp/25347932/
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これを見てください。ドン・キホーテ銀座本店の裏手の入り口に、中国客に人気といわれる日本のドラッグストア系商品のLaoxと同店の価格比較が貼り出されていたのです。
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たとえば、胃腸薬の「キャベジン」は「ドンキでは1980円+税だが、Laoxでは2500円+税」、風邪薬の「パブロンゴールドA」は「ドンキでは1480円+税だが、Laoxでは1980円+税」というのです。

いやいや、商魂逞しいとはこのことか。ビジネスモデルの関係で必ずLaoxに立ち寄らざるを得ない中国の団体ツアー客に向けた強烈アピールといえるでしょう。中国客こそ、そのカラクリをいちばんよく理解している客層だからです。

ここまでやると、あっぱれ!? というべきでしょうか。

もっとも、その隣のラックに多国籍語のチラシが置かれていて、中国語簡体字、繁体字、ハングルのみならず、タイ語まであることから、ドン・キホーテは中国人団体客のみならず、広く多国籍の客層を視野に入れて商売しようとしていることもわかります。
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こういうディティールにこそ、ニッポンのインバウンドの実態が透けて見えてくるところがありますね。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-09 09:24 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 03月 09日

中国内陸都市でも若い世代を中心に個人旅行化の機運が起きている

2月中旬、中国の内陸都市である重慶や成都(四川省の省都)を訪ねたのですが、そこでいちばん感じたことは、上海や北京などの沿海先進経済地域に遅れて訪日旅行市場が動き出したばかりのこの地域でも、若い世代を中心に個人旅行化の機運が起きていることでした。

たとえば、重慶や成都の書店に行くと、個人旅行者を対象とした旅行ガイドが並んでいます。
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中国は国土が広いので、上海や北京に比べると数年遅れの内容からなるラインナップという気がしますが、東京や大阪だけでなく、沖縄や中部北陸地方限定のシリーズ書も並んでいます。
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中国人に比べはるかに日本旅行に精通した韓国人や台湾人による紀行エッセイなども多数発売されており、情報源となっていることがうかがえます。
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ネットによるさまざまな情報があふれる中国ですが、これらの情報は真偽のあやしい噂話も多いといえます。ぼくは微信(WeChat)で「日本特色深度游(日本の特色あるディープ旅行)」や「日本自由行(日本自由旅行)」といったグループに入って日々彼らがアップする情報を眺めていますが、そこには日本に関するさまざまな情報があふれてはいるものの、断片的なネタが多く、人によって本来目的の異なっているはずの滞在中の行動の充実度を高めるための戦略的かつ鳥瞰図的(とでもいいましょうか)な都市の構造のコンパクトな把握を行うための最も基本的な見取り図を提示することにおいては、現段階では、旅行書籍のほうがネット情報より秀でていると思います。

要するに、それが中国の旅行書のタイトルによく使われる「攻略」ということですが、これが頭に入っていないと、だた点と点をつないであてどなく移動していくほかないからです。要は、ネット情報は必ずしも「使える」とはいえないものも、多いのです。

ぼくはふだんからよく思うのですが、ネットの情報というのは、本当はよくわかってもいないのに、わかった気にさせてしまう面があるという自覚が利用する側に必要とされるメディアだということです。特に旅行情報については、その悪しき影響が強いと思います。

さて、海外旅行市場もかなり成熟してきた沿海地方とは違い、重慶や成都あたりでは、街場の旅行会社の店舗などにこうした旅行商品のリストを手書きにしたボードがよく置かれていました。
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最初の看板は中国青年旅行社のもので団体ツアーの情報ですが、下のボードは、国内外の手配旅行の情報です。いま中国の人たちは、お仕着せの団体ツアーではなく、自分の足でどこでも訪ねてみたい、そういう思いでいっぱいのようです。
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先ごろ成田・重慶線を就航させたばかりのスプリング・ジャパンの親会社にあたる春秋国際旅行社では、以下のようなチラシを配っていました。
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「日本自由行」とあるのは、先日本ブログでも紹介した重慶の街角の電子広告にもあった個人旅行の手配をうたうものです。

