ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 02月 09日

渋谷公園通りの「ラッキーシェイクキャンペーン」を体験してみた

昨日少し触れましたが、いま渋谷の公園通りでは「Tokyo Prime Shopping 2016 in Shibuya」という商店街のイベントが開催され、外国人観光客向けの「ラッキーシェイクキャンペーン」というのを実施しています。
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Tokyo Prime Shopping 2016 in Shibuya
http://www.koen-dori.com/news/2015/12/tokyo_prime_shopping_2016_in_s.html

これは、キャンペーン期間中(1月2日~2月29日)、外国人観光客が所定の場所(参加店など)で中国版ツィッターこと「微信(WeChat)」を起動し、携帯端末をシェイクすると、アプリ画面上でくじ引きできるというものです。商品総額は200万円、それ以外に参加店舗からの商品券や景品などが当たるそうです。
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公園通りにひらめく大量の旗に書かれた中国語簡体字の「幸运摇出来」は、スマホをフルフルすることで幸福を呼び込もうという意味です。

公園通り商店街のHPによると、このイベントのターゲットや参加店は以下のとおりです。

●ターゲット
中国、台湾をメインエリアとして、それに、英語圏の外国人観光客を加えた、年齢 20~40 代の男女

●キャンペーン参加店舗数 
約900店舗(大型商業施設テナントも1つとしてカウント)
参加大型商業施設、11施設

同商店街では初の試みだそうですが、なかなか大規模なものです。

また協賛・協力に中国系の企業が多いのも特徴です。

●メイン協賛:サイバーマートグループ、FJサイバー株式会社(日本窓口)
●協賛・協力:東方網、東方航空、上海酷活電子貿易、SENSORO、ジャパンショッピングツーリズム協会

基本的に外国人向けのキャンペーンですから、日本人にはあまり関係ないのかもしれませんが、この「ラッキーシェイクキャンペーン」、どこでやっているのでしょうか。

そのひとつのスポットが、昨年オープンした渋谷モディの地下1階です。
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渋谷モディ
http://shibuya.m-modi.jp/

ここ、確か元丸井だったビルです。地下に降りると、そこはHISのずいぶんおしゃれな旅行カウンターとカフェスペースがありました。
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そのずいぶん奥まった場所にキャンペーンカウンターはあり、ひとりの若い女性スタッフがいました。以下、彼女との会話です。

「あのぉ、ぼく日本人なんですけど、できるんですか?」
そう聞くと、一瞬彼女は戸惑いながら、
「ええ、大丈夫ですよ。でもWeChatできますか」

「できますよ。普段よく使います」
「そうですか。それじゃあやり方を教えますね」

「ところで、あなたは中国の人ですか」
「いいえ、台湾人です」
「だったら、普段はWe Chat使わないんじゃない?」
「ええ、まあ」
「台湾のどこの出身?」
「台北の南の新竹市、わかりますか」
「ああ、桃園空港の南の…知ってるよ」
「そうです。あら、うれしいですね」
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そんな会話をしながら、彼女はやり方を教えてくれました。以下のとおりです。

①まずbluetoothを立ち上げる
②次にWe Chat(微信)を立ち上げ、「揺一揺」でシェイクする
③「Tokyo Prime Shopping 2016 in Shibuya」のページをゲットし、3択の宝石箱からひとつを選ぶ。

残念ながら、ぼくはハズレてしまいました。あっけなく。

それを見て気の毒に思ってくれたのか、彼女は当たるとどうなるか、教えてくれました。
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これ、1000円の商品券。
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そして、こちらは109の商品券。
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「ああ、もっとよく考えて選べばよかった…」
「大丈夫。また明日来てください。1日1回なら何度でもできます」
「えっ、そうなの。じゃあまた今度渋谷に来たときやってみようかな。…それはそうと、いま台湾は大変だよね。ご家族や親戚は大丈夫だった?」
「はい、おかげさまで無事です。これから春節というときに、本当に悲しいことです」
「でも、台湾の人は東日本大震災のときに日本をずいぶん助けてくれたから、今度は日本が台湾を助ける番ですね」
「ありがとうございます。そう言っていただくと、本当にうれしいです」

そう言って彼女は、ぼくに台湾製のマンゴケーキをくれました。

「どうもありがとう」
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ほのぼのしたひとときでした。気になるのは、そうやってぼくがキャンペーン体験していた10数分間、ここに現れた外国人はいなかったことです。確かに、ちょっとわかりにくい場所にあると思います。実は、キャンペーンに参加した人は名前と国籍を書くことになっていたので、そのリストを見ると、この日ここを訪れた人は30人くらいでした。

NHKでこのキャンペーンについて報じていたようです。
https://www.youtube.com/watch?v=i9dhgZfdeXI&feature=youtu.be

春節休みの渋谷の通りは中国語簡体字表記であふれていた
http://inbound.exblog.jp/25337935/

【追記】
世の中にはいろんなショッピングキャンペーンがあるものですが、このWe Chatを使ったラッキーシェイク企画を考えたのは、当然中国系の企業でしょう。でも、考えてみてください。We Chatは日本人もそうですし、台湾人もアメリカ人もタイ人も韓国人もほとんど使いません。ちょっと無理のある企画じゃないかと思わざるを得ないのです。国籍別で中国本土の人たちがいちばん買い物すると統計的には指摘されているわけですが、そのような中国人がどれだけ渋谷に来るのだろう。やっぱり彼らは銀座や上野、せいぜい新宿が多いのでは。

最近の中国の人は、自分たちのやり方を押し付け気味の傾向がある気がします。自分たちには便利だとしても、それがどれだけ広い支持を得ているか、見えていないのでは…。おそらくこの企画、ニューヨークでやってもバンコクでやっても、台北でも、ちょっと難しいのではないでしょうか。そんな気がしてなりません。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-09 10:12 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 02月 08日

春節休みの渋谷は中国語簡体字表記であふれていた

2月6日(土)の昼下がり、ぼくは渋谷と表参道を訪ねました。春節休みのこの時期、渋谷と表参道で中華系の観光客をメインのターゲットとしたショッピングキャンペーンが繰り広げられていたからです。
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渋谷駅を降り、109方面に向かう道玄坂の両サイドには、中国のデビットカードである銀聨カードのキャンペーン旗がぎっしりと並び、はためいていました。
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一方、公園通り方面には、別の旗がひらめいています。こちらは「Tokyo Prime Shopping 2016 in Shibuya」というキャンペーンの旗です。同じ渋谷で、道玄坂と公園通り商店街ではまったく別のキャンペーンを繰り広げているというのも不思議ですが、共通するのは、中国の旧正月(春節)に向けたものであることです。
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公園通りの旗に書かれた簡体字の「幸运摇出来」は、同商店街が主催する「ラッキーシェイクイベント」のことで、キャンペーン期間中(1月2日~2月29日)、外国人観光客が所定の場所(参加店など)で中国版ツィッターこと「微信(WeChat)」を起動し、携帯端末をシェイクすると、アプリ画面上でくじ引きできるというものです。商品総額は200万円、それ以外に参加店舗からの商品券や景品などが当たるそうです。
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東急デパートにも「銀聨カード」の大きな垂れ幕が見られました。
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それにしても、渋谷の街がこれほど中国語簡体字表記であふれたのは初めてのことではないでしょうか。ちょっと驚きました。

