ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2011年 11月 08日

日経ビジネスNBonline アニメと「80后」をめぐる話

日経ビジネスNBonline アニメと「80后」をめぐる話
(2008年4月~5月)
2004年頃から08年くらいまで、JETROが旗振り役になって、日本のマンガやアニメの著作権者や制作会社らが海賊版をはじめとした著作権侵害問題の解決を中国側に働きかけ、国家ぐるみでアニメ産業を育成しようとしている同国といかにビジネス提携できるか、という議論が盛り上がっていました。でも、最近はその熱もすっかり冷めてしまったかのようです。

なぜなら、中国はオリンピックの頃こそ、海賊版を一掃すると世界に向けた調子のいいキャンペーンの真似事をやっていましたが、そんなのいまはまったく忘れてしまったかのよう。日本の関係者にすれば、もうやってられるか、という気持ちになるのも無理はありません。

この連載は、その当時の上海を中心にした取材を元に書かれたものです。上海のオタクビルを覗いたり、「80后」の女の子と秋葉原に行ってみたり、いろいろフィールドワークをしていますが、なかでも上海美術館で開催された「80后世代美術展:ゼリーの時代」はぜひ読んでほしいと思います。

(1)上海のメイドカフェに行ってみた【前編】
バイトは名門女子大生「この服と日本のアイドルが好き」

(2)上海のメイドカフェに行ってみた【後編】
中国版「電車男」に戸惑うメイドたち

(3)主役は、大人になんかなりたくない「ゼリーの世代」
共産党公認“オタク展覧会”の真意は?

(4)政府の無策に沈むオタクビル「動漫城」
でも日本アニメ人気は健在

(5)本物を愛する目を「日本のフィギュア」で培って!
すでに日本と同時発売。「アルター上海」に聞く、中国アニメビジネス事情

(6)上海の若者がアキバへ社会科見学
宿題は「なぜ中国でアニメの産業化が進まないか?」

(7)日本のドラマ・アニメはこれからも支持されるだろうか
日本動漫ファンは、1977~83年生まれに集中?


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by sanyo-kansatu | 2011-11-08 15:27 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)
2011年 11月 08日

かわいらしさと強面の二面性を併せ持つ「80后」

ぼくが中国本土で初めて日本のマンガの精巧な海賊版を見たのは、1992年頃の深圳でした。双葉社の「クレヨンしんちゃん」だったと思います。それから10年後、中国で会った多くの若い子たちは、日本のマンガやアニメのファンになっていました。

ぼくは1960年代生まれなので、小学生だった70年代のアニメに親しんだ世代ですが、おかしいことに、中国のテレビでは90年代にほぼ日本の20年遅れで70年代アニメが放映されており、いわゆる「80后」(80年代生まれ)の子たちとぼくは、同じ年の頃に同じアニメを視聴して育っていたことを知りました。

いまでも思い出すと吹き出してしまうのが、日経ビジネスNBonlineの連載で書いた上海のメイドカフェでバイトする上海外国語学院の女の子と一緒にカラオケで「一休さん」を歌ったときのことです。「♪スキスキスキスキスキスキ!あいしてる」。そう歌いながら、いったいこの時空を超えた共有感ってなんだろか? そんな甘ったるく不思議な感触を味わいながら、メイド服を身に包んだ彼女らに妙な親しみをおぼえたものです。おかしなもんですね。もちろん、それはこちらの勝手な妄想に近い思い込みにすぎないのですけれど。

日経ビジネスNBonline アニメと「80后」をめぐる話

いまでは中国の若者たちは、いわゆる違法ダウンロードサイトを通じてリアルタイムで日本の深夜アニメを視聴しています(中国では違法ではないのかな。当局が違法だといえばそうなるし、お目こぼしがあれば堂々と営業できる。この国では法が物事の是非の基準にならないため、海賊版はいつまでもなくならない)。