「重慶・東京5400円から」「日本旅行5泊6日6万3000円」~重慶、成都の街角にて
http://inbound.exblog.jp/25425180/

チラシの裏面を見ると、細かな料金表が載っていました。その内容は、「(日本までの往復)航空券」「ホテル(希望宿泊分)」「ビザ(団体ではなく個人ビザ)」「WiFi(日本でスマホを使うためのアプリ購入代金)」の組み合わせでした。
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これはあくまで個人ビザを取得した人たち対象のサービスですが、これを見てわかるのは、いまの中国人がどんな日本旅行をし始めたかということです。

最も割安な「航空券+ホテル1泊」(4泊5日 2799元)とは、往復の航空券と初日のホテル1泊分のみのサービスで、これを購入する人は、すでに個人のマルチビザを所有しているため、あらたにビザ申請する必要がなく、成田に到着したその日の夜だけ成田周辺か都内に1泊ホテルを予約するだけを旅行会社に依頼しているわけです。

このような「自由行」のスタイルは、日本では1980年代から一般化していたもので、ちょっと懐かしい気がします。ぼくも、20代のころ、往復航空券と初日のホテルのみ予約して海外に遊びによく行っていたものだからです。日本人の場合は、たいていどこに行くのもビザが不要だったので、中国人の場合のように、ビザ代行を旅行会社に依頼する必要もありませんでした。

ところで、彼らは初日だけホテルを予約して、残りの日の滞在はどうしているのか? 自分でネット予約しているのです。中国の最大手オンライン旅行会社のCTripを使ってもいいでしょうし、最近では中国版AirBnBである「住百家」という民泊サイトを利用する人も増えています。

住百家 http://www.zhubaijia.com/

このサイトは、在日中国人らが運営する民泊サービスです。法的にグレーゾーンとされるこのサービスの実態については、今後あらためて紹介したいと思います。

何はともあれ、我々が想像する以上の速さで、中国の個人旅行化は進みつつあり、今後訪日旅行市場にも影響していくことが予想されます。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-09 08:31 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 03月 05日

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は?

中国発クルーズ客船が多数寄港する福岡で、中国客の上陸観光のガイドとしてバスに同乗し、免税店を案内する傍ら、売上に応じたコミッションを得ていた中国人不法ガイドがついに摘発されました。

この一件は、ガイドらが書類送検された3月3日夕方にはテレビのニュースなどでも報じられていました。
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無資格「観光ガイド」2人を摘発 免税店から報酬5,000万円(FNN2016/3/03)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00317893.html

爆買い中国人のガイド役の男女が摘発された。

入管法違反の疑いで摘発されたのは、中国人の無職の女(31)と留学生の男(25)。2人は、就労ビザがないのに、2014年から2015年にかけて、観光ガイドとして、中国人観光客を福岡市の免税店に案内し、見返りに報酬を受け取った疑いが持たれている。

2人は、ボランティアと称していたが、口座には報酬として、少なくともそれぞれ、およそ5,000万円が入金されていたという。2人のうち、女は2月、裁判所から罰金の略式命令を受け、国外退去処分になっている。


翌4日、大手各紙がさらに詳細に報じています。

不法就労助長:「爆買い」無資格ガイド 中国人摘発 福岡県警(毎日新聞2016年3月4日)
http://mainichi.jp/articles/20160304/ddh/041/040/004000c

大型クルーズ船で入国した中国人観光客を案内するツアーガイドに無資格の中国人を雇ったとして、福岡県警は3日、旅行代理店や免税店6店(いずれも福岡市)の支店長ら男女6人を出入国管理法違反(不法就労助長)容疑などで福岡地検に書類送検した。ガイドの中国人男女2人も福岡地検に書類送検するなどした。「爆買い」のガイドが摘発されたのは初めて。

6人の送検容疑は2014年9月〜15年9月に男(25)=福岡市=を、15年5〜11月に女(31)=神戸市=をガイドに雇用し、客を免税店に引率させたなどとしている。2人に就労資格はなく、県警は女を今年1月に同法違反(資格外活動)容疑で逮捕。女は2月に罰金50万円の略式命令を受け、国外退去処分になった。県警は男も2月に同容疑で書類送検した。

