ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 12月 02日

「中国人はこんなに爆買いしてるのに感謝されない」という嘆き

昨日、今年の流行語大賞に「爆買い」が選ばれたことが報じられました。

ユーキャン新語・流行語大賞2015
http://singo.jiyu.co.jp/
【新語・流行語大賞】「トリプルスリー」「爆買い」が受賞、トップテンには「アベ政治を許さない」「SEALDs」も
http://blogos.com/article/147468/

苦笑してしまったのは、「爆買い」の受賞者がラオックスの羅怡文社長だったことです。ちょっとしたブラックジョークのように思えたからです。

それはさておき、先日ある在日中国人からこんな話を聞きました。彼女は黒龍江省ハルビン出身で、すでに来日して20年以上という人ですが、最近になってハルビンから学生時代の友人が日本旅行に来るようになったといいます。中国の内陸部から日本に来るくらいですから、みんな社会的成功者で富裕層だそうです。もっとも、内陸の人たちはお金があっても、北京や上海の人たちのように個人旅行ではなく、安い団体ツアーで日本に来ます。まだ海外旅行はその段階なのです。

それでも、せっかく東京に立ち寄るということで、その在日中国人のKさんはハルビンの友人にホテルに呼び出され、買い物や食事に付き合ったというのです。

ところが、呼び出されたのは木更津でした。中国団体客はツアー料金が安すぎるため、都心で泊まれるホテルが少なく、たいてい八王子や埼玉、千葉など首都圏郊外になります。

オークラ アカデミアパーク ホテル(木更津)
http://www.kap.co.jp/oap/

「ホテルの施設はきれいで良かったけど、木更津まで車で2時間。友人は自分がどこにいるかも首都圏の大きさもわかっていないから、呼び出された側の大変さなど気づいていないのよ。まあそれでも、初めての日本。いい思い出を持って帰ってもらいたいから、木更津のホテルまで東京湾を横断して行ってきたんだけど…」。

結局のところ、木更津くんだりまで行ってやったのは「爆買いのお手伝い」だったとKさんは言うのです。

「友人はとにかく買い物のことしか考えていない。1日だけ自由行動の日があったので、車で木更津のアウトレットまで連れて行った。もう買う買う、これが世間でいう爆買いなんだと初めて知った。買い方が尋常じゃない。なんでも20個単位で買い占める。歯磨き粉でも20個まとめて。私は日本の生活が長いので呆れてしまい、つい皮肉交じりに、そんなに買ってどうするの? と聞いたら、中国では安心・安全が買えない。歯磨き粉だって防腐剤が入っていて、身体によくないの。あなたは日本にいるから、いつでも買えるかもしれないけど、私はいま買っておかないと買えないでしょう、というのよ」。

三井アウトレットパーク木更津
http://www.31op.com/kisarazu/

買い物がすんだら、友人は「神戸牛が食べたい」と言い出したそうです。「私がおごるから、いい店に連れてって」と。でも、木更津周辺で神戸牛がおいしい店なんていきなり聞かれても、わからない。仕方なくホテルの鉄板焼きレストランに行こうとしたら、予約を入れていなかったので入れなかったそうです。

バカのひとつ覚えみたいに「神戸牛」を連呼する友人を見ながら、やるせない思いになったとKさんは言います。

「去年、ハルビンに帰ったとき、大学の同級生に会うと、みんなお金持ちになっていて、不動産や株の話ばかりしている。豊かになったことは良かったと思うけど、日本に来てもがつがつしてばかりで、ちっとも日本のことなんか関心ない。いまの中国人は見かけは豊かになったようだけど、やっぱり欠乏感のようなものがあるのよねえ」。

帰国後、微信で友人に連絡を取り、「木更津を出たあと、どこに行ったの? 印象に残った場所は?」と聞くと、「なんにも覚えていない」と言ったそうです。

「せっかく日本旅行に来ているのに、まったく観光しないで買い物ばかりしていたっていうの。なんでこうなるかなあ…」。そう嘆くKさん。気持ちはわかります。でも、いまの彼らに何を言っても、きっと聞く耳を持たないんじゃないでしょうか。

これが「爆買い」中国人の実態であることは確かです。上海や北京などの若い世代はずいぶん洗練されてきたものの、いまや「爆買い」の主役は中国内陸部の富裕層というわけです。

話を聞いていると、なんとも気の毒に思えてきたので、「きっとあと10年もすれば、ハルビンの人たちも変わって来るんじゃないかな。あの上海人たちでもそうだったのだから」と言うと、Kさんはこんなことを言いました。

「アウトレットに行ったとき、免税カウンターのレジを打つ日本人店員の態度がひどかったのよ。およそ日本人のサービスとは思えない感じで、笑顔ひとつ見せずに嫌そうに仕事しているわけ。こんな態度を見せられたら、日本人なら怒るだろうに。ああ、こんな光景見たくなかった。どうして中国人が日本でこんなに買い物しているのに感謝されないのかなあ」。

まあそんなこともないと思うけど…。Kさんをそうなだめたものの、そうなる理由は、今回の経験で彼女がいちばんよくわかったかもしれません。

皮肉なことに、普段中国でぞんざいな接客を受けている中国人には、その日本人店員の態度もさほど気になるものではなかったのでしょう。

一方、その店員も、少しでも中国語がわかればコミュニケーションの取りようもあるでしょうけれど、1日中、山のような買い物をレジ打ちしていると、本来の日本人のサービス精神を忘れてしまうものなのかもしれません。それは理解できなくもない気がします。難しいですね。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-02 09:23 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 11月 18日

いまや「ニッポンヤスイネ」の時代~今年1~10月の訪日外客1600万人突破!

ぼくの手元に一冊の興味深い写真集があります。

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1999年に刊行された『ニッポンタカイネ(NIPPON EXPENSIVE!)』(メディアファクトリー刊)です。撮影は吉永マサユキさんという写真家で、1990年代に日本で暮らすモンゴル人や中国人、フィリピン人、ベトナム人、パキスタン人、トルコ人など14カ国のアジア人たちのドキュメンタリー作品です。ネットで調べると、2010年に河出書房新社から復刻版が出ていて、以下の関連イベントもあったようです。

写真家・吉永マサユキ「ニッポンタカイネ展」
http://openers.jp/article/9877

ぼくは吉永さんと同世代で、1980年代以降激増した在日アジア人の事情についてはそこそこ詳しいこともあり、同写真集が刊行されるとすぐに購入したことを思い出します。自分のよく知る世界が描かれていて、シンパシーを感じたからです。

さて、本日JNTO(日本政府観光局)による毎月恒例のリリースが公表され、2015 年1~10 月の訪日外国人数の推計値が1631 万人に達し、累計で過去最高を更新したことがわかりました。

訪日外客数(2015 年10 月推計値)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/151118_monthly.pdf

これまで何度か本ブログでも書いてきましたが、今年は45年ぶりに訪日外国人数が出国日本人数を越えることは確実となっています。

言うまでもないことですが、この数年、訪日外国人旅行者が急増している背景に、円安があります。

いまや「ニッポンヤスイネ」の時代なのです。『ニッポンタカイネ』が刊行された約15年前のことを思うと、隔世の感があると思わざるを得ません。いまでは多くのアジアの人たちが円安の日本を訪れ「爆買い」していくからです。

だからといって、今日の状況に至った「失われた20年」をめぐって自虐的、悲観的にになる必要はないとぼくは思っています。逆をいえば、1990年代に移民労働者に過ぎなかった彼らが、経済力をつけ、日本にレジャー消費者として訪れるに至った事実は、我々にとって決して悪い話ではないと思うからです。

『ニッポンタカイネ』が刊行された1999年当時、正直なことをいうと、もうこれからはそんなこと言っても始まらない時代が来るとぼくは先読みしていました。その翌年、中国本土の団体観光客が解禁されることを知っていたからです。この写真集が描く日本とアジアの関係は、すでに1990年代半ば頃から少しずつ変わり始めていたのです。個人的な感覚では、1980年代末から90年代前半、いわばバブル時代の東京の裏面の記録であり、社会のリアルな実態からは少し遅れて出てきた作品だと思ったものです。

繰り返しますが、「ニッポンヤスイネ」という時代は、我々にとってそんなに悪い話ではない。それを活かすかどうかはその人次第。連日のパリのテロ報道を見るたび、周辺の国々が経済成長し、購買力を持つに至るという、いまアジアで起きていることは、ヨーロッパとはずいぶん事情が違うなと思います。

日中の物価が完全に逆転しています(訪日客急増と「爆買い」の背景)
http://inbound.exblog.jp/24162197/
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by sanyo-kansatu | 2015-11-18 20:22 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 11月 12日

中国客の日本での爆買いも米英に比べればささやかといえるかも!?