もっとも、渋谷を行き交う多くの人たちのうち、このキャンペーンの存在を知っている人はどれほどいたことでしょう。そこが気になるところです。

さて、渋谷のタワーレコードの脇を抜け、キャットストリートを歩いて表参道にも足を伸ばしてみました。

表参道には、一斉に2枚の旗が並んでいました。渋谷と違い、表参道ではVISAカードが協賛するキャンペーンが繰り広げられているようです。
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ただし、こちらは中国語簡体字表記だけでなく、ハングル表記も含まれています。
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そして、この地区のキャンペーン名は「Tokyo Shopping Week 2016 at Harajuku/Omotesando」というものです。つまり、原宿と表参道がタッグを組んだショッピングキャンペーンというわけです。
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外国人観光客向けのスクラッチキャンペーンが実施され、2000名に1000円分の現金が当たるそうです。ラルフローレンの前に小さなテントがあって、外国人観光客は着物姿の女の子と一緒に記念撮影できます。
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渋谷との違いは、銀聨カードではなく、VISAカードが協賛していることもあり、必ずしも中国系の観光客だけがターゲットではないようです。とはいえ、この時期、中国本土以外の台湾、香港、東南アジア華人なども多く訪日するわけですから、本土客向けに簡体字を前面に出すのは控え、広い対象に向けてキャンペーンを実施したというのが、原宿・表参道の考え方だったのでしょう。

もっとも、こちらでも思うことは、表参道を行き交う人たちのうち、どれだけの人が……、でしょう。

この日は土曜でしたが、昨年のイースター(4月上旬)に渋谷や表参道を訪ねたときのほうが圧倒的に人通りは多かったと思いますし、外国人観光客ももっと目に付いた記憶があります。

イースターも近い原宿では非英語圏の言葉があちこちで聞かれた
http://inbound.exblog.jp/24322287/

イースター休みに渋谷スクランブル交差点に出没した外国人をシューティング
http://inbound.exblog.jp/24348359/

はたして渋谷と表参道のキャンペーン、どれだけの効果があるものでしょうか。

実は、例の「ラッキーシェイクイベント」、外国人でもないぼくはこっそりやらせてもらいました。その話は次の機会に。

渋谷公園通りの「ラッキーシェイクキャンペーン」を体験してみた
http://inbound.exblog.jp/25340545/
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by sanyo-kansatu | 2016-02-08 11:22 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 01月 31日

大阪と東京のインバウンドの特徴の違いを外国人の視点で考えてみる

いま日本で最もインバウンドが熱い場所はどこなのか?

それは大阪です。

去年と今年の正月明け(あと去年の夏も一度)にぼくは大阪を訪ねています。大阪のインバウンドの現場をウォッチングしたかったからです。もともと自分は大阪にはほとんど土地勘はなかったのですが、ありがたいことに、大阪のインバウンド事情にこれほど通じている人はいないという心強い地元の案内人がいます。中国語通訳案内士の水谷浩さんです。

訪日旅行市場最大の中国語通訳案内士の現場は大変なことになっていた
http://inbound.exblog.jp/24486566/

2日間をかけて大阪のインバウンドスポット、すなわち外国人ツーリストがよく現れる場所を案内していただきました。それは、主に以下のエリアでした。

大阪駅周辺
新世界
日本橋
心斎橋商店街
黒門市場
船場
中崎町
富田林

※実際には大阪城やUSJもあるのですが、当たり前すぎるので、訪ねていません。
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一般に大阪は以下の5つの観光エリアに分けられるようです(大阪観光局発行公式ガイドブック参照)。

キタ・中之島エリア
大阪城エリア
ミナミエリア
天王寺・阿倍野エリア
ベイエリア

しかし、たいていの外国人旅行者は土地勘などなく、キタとミナミの違いもよくわかっていませんから、この日本人にはなじみのあるエリア区分はあまり意味をなしません。ただ特定の関心ある目的地にピンポイントで足を運びます。ひとつの特徴あるエリアを街区の連なりとして理解するには、しばらくその土地に住むなり、相当なリピーターにでもならないかぎり、難しいことだからです。その点、ぼくは外国人と立場はたいして変わりません。自分が外国人ツーリストになった気分で、水谷さんの案内してくれる大阪を楽しむことができました。

水谷さんが案内してくれた個別のエリアについては、追々紹介していくとして、大阪を歩いていると東京との違いをいろいろ知ることができました。

まずいちばん驚いたことは、心斎橋商店街をはじめとした延々と続く商店街の連なりと人ごみの驚くほどの多さです。大阪は地下街もすごいのですが、やはり東京にはこういうタイプの商圏はありません。せいぜい銀座がホコ天になったときとか、あとはあっても私鉄沿線の商店街くらいか。全然スケールが小さいのです。大阪のようにアーケードの商店街がどこまでも続く世界は、海外を探してもそんなにないのではないでしょうか。

もうひとつは、それとも関連するのですが、大阪は東京に比べまちがコンパクトなぶん、キタから天王寺まで歩いていけること。その間、商店街が名前を変えて接続していることも面白いですし、個性の異なるエリアを歩いて縦断していけることです。水谷さんは、こういう大阪の特徴をフランス菓子のミルフィーユにたとえてこう言います。「大阪はいろんな違う味がミルフィーユのようにつながる構造になっている。だから、歩くとその変化が面白い」と。なるほど、東京にも異なる個性を持ったエリアがいくつもありますが、大阪に比べて広いぶん、それぞれ点在していて、歩いてその違いを味わうというようなことは、そりゃできなくはないかもしれませんが、大阪ほどたやすくはありません。結局、地下鉄をどう乗り継ぐかということが、東京散策のポイントになりますが、大阪では1日かけて歩いて回ることもできない話ではない。

こういう都市のスケール感というのは、どちらかというとアジアというより、ヨーロッパの都市に近いといえるかもしれないことです。外国人ツーリストにとって訪れた都市がある程度コンパクトであるということは、魅力につながるものです。なぜなら、初めて訪れた人間にも全体像が把握しやすいからです。把握しやすいということは、また来てみようという気にさせるところがあるのです。その点、東京は大きすぎて、全体像を把握しようなどという気持ちを最初から失わせるようなところがあります。

もちろん、そうはいっても、日本の地方都市に比べれば、大阪は大きいですし、歩いて観光しようなどという気持ちにはふつうはならないでしょう。でも、いまや北京や上海、広州などの大都市では、すでに大阪に比べて公共交通網が拡大していることもあり(関西圏全域まで広げると話は違ってきますけど)、これらの都市の住人の感覚では、東京は無理でも、大阪なら全体像を把握できると思えるかもしれません。そして、それが外国人ツーリストにとっての大阪に対する親しみや愛着につながる可能性があると思います。

大阪観光局の関係者によると、関西を訪れる外国客の特徴は、買い物を好む東アジアや東南アジアからの観光客が多いことだそうです。なにしろ関空に乗り入れるLCC比率は全体の30%超と全国一。LCCを利用して賢く旅する外国人旅行者のことを「関西バジェットトラベラー」と呼んでいます。一般に東京には出張や公費で訪れる旅客も多いのに対し、関西は「自分のお金で楽しみたい人が訪れる」といわれ、リピーター比率も東京より高いことも指摘されています。

