ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 12月 05日

外国客で行列のできる店 並んでわかった集客に成功した理由

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最近、外国客で行列のできる飲食店を見かける。なぜ彼らはその店だけに並ぶのだろうか。店側はどんな対応をし、集客を図っているのか。モノは試し。実際に、外国客に交じって行列に並んでみた。そこから見えてきた各店のノウハウとは――。

最初に訪ねたのは、JR池袋東口の明治通り沿いにあるラーメン店「無敵家」。

この店は、もう3年以上前から行列ができている。今回、筆者は初めて行列に並ぶことにした。

10月下旬の平日の午前12時少し前に店を訪ねると、明らかに外国客と思われる人たちばかりが列をなしていた。
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↑若いカップルや女性同士、小グループ客などいろいろ。アジア系が多く、自撮り好き?
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↑店の横脇に英語、中国語(繁体字)、タイ語で、列を並ぶ際の注意事項などが書かれている

行列を体験として楽しむアジア客たち

たまたま筆者の列の前にいたのが、キャリーケースを引いた中高年の男性。行列客としてはちょっと珍しいタイプで、試しに中国語で声をかけてみた。

「どちらからいらしたのですか? この店をご存知でしたか?」

すると、中国語がわかる相手がいたことに喜んだ彼は「北京から来た」と答えた。

「ひとりで日本に来ているんですか?」
「そうだよ」
「ホテルはどこに泊まっているんですか?」
「池袋に知り合いが住んでいるので、そこにね」

「この店、どうして知っているんですか? やはり微信(WeChat)?」

すると彼は「行列ができているのを見たからね。こういう店はうまいに違いないと思ったんだ」という。

少し意外だったのは、かつてこの年代の中国の人たちは外食の際、行列まですることはなかったからだ。それでも、最近の人気レストランでは、店の1階が広い待ち合いスペースになっていて、お茶やソフトドリンクなどを提供し、席が空くまで客を待たせているような店も増えている。「うまい店=待つのは当然」という認識が一般化してきたようだ。

「無敵家」では、店を早く回転させるために、行列客にメニューを渡して入店前に注文を取っている。そこで筆者は彼のために中国語のメニューを取り寄せた。
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↑彼は中国語のメニューを見ながら「のうこく麺(780円)」を注文した

並んでから約20分。入店が近づいてきた。入り口近くに、外国語併記で列を並んでもらうことへの店側のお詫びが書かれている。
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↑同店はトリップアドバイザーのグルメ分野、豊島区の口コミ数ランキングで堂々1位(2015年)。これが行列のできる理由だ

店内はカウンター17席と広くはない。空席がそこしかなく、彼と隣り合って座ることになった。しばらくすると、のうこく麺が出てきた。
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↑同店には英中韓タイ4ヵ国語のメニューが用意されている
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↑海苔に白地で英語と中国語で「welcome」と書かれていた

「どう、おいしい?」と聞くと、「还可以(悪くない)」と彼は答えた。いろいろ世話を焼いたお礼にビールをおごるという。彼の面子に応えるためにふたりで乾杯することに。

外国客で行列のできる店には、そこかしこに彼らを迎え入れるサービスが用意されている。多言語化されたメニューもそうだが、近所に迷惑がかからないように行列時の注意が書かれた告知もそう。一方、外国客は行列を体験として楽しんでいる印象だ。それが可能となるのも、彼らがSNSを通じて、この店は行列するものだとあらかじめ知っているからだ。それも含めて「無敵家に行ってきたぞ」とSNSで自分の追体験を報告できることが楽しみなのだろう。

麺創房 無敵家
http://www.mutekiya.com/

体験のすべてがネットに公開されている

次に並んだのが、渋谷にある「牛かつ もと村」。豚カツ同様に牛肉を衣に包んで揚げた料理一品のみの定食屋である。

11月上旬の午後1時、JR渋谷駅東口から明治通りに沿って恵比寿方面に向かって少し歩くと、すぐに行列が現れた。
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↑30人近い行列。ざっと見た感じ、外国客も多い

この店は9席しかないため、結局、1時間半も並ぶことに。筆者の列の後ろに韓国人の若いカップルがいたので、「どうしてこの店知ってるの?」と聞くと、韓国の旅行情報サイトで評判だという。
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↑彼女がスマホでみせてくれたのが、naver(http://section.blog.naver.com)というまとめサイト

ソウル在住のフォトライターの堀田奈穂さんによると「naverは韓国で最も多く利用されているまとめサイト。naver blogについては、IDを持っているとさらに詳しく見たり、コメントのやりとりができる」という。

実際に、同店を紹介するページをみると、外観から店内、料理まで細かに写真がアップされている。この店の特徴であるレアなカツの断面を見せたり、石板で肉のレア面を焼いているカットなど、ここで体験できるほぼすべてのことが写真で公開されている。これが初めてこの店を訪れる韓国客に安心を与えているようだ。いったん揚げたカツを自分の好みに合わせてさらに焼くというひと手間も、他の店では体験できないことかもしれない。

「牛かつ もと村渋谷店」を紹介するページ
http://choys0723.blog.me/220802039236
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↑「牛かつ もと村」の定食。最近、ソウルにも牛かつの店があるという

背景にアジアの食の多様化がある

それにしても、韓国人はそんなに日本料理が好きだったのか?

前述の堀田さんは言う。「韓国では日本食は単なるブームというよりは、定着に近い気がする。うどん、ラーメン、ハンバーグ、焼き鳥、いろいろある。ブログ全般についていえることは、お金をもらって書くパワーブロガーが書いたものとは違う、個人の経験によるブログを見て、飲食店や旅行先の情報収集するのが主流のようだ」。

宣伝臭の漂うプロのブロガーではなく、一般の個人客の体験を載せたブログの好感度が高いのは、それだけ韓国でも日本への個人旅行が一般化しているからだろう。

韓国における日本食の定着ぶりについては、コリアン・フード・コラムニストの八田靖史さんが今春上梓した『食の日韓論』(三五館)に詳しく書かれている。いま韓国では、日本の外食チェーンが驚くほど出店している。

八田靖史さん「韓食生活」
http://www.kansyoku-life.com/

だが、素朴な疑問がある。日本を団体旅行する韓国人を乗せたバスの運転手に聞くと、彼らの多くはトウガラシを持参して日本に来るという。日本の料理は刺激が足りないからだ。ではなぜ日本食は韓国で定着したのだろうか。

その点を堀田さんはこう説明する。「トウガラシを朝鮮半島に広めたのは日本であり、元々辛い物ばかり食べていたわけでは決してない。とんかつ、おでん、うどんなども日本の統治時代に入ったもの。近年では、諸外国の食べ物が東京のようにソウルなどの都市では普通に食べられるようになり、留学や渡航経験のある若者の影響などもあって、食の多様化が進んでいる。テレビ番組やインターネットの情報も大きい。

いまソウルのデパ地下は東京と遜色ない。日本人と同様で、辛い物は辛い物として食べるし、辛くないものはそのまま食べる、という感じだと思う。トウガラシを持って海外へ行くのは全員ではないし、海外の食文化を楽しむ傾向にある」。

同様の事情は中国でも上海などの経済先進都市では共通している。日本食のチェーンが多数出店していて、ラーメンの一風堂、丸亀製麺、CoCo壱番屋、サイゼリアなどもある。こうして若い世代を中心にアジアの都市では日本食の普及と食の多様化が進んでいるのだ。

おそらく彼らは、自分の国にはまだ出店していない日本の外食チェーンやグルメの流行を見つけて楽しんでいるのだろう。

独自のシステムを体験する面白さ

外国客で行列のできる店といえば、広く知られているのが一蘭ラーメンかもしれない。

では、一蘭ラーメンにはいつ頃から、どんな理由で外国客が行列するようになったのか? 同店の広報・宣伝担当の三浦卓さんに話を聞いた。

-いつ頃から外国客が現れるようになったのか。そのきっかけは何だったのか。

「いつ頃からとははっきり言えないが、特に増えたのは3~4年前から。やはり口コミで広がり、フェイスブックやインスタグラム、微信などのSNSによるものだと思う。

もっとも、すでに10年以上前から外国客は、いまほどでなくてもいた。一方、全国に62店舗展開しているうち、すべての店に外国客が来ているのではなく、渋谷や新宿、池袋、浅草などの外国人観光客の多い特定の店に限られる。JR渋谷駅に近い渋谷店は行列ができるが、スペイン坂店には少ない。これもSNSの影響だと思う」。
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↑今回訪ねたのは、新宿3丁目店。アジア客が多いが、白人女性や黒人男性も並んでいた

-どの国の人たちがよく訪れているのか。

「多いのは、中国や台湾、香港、東南アジアの方だが、最近は欧米の方も増えている。当店のとんこつスープには臭みがないので、欧米の方にも親しんでいただけると思っている。また替え玉という博多ラーメン特有のサービスが体験できることも魅力かと」。

-一蘭ラーメンに外国客の行列ができる理由は何だとお考えか。

「3つあると考えている。まず、SNSで「イイネ」が海外に拡散されたこと。これがご来店の最大の動機になっていると思う。

2つめは、創業以来変わらないとんこつラーメンの味への支持だ。

3つめは、食券購入や独自のオーダー記入用紙、仕切り壁の食空間という独自のシステムを体験してみたいということではないかと思う」。
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↑仕切り壁に隔てられ、各々ラーメンに向き合う独特の空間

三浦さんによると、独自のオーダーシステムや仕切り壁などは、1993年に同店が法人化し、福岡でチェーン展開を始めた当初から導入されていたという。女性でもひとりでラーメンを食べられるようにという配慮があったそうだ。
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↑これが「味集中カウンター」。テーブルにオーダー用紙が置かれている