県警によると、旅行代理店が2人にガイドを委託し、報酬として女に約3000万円、男に約4500万円が支払われた。

関与した旅行代理店3店はいずれも中国系、免税店3店はそれぞれ中国、韓国、台湾資本という。


毎日新聞は、摘発の容疑が「出入国管理法違反(不法就労助長)」であること。関与した旅行会社や免税店が、昨年の訪日外国人旅行者数トップ3の中国、韓国、台湾資本であると指摘しています。

「爆買い」ツアー、無資格でガイド 入管法違反容疑で男女2人摘発(朝日新聞2016年3月4日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12240131.html

就労資格がないのに中国人観光客のガイドをして不正に報酬を得ていたとして、福岡県警は出入国管理法違反(資格外活動)の疑いで中国人の女を逮捕、男を書類送検し3日発表した。2人は免税店で観光客の買い物を支援する報酬として、少なくとも約7600万円を免税店側から受け取っていたという。県警によると、海外からのツアー客のガイド行為に同法を適用したのは全国初。

県警は3日、2人にガイドを委託した福岡市と東京都の旅行会社3社の役員計3人を同法違反(不法就労助長)容疑で、報酬を渡した同市と東京都の免税店運営会社3社の役員計3人を不法就労助長の幇助(ほうじょ)容疑でそれぞれ書類送検した。

外事課の説明では、自称無職の女(31)は昨年5~11月、就労ビザがないのに、中国人観光客らを福岡市内の免税店に案内するなどして、約3千万円を得ていたとして今年1月に逮捕された。2月に罰金50万円の略式命令を受けて国外退去になった。留学生の男(25)は2014年9月~15年9月、同様に計約4600万円の報酬を得たとして、今年2月に書類送検された。

免税店運営会社の役員2人は「就労資格は旅行会社が確認していると思っていた」などと容疑を一部否認。ガイド2人と旅行会社役員3人、免税店運営会社の役員1人は容疑を認めているという。

同課によると、旅行会社は2人に報酬は支払わず、「ボランティア」名目で委託。実際には免税店側から2人の口座へ入金があり、県警は報酬にあたると判断した。


朝日新聞は今回の摘発を「海外からのツアー客のガイド行為に同法を適用したのは全国初」。さらに「外事課」が動いていたことを報じています。

「爆買い」無資格案内、容疑の中国人ら摘発 福岡県警(日本経済新聞2016/3/4)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO98016980U6A300C1CC1000/

就労資格がないのに、中国などから買い物に訪れる「爆買い」目的の観光客らを免税店に案内し報酬を得ていたとして、福岡県警は3日までに、入管難民法違反(資格外活動)容疑で中国人の女(31)を逮捕したほか、中国人留学生の男(25)を書類送検した。

県警によると、同容疑で中国人ツアーガイドを摘発したのは全国初。

県警は同日、この男女をガイド役として雇った旅行会社3社と免税店の運営会社3社の幹部ら計6人を同法違反(不法就労助長)の疑いで書類送検した。県警によると、免税店の運営会社の2人は容疑を否認している。

県警によると、ガイド役の男女は2014年9月~15年11月、就労資格のないビザで日本に滞在し、買い物をする中国人観光客らをボランティア名目で案内。その見返りとして案内先の免税店から計約7500万円の報酬を受け取っていたという。

女は今年1月に逮捕され、簡裁から罰金50万円の略式命令を受け、国外退去処分となった。

外国人向けに観光案内をする場合は「通訳案内士」の資格が必要だが、この男女は取得していなかった。


日本経済新聞は「無資格」「就労資格がない」「入国管理法違反」などと各紙が説明する中国人ガイドらの摘発の理由として「通訳案内士」資格を持っていなかったことだと説明しています。

さて、本ブログでは昨年来、福岡に寄港する中国発の大型クルーズ客船の動向をウォッチングしてきました。
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いまや東シナ海は中国クルーズ旅行の新ゴールデンルートです
http://inbound.exblog.jp/24720904/