外国人ツーリスト、とりわけアジア客にとって、東京より大阪のほうが親しみを感じている人が多いのかもしれません。

実際、2015年2000万人まであとわずかに近づいた訪日外国人旅行者数は全国的に増えたことは確かですが、関西の伸び率は全国平均を上回っているからです。
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あとこれは地下鉄御堂筋線に乗っていて思ったことですが、大阪の地下鉄では、ハングル表示もふつうにあるのですね。東京でもJR山手線などでは見かけますが、地下鉄ではふだんあまり見かけない気がしたので(路線にもよるのかな? 少なくとも自分が普段利用する都内西部方面の路線では見かけません)、ちょっと印象に残りました。大阪を訪れる韓国人の数は半端ではないようですから、当然のことかもしれません。
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大阪インバウンドのにぎわいは日本最強か!? (2017年 09月 09日)
http://inbound.exblog.jp/27104053/
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by sanyo-kansatu | 2016-01-31 19:18 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 01月 08日

中国人がジェネリック医薬品を買わないのはニセモノに見えるから

鳥取県境港に寄航した中国発大型クルーズ客船「クァンタス・オブ・ザ・シーズ」の乗客が人口3000人の村のイオンモールに押しかけた報道を昨日検証しましたが、これからするのはドラッグストアで聞いた話の続きです。

4500人の中国クルーズ客が山陰の人口3000人の村に押し寄せ、住民を困窮させたというのは本当か?
http://inbound.exblog.jp/25247278

実は、その日ぼくはおなかの調子が悪く、1日に何度もトイレに駆け込む状態でした。おなかがゆるいのです。疲れがたまっていたせいかもしれません。そこで、薬剤師さんに症状を話し、整腸薬を選んでもらったときのことです。

そこには、似たような白地にオレンジ色のパッケージをした2種類の整腸薬がありました。

新ビオフェルミンS錠(武田薬品工業 2267円)
ラクトファルミンS錠(米田薬品工業 934円)
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明らかに料金が違います。薬剤師さんはこう言いました。

「中国のお客さんはこちら(ビオフェルミンS錠)しか買いませんね。こちら(ラクトファルミンS錠)はイオンのプライベートブランドのような扱いなので、3分の1くらいの値段なのですが、手に取ろうとしない。なぜですかね」

そして、ぼくには安いラクトファルミンS錠をすすめてくれました。

なぜなのか。その理由は、パッケージの色もデザインも似通ったラクトフェルミンS錠は、中国客の目にはニセモノ商品にしか見えないからです。ニセモノがあふれる中国では、このように似通ったパッケージは疑惑の対象となるのです。

中国客が「口コミを重視する」という意味は、逆に言えば、自分の目で商品を選んでいないということなのです。

無理もありません。彼らの大半は初来日、日本の事情なんて何も知らないのですから。ただ友人知人に教えられた商品リストとパッケージ画像のみを頼りに購入しているだけだからです。

ある都内のドラッグストアの店長にこんな話を聞いたことがあります。

「うちは日本人とか外国人とかわけ隔てしないで、お客さん一人ひとりになるべく安く購入していただくために、同じ効能なら値段のお安いジェネリック医薬品をおすすめします。欧米の方や東南アジアの方たちは私のすすめに素直に従ってくれます。でも…」

もうこれ以上説明する必要はないでしょう。中国人はそれを信じることができないのです。それに、たとえそれを買って帰っても、お土産として誰かに渡すとき、相手もニセモノじゃないかと疑い、喜んでくれないのです。

まったく難しい人たちですね。

※自社が開発した先発医薬品の特許が切れたあと、その薬を他の医薬品メーカーが製造・販売したものを「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」といいます。
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by sanyo-kansatu | 2016-01-08 13:53 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 01月 07日

4500人の中国クルーズ客が山陰の人口3000人の村に押し寄せ、住民を困窮させたというのは本当か?

昨年7月上旬、こんなニュースがありました。

「鳥取県の北西部、島根県に隣接する境港市。ゲゲゲの鬼太郎の作者・水木しげるさんの出身地としても知られ、商店街には、キャラクターの銅像が立ち並び、妖怪の町として観光客の人気スポットとなっている。

その町におととい、これまで日本に寄港した客船の中で最も大きい、クァンタム・オブ・ザ・シーズが入港した」。

4500人の中国人が来航!地元港は大混乱!(「ウェークアップ!」読売テレビ2015年7月4日)
http://www.ytv.co.jp/wakeup/news/n11081879_main.html

で、何が起きたかというと、「村の人口(3455人)も上回る4000人以上の中国人が訪れて爆買いし、現地住民の生活が一時困窮した」(人民網日本語版)というのです。

日本の村で「食い尽くせ、買い尽くせ!」 クルーズ旅行の中国人4000人が爆買いで「村民困窮」(Focus Asia 2015年7月7日)
http://www.focus-asia.com/socioeconomy/photonews/422797/

中国人「爆買い」で困る鳥取県 ネット民「日本の観光客受け入れ能力が低すぎる」(人民網日本語版2015年7月9日)
http://j.people.com.cn/n/2015/0709/c94659-8918190.html

激増する中国人観光客の影響はこんな形で現れるものなのか…。

この日、境港に寄航した「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」は、世界最大規模の大型クルーズ客船です。ロイヤルカリビアン社というアメリカのクルーズ会社が運営しています。

実は、その5日前、ぼくは博多港で同客船の内覧会に参加していたので、その巨大さは体感済みでした。

6月27日中国発客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」が博多に初入港しました
http://inbound.exblog.jp/24648018/

博多中洲のショッピングモール「キャナルシティ」で中国客が「爆買い」する光景を見ていたので、確かに山陰の小さな村のショッピング施設では大混乱が起きていたのかもしれない。なにしろそんなに大勢の外国客が来店することなんて初めてだったでしょうから。

そんな報道がずっと頭に引っかかっていたので、年末のある日、鳥取県西伯郡日吉津村にあるイオンモール日吉津を訪ねてみました。

JR山陰本線米子駅からバスで30分。田園風景の中にイオンモールが見えてきました。
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イオンモール日吉津
http://hiezu-aeonmall.com/

その瞬間、思いました。「あれっ、話がちょっと違うのでは?」。 

山陰の片田舎にあるとはいえ、そのイオンモールはけっこう巨大な施設だったからです。東館(イオン直営店とドラッグストアなど)と西館(テナント中心)に分かれ、館内は歳末セールでにぎわっていました。地方都市なら全国どこでも同じでしょうが、地元客は車で郊外にあるイオンモールにまとめ買いに来るのです。おかげで米子駅前は閑散としているわけです。
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ネットが報じた「大混乱」の痕跡を探そうと、館内を歩き回ってみました。でも、入り口に1枚の外国語のポスターが貼ってあったのと、表に「免税 Tax-free」の垂れ幕があったくらいで、特になんてことはないのです。
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東館の中央部にサービスカウンターがあり、そこが免税手続きを担当する唯一の場所でした。女性のスタッフに話を聞いてみることにしました。

―今度友人の外国人を連れて買い物に来たいのですが、免税してもらうためにはここに来ればいいのでしょうか(すいません。ウソついてます)。

「はい、そうです。いったんお買い上げいただいた後、パスポートとレシートを持ってこのカウンターに来ていただくことになっています。ただし、お買い上げ金額の条件があります。医薬品やお菓子などの消耗品の場合、5401円以上でなければ適用できません。家電製品の場合は10801円以上です」