スープの味や濃さ、特性ダレの量、麺のかたさなど、7項目からを自分の好みで選べるしくみが面白いのは、アジアの屋台で麺を食べるときの習慣に似ていることだ。たとえば、タイで麺を注文するときは、まず麺の種類を選び、唐辛子入りナンプラー(プリック・ナンプラー)、唐辛子(プリックポン)、唐辛子入り酢(プリック・ナムソム)、砂糖(ナムタン)の4種類がテーブルに用意されていて、自分の好みで調合してから食べる。

日本のラーメンは一般的に、その店の味をありがたく、そのままいただくという感じが多いのに対し、一蘭ラーメンでは自分で味の好みを決められるというしくみが外国客、特にアジア客に支持されているのではないかと考えられる。
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↑日本語以外は、英語、中国語(繁体字)、ハングルが用意される
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↑同店も「天然とんこつラーメン」のみの一品メニュー

-今後の展望をどうお考えか。

「国内外にこだわらず、出店を加速したい。10月19日にはニューヨーク店、11月17日には中野店も開業した。中野はサブカルの町として外国人にも知られるようになっているから楽しみだ。ラーメンという日本独自の文化をいかにつきつめるか。ブランドとして維持できるかに、今後も注力していくつもりだ」。

一蘭ラーメン
http://www.ichiran.co.jp

ラーメンが日本食の一ジャンルとして定着

一蘭ラーメンの躍進の背景について、三浦さんは「何よりラーメンが日本食の一ジャンルとして定着したこと」が大きいという。つまり、日本に来たら、すしやてんぷら、鉄板焼きを食べるのと同じようにラーメンも体験したいと多くの外国客が考えるようになったのだ。

では、それはいつ頃からの話なのだろうか。

台湾や香港でKADOKAWAの現地情報誌の立ち上げに尽力した編集者の鈴木夕未さんによると、2000年代後半頃から日本のラーメン特集が人気企画としてよく取り上げられたという。
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↑『香港ウォーカー』のラーメン特集のページ(2015年)より

前述の池袋のラーメン店「無敵家」の関係者によると、取材を受けた覚えはないのだが、2000年代の半ば頃、台湾に行ったとき、現地の雑誌で同店が紹介されているのを見たそうだ。つまり、SNSが普及する少し前から、台湾や香港などでは、日本のラーメン店が現地メディアで紹介されるようになっていたのだ。

興味深いのは、それらの記事に「ラーメン分析アイコン」という項目があって、紹介する各店ごとに、麺の太さや形、量、ベースとなる味(醤油、とんこつ、魚介など)、濃さなどが記されていることだ。

これは日本の情報誌が以前から採り入れていた編集手法だが、こういう下地が現地情報誌を通じてあったことも、台湾や香港の人たちが一蘭ラーメンのオーダーシステムに慣れていた理由といえそうだ。入店してから自分の好みを用紙に書き込むというひと手間も、体験として面白がられていると考えられる。

これまでみてきたことから、外国客の集客に成功している飲食店の共通点が見えてくる。どの店も、最初から外国客を呼び寄せようと考えていたわけではない。海外のメディアやSNSによって突然、知られるようになり、外国客が増えてくるにつれて、多言語化も含めた臨機応変な対応を無理なく進めてきていることがわかる。また同じチェーン店でも立地により集客状況がまったく違うこともわかった。

外国客が食を体験として楽しむうえでのユニークなひと手間があることも共通している。だが、それはなにも外国客向けに用意されたものではなく、国内客のために提供されていたものだ。

今年6月、トリップアドバイザーが「外国人に人気の日本のレストラン 2016」を発表しているが、上位にランキングされているのは外食チェーンではなく、個性ある単店ばかり。ラーメン店に限らず、今後どんな飲食店が注目されることになるか楽しみだ。

トリップアドバイザーが「外国人に人気の日本のレストラン 2016」
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/06/20160621_TripAdvisorPressRelease.pdf

※やまとごころ特集レポート30回
http://www.yamatogokoro.jp/inbound/report/1447/
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by sanyo-kansatu | 2016-12-05 10:06 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2016年 10月 04日

2016年の国慶節の日、銀座ホコテンは多国籍ツーリストが記念撮影に興じていた

10月1日は中国の建国記念日(国慶節)に当たります。この時期は、中国のゴールデンウィークに相当し、海外に限らず多くの中国人が旅行に出かけます。昨年までは、圧倒的に中国客の存在感が目立っていたのですが、正午過ぎ、銀座を訪ねてみたところ、実にさまざまな国籍のツーリストの姿を見かけました。“中国人だらけ”という感じでもなかったのです。

土曜日だったので、銀座中央通りは正午から歩行者天国になります。銀座4丁目の和光のはす向かいには、9月24日にオープンしたばかりの新しいランドマーク、銀座プレイスが見えます。
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ここから中央通りのホコテンを銀座8丁目の交差点まで歩いてみました。以下、その後の10分間くらい歩いて見かけた人たちのスナップです。
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銀座プレイスの1F には、日産のショールームがあり、にぎわっています。

銀座プレイス http://ginzaplace.jp/

そこらかしこでポーズを取って記念撮影に興じる人たちがいます。
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これは最近銀座にできたオウルカフェ(フクロウがいるカフェ)の客引きの子でした。ぼくも原宿の店に行ったことがありますが、外国人にウケるんだそうです。
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ファミリー旅行者も多いです。
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この双子は韓国人でした。
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銀座7丁目のラオックスです。ホコテンのせいで店の前までバスが停車できないためだけではもうないのでしょう。多くの中国客は、この店がどんなしくみで成り立っているか、よく知っています。できるだけ、避けたいとの思いが働くのでしょう。店内は閑散としています。
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カップルの自撮りはともかく、地べたに座り込んでの女優気取りのポーズなど、中華圏の人たちはまったくこういうのが好きですね。
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7丁目あたりから、中国やアジア系だけでなく、欧米系、それもどちらかといえば、ロシアや東欧方面から来たと思われる人たちの姿を見かけました。まだ日本に少ない彼らは、団体で旅行に来ることが多いので、集中的に目撃してしまうのかもしれません。
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この日、銀座のホコテンは圧倒的に外国客の姿が目につき、日本の人たちは歩道をそそくさと足早に歩いていくという感じでした。まあここは、日本を代表するおのぼりさんの天国です。言ってみれば、パリのシャンゼリゼ、ウィーンのシュテファン大聖堂に向かって広がるノイヤーマルクト広場(かなり言いすぎ!?)みたいな場所ではあるのです。おそらくイースターの頃は銀座ももっと多くの外国客が見られることでしょうが、国慶節ではこんなものかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2016-10-04 10:46 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 09月 17日

世界のベストレストランは「大人のディズニーランド」

8月中旬のとある日、西麻布にあるフレンチレストラン「L'Effervescence(レフェルヴェソンス)」で、同店を率いる生江史伸シェフが出演する米国CNNのドキュメンタリー番組「Culinary Journeys(世界食紀行)」の先行試写会がありました。同店のランチをいただきながらという、なんともおいしい特典付きです。
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Culinary Journeys(世界食紀行)
http://edition.cnn.com/specials/travel/journeys
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表参道方面から骨董通りを抜け、富士フィルムのビルの手前を左折し、長谷寺に向かって右に曲がった先にそのレストランはあります。

自分はグルメとはほとんど縁のない人間なので、その日供されたランチの内容について的を得た解説をする自信はありません。またなぜCNNが生江シェフを番組に取り上げたかについては、たまたま隣の席にいた若い女性記者の以下のネット記事を参照していただくことにさせてください。
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この日のランチのデザート「緑の山~空豆のクレームと桑の実のコンフィチュール、トンカ豆のアイスクリーム」

「おもてなし」の心はどこに--米国CNNがフレンチシェフの目線から日本の食を紹介した理由
http://entabe.jp/news/gourmet/13224/cnn-reports-japanese-hospitality-from-the-view-of-french-shef-namae

でも、この日以降、ぼくは世界のグルメトレンドをひそかに牽引するユニークなムーブメントについて目を開かされることになりました。もちろん、それはインバウンドにも大いに関係があります。

ここから先は、ぼくの古い友人でトラベルジャーリストの橋賀秀紀さんから受けたレクチャーをそのまま紹介することにします。彼は毎月のように世界各地を旅している、ぼくから見るととても浮世離れした人ですが、目的のひとつが食べ歩きだそうです。

世界には、橋賀さんのような日夜食べ歩きをしている人たちがいて、「フーディーズ」と呼ばれるそうです。彼らの飽くなき食への探求ぶりについては、今年1月に上映された『99分,世界美味めぐり』(スウェーデン、2016年)という映画を通して知ることができます。
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『99分、世界美食めぐり』(スウェーデン、2016年)
http://99bimi.jp/

では、彼らはいま世界のどこに目をつけているのでしょうか……。ひとつの目安となるのが、毎年発表される「世界のベストレストラン50」というランキングです。
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世界のベストレストラン50
http://www.theworlds50best.com/

これは英国で発行される『レストラン』(William Reed Business Media社)というシェフやレストラン経営者を読者とする専門月刊誌で、毎年発表されるものです。2003年以降、世界各国の食の専門家や評論家など1000名近い評議委員の投票数によって確定されてきたそうです。

ちなみに、2016年のトップ10は以下のとおり。

1. Osteria Francescana (イタリア、モデナ)
2. El Celler de Can Roca (スペイン、ジローナ)
3. Eleven Madison Park (アメリカ、ニューヨーク)
4. Central (ペルー、リマ)
5. Noma (デンマーク、コペンハーゲン)
6. Mirazur (フランス、マントン)
7. Mugaritz (スペイン、エレンテリア)
8. Narisawa (日本、東京)
9. Steirereck (オーストリア、ヴィエナ)
10. Asador Etxebarri (スペイン、アシュペ)