彼らは日本のアニメで描かれる中学高校の文化祭やアルバイトなど、中国ではまだそれほど一般的ではない学校生活の勉強以外の世界に憧れもあるようです。

そういうかわいらしい一面もある一方で、彼らが学んだ「愛国主義教育」の効果てきめんというべきか、ある局面においては(いわゆる歴史認識や領土問題などナショナリズムがからむと)、断固たる強面という二面性を併せ持つのも、彼ら「80后」の特徴です。

状況によってコマのようにクルクルと回る彼らの二面性をどう取り扱うべきか。ぼくにすれば、親戚のおじさんが甥っ子姪っ子を見つめる目線に近いのですが、彼らも自らの立ち位置にどうやら不安を抱えているらしいことも確か。それとなく続いている彼ら彼女らとお付き合いのなかで、何かしらの発見があれば、つらつら書いてみようと思います。

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by sanyo-kansatu | 2011-11-08 15:19 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)
2011年 11月 08日

現代アートは中国社会を映し出す鏡である

こういう言い方も何ですが、中国のような言論統制のある国で、社会に対する深い洞察や批評精神、ひとりの人間としての正義感のありかをストレートかつ巧妙に見せてくれる数少ないメディアとして、中国の現代アートの存在に注目しています。

アートは広告とは違い、マスメディアでないぶん、存在を許されているといえます。へんに目立たないかぎり、ある意味自由でいられる。彼らアーチストたちは常に時代と政治との間に流れる微妙な風向きを気にしながら、ときに飄々とそれを受け流し、ここぞというときには思いのたけを作品に注ぎ込もうとする。その結果、中国社会の闇や矛盾、しかしそこで生きていかざるを得ない人々の現実をあぶりだします。なるほど、こんなことまで考えていたのかと感心させられることも多いです。現代アートは中国社会の諸相を映し出す鏡=メディアといえます。

ぼくが中国の現代アートの存在を初めて知ったのは、1994年頃、たまたま仕事でオーストラリアに行ったとき、「MAO goes POP」と題された回覧展をパースで見たときです。今日有名になった中国の現代アートの立役者たちが、90年代に入って中国版イーストビレッジ(北京東村)でボヘミアン生活をしながら作品制作に打ち込むようになる以前の世界を南半休の片田舎で知ったというわけです。

そのときは「なんじゃこりゃ」という感じでしたが、その後、2000年代に入り、上海で莫干山路の工場跡のアトリエ群(M50)を知り、一時足しげく通うにようなり、何人かのアーチストに会って話を聞いたりしました。そのときの見聞を元にしたコラムが、日経ビジネスNBonlineで20回ほど連載されました。
日経ビジネスNBonline 中国現代アート 
その後も、中国出張に行くと、北京を代表する芸術区として知られる草場地など、仕事の合間に通っています。07年頃をピークにちょっとトーンダウンしたかに見える中国のアートシーンですが、イケイケの時代ばかりが面白いわけじゃない。観光地化されたといわれる「798大山子芸術区」だって、歩き回っていると、何かしら発見があったりします。このカテゴリでは、そんな発見をちょこちょこ書いてみたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2011-11-08 14:45 | 現代アートは中国社会の鏡である | Comments(0)
2011年 11月 07日

なぜメイドインジャパン好きの中国人がメイドインチャイナの骨董を高値で買うのか?

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ここ数年、中国人が日本に中国骨董を買い集めに来ているという。世間でいう中国人の消費が経済効果につながるという話とは無縁に思えるが、実はけっこう大きなお金が動いているらしい。いったいどんな人たちが、どこで何をしているというのだろう。あれほどメイドインジャパン好きといわれる中国人たちが、今なぜメイドインチャイナの骨董に血眼になっているのか?

