ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 01月 28日

日本の地方空港にいつ頃から国際線が増えてきたのか?(オープンスカイとLCCのおかげ)

ここ数回、本ブログでは日本の一部の地方空港に東アジアからの国際線が多数乗り入れるようになった状況を見てきましたが、これはいつ頃からのことなのでしょうか?

米国との航空便の路線や発着枠、便数を自由化させるオープンスカイ協定を締結させた2010年10月以降、続々とアジア各国との同様の協定を進めたことが背景にあります。

2010年以降の主なオープンスカイ協定締結国

2010
米国、韓国(12月)
2011
シンガポール(1月)、マレーシア(2月)、香港(5月)、ベトナム(6月)、マカオ(7月)、インドネシア(8月)、カナダ、オーストラリア、ブルネイ、台湾(11月)
2012
英国、ニュージーランド、スリランカ、フィンランド、フランス、中国(8月)、オランダ、スカンジナビア3国、タイ(11月)
2013
スイス、フィリピン(9月)、ミャンマー(10月)

特に地方空港への国際線乗り入れ増加に最も影響を与えたのは、2010年の韓国、11年の台湾、12年の中国との協定締結でしょう。

過去最高200万人超えなるか!台湾客急増の背景にはオープンスカイがある(台北ITF報告その5)(2013年11月1日)
http://inbound.exblog.jp/21387914/

さらに、2000年代以降に日本に先駆けて急成長していたアジアのLCCも、この協定によって成田や関空だけでなく、北海道などの一部の人気レジャー路線に乗り入れを始めました。台湾や中国では、まずLCCが地方空港への乗り入れを開始し、それに国営キャリアが後追いするような動きが起こり、路線数を拡充していった流れがあります。

LCCはアジア客の訪日旅行の促進につながるか?【2013年上半期⑫LCC】(2013年7月29日)
http://inbound.exblog.jp/20789404/

すべてが日本に乗り入れているわけではありませんが、アジアの空には以下のような多くのLCCが運航しています。

ローコストキャリア / LCC 格安航空会社一覧
http://airline.arukikata.co.jp/lcc/list.html

●韓国
エアプサン http://flyairbusan.com/
ジンエアー http://www.jinair.com/
チェジュ航空 http://www.jejuair.net/
ティーウェイ航空 http://www.twayair.com/
イースター航空 http://www.eastarjet.com/
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●シンガポール
シルクエアー http://www.silkair.com/
ジェットスター・アジア航空 http://www.jetstar.com/3k/
タイガーエア http://www.tigerairways.com/
スクート http://www.flyscoot.com/
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●マレーシア
エアアジア http://www.airasia.com/
エアアジア X http://www.airasiax.com/
ファイアフライ http://www.fireflyz.com.my/
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●香港
香港エクスプレス航空 http://www.hkexpress.com/

●ベトナム
ジェットスター・パシフィック航空 http://www.jetstar.com/

●インドネシア
ライオン・エア http://www2.lionair.co.id/
インドネシア・エアアジア http://www.airasia.com/jp/ja/
シティリンク http://www.flycitylink.com/

●台湾
V エア http://www.vair.com.tw/
タイガーエア台湾 http://www.tigerair.com/tw/zh/

●中国
春秋航空 http://www.ch.com/
吉祥航空 http://www.juneyaoair.com/jp/home.html
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●タイ
タイ・エアアジア http://www.airasia.com/site/th/
ノックエア http://www.nokair.com/
オリエント・タイ航空 http://www.orient-thai.com/
タイ・ライオン・エア http://www.lionairthai.com/en
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●フィリピン
セブパシフィック航空 http://www.cebupacificair.com/
エアアジア・ゼスト(旧ゼストエアウェイズ) http://www.airasia.com/ph/en/home.page
エアフィル・エクスプレス http://www.airphilexpress.com/

おかげで日本の地方空港をアジア各国のエアラインがにぎわせてくれています。ただし、一部の、としかまだいえないのがもうひとつの現状ではありますけれど。昨年末に、以下のような報道がありましたが、地方空港への国際線の乗り入れを推進するための施策です。とにかく国内需要をこれ以上増やせない日本にとって、海外の近隣諸国からの航空便を誘致することが地域経済の活性化につながることは間違いないでしょう。

国際線の着陸料が1年間無料に 国交省、就航・増便対象(朝日新聞2015年12月19日)
http://www.asahi.com/articles/ASHDL5V25HDLULFA02Y.html

国土交通省は来年度から、国が管理する空港に新たに就航したり増便したりする「国際定期便」の着陸料を1年間、実質無料にする方針を固めた。羽田、札幌(新千歳)、福岡、仙台(運営を民間委託)の各空港をのぞく15空港が対象で、訪日外国人を地方に誘客するねらいだ。

対象は稚内、釧路、函館、新潟、広島、高松、松山、高知、北九州、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、那覇の15空港。

例えば中型のボーイング「767‐300」が国管理空港に着陸する場合、航空会社は1回17万6330円を国に支払う。この半分を地方自治体などが負担することを条件に、国が残りを免除する。地方負担は着陸料に充てるだけでなく、同額を航空会社に対する別の支援策に使うことも認める。国際チャーター便の着陸料も、同じしくみで免除する。

国交省によると、羽田、成田、関西、中部国際をのぞく国内空港の国際定期便は692便(2015年の夏ダイヤ)で、10年から約6割増えた。海外の格安航空会社(LCC)の就航が増えているためだ。

自治体などはLCCの誘致を競っているが、自治体管理の空港は着陸料を自由に下げられるのに、国管理空港は着陸料が一律で不公平との指摘があった。


※国土交通省 空港一覧
http://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000310.html
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by sanyo-kansatu | 2016-01-28 15:10 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 12月 26日

クリスマスの山手線で見かけたアジア系ツーリスト、いい話と気になる話

今年のクリスマスは、去年にもまして都内でたくさんの外国人ツーリストの姿を見かけました。いかにも外人向けバーというような雰囲気の店だけでなく、ごく普通の日本人の多いレストランや居酒屋にも、欧米人客の姿がありました。彼らの存在はちょっぴりクリスマス気分を盛り上げてくれます。

都内の交通機関でも外国人ツーリストは当たり前のように見かけました。これからする話は、どちらもJR山手線の話です。まずいい話から。

昨日の正午過ぎ、ぼくは大塚駅から新宿駅に向かう内回りの山手線の中にいました。車両は比較的すいていました。見ると、座席にアジア系のツーリストの家族と小グループが一列に並んで座っていました。話し声からすると、香港人か東南アジア華人の人たちです(もしシンガポール人なら英語を話すからで、彼らは南方中国語を話していました)。

同じ車両に一組の日本人の老夫婦が乗ってきました。すると、彼らはすぐに立ち上がり、ことばもかけずにふたりに席を譲るのです。「ありがとうね」と日本語でおばあさんはお礼していました。

目の前で起きた出来事だったので、つい「香港か東南アジアの皆さんだと思いますよ」とぼくはご主人に伝えたくなりました。「そうですか」。ご主人は不思議そうに彼らを見つめていました。

彼らのように個人旅行で訪日しているアジア系のツーリストは若い家族連れやグループが多く、みんな明るく楽しそうです。彼らの文化圏の作法では、老人に席を譲るのはごく自然のことなのでしょう。いい光景だなあと思いました。

おそらく彼らは日本に来ると、社会に占める老人の多さに気づくのではないでしょうか。ぼくも東南アジアの旅行から帰ってきて都内の交通機関に乗ると、日本は老人大国だと実感します。日本に比べ、アジアの国々は社会に占める若者の数が多いからです。確か、ベトナム人の平均年齢は29歳だったと思います。

さて、次はちょっと気になる話です。おとといの夜、新宿駅の外回りの山手線ホームは大混雑でした。なんでも高田馬場駅で乗客が荷物を線路に落としたため、10分以上電車が停まっていたからです。

しばらくすると、ようやく電車が動き出し、大勢の乗客を乗せた車両がホームに入ってきました。ドアが開き、乗客が吐き出されてきたのですが、ぼくが乗ろうとして列を待っていたドアの近くで、その出来事は起きました。ドアのそばに立っていたふたりの女性が決して降りようとしないため、乗客同士が次々とぶつかり、一触即発のような険悪なムードになりかけていたのです。

なぜいったん車両の外に出ようとしないのか…。ぼくは思いました。彼女たちは中国人観光客であるに違いないと。いったん車両の外に出て、降りる人を降ろして再び乗り込めばいいという作法を知らないのです。

