ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 07月 03日

タイ人ツアーの目玉は、温泉旅館でカニ食べ放題とショッピング!?

日本が大好きというタイ人の日本ツアーは、実際どんな内容なのでしょうか。タイの旅行雑誌に掲載されている現地の旅行会社のツアー募集の広告を見てみましょう。

とはいえ、ぼくはタイ語が読めるわけではないので、最近知り合った若い在日タイ人で都内の旅行会社に勤めるカウィワットさんに手助けしてもらいました。彼の業務は、実際にタイからの日本ツアー客を手配することです。

昨日、本ブログで紹介したタイの旅行雑誌「TRAVEL GUIDE Magazine」2012年8月号に掲載されている現地の旅行大手COMPAXWORLD社のツアー募集広告を見てみましょう。
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COMPAXWORLD社
http://www.CompaxWorld.com
http://www.facebook.com/compaxworldtour

昨年の秋冬向けの広告ですから、真っ赤な北海道の紅葉を背景にあしらったデザイン構成になっています。1ページ全面を使った広告の中に2つのプロモーション商品が掲載されています。それぞれ3つの目玉ポイントが書かれています。

①Tokyo Promotion! 4泊6日(タイ航空利用) 37900バーツ(約12万円)
■東京で満足4泊6日、ホテルは4つ星以上
■お楽しみフリーショッピング2日間(オプショナルツアーもあり)
■温泉旅館泊とカニ食べ放題

カウィワットさんが上記ツアーのポイントを簡単に説明してくれました。このツアーは、東京滞在が基本。タイから日本へはフライト時間が約6時間かかるため、飛行中夜をまたぐので4泊6日が基本だそうです。滞在中1日は都内の観光がありますが、2日間は自由行動なので、買い物がたっぷり楽しめる内容です。ただし、東京ディズニーランドに行きたい人は、オプショナルツアーとして追加料金で参加できます。また、残りの1日は、富士山観光のあと河口湖などの温泉旅館に泊まり、カニの食べ放題が付くというものです。

②Yokoso Hi-light 東京―京都4泊7日(タイ航空利用) 52900 バーツ(約17万円)
■東京観光とフリーショッピング1日間
■世界遺産の京都、金閣寺、清水寺観光
■温泉旅館泊とカニ食べ放題

こちらは、東京・大阪のゴールデンルートのツアーです。ポイントは①と同様に東京のフリーショッピングと温泉旅館泊のカニ食べ放題が付くことです。

カウィワットさんによると、「タイ人は富士山のふもとの温泉旅館に泊まって温泉にゆっくりつかり、カニの食べ放題を楽しむというのが、日本旅行の醍醐味。これだけは欠かせないと思っているんです。旅行会社のツアーパンフレットにも、よく富士山とカニの写真が合成されているイメージのものが多いんですよ」。
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日本人からすると、なぜ富士山でカニなのか?(しかもズワイガニ)という気はしますが、タイ人客はそれがないと納得しないというのですから、地元のホテルや旅館は特別に用意しているのだそうです(実は、同じことは中国人の日本ツアーでもあります)。面白いですね。

タイ人にとって、手足が長くて茹でると真っ赤なズワイガニが珍しいのでしょう。「TRAVEL GUIDE Magazine」にも、札幌かに本家の広告が載っていました。
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もうひとつの目玉は、東京でのフリーショッピングです。確かに、最近新宿3丁目界隈でタイ人が買い物する姿を多く見かけるようになっています。カウィワットさんはこんなことを言います。

「タイ人は暑い国に住んでいるので、観光で長い時間歩くのはあまり好きではありません。でも、都内のホテルにチェックインしたあと、ぶらぶら夜歩きするのは大好きです。ですから、ホテルはたいてい都心の新宿か池袋です」。

中国人のツアーのように、宿泊地は「東京」とパンフレットに記載されていても、実際は木更津のホテルだった、というようなことはないそうです。タイ人客は一見おとなしそうですが、ツアーの中身に厳しく、安ければ安いほどいいという考え方はしないといいます。

タイのランドオペレーターの関係者によると、タイ人にとって日本旅行の2大関心事は、食事と買い物に尽きるそうです。その2大関心事をいかに彼らの好むように実現させてあげられるかがポイントだといいます。

食事に関しては、焼肉にしゃぶしゃぶ、寿司、天ぷら、ラーメンという和食の基本アイテムが断然喜ばれるそうです。なんてありがたい人たちでしょう。

買い物に関しては、タイ人の対日理解は、日々のテレビ番組などを通じてきわめて高いものがあるので、自由な時間をたっぷり用意してあげればいいというわけです。

食事と買い物以外のことは、難しく考える必要はないといえるかもしれません。なぜなら、日本にはタイ人を喜ばせる自然の魅力があるからです。

タイと日本の風土や気候の違いが、来日する彼らを魅了するといいます。四季がはっきりしていることが、彼らをリピーターにするのを強く後押しするというのです。たとえば、3~4月は桜、6~7月はラベンダー、秋は紅葉、冬は雪景色と、1年を通じてタイ人が来日したいと思うのは、四季による変化があるからです。実際、タイの旅行雑誌の日本特集には、あでやかな色味があふれています。我々は熱帯の国タイのほうがずっとカラフルだと思いがちですが、彼らにすれば日本もまた美しい色彩にあふれる国なのです。

常夏の国から訪ねてくれるタイ人に対して、四季という1年を通して訴求できる日本の強みを生かさない手はないといえるでしょう。タイ人の日本ツアーの価格帯については、のちほど報告します。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-03 14:47 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 07月 02日

タイの旅行雑誌には日本がこんな風に紹介されています

うれしいことに、タイ人の海外旅行先の人気ナンバーワンは日本だそうです。

タイでは日本のテレビ番組が大量に放映されています。日本のテレビ局から版権を買って深夜枠でグルメ番組や旅行番組を毎日のように流しているそうです。これはテレビ番組を政府が検閲・管理する中国とはまったく事情が違います。こうしてタイ人にとって日本はとても身近な国となっているようです。

では、日本の観光地についてはどのように紹介されているのでしょうか。タイで発行されている旅行雑誌を見てみましょう。

今回、情報提供してくれたのは、タイを中心とした海外向けマーケティング専門広告会社の株式会社Relation(http://www.facebook.com/ThaiInbound)です。

まずタイの主要旅行誌のひとつ、「TRAVEL GUIDE Magazine」です。
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●TRAVEL GUIDE Magazine
タイのトラベルライターによる各国の観光地の特集記事を組んで、毎回豊富な写真で紹介しています。2012年度には北海道(2月号)と長野、新潟(8月号)と年に2回日本を特集しています。
創刊年 2004年 発行部数7.5万部 月刊誌 90バーツ
http://www.travelguidemagazine.biz
http://www.facebook.com/travelguidemagazine

たとえば、2012年8月号の「長野、新潟」特集は、秋冬向けの日本旅行のテーマとして選ばれたと思われます。実はタイ人の日本ツアーの中に、北陸や信州を周遊するコースもあるからです。