王義之の模写が40億円で落札

2010年11月23日、中国嘉徳国際拍売有限公司(以下、中国嘉徳)が開いた北京のオークション会場で、教科書にも出てくる東晋時代(4世紀)の書家、王義之の書『平安帖』の模写が約40億円(3億800万元)もの高値で落札された。

競売元である中国嘉徳は1993年創業の中国最大のオークション会社。天安門事件で失脚した趙紫陽の娘として知られる王雁南氏が総経理を務める。同社が扱うのは、中国の書画(近現代絵画も含む)や陶磁器、工芸品、家具、古籍、古銭、玉類など。カタログを見ると、骨董以外で競売にかけられるのはプーアル茶や茅台酒など多岐にわたる中国伝統産品だ。出品のうち4割は海外から集められたものだといい、その収集のため、上海、天津、香港、台北、ニューヨーク、そして07年から東京銀座に事務所を置いている。

今中国では中国骨董の価格が急騰している。リーマンショックの影響を受けた09年はさすがに少し落ちたが、翌年すぐに回復した。中国嘉徳の年間成約額は09年の約340億円(27億元)から10年の約950億円(75・5億元)へと3倍にふくれあがった。そのうち1点の落札額が10億円を超えたものは4点、1億円を超えたものは76点を数えた。中国全体の骨董および美術品市場の10年の取扱高も、前年の2倍以上の約7200億円(573億元)とされ、今後も拡大が見込まれるという。中国のオークション市場の規模は年々拡大し、07年にフランスを抜き、今や米英に次ぐ世界3位となっている。

中国のテレビでも最近はご当地版「お宝鑑定団」が人気だそうだ。冒頭の高額落札も、バブル崩壊前の1987年に安田火災海上がヨーロッパのオークションでゴッホの『ひまわり』を58億円で落札したことをどこか思い起こさせる話である。これだけ価格が急騰しているのだから、海外の中国骨董を買い集め、自国に持ち帰り、高値で売り抜けようとする中国人が現れても不思議ではないのだ。
 

中国人が日本の骨董市場を下支え

こうしたことから数年前より日本の骨董業者の間では、中国文物の発掘や売買が盛んになっている。この1、2年で多くの骨董団体が各地で中国骨董専門のオークションを開催した。そこに駆けつけるのは、中国人の骨董買い出しツアー団である。

昨年から東洋美術骨董フロアを特設し、中国骨董の委託販売に力を入れ始めた東京銀座のアンティークモール銀座の中村みゆき代表取締役は、昨年12月6日に「第1回中国骨董オークション」を開催した。会場には日本の骨董商やコレクターの他に、これに合せて来日した中国からの参加者50名などを加え、約100名が集まった。3時間で約200点の中国骨董が落札されたが、9割が中国人によるものだったという。

中村氏はもともと西洋骨董が専門だった。
「バブル崩壊以降、低迷を続ける日本の骨董市場の中で、今元気に動いているのは中国モノばかり。そこで3フロアあるうち1フロアを東洋専門にしたんです。以来、中国の方がよくお見えになるようになった。モノを見る目は十分ある人たちばかりです。古くから中国との交易の歴史がある日本は中国文物の宝庫といえる。中国骨董の里帰りが始まったんだと思います。昔から中国モノを扱う骨董業者も、表向きは中国人には売らないと言っているけど、オークションがあるとこっそり出品したりする。日本の骨董市場は今や中国人に下支えされているといっていい」

買う側も熱心なら売る側だって市場の動きに敏感だ。中国嘉徳東京事務所では、一昨年から年に数回中国より専門の鑑定士を呼び寄せ、日本国内に眠る中国文物を鑑定するための中国美術相談会を開いている。今年1月14、15日に開かれた相談会には、全国から約200名の所蔵家が中国の書画や陶磁器、銅鏡などを持ちこんだ。まるで今、秘蔵の品を「お宝鑑定」して高く見積もってもらうなら中国に限るといわんばかりである。同社はそのうち約2割を引き取って3月の北京でのオークションに出品することになった。

骨董ビジネスは経済合理的

中国との骨董商い20年以上のベテランで、上海に骨董店『草月堂』を開いている田川信也氏は、中国人骨董買い出しツアーについてこう語る。

「数年前から日本でのオークションに合わせて中国人がツアーでやって来るようになった。個人コレクターもいるが、彼らの大半は商売人です。なぜ彼らが中国骨董をあんなに高値で買うか? そんなの投機に決まってる。中国でもっと高値で売れるからですよ」

ツアーの中には、東京や横浜、大阪、金沢、福岡などの骨董商やオークションめぐりをするものもある。1回に300名規模の大きなオークションがあると、10億円以上の成約額に上ることもあるという。「でも、北京の嘉徳オークションでは1日にその10倍の成約額が出ていますからね」と田川氏はいう。

1980年代から香港経由で中国にある日本の古切手や古銭を買い出しに行き、日本のコレクターに売っていた田川氏だが、2000年前後から中国で骨董の値段が上がり始めたことを知る。まず掛け軸、そして陶磁器が上がり始めた。そのうち日本人相手より中国人相手の商売のほうが儲かり始めたので、05年に上海出店を決意した。

中国では骨董が役人などへの贈り物に使われることが多いため、贈賄目的か投資のためかというのが、資産運用には縁のない一般中国国民の認識だといわれるが、田川氏は中国の骨董ビジネスはきわめて経済合理的な原理で動いているという。ここ数年上昇基調の骨董価格の値動きも、03年頃上海の不動産価格が一気にはね上がったとき、値を下げているし、05年頃の株高のときは、掛け軸の値段が急に下がったという。これだけGDPが伸びているのに株市場は精彩を欠いたままだし、不動産投資を抑制する中国当局の動きが強まった10年になって骨董価格が急騰したのも、これまで不動産や株へ向かっていた投資資金の一部が骨董市場に流れたのだという説明はわかりやすい。今年上海と重慶で始まる固定資産税の試験的導入で、不動産価格や骨董市場にどんな影響が出てくるのか、興味深いところである。

愛国心オークション事件 

もっとも、中国人の骨董ビジネスにロマンのつけ入る余地などないというのは言いすぎだろう。日本の骨董関係者らの話で共通するのは、彼らの官窯好みである。宮廷で使われていた絢爛豪華な逸品が好きなのだ。このあたりは李朝の器などを好む渋好みの日本人とは、基本的に違っている。人気は明清時代の陶磁器。どの皇帝の時代に作られたかによって値段が変わる。皇帝の権力が強い時代ほど品質も高いとされるためだ。鑑定ではもっぱら製造年や場所、職人をめぐって議論が起こる。明清モノが多いもうひとつの理由は、中国国家文物局が遺跡からの発掘や盗掘品はオークションにかけるのを禁止しているため、宋以前の古いものは出品されることが少ないからだという。

骨董が純粋にビジネスだけの話にならなくなる背景に、中国政府の対応がある。戦乱や内乱に明け暮れた近現代の中国は、貴重な文物が海外に大量流出した。欧米列強の略奪や考古学調査団の持ち出しに加え、密輸も頻発、一時期は常態化していた。そのため近年海外に流出した中国の文物の還流に力を入れており、明らかに盗掘品であるものに対しては、外交ルートを通じて返還を要求している。流出の経緯が不明でも、海外の所蔵者に対価を払って取り戻すことさえ始めている。

こうしたなかで起きたのが、09年春の中国人オークション落札代金未払い事件だ。「円明園愛国心オークション事件」とも呼ばれる。朝日新聞2009年2月3日付によると、「1860年に英仏連合軍の略奪に遭った清朝の庭園『円明園』から海外に持ち出された十二支動物像のうち、ネズミとウサギの銅像の頭部が2月下旬にパリでオークションに出品されることになり、北京の弁護士85人がネット上で競売の中止と中国への返還を求める発表をするなど、中国で反発が高まっている」。銅像の所蔵者はデザイナーの故イブ・サンローラン氏で、遺産相続人がクリスティーズに出品したものだ。2月中旬の中国外交部定例記者会見では、劉暁波氏ノーベル平和賞受賞のときも強硬に反対を唱えて物議をかもした女性報道官の姜瑜氏が「英仏による略奪」を主張していたことから、中国政府もこの問題に乗り出そうとしてくるのかと思われた。