日本のフレンチレストラン『NARISAWA(ナリサワ)』も堂々8位にランキングしています。

Narisawa
http://www.narisawa-yoshihiro.com/jp/openning.html

最近、このランキングに登場する有名シェフを描いた映画がいくつも作品化されているそうです。以下は橋賀さんから教えてもらった作品リストですが、特に2010年代になって増えています。

『エル・ブリの秘密』(独、2011年)
http://starsands.com/elbulli/
『二郎は鮨の夢を見る』(米、2011年)
http://jiro-movie.com/ 
『料理人ガストン・アクリオ 美食を超えたおいしい革命』(米、2014年)
http://gaston-movie.jp/
『NOMA 世界を変える料理』(英、2015年)
http://www.noma-movie.com/

ぼくはオバマ大統領が来日した2年前、安倍首相がアテンドしたという「すきやばし次郎」の映画くらいしか知りませんでしたが、なぜこれらのシェフが注目されているのか。

自らフーディーズとして、世界のベストレストラン50軒中、すでに19軒には足を運んでいるという橋賀さんによると、2000年代に入って世界の美食のトレンドが大きく変わってきたといいます。

「私が海外に美食を訪ねて旅に出るようになったのは1990年代ですが、当時はクラシックなフレンチが王道でした。2000年代に入ってスローフードやオーガニック、ミニマリズム、地産地消といったコンセプトが注目され、フレンチからモダン・スパニッシュへ美食の中心が移っていき、さらに2010年代になると、コペンハーゲンにある『NOMA』が世界のベストレストラン50で4回トップになるなど、地域的にも広がっていきました。フーディーズにとっては、とても興味深い時代の到来です。

なかでも『NOMA』は、私も3回足を運んでいます。同店のシェフ、レネ・レゼピは料理に昆虫のアリを使うというような斬新な発想がよく話題になりますが、南欧のような柑橘類のとれない北欧で料理に酸味を出すため、考案したそうです。この逸話からも、彼が地元の食材を重視していることがわかります。
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昨年1月、彼はマンダリンホテル東京の招待で来日し、日本の食材を使った料理を提供しましたが、このとき、日本の食材の道案内をしたのが、レフェルヴェソンスの生江シェフでした。生江シェフは大学卒業後、いくつかのレストランを経て、現代フランス料理を代表するミッシェル・ブラスの本店で研鑽を積み、その後もロンドン近郊の『ザ・ファットダック』のような個性的なレストランでも修行。語学力もあることから、レネ・レゼピの案内役を務めたのです。ちなみにレネ・レゼピは、シドニーでも東京同様、店のスタッフを連れ、現地の食材を探し歩き、提供しました。もちろん、その期間中、デンマークの店は閉店してです。こうした取り組みを精力的に行うところに、彼の食に対する思想が表れています」。

世界一のレストラン「ノーマ」シェフ、レネ・レゼピの大冒険@日本(nippon.com2015.03.02)
http://www.nippon.com/ja/views/b01711/
デンマークレストラン界の鬼才
レネ・レゼピとは?(BRUTUS2016.5.10)
http://xbrand.yahoo.co.jp/category/entertainment/19459/1.html

これらの店に共通する特徴について、橋賀さんは「ゴージャスさとは対極の世界。何より重視されるのは、料理のオリジナリティ」といいます。

「思い出深いレストランのひとつに、スウェーデンの『Fäviken Magasinet(フェーヴィケン・マガシーネット)』があります。場所はストックホルムから鉄道で7時間もかかる極北の地。そこで、私たち夫婦はノルウェーのトロンハイム空港まで飛び、車で140km、国境を越えて走りました。
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このレストランは元酪農学校で、納屋の中に食堂があります。食事は毎日夜7時から。世界からフーディーズたちが数十名ほど集まっていました。食事を待つ間、カナダや英国から来た隣の席の客と話しましたが、会話の内容が(私たちが日本人だからでしょう)『すきやばし次郎の小火はどうなった?』とか、マニアな食通ならではのものばかり。

この店では、料理はすべての客に同じものが供されます。一斉に時間を決めて出されるので、料理も熱々で、食材にも無駄がない。パリの3つ星レストランの世界とは大きく違います」

Fäviken Magasinet(フェーヴィケン マガシーネット) ストイックなワンダーランド(橋賀さんの奥様のブログ「モダスパ+plus」より)
http://mdspplus.ldblog.jp/archives/7943648.html
現在、この店の例のランキングは41位。橋賀さんは「これらの店では、料理はウエイターが運ぶのではなく、シェフが持ってきて、食材と料理について解説してくれるのが特徴です。皿数が多く、料理に使われる食材が豊富なこともそう。盛りつけも美しく手が込んでいる。食材が地元の風土や歴史文化とつながりがあることから、私たちは「情報」を食べているという感じすらします。

いまはSNS時代ですから、これら一品一品が写真に撮られ、たちどころに世界に広まっていきます。だから、実際に食べたことのない人まで、有名シェフの料理を見ることができる。それがさらなる話題を呼び、人の動きを引き起こしている。こうしたさまざまな要素が、今日の世界の食のトレンドを作り出しているのです。その現場に立ち会えるのはとても面白い。私にとってこれらの体験は、大人のディズニーランドみたいなものなんです」。

橋賀さんは言います。「実は日本こそ、食の力で多くの人たちを呼び寄せるポテンシャルがあると思う。世界のフーディーズたちは、噂を聞きつけると、どんな障害があろうと駆けつける。とはいえ、これまで以上に発信力が欠かせない時代になったといえます」。

お話をうかがいながら、世界の食のトレンドは日本の懐石料理のような世界に向かっているのだろうか、などと思った次第。食とツーリズムをめぐる興味深い話でした。常に海外のトレンドと連動している日本のインバウンドのこれからにとっても要注目です。
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by sanyo-kansatu | 2016-09-17 14:41 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 06月 24日

上海の「極楽湯」はありがたい存在だけど、料金は「日本の3倍」の意味するもの

この10年で地下鉄網が拡大し、市内の移動が格段に便利になった上海ですが、そのぶん行動半径がどこまでも広がってしまうので、1日を終えると、これまで以上に旅の疲れがたまりがちです。特に冬場はけっこう冷えるので、空気の悪さも加わり、身体にこたえるのが、最近の上海出張です。
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そんなお疲れ気味のぼくを見て、上海の友人が連れていってくれたのが、なんと日本でもおなじみのスーパー銭湯「極楽湯」でした。3月のことです。
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地下鉄13号線「祁连山南路」駅下車。地上に出ると、かなたに巨大な「極楽湯」御殿が見えました。思わず「おお」と、うなってしまいました。
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「極楽湯」と書かれた、まばゆいばかりの提灯が並ぶ玄関に、胸が高まります。

館内は広く、日本の「極楽湯」より相当ゴージャスでした。この店の売りは、日本と同じ露天の岩風呂があること。館内には12種類の風呂があり、なかでも「美肌の湯」として知られるシルキー風呂が人気だとか。さらに、驚いたのは、7種類もの異なるストーンを敷き詰めた岩盤浴があることです。ずいぶんお金がかかっていそうです。

リクライナーチェア付きの休憩所は広くてくつろげるし、雑魚寝できるスペースもあります。そして、日本のコミックも揃っています。 
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日本食を中心に200種類の料理やドリンクが味わえるレストランもあります。また8種類から選べる和風柄の館内着が用意されています。
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そのせいか、これまで中国ではこの種の温浴施設では少なかった地元のOLや若いカップルの姿が多いようです。 

上海には、現在2軒の「極楽湯」があり、ここは2015年オープンの2号店(金沙江温泉館)です。1号店は浦東に13年にオープンしたそうで、この夏には3号店もできるそうです。

ただし、入館料は138元(約2300円)。実は、ぼくの住む都内の地元に「極楽湯」があり、たまに行くのですが、平日は750円くらいなので、実に日本の3倍です。あと気になったのは、露天風呂のお湯からつーんとする塩素の臭いがしたことです。

そうだとしても、異国の地で日本風の露天風呂に浸かると、癒されます。

ところで、なぜ急に上海の「極楽湯」のことを思い出したかというと、今朝ほど日経ビジネスオンラインで以下の記事を見たからです。

上海で入館2時間待ちのスーパー銭湯
「極楽湯」中国攻略の極意(その1)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/061300009/061300001/

同記事は4回の連載で、なぜ上海の「極楽湯」が好調なのかについて解説しています。ポイントは、地元の女性の集客に成功したことがあるようです。上海の水道水を調べた段階で「これは徹底した浄化と軟水化をしないとダメだ」と判断したという話も紹介されていて、なるほど塩素の臭いの理由もうなずけました。

筆者がなぜ上海に数ある題材の中から「極楽湯」を選んで記事を起こしたかについては、以下のような見立てがあるといいます。

「経済指標と街中のギャップの背景には、中国経済の減速と同時進行で起きている大きな構造変化がある、というのが筆者の見立て。製造業からサービス業への、成長エンジンの主役交代が加速しているのだ」

この見解について、ぼくはおおむね同意しながらも、若干の疑問もあります。なぜなら、上海の話と中国全体の話は別に考えなければならないと思うからです。確かに、上海を中心とした華東地区では、サービス業や飲食などの消費活動が経済を牽引していることは間違いないと思うのですが、地方に行くほど、不動産投資の後始末が深刻に見えるからです。

また、日本と同様なサービスに対して3倍ものコストがかかることの意味も考えてしまいます。彼らは高速鉄道をつくるのは日本より低いコストでできるのかもしれませんが、温浴施設のようなサービスは高コストになるのです。

もっとも、これだけ多くの中国人が日本に旅行に来るのも、中国に比べるとはるかに安いコストである水準のサービスを享受できることを知ってしまったからでしょう。「極楽湯」で見かけた若い女性や家族連れは、おそらく日本を旅行したことがあるに違いありません。

今後、「極楽湯」は中国国内に100店舗を目指すそうです。

極楽湯 金沙江温泉館
上海市普陀区祁連山南路398号
10:00 ~翌1:00 
大人=138元 子供=68元
http://www.gokurakuyu.cn
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by sanyo-kansatu | 2016-06-24 09:46 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 06月 20日

なぜサムライは外国人観光客の心をつかむ? 人気の秘密を探ってみた

銀座某所の正午過ぎ。館内に中国語のアナウンスが流れると、派手な和装に身を包んだ男女がステージに向かってゆるりと歩き出す。
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食事に夢中になっていた中国の団体客たちの視線は一斉にふたりの方向に注がれた。

なかには席を立ち、スマホを取り出し、写真を撮り始める人たちもいる。

いったいこれは何ごとなのか?