特集グラビアの冒頭を飾る写真は、秋の高原です。タイには北部に一部山がありますが、基本的に熱帯の国ですから、日本の高原の風景はとても珍しく映るのです。
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雪景色もタイ人が好む世界です。
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タイの観光地にもたくさん生息していますが、お猿さんが露天風呂に入るなんて、もうたまらない光景でしょう。こういうのがタイ人は大好きです。
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スキー人口はほとんどいないと思われますが、それだけに憧れもあるでしょう。
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次は、同じくタイの雑誌社Check Tourが発行する「Check Tour magazine」です。
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●Check Tour magazine
テーマ性の強い充実した特集記事が売りの月刊誌です。2012年度は、札幌(1月号)、東京ディズニーランド(11月号)など、4回の日本特集を組んでいて、日本への関心の高さを感じます。
創刊年 2010年 発行部数 3万部 月刊誌 85バーツ
http://www.checktour.com/

たとえば、2013年6月号では、高山を特集しています。30pを使ったボリュームたっぷりの企画です。
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秋冬シーズン向けなのに、なぜか桜のグラビアも。これはご愛嬌ということで……?
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飛騨高山テディベアエコビレッジ(http://www.teddyeco.jp/)の4pの特集記事もあります。
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世界遺産の白川郷も、タイ人の日本ツアーの定番です。
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桜餅、串団子、羊羹、たいやき、ういろうなど、日本の和菓子の特集もありました。
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最新号と連動したフリーペーパーも発行しています。同誌に広告出稿した多数の旅行会社のツアー募集広告が載っています。
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在タイ日本人が発行する「The Cue Japan」です。日本のライフスタイルと旅を紹介するフリーペーパーだそうです。
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●The Cue Japan
タイの高級ホテルやレストラン、スパ、コンドミニアム、病院など、現地富裕層が手に取ることのできる場所に配布。タイの媒体に先駆けた新しい日本の観光地の魅力や伝統文化、宿泊施設の滞在シーンなどを豊富な写真で紹介しています。
創刊年 2011年10月 発行部数 2万部 季刊誌 無料
https://www.facebook.com/pages/The-Cue-Japan/232035476859567

広告ベースの媒体だけに、前述の書店売りの2誌に比べて特集としてのまとまりが弱く、1冊の中にさまざまな情報が盛り込まれすぎている印象ですが、第4号に出てくる雪のかまくらの写真などは、タイ人好みといえそうです。
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最後は、バンコク週報というタイの日本語新聞を発行する出版社が制作している現地のグルメ情報誌「Gozzo(ごっつぉ)」です。
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●Gozzo
日本食と旅行の雑誌と銘打たれています。バンコクにある日本食レストランのタイ人向け情報誌ですが、日本の食文化を詳しく紹介しています。
http://www.facebook.com/GozzoThailand

たとえば、2013年7月号では、焼肉特集が組まれています。焼肉の種類や細かい牛肉の部位の解説もしています。もともと宗教的な理由でタイ人の中には牛肉を食べない人も多いと聞きますが、最近は「和牛」ブームだそうです。こうしたきめの細かい現地での情報提供がタイ人にとって日本食を身近な存在にしているのでしょう。
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この焼肉特集の最後に、日本在住タイ人のPanochanさんという女性のコラムが掲載されていました。西新宿にあるタイ人観光客に人気の焼肉屋「六歌仙」の訪問記事です。
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Panochanさんのブログとフェイスブック
http://toytokyo.bloggang.com
http://www.facebook.com/toylovejapan
※Panochanさんがどんな方であるかについては、現在調査中です。フェイスブックによると、川口在住だそうです。

以上、いろんなことを雑多に書きましたが、タイでは日本の情報が偏りなく、比較的まっすぐに紹介されていることがわかります。タイ人観光客が素直に日本旅行を楽しんでくれる背景には、こうした現地での自由な情報流通があると思われます。

株式会社Relationは、タイ人をはじめ現地通のスタッフを抱え、上記の現地媒体と提携し、特集企画や広告制作を担当しています。タイ向けの訪日プロモーションに関心のある方は、問い合わせてみてはいかがでしょうか。

株式会社Relation
http://www.relation-inc.jp
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by sanyo-kansatu | 2013-07-02 12:06 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 07月 01日

タイのビザ免除で、むしろタイ政府側に不法就労再発の懸念があるらしい

本日7月1日より、タイとマレーシアの訪日観光ビザが免除されることになりました。

タイ国民に対するビザ免除(外務省)2013年6月25日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_000361.html

ところが、タイではこれを歓迎するどころか、おかしな反応があります。

日本の観光ビザ免除、タイ外相が不法就労者増に懸念
http://www.bangkokshuho.com/article_detail.php?id=2207

以前、ニュージーランドがタイ人の観光ビザ免除を実施したところ、観光で入国した後、失踪者が続出したため、免除が取り消された前例があったからです。タイの外相は同じことが起こらないようにと国民に訴えたというのです。

通常、ビザ免除協定は両国の交渉の中で進められるものではないかと思うのですが、タイ側からこうした反応が出るのはどうしたことか。

もしかしてタイのビザ免除は少々勇み足ではなかったか? そんな疑問も出てきます。

一般のタイ人も、1980年代以降の不法就労問題で、日本はビザの厳しい国だという認識が定着していただけに、逆に驚いている様子です。もちろん、これでタイの観光客は増えるでしょうが、それだけの話に終わるかどうか、少し気がかりといえなくもありません。

先日、旅行作家の下川裕治さんに会いました(→「タイ人はイチゴが大好き!? 旅行作家・下川裕治さんが語る『タイ人客はドーンと受け入れてあげるといい』」)。下川さんは1990年代当時、不法就労のタイ人を支援する活動を個人的に続けていました。そこで、今回のビザ免除について尋ねたところ、もちろん基本的には歓迎すべきこととしながらも、「今回のことで、タイ人がたくさん来日すると、また警察から電話がかかってきたり、いろいろ大変になるんじゃないか」と苦笑交じりで話していました。仮に大変になったとしても、これまでどおり受けとめていこうという、いかにも下川さんらしいコメントでした。

そのトークイベントには下川さんの古いタイの友人の女性もいました。興味深いことに、タイ人である彼女も不法就労問題の再発を懸念していました。彼女は1990年代当時のことをよく知っている在留タイ人のひとりです。イベントには、タイの事情に詳しい関係者も多くいて、タイ側ではすでに若い女性を日本に送ろうとするブローカーがいるらしいことも話していました。

一方で、日本の宿泊施設はデフレが進みすぎて、タイ人の感覚でも安いと感じるはずだという声もありました。たとえば、タイの王室保養地であるファヒンのビーチリゾートに一泊すると食事なしで4000B(約1万2000円)はするのに、熱海は2食付の温泉旅館一泊8000円がざら。これならタイ人は日本に行くほうが安いと思うだろうと。

またノービザとなることで、草の根レベルの商務渡航が増えるだろうという指摘もありました。航空券を買うだけで、2週間日本に自由に滞在できるというのは、これまで考えられなかったことなので、タイのビジネスマンが喜んで来日するだろうというのです。

