ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 06月 20日

なぜサムライは外国人観光客の心をつかむ? 人気の秘密を探ってみた

銀座某所の正午過ぎ。館内に中国語のアナウンスが流れると、派手な和装に身を包んだ男女がステージに向かってゆるりと歩き出す。
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食事に夢中になっていた中国の団体客たちの視線は一斉にふたりの方向に注がれた。

なかには席を立ち、スマホを取り出し、写真を撮り始める人たちもいる。

いったいこれは何ごとなのか?

●サムライショーの中国客の食いつきがすごい

浅草で外国客向けの変身スタジオやサムライ体験ツアーを催行している夢乃屋(株式会社バンリーエンターテイメント)の出張侍・花魁ショーである。場所は、銀座8丁目にある外国人団体客向けの和風エンターテインメントレストラン「どすこい相撲茶屋」だ。

ステージに立つのは、創作剣舞橘一刀流の家元でもある孝藤右近さん。彼が太刀を抜き、剣舞を始めると、狭いステージの周囲にカメラを手にした人垣ができる。動画を撮る人も多い。
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孝藤右近さんは金沢にある創作日本舞踊孝藤流の二代目。国内外で華麗なステージをこなしてきた

孝藤右近 剣舞・殺陣 作品集 Ukon Takafuji Sword battle and Samurai dance performance
https://www.youtube.com/watch?v=DGJ4F9-DGSM

1回わずか15分のショーだが、終わっても観客はなかなかステージの前から離れようとしない。

ついには、記念撮影タイムが始まる。中国客たちは次々に入れ替わるように、ふたりのそばに寄り添い、シャッターを切り続けること、約15分。

「春節の頃は店も大変な盛況ぶりで、記念撮影だけで1時間近くかかったこともある」と右近さんは苦笑する。

それにしても、中国客の食いつきぶりはすごい。彼らはふたりと記念撮影したくてたまらないのだ。

一般に中国の団体客は、毎日バスに揺られ、富士山を見たり、温泉に入ったり、買い物したり。でも、せっかく日本に来ているのに、ガイドも中国人。買い物も中国系の店ばかり。だから、日本人とじかに触れ合う機会は、実は少ない。
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右近さんの隣りに立つのは、艶やかな花魁姿の舞いを披露する孝藤流花形の孝藤みゆさん

だとすれば、この種の和風エンターテインメントが彼らの心をつかむのもわかる気がする。彼らの多くはここで撮った写真をすぐさま中国版SNSのWeChat(微信)にアップするだろう。そうでなくても、中国に戻って、知人友人に見せて自慢するに違いない。

「どすこい相撲茶屋」では、夢乃屋の出張侍・花魁ショーは週3回行っているという。次々と入店してくる中国客をメインとしたアジア系団体客のために、1日約6回のステージをこなす。

いま銀座の一角では、人知れず、こんなことが起きているのだ。

JAPAN CULTURE EXPERIENCE TOURS  夢乃屋
http://www.tokyo-samurai.com/


●トリップアドバイザーで和エンタメが人気の理由

今年3月末に配信された世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の2015年の外国人による東京の人気観光地ランキングの結果が興味深い。
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2015年にトリップアドバイザーの日本の観光地に寄せられた口コミを分析(2016.3.31)
http://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/03/20160331_TripAdvisorPressRelease.pdf

1位こそ新宿御苑だが、2位に昨年7月新宿歌舞伎町にオープンしたサムライミュージアムがランクイン。以下、3位は浅草、5位は明治神宮、6位は両国国技館、7位に東京都江戸東京博物館、8位は八芳園、9位はホテルニューオータニ庭園と、ほぼ和のスポットが選ばれている。また京都のランキングでみると、剣舞の鑑賞や体験ができる京都サムライ剣舞シアターが2位で、鹿苑寺や清水寺といった世界遺産よりも上位となっている。

サムライミュージアムの館内には、日本刀や鎧兜の展示があり、鎧兜を身につけて撮影できるスタジオがある。玄関脇のショップでは、日本刀のレプリカや扇子、ミニ甲冑などが販売されている。人気は7000円~3万円くらいの日本刀のレプリカだという。
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戦国武将のストラップも販売(サムライミュージアム)

では、なぜこれらサムライがらみのスポットや和風エンターテインメントは外国客に人気なのか。
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サムライミュージアムのInstagram (https://www.instagram.com/samuraimuseumtokyo/)には甲冑を身につけた外国客の写真があふれている。

トリップアドバイザーの広報によると、「サムライミュージアムが人気の理由は、和の文化を体験できるところ。最近、全国的に同様の施設が増えている。こうした施設は、トリップアドバイザーのようなサイトやSNSを活用して外国客にアピールする術をよく知っている。サムライミュージアムの場合も、オープン当初からトリップアドバイザー上に施設の所在地、公式サイトへのリンク、メールアドレス、営業時間などの詳細を掲載し、館内ではトリップアドバイザー上に掲載されていることを告知しながら、口コミ投稿を促している。また、英語が話せるスタッフがいて、きちんと説明をしていることも重要なポイント」と分析する。

●「ラストサムライ」こと日本最高齢ガイドが再登場

こうした全国的な外国客のサムライ人気で、活動を再開したユニークな人物がいる。

通訳案内士暦54年という異色の英語ガイド、ジョー岡田さんだ。現役では日本最高齢だという。
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左:ジョー岡田さんのツアーは地元でこう呼ばれている。「京都観光に旋風を巻き起こす!ラストサムライショー」 右:ジョー岡田さんはかつてアメリカのTV番組でサムライショーを披露したことも

彼の型破りなガイディング作法は、海外から訪れた多くの観光客を長く魅了してきた。ガイドを始めたのは前回の東京オリンピックの2年前の1962年。1ドル=360円の時代だ。だが、90年代に一時休業。21世紀に入り、訪日外国人が急増したため、東日本大震災の翌年の2012年5月、約20年ぶりにガイド業を再開した。

御年87歳のジョー岡田さんは、毎週土曜日、京都で外国客相手にウォーキングツアーを行っている。ユニークなのは、そのいでたちとコースの中身。自らサムライに扮し、腰に日本刀を差し、京都の商店街や寺院を練り歩く。そして、最後に「空中りんご斬り」をはじめとしたサムライショーを披露するというものだ。

ツアーの概要については、以下の彼の公式サイトを参照のこと。

ジョー岡田のさむらい人生
http://samurai-okada.com

通訳ガイドを再開した理由について、彼はこう語る。

「90年代に入り、円高で1ドル80円になった。これではもう続けられない。その間、土方でもなんでもやりました。しかし、こうして再び外国客が増える時代になった。90歳まで続けようと思っていたら、2020年に東京オリンピックがあるというから、91歳までやることにした」

当時といまでは、通訳ガイドをめぐる状況は何が違うかと聞くと、「インターネットが世界を変えた。かつて仕事の受注先は、旅行会社が40%、外国人のツアコン30%、国内の観光ガイド30%という比率だったが、いまでは予約はたいていインターネット」と答える。

一見無頼に見える「ラストサムライ」は、その実コミカルな笑いをふりまく熟練のガイディングの持ち主で、ITリテラシーも身につけている。ウォーキングツアーでは毎回4kmを5時間かけて歩くという健脚にも驚かされる。時代は再びジョー岡田のガイディングを必要としているのだ。

●日本にしかない独自の文化だから面白い

これまで見てきた外国客のサムライ人気。でも、一般の日本人の感覚からすると、少しベタすぎて、本当に面白いのか?そんな疑問がないではない。外国客相手には、もっとクールで、エキサイティングで、アメージングなことではなくて、いいのだろうか?