●サムライショーの中国客の食いつきがすごい

浅草で外国客向けの変身スタジオやサムライ体験ツアーを催行している夢乃屋(株式会社バンリーエンターテイメント)の出張侍・花魁ショーである。場所は、銀座8丁目にある外国人団体客向けの和風エンターテインメントレストラン「どすこい相撲茶屋」だ。

ステージに立つのは、創作剣舞橘一刀流の家元でもある孝藤右近さん。彼が太刀を抜き、剣舞を始めると、狭いステージの周囲にカメラを手にした人垣ができる。動画を撮る人も多い。
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孝藤右近さんは金沢にある創作日本舞踊孝藤流の二代目。国内外で華麗なステージをこなしてきた

孝藤右近 剣舞・殺陣 作品集 Ukon Takafuji Sword battle and Samurai dance performance
https://www.youtube.com/watch?v=DGJ4F9-DGSM

1回わずか15分のショーだが、終わっても観客はなかなかステージの前から離れようとしない。

ついには、記念撮影タイムが始まる。中国客たちは次々に入れ替わるように、ふたりのそばに寄り添い、シャッターを切り続けること、約15分。

「春節の頃は店も大変な盛況ぶりで、記念撮影だけで1時間近くかかったこともある」と右近さんは苦笑する。

それにしても、中国客の食いつきぶりはすごい。彼らはふたりと記念撮影したくてたまらないのだ。

一般に中国の団体客は、毎日バスに揺られ、富士山を見たり、温泉に入ったり、買い物したり。でも、せっかく日本に来ているのに、ガイドも中国人。買い物も中国系の店ばかり。だから、日本人とじかに触れ合う機会は、実は少ない。
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右近さんの隣りに立つのは、艶やかな花魁姿の舞いを披露する孝藤流花形の孝藤みゆさん

だとすれば、この種の和風エンターテインメントが彼らの心をつかむのもわかる気がする。彼らの多くはここで撮った写真をすぐさま中国版SNSのWeChat(微信)にアップするだろう。そうでなくても、中国に戻って、知人友人に見せて自慢するに違いない。

「どすこい相撲茶屋」では、夢乃屋の出張侍・花魁ショーは週3回行っているという。次々と入店してくる中国客をメインとしたアジア系団体客のために、1日約6回のステージをこなす。

いま銀座の一角では、人知れず、こんなことが起きているのだ。

JAPAN CULTURE EXPERIENCE TOURS  夢乃屋
http://www.tokyo-samurai.com/


●トリップアドバイザーで和エンタメが人気の理由

今年3月末に配信された世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の2015年の外国人による東京の人気観光地ランキングの結果が興味深い。
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2015年にトリップアドバイザーの日本の観光地に寄せられた口コミを分析(2016.3.31)
http://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/03/20160331_TripAdvisorPressRelease.pdf

1位こそ新宿御苑だが、2位に昨年7月新宿歌舞伎町にオープンしたサムライミュージアムがランクイン。以下、3位は浅草、5位は明治神宮、6位は両国国技館、7位に東京都江戸東京博物館、8位は八芳園、9位はホテルニューオータニ庭園と、ほぼ和のスポットが選ばれている。また京都のランキングでみると、剣舞の鑑賞や体験ができる京都サムライ剣舞シアターが2位で、鹿苑寺や清水寺といった世界遺産よりも上位となっている。

サムライミュージアムの館内には、日本刀や鎧兜の展示があり、鎧兜を身につけて撮影できるスタジオがある。玄関脇のショップでは、日本刀のレプリカや扇子、ミニ甲冑などが販売されている。人気は7000円~3万円くらいの日本刀のレプリカだという。
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戦国武将のストラップも販売(サムライミュージアム)

では、なぜこれらサムライがらみのスポットや和風エンターテインメントは外国客に人気なのか。
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サムライミュージアムのInstagram (https://www.instagram.com/samuraimuseumtokyo/)には甲冑を身につけた外国客の写真があふれている。

トリップアドバイザーの広報によると、「サムライミュージアムが人気の理由は、和の文化を体験できるところ。最近、全国的に同様の施設が増えている。こうした施設は、トリップアドバイザーのようなサイトやSNSを活用して外国客にアピールする術をよく知っている。サムライミュージアムの場合も、オープン当初からトリップアドバイザー上に施設の所在地、公式サイトへのリンク、メールアドレス、営業時間などの詳細を掲載し、館内ではトリップアドバイザー上に掲載されていることを告知しながら、口コミ投稿を促している。また、英語が話せるスタッフがいて、きちんと説明をしていることも重要なポイント」と分析する。

●「ラストサムライ」こと日本最高齢ガイドが再登場

こうした全国的な外国客のサムライ人気で、活動を再開したユニークな人物がいる。

通訳案内士暦54年という異色の英語ガイド、ジョー岡田さんだ。現役では日本最高齢だという。
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左:ジョー岡田さんのツアーは地元でこう呼ばれている。「京都観光に旋風を巻き起こす!ラストサムライショー」 右:ジョー岡田さんはかつてアメリカのTV番組でサムライショーを披露したことも

彼の型破りなガイディング作法は、海外から訪れた多くの観光客を長く魅了してきた。ガイドを始めたのは前回の東京オリンピックの2年前の1962年。1ドル=360円の時代だ。だが、90年代に一時休業。21世紀に入り、訪日外国人が急増したため、東日本大震災の翌年の2012年5月、約20年ぶりにガイド業を再開した。

御年87歳のジョー岡田さんは、毎週土曜日、京都で外国客相手にウォーキングツアーを行っている。ユニークなのは、そのいでたちとコースの中身。自らサムライに扮し、腰に日本刀を差し、京都の商店街や寺院を練り歩く。そして、最後に「空中りんご斬り」をはじめとしたサムライショーを披露するというものだ。

ツアーの概要については、以下の彼の公式サイトを参照のこと。

ジョー岡田のさむらい人生
http://samurai-okada.com

通訳ガイドを再開した理由について、彼はこう語る。

「90年代に入り、円高で1ドル80円になった。これではもう続けられない。その間、土方でもなんでもやりました。しかし、こうして再び外国客が増える時代になった。90歳まで続けようと思っていたら、2020年に東京オリンピックがあるというから、91歳までやることにした」

当時といまでは、通訳ガイドをめぐる状況は何が違うかと聞くと、「インターネットが世界を変えた。かつて仕事の受注先は、旅行会社が40%、外国人のツアコン30%、国内の観光ガイド30%という比率だったが、いまでは予約はたいていインターネット」と答える。

一見無頼に見える「ラストサムライ」は、その実コミカルな笑いをふりまく熟練のガイディングの持ち主で、ITリテラシーも身につけている。ウォーキングツアーでは毎回4kmを5時間かけて歩くという健脚にも驚かされる。時代は再びジョー岡田のガイディングを必要としているのだ。

●日本にしかない独自の文化だから面白い

これまで見てきた外国客のサムライ人気。でも、一般の日本人の感覚からすると、少しベタすぎて、本当に面白いのか?そんな疑問がないではない。外国客相手には、もっとクールで、エキサイティングで、アメージングなことではなくて、いいのだろうか?

