ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 01月 10日

中国の最果ての地、満州里からロシアへの日帰りボーダーツーリズム

満州里は中国内蒙古自治州フルンボイル市の西端に位置するロシアとの国境の町です。1901年に東清鉄道の駅を開業したのが町の始まりで、日本がこの地に満洲国を建国するまでは、モスクワとウラジオストクを最短で結ぶ鉄路の要衝でした。

※「満州里(Маньчжурия)」はロシア語で「満洲(Manchuria)」 を意味します。
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数年前まではロシアからの木材の集積地として発展していましたが、中国およびロシア経済の減速によって木材バブルが崩壊し、経済的には厳しいと地元の人は話しています。

それでも、市内には一時期の名残のように、高層ビルもいくつか建っています。

これは満州里駅です。市内には車も多いです。1990年代までは、北京からシベリア鉄道に乗ってモスクワへ向かう1週間の鉄道の旅に参加する人たちが、日本人に限らず、けっこういました。いまでは、短い夏の間、フルンボイル草原を観光する国内客のための拠点の町のひとつとしてそれなりににぎわっています。
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満州里のもうひとつの観光テーマがロシアへのボーダーツーリズムです。以前、黒龍江省の黒河のボーダーツーリズム事情について書きましたが、同じような日帰りツアーが満洲里にもあるようです。

黒龍江省北辺の町、黒河のボート遊覧とロシアへの日帰り観光
http://inbound.exblog.jp/26537280/

残念ながら、このツアーに参加するためには、黒河の場合と同様に、ロシア側の国境の町であるザバイカリスクを入国地として記載したロシア観光ビザを東京のロシア大使館で取っておく必要があります。

そのため、以下の情報は現地の旅行会社で入手したツアーパンフレットや、ネット上で見つけた中国人が実際に参加したツアーを報告したブログの記事からの内容を取りまとめたものです。

まず、これが満州里とお隣のロシアの町、ザバイカリスクの位置です。
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もう少し詳しくGoogleMapでみると、こうなります。ちなみに、中国人のボーダーツアーに登場する3つの町は以下のとおりです。
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ザバイカリスク(后贝加尔斯克 Забайкальск)
クラスノ カメンスク(克拉斯诺卡缅斯克(中国名:红石市) Краснокаменск)
ボルジャ(博尔贾 Борзя) ※地図外(左上)

これは中国のオンライン旅行会社大手のCTripのサイトで募集していた日帰りツアーの情報です。現地の旅行会社に聞いたときは、日帰りツアーは500元と言われましたが、ネット上では390元で販売しているようです。

俄罗斯红石一日游(ロシア紅石日帰りツアー)
http://you.ctrip.com/dangdiren/service/18821.html

ここでいう「紅石」というのはどの町を指すのか最初はよくわからなかったのですが、中国のネットを見て回っているうちに、クラスノ カメンスク(克拉斯诺卡缅斯克(中国名:红石市) Краснокаменск)であることがわかりました。

ツアーパンフレットによると、1日のスケジュールは以下のとおりです。

朝6時集合。国際バスで国境ゲートを抜け、ザバイカリスクへ。この間は18kmです。1904年に開業したザバイカリスク駅舎を訪ね、そこから約140km離れたクラスノ カメンスク(克拉斯诺卡缅斯克(红石市)へ向かいます。この町は1968年に建市されたばかりの新しい町で、人口は約8万人。この地域では大きな町のようです。都市施設も比較的整っているようで、訪問先として記されるのが以下のスポットです。

パブロフ広場
東方正教会
レーニン像
第二次世界大戦記念広場
第二次世界大戦英雄戦車

まるで中国国内でかつて一斉風靡した毛沢東と共産党のゆかりの地を訪ねる「紅色観光」のようです。

共産党の歴史や思想がコンセプト、「紅色観光」がブームに―中国
http://www.recordchina.co.jp/a50318.html

もっとも、参加する中国客の関心は、ロシア人の住む町を訪ね、地元料理を食べたりすることにあるようです。詳しいツアーの様子は、実際にこのツアーに参加したふたりの中国人のブログをみると、よくわかります。はっきり言って、シベリアの辺境の鄙びた田舎町を訪ねているのにすぎないのですが、地元のロシア人の結婚式風景に出合ったり、スーパーでロシア食材を購入したり、ほのぼのとしたロシア旅情を味わっている様子です。

俄罗斯红石市--- 一座活在记忆里的城市
http://mozhiyu6.blog.163.com/blog/static/1404415202013710102944554/

俄罗斯猎奇----神秘的克拉斯诺卡缅斯克(红石市)
http://blog.sina.com.cn/s/blog_91658d830102vrzo.html

こちらは、ロシア国境の町のザバイカリスクと日帰りツアーで訪ねるクラスノ カメンスクに加え、ボルジャという町を周遊する2泊3日のツアーです。

满洲里出境-俄罗斯红石、博尔贾、后贝加尔斯克三市两日民俗游(2泊3日ツアー)
http://www.cncn.com/xianlu/649044287354
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以下は、満州里発ボーダーツーリズムの関連スポットです。

これが鉄道のロシア国境です。2年前までは、国門旅游区として中国側の国境塔に外国人も登ることができたのですが、2016年夏に訪ねたときは、外国人はNGになっていました。
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これは前述の日帰りツアーのバスが出る満州里の国境ゲートです。
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ロシアから来た旅行者が荷物をいっぱい車に積み込んでいます。
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これはツアーではなく、中ロの一般旅客が利用する国際バスターミナルです。
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ここでバスチケットを買います。満州里からザバイカリスクまでが92元、ボルジャまでは102元(なぜか復路は132元)です。
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陸路の国境に囲まれた中国の人たちがお隣の国へのボーダーツーリズムを気軽に楽しんでいることがわかります。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-10 16:14 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(1)
2017年 01月 07日

黒龍江省北辺の町、黒河のボート遊覧とロシアへの日帰り観光

極東ロシア人たちが国境を越えてお隣の中国旅行を楽しんでいる話を以前しましたが、もちろん中国の人たちもロシアへのボーダーツーリズム(国境観光)を盛んにやっています。

ロシア最果ての地の人たちは中国でどんな旅行を楽しんでいるのか(黒河編)
http://inbound.exblog.jp/26503104/
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たとえば、黒龍江省北辺の黒河では、黒龍江(アムール河)のボート遊覧が楽しめますし、対岸のロシア・アムール州の州都ブラゴベシチェンスクへの日帰りや1泊2日のツアーも催行されています。
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シベリアのかなたから黒土を運んでくる黒龍江の河の色は、近くで見ると泥色をしているのですが、夏になると晴れ渡った空の青みを映し出して、まるで海のようです。さすがにここまでは北京のPM2.5は届いてこないため、空気も澄んでいて、避暑を過ごすには気持ちがいい町です。この町の人たちは、約1kmほど離れた対岸のロシアの町を眺めながら暮らしています。この雰囲気は、タイやラオス、ミャンマーが国境を接するゴールデントライアングルで暮らす人たちの様子ととても似ています。