だが、そういうことではないようだ。

「サムライや城は日本にしかない独自の文化だから面白い」。
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クリス・グレンオフィシャルサイト
http://www.chris-glenn.com/

そう明快に答えてくれたのは、オーストラリアのアデレード出身のクリス・グレンさんだ。彼は名古屋のFM局のDJだが、日本のサムライ文化や城、甲冑が好きで、インバウンド観光アドバイザーとしてさまざまな地域の観光PRに関わっている。

1968年生まれのクリス・グレンさんは、85年に交換留学生として来日。帰国後、オーストラリアでラジオDJやコピーライターとして活躍し、92年再来日した。その翌年、名古屋のFM局ZIP-FMでミュージックナビゲーターとしてデビューし、現在、日曜朝9時〜13時の「RADIO ORBIT」を担当している。

昨年刊行した自著『豪州人歴史愛好家、名城を行く』(宝島社)によると、彼の趣味は、戦国時代の歴史や甲冑武具の研究、城めぐりなど。これまで訪ねた城の数は、日本全国400カ所にも及ぶという。また甲冑師にも弟子入りしている。外国人でありながら、筋金入りのサムライ文化の担い手といえる彼は、テレビ朝日『ワイドスクランブル』や毎日放送『知っとこ』などのテレビ番組にも出演。日本の文化や歴史の魅力を国内外に伝える活動を勢力的に行っている。
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甲冑を身につけ、侍に扮して地元の観光PRを行うクリス・グレンさん

クリス・グレンさんの所属事務所のパスト・プレゼント・フューチャーの加藤由佳さんは、彼がサムライ好きになった理由をこう説明する。

「彼が日本文化に興味を持ったのは、日本びいきだった祖父の影響が大きい。祖父から聞く日本の話や家にあった民芸品や伝統工芸品を見て育ち、16歳で日本留学。サムライの世界に引き込まれたのは、担任の先生に渡された吉川英治の『宮本武蔵』を読んだのがきっかけだ。彼にとって、城はサムライたちが生きた場所、戦った場所であること、また軍事施設でありながら美しさもある。こうした城の建築美、建築技術、軍事施設としての機能性など、さまざまな点に魅力を感じたようだ」。

●外国人の視点とはどういうことか

訪日旅行市場が盛り上がるなか、クリス・グレンさんは自身が案内役をつとめる歴史ツアーを企画するほか、自治体や観光施設に対してアドバイスをしたり、講演を行っている。

彼が最も大切なポイントとして挙げるのが「外国人の視点を理解する」ことだ。

その点について、彼にメールで質問した一問一答を紹介する。

―クリスさんは日本の観光PRをするうえで「外国人の視点」が大切というが、外国人と日本人の視点でいちばん違うところはどこか。

「以下のふたつのポイントがある。

①日本に関する知識
当然のことだが、日本人と外国人とでは、日本に関する知識は雲泥の差がある。そのため、日本人の知識ベースで書かれた、観光施設などの紹介文を翻訳しただけでは、通じないことも多々ある。多くの日本人には、その認識が完全に抜け落ちている。

②曖昧さを嫌う
観光パンフレットなどを見ていると、日本人は曖昧な表現や美しい言葉を並べることで、なんとなく良さげに体裁を整えているように感じる。だが、それでは外国人には何が言いたいのかわからないことが多い。外国人相手の場合は、なるべくストレートな表現で伝える必要がある」

今年4月上旬、彼が制作した名古屋城本丸御殿英語版サイトが立ち上がった。ここでは、外国人の知識や好みを考えて、彼が英文テキストの執筆を担当している。
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名古屋城本丸御殿
http://www.nagoya-info.jp/en/hommaru/

―では、「外国人の視点」を理解するために、日本人はどうすればいいか。

「そのためには、以下のことをトライしてほしい。

①逆を考える
自分が海外に行ったとき、困ること、見たいモノ・コト、事前に知りたい情報、欲しいもの、体験したいこと、食べたいものを考えてみれば、日本に来る外国人が何を欲しがるかが理解できると思う。

②外国人に聞いてみる
外国人向けのサイトやパンフレットなどの制作に、外国人がひとりも携わっていない、あるいは外国人にリサーチもしないでつくられていることが多いのには、本当に驚く。もっと外国人と話して、リアルな声を聞いて、ニーズをつかむという作業に努めるべきだ」

クリス・グレンさんは、今日の日本の外国人向け情報発信の現状は、相当深刻な事態にあると指摘する。これは多言語化以前の問題で、そもそも発信者たちは、外国人の日本に対する素朴な疑問にどこまで向き合ってきたかが問われているのだ。

その意味でも、外国客の心をつかんだサムライ人気は、日本人が自国の文化や歴史をあらためて見直す契機になるだろう。訪日旅行市場に関わる多くの人が、日本の文化を外国人にもわかりやすく説明するスキルを身につけていくことは、今後の日本のインバウンドさらに発展させていくうえで欠かせないステップになると思う。

やまとごころレポート
http://www.yamatogokoro.jp/report/2016/report_25.html
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by sanyo-kansatu | 2016-06-20 16:32 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2016年 06月 20日

中国独立映画の世界を知ると、心からリスペクトの感情がわきあがる

2年に1度、東京で開催される中国インディペンデント映画祭で上映される独立映画の世界を、朝日新聞の平賀拓哉記者が今日の朝刊で紹介しています。

中国インディペンデント映画祭2015
http://cifft.net/

「リアル」描く独立電影 検閲通さず制作、中国で圧力も(朝日新聞2016年6月20日)
http://www.asahi.com/articles/ASJ6B55TLJ6BUHBI01K.html

中国の映画界に、自由な表現を求めて政府の検閲を通さずに制作される「独立電影(映画)」と呼ばれるジャンルがある。中国社会の現実を鋭く描いた作品も多く、国内各地で専門の映画祭も開かれていたが、当局は中止に追い込むなど警戒を強めている。

4月9日、北京市郊外の非営利団体「栗憲庭電影基金」のホールに20人ほどが集まった。上映されたのは、中国で1957年に始まった知識人弾圧「反右派闘争」をテーマにした「癡(チー)」。右派と認定されて20年以上も矯正施設に収容された男性へのインタビューと、証言に基づく再現ドラマで構成されている。

共産党との内戦で敗れた国民党の幹部だった父親がいたことで当局にマークされ、ささいな言動がもとで逮捕されて妻子と生き別れに……。男性のそんな悲劇を描いたのは四川省出身の邱炯炯監督(39)。男性に関する書物を読んで衝撃を受け、撮影を決めた。邱監督は「同じことを繰り返さないよう、実際に起こったことを伝えたかった」と話す。

作品はスイスのロカルノ国際映画祭など外国でも上映されたが、中国では公開できない。映画産業を管理する国家新聞出版広電総局の検閲を受けていないためだ。

中国では検閲を通さず、小規模の人員と予算でつくられる作品は「独立映画」と呼ばれる。明確な定義はないが、映画関係者の間では「政府の統制を受けないリベラルな作品」というニュアンスで使われる。

かつて中国の映画は国営の撮影所で制作され、政府の宣伝色が強い作品も多かった。90年代ごろから作品を自主制作し、外国で発表する監督が現れた。2000年代に入ると、デジタルビデオカメラの普及などで制作が容易になり、多くの若手監督が取り組むようになった。

貧困や一人っ子政策、同性愛といった社会問題、反右派闘争や文化大革命などの現代史。独立映画には政治的に敏感なテーマを扱った作品が少なくない。中国社会をリアルに描いているとして外国で高い評価を受けることもあるが、中国の一般市民にはほとんど知られていない。

それでも00年ごろから、外国で発表された独立映画が逆輸入される形で中国内に持ち込まれ、小規模な自主上映会などを通じて知識人や芸術関係者の間で広まった。北京や江蘇省南京などでは500~1千人規模の映画祭も開かれるようになった。

独立映画の制作を支援する団体も現れた。「癡」の上映会を開いた栗憲庭電影基金は、芸術評論家の栗憲庭氏が寄付を集めて06年に設立。映像資料の収集なども行っている。

■当局が干渉、映画祭中止も
政府当局は近年、独立映画に対する干渉を強めている。栗憲庭電影基金は14年8月、それまで毎年開催してきた大規模な映画祭「北京独立映像展」の中止を余儀なくされた。

その年の映画祭初日、会場の周辺を警察官や「地元住民」という男たちが取り囲み、参加者の会場入りを阻んだ。当局は基金事務所を捜索し、約1500本の映画とパソコンをすべて押収。中心メンバーは深夜まで取り調べを受けた。

栗憲庭電影基金は昨年も地元当局の要請を受けて映画祭開催を断念した。基金関係者は「当局は作品の内容だけでなく、多くの人が集まることも警戒しているようだ」と話す。

江蘇省南京で03年から毎年秋に開かれていた映画祭「中国独立影像年度展」も、昨年は南京での開催を断念。会場を別の都市に移して規模を縮小した。関係者は「南京では1千人を超える観客が集まったが、地元政府が開催を喜んでいなかった」。映画関係者によると、雲南省昆明や重慶市でも大規模な映画祭が開催されなくなったという。