中国客による「爆買い」が今年の流行語大賞にノミネートされたようです。

ユーキャン新語・流行語大賞2015
http://singo.jiyu.co.jp/

確かに、今年の訪日中国人旅行者の数は、2000年の解禁以降、総数、伸び率ともに過去最高の勢いです。

日本政府観光局によると、2015年1~9月までの訪日中国人数は約384万人で、このままいけば年間で500万人を突破すると見られています。訪日客全体も約1449万人と増えていますが、伸び率を見ると中国客の勢いが他を圧しています。

訪日外客数(2015 年9 月推計値)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/151021_monthly.pdf

さらに、今年7~9月の訪日中国人の旅行消費額は4660億円(全体の46.6%)と半数近くを占め、1人当たりの平均消費額も28万788円とトップです。こうなると、中国客の「爆買い」が流行語大賞にノミネートされるのも当然かもしれません。

訪日外国人消費動向調査平成27年7-9月期結果
~ 1四半期で初めて1兆円を突破!7四半期連続で最高値を更新~(2015年10月21日)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000263.html

では、ここで単純な掛け算をしてみましょう。すなはち、年間を通じた訪日中国人の旅行消費額の(ものすごくアバウトですが)推計です。

500万人(2015年訪日中国人数見込み)×28 万円(1人当たりの平均消費額)=1.4兆円

※実際に、観光庁の推計でも、今年1~9月の訪日中国人の旅行消費額はすでに1兆1016億円に達しているようです。

これはなかなかすごい数字といえます。ここで言えるのは、「爆買い」は、彼らの日本およびメイドインジャパンに対する信認の表れであることです。

こうしたことから、「2015年度の訪日外国人客消費が3兆円規模になると予想されるので、訪日外国人客の消費たる「爆買い」が輸出の4パーセント余りを占めることになり、輸出不振の一部を補う構図になるとも予想される」という指摘も出てきます。「訪日中国人旅行者は日本を救う」式のことを言い出す人がまたぞろ現われてくるかもしれませんね。

訪日消費、年3兆円超へ 7~9月、客数・金額とも最高
円安・免税拡大追い風 中国客頼み、持続力懸念も (2015/10/22 日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGKKASDC21H08_R21C15A0EA2000/

ところで、せっかくの景気のいい話に水を注すようで申し訳ないのですが、こうした「爆買い」現象の背景について少し別の視点から冷静に考えてみたいと思います。というのも、今年の秋、中国政府は米英両国に対して「ボーイング300機購入」(価格は計約380億ドル(約4兆5663億円))、「初の原発受注」(投資額は約400億ポンド(約7.3兆円)を立て続きに表明したからです。

「「我が国には13億人の人口がある。5年後には10兆ドルの商品を米国から輸入し、対外投資は5000億ドルを超える」。習氏は22日、中国の地方政府や米国の州のトップが集まる会合で中国の経済規模の大きさを強調した」。

習氏訪米「13億人市場」アピール ボーイングから300機(2015/9/23 日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM23H3L_T20C15A9FF1000/

「英国を国賓として訪問している中国の習近平(シーチンピン)国家主席は21日、キャメロン英首相と会談し、英国での原発新設計画に中国企業が参加することなど、経済関係を強化することで合意した。ロイター通信によると、キャメロン氏は会談後の会合で、両国の企業の間などで結ばれる投資や貿易の規模が総額約400億ポンド(約7・3兆円)になると語った」。

英国、中国製原発導入へ 英中首脳が合意、欧米で初(2015年10月22日 朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASHBQ21L1HBQUHBI004.html

こうした米英に対する破格な「爆買い」表明に比べると、日本での中国人の爆買いなんて、実はささやかすぎるといえるかも!?  そう思わざるを得ないところがあるのです。1.4兆円という推計は、年間を通じて全国のインバウンドに関わる官民を挙げた膨大な関係者の営為による総額なのだとしたら、なおさらです。

だから、こんなことも思います。なぜ中国は米英に対してここまでやるのだろう? また今年日本にこれほど多くの中国客が訪れた理由には何があるのだろう?

前者の問いについては、あとで触れますが、「新型大国関係」や人民元の国際化というキーワードで説明できるのでしょう。一方、後者の問いに対する日本政府観光局による公式な見解としては、円安という基調要因を除くと、以下の3点が指摘されます。

①今年1月の中国人に対する観光ビザの緩和措置
②中国側の訪日路線の積極的な拡充
③中国発クルーズ船の大量寄航

ただし、これらはあくまで表向きの論点といえます。確かに今日の結果を生んだ直接的な背景には間違いないのだけれど、もう少し長い目で見て、なぜ2015年にこれほど多くの中国客が日本を訪れ、「爆買い」することになったのか。その点について、ぼくはこう考えています。

これまで中国政府は外交上に使えるカードのひとつとして訪日客をコントロールしていました。尖閣問題が起きたときは、さまざまな手段を通じて訪日客にストップをかけ、震災が起こると、今度はちょっと無理してでも訪日客を送り込もうと、温家宝さんまで来日しました。反日デモなどで悪化した中国の好感度を上げるためには効果があると考えたからでしょう。

もともと中国政府は自国民の日本での「爆買い」を苦々しく思っていたはずです。なぜ自国で買わず、わざわざ海外で消費するのか。これは内需を拡大したい中国にとって愉快ではない話です。それでも現状を許しているのは理由があります。それは米英の場合と同様、日本に対する「お土産」みたいなものだと考え、割り切っているからだと思うのです。

もちろん個々の中国客がそんなことを考えて行動しているわけではありません。国内より海外の方が安くていいものが買える。合理的な判断ゆえの消費行動にすぎません。しかし、中国政府はそれをふまえ、訪日客の動向がいかに自国に有利に働くかを鑑みながら、さまざまな調整の手を加えているのです。そんな話、にわかには信じられないという人もいるかもしれませんが、実はこうした観光を政治の道具とする発想とその実践は、大学の観光学のテキストに載っていてもおかしくないほど、社会主義国ではきわめてスタンダードなものです。ではなぜそんなことをするのか?

それは中国の自己実現のためだと言っていいでしょう。それを「覇権」の拡大と呼ぶかどうかはともかく、「中華民族の復興」を掲げる現政権にとって、それぞれの対象国にとって最も効果的と思われる「お土産」を手渡すことで、なんとか自己実現にこぎつけるための環境を整えたいと考えているのだと思います。それは古来中国の冊封体制に見られた行動様式の延長線上にあるものではないでしょうか。

中国が多くの自国民を観光客として送り込み、「爆買い」させることは、いい意味でも悪い意味でも、情緒的なところのある日本人にとって歓迎こそすれ、それほど抵抗なく受け入れやすいことだと思います。日本には「ボーイング300機」のような大量買いつけに対応できるものは提供できなさそうにない。そのぶん、家電量販店やドラッグストアで販売される日用消耗品の品質の高さには定評がある。またコツコツみんなで積み上げていくような商売のやり方や「おもてなし」を好むという点でもうまくマッチしていると思います。つまり、中国政府はここ数年の対日政策の試行錯誤を通じてそれがわかったことが、今年の訪日中国客急増の結果にも反映しているといえるのではないでしょうか。

ずいぶんうがちすぎな指摘に見えるかもしれません。でも、この15年間の訪日中国旅行市場の変遷を眺めてきた実感として、ぼくはそう思うのです。

ただし、だからといって「爆買い」を懐疑的かつネガティブに捉えるべきだ、などと言いたいのではありません。国際関係というのは、たいていこのような駆け引きの中で存在しているものだからです。「爆買い」現象の背後にもいろいろ事情があるので、それをふまえた上で、うまく活かしていけばいいのだと思います。

では、来年以降この勢いは続くのでしょうか。

一部のメディアによると、中国経済の減速によって「爆買い」はそんなに長くは続かないかもしれないと指摘されています。

「『爆買い』効果でウハウハできるのは、せいぜい今年いっぱいまでと考えておくべきです。これから中国経済の悪化が進むことを思えば、中国人観光客が急減することはないにしても、『並買い』に変わるでしょう」(北京の日本大使館関係者)。

経済の死角
中国の製造業が崩壊する日
〜もはや対岸の火事ではない。中国発の恐慌に備えよ!(2015年11月11日 週刊現代)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46246