最近、中国の主要都市には次々と地下鉄が開通しています。特に北京と上海ではすでに20路線近い地下鉄網が広がっています。ぼくもよく利用するのですが、中国の乗客にはドアに近い人がいったん外に出て、中の乗客を降りやすくするというような作法は身についていません。毎回駅に着くたびに、ドアの近くで乗客同士が押し合いへしあい、ぶつかり合うのです。降りる人がまだいるのに、乗り込んでくる輩もいるほどです。ぼくはそんな光景を見るに見かねて、駅に着くと、いったんドアの外に出て、乗客を降りやすくする日本式の心遣いをパフォーマンスしてみせるのですが、その意図はこの国の人たちには伝わりません。基本的に、中国は引いたら負けの社会だからでしょう。いったん誰かが身を引けば、別の誰かがすぐに割り込む、そういう社会なのです。これはいい悪いの問題ではなく、社会の特性というほかありません。

電車に乗り込み、件のふたりの女性の話し声を聞きました。案の定、中国語でした。山手線を利用しているくらいですから、個人ビザで訪日した北京や上海などの沿海都市部の中国人でしょう。

中国の個人客が増えるなか、誰かが彼らに日本での電車の乗り降りの仕方を教えなければいけないと思いました。日本では、車両が混雑している場合、ドアの近くに立っている人は、いったんドアの外に出て乗客が降りるのを手助けするという作法があることを。そうでないと、最近の日本人は切れやすい人もいるので、ひと騒ぎ起きてしまいかねません。中国人はちょっとぶつかったぐらいでは気にしませんが、日本人はそうはいきません。日本人の側が手でも出したら、彼らはとたんに狂ったように大声で騒ぎ立てるでしょう。彼らはなぜ自分が非難されているか理解できないからです。

もちろん、教えなければならない日本のルールはこれだけではありません。

先月でしたか、北海道のコンビニで商品を勝手に開けた中国の女性客を注意した店員が中国人の旦那から殴られるというような事件が発生したように、この種のトラブルがそこらかしこで多発することが予測されるからです。

中国の個人客の中には、基本的な日本の社会に対する理解が欠けている人たちがけっこういます。彼らが増えることで、つまらぬトラブルが起きないよう中国側の関係者はこうしたささいなこともぜひ自国民に知らせてほしいものです。

※以上の話とは関係ないですが、この写真はおととし訪ねた台北の地下鉄のホームの光景です。ぼくはこれを見て驚いたのですが、台湾の人たちは日本人以上に列にきちんと並ぶことです。同じ華人でも、台湾や香港の人たちと中国の人たちはまったく異なる旅客であることを我々も理解する必要がありますね。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-26 10:20 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 11月 18日

いまや「ニッポンヤスイネ」の時代~今年1~10月の訪日外客1600万人突破!

ぼくの手元に一冊の興味深い写真集があります。

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1999年に刊行された『ニッポンタカイネ(NIPPON EXPENSIVE!)』(メディアファクトリー刊)です。撮影は吉永マサユキさんという写真家で、1990年代に日本で暮らすモンゴル人や中国人、フィリピン人、ベトナム人、パキスタン人、トルコ人など14カ国のアジア人たちのドキュメンタリー作品です。ネットで調べると、2010年に河出書房新社から復刻版が出ていて、以下の関連イベントもあったようです。

写真家・吉永マサユキ「ニッポンタカイネ展」
http://openers.jp/article/9877

ぼくは吉永さんと同世代で、1980年代以降激増した在日アジア人の事情についてはそこそこ詳しいこともあり、同写真集が刊行されるとすぐに購入したことを思い出します。自分のよく知る世界が描かれていて、シンパシーを感じたからです。

さて、本日JNTO(日本政府観光局)による毎月恒例のリリースが公表され、2015 年1~10 月の訪日外国人数の推計値が1631 万人に達し、累計で過去最高を更新したことがわかりました。

訪日外客数(2015 年10 月推計値)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/151118_monthly.pdf

これまで何度か本ブログでも書いてきましたが、今年は45年ぶりに訪日外国人数が出国日本人数を越えることは確実となっています。

言うまでもないことですが、この数年、訪日外国人旅行者が急増している背景に、円安があります。

いまや「ニッポンヤスイネ」の時代なのです。『ニッポンタカイネ』が刊行された約15年前のことを思うと、隔世の感があると思わざるを得ません。いまでは多くのアジアの人たちが円安の日本を訪れ「爆買い」していくからです。

だからといって、今日の状況に至った「失われた20年」をめぐって自虐的、悲観的にになる必要はないとぼくは思っています。逆をいえば、1990年代に移民労働者に過ぎなかった彼らが、経済力をつけ、日本にレジャー消費者として訪れるに至った事実は、我々にとって決して悪い話ではないと思うからです。

『ニッポンタカイネ』が刊行された1999年当時、正直なことをいうと、もうこれからはそんなこと言っても始まらない時代が来るとぼくは先読みしていました。その翌年、中国本土の団体観光客が解禁されることを知っていたからです。この写真集が描く日本とアジアの関係は、すでに1990年代半ば頃から少しずつ変わり始めていたのです。個人的な感覚では、1980年代末から90年代前半、いわばバブル時代の東京の裏面の記録であり、社会のリアルな実態からは少し遅れて出てきた作品だと思ったものです。

繰り返しますが、「ニッポンヤスイネ」という時代は、我々にとってそんなに悪い話ではない。それを活かすかどうかはその人次第。連日のパリのテロ報道を見るたび、周辺の国々が経済成長し、購買力を持つに至るという、いまアジアで起きていることは、ヨーロッパとはずいぶん事情が違うなと思います。

日中の物価が完全に逆転しています(訪日客急増と「爆買い」の背景)
http://inbound.exblog.jp/24162197/
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by sanyo-kansatu | 2015-11-18 20:22 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 10月 23日

ムスリム・ジャンピング・ガール目撃!? ようこそ、21世紀の新宿御苑へ

仕事がうまくはかどらず、無気力症候群に陥ってしまうことってありませんか? ぼくはよくそうなります。そんなとき、新宿御苑の芝生の上にごろりとしに行きます。仕事場から近いせいで、逃避グセがついてしまいました。困ったものです。でも、きっとぼくみたいな人も多いんじゃないかな、などと心の中で言い訳しながら、新宿門をくぐると、今日もたくさんの人たちが芝生に寝そべっていました。
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ふと見ると、西洋人のカップルがいます。新宿御苑では見慣れた光景です。その向こうには、子連れのママさんグループがいて、ハロウィンに近いせいか、オレンジのかぼちゃの衣装を着せられた赤ちゃんもいます。意外にひとりでやって来ている若い女性も多いです。

しばらくすると、頭にスカーフを巻いたマレー系と思われるカップルも来ました。お約束の自撮り棒を手にしています。新宿門の入口あたりでは、広東語も聞かれました。やはり、パッと見でわかるのは、西洋人とムスリムの人たちで、中国や韓国などの東アジアの人たちは話し声を直接聞かない限り、もう日本人の中に溶け込んでいます。ここは団体客が来るようなスポットではないので、香港やシンガポールなどの中華系の人たちものんびり過ごしているようです。

新宿御苑は外国人ツーリストが多いことで有名です。なにしろトリップアドバイザーによる新宿区の観光部門でトップにランキングされているくらいですから。
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新宿御苑 トリップアドバイザーによる「新宿区の観光」で 114 軒中 1 位
http://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g1066457-d479258-Reviews-Shinjuku_Gyoen_National_Garden-Shinjuku_Tokyo_Tokyo_Prefecture_Kanto.html

それにしても、若いマレー系のカップルを見ていると、時代は変わったなあとあらためて思います。彼らはノービザで日本に来ているのです。

これは20世紀の東京には見られなかった光景といえるでしょう。なぜなら、当時アジアから来日する人たちの多くは、留学生(厳密にいうと外交官やビジネスマンも)を除くとほぼ出稼ぎ目的だったからです。

都内の公園でくつろぐ外国人の光景について、いまでも思い出すのが、1980年代後半のある時期、毎週日曜になると、代々木公園にイランやパキスタン、バングラディシュなどのイスラム圏の人々が集まり、エスニック料理を出す露店が出てにぎわっていたことです。当時は、かの国々と日本の間で相互ビザ免除協定が残っていた関係で、多くのイスラム圏の若者が日本に出稼ぎに来ていたのです。彼らの多くは不法就労だったため、数年後、ビザ免除協定を日本政府が打ち切ると、帰国していきました。

しかし、いま我々が見ているのは、アジアの人たちが日本に遊びに来ている光景です。すでに海外旅行に出かけられる所得を有するミドルクラスがアジアには大勢生まれていて、気軽に日本旅行を楽しめるようになったのですね。