ところで、これは個人的な見解にすぎませんが、今回のタイ人のビザ免除の背景には、尖閣問題以降の中国人観光客の減少をカバーしようとしたことが表向きの理由でしょうが、安部政権の東南アジアシフト政策の一環として後押しされたことも確かでしょう。

ただし、それは中国軽視という外交姿勢上のメッセージを中国側に与えただろうことが想像されます。

なぜなら、いまの中国人ほど、ビザ問題に敏感な国民はいないからです。端的にいうと、彼らは世界から差別されているという認識を強く持っています。中国が不法移民大国であることは間違いないので、そのジレンマを抱える彼らを尻目に、タイやマレーシアが先にビザ免除されたことは、中国側からすると、あてつけ的な施策に映るのではないかと思われます。

中国人のビザをめぐる不満に関しては、以下参照。
http://inbound.exblog.jp/20514969/

ビザという外国人流入の調整弁をどうコントロールするかについては、立場によって見解が異なるのは言うまでもありません。

いずれにせよ、ビザ免除によってタイからの渡航者は増えることでしょう。すべてがきれいごとで進むはずもないのですから、今後の行方を見守っていくほかありません。タイ人客の増加で、ニッポンのインバウンドに新しい風が吹くことを期待したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-01 15:07 | “参与観察”日誌 | Comments(4)
2013年 07月 01日

タイ人はイチゴが大好き!? 旅行作家・下川裕治さんが語る「タイ人客はドーンと受け入れてあげるといい」

6月27日、「タイ人訪日観光の入門〜タイ人気質を知ろう 下川裕治のインバウンド・トーク」というイベントに出席しました。

下川裕治さんはご家族でバンコクに暮らしていたこともあるタイ通の旅行作家です。ぼくは以前、下川さんと一緒にある雑誌の編集をしていたことがあります。お会いするのは久しぶりのことでしたが、今回ぜひ下川さんの話を聞きたいと思ったのはわけがあります。

6月25日、外務省が正式にタイ人の訪日観光ビザの免除を発表したからです。

これは感慨深い出来事といえます。いまから15年くらい前、新大久保にあった「屋台村」(現在は「姉妹や」という韓国料理店)というエスニック系の屋台が集まる食堂で、ぼくはよく下川さんとお酒を飲んだものですが、当時タイ人の不法就労問題が起きていたからです。下川さんは個人的にタイ人の支援をしていました。

そのころ、タイ人のビザが免除されるなんて思いもよりませんでした。それがいまや就労目的ではなく、海外旅行客として来日するということは、タイ人が豊かになったことの証です。下川さんはこうした時代の変化を含め、どう考えておられるのか、知りたいと思ったのです。

まず下川さんは、こんな話から始めました。

「日本人は外国客を迎えるにあたって、カタチを気にしすぎるところがあります。あれこれ考えてサービスしすぎではないか。特にタイ人の場合は、そんなに細かいことを気にする必要はないと思います」

そして、話は今回の主題であるタイ人の食の好みに移りました。以下、下川さんの話を大まかに採録します。

「タイ人の食はとても保守的です。珍しいものを食べたいという欲求より、普段食べているもので、もっとおいしいものが食べたいと考えています。

だから、日本食が人気なのです。バンコクには日本食屋さんがあふれています。吉野家はもちろん、大戸屋、やよい軒、牛角、ココイチ、王将、丸亀製麺、フィンガーハット……その多くは日本でもおなじみの外食チェーン系。もうなんでもあるといってもいい。

だから、タイ人に『日本で何食べたい?』と聞くと、『ラーメン』と答えたりします。その意味は、タイで食べたことのあるラーメンを日本に行って食べてみたい。そのほうがずっとおいしいに決まっているから。そう考えているのです。

帰国してから、話のネタをつくりたいという気持ちもあるでしょう。『日本に行って、吉野家で食べたらね……』という話を友だちにしたいんです。

東京ではあまりなじみがないですが、『8番ラーメン』という福井県に本店のあるラーメンチェーンがタイには100店舗もあります。アユタヤに工場があって、一昨年の水害のとき4ヵ月間営業を停止せざるをえなかったのですが、再オープンしたら、ものすごい行列ができました。それほどの大人気店なんです。

その店の人気の理由は、ラーメンだけじゃなく、おかずの種類が多いこと。タイ人は何かの専門店というより、いろんな料理が食べられる店が好きです。ですから、タイ人を食事に案内するときは、そこを気をつけるといいかと思います。それから、彼らはお酒を日本人ほど飲まないことも知っておいたほうがいいかもしれません。

それからタイ人の食といえば、圧倒的に果物ですね。イチゴ好きは有名ですが、桃やリンゴも好きです。タイにはあんなに一粒が大きくて甘いイチゴはないから。たくさん買いすぎて空港で没収されたタイ人客がいたという話もあります。

タイ人は日本のイチゴが大好き(タイで発行される雑誌より) ↓
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今回ビザが免除になって、これから新しく日本に来るタイ人はバンコク在住の人たちばかりとは限らなくなると思います。たとえば、田舎のお医者さんの家族とか。なにしろ5万バーツ(約16万円)近いツアー代金を払える人たちですから。

でも、だからといってタイ人の性格は?……といったことを気にするより、ドーンと受け入れてあげるといいとぼくは思います。考えすぎるとかえって空回りすると思いますよ。

そんなことより、タイ人を迎えるうえで、ぜひ知っておくといいのは、彼らのスピリチュアルなものを感じる力についてです。

以前ぼくがタイ人の不法就労者を支援していたとき、彼らが元気をなくすと、一緒にお寺に行ったものです。それが彼らにとっていちばん元気の素になるからです。タイ人に聞くと、お寺の空間に行くと落ち着くのだそうです。彼らはそういうスピリチュアルなものを感じ、大切にする人たちなのです。これは東南アジアの仏教圏の国々の人たちに共通するところがあるように思います。

タイ人は日本の老人に会うと元気になるといいます。だから、たとえば電車で老人を見ると、すぐ席を代わってあげないと気がすまなくなるのだそうです。それはきわめて自然な感覚だと思います。たぶんそれは儒教的な感覚とはまた別物でしょう」

タイ人と長くつきあってきた下川さんならではの示唆がいくつもあったと思います。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-01 14:05 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 06月 27日

タイ人観光客に西新宿の焼き肉店「六歌仙」が人気の理由

6月下旬、外務省はタイとマレーシアの訪日観光ビザを7月1日から免除することを発表しました。

タイ国民に対するビザ免除(外務省)2013年6月25日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_000361.html

今年に入って、確かにタイからの観光客は増えています。では、いったいタイの観光客はどんな日本旅行を楽しんでいるのでしょうか。

ここ数日、ぼくはタイ客を扱うランドオペレータ―を中心に取材していたのですが、ちょっと面白い話を聞きました。

西新宿にある焼き肉店「六歌仙」が、タイ人観光客に大人気だというのです(あとで聞いたら、すでにテレビで紹介されたこともあるそうです)。

六歌仙
http://www.rokkasen.co.jp/

今週月曜日、「六歌仙」の磯見幸成社長にお話をうかがう機会がありました。以下、その採録です。

―タイのお客さんが来店するようになったのはいつごろからですか?