その経緯からすると、今回の摘発はいつ起きてもおかしくないと思っていました。この時期になったのは、摘発する側のなんらかの事情で決まったと思われます。

実をいうと、「観光立国」の推進役である観光庁を外局にもつ国交省は、2010年無資格ガイドを手配したとしてJTB系旅行会社を処分しています。このため、その後日系旅行会社は中国発クルーズの上陸観光手配からは一部を除きほぼ手を引いたため、現状はアジア系事業者と中国系ガイドの仕切る世界になっていたのです。

JTB系旅行会社を厳重注意処分に=通訳案内士法違反で初、中国人留学生バイト募集に問題―九州運輸局(レコードチャイナ2010年3月30日)
http://www.recordchina.co.jp/a40879.html

今回の摘発の理由となった「通訳案内士」資格をめぐる問題についても、これまで本ブログでは何度も指摘してきました。

NHK報道をめぐり思う。通訳案内士って何だろう?
http://inbound.exblog.jp/24442716/

メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたか
http://inbound.exblog.jp/24446629/

無資格ガイド問題とは何か?
http://inbound.exblog.jp/24472149/

こうした現状もそうですが、一般の日本人からみると、中国人不法ガイドが数千万円もの収入を得ていたことのほうが驚きかもしれません。中国人観光客による「爆買い」で最も利益を得たのは彼らだったかもしれないからです。

ある事情通は、彼らが法外な利益を得たカラクリについてこう説明してくれました。

「彼ら無資格ガイドが、免税店やアジア系旅行会社から無償または1日5000円程度でクルーズ客の上陸観光のバス1台分40名のガイド業務を引き受けるとする。免税店に連れてゆき、1人平均5万円のお買い上げで、売上総額は200万円。そのうち10%を免税店からコミッションとして受け取ると、20万円/日の実入りとなる。いまや福岡には毎日のようにクルーズ船は来るから、年間で約150日ガイドをやって、こつこつ貯めれば軽く3000万円を超える。免税店や商品によっては、コミッションが売上の20~30%の場合もあるので、もっと利益は増える。これを中国へ持ち帰ると、都市郊外のマンションが買える金額だ。まさに商才民族というべきだろう。

考えてみれば、これは中国人が中国人を食い物にする構造だ。日本人がそれをやれば、中国から袋叩きに遭うだろう。しかし、中国人同士がやっていることなので、関係者らは見て見ぬふりをしてきたというのが、これまでの経緯だったと思う」

こうしたことが起こりえた背景には、いうまでもなく中国人観光客の「爆買い」があったことは確かです。彼らが「爆買い」しなければ、こんなカラクリは成立しないからです。

実は、このニュースが各紙で報じられた昨日、ぼくはたまたま在日中国人の旅行手配業者の知り合いに会う約束になっていました。そのとき、当然この話が出たのですが、その業者によると、昨年末、ある中国系の免税店から各業者に一斉に通達があったそうです。その内容は「在留カードを持たない中国人ガイドが客を連れてきても、2016年1月1日からはコミッションは出さない」というものだったそうです。

彼らも今回の摘発を免れるための手を打っていたことがわかります。もっとも、それは「在留カード」の所持にすぎず、外国人に対してガイド業務を行う通訳案内士資格の有無ではありませんでした。各紙が報じる外国人の「就労」資格に関する判断は、単に「在留カード」があればすむことなのか、「通訳案内士」資格まで問うているのか、分かれているようにも読めます。

しかし、そんな通達は、急増する訪日中国人旅行市場の現状からいって、守られることなど到底、無理な話だったのです。

何はともあれ、パンドラの箱はついに開けられました。

はたして今回の摘発は、福岡以外の全国に波及するのか。そうなると、航空便で訪日する中国人ツアー全体に影響が出てくることが考えられます。

なぜなら、中国の訪日団体ツアーは、航空便利用の場合も、クルーズ同様、コミッションによるコスト補填で成り立っている状況は同じだからです。

だとすれば(あえてこんな言い方をしますが)今回の摘発以降、逮捕される危険を顧みず、ガイド業務を買って出る中国人がいなくなってしまえば、中国側の旅行会社ががいくら日本に客を送ってみたところで、ツアーが回せなくなってしまう可能性があるのです。

この摘発が、未曾有に拡大しつつあった訪日中国旅行市場にどんな影響を与えることになるのか。注視していきたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-05 14:43 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)