ようこそ、21世紀の新宿御苑へ。思わず、そんな言葉が口をついて出てきてしまいました。せっかく来たんだから、楽しんで帰ってくださいな。ぼくは彼らの姿を見ていると癒されるところがあります。
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ちなみに、この写真は今年の春、新宿御苑に来ていた若いマレー系のグループが記念撮影に興じていたワンシーンです。なぜだか彼女らはピョンと飛び上がって宙に浮いた瞬間をカメラに収めてもらいたいようで、何度もジャンプを繰り返していました。

ぼくは彼女のことを「ムスリム・ジャンピング・ガール」と命名しました。

一般にアジアの人たちは、カメラの前で過剰なポーズを取りたがるようですが、これは新しいバージョンなのかもしれません。それぞれの国で流行のポーズがあるのでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-23 15:09 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 09月 06日

海外客がTocoo!でレンタカーを予約する理由

海外個人客のホテル予約は、エクスペディアやBooking.comなどの海外ホテル予約サイトの利用が普及していますが、同じことはレンタカー予約でも起きていました。

個人客が航空券とホテルを手配した後、日本での移動の手段としてレンタカーを利用する動きは、これまで見てきたように、香港や台湾、韓国、タイ、シンガポールなどのアジアを中心とした訪日旅行者の間で急速に進んでいます。

外国人ツーリストのレンタカー利用が増えています(ニッポンレンタカーに聞く)
http://inbound.exblog.jp/24799845/

国内のレンタカー事業者は、それぞれ予約サイトの多言語化を進めていますが、やはり各事業者の情報を横断的に閲覧でき、利用者の細かいニーズに対応したサービスを提供する予約サイトが重宝されるのは当然でしょう。

その第一人者が、レンタカー予約サイトのTocoo!です。
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Tocoo!(中文版)
http://www2.tocoo.jp/cn

同サイトを運営しているのは、1997年創業のクーコム株式会社で、もともと有料会員制の宿泊予約サイトでした。同社は2000年代の早い時期から海外客向けのレンタカー予約サービスを開始しています。同社の牛田隆夫取締役に話を聞きました。

―いつ頃から海外客向けサービスを始めたのですか。

「2003年頃からです。弊社にアメリカ留学体験者がいて、早い時期から海外のお客様を日本に呼び込むインバウンド事業に取り組もうという考えはありました。そのときから、ホテルだけでなく、レンタカーもやろうかと思っていました。

当時宿の世界は保守的で、外国人を泊めるなんて、という声が多かった。レンタカー業界も同じで、当時レンタカー会社に海外客の予約サイトを立ち上げる話をしたとき、外国人なんかには貸せないよ、という感じでした。

なぜですか? とこちらは思うわけです。では、外国人が国際免許証を持ってカウンターを訪ねたとき、あなたたちは貸さないのですか? と聞くと、いや、そんなことはないと答えました。だったら、始めてみよう。こうしてなかば強引にスタートさせたのです。

ネットの社会というのは、世界中から見られるのです。言語を日本語から英語にすれば、日本に来るお客様もレンタカーを使う可能性がある。当時はまだ「観光立国」という言葉が使われ始めたばかりでしたが、私は今後絶対そうなると思っていた。

すでに2001年から国内客のレンタカーの予約サイトを始めていました。それ相応の取引があったので、レンタカー会社も当社をおろそかにはできない。まずはサイトの英語化から始めました。

誰かが強引に走り出さないと日本の社会は動かないんです。とはいえ、急に利用者が増えるというわけではないから、細々と始めることにしました」。

―2003年当時の予約状況はどうでしたか。

「当初は月に数台程度。予約が入るたびに、電話で確認したことを覚えています。

海外で認知度がなければ、そもそもサイトを見つけてもらえないわけですから。その後、実際に日本で利用した外国客がブログで紹介してくれたりして、徐々に利用が増えてきました。

これまでPRにお金を使ったことはほとんどないんです。唯一かけたのが、米国版のYahoo!のデイレクトリーに載せるため。当時は「Japan car Rental」にエントリーされているサイトがひとつもなかったんです。そこに載せるのに2万円かかりました。それだけです」。

―いつ頃から海外客の予約が増えてきたと感じましたか。

「2007、8年くらいから。この頃から月100台を超えるようになりました。11年の震災の前には、海外が国内を逆転する勢いになっていました。いまでは国内予約より海外予約のほうが圧倒的に多い。震災直後は半年分の予約99%がキャンセルとなったので、東電は保証してくれました」。

―最近の予約状況はいかがですか。

「国籍でいうと、ほとんど東南アジア。香港、台湾、韓国、シンガポール、タイなど。売り上げは前年比90%増です。国数でいうと60カ国がすでに利用していますが、半分以上が中国語圏。2007年9月に台湾人のドライブが可能となったことを機に中文版を立ち上げ、その後すぐにハングル版も始めました」。

―国内のどのエリアの利用が多いですか。

「全体の3割は北海道。でも、最近は関空や中部国際空港利用も多い。雪を見るために、名古屋から高山や白川郷に向かう人が増えています」。

―大阪のレジャーホテルの話では、ロードサイド店に関空からレンタカーで直接来てチェックウインするそうです

「そうでしょう。その場合はうちのサイトを利用されている方が多いと思います」。

―海外客の実際の利用状況はどうですか。国内客との違いはありますか。

「まず一回あたりのレンタル料金が国内客の3倍近い。利用日数の平均は、国内は2.5日で海外は5日。海外客の特徴は、ワンボックス車が人気で、乗り捨て利用が多いこと。なかには札幌で借りて大阪で返す人もいる。中華系が多いのでファミリー利用が多い。レンタル料金の単価が上がるのは、乗り捨てが多いからでもある。

当社ではETCを貸し出ししています。カードは空港のカウンターか初日に泊まるホテルに送ります。回収用の封筒を付けて戻してもらうのですが、回収率は100%。問題はありません。

ETCを貸し出すことで、海外のお客様がどんなルートを走っているか解析できます。たとえば、御殿場や河口湖で高速を乗り降りする人が多いとか。こうしたデータを持っているのはおそらくうちだけですが、海外客は首都高速も平気で乗っているし、日本各地を普通に運転されていることがわかります。

ご存知のように、アジアの交通事情はめちゃくちゃで、一般の日本人はまず運転できません。でも、日本には無茶な運転をする人はほとんどいないので、彼らにすれば楽勝なんです」。

―車はたいてい空港で借りるんでしょうか。

「いやいや、そうでもない。空港からダウンタウンに来てホテルで一泊して、翌日にホテルの近くで借りるのが40%。空港は39%で残りの2割は駅など」。

―客層はどうですか。

「海外客でレンタカーを借りる人は圧倒的に富裕層ですね。アンケートをすると、年収は1億円以上もたくさんいます。約50%が年収1000万円以上。だから、単価が高い。車のグレードがよければ喜んで利用される。アルファード(トヨタの大型ミニバン高級車)とエルグランド(日産のワンボックス型ミニバン)があれば、確実にアルファードを選ぶ。海外客はキャンセルチャージも100%回収している。はっきり言って、金払いは海外客のほうがいい。

実際、国内客の場合は安くしないと売れないので、海外客のほうが儲かります。レンタカー料金も20万~30万使う人はたくさんいる。しかも、当社の海外利用客の7割はリピーターです」。

―海外客からはどんな要望がありますか。

「クレームとして多いのは「日本のカーナビは古い」という声です。日本では一般にカーナビは3年で交換する。そんなに新しい道路がどんどんできるわけではないのになぜ? と思って調べたら、いろんなことがわかってきた。一般に日本のカーナビは施設の電話番号で目的地が登録されている。その場合、温泉旅館は問題ないが、最近アジア客に人気のフルーツ狩り農園や漁港などは見つからないことが多い。日本人なら電話番号がダメなら、施設名や住所で探せるが、アイウエオがわからない海外客はお手上げになる。実は、もうひとつの検索手段として、緯度経度でコード化されるマップコードで探す方法がある。だだし、このサービスは多言語化しておらず、海外のお客様は調べられない。そこで、我々は有料でマップコードを教えるサービスをやっています。

もうひとつはホテルへの配車サービス。都内の高級外資ホテルの宿泊客は富裕層だから、予約のついでに配車してほしいという声がある。だが、残念ながらレンタカー会社の中にはこうしたサービスに対応できないケースが多い。

だったら、手数料をとって配車したらどうか。ホテルの玄関で車と鍵を渡すだけのこと。料金は事前決済なのだから。富裕層相手に配車手数料2000円は全然問題ない。今後、レンタカー会社とホテル側と協議して進めたい。

一般に日本のレンタカー会社が用意しているのは、国内市場に合わせたコンパクトカーが多い。富裕層はこの種の車にはまず乗らない。2000ccクラスの車をもっと用意すべきではないか」。