「10年くらい前からでしょうか。実は最初、タイ人とは気づいていませんでした。東南アジアからのお客さまがいらっしゃるな、というだけで。お客さまはたいていガイドが連れてくるんです。そのうち、だんだん団体で予約が入るようになって。それがタイから来たツアーのお客さまだとわかったのは、5年くらい前からでしょうか」

―なぜタイのガイドさんは貴店にお客さまを連れてきたのでしょうか?

「ガイドさんの多くは日本に住むタイ人ですが、自分が来店しておいしいと思ったからでしょう。一般にタイはインセンティブのお客さまが多いので、たいてい少人数で来店されます。タイに進出した日本企業の関係者が多いのですが、なかにはタイの政財界のVIPの方もいらっしゃいます。彼らの口に合うかどうかは、すべてタイのガイドの店選びのセンスにかかっているから彼らも真剣なんです。おかげさまで、当店はタイのお客さまに選んでいただけたということでしょう」

―タイ人客の人気メニューは何ですか?

「おひとり様6500円の食べ放題コースです」

―昨今の焼き肉食べ放題の激安ブームのなかで、かなりお高いですね。

「タイのお客さまはおいしいものにはお金を惜しまないそうです」

―タイ人向けの特別なサービスはあるのですか?

「特にはないのですが、料理を出すとき、ちょっとダイナミックな感じに演出してお出しすることでしょうか。ちまちましたやり方ではなく、食べ放題ですから、その場を盛り上げる工夫をすることで、お客さまに喜んでもらえる。実は、ガイドがそうしてくれと言うんです。ガイドにとっても、自分が店に指示を出してサービスさせているという特別感をお客さまに見せることで面子が立つようです。こちらもそれがわかるので、それに合わせています。やはりガイドとの信頼関係がいちばん大切ですから」

―タイ客の来店はどの時期が多いのですか?

「一般にタイの旅行シーズンは4月と10月だそうですが、最近は1年中いらっしゃいます。タイには3回お正月があるというそうです。元日と中華系の旧正月(1月下旬~2月)、そしてソンクラーン(4月)というタイの旧正月です。今年は前倒しで3月に大勢いらっしゃいました。一度に100名もの団体が予約されたこともありました」

―タイ人に貴店が人気の理由は何だとお考えですか?

「タイ人は日本食が好きなんです。タイにはたくさんの日本食店がありますが、本場で食べたいと思う気持ちが強いそうです。食べ放題は金額を気にしないで食べられるので安心。味は保証つきですから、ガイドによる口コミで広がっていったようです」

―お店の入り口にタイのインラック首相が来店されたときの写真が飾られていますね。

「それは昨年4月21日の日本メコン会議で来日されたときのものです。実は、首相はこれまで何回もお忍びで当店にいらっしゃっていたそうです。最初のころは、私もそれに気づいていませんでした。そのうち、タイの大使館から直接予約が入るようになって、あるとき、それがインラック首相だと知ったという次第です。お兄様のタクシン元首相も来店されたことがあります」
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―すごいですね。首相のお墨付きとあれば、タイの皆さんも喜んで来店されることでしょう。

「実は、今年5月に来日されたときにもいらっしゃっています。そのとき、私は首相にお手紙を渡しました。3.11のとき、タイは発電機を日本に支援してくれているんです。それを感謝するという内容を、知り合いのタイ人にタイ語で書いてもらってお渡ししたんです。すると、首相は同じ年の11月タイで洪水が起きたとき、日本からたくさんの支援をしていただき、こちらも感謝しているんですよ、とお話になりました。

最近はタイのテレビ番組でも当店はよく紹介されるようになりました。先日もタイのお笑い芸人さんが来て、日本の着物を着崩したりして笑いをとっていました。日本のバラエティ番組はタイではよく再放送されるそうです。昔テレビ東京の番組で当店を紹介してもらったことがあるのですが、それを観たというお客さまもいました。いまでは東京に来たら、六歌仙に行きたい、と多くのタイの方が言ってくださるそうです」

バンコクで発行されているフリーペーパーに掲載されたタイ人女性の「六歌仙」訪問記 ↓
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―ところで、磯見社長は店の宣伝のために、タイに行かれたことはあるのですか?

「実は一度も行ったことないんです。ですから、これまで話したことはすべてタイのガイドから聞いた情報です。

タイのお客さまはとても礼儀正しくて、親日的です。日本という国をまっすぐに見てくれる。きっと憧れを持ってくれているのでしょう。

最近では、タイの旅行会社の人も、ホテルの予約の前に、まず六歌仙に予約を入れる、なんて話も聞きます。タイのツアーは最後に東京に寄るコースが多いそうで、日本の最後の食事は当店で、とおっしゃってくださいます。確かに、他の飲食店に比べ当店は高めですが、最後の食事ということで、楽しみにしてらっしゃるそうです」

一般に中国からのツアー客は焼き肉も1500円程度の食べ放題店しかまず行かないと聞きます。ツアー代が安いため、一回の食事代からそれ以上の金額を捻出できないからでしょう。一方、タイからの日本ツアーは同じ滞在日数でも、中国人ツアーより料金は2倍くらい高いようです。逆にタイ人は少々高くてもおいしい店に行かなければ、クレームになるそうです。

磯見社長は言います。
「当店は創業28年ですが、安売りはしないことをモットーにしてきました。肉にはコストを惜しみません。私が社長に就任したのは4年前ですが、広告費はHPをつくったくらいで、いっさいかけていません。原価(の高さ)は保険代という考え方です」

外食産業のデフレ化が進むなか、同店で起きた「気づいてみたらタイ人客で満員御礼」という現象は、とても興味深い話といえます。店の格式とか伝統、内装デザインにはこだわらず、親しみやすさと何より味覚の好みを重視するタイ人客の存在は、中国本土客とは明らかに異なる客層といえそうです。国・地域によって求めるものがまったく違う。これこそ、インバウンドの面白さだと思います。

もっとも、社長によると、最近では香港客も増えているそうです。外国人同士の口コミなどを通じて店の価値が伝われば、タイ人以外のアジア系の人たちも来店する可能性はありそうです。
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by sanyo-kansatu | 2013-06-27 11:57 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2013年 06月 10日

今年の夏、日本はアジア客でにぎわいそうです(「社団法人AISO第1回総会」報告)

6月6日、JA大手町カンファレンスで一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の第1回総会が開催されました。AISOは、訪日外客の4分の3を占めるアジアからの観光客の手配を担当するツアーオペレーター(ランドオペレーター)を中心に、ホテルやアミューズメント施設などの各種サプライヤー、自治体などを会員として構成される組織です。
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一般社団法人アジアインバウンド観光振興会 http://shadanaiso.net/

総会終了後 「アジアインバウンドの最新動向」というテーマで各エリアのツアオペ担当者による報告がありました。今年の夏は訪日アジア客で活況を呈することになりそうです。