しかし、最近中国の内陸部を訪ねたぼくの個人的な見解としては、伸び率は今年のような勢いを見せるとは思いませんが、もうしばらくは「爆買い」は続くと考えます。

確かに、マクロ的にみれば、中国経済は減速しているのでしょうが、だからといって年間約500万人の訪日数も、総人口からすると0.4%にも満たない規模でしかないのです。桁違いの人口を有する中国において、この程度の数はもとよりたいしたことではないといえますし、また何より富の偏りの大きい社会だけに、海外旅行客ができる層は比率は低くても、それを全土からかき集めるだけでも相当なボリュームになるのです。さらにいうと、中国には公的統計に捕捉されない膨大なアンダーグラウンド経済(「未観測経済」というそうです)の存在があります。一般に中国客の「爆買い」の原資は、表向きの収入ではなく、「未観測経済」であると考えた方がよさそうです。このように中国の動向を占うには、我々とはあらゆる尺度が違うことを知らなければなりません。

そもそもいつまで続くかという話も、何を「爆買い」と呼ぶかによります。これは、我々の事情というより、中国側の事情でかなりの部分が決まるため、これからも観察を続けていく必要があります。

なぜ中国人は訪日旅行のいちばんの印象は「干净(きれい、清潔)」だというのか?
http://inbound.exblog.jp/25063841/

株価暴落は中国の訪日旅行市場にどんな影響を与えるか(前編)AISO王会長、大いに語る
http://inbound.exblog.jp/24963833/

“爆買い”はいつまで続くのか?(あるドラッグストア関係者の見方)
http://inbound.exblog.jp/24470851/

日中の物価が完全に逆転しています(訪日客急増と「爆買い」の背景)
http://inbound.exblog.jp/24162197/
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by sanyo-kansatu | 2015-11-12 17:39 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 10月 04日

平壌には「消費者」と呼びうる人たちがいるらしい(第11回平壌秋季国際商品展覧会にて)

2年ぶりに平壌に来て、気がついたことがふたつあります。

いずれも表面的な見聞にすぎませんが、ひとつは市内を走る車が増え、一部の交差点で長い信号待ちの車列ができていること。もうひとつは、どうやら平壌に「消費者」と呼びうる人たちがいるらしいことです。

これまで咸鏡北道や羅先特別市などの地方都市ばかり訪ねていたのと、以前に平壌に来たときも、この国特有の「見せたいものだけ見せ、見せたくないものは見せない」管理された観光で、市民生活に触れるチャンスなどなかったせいか、今回あらためて平壌は北朝鮮国内ではきわめて特殊な場所だと感じました。

それを実感したのが、9月21日~24日に三大革命展示館で開かれた第11回平壌秋季国際商品展覧会(The 11th Pyongyang Autumn International Trade Fair)でした。

この展覧会は、朝鮮貿易省所属の朝鮮貿易国際展覧社が主催する商品展示即売会で、春と秋の年2回開催されます。最初の開催は1998年春で、2005年から春秋年2回の開催となりました。出展しているのは、地元朝鮮企業や中国をはじめイタリア、ポーランド、タイ、マレーシア、シンガポール、台湾などの海外企業です。ジャンルは幅広く、工作機械や設備、自動車、電子・電気製品、アパレル関連やバッグ、靴、調理器具などの軽工業日用品、食品、医薬品、健康食品などさまざまです。

詳細については、これまで開催された展覧会の各種メディアの報告や中国の旅行会社による視察ツアーの告知などがネットでも見られるので、参考になると思います。

北朝鮮でカップルに人気の「意外な商品」
なぜ平壌で「消費ブーム」が起きているのか(東洋経済オンライン2015年6月2日)
http://toyokeizai.net/articles/-/71575
北朝鮮に消費ブームがやって来た
副業で外貨稼ぎ、乗馬から自動車購入まで(東洋経済オンライン2014年11月5日)
http://toyokeizai.net/articles/-/51829
春の平壌国際貿易商品展示会観覧ツアー(大連富麗華国際旅行社)
http://www.dllocal.com/travel/item157.html

何より面白かったのは、平壌市民が大挙して買い物のために訪れていたことです。この展覧会は商品即売会場でもあるからです。

以下、会場と平壌市民の様子を見ていきましょう。

この巨大な地球儀が三大革命展示館のランドマークですが、展示即売会場はその奥にあります。
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これが展示即売会場です。
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中に入ると、それはものすごい人ごみです。
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2階に上がって、展示ブースを眺めると会場全体はこんな感じです。
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各種ブースに群がる女性の姿が目につきます。
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そこで、会場内の女性客を中心に見ていきましょう。彼女たちはアパレル関連やバッグ、キッチン、日用品などのブースを中心に押しかけています。

派手な柄物や色鮮やかなプリントのブラウス、ワンピースなどを身に付け、手にはバッグを抱える女性が多いです。これらはおそらく中国製でしょう。ここでの熱気は、市民が食べるためだけでなく、おしゃれや生活を快適で豊かにするための消費に目覚めたという意味で、日本の昭和30年代に近い感じでしょうか。
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彼女たちのファッションセンスは、いま日本を訪れている中国内陸出身の観光客のおばさんに近い気がします。
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炊飯器を手にしたお母さんに連れられた娘はこぎれいな白いシャツを着て、頭に飾りを付け、黒い靴を履いています。
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なかにはこんなホットパンツ姿の女性もいます。
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館内で床に座って“戦利品”を広げ、仲間と物色しているおばちゃんたちもいます。訪日中国人観光客がドンキホーテの前でやってるのと同じ構図に見えます。
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こうしてみると、どんな企業が出展していたのか気になりますよね。出展企業のリストは入場料40元を支払った際、手渡されたので、今度時間があったら分析してみようと思います。

会場の外も見てみましょう。

皆さん、いろんな“戦利品”を手にしています。これが他の国であれば、おばさんたちに「何買ったんですか?」とガイドに通訳させて聞くところですが、そんな当初からの予定のない市民との接触は許されるものではないのが残念です。彼らは我々の行動を逐一上部に報告しなければならないからです。
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ベビーカーを押して買い物に来たお母さんなど、子連れもけっこういます。
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これは家庭用マッサージ器でしょうか。両手に荷物をぶらさげた女性の姿は、どこか“爆買い”中国人観光客の姿を連想させます。とはいえ、実際には大半の市民はそれほどの懐具合であるはずはなく、ささやかな買い物を楽しんでいるように見えました。
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現地ガイドの女性の話では、「この展覧会で売られる商品にはニセモノが少ない」と平壌では言われていて、それが人気の理由となっているそうです。彼女も春の展覧会でバッグを買ったとか。つまりは、市場経済化が進む北朝鮮国内でも「ニセモノ」が氾濫している実態があるようです。

会場の周辺は、車でいっぱいです。
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とはいえ、多くの市民はさすがに自家用車で来るというわけにはいかないようで、タクシーやバスを貸し切って来場している人たちもいました。
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これだけの光景を見せられたら、平壌に「消費者」と呼びうる人たちがいることを認めざるを得ません。いったい彼らはどんな人たちなのでしょうか。このような市民の姿は、平壌以外の地方では(一部の特権階層を除き)まず見かけることはないからです。

改革開放に舵を切った1980年代の中国が、最初広東省から経済自由化と外資の導入を進めたことで、他の地方とはまったく異なる都市空間をいち早く現出させたのと似て(その後、上海、北京などの沿海都市、さらには内陸都市も時間差を経て変容していきました)、この国ではまず平壌の都市空間とそこで暮らす人々の生活を変えようとしています。首都を真っ先に変えようという発想は中国にもなかったことを思うと、見かけに比べ北朝鮮は中国より市場経済の誘惑やそれがもたらすであろう影響に対して用心深くないといえるのかもしれません。

いずれにせよ、いまの平壌で起きていることは、北朝鮮のような国にとってだけでなく、アセアンの経済後進国であるラオスやカンボジア、そしてアフリカや南米などの国々と同様、結果的に中国経済の発展が後押ししているといえそうです。

結局、これまで先進国はこれらの国々を相手に援助はできても、同じ土俵で対等に経済関係を取り結び、市場とすることは難しかった。利益が釣り合わないからです。しかし、中国の場合、地方の中小企業の存在があり、彼らは北朝鮮の地元企業と対等とはいえないにせよ、かなり釣り合う形で合弁や投資が行える関係にあるように見えます(本当のところはよくわかりません。以前、丹東で「朝鮮でビジネスして利益を上げるのは簡単ではない」と語る中国人に会ったことがあるからです。彼は売上金の代わりに膨大な数の朝鮮絵画を受け取るほかなく、地元で北朝鮮美術専門の画廊を開いていました)。

実際、出展している中国企業は、東北三省、特に遼寧省や吉林省のローカル企業が多いようです。中国の国有企業や大手がこの国で中小企業と同じことをするのは無理でしょう。中朝の特殊な政治関係もありますし、そもそも経済関係では釣り合わないからです。中国からみれば、北朝鮮一国でもひとつの省より小さな経済体でしかないのです。人口300万人という平壌程度の都市は中国には地方にいくらでもあります。

それでも、これだけの日用品を求める「消費者」がいるわけです。その規模をあまり大きく見積もるのはどうかと思いますが、今後もこうして北朝鮮国内に中国商品があふれることになるのでしょう。地方に行ってもそうですが、この国の人たちの身なりが以前に比べ大きく変わったのは、安価な中国衣料が流通したからです。特に都市部に住む子供たちの身に着けているものは、中国の子供たちとそんなに変わらないスポーツシャツやパンツなど、一見貧困など感じさせません(ただし、足元を見ると、中国の子供はたいていスポーツシューズを履いていますが、こちらの子供はまだ布靴が多いなど、違いがないわけではありませんけれど)。
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こうしてみると、中国の影響力が、これまで援助対象としかみなされていなかった国々の経済を変えていくことに貢献しているという事実は否定できないように思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-04 14:43 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 08月 18日

台湾のドラッグストア研究家の鄭世彬さんがWBSに出演しました

今年の春先、ある台湾の作家に出会いました。鄭世彬さんという日本の医薬品やコスメの研究家で、台湾で多くの関連書籍を上梓しています。彼の経歴やこれまでの活動については、以下のエントリーで紹介しています。

台湾のドラッグストア研究家、鄭世彬さんと知り合う(2015年2月27日)
http://inbound.exblog.jp/24182824/
台湾で売れてる日本のドラッグストア購入ガイドが面白い(2015年4月1日)
http://inbound.exblog.jp/24310398/
台湾で日本のクスリと美容商品が人気の理由(2015年4月2日)
http://inbound.exblog.jp/24314372/
日本ドラッグストアショーは面白くてタメになるイベントでした(2015年4月3日)
http://inbound.exblog.jp/24318021/
これはやばい!? 日本にはおかしな中国語表示があふれている(2015年4月17日)
http://inbound.exblog.jp/24370756/

仕掛け人が激白!「爆買い商品はこうつくれ」(プレジデント2015.6.1)
http://inbound.exblog.jp/24486630/

その鄭世彬さんが8月10日のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」に出演しました。
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爆買いの新定番“神薬”
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/feature/post_95333

「今、中国人観光客に一番人気の土産物が「神薬=かみやく」。日本で一般的に売られる市販薬がこう呼ばれています。ブームのきっかけは、日本のドラッグストアで販売している化粧品や薬を紹介したガイドブック。中国では日本で絶対に買うべき薬として「12神薬」が紹介されています。福岡にある免税ドラッグストアでは、連日中国人観光客が市販薬を「爆買い」していきます。小林製薬は、「神薬」効果で、液体絆創膏「サカムケア」が去年の5倍以上売れていて、インバウンド需要への対応を強化しています。「神薬」ブームの火付け役は、台湾のドラッグストア研究家・鄭世彬さん。来日した鄭さんは10社の日本企業や自治体などと面会しました。外国人ならではの目線で、中国や台湾の観光客の好む商品の販売方法などを提案。今後も、著書などで日本の優れた商品が誤用されないように伝えたいとしています」。

まだ彼と知り合って半年もたたないのですが、どんどん活躍の場を広げていく様子がとてもうれしいです。こういう方には、もっと日本のためにもがんばってもらいたいし、こちらもできる限り応援したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-18 14:25 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 08月 15日

新しく新宿にできたLAOXを訪ねてみました(ここは消耗品がおみやげとして販売される店です)

今年6月6日、新宿にLAOXがオープンしています。

LAOX新宿本店
http://www.laox.co.jp/stores/shinjuku/

中国人ツアー客に限らず新宿は多くの外国人観光客が訪れる場所ですから、当然LAOXはいつか出店してくるだろうと思っていました。場所は伊勢丹の向かいのJTBの入っている同じビルの中です。

今日の午後、新宿三丁目を友人と歩いていて、時間があったので、中を覗いてみることにしました。
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店舗はビルの5階~8階の4フロアです。入り口からエスカレーターで5階まで上がることになります。なんとなく一般の日本人は入りにくい雰囲気です。
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各フロアの構成は以下のとおりです。
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5階は時計や宝飾関係。
6階は化粧品や医薬品、食品など。
7階は家電用品。
8階はブランド品。

6階には、コーセーの雪肌精や花王のメリーズなどの人気定番商品が置かれています。
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またこのフロアにはハラル食品の小さなコーナーもありました。
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キティちゃんのゴーフレット(焼き菓子)もハラル食品だそうです。館内にはムスリム客用の礼拝コーナーも設置されています。なんでも販売スタッフの中にムスリムもいるそうです。
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7階では、炊飯電気釜と温水洗浄便座が山積みされていました。
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これが8階です。ラオックス初の自社アパレルブランド「ORIGAMI」のショップもあります。カフェスペースも併設しています。

オンワードHDが免税店・ラオックスと新会社設立、"メイド・イン・ジャパン"のアパレルをグローバル展開
http://fashionmarketingjournal.com/2015/06/ONWARD-LAOX.html
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店内は閑散としていました。銀座や秋葉原、そして九州のLAOX博多が中国客であふれていたのと比べると、ちょっと意外です。

中国クルーズ客は博多に上陸後、どこへ行くのか?
http://inbound.exblog.jp/24731238/


理由は店の前にバスを停めることができないからでしょうか。銀座や秋葉原のLAOXの店舗の前にはたいていバスが停まっています。店の前で客を降ろすためですが、新宿では無理です。中国ツアーバスの路駐スポットとなっている新宿5丁目からは徒歩3分の近さなので、来店するのにそれほど苦労はなさそうです。ただし、歩道もそれほど広くないので、団体客には利用しにくいかもしれません。

店内にたまたま4人組の欧米の個人客が来店していました。彼らは何かを購入しに来たのでしょうが、5~6階ではさっとフロアを見るだけで、売り場に行く気はなさそうです。彼らにすれば、免税店でおむつや化粧品、医薬品などのような日用品をおみやげに買うという発想がないからです。そもそも旅先で消耗品を帰国後のために山のように買うという消費行動は中国客特有のものだからです。

8階では、浴衣などが当たる抽選会をやっていました。
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https://www.laox.co.jp/cn/laoxinfo/
Laox信息 2015.07.31 纳凉之旅:穿浴衣去哪儿?

こういうキャンペーンはスケジュールの決まった団体客には利用できず、個人客しか楽しめません。

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そういう意味では、新宿の真ん中にずいぶん特殊なショッピングスポットができたものだとあらためて思ってしまいました。もちろん、周辺のドラッグストアや家電量販店、そして伊勢丹でも外国客の買い物が増えています。ただし、それらの店とここが違うのは、中国人が旅先で日用的な消耗品をおみやげとして大量に買うという消費行動をとることと、彼らの海外ツアーがキックバックスキームに支えられているというふたつの条件が前提となって成立していることです。

とはいえ、LAOXもそのスキームだけに頼るのではなく、急増するさまざまな国籍の個人客を取り込みたいと考えているはずです。ムスリム対応もその布石なのでしょう。その試金石となるのが新宿出店なのかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-15 17:59 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 07月 28日

中国クルーズ客専門ドラッグストア「ドラッグオン」を福岡に開店した理由

今年50万人の中国クルーズ客が押し寄せることになっている福岡で、LAOXに負けじとドラッグストアを開店した地元企業が現れています。

今年2月に開店したドラッグオン福岡(株式会社ケアルプラス)で、場所は福岡空港の裏手の住宅街にあります。
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ドラッグオン福岡(訪日外国人観光客インバウンド対応型大型免税ドラッグストア)
https://www.facebook.com/drugonfukuoka

今年上半期、中国客の“爆買い”のターゲットは、ドラッグストアで販売される日本の家庭常備薬や化粧品、健康・美容商品だったことは知られていると思います。当然、クルーズ客の購入ニーズはそこに集中します。