―海外客のニーズやマーケットの動向を詳しく知る立場にある御社としては、今後どんな展開を考えておられますか。

「これからますます海外客が増えると思う。政府が外客誘致を進めているわけだから、増えるにきまっている。いまから30年前、ハワイに日本の農協などの団体がどんどんツアーで行っていたが、いまは団体で行く人はいない。同じように、訪日旅行もリピーターが増えていくと、同じことが起きる。

今後は海外個人客の足をどうするかがいちばんの問題になる。いまは大都市圏には海外客は多いが、伊豆半島や房総の先にはまだ来ていない。東京のホテルは潤っているが、伊豆半島はそうではない。我々の役目は、そこにお客さんを送ることだと考えている。

やはり二次交通が重要なのです。いくら地元をPRしても足がなければお客さんは行けないのだから。

いま団体ツアーのバス不足問題が起きています。この問題はしばらく続くと思う。訪日外国人全体の7割はエージェント経由。団体でバス利用が多いから不足が起こるのだが、今後はエージェント経由で個人もレンタカーという時代になるでしょう。そこで、いま海外のエージェントにBtoBで我々を利用してもらうよう話を進めています。

実は、すでに海外のエージェントからも予約が入っています。当社のようなサイトを使ってエージェントが代理予約しているケースが見られるのです。であれば、門戸を広げると、もっと使いやすくなるのではと考えています」。

―レンタカー予約の次は何を考えておられますか。

「これから外客向けの宿泊予約サービスを始める予定です。現在、一部の日本の旅行会社は海外サイトに客室を供給し、販売してもらっているようだが、それはまずいと思う。結局、販売力のある者だけが生き残るのだから。エクスペディアやBooking.comに日本側から対抗する動きがないとおかしい。我々は小さいながらそれに取り組む考えです。

もともと当社は国内向けの会員宿泊予約サイトをやっていました。ですから、まずはリピーターの海外のレンタカー利用客にホテルも予約してもらうという流れです。我々の強みは、ただホテルを紹介するだけでなく、足も提供できること。そうやって、地方の旅館に外客を送り込めるようにしたい。それが本来我々のやるべきことだと思う。

旅館側も、外国人なんて、と言っている時代ではない。どんどん取り込むべきです。

今後は外国人の消費を増やさないとしょうがない。いかに彼らに気持ちよくお金を使わせるか。その際、安売りすべきではない。おもてなしをしつつ、きっちりお金を取るべきです」。

レンタカー市場の内実をいちばんリアルに理解しているからこそ、次の手が打てる。Tocoo! の今後の展開は要注目です。
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by sanyo-kansatu | 2015-09-06 12:08 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 09月 05日

外客のレンタカー利用件数日本一の沖縄でいま起きていること

沖縄県は、外国客のレンタカー利用件数が全国一です。

一般社団法人 沖縄県レンタカー協会によると、過去2年の県内の外国客のレンタカー利用状況は以下のとおりです。13年度から14年度にかけて2.3倍の勢いで増えています。

2013年度(13年4月~14年3月)
3万6919件(台湾1万1138件、韓国1万1937件、香港1万1670件ほか)

14年度(14年4月~15年3月)
8万5323件(台湾2万8096件、韓国2万7764件、香港2万3463件ほか)
※国別比率は台湾(33%)、韓国(同)、香港(27%)で、9割以上を占めた。

一般社団法人 沖縄県レンタカー協会
http://www.mco.ne.jp/~oki-ren/

協会関係者によると、14年度の急激な伸びは「外国客の急増にあり、円安や台湾、韓国、香港などの近隣諸国からのLCCをはじめとした新規就航や増便が相次いだことにある」といいます。

確かに、沖縄県の統計によると、2014年度に沖縄を訪れた外国客は98万6000人と過去最高で、前年比57.2%増と全国平均を超えています。国内客も含めた観光客数が716万9900人(これも過去最高)なので、外客比率は約14%です。

国籍別の動向については、以下のように分析されています。

●台湾
台北-那覇路線、高雄-那覇路線で新規就航・増便等があり、空路客を中心に増加。過去最高であった昨年を上回り、初の30 万人台となった。

●韓国
年度後半において、アシアナ航空・ジンエアーの増便、韓国LCC2社の新規就航があり、ソウル-那覇路線が拡充、重点市場の中で最も高い増加率となった。

●中国本土
新規路線の就航や春節時期の大幅な入込もあり、過去最高となった。クルーズ船の寄港により、海路客も増加した。

●香港
香港航空の香港-那覇路線が増便したことや、ピーチアビエーションの香港-那覇路線の新規就航等により、空路客を中心に増加し、過去最高となった。

平成26年度沖縄県入域観光客統計概況
http://www.pref.okinawa.jp/site/bunka-sports/kankoseisaku/kikaku/statistics/tourists/h26-f-tourists.html

その勢いは2015年度に入っても続き、たとえば最新の15年7月の統計によると、単月の外国客数は16万3000人(前年同月比76.6%増)で、外客比率は22.8%。つまり、沖縄を7月に訪れた観光客のうち、4人に1人近くは外国客だったといえるのです。そのうち、中国を除く台湾、韓国、香港の人たちがメインの利用者というわけですから、外客のレンタカー利用が増えるのも当然でしょう。

旅行業界誌の週刊トラベルジャーナル2015年4月6日号はこう指摘しています。

「沖縄県によると、外国人観光客のレンタカー利用率は32.7%に達している。国内客の56.9%には及ばないものの、3人に1人がレンタカーを利用している計算だ。しかも、これはレンタカー利用できない中国人観光客を含めた割合。国・地域別で見ると、訪沖縄旅行者に占めるレンタカーの利用者率は香港47.3%、韓国40.3%、台湾22.2%。香港からの来訪者はほぼ半数がレンタカーを利用する状況にある」。

沖縄を代表する旅行会社である沖縄ツーリストが運営するOTSレンタカーに電話で話を聞きました。お話してくださったのは、同社の中村靖常務取締役です。

OTSレンタカー
https://www.otsrentacar.ne.jp/

―沖縄県の外客のレンタカー利用がこれほど増えてきたのはいつ頃からでしょうか。

「顕著になったのは2011年頃からだと思います。それ以前にも香港客の利用はありましたが、沖縄は台湾からフライト1時間、ソウルから約2時間、香港から2時間半という位置にある。この3国・地域で外客レンタカー利用の9割を占めます。今後も増えていくと思います。
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弊社では2006年から台北に事務所を置き、将来の需要を見越してレンタカー予約の受付も始めていました。それから徐々に予約サイトの多言語化も進め、台湾や香港の方はそのサイト(繁体字版)経由で予約を入れられます。07年には臨空豊崎営業所に4か国語対応のドライブシュミレーションを設置しました。また09年には全国初めて4か国語対応のカーナビを導入しています」。

臨空豊崎営業所
https://www.otsrentacar.ne.jp/okinawa/office/toyosaki.html

―こうした早い時期からの受入態勢の整備があってこそ、ここ数年の急増に対応できているのですね。今年度に入っての利用状況はいかがですか。

「160%増といったところです」。

―その一方、沖縄でドライブする外国客が増えると、事故や渋滞も指摘され始めているようですね。

外国人増で対策強化 県レンタカー協、事故防止へ注意喚起(2015年6月13日 琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-244232-storytopic-4.html
2014年度は8万5323件で、前年度比の約2・3倍。事故件数は2901件で、事故率は3・4%。(県レンタカー)協会では本年度から、英語版に加え、繁体字と韓国語版のドライブマップを新たに作製、運転上の注意点や県内の事故多発交差点などを紹介し、注意喚起を図っている。

標識読めない、慣習違い…外国客のレンタカー高い事故率(2015年6月16日 沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=120008

「これだけ利用が増えると事故が増えるのは当たり前です。事故といっても、ミラーを擦ったり、交差点で左折や右折のルールを間違えたりといったケースが多いです。海外では日本と交通標識やルールが違うところがあり、今後は防止策にも力を入れていく必要があります。

外国のお客様がもし事故を起こしたときは、自動車保険も手厚く安心パックに入っていますし、JAFのサポートもしっかりしています」。

(参考)
訪日観光客の急増で外国人ドライバーが増加中
交通事故やトラブルのリスクも増大か
http://www.bang.co.jp/cont/column-20150624/
「それでは万が一、外国人観光客が運転する自動車と事故を起こしてしまった場合、自動車保険の補償はどのようになるのでしょうか。

外国人が観光などを目的に車を運転する際は、レンタカーを利用するのが一般的。レンタカーには「対人賠償保険」「対物賠償保険」などがあらかじめセットされていることが大半なので、「相手方が任意保険に加入しておらず、損害賠償能力がない」といった事態は避けられそうです。

