ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 01月 07日

4500人の中国クルーズ客が山陰の人口3000人の村に押し寄せ、住民を困窮させたというのは本当か?

昨年7月上旬、こんなニュースがありました。

「鳥取県の北西部、島根県に隣接する境港市。ゲゲゲの鬼太郎の作者・水木しげるさんの出身地としても知られ、商店街には、キャラクターの銅像が立ち並び、妖怪の町として観光客の人気スポットとなっている。

その町におととい、これまで日本に寄港した客船の中で最も大きい、クァンタム・オブ・ザ・シーズが入港した」。

4500人の中国人が来航!地元港は大混乱!(「ウェークアップ!」読売テレビ2015年7月4日)
http://www.ytv.co.jp/wakeup/news/n11081879_main.html

で、何が起きたかというと、「村の人口(3455人)も上回る4000人以上の中国人が訪れて爆買いし、現地住民の生活が一時困窮した」(人民網日本語版)というのです。

日本の村で「食い尽くせ、買い尽くせ!」 クルーズ旅行の中国人4000人が爆買いで「村民困窮」(Focus Asia 2015年7月7日)
http://www.focus-asia.com/socioeconomy/photonews/422797/

中国人「爆買い」で困る鳥取県 ネット民「日本の観光客受け入れ能力が低すぎる」(人民網日本語版2015年7月9日)
http://j.people.com.cn/n/2015/0709/c94659-8918190.html

激増する中国人観光客の影響はこんな形で現れるものなのか…。

この日、境港に寄航した「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」は、世界最大規模の大型クルーズ客船です。ロイヤルカリビアン社というアメリカのクルーズ会社が運営しています。

実は、その5日前、ぼくは博多港で同客船の内覧会に参加していたので、その巨大さは体感済みでした。

6月27日中国発客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」が博多に初入港しました
http://inbound.exblog.jp/24648018/

博多中洲のショッピングモール「キャナルシティ」で中国客が「爆買い」する光景を見ていたので、確かに山陰の小さな村のショッピング施設では大混乱が起きていたのかもしれない。なにしろそんなに大勢の外国客が来店することなんて初めてだったでしょうから。

そんな報道がずっと頭に引っかかっていたので、年末のある日、鳥取県西伯郡日吉津村にあるイオンモール日吉津を訪ねてみました。

JR山陰本線米子駅からバスで30分。田園風景の中にイオンモールが見えてきました。
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イオンモール日吉津
http://hiezu-aeonmall.com/

その瞬間、思いました。「あれっ、話がちょっと違うのでは?」。 

山陰の片田舎にあるとはいえ、そのイオンモールはけっこう巨大な施設だったからです。東館(イオン直営店とドラッグストアなど)と西館(テナント中心)に分かれ、館内は歳末セールでにぎわっていました。地方都市なら全国どこでも同じでしょうが、地元客は車で郊外にあるイオンモールにまとめ買いに来るのです。おかげで米子駅前は閑散としているわけです。
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ネットが報じた「大混乱」の痕跡を探そうと、館内を歩き回ってみました。でも、入り口に1枚の外国語のポスターが貼ってあったのと、表に「免税 Tax-free」の垂れ幕があったくらいで、特になんてことはないのです。
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東館の中央部にサービスカウンターがあり、そこが免税手続きを担当する唯一の場所でした。女性のスタッフに話を聞いてみることにしました。

―今度友人の外国人を連れて買い物に来たいのですが、免税してもらうためにはここに来ればいいのでしょうか(すいません。ウソついてます)。

「はい、そうです。いったんお買い上げいただいた後、パスポートとレシートを持ってこのカウンターに来ていただくことになっています。ただし、お買い上げ金額の条件があります。医薬品やお菓子などの消耗品の場合、5401円以上でなければ適用できません。家電製品の場合は10801円以上です」

―つまり、8%分を差し引いた金額が、それぞれ5000円、1万円以上ということですね。ところで、ここに「免税手続きは1組45分程度」と書いてありますが、免税するのにそんなに時間がかかるものなのですか。

「中国のお客様はとにかく買い物の品数が多いので、すべてチェックしなければなりませんから。でも、だいたい平均して15分くらいです」
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話を聞きながら、これは大変なことだと感じました。どれほどの数の中国客がレジで受け取ったレシートを持ってここに並ぶのだろうか…。ついに本当に聞きたかったことを話すことにしました。

―今年の7月、境港に中国の大型クルーズ客船が来て、こちらで大勢の中国客が買い物したそうですね。1隻4000人以上のお客さんが乗っていたそうです。こちらにも来店されたのでしょうか。

「はい、お見えになりました。でも、イオンは松江にもあるので、そちらにも行かれたそうですから、4000人全員が来たわけではないですけど、大勢お見えになったのは本当です」