だが、そういうことではないようだ。

「サムライや城は日本にしかない独自の文化だから面白い」。
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クリス・グレンオフィシャルサイト
http://www.chris-glenn.com/

そう明快に答えてくれたのは、オーストラリアのアデレード出身のクリス・グレンさんだ。彼は名古屋のFM局のDJだが、日本のサムライ文化や城、甲冑が好きで、インバウンド観光アドバイザーとしてさまざまな地域の観光PRに関わっている。

1968年生まれのクリス・グレンさんは、85年に交換留学生として来日。帰国後、オーストラリアでラジオDJやコピーライターとして活躍し、92年再来日した。その翌年、名古屋のFM局ZIP-FMでミュージックナビゲーターとしてデビューし、現在、日曜朝9時〜13時の「RADIO ORBIT」を担当している。

昨年刊行した自著『豪州人歴史愛好家、名城を行く』(宝島社)によると、彼の趣味は、戦国時代の歴史や甲冑武具の研究、城めぐりなど。これまで訪ねた城の数は、日本全国400カ所にも及ぶという。また甲冑師にも弟子入りしている。外国人でありながら、筋金入りのサムライ文化の担い手といえる彼は、テレビ朝日『ワイドスクランブル』や毎日放送『知っとこ』などのテレビ番組にも出演。日本の文化や歴史の魅力を国内外に伝える活動を勢力的に行っている。
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甲冑を身につけ、侍に扮して地元の観光PRを行うクリス・グレンさん

クリス・グレンさんの所属事務所のパスト・プレゼント・フューチャーの加藤由佳さんは、彼がサムライ好きになった理由をこう説明する。

「彼が日本文化に興味を持ったのは、日本びいきだった祖父の影響が大きい。祖父から聞く日本の話や家にあった民芸品や伝統工芸品を見て育ち、16歳で日本留学。サムライの世界に引き込まれたのは、担任の先生に渡された吉川英治の『宮本武蔵』を読んだのがきっかけだ。彼にとって、城はサムライたちが生きた場所、戦った場所であること、また軍事施設でありながら美しさもある。こうした城の建築美、建築技術、軍事施設としての機能性など、さまざまな点に魅力を感じたようだ」。

●外国人の視点とはどういうことか

訪日旅行市場が盛り上がるなか、クリス・グレンさんは自身が案内役をつとめる歴史ツアーを企画するほか、自治体や観光施設に対してアドバイスをしたり、講演を行っている。

彼が最も大切なポイントとして挙げるのが「外国人の視点を理解する」ことだ。

その点について、彼にメールで質問した一問一答を紹介する。

―クリスさんは日本の観光PRをするうえで「外国人の視点」が大切というが、外国人と日本人の視点でいちばん違うところはどこか。

「以下のふたつのポイントがある。

①日本に関する知識
当然のことだが、日本人と外国人とでは、日本に関する知識は雲泥の差がある。そのため、日本人の知識ベースで書かれた、観光施設などの紹介文を翻訳しただけでは、通じないことも多々ある。多くの日本人には、その認識が完全に抜け落ちている。

②曖昧さを嫌う
観光パンフレットなどを見ていると、日本人は曖昧な表現や美しい言葉を並べることで、なんとなく良さげに体裁を整えているように感じる。だが、それでは外国人には何が言いたいのかわからないことが多い。外国人相手の場合は、なるべくストレートな表現で伝える必要がある」

今年4月上旬、彼が制作した名古屋城本丸御殿英語版サイトが立ち上がった。ここでは、外国人の知識や好みを考えて、彼が英文テキストの執筆を担当している。
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名古屋城本丸御殿
http://www.nagoya-info.jp/en/hommaru/

―では、「外国人の視点」を理解するために、日本人はどうすればいいか。

「そのためには、以下のことをトライしてほしい。

①逆を考える
自分が海外に行ったとき、困ること、見たいモノ・コト、事前に知りたい情報、欲しいもの、体験したいこと、食べたいものを考えてみれば、日本に来る外国人が何を欲しがるかが理解できると思う。

②外国人に聞いてみる
外国人向けのサイトやパンフレットなどの制作に、外国人がひとりも携わっていない、あるいは外国人にリサーチもしないでつくられていることが多いのには、本当に驚く。もっと外国人と話して、リアルな声を聞いて、ニーズをつかむという作業に努めるべきだ」

クリス・グレンさんは、今日の日本の外国人向け情報発信の現状は、相当深刻な事態にあると指摘する。これは多言語化以前の問題で、そもそも発信者たちは、外国人の日本に対する素朴な疑問にどこまで向き合ってきたかが問われているのだ。

その意味でも、外国客の心をつかんだサムライ人気は、日本人が自国の文化や歴史をあらためて見直す契機になるだろう。訪日旅行市場に関わる多くの人が、日本の文化を外国人にもわかりやすく説明するスキルを身につけていくことは、今後の日本のインバウンドさらに発展させていくうえで欠かせないステップになると思う。

やまとごころレポート
http://www.yamatogokoro.jp/report/2016/report_25.html
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by sanyo-kansatu | 2016-06-20 16:32 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2016年 06月 12日

中野先生、谁呀? 『東京クールトリップ』の著者は日本人教授

3月に上海出張に行ったとき、街場の書店でこんな本を見つけました。
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『東京クールトリップ』中野先生著(2016年1月刊)

东京酷玩之旅(人民邮电出版社)
http://www.ptpress.com.cn/Book.aspx?id=42801

ある日本人大学教授の書いた本で、東京周辺の模型やおもちゃ、交通、軍事、城などのマニアなお店や博物館、名所スポットを豊富な写真入りで紹介しています。とっても不思議な本です。

たとえば、ブリキおもちゃ博物館、株式会社タミヤ本社、新横浜ラーメン博物館、横須賀の軍港といったクール(酷玩)なスポットで、そこでの楽しみ方を解説しています。

著者は「中野先生」とあります。横浜在住の某大学教授です。中国語では一般に「先生」は「さん(教師ではない)」を意味しますが、中野先生は「老师 Teacher/Professor」と呼ばれるより「さん Mr」と呼ばれることを好んだため、「中野先生」を著者名にしたとか。

中野先生は趣味が豊富で、本書に登場する模型関係以外にも、1940~50年代の生活用品や軍用品などのコレクターだそうです。

2001年に先生はパーキンソン病になったにもかかわらず、日中愛好家のために同書を出版したと紹介されています。

いったい「中野先生」とはどなたなのでしょうか? 著者紹介にはご本人の顔写真が載っていて、ネットで検索をかけてみたのですが、個人的にこの方面に詳しくないこともあり、見つかりませんでした。

昨年2月に上海で台湾人作家の鄭世彬さんの著作を見つけたときは、日本に帰って検索すると、すぐにご本人とコンタクトが取れたのですが、今回はどうしたらいいものか。なぜこのような本が中国で出版されることになったのか、興味があります。

台湾のドラッグストア研究家、鄭世彬さんと知り合う (2015年 02月 27日 )
http://inbound.exblog.jp/24182824/

それにしても、中国の出版社にこのようなマニアな関心を持つ編集者がいるとは。ぜひ交流したいので、まずは中野先生と連絡が取りたいと思っております。どなたかご存知の方がいらっしゃったら、ご紹介いただけるとさいわいです。
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by sanyo-kansatu | 2016-06-12 15:49 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 06月 07日

外国客に「娯楽サービス」は足りている?

前回、前々回とプロの通訳ガイドである通訳案内士の新しい動きを見てきました。

銀座と表参道をめぐる東京建築ツアー(英語)が面白い
http://inbound.exblog.jp/25882521/
通訳案内士の新しい動きに注目! 東京建築案内ユニットShowcase
http://inbound.exblog.jp/25883449/

ここで少しマクロの話をすると、観光庁が集計した「費目別にみる訪日外国人の旅行消費額」というデータがあります。

費目別にみる訪日外国人の旅行消費額(2015年)
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これをみると、費目として「宿泊」「飲食」「交通」「娯楽サービス」「買い物」「その他」に分けられていますが、外国人向けツアーは「娯楽サービス」にあたります。これにはTDRやUSJなどのテーマパークの入場費なども含まれると思いますが、比率でいうと、全体の3.0%。ふつうに考えて、旅行に不可欠な出費として「宿泊」や「飲食」「交通」、そして訪日アジア客の比率が80%を超えるいま、「買い物」が多くの割合を占めるのは当然かもしれません。でも、はたしてこれで外国客にとって日本の「娯楽サービス」は足りているといえるのでしょうか?

訪日外国人全体の旅行消費の推移(2011年~15年)
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もっとも、14年に比べ15年は総額が1.7倍と大幅に増えており、「娯楽サービス」もわずかですが比率を増やしています。今後はこのジャンルにもっと光が当たることが、日本のインバウンドを面白くするはずです。

では、いまこの市場に貢献しているのは誰か。それが、以下のようなツアーをはじめとしたアクティビティを扱うマーケットプレイスです。

viator (世界最大の現地ツアーを扱う。トリップアドバイザーの傘下に入る)
http://www.viator.com/
Voyagin (2012年にサービス開始した日本発の旅行体験予約サイト。15年、楽天の傘下に)
https://www.govoyagin.com/?lang=ja
Triplelights (2013年にサービス開始した通訳案内士と外国客のマッチングサイト)
https://triplelights.com/

これらの予約サイトやマッチングサービスの登場で、通訳案内士は外国人からダイレクトブッキングを受けられるようになってきたわけですが、このサービスに登録して集客を図る通訳案内士の側からみると、それぞれにどんな違いがあるのでしょうか。

Showcaseの木原佳弓妃さんによると「通訳案内士がこれらのサイトに登録する目的は、成約につなげることであり、登録するサイトが多ければ多いほどチャンスが増えると考えている。その際のいちばんの懸念事項は、コミッションの割合」だといいます。つまり、これらのサービスに登録する場合、発生ベースでガイド費の数%がサイト側に引かれるしくみになっており、ガイド側としては、それはなるべく低いほうがいいわけです。

さらに、「viatorは世界的に認知度の高いガイド検索サイトなので、Voyaginとはゲスト登録数の規模が違うと認識している。昨年からトリップアドバイザーと提携してviator経由で予約ができるようになったので、それまではツアー提供側の連絡先を確認して別途連絡をして予約を行う流れだったが、楽に予約できるようになった」と指摘します。

サービス提供側にも話を聞いてみましょう。

通訳案内士と外国客のマッチングサイトであるTriplelightsを運営する株式会社トラベリエンスの橋本直明社長とは、ちょうど1年前、話をしたことがあり、本ブログでも紹介しています。
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海外の観光ガイドサービスのモデルを日本に持ち込もう(2015年5月10日)
http://inbound.exblog.jp/24460875/

