ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 05月 18日

1990年の長白山トレッキング

ぼくが初めて長白山(白頭山)に行ったのは、1990年8月のことです。この写真はどこだと思いますか。長白山の北坂にある長白瀑布の水が滝つぼに落ちる直前の場所です。天池は松花江をはじめとした東北三省を流れるいくつもの大河の源流にあたります。これは、天池から水がこぼれ落ちる瞬間というわけです。
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その年、ぼくは仕事をやめ、長い旅に出ていました。大阪港から鑑真号で上海に渡り、その後は東北三省を中心に中国や東南アジアを訪ねていました。

長白山に行ってみたいと思ったのは、当時親しかった中国の友人のお父さんが画家で、長白山の天池をテーマにした作品をいくつも描いていたからです。なかには約1000年前の噴火の光景を描いた迫力ある作品もありました。その方から中国に美しいカルデラ湖があると教えられたのです。

吉林省の通化から夜行列車で二道白河へ行き、そこからバスで長白山の北坂山門に行きました。駅前には白馬の馬車がいました。当時はまだ舗装されていないでこぼこ道を、ローカルバスで約2時間走ると、長白瀑布の近くにある一軒のロッジの前で降ろされました。
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ロッジで荷を解くと、すぐに長白瀑布に向かいました。5分も歩くと、瀑布が見えてきました。とても涼しげです。
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ロッジの人に、どうやったら天池に行けるか尋ねると、瀑布の脇の岩場を歩いて登るのだそうです。ただし、滝つぼを間近に見下ろしながら、水しぶきで濡れた狭い岩場を歩いていくのは危険だから気をつけるように、と言われました。いま考えればずいぶん勇気があったものですが、当時はまったく平気でした。

※2008年5月に長白山を再訪したとき、誰でも安全に登れるように瀑布の脇にコンクリートの階段道ができていました。景観をぶちこわしてしまっていると思いましたが、2012年に行くと、その階段道で天池に行くこと自体が禁止されていました。世界遺産登録を目指す吉林省の長白山管理委員会が天池への観光客の増加で環境悪化を懸念したからのようです。

1時間ほど岩場をよじ登ると、滝の水の落ちる場所(冒頭の写真)が見えてきました。そこを抜けると、視界が開け、紺碧の池が見えてきました。そこから数百メートル歩くと、ついに天池が目の前に現れました。
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このとき、天池のまわりの霧は晴れていました。雲の変化は速く、太陽光が天池を照らしたり、雲で覆ったりしていましたが、実に感動的な光景でした。
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さて、天池に舞い降りることができたのですから、次は外輪山から天池の全貌を眺めてみたいものです。いったん瀑布の下に戻り、ロッジの人に行き方を尋ねたところ、3㎞ほどふもとに下ると、天文峰展望台に行く自動車道があるので、そこで車を見つけるといいとのこと。トータルで7~8㎞はあるようでした。しかし、当時のぼくはトレッキング気分で歩いていこうと考えました。なんとかなるだろうと思っていたのです。

とはいえ、山道は直線距離では測れません。いつまでたっても展望台にはたどりつけず、どうしたものかと弱気になっていたところに、救い主が現れました。1台のランドクルーザーが下から駆け上がってきたので手を振ると、停まってくれたのです(それまでの数時間、1台の車も走っていませんでしたから、本当に助かりました)。

運転していたのは、韓国から来た世界日報の記者でした。40代くらいの大柄な男性です。通行車両ひとつない道を外国人らしき人物がひとりで歩いていること自体珍しかったので、停めてくれたのです。この登山道路は韓国資本が作ったのだ。白頭山は韓国人にとって大切な山である、と彼は言いました。
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おかげで、天文峰展望台まで運んでもらい、天池を眺めることができたのでした。結局、帰りもロッジの近くまで送ってもらいました。その人は、ふもとの二道白河のホテルに泊まっていたそうです。

ロッジの隣に、小さな温泉がありました。「長白山温泉」と書かれています。効能は、関節炎と皮膚病だそうです。山あいの素朴な温泉で、とても気分がよかったです。
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温浴客の中に、ふたりの香港人がいました。「どこから来たの?」と聞かれたので、「東京」と答えると、彼は自分は「ニューヨークから来た」といいます。なにコイツすかしているのだろうと一瞬思いましたが、話を聞くと、ふたりは映画俳優で、いま長白山の山麓でアクション映画を撮っているとのこと。翌朝、ロッジの外で映画の衣装に着替えたふたりがいたので、記念撮影しました。
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1990年代前半、韓国による展望台行き自動車道以外は、長白山の観光開発はほとんど手がついておらず、この地を訪れるのは、92年の中韓国交樹立以降、増えてきた韓国人客くらいでした。日本人は少なかったと思います。その後、90年代後半に在日朝鮮人の事業家が長白山国際観光ホテルをこの地に建てたころから、だんだん観光地化が進んでいくことになります。
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# by sanyo-kansatu | 2013-05-18 14:14 | 北東アジア未来形:満洲の今 | Comments(0)