インドシナ3カ国が接するゴールデントライアングル最新国境風景
http://inbound.exblog.jp/22434567/

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冬になると、河は氷結します。この写真は春になって氷が溶け出している時期のものですが、黒龍江から押し出された氷の流れ着く先が、北海道網走の流氷というわけです。
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さて、この辺境の地を訪れた中国の人たちが必ず乗るのが黒龍江の遊覧ボートです。河沿いがずっと公園になっているのですが、その西端にボートの発着場があります。夏の間は、朝8時過ぎから1日6~7回、つまり1時間に1本くらいの間隔でボートは出ます。時間は決まっていなくて、客が数十人くらい集まった頃合いにのんびり船出します。料金は40元でした。所要30分くらいのショートボートトリップです。
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ふと見ると、河で泳いでいる人たちがいます。
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さて、ボートは下流に向かって走り出します。乗客は対岸のロシアをじっと眺めています。
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しばらくすると、対岸が近づいてきました。マンションが見えます。実は、ぼくが初めて黒河を訪ねたのは1990年のことです。その当時は、まだロシアにはこんな高いビルはなく、町並みもくすんでいました。中国側の黒河も同様で、満洲国時代の建物も数多く残っていて、町で「仁丹」と書かれた広告のペイントすら残っていたことを思い出します。もちろん、いまはまったく別の町のようです。
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河沿いでは、ロシア人たちが水浴びを楽しんでいます。
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観覧車も見えます。
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ライフセーバーの監視員もいます。
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以前、ウラジオストクに行ったときも、ロシアの人たちはこの時期(7月)、海水浴を楽しんでいました。おそらくシベリアの果ての極東ロシアで水浴びができるのは、7月から8月上旬くらいまででしょう。短い夏を楽しんでいる様子がうかがえます。

短い夏を満喫。ウラジオストクで海水浴
http://inbound.exblog.jp/20112110/
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サングラス姿の若いママさんもいました。
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ロシアの町だけあって、町並みはきれいです。中国側に量産されているなんちゃってロシア風建築とはモノが違います。
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さらに、下流に向かうと、コンテナ埠頭や中国との国境ボートの発着する港も見えてきました。
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乗客たちはこうしたロシア人の様子を望遠鏡でじっと眺めています。まさにボーダーツーリズムを楽しんでいるのです。
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ブラゴベシチェンスクの町外れあたりでボートは中国側に向かって折り返します。
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途中、ロシア人を乗せた遊覧ボートが近づいてきました。
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彼らもまたボーダーツーリズムを楽しんでいました。
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さて、ここまでは第三国人であるぼくも気軽に参加できるのですが、お互いの国へのビザなし日帰り観光ができるのが両国民の特権です。もちろん、日本人でも東京のロシア大使館で入国地をブラゴベシチェンスクと記載を入れたビザを取れば、中国人と一緒にツアーに参加できるそうですが、まあ面倒です。日露平和条約が結ばれたあかつきには、北方四島で同じことが実現されることになるのでしょうか。
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市内にはいくつかの旅行会社があります。黒河からはロシアの3つの都市へのツアーが催行されているようです。「布市」がブラゴベシチェンスク、「海参威」がウラジオストク、「哈吧」がハバロフスクです。ブラゴベシチェンスク行きは日帰りだけでなく、1泊2日、2泊3日もあるようです。
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日本人が訪ねてくることなどまずないので、珍しがられてロシア日帰りツアーの話をいろいろ教えてもらいました。
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これがブラゴベシチェンスク行きの日帰りと1泊2日のツアーパンフです。日程は、早朝7時に黒河口岸(イミグレーション)に集合。夏は船で、冬は氷結した河上をバスで渡ります。
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主な訪問地は、この写真にあるように、レーニン広場や凱旋門、シベリア鉄道駅、州政府ビルなどの古いロシア建築や教会をめぐり、ロシア料理の昼食を取る。午後は自由行動で、日帰りなら夕方には黒河に戻るというもの。1泊2日は、市内のホテルに宿泊し、ロシア人宅への家庭訪問などのメニューもあります。

ツアー料金は安く、日帰りで450元、1泊2日で750元が相場だそう。

実は、1年後に東京でロシアビザを取って黒河からブラゴベシチェンスクに渡り、シベリア鉄道でハバロフスクまで行き、中国に再び戻ってくる取材を計画しているところです。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-07 10:44 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2016年 12月 28日

実は香港客だった!?「新千歳空港で中国人観光客大暴れ」報道、中国側の反論

先日、新千歳空港で起きた「中国人観光客大暴れ」報道については、中国でも話題になっていたようです。

「「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ」の背景を考える
http://inbound.exblog.jp/26507044/

上海在住の友人はこう言います。

「中国のSNS上では、中国人の恥さらしだ、けしからん。そう嘆く人も多いのですが、一方で航空会社の不手際と空港側の対応を非難する声も多いです。事実かどうかわかりませんが、彼らの反論の主旨は「航空会社がホテルを手配せず、3日間も空港での缶詰め状態で、かつ中国だったら当然ある飲食の差し入れもなく、そして航空会社からの満足のいく説明がない。これなら乗客が怒って当たり前だ。これで黙っているのは、異常な忍耐力のある日本人だけだ。これでおもてなしとか、サービスが良いとか言ってる日本人が聞いて呆れる」というものです。

ここでのひとつのポイントは食事です。天候不順やよくわからない理由で航空機が遅延した際に航空会社の職員に詰め寄って、大声で抗議しまくるのは、中国大陸ではよくあることです。ニュースになるなんてありえないくらい、本当によくあることです。

ただそういった場合、中国の航空会社も慣れたもので、まずお詫びと誠意の印として弁当などの食事とミネラルウォーターを出してくれます。中国人の気を静めるのに「食事」が重要だということをわかっているからです。食への思い入れは、日本人には想像できないものがあります。だから、航空会社は乗客を絶対に空腹にさせないことをまず考えます。中国人に日本人のような忍耐力と自己犠牲を求めるのは不可能です。他のみんなも同じ状況なのだから、自分だけ不平不満をいうのはやめようなどとは、考えられない人たちです。

そういう事情をふまえて中国側の記事を読むと、少しでも中国事情に精通している人であれば、なるほど彼らが言いたいのはそういうこと(日本側にも落ち度があったに違いない)かと納得できます。そこがわからないと、また愚かで傲慢な中国人がバカをやらかしているという最近日本でよくある失笑誘いネタになってしまいます。

今後も、アジア、特に中華圏からの観光客が増えていくなかで、マナーうんぬんは別にして、空港など公共施設や交通機関は、リスク管理が必要だと思います。

ちなみに、今回トラブったのは、正確には中国大陸人ではなく香港人のようです。そのことに、日本のメディアがどこまで気がついていたのか。もしそれを承知で「中国人観光客」と書いているのだとしたら、最近の中国人を蔑んで喜んでる系の大衆迎合報道と受け取られても仕方がありません」。

そうなんです。騒ぎを起こしたのは、中国客ではなく、香港客だったというのです。あるいは、これでは中国報道をただうのみにしたことになるので、公平を期して言うと、香港便の乗客だったようなのです。ただし、香港便は広東省住民もよく利用するので、本当のところはわかりません。

※新千歳空港の香港便は、日本航空とキャセイパシフィック航空(共同運航)、そして中国の海南航空のグループ会社の香港航空です。

さらに、彼のいう「それを承知で「中国人観光客」と書く」という意味は、ちょっと込み入っています。中国では、香港も台湾も「ひとつの中国」として見ています。つまり、香港人も台湾人も中国人だというのが中国政府の主張です。一方、日本に限らず海外のメディアは、「ひとつの中国」という主張を一応受け入れながらも、実は香港も台湾も民主的な社会である以上、中国とは別物として見ています。実際、当の本人たちもそう考えている。ですから、今回日本のメディアが騒ぎを起こした香港客のことを「中国人観光客」と書くことは、中国政府の主張に立てば間違っていないのですが、中国のネットユーザーからみると、「普段は香港も台湾も中国とは別物」と言わんばかりの日本のメディアが、粗相をしたときに限って、香港客を「中国人観光客」と書くのは底意地が悪すぎる、というわけです(ああ、面倒臭さい)。