以下、最近お会いして話をお聞きした一問一答です。

-あれから1年、訪日客はますます増えていますが、トリプルライツはどうですか。

「昨年冬から今年の春に向けてUI(ユーザー・インターフェイス)を地道に改善し続けてきました。おかげさまでこの春、今までの4倍まで売上が伸び、現在複数名の新規採用とオフィス移転を予定しています」

-通訳案内士が外国人からダイレクトブッキングを受けるプラットホームとして、トリップアドバイザーやViator、Voyaginなどがあるようですが、御社と競合するそれぞれのサイトの特徴についてどう分析しておられますか。たとえば、どのジャンルが得意か、サービス内容の特徴は、登録している案内士の傾向、顧客層、実績などの面からみて何がいえるでしょうか。

「昨年、トリップアドバイザーがviatorを買収しました。全世界的に圧倒的な流入を実現していると思います。

たとえるなら、viatorは総合デパートのようなもので、特定なジャンルに強いというより、広く多種多様な品揃えをして、より多くのお客様を獲得していくモデルだと感じています。日本の旅行大手のパッケージツアーも扱いますが、オリジナル性の高い商品はそれほどないのでは。

一方、Voyaginは昨年、楽天に買収され、新しい成長を求められていると思います。チケット予約やレストラン予約など、よりパーソナルなトラベルコンシェルジェの機能が強化されてきました。外国人にはトラベルプランニングに手間をかけたくないというニーズがあり、そのニーズを満たすサービスだと感じます」

-では、彼らと競合するなか、トリプルライツはどう差別化していますか。

「viatorのガイド部門についていうと、海外のサービスなので、日本に支社がなく、ガイドさんへのサポートがほとんどありません。日本の通訳案内士は40代以上の方が大半を占めているため、ITリテラシーがそれほど高くなく、マニュアルやサポートがない中ではこういう海外のサービスはうまく使いこなせないのが実情ではないか。

viator expert tour guides
http://tourguides.viator.com/

その点、トリプルライツの場合は、ガイド一人ひとりに操作を説明する担当者がつくというサポート体制があります。実際、viatorに登録されている日本のガイドの数より、後から参入した弊社のほうが登録数は多く、現在約400名います」

-訪日市場におけるマーケットプレイスの現状について、いま何を感じていますか。

「まずツアー内容のバラエティがまだ少ないこと。人気なのは、サイクリングツアーやすし握りのようなフードツアーくらいでは。もうひとつが、地域の偏りです。実は、弊社のサービスに対する外国客の問い合わせの8割が東京、京都、大阪と大都市圏に集中しています。つまり、地方在住の通訳ガイドの活躍する場がまだまだ少ない。

※同じことは、トリップアドバイザーの都道府県別の外国人口コミ件数にも表れています。こちらでも、東京、京都、大阪で6割を占めています。

トリップアドバイザーで和風エンターテインメントが人気の理由
http://inbound.exblog.jp/25864340/

その理由は、圧倒的な外国語による情報不足だと考えています。問題は地方都市へのアクセスの難しさではない。たとえば、スノーモンキー(野生のサルが露天風呂に入ることで有名な長野県下高井郡山ノ内町の地獄谷温泉)のような外国人には行きにくい場所でも、広く知られるようになると、どっと彼らは現れる。もっと彼らが行きたいと思わせるような地方発の情報発信が必要です」

こうした認識は、先日知り合った名古屋在住のクリス・グレンさんと共通しています。実は、いまの日本には、外国人にしっかり届く情報がまだまだ不足しているのです。

なぜサムライは外国人の心を惹きつけるのか?
http://inbound.exblog.jp/25864895/

「こうした発想から生まれたのが、映像で見る日本最大の国内旅行ガイドブックとして昨年、立ち上げた「Planetyze(プラネタイズ)」です。

Planetyze(プラネタイズ)
http://planetyze.com

いま地方の動画コンテンツづくりに力を入れています。さらに、まだ経験の少ない地方在住の通訳案内士の方たちへのe-learningも始める計画です。情報発信と同時に、日本の通訳ガイドのスキルを向上させる必要があると考えています」

橋本さんの話を聞いていつも感心するのは、目の前のビジネスだけでなく、日本全体に欠けているインフラづくりを自ら担っていこうとする意欲があること。誰かがやらなきゃいけないなら、自分がやるという姿勢です。着地型ツアーの開発から始めて、通訳ガイドのマッチングサイト、そしていまやオンラインガイドブックの制作まで手がけているというのですから。

この領域には、ひとりの外国人(ステファン・シャウエッカーさん)が始めたジャパンガイドという先行者がいます。1996年に立ち上げられています。でも、もっといろいろあっていい。

japan-guide.com
http://www.japan-guide.com/
https://www.japan-guide.co.jp/

-ところで、昨今の通訳案内士制度の規制緩和への動きについてどう考えますか。

「よく言われているようなマーケットを奪うという話ではなく、むしろマーケットは広がり、通訳案内士にとってはチャンスだと考えます。いままで陽の当たらなかった業界が、規制緩和によって陽が当たり、多くの会社の智慧と投資が注がれ、業界が活性化します。実力のあるガイドにとってはより高単価に稼ぐことができ、経験がないガイドでも実力がつければチャンスが与えられると思います」

外国客への「娯楽サービス」をもっと提供するために、これからやることはいっぱいありそうです。
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by sanyo-kansatu | 2016-06-07 11:49 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 06月 06日

通訳案内士の新しい動きに注目! 東京建築案内ユニットShowcase

前回、紹介した東京建築ツアーを催行している「Showcase」のメンバーは、英語通訳案内士の吉田優香さんや木原佳弓妃さん、松原智佳子さんたちで、結成は2014年末。現在、11人のメンバーが登録しています。「Showcase」は「Sense Harajuku Omotesando by Walking Come and See」の頭文字をとったのだそうです。
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銀座と表参道をめぐる東京建築ツアー(英語)が面白い
http://inbound.exblog.jp/25882521/

ところで、Showcaseでは、どういう経緯で東京建築ツアーを企画することになったのか。

木原佳弓妃さんによると「これまで外国人向け体験ツアーというと、すし握り体験のようなフードツアーや相撲部屋を訪ねるツアーが知られていたが、建築をテーマにしたツアーはなかった。代表の吉田優香が2012年春に表参道で始まったTokyo Grand Shopping Weekの事務局に関わったこともあり、表参道で外国人向けのウォーキングツアーができないかと考えていたところ、この街には魅力的な建築が点在していて、実際に外国人を案内すると反応が良かったことからコースを考えた」そうです。

さらに、「表参道周辺には、近代建築だけでなく、一般住居や団地もあり、多様な建築を歩きながら一度に見せることができる。目立たないディティールであっても、そこにデザイナーのこだわりや地域の歴史などのストーリーが込められている。その意味では、専門家ではない私たちでも、建築を通して日本文化のある側面を説明できると思う」と言います。

Showcaseのメンバーには、インテリアコーディネイターや商社勤務、書道家など、通訳案内士の有資格者でありながら、多彩な趣味や才能を持つ人たちが集まっているそうです。共通点は、建築好きであること。

今後は、表参道だけでなく、都内の別のエリアも加えたコースを増やしたいと考えており、そのトライ企画のひとつが、今回の銀座と表参道のツアーだったのでした。

彼女らが催行する東京建築ツアーには、3つの新しい特徴があると思います。

まず、日本ではまだ数少ない東京の現代的な側面を紹介する知的なカルチャーツアーであること。

たとえば、日本の大手旅行会社などが催行する外国人向けツアーをざっと見てもらうとわかると思いますが、これらにはないオリジナルな内容です。

JTB Sunrise Tour
http://www.jtb-sunrisetours.jp/
はとバス(外国語)ツアー
https://www.hatobus.com/
HIS go Japan
http://www.hisgo.com/n1/Contents

通訳案内士を多数登録しているユニークなインバウンド専門旅行会社もあります。でも、こちらは侍や忍者、書道、着物、お茶体験など日本の伝統文化に特化したツアー内容となっています。

日本文化体験交流塾
http://www.ijcee.com/

大手各社には当然のことながら、集客とコストの問題があり、コンテンツの専門性より大衆性を選ばざるをえない面があります。でも、伝統的なコンテンツだけでなく、もっと現代的なものを求める外国客もいるはず。だからといって、秋葉原に連れていけばいいのか。クールジャパンをもち出さずとも、東京の現代的な魅力をわかりやすく伝えられるツアーがもっとあっていいはずなのです。彼女らはそれにチャレンジしています。

ふたつめとして、一般の東京の外国人向け観光地の多くが東部(お台場、銀座、皇居、上野、浅草など)に偏るなか、表参道や青山といった西部地区の街歩きの新しいモデルをつくろうとしていること。これまでの東京のウォーキングツアーは、谷中や浅草方面の江戸情緒を味わうというものが多かった気がします。それはそれでいいのですが、東部(銀座)と西部(表参道)を銀座線という公共交通でつなぐウォーキングツアーであることも、ひとつのチャレンジだと思います。

3つめとしては、通訳案内士という語学のプロらが結成したユニットであり、自ら世界の旅行マーケットプレイスに名乗りを上げ、外国人からダイレクトブッキングを受けてツアーを催行していることです。
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Showcase Tokyo Architecture Tour(東京建築ツアー)
http://showcase-tokyo.com

これまで日本の通訳案内士たちは、旅行会社や通訳案内士団体から外国人ツアーのガイドを仕事として受けることが多く、営業は受身でした。しかし、今日世界には以下のようなツアーを扱うマーケットプレイスが存在し、直接外国客とガイドがマッチングできるプラットフォームがあります。

viator (世界最大の現地ツアーを扱う。最近、トリップアドバイザーの傘下に入る)
http://tourguides.viator.com/
Voyagin (2012年にサービス開始した日本発の旅行体験予約サイト。15年、楽天の傘下に)
https://www.govoyagin.com/?lang=ja
Triplelights (2013年にサービス開始した通訳案内士と外国客のマッチングサイト)
https://triplelights.com/