自分が加入している自動車保険の使い方は、相手が日本人でも外国人でも同様です。事故現場での示談はせず、まずは保険会社に連絡すること。保険会社と相談しながら事故処理を進めていくといいでしょう」。

―今後はどんな新しい取り組みを始めていかれるのですか。

「これからはただ車を貸すというのではなく、お客様に地元で喜んでお金を落としてもらうしくみをつくっていかなければならないと考えています。Wifiルーターの貸し出しを始めたところ、好調です。やはり外国客の方にとってwifiは欠かせないものですね。
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Wifiルーターの貸し出し
https://www.otsrentacar.ne.jp/okinawa/campaign/wifi.html

弊社では『沖縄もっとトリップ 北部東海岸エリア編』というドライブマップを作成し、国道58号線の走る西海岸だけでなく、東海岸にも足を伸ばしてもらうよう働きかけています。最近では、これまで外国客が訪れることの少なかった東海岸の泡瀬漁港(沖縄市)の海鮮食堂にさしみを食べに行かれる話などをよく聞くようになりました」。
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沖縄市漁業協同組合/パヤオ直売店
沖縄市泡瀬1-11-34 泡瀬漁港内
http://kozaweb.jp/venue/detail.html?&sp=true&category=1&id=220

沖縄県では官民挙げて外国客のレンタカー利用を進めているようです。さらに詳しい取り組みや事例については、以下を参照ください。

観光ガイド冊子、レンタカー用沖縄ロードマップ“英語版/中国語版/韓国語版”完成~ECLIPSEイクリプスの多言語対応カーナビとの連携で、外国人レンタカーユーザーの利便性を向上
https://www.fujitsu-ten.co.jp/release/2014/04/20140415.html

外国客運転一目で判断 ステッカー導入へ 沖縄県レンタカー協会 (8月8日沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=127698
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「(沖縄)県内におけるレンタカー需要の動向」 (2014年10月30日りゅうぎん総合研究所)
http://www.ryugin-ri.co.jp/wp-content/uploads/2014/10/1410kennnainiokerurenntakajyuyounodoukou.pdf

【追記】
ところが、その後、こんなニュースが届きました。

中国人観光客がレンタカー? 法律では運転不可だが・・・(沖縄タイムス2016年6月1日)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=171005&f=i

沖縄県の2015年度外国人観光客実態調査の概略報告(速報値)によると、県内旅行中に利用した交通機関について、中国人観光客の17・7%が「レンタカー」と答えた。中国の免許証で日本国内を運転することはできない法制度になっており、実態把握が必要とみられる。

調査は、那覇空港や新石垣空港で15年度に計6回、県内旅行中に利用した交通機関をたずねた(複数回答可)。中国客は、13年度に6・3%、14年度に8・2%がレンタカーを使ったと回答。県は「背景について関係者と話し合いたい」としている。

外国人が日本国内で運転する場合、(1)日本の免許証(2)ジュネーブ条約に基づく国際免許証(3)国際免許証を発給していないが日本と同等水準の免許制度を持つ国や地域の免許証-のいずれかを持っている必要がある。中国の免許証は(2)や(3)に含まれないため、国内の事業所でレンタカーを借りることはできない。

県レンタカー協会の白石武博会長は今回の調査結果について、第三者が借りたレンタカーに中国人観光客が有償または無償で同乗しているケースが考えられるとした上で、「中国人観光客の間でも個人旅行のニーズは高まっている。タクシー運転手の語学力や通訳士の数を考慮すると対応がニーズに追いついていない」と指摘している。

記事によると、「第三者が借りたレンタカーに中国人観光客が有償または無償で同乗しているケースが考えられる」そうです。今後の実態の解明を待つことにしましょう。
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by sanyo-kansatu | 2015-09-05 15:10 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 09月 04日

海外客が羽田でレンタカーを利用するまでの流れとは

外国人ツーリストが羽田空港からレンタカーを利用するまでの流れは、我々日本人の場合と若干違うところがあります。
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日本人の場合、第一、第二ターミナルにある各社別のレンタカーカウンターに向かうことになりますが、外国人の場合、国際ターミナルの到着フロアのゲイトに向かって右側にあるレンタカーカウンターに向かいます。
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リムジンバスの発券所の隣に、オリックスレンタカー、トヨタレンタカー、Hertz、日産レンタカー、ニッポンレンタカー、Times Car RENTAL、Europcarの合同カウンターがあります。
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事前にレンタカー予約した外国人は、ここで予約の照会をすませると、1階の「乗車レーン」まで歩き、レンタカー会社の用意した車に乗せられて、営業所に向かいます。「乗車レーン」は国際ターミナルの到着ロビーから京浜急行線の向こう側にあります。
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今回、ニッポンレンタカーの協力で、羽田営業所に向かいました。移動時間は約10~15分です。
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ニッポンレンタカー羽田営業所の佐藤大助サブマネージャーに話を聞きました。
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―羽田営業所での外国客のレンタカー利用はいつごろから増えてきましたか。

「2014年3月30日の国際線の大増便あたりからではないでしょうか。最近では、香港や韓国のお客様を中心に毎月70組以上の利用があります。特に1~2月の旧正月のシーズンは香港の方が多いです。また最近、タイの方も増えてきました」。

―外国客がレンタカー利用の手続きをする際、何が必要ですか。

「パスポートと国際免許証の写しが必要です。手続きは10分程度で、国内のお客様の場合とそんなに変わりません。ただし、外国客は羽田で乗って成田で乗り捨てというケースも多いので、お返しの日時と場所をしっかり確認します。お乗りになる前に、事故の連絡先や営業所の近くのガソリンスタンドのMAPをお渡しします。今後は事故防止のためのガイダンスを作成し、お渡しする予定です」。

―外国客には日本での運転のポイントとしてどんなことを伝えていますか。

「事故の際の対応と駐車禁止についてです。事故といっても接触事故などがほとんどですが、帰国されてしまうと処理ができなくなりますから。また特に都内の道路は駐車禁止が多いので、そのことも伝えます。給油に関してもたまにトラブルが起きます。たとえば、レギュラーのかわりになぜか灯油を入れてしまい、車が動かなくなったこともありました」。

―一般に外国客の利用期間は国内客より長いそうですね。人気の車種はありますか。

「そうですね。平均1週間くらいです。外国客に人気の車種はフィアットとかワゴン車です。特に家族で利用される方に人気です」。

首都圏における国内客のレンタカー利用は圧倒的にビジネス利用で、レジャーは少ないようです。その点、外国客はレジャー利用が多い。最近の若い世代の免許証取得比率の減少などで国内市場が縮小していく中、レンタカー業界も外国客の取り込みが重要になっています。国内市場を外客で補いつつ、国内の道路システムの維持を図り、さらにはユニバーサルなシステムに徐々に転換していくためだそうです。
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by sanyo-kansatu | 2015-09-04 17:01 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 06月 17日

観光をマーケティングに活かせない日本の製造業こそ問題

「訪日客のインバウンド消費が日本経済を救う」(ダイヤモンドオンライン)式の論調やそれを後押しする政府の統計発表などが続いています。

6月に入り、政府発の訪日旅行拡大効果を伝える強気の発表続く
http://inbound.exblog.jp/24579303/

「○○が日本(経済)を救う」といったタイトルの立て方は、一種のノリみたいなもので、そんなに深く考え練られたものではないのでしょうが、「インバウンド消費への対応が経済復活の柱の一つになるだろう」といったあたりさわりのない論調に対しても、世の中には反論したくなる人がいるものです。

アホノミクスと呼ばせないために必要なのは現実的エネルギー・環境政策 金融、観光は日本経済成長の原動力には力不足(WEDGE Infinity2015年6月11日)
http://blogos.com/article/116169/

反論の理由はこうです。

「観光産業が作り出す付加価値額が相対的に少ないとの問題もある。昨年の過去最高の訪日観光客1341万人が日本で宿泊、外食、買い物、交通費に使った金は約2兆円だった。誘発効果もあり経済成長には寄与するが、大きく経済を引き上げ、1人当たりの平均給与が上がることにはならない。ちなみに製造業の売上額は約390兆円ある。

『「里山資本主義」では持続可能な社会をつくれない』で触れた通り、日本では観光・外食産業が作り出す1人当たりの付加価値額は大きくないからだ。製造業の1人当たり付加価値額約750万円の半分にも達しない。付加価値額、つまり稼ぎが少ないので、1人当たり給与も大きくない。訪日外国人を増やし、消費する金額を伸ばせばよいとの考えもあるが、この分野で大きな成長を作るには限度がある」(一部抜粋)。

もっともな話です。2014年のインバウンド消費額が2兆円超で、訪日客が2000万人となる近い将来には4兆円を目指すというわけですから、日本の500数十兆円というGDPの規模からすると、ささやかな数字です。日本の経済を語るうえで、わずかな日数を滞在するにすぎない外国人の財布をあてにするのは、もとより限度のある話です。