■「中国プライス」広まりへの危惧

まず、常務理事の株式会社トライアングルの河村弘之社長による全体挨拶からです。

河村氏は、日本旅行業協会(JATA)が今年3月に発表した「ツアーオペレーター品質認証制度」について話を始めました。

ツアーオペレーター品質認証制度 http://www.tour-quality.jp/

この制度が発足した背景には以下の状況認識があります。

「昨今ツアーオペレーター業者間で価格競争が激化し、その結果価格重視で低品質のツアーが数多く見受けられるようになり、また消費者保護、コンプライアンスなどを軽視する業者も散見されます。同制度の導入により、訪日旅行者が安全、安心で良質な旅行を楽しんでいただき、認証された事業者は顧客からの支持・信頼を得やすくなる効果を期待しています」(JATAニュースリリース2013年2月27日より)

6月3日、JATAは同制度の第1期認証23社を発表しています。今後年に2回認証申請を受け付けるとのことです。

第1期認証23社 http://www.tour-quality.jp/list/index.html

業界大手が並ぶ第1期の23社についてはともかく、河村氏はようやく業界としてツアオペの認証制度が開始されたことは評価すべきだといいます。中小企業の集まりであるAISOとしては、今後認証を得やすくなることを期待し、団結してセールスしようと呼びかけました。なぜなら、インバウンドにおいて本当のライバルは他国の業者だから、です。

最近「中国プライス」と呼ばれる訪日旅行の低価格化を、中国の旅行業者が東南アジア市場に持ち込もうとしていることに、河村氏は大いに危惧しているという話が気になりました。この点については、あらためて確認したいと思います。

■中国マーケットの二極化への対応

次は、中国本土市場でビジネスを展開している株式会社ジェイテックの石井一夫常務理事の報告です。

JNTOの統計によると、2013年4月の訪日外客数で唯一中国だけが前年度比33%減となっています。しかし、6月に入り、地域的にバラつきはあるとはいえ、中国客は戻りつつあるといいます。政治の中心、北京はまだ芳しくないものの、上海や広東では夏のツアー募集状況はいいようで、今年の夏は期待していいそうです。

ただし、中国のマーケットはすでに二極化していることを認識すべきだと石井理事は指摘します。確かに中国市場はパイが大きいけれど、どういう層のお客さまを取り込むかについては、よく考える必要があるというのです。やみくもに数だけ追っても、低価格化の圧力にさらされるだけだからです。その意味で、我々は試されている、といいます。

■年間訪日客250万人のお隣の国、韓国

韓国市場についての報告は(株)四季の旅の鄭眞旭社長です。日本の旅行大手のインバウンド事業会社で経験をつみ、2010年11月北海道で創業した同社は、いきなり東日本大震災に見舞われ、苦労したそうです。しかも、震災の影響が過ぎ去ったかと思うと、今度は日韓関係の悪化で韓国客はさらに激減しました。

それでも、韓国は年間訪日客250万人のお隣の国です。鄭社長はそう会員に呼びかけます。

今年に入って、円安の影響もあり、徐々に韓国客が戻ってきたそうです。JNTOの統計でも、4月は前年度比33.7%増となっています。

■訪日客は急増しているが、新興市場のタイには問題も

タイ市場の報告は、株式会社アサヒホリディサービスの和田敏男国際旅行部長です。

和田氏によると、今年の東南アジア市場における同社の取り扱いは、シンガポールが低迷、タイ、インドネシアは80%増と明暗がはっきり分かれるそうです。タイ市場急増の背景としては、中間層が増えてきたこと。タイ航空が訪日旅行に前向きで、驚くようなキャンペーン料金を打ち出したことも大きいそうです。もちろん、円安効果が絶大といえます。

タイ、マレーシアなど一部の東南アジア諸国に対する昨年6月の数次ビザ発給に続き、今年夏さらなるビザ発給要件の緩和が見込まれ、東南アジアの訪日客は激増することは必至。この夏、都内のホテルは“ひっちゃかめっちゃか”になりそうとも。

というのも、タイの観光行政はルールがあいまいで、ルート変更やキャンセルも多く、現地の旅行業界のスタッフもアウトバウンド客の取り扱いに慣れていないため、現場が混乱するケースが多いからだといいます。来日途中でのルートやホテル、食事の変更などが多発しているそうです。

それでも、タイには日本企業の工場も多く、社員の研修旅行などインセンティブツアーの需要も大きいこと。若い世代がアニメフェアやゲームショーといった文化的なイベントに合わせたツアー企画に対して食いつきがよく、企画次第で今後さまざまな可能性のある市場であることは確かだといいます。

■マレーシアでもインセンティブが動き出した

マレーシアとインドネシア市場については、AISCのミッキー・ガン氏が報告します。

4月の統計では、マレーシアは前年度比20.1%増、インドネシアは前年度比61.3%増。

「やっとこういう時代になってきた」と喜びの声を上げるミッキー・ガン氏ですが、その理由は「国によってインバウンドの中身は違うということに、ようやく多くの人が気づいてくれるようになったこと」だといいます。

マレーシアでもインセンティブツアーが動き出しているそうです。背景には自治体の誘致活動の成果があるといいます。

■香港市場は新しい企画さえあれば売れる!

最後に、AISO理事長の王一仁日本ワールドエンタ-プライズ株式会社社長が、香港市場を中心に報告しました。
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王氏はまずJNTOの4月の統計を読み上げます。「香港前年度比24.3%アップ、台湾前年度比42.5%アップ、フィリピン前年度比16.6%アップ、韓国前年度比33.7%アップ……」

JNTO2013年4月訪日外客数 http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/130522_monthly.pdf

そして、「今年に入り、アジアインバウンドは絶好調です」。

なかでも香港市場は75%が個人旅行(FIT)。2年前、香港にセールスに言っても「日本は本当に安全なのか?」。そればかり聞かれましたが、今年は「新しい企画を持ってきてくれ。企画さえ新しければ売れる」と言われるそうです。なぜって、中国は空気が悪いし、鶏インフルがこわい。韓国は北朝鮮問題がある。香港人は日本に行きたいのです、とのこと。

最近、同社にはフィリピンからの問い合わせも増えているそうです。東京を中心にした魅力的なオプショナルコースの開発が求められているといいます。

問題は、土曜日のホテルの確保だそうです。週末は都内のホテルの日本人利用率が高いため、なるべく土曜日は東京を外した日程を組まなければならなくなるからです。

最後に、王理事長は今回の報告をこう総括しました。「アジア客に対しても中身で売る時代がついにやってきました。東京を中心にこれまでアジア客が利用してこなかったようなホテルやテーマパーク、アトラクションなどを組み合わせた多彩な周遊コースを提案していただきたい。我々がそれをアジアマーケットにセールスします」。
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※今年の夏、アジアインバウンドは盛り上がりそうです。中国市場も回復するとすれば、なおさらです。ただし、それぞれのエリアの報告者たちが語る国・地域による市場の成熟度の違い、また同じ国・地域においての市場の二極化の諸相をきちんと見極め、自分はどの層を取り込みたいのか、どこにアプローチしていくべきか、その判断が問われる時代になりそうです。
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by sanyo-kansatu | 2013-06-10 15:02 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 04月 01日

タイ人客がやってきた!(ツアーバス路駐台数調査 2013年4月)

今年の桜は開花が早すぎたせいで、4月に入って花見を目的とした海外からのツアー客を失望させることになったのではないかとちょっと気がかりです。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた明治通り新宿5丁目付近における中国インバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。

1日(月)17:50 2台
2日(火)18:00 3台(うち1台小型バス)
      18:50 4台(1時間のうちに、バスが入れ替わりました)
3日(水) 未確認
4日(木)18:20 8台
※来ました来ました。あふれんばかりのインバウンドバスが新宿5丁目に集結しています。面白いのは、そのうち3台がタイ人観光客のバスだったことです。停車中のバスの運転手さんに話を聞いたところ、「最近は中国人ではなく、タイ人のお客さんがいちばん多いよ」とのこと。新しいお客さんの登場で、これから新宿5丁目も面白くなりそうです。

以下の写真は、新宿5丁目インバウンドスポットで列をなして路駐するバス。タイ人観光客の乗ったバスであることは車窓のプレートを見るとわかります。いちばん下の写真は、その日たまたま立ち寄った池袋の西武百貨店の前で、タイ人観光客のみなさんが食事を終えて、バスに乗り込むところです。今日はいろんな場所でタイ人のみなさんを見かけました。
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5日(金)12:50 2台
※この時間帯は、靖国通りの中華大飯店前にも2台のバスが停まっていました。うち1台は韓国のツアーでした。花園神社の入り口のファミマの中は韓国客でいっぱいです。
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     18:50 1台

6日(土)~14日(日)海外出張で未確認。

15日(月)12:20 2台(下の写真はお昼どき「林園」周辺でにぎわう中国客たち)
      18:20 2台
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16日(火)17:50 2台
17日(水)19:20 1台

【番外編】ようこそ!インドネシアのみなさん
この日の夜遅く、池袋の街を歩いていたら、ビジャーブ(イスラム女性が頭を覆うスカーフ)姿の女の子が立ち食いそば屋に入る姿を発見。「おやっ」。インバウンド“参与観察”者を自認しているぼくですから、そっとあとをついてお店に入りました。女の子3人組で、そばを注文しています。

「where are you from?」と聞くと、「Indonesia」。「Welcome」と笑顔で応じておきました。食事がすむと、店の外で彼女たちが立ち食いそば屋を記念撮影しているので、「this is traditonal Japanese fastfood」とつい解説してしまいました。ぼくってかなり怪しい存在だったでしょうね。でも、ひとりの子が「oishii」と、たぶんお愛想だと思いますけど、答えてくれました。

駅に向かって歩いていく彼女らを見ながら、きっとサンシャインプリンスあたりに泊まっているんだろうな。せっかく東京に来たんだから、もっと安くておいしいお店もいっぱいあるだろうに、インドネシア語の情報はまだないのだろうなあ、と思ったものです。
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18日(木)13:00 1台
      19:30 2台
19日(金)11:50 2台
この日の正午前、横断歩道を渡ろうとしたら、バスから降りてきた中国客の人たちに囲まれてしまいました。彼らは向かいの「林園」でお昼を取るためにここに来たのです。添乗員らしき中国の女性に「このツアーはどこから来たお客さんですか?」と聞くと、「上海ですよ」とのこと。もう一台のバスは「西安」からでした。

「林園」の近くで警備員のおじさんが中国客がぞろぞろ歩いているのを面白そうに眺めているので、「あの人たち何ですか?」とあえて聞いてみたら、「中国の観光客ですよ。ぼくは毎日ここに立っているからわかるけど、あの中華料理屋にみんな入りますよ」「そうなんですか」「でもそういや、昨日は隣の焼肉屋にも入ったかな」とのこと。

「林園」の隣には確かにランチ1000円で食べ放題の焼肉屋「味仙荘」(新宿5丁目15-2 Tel.03-3350-5204)があります。ここの店長は韓国人のヤンさんで、中国人スタッフも揃っています。
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     19:40 2台(うち1台は上海錦江旅行社のツアーバスでした)
20日(土)未確認
21日(日)未確認
22日(月)18:00 1台
23日(火)19:50 2台
24日(水)18:50 2台(うち1台は上海錦江旅行社のツアーバス)
25日(木)18:20 1台(タイのツアーバス)
26日(金)17:20  1台
27日(土)未確認
28日(日)未確認
29日(月)未確認
30日(火)12:20 3台
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by sanyo-kansatu | 2013-04-01 09:13 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2013年 03月 26日

ミャンマー人が日本旅行で行きたい場所は?

昨日、あるミャンマー人の知り合いから、ぼくの携帯に電話がかかってきました。

10年ほど前、ぼくはミャンマーを訪ねたことがあるのですが、そのとき現地でお世話になった旅行会社のミョ・ナインさんという人からでした。

彼は子供の頃、家族で東京に住んでいたことがあります。母国で政変があり、帰国後、ミャンマーの大学を出て、家族で旅行会社を経営しながら、日本との貿易の仕事をしている人です。

その彼から、10年ぶりに突然電話があったのでびっくりしたのですが、ミャンマーでは大変お世話になったし、何よりミャンマー旅行のことを懐かしく思い出したので、すぐに会おうということになりました。翌日からぼくは地方出張の予定があり、その日しか時間がとれなかったからです。

彼の話によると、この1年でミャンマーは政治的にも、社会的にも、大きく変わりつつあるようです。彼は3つの名刺を持っていて、うち2つは旅行会社と貿易会社のものですが、もうひとつはミャンマーに進出する日本企業に対するコンサルタントという肩書きでした。今、ヤンゴンではホテル投資が盛んに行われているそうで、日本企業にとってもホテルは有望なおすすめ投資先だというのです。

彼が言うには、最近はミャンマーでも海外旅行に出かける人たちがいるそうで、大半の旅行先はお隣のタイですが、日本に旅行に行きたい人たちもいて、彼の旅行会社でも日本ツアーの催行を準備しているそうです。だいたい1週間で、日本円で15万円くらいのツアーを考えているようでした。そこで、彼に尋ねてみました。

「ミャンマーの人が日本で行きたいのはどこですか?」
「鎌倉や牛久」
「えっ、あの大仏のある……」
「そう、ミャンマー人はお寺が好きなのです」
「牛久も知っているの?」
「知っています。ミャンマー人は仏教徒ですから。あとは東京ディスニーランドと買い物です」
「そこはよその国の人と同じなんですね」
「はい」

ミョ・ナインさんはヤンゴンの空港と市街地を結ぶリムジンバスを運行するビジネスをこれから始めたいとか。

「ヤンゴンにはまだリムジンバスがないんですね」
「はい、まだそんなに空港を利用する人は多くないですから。でも、これから海外旅行に行く人も増えてくるので、バスがあると便利だと思います」

10年前にヤンゴン空港に降り立ったとき、旅客機から乗客を空港ビルに運んでいるのは、日本の地方都市の路線バスの廃車を再利用していたことを思い出しました。面白いことに、バスの行先の日本語表示が残ったままで、ヤンゴンの空港内を走っていたのです。ミャンマーの人は日本語が読めないから関係ないみたいでした。