当局が締め付けを強める背景には、経済成長が減速し、官僚の腐敗や貧富の格差といった社会のひずみが顕在化するなか、独立映画を通じて体制批判が強まることへの懸念があるとみられる。ある映画関係者は「締め付けで、敏感なテーマを避けた作品も増えている」と明かす。

それでも、社会派の独立映画はなお生まれている。14年に栗憲庭電影基金の映画祭が中止に追い込まれた経緯も、「A Filmless Festival(映画のない映画祭)」というドキュメンタリーになり、インターネットの動画サイトで公開されている。ただし、中国国内では見ることができない。(北京=平賀拓哉)

実は、栗憲庭電影基金の映画祭が中止になる前年の2013年8月にぼくは当地を訪ねています。もうすでにこのときから当局による圧力や嫌がらせがあったようで、公開HPなども閉鎖し、北京郊外の宋庄にある栗憲庭電影基金の事務所の建物とその隣りの小さなスペースでひっそりと作品を上映していました。
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その前年の2012年の映画祭については、中国インディペンデント映画祭を主催している中山大樹さんが以下のレポートを書いています。

北京発/北京独立影像展の報告 text 中山大樹
http://webneo.org/archives/9854
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栗憲庭電影基金の事務所のある宋庄は、北京市内から東に向かって車で40分くらいの場所にある芸術区です。

中国インディペンデント映画関係者が集まる「宋庄」とは
http://inbound.exblog.jp/20165045/

それにしても、なぜ中国政府はこのような映画祭すら許すことができないのでしょう…。

彼らは反政府的な姿勢を持つ人たちではありません。むしろ、きわめて良識を持った人たちです。実は、この中庭の写真には、映画祭の主催者で、中国を代表する美術評論家の栗憲庭さんがちょこっと写っているのですが、この方など、世代的には紅衛兵と同世代で、中国にずっと住んでいたというのに、いつも発言は理性的かつ明晰。西側の知識人と言っていることは変わらず、すべてを見通しているかのようで、驚かされます。
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中国で開催できなくなった映画祭も、前述の中山大樹さんの尽力で、東京では開催され続けています。中国に特別関心のない人でも、あるいは反中国的な考えの持ち主であっても、彼らの考え方や作品を撮る姿勢を知れば、きちんと評価に値する人たちだと思うことでしょう。

ただし、現状では、当事者の彼らを不用意に表に出すことは、リスクにさらすことになりかねないこともあり、難しいところがあります。所詮、自分たちは日本という安全地帯にいることに気づかされます。

それでも、このような世界が中国にあることを初めて知ったとき、とても興奮したことを思い出します。その後、ひとりの北京在住の独立系の監督と親しくなったのですが、彼の作品を通じて提示される中国社会に対するまなざしに大いに共感しました。日本ではあらゆることがあまりに自由であるために、いまなすべきことが見えなくなることが多いせいかもしれません。彼らの仕事ぶりに、心からリスペクトの感情がわきあがってくるのです。

※リアルチャイナ:中国独立電影
http://inbound.exblog.jp/i29/
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by sanyo-kansatu | 2016-06-20 16:02 | リアルチャイナ:中国独立電影 | Comments(0)
2016年 06月 06日

通訳案内士の新しい動きに注目! 東京建築案内ユニットShowcase

前回、紹介した東京建築ツアーを催行している「Showcase」のメンバーは、英語通訳案内士の吉田優香さんや木原佳弓妃さん、松原智佳子さんたちで、結成は2014年末。現在、11人のメンバーが登録しています。「Showcase」は「Sense Harajuku Omotesando by Walking Come and See」の頭文字をとったのだそうです。
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銀座と表参道をめぐる東京建築ツアー(英語)が面白い
http://inbound.exblog.jp/25882521/

ところで、Showcaseでは、どういう経緯で東京建築ツアーを企画することになったのか。

木原佳弓妃さんによると「これまで外国人向け体験ツアーというと、すし握り体験のようなフードツアーや相撲部屋を訪ねるツアーが知られていたが、建築をテーマにしたツアーはなかった。代表の吉田優香が2012年春に表参道で始まったTokyo Grand Shopping Weekの事務局に関わったこともあり、表参道で外国人向けのウォーキングツアーができないかと考えていたところ、この街には魅力的な建築が点在していて、実際に外国人を案内すると反応が良かったことからコースを考えた」そうです。

さらに、「表参道周辺には、近代建築だけでなく、一般住居や団地もあり、多様な建築を歩きながら一度に見せることができる。目立たないディティールであっても、そこにデザイナーのこだわりや地域の歴史などのストーリーが込められている。その意味では、専門家ではない私たちでも、建築を通して日本文化のある側面を説明できると思う」と言います。

Showcaseのメンバーには、インテリアコーディネイターや商社勤務、書道家など、通訳案内士の有資格者でありながら、多彩な趣味や才能を持つ人たちが集まっているそうです。共通点は、建築好きであること。

今後は、表参道だけでなく、都内の別のエリアも加えたコースを増やしたいと考えており、そのトライ企画のひとつが、今回の銀座と表参道のツアーだったのでした。

彼女らが催行する東京建築ツアーには、3つの新しい特徴があると思います。

まず、日本ではまだ数少ない東京の現代的な側面を紹介する知的なカルチャーツアーであること。

たとえば、日本の大手旅行会社などが催行する外国人向けツアーをざっと見てもらうとわかると思いますが、これらにはないオリジナルな内容です。

JTB Sunrise Tour
http://www.jtb-sunrisetours.jp/
はとバス(外国語)ツアー
https://www.hatobus.com/
HIS go Japan
http://www.hisgo.com/n1/Contents

通訳案内士を多数登録しているユニークなインバウンド専門旅行会社もあります。でも、こちらは侍や忍者、書道、着物、お茶体験など日本の伝統文化に特化したツアー内容となっています。

日本文化体験交流塾
http://www.ijcee.com/

大手各社には当然のことながら、集客とコストの問題があり、コンテンツの専門性より大衆性を選ばざるをえない面があります。でも、伝統的なコンテンツだけでなく、もっと現代的なものを求める外国客もいるはず。だからといって、秋葉原に連れていけばいいのか。クールジャパンをもち出さずとも、東京の現代的な魅力をわかりやすく伝えられるツアーがもっとあっていいはずなのです。彼女らはそれにチャレンジしています。

ふたつめとして、一般の東京の外国人向け観光地の多くが東部(お台場、銀座、皇居、上野、浅草など)に偏るなか、表参道や青山といった西部地区の街歩きの新しいモデルをつくろうとしていること。これまでの東京のウォーキングツアーは、谷中や浅草方面の江戸情緒を味わうというものが多かった気がします。それはそれでいいのですが、東部(銀座)と西部(表参道)を銀座線という公共交通でつなぐウォーキングツアーであることも、ひとつのチャレンジだと思います。

3つめとしては、通訳案内士という語学のプロらが結成したユニットであり、自ら世界の旅行マーケットプレイスに名乗りを上げ、外国人からダイレクトブッキングを受けてツアーを催行していることです。
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Showcase Tokyo Architecture Tour(東京建築ツアー)
http://showcase-tokyo.com

これまで日本の通訳案内士たちは、旅行会社や通訳案内士団体から外国人ツアーのガイドを仕事として受けることが多く、営業は受身でした。しかし、今日世界には以下のようなツアーを扱うマーケットプレイスが存在し、直接外国客とガイドがマッチングできるプラットフォームがあります。

viator (世界最大の現地ツアーを扱う。最近、トリップアドバイザーの傘下に入る)
http://tourguides.viator.com/
Voyagin (2012年にサービス開始した日本発の旅行体験予約サイト。15年、楽天の傘下に)
https://www.govoyagin.com/?lang=ja
Triplelights (2013年にサービス開始した通訳案内士と外国客のマッチングサイト)
https://triplelights.com/

それぞれのサイトには特徴があり、得意分野も微妙に異なるようですが、訪日旅行市場の拡大にともない、通訳案内士自らこれらのプラットフォームに登録し、自己プレゼンテーションすることでガイディングの仕事を得られる時代になっているのです。Showcaseでも、自らのサイトに加え、Voyaginに登録して、集客しているそうです。

こうした取り組みは、これからもっと地域発のオリジナルで魅力的なツアーが生まれる可能性を示しています。一般に地元で企画されたツアーを「着地型ツアー」といいますが、ネットによるプラットフォームのない時代はそれを国内外の発地や旅行者に直接売り込むことができませんでした。しかし、いまは違います。今後は、全国でこういう動きが広がっていくことを期待したいと思います。