ですから、これは何をいまさらというような話であって、問題なのは、この筆者も述べるように、日本の製造業がかつての勢いを失っていることでしょう。日本の経済指標で右肩上がりに伸びている数少ないマーケットにケチをつけている場合ではないはずです。

「アジア諸国における日本製品のシェアは下落を続けている。図-4はアジアの主要国の輸入における日本のシェア推移を示している。どの国でも波を描きながら日本のシェアは低下を続けている。中国、韓国の進出がありシェアを落としている側面はある。しかし、他の主要先進国との比較では、日本の輸出の伸びは相対的に低い状態にある。図-5が示すように、ドイツを筆頭に、他の先進諸国は輸出を日本以上に伸ばしている。

なぜ、日本の輸出は相対的に伸びなかったのだろうか。日本企業だけ海外生産が増え空洞化が起こったためだろうか。それは正しくない。失われた20年間で日本の製造業が随分力を失くし、成長産業で他の先進諸国に遅れを取ったからだ。海外での製造を含め日本の製造業が力を失くした20年だったのだ」(一部抜粋)。

この筆者によると、日本の製造業不振と輸出競争力の低下の理由は、ひとことでいえば、デフレにあるとのことです。

「日本の製造業がこれから目指すべきは、このアジアの巨大な需要を満たすための供給能力を整えることだが、付加価値額が低い製品は現地で生産を行い、付加価値額が高い製品を国内で製造することを考えるべきだ。アジアの需要を掴み日本国内の製造業の成長を図ることにより、結果として給与増も可能になる。そのためには、企業が設備投資と研究開発の意欲を再度持つようになるデフレ脱却がまず必要になる。アベノミクスの方向は間違っていない」(一部抜粋)。

デフレゆえに、設備投資と研究開発が進まなかったことが問題だというわけです。

その理屈の是非や妥当性はともかく、この人は「日本の製造業がこれから目指すべきは、このアジアの巨大な需要を満たすための供給能力を整えることだ」と言っています。少子高齢化が進む日本の内需を拡大させるのは難しい。だから、アジア市場にモノを売るべきだというわけです。

だとしたら、もっと観光(=アジア新興国の消費者動向)をマーケティングし、商品企画や開発に活かすべきでしょう。この20年間、さまざまな理由から、アジア新興国の消費マーケットの実情をふまえたマーケティングに基づく商品企画や開発がうまく機能しなかったことこそが、日本の製造業不振と輸出競争力の低下の理由ではないかと思うのです。頼りにしていたコンサルティング会社が用意したマーケティング資料の多くも、製造業からみれば、実感をともなう内実を備えていなかったからではないでしょうか。それゆえモチベーションも強く発揮されなかったのでは。

日本のインバウンド振興には3つの意味があるとぼくは考えています。

まず、訪日外客による直接のインバウンド消費。これは前述したように、伸びているといっても、経済全体から見ればささやかなものです。ただし、これまで日本に存在していなかった新しい消費者(=外国客)が現われていることは、製造業にとっても製品企画や開発のモチベーションとなりうるはずです。

ふたつめの意味が、まさにそれ。日本をショーウィンドに見立てて、あらゆる商品やサービスをアジア新興国を中心とした消費者に知ってもらい、彼らのニーズを探ることで、製造業の商品開発に活かすことです。いまや日本に大挙して訪れるアジアの消費者は、かつて存在した日本の製造業の送り出す商品規格との質的・価格的ミスマッチングを埋めることができる存在といえます。

三つめは観光プロモーションのもつパブリック・ディプロマシー的な意味です。

そういう意味でも、観光や金融、通信を製造業と切り離して論ずることは賢明ではないといえるでしょう。むしろ、それらともっと連動させるべきではないか。そのように考えると、世の中がもっと面白く見えてくると思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-17 11:15 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 06月 16日

新大久保はハラルの町、エスニック度が上昇しています

この週末、久しぶりに新大久保を訪ねたら、以前と比べてちょっと様相が変わって見えました。街を歩く人たちのエスニック度がこれまでに増して上昇しているのです。

コリアン街として知られる新大久保のJR山手線の内側には、多くの韓国料理店や韓流グッズ、化粧品、食材などの店が並んでいます。ハングルのネオンがきらめく都内でもユニークな移民街ですが、人通りは少なくなったとまではいえないものの、数年前ほどのにぎわいは感じられません。通りに面した一部のレストランの中を覗くと、まったく客の姿が見当たらない店もけっこうあります。

一方、山手線の外側に位置する一角には、独特のにぎわいがあります。そこには東南アジアから西アジアにかけての濃い顔をした人たちが往来しているのです。ここ数年で彼らの数はぐっと増えたように思われます。

朝日新聞2015年5月10日~12日の東京版には、以下の新大久保訪問ルポが書かれていました。

イスラム横丁へようこそ! 新大久保に根付くムスリムのコミュニティー(朝日新聞2015年05月21日)http://astand.asahi.com/webshinsho/asahi/asahishimbun/product/2015051500003.html

「そこは「イスラム横丁」と呼ばれる。

JR山手線の新大久保駅(新宿区)の西側。目抜き通りを北に折れて40メートル進んだ丁字路に、ムスリム(イスラム教徒)向けの店が並ぶ。駅東の「コリアンタウン」とは風景も行き交う人もまるで違う。

金曜の昼過ぎ。インド人が営む食材店、バングラデシュ人の香辛料店、トルコ人のケバブ店……。店が次々に閉まる。店内や路上にいた人々が、古びた雑居ビルへと吸い込まれていく」(一部抜粋)
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「新大久保 心つながるムスリム」「モスクで礼拝200人 視線を気にせず没頭」「厳格と寛容、教えを守り日本に根」「思い込みで身構えすぎていた」「違い 知ること、知ろうとすることが大事」「『心のグローバル化を』重く響いた」……といったこの種のルポにありがちな記事のメッセージは、月並みすぎて正直あんまり感心しませんでしたが、同記事を読んで興味深かったのは、この地でハラル食材店を経営し、「ビッグブラザー」と呼ばれるインド人長老の語る夢として「学校とホテル、多国籍ハラルレストランが併設されたムスリム施設の建設」を挙げていることでした。
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この写真(上)の店がインド人長老の経営するハラル食材店です。中に入ると、ハラル処理された肉や香辛料、インスタントラーメン、ドリンク類などが売られていますが、客層は多国籍です。面白いのは、共通語として片言の日本語が使われています。声をかけてみると、必ずしも在住者ではなく、観光で来日した東南アジア系の人たちが多いことです。
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そうなんです。新大久保に訪日外国人が多く訪れるようになっているのです。必ずしもアジア系だけでなく、大久保界隈の安いホステル系の宿に泊まる欧米人の子供連れのファミリーもいたりします。

インド人長老が夢として「学校とホテル、多国籍ハラルレストランが併設されたムスリム施設の建設」を語った背景には、新大久保を訪れるアジア系旅行者が増えていることがあるのだと思います。

これには、当然ここ数年のアジア各国へのビザ緩和の影響があるはずです。ハラルフードの食材店やレストランが多いことも、外国客を引き寄せる理由になっているのでしょう。

別のハラルショップでは、食材以外にも格安航空券やスマホ、PC、SIMカードなどを販売していました。
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新大久保は今後、在住ムスリムだけでなく、訪日外客も含めた新しい多国籍エスニック街に変わっていくのかもしれません。
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【追記】
欧米系を含めた訪日外国人旅行者の姿は、新大久保の延辺料理店(中国の朝鮮族の地方料理の店)などでも見かけます。ちょっと意外な気がしたのですが、ではなぜ韓国料理店にはあまり入っていないのだろうと考えたところ、これはあくまで推論にすぎませんけれど、日本を訪れた外国客がハングル表記の店にわざわざ入ることはあまり考えないからだろうと思われます(好み以前の話です。ここは韓国ではないのですから)。

それに、今の新大久保の韓国料理店の外観は、日本の韓流ファン向けのテイストのデザインが多く、料理の値段も決して安くありません。旅行者の気持ちになって考えてみれば、日本に来てわざわざコリアンタウンで韓国料理、という流れにはなりにくいだろうと思われます。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-16 17:32 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 02月 05日

アセアン第二陣、フィリピンとベトナムの訪日旅行市場でいま起きていること

2014年の訪日外国人旅行者数1300万人突破で弾みのつく日本のインバウンド業界。

年末から年初にかけて関係者に話を聞いていると、中国、台湾、香港など訪日客の半分近くを占める中華圏市場への過度の偏りではなく、アセアンやオセアニア、欧米を含めた市場の分散化を期待する声が強いようだ。

なかでもここ数年、観光ビザの緩和で訪日客の増えているアセアン市場への関心は高い。

規模でいえば訪日客全体の1割強と、中華圏に比べればまだ小さいものの、タイを筆頭にマレーシア、シンガポールなど、すでにノービザ化が実現している国々も含め、基本的に「親日的」とされるアセアン市場に対する関係者の期待が大きいためだ。

2015年はアセアン統合の年。さらなる地域の経済発展が予測されるなか、昨年訪日数で中国に次いで高い伸びを見せたのがフィリピン(70.0%増)とベトナム(47.2%増)だ。アセアン第二陣ともいうべき両国の市場動向は他の国々と比べてどうなのか。新しい動きを中心に報告したい。

フィリピン客の特徴は英語を話し、ファミリー旅行が多い

1月20日に発表された日本政府観光局(JNTO)のリリースによると、2014年に中国に次ぐ高い伸びを示したフィリピンの訪日客数は、前年度比70.0%増の18万4200人。フィリピン市場の特徴をJNTOは以下のように解説している。

「フィリピンの訪日旅行者数は184,200 人で、10 年ぶりに過去最高を記録するとともに、前年比70.0%増と東南アジア市場で最も高い伸率を示した(これまでの過去最高は2004年154,588 人)。月別では4 月から6 月、9 月から12 月で、各月の過去最高を記録した。査証緩和に加え、円安の進行、羽田空港の国際線発着枠の拡大に伴う増便や新規就航など、航空座席供給量が大幅に増加したことや、旅行会社などとの継続的な共同広告の実施、旅行博でのプロモーションが、観光需要を大きく後押しし、2014 年の伸びに寄与した。なお、9 月30 日より、フィリピン国民に対する数次ビザの大幅緩和が実施された」。

ポイントは「東南アジア市場で最も高い伸率」と「10 年ぶりに過去最高を記録」したことだろう。フィリピン市場を考えるうえで在日フィリピン人の存在は大きい。2013年で約21万人と中国、韓国に次いで多く、親族訪問に限らず、日本とフィリピンの人的往来は以前から盛んだったからだ。

フィリピンから日本に乗り入れている航空会社も多彩で、日本航空や全日空、フィリピン航空だけでなく、LCCのセブパシフィック航空やジェットスター航空、ジェットスター・アジア航空がある。さらには大韓航空やキャセイパシフィック航空などの経由便も利用されてきた。

アセアン各国の訪日旅行を扱う株式会社ティ・エ・エスの下川美奈子さんは「(14年に訪日客が大幅に伸びた理由は)ビザが取りやすくなったことが大きい。数年前までフィリピンでは韓国旅行がブームだったが、それがひと段落して、いまは日本旅行がブームになってきた」と語る。

では、フィリピンの訪日旅行の実態はどのようなものなのか。

下川さんによると「団体ツアーはほぼ東京・大阪のゴールデンルートのみ。ただし、フィリピンの場合、全体でみると団体とFIT(個人客)は半々で、アセアンの中ではFITの存在感が大きい市場のひとつといえる。もともとフィリピンには中小の旅行会社が多く、不特定多数の人たちが参加する募集型ツアーよりも家族単位のグループが多く、個人手配の旅行に近い」という。

フィリピン客の特徴は英語を話すことだ。そのため、「欧米客と同じJTBのサンライズツアーやグレーラインのバスツアーに参加することも多い。国内移動も自分たちで新幹線に乗る」。

物怖じすることなく欧米客と一緒にバスツアーに出かけるのが、フィリピン人旅行者なのだ。その意味で彼らは英語圏の旅行者に近いといえそうだ。

訪日ベトナム人が増えた3つの理由

一方、フィリピンに次いで伸び率の高かったベトナムの訪日客数は14年に初めて10万人を突破し、前年度比47.2%増の12万4300人となった。

訪日ベトナム客が増えた理由について、JNTOは以下のように分析している。

「ベトナムの訪日旅行者数は124,300 人で、3 年連続で過去最高を記録し、初めて10 万人を突破した。月別では、2012 年1 月以降、36 カ月連続で各月の過去最高を更新し続けている。査証緩和に加え、円安の進行に伴う訪日旅行の価格低下、羽田便の増便をはじめとした座席供給量の増加、従来よりも手頃な価格での航空券の販売、共同広告、有名人歌手を起用したミュージックビデオの制作およびイベント実施、ベトナム語よる情報発信強化などのプロモーションが、増加要因として挙げられる。また、観光客だけでなく、留学生、技能実習生なども増加傾向にある。なお、9 月30 日より、ベトナム国民に対する数次ビザの大幅緩和が実施された」。

このうち、「査証緩和」や「円安の進行」など各国に共通する事項を除くと、ポイントは「羽田便の増便をはじめとした座席供給量の増加」「有名人歌手を起用したミュージックビデオの制作およびイベント実施」「ベトナム語よる情報発信強化」「留学生、技能実習生なども増加傾向」などか。

それぞれ具体的にみていこう。

まず航空座席供給量については、14年7月の羽田空港の国際線枠の拡大に伴い、ベトナム航空のハノイ・羽田線、ベトナム中部都市ダナンから初の成田線などが新規に就航。確実に拡充している。

この年末年始、関西空港にベトナムのLCC・ベトジェット航空のチャーター便が初就航したニュースも、この市場を知るうえでなかなか興味深い。

同エアラインは、定期便が就航する最初の便で機内に水着やドレス姿のキャンペーンガールを同乗させ、ダンスを披露するなど、およそお堅い社会主義国とは思えないサービスが話題となっているからだ。
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ベトジェット航空の機内で行われる就航記念イベント

ベトジェット航空の佐藤加奈さんによると、「2011年12月に運航を開始したベトナム第2のエアラインで、初めてのLCC。現在、国内16路線、国際線もタイやシンガポール、カンボジア、台湾、韓国などに運航している」。躍進著しい民営の新興エアラインなのである。
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ベトジェット航空
http://www.airinter.asia/

日本への定期便の運航は、15年1月現在未定だが、チャーター便を運航する計画がある。「今後、ベトナムからの訪日客は必ず増えると思う。ベトナム人は親日的で、何より平均年齢が27歳と若い国」と佐藤さんは期待をこめる。

大阪を旅する「ベトナム人気歌手」のPV撮影が話題に!

ベトナムの若さという意味では、「有名人歌手を起用したミュージックビデオの制作およびイベント実施」も気になるところだ。

これは昨年9月、ベトナムの人気歌手ヌーフックティン(Noo Phước Thịnh)さんの新曲のプロモーションビデオの撮影が大阪で行われたことを指している。

ヌーフックティンさんの新曲『be together forever』PV(動画)
http://www.tiin.vn/chuyen-muc/nhac/noo-phuoc-thinh-tung-mv-quay-o-nhat-ban-thach-thuc-son-tung-m-tp.html

ストーリーは、関西空港に降り立ったヌーフックティンさんが偶然知り合った日本の女の子に大阪をデート感覚で案内してもらうという設定。ロケ地としては、梅田スカイビルや大阪城、道頓堀、通天閣などが登場する。撮影には、ビジット・ジャパン事業の一環として日本政府観光局や地元大阪観光局が協力した。

PV制作を担当した大阪のイベント運営会社の担当者によると「ベトナムの人気歌手の新曲のPV撮影のロケ地に大阪を選んだことは、訪日促進プロモーションにつながっていると思う。昨年10月26日にホーチミンで開催された日越交流イベント『ジャパンデー2014』の会場でもこのPVは流された」という。

日本情報があふれるタイなどに比べるとまだこれからとはいうものの、ベトナムでは現地向けのベトナム語のフリーペーパーの発行が数年前からすでに始まっている。「きらら」は隔月刊の若いベトナム女性向けのライフスタイルマガジンで、ホーチミンを中心に5万部を発行。訪日旅行を喚起するさまざまなコンテンツを発信している。

「きらら」ウエブサイト
http://www.kilala.vn/cam-nang-nhat-ban.html

平均年齢27歳というこの国が今後、どんな消費シーンを見せていくのか、楽しみだ。

反中が「空前の日本語ブーム」に向かわせた?

「留学生、技能実習生なども増加傾向」というのも、ベトナム市場のもうひとつの実態といえる。どういうことか。

朝日新聞2014年9月5日によると、「南シナ海のベトナム沖から中国が石油掘削施設を撤収して1ヵ月半がたつが、ベトナム国内の「反中国」ムードが収まらない」「国営テレビは中国の連続ドラマの放送を打ち切り、観光業者による中国へのツアーの多くも中止されたままだ」(「ベトナム冷めない「反中」 政治的な対立は沈静化」)という。

ベトナムでは、南シナ海における中国との確執を契機に、これまでの依存し過ぎた対中関係のバランスを改めようとする動きがあるというのだ。それがベトナム人の関心を日本に向わせる背景となっているというのが、次の記事だ。

「ベトナムで空前の日本語ブームが起きている。昨年度の日本への語学留学生は前年度の4倍で、日本語試験の受験者も東南アジアで断トツだ。

ブームの背景にあるのは、国際環境の変化だ。日中関係の悪化で中国からベトナムへ拠点を移す日系企業が増え、商工会の加盟数は1299社(14年4月)と、5年で約1.5倍も増えた。いまや学生にとって日本語習得が「就職への近道」になっているのだ」(「ベトナム、日本語熱沸騰」朝日新聞2014年9月9日)。

ベトナムからの留学生も増えている。同記事では、「日本語教育振興協会(東京都渋谷区)によると、02年度に日本国内の日本語教育機関で学ぶベトナム人は198人で全体の0.5%。ところが13年度には前年度比4倍超の8436人になり、2386人の韓国を抜いて2位」という。

ベトナム国家観光局の統計をみると、13年のベトナム人の主な渡航先とおおよその数は、国境を接する中国100万人、カンボジア100万人、同じアセアン域内でビザが不要なタイ50万人、シンガポール30万人、マレーシア20万人、それ以外では韓国11万人だという。このうち、中国への渡航はビジネス目的が多いと考えられる。

昨年12万人を超えたベトナム訪日市場。この国の海外旅行の時代はまだ始まったばかりだが、今後の伸びしろは大きいといえるだろう。

神戸で神戸牛が重要! 訪日ベトナムツアーの9割はゴールデンルート

では、ベトナムの訪日旅行市場の現状はどのようなものなのか。HISホーチミン支店の井口唯さんに話を聞いた。以下、その一問一答。

――ベトナム人の一般的な日本ツアーのコースや日程、料金は。

「ツアーコースは9割以上が大阪→京都→名古屋→富士・箱根→東京、またはその逆をたどるゴールデンルート。

一般的な日本滞在中の日程は以下のとおり。
1日目 朝大阪着 神戸・大阪観光 大阪泊
2日目 京都観光 観光後名古屋へ 愛知県泊
3日目 富士・箱根観光 河口湖の温泉ホテル泊
4日目 東京観光 東京泊
5日目 早朝便で帰国または東京観光後、午後帰国
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ベトナムの日本ツアーのパンフレット(ゴールデンルート)

ゴールデンルートの料金は2,000ドル程度。この金額には全日程の宿泊や観光、食事、ホテル、査証、バス、保険などすべてが含まれる」。

――他のアジア諸国の訪日ツアーと比べてベトナムならではの特徴はあるか。

「いまのところベトナムの訪日ツアーの内容には他国と比べて特徴は少なく、どこの旅行会社も同じようなツアーを出し、同じような価格設定というのが現状。社会主義の国であるため、まだ規制が多く、自由な価格競争も難しい。たとえば、弊社がすべて5つ星ホテルに泊まるデラックスツアーや、札幌雪祭りやハウステンボスへ行くツアーなどのスペシャル企画を打ち出しても、なかなか売れないのが現状だ。

ちょっと面白いのは、ゴールデンルートでは必ず神戸に立ち寄ること。その目的は、瀬戸大橋を見て神戸牛を食べること。実際には神戸牛は大阪でも食べられるし、わざわざ往復2時間かけて神戸に行くより、大阪でじっくり時間をかけて観光したほうがいいと思うので、弊社では、たとえば大阪のインスタントラーメン発明記念館などを組み込んだツアーを企画してみるのだが、ツアーコースに神戸が入っていないと選んでくれない。宿泊についても、東京や大阪にこだわり、八王子や立川ならいいけど、横浜はダメだという。このようにベトナム人は先入観が強いというか、ちょっと頑固でミーハーなところがある」。

ベトナム客は神戸で神戸牛を食べないと気がすまない!?

「神戸牛を食べるなら神戸でなければならない」というような思い込みは、海外旅行が始まって間もない国の人たちに共通している傾向かもしれない。何度も日本に来られるわけではないから、来たからには当初の目的を貫徹したいという思いが強いと考えられる。情報豊富なリピーターの多い国から来た旅行者とは感覚が違うのは当然だろう。
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――ベトナム人は日本のどんなことに関心があるのか。それがツアー内容にどう反映されるのか。ベトナム人らしい立ち寄り先はあるか。どんなお土産が人気か。

「日本の伝統的なものより、まずは有名なことに関心があるように思う。たとえば、固有名詞でいうと、六本木、歌舞伎町、銀座、道頓堀、富士山、雪、寿司など。

一般にブランドものより100円均一やドンキホーテ、ヨドバシカメラなどの量販店での買い物を好むようだ。そのため、東京や大阪などで必ずショッピングフリータイムを2、3時間設けている。

ベトナム人らしい立ち寄り先というのは、神戸を除くといまは特にない。お土産はお菓子や食品などを買う傾向が強い。スーツケースや電化製品などを買う方もいるが、他の東南アジアのお客様より少ないように思う」。

――ベトナム人には日本食は問題ないか。またホテルやそれ以外で何かお困りのことは。

「日本食はほとんど問題ない。焼肉やしゃぶしゃぶ、寿司、和定食など、日本食としてよく知られているわかりやい料理が好まれる。ひとつ注意しなければならないのは、ベトナムではいま中国との関係が良くないため、中国客が多いレストランにお連れするとクレームを受けることがある。

ホテルでも特に困ったことはない。ただし、ベトナムではどんなに小さいカフェでも、家庭でもWiFiが当たり前のように普及しているため、WiFiがないホテルに泊まると驚かれてしまう。こういう点に関しては、あらかじめ日本の遅れているところとしてご理解いただくようご説明している」。

ベトナム客に留意するポイントはこれだ!

このようにベトナムの訪日旅行市場は、海外旅行の黎明期を迎えた国に共通して見られる微笑ましい特徴に加え、留意しなければならないいくつかのポイントがあるようだ。

昨年6月、アセアン・インドトラベルマート2014の商談会場で会ったハノイツーリストのLuu Duc Ke社長によると「これまでベトナム人の海外旅行先として人気の高かったタイで近年クーデターが起き、中国との関係も悪化したことから、両国を避ける動きが強まっている」という。

「現在、ベトナム人にビザが免除されているのはアセアン10カ国のみ。だから、もし日本でビザが緩和されたら、間違いなくベトナム人は日本へ行きたいと思うはず。日本の魅力は桜や紅葉に代表される自然の美しさ、近代的でありながらとても清潔な国であること。日本料理も食べたいし、買い物もしたい。ベトナムの経済水準はまだ低いので、リピーターが現れるようになるには時間がかかるが、少しずつ日本に行きやすい環境が整い始めている」と同社長は語る。

同じ会場にいた別のベトナム人関係者はこんな話を聞かせてくれた。「いまベトナムでは中国に対する反感が高まっていて、国内にあふれる中国製品を排斥する動きも強まっている。でも、ベトナムは親日、いや尊日の国だ」。

彼によると、訪日したベトナム客が家電量販店で電気製品を購入しようとしたとき、あまりのメイド・イン・チャイナの氾濫ぶりに唖然とするという。せっかく日本に来たのだから、メイド・イン・ジャパンを買いたいのに残念だと思うようだ。こうしたことから、これは家電量販店に限った話ではないが、ベトナム客の来店がわかったら、商品の薦め方に工夫が必要だ。レストランやホテルの客室の振り分けも、中国客とベトナム客がいたらフロアを別にするなど、細かい配慮も求められる。

気になるのは、日本側の受入態勢の問題だ。Luu Duc Ke社長は「ベトナムの旅行シーズンは4月、6月(夏休み)、10月。だがこの時期、日本ではバスやホテルの客室が取りにくい」と語っている。

この点について、株式会社ティ・エ・エスの友瀬貴也代表取締役は「華人ビジネスの影響を受けやすいタイのように、ツアー代金が急速に値下がりすることはあまり考えられないため、ベトナムは日本にとってはありがたい市場だ。しかし、9割のツアーがゴールデンルートというだけに、昨年すでにバスやホテル不足から予約を受けられない事態も発生している。これは対ベトナム市場に限ったことではないが、日本の受入態勢の問題をどう克服していくかが、今年ますます問われるだろう」と指摘する。

始まったばかりのアセアン第二陣。今回の内容はあくまで入門編に過ぎない。さらなる誘客を進めるためにも、それぞれの市場についてもっと理解を深めなければならない。

※やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_09.html
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by sanyo-kansatu | 2015-02-05 17:00 | 最新インバウンド・レポート | Comments(0)