ミョ・ナインさんは、ミャンマー人向けの日本の旅行案内もつくりたいと言いました。

「じゃあぼくが日本の情報や写真を送ってあげるから、ミョ・ナインさんがミャンマー語に翻訳して、向こうで印刷しちゃえば」

軽い思いつきでぼくがそう言うと、彼はうれしそうに、「そうしましょう。よろしくお願いします」と言います。

……もしかしたら、この話、本当に実現したりして。そう思うと、ちょっと面白い気がしてきました。

「じゃあまずミャンマーの人が日本で行きたい場所や、特に興味のあるお寺はどれか教えてくれますか。そして、1週間くらいの日本旅行のコースを考えてみてください。それに合わせて情報を集めてみますから」

ミャンマーでは、いまようやく海外旅行が始まろうとしています。そんなにすぐには大量送客なんてことにはならないと思いますが、ミャンマーはすべてがこれからの国です。リムジンバスの話もそうですが、社会のインフラやサービスなど、いろんなことをこれから一から作っていくことになるのです。

そんな時代を生きている人たちと一緒に仕事ができるなんて、とても面白いことではないか、そう思えてきました。

それにしても、なぜ彼は突然ぼくに電話をしてきたのだろう? 

不思議な一日でしたが、彼の今後のアプローチを楽しみに待ちたいと思います。

彼との久方ぶりの出会いを通して、すべてを一から始めようとしている国の人たちとぼくらは一緒に何ができるのか……もはやあらかたのことが揃い、成熟しきってしまって身動きが取れなくなっている日本の社会を生きるぼくらにとって、彼らのために何かお手伝いすることで自分自身もなんとか生き延びていく、そんな時代をいま迎えているのではないかと、あらためて思ったものです。
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by sanyo-kansatu | 2013-03-26 22:48 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2012年 12月 03日

16回【トラベルマート 2012報告 前編】 観光庁も「脱中国」。東南アジアシフトに転換か?

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訪日旅行市場の拡大に向けた日本最大の商談会「VISIT JAPAN トラベルマート2012」が11月20日、21日の両日、パシフィコ横浜で開かれました。

トラベルマートは、国土交通省(観光庁)が主催するB to Bのインバウンド商談会です。海外から日本ツアーを造成するバイヤー(旅行会社)やメディア関係者が来日、国内からは彼らに旅行素材を提供するセラー(ランドオペレーターやホテル、交通、観光地のアトラクション施設、全国の自治体など多彩)が集結。一堂に会して訪日旅行市場を盛り上げていこうという、年に一度のイベントです。国内外のインバウンド関係者の話を一度にまとめて聞ける、絶好の情報収集のチャンスです。

日中政府間のねじれた相互不信によって中国インバウンドの行方に依然暗雲が漂うなか、日本のインバウンドにいま何が起きているのか。今回は、会場での見聞や感じたこと、関係者からのヒアリングを通じた知見などを報告しながら、2013年のインバウンドの展望を占ってみたいと思います。

会場で目につくヒジャーブ(スカーフ)姿

トラベルマートの初日は、特設スペースで行なわれる恒例の開会式から始まります。最初に登壇するのは、今年4月に就任した井手憲文観光庁長官。日本のツーリズム産業は震災からいち早く回復したことを報告、インバウンド市場の拡大をアピールすべく、列席した海外の記者たちに呼びかけました。

開会式が終わると、商談会のスタートです。事前にアポイントした海外バイヤーと国内セラーの商談が始まります。

今年の会場は例年に比べ、こぢんまりした印象です。ホテル関係者ら訪日旅行に絶対欠かせない特定のセラーが商談に追われていたことを除けば、熱気や盛り上がりの点でもうひとつという気がしました。前回までは会場内を国内セラーの展示ブースと海外バイヤー専用席に仕切り、相互訪問しながら商談する仕組みになっていたのですが、今回からバイヤー席をなくしてしまったからです。昨年に比べ全体の出展数は減少しているわけではないのに、以前よく見かけたコスプレや着物姿のPRといった派手な演出も少なかったようです。

こうしたなか印象に残ったのは、イスラム女性が頭を覆うヒジャーブ(スカーフ)姿の関係者が目についたことです。事務局の報告した海外バイヤーの国別数をみると、その理由がわかります(トラベルマート公式サイトより。カッコ内は昨年の数)。

中国35(41)、韓国23(26)、香港12(9)、台湾12(14)、タイ24(23)、シンガポール19(16)、豪州15(14)、英国10(10)、フランス5(5)、ドイツ5(3)、米国17(8)、カナダ18(17)、マレーシア19(7)、インド12(1)、インドネシア18(1)、ベトナム18(0)、ロシア3(21)、オンライン系5(21)

上記のとおり、マレーシアやインドネシアなど東南アジアのイスラム圏のバイヤーが急増していました。激増したインドや今回初登場のベトナムも注目です。ここに見られるのは、招聘する側が明らかに東南アジアシフトを意図した結果といえそうです。

東南アジアシフトに転換した背景

開会式の後には、外国人記者会見があります。主催者である国土交通省(観光庁)が海外メディアに訪日旅行促進のための日本政府の考え方やプロモーション活動について広報する場です(昨年の外国人記者会見の様子)。

今回の記者会見で観光庁が強調したいポイントはふたつあったと思います。ひとつは、東日本大震災後、日本のインバウンド市場は予想以上に早い回復が見られたこと。これは確かにアピールすべきポイントでしょう。東日本大震災の前月に地震の被害を受けたニュージーランドでは未だに復興が遅れ、同国のインバウンド市場が低迷しているのに比べ、日本では官民の協働が早期回復に貢献した面は大きかったと思います。

もうひとつは、訪日プロモーションの最重点エリアが中国から東南アジアにシフトしたことです。

統計をみると、理由は明快です。国土交通省の担当者が用意した資料「Recent Situation Regarding Inbound Promotion」によると、2012年1月~10月までの国別訪日旅行者数のうち、震災の影響を受ていない2010年度比で最も伸びているのは、ベトナム(33.3%増)、次いでインドネシア(26.0%増)、タイ(19.5%増)、マレーシア(13.7%増)と、すべてが東南アジア諸国です。

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こうしたデータの裏づけをもとに、観光庁が今後の目標設定として掲げるのは、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアを中心にした東南アジアからの訪日旅行者数を現在の約50万人から3年後(2016年)までに200万人へと拡大させることです。そのための施策として、すでに今年7月からタイのマルチビザ発給、9月からマレーシアとインドネシアにも短期のマルチビザ発給を開始しています。2013年は日本アセアン友好協力40周年にあたるため、周年事業をインバウンド振興に活用することで東南アジア諸国に向けた重点プロモーションを展開することになりそうです。

こんなにあっさり転換して大丈夫?

ところで、今回インバウンド関係者をホッとさせた話のひとつに、今年9月日本の「旅博」をドタキャンし、11月の上海旅行博(CITM)では日本関係者の出展を断ってきたことで、日本に対する強硬な姿勢を見せてきた中国の旅行会社が予定どおりに来日していたことがあります。来日した35社(昨年は41社)をざっと見る限り、上海や広東などの沿海部が中心で、内陸部や東北地方は少ないようでした。国内で相変わらず続く「反日」的な雰囲気の中、商談のために来日した旅行業者がいたことで、中国という国を相手にする場合、政府と民間を分けて考える必要があることをあらためて確認したいと思います。

もっとも、ある大手旅行会社の関係者によると「来日した中国のビジネスパートナーと会ったが、お互いため息ばかり」だったとのこと。北京出張から戻ってきたばかりの彼は現地の旅行関係者の様子についても「今回は2010年のように当局が自国の旅行会社にツアー催行中止の通達を出しているわけではないけれど、民族感情を煽ることで未だに日本ツアーを集客しにくい社会のムードがある」と話してくれました。

国土交通省(観光庁)がこれほどあっさり「脱中国」に転換した背景には、今日の険悪な日中関係があるのはいうまでもないでしょう。

そもそも尖閣諸島沖で中国国家海洋局の監視船と直接向き合っている海上保安庁の巡視船は国土交通省の管轄です。たとえこの先、訪日客が再び動き出したとしても、ひとたび彼らが海上で何か起こせば、事態はすぐに逆戻りです。まったくくだらない話だとぼくは思いますが、中国政府は我々と同じようには考えてはいないので始末が悪いといえます。

日本人には思いがけないことですが、特定の個人や組織、団体に因縁をつけて攻撃対象とするのは、政治闘争の国である中国ではよく見られることです。彼らは標的とみなした相手にプレッシャーをかけることで自己の主張を通そうとします。本来民間交流にすぎない観光に政治の影響がこれほど出てくるのも、観光行政を担当する国土交通省が中国政府の標的のひとつにみなされているからだと思います。中国メディアによって悪者扱いにされている2010年秋当時の担当大臣に対するあてつけすら感じます。

表向き旅行会社に口を出していないといいながら、あの手この手で日本ツアーの集客を難しくさせるよう宣伝工作を行なう中国政府の子供じみたやり方も、彼らの考え方では自らが利を得るためのごく自然な行動原理にすぎず、我々がいくら道義を欠いていると非難したところで通じそうにもありません。

今回のトラベルマートが、例年に比べてどこか熱気を欠いた理由に、我々日本人の常識では思いもよらなかった中国政府のふるまいに対する拒絶感からくる「脱中国」の共時的な国民レベルでの承認と、その結果生まれた虚脱感があったと思わざるを得ません。日本の「観光立国」ブームを支えたのは、この10年の中国の経済発展に対する官民の過剰なまでの期待であったことは間違いなく、その取り込みを図るというのが産業界の合言葉だったため、その反動も大きかったといえます。

今回の尖閣問題をめぐる中国政府の思慮を欠いた対応によって、日本側の盲目的な中国市場に対する期待が裏切られたことで、時代は転機を迎えてしまいました。

ですから、観光庁が「脱中国」=東南アジアシフトに至った経緯というのも無理はないと思います。

その一方で、こんなにあっさり転換しても大丈夫なのだろうか、と思わないではありません。中国政府と民間の中国人の思いは同じではないからです。彼らは日本ともっとビジネスしたい。我々日中の民間人の利害は依然一致しているのです。

こうなった以上、我々は中国市場に対するアプローチを再考する必要があります。この連載で何度も指摘してきたような訪日中国人ツアーの数々の問題を改善していくうえで、これをいい転機にできないか。そのためには何をすればいいか、考えていきましょう。

所詮日本はインバウンドの新参者。やるべきことはある

ここから先は、今回のトラベルマートの会場で感じたことを思いつくまま書き出します。単なる批判ではなく、ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

まず開会式について。昨年まで観光長官だった溝畑宏氏のいささかオーバアクション気味のスピーチに比べ(昨年の開会式の様子)、今回の新長官の挨拶はかなり地味な印象でした。どちらのキャラがいい悪いの話ではありませんが、せっかくの開会式なのですから、スピーチの内容はともかく、列席している外国人たちの気分を盛り上げるような華のある演出がもっとあってもいいのではないか。なぜなら、ツーリズム産業は万国共通、エンターテインメントビジネスだからです。海外のバイヤーやメディア関係者の多くは、B to Bの商談会といえども、ワクワクするような旅行資源を発掘してやろうと意気込む、基本ノリのいいキャラの持ち主たちです。彼らの期待に応えるべく、コストをかけなくてもやれることはあるように思います。要はセンスの問題です。

こんなことを思うのも、海外のトラベルマートをぼくは何度か視察してきたからです。特にヨーロッパ各都市で開催されるトラベルマートのお祭り騒ぎのようなにぎわいを知っているだけに、日本のトラベルマートは物足りないと思わざるを得ないのです。「観光立国」としての歴史と蓄積がヨーロッパとは違うのですから、新参者の日本とかの地を比較するもの言いに無理があることは承知ですが、そもそも会場となった横浜市民は、わが街でトラベルマートが開催されていたことをどれだけ知っていたのでしょうか(この意味を主催者が理解しているかどうかは大事だと思います)。ヨーロッパでは、トラベルマートは開催地を挙げたイベントであり、市民を巻き込んで海外から来た旅行関係者を歓待する光景が見られることを思うと、残念に思ってしまうのです。こちらは認識レベルの問題です。

もうひとつ気になったのは、海外バイヤー席がなくなったこと。商談というのは事前にアポ入れして行なうものですから、とくに支障はないのでしょうが、第三者には特定のバイヤーがどこにいるのかわからない。日本のセラーにとって受身の商談しかできないのでは、もったいない気がします。バイヤー席があれば、アポの入っていない時間帯を見計らって積極的にアプローチすることができるからです。

その点についてある海外バイヤーの知り合いに聞いたところ、必ずしもセラーに多く会えば会うほど商談が成立するというものでもないらしく、お互いに求めるものをある程度事前にすり合わせておかなければ効果がないとのこと。来日する前に、日本のセラーとどれだけ情報を共有できているかが鍵だと彼らはいいます。

だとしたら、出展者同士が情報交換できるようなマッチングの場を事前にネット上に提供するサービスがあってもいいのではないでしょうか。つまり、リアルな商談会を前提としたB to Bのためのプラットフォームを用意することが求められているのでないか。

以前からウェイボーのようなB to C向けの情報発信の重要性について指摘してきましたが、トラベルマートのような業界関係者との商談会の場にいると、やはり大事なのはB to Bの情報交流をもっと活性化することがインバウンド促進にとって重要だと実感します。相手国の市場の成熟度にもよりますが、消費者向けの情報に力を入れるより、海外の業界関係者に情報の優位性を与えてこそ、ビジネスは動き出すものだからです。この点については、今後もっと具体的な提案を今後してみたいと思います。

次回は、トラベルマートに出展していたアジアからの訪日旅行市場に特化した業界団体として知られるアジアインバウンド観光振興会(AISO)の総会で聞いた生々しい報告を中心に2013年のインバウンドの展望について紹介したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2012-12-03 13:31 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)