―つまり、8%分を差し引いた金額が、それぞれ5000円、1万円以上ということですね。ところで、ここに「免税手続きは1組45分程度」と書いてありますが、免税するのにそんなに時間がかかるものなのですか。

「中国のお客様はとにかく買い物の品数が多いので、すべてチェックしなければなりませんから。でも、だいたい平均して15分くらいです」
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話を聞きながら、これは大変なことだと感じました。どれほどの数の中国客がレジで受け取ったレシートを持ってここに並ぶのだろうか…。ついに本当に聞きたかったことを話すことにしました。

―今年の7月、境港に中国の大型クルーズ客船が来て、こちらで大勢の中国客が買い物したそうですね。1隻4000人以上のお客さんが乗っていたそうです。こちらにも来店されたのでしょうか。

「はい、お見えになりました。でも、イオンは松江にもあるので、そちらにも行かれたそうですから、4000人全員が来たわけではないですけど、大勢お見えになったのは本当です」

―でも、仮に1500人くらい来店されたとして、とても免税手続きに対応することはできなかったのではないですか。もしかして、このカウンターの前は大行列だったとか。

「確かにそうでした。ですから、とても全員の方の免税手続きに対応することができませんでした」

―そりゃあそうですよねえ。

カウンタースタッフの女性はとても素直かつまじめに答えてくださりました。当時の状況がだんだん見えてきました。

どうやらこの感じでは大半のクルーズ客は免税手続きができなかったのではないでしょうか。でも、円安なので、8%の免税のことなど彼らはそれほど気にしなかったに違いありません。そんなことより、買いたいものがどれだけ買えたかのほうが重要だったことでしょう。

―中国の方はどんなものを買い物されていましたか。

「ドラッグストアの商品が多かったです」

そこで、ドラッグストアを訪ねてみました。薬剤師さんがいたので、聞きました。

―7月に中国のクルーズ客船のお客さんが大勢いらしたそうですね。ずいぶん薬が売れたと聞きました。何が売れたのですか。

すると、若い薬剤師はぼくをあるコーナーに案内してくれて、次の話をしてくれました。そこには、外国客向け専用の棚ができていました。
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「いちばんよく売れたのは、目薬の『サンテボーティエ』(参天製薬)。なぜかこちらの安い『サンテFX』ではなく、高いほうを買っていかれます。あとは風邪薬の『パブロンゴールドA』『龍拡散』などです」。
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それらはまさに「神薬」のラインナップでした。なぜ『サンテFX』ではなく、『サンテボーティエ』が買われたかというと、『サンテFX』は「神薬」のリストに選ばれていないからだと考えられます。

まったくもって、世間で言われているとおりのことが、ここ山陰のイオンモールでも起きていたのでした。

おそらくその日は、駐車場にひっきりなしにバスが何十台も現れ、数十人ごとの中国客を下し、1時間ほど「爆買い」して帰っていくという光景が繰り返し見られたのでしょう。でも、だからといって「現地住民の生活が一時困窮」というような話ではなさそうです。日吉津村の人口が約3000人にすぎないことから、中国メディアはウケ狙いで面白おかしく書いたのでしょう。気持ちはまあわかります。

ただし、中国メディアが知ってか知らずか決して書こうとしなかったこともあると思います。日本では、たとえ山陰の片田舎にあるショッピング施設でも、中国人が「爆買い」したくなるような商品がふつうに売られていること。地域住民もごくふつうに車で来て買い物していることです。ここは中国でいえば、都市の規模や格でいうと5線級都市にもとうてい入らない鳥取県西伯郡日吉津村という農村地区であるにもかかわらずです。実は、これが日本と中国のいちばんの違いであるということを。

現地を訪ねてわかったことがあります。域内の主要都市である米子市への合併が周辺の町村で進む中、日吉津村は唯一合併を拒んでいるそうです。理由は、村内に王子製紙米子工場(旧日本パルプ)の一部があるためで、合併してしまうと同社の法人税を明け渡してしまうことになるからです。
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やはり、現地に行ってみないとよくわからないことってありますね。

境港の港湾関係者の話では、2016年は中国クルーズ客船の寄港回数はさらに増えるそうです。

次回以降、境港の関係者に聞いた話を紹介しましょう。
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境港が中国クルーズ船の寄港地に選ばれる理由
http://inbound.exblog.jp/25266871/

鳥取県境港に上陸した海外クルーズ客はどこに行くのか?
http://inbound.exblog.jp/25269581/
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by sanyo-kansatu | 2016-01-07 14:51 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 12月 26日

ラオックスの不法就労と中国人観光客500万人問題、どう考える?

夕刊をぼんやり眺めていたら、以下の小さな記事が目に入りました。以下、転載します。

ラオックス、書類送検 不法就労させた疑い 大阪府警(朝日新聞2015年12月26日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12136296.html

大阪・ミナミにある免税チェーン店「ラオックス」(東京都港区)の2店舗で中国人留学生を不法就労させたとして、大阪府警は同社と羅怡文(らいぶん)社長(52)を出入国管理法違反(不法就労助長)などの疑いで25日に書類送検し、発表した。

同社は中国人観光客の増加で売り上げを伸ばしており、羅社長は今年の流ログイン前の続き行語大賞「爆買い」で受賞者に選ばれた。羅社長は府警の調べに、「人事管理を徹底せず、責任を感じている」と話しているという。

外事課によると社長は昨年6月~今年9月、大阪道頓堀店(大阪市中央区)と心斎橋筋店(同)で、中国人留学生の男女3人を雇用し、法定時間(週28時間)を超えて働かせた疑いがある。週60時間以上のときもあったという。

府警は10月、大阪道頓堀店で1~8月に中国人留学生の男女3人を法定時間を超えて働かせたとして、当時の店長の男性(50)を出入国管理法違反の疑いで逮捕。男性は処分保留で釈放され捜査が続いている。同社はホームページで25日、「事態を重く受け止め、再発防止に万全の策を講じている」とのコメントを出した。

この記事を見たときの第一印象は、そりゃそうだろうなあというものでした。だって、今年500万人もの中国人観光客が日本に来たのです。そして、その大半は「爆買い」する人たちで、中国系のラオックスに殺到したのですから。人手はいくらでも必要だったでしょう。中国語を話せる日本人なんてほとんどいないといっていいのですから、留学生にアルバイトさせるしかなかったと思います。

この種の摘発を全国的規模で本気にやり始めたら、ラオックスだけではなく、多くの小売店、飲食店がパニックに陥ってしまうことは疑う余地はありません。

今年1月、ラオックスの大阪道頓堀店と日本橋店を訪ねています。

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ラオックス大阪道頓堀店
http://www.laox.co.jp/stores/osaka-dotonbori/
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ラオックス大阪日本橋店
http://www.laox.co.jp/stores/osaka-ss/

日本にありながら、日本人客のまったくいないこの不思議な小売り施設の面白さは、実に多国籍の外国人が訪れていることです。たまたまぼくが訪ねたときには、オレンジの袈裟を着たスリランカのお坊さんのグループが買い物を楽しんでいました。
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昨日、一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の王一仁会長とお話する機会があったのですが、ラオックスのことも話題になりました。王会長が言うには「ラオックスが店を訪れる外国人団体観光客を手配する旅行業者に売り上げに応じたキックバックを支払っていることは、いまでは公然の事実として広く知られているのだが、最近、それが中国でも知られるようになり、中国団体客からラオックスで買い物したくないという声が出ている」のだそうです。キックバックを支払わなければならないぶん、他の家電量販店や免税店に比べて割高になることに彼らは気がつき始めているからです。

もっとも、なぜこんなに多くの中国人観光客が日本を訪れることができるかというと、ラオックスのようなキックバックを支払ってくれる小売店があるから、そのぶん中国で安いツアーが造成できるからでもあるのです。つまり、中国団体客はラオックスに行きたくないなんて虫のいい話はできないはずです。そして、彼らも実はそれはわかっている。だから、王会長の話では、中国団体客は昼間はガイドに従ってラオックスに行くのにつきあうけど、夜ホテルにチェックインしたあと、こそこそドンキホーテに買い物に行くのだそうです。そっちのほうが安いと彼らは知っているからです。

聞けば聞くほどなんだかなあという状況のなか、日本の監督官庁はいろいろあっても、ラオックスのような小売業者に厳しいことは言いにくいでしょう。王会長はこの種の日本のインバウンドが抱える矛盾に満ちた裏話をいつも笑いながら聞かせてくれます。

ですから、今回のささやかな書類送検報道。監督官庁もそうですが、報道する側もどこまでことの次第を理解したうえで報じているのか、興味深く思った次第です。

ラオックスという存在は、訪日中国旅行市場を考えるうえで、欠かせないキープレイヤーであることは間違いありません。今後もウォッチングしていきたいと思います。

新しく新宿にできたLAOXを訪ねてみました(ここは消耗品がおみやげとして販売される店です)
http://inbound.exblog.jp/24791419/

Laoxに行けば“爆買い”中国本土客の欲しいものがすべてわかる
http://inbound.exblog.jp/24187492/

中国クルーズ客専門ドラッグストア「ドラッグオン」を福岡に開店した理由
http://inbound.exblog.jp/24733460/
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by sanyo-kansatu | 2015-12-26 23:52 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 12月 02日

「中国人はこんなに爆買いしてるのに感謝されない」という嘆き

昨日、今年の流行語大賞に「爆買い」が選ばれたことが報じられました。

ユーキャン新語・流行語大賞2015
http://singo.jiyu.co.jp/
【新語・流行語大賞】「トリプルスリー」「爆買い」が受賞、トップテンには「アベ政治を許さない」「SEALDs」も
http://blogos.com/article/147468/

苦笑してしまったのは、「爆買い」の受賞者がラオックスの羅怡文社長だったことです。ちょっとしたブラックジョークのように思えたからです。

それはさておき、先日ある在日中国人からこんな話を聞きました。彼女は黒龍江省ハルビン出身で、すでに来日して20年以上という人ですが、最近になってハルビンから学生時代の友人が日本旅行に来るようになったといいます。中国の内陸部から日本に来るくらいですから、みんな社会的成功者で富裕層だそうです。もっとも、内陸の人たちはお金があっても、北京や上海の人たちのように個人旅行ではなく、安い団体ツアーで日本に来ます。まだ海外旅行はその段階なのです。

それでも、せっかく東京に立ち寄るということで、その在日中国人のKさんはハルビンの友人にホテルに呼び出され、買い物や食事に付き合ったというのです。

ところが、呼び出されたのは木更津でした。中国団体客はツアー料金が安すぎるため、都心で泊まれるホテルが少なく、たいてい八王子や埼玉、千葉など首都圏郊外になります。

オークラ アカデミアパーク ホテル(木更津)
http://www.kap.co.jp/oap/

「ホテルの施設はきれいで良かったけど、木更津まで車で2時間。友人は自分がどこにいるかも首都圏の大きさもわかっていないから、呼び出された側の大変さなど気づいていないのよ。まあそれでも、初めての日本。いい思い出を持って帰ってもらいたいから、木更津のホテルまで東京湾を横断して行ってきたんだけど…」。

結局のところ、木更津くんだりまで行ってやったのは「爆買いのお手伝い」だったとKさんは言うのです。

「友人はとにかく買い物のことしか考えていない。1日だけ自由行動の日があったので、車で木更津のアウトレットまで連れて行った。もう買う買う、これが世間でいう爆買いなんだと初めて知った。買い方が尋常じゃない。なんでも20個単位で買い占める。歯磨き粉でも20個まとめて。私は日本の生活が長いので呆れてしまい、つい皮肉交じりに、そんなに買ってどうするの? と聞いたら、中国では安心・安全が買えない。歯磨き粉だって防腐剤が入っていて、身体によくないの。あなたは日本にいるから、いつでも買えるかもしれないけど、私はいま買っておかないと買えないでしょう、というのよ」。

三井アウトレットパーク木更津
http://www.31op.com/kisarazu/

買い物がすんだら、友人は「神戸牛が食べたい」と言い出したそうです。「私がおごるから、いい店に連れてって」と。でも、木更津周辺で神戸牛がおいしい店なんていきなり聞かれても、わからない。仕方なくホテルの鉄板焼きレストランに行こうとしたら、予約を入れていなかったので入れなかったそうです。

バカのひとつ覚えみたいに「神戸牛」を連呼する友人を見ながら、やるせない思いになったとKさんは言います。

「去年、ハルビンに帰ったとき、大学の同級生に会うと、みんなお金持ちになっていて、不動産や株の話ばかりしている。豊かになったことは良かったと思うけど、日本に来てもがつがつしてばかりで、ちっとも日本のことなんか関心ない。いまの中国人は見かけは豊かになったようだけど、やっぱり欠乏感のようなものがあるのよねえ」。

帰国後、微信で友人に連絡を取り、「木更津を出たあと、どこに行ったの? 印象に残った場所は?」と聞くと、「なんにも覚えていない」と言ったそうです。

「せっかく日本旅行に来ているのに、まったく観光しないで買い物ばかりしていたっていうの。なんでこうなるかなあ…」。そう嘆くKさん。気持ちはわかります。でも、いまの彼らに何を言っても、きっと聞く耳を持たないんじゃないでしょうか。

これが「爆買い」中国人の実態であることは確かです。上海や北京などの若い世代はずいぶん洗練されてきたものの、いまや「爆買い」の主役は中国内陸部の富裕層というわけです。

話を聞いていると、なんとも気の毒に思えてきたので、「きっとあと10年もすれば、ハルビンの人たちも変わって来るんじゃないかな。あの上海人たちでもそうだったのだから」と言うと、Kさんはこんなことを言いました。

「アウトレットに行ったとき、免税カウンターのレジを打つ日本人店員の態度がひどかったのよ。およそ日本人のサービスとは思えない感じで、笑顔ひとつ見せずに嫌そうに仕事しているわけ。こんな態度を見せられたら、日本人なら怒るだろうに。ああ、こんな光景見たくなかった。どうして中国人が日本でこんなに買い物しているのに感謝されないのかなあ」。

まあそんなこともないと思うけど…。Kさんをそうなだめたものの、そうなる理由は、今回の経験で彼女がいちばんよくわかったかもしれません。

皮肉なことに、普段中国でぞんざいな接客を受けている中国人には、その日本人店員の態度もさほど気になるものではなかったのでしょう。

一方、その店員も、少しでも中国語がわかればコミュニケーションの取りようもあるでしょうけれど、1日中、山のような買い物をレジ打ちしていると、本来の日本人のサービス精神を忘れてしまうものなのかもしれません。それは理解できなくもない気がします。難しいですね。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-02 09:23 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 11月 18日

いまや「ニッポンヤスイネ」の時代~今年1~10月の訪日外客1600万人突破!

ぼくの手元に一冊の興味深い写真集があります。

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1999年に刊行された『ニッポンタカイネ(NIPPON EXPENSIVE!)』(メディアファクトリー刊)です。撮影は吉永マサユキさんという写真家で、1990年代に日本で暮らすモンゴル人や中国人、フィリピン人、ベトナム人、パキスタン人、トルコ人など14カ国のアジア人たちのドキュメンタリー作品です。ネットで調べると、2010年に河出書房新社から復刻版が出ていて、以下の関連イベントもあったようです。

写真家・吉永マサユキ「ニッポンタカイネ展」
http://openers.jp/article/9877

ぼくは吉永さんと同世代で、1980年代以降激増した在日アジア人の事情についてはそこそこ詳しいこともあり、同写真集が刊行されるとすぐに購入したことを思い出します。自分のよく知る世界が描かれていて、シンパシーを感じたからです。

さて、本日JNTO(日本政府観光局)による毎月恒例のリリースが公表され、2015 年1~10 月の訪日外国人数の推計値が1631 万人に達し、累計で過去最高を更新したことがわかりました。

訪日外客数(2015 年10 月推計値)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/151118_monthly.pdf

これまで何度か本ブログでも書いてきましたが、今年は45年ぶりに訪日外国人数が出国日本人数を越えることは確実となっています。

言うまでもないことですが、この数年、訪日外国人旅行者が急増している背景に、円安があります。

いまや「ニッポンヤスイネ」の時代なのです。『ニッポンタカイネ』が刊行された約15年前のことを思うと、隔世の感があると思わざるを得ません。いまでは多くのアジアの人たちが円安の日本を訪れ「爆買い」していくからです。

だからといって、今日の状況に至った「失われた20年」をめぐって自虐的、悲観的にになる必要はないとぼくは思っています。逆をいえば、1990年代に移民労働者に過ぎなかった彼らが、経済力をつけ、日本にレジャー消費者として訪れるに至った事実は、我々にとって決して悪い話ではないと思うからです。

『ニッポンタカイネ』が刊行された1999年当時、正直なことをいうと、もうこれからはそんなこと言っても始まらない時代が来るとぼくは先読みしていました。その翌年、中国本土の団体観光客が解禁されることを知っていたからです。この写真集が描く日本とアジアの関係は、すでに1990年代半ば頃から少しずつ変わり始めていたのです。個人的な感覚では、1980年代末から90年代前半、いわばバブル時代の東京の裏面の記録であり、社会のリアルな実態からは少し遅れて出てきた作品だと思ったものです。

繰り返しますが、「ニッポンヤスイネ」という時代は、我々にとってそんなに悪い話ではない。それを活かすかどうかはその人次第。連日のパリのテロ報道を見るたび、周辺の国々が経済成長し、購買力を持つに至るという、いまアジアで起きていることは、ヨーロッパとはずいぶん事情が違うなと思います。

日中の物価が完全に逆転しています(訪日客急増と「爆買い」の背景)
http://inbound.exblog.jp/24162197/
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by sanyo-kansatu | 2015-11-18 20:22 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 11月 12日

中国客の日本での爆買いも米英に比べればささやかといえるかも!?

中国客による「爆買い」が今年の流行語大賞にノミネートされたようです。

ユーキャン新語・流行語大賞2015
http://singo.jiyu.co.jp/

確かに、今年の訪日中国人旅行者の数は、2000年の解禁以降、総数、伸び率ともに過去最高の勢いです。

日本政府観光局によると、2015年1~9月までの訪日中国人数は約384万人で、このままいけば年間で500万人を突破すると見られています。訪日客全体も約1449万人と増えていますが、伸び率を見ると中国客の勢いが他を圧しています。

訪日外客数(2015 年9 月推計値)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/151021_monthly.pdf

さらに、今年7~9月の訪日中国人の旅行消費額は4660億円(全体の46.6%)と半数近くを占め、1人当たりの平均消費額も28万788円とトップです。こうなると、中国客の「爆買い」が流行語大賞にノミネートされるのも当然かもしれません。

訪日外国人消費動向調査平成27年7-9月期結果
~ 1四半期で初めて1兆円を突破!7四半期連続で最高値を更新~(2015年10月21日)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000263.html

では、ここで単純な掛け算をしてみましょう。すなはち、年間を通じた訪日中国人の旅行消費額の(ものすごくアバウトですが)推計です。

500万人(2015年訪日中国人数見込み)×28 万円(1人当たりの平均消費額)=1.4兆円

※実際に、観光庁の推計でも、今年1~9月の訪日中国人の旅行消費額はすでに1兆1016億円に達しているようです。

これはなかなかすごい数字といえます。ここで言えるのは、「爆買い」は、彼らの日本およびメイドインジャパンに対する信認の表れであることです。

こうしたことから、「2015年度の訪日外国人客消費が3兆円規模になると予想されるので、訪日外国人客の消費たる「爆買い」が輸出の4パーセント余りを占めることになり、輸出不振の一部を補う構図になるとも予想される」という指摘も出てきます。「訪日中国人旅行者は日本を救う」式のことを言い出す人がまたぞろ現われてくるかもしれませんね。

訪日消費、年3兆円超へ 7~9月、客数・金額とも最高
円安・免税拡大追い風 中国客頼み、持続力懸念も (2015/10/22 日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGKKASDC21H08_R21C15A0EA2000/

ところで、せっかくの景気のいい話に水を注すようで申し訳ないのですが、こうした「爆買い」現象の背景について少し別の視点から冷静に考えてみたいと思います。というのも、今年の秋、中国政府は米英両国に対して「ボーイング300機購入」(価格は計約380億ドル(約4兆5663億円))、「初の原発受注」(投資額は約400億ポンド(約7.3兆円)を立て続きに表明したからです。

「「我が国には13億人の人口がある。5年後には10兆ドルの商品を米国から輸入し、対外投資は5000億ドルを超える」。習氏は22日、中国の地方政府や米国の州のトップが集まる会合で中国の経済規模の大きさを強調した」。

習氏訪米「13億人市場」アピール ボーイングから300機(2015/9/23 日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM23H3L_T20C15A9FF1000/

「英国を国賓として訪問している中国の習近平(シーチンピン)国家主席は21日、キャメロン英首相と会談し、英国での原発新設計画に中国企業が参加することなど、経済関係を強化することで合意した。ロイター通信によると、キャメロン氏は会談後の会合で、両国の企業の間などで結ばれる投資や貿易の規模が総額約400億ポンド(約7・3兆円)になると語った」。

英国、中国製原発導入へ 英中首脳が合意、欧米で初(2015年10月22日 朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASHBQ21L1HBQUHBI004.html

こうした米英に対する破格な「爆買い」表明に比べると、日本での中国人の爆買いなんて、実はささやかすぎるといえるかも!?  そう思わざるを得ないところがあるのです。1.4兆円という推計は、年間を通じて全国のインバウンドに関わる官民を挙げた膨大な関係者の営為による総額なのだとしたら、なおさらです。

だから、こんなことも思います。なぜ中国は米英に対してここまでやるのだろう? また今年日本にこれほど多くの中国客が訪れた理由には何があるのだろう?

前者の問いについては、あとで触れますが、「新型大国関係」や人民元の国際化というキーワードで説明できるのでしょう。一方、後者の問いに対する日本政府観光局による公式な見解としては、円安という基調要因を除くと、以下の3点が指摘されます。

①今年1月の中国人に対する観光ビザの緩和措置
②中国側の訪日路線の積極的な拡充
③中国発クルーズ船の大量寄航

ただし、これらはあくまで表向きの論点といえます。確かに今日の結果を生んだ直接的な背景には間違いないのだけれど、もう少し長い目で見て、なぜ2015年にこれほど多くの中国客が日本を訪れ、「爆買い」することになったのか。その点について、ぼくはこう考えています。

これまで中国政府は外交上に使えるカードのひとつとして訪日客をコントロールしていました。尖閣問題が起きたときは、さまざまな手段を通じて訪日客にストップをかけ、震災が起こると、今度はちょっと無理してでも訪日客を送り込もうと、温家宝さんまで来日しました。反日デモなどで悪化した中国の好感度を上げるためには効果があると考えたからでしょう。

もともと中国政府は自国民の日本での「爆買い」を苦々しく思っていたはずです。なぜ自国で買わず、わざわざ海外で消費するのか。これは内需を拡大したい中国にとって愉快ではない話です。それでも現状を許しているのは理由があります。それは米英の場合と同様、日本に対する「お土産」みたいなものだと考え、割り切っているからだと思うのです。

もちろん個々の中国客がそんなことを考えて行動しているわけではありません。国内より海外の方が安くていいものが買える。合理的な判断ゆえの消費行動にすぎません。しかし、中国政府はそれをふまえ、訪日客の動向がいかに自国に有利に働くかを鑑みながら、さまざまな調整の手を加えているのです。そんな話、にわかには信じられないという人もいるかもしれませんが、実はこうした観光を政治の道具とする発想とその実践は、大学の観光学のテキストに載っていてもおかしくないほど、社会主義国ではきわめてスタンダードなものです。ではなぜそんなことをするのか?

それは中国の自己実現のためだと言っていいでしょう。それを「覇権」の拡大と呼ぶかどうかはともかく、「中華民族の復興」を掲げる現政権にとって、それぞれの対象国にとって最も効果的と思われる「お土産」を手渡すことで、なんとか自己実現にこぎつけるための環境を整えたいと考えているのだと思います。それは古来中国の冊封体制に見られた行動様式の延長線上にあるものではないでしょうか。

中国が多くの自国民を観光客として送り込み、「爆買い」させることは、いい意味でも悪い意味でも、情緒的なところのある日本人にとって歓迎こそすれ、それほど抵抗なく受け入れやすいことだと思います。日本には「ボーイング300機」のような大量買いつけに対応できるものは提供できなさそうにない。そのぶん、家電量販店やドラッグストアで販売される日用消耗品の品質の高さには定評がある。またコツコツみんなで積み上げていくような商売のやり方や「おもてなし」を好むという点でもうまくマッチしていると思います。つまり、中国政府はここ数年の対日政策の試行錯誤を通じてそれがわかったことが、今年の訪日中国客急増の結果にも反映しているといえるのではないでしょうか。

ずいぶんうがちすぎな指摘に見えるかもしれません。でも、この15年間の訪日中国旅行市場の変遷を眺めてきた実感として、ぼくはそう思うのです。

ただし、だからといって「爆買い」を懐疑的かつネガティブに捉えるべきだ、などと言いたいのではありません。国際関係というのは、たいていこのような駆け引きの中で存在しているものだからです。「爆買い」現象の背後にもいろいろ事情があるので、それをふまえた上で、うまく活かしていけばいいのだと思います。

では、来年以降この勢いは続くのでしょうか。

一部のメディアによると、中国経済の減速によって「爆買い」はそんなに長くは続かないかもしれないと指摘されています。

「『爆買い』効果でウハウハできるのは、せいぜい今年いっぱいまでと考えておくべきです。これから中国経済の悪化が進むことを思えば、中国人観光客が急減することはないにしても、『並買い』に変わるでしょう」(北京の日本大使館関係者)。

経済の死角
中国の製造業が崩壊する日
〜もはや対岸の火事ではない。中国発の恐慌に備えよ!(2015年11月11日 週刊現代)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46246

しかし、最近中国の内陸部を訪ねたぼくの個人的な見解としては、伸び率は今年のような勢いを見せるとは思いませんが、もうしばらくは「爆買い」は続くと考えます。

確かに、マクロ的にみれば、中国経済は減速しているのでしょうが、だからといって年間約500万人の訪日数も、総人口からすると0.4%にも満たない規模でしかないのです。桁違いの人口を有する中国において、この程度の数はもとよりたいしたことではないといえますし、また何より富の偏りの大きい社会だけに、海外旅行客ができる層は比率は低くても、それを全土からかき集めるだけでも相当なボリュームになるのです。さらにいうと、中国には公的統計に捕捉されない膨大なアンダーグラウンド経済(「未観測経済」というそうです)の存在があります。一般に中国客の「爆買い」の原資は、表向きの収入ではなく、「未観測経済」であると考えた方がよさそうです。このように中国の動向を占うには、我々とはあらゆる尺度が違うことを知らなければなりません。

そもそもいつまで続くかという話も、何を「爆買い」と呼ぶかによります。これは、我々の事情というより、中国側の事情でかなりの部分が決まるため、これからも観察を続けていく必要があります。

なぜ中国人は訪日旅行のいちばんの印象は「干净(きれい、清潔)」だというのか?
http://inbound.exblog.jp/25063841/

株価暴落は中国の訪日旅行市場にどんな影響を与えるか(前編)AISO王会長、大いに語る
http://inbound.exblog.jp/24963833/

“爆買い”はいつまで続くのか?(あるドラッグストア関係者の見方)
http://inbound.exblog.jp/24470851/

日中の物価が完全に逆転しています(訪日客急増と「爆買い」の背景)
http://inbound.exblog.jp/24162197/
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by sanyo-kansatu | 2015-11-12 17:39 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 10月 04日

平壌には「消費者」と呼びうる人たちがいるらしい(第11回平壌秋季国際商品展覧会にて)

2年ぶりに平壌に来て、気がついたことがふたつあります。

いずれも表面的な見聞にすぎませんが、ひとつは市内を走る車が増え、一部の交差点で長い信号待ちの車列ができていること。もうひとつは、どうやら平壌に「消費者」と呼びうる人たちがいるらしいことです。

これまで咸鏡北道や羅先特別市などの地方都市ばかり訪ねていたのと、以前に平壌に来たときも、この国特有の「見せたいものだけ見せ、見せたくないものは見せない」管理された観光で、市民生活に触れるチャンスなどなかったせいか、今回あらためて平壌は北朝鮮国内ではきわめて特殊な場所だと感じました。

それを実感したのが、9月21日~24日に三大革命展示館で開かれた第11回平壌秋季国際商品展覧会(The 11th Pyongyang Autumn International Trade Fair)でした。

この展覧会は、朝鮮貿易省所属の朝鮮貿易国際展覧社が主催する商品展示即売会で、春と秋の年2回開催されます。最初の開催は1998年春で、2005年から春秋年2回の開催となりました。出展しているのは、地元朝鮮企業や中国をはじめイタリア、ポーランド、タイ、マレーシア、シンガポール、台湾などの海外企業です。ジャンルは幅広く、工作機械や設備、自動車、電子・電気製品、アパレル関連やバッグ、靴、調理器具などの軽工業日用品、食品、医薬品、健康食品などさまざまです。

詳細については、これまで開催された展覧会の各種メディアの報告や中国の旅行会社による視察ツアーの告知などがネットでも見られるので、参考になると思います。

北朝鮮でカップルに人気の「意外な商品」
なぜ平壌で「消費ブーム」が起きているのか(東洋経済オンライン2015年6月2日)
http://toyokeizai.net/articles/-/71575
北朝鮮に消費ブームがやって来た
副業で外貨稼ぎ、乗馬から自動車購入まで(東洋経済オンライン2014年11月5日)
http://toyokeizai.net/articles/-/51829
春の平壌国際貿易商品展示会観覧ツアー(大連富麗華国際旅行社)
http://www.dllocal.com/travel/item157.html

何より面白かったのは、平壌市民が大挙して買い物のために訪れていたことです。この展覧会は商品即売会場でもあるからです。

以下、会場と平壌市民の様子を見ていきましょう。

この巨大な地球儀が三大革命展示館のランドマークですが、展示即売会場はその奥にあります。
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これが展示即売会場です。
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中に入ると、それはものすごい人ごみです。
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2階に上がって、展示ブースを眺めると会場全体はこんな感じです。
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各種ブースに群がる女性の姿が目につきます。
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そこで、会場内の女性客を中心に見ていきましょう。彼女たちはアパレル関連やバッグ、キッチン、日用品などのブースを中心に押しかけています。

派手な柄物や色鮮やかなプリントのブラウス、ワンピースなどを身に付け、手にはバッグを抱える女性が多いです。これらはおそらく中国製でしょう。ここでの熱気は、市民が食べるためだけでなく、おしゃれや生活を快適で豊かにするための消費に目覚めたという意味で、日本の昭和30年代に近い感じでしょうか。
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彼女たちのファッションセンスは、いま日本を訪れている中国内陸出身の観光客のおばさんに近い気がします。
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炊飯器を手にしたお母さんに連れられた娘はこぎれいな白いシャツを着て、頭に飾りを付け、黒い靴を履いています。
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なかにはこんなホットパンツ姿の女性もいます。
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館内で床に座って“戦利品”を広げ、仲間と物色しているおばちゃんたちもいます。訪日中国人観光客がドンキホーテの前でやってるのと同じ構図に見えます。
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こうしてみると、どんな企業が出展していたのか気になりますよね。出展企業のリストは入場料40元を支払った際、手渡されたので、今度時間があったら分析してみようと思います。

会場の外も見てみましょう。

皆さん、いろんな“戦利品”を手にしています。これが他の国であれば、おばさんたちに「何買ったんですか?」とガイドに通訳させて聞くところですが、そんな当初からの予定のない市民との接触は許されるものではないのが残念です。彼らは我々の行動を逐一上部に報告しなければならないからです。
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ベビーカーを押して買い物に来たお母さんなど、子連れもけっこういます。
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これは家庭用マッサージ器でしょうか。両手に荷物をぶらさげた女性の姿は、どこか“爆買い”中国人観光客の姿を連想させます。とはいえ、実際には大半の市民はそれほどの懐具合であるはずはなく、ささやかな買い物を楽しんでいるように見えました。
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現地ガイドの女性の話では、「この展覧会で売られる商品にはニセモノが少ない」と平壌では言われていて、それが人気の理由となっているそうです。彼女も春の展覧会でバッグを買ったとか。つまりは、市場経済化が進む北朝鮮国内でも「ニセモノ」が氾濫している実態があるようです。

会場の周辺は、車でいっぱいです。
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とはいえ、多くの市民はさすがに自家用車で来るというわけにはいかないようで、タクシーやバスを貸し切って来場している人たちもいました。
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これだけの光景を見せられたら、平壌に「消費者」と呼びうる人たちがいることを認めざるを得ません。いったい彼らはどんな人たちなのでしょうか。このような市民の姿は、平壌以外の地方では(一部の特権階層を除き)まず見かけることはないからです。

改革開放に舵を切った1980年代の中国が、最初広東省から経済自由化と外資の導入を進めたことで、他の地方とはまったく異なる都市空間をいち早く現出させたのと似て(その後、上海、北京などの沿海都市、さらには内陸都市も時間差を経て変容していきました)、この国ではまず平壌の都市空間とそこで暮らす人々の生活を変えようとしています。首都を真っ先に変えようという発想は中国にもなかったことを思うと、見かけに比べ北朝鮮は中国より市場経済の誘惑やそれがもたらすであろう影響に対して用心深くないといえるのかもしれません。

いずれにせよ、いまの平壌で起きていることは、北朝鮮のような国にとってだけでなく、アセアンの経済後進国であるラオスやカンボジア、そしてアフリカや南米などの国々と同様、結果的に中国経済の発展が後押ししているといえそうです。

結局、これまで先進国はこれらの国々を相手に援助はできても、同じ土俵で対等に経済関係を取り結び、市場とすることは難しかった。利益が釣り合わないからです。しかし、中国の場合、地方の中小企業の存在があり、彼らは北朝鮮の地元企業と対等とはいえないにせよ、かなり釣り合う形で合弁や投資が行える関係にあるように見えます(本当のところはよくわかりません。以前、丹東で「朝鮮でビジネスして利益を上げるのは簡単ではない」と語る中国人に会ったことがあるからです。彼は売上金の代わりに膨大な数の朝鮮絵画を受け取るほかなく、地元で北朝鮮美術専門の画廊を開いていました)。

実際、出展している中国企業は、東北三省、特に遼寧省や吉林省のローカル企業が多いようです。中国の国有企業や大手がこの国で中小企業と同じことをするのは無理でしょう。中朝の特殊な政治関係もありますし、そもそも経済関係では釣り合わないからです。中国からみれば、北朝鮮一国でもひとつの省より小さな経済体でしかないのです。人口300万人という平壌程度の都市は中国には地方にいくらでもあります。

それでも、これだけの日用品を求める「消費者」がいるわけです。その規模をあまり大きく見積もるのはどうかと思いますが、今後もこうして北朝鮮国内に中国商品があふれることになるのでしょう。地方に行ってもそうですが、この国の人たちの身なりが以前に比べ大きく変わったのは、安価な中国衣料が流通したからです。特に都市部に住む子供たちの身に着けているものは、中国の子供たちとそんなに変わらないスポーツシャツやパンツなど、一見貧困など感じさせません(ただし、足元を見ると、中国の子供はたいていスポーツシューズを履いていますが、こちらの子供はまだ布靴が多いなど、違いがないわけではありませんけれど)。
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こうしてみると、中国の影響力が、これまで援助対象としかみなされていなかった国々の経済を変えていくことに貢献しているという事実は否定できないように思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-04 14:43 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)