―でも、仮に1500人くらい来店されたとして、とても免税手続きに対応することはできなかったのではないですか。もしかして、このカウンターの前は大行列だったとか。

「確かにそうでした。ですから、とても全員の方の免税手続きに対応することができませんでした」

―そりゃあそうですよねえ。

カウンタースタッフの女性はとても素直かつまじめに答えてくださりました。当時の状況がだんだん見えてきました。

どうやらこの感じでは大半のクルーズ客は免税手続きができなかったのではないでしょうか。でも、円安なので、8%の免税のことなど彼らはそれほど気にしなかったに違いありません。そんなことより、買いたいものがどれだけ買えたかのほうが重要だったことでしょう。

―中国の方はどんなものを買い物されていましたか。

「ドラッグストアの商品が多かったです」

そこで、ドラッグストアを訪ねてみました。薬剤師さんがいたので、聞きました。

―7月に中国のクルーズ客船のお客さんが大勢いらしたそうですね。ずいぶん薬が売れたと聞きました。何が売れたのですか。

すると、若い薬剤師はぼくをあるコーナーに案内してくれて、次の話をしてくれました。そこには、外国客向け専用の棚ができていました。
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「いちばんよく売れたのは、目薬の『サンテボーティエ』(参天製薬)。なぜかこちらの安い『サンテFX』ではなく、高いほうを買っていかれます。あとは風邪薬の『パブロンゴールドA』『龍拡散』などです」。
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それらはまさに「神薬」のラインナップでした。なぜ『サンテFX』ではなく、『サンテボーティエ』が買われたかというと、『サンテFX』は「神薬」のリストに選ばれていないからだと考えられます。

まったくもって、世間で言われているとおりのことが、ここ山陰のイオンモールでも起きていたのでした。

おそらくその日は、駐車場にひっきりなしにバスが何十台も現れ、数十人ごとの中国客を下し、1時間ほど「爆買い」して帰っていくという光景が繰り返し見られたのでしょう。でも、だからといって「現地住民の生活が一時困窮」というような話ではなさそうです。日吉津村の人口が約3000人にすぎないことから、中国メディアはウケ狙いで面白おかしく書いたのでしょう。気持ちはまあわかります。

ただし、中国メディアが知ってか知らずか決して書こうとしなかったこともあると思います。日本では、たとえ山陰の片田舎にあるショッピング施設でも、中国人が「爆買い」したくなるような商品がふつうに売られていること。地域住民もごくふつうに車で来て買い物していることです。ここは中国でいえば、都市の規模や格でいうと5線級都市にもとうてい入らない鳥取県西伯郡日吉津村という農村地区であるにもかかわらずです。実は、これが日本と中国のいちばんの違いであるということを。

現地を訪ねてわかったことがあります。域内の主要都市である米子市への合併が周辺の町村で進む中、日吉津村は唯一合併を拒んでいるそうです。理由は、村内に王子製紙米子工場(旧日本パルプ)の一部があるためで、合併してしまうと同社の法人税を明け渡してしまうことになるからです。
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やはり、現地に行ってみないとよくわからないことってありますね。

境港の港湾関係者の話では、2016年は中国クルーズ客船の寄港回数はさらに増えるそうです。

次回以降、境港の関係者に聞いた話を紹介しましょう。
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境港が中国クルーズ船の寄港地に選ばれる理由
http://inbound.exblog.jp/25266871/

鳥取県境港に上陸した海外クルーズ客はどこに行くのか?
http://inbound.exblog.jp/25269581/
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by sanyo-kansatu | 2016-01-07 14:51 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 12月 26日

ラオックスの不法就労と中国人観光客500万人問題、どう考える?

夕刊をぼんやり眺めていたら、以下の小さな記事が目に入りました。以下、転載します。

ラオックス、書類送検 不法就労させた疑い 大阪府警(朝日新聞2015年12月26日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12136296.html

大阪・ミナミにある免税チェーン店「ラオックス」(東京都港区)の2店舗で中国人留学生を不法就労させたとして、大阪府警は同社と羅怡文(らいぶん)社長(52)を出入国管理法違反(不法就労助長)などの疑いで25日に書類送検し、発表した。

同社は中国人観光客の増加で売り上げを伸ばしており、羅社長は今年の流ログイン前の続き行語大賞「爆買い」で受賞者に選ばれた。羅社長は府警の調べに、「人事管理を徹底せず、責任を感じている」と話しているという。

外事課によると社長は昨年6月~今年9月、大阪道頓堀店(大阪市中央区)と心斎橋筋店(同)で、中国人留学生の男女3人を雇用し、法定時間(週28時間)を超えて働かせた疑いがある。週60時間以上のときもあったという。

府警は10月、大阪道頓堀店で1~8月に中国人留学生の男女3人を法定時間を超えて働かせたとして、当時の店長の男性(50)を出入国管理法違反の疑いで逮捕。男性は処分保留で釈放され捜査が続いている。同社はホームページで25日、「事態を重く受け止め、再発防止に万全の策を講じている」とのコメントを出した。

この記事を見たときの第一印象は、そりゃそうだろうなあというものでした。だって、今年500万人もの中国人観光客が日本に来たのです。そして、その大半は「爆買い」する人たちで、中国系のラオックスに殺到したのですから。人手はいくらでも必要だったでしょう。中国語を話せる日本人なんてほとんどいないといっていいのