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2014年 04月 12日

タイ最北端の町からミャンマーへ~国境越えのタイムスリップ感に酔う半日観光

タイ最北端にあるメーサーイは、わずか10mほどの小さな川を隔てたミャンマーとの国境の町です。対岸はタチレイといいます。ここでは、外国人もミャンマーのビザがなくても入国可能で、最大14日まで滞在できます(※後述しますが、いまではこのまま陸路でヤンゴンまで行けるようになっています)。そこで、多くの外国人はミャンマーのイミグレーションでタチレイとその周辺地域に滞在可能な入域許可書を取り、1日だけのミャンマー観光を楽しみます。
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これはタイ側のイミグレーション。なかなか立派な建物です。ゲートの周辺は、国内外の観光客も多く、タイ名物の屋台がたくさん出ています。
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ここではタイ・ミャンマー両国民が通勤や通学、買い物などの日常生活の一部として日々往来しています。
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赤ん坊をそれぞれ抱えたふたりの女性が4人乗りでバイクに乗って国境を越えていく光景もごく普通の世界です。
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これが両国の間を流れるサーイ川です。右側の建物はタイのレストランバーです。夜は騒々しそうです。
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タイの出国手続きを終えると、両国の緩衝地帯に入りますが、ここにはミャンマー側の屋台が出ています。観光客が喉を潤すためジュースやフルーツを買っていくからでしょう。のどかです。
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これがミャンマー側のイミグレーションのゲートです。入国は向かって右側から。出国は左側からです。
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ミャンマー(北側)に向かって左側にパゴタが見えます。タイの寺院とは造形が違っています。
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ここで入国許可証を発行してもらいます。その場で写真を撮られ、500Bほど払います。これはミャンマーの辺域に位置する地方政府にとっての重要な収入源だと思われます。毎日入国して来る外国人の数はかなりのものですから。
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これが入国許可証です。

実は、このとき(2013年8月)、ミャンマーの入国係官に「来月から外国人も、ここから陸路でヤンゴンまで行けるようになる」と告げられました。これまでは、外国人がミャンマー国内に陸路で入国したまま、自由に移動することは許されていなかったのですが、この国の対外開放はこんなかたちで進んでいるのです。

それにしても、入国管理官たちがやけに陽気でフレンドリーです。それは前述したように、外国人が地方政府にとっての上客であるからには違いないのでしょうが、ミャンマーの人たちはこれから自分の国がだんだん自由になっていくことを、身をもって感じているのかもしれない。それが彼らの精神状態をハイにしているのでは、そんな気がしてなりませんでした。これは1980年代の中国や90年代のベトナムなどにも見られたように思います。

もっとも、ここではいかにもアジア的な場面に遭遇します。イミグレを出ると、すぐに入国係官の制服を着た若者に日本語で声をかけられました。「あれっ、あなた、また来たの? この前来たばかりでしょう」。

「えっ、…それ人違いじゃない(だって、前来たのはずいぶん昔)」と、一瞬慌てて否定すると、彼はくるっと振り向き、行ってしまいました。これ、タチレイのミャンマー人が日本人相手によくやるおちょくりの一種らしいです。

昔、アジア各地で日本人の背後から「落ちましたよ」と声をかけるという悪戯が大流行していました。そう言うと、日本人は必ず振り向くので、彼らからすると、おかしくてしょうがないのです。まったく「この野郎」と思うのですが、大人から子供まで遠慮なく仕掛けてくるので、これも彼らの悪意のない親しみの表現であると受け入れるしかありませんでした(タイではもうないと思います。でも、ミャンマーなら…)。

おそらく、その若い入国係官も、たいした理由があったわけでなく、ふらりと現れた日本人を軽くからかってみたかったのでしょう。人のいい日本人の中には、声をかけられるとついて行ってしまう人もいたかもしれない。別に詐欺に遭うとか深刻なケースはほとんどなかったとは思われますが、こういう人を脱力させるお出迎えは、久しぶりのことでした。これも、古き良き(?)アジアというべきでしょうか。
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さらに、ここはかつてのアジアだと強く感じさせたのが、イミグレの外に広がるタチレイの町の空気感でした。タイから数百メートルしか離れていないのに、なにやらけだるい熱気や土埃を多く含んだ空気に包まれているのです。赤茶けた粘りのある日差しの感じもそうですし、すくすくと育った熱帯の大樹も、メーサーイの町中ではほとんど見られなかったものです。

わずか100mの空間移動で時空を超えたタイムスリップ感が味わえるのが、タイ最北の町からのミャンマー訪問の面白さといえます。
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通りをまっすぐ進むと、ロータリーが見えてきました。「City of Golden Tryangle」というプレートが見えます。ミャンマー側のゴールデントライアングルを代表する町ということなんですね。
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周辺の建物には、さまざまな広告が貼られていますが、国境の町らしいのは、少数身族たちを登場させたミャンマービールの広告でしょうか。
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タイの「おいしい」ブランドの緑茶の広告もありました。
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実は、イミグレを出たすぐ右側にマーケットが広がっています。通りを埋め尽くすように張り出された傘の下には、さまざまなミャンマー土産が売られています。
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欧米人観光客の姿も多く見られます。
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売り子の中にはムスリムの娘たちもいます。彼女たちの顔に塗られたおしろいのようなものは、ミャンマーではごく一般的な女性の日焼け止めで「タナカ」といいます。彼女たちにとって、これはお化粧ではなく、日焼け止めという認識ですから、塗り方がずいぶんぞんざいに見えますが、これもご愛嬌というか、ミャンマーに来たという気分にさせられます。
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もちろん、こういういま風の女の子たちもいます。お手本はタイなのでしょう。
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海賊版DVDもいろいろあるようです。タイや香港、韓流もあります。日本のドラマもきっと見つかることでしょう。
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高名なお坊さんの読経のDVDも並んでいて、さすがは仏教に篤い国です。
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1時間ほど歩くと少し疲れたので、ひと休みすることにしました。見つけたのは、オープンエアの食堂のような店です。店内から海外のポップミュージックが聞こえてきて、「ミュージック・バー」と書かれています。
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そこはMTVのビデオを放映する食堂でした。せっかくですから、ミャンマービールを注文。
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英語のメニューがあったので、フライドヌードルを頼むと、チェンマイあたりでよく食べるカオ・ソーイに似た濃厚な味付けのやきそばが出てきました。スープ付きです。

昼間からビールを飲んだせいか、食事を終えると、突然ひどい睡魔に襲われました。しかし、その底なし沼に引き込まれていくような感じがなんともいえず心地よいのです。身体がとろけるようなまどろみ感。ここ数日の旅の疲れが出てきたのかもしれませんが、タイやラオスでは感じることはありませんでした。

気がつくと、30分ほどその場に寝てしまいました。別に薬を盛られたとか、そういう話ではありません。思うに、すべてはこの国の、あるいはこの辺境の町の空気感がそうさせたのでしょう。

ふと周囲を見回すと、客はほとんどいなくなり、ウエイトレスの子たちも食事中でした。寝ぼけていたせいか、ピンボケですいません。彼女もタナカを塗っています。
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アジアに来ると、自分の知り合いによく似た女の子がいて、びっくりすることがあります。写真の写りが悪くて彼女には申し訳ないですが、この子もそうでした。「大学時代のゼミの○○さんにそっくりだ。これはどうしたことか」なんて思ってしまうのです。すごく不思議で、おかしな気分です。いったい彼女はいまどこでどうしているのやら?

傍から見ると、そんなことを夢想しながらニヤニヤしている日本人は怪しすぎますが、ミャンマーあたりでは、彼女たちも笑顔で受け流してくれるのはありがたいことです。こういう感じは、もうアセアン第二の経済大国の首都であるバンコクあたりでは感じることはほとんどありません。

それにしても、いったいぼくは何しにミャンマーに来たのだろうか。自分なりに考えた答えは、昼寝をしに、です。これは自分ながら気に入りました。こういう時間がときには必要なんです。
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ミャンマーに来てもうひとつ面白いと思ったのが、車のプレートでした。これホンダ車ですが、この子供の落書きのような文字がミャンマーの数字のようです。かわいくて、なんとも脱力感たっぷりです。

※参考:ミャンマーの数字

夕方が近づいてきたので、そろそろタイに戻ることにしました。再びイミグレで出国手続きをし、タイ側に向かいます。途中、ミャンマー側が経営する免税品店がありました。中を覗くと、ちょっとしたブランド品やワインなどが売られていました。
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急に現代に呼び戻されたような気分になりました。
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タイ側のイミグレに向かう途中、学校帰りなのか、小学生の女の子3人が歩いていました。彼女たちはタイ人なのか、ミャンマー人なのか。どちらの学校に通っているのか? もしタイ語がわかれば聞いてみたいものですが、詳しくはわかりません。
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これが入国管理所です。外国人たちが入国のための書類を書いています。ぼくも書きました。
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タイに戻ると、今度は小型トラックに乗せられミャンマー側に帰っていく中学生くらいの制服姿の男の子たちを見かけました。

タイ最北端の町からミャンマーへの半日観光。しかし、そのわずか100mの国境越えのタイムスリップ感に酔いしれた1日でした。
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by sanyo-kansatu | 2014-04-12 13:01 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2014年 04月 12日

ラオスからタイへ~メコン河をボートで渡る(フアイサーイ・チェンコーン)

アジアの旅の楽しさは、ローカルバスに乗ったり、ボートで川下りしたり、普段めったに味わえない乗り物体験を、選択の余地もなく、やってしまえることに尽きますね。

「選択の余地もなく」といったのは、それ以外の交通機関が存在しないので、現場に身をまかせるしかないということです。
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2013年8月中旬、ラオス北西部の国境の町、フアイサーイにいました。タイとの国境を隔てているのはメコン河です。対岸の町はチェンコーンといいます。

フアイサーイには午前中のうちに着いたので、お昼をここで取り、午後は早目にタイに向かう予定でした。
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フアイサーイでは、多くの若い欧米人バックパッカーの姿を見かけましたが、町自体はこれといって何があるというわけではありません。お昼には少し間があったので、ボート乗り場の向かいの高台にあるお寺に上ってみることにしました。
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ここからなら、対岸のタイの町がよく見えると思ったからです。
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けっこう長い階段を上ると、目の前にお寺が現れました。ワット・マニラ―トといいます。造形的にはタイのお寺に似ていますね。
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境内には、オレンジ色の袈裟を着た小学生くらいのお坊さんたちがいました。小坊主といえば、日本では「一休さん」が有名ですが、インドシナの仏教国では、当たり前のように存在しているのですね。彼らは「ハロー」といって手を振ってくれました。
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境内からは、確かに対岸のタイの様子とメコン河を渡るボートが見えました。渡し船というやつですね。
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お寺から降りて、銀行で手持ちのラオスキップをタイバーツに両替してから、町のホテルでお昼をとりました。ラオビールもこれで飲み納めです。
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さて、いよいよメコンを渡ります。まずイミグレーションでラオスの出国手続き。
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次に、ここでボートのチケットを買います。片道1万キップ(約100円)。
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川沿いにはたくさんのボートが浮かんでいます。
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対岸から地元客を乗せたボートがやって来ました。
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ぼくの乗ったボートにはタイ人の旅行客や地元の人しかいませんでした。
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岸を離れたボートから見ると、ラオス側の乗り場には国旗がはためいています。
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対岸に見えるのがタイ側のボート乗り場です。イミグレーションも見えます。
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ようやくチェンコーンに到着。地元の人はお米を運んだり、けっこう荷物があります。
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「ようこそ、タイへ」
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これがタイの入国管理所です。パスポートを見せるだけでOKです。
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2015年のアセアン統合を伝える看板がありました。これはタイの空港や国内各地のイミグレーションでもよく見かけます。
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入国手続きを終え、さてこれからどうやってゴールデントライアングル方面に行こうかと思案していると、目の前に大型トラックが何台も並んでいるのが見えました。
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どうやらラオス行きの物流車のようです。川岸に向かって歩いていくと、トラックを載せてメコン河を渡る船が停泊していました。
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船が出港するまでの時間、この光景をずっと見届けてしまいました。
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こんな重いトラックを何台も載せて、すごいなあ。まるで素朴すぎる感想ですけど、こういうときは、子供が乗り物を眺めているのと変わらないですね。
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そして、ついに出航。轟音を立てて、船はトラックをけん引していきます。

【動画】タイ・ラオス国境 メコン河の物流のいま(フアイサーイ・チェンコーン)2013年8月中旬
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※もしおひまでしたら、どうぞ。


今後、タイとラオスの間には、ビエンチャンとノーンカーイ間のようなメコン河をつなぐ国境橋がいくつもつくられていくのでしょうか。ただし、この状況からわかるのは、メコン河を下る航路や物流を考えると、下手に小さな橋をつくるわけにもいかないということでしょう。船がくぐれなくなると困りますから。相応の物流と人の往来が見込めなければ、投資も簡単にはできないはずです。ラオスの人口は、中国と比較するとおそろしく少ないのです。
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中国のインドシナ南進の勢いも、メコン河を隔てた先はそう一筋縄ではいかない気がしますが、これからどうなるのでしょう。

【追記】
その後、フアイサーイとチェンコーンを結ぶ「第4タイ・ラオス友好橋」が2013年12月11日に開通したことをネットで知りました。

第4タイ・ラオス友好橋が開通 
http://www.newsclip.be/article/2013/12/12/20069.html

「第4」とあるように、これはタイとラオスの国境であるメコン川をまたいで渡る4つめの橋ということです。橋の全長は630m、幅14.7m。建設費は16億バーツで、タイと中国が半分ずつ負担したそうです。これで、中国雲南省の昆明からタイのバンコクまでを陸路でつなぐ1本のハイウェイが完成したことになります。

現地在住の日本人のブログによると、2013年8月にぼくがこの国境を渡ったボートは、現在地元の人間以外は利用禁止で、外国人は乗れなくなってしまったようです。イミグレーションも閉鎖されたとか。ということは、ぼくはこのボートで渡るのどかな国境の最後の年の渡航者になってしまったということです。

チェンマイ在住日本人のブログより
http://chaocnx.seesaa.net/article/384002459.html

今後、中国とタイの物流はますます盛んになることでしょう。船で大型トラックを渡す光景も見納めだったわけです。
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by sanyo-kansatu | 2014-04-12 11:23 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2014年 04月 10日

タイの長距離VIPバスはこんなに快適!

春が来て、桜の季節もあっという間に終わりました。空気がぬるむと、旅の衝動が身体に蘇ってくるのがちょっとうれしい今日この頃です。

そこで、2013年8月のインドシナ北辺旅行を思い出しつつ、出しそびれていたいくつかの報告をしようと思います。
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最初は軽い話題から。タイの長距離VIPバスはとても快適だった、という話です。

ぼくがバスに乗ったのは、タイ最北部の町で、ミャンマーとの陸路の国境ゲイトのあるメーサーイからチェンマイまでの約3時間でした。
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これがメーサーイの国境ゲイトです。しばらく見ないうちに、ずいぶん立派な建物になっていました(前日、ぼくはここを抜けて半日ほどミャンマーで過ごしたのですが、それは別の機会にしましょう)。
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ここがメーサーイのバスターミナルです。ちょっと鄙びて老朽化しているのも悪くありません。メーサーイの中心からバイクタクシーで5分ほどの場所にあります。バスのチケットは前日のうちにここに来て購入しました。200Bほどでした。
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バスは午前8時15発。少し早めにターミナルに来ていたぼくは、待合室に座ってバスが現れるのを待っていました。
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すると、8時きっかりにターミナルに置かれていたテレビの場面が突然、戦車やらタイ国旗やらが乱れる、いわゆる国威発揚的な映像に変わり、最後に国王の映像が流れました。これは毎朝8時と夕方6時に国営テレビが放映しているタイの国歌らしいのですが、何人かの若いタイ人たちは起立して国王のお言葉を拝聴していました。立っているのは女の子のほうが多いようです。バンコクのような都会では、学校にでも行かなければこういう光景は見られないかもしれません。

【動画】タイの国歌放映(一部)
※昨今のタイ情勢は、ここで謳われている国民統合の危うさを感じさせて、なんとも心配です。
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しばらくすると、バスがやって来ました。タイの長距離路線バスには、いくつかのクラスがあります。たいてい外国人はVIPバスを勧められます。ぼくの乗ったバスには、明るい黄緑色の制服を着た女性ガイドさんが同乗していました。昔からタイのバスや鉄道で働いている女性スタッフの雰囲気が好きでした。ちょっとけだるい感じの田舎のおねえさん的な接客がとても好ましく、ぼくには新鮮に感じられるからです。
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座席はリクライニング付きの快適なものです。中国の地方を走る路線バスも、最近ずいぶんよくなってきましたが、まだまだタイのほうが進んでいるように思います。
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バスガイドさんから乗客一人ひとりに、菓子パンとミネラルウォーターとマンゴージュースが配られました。朝食付きというわけです。
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タイの主要な地方都市をつなぐ幹線道路は整備されており、快適な走行でした。あんまり快適すぎて、途中メーサーイから県外に出るとき、検問があって、警察官がチェックに入って来たことくらいしか特筆することはありませんでした。

思い出していたら、急にまたこのバスに乗りたくなってしまいました。
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by sanyo-kansatu | 2014-04-10 11:35 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2014年 03月 29日

2013年、九州に寄港する外国クルーズ船はなぜこんなに減ったのか

台湾発のクルーズ客船「スーパースター・アクエリアス」は、毎年4月から10月下旬まで毎週1回、那覇港と石垣港に寄港します。同船は、日本で唯一の外国からの定期クルーズ船です。同船の寄港日に上陸する約1500人の台湾客は、那覇の風景を大きく変えています。
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※沖縄に寄港する外国クルーズ船と乗客の動向については、以下の記事を参照。
【前編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメントhttp://inbound.exblog.jp/20363867/
【後編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメントhttp://inbound.exblog.jp/20365044/
沖縄には欧米客を乗せたクルーズ客船も寄港しますhttp://inbound.exblog.jp/20366268/

「スーパースター・アクエリアス」は、今年も4月6日からやって来ます。那覇港に寄港する国内外を合わせたクルーズ客船の予定は以下を参照ください。

那覇港管理組合
http://www.nahaport.jp/kyakusen/nyuukouyotei2014.htm

では、沖縄以外の国内の港ではどうなのでしょうか。先ごろ、大型客船のクイーン・エリザベスが干潮時に横浜ベイブリッジを潜り抜け、横浜港に寄港したニュースがありましたが、今年も全国各地に外国クルーズ船は寄港する予定です。各港の予定は以下のサイトが参考になります

一般社団法人日本外航客船協会
クルーズ船寄港地
http://www.jopa.or.jp/port_detail/port.html

上記2サイトで調べる限り、沖縄県(那覇、石垣)は国内最大級の外国クルーズ船の寄港地といえます(国内クルーズ船を入れたトータルの2013年のクルーズ寄航数では、横浜、神戸に次ぐ3位。那覇港は外国客を乗せたクルーズの比率がいちばん大きい)。

では、今年沖縄以外ではどこの港に多くの外国クルーズ船が寄港するのか。ざっと調べてみると、以下の4港が多そうです。

横浜/「ダイヤモンド・プリンセス」(英)、「コスタ・ビクトリア」(伊)ほか
神戸/「コスタ・ビクトリア」(伊)、「サン・プリンセス」(米)ほか
博多/「コスタ・アトランティカ」(伊)、「ダイヤモンド・プリンセス」(英)、「ボイジャー」(英)ほか
長崎/「ダイヤモンド・プリンセス」(英)、「セレブリティ・ミレニアム」(米)ほか

横浜港クルーズ客船寄港予定 
http://www.city.yokohama.lg.jp/kowan/cruise/schedule/2014.html
神戸港クルーズ客船寄港予定 
http://www.city.kobe.lg.jp/culture/leisure/harbor/passenger/schedule/
博多港クルーズ客船寄港予定
http://port-of-hakata.city.fukuoka.lg.jp/guide/cruise/index.html
長崎港クルーズ客船寄港予定
http://www.jopa.or.jp/port_detail/nagasaki.html

調べていくうちにわかったことがあります。

九州では、2012年空前の外国クルーズ船の寄港ラッシュに沸いたこと。ところが、13年に入ると大幅な減少が見られたことです。

※クルーズ船寄港回数(国内クルーズ船も含む総数)
博多港 2012年:112回→13年:38回
長崎港 2012年78回→13年:48回

なぜこんなに九州に寄港する外国クルーズ客船が減ってしまったのか。

上記2港の関係者に電話取材したところ、2つの理由が見えてきました。まず、2012年秋以降の日中関係の悪化により大型客船「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」「レジェンド・オブ・ザ・シーズ」(米)、「コスタ・ビクトリア」(伊)などの中国発チャーター・クルーズ船の寄港が途絶えたこと。もうひとつは、2011年末に韓国初のクルーズ船会社として創業されたハーモニー・クルーズ社が、12年2月より博多や長崎に多数寄港させた「クラブ・ハーモニー」(韓)が営業悪化のため、13年2月からあっさり運休したことです。

博多港の2012年のクルーズ船の寄港実績をみると、この年の大半の外国クルーズ船が前述した中国発および韓国発だったことがわかります。これが一気に寄港しなくなったわけですから、激減するのも無理はありません。長崎港でも状況は同じでした。

国土交通省が2012年11月に作成した外国クルーズ誘致を促進するための資料に、以下のような統計があります。

外国船社クルーズ船寄港回数上位10港(国内クルーズ船は含まない)

2005年 1位那覇29回/2位石垣29回/3位長崎24回/4位平良22回/5位横浜11回 計199回
2006年 1位長崎50回/2位広島23回/3位神戸18回/4位萩15回/5位宇野14回 計251回
2007年 1位長崎37回/2位那覇26回/3位石垣25回/4位神戸19回/5位鹿児島16回 計281 回
2008 年 1位那覇51 回/2位石垣37回/3位鹿児島30回/4位博多25回/5位長崎25回 計318回
2009年  1位那覇50回/2位長崎45回/3位石垣32回/4位博多28回/5位神戸22回 計348回
2010年  1位博多61回/2位那覇46回/3位鹿児島45回/4位石垣45回/5位長崎39回 計338回
2011年 1位石垣46回/2位那覇37回/3位博多25回/4位長崎17回/5位横浜13回 計186回
2012年 1位那覇73回/2位博多63回/3位長崎55回/4位鹿児島37回/5位石垣33回 計459回 ※ただし、これは2011年12月時点での予定。

これからの観光とクルーズ
http://www.marine.osakafu-u.ac.jp/~lab15/society/PDF/soukai/04.pdf

これをみると、もともと外国クルーズ船は沖縄や九州に多く寄港していましたが、2008年頃より急増しています。中国や韓国からのクルーズ船がこの時期に増えたためです。東日本大震災の2011年はいったん減っていますが、翌12年に大幅にアップしました。これが空前の九州クルーズラッシュとして話題となったのです。当時の状況について、観光庁長官も以下のように明るい展望を語っていました。

観光庁の井手長官、“黒船”来航でどうなる今後のクルーズ振興
http://www.cruise-mag.com/news.php?obj=20120619_01

ところが、その盛り上がりもわずか1年で萎んでしまったのでした。関係者の落胆ぶりが思いやられます。

それでも、2013年の秋頃から、少しずつ上海発のチャーター・クルーズ客船が九州各港に寄港するようになっています。ただし、その勢いは12年には到底及びませんし、実は九州の港湾関係者も、以前のように積極的に中国からのクルーズ船の寄港をメディアに対してアピールしていないようです。その背景には、2012年秋の尖閣事件直後の中国クルーズ船の熊本港寄港が中国国内でバッシングに遭ったことに対するトラウマがあるからに違いありません。日中関係が好転していないいま、あまり騒ぐとかえって中国世論を刺激し、逆効果を生むのではないか。九州のクルーズ関係者の間にそんな複雑な思いが共有されているようなのです。

東京にいると、航空便による中国客の大幅回復が強く実感されますが、九州では少し事情が異なるようです。

※もっとも、九州在住の帆足千恵さんが最近、「九州は日本のクルーズ先進地になれるか? 福岡クルーズ会議から」というコラムを書いていて、九州がいかに熱心にクルーズの誘致に再び取り組もうとしているか、報告されています。要注目です。

※2014年に入り上海発のクルーズ船は再び博多港を訪れるようになりました。寄港状況は以下参照ください。

博多港クルーズ客船寄港予定
http://port-of-hakata.city.fukuoka.lg.jp/guide/cruise/index.html
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by sanyo-kansatu | 2014-03-29 12:53 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 02月 13日

27回 ラオスでは片田舎でも東京よりWi-Fi環境は進んでいます(改題)

昨年、史上初の訪日外国人数1000万人を達成し、今年の春節は中国からの訪日客も戻ってきました。街角でよく見かけるようになった外国人ツーリストは、日本でどんな風に過ごし、何を不便に感じているのか。海外の事例と比較しながら日本の受け入れ態勢の課題を検討し、訪日外客にとって居心地のいいツーリストタウンの条件について考えます。
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昨年8月、インドシナ北辺の国境地帯を1週間ほど旅しました。タイの首都バンコクから夜行列車でラオス国境の町ノーンカーイに向かい、国境の橋を渡ってラオスの首都ビエンチャンへ。そこからラオ航空の国内線でルアンナムターという少数民族の集落のトレッキングで知られる町を訪ねました。中国国境(雲南省)からも近い町です。

ルアンナムターでは、ひとりの外国人ツーリストとして、とても居心地のいい時間を過ごせました。

なぜだったのか。

ツーリストに必要なインフラがすべて揃う町

ラオスといえば、昨年11月に安部首相が訪問し、同国との経済協力を約束したことが報じられましたが、アセアン諸国の中では最貧国として知られる途上国です。目覚ましい経済発展が続く他のアセアン諸国と比べると、のんびりしたアジアの風情が残っていて、世界遺産に登録されたルアンプラバーンの仏教遺跡や少数民族の集落を訪ねるトレッキングなどが海外のツーリストの間で人気となっています。

でも、ルアンナムターの居心地がいいのは、それだけが理由ではありません。ツーリストの身になって考えれば、東京よりはるかに便利で快適な滞在が楽しめるからなのです。

どういうことでしょうか。

なぜなら、この小さな町にはツ-リストに必要なすべてのインフラがコンパクトに揃っているからです。

ツーリストに必要なインフラとは何か。それは「住(アコモデーション)」「食(グルメ)」「足(トランスポーテーション)」「観光(アトラクション)」という4つの要素です。

そこで、この小さなツーリストタウンの4つのインフラの中身を見ていきましょう。
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ルアンナムターのゲストハウス兼カフェレストラン

まず「住(アコモデーション)」から。ルアンナムターの市街地は南北2km、東西1kmの範囲にほぼ収まっていて、ほとんどのホテルがメイン通りに沿った100mほどのエリアに並んでいます。市街地から7kmの空港からバスに乗って町に降りたツーリストは、その気になれば、歩きながら料金や客室の快適度などを比較して、ホテルを選ぶことができます。町の規模にしてはホテル数が多く、選り取り見取り。選択肢の自由が多いことで、ホテル選び自体が旅の楽しみにつながります。そういうのが面倒くさい、またホテルの予約なしで旅行するのは不安という人も心配ご無用。この町のホテルにはたいてい英語のHPがあって、ネットで事前に予約ができます。ホテルのスタッフは簡単な英語は話しますから、予約なしでも問題ありません。
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この町のホテルはWi-Fiが完備

外国人ツーリストのホテル選びの条件として、Wi-Fiが使えるかどうかはとても重要です。その点、この町のホテルはどこでもWi-Fiが完備しています。Wi-Fiが使えなければ、ツーリストからスル―されてしまうからです。実際、ぼくはこの町から東京の友人にラインを使って通話したのですが、音声はクリアでまったく問題がありませんでした。Wi-Fiはチェックインのとき、オーナーに渡されたカードに書いてあるパスワードを入れるだけ。無料です。いまどきアセアン諸国のツーリストが多く訪れる町では、これは常識といっていいでしょう。こんなこと、あまり言いたくはないのですが、アジアの片田舎ですら東京よりずっと通信環境は進んでいるのです。

次は「食(グルメ)」です。ホテルの部屋で荷を解き、シャワーを浴びたら、誰でも町を歩いてみたくなるものです。食事をどこで取ろうか、ミネラルウォーターや軽食はどこで買えばいいか。この町にはコンビニはないけれど、ツーリスト向けの雑貨屋が数軒あります。
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これがラオスの屋台そば

この地を訪ねた8月は雨季にあたるので、日本人の姿は少なかったですが、ぼくの泊まったゲストハウスの隣のカフェレストランには、欧米から来た若いツーリストが大勢いました。そこはこの町でいちばん有名なゲストハウスで、ちょっとにぎやかすぎると思ったので、隣の宿にしたのです。朝食だけ隣でとればいいからです。ハムエッグ付きのイングリッシュ・ブレックファストが食べられます。もちろん、近所の屋台で地元のそばを食べるのも自由です。

観光(アトラクション)の手配もストレスなし

「住(アコモデーション)」と「食(グルメ)」の問題がこうしていとも簡単に解決してしまうと、人はたいてい満足してしまうものですが、ツーリストの場合はちょっと事情が違います。「足(トランスポーテーション)」と「観光(アトラクション)」の課題が解決されなくては、旅人としての根本的な欲望が満たされたとはいえません。それがうまくはかどらなければ、ツーリストはストレスを感じるものです。

少数民族の集落へのトレッキングツアーに参加するにはどのトラベルエージェンシーに頼めばいいのか。近郊の町に移動するためのバスや飛行機のチケットはどこで買えばいいか……。だいたいこういった内容ですが、これはツーリストにとって重要な“仕事”といえます。

その点、ルアンナムターのメインストリートには、ホテルやレストラン以外に、トラベルエージェンシーやツーリストオフィス(観光案内所)などの施設が並んでいます。つまり、この町ではツーリストにとって肝心の“仕事”も、徒歩圏内でストレスなく段取りできてしまうのです。
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トラベルエージェンシーの前に置かれたトレッキングツアーの告知

ルアンナムターにはトレッキング以外にも、サブ的なアトラクションがいろいろあります。たとえば、市街地にはルアンナムター博物館があります。この地域に暮らす少数民族の歴史や風俗を展示しています。誰しも旅に出ると、異文化に対する知的好奇心が刺激されるものです。

もうひとつのポイントが、夜をどう過ごすか。ツーリストにとってナイトライフは大切なアトラクションです。都会であれば、繁華街に繰り出せばいいのですが、こんな片田舎では何をすればいいのか。でも大丈夫。ルアンナムターには、夜になると屋台が並ぶナイトマーケットがあります。夕食はここで地元料理を味わえばいいのです。もちろん、前述のカフェレストランでは簡単な洋食が食べられますし、町のいたるところにある屋台そばでしめることもできます。
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ルアンナムターのナイトマーケット

こうした4つのインフラが過不足なく揃った環境こそ、居心地のいいツーリストタウンといえるでしょう。

整理してみましょう。外国人ツーリストにとって居心地のいい町の条件とは?

①ツーリストにとって快適なホテルがあること。Wi-Fi整備は必須。
②ホテルの周辺で「食(グルメ)」「足(トランスポーテーション)」の手配がストレスなく可能なこと。
③メインの観光以外に、知的好奇心を満たしたり、ナイトライフを楽しんだりするためのアトラクションがあること。

はたして日本の観光地はこれらの条件が十分揃っているといえるでしょうか。

※ルアンナムターについての詳細は、中村の個人blog「外国人ツーリストにとって居心地のいい町の必要十分条件とは?」を参照。

東京にはいくつかのツーリストタウンがある

もちろん、ルアンナムターのような小さな町と東京のような大都市では、ツーリストの動線やニーズは違うところもあるでしょう。でも、基本的にツーリストに必要なインフラはそう大きく変わるものではありません。

先日、東京観光財団を取材しました。テーマは「東京“インバウンド”事情 その実態は?」。2020年オリンピック開催決定で注目される東京都の外国人旅行者の実態や受け入れの課題について話を聞きました。以下、東京観光財団観光事業部アジアプロモーション担当課長の田所明人さんへのインタビューの一部抜粋です。

――東京を訪れる外国人の数はどのくらいいるのですか?

「日本を訪れる外国人観光客のうち、70%が東京都を訪れています。昨年は訪日外国人数が過去最高でしたが、それは同時に東京を訪問した外国人数も最高だったことを意味しています。つまり、訪日外客の7がけが大まかに東京を訪れる外国人数と考えていいと思います(※だとすれば、2013年に東京都を訪れた外国人は約700万人)」。

――東京都を訪れた外国人の多くはどこを訪ね、どこに泊まっているのですか?

「東京都が実施した国別外国人旅行者行動特性調査によると、訪問先のトップは渋谷。スクランブル交差点はもはや定番観光スポットです。宿泊エリアのトップは新宿。買い物もでき、歌舞伎町などのナイトスポットも充実。交通の便がよく、比較的低価格のホテルも多数あり、客室数の多いエリアといえるでしょう」。

■訪日外国人観光客の訪問先・宿泊エリア
順位訪問先宿泊エリア
1位渋谷    新宿
2位新宿    東京・丸の内
3位銀座    赤坂、六本木、浅草
4位秋葉原  ―
5位浅草    銀座
(平成24年度国別外国人旅行者行動特性調査より)

この調査から明らかなのは、東京にはホテルの集中するいくつかの地区があり、外国人ツーリストの大半はそこをベースに行動していることです。具体的にいうと、新宿や池袋、東京・丸の内、赤坂、六本木、銀座、品川、浅草などが考えられますが、客室平均単価やロケーション特性の異なるそれぞれの地区に集まるツーリストのタイプや行動形態には違いがありそうです。

つまり、東京のような大都市圏の場合、ホテル集中地区ごとに、今回紹介したラオスの小さな観光の町と同様、ひとつの個性を持ったツーリストタウンとして捉え、それぞれの内実に見合った個別の受け入れ態勢を検討する必要があると思うのです。

東京の滞在で不便なことは?

――外国人旅行者は東京での滞在でどんなことに不便を感じているのでしょうか。東京のウィークポイントは何ですか?

「いくつかありますが、なかでも最大のウィークポイントといえるのは、Wi-Fi整備の遅れです。海外発行のクレジットカードでのキャッシングがどこでできるかもよく知られていません。セブン銀行や郵便局、CITI BANKなどで利用できるのですが、外国人にもわかるような表示がきちんとされていないと指摘されています。羽田の深夜便を利用した外客の都心へのアクセスの問題もあります」。

日本政府観光局と観光庁が実施した調査に、以下のデータがあります。

■いつ、どこでインターネットを利用したいか?(複数回答)
1位宿泊先88.9%
2位空港43.1%
3位街頭40.9%
4位駅・バス停30.5%
5位公共交通機関28.8%
6位観光や買い物時25.9%
(平成24年度TIC利用外国人旅行者調査報告書(JNTO)より)

■日本滞在中に得た旅行情報で役に立ったもの(複数回答)
1位インターネット(PC)45.0%
2位観光案内所(空港を除く)21.3%
3位日本在住の親戚・知人21.2%
4位宿泊施設19.8%
5位空港の案内所19.5%
6位旅行ガイドブック(有料)15.6%
7位フリーペーパー10.1%
8位インターネット(スマートフォン)6.4%
(平成22年度訪日外国人の消費動向(観光庁)より)

これを見てわかるのは、外国人ツーリストが日本を訪れた後、どのように滞在中の情報を入手しているかという実態です。空港やホテルに置かれたフリーペーパーのような紙媒体からではなく、圧倒的にネット経由で情報を探していること。また移動中に街頭でインターネットを利用したいという要望はあるものの、基本的にはホテルでじっくりパソコンを使って情報を探している姿が見えてきます。

それだけに、ホテルのWi-Fi整備の遅れは“おもてなし”という観点からも致命的といえます。逆に言えば、いち早くWi-Fi整備を手がけることが、外国客の集客にきわめて効果的であるということです。

※東京観光財団へのインタビューの詳細は、中村の個人blog「致命的な東京都内のホテルのWi-Fi整備の遅れ」を参照。

急増するアジアFIT客のためのインフラ整備

今年の春節は中国客が戻ってきたようです。

日本経済新聞2014年1月30日によると、「日本向け査証(ビザ)発給のほぼ半分を占める上海の日本総領事館では、個人観光ビザの発給が過去最高のペース」。「昨年12月に発給した個人観光ビザは約1万4400件」で「前年同月の3.6倍」。「今年1月に入ってからも順調に伸びている」(上海の総領事館)といいます。

同紙では、中国の個人ビザ客の実態として「私費旅行」が増えたと分析しています。「習近平指導部が進める綱紀粛正」により、「今年1月から共産党員や公務員を対象に公務を名目とする視察旅行を禁じ」ているが、それでも訪日客数が増えたのは、「欧米よりも割安な日本に私費で旅行する人が増えたとみられる」からだといいます。

中国のFIT客の訪日が本格化することで、アジアの訪日旅行市場も大きく変わっていくことが予測されます。今後ますます増えるであろう海外のFIT客を取り込むためには、アジアの近隣諸国と比べて遅れが指摘されるツーリストのためのインフラ整備は急務となっています。

先日、水道橋の「庭のホテル」を取材しました。同ホテルは外国人宿泊客の多さで知られています。

総支配人は、外国人ツーリストの特性として「よく歩くこと」を指摘されていました。

「うちから都内のいくつかの観光ポイントは徒歩圏内で、外国の方は皇居や秋葉原などへ歩いて行かれるんです」(「庭のホテル」木下 彩総支配人)

この興味深い指摘から、訪日外客の受け入れ態勢を考えるうえで、行政単位とは別の視点が求められること。つまり、ホテルを中心とした「徒歩圏内」で形成されるツーリストタウンという発想が重要であることがわかります。

急増するアジアFIT客に対するインフラ整備を検討するうえで、ホテル集中地区ごとにタウンマップをつくってみるのは意味があります。ホテルを中心とした「徒歩圏内」に、今回ラオスのツーリストタウンで指摘した4つのインフラのうち、どれだけ揃っているのか、地図に落として調べてみるのです。もとより大都市圏では、海外の小さな町のようにすべての要素がコンパクトに揃うというわけにはいかないでしょう。それでも、わが町にはどの要素が足りないのか。またどの要素が弱く、どこを補充しなければならないのか、といったことを確認できるはずです。もちろん、強みも見つかるでしょう。

訪日外客に対する“おもてなし”で大切なのは、ツーリストの身になってわが町を考えるということです。今後は、都内のそれぞれのツーリストタウンの特性を分析していきたいと思います。

※中国からの訪日客の回復の背景については、中村の個人blog「今年の春節に中国客が戻った理由は、上海の訪日自粛がとけたから」、「庭のホテル」総支配人のインタビューは、やまとごころ企業インタビュー「なぜ「庭のホテル」は外国人客に選ばれたのか」、ホテルを中心にしたタウンマップづくりについては「外国人ツーリストにとってうれしい地図とは?」を参照。

※やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/column/2014/column_150.html


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by sanyo-kansatu | 2014-02-13 09:26 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2014年 02月 05日

外国人ツーリストにとって居心地のいい町の必要十分条件とは?

昨年8月、インドシナ北辺の国境地帯を1週間ほど旅しました。タイの首都バンコクから夜行列車でラオス国境の町ノーンカーイに向かい、国境の橋を渡ってラオスの首都ビエンチャンへ。そこからラオ航空の国内線でルアンナムターという少数民族のトレッキングの拠点として知られる町を訪ねました。中国国境(雲南省)からも近い町です。

ひとりの外国人ツーリストにとって、ルアンナムターはとても居心地のいい町でした。

なぜなら、この小さな町にはツ-リストに必要なすべてのインフラがコンパクトに揃っているからです。

では、ツーリストにとって必要なものとは何か。居心地のいいツーリストタウンの条件について、あらためて考えてみたいと思います。その意味では、このラオスの片田舎にある小さな町は格好のケーススタディの対象といえるでしょう。

ルアンナムターの空港を降り立ったツーリストの動線に沿って、この町を紹介します。
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空港は市街地から7kmほど南にあり、乗り合いトラックで10分ほど。市街地の南にあるバスターミナルで降ろされますが、そこから100mほどの場所にホテルやレストラン、トラベルエージェンシー、ツーリストオフィス(観光案内所)などの施設が並んでいます。市街地は、南北2 ㎞、東西1kmの範囲にほぼ収まっています。1時間もあれば散策できるこの町の適度な大きさが、ツーリストにとっての居心地のよさを生んでいる条件のひとつです。
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まずはホテル探し。ほとんどのホテルがメイン通りに沿って並んでいるので、歩きながら気に入った宿を値段と客室の快適度などを比較して選ぶだけです。町の規模にしてはホテルの数が多く、選り取り見取り。選択肢の自由が多いことは、ホテル選び自体が旅の楽しみにつながります。そういうのが面倒くさい、またホテルの予約なしで旅行するのは不安という人も、心配ご無用。いまの時代、こんな山奥の町のホテルにもたいていHPがあって、ネットでも予約ができます。ホテルのスタッフは簡単な英語は話しますから、予約なしでも問題ありません。

ツーリストにとってホテル選びは旅をエンジョイするうえで最も重要な“仕事”のひとつです。ストレスなく快適なホテルが見つかれば、その町の滞在は半分以上成功したといってもいいほどでしょう。
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外国人ツーリストのホテル選びの条件としてWi-Fiが使えるかはとても重要です。その点、このラオスの片田舎のゲストハウスではたいていどこでもWi-Fiが完備しています。実際、ぼくはこの町から東京の友人にラインを使って通話したのですが、音声はクリアでまったく問題がありませんでした。Wi-Fiはチェックインのときゲストハウスのオーナーに渡されたカードに書いてあるパスワードを入れるだけ。無料です。いまどき、アジア諸国では、ツーリストが訪れるような町ではどこでもこの程度には普及しているといっていいでしょう。こんなこと、あまり言いたくはないのですが、東京よりもずっとアジアの片田舎のほうが通信環境は進んでいるといえるのです。

さて、部屋で荷を解き、シャワーを浴びたら、町を歩いてみたくなるものです。食事をどこで取ろうか、ミネラルウォーターや軽食はどこで買えばいいか、少数民族の村へのトレッキングツアーに参加するにはどのトラベルエージェンシーに頼むのか、近郊の町に移動するためのバスチケットはどこで買えばいいか……。ツーリストには、しなければならないいくつかの“仕事”があるからです。
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でも、ルアンナムターにはそれらのすべてが徒歩1分以内の範囲で段取りできてしまうのです。こんなに便利なことはないでしょう。上記のすべてのことが30分以内に終わってしまうほど。こうしたストレスレスな環境こそ、居心地のいいツーリストタウンの条件だといえます。

以上はツーリストタウンの必要条件ですが、実はそれだけでは十分とはいえません。

8月のルアンナムターは雨季にあたるので、日本人の姿は少なかったですが、ぼくの泊まったゲストハウスの隣のカフェレストランには、欧米から来た若い旅行者が大勢いました。そこはこの町でいちばん有名なゲストハウスで、ちょっとにぎやかすぎると思ったので、隣の宿にしました。朝食だけそこでとればいいからです。ハムエッグ付きのイングリッシュ・ブレックファストが食べられます。もちろん、そこらの屋台で地元の麺を食べたっていいです。
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「住(アコモデーション)」と「食(グルメ)」と「足(トランスポーテーション)」の問題が解決されてしまうと、たいてい人は満足してしまうものですが、ツーリストはちょっと違います。「観光(アトラクション)」がなくては、人はなぜ旅に出るのか、という根本の欲望が満たされたとはいえないからです。

その点、ルアンナムターは、少数民族の村へのトレッキングの拠点であり、これがメインアトラクションです。まあそのために海外のツーリストはこの町を訪れるわけですが、サブ的なアトラクションもいろいろあります。
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たとえば、市街地の北にルアンナムター博物館があります。この地域に暮らす少数民族の歴史や風俗を展示しています。そこそこ立派な施設です。誰しも旅に出ると、異文化に対する知的好奇心が刺激されているものです。トレッキングの前後にぜひ足を運んでみたくなるはずです。
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ホテルの周辺には、民家もたくさんあります。朝早く起きて、知らない町を散策するのは楽しいものです。小さなお寺もあって、足を延ばしてみたくなります。こんなささやかなことも、ツーリストにとっては十分魅力的なアトラクションです。

もうひとつが、夜をどう過ごすかです。都会であれば、繁華街に繰り出せばいいのですが、こんな片田舎では何をすればいいのか。
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ルアンナムターには、夜になると屋台が並ぶナイトマーケットがあります。夜の食事はここで地元料理を味わうわけです。もちろん、前述のカフェレストランでは簡単な洋食が食べられますし、町のいたるところにある屋台の麺でしめることもできます。これだけアトラクションが揃えば、まったくいたれりつくせりだと思いませんか。

整理してみましょう。外国人ツーリストにとってストレスレスで居心地のいい町の必要十分条件とは?

①ツーリストにとって快適なホテルがあること。Wi-Fi整備は必須。
②ホテルの周辺で「食(グルメ)」「足(トランスポーテーション)」の手配が可能なこと。
③メインの観光以外に、知的好奇心を満たしたり、ナイトライフを楽しんだりするためのアトラクションがあること。

はたして日本の観光地にはこれらの条件が揃っているといえるでしょうか。

今回ぼくはこの町でいちばん有名なゲストハウスの隣にあるKhamking Guest Houseという宿に泊まりました。オーナーはまだ28歳の若いラオス青年で、地元の観光専門学校で英語やツーリズムを学び、数年前にゲストハウスをオープンしたそうです。
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実はその町に着いた日、ぼくはラオスの通貨を使い果たしていました。とにかく物価の安いラオスです。長い旅でもないので、日本円しか持っていませんでした。1万円分も両替すると余りそうなので、5000円札を両替してくれないか、と彼に頼みました。ゲストハウスの向かいにATMがあるので、いま考えると、ずうずうしい話です。

オーナーの青年は言いました。「ぼくは1万円札なら見たことあるけど、5000円札は見たことありません。これは本当に日本の紙幣なのですか」。そこでぼくは思わず言いました。「ぼくは日本人です。人をだましたりはしませんよ。どうか信じてほしい」。すると、彼は大きくうなづいて、「では待っていてください。これをラオスキップに両替して、明日のバスチケットと宿代を差し引いたぶんをお渡しします」。そう言って、彼はその場を立ち去り、夜にラオスキップでお釣りを手渡してくれたのです。

なんてことのない話のようですが、こういうのを本物のホスピタリティというのではないでしょうか。ツーリストにとって、何がいちばん不便なことなのか、どうしてもらえるとありがたいのか、彼はよく理解しているのです。

よく日本では“おもてなし”といいますが、結局のところ、ツーリストにとって何がストレスになっているか、その理由がわかっていないと、ひとりよがりなもてなしになってしまうおそれがあります。

ぼくにとって、このゲストハウスのオーナーに出会ったことが、この町の印象を好ましいものにした最大の理由だったといえるかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2014-02-05 14:05 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2014年 01月 20日

靖国参拝は中国訪日客に影響を与えるか(ツアーバス路駐台数調査 2014年1月)

2014年の正月を迎え、このバス調査も3年目に突入しています。先日友人から「毎日調査するなんて大変ね」と言われたのですが、実はたいしたことではないんです。仕事場に通うのに必ず通る道すがら、信号待ちしながら路上駐車しているバスの台数を数えるだけのことですから。

とはいえ、たまに普段と違う客層が見られたり、何かの異変があったりしたときだけ、じっくりウォッチングすることにしています。訪日外国人旅行者と一口に言ってもいろいろ。最近は中国以外のいろんな国の人たちも現れるようになっているので、面白いのです。
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マスコミ報道によると、昨年秋ごろから「中国からの訪日旅行客が回復基調にある」(日本経済新聞2013年10月8日)といわれています。「東京や大阪の高級ホテルでは9月から利用状況が好転、中国人客が使うクレジットカード『銀聯カード』の日本での取り扱い額は過去最高を更新した」そうです。

もっとも、新宿に現れるバスの台数自体は尖閣問題が発生する直前の一昨年夏のピーク時に比べると、回復しているとは思えません。その理由として考えられるのは、「昨年9月の尖閣諸島の国有化以降、中国人の訪日客数は前年割れが続くが、富裕層を中心に持ち直しつつある」ことにありそうです。回復しているのは個人客が中心で、ツアーバスに乗ってやって来る団体客はまだというわけです。

ただし、最近では安部総理の靖国参拝が中国訪日客にどんな影響を与えるか、懸念されており、昨秋の状況とは少し空気が変わりつつあるとも聞きます。実際、今月上旬北京を訪ねた折、現地の旅行関係者にヒアリングしたところ、「(靖国の)影響がないとはいえない」とのこと。もっとも、それ以上に影響があるのは、中国政府による公務旅行に対する各機関への自粛通達だといいます。いわゆる習近平の「贅沢禁止令」です。

その一方で、大気汚染の中国から逃れたいという市民の思いを反映した「洗肺游」(肺を洗う旅行)や「逃脱PM2.5」(PM2.5からの脱出)などと謳われた海外旅行商品も販売されているそうですから、政府と民間の思いには相変わらず隔たりがあるようです。

さて、今月末にあたる旧正月(春節)に中国団体客は戻ってくるのでしょうか。今月もぼちぼちツアーバスはやって来ています。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。
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1日(水)未確認
2日(木)未確認
3日(金)未確認
4日(土)未確認
5日(日)未確認
6日(月)11:50 0台、17:50 1台
7日(火)18:20 1台
8日(水)12:40 2台 
9日(木)12:50 1台 18:00 2台
10日(金)未確認
11日(土)未確認
12日(日)未確認
13日(月)未確認
14日(火)12:30 1台
15日(水)未確認
16日(木)12:20 1台、18:20 2台
17日(金)12:40 1台、18:40 2台
18日(土)未確認
19日(日)未確認
20日(月)12:50 2台、19:20 3台
21日(火)12:10 3台
22日(水)12:40 1台、17:20 2台
23日(木)12:20 2台
24日(金)12:40 5台、18:40 5台
※来週は春節です。今日になってバスの台数が急に増えてきました。ここ連日、中国政府の報道官による対日批判が真っ盛りですが、中国客は日本を訪れているようです。昨年の春節のときとは少し様相が違っているように思われます。

中国の一般国民の皆さんからすれば、自国政府の自らを棚に上げた政敵批判の口汚さも空騒ぎも、もう慣れっこということなのかもしれません。

しかし、だからといって日本のメディアが訪日客の話題を盛り上げすぎると、かえって中国国内でのアンチキャンペーンに火をつけかねないので、そっとしておくほうがいいのではないでしょうか。中国の人たちもそれを望んでいるように思います。誰しも自分の好きなところへ海外旅行したいに決まっているのですから。そんなことをいちいち気にしなければならないなんて、おかしな話ですけど、中国の場合は仕方がないでしょう。

25日(土)未確認
26日(日)未確認
27日(月)12:50 3台、18:20 2台
28日(火)12:20 1台、18:00 1台
29日(水)12:30 3台、18:20 1台
30日(木)12:20 1台 、18:10 3台
31日(金)12:20 1台、18:10 6台
※今日は春節(中国の旧正月)です。お昼時はバスの数は多くはありませんでしたが、夕刻になると久しぶりに多くのバスが現れ、例の中国客専用食堂「林園」に入っていく姿が見られました。

では、今年の春節の中国客の海外旅行の全般的な動向はどうなのでしょうか。以下、最近のネットから挙げてみました。

靖国問題で訪日客激減も、日本観光の満足度は高水準
http://news.searchina.net/id/1521521
こんな記事がありました。中国メディアとしては、訪日客に靖国参拝の影響があると指摘するのはお約束でしょう。

春節客 めんそ~れ~ 国際線好調、ホテルも装飾(琉球新報)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140131-00000008-ryu-oki
それでも、沖縄への中国客はかなり増えているようです。昨年から話のあった中国LCCの吉祥航空の上海・那覇線が今日(1月31日)から就航するそうです。では、日本の本土への中国客は? 来月のJNTOの報告を待つことにしましょう。

JNTO外客動向プレスリリース(2014.1.17)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/pdf/140117_monthly.pdf
ところで、こちらは先日JNTOから発表された2013年度の訪日外客動向です。公開しているすべての国の訪日客数が前年度比で大幅な伸びを見せている中、唯一中国だけが-7.8%と減らしています。政治がこれほど鮮明に数字に出るマーケットというのは、やはり中国だけですね。

なお昨年まで大量の中国客が押し寄せていた韓国やタイへの渡航に減少傾向が見られるそうです。

韓国を訪れる中国人客が減少、中国の新旅行法でツアー商品数も半減
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140129-00000043-scn-cn

タイ情勢、観光業に打撃、旧正月連休控えた中国人からキャンセル相次ぐ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140129-00000038-rcdc-cn&pos=4
特にタイの場合は、新旅行法と政情不安のダブルパンチが効いているようです。昨年夏タイを訪ねたときは、バンコクやチェンマイにあふれていた中国人観光客の姿がめっきり消えたそうです。
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by sanyo-kansatu | 2014-01-20 17:47 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2013年 12月 30日

HISのグローバル戦略の最前線がバンコクである理由

今年8月、タイのインターナショナル・トラベル・フェア(TITF2013)の視察の折、HISバンコク統括支店長の話を聞くことができました。今年、タイからの訪日客が増えた背景に、ビザ緩和や円高是正があったことは確かですが、民間企業の精力的な取り組みが大きく貢献していると思います。

なぜ同社のグローバル戦略の拠点はタイなのか。日本と同様、市内交通機関の中はスマホを手にした乗客であふれるバンコクで、あえて旅行店舗の出店を加速する意外な理由について。以下、今月中旬に刊行された産学社刊「産業と会社研究シリーズ トラベル・航空2015年版」に掲載したインタビュー記事を採録します。
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日本を取り巻くグローバルな観光マーケットが急成長するなか、日本の旅行業はどこに向かうべきか。ひとつのカギは「ツーウェイツーリズム」にある。それを地道に実践しているのがHISだ。

2013年8月中旬、タイの首都バンコクで開催されたタイ・インターナショナル・トラベル・フェア(TITF)の会場で、同社のグローバル戦略の現在について中村謙志バンコク統括支店長に話をうかがった。

この国では我々の知名度はない

中村さんがバンコクに赴任し、タイのローカル市場に取り組んで13年で4年目。その手始めが、国内外の旅行会社が集まる展示即売会のトラベルフェアへの出展だった。「この国では我々の知名度はない。HISといってもタイ人は誰も何の会社か知らない。ゼロからのスタートでした」という。
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初年度は小さなブースで、扱ったのは航空券とJRパスだけ。その後、本格的にツアーを造成し、ブースもだんだん大きくした。今回の展示即売の目玉商品は、就航したばかりのチャーター航空会社アジア アトランティック エアラインズ(AAA)を利用した大阪・東京ゴールデンルート。「4泊6日・29999バーツ(約9万3000円)という破格の料金で売り出したところ、1000名が完売でした」。
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旗艦店となるトラベルワンダーランドで年間通じて売れているのは、航空券+ホテル(+JRパス)。自由旅行の商品だ。一方ソンクラーン(タイの旧正月)の4月とスクールホリデー(夏休み)の10月の年2回のピークシーズンは、添乗員同行の団体ツアーが人気だ。

売れ筋は、東京、富士山、箱根の5日間、東京・大阪ゴールデンルート、大阪・京都5日間、北海道(道南)の順。最近、北海道でレンタカーを利用するタイの個人客も現れたという。「タイ人は普段から日本車に乗り、左側車線の国ですからね」。

バンコクの出店を加速する理由

ネット予約の普及などビジネス環境の変化で、日本では旅行店舗の整理縮小が進んでいるが、バンコクで出店を加速するのはなぜか。そこには意外な理由があった。

「ローカルを取り込む戦略の軸は店舗展開です。なぜなのか。広告効果が大きいからです。場所はスカイトレインの駅構内やショッピングセンターなど、消費者に目につきやすい場所限定です。実は、バンコクでは一等地に広告を出すのと家賃にかかるコストはたいして変わらない。であれば、店舗を出そう。ただし、常駐スタッフは1、2名の『KIOSK店舗』。それを量産することで、我々の存在を知ってもらう」。
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店舗ではHISの海外旅行商品のパンフレットを大量に用意している。タイでは、日本のようなセールスカウンターのある旅行店舗は少なく、パンフレットは流通していない。誰もがスマホを手にする時代でも、細かく旅行日程が書かれた紙のパンフレットはタイ人に好評だという。

一方、タイには旅行業法や約款が存在しない。キャンセルチャージも個々の旅行会社の裁量に任されている。「震災のような有事にガイドラインがないと困るが、HISは日本の会社だから信用できるといってくださるお客様が増えている。タイにはメイド・イン・ジャパンへの信認がある」と中村さんはいう。

ローカル客を取り込むためには、タイ人を理解することが不可欠だ。

「タイのお客様がどんな旅を望んでいるか、日本人の私はどんなに勉強してもわからない。だから、添乗にもよく同行します。お客様が何を喜んでいるのか、おいしいと思うのか、どの風景をバックで写真を撮りたいのか。勘が鈍るのはいちばんまずい」。

いくつかわかってきたことがある。「タイ人はタバコが嫌い。ほとんどの人が吸いません。ところが、日本のホテルはタバコ臭い。ですから、ホテルの手配は禁煙ルームが絶対条件です。タバコを吸えるレストランも選びません。タイのお客様は日本食好きで、滞在中すべて日本食でもいいのですが、気をつけないといけないのは生もの。タイで出回っているお寿司のネタは限られています。お店が気を利かしたつもりで珍しいネタを出しても、生ダコなどは気持ち悪がって決して食べようとしない。全員残すこともよくある。もし本当にタイのお客様を受け入れたいと思うなら、タイ人を理解して細かい気配りが必要です」

タイでは旅番組の影響が大きいこともわかった。「いい例が、いまタイ人が多く訪れている白川郷や高山、富良野のラベンダー、岩国の錦帯橋、瀬戸内のしまなみ街道、指宿温泉の砂蒸し風呂など」。「ある日、局地的な人気が起こる」だけに、訪日プロモーションはテレビを活用するのが効果的だという。

なぜタイが拠点として選ばれたのか

では、HISの海外戦略においてなぜバンコクが最前線の拠点として選ばれたのか。中村さんはこう即答する。「タイには大きなコンペティターがいないからです」。

重要拠点を選ぶ条件は、これから伸びる市場。しかも、インバウンドからアウトバウンドに旅行マーケットが移り変わる時期で、大手エージェントが不在の国。それがタイ、インドネシア、ベトナムだという。 

日本の旅行業界は一見国際的なイメージがありながら、実はドメスティックな体質が残っている。早くから海外で売上を生み出してきた製造業に比べ、海外営業所がありながら、売上に貢献してはいなかった。

「海外拠点をつくり、日本のお客様をきちんとご案内する。これが第一ステップ。でも、その役目だけで終わらせてはもったいない。企業のグローバル化はローカルに根付かなければ意味がない。それぞれの国でHISを発展させる。私はタイを任されていますが、インドネシアやベトナムに赴任した同僚もそう思っている。いまではHISジャカルタ支店で集客したインドネシア客をバンコク支店がインバウンド業務として受ける。またシンガポール支店とも、という日本をまったく介さないビジネスも始まっています」。

これはもはやツーウェイではない。マルチウェイツーリズムとでもいえばいいのか。いまHISバンコク支店で起きている仕事の現場を通じて、新しい旅行業の未来が見えてくる。


中村謙志(なかむら・けんじ)
1996年入社。いくつかの国内支店を勤めた後、「グローバル化戦略の一期生」として2009年、トラベルワンダーランド立ち上げのためにバンコク赴任。初めての海外駐在だった。支店長として現在にいたる。「目標は、タイでナンバーワンのトラベルエージェンシーになることです」。 

※産学社刊「産業と会社研究シリーズ トラベル・航空2015年版」p70~P73より抜粋http://sangakusha.jp/ISBN978-4-7825-3376-5.html
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by sanyo-kansatu | 2013-12-30 09:23 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 12月 08日

ついにインドネシア客もやってきました(ツアーバス路駐台数調査 2013年12月)

12月に入り、ここ新宿5丁目に現れるアジアからのツアーバスの数が、また少しずつ増えてきました。

なぜ「アジアから」と言い換えているかというと、これまで圧倒的に団体客の主流だった中国客以外のアジア客を乗せたツアーバスが、最近見られるようになっているからです。

今年、訪日外客数はこのままいけば、初の1000万人を超えるといわれています。これまであまり目にすることのなかった訪日客のニューカマーたちが今後続々、姿を見せることになるのでしょう。面白い時代になってきたと思います。その一方で、中国本土客相手のときのようなずさんな受け入れ態勢が変わらないままでは、数だけ増えても彼らを満足させることができるのか、気になります。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒訪日客の動向)を記録しています。

1日(日)未確認
2日(月)未確認
3日(火)19:00 0台
4日(水)13:00 3台
5日(木)18:10 2台
6日(金)19:00 3台
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※この日のツアーバスはインドネシア客の団体でした。女性たちの多くがスカーフを巻いていたので、通りがかった添乗員らしき男性に話を聞くと、インドネシアから来たというのです。ツアー客のみなさんはとてもにこやかで楽しげなのですが、驚いたのは、彼らがなんと中国団体客専用食堂の「林園」で夕食を取っていたことです。ハラル問題で神経質になっているこのご時世なのに、大丈夫なんでしょうか? 日本の事情をよく知らない中国本土客相手に、コストを切り詰めた食事をツアー客に取らせるやり方は、今後東南アジアのツアーにも広まっていくのでしょうか。

7日(土)未確認
8日(日)未確認
9日(月)未確認
10日(火)12:50 2台
※この日、昼間伊勢丹新宿店に行ったのですが、その周辺でタイ語を話す旅行客の女性の一団に出会いました。東南アジア客が増えていることを実感します。

11日(水)18:00 3台
12日(木)17:40 2台
※新宿三丁目の「GU」には、いつもアジア客がたくさん来店しています。時間があったので、夕刻、ちょっと覗いてみると、いたいたタイ人のおばさん三人組です。ひとりのおばさんはルイヴィトンのバッグを持っています。そうかと思うと、中国系の顔の赤いおじさんが階段を上りながら、中国製のスマホに話しかけています。微信を使っているようです。「H&M」でも若いアジア系のカップルが何枚もシャツをまとめ買いしていました。新宿3丁目界隈は、いまやアジアFIT客のショッピングスポットとなっています。

13日(金)11:50 1台
14日(土)12:30 1台
15日(日)未確認
16日(月)未確認
17日(火)12:40 1台、18:40 4台
18日(水)12:40 1 台、17:40 0台(ただし「林園」のネオンが点いていたので、あとでツアー客は現れることでしょう)
19日(木)18:10 2台
20日(金)11:50 1台
21日(土)13:10 1台
22日(日)未確認
23日(月)未確認
24日(火)17:50 2台
※今日はクリスマスイブで、新宿三丁目界隈は人出でにぎわい、タイ語などもよく聞こえてきます。こうした中相変わらず中国客の皆さんは 「林園」に吸い込まれて行きます。せっかくイブなんだからもっと他の楽しみようもあるんじゃないかと思わないではありませんが、余計なお世話でしょうかね。

25日(水)17:50 0台(ただし「林園」のネオンは点いています)
26日(木)12:50 0台、18:00 1台
※新宿5丁目の東京医大通りは、今日も大きなスーツケースを転がしながらホテルに向かう欧米系ツーリストが行き交う姿を見かけます。おそらく東京ビジネスホテルあたりに予約を入れているのでしょう。このクリスマスシーズン、東南アジア客も多かったですが、欧米客も多く見られた新宿3丁目界隈でした。

27日(金)18:20 1台
28日(土)~31日(火)未確認
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by sanyo-kansatu | 2013-12-08 11:17 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2013年 12月 05日

大きな伸びを見せたのは、台湾やタイといった親日国(トラベルマート2013報告 その3)

トラベルマート会期中の11月28日の夜、一般社団法人ASIO(アジアインバウンド観光振興会)の総会がありました。

一般社団法人ASIO(アジアインバウンド観光振興会)
http://www.shadanaiso.net/index.html

そこでは恒例のセミナーがあります。アジア各国・地域にそれぞれ強いランドオペレーター関係者による「アジアインバウンドの最新動向」の報告です。

※今年6月上旬のセミナーについては「今年の夏、日本はアジア客でにぎわいそうです(社団法人AISO第1回総会報告)」)を参照。
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まず理事長の日本ワールドエンタープライズ株式会社の王一仁社長による開会の挨拶から始まりました。

「AISO創立から今年で7年目。震災から2年たち、今年はアジアインバウンドの流れが大きく変わった年といえるでしょう。円安効果も大きいですが、東京オリンピック開催決定や富士山の世界文化遺産登録など、さまざまな追い風が吹いています。

AISOの加盟企業は現在約160社。半分はランドオペレーターで、残りはホテルやテーマパーク、レストラン、運輸業者などの方々です。お互い協力して日本のインバウンドを盛り上げていきましょう」。

次に株式会社ジェイテックの石井一夫常務理事による今年の総括です。

「今年のアジアインバウンドに弾みをつけたのは、7月のアセアン諸国に対するビザ緩和が大きかったといえます。このままいけば、今年は初の訪日外客1000万人を達成することでしょう。なかでも大きな伸びを見せたのは、台湾やタイといった親日国だったように思います。

それでも、訪日外客の6割を占めるのは、韓国、台湾、中国本土です。韓国はいったん回復してきたかに見えましたが、秋口から伸び悩んでいます。一方、中国市場は概ね回復基調にあると思います。

今後は、アジアの個人客向けの商品、特に来日してから各自が参加する「着地型」のツアー商品の開発などに力を入れていくべきでしょう。ここにいらっしゃる関係者の皆様には、ぜひ我々ランドオペレーターに新しいコンテンツをご提案いただきたいと思います。それを海外の旅行会社につなげていくのが我々の仕事ですから」。

株式会社トライアングルの河村弘之常務理事からは、以下の3つの話題提供がありました。
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①ツアーオペレーター品質認証制度について

同制度は、「事業者(ツアーオペレーター)の品質を保証することにより、訪日旅行の品質向上と、訪日旅行者が安全、安心で良質な旅行を楽しんで頂くことを目的として作られ国からも推奨された品質認証制度」です。

ツアーオペレーター品質認証制度 http://www.tour-quality.jp/

株式会社トライアングルは最近、同制度の認証登録をすませたばかりですが、河村理事によると、中小企業の多いインバウンド業者にはかなりハードルが高いのが実感だといいます。認証の条件として、①旅行業登録していること、はともかく、②訪日ツアーにインバウンド旅行保険をかけること、そして何より③プライバシーマークの取得済み(1年以内に取得予定であること)が経営にとって大きな負担となるからです。

※プライバシーマーク(Pマーク)は、個人情報保護に関して一定の要件を満たした事業者(基本的には法人単位。ただし、医療関連については病院ごとなど例外あり)に対し、一般財団法人日本情報経済社会推進協会 (JIPDEC) により使用を認められる登録商標。

プライバシーマーク制度
http://privacymark.jp/

現在、AISO加盟企業の中で、認証登録をすませているのは、農協観光とアサヒホリディサービスの3社だそうです。

②タイからの訪日客の動向

「今年のタイ市場は、北海道が人気。ビザ免除で市場は活気づいています。ただし、募集ツアーは今後価格競争が激しくなることが予想されます。ですから、弊社はタイではインセンティブツアーを専門に営業しています。企業の社員旅行としての訪日ツアーの取り込みです。現在、タイに進出している日系企業は約3000社。そのうち、従業員数100名以上の企業は約半数。みなさん、現地の日本企業に営業に行かれたことはありますか。旅行博に行くのもいいですが、タイの場合、インセンティブ市場が大きいことを知っていただきたいと思います」。

※JETROによると、タイに進出した日系企業数:1,458社(2013年4月現在のバンコク日本人商工会議所会員数)ですが、実際は約3000社といわれます。

③シンガポールからの訪日客の動向

「震災後に韓国に次いで訪日客の戻りが遅かったシンガポール市場ですが、今年は北海道行きが7割を占めるほどの人気でした。もっと行きたいが、エアが取れないという話です。シンガポールの旅行業者は、中国などとは違い、日本のランドオペレーターとの関係を大切にしてくれます。シンガポール市場に商材を売りたいなら、AISOのランドオペレーターにまず声をかけていただきたいと思います。それが早道です」。

アメガジャパン株式会社の清水和彦理事からは、中国本土市場の話がありました。

「今年の弊社の中国本土客の取扱は、1~3月が前年比マイナス60%、4~6月がマイナス30%、7~9月でほぼ前年度の水準に戻り、9月はおそらく新旅游法の駆け込み需要で過去最高になりました。10月以降は、去年が尖閣問題でボロボロでしたから、前年度比ではプラスになると思います。そういう意味では、団体ツアーはほぼ回復したと考えています。

中国の訪日市場の動向は地域によって一様ではありません。広東省はすでに回復し、北京でもだいぶ戻ってきたようですが、最大のマーケットである上海の遅れが目立ちます。

新旅游法の背景には、中国の原価割れしたツアー商品の横行があります。オプショナルツアーや土産物店への連れ込み、ホテルの変更はすべてNGとなりました。その結果、弊社が多く扱う広東省の旅行会社のツアー料金の推移を見ていると、韓国や台湾、タイなどが軒並み2~3倍にアップしている一方、日本ツアーの価格上昇はそれほどでもないため、日本の割安感が出てきたと感じます。来年の春節がどうなるか、大いに期待したいと思いますが、依然日中間の政治問題が解決していないのが気がかりです」。

株式会社アサヒホリディサービスの和田敏男理事からは、マレーシア市場の話がありました。

「マレーシアの旅行業界は、タイなどと違い、大手数社が独占しているという市場です。東南アジアの中では訪日旅行市場は後発ですが、LCCも今後ますます就航するという話ですから、期待の持てるマーケットだと思います。最近、小グループの団体が増えてきました。以前なら30~40名の団体が多かったのですが、6~8名くらいのプライベートなツアーが多いのです。求められているのは、すでに定番のツアーコースではなく、個性的な旅です。

イスラム国ですから、ハラルを気にする方が多いと思いますが、一部の方を除くと、そこまで厳格に考えることはまだないのではと感じています。最近、六本木にハラル専門レストランができたと聞きますし、また東京大学にはハラル専門の学生食堂があるそうです。ハラル認証を取得するための協会も国内にいくつかできていますので、そこで研修を受けられることをおすすめします」。

最後に再び王理事長による香港とフィリピンの話がありました。

「今年は香港や台湾からの訪日客が激増しました。香港客の大半はリピーターです。航空券さえ安いものが出れば、必ず日本を訪れます。日本人のアジア旅行と一緒です。11月から香港エクスプレスの羽田便がデイリーとなりました。片道1万円と安いので、これからのクリスマスシーズン、たくさんの香港客が東京を訪れることと思います。
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フィリピンからの訪日客も増えてきています。12月からフィリピン航空が大幅に増便します。どうしてこんなに増便するのかというと、最近のフィリピンの台風被災地に対する日本の支援も影響があると思います。フィリピンから日本の自衛隊の視察ツアーもあると聞いています。フィリピンの人口は9000万人です。これからがチャンスです」

※フィリピン航空(PR)は12月15日から、成田発着のマニラ線とセブ線を増便。マニラ線は現在1日1便だが、これを1日3便に変更。セブ線は週6便のPR433便/434便に月曜日を加えてデイリー運航にした上で、さらに1日1便を追加しています。

関係者のみなさんの報告を聞きながら、今年は「アジアインバウンドの流れが変わった」ことをあらためて実感しました。何より市場の分散化が進んでいることがいい流れだと思います。

その一方で、こうした手放しの喜びようで、はたして来年本当にアジアインバウンドは順調に進展するのだろうか。中国政府の不穏な動きが続くなか、ひとたび何か起こればすべて吹き飛んでしまうのではないか、というあやうさもはらんでいるように思えてなりません。

また、今年は台湾やタイほかの東南アジアの国々のように、日本の文化的影響力が強い国々からの訪日客増加に大いに救われたところがありましたが、そうでない国々に対してどう訪日旅行をPRするべきか、という課題が印象付けられた年でもあったと思います。たとえば、インドやロシアといった未知の大市場に対してどう取り組むか。来年に向けて新しいチャレンジが必要ではないかと思った次第です。
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トラベルマート会場から桜木町駅に向かうみなろみらいの夜景はとてもきれいでした。
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by sanyo-kansatu | 2013-12-05 10:58 | “参与観察”日誌 | Comments(0)