それぞれのサイトには特徴があり、得意分野も微妙に異なるようですが、訪日旅行市場の拡大にともない、通訳案内士自らこれらのプラットフォームに登録し、自己プレゼンテーションすることでガイディングの仕事を得られる時代になっているのです。Showcaseでも、自らのサイトに加え、Voyaginに登録して、集客しているそうです。

こうした取り組みは、これからもっと地域発のオリジナルで魅力的なツアーが生まれる可能性を示しています。一般に地元で企画されたツアーを「着地型ツアー」といいますが、ネットによるプラットフォームのない時代はそれを国内外の発地や旅行者に直接売り込むことができませんでした。しかし、いまは違います。今後は、全国でこういう動きが広がっていくことを期待したいと思います。

外国客に「娯楽サービス」は足りている?
http://inbound.exblog.jp/25886445/
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by sanyo-kansatu | 2016-06-06 14:00 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 06月 06日

銀座と表参道をめぐる東京建築ツアー(英語)が面白い

ぼくの仕事場は東新宿にあります。先ごろ、2015年に都内を訪れた外国人旅行者が初めて1000万人を超えたと報じられましたが、東新宿はおそらく都内でも浅草に次ぐか、あるいはそれ以上の外国人出没エリアだと思われます。

都内訪問 外国人客1000万人超す(朝日新聞2016年5月30日)
http://www.asahi.com/articles/CMTW1605301300004.html

※2015年に都内を訪れた外国人旅行者が前年比34%増の1189万人。13年から3年連続で過去最多を更新。

エクスペディアで都内のホテルを予約した外国人の3人に1人は新宿を選ぶ
http://inbound.exblog.jp/25331847/
東新宿は新しい外国客向けホテル地区になりつつあります
http://inbound.exblog.jp/20672715/

理由は、日本観光のハイライトである富士山と箱根のゲートウェイであること。ゆえに、高級ホテルからビジネスホテル、ホステルまで(ついでにいうと、AirBnBの登録物件の多さも都内1、2を争う)、さまざまな層の旅行者のニーズに合わせた多彩な宿泊施設が集まっているからです。

仕事場への行き帰りやランチでオフィスの外に出るとき、通りは欧米系からアジア系まで外国人だらけです。個人やカップル、小グループが大半ですが、何を隠そう中国団体客を乗せたツアーバス専用食堂も数軒あるため、昼どきは中国人があふれているという多国籍的な様相を見せているのです。明治通りに近い場所に一軒のゲストハウスが昨年冬にできて以来、窓越しに見えるロビーのカフェにはいつも若い外国客がたむろしていて、ぼくもたまにお茶することがあります。

そんな彼らを日々眺めながら、ふと思うことがあります。

彼らはみんな、東京に来て何やって時間を過ごしているのだろう。本当に満足しているのだろうか?

もちろん、浅草に行けば、日本情緒を味わいに来ている彼らを大勢見かけますし、新宿でも伊勢丹などの商業施設に行けば、買い物にいそしむアジア系の人たちがわんさかいます。最近では、サムライや忍者といった日本の歴史文化をわかりやすく体験させるスポットも増えていて、人気を呼んでいます。

なぜサムライは外国人の心を惹きつけるのか?
http://inbound.exblog.jp/25864895/

訪日客が増えると、次々に新しいエンタメやアトラクションが生まれるのは自然の流れでしょう。これらはこれで面白いと思うのですが、もう少し知的で現代的な東京体験をしたいというニーズもあるのでは。自分がパリやニューヨークを訪ねるときは、そんなに小難しくなくていいけど、カルチャー系スポットに足を運びたくなります。それにやっぱり旅ですから、街歩きも楽しみたい。では、伝統系以外で、東京ではどんなカルチャー体験が楽しめるのか。それを誰がナビゲーションしてくれるのか……。

最近、知り合ったShowcaseという通訳ガイドのユニットは、都内のユニークな建築案内に特化したツアーを始めています。

Showcase Tokyo Architecture Tour(東京建築ツアー)
http://showcase-tokyo.com

4月中旬、ぼくはオランダで建築を学ぶ学生さんたちが参加したウォーキングツアーに同行しました。銀座と表参道にあるユニークな建築群を約5時間かけて歩くというものです。以下、その実況を報告します。

待ち合わせは、お昼12時に銀座の歌舞伎座にて。ツアーに参加するのは、オランダ・ユトレヒト大学(Institute of Building Engineering)の 学生19名と引率の教師2名の皆さんです。 今回は人数が多いので、2グループに分かれて前半2時間で銀座界隈を回り、休憩後、表参道へ移動して2時間ほど歩き、17時にゴール地点の明治神宮の第一鳥居前の広場で合流して解散という流れです。
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12時少し前に歌舞伎町に行くと、学生さんたちが待っていました。近くのコンビニで買ったのか、地べたに腰かけ、お寿司を食べている男子学生もいます。

オランダ人らしく、さすがに身長が高い人が多いです。女子学生も数名いますし、留学生らしいアジア系の学生もいました。
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このツアーでは5時間かけて20数ヵ所の個性的な建築を訪ねるのですが、以下印象に残ったスポットを紹介しましょう。

ぼくが同行したグループは、まず歌舞伎座の中に入ります。5階に歌舞伎座の歴史を解説するギャラリーと野外庭園があります。
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歌舞伎座
http://www.kabuki-za.co.jp/

これは銀座8丁目にある中銀カプセルタワーです。黒川紀章が設計した世界初の実用化されたカプセル型集合住宅です。
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銀座中央通りを歩いています。
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スウォッチ・グループ・ジャパンの本社「ニコラス・G・ハイエックセンター(NICOLAS G. HAYEK CENTER)も面白いですが、ビルの合間の路地裏に潜む豊岩稲荷神社へ向かう道はちょっとした冒険です。
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NICOLAS G. HAYEK CENTER
http://www.swatchgroup.jp/boutique/nicolas-g-hayek-center/
豊岩稲荷神社
http://www.tesshow.jp/chuo/shrine_ginza_toyoiwa.html
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ソニービルの隣の銀座エルメス本店に立ち寄り、今年3月末にオープンしたばかりの銀座東急プラザでひと休み。

銀座東急プラザ
http://ginza.tokyu-plaza.com/

屋上のキリコテラスから銀座を眺めると、松坂屋の後にできる建設中の観世能楽堂(今年11月完成予定)をはじめ、あちこちに建設クレーンが見られます。訪日旅行市場の拡大によって新たな国内投資が生まれている象徴的な光景といえるでしょう。
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【銀座】松坂屋跡地に東京最大級の商業施設と観世能楽堂ができる
http://matome.naver.jp/odai/2138726263386134701

さて、銀座線で表参道へ。表参道は知る人ぞ知る、街ごと建築博物館です。個別に触れているときりがないので、詳しくは以下のサイトなどを参照してください。

東京の観光公式サイト<GO TOKYO>おすすめ建築スポット
https://www.gotokyo.org/jp/tourists/attractions/attraction/art/harajuku.html
まるで「建築」博物館!表参道青山ショップをデザイン散歩
https://haveagood.holiday/plans/1426
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最後に、明治神宮の鳥居前で解散です。個人的にも、初めて知ったスポットも多く、とても面白かったです。今度海外から友人が来たとき、いろいろ案内したくなりますね。
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とはいえ、見ず知らずの外国人旅行者を相手にこれだけのスポットを案内するのは、素人にはとても無理。当然、さまざまな質問が飛び交うことになるでしょうから、彼らを納得させる説明を外国語でするのは、プロでなければ務まりません。

だから、いまこそ通訳案内士の出番なのです。次回は、このツアーを企画催行している通訳ガイドのユニット「Showcase」の皆さんに話を聞きたいと思います。

通訳案内士の新しい動きに注目! 東京建築案内ユニットShowcase
http://inbound.exblog.jp/25883449/
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by sanyo-kansatu | 2016-06-06 11:33 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 06月 01日

なぜサムライは外国人の心を惹きつけるのか?

本ブログでは、このところサムライがらみのネタをいくつも書いています。訪日外国人の間でサムライや忍者、お城、着物変身スタジオなどの和風エンターテインメント体験が人気らしく、その理由を探るべく、ちょこちょこ取材していたからです。

トリップアドバイザーで人気のサムライミュージアムとふくろうカフェを覗いてみた
http://inbound.exblog.jp/25702798/
浅草でいま大流行という外国人観光客向け変身スタジオを覗いてみた
http://inbound.exblog.jp/25840662/
TBSテレビの「あさチャン」でも紹介されたサムライ体験ツアー(by夢乃屋)
http://inbound.exblog.jp/25840817/
銀座インバウンドレストランのサムライショーは中国客の食いつきがすごい
http://inbound.exblog.jp/25841438/
HISが都内各地で訪日外客向けエンタメツアーを収集・開発・販売しています
http://inbound.exblog.jp/25841804/
日本最高齢の通訳ガイド、「ラストサムライ」ことジョー岡田さんに話を聞きました
http://inbound.exblog.jp/25849969/

では、なぜこれらサムライがらみのスポットやエンタメは人気なのでしょうか。

世界最大の旅行口コミサイトのトリップアドバイザーに聞いたところ、和風エンターテインメントについての外国人の書き込みには「ショーとして面白い」「見る価値のあるエンタテイメント」「日本の文化を体験できて興味深い」などが多いそうです。

これらのコメントは月並みすぎる気もしますが、同サイトの外国人による東京都の人気観光地ランキングをみると、サムライミュージアムは2位で、以下3位は浅草、5位は明治神宮、6位は両国国技館、7位に東京都江戸東京博物館、8位は八芳園、9位はホテルニューオータニ庭園といった具合に、ほぼ和のスポットが選ばれていることがわかります。彼らにとって「日本の文化を体験」することが最重要関心事であることが見えてきます。

トリップアドバイザーで和風エンターテインメントが人気の理由
http://inbound.exblog.jp/25864340/

とはいえ、一般の日本人の感覚からすると、こういうのってちょっとベタすぎて、ホントに面白いんだろうか? そんな疑心暗鬼がないではありません。もっとクールで、エキサイティングで、アメージングなことじゃなくて、いいのかしら?