以下は、中国版SNSのWe Chat(微信)に転載された記事です。

100余名中国游客航班延误大闹日本机场?这些幕后细节你也要知道!(100名の中国客が日本の空港
で大騒ぎ? あなたはこの舞台裏の詳細を知らなければならない) (原创 2016-12-26)
http://mp.weixin.qq.com/s/m-9PhwJQNwt3RB5zhNlB4w

上海の友人の見解は、この記事を読んで書いたものでした。日本のメディアでは一方的に中国客が悪いと報じているけれど、日本の空港側にも不手際があったのではないか、という中国側の反論です。彼らがこのように言いたくなるのは、以下のような日本のテレビ番組に対しても見られたものと共通しています。彼らだって言われ放題ではたまらないと思うのは当然のことでしょう。

中国人は自国の観光客マナー問題を煽る日本のテレビ番組に耐えられない!? (2016.5.30)
http://inbound.exblog.jp/25834092/

彼のメールを読みながら改めて思ったのは、不測の事態に陥った中国人にケアする際の「食事」の重要性の認識です。このあたりは、日本人にはまったくわからないですよね。日本人なら、物事には優先順序があり、まず重要なのは正確な情報で、こんなときに食事のことなんて言ってる場合じゃない。それが普通の感覚でしょう。

でも、彼らはそうではないのです。ひとまず落ち着かせるためには、食事に最も気を使うべきだった、というわけです。だとしても、3日3晩も夜明かしした人がいたとしたら、それどころの話ではなかったでしょうけれど。

要は、彼が言いたいのは、これだけ中国客が増えた以上、中国客専用の「取り扱い説明書」をつくり、その内容を空港関係者も把握しておかなければ、今回のようなことがまた起きるということです。

空港側が実際に夜明かし客にどのような対応したか具体的に知らないのに、あれこれ書くのは気が引けますが、考えられることは、空港側と外国客との間のコミュニケーションが十分とはいえなかっただろうということです。

基本的に日本人には中国人のモノの考え方がよくわからないので、日常的にもコミュニケーション不全に陥りやすいわけです。である以上、こういう特殊な状況ではなおさら、マニュアル的な対応だけでは、中国の人たちに対して、こちらの配慮も届かないことをまずは知るべきなのでしょう。

一方、香港のような亜熱帯に暮らす人たちは、大雪で欠航という事態を頭ではわかっても、現実的に受けとめることは簡単ではないことが考えられます。彼らにとって大雪とは天変地異と変わらないでしょうから。それだけ彼らは精神的に追い詰められていたということでもあります。

日本人の感覚では、空港の滑走路を覆う大雪を見ながら「こういう状況なんだから、しょうがないでしょう」と暗黙のうちに、言葉をかけなくても、相手も理解してくれるだろうと期待するかもしれません。しかし、それが以心伝心で伝わるのは、国内客とサハリンから来たロシア客だけだったかもしれません。

まったく難しいものです。

【追記】
その後、この件の真相を解き明かす検証記事が出てきました。

興味深いことに、以下の記事では、中国側が指摘する「騒動を起こしたのは、中国客ではなく、香港客(正確にいうと、香港線の乗客)」は誤りのようで、「13:50発予定の北京行の中国国際航空のCA170便」の乗客であるかのように書かれています。

「新千歳空港で暴れた中国人乗客」騒動の真相(Wedge2017年1月17日)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8701

えっ、騒動を起こしたのは、やっぱり中国客だった? 

一方、この記事を受けて、ひとりの在日中国人の論客が以下の記事を書いています。

中国人観光客による新千歳空港での「暴動」、真相はこうだった(ダイヤモンドオンライン2017.1.19)
http://diamond.jp/articles/-/114700

これによると、「新千歳空港で3日間も足止めされた香港の女優ミッシェル・リー(李嘉欣)もいよいよ我慢できなくなったのか、12月25日未明の3時頃、SNSの微博にキャセイパシフィック航空を名指して、私たちは新千歳空港で3日間も待たされていたのに、キャセイパシフィック航空から情報の連絡や手配の一つも提供されていない。一方、他の航空会社は次々と運航を再開した、と批判の書き込みをした」とあり、おそらくこれに中国側が反応して、「騒動を起こしたのは香港客」という判断が生まれたでのはないか、という気がしないではありません。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-28 20:40 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(3)
2016年 12月 27日

「「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ」の背景を考える

年の瀬にこんな話を書きたくないのですが、また訪日中国客の騒ぎが報じられました。TBSが伝えています。

「大雪欠航」でゲートに乱入、新千歳空港で中国人観光客大暴れ(TBS系(JNN) 12/26(月) 14:10配信)
https://www.youtube.com/watch?v=3Og11ZvYUrM


大雪の混乱が続いた北海道の新千歳空港で、飛行機が欠航したことに腹を立てた中国人が、警察官に激しく詰め寄る騒動がありました。

中国人観光客がゲートを勝手に越え、駆け付けた警察官に激しく詰め寄ります。撮影されたのは24日午後8時ごろ、新千歳空港の国際線ターミナルで、大雪のため飛行機が欠航したことに腹を立て、100人ほどの中国人が騒ぎ出しました。さらに、数人がゲートを勝手に越えたため、警察官と小競り合いになりました。この騒ぎによるけが人はいませんでしたが、2人が気分が悪くなり病院に運ばれました。

新千歳空港では大雪の影響で、22日から24日の3日間で、1万1600人が空港で寝泊りしました。


いったいなぜこんなことが起きてしまったのか。現場で取材することはできないので、ネットなどで知りうる限りの情報から考えてみたいと思います。

まず北海道の天気から。確かに、今月22日(木)、23日(金)と札幌は大雪だったようです。

札幌の過去の天気(2016年12月)
http://weather.goo.ne.jp/past/412/

NHKも大雪による欠航や「新千歳空港では23日に284便が欠航し、空港で夜を明かした人がこれまでで最も多い6000人に上」るとすでに報じていました。「50年ぶりの大雪」ともなれば、夜明かしも無理はないことでしょう。

北海道で50年ぶりの大雪 交通への影響続く(NHK12月24日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161224/k10010818641000.html

北海道では各地でまとまった雪が降り、札幌市では12月としては50年ぶりの大雪となりました。JRが札幌駅を発着する24日午前中のすべての列車を運休するなど、影響が続いています。

札幌管区気象台によりますと、北海道の各地は23日、日本海側の南部を中心に大荒れの天気となり、雪が降り続きました。

札幌市では23日午後9時すぎに96センチの積雪を観測し、12月としては昭和41年以来50年ぶりの大雪となりました。

札幌市では24日午前中から除雪に追われる人たちの姿が多く見られました。このうち札幌市北区の住宅街では、住民が道路に出て、シャベルなどを手に、家の前に降り積もった雪を次々に片づけていました。

除雪された雪は場所によっては2メートルほどの高さにまで積み上げられ、山のようになっています。

雪の山が車道にはみ出して、車1台がやっと通れる幅しかないため、行き交う車が道を譲り合う様子などが見られました。

70歳の男性は「雪かきの作業を始めて2時間くらいたちます。今月は珍しいくらいに次々に降るので、除雪も大変です」と話していました。

また、28歳の男性は「クリスマスイブに雪があるということは、ロマンチックでいいことなのでしょうが、雪の量があまりにも多いので、半分くらいがちょうどいいですね」と話していました。

