ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 09月 14日

サハリンの自由市場(バザール)でコリア系や中央アジア系の人たちに会う

ユジノサハリンスクの自由市場(バザール)に行きました。
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駅からレーニン通りを左に向かって10数分ほど歩いた先の左手の路地に入った場所にあります。
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メインのプレハブの建物の中は、間仕切りされていて、日常雑貨や衣料、肉、魚、野菜、香辛料、各種食材を扱っています。面白いのは、売るものによって民族が異なっていることです。
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この肉屋はコリア系の男性が経営しています。とても人懐っこくて気さくなおじさんで、ソウルの市場にでもいるみたいです。
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衣料や女性モノのコーナーも韓国系の人たちが大半でした。
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瓶詰めや調味料、お菓子などを売っているこの店もそう。
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キャンディーやチョコは量り売りです。一部のチョコはサハリン製と思われます。
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サハリンではいまも日本時代の製糖工場でチョコレートをつくっています
http://inbound.exblog.jp/26967895/

プレハブの外にもいろんな売り場があります。いわば場外市場で、果物を売るのは、中央アジア系の人たちです。
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中央アジア3人組。こういう光景は中国でもよく見られますが、その場合は新疆ウイグル地区の少数民族。ここではもっと西の中央アジアの人たちです。彼らは戦後、労働者としてずいぶんこちらに送り込まれてきました。自ら移住してきた人もいるでしょう。
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ナッツやナツメ、ドライフルーツも彼らの担当です。
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3人組のリーダーらしきおじさんを記念撮影。はにかむ表情が人のよさを感じさせます。
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場外市場で中央アジア系の売り手にコリア糸とロシア系のおばさんというふたりの客のスリーショット。これはサハリンらしい光景です。
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赤カブを売っているコリア系のおばさんは、「一口食え」と水洗いした赤カブを手渡してくれました。少し苦味が利いておいしいです。
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魚の売り場もコリア系のおばさんでした。
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これは北海道でも捕れるキュウリウオの燻製です。サハリンの酒好きの手軽なつまみで、ビールによく合います。
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こっちの人は魚を燻製にして食べるのが一般的のようです。カニやイクラの瓶詰めもありました。
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サハリンでは、少数民族ゆえに貧しい、虐げられているというような、かつてのネガティブなイメージはなく、レストランや食材加工、市場などの食に関わるビジネスは韓国系が広く握っていると聞きます(一部の食材は中央アジア系の人たちであることは、いま見てきたとおりです)。

彼らは気さくで日本人にもあたりが柔らかいです。写真もけっこう自由に撮らせてくれますが、中には恥ずかしがって逃げてしまうおばさんもいました。

これは思うに、サハリンには華人がほとんどいないので、コリア系の人たちが東南アジアにおける華人の役割を担っている印象です。戦後直後のスターリンの時代には相当辛酸をなめたことでしょうが、ソ連が崩壊し、自由経済に変わっていく中で、資源ビジネスなどはロシア系が牛耳るとしても、それ以外の生活に関わる領域は、辛抱強くまじめに働く韓国系の人たちが商うことになっていったのでしょう。

ロシアメディアによると、「4万人強からなるの朝鮮人コミュニティのほとんどのメンバーは、ロシアの市民権を持ち、島の文化的生活および社会に完全に融合している」といいます。それはパッと見た印象にすぎませんが、本当だと思います。

この記事の中には意外なエピソードが紹介されています。ある「朝鮮系住民(女性)」は「自分を見つける」ためにモスクワとソウルに暮らしたものの、「韓国ではあまりにもロシア人的、モスクワではあまりにも韓国人的(とみなされた)」ため、サハリンに戻ったといいます。彼女にとって多民族的な社会であるサハリンがいちばん暮らしやすいというのです。

サハリンの朝鮮系住民たち(RUSSIA BEYOND2015.5.27)
https://jp.rbth.com/arts/2015/05/27/52985

今回、うまく探せませんでしたが、タラバガニなどを扱う市場もあります。サハリンの市場には、日本にはない食材も多く、必ず訪ねてみたい場所です。
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by sanyo-kansatu | 2017-09-14 09:11 | ノービザ解禁!極東ロシア | Comments(0)
2017年 09月 12日

サハリンの人たちは日本が大好き~レストラン『日本みたい』に行ってみた

ユジノサハリンスクには日本人が経営する日本料理店も数軒(ふる里、豊原)ありますが、面白かったのが、ロシア人経営の、その名も『日本みたい』というレストランでした。

市内中心部から少し離れた場所にある一軒家。レストランは2階で、まさになんちゃって日本風の内装。回転寿司のベルトコンベヤや座敷の個室まであります。
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客層はそれなりに裕福な地元ロシア人たちで、やはりここにも非ロシア系の人たちがけっこういます。サハリンでは、特に韓国系は食に関わる経済を握っているようで、お金を持っている人が多そうです。
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メニューには、カレーライスやカツ丼、うな丼、そば、ラーメンなどからサハリン産の海産物を使ったお寿司まであります。ぼくは試しにカレーライスを注文しましたが、味のベースは日本の甘口カレーのルーで、そこに何かを加えてアレンジしているようです。
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メニューはこんな感じ。
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ウエイトレスは、これはお世辞抜きで地元のロシア人美女が勢ぞろい。彼女たちが身につけているのは、先週ForbesJapanのサイトで書いたウラジオストクのなんちゃって日本食レストラン『東京かわいい』のウエイトレスのようなワンピースやドレスではなく、まさに黒で決めたメイドコスチュームです(残念ながら、写真は撮れませんでした)。

日本に一番近いヨーロッパ「ウラジオストク」の意外な素顔(ForbesJapan2017/09/06)
https://forbesjapan.com/articles/detail/17595

だからといって、もちろんここはメイドカフェのたぐいではなく、ハイソな地元の若者でにぎわう町いちばんのおしゃれスポットなんです。

この店の存在を知ったのは、ネットで以下の情報を入手したからです。

HOKKAIDO & SAKHALIN Travel Information (北海道とサハリンの観光案内)Place to Eat
http://www.ekinavi-net.jp/sakhalin/yuzhno-sakhalinsk/eat.html 

そこには、こう解説されています。

Nihon Mitai
This dark brown Japanese restaurant serves machine-made sushi. Seafood are flown in from Hokkaido.
Address: 2b Pobedy Street near TV Tower
11:00 - 23:00

「日本みたい」はパピェードゥイ大通りの赤い教会に隣接するロシア人経営の日本食・寿司レストラン。1階がテイクアウトコーナー、2階がレストランになっている。寿司のシャリは機械握りで、ロシア人の職人が調理を担当。食材のネタはすべて北海道から空輸している。ちなみに回転寿司のベルトコンベヤは18時から回転開始とのこと。地元市民には人気があるようだ。
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ここにもあるように、1階は日本食材のショップです。

中を覗くと、あらゆる日本食材が並んでいました。サハリンに住む日本人は数十人と聞いていますから、これは地元の人たち向けの店と言っていいでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2017-09-12 09:21 | ノービザ解禁!極東ロシア | Comments(0)
2017年 09月 09日

大阪インバウンドのにぎわいは日本最強か!?