でも、どうやらそういうことではないようです。「サムライやお城は日本にしかない独自の文化だから面白いのです」。

そう明快に答えてくれた外国の方を最近、知りました。

その人は、名古屋のFMラジオ局ZIP-FMのミュージックナビゲーターで、オーストラリアのアデレード出身のクリス・グレンさんです。とにかく日本のお城や甲冑が大好きで、名古屋城の外国人向けHPを制作したり、ときどき侍に扮して、地元の観光PRもするそうです。

名古屋といえば、同地にゆかりのある武将6人と、陣笠隊の4人で結成された「名古屋おもてなし武将隊」も有名ですね。

名古屋おもてなし武将隊公式ウェブサイト
http://busho-tai.jp/

最近は、こんなニュースもありました。どうやら名古屋では、サムライや忍者が盛り上がっていそうですね。

日本初! 月給18万円で愛知県庁に雇われた“アメリカ人忍者”のニッポン愛とは
http://wpb.shueisha.co.jp/2016/05/29/65870/

さて、正式なクリス・グレンさんのプロフィールを紹介します。

1968年生まれ。85年、ロータリー交換留学生として初来日し、翌年帰国。86年、弱冠18歳にしてプロラジオDJデビュー。7年間オーストラリアでラジオDJ・コピーライターとして活躍したのち、92年に再来日。93年、名古屋のFMラジオ局ZIP-FMミュージックナビゲーターとしてデビュー。現在は、日曜朝9時〜13時「RADIO ORBIT」を担当中。

ラジオDJとして活躍するほか、日本の魅力を語る外国人として、テレビ朝日「ワイドスクランブル」、毎日放送「知っとこ」などテレビ出演も多数。甲冑師に弟子入りして制作したMy甲冑を着用し、国内外に向け日本の歴史、文化の魅力を伝えるため、イベントやテレビなどに出演するなど勢力的に活動をしている。

趣味は、戦国時代の歴史研究、甲冑武具の研究、城めぐりなど。現在までに巡った城の数は、日本全国400カ所にも及ぶ。近年は、自身が案内役をつとめる歴史ツアーを企画するほか、自治体や観光施設に対しインバウンド観光アドバイスなども行う。また「外国人から見た日本」「外国人の喜ぶ、おもてなし」をテーマにした講演でも人気を博している。

著書に「The Battle of Sekigahara:The Greatest Samurai Battle in History」(英語版)、「豪州人歴史愛好家、名城を行く」(宝島社)がある。三重県桑名市ブランド推進委員、あいち観光戦略検討委員、関ヶ原グランドデザイン策定委員、「昇龍道」磨きあげ検討委員、関ヶ原観光大使。
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クリス・グレンオフィシャルサイト
http://www.chris-glenn.com/

こういう方がいらっしゃるんですね。興味深々です。名古屋在住ということで、今回は直接話を聞くことができなかったのですが、クリスさんには、メールで質問させていただきました。以下、その一問一答です。

-クリスさんが地元で関わっているインバウンドに関する組織(あいち観光戦略検討委員、関ヶ原グランドデザイン策定委員、「昇龍道」磨きあげ検討委員、関ヶ原観光大使)での活動を教えてください。

●各種委員について

上記記載の委員については、有識者会議の位置づけで各地方自治体に設置されているものです。日本の歴史文化に造詣が深く、20年以上前から、日本、そして東海エリアの魅力を国内外に向けて発信し続けてきたという実績、外国人の目線で「日本」や「地域」を見られるということ、外国人のニーズや日本人と外国人との意識や興味の違いを理解していることから、各委員に任命されています。

●インバウンドのお仕事

オーストラリア、そして日本で、ラジオDJ、コピーライター、タレントとして活動してきたキャリアをいかし、上記委員などのほか、WEB、パンフレットなどの英文ライティング(翻訳ではなく、英文での書き下ろし)、キャッチコピーの制作、観光動画の監修、アドバイザー、シナリオ制作、ナレーション、インバウンドに関する講演、観光施設や宿泊施設などへのコンサルティング、インセンティブツアーでの講師(ガイド)、インセンティブツアー企画・プロデュース・キャスティングなど、活動は多岐に渡ります。

-サイトによると、日本甲冑武具研究保存会に所属しているようですが、クリスさんはどんな活動をしているのですか。

甲冑武具の研究について、先輩の皆様からご指導いただき、勉強をさせていただいています。日本甲冑武具研究保存会・名古屋支部は、独自に甲冑隊を結成し、各地域で開催されております歴史イベントに甲冑武者として参加するなどといったこともしておりましたので数年前までは、そういったイベントにも多数参加していました。
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-クリスさんは日本の歴史で戦国時代がいちばん好きだそうですが、なぜなのか。

・「サムライ」「武士の精神」が、一番リアルに存在していた時代であったから。
・政治的、戦略的な面でも面白みがある。
・信長、秀吉、家康といった英雄たちが、さまざまな意味で、現在の日本の礎を築いた時代であったから。
・乱世の時代に生きたサムライたちの生き様に、興味深いストーリーが多くあるから。
・甲冑、武具、城など、戦うためのものでありながら、機能性に優れているだけではなく、どれも美しく、日本の技術力や日本人の美学を感じられるから。

-最後にズバリ、サムライの魅力は何なのか。サムライに関する映画や小説などの影響はありますか。

サムライは、自分の国の歴史や文化の中には存在しない、日本独自の文化であるがゆえに魅力的なのだと思います。

甲冑、日本刀、城など、深い知識がなくても、サムライを象徴するようなものについても、なんとなく「カッコいい」という印象を持つ外国人も多いと思いますし、日本に来ないと見られないものですから、ぜひとも見ておきたいと思うのは当然だと思います(オーストラリアに行ったら、コアラを抱っこする。アボリジニの聖地エアーズロックに行くのと同じです)。

『七人の侍』など黒澤映画からサムライ文化に興味を持った人は多いと思います。そのほか『SHOGUN』『ラストサムライ』などを見て好きになった人もいるでしょうし、本では『MUSASHI』(吉川英治)『47 RONIN』などを読んで興味を持った人もいると思います。

札幌に留学していた高校時代に「MUSASHI」を読んで、サムライというものに、より深く興味を持ちました。サムライ関係の黒澤映画は全部見ています。子供の頃は、オーストラリアで日本のテレビ時代劇『隠密剣士』を見て、カッコいいなと思った記憶もあります。
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※『隠密剣士』は、1962年から65年までTBS系で毎週日曜、全128話に渡って放映された大瀬康一主演の連続テレビ時代劇。忍者ブームの火付け役だそうです。すいません。日本人ですけど、ぼくは知りませんでした。

隠密剣士の歌(ひばり児童合唱団)
https://www.youtube.com/watch?v=z_i1_0SPd-g

日本文化に精通したクリスさんの話は、言われてみると、なるほどそうかとあらためて気づかされることばかりです。彼ほど詳しくない一般の外国人にとってのサムライがらみのスポットの人気も「日本にしかない独自の文化だから見たいのだ」という理由が大きいのですね。

こういう当たり前のことに、意外と我々は気づいていないようです。

クリスさんの所属するパスト・プレゼント・フューチャーの加藤由佳さんは、以下のように彼のサムライ好きの理由を説明してくれました。

「彼が日本文化に興味を持ったのは、日本びいきだった祖父の影響が大きいようです。祖父から聞く日本の話や祖父の家にあった民芸品、伝統工芸品を見て育ったことをきっかけに、日本に興味を持つようになり、16歳で日本に留学。以来、日本の歴史文化を積極的に勉強し、知識を深めています。このときに、先生からもらった吉川英治の『宮本武蔵』を読み、サムライの世界に引き込まれています。城への興味も、元々はサムライから入っています。サムライたちが生きた場所、戦った場所であること、また軍事施設でありながら、美しさもあるという点、城の建築美、建築技術、軍事施設としての機能性など、さまざまな点で興味深いようです」。

パスト・プレゼント・フューチャー
http://www.ppfppf.com/

彼は、いったい日本びいきのおじいさんからどんな影響を受けたのだろう。おじいさんが日本でどんな経験をし、彼にどんな話として聞かせてくれたのか。また、彼の来日直後に起きた甲冑師の先生との運命的な出会いとはどのようなものだったのか……。

これらの話は、昨年刊行されたクリスさんの著書『豪州人歴史愛好家、名城を行く』(宝島社)に書かれています。
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次回は、いまや「インバウンド観光アドバイザー」として活躍するクリスさんの日本の観光PRに関する提言を紹介したいと思います。ポイントは、外国人の視点を理解することの大切さだそうです。

あなたは日本の文化や歴史を外国人に説明できますか?
http://inbound.exblog.jp/25865610/
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by sanyo-kansatu | 2016-06-01 13:19 | “参与観察”日誌 | Comments(0)