気象台によりますと、24日は冬型の気圧配置が緩み、天気は回復していますが、気象台は積もった雪による雪崩や交通への影響に注意するよう呼びかけています。

新千歳空港 混雑続き遅れも

23日に欠航が相次いだ北海道の新千歳空港は、24日もキャンセル待ちの人などで混雑し、発着便に遅れが出ています。

国土交通省新千歳空港事務所などによりますと、新千歳空港では23日に284便が欠航し、空港で夜を明かした人がこれまでで最も多い6000人に上りました。

24日も航空会社のカウンターの前にはキャンセル待ちをする人などで長い列ができています。

搭乗手続きに時間がかかっているほか、JRが運休している影響で、発着する多くの便に遅れが出ています。また、空港のバスの乗車券売り場は、JRが運休している影響で、バスで札幌などに向かおうと長い列ができていました。

空港事務所によりますと、24日は1日を通してまとまった雪は降らない見通しで、機材繰りで欠航となっている一部の便以外は運航する予定です。航空各社は、今後も発着に遅れが出るおそれがあるとして、最新の運航状況を確認するよう呼びかけています。


さて、この事件の背景がだんだん見えてきました。

問題は、すっかり晴れたという24日(金)になっても、乗れない人たちが続出したことだと考えられます。乗客たちの多くは当然、飛行機に乗れるだろうと思ったのに、そうならなかったこと。これが一部の中国客の混乱を呼んだものと思われます。

しかし、空港の除雪作業もあったでしょうし、何より3日間で「1万1600人」が空港で夜明かししたわけですから、当日客もいる以上、どんなに機材をやりくりしても、全員が乗れると考えるほうが無理があったと思われます。

空港で夜明かしした人は、国内客も含め、中国客ばかりではなかったことでしょう。新千歳空港の国際線は、中国線以外にも、ユジノサハリンスク(ロシア)やソウル、プサン、大邱、台北、高雄、香港、バンコク、クアラルンプール、シンガポール(ホノルルとグアムはアウトバウンド路線なので外国客は少ない)があります。

ちなみに中国路線は以下のとおりです。

北京
中国国際航空CA170(全日本空輸 NH5757) 13:50発 火・水・金・土・日曜運航(12月19日から毎日運航)
天津
天津航空GS7972 20:05発 金・日曜運航
上海
中国東方航空MU280(日本航空JL5633) 13:30発 毎日運航
春秋航空9C8792 13:50発 毎日運航

新千歳空港HP
http://www.new-chitose-airport.jp/ja/

これをみると、北京、天津、上海のすべてが木・金いずれかが運航日になっているので、中国客の多くが空港で夜明かししたことがわかります。

一般に天候などの理由で国際線が欠航した場合、乗客は航空会社が宿泊ホテルを手配し、そこで一夜を明かし、翌日便に振り返られます。実は、ぼくは北京空港で2年連続欠航の憂き目に遭い、航空会社が手配した空港に近いホテルに泊められたことがあります。

ただし、北京で欠航になったのは、大雪ではなく、PM2.5による視界不良で航空機の発着が不可能になったためでした。最近も改善していないようです。

北京の街が白く…PM2.5で大気汚染深刻(日テレNEWS24 2016年12月20日)
http://www.news24.jp/articles/2016/12/20/10349524.html

中国・北京で20日朝、大気汚染物質PM2.5の値が上昇するなど状況が悪化している。

16日から大気汚染警報としては最も重い「赤色警報」が発令されている北京では、20日朝、PM2.5の値が日本の環境基準の10倍以上になった。警報を受け、北京では車のナンバーによる車両規制を行ったり、一部の工場で操業を停止したりするなどの緊急措置がとられている。

市民「気持ち悪い気がするが、マスクをするとだいぶマシになる」

来年2月からは排ガス規制の基準を満たさない乗用車の中心部への乗り入れ禁止などが決まっているが、対策が追いついていないのが現状。


中国の新人類は日本の青空に魅せられている
http://inbound.exblog.jp/24302307/

そのとき、ぼくはチェックインをする前から遅延だと言われ、空港で5時間近く待たされましたが、結局、夕方になってようやく欠航だと告げられました。北京空港の空の事情ゆえに、日本から航空機を本当に飛ばして大丈夫なのか、決めかねていたものと思われます。大雪とか台風といった理由ならわかりやすいのですが、PM2.5による視界不良という事態は、中国ならではの特殊な事情だからです。実際、空港は深い霧に覆われたような世界でした。空港に向かうタクシーも50m先くらいしか見えない状態でした。

「いったい、どうなるの? まさか、ホテルを手配してくれないってことはないよね」。

こういうときに、どう適切に乗客に対応するかが航空会社のサービスの評価になるのですが、たとえ日系航空会社の便だとしても、北京線は中国系との共同運航も多く、実際は中国系と変わらない場合も多い。

で、当然のように、きちんとした説明もなく、いきなり数人の職員が現れ、「これからホテルに移動します」と声をかけられ、バスに乗ることになりました。特に欠航の理由を説明されたわけでもなく、まあひどい対応です。こういうとき、中国人はすぐに官僚的になり、サービスのことなど考える余裕すらないようです。実は、ぼくは同じことを2年連続で経験したため、2度目のときは、市内に戻り、昨日まで泊まっていたホテルに頼んで連泊扱いにしてもらいました。

あてがわれたホテルとそこで供された食事がひどかったせいもありますが、せっかく滞在が延びたので、友人と一緒に食事をするほうがずっと楽しいと思ったからです。

結局、こういう場合、地元客は自宅に帰って待機すればすむ話なのですが、外国客はそうはいきません。ぼくの場合も、通い慣れていた北京だったので、しかも同じことを2度も経験したことから、それなりの対処法をとることができたわけです。

でも、そうはいかないケースがほとんどでしょう。これは特に中国線にいえることですが、北京、天津、上海線のどれも大半の乗客は、日本客ではなく、中国客だからです。つまり、欠航した航空会社が彼らのためにホテルを用意できたかというと、(これは事実確認できない以上、よけいなことは書けませんが)当然難しかったでしょう。空港周辺のホテルの客室には限りがありますし、クリスマスシーズンを北海道で楽しみたいと訪れたいた外国客はハンパなく多かったからです。

また、はっきり言えば、海南航空のグループ企業にすぎない天津航空やLCCの春秋航空では、最初から対応することは考えていなかったでしょう。LCCは安価と引き換えに自己責任が伴うのは世界の常識です。

ところで、このニュースをぼくは最初、ヤフーで知ったのですが、コメント欄をみると、あるジャーナリストの以下のような書き込みがありました。

「こうした出来事によって、日本人の中国人全体に対する悪感情が強まるだろうと思うと、とても残念です。多くの日本人は「ああ、やっぱり中国人は・・・」と思うことでしょう。でも以前、私の上海の友人も新千歳空港でまったく同じ出来事に遭遇して、悲しい思いをしたことがあったと話してくれたことを思い出しました。その人は日本語ができるので、暴れる中国人たちを制止して、厳しく注意した上、日本のマナーを教えてあげるとともに、このような出来事によって、他のちゃんとした中国人が日本の旅行先で、どんなにつらい思いをしているかわかるか、と涙ながらに語った、と話してくれました。今回、現場がどのような状況だったかわかりませんが、暴れた中国人たちが、日本人の係員や空港関係者に迷惑を掛けただけでなく、中国人観光客全体のイメージも大きく下げていることに気づいてほしい、と願うばかりです」

う~ん、これどうなんでしょう。

これまでぼくは本ブログでも、訪日中国客の増加に伴いメディアなどでも扱われるようになったこの種の騒ぎについて書いてきました。特に今年に入ってその回数は増えています。

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は? (2016.3.5)
http://inbound.exblog.jp/25461430/
中国人は自国の観光客マナー問題を煽る日本のテレビ番組に耐えられない!? (2016.5.30)
http://inbound.exblog.jp/25834092/
韓国メディアが教えてくれた銀座のツアーバス駐停車90秒ルール (2016.6.15)
http://inbound.exblog.jp/25913731/
中国個人客の増加で電車内でのトラブルが増える予感 (2016.11.15)
http://inbound.exblog.jp/26380202/
〔TBS・Nスタ〕中国人観光客はなぜ民家に侵入して自撮りをするのか? (2016.11.16)
http://inbound.exblog.jp/26383490
中国客が挙動不審に見えてしまう理由(すでに個人比率54%というけれど) (2016.11.19)
http://inbound.exblog.jp/26390881/
じわじわ増えている医療観光だが、盲点を突くあの手この手の不正も明らかに (2016.12.9)
http://inbound.exblog.jp/26442310/
中国クルーズ客の失踪と不法就労摘発報道 なぜ彼らはそこまでやるのか (2016.12.16)
http://inbound.exblog.jp/26479516

この種の報道があるとき、いつも思うことですが、件のジャーナリストのような情に訴えるようなもの言いは、広く共感されるようには思えません。もちろん、ネットに安易に書き込まれる悪意のこもった文面をみると、そんな正義感もわいてくるのかもしれませんが、大半の日本人は中国の現状を知る限り、自分には関係ないし、彼らとは関わりたくはないと思うだけで、わざわざ罵声を浴びせたいとすら考えていないと思われます。事情をよく知る者としては、こうした状況をどう受けとめるべきか客観的な判断を示し、さらに悪化しないためにどうすればいいかという対処を考えるべきでしょう。

残念なことですが、中国ではこの種の騒ぎはままあるものです。そうはっきり言うべきです。

特に中国の国内線に乗ったとき、遅延などあろうものなら、今回のケースほど深刻でなくても、日本では考えられないことはよくあります。あるときなど、航空機が搭乗ゲートを離れ、出発準備態勢に入ったというのに、何らかの理由で管制塔から離陸の許可がなかなか出なかったため、乗客はシートベルトをしたまま滑走路の上で1時間近く待たされていたのですが、機内はもう大騒ぎ。隣の席の子供がトイレに行きたいというので、親が客室乗務員にそう伝えたところ、「いつ離陸許可が出るかわからないので、この段階でトイレに行ってはならない」と回答。「では子供が席でおもらししたらどうするのだ」と親が言うので、その男性客室乗務員は「これにおしっこを入れてください」と空のペットボトルを持ってくる始末です。呆れて眺めていると、親は安心したように、座席で子供におしっこをさせていました。

子供のせいだから仕方がない……。この感覚をよしとする風潮がいまの中国社会にはあります。国際社会の感覚とはかなりズレていることは疑いようがありません。こうした彼らのズレた感覚の実例とその背景については、上記のブログ記事で実情に即して説明してあります。

もちろん、説明を読んだところで、なるほどそうかと受けとめることができない面も多々あるでしょう。それが証拠に、実際もし今回と同じことが欧米の空港で起こった場合、逮捕者が出ていたかもしれません。日本は何事も穏便にすませたいと処理するのが普通です。

そうしたすべてのことを差し引いても、今回のケースは、誰であれ、イライラが極限まで高まる状況にありました。その際、国内客であればまだ対処のしようがあったことも、日本に慣れていない外国客は、いかんともし難かった。彼らの多くには、なんの救いの手もなく、別の選択肢もなかったわけですから。なにしろ「50年ぶりの大雪」です。本来、いちばん同情されるべきは、夜明かし客の皆さんだったのに、それをぶち壊しにしてしまったことは、なんとも後味の悪い結末といえます。

実際、新千歳空港の職員も、さぞ大変だったことでしょう。今後、中国客をめぐるリスク管理から関係者は逃れることはできないという事実は静かに受け入れるしかありません。逆にいえば、中国客を相手にする際は、日本では起こりえないこの種のことは想定内と考えなければならないでしょう。

というのも、中国では人が多く集まる場所(空港や駅はもちろん、広場や公園、商業地などもそう)には必ず公安警察やときには武装警察まで多数配置されています。いついかなるとき、騒ぎが起こるかわからない社会であることをいちばん理解しているのは中国政府です。

ですから、観光庁はそろそろ中国国家観光局とのこの点についてもっと積極的かつ冷静に話し合いを持つべきではないでしょうか。

中国国家観光局 
http://www.cnta.jp/
http://www.cnta-osaka.jp/

【追記】
この一件について、中国側から反論が出ているようです。

実は香港客!?だった「新千歳空港で中国人観光客大暴れ」報道、中国側の反論
http://inbound.exblog.jp/26510740/
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by sanyo-kansatu | 2016-12-27 10:10 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 16日

中国クルーズ客の失踪と不法就労摘発報道 なぜ彼らはそこまでやるのか

今日の午後、上海在住の友人が以下のニュースをメールで教えてくれました。

中国クルーズ客の失踪と不法就労摘発報道です。これは、いわばクルーズ市場の制度の裏をついた密入国です。なにしろ、クルーズ客には、観光ビザは不要だからです。

クルーズ客 上陸後帰船せず不法就労 入国審査簡略化あだ(毎日新聞2016年12月16日)
http://mainichi.jp/articles/20161216/k00/00e/040/250000c

クルーズ船客を対象に入国審査を簡略化した「船舶観光上陸許可」を使って来日した外国人客が、寄港中に相次いで失踪していることが法務省入国管理局への取材で分かった。2015年の制度導入以降、今年11月末までに全国で53人に上り、大半が中国人だった。半数近くは今も行方不明で、国内に滞在し働いている疑いがある。兵庫県警が11月に不法残留の中国人を逮捕すると、就労をあっせんするブローカーの存在や入国審査の甘さを突かれた背景が浮かび上がった。

兵庫県篠山市の山あいにあるキノコ園。11月下旬、県警の捜査員らが家宅捜索に入ると、中国人の男女15人が働いていた。県警は在留期間が過ぎていた7人を出入国管理法違反(不法残留)の疑いで現行犯逮捕した。

捜査関係者によると、うち男2人組と夫婦の計4人はそれぞれ中国からクルーズ船で来日。船舶許可による在留期間は2日間だけで、寄港した博多港(福岡市)で姿を消していた。

10月17日に上陸した山東省の男(34)は「船に乗り遅れ、途方に暮れていたら声をかけられた」と弁明したが、一緒に来た男(53)は「仕事をするため船で来た」と就労目的を認めた。ブローカーの手引きで車に乗せられ、港から480キロ離れたキノコ園にたどり着いたという。

11月4日に入国した遼寧省の夫婦は中国版ツイッター「微博」を使って船上でブローカーと連絡を取り、働き口を見つけたという。JR新大阪駅で関係者と合流したとみられ、妻(36)は「子どもの学費を短期間で稼ぎたかった」と供述した。

関係者によると、キノコ園はここ数年で何度も経営者が代わり、最近は休業しているように見えたという。近くの男性は「見慣れない車が出入りし、不審だった」と話す。

中国人らはプレハブ小屋で共同生活し、月給18万円でシイタケ栽培の作業をしていた。中はベニヤ板で仕切られただけの個室で、食事は自炊。ほとんど外出できず、1日12時間以上の労働が常態化していたという。

県警と入管当局は、園の経営者や中国人とみられるブローカーの捜査も進めている。捜査関係者は「就労目的で、審査が甘いクルーズ船を狙ったのだろう。今後も警戒が必要だ」と話す。【矢澤秀範】

大半が中国人、2年で53人

クルーズ船の乗客を対象にした船舶観光上陸許可は、インバウンド(訪日外国人)の増加を目指して2015年1月に導入された。入国審査が大幅短縮され、利用する外国人客が激増している。

船舶許可による上陸はビザが不要で、1寄港地につき最長7日の滞在が認められる。出入国記録の記入も簡略化された。顔写真の撮影も省略され、手続きは1時間ほど短くなった。

クルーズ船の訪日客は14年は約41万人だったが、船舶許可の制度ができた15年は3倍近い約111万人に。今年は既に160万人を超えている。寄港地では乗客がバスや電車で自由に観光に出かけるため、集合時間に現れず姿を消す客が後を絶たない。

入国管理局などによると、船舶許可を受けて失踪した外国人は15年が21人、今年は11月までで32人に上る。博多港(福岡市)や長崎港(長崎市)などからの入国が多いという。

うち27人は国内で見つかり、強制退去になった。観光中に規定の日数を超え、自身で帰国手続きを取った例もあったが、行方が分からないままの外国人も多い。

入管は「クルーズ船の運航会社には入念な乗客の管理を求める。厳格に手続きし、警察当局と協力して不法残留の摘発にあたりたい」としている。


同じことは、朝日でも報じています。

クルーズ船で入国、中国人は姿を消した キノコ園に潜伏(朝日新聞2016年12月16日)
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20161215004491.html

すでに9月下旬に読売新聞が「クルーズ船訪日客の失踪、福岡・長崎で計34人」(読売新聞2016年9月26日)と報じていたので、失踪者が摘発されるのは時間の問題かと思っていました。

中国事情についてある程度、精通している人なら、いまの中国、こんなことが起きてもなんら不思議はないと感じることでしょう。ぼく自身も、頭ではそう思いはするものの、なぜ彼らはそこまでやるのか、理解を超えたところがあります。

中国には、自分の住む村にいても、このままでは一生うだつが上がらない。だったら、密入国してでも金を稼いでやろう…。このように考える人間がいるのでしょう。このニュースを教えてくれた上海の友人も「いまの中国は、制度の網の目をかいくぐってでも、人を出し抜こうとする競争社会。この人たちも、まさにそういうことなんですかねえ」とぼやいていました。

興味深いのは、不法就労する彼らがスマホを手にして中国版SNSのWeChat(微信)で日本国内のブローカーたちと船上で連絡を取っていたことです。不法就労が多発した1990年代とは、通信事情という面でも隔世の感があります。もっとも、それが可能となるのは、在日華人という受け皿があるからです。

中国側の旅行会社は、今回のような失踪者を出すと、ペナルティとして一定期間、日本への送客ができなくなるはずですが、失踪予備軍からすれば、そこがダメなら別の会社に手配を頼めばすむことなので、この問題がすぐになくなるとは思えません。

もっとも、日本を訪れる大半の中国人観光客は、彼らのことをとんでもないヤツだと、まるで人ごとのように罵ることでしょう。彼らの存在が中国の足を引っ張っていることは確かだからです。しかし、自分とはまったく関係ない存在とみなすだけで、自らの属する社会の問題とは考えたがらないのが、たいていの中国人です。

先日も、ある在日上海人が大学時代の友人が日本に遊びに来たので、車で岐阜県の白川郷を案内した話を聞かせてくれました。彼によれば「友人たちは富裕層。金はいくらでもある。1年に2~3回は日本に来る。好きなときにいつでも来られるのは、2015年1月以降、取得要件が緩和された個人マルチビザのおかげだ」と言います。

その話を聞きながら、ぼくは思いました。2009年、中国で大ヒットしたラブコメ映画『非誠匆擾』(邦題「狙った恋の落とし方」)の世界を、いまの上海の富裕層なら誰でも実現できるようになったのだなと。

この映画では、主人公の中年男性が北海道を彼女と訪ね、日本在住の中国人の友人に運転させた車で道東を中心に旅するストーリーでした。

その一方、不法就労目的でクルーズ客船に乗って訪日する輩もいる。全体からみれば、わずかな人たちとはいえ、中国ではこの種のことが必ず起きてしまい、それを誰も止めることはできないようです。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-16 15:15 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 13日

高速鉄道で大連から2時間! 日帰り可能になった中朝国境の町、丹東

2015年12月17日、中国遼寧省の大連から中朝国境最大の町、丹東までを結ぶ「丹大快鉄(丹大高速鉄道)」が開通しました。おかげで、これまでバスや車で4時間近くかかっていた両都市間の移動が約2時間に短縮され、日帰りが可能になりました。

今年7月下旬、丹東・大連間を乗車しました。以前は起伏のないトウモロコシ畑の中の高速道路の1本道をバスで延々4時間走り続けるしかなかったのですが、いまや快適な旅と時短が実現されたので、大連を訪ねる人は、ぜひ丹東まで足を延ばしてほしいです。丹東はとても面白い町だからです。特に北朝鮮情勢に関心のある人には、たまらない町でしょう。

これが丹東駅です。この駅は、瀋陽への高速鉄道「瀋丹高鉄」(2015年9月1日開通)の発着駅でもあります。
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高速鉄道の予約はネットででき、駅構内の自動発券所で受け取れます。ただし、中国の身分証名書を持つ国内客のみ利用可能です。外国人のパスポートを読み取るしくみがないため、我々は中国オンライン旅行大手のCTripで予約はできますが、チケットの受け取りは窓口に並ばなければなりません。
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さらに、丹東駅は鴨緑江をまたいだ対岸の北朝鮮・平壌行きの国際列車の中国側国境駅でもあります。
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国際列車95次★丹東~平壌
発 丹東10:00(毎日)
着 平壌17:45

列車編成
1号車  硬臥車 丹東~平壌 ①  
2号車  硬臥車    〃 
3号車  硬臥車 北京~平壌 ②  
4号車  軟臥車    〃 
http://gb-travel.jugem.jp/?eid=9

丹東駅は20世紀初頭に朝鮮鉄道から接続させるべく、鴨緑江に橋を架け、建設した駅です。その歴史については、駅ターミナルにパネルが並べられ、解説されています。

ターミナル構内に展示された駅舎の変遷の記憶(中国瀋丹線・丹東駅)
http://inbound.exblog.jp/20541074/

今回、乗車したのは、18時42分丹東発大連行きでした。瀋陽から丹東を経て大連まで走る便です。
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改札を抜け、ホームに至る通路に2015年10月中旬に丹東で開かれた中朝(貿易)博覧会の電光ポスターがいまだに残っていました。中朝関係の変調で、今年の開催は見送られています。
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これが乗車した「和諧号」で、車両には「CRH380BG」や「CRH5型」などがあるようです。丹東・大連間のチケット代は、2等が108.5元、1等が173.5 元です。2016年12月現在、1日14本走っています。
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両都市間には、13の駅がありますが、1日数回しか停車しない駅もあります。中国の大手検索サイト「百度」をみると、すべての駅の写真が載っていました。

丹大高速铁路
http://baike.baidu.com/view/3898992.htm

ところで、この高速鉄道の正式名は「丹大快鉄(丹大高速鉄道)」で、その理由は最高時速200kmだからです。250km以上を出すのが「高鉄」というわけです。ところが、中国のネット上では、「百度」もそうですが、そのへんはあいまいなようで、一般用語として定着している「高鉄」と表記される場合が多いようです。

20時42分、大連北駅に到着しました。あっという間の列車旅でした。
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今回初めて大連北駅を利用しました。中国の新しい鉄道駅はどこでもそうですが、やたらと巨大です。
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市内へは地下鉄もつながっているのですが、バスも出ています。
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今年5月に続き、10月末大連の地下鉄の2本目が開通しました
http://inbound.exblog.jp/25064248/

これ以外にも、中国東北地方にはすでに6本の高速鉄道が開通しています。おかげで、いまの満洲では都市間移動が飛躍的に便利になっています。
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「地球の歩き方 大連、瀋陽、ハルビン」(2017-18年版)p40より
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by sanyo-kansatu | 2016-12-13 11:52 | 北東アジア未来形:満洲の今 | Comments(0)
2016年 12月 09日

昨年に比べると、バスは少ないようです(ツアーバス路駐台数調査 2016年12月)

昨年はこの時期、もっと多くのバスが見られたことを思うと、今年の東新宿は比較的静かです。

それでも、昼下がりになると、中国人団体客が道端で記念撮影をしていたりするので、「どっから来たの?」と声をかけると、四川省だったり、黒龍江省だったり、地方色豊かです。
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※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。

1日(木)12:10 3台
2日(金)13:20 2台
3日(土)未確認
4日(日)未確認
5日(月)12:10 2台
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※この日は、ヒルトン新宿で、福建省の観光PRセミナーがありました。彼らは相変わらず、やる気がなさそうで、会場の9割以上は在日福建人たち。同郷会の様相を呈していて、本来の目的のはずの日本市場向けPRは、中身がないも同然でした。話によると、先週同じヒルトン新宿で、南京市の観光PRセミナーがあったそうで、そちらは少しましだったようです。ただし、南京虐殺紀念館のことは一切触れられることはなかったそうです。昨年くらいから中国の各省や大都市の観光PR団が来日するようになりました。もう少し我々日本のメディアのことを勉強してほしいものです。せっかく大挙してやって来ても、PRにも何もなっていないからです。

6日(火)11:50 3台
7日(水)18:20 2台
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※この日は夕方、歌舞伎町の前を歩いていたら、中国客をはじめ、相変わらずいろんな国の人たちが歩いていました。

8日(木)11:20 2台、17:30 3台
9日(金)12:20 2台、19:30 2台
10日(土)未確認
11日(日)未確認
12日(月)17:20 3台
13日(火)12:20 2台、17:20 2台
14日(水)11:20 3台、17:20 2台
15日(木)12:20 4台
16日(金)12:50 2台、18:20 2台
17日(土)未確認
18日(日)未確認
19日(月)12:30 2台
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by sanyo-kansatu | 2016-12-09 15:04 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)
2016年 11月 18日

「LIVE JAPAN」ってどうよ? 大丈夫?

今年4月、鳴り物入りでオープンした「LIVE JAPAN」をご存知でしょうか。

LIVE JAPAN
https://livejapan.com/ja/

「海外観光客向けの東京観光名所や体験情報を発信しています! SNSでも話題の誰もが行くべき東京都内近郊のお店情報や観光スポット&イベント、お土産情報を幅広くご紹介しています」というサービスです。

参画企業のラインナップは堂々たるものです。都内の交通機関、空港、エアラインまでが揃っています。

■参画企業(事務局)一覧
・株式会社ぐるなび
・東京急行電鉄株式会社
・東京地下鉄株式会社

■参画企業一覧(50音順)
・エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社
・小田急電鉄株式会社
・京王電鉄株式会社
・京成電鉄株式会社
・京浜急行電鉄株式会社
・西武鉄道株式会社
・全日本空輸株式会社
・東京空港交通株式会社
・東京国際空港ターミナル株式会社
・東京都交通局
・東武鉄道株式会社
・成田国際空港株式会社
・ヤマト運輸株式会社
https://livejapan.com/welcome/

これを仕切るグルメサイトの「ぐるなび」のプレスリリース(2016年2月18日)によると、

「訪日外国人向け観光情報サービス
LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYO
4月13日グランドオープン!

東京国際空港ターミナルと京王電鉄が新たに参画し、計16社が空港・バス・鉄道の沿線情報を発信

本サービスは、観光地、飲食店、ショッピングなどの正確かつ詳細な観光情報をリアルタイムに提供します。また、Wi-Fiスポットの検索や経路検索といった旅行中に役立つ便利な機能の充実や、サービスを迷わず利用できるユーザーインターフェイスなど、訪日外国人の利便性を追求したワンストップ観光情報サービスの実現を目指します」とあります。

すでにオープンして半年以上がたちますが、いったいこのサービス、どうなっているのでしょうか。ぼくは副都心線を利用しているので車内広告の動画をよくみるのですが、英語版にもかかわらず、誰に何を伝えようとしているのか、ちょっと意味不明です。

ある関係者はこう言います。「このサービスは、UI(ユーザー・インターフェイス)が微妙ですし、明確なコンセプト・バリューがわからないです。当然、ユーザーからみても同じで、その結果がエンゲージメント率(ユーザーの反応)の低さにつながっていると思います。
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https://www.similarweb.com/website/livejapan.com#overview

競合調査ツールであるSimilarWeb でみると、Visit数は多いですが、日本からのアクセスの割合が47%と高く、本当に外国人が見ているのかは微妙です。

サイト滞在時間は56秒しかなく、平均で1.55ページ、直帰率も82%です。

これらの数値から、コンテンツの魅力が伝わっていないことが見て取れます。

記事を増やせばVisit数は増えますが、大事なのは、想定するターゲットがきちんと価値を感じて、サイトを回遊しているかでしょう」。

確かに、この種のサイトは本来、日本に来る前に情報収集のためにチェックするのが一般的だからです。

実は、「LIVE JAPAN」のプロモーション展開の資料をみたのですが、彼らがいう「ターゲットの接触タイミングに応じたメディアプラン」によると、「訪日前」「訪日中」「訪日後」に分けて設定すると書かれています。

「訪日前」に認知されることはユーザー獲得に大きく貢献することですから、どんなプロモーションをするのかみると、「世界各地計5箇所でリーフレットの配布」とあり、北京の旅行博800部、上海同6000部、タイ旅行会社1000部、ラスベガスのJapan Kabuki Festival500部」(2016年5月現在)。いまどき紙媒体を配っても海外での認知につながるとは思えません。
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さらに、「訪日中」は、成田空港や東横線各駅の広告パネルや車内動画を配信しているというわけですが、これで外国客の認知が生まれるかというと疑問です。

ぶっちゃけて言うと、ネーミングのような海外旅行者にとってのライブ感が感じられないのです。ただの地図サイトにしか見えないというか、東京を初めて訪れた外国人がこれから何をしよう、どこに行こう、というときのワクワク感もそうですが、道先案内をしてくれるツールというイメージがほとんど伝わらないのです。

ネットで検索すると、以下のような記事がみつかりました。

インバウンド需要を取り込め! ぐるなびの挑戦(日経ビジネス2016年6月9日)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/060800046/?rt=nocnt

これをみると、日本の飲食店向けに「ぐるなび」の存在感を打ち出すことにはつながっていることがわかります。

でも、それって本来の目的としてはどうなのか?