事件は2月25日、ある中国人が計3140万ユーロ(39億円)でそれら2品を落札したものの、「略奪された文化財に金を払うつもりはない」と代金支払い拒否を言い出したことから始まった。この人物は福建省のオークション会社社長の蔡銘超氏で、海外に流出した文化財を取り戻す活動を行う民間組織の顧問だそうだ。ネットに転載された写真を見る限り、細面の気の弱そうな人物である。政府の後ろ盾もあるとふんで臨んだ挑戦だったに違いないが、中国国内でも賛否両論を巻き起こした。

ところがである。中国文学者の中野美代子氏が岩波書店の『図書』09年7月号に寄稿した「愛国心オークション」という一文に以下の記述がある。

「これら十二支動物像は、マーロンが撮影した1930年前後までは、北京近郊に健在していたのだ。その頭部を切断し、骨董市にはこび売ったのは、中国の民衆である。皇帝の悦楽のためのみに西洋人宣教師たちがつくったものを破壊し、売却することは、当時の民衆としては健全ないとなみでなかったろうか。(中略)それがいま、『愛国心』のために、いくばくかの歴史的価値しかない十二支動物たちのあたまに、なん億円、なん十億円というべらぼうな高値をつけているのである」

つまり、中国政府の主張する十二支動物像が1860年英仏連合軍に略奪された「屈辱の象徴」というのは史実にあっていない。おまけに銅像所蔵者から「中国が人権を認めるなら返還してもいい」といわれる始末。こうなるとおっちょこちょいの蔡氏以上に、史実もわきまえず返還を訴えた姜瑜報道官のほうがお気の毒さまという気もしてくる。 

こうした経緯を意識したせいだろうか、東京事務所を通して中国嘉徳に筆者が行った「中国の骨董が国際相場に対して高いのはなぜか」という質問に対する回答の中に、わざわざ「価格の高騰は中国人の愛国心によるものではない」という記述があったのである。

自作自演的な価値釣り上げか

筆者は他にも中国嘉徳に対して以下のような質問を送っている。「中国人にとって中国骨董はどんな価値があるのでしょうか。また海外から『国宝回流』することは、中国人にとってどんな意味があるのですか」。その回答はこうだ。

「中国の文物芸術品は中華文明の結晶であり、重厚な歴史的価値、学術的価値、文物的価値を有する。中華文化の継承、保護、発展にとって重要な意義を持つ。海外の文物を還流させることは国内の芸術品市場の活発化につながるほかに、もっと重要な意味は海外還流文物の鑑賞、研究を通して、歴史的視野を広げ、文化、歴史の研究を深めることである」

いかにも今日の中国的な公式見解である。それを頭から否定するつもりはないが、むしろ朝日新聞09年2月17日に掲載された中国の作家、余秋雨氏へのインタビューの中で述べられた「正統」という観念をめぐる葛藤こそが彼らの心情に近いのかもしれない。同紙の「中国政府が文物を重視するのはなぜか」という質問に対して余氏はこう答えている。

「国共内戦時に国民党が文物を持ち去った背景には中華文明における『正統』の観念がある。重要な文物が手にあれば正統性を証明できる。戦いの勝ち負けはこの世の常。しかし文化は永遠の存在だ」

それにしても、今日の中国の骨董ブーム、自国出自のモノにしか関心がないというところがいかにも中国人らしい。高邁な理念を語る人物がいる一方で、それをぶち壊しにする輩が必ず現れるところもそう。中国の民間骨董業者と日頃つきあって彼らの商売のやり口を見ている前述の田川氏にいわせれば、「愛国心なんて方便。嘉徳だってトップは共産党幹部。元締めは党なんですから」ということになる。

もともと骨董の買戻しブームというのは、80年代後半のオリンピック景気にわく韓国にもあったそうだし、バブル時代の日本にもあったことはよく知られている。ただ日本人の場合は、中国人のように「奪われたものを取り返せ」という認識はあまりなさそうだ。幕末の薩摩藩などがせっせと陶器を輸出していたという面もあるからだろう。 