社長もビックリ! 「爆買い」で売れまくる日本の“神薬”
http://www.iza.ne.jp/topics/world/world-7309-m.html

だったら、誰かがその受け皿をつくらなければ…。すべてをLAOXに持っていかれてはたまらないし、もしそうなってしまうと、福岡の人たちはこう思うことでしょう。「所詮、中国人は中国人の店でしか買わない。それなら、我々には関係ない。勝手にすればいい」。

こうしたことから、福岡の人たちは現在のクルーズラッシュをどこかクールに受け流しているという声もあります。

その一方で、「せっかくこれだけ多くの人たちが福岡に来てくれるんだから、彼らのニーズに応えて儲けさせてもらおうじゃないの」。そう考える地元企業が出てきてもおかしくないでしょう。それがドラッグオン博多だというのです。

クァンタム・オブ・ザ・シーズが寄港する日の午前中、ドラッグオン博多を訪ねました。福岡空港からタクシーで15分近く走った場所にその店はありました。店頭に「热列欢迎皇家加勒比海洋量子号游轮贵宾」(ロイヤル・カリビアン社クァンタム・オブ・ザ・シーズのお客様を熱烈歓迎します)と書かれた垂れ幕が掲げられていました。
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店内にはまだクルーズ客は現れていませんでしたが、陳列される商品や中国語簡体字オンリーのポップなどを見る限り、そこは日本のドラッグストアとは思えません。
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昨年秋に中国のネット上で流通した「神薬12種」(日本で買うべき家庭常備薬リスト12種)をまとめた棚もあります。
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日本に行ったら絶対に買うべき12の“神薬”とは?
http://www.recordchina.co.jp/a96011.html

棚の上にはそれぞれのクスリに関する詳しい解説もあります。
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中国客を意識したPM2.5対策商品の棚もあります。
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この店の人気商品のラインナップも。よく中国客は事前に日本で買うべきものをリストにしているといわれますが、クルーズ客は消費が進んだ上海の人たちばかりではなく、内陸の人も多いので、店内には彼らが何を買うべきかについて懇切丁寧に情報提供されています。
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昨年10月以降、クスリなどの消耗品も外国客には免税扱いとなったことから手続きに関する解説です。
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そして、これがこの店の最大の特徴、店員のほとんどは中国人です。これでLAOXと同様に、大量のクルーズ客の受入を可能としたのです。
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ドラッグオン博多については、地元テレビ局のRKB毎日放送で平日の夕方に放映されている情報番組「今感テレビ」の中で紹介されていました。
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店内では、6月中旬に放映された「フクオカの外国人観光客 最新の人気店は免税ドラッグストア」が流されていました。

フクオカの外国人観光客 最新の人気店は免税ドラッグストアhttp://youtu.be/H6LoH61BbTo

この番組では、中国客の人気商品のランキングを伝えていました。

まず3位から。「サンテFXネオ」(参天製薬)。
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2位は「龍角散ダイレクト スティックタイプ」(龍角散)。
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そして1位は「液体ばんそうこう リュウバンS」(大木製薬)。
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この番組を中国客向けに編集した映像には音声がなく、簡体字の字幕が付いていました。それをみると「(中国人)中国国内商品不信任(中国人は国内商品を信用していない)」という番組内の解説コメントも簡体字訳されていました。確かにそれは事実なんですが、はっきり書くものですね。
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さて、同店の関係者にも話をうかがいました。以下、満園昌嗣副社長とのやりとりです。

―こちらの店をオープンされた経緯をお聞かせください。

「博多にはすでに9年前から中国のクルーズ船が寄港していたが、一般の福岡市民とクルーズ客が触れ合う機会は少なく、いわば彼らに場所貸ししているようなものだった。2012年キャナルシティにLAOXができると、クルーズ客は一気に押し寄せるようになった。

とにかく中国客は買い物がしたい。だが、一度にバス何十台ものお客様が来て対応できる店はLAOXしかなかった。それともうひとつはキックバックの問題がある。LAOXはクルーズ客を手配したランドオペレーターやガイドに自分の連れてきた客の売上に応じてキックバックを払う」。

―それは飛行機を利用した中国の団体ツアーの特徴ですが、クルーズ客も同じ構造にあるわけですね。

「そうしないと中国で安い料金のツアーを催行できないからだが、逆に安くしているから、これほどクルーズ市場が急拡大した。もし日本で彼らを相手に商売しようとしたら、この構造に合わせるしかない。つまり、LAOXと同じようにキックバックを支払うということだ」。

―いつごろから開店準備を始めたのですか。

「2014年の9月だ。とにかく中国のスピードは速いので、こちらもそれに合わせないとやっていけないところがあった」。

―そして、今年2月にオープン。クルーズ客はバスで来るから、市内に店舗を置かなくてもいいわけですね。実際のクルーズ客の買い物の様子を見て何か特徴がありますか。

「ひと口にクルーズ客といっても、ロイヤル・カリビアン社のような豪華客船の場合と中国資本の船で4泊5日のツアー代が2000元というような安いものある。客層はまったく違い、販売単価も全く違う。またバスによって旅行会社が違うので、客層も違う。もはやクルーズ客には上海人はほとんどいないといっていいかもしれない。多くは華中エリアの浙江省や江蘇省だが、最近は湖北省や四川省といった内陸からの団体が多くなった」。

―どんな商品をどれくらい買っていくのでしょうか。

「ふつうは1人1~3万円くらいだが、高い客だと一度に50万円お買い上げということもある。健康食品やサプリを1年分。498円の目薬を30個といった感じだ。

中国客は「神薬」のようにネットで流れた情報や口コミを頼りに買いにくる。そして大量購入する。となると、品揃えや在庫の考え方も、一般のドラッグストアとは店づくりも含め、変えなければならない。地元向けの店では、1商品在庫は5~6個でいい。多品種少量が基本だ。しかし、クルーズ客が来ると、1商品が1日で1000~2000個売れる。つまり、ここでは棚に置く商品を絞り込み、在庫を多く用意する必要がある。いまこの店では1200アイテムくらいに絞り込んでいる。一般の日本の店の10分の1だが、在庫は豊富に置いている。

中国客相手の商売は、彼らが欲しいものだけ用意するしかない。選択肢をなるべく減らさないと、在庫がふくれ上がるからだ。そして、最も重要なのが、店にどの商品を置くか。4月から上海事務所を置いて、現地で中国国内のSNSなどを通じて売れ筋商品のマーケティングを行うようにしている」。

―なるほど、このビジネスモデルだと、彼らが何を買いたいか事前につかんでおかないと在庫を抱えることになる。情報収集が最も重要といえるんですね。ところで、このビジネスの今後の展望についてどうお考えですか。

「はっきり言ってこのビジネスが10年続くとは考えていない。とにかく中国の変化のスピードは速いので、3~4年は続くかもしれないが、常にその先を考えておかなければならない。今後は、福岡以外の九州の寄港地にも出店を考えている。4月には長崎にオープンしたが、7月には鹿児島をオープンする予定。

実は、LAOXとは紳士協定を結び、あちらはドラッグストア関連商品を売らないかわりに、こちらも家電には手を出さないという住み分けをしている。もともと地元でクルーズ客専用のドラッグストアを出してほしいという話は中国関係者からずっとあった。彼らも中国客は福岡に来るけど、LAOXでしか買わないという状況は好ましくないと考えていたようだ。地元にも経済効果があるということでなければ、クルーズの受入にも支障をきたすからだ」。

―確かに、東京のLAOXは家電からブランド、宝飾品、クスリまで中国客の買うものはすべて揃えているという感じですが、キャナルシティのLAOXは違うんですね。それにしても、なぜ中国客はこんなに日本のクスリや健康食品を大量購入していくのだと思われますか。

「ひとことでいえば、中国人は自国商品に対する国民総不信任がある。それに加えて、輸入品が高い。関税もそうだが、中国では不動産価格の高騰で小売業が日本のように薄利多売できる環境にはない。流通コストもかかる。そこへきてこの円安。彼らはこんなに安ければ、日本に来て買うのが賢いと考えるようになるのは当然かもしれない」。

いつも思うことですが、中国人の“爆買い”の背後には、なんともいえない不遇なお国事情があるといっていいのです。中国政府もそれを承知しているので、いまのところはクルーズ客の大量送客に目をつぶっているところがあるのかもしれません。

実は、店内には血液検査のコーナーが併設してありました。
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―これは何のためですか。

「確かに、買い物にかけられる時間は限られているが、ここで血液検査をしていただき、その結果を送るので、また日本に来てもらえればと考えている。いまのクルーズ客の博多上陸の様子を見ていて、このやり方が長く続くかどうか疑問はある。なにしろ8時間の上陸で、買い物ばかりでは、ラーメンも食べられない。でも、現状ではそれを言っても仕方がないので、クルーズは次にまた福岡に来てゆっくり過ごしてもらうためのステップと考えるほかない」。

基本的に、中国人の訪日団体ツアーの現状は、クルーズ旅行についても共通していることがよくわかりました。こうした大いなる矛盾をはらみつつも急拡大する中国訪日旅行市場に向き合うには、そして実利を得るには、それらを承知の上で、ひとまず矛盾を呑み込むこと。そして、刻々と変わりゆく市場の行方をにらみ、臨機応変かつスピーディに対応していくという姿勢が必要とされるのだとあらためて思った次第です。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-28 10:13 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 27日

中国クルーズ客は博多に上陸後、どこへ行くのか?

中国からの大型クルーズ客船が今年286回(7月1日現在)寄港する予定という博多港。豪華なクルーズ客船内で楽しんだ中国客も、上陸後は福岡市内にバスで繰り出します。

たいてい早朝に着岸し、夕刻には出発するクルーズの上陸時間は、長く見積もって8時間と言われます。

この間に彼らはどこに行くのか。1日に2隻同時に寄港する日は、100数十台のバスが福岡市内を駆け回ることになるのですが、この寄港地観光の訪問先は、太宰府天満宮と福岡タワー、キャナルシティ博多の3か所が最もポピュラーです。
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まず大宰府の様子を見にいきましょうか。

西鉄大宰府駅の西側に大型バス乗り場があり、何十台ものバスが停車していました。バスを降りたクルーズ客たちは大きなナンバープレートのボードを手にした添乗員について参道を抜け、太宰府天満宮に向かいます。
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首には自分が申し込んだ旅行会社のネームプレートをかけています。バスごとにスケジュールが違うので、道に迷って自分のバスに乗り遅れると大変です。
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参道のお土産屋には中国語のポップがあちこちに見られます。
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境内には中国客以外にも、個人で来たと思われる台湾客やタイ客も多く見られました。
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次に、福岡タワーです。高さ123mの展望台からは博多港全域が見渡せて悪くはないのですが、時間もないせいか、中国客たちはまず上らないそうです。
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で、何をするかというと、タワーを背景に記念撮影をするだけです。
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一応中国語併記の看板もありますが、ここでは買い物することはほとんどなく、近くのヤフオクドームのタウンモールに行くようです。
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この日、福岡市には大型バスがそこらじゅうを走っていました。
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博多港の寄港地観光のメインスポットがキャナルシティ博多です。
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中州にあるこのショッピングモールには大型バスを停めるスペースが十分ないため、周辺はバスで混雑しています。
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キャナルシティ内は中国客であふれています。今年は週に4~5回はこの調子で彼らがやって来るので、地元の人はちょっとびっくりでしょう。
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バスを降りるとみなさん一斉にショッピングモールに向かいます。
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大人から子供、おじいちゃん、おばあちゃんまで、クルーズ客の年齢層は幅広いです。3世代ファミリー旅行も多そうです。

彼らの多くがLAOXの紙袋を手にしています。
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LAOXのある4階に行ってみました。そしたら、すごいことになっていました。
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中国客だらけです。
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店内もそうでした。
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炊飯釜の大量購入コーナーもありました。
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店の外では、買い物予定のない年配の方たちが所在無くベンチに座って家族の買い物を待っていました。
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はてさて、身もふたもない話ですが、LAOXでの買い物が中国クルーズ客の博多寄港地観光のメインイベントなのです。

今年約50万人のクルーズ客が福岡に来る予定ですが、LAOXは大繁盛でしょう。

なぜ中国客がLAOXを目がけてくるのかというと、わりと単純な理由があります。

これだけ大量の中国客の受入可能な家電量販店が他にないということ。ここでは大半の販売員が中国人なのです。

そして、これも身もふたもない話ですが、LAOXで買い物すると、寄港地観光を手配している現地の旅行会社と添乗員に売上に対するキックバックが支払われるからです。

この件については、別の機会に詳しく説明したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-27 17:00 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 06月 08日

爆買いを見るにみかねた中国政府は輸入品の関税を引き下げるもよう

先週、中国のある友人から一通のメールが届きました。

「最近、円安で日本商品が安く買えるため、日本に旅行に行った中国人の爆買いが有名になりましたし、日本在住の中国人に化粧品や日用品を買わせて宅配便で送ってもらい、中国国内でネット販売する人が増えています。

こうしたなか、中国政府は6月1日から日用品の輸入関税を大幅に下げました。今後は中国でも以前より安く日本の輸入商品を買えるようになりそうです」。

彼が教えてくれたニュース記事は以下のものでした。

6月1日起中国降低部分日用消费品进口关税 (新華網2015年5月25日)
http://news.xinhuanet.com/fortune/2015-05/25/c_1115398300.htm

この記事によると、中国政府は6月1日よりアパレルや靴、スキンケア用品、紙おむつなどの輸入関税を平均50%以上引き下げるというものです。
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この図にあるように、各商品の輸入関税はこんなに下がるといいます。

スーツや毛皮 14~23%→7~10%
靴やスポーツシューズ 22~24%→12%
紙おむつ 7.5%→2%
スキンケア用品 5%→2%

この措置は中国の消費者の国外での消費があまりに拡大したため、国内の消費と民生、雇用、さらには国内産業の生産レベルを改善するためのもので、アパレルやシューズに加え、ベビー用品、キッチン器具、食器、眼鏡などの関税も下げるといいます。

この話を何人かの在日中国人にしたところ、下げると政府がいうそもそもの関税率についての疑問が出てきました。

「中国の輸入商品の関税はもともとこんなに低かったのだろうか。日本と比べると、同じ商品が2倍以上する実感がある。つまり、関税を下げただけでは、中国の消費者は輸入商品を安く買える実感は出てこないのではないか」。

中国メディアの関連記事を検索していると、いくつか見つかりました。

降低关税增设免税店 国务院五箭齐发力促消费升级 (新華網2015年4月29日)
http://news.xinhuanet.com/fortune/2015-04/29/c_127745173.htm

この記事によると、今回の輸入関税引き下げは4月下旬に開催された中国国務院常務会議で示されていた政策で、中国経済を投資に頼る現状から消費による成長へとモデルチェンジするためのものだといいます。

その施策としては、輸入関税を引き下げ、国際空港などの免税品店を増設し、国内での輸入商品の消費を増やすことです。

以下の5つの具体的な促進策があります。

①国外での日用品の消費が拡大するなか、6月末に輸入関税の引き下げと対象商品の拡大を実施する。
②アパレルや化粧品などの消費税を調整する。
③国際空港などの免税店の販売品目を拡大し、中国の消費者が輸入商品を免税価格で購入できるよう便宜を図る。
④海外で購入した商品の通関と消費税の払い戻しの手続きの簡素化を進める。
⑤中国ブランドの質を高めるために、リアル商店やオンラインショップで消費者が快適に安心して利用できるようにする。

先ごろ実施された輸入関税の引き下げは当初、6月末にやる予定だったようですが、1ヵ月前倒しになったようです。いつものことなのでしょうが、この国ではあらゆることが民意の承諾もなく、いきなり決められてしまうのですね。

さらにこの問題を掘り下げる記事もありました。

进口日用品6月底前试点下调关税 还去国外血拼吗? (新華網2015年5月4日)
http://news.xinhuanet.com/fortune/2015-05/04/c_127760514.htm

ここでは、4月中旬に発表された「2015年中国消費市場発展報告」によると、全世界の贅沢品の消費の46%を中国の消費者が占めていて、そのうち76%は国外で消費するという事実から書き出されています。

これは中国経済にとって喜ばしき話ではありませんから、国内消費を拡大するために6月末に輸入関税を引き下げることを前の記事同様、説明しています。こうして中国の消費者は海外から国内に消費の場を逆流させることができるだろうと述べています。

この記事では、関税引き下げ以外の全国各地での取り組みも紹介しています。「とにかく国内で買わせよう」ということでしょう。

広州の保税区では海外から輸入商品を直接買い上げ、販売するオンラインショッピング体験センターを5月1日にオープンさせたそうです。ここではフランスのワインや英国の粉ミルク、花王の紙おむつなどを国内の販売店より安く販売しています。

また河南省の鄭州空港で4月30日より輸入商品のオンラインショッピングサービスを始めたそうです。河南省の消費者はこれで空輸による短期間での購入ができるといいます。

こういう記事を読むと、いま盛んに行われている海外在住の中国人の爆買いおよび中国への搬送によって支えられている日本商品のネット販売という民間ビジネスを、政府が代行しようとしているようにも見えます。儲かる話は官に仕切らせろ、民間は手を出すな、という感じすらしないではありません。まあこれもいつものことでしょうけれど。

記事では、これらの取り組みは輸入商品価格の引き下げに貢献するはずだが、もうひとつの問題として、中国国内の流通コストや経営手法、販売店舗の不動産価格の高騰などがあることを指摘します。欧米の販売員に比べ中国の販売員の給料は低いのに、なぜ中国の商品価格は欧米より高いのか。そうしたあらゆるしわよせは中国の消費者が負っているといいます。結局のところ、中国の輸入商品が高いのは、関税のせいだけではないということでしょう。

そして最後に、中国人が海外で購入する商品の多くがメイドインチャイナであること。つまり、中国の国内向け商品は輸出商品より品質が低いという実態にも触れます。国内企業が海外企業の要求する水準に対応しているように、国内向け商品の生産も同じ水準に引き上げることができれば、多くの問題を解決できるとしています。

確かに、最後の指摘は昔からずっと不思議に思っていたことでした。海外でプロデュースし、中国でつくった商品を、彼らはわざわざ海外に出かけ、逆購入しているというわけですから。

いずれにせよ、この一連の施策は中国人の爆買い現象にどんな影響を与えるのか、しばらく様子を見ていこうと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-08 09:53 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 05月 22日

日本の家庭薬が“爆買い”される理由~台湾のドラッグストア研究家が書いた購入ガイドがスゴイ!

今年2月、上海で著作を手にして以来、台湾のドラッグストア研究家の鄭世彬さんのことをあれこれ書いてきましたが、昨日やまとごころ.jpで記事にまとめたので、転載します。

http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_13.html

日本の家庭薬が“爆買い”される理由
台湾のドラッグストア研究家が書いた購入ガイドがスゴイ!


今年の春節や桜シーズンに、中国客が最も熱心に購入したのは、ドラッグストアで販売される市販薬や化粧品だったという。その背後には、台湾のドラッグストア研究家の書いた購入ガイド書があった。同書は中国本土でも刊行され、それを持って来店する中国客も現れている。著者の鄭世彬氏が語る「台湾で日本のクスリが愛される理由」とは。

財務省が今月13日に発表した2014年度の国際収支によると、日本と海外のお金の出入りを示す経常収支の黒字幅が4年ぶりに増加。その要因のひとつが、訪日外国人旅行者の消費(朝日新聞2015年5月14日)だとメディアは報じている。

一方、春節や桜のシーズンの中国“爆買い”報道はもはや恒例だが、今年彼らが最も熱心に購入したのは、ドラッグストアで販売される市販薬や化粧品だったと中国メディア(レコードチャイナ2015年3月25日)は指摘している。

その時期、都心のドラッグストアに連日大挙して押しかける外国人観光客の姿が見られた。彼らの“爆買い”ぶりはどれほどのものなのか。どんな商品が人気なのか。まずは関係者の話から始めよう。
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人気は日本の定番家庭薬

東京と関西を中心に店舗を展開するOSドラッグチェーンの國米実支社長によると、外国客が目立って増えてきたのは去年からという。

―昨年10月からの免税改正の影響でしょうか。増えたのは秋からですか。

「いや、どっと増えたのは去年の春先から。消費税導入前に3月特需があって、4月以降はドスンと売上が落ちるかと思っていたら、そうでもなかった。これは外国客のおかげ」。

―だとすれば、外客効果は本物ですね。どこの国の客が多いですか。

「うちの場合は、売上でいうと、いちばんは中国。全体の4割。次いで台湾客が2~3割、そして韓国、マレーシア、シンガポール、タイという順。欧米客も多いが、彼らはそんなに買わない。必要なものをちょこっと買う感じ。やっぱり買い物はアジア客。

最近ではキットカットが1日100ケース(12個入り)売れる。マレーシアの人に聞くと、向こうでは1個700円らしい。抹茶味やわさび味など、日本にしかないものを買っていく」。

―中国客はやはり“爆買い”?

「彼らは値段も聞かないで買っていく。たとえば、『救心』(救心製薬)。一度に2、3箱、お一人様お買い上げ3~4万円はよくある」。

―他にはどんな商品が人気ですか。

「肝油のドロップ。中国は一人っ子政策だから、子供が大事。風邪薬やかゆみ止めなど、子供用のクスリを買っていく。ベビー用品も多い。

大人向けなら、胃腸薬の『強力わかもと』(わかもと製薬)や『エビオス錠』(アサヒフードアンドヘルスケア)、疲労回復薬の『アリナミン』(武田薬品)など。人気は日本の定番家庭薬。みなさん商品の写真をコピーして何枚も束にして持ってくる。欲しい商品の画像をスマホで見せられることも多い」。

日本チェーンドラッグストア協会によると、全国のドラッグストアの総店舗数は1万7953店(2014年)。前年より390店舗増加し、総売上高も6兆679億円(前年比101.0%)と伸びは鈍化しつつも成長している。一方、1店舗当たりの売上高は3億3799万円(前年比98.7%)と微減傾向にある。それだけに、売上に貢献してくれる外国客の消費が注目されるのは当然だろう。

中国ネットに現れた「神薬」リスト

昨年秋、中国のネットに以下の記事が掲載されたという。

日本観光、この「神薬」は買うべし!中国人の心をつかんだ日本の優れもの―中国ネット(レコードチャイナ2014年9月5日)
http://www.recordchina.co.jp/a93733.html

そこには、頭痛薬の『EVE』(エスエス製薬)や『口内炎パッチ』(大正製薬)など、日本で購入すべき12種類のクスリが紹介されていた。ドラッグストアで販売されている市販薬である。でも、いったいこの情報元はどこから来たものなのか。

そのひとつの手がかりとなるのが、昨年刊行された『東京コスメショッピング全書』という中国書だ。日本の優れた医薬品や健康・美容商品、化粧品をジャンル別に選んでカタログ風に分類し、解説した案内書である。まさにいま訪日する中国人観光客が最も知りたい情報が一冊にまとめられているというのだから、驚きだ。

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『東京コスメショッピング全書(东京美妆品购物全书)』(中国軽工業出版社 2014年)

著者は台湾出身のドラッグストア研究家の鄭世彬氏。彼が台湾で書いた本が、中国の出版社の目にとまり、簡体字版として刊行されたものだ。ドラッグストア関係者の話では、同書を手にして来店する中国客の姿も見られるという。

「フリーの翻訳家だった私のもとへ日本で買ったクスリを持ってきて何が書いてあるか教えてほしいという問い合わせがよくあった。知り合いの出版社と相談し、2012年2月、日本のOTC医薬品を解説する購入ガイドを出版した」(鄭氏)。

その後、読者から化粧品のガイドもほしいとの声があり、同年11月に刊行したのが、中国版の原本である『東京藥妝美研購』だ。これが好評で、日本の5分の1以下の人口の台湾で約1万部売れた。
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『東京藥妝美研購』(晶冠出版社 2012年)

日本のクスリはよく効き見た目もおしゃれ

3月上旬、訪日していた鄭世彬氏に話を聞いた。

―この本の読者はどのような人たちですか。

「OTC医薬品の本は20~60代までの男女で、コスメガイドは20~40代の日本好きな女性たち。台湾では読者を集めて日本のコスメセミナーも開いている」。

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鄭氏が主催する台湾のコスメセミナー会場は若い女性であふれる

―本を書いたきっかけは、知り合いから日本のクスリに関する質問が多かったからだそうですが…。

「私が日本に行くというと、家族や知り合いから必ずクスリを買ってきてと頼まれる。台湾では、日本のクスリをお土産として配る習慣がある」。

―台湾の人たちは、どんなクスリをお土産に買うのですか?

「たとえば、かゆみ止めの『ムヒ』(池田模範堂)や『ウナクール』(興和)。台湾は日本に比べて暑いから、虫が多い。胃腸薬では『キャベジンコーワ』(興和)が人気。私の母は胃腸が悪いので、いつも買ってきてほしいと頼まれる。台湾のおばさんたちの間では『キャベジン』はすごい薬だという噂が口コミで広がっている」。

―なぜ日本のクスリは人気なのでしょうか。

「効き目もそうだが、日本のクスリはパッケージがおしゃれなこと。一見クスリに見えないのがいい。それに台湾で買うより断然安い。たとえば、目薬『サンテFX』(参天製薬)は台湾では350台湾元(約1000円)くらいだが、日本のドラッグストアなら300円前後で買える」。

―そんなに値段が違うのですか。まとめ買いにしてお土産としてみんなに渡せば、喜ばれそうですね。

「化粧品も日本では台湾の半額に近い気がする。もうひとつの理由は、台湾の薬事法の関係で、同じ日本のメーカーの商品でも、台湾製では一部の成分が添加されていないケースがけっこうある。

たとえば、台湾製の『キャベジンコーワ』には脂肪を分解する酵素のリパーゼが添加されていない。いちばん肝心な成分なのに、台湾では市販品に添加してはいけない。

頭痛薬の『EVE』に含まれているイブプロフェンも、ようやく今は台湾でも解禁されたが、少し前まで禁止だった。この成分はよく効くので、『EVE』は台湾の20代~30代の若いオフィスワーカーに人気がある。男女関係なく、オフィスのデスクの引き出しに入っていると思う」。

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『EVE』(エスエス製薬)は台湾の若い世代に人気

―クスリ以外ではどんなものがありますか。

「たとえば、『休足時間』。台湾人はバイクに乗る人が多く、ふだんあまり歩かない。でも日本に行くと地下鉄に乗るので、いつもの倍以上歩くから、足が疲れる。そんなとき、ホテルでひんやりしたシートを貼ると気持ちいい」。

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ドラッグストアの店頭に置かれる『休足時間』(ライオン)

台湾の都市部に暮らす人たちは、日本と同じような現代的な生活を送りながら、気候や風土、習慣が違うため、さまざまなニーズがあるようだ。パッケージがおしゃれなことのポイントが高いというのも、なるほどである。

台湾客が中国客を先導する

―鄭さんの本は中国でも刊行されましたが、日本のクスリに対する関心は中国でも高まっているようです。昨年中国のネット上に現れた「神薬」リストの商品の多くは、鄭さんの本で紹介されたものでした。

「中国のネットに広まる日本の商品情報の大半は、台湾や香港経由のもの。たいてい数年遅れで突然広まることが多い。しかし、いったん広まると、波及するスピードは速いので、彼らは都心の量販店に殺到し、まとめ買いする。それが“爆買い”の真相だ。

でも、団体客の多い中国人と台湾人では、日本に来ても足を運ぶエリアや購入商品が違う。台湾人は日本をよく理解しているので、私の本でもなるべく中国客が行かないスポットを紹介している。たとえば、吉祥寺や自由が丘などだ。台湾人は一般の日本人が買物をするのと同じ場所に行って買物したいと考えている」。

この話は、前述したOSドラッグチェーンの國米実支店長の以下の指摘と符合する。

「店の立地によって売上は違う。都内で売上が多いのは観光客の多い上野や新宿、渋谷、原宿など、大阪なら心斎橋、難波、黒門市場、船場くらいで、郊外店は必ずしも売上が伸びているわけではない」。

日本の事情をよく知る台湾客たちが、中国本土の旅行者の一歩先を訪れていることが見えてくる。しかし、結局中国客もそれに気づき、後追いする。鄭氏の発信する情報の影響力は計り知れないといえるだろう。

5月中旬、今年4回目となる鄭氏の訪日は「東京コスメガイド」の第3弾の執筆のための取材が目的だ。どんな企画を考えているのだろうか。

「現在制作中の第3弾では、リピーターの多い台湾人読者のために、東京以外のご当地コスメの企画を考えた。台湾人にも人気のある金沢の地元コスメを紹介する予定。また都内のスーパーの取材も進めている」。

鄭氏はいまや中華圏の訪日旅行者が見せる旺盛な購買シーンの先導役といえるだろう。だが、彼がスゴイのはそれだけではない。毎月のように日本を訪れ、ドラッグストアを自分の足で視察し、医薬品や化粧品のメーカーを直接取材するという地道な積み重ねの成果が、今年1月に台湾で上梓された最新刊『日本家庭藥』に結実しているからだ。
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『日本家庭藥』(帕斯頓出版)と著者の鄭世彬氏(1980年生まれ。台南市在住)

同書は100年以上の歴史を持つ日本の老舗家庭常備薬メーカー34社を紹介したムック本だ。

「日本の家庭薬がなぜ台湾の人たちに人気があるかというと、実際に使ってみてよく効くと実感しているからだが、その背景には古くは400年もの歴史をもつ日本の老舗医薬品メーカーの存在があることに気がついた。そこで各メーカーにご協力いただき、それぞれの定番商品の誕生秘話や創業者の努力、企業の発展の歴史を紹介した。いま日本で花開いているドラッグストア文化は、これら老舗企業の歴史があってこそだと私は思う。その素晴らしさを台湾の読者に伝えたかった」。

台湾出身の鄭氏は、我々日本人が当たり前と思ってそのありがたみを忘れていた家庭薬の価値を解き明かしてくれたのである。

おかしな中国語表示が氾濫している

そんな鄭氏は最近、日本に来て気になることがあるという。

全国の観光地や家電量販店、ドラッグストアも含めて、おかしな中国語の使われ方をした表示や商品コピーが氾濫していることだ。かつて日本人は海外、特にアジアの国でおかしな日本語表示を見つけ、脱力感を味わいつつ面白がっていたものだが、同じことがいまや日本でも起きているというのである。

鄭氏が見つけたおかしな中国語表示をいくつか紹介しよう。
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「从清晨到深夜 你可以购买便利店 上午7:00~2300(全年无休)」

この表示を見たとき、鄭氏は思わず声を上げたという。なぜなら、ここには「早朝から深夜まで、あなたはコンビニ店を購入できます」と書かれているからだ。購入できるのは商品であって、コンビニ店舗そのものではない。正しくは「可以在便利店买东西 7:00~2300(全年无休息日)」だろう。

次は某量販店の告知。「万引きは犯罪です。発見次第、警察に通報します」と日本語では書かれているが、中国語簡体字の表記はこうだ。
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「高是犯罪・找到在次序和警察通」

これでは中国人にはまったく意味がわからないという。こうした不可解な中国語表示が中国客の脱力感を誘い、好意的に解釈してもらえればいいのだが、鄭氏はこのままではいろいろ支障もあるのではないか、という。

「たとえば、高額なブランド品や化粧品のコーナーでこうした間違い中国語表示を見かけると、なかには品質を疑いたくなる人も出てくるのではないか」。

でも、そんなに難しく考えることではないと鄭氏は言う。

「最近では外国客がよく利用するショッピング施設に中国人スタッフを置くことが多くなった。まずは彼らにチェックさせるといい。ただし、中国人は出身地によって方言もあり、言葉の使い方が異なるので、本当を言えば二重のチェックも必要。台湾人には中国人の使う中国語はかなり違和感がある。そうした両岸や地方による違いも理解している正式な中国語翻訳会社に発注するのがベストだと思う」。

安易に翻訳ソフトに頼るのは間違いのもとだという。もっとも、逆によく事情を理解していると感心したケースもあったそうだ。

「いま台湾では日本のオーブンレンジが人気だが、中国本土ではまだブームになっていない。先日、新宿のビックロに行ったとき、オーブンレンジのコーナーの商品表示に繁体字が使われていた。これを買うのは台湾客だけだから繁体字が使われていたわけで、この店はよくわかっているな、と思った」。

実際に、ビックロの免税品コーナーに行くと、オーブンレンジの表示は「過熱水蒸氣水波爐」と繁体字表記されていた。同店の販売スタッフは、中国本土客と台湾客の売れ筋商品の違いを理解したうえで、簡体字と繁体字を使い分けていたのだ。

外国客が増えると、これまで考えてもみなかったことが起こるものだ。彼らといかにフレンドリーなコミュニケーションを築いていけるかは販促の基本。そのためにも、こうした指摘には謙虚に耳を傾けていきたいものだ。

※鄭氏が指摘してくれたおかしな中国語表示のその他の実例については、中村の個人blogの以下の記事を参照してほしい。
「これはやばい!? 日本にはおかしな中国語表示があふれている」
http://inbound.exblog.jp/24370756/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-22 07:58 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)