日本の訪日プロモーションやPRのあり方は、どこか根本的に間違っているのではないか。そんなことを最近よく思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-18 14:00 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 11月 15日

中国個人客の増加で電車内でのトラブルが増える予感

昨日の午後、丸の内線に乗っていたとき、決して目にはしたくはないと思っていた光景をついに目撃してしまいました。

赤坂見附から中国人のファミリー旅行者が乗ってきたときのことです。

彼らは子供連れの5人組の家族でした。おじいさんと思われる老人もいて、彼は空席を見つけると、なんと無頓着なことに、デイパックを背負ったまま狭い席に無理やり腰掛けようとし、さらには隣に座る若い会社員の男性に寄りかかり、手を伸ばして座席の手すり棒を握り続けるのです。無言のままで。

その後、しばらくして娘が近寄り、デイパックを外させ、おなかに抱えるようにしたのですが、反対側にいた中高年のビジネスマン氏は、そのおじいさんが何度も身体にぶつけてくるので、それはもう不快な表情を浮かべ、このままではいきなり怒鳴り出すのではないかという一触即発的な状況になっていました。

向かいに座っていたぼくは、もう見てみぬふりはできないほど心配していたのですが、幸いなことに、目の前に腕を差し出された若い会社員は涼しい顔をして無視していたので、事なきを得たのでした。

ぼくが何を心配しているかというと、中国の個人客が増えることで、都内の交通機関を利用する機会が増え、日本でのマナーや作法を知らない彼らと日本の乗客の間でトラブルが起こることです。なぜなら、中国の地下鉄に乗ったことのある人はわかると思いますが、基本的に彼らは日本人のように、他人のことを気にしません。もちろん、公序良俗に違反するふるまいは許しませんが、特に老人や子供の粗相については大甘なのが中国社会の特徴です。

一方、日本はいうまでもなく、他人を気にする社会。人と人の許容する距離感も違います。狭い席にわざわざ腰掛けてくるような、ずうずうしいおばさんもたまにはいるけれど、無言で何度も身体をぶつけてくるようなふるまいは普通の日本人にはできません。でも、中国人は一般的にそういう身体接触は気になりません。

さらにいえば、この世代の中国人は、人生の大半を、狭い車両に人を詰め込むだけ詰め込んで走る鉄道の時代を生きてきた人ですから、隣の人に少々肘鉄を食わしても、足を踏んでも、なんとも思わないのです。もちろん、いまの若い都会の中国人はそのようなことはしませんが、こういう老人が普通に社会にいることは承知しているので、大目に見る習慣が身についています。

問題は、そういう違いを大半の日本人は知らないことです。知らないどころか、想像もつかないのは当然なのですが、中国人の側もそれを日本人が不快に感じ、ときに許さないことを知りません。ゆえに、一触即発なところがあるのです。

この種の経験は中国ではよくあるので、そういうとき、ぼくははっきりと「不行(ダメですよ)」と言葉をかけ、手を振りほどかせるようにします。自分が不快であれば、内に溜め込まず、意思表示をすることは中国では欠かせませんし、それを責める人はまずいません。でも、同じことが日本で起きたとき、ぼくは同じように中国人に向かってできるかというと、自信がありません。中国人相手にそれは必要なことだとわかっていても、日本人客が見ている前ですることにためらいを覚えるからです。そこまでしなければならないことが日本人の世界ではまずないからです。

先月、大阪の南海電車で外国の乗客をめぐる以下のような事件が起きていますが、背景には日本人と外国人の間のマナー問題の認識とともに、人と人の身体的な接触の距離感や公共の場での自由に対する許容度の違いもあったのではないかと思われます。違いについていえば、最近はさすがに減りましたが、かつて車内で化粧をする若い女性が多かったことに象徴されるように、ある特定の方面では日本にもすこぶる自由な空間が現出していた時期もあるくらいですから、どちらがどうとは一概にいえませんけれど。

「外国人多くご不便を」とアナウンスした車掌さん 訪日客急増で日本人はストレスをためてる?
http://inbound.exblog.jp/26268458/

これから暮れに近づくにつれて、ぼくは心配が尽きません。昨年、JR山手線で「これはやばいなあ」と思われる光景をすでに目撃していたからです。

クリスマスの山手線で見かけたアジア系ツーリスト、いい話と気になる話
http://inbound.exblog.jp/25211756/

詳しくは、上記の記事を読んでいただくとわかりますが、要するに、中国では地下鉄などの公共交通機関で駅の停車中に乗り降りする際、どんなに混雑していても、扉の近くにいる人がいったん降りて、降車に協力するという習慣が身についていません。そのため、大混雑する状況でも、扉の近くに中国の個人客が立っていると、当然降りて道を空けると思っている日本人客と衝突が起こるというわけです。

なぜ中国ではこうなるかというと、それは社会の特質の問題でしょう。ひとことでいえば、「引いたら負け」という社会なのです。混雑時に乗り降りが円滑になるようにスペースを譲ると、残念なことに、そこに入り込んでくる人が必ずいる社会なのです。

上記記事には、もうひとつのエピソードとして、若いアジア客が日本の老夫婦に席を譲る光景を見た話も書いています。それはとてもすがすがしい情景でした。一般にアジアの人たちは、日本人に比べ、老人に席を譲る習慣が身についています(もちろん、日本の場合、譲られる側の意識の問題があり、どちらがいいとか悪いとかいう話ではありません)。

今後、日本政府観光局(JNTO)をはじめとしたPR機関は、プロモーションだけでなく、日本での公共空間や交通機関のマナー、作法について、中国当局と協力して告知していく必要があるのではないか、と強く思います。そうでないと、個人客が増えたいま、不愉快なことが起こるような予感がしてなりません。

中国客が挙動不審に見えてしまう理由(すでに個人比率54%というけれど)
http://inbound.exblog.jp/26390881/
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by sanyo-kansatu | 2016-11-15 15:26 | “参与観察”日誌 | Comments(2)
2016年 11月 09日

この時期は毎年少ないですが、今月はついに減ってしまうのか(ツアーバス路駐台数調査 2016年11月)

先月発表された2016年9月の中国人観光客数の伸びが前年月比で6.3%増の一桁になったということを指して、中国客の減速を喧伝する輩が世間にはいるようですが、それでも伸びているだけよしとしなければならないと思います。

はたして今月は彼らは現れるのか。もちろん、現れてはいます。
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さあどうなるか。観察を続けていきましょう。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記録しています。

1日(火)12:20 3台
2日(水)11:40 5台
3日(木)未確認
4日(金)12:10 6台、17:30 2台
5日(土)未確認
6日(日)未確認
7日(月)18:50 2台
8日(火)11:40 3台、18:30 2台
9日(水)12:00 3台、18:20 2台
10日(木)13:10 2台
11日(金)12:20 3台
12日(土)12:30 5台、18:10 3台
13日(日)未確認
14日(月)18:20 2台
15日(火)未確認
16日(水)12:20 3台
17日(木)12:00 4台
18日(金)未確認
19日(土)未確認
20日(日)未確認
21日(月)未確認
22日(火)11:40 5台
23日(水)未確認
24日(木)12:40 3台
25日(金)11:50 2台、18:20 2台
26日(土)未確認
27日(日)未確認
28日(月)12:30 3台
29日(火)13:20 2台
30日(水)11:40 3台、18:20 3台

 
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by sanyo-kansatu | 2016-11-09 08:42 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)