こうしてみると、骨董の値を釣り上げているは、今日の中国人の「自国の歴史はスゴイと思いたい」というある種の信心と、それが実利につながるゆえの自作自演的な熱狂のように思えてくる。ではなぜ骨董なのか。中国人の歴史的文物への傾倒は筋金入りであることは認めるけど、こう言っちゃあなんだが、当人たちもメイドインチャイナの現代文化に誇れるものがなかなか見つからないからでもあるだろう。

ただ、彼らを見ていてちょっとつらい気がするのは、「中国はこれまでずっと屈辱を受けてきた」といい続けなければならないような歴史認識だ。こういうのがよっぽど自虐史観ではないかと思う。だから中国経済が興隆すると、その裏返しで「本当の俺たちはスゴかったんだ」と言いたくてたまらないのである。

こういう屈折が、今日の中国人の文化に対する態度も含め、海外から見て好意的に評価されにくい理由のひとつになっていると思う。だって普通に考えれば、本来価値のあるものは、きちんと保管され、公開されているのであれば、どこにあってもかまわないではないか……。少なくとも今日の大方の中国人はこれに承服しないだろう。

結局のところ、これからも中国骨董は売ったり買い戻されたりを繰り返していくのだろう。その品が広く価値を認められる限り。そういえば、昨年9月から中国当局は日本から持ち込まれる物品の関税を強化し始めている。高く売れるうちに売ってしまえ、というトレンドはそれでも拍車がかかるのだろうか。

いずれにせよ、インバウンドで中国客を迎えるということは、こういう実に面倒くさいメンタリティの持ち主たちをお客さんにするのだということをキモに銘じておかなければならないのである。

「データでわかる日本の未来 観光資源大国ニッポン」(洋泉社)2011年3月刊行より
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by sanyo-kansatu | 2011-11-07 15:47 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2011年 10月 10日

2012年、鳥取で国際マンガサミットが開かれます

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2012年開催の「第13回国際マンガサミット日本大会」の開催地に鳥取県が決まりました。国際マンガサミットとは、アジアMANGAサミット運営本部(ICC)によって開催される国際交流フォーラムです。日本をはじめ中国や韓国、台湾、香港などアジア各国のマンガ家や関係者らが集まり、交流を深めながら、マンガ市場の現状や課題、著作権問題などを協議するのが目的です。

日本での開催は、第1回開催地の1996年東京・いわき大会以降、2002年の横浜大会、2008年の京都大会に続くものです。なぜ鳥取県で? と意外に思う人も多いかもしれませんが、鳥取は『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげるをはじめ、『名探偵コナン』の青山剛昌、『坊ちゃんの時代』の谷口ジローなど、多くの人気漫画家を輩出しているんです。

水木しげるの出身地である鳥取県境港市では、1990年代以降、鬼太郎ロードや水木記念館など『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターを最大限に活かすことで多くの観光客を呼び込むことに成功しています。こうした一連の誘客・動員手法をアニメツーリズムといいます。

実は、ぼくの両親の実家が鳥取にあり、立ち寄る機会が多いことと、あとで話しますが、ぼくの中で『ゲゲゲの鬼太郎』と『名探偵コナン』は中国との興味深いつながりがあり、インバウンドの観点からみても、アニメツーリズムの可能性を考えるうえでも、このイベントをめぐって地元や国内外でどんなことが起きていくのか、できうる限り追っかけてみようと思ったのです。

だったらいっそのこと、「まんが王国とっとり」勝手に応援団を始めてみよう、というのがこのカテゴリです。

さて、第13回国際マンガサミット日本大会の概要は以下のとおりです。

■日時 2012年11月7日(水)~10日(土)
■メイン会場 米子コンベンションセンター(鳥取県米子市末広町74)
■問合せ先 鳥取県観光政策課まんが王国とっとり推進室(鳥取市東町1-220 TEL81-857-267238)
yokoso.pref.tottori.jp/manga/

ひとまず、10月末に中国で開催される第12回国際マンガサミット北京大会に、次回開催地の鳥取県関係者が北京を訪問するというので、ぼくも現地を訪ねてみるつもりです。
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by sanyo-kansatu | 2011-10-10 23:11 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)