外国客に「娯楽サービス」は足りている?
http://inbound.exblog.jp/25886445/
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by sanyo-kansatu | 2016-06-06 14:00 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 06月 06日

銀座と表参道をめぐる東京建築ツアー(英語)が面白い

ぼくの仕事場は東新宿にあります。先ごろ、2015年に都内を訪れた外国人旅行者が初めて1000万人を超えたと報じられましたが、東新宿はおそらく都内でも浅草に次ぐか、あるいはそれ以上の外国人出没エリアだと思われます。

都内訪問 外国人客1000万人超す(朝日新聞2016年5月30日)
http://www.asahi.com/articles/CMTW1605301300004.html

※2015年に都内を訪れた外国人旅行者が前年比34%増の1189万人。13年から3年連続で過去最多を更新。

エクスペディアで都内のホテルを予約した外国人の3人に1人は新宿を選ぶ
http://inbound.exblog.jp/25331847/
東新宿は新しい外国客向けホテル地区になりつつあります
http://inbound.exblog.jp/20672715/

理由は、日本観光のハイライトである富士山と箱根のゲートウェイであること。ゆえに、高級ホテルからビジネスホテル、ホステルまで(ついでにいうと、AirBnBの登録物件の多さも都内1、2を争う)、さまざまな層の旅行者のニーズに合わせた多彩な宿泊施設が集まっているからです。

仕事場への行き帰りやランチでオフィスの外に出るとき、通りは欧米系からアジア系まで外国人だらけです。個人やカップル、小グループが大半ですが、何を隠そう中国団体客を乗せたツアーバス専用食堂も数軒あるため、昼どきは中国人があふれているという多国籍的な様相を見せているのです。明治通りに近い場所に一軒のゲストハウスが昨年冬にできて以来、窓越しに見えるロビーのカフェにはいつも若い外国客がたむろしていて、ぼくもたまにお茶することがあります。

そんな彼らを日々眺めながら、ふと思うことがあります。

彼らはみんな、東京に来て何やって時間を過ごしているのだろう。本当に満足しているのだろうか?

もちろん、浅草に行けば、日本情緒を味わいに来ている彼らを大勢見かけますし、新宿でも伊勢丹などの商業施設に行けば、買い物にいそしむアジア系の人たちがわんさかいます。最近では、サムライや忍者といった日本の歴史文化をわかりやすく体験させるスポットも増えていて、人気を呼んでいます。

なぜサムライは外国人の心を惹きつけるのか?
http://inbound.exblog.jp/25864895/

訪日客が増えると、次々に新しいエンタメやアトラクションが生まれるのは自然の流れでしょう。これらはこれで面白いと思うのですが、もう少し知的で現代的な東京体験をしたいというニーズもあるのでは。自分がパリやニューヨークを訪ねるときは、そんなに小難しくなくていいけど、カルチャー系スポットに足を運びたくなります。それにやっぱり旅ですから、街歩きも楽しみたい。では、伝統系以外で、東京ではどんなカルチャー体験が楽しめるのか。それを誰がナビゲーションしてくれるのか……。

最近、知り合ったShowcaseという通訳ガイドのユニットは、都内のユニークな建築案内に特化したツアーを始めています。

Showcase Tokyo Architecture Tour(東京建築ツアー)
http://showcase-tokyo.com

4月中旬、ぼくはオランダで建築を学ぶ学生さんたちが参加したウォーキングツアーに同行しました。銀座と表参道にあるユニークな建築群を約5時間かけて歩くというものです。以下、その実況を報告します。

待ち合わせは、お昼12時に銀座の歌舞伎座にて。ツアーに参加するのは、オランダ・ユトレヒト大学(Institute of Building Engineering)の 学生19名と引率の教師2名の皆さんです。 今回は人数が多いので、2グループに分かれて前半2時間で銀座界隈を回り、休憩後、表参道へ移動して2時間ほど歩き、17時にゴール地点の明治神宮の第一鳥居前の広場で合流して解散という流れです。
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12時少し前に歌舞伎町に行くと、学生さんたちが待っていました。近くのコンビニで買ったのか、地べたに腰かけ、お寿司を食べている男子学生もいます。

オランダ人らしく、さすがに身長が高い人が多いです。女子学生も数名いますし、留学生らしいアジア系の学生もいました。
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このツアーでは5時間かけて20数ヵ所の個性的な建築を訪ねるのですが、以下印象に残ったスポットを紹介しましょう。

ぼくが同行したグループは、まず歌舞伎座の中に入ります。5階に歌舞伎座の歴史を解説するギャラリーと野外庭園があります。
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歌舞伎座
http://www.kabuki-za.co.jp/

これは銀座8丁目にある中銀カプセルタワーです。黒川紀章が設計した世界初の実用化されたカプセル型集合住宅です。
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銀座中央通りを歩いています。
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スウォッチ・グループ・ジャパンの本社「ニコラス・G・ハイエックセンター(NICOLAS G. HAYEK CENTER)も面白いですが、ビルの合間の路地裏に潜む豊岩稲荷神社へ向かう道はちょっとした冒険です。
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NICOLAS G. HAYEK CENTER
http://www.swatchgroup.jp/boutique/nicolas-g-hayek-center/
豊岩稲荷神社
http://www.tesshow.jp/chuo/shrine_ginza_toyoiwa.html
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ソニービルの隣の銀座エルメス本店に立ち寄り、今年3月末にオープンしたばかりの銀座東急プラザでひと休み。

銀座東急プラザ
http://ginza.tokyu-plaza.com/

屋上のキリコテラスから銀座を眺めると、松坂屋の後にできる建設中の観世能楽堂(今年11月完成予定)をはじめ、あちこちに建設クレーンが見られます。訪日旅行市場の拡大によって新たな国内投資が生まれている象徴的な光景といえるでしょう。
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【銀座】松坂屋跡地に東京最大級の商業施設と観世能楽堂ができる
http://matome.naver.jp/odai/2138726263386134701

さて、銀座線で表参道へ。表参道は知る人ぞ知る、街ごと建築博物館です。個別に触れているときりがないので、詳しくは以下のサイトなどを参照してください。

東京の観光公式サイト<GO TOKYO>おすすめ建築スポット
https://www.gotokyo.org/jp/tourists/attractions/attraction/art/harajuku.html
まるで「建築」博物館!表参道青山ショップをデザイン散歩
https://haveagood.holiday/plans/1426
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最後に、明治神宮の鳥居前で解散です。個人的にも、初めて知ったスポットも多く、とても面白かったです。今度海外から友人が来たとき、いろいろ案内したくなりますね。
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とはいえ、見ず知らずの外国人旅行者を相手にこれだけのスポットを案内するのは、素人にはとても無理。当然、さまざまな質問が飛び交うことになるでしょうから、彼らを納得させる説明を外国語でするのは、プロでなければ務まりません。

だから、いまこそ通訳案内士の出番なのです。次回は、このツアーを企画催行している通訳ガイドのユニット「Showcase」の皆さんに話を聞きたいと思います。

通訳案内士の新しい動きに注目! 東京建築案内ユニットShowcase
http://inbound.exblog.jp/25883449/
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by sanyo-kansatu | 2016-06-06 11:33 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 06月 01日

あなたは日本の文化や歴史を外国人に説明できますか?

前回、オーストラリア出身のラジオDJで、サムライと日本のお城が大好きというクリス・グレンさんを紹介しました。
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なぜサムライは外国人の心を惹きつけるのか?
http://inbound.exblog.jp/25864895/

彼はそんな素朴な問いに対して「サムライやお城は日本にしかない独自の文化だから面白いのです」と明快に答えてくれます。

彼はいま「インバウンド観光アドバイザー」としても活躍しています。日本の観光PRをするうえで、いちばん大事なのが「外国人の視点を理解すること」だといいます。

これはどういうことでしょうか。

前回に引き続き、クリス・グレンさんへの一問一答です。

―まさかですが、いまでも日本にサムライがいると思っている外国人はいるものでしょうか? 

「もちろん、います。日本の人たちは「外国人」と一括りにしますが、外国人といっても多種多様です。欧米人だけが、外国人ではありません…。

子供たちの中には「サムライがいる」「忍者がいる」と思っている子もたくさんいると思います」

―クリスさんは日本の観光PRをするうえで、「外国人の視点」が大切と言っていますが、日本人の視点といちばん違うところはどこでしょう? 

「それは以下のポイントです。

日本に関する知識
当然のことですが、日本に関する知識は雲泥の差です。そのため、日本人の知識ベースで書かれた、観光施設などの紹介文を翻訳しただけでは、通じないことも多々あります。その視点が、完全に抜け落ちています。

曖昧さを嫌う
観光パンフレットなどでもそうですが、日本人は「曖昧」な表現や美しい言葉を並べることで、なんとなく良さげに体裁を整えるのが得意です。

なんとなく雰囲気で良さそうなことはわかるけど、どこがどうイイのかハッキリ伝えていないという文章が多いです。それを翻訳するときには本当に困ります。そのまま翻訳すると「ハッキリ、何が言いたいの?」と言いたくなるような文章になり、外国人にとっては、まったく魅力的ではないものになってしまいます。外国人を相手にするならば、もっとストレートな表現で伝える必要があります。

そのほか、当然のことながら、色、ビジュアル(写真)なども、国によって好みが変わりますので、そのあたりも意識をする必要があります」

実は、4月上旬、クリスさんが制作を担当した名古屋城本丸御殿英語版WEBサイトが立ち上がりました。このサイトも、外国人の知識や好みを考えた上で制作されたそうです。
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名古屋城本丸御殿
http://www.nagoya-info.jp/en/hommaru/

―では、「外国人の視点」を理解するために、日本人はどんなことに気をつければいいでしょうか。

「外国人視点を理解するためには、以下のことをトライしてみてください。

逆を考える
自分が海外に行った時に「困ること」「見たいモノ・コト」「事前に知りたい情報」「欲しいもの」「体験したいこと」「食べたいもの」を考えてみれば、日本に来た(来る)外国人が何を欲しがるかが理解できると思います。

外国人に聞いてみる
外国人のために作るWEBサイト、パンフレットなどの制作に、外国人が一人も携わっていない、外国人にリサーチもしない状態でつくられていることが多いということに本当に驚きます。

アドバイザーとして外国人の視点で、いろいろと足らない部分を指摘すると「目から、ウロコでした!」と言われることが多いです。でも、実はものすごく当たり前のことしか言っていません。それくらい、日本人と外国人のニーズは違うということです。

もっと外国人と話して、リアルな声を聞いて、ニーズをつかむという作業をすることをオススメします。そうすれば、もっと上手に情報発信をすることができるようになると思います」

クリスさんの提言を聞いていて、ふと思ったのは、彼からこう問われているような気がしたことです。

「あなたは日本の文化や歴史を外国人に説明できますか?」

たとえば、徳川家康って誰? どうして日本のお城には石垣があるの?

残念ながら、いまのぼくには、それをコンパクトにポイントを整理して、事情を何も知らない外国人相手にわかりやすく伝える自信はありません。これは語学力以前の問題です。そういうことを普段考えたことがなかったからです。でも、観光PRのキモとはこういうことなのですね。

こうした日本の文化や歴史の基本的な知識は、実は、通訳案内士試験で問われます。これらも含めて一般常識の試験もあるからです。通訳ガイドは、日々このような外国人の素朴な疑問に向き合っているのです。

やっぱりこの手のことは、専門家にまかせるしかない…!?

いえいえ、こういうのはちょっとした頭の体操として自分の地元を説明することから始めてみるといいのかもしれません。

クリス・グレンさんのインタビュー記事をネットで見つけました。よくまとめられた記事なので、こちらも参照してみてください。

オーストラリア人が提案する
世界目線の「NAGOYA」観光
https://digjapan.travel/blog/id=10531
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by sanyo-kansatu | 2016-06-01 17:34 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 06月 01日

なぜサムライは外国人の心を惹きつけるのか?

本ブログでは、このところサムライがらみのネタをいくつも書いています。訪日外国人の間でサムライや忍者、お城、着物変身スタジオなどの和風エンターテインメント体験が人気らしく、その理由を探るべく、ちょこちょこ取材していたからです。

トリップアドバイザーで人気のサムライミュージアムとふくろうカフェを覗いてみた
http://inbound.exblog.jp/25702798/
浅草でいま大流行という外国人観光客向け変身スタジオを覗いてみた
http://inbound.exblog.jp/25840662/
TBSテレビの「あさチャン」でも紹介されたサムライ体験ツアー(by夢乃屋)
http://inbound.exblog.jp/25840817/
銀座インバウンドレストランのサムライショーは中国客の食いつきがすごい
http://inbound.exblog.jp/25841438/
HISが都内各地で訪日外客向けエンタメツアーを収集・開発・販売しています
http://inbound.exblog.jp/25841804/
日本最高齢の通訳ガイド、「ラストサムライ」ことジョー岡田さんに話を聞きました
http://inbound.exblog.jp/25849969/

では、なぜこれらサムライがらみのスポットやエンタメは人気なのでしょうか。

世界最大の旅行口コミサイトのトリップアドバイザーに聞いたところ、和風エンターテインメントについての外国人の書き込みには「ショーとして面白い」「見る価値のあるエンタテイメント」「日本の文化を体験できて興味深い」などが多いそうです。

これらのコメントは月並みすぎる気もしますが、同サイトの外国人による東京都の人気観光地ランキングをみると、サムライミュージアムは2位で、以下3位は浅草、5位は明治神宮、6位は両国国技館、7位に東京都江戸東京博物館、8位は八芳園、9位はホテルニューオータニ庭園といった具合に、ほぼ和のスポットが選ばれていることがわかります。彼らにとって「日本の文化を体験」することが最重要関心事であることが見えてきます。

トリップアドバイザーで和風エンターテインメントが人気の理由
http://inbound.exblog.jp/25864340/

とはいえ、一般の日本人の感覚からすると、こういうのってちょっとベタすぎて、ホントに面白いんだろうか? そんな疑心暗鬼がないではありません。もっとクールで、エキサイティングで、アメージングなことじゃなくて、いいのかしら?

でも、どうやらそういうことではないようです。「サムライやお城は日本にしかない独自の文化だから面白いのです」。

そう明快に答えてくれた外国の方を最近、知りました。

その人は、名古屋のFMラジオ局ZIP-FMのミュージックナビゲーターで、オーストラリアのアデレード出身のクリス・グレンさんです。とにかく日本のお城や甲冑が大好きで、名古屋城の外国人向けHPを制作したり、ときどき侍に扮して、地元の観光PRもするそうです。

名古屋といえば、同地にゆかりのある武将6人と、陣笠隊の4人で結成された「名古屋おもてなし武将隊」も有名ですね。

名古屋おもてなし武将隊公式ウェブサイト
http://busho-tai.jp/

最近は、こんなニュースもありました。どうやら名古屋では、サムライや忍者が盛り上がっていそうですね。

日本初! 月給18万円で愛知県庁に雇われた“アメリカ人忍者”のニッポン愛とは
http://wpb.shueisha.co.jp/2016/05/29/65870/

さて、正式なクリス・グレンさんのプロフィールを紹介します。

1968年生まれ。85年、ロータリー交換留学生として初来日し、翌年帰国。86年、弱冠18歳にしてプロラジオDJデビュー。7年間オーストラリアでラジオDJ・コピーライターとして活躍したのち、92年に再来日。93年、名古屋のFMラジオ局ZIP-FMミュージックナビゲーターとしてデビュー。現在は、日曜朝9時〜13時「RADIO ORBIT」を担当中。

ラジオDJとして活躍するほか、日本の魅力を語る外国人として、テレビ朝日「ワイドスクランブル」、毎日放送「知っとこ」などテレビ出演も多数。甲冑師に弟子入りして制作したMy甲冑を着用し、国内外に向け日本の歴史、文化の魅力を伝えるため、イベントやテレビなどに出演するなど勢力的に活動をしている。

趣味は、戦国時代の歴史研究、甲冑武具の研究、城めぐりなど。現在までに巡った城の数は、日本全国400カ所にも及ぶ。近年は、自身が案内役をつとめる歴史ツアーを企画するほか、自治体や観光施設に対しインバウンド観光アドバイスなども行う。また「外国人から見た日本」「外国人の喜ぶ、おもてなし」をテーマにした講演でも人気を博している。

著書に「The Battle of Sekigahara:The Greatest Samurai Battle in History」(英語版)、「豪州人歴史愛好家、名城を行く」(宝島社)がある。三重県桑名市ブランド推進委員、あいち観光戦略検討委員、関ヶ原グランドデザイン策定委員、「昇龍道」磨きあげ検討委員、関ヶ原観光大使。
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クリス・グレンオフィシャルサイト
http://www.chris-glenn.com/

こういう方がいらっしゃるんですね。興味深々です。名古屋在住ということで、今回は直接話を聞くことができなかったのですが、クリスさんには、メールで質問させていただきました。以下、その一問一答です。

-クリスさんが地元で関わっているインバウンドに関する組織(あいち観光戦略検討委員、関ヶ原グランドデザイン策定委員、「昇龍道」磨きあげ検討委員、関ヶ原観光大使)での活動を教えてください。

●各種委員について

上記記載の委員については、有識者会議の位置づけで各地方自治体に設置されているものです。日本の歴史文化に造詣が深く、20年以上前から、日本、そして東海エリアの魅力を国内外に向けて発信し続けてきたという実績、外国人の目線で「日本」や「地域」を見られるということ、外国人のニーズや日本人と外国人との意識や興味の違いを理解していることから、各委員に任命されています。

●インバウンドのお仕事

オーストラリア、そして日本で、ラジオDJ、コピーライター、タレントとして活動してきたキャリアをいかし、上記委員などのほか、WEB、パンフレットなどの英文ライティング(翻訳ではなく、英文での書き下ろし)、キャッチコピーの制作、観光動画の監修、アドバイザー、シナリオ制作、ナレーション、インバウンドに関する講演、観光施設や宿泊施設などへのコンサルティング、インセンティブツアーでの講師(ガイド)、インセンティブツアー企画・プロデュース・キャスティングなど、活動は多岐に渡ります。

-サイトによると、日本甲冑武具研究保存会に所属しているようですが、クリスさんはどんな活動をしているのですか。

甲冑武具の研究について、先輩の皆様からご指導いただき、勉強をさせていただいています。日本甲冑武具研究保存会・名古屋支部は、独自に甲冑隊を結成し、各地域で開催されております歴史イベントに甲冑武者として参加するなどといったこともしておりましたので数年前までは、そういったイベントにも多数参加していました。
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-クリスさんは日本の歴史で戦国時代がいちばん好きだそうですが、なぜなのか。

・「サムライ」「武士の精神」が、一番リアルに存在していた時代であったから。
・政治的、戦略的な面でも面白みがある。
・信長、秀吉、家康といった英雄たちが、さまざまな意味で、現在の日本の礎を築いた時代であったから。
・乱世の時代に生きたサムライたちの生き様に、興味深いストーリーが多くあるから。
・甲冑、武具、城など、戦うためのものでありながら、機能性に優れているだけではなく、どれも美しく、日本の技術力や日本人の美学を感じられるから。

-最後にズバリ、サムライの魅力は何なのか。サムライに関する映画や小説などの影響はありますか。

サムライは、自分の国の歴史や文化の中には存在しない、日本独自の文化であるがゆえに魅力的なのだと思います。

甲冑、日本刀、城など、深い知識がなくても、サムライを象徴するようなものについても、なんとなく「カッコいい」という印象を持つ外国人も多いと思いますし、日本に来ないと見られないものですから、ぜひとも見ておきたいと思うのは当然だと思います(オーストラリアに行ったら、コアラを抱っこする。アボリジニの聖地エアーズロックに行くのと同じです)。

『七人の侍』など黒澤映画からサムライ文化に興味を持った人は多いと思います。そのほか『SHOGUN』『ラストサムライ』などを見て好きになった人もいるでしょうし、本では『MUSASHI』(吉川英治)『47 RONIN』などを読んで興味を持った人もいると思います。

札幌に留学していた高校時代に「MUSASHI」を読んで、サムライというものに、より深く興味を持ちました。サムライ関係の黒澤映画は全部見ています。子供の頃は、オーストラリアで日本のテレビ時代劇『隠密剣士』を見て、カッコいいなと思った記憶もあります。
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※『隠密剣士』は、1962年から65年までTBS系で毎週日曜、全128話に渡って放映された大瀬康一主演の連続テレビ時代劇。忍者ブームの火付け役だそうです。すいません。日本人ですけど、ぼくは知りませんでした。

隠密剣士の歌(ひばり児童合唱団)
https://www.youtube.com/watch?v=z_i1_0SPd-g

日本文化に精通したクリスさんの話は、言われてみると、なるほどそうかとあらためて気づかされることばかりです。彼ほど詳しくない一般の外国人にとってのサムライがらみのスポットの人気も「日本にしかない独自の文化だから見たいのだ」という理由が大きいのですね。

こういう当たり前のことに、意外と我々は気づいていないようです。

クリスさんの所属するパスト・プレゼント・フューチャーの加藤由佳さんは、以下のように彼のサムライ好きの理由を説明してくれました。

「彼が日本文化に興味を持ったのは、日本びいきだった祖父の影響が大きいようです。祖父から聞く日本の話や祖父の家にあった民芸品、伝統工芸品を見て育ったことをきっかけに、日本に興味を持つようになり、16歳で日本に留学。以来、日本の歴史文化を積極的に勉強し、知識を深めています。このときに、先生からもらった吉川英治の『宮本武蔵』を読み、サムライの世界に引き込まれています。城への興味も、元々はサムライから入っています。サムライたちが生きた場所、戦った場所であること、また軍事施設でありながら、美しさもあるという点、城の建築美、建築技術、軍事施設としての機能性など、さまざまな点で興味深いようです」。

パスト・プレゼント・フューチャー
http://www.ppfppf.com/

彼は、いったい日本びいきのおじいさんからどんな影響を受けたのだろう。おじいさんが日本でどんな経験をし、彼にどんな話として聞かせてくれたのか。また、彼の来日直後に起きた甲冑師の先生との運命的な出会いとはどのようなものだったのか……。

これらの話は、昨年刊行されたクリスさんの著書『豪州人歴史愛好家、名城を行く』(宝島社)に書かれています。
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次回は、いまや「インバウンド観光アドバイザー」として活躍するクリスさんの日本の観光PRに関する提言を紹介したいと思います。ポイントは、外国人の視点を理解することの大切さだそうです。

あなたは日本の文化や歴史を外国人に説明できますか?
http://inbound.exblog.jp/25865610/
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by sanyo-kansatu | 2016-06-01 13:19 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 05月 30日

中国の富豪たちがショックを受ける町 「大阪・富田林」を歩く

現在発売中の「Forbes JAPAN」2016年07月号は「億万長者の謎」特集です。
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http://forbesjapan.com/magazines/detail/50

同誌に以下の中国人富豪についてのコラムを寄稿しました。転載します。

中国の富豪たちがショックを受ける町 
「大阪・富田林」を歩く


中国人観光客というと、すぐに「爆買い」のイメージと結びつけられるが、本物の中国人富豪たちの来日目的は少し異なるという。

「そもそも富裕層はドラッグストアで爆買いなんてしませんよ」

こう語るのは、中国からやってくる超VIPたちから直接指名を受ける通訳ガイドの水谷浩。彼の顧客リストには日本人でもメディアを通じてよく知る中国企業の大物幹部たちがズラリと並ぶ。

彼がアテンドする中国の上級富裕層の人たちは、どんな目的をもって日本にやってくるのだろう。ビジネス半分、観光半分の「視察」もあれば、プライベートな家族旅行もある。世代によってその目的は異なるし、いわゆる「爆買い」でもドラックストアで化粧品や医薬品を大量に買うのとは大きく違う。

例えば、中国の巨大グループ総帥夫人は、京都で明の時代の銀の香炉(650万円)をカードで一括購入した。前回の来日時に日本全国の骨董店を訪ね歩き、目星をつけていたらしい。そして、「朋友(友達)」と称するプロの鑑定家をわざわざそのために同行させて、真贋を確認したうえで購入したという。

中国には若くして成功し40代で巨万の富を築いたIT企業家たちも少なくないが、いつもはビジネスや投資の話に目ざとい彼らの異なる一面を見たこともある。グループ幹部を召集した京都での会議で、息抜きに鴨川沿いをサイクリングしながら観光案内した際、ふだんは見せない気さくな素顔を見せたという。

中国ではありえない「歴史の連続性」
 
さて、その水谷が、中国のハイクラスな富裕層を相手に「この町を案内してハズしたことはない」と断言するのが大阪の富田林だ。PL教団の大本庁や、同教団が主催する夏の花火で知られる富田林だが、実は大阪で唯一の、国が指定する重要伝統的建造物群保存地区がここにはある。

寺内町(じないまち)と呼ばれるこの地区は、400年以上前に織田信長と戦っていた「宗教自治都市」で、高台の上に要塞としてつくられ、古くは江戸時代から明治、大正、昭和前期までに建てられた寺院や民家が並び、いまもそこで人々が暮らしている。

南北6筋、東西8筋の道路で整然と区画された町内には、瓦ぶきの美しい町屋が連なる。日本人にとっても魅力的なのだが、とりわけ中国の人たちには強いカルチャーショックを与えるのだという。

中国の富裕層の人たちが富田林に魅せられる理由について水谷はこう説明する。

「中国の人たちは、改革開放以降、スクラップ&ビルドの世界で生きてきた。歴史ある古鎮もすべてつくり変えられ、テーマパーク化した。ところが、ここでは200年前の民家がいまも残り、しかもそこで生活している人がいる。それが信じられないのでしょう」

中国の人たちは概して日本の歴史には詳しくない。京都は確かに中国でも知られている古都だが、観光地化が進んでおり、中国人観光客があふれているのも気に入らない。特権意識の強い富裕層はそのような俗っぽい場所を避けたいと思うのだ。

一方富田林は、彼らの目には、明の時代(14 ~17 世紀)に栄えた中国江南地方の水郷古鎮の文化の影響を受けているように見えるらしい。すでに中国には残っていないものが、日本になぜあるのか? 中国ではありえない「歴史の連続性」に、彼らは虚を突かれたような思いがするのであろう。

日本を真剣に見たい

この2月に東京で開かれた富裕層向け旅行商談会「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット・ジャパン」で、エキジビション・ディレクターをつとめたアリソン・ギルモアは「世界の富裕層の旅行にはクラシックモデルとニューモデルの2タイプがある」という。

前者は多くが新興国の一代で富を築いた社会的成功者の人たちで、豪華さやステータスを求める旅であるのに対し、後者は先進国の成熟した富裕層が中心で、より精神的な価値を求める傾向にあるという。

中国の富裕層の特徴について水谷はこう語る。「彼らはまさに創業者世代。改革開放後の30年間を裸一貫でのし上がってきたパワフルな人たちで、日本に来ると、常に最高級でなければ満足しない。ホテルは5つ星クラスで、食事もミシュラン級。要望が細かく、無理難題も多いので、毎回が格闘だ」

その意味では中国の大半の富裕層旅行の内実はクラシックモデルに属するといえる。ただし、水谷がそれだけではないと思うのは、富田林の歴史的価値に気づくような深い洞察力を持ち、日本の姿を真剣に見てみたいという人たちが確かにいるからだ。

「彼らはほんの上澄みにすぎない。だが、それだけに自分の仕事はやりがいがある」

ある国営銀行の頭取夫人は、中学を卒業したばかりの息子を連れて日本へ旅行に来たとき、水谷の案内で富田林と高野山を訪ねた。夫人は「米国留学の決まった息子に、中国と違う日本を一度見せておきたかった」と語ったという。

いま、中国の富裕層の人たちの中にも、富田林に象徴されるような、精神的価値に重きを置くニューモデルの旅が現れつつある。

※この記事に出てくる水谷浩さんについては、以下参照のこと。

中国語通訳案内士を稼げる職業にするための垂直統合モデル
http://inbound.exblog.jp/24489096/
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by sanyo-kansatu | 2016-05-30 21:55 | のんしゃらん中国論 | Comments(1)
2016年 02月 02日

無味脱色された2000年代文革系サブカル雑貨のルーツは何だったのか

2月に入り、中国の旧正月(春節)が近づいてきたせいか、都内でも中華系の個人客の姿をよく見かけるようになりました。

そんな折、正月ムードに水を差すつもりはないのですが、今週土曜、専修大学で興味深い映画上映会があります。
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中国のドキュメンタリー映像作家の胡傑監督の2本の上映会です。実は、胡傑監督は2013年12月14日に同大学で自作品を語る講演をしています。

文革時の蛮行をザンゲする元紅衛兵たち
http://inbound.exblog.jp/21886549/

これらの上映イベントを主催されているのは、専修大学の土屋昌明教授です。

個人的には、文革中に制作されたプロパガンダ・ポスターに関するドキュメンタリー作品「文革宣伝画」に興味があります。なぜなら、2000年代に入って中国では、文革時代のポスターがサブカル雑貨として広く若者に支持されていたからです。この無味脱色された文革系サブカル雑貨のルーツである1960~70年代当時のポスターの制作者やコレクターのインタビューを含む内容らしく、とても興味深いです。

中国の文革系サブカル雑貨は日本の1970年風?
http://inbound.exblog.jp/21881593/

イベントの告知は以下のとおりです。

封印された中国現代史に向かい合う(第3回)

⦿上映と討論…………………………………………………………

胡傑監督 インディペンデント・ドキュメンタリー作品
「星火」 字幕修訂版
「文革宣伝画」本邦初公開!

場所:専修大学神田校舎(地下鉄神保町)
日時:2016年2月6日(土)
「星火」上映 14:00 ~ 15:40 終了後討論30分 102 教室
「文革宣伝画」上映 16:30 ~ 17:40 終了後討論1時間 102 教室
参加自由、申込み不要

コメント:土屋 昌明(専修大学社会科学研究所)
主催・問合せ:専修大学社会科学研究所特別研究助成土屋グループ
the0561@isc.senshu-u.ac.jp

❖作品「星火」は、1960 年中国甘粛省で発生した、知識人による反体制地下活動に対する政権の弾圧事件を扱ったドキュメンタリーである。
❖作品「文革宣伝画」は、文革中に作成されたプロパガンダ・ポスターの作家たちやコレクターにインタビューして、プロパガンダ・ポスターとは何なのかを追及したドキュメンタリーである。

以下、個人的に国内外で出くわした現代における文革サブカルシーンを紹介しています。

池袋にできた「文革レストラン」に行ってきました
http://inbound.exblog.jp/21475188/
これが本場中国の「文革レストラン」です
http://inbound.exblog.jp/21480153/
池袋の「文革レストラン」再訪。紅衛兵コスプレ美女に会う
http://inbound.exblog.jp/21710468/
困るよな。習近平の時代になってますます世の中は厄介になってきた
http://inbound.exblog.jp/24539952/
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by sanyo-kansatu | 2016-02-02 08:09 | リアルチャイナ:中国独立電影 | Comments(0)
2015年 12月 27日

中国独立電影は中国版ヌーヴェルヴァーグだと思う

今日は中国インディペンデント映画祭2015の最終日です。

その後、以下の2本を観ました。それぞれまったく異なる世界で、飽きさせることがない映画祭です。

幻想曲 / Fantasia
2014年 / 86分 / 字幕 JP
監督:王超(ワン・チャオ)
http://cifft.net/gensou.htm

この作品は中国出張によく同行する友人とふたりで観にいきました。友人は同じ王超監督の『安陽の赤ちゃん』も観ていて、監督のトークショーを聞いたそうです。彼によると、王監督は実生活でも相当苦労した人で、作品からは中国庶民のある種救いのない悲哀と、それでもなんとか生きていこうとする思いが伝わってくるそうです。

4人家族の大黒柱だった父親が白血病で倒れ、輸血や治療が必要なため、そのたびに2万元(40万円)相当の治療費がかかります。最初は職場が負担してくれていたのですが、何度も倒れることから、職場の上司は今後半分しか治療費を負担できないと妻に告げます。

昔中国歌劇の女優だった妻は牛乳配達を始めますが、そんなことでは治療費はとても足りません。その姿を見て、長女はナイトクラブに勤めます。ホテルからの朝帰りでタクシーから降りると、牛乳配達している母親と鉢合わせてしまうシーンが印象的です。その後、長女は1万元を友人から借りたと言って手渡しますが、それを素直に受け取ることができない母は厨房で涙にくれます。しかも長女は後日、クラブの客から妊娠させられ、堕胎手術のために母と病院に行くことになります。

