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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2014年 02月 21日

100年前の夏、外国人は日本のどこに滞在していたのか?

いまから100年前の大正2(1913)年の訪日外客数は約2万人でしたが、彼らは日本のどこを訪ね、滞在を楽しんでいたのでしょうか。

当時は国内を数日間で移動できるような鉄道網や自動車道は発達してなかったため、今日のような東京・大阪5泊6日コースのような短期間の周遊旅行はありえませんでした。そのため、多くの外国人客は東京や京都といった大都市以外は、国内各地の温泉地や避暑地、また鎌倉や日光、宮島など主要な観光地の周辺に生まれつつあった外国人経営の洋式ホテルや温泉旅館に滞在していたようです。移動型ではなく、滞在型の旅行形態が一般的だったと思われます。

ツーリスト3号(1913年10月)では、この年の7、8月「避暑地、温泉及び都会等に滞在せる外人旅客数」を国籍別に調査しています。同調査に挙げられた滞在地は以下のとおりです。

東京、横浜、鎌倉、熱海、伊東、修善寺、京都、神戸、宝塚、有馬、宮島、道後、別府、長崎、小浜、温泉(雲仙)、伊香保、草津、日光、中宮祠、湯本、鹽原(塩原)、松島、大沼公園、登別温泉
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なかでも外客数のトップは、日光6256人。次いで鎌倉3368人、京都3008人、東京1738人、中宮祠1593人、横浜1127人、湯本1067人、小浜1039人、神戸878人、雲仙765人と続きます。

調査の結果、この年の7、8月中に日本に滞在していた外国人客数は、24736人でした。国籍別にみると、トップが英国人9225人、次いで米国5992人、支那3001人、ドイツ2866人、フランス1440人、ロシア1044人と続きます。

ただし、この調査において「唯外人滞在数最も多き箱根及び軽井沢の調査未だ判明せざるは、甚だ遺憾とする所也」とあり、これが国内のすべての外国人客を捉えきれていないことも正直に明かされています。

その理由として「されど此種の調査は、事頗る煩累を極め、絶対に正確を期せんこと容易に非ざるべく、殊に外人経営のホテルには宿帳を其筋に提出せざるものもあるとのことなれば、愈々其困難なるを察するに足ると共に、詳細なる回答を送られた警察署に対しては玆に感謝の意を表す」とあるように、当時は外国人経営のホテルも多く、調査が難しかったことがうかがえます。

それをふまえたうえで、同誌は当時の外国人の日本の滞在状況について、こう書いています。

「外人旅客頗る多数なるものの如しと雖も、其大部分は従来より滞在せる外人にして、実際漫遊外客は一小部分なりと推すべき事情あり、若し従来の滞在者と漫遊者とを判然区別し得ば、一層有益なる統計を作り得べしと雖も、暫く如上の統計を以て吾人の参考に資せん」。

確かに、当時すでに在留外国人が多くいたため、国内の避暑地や観光地に滞在する外国人の多くが実は彼らであって、その時期海外から訪れた外客(漫遊外客)の比率はまだ少なかったようです。とはいえ、当時から外国人に国内の温泉地や観光地が人気だったこともよくわかります。

# by sanyo-kansatu | 2014-02-21 08:45 | 歴史から学ぶインバウンド