9月頭に大阪に立ち寄りました。当初その予定はなかったのですが、予約していたLCCが欠航となり、新幹線で帰ろうか思案したのですが、週末にかかっていたこともあり、1泊することにしたんです。

おかげで1年ぶりの大阪を、ほんの一部ですが、歩くことができました。

それにしても、大阪のインバウンドのにぎわいは、相変わらずすごいですね。

そこで、東京ではなかなか見られない、大阪ならではのインバウンドな風景の数々をご紹介しようと思います。

まず大阪といえば心斎橋商店街。一部を除き、多くの店が開くのは午前11時ですが、10時過ぎると商店街は外国客だらけです。日本人はこの時間帯、少数派です。
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この日はアジア系の若い女性のふたり組というのが目に付きました。前者のスキのなさげな都会風は中国系で、ペアルック(?)でゆるい感じのふたりは台湾系でしょうか(あくまでイメージです…)。
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なぜかサッカー日本代表のユニフォームを身につけたタイ人の女の子たちもいました。日本代表のWカップ出場が決まった翌朝だったのですが、面白いですね。
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ビニール袋にいっぱい買い物をした若い女性のふたり組が歩いてきたので、袋の中身だけこっそり接写(失礼!)したところ、さきいかやユニチャームのシルコットやらチープな爆買い商品満載でした。
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なにしろマツキヨでは、外国客限定でFacebookや微信で優待券をダウンロードした客には、消費税8%プラス7%もの割引をするというのですから。「爆買い」は終わったといわれ、一時ほどの売上げはないと思われますが、大阪ではドラッグストア系を中心に客の争奪合戦が繰り広げられています。アジア客が買い物好きであることは変わらないのですから当然でしょう。じゃあ日本を旅行中どの町で買おうかというとき、商品が豊富で潔く割引してくれる大阪が選ばれるのだと思います。さすがは「商売の街」。
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ダイコク屋の中国人女性店員も、商品の書かれた宣伝パネルを掲げて大声で客引きをしています。
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難波に近い黒門市場にも足を運んでみました。もう数年前からですが、外国客であふれて縁日のようなにぎわいです。もともとここは高級食材専門の市場でした。ですので、カニやらウナギやらフルーツやら、あらゆる食材が観光客用に見せ前に並べられ、観光客は立ち食いしています。ここまで外国客で密集し、立ち食い客てにぎわう商店街は、全国を探してもないかもしれません。大阪すごいです。
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大阪城にもちょこっと寄ってみました。インド系の若い3人組に会いました。大阪城をバックに写真を撮りまくっていました。
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ところで、今回大阪でいくつかの発見をしました。もしかしたら、東京でも見られる光景なのかもしれませんが、まずは難波の高島屋の資生堂コーナーの前に並ぶ中国客です。なんでも限定商品の販売があることを聞きつけてきたからだそう。
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中国客は、すでに日本の家電商品は世界的なブランド性を喪失しており、むしろ中国家電のほうが広く支持されていることを知っていますから、家電量販店には以前ほど足を運ばなくなりましたが、化粧品をはじめとしたドラッグストア系商品の日本の価値は認めているため、どこで誰が情報を広めたのか、限定商品が販売されると聞くと、この行列です。彼らはやることがはっきりしていて、わかりやすいともいえます。

おかげで高島屋の1階はスーツケースを引きずる中国客であふれています。きっと中国人以外の人もいるのでしょうけれど、コスメ売り場で彼女と一緒に並んで買い物をするあたり、どう見ても華人的ふるまいです。ここまでやるのが優しい中国男なのです。
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興味深かったのが、難波のOCAT(大阪シティエアターミナル)と関西空港の国際線到着ロビーのHISカウンターで見た以下のパネルでした。
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これらは以下の中国の(一部、台湾、香港系もある)オンライン旅行会社で販売されているJRパスや大阪周遊パスなどの受け取り窓口であることを示すものです。

Kloock(客路) https://www.klook.com/ https://www.klook.com/zh-TW/ ※台湾、香港系
JTR WEB http://www.jtrweb.com/
大衆点評 https://www.dianping.com/ ※中国系
C-trip  http://www.ctrip.com   http://jp.ctrip.com ※中国系
蚂蜂窝 http://www.mafengwo.cn/  ※中国系
KKday https://www.kkday.com/zh-tw/home/index2 ※台湾系
出国去 http://www.chuguoqu.com/ ※中国系
穷游网  http://www.qyer.com/  ※中国系
最会游  http://www.zuihuiyou.com/  ※中国系
同程旅游 https://www.ly.com/  ※中国系
南湖国旅 https://www.nanhutravel.com/ 中国系

関空のHISの前には行列ができていました。もしかしたら、ここで並んでいる中国客の中には「こんなのわざわざ発券しないでアプリで対応してくれればいいのに。日本って遅れてる…」と心の中でつぶやいている人がいるかもしれません。中国では高速鉄道の発券は事前にネット予約し、窓口ではなく、発券機で簡単に受け取ることができますから。
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こうした中国オンライン旅行社の受け取りを東京各地にあるHISツーリストインフォメーションなどで行っているかどうかはまだ確認していません。

さて、最後にいくつか気づいたこと、新たに知ったことなどを書いておきます。

JR大阪駅のツーリストインフォメーションでは、海外のVIPに人気のとんだばやしを売り出そうとしていました。
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中国の富豪たちがショックを受ける町 「大阪・富田林」を歩く(2016年05月30日)
http://inbound.exblog.jp/25859112/

大阪環状線JR新今宮駅のホームの前に広がる空き地は、星野リゾートが購入した高級旅館の建設予定地です。線路の反対側には西成のあいりん地区が広がっています。
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関空行きの南海の急行電車はこのとおり、スーツケースが並んでいます。昨年秋、こんなこともありましたね。
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「外国人多くご不便を」とアナウンスした車掌さん 訪日客急増で日本人はストレスをためてる? (2016年 10月 11日 )
http://inbound.exblog.jp/26268458/

最後は関空第2ターミナルの国際線乗り場近くで見かけた、いま話題の中国「白タク」です。実は、成田空港でも何台も見かけました。
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大都市圏を中心に増殖中!中国系「越境白タク」の問題点を追跡 (2017年06月26日)
http://inbound.exblog.jp/26951467/

大阪の友人と梅田駅周辺を歩いていたときも、あるホテルのロビーに中国「白タク」がいました。

友人は「ここにもあそこにもですよ…」とぼやいていました。

最後のオチで少しがっかりさせてしまったかもしれませんが、大阪は日本のインバウンドの最前線であることは間違いありません。

大阪と東京のインバウンドの特徴の違いを外国人の視点で考えてみる (2016年01月31日)
http://inbound.exblog.jp/25315756/
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by sanyo-kansatu | 2017-09-09 13:31 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 07月 29日

中国客向けモバイル決済導入はどこまで進むだろうか?

先週、東京ビッグサイトで開かれていた展示会「インバウンドジャパン2017」に行ってきました。 
 
インバウンドジャパン2017
http://expo.nikkeibp.co.jp/ibj/2017/

日経BP社主催の同展示会には、越境ECや各種訪日客向けサービス、マーケティング系の企業が百数十社出展していました。全国の自治体などが多く出展する9月のツーリズムexpoジャパンとは違う、あくまでB2Bのイベントです。

さまざまな出展企業があり、それぞれ面白いのですが、注目はやはり、中国モバイル決済の雄であるアリペイ(支付宝)とWeChatPay(微信支付)の日本市場におけるシェア競争だったのではないでしょうか。日本の小売業界へ中国系モバイル決済の導入を進めるための代理店が何社も出展していたのです。

彼らのブースは入口正面右手にありました。

まずアリペイ系。謳い文句はこうです。

「インバウンド顧客の『爆買い』を呼び込むトータルソリューション
 アリペイ決済最強ツール! Cpay for Alipay in Japan」(日本恒生ソフトウェア)。
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加盟店のレジ処理の際の決済端末で、中国客の手にしたスマホのQRコードを読み込めばレシートが出て終わりというものです。

日本恒生ソフトウェア http://www.hundsun.co.jp

アリペイの本家本元アントファイナンスの日本法人ブースもありました。

アントファイナンスジャパン https://www.antfin.com/index.htm?locale=ja_JP

そのブースの中にはANA系の金融サービス会社もあります。

ANA Digital Gate http://www.ana-dg.com

アリペイ系の関係者に聞くと「今後、アリペイの決済は中国だけでなく、タイなど東南アジアにも普及するので、中国以外の訪日客でも利用が広がることでしょう」。

一方、WeChatPay系は「モバイル決済額はまだアリペイより小さいが、こちらは微信というSNSと連動した決済サービス。いずれシェアはアリペイを超えるといわれています」。
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以下のような関連企業が出展していました。

インタセクト・コミュニケーションズ http://www.intasect.com/
アプラス(新生銀行グループ) https://wechatpay.aplus.co.jp/

WeChatグループで、中国版食べログの「大衆点評」の日本法人も出展していました。

大衆点評 http://www.dianping.com/
同サービス東京のページ http://www.dianping.com/tokyo
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ざっと見た限り、まだ飲食店よりもショッピング施設の情報量のほうが多そうですが、ここでも中国国内向けのサービスがどんどん海外に「越境」していることがわかります。要するに、日本の飲食店も「大衆点評」に広告を出せば、中国客を集客できるというわけです。

今後、決済額でもアリペイをWeChatPayが超えるだろうという指摘は、以下の日本経済新聞でも報じられています。

スマホ決済 中国8億人に ネット大手テンセント
脱現金 利用者が急増 16年の市場倍増600兆円 (日本経済新聞2017/3/24)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDX23H1S_T20C17A3FFE000/

(一部抜粋)「もともと中国でスマホ決済の主役は、電子商取引最大手のアリババ集団だった。自社で展開するネット通販の商品購入時に「アリペイ(支付宝)」と呼ぶ決済機能を使ってもらうことを中心にユーザーを増やしてきた。

ところが、そこにテンセントが9億人近い微信ユーザーを連れ、昨年から本格的に攻めてきたのだ。自社のスマホ決済「微信支付」を主力に、すでに昨年9月末時点で8.3億人の決済ユーザーを獲得。同4億人のアリババの「アリペイ」を、あっさり抜き去った。

決済金額ベースでは、高額商品も扱うネット通販向けが主力のアリババにまだ及ばないが、2014年に79%あったアリババの市場シェアは昨年50%まで低下。逆にテンセントが38%を獲得し、猛烈な追い上げを見せている」


こうした中国での覇権争いが日本にまで波及しているわけです。ここに日本の金融サービスが見当たらないところは残念ですけれど、いまインバウンド市場において最もホットな話題といえるでしょう。

ところが、今年に入って訪日中国客が伸び悩んでいます。先週、日本政府観光局(JNTO)が公表した「訪日外客数(2017 年6月推計値)」によると、今年上半期(1~6月)の中国客の伸びは前年に比べ6.7%増にすぎないこともそうですが、6月に限ると、前年比わずか0.8%増。ここ数年、毎年倍増ゲームのように訪日客を増やしてきたことを考えると、大きな変化といえます。これほど伸びが縮んだのは震災以来、初めてかもしれません。

4年ぶりに中国を抜き、韓国が訪日外客数トップ! 中国は伸び悩み
http://inbound.exblog.jp/27007721/

さらに、観光庁が今年1月中旬に公表した2016年の「訪日外国人消費動向調査」によると、こちらも異変が起きています。「国籍・地域別にみると、オーストラリアが最も高く(24万7千円)、ついで中国(23万2千円)、スペイン(22万4千円)の順で高い。中国においては、1人当たり旅行支出が前年比18.4%減少し、全国籍・地域の中で最大の減少幅となった」。

つまり、もはや中国客は個人レベルでみると、日本でいちばんお金を使ってくれる人たちではなくなっているのです(数が多い分、全体ではトップですけれど)。

「モノ」から「コト」消費へ移行というのはデータからみれば、俗説じゃないかしら
http://inbound.exblog.jp/26654584/

はたして、こうした客観情勢の中で、中国系モバイル決済サービスの導入はどこまで進むでしょうか。かつて「爆買い」の恩恵を受けた百貨店や量販店、免税店の大手はほぼ導入が進んでいます。コンビニでも、ローソンがアリペイを全店導入。ファミリーマートでも一部店舗で導入を始めているそうです。

最後に、会場で知った情報を少し。まず今月、世界遺産になったばかりの宗像・沖ノ島(福岡県)の展示があり、現地の詳しい地図を入手しました。今後は沖ノ島への上陸自体が難しくなりそうですが、それ以外にもいくつかの美しい島があります。
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もうひとつは、都内新宿や浅草のハラルレストランマップを入手。最近、ヒジャブを巻いたムスリム客が増えていることもあり、この種の情報発信が大切になっていることを実感します。

インバウンド展示会は、世の中で次々といろんなことが起きていることを教えてもらえ、勉強になります。

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by sanyo-kansatu | 2017-07-29 16:43 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 07月 04日

サハリンではいまも日本時代の製糖工場でチョコレートをつくっています

サハリンの食材店で、こんなチョコレートを見つけました。パッケージにサハリンの地図が描かれているミルクチョコです。味は甘さ抑えめで、1枚135RB(270円)でした。
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甘党でもないのに、ご当地チョコに関心を持ったのはわけがあります。こんな記事を読んでいたからです。

サハリンに残る「南樺太」時代の工場、今も現役 | ロシアNOW
https://jp.rbth.com/ronichi_business/2015/12/28/555275

記事によると、サハリンではいまも日本時代の製糖工場が稼動していて、メイドinサハリンのチョコレートを製造しているというのです。

それにしても、なぜサハリンでチョコレート?  

その疑問に答えてくれたのは、稚内市サハリン事務所の中川善博さんでした。

中川さんは今年4月からユジノサハリンスクにある同事務所に駐在している稚内市の職員の方です。彼はサハリンでの日々の見聞を、ほぼ毎日のように、以下のブログに書いています。それがとても面白く、現地の事情を理解するうえで参考になるものばかりなので、事前に連絡を取らせていただき、現地でお会いしました。

65RUS - ユジノサハリンスク市アムールスカヤ通から…
http://65rus.seesaa.net/

中川さんはぼくの疑問にこう答えてくれました。

「「製糖工場」に「何故?」と思われたようですが、これは“甜菜”を栽培していたからに他ならないと思います。

“甜菜”は北海道内で盛んに栽培されていて、砂糖の原料になっています。北海道内にも、“甜菜”で砂糖を製造している工場はいくつもあるはずです。

樺太では、北海道に準じたような作物を栽培して、北海道と似たような利用をしていたと聞きます。よって“甜菜”も栽培し、それを利用して砂糖を製造するべく工場が建てられたのでしょう」

中川さんがおっしゃるには、ユジノサハリンスクにある現役の製糖工場の外観のデザインは、北海道の士別にある日本甜菜製糖株式会社の工場とそっくりだというのです。

日本甜菜製糖株式会社
http://www.nitten.co.jp/index.html

実は、日本の研究者がユジノサハリンスクに現存する製糖工場の建築図面について掘り起こしているようです。

旧樺太製糖株式会社豊原工場に関連する建築物の図面と現況にみる特徴
−旧明治製糖株式会社士別工場との比較を通じて−
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijt/21/48/21_843/_article/-char/ja/

この話を中川さんに伝えたところ、こう応じてくれました。

「1930年代当時、資本関係がある工場の運営会社の間で、基本的な工場の設計が流用されて「そっくり」な工場を建てるというような例はいくらもあったと思われます。そういう建物が今日に残っている例は少なく、北海道の士別とユジノサハリンスクに“兄弟のような建物”が残っているというのは、すごい偶然です」

本当にそうですね。ところで、前述の「ロシアNOW」に寄航された記事によると、ユジノサハリンスクの現役の製糖工場で生産されているチョコレートのブランドは「SAKO」といいます。その販売店が市内にあることがわかりました。以下のサイトに地図が載っています。

САХАЛИНСКОЕ КОНДИТЕРСКОЕ ОБЩЕСТВО (САКО)
https://sakhalin.biz/sako

このサイトに載っているgoogleMapを参考にショップを探したのですが、見つけることができませんでした。というのも、そのショップは独立した店舗ではなく、ショッピングモールの中にある一店舗に過ぎなかったので、時間がなく、見つけられなかったんです。

そこで、帰国後、中川さんにメールを送りました。このショップのことを教えてもらいたいと。彼は快く引き受けてくれました。そして、数日後、以下のメールが届きました。

「ショップがあったのは、レーニン通254bという住所にある商業施設の中です。

地元では<食品市場>と呼び習わされているようで、土曜日の午前中という時間帯、車も切れ間なく出入していて、来店客も多い感じでした。館内には、肉や水産物、珈琲、紅茶、菓子、パン、酒類から乳製品、香辛料、漬物など、あらゆる食料品の店が並んでいます。蟹もそのままの姿で売られていました。

この中にSAKOの店がありました。コッソリと撮った店の写真を送ります。
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この店ではチョコレートが「1㎏=000ルーブル」という量り売りでした。

そこにはお尋ねいただいた「サハリンの地図が入った板チョコ」らしきモノは売っていませんでした。

ところが、別の店に行くと、その板チョコは売られていました。包装紙を見ると、SAKOと思われる記載が見当たりません。“ПК”というマークが書かれていて、これはウラジオストクのある沿海地方の製菓会社のロゴです。

同社のサイトもありました。確かに、ウラジオストクの製菓工場の製品のようです。
http://primkon.ru/  」

どうやらぼくの見つけたサハリンの地図入りチョコは、サハリン生まれではなかったようです。そして、「SAKO」は現地販売限定のローカルブランドだったんですね。

この話をウラジオストク在住の友人にしたところ、確かにそれはウラジオストクに工場のある製菓メーカーだと教えてくれました。

以下、その工場とショップを紹介する彼のHPの記事です。

ウラジオ発:老舗地元チョコレート店「プリモールスキーカンヂーチェル本店」(ロシア語名:Приморский кондитер)
http://urajio.com/item/1211

ウラジオストクには、1906年創業の老舗のチョコレート店があるそうです。極東ロシアで名物チョコレートが生まれた歴史については、以下のウラジオストク発情報サイト「Discover Vladivostok」にも紹介されています。

チョコレートと海の味の鳥
http://vladivostok.travel/jp/shopping/chocolate-and-bird/

確かに、ロシアではたくさんの種類のチョコレートが売られています。パッケージもかわいらしいので、お土産にぴったりなのですが、まさか極東ロシアで生産されているとは知りませんでした。しかも、サハリンのような島でもです。

以上は、街角の食材店で手にした1枚の板チョコが教えてくれたサハリンと極東ロシアの話です。
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by sanyo-kansatu | 2017-07-04 14:39 | ノービザ解禁!極東ロシア | Comments(0)
2017年 02月 15日

「モノ」から「コト」消費へ移行というのはデータからみれば、俗説じゃないかしら

日本のインバウンド市場に関する話題で、ずっと違和感をおぼえていたことがあります。

それは、外国人観光客の消費が「モノからコトへ」移ったという話です。これ、メディアもそうですが、皆さんけっこうよく口にしています。たとえば、「最近の外国人はもうモノを買うより温泉に入るなど、コト消費に変わった」とかなんとか。

本当にそうなんでしょうか。そもそも温泉に行くのが「コト」消費? そうではないですよね。

観光庁が四半期ごとに発表する「訪日外国人消費動向調査」の中に「訪日外国人旅行消費額の費目別構成比」というデータがあります。外国客が日本滞在中に消費した額を「宿泊」「飲食」「交通」「娯楽サービス」「買い物」「その他」に分類し、構成比を集計したものです。この分類によると、温泉は「宿泊」に分類されるはずです。

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観光庁が今年1月中旬に公表した2016年の「訪日外国人消費動向調査」によると、「訪日外国人全体の旅行消費額(速報)は3兆7476億円と推計され、前年(3兆4771億円)に比べ7.8%増加」したそうです。

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一方、「1人当たり旅行支出(速報)は15万5896円と推計され、前年(17万6167円)に比べ11.5%減少」しました。「国籍・地域別にみると、オーストラリアが最も高く(24万7千円)、ついで中国(23万2千円)、スペイン(22万4千円)の順で高い。中国においては、1人当たり旅行支出が前年比18.4%減少し、全国籍・地域の中で最大の減少幅となった」といいます。

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それでも、国籍・地域別の総額でみると、「中国が1兆4754億円(構成比39.4%)と最も大きい。次いで台湾5245億円(同14.0%)、韓国3578億円(同9.5%)、香港2947億円(同7.9%)、米国2130億円(同5.7%)の順となっており、これら上位5カ国で全体の76.5%を占めた」とあります。

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さて、「訪日外国人旅行消費額の費目別構成比」についてですが、「買い物代(38.1%)が最大となったが、前年(41.8%)に比べて減少した。一方、宿泊料金(27.1%)、飲食費(20.2%)及び交通費(11.4%)が前年に比べ増加した」とあります。

これだけみれば「モノからコトへ」という話につながりそうにも思えますが、依然として最大の構成比は「買い物代(38.1%)」で、宿泊費よりも多いというのもそうですし、一般にアクティビティ消費ともいわれる「娯楽・サービス費」は全体のわずか3.0%。これは外国客が訪日後、参加するバスツアーや体験ツアー、テーマパークなどの、いわゆる「コト」消費を指すのですが、あまりにささやかすぎないでしょうか。実は、2016年10~12月期のデータでは、「娯楽・サービス費」の比率は2.7%に下がっているくらいです。

データをみる限り、外国人観光客の消費が「モノからコトへ」移ったというのは俗説にすぎない気がしてきます。

それにしても、「モノからコトへ」だなんて、誰が言い出したのでしょうか。そして、ここでいう「外国人観光客」とは誰のことを指しているのでしょうか。

欧米客についていえば、彼らは以前から「モノ」より「コト」消費でした。つまり、巷でいうこの俗説と彼らは関係ありません。昨年1人当たりの旅行支出トップとなったオーストラリア人は日本でスキーを楽しんでいることが知られていますが、これこそ「コト」消費の代表例でしょう。

では、アジア客はどうか。旅行関係者に聞くかぎり、「アジア客の関心のメインはいまでも買い物にある」という声が聞こえてきます。もともと彼らは中国客のような「転売」まがいの買い方はしておらず、いまでもお菓子やらドラッグストア商品などをあれこれ買い込んでいます。

じゃあやっぱり、「モノからコトへ」移ったというのは「爆買い」で鳴らした中国客のことでしょうか。

確かに、彼らはもろもろのお国の事情もあって、昨年「爆買い」は終息しています。

中国客の「爆買い」が“強制終了”した3つの理由
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/101800023/
「爆買い」終了で、訪日プロモーションの目的や中身を変える必要あり
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/102500024/

お国事情の最たるものは、2016年4月に中国の税関が海外旅行者に対する荷物開封検査を開始し、関税を取り立てるようになったことです。せっかく海外で安く購入しても、帰国時に高率の関税をかけられてしまうのでは、「爆買い」する意味はなくなるからです。

つまり、中国客の場合も、消費が「モノからコトへ」移ったというよりも、政府によって買い物額に上限を課せられた以上、たくさん買い物しても仕方がないから、買い物額が減ったというのが実情なのです。先ほどの観光庁の調査で「中国においては、1人当たり旅行支出が前年比18.4%減少し、全国籍・地域の中で最大の減少幅となった」というのは、そういうことです。

では、中国客は本当に買い物する意欲を失ったというのでしょうか。そうでもないようです。昨年11月に訪日した中国の友人はこう話しています。「日本に行くとなったら、友人知人にあれを買ってきて、これを買ってきてと頼まれて困る。いま中国の税関では、1人8万円(=5000人民元)までは関税を取らないので、それ以上買わなければならないときは、郵便局から送っているんです」。

いやはや、ご苦労さまです。彼の泊まるホテルの客室を訪ねると、巨大なスーツケースが2つあり、持ち帰る分と郵便局で送る分の仕分けで大変そうでした。こういうのが、いまでもよく見かける中国客の姿です。べつにご本人が買い物したくなくても、買って帰らなければならない事情があるのです。だったら、いっそできる限りたくさん買って帰って転売することで小遣い稼ぎをしてしまおう。そう考えるのが中国の人たちです。そういう自分以外のために大量購入したのが「爆買い」の正体だったのであり、政府の税関検査でそれが急にできなくなったという話です。

もちろん、リピーターが増えている上海人のように「何度も日本に来るから、もうまとめ買いは必要ない」などと、うそぶいている中国客も最近は増えています。彼らはお土産をいっぱい買って帰る中国の地方出身の団体客をどこか小バカにしているところもあります。

今後は中国客の「コト」消費実況レポートが出てくるのでしょうか? ある人が言うには「エステとか、ネイルサロンとか」だそうですが、その種のものはすでに中国にも普通にあります。それでも、医療検診のために日本を訪れる中国客はそこそこ増えているようです。「コト」消費が起こるためには、日本でしかできない体験でなければならないのです。

そのようなわけで、彼らが我々日本人の期待するような「コト」消費を始めているかというと、大いに疑問です。にもかかわらず、なぜこのような俗説が広まったのでしょうか。

ネットをみると、これからはグルメだ「自然体験」が注目だと、なんでもかんでも「コト」消費に結びつけようとしていますけど(まあ、そんなに厳密に区別するような話じゃないからいいんですけど)、それらも「爆買い」は終わったけど、次は「コト」消費があると、世間のインバウンドに対する関心をこのままキープさせたいと願う関係者が発信源? それとも、これはかなりうがっていますが、自国民の「爆買い」を苦々しく思っていた中国政府の意向を忖度した誰かの……???

ともあれ、もっと「コト」消費を盛り上げていかなければならないことは確かでしょう。海外旅行は国籍を問わず、そこでどんな体験をしたかで訪れた国の印象は決まるものだからです。
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by sanyo-kansatu | 2017-02-15 15:46 | “参与観察”日誌 | Comments(1)
2016年 11月 30日

タイでも「ゼロドルツアー」摘発! キックバックに頼る中国人ツアーは万国共通

こんな記事をネットで見つけました。タイのインバウンド市場に関するニュースです。

タイ、12~2月の観光ビザ申請無料に(newsclip.be2016年11月23日)
http://www.newsclip.be/article/2016/11/23/31278.html

2016年11月22日、タイ国軍事政権は2016年12月1日から2017年2月28日までの3ヵ月間、観光ビザの申請料1000バーツを免除し、到着時ビザの申請料を2000バーツから1000バーツに引き下げることを閣議で承認した。

タイは例年、乾期の11月~2月が観光のピークだが、今年は中国人向けツアーの取り締まりや、プミポン国王死去にともなう自粛ムードなどから、観光者が減少してしまうことが懸念されている。今回の施策はそんな中で旅行者誘致が狙いとみられる。

タイは乾期の11~2月ごろが観光の書き入れ時だが、今年は中国人向け「ゼロドルツアー」の取り締まり、10月のプミポン国王死去にともなう自粛ムードなどで、客足が鈍ることが懸念されている。


えっ、「ゼロドルツアー」って何? 記事は以下のように説明します。

「ゼロドルツアー」はタイでの宿泊費、食費、ツアー費などが全て無料とうたった中国人向けツアー。ツアー参加者がタイ滞在中に宝石店、皮革製品店、絹製品店などに連れて行かれ、高値で商品を買わされるなどトラブルが多く、軍政が取り締まりを進めている。取り締まりの影響で、一部の観光地で中国人旅行者が激減したという報道がある。

なるほど。要するに、日本で行われているような免税店で購入した土産物の売上からキックバックをもらい、ホテルやバス代、食事代などのコストを切り盛りする中国人ツアーがタイでも行われているということです。

ネットで調べると、今年9月、タイでこの種のツアーを扱うランドオペレーターが摘発されたことがわかりました。

中国人向け「ゼロドルツアー」運営会社を摘発(グローバルニュースアジア2016年9月18日)
http://www.globalnewsasia.com/article.php?id=3756&&country=2&&p=2

2016年9月13日、タイ警察は資金洗浄取締法、旅行業法などの違反容疑でバンコクの大手旅行会社OAトランスポートの会長であるタイ人女性(61)と、その息子(26)で取締役の2人を逮捕した。

この逮捕に先立ち、タイ資金洗浄取締局(AMLO)は9日、OAトランスポートが所有する大型バス2000台以上、計90億バーツ相当の他、銀行預金、現金など42億バーツを差し押さえた。

OAトランスポートは「ゼロドルツアー」と呼ばれる、タイでの宿泊費、食費、ツアー費など全て無料とする中国人向けツアーを、中国の旅行会社と組んで運営し、巨額の利益をあげていた。

「ゼロドルツアー」に関しては、ツアー参加者がタイ滞在中に宝石店、皮革製品店、絹製品店などに連れて行かれて、高値で商品を買わされるケースが頻発し、タイ軍事政権が取り締まりを指示していた。


さらに検索すると、以下のブログの記事も見つかりました。

そのブログ「タイ字新聞、タイ語の記事をとりあえず日本語に」(http://taigoshinbum.blog79.fc2.com/blog-entry-1550.html)によると、

摘発されたのは「大手のゼロ・ドル・ビジネスを行っている会社、フーアン社、シンユアン社」の2社。「2社とも、違法にタイのIDカードを用いてツアー会社を設立し、秘密結社法に違反していた。資金洗浄取締局の財産没収罪となる。その後の拡大捜査で、広範なネットワークを持つ大手のオーエー・サーンサポート社に捜査が及び、ツアーバスが押収された」。

「5日間の飛行機代、車代、滞在費と食費を入れて、だいたい2,000~5,000バーツだ。ツアーの主催者はツアー料金があまりに安すぎると考えるが、中国人のツアー客を毎晩引き連れて買い物させ、商品価格の35-50%をサービス料として割り増している」と解説しています。

気になるのは、「フーアン社、シンユアン社」の実態です。あとでタイの知人に聞いてみたいと思います。

さて、これは日本に限らず、香港、台湾、韓国、オーストラリアなどのアジア太平洋地区、そして欧米諸国でも、万国共通で当たり前に行われていることですから、いまさら驚く話ではありませんが、「ゼロドルツアー」というネーミングがいかにもタイらしいというべきか。

結局、こうしたことは、中国国内のビジネス慣行を海外にもそのまま持ち出し、在外華人らと結託することから起きてしまうことですが、摘発による影響で中国人観光客が減少したことから、今度は観光ビザ代の申請料免除で、各国の旅行者を呼び込もうというわけでしょう(日本人はもとからビザ不要なので関係なし)。大挙して来れば問題を起こすし、来ないとなれば困る。それは周辺国の抱えるジレンマです。難しいものですね。

この人騒がせな中国人ツアーをめぐる各国の対応と攻防はこれからも続くことでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-30 14:54 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 02日

「消費」が減れば「薄い恩恵」とは、ちょっと浅ましすぎないか

先月末の31日に、国土交通省は今年の訪日外国人数がこの時点で2000万人を突破したことを報告しました。

その翌日の11月1日、以下の記事が出てきました。

訪日2000万人、薄い恩恵 クルーズ船客が牽引、大台突破も… 地元商店寄らず・宿泊なし(朝日新聞2016年11月1日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12636227.html

今年に入って日本を訪れた外国人客が2千万人を超えたと、国土交通省が31日発表した。年間で2千万人の大台を突破するのは初めて。中国などアジアからのクルーズ船客が急増し、伸びを牽引(けんいん)している。ただ、訪日客の伸び率は鈍化しており、地域経済へのプラス効果も期待されたほどではないようだ。

1年間の訪日客数は、前年比2割増の2400万人前後になる勢いだ。とくにクルーズ船での訪日客が増えており、今年は前年の倍の200万人強になるとみられている。

クルーズ船は日本の地方都市にも寄港する。国交省は「地方創生」につながるとし、港湾整備費として2017年度予算で16年度当初比66%増の137億円を要求した。

だが、地域経済への恩恵は、政府の期待ほど広がっていないのが実情だ。

宮崎県日南市の油津港。10月中旬の朝、マンションのように多くの客室を備えるクルーズ船が岸壁に到着し、降りてきた訪日客が大型バスに乗り込んでいった。宮崎県内の神社を二つ回った後、地元商店街には寄らず、県外企業が運営する免税店に向かった。この店はクルーズ船が来港したときだけ開く。地域に恩恵を広げようと、地元商店などが出店する物産展を日南市などが港で開く動きもあるが、地元商店街のパン店で働く女性は「訪日客が増えても、私たちにはいいことがない」とこぼす。

日本に寄港するクルーズ船ツアーの多くは、中国の旅行会社が企画。韓国と日本を回るコースが典型だ。

寄港地での行き先を決めるのは、ランドオペレーター(ランオペ)と呼ばれる仲介業者。立ち寄る免税店からマージン(手数料)を受けとる。高額なマージンの店ばかりに行き、その店で割高な商品を売りつけられるなどのトラブルも報告されている。中国でも「ぼったくり免税店」と問題視する報道が出始めている。

ランオペを規制する法律は、日本にはない。観光庁は6月に実態調査を始めたばかりで、対応はおくれ気味だ。(柴田秀並)

■消費総額、前年割れ

観光庁の統計によると、8月の外国人の国内宿泊者数は3年半ぶりに前年同月比で減少に転じた。船内で寝泊まりできるクルーズ船による訪日客が増えていることも影響しているようだ。下船して宿泊しないと、国内での食事や買い物の機会も減る。7~9月の訪日客の消費総額は約5年ぶりに前年割れした。

中国当局の関税引き上げや円高などで「爆買い」ブームも去り、訪日客1人あたりの消費額も前年割れが続く。訪日が2回目以上の「リピーター」が買い物にこだわらずに観光を楽しみ始めたとの見方もあるが、リピーター率は50%台半ばから伸びていない。

一方で、ホテル不足は深刻なままだ。政府は年間の訪日客数を「2020年までに4千万人」に増やす目標を掲げるが、宿泊施設を確保できるかは不透明だ。

訪日客に人気の大阪市では、14年度に25件だった宿泊施設の建築計画届が、今年度は上半期だけで183件と急増している。三菱総合研究所によると、18年までに大阪市のホテル客室数は2割近く増え、新たに8500室ができる見通しだ。小泉洋平主任研究員は「それでも訪日客を倍増させる目標に照らすと十分とはいえない」と指摘する。

宿泊施設不足の打開策を期待される「民泊」の普及でも、政府の対応は後手に回っている。法案の提出は、来年の通常国会になる見通しだ。(奥田貫、田幸香純)


言いたいことはよくわかるけど、訪日外国人による消費額が前年割れしたとたん、「薄い恩恵」とは、いささか浅ましすぎるもの言いではないでしょうか。まるで、たくさん買い物しないようなら、外国客はお呼びでない、とでもいうのでしょうか。問い詰めれば、そんなつもりはないと答えるのでしょうが、外国の人たちからすれば、そう受け取れなくもない気がします。

このメディアがこのようなタイトルをつけるのは理由があるように思われます。安倍政権が「アベノミクス」の成果とばかりに持ち上げた訪日旅行市場の盛況について、これ自体は否定しにくいため、「経済効果」が広がらないことで、批判の対象にしたいのではないでしょうか。

自分の手柄のように持ち上げた政権側もどうかと思いますが、基本的に、インバウンドを政治イシューにすることは得策ではないと思います。相手がいる世界だからです。むしろ、インバウンドの本来の目的は「経済効果」ばかりにあるのではないことを説くことが必要ではないでしょうか。

少なくともこの数年、メディアはインバウンドの「経済効果」を、しぶしぶなのかどうかわかりませんが、伝えることに熱心でした。まるで、インバウンドの意義がそこにしかないかのように。

これからは「経済効果」のみにこだわらない議論を始めてほしいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-02 14:14 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 10月 04日

中国客向けフリーペーパーはもう時代遅れな気がします

中国の建国記念日(国慶節)に当たる10月1日の正午過ぎ、銀座中央通りを歩いた話をしましたが、その続き。ホコテンを抜けると、中央通りと交差する首都高の下にショッピング施設「銀座ナイン」があります。その周辺は中国人ツアー客を乗せたバスの停車スポットになっています。
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2016年の国慶節の日、銀座ホコテンは多国籍ツーリストが記念撮影を興じていた
http://inbound.exblog.jp/26247961/

なぜなら、この周辺は、銀座7丁目のラオックスが近いこともありますが、同じく量販店のドンキホーテや中国団体客向けショーのある日本料理店「どすこい相撲茶屋」があるからです。
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銀座インバウンドレストランのサムライショーは中国客の食いつきがすごい
http://inbound.exblog.jp/25841438/

銀座のドンキ、LAOXに徹底対抗!価格以外でも負けません!?
http://inbound.exblog.jp/25347932/

さらにいうと、「どすこい相撲茶屋」の向かいに永山免税店もあります。
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永山免税店 ステファニー銀座店
http://japan.eisan.jp/store-ginza/

もっというと、少しはずれに「銀座百薬粧」という名の免税店もあります。明らかに日本語の使い方ではない店名ですね。
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銀座百薬粧
http://www.taxfreeshops.jp/ja/shop/21646

まさに中国団体客向け免税店の集積地である銀座8丁目周辺は、いま深刻な状況に見舞われています。

中国客が以前のように積極的に買い物をしなくなったからです。

今年8月のラオックスグループの売上が、前年同月比マイナス53%だったという衝撃の報告もあります。

ラオックス月次報告(2016年8月)
http://www.laox.co.jp/ir/upload_file/library_05/getsuji_201608_jp.pdf

そんな折、この日そこで見たのは、バスから降りる中国客に在日中国人のアルバイトが銀座のショッピングスポットを紹介するフリーペーパーを配る姿でした。
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それはどう考えても、時代遅れな光景といっていいでしょう。もはや中国ではフリーペーパーの時代は終わり、割引クーポン等をアプリで入手するのが一般的です。

彼女らが配っていたのは、ダイヤモンド・ビッグ社が発行する「東京・大阪名品淘」と「尚Life Japan」の2誌でした。後者は在日華人が発行しています。
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尚Life Japan
http://www.lifejapan.info/

だからでしょうか、「尚Life Japan」では、誌面に掲載されている店舗(銀座の有名ブランドショップやMIKIMOTOなどの宝飾店)のQRコードをスマホで読み取れば、店舗情報やGPSで地図を表示してくれるしくみになっています。「東京・大阪名品淘」にも一応同じしくみはあります。これを見て、いまのフリーペーパーは中国の実情がよくわかっているといえなくもないのですが、結局のところ、これらの情報を日本に来てから入手していたのでは、使いこなせないのが実情ではないでしょうか。やはり、日本に旅行に来る前に入手させないと意味がないと思います。

いよいよ中国客向けのフリーペーパーは潮時という気がしてなりません。
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by sanyo-kansatu | 2016-10-04 18:34 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 09月 13日

中国客の「爆買い」はこうして終わった で、今後はどうなる?

中国人観光客の「爆買い」が終わったと多くのメディアは指摘している。本当にそうなのだろうか。では、その理由は何なのか。探っていくと、そこには3つの理由があることがわかった。
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7月上旬、中国南方航空の成田・ハルビン線の機内の大半は中国客だった。彼らは日本人に比べればずいぶん多くの買い物をしているようだが、昨年までのように炊飯器を5つも6つもまとめ買いするような人は見かけなかった。

現地到着後、預け入れ荷物を受け取った中国客の多くは、X線検査装置にそれを通さなければならない。そのため、買い物を手控えているのだろうか。少なくとも、その光景を見る限り、「爆買いが終わった」というのは本当のようだった。
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■電化製品やカメラの購入額が減少

いくつかの経済指標がそれを裏付けている。

たとえば、2016年7月の全国百貨店売上高概況によると、免税品売上高が前年同月比で21.0%減少。購買客数は継続して拡大しているが、購買単価の下落によるものだ。

全国百貨店売上高概況(2016年7月)
http://www.depart.or.jp/common_department_store_sale/list

中国人観光客ご用達免税店ともいえるラオックスの7月の売上高も、前年同月比44%と大きく減少。前年度比マイナスは今年2月から続いている。

ラオックス月次状況報告(2016年7月)
http://www.laox.co.jp/ir/upload_file/library_05/getsuji_201607_jp.pdf

観光庁が四半期ごとに実施している訪日外国人消費動向調査(2016年4−6月期)では「訪日外国人旅行消費額は9533億円で、前年同期比7.2%増加。ただし、1人当たりの旅行支出は15万9930円で、9.9%減」と報告している。
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国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額と構成比(2016年4-6月期)観光庁プレスリリース(2016年7月20日)より

なかでも中国の1人当たり支出は21万9996円で22.9%減。トップは中国を抜いたベトナムの23万8000円だった。観光客数が多いぶん、国別の消費額のシェアは中国がトップで37.0%を占めるが、比率は前年の40.3%から下がっている。

「爆買い」の主人公と目される中国人観光客の消費は、明らかに昨年に比べ減退していることがわかる。

さらに報告書では、消費される費目について「“電気製品”や“化粧品・香水”では中国、“医薬品・健康グッズ・トイレタリー”では台湾と中国の購入率が高い」と指摘する。

だが、中国客の「電気製品」の購入者単価は前年同期の6万2316円から3万6630円へ、「医薬品・健康グッズ・トイレッタリー」も4万1225円から3万3479円へと減少。

特に「カメラ・ビデオカメラ・時計」は10万3920円から6万246円に大きく減少した。

訪日外国人消費動向調査(観光庁)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html

こうした具体的な費目の調査からも、中国客の日本での消費シーンが様変わりしていることがうかがえる。

※購入率(その費目を購入した人の割合)、購入者単価(その費目を購入した人における当該費目の1 人当たり平均支出)を指す。

■「爆買い」が終わった3つの理由

その一方で、訪日中国客数は相変わらず伸びている。日本政府観光局(JNTO)の8月17日付プレスリリースによると、今年7月の訪日中国客数は前年同月比26.8%増の73万1400人。

単月として過去最高を記録している。

こうした客観情勢をふまえ、「爆買い」が終わった理由を検証してみたい。

以下の3つの理由があると筆者は考えている。

①中国の景気低迷による消費者心理の変化
②メディアが誘導した愛国的反発心
③転売できなければ「爆買い」なし


まず①「中国の景気低迷による消費者心理の変化」について。

筆者は7月上旬から約1ヵ月間、中国の地方都市(東北三省や内蒙古自治区)を視察する機会を得たが、各地で聞かれるのは「景気がよくない」という声ばかりだった。

特に地方都市では、急ピッチで進む高速鉄道網の拡充に代表される政府のインフラ投資が盛んに見られたが、民間経済の押し上げには必ずしもつながっていないようだった。

一方、深圳や上海、北京などの経済先進都市で特徴的なのは、政府の規制緩和策により再び始まった不動産価格の高騰とEC市場の拡大だ。ECについては明らかに日本より各種のサービス面で進んでいる点も多い。

だが、それは手放しで喜べる話でもないようだ。

不動産価格の高騰は一部の利得者に恩恵を与えるとしても、国民生活にもたらす影響が懸念される。また、「いまの中国人はショッピングモールで洋服の試着はするけれど、実際に買うのはネット。そのほうが安いから。でも、これは中国の経済全体にいい影響を与えていない」という声もある。

共通するのは、もはやGDP2桁成長が続いた2000年代の中国ではないという認識だ。

もうひとつ別の観点を付け加えれば、日本の百貨店の免税売上の購買単価が下がり、高額商品の売れ行きが落ちた背景には、習近平政権が推し進める「反汚職キャンペーン」の影響も考えられる。汚職に対する社会の目が厳しくなったことから、役人への贈り物や接待需要が激減したからだ。これが経済へのマイナス影響を与えているとの指摘も多い。

こうしたことから、中国の消費者心理は以前に比べ変わらざるを得ない。特に団体ツアー客を多く送り出している地方都市ほどその影響は大きそうだ。

■日中炊飯器論争と愛国

次に②「メディアが誘導した愛国的反発心」だが、これを象徴する事例がある。昨年春頃に始まった「日中炊飯器論争」だ。

論争を仕掛けたのは国営大手メディアだった。日本製と中国製の炊飯器で炊いた米の味の比較実験を始めたのである。

中日両国の炊飯器の性能を徹底比較 勝つのはどっち?(人民網日本語版2015年3月2日)
http://j.people.com.cn/n/2015/0302/c94476-8855374.html

ここでは大真面目に「中日の炊飯器で炊いた米の味を比較」した結果、「中国製の炊飯器で炊いた米の方が美味しいと答えた人は5人、日本製の方が美味しいと答えた人は3人、「ほとんど同じ」と答えた人は2人だった」と票決している。

これはテレビの比較広告ではない。比較の対象は企業ではなく、国家である。

その後も日中炊飯器論争は続くのだが、さすがにこれではあからさますぎると思ったのか、自国の製造業の問題をいかに克服するかという議論に移っていく。

全人代代表、製造業めぐり熱い議論 炊飯器が出発点(人民網日本語版2016年3月10日)
http://j.people.com.cn/n3/2016/0310/c94476-9028195.html

「日本の電気炊飯器現象」が中国家電企業に刺激、家電大手が新たな展開(人民網日本語版2016年3月14日)
http://j.people.com.cn/n3/2016/0314/c94476-9029652.html

こうした奇妙な論争が起こる背景には、従来の投資に頼る経済から消費主導の社会に転換していかなければならないという中国の大命題がある。

自国の製造業が発展すれば、なにも海外で炊飯器を買う必要はない。そう訴えかけることで、海外で買い物ばかりしている自国民に警鐘を鳴らしたのだ。

中国政府は近々、自国の製造業の品質を向上するために「消費品標準・質量向上計画」なる施策を公表するようだ(朝日新聞2016年8月30日)。

こうした一連の動きから、海外での「爆買い」によって消費が国外に逃げることを政府がいかに問題視しているかわかる。その意味でも、中国メディアは巧みにナショナリズムを利用して国民の意識を誘導したのだといえる。

そして、この議論に余計な刺激を与えたのが、日本での中国人観光客「爆買い」報道だった。

筆者はこれまで多くの日本をよく知る中国人と「爆買い」について話をしたが、決まって彼らはこう言う。

「爆買い、爆買いって、なんだか私たち、バカにされている気がする。中国にだっていいものはあるわ」。

ほんの数年前まで中国では、なにかにつけて「日本商品不買運動」を提唱する声がネット上にあふれたものだが、さすがに消費社会化が進むと、その無意味さに多くの国民が気づくようになる。だが、今回に限っては、日本の報道が彼らの自尊心を刺激し、反発心を引き起こした面もあるようだ。
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中国人はこんな光景はもう観たくない!?

■「爆買い」とは何だったのか
 
こうしてみると、一部のメディアが報じた中国人観光客の旅行支出が「モノからコトへ」と変わるという説明はいかにも単純すぎるだろう。

ここであらためて「爆買い」とは何だったのかについて確認したい。

その問いに明快に答えてくれるのは、台湾出身の日本薬粧研究家の鄭世彬氏だ。彼が今春上梓した日本での初の著書『爆買いの正体』(飛鳥新社)によると、「爆買い」の背景には以下の3つのポイントがある。

①華人にとって買いだめは本能
②面子や血縁を大切にする文化的特質
③誰もが転売業者のような買い方をする


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『爆買いの正体』(飛鳥新社)は、中国人の買い物の特徴について詳しく解説している。同書を読むと、彼らが「爆買い」した理由がよくわかると同時に、急ブレーキがかかってしまった理由も見えてくる。

鄭氏によると、歴史的に変動の大きな社会を生きてきた中華圏の人たちは買いだめが本能だという。つまり、買えるときにたくさん買っておきたいという消費心理が身についているというのだ。

旅行に行くと、お土産を広く配る習慣が残っているのは、人間関係を重視する社会ゆえだ。

さらに、根っからの商売人気質ゆえに、誰もが転売業者のような買い方をする。それがネットやSNSによって想像を超えた拡散効果と購買の連鎖を生んだのが「爆買い」の正体だった。

この指摘が興味深いのは、日本のメディアを通じて我々が思い描いていた「爆買い」に対する理解は、少し的外れだったかもしれないことに気づかされるからだ。

中国人観光客の多くは「富裕層」などではなく、自分のためだけにお土産を買っていたのではなかった。

直接代償としての金銭を受け取るかどうかはともかく、帰国後、購入した商品が多くの人の手に広く渡っていくことが前提だったのである。だからあれほど大量に、転売業者のような買い方をしたのだった。

さらに、観光客以外にも多くの「爆買い」の担い手がいたことは知られている。

それは日本に住む中国系の人たちの代購(代理購入)業者だった。

一部の企業にとって観光客の買い物より代購による売上が大きかったとの指摘もある。

あるトイレタリー企業の関係者も「売上のピークは2015年10月。その多くは代購によるものだった」と証言している。

この点について、ある中国の旅行関係者もためらうことなく、こう話す。

「日本では中国人が「爆買い」をしなくなったと言っているようだが、その理由をひと言でいえば、代購が難しくなったからだ」。

背景には、海外の輸入商品が街場のショップより安く買えるというふれこみで広がった中国の越境ECの普及がある。所詮ブローカーにすぎない代購業者たちは、それ以降、もう利益が見込めないとみてあっさり商売替えしてしまったのだ。これは日本に限らず、欧米諸国でも同様に起きていたことなのである。
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「出勤中に買って、出社時に受け取る。その日に届き、その日に使える」。購入手続きの簡便さと早さをうたう中国越境ECサイトの「T-mall(天猫)」の地下鉄広告(上海)


■とどめを刺した荷物の開封検査

こうしたなか、今年に入って「爆買い」にとどめを刺したのが、4月6日付け文書で7日交付、8日には執行と、日本ではあり得ないスピードで着手された中国の税関による海外旅行者への荷物の開封検査の強化だった。 
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海关总署公告2016年第25号(关于《中华人民共和国进境物品归类表》和《中华人民共和国进境物品完税价格表》的公告)
http://www.customs.gov.cn/publish/portal0/tab65598/info793342.htm

この通達の添付資料には、食料品(15%)から酒(60%)、電気製品(30%)、化粧品・医薬品(30~60%)など、中国人が好んで買いそうな、さまざまな商品に関する免税枠と関税率が事細かに記されている。

ある中国の訪日ツアーの担当者によると、関税率自体は2012年に出されたものと大きく変わっておらず、要はこれまでスルーされていた旅行者の荷物の開封検査を税関が抜き打ち的に始めたことが事態を大きく変えたのだという。

まさに中国式のショック療法である。

これでは、海外での買い物に対する事実上の課税と受け取られても無理はない。

その後、旅行客の反発から、検査は少しゆるくなってきたとも聞くが、せっかく日本で安く買っても、帰国時に高率の関税をかけられてしまうのであれば、安値で転売することができない。同じことは個人輸入の託送便でも実施されたため、代購の意味もほぼなくなった。

「転売できなければ「爆買い」なし」とはこのことだ。

中国側は、2014年10月に日本が実施した外国客に対する免税枠の拡大とは真逆の手を打ち、「爆買い」を沈静化しようとしたのである。

その効果はてきめん。

中国の人たちにとって人より安くモノを入手できるということは賞賛に値することで、そこにケチをつけられたようなもの。こうして中国人観光客は「爆買い」する意欲を急速に失っていったと考えられる。

■今後どうなるのか

では、今後はどうなるのか。

注目すべきは、中国客の影に隠れて見えにくい存在であった台湾客の存在だろう。

彼らはいまでも無理なく「爆買い」を楽しんでいる。繰り返していうが、「爆買い」は「富裕層」の専売特許ではない。華人ならではの購買の連鎖が生んだものだ。それは本来、彼らにとって景気のいい、喜ばしき体験なのである。

台湾の人たちは長く日本の商品に親しみ、その価値を知っている。だから、彼らが選ぶ商品は、中国の消費者の先取りをしている。彼らは日本の魅力の雄弁な語り手なのである。

実は、そこが中国の消費者とのいちばんの違いだ。

中国人観光客の多くは、これまで実際に日本の商品を手にしていたわけでも、正確な商品知識を持っていたわけでもなく、ただSNSや口コミを頼りに購入していただけだった。

特定の商品だけが大量に売れるという事態が起きたのはそのためだ。

前述したように、今日の中国にはいくつもの相反する事態が同時進行で起きている。大都市圏の不動産価格は高騰し、ECに誘発されて消費市場が活性化しているかに見える一方、民間経済の低迷を懸念する声は強い。政府があの手この手で「爆買い」のストップをかけようとしたのも、そのためだ。

こうした将来に対する不透明な情勢は、日本のバブル崩壊以降に起きたことと同様に、中国の消費者の成熟化をもたらすと考えられる。

消費者に確実に支持された商品だけが売れるという日本では当たり前の状況にだんだん近づいていくはずだ。

特に、中国の若い世代は生まれた頃から消費社会を知っており、自分の目で価値判断ができる人たちだ。すでに彼らは団体ツアーではなく、個人客として訪日するのが普通になっている。

今後はこうした個人客に向けた取り組みが求められるが、そうなるとこれまでのやり方では足りない部分が出てくるだろう。

その点については、別の機会にあらためて検討したい。

※やまとごこと特集レポート
前編 http://www.yamatogokoro.jp/report/2016/report_27.html
後編 http://www.yamatogokoro.jp/report/2016/report_28.html
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by sanyo-kansatu | 2016-09-13 17:47 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)