家族が崩壊していくなか、弟は学校に行くのをやめてしまいます。重慶が舞台のこの物語では、長江の風景がしばしば映し出されます。彼は学校をさぼって、廃品回収業者の仕事を手伝い、小銭を稼ぐことを始めます。その業者の仲間に同じ年ごろの娘がいます。彼女は人身売買で売られた少女でしたが、彼はほのかな思いを寄せます。物語は弟が彼女に会うため、長江のほとりに行くと、業者の船はすでにこの地を去ったことがわかるというシーンで終わります。

作品を観たあと、友人は言いました。「まったくこれが中国庶民の世界だよね。これまで自分が出会ってきた中国人を見ていると、この物語ほど深刻でないとしても、だいたいこのような境遇に近く、こういう人たちが普通に生きているのがいまの中国だ」というのです。「そうなんだよねえ…」。ぼくもそう応えるほかありませんでした。

でも、彼はこんなことも言います。「王監督の作品は、まるで自分が映像の中に入って、物語の登場人物のそばにいるような感じがする。たとえば、街のシーンで耳に飛び込む車のクラクションや人々の声など、自分が中国にいるときに聞いているものと同じで、不思議な懐かしさを覚えてしまう」。

これも同感です。中国独立電影の作品の中には、カメラを街に持ち出し、世界をそのまま切り取ろうとしているものが多く、「ロケ撮影中心、同時録音、即興演出などの手法」を駆使するヌーヴェルヴァーグの中国版と呼びうるのではないかと思います。

もちろん、中国独立電影の作品はそのようなものばかりではありません。昨日観た『K』は、カフカの小説『城』を内モンゴルに舞台を置き換えた不条理劇でした。

K
2015年 / 88分 / 字幕 JP+EN
監督:Emyr ap Richard、額德尼宝力格(ダルハド・エルデニブラグ)
http://cifft.net/k.htm

監督は内モンゴル在住の英国人と、ゴーストタウンで有名になったオルドス出身のモンゴル族の共作で、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)がプロデューサーをしているそうです。物語自体はカフカの世界の映像化ですから、だいたい想像がつくと思いますし、実際そのとおりなのですが、ロケ地も登場人物も内モンゴル自治区の砂漠地帯で行っているというのが興味深いです。

せりふも当然モンゴル語でしたし、学校の教室のシーンで黒板に書かれているのは、縦書きのモンゴル文字でした。モンゴル語の発音というのは、少し韓国語に似ている気がしましたが、登場人物の中にはずいぶんエキゾチックな顔立ちをした人たちもいます。ロシアと中国にはさまれたモンゴルというマージナルな世界の実像をよく知らない自分のような人間には、不条理劇の舞台としてこれほどふさわしい場所はないのではないかとすら思わせます。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-27 16:28 | リアルチャイナ:中国独立電影 | Comments(0)
2015年 12月 24日

中国のろくでなしバックパッカー詩人は新疆ウイグルの辺境をさまよう

「中国インディペンデント映画祭2015」の続きです。

その後、年末のさすがに忙しいさなかですが、なんとか仕事の合間を縫って、東中野ポレポレに通っています。昨日までに以下の3本を観ました。それぞれまったくバックグランドの異なる物語ですが、映像を通じて地の果てまで連れていってもらえるので、ただただ感心したり、驚いたり、ときに呆れたりしつつ、毎回飽きずに眺めています。

まず「癡(ち)」という作品から。

監督は四川省出身の邱炯炯(チュウ・ジョンジョン)。中国で1950年代後半に起きた反右派闘争で強制収容所に入れられた実在の人物の人生を再現した作品です。ご本人の語りとスタジオで再現された舞台劇で構成されています。監督はもともと現代アートの作家でもあり、凝った舞台美術の世界は、1970年代の日本の小劇場のようでもありました。この監督、2年前の映画祭では、北京の自殺したゲイのダンサーの語りをノンフィクション作品(「マダム」)としてまとめています。
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「癡(ち)」
癡 / Mr. Zhang Believes
2015年 / 134分 / 字幕 JP
監督:邱炯炯(チュウ・ジョンジョン)
http://cifft.net/chi.htm

次は「最後の木こりたち」という作品。中国最北端に位置する黒龍江省の山にこもって厳寒の真冬に4か月かけて木を伐採する男たちの仕事と生活を延々と映像で記録したドキュメンタリーです。近年まれにみる男臭い世界でした。ぼくは最初、黒龍江省の西北端にある興安嶺が舞台かと思っていたら、ハルビン市の南にある五常市の山林の伐採の話でした。この映像が撮られたのは、2004年のことで、一度07年に公開した旧編集版があるのですが、監督は昨年になって新たな再編集版をつくり直したのだそうです。

ちなみに、なぜこんなに寒い時期に伐採をしなければならないのでしょうか。作品を観た後、映画祭の主催者である中山大樹さんがいらしたので、「素朴な質問なんですが…」と尋ねてみたら、「映像をご覧になったのでわかると思いますが、伐採した木材を山から下すには、雪があるほうが滑らせることができて楽だからです」。やっぱり、そういうことですか。ちなみに、その年をもって五常市では森林伐採は禁止されたそうです。だから「最後の木こりたち」というわけです。
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「最後の木こりたち(2014年版)」
木帮 / Timber Gang
2014年 / 111分 / 字幕 JP+EN+CH
監督:于広義(ユー・グアンイー)
http://cifft.net/kikori.htm

そして、昨日観たのが「詩人、出張スル」です。上海在住の30歳の詩人が新疆ウイグル自治区をひとり旅するロードムービーですが、実際の映像が撮られたのは2002年。監督は10数年後になってようやく編集に着手し、今年初めて作品化したそうです。現在の高層ビルが立ち並ぶ新疆の都市とはまったく違う素朴な風景が映しだされていて、いまとなっては貴重な映像です。2000年代に生まれた中国版バックパッカー「背包族」のはしりのような話ともいえます。
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「詩人、出張スル」
詩人出差了/Poet on a Business Trip
2014年 / 103分 / 字幕 JP+EN+CH
監督:雎安奇(ジュー・アンチ)
http://cifft.net/shijin.htm

さて、表向きの作品紹介はそこまでとして、このロードムービー、観る人がみたら、ろくでなし映画といえなくもありません。というのも、主人公は40日間新疆ウイグルを旅しながら、そこらかしこで買春をしているからです。上映後の監督の話では16人の女を買って、それをすべて映像に収めたそうですが(こういうとき、中国人というのは実に率直だなあと思います)、結局のところ、編集作業を通じて残された買春シーンは2、3の場面のみでした。もちろん、この作品は実録映画ではなく、あくまでフィクションという設定なのですが。

そのうちひとつは漢族の女とカラオケをするシーン。そこで女は中国最辺境の地、新疆にまで流れて身を売る女たちの生き方について語ります。東北や四川の女たちはお金が目当てだが、自分はそれだけではない。30歳までに幸せな結婚をしたいと語っていました。こういう境遇の女がいかにも言いそうな話です。

もうひとつは、ウイグルの女を買春するシーンで、これは無修正のまま、性交する姿が映されます。女は「あんたは新疆まで来てあちこちで女を買っているのだろう。どこそこ(いくつかの新疆の地名が出てきます)の女はどうだったか」などと聞いてきます。そして、ことがすんだあと、「私と結婚してくれ。そうすれば、上海でもどこでも好きな場所に行けるから」と冗談まじりに主人公に言います。

まったくこの映像をいまのイスラム国の人にでも見せたら大変なことになるぞ、といいたくなるような、あいかわらずの漢族の無頓着さが気になりますが(だって、この映像を公開することについて、登場してきた女たちに了解など取っていないでしょうから)確かに2000年代の前半は、まだ漢族と新疆ウイグル族の関係は、いまほど悪化はしていなかったのでしょう。

とはいえ、詩人というのは本当に役得というべきか、このろくでもない旅が、なぜかそんなに嫌味でもないのです。ロードムービーというのは、風景がどんどん変わっていくぶん、観る人を飽きさせないところがあるせいか、いつ終わりが来るともしれない男の旅を見入ってしまうのです。

この作品の特徴として、ストーリーの合間に16本の詩が挿入されます。とてもいいです。ただ、この作品を通して、40日間詩人に向かってカメラを回し続けた監督は何を伝えたかったのか。

まあそれが何かと口にしてしまうと、あっけない気もするので、聞く必要はないのかもしれません。

中国独立電影の世界は実に多種多様で、つかみどころがなく、でもなんとなく、いまの中国人がどのように生きているかを教えてくれます。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-24 10:03 | リアルチャイナ:中国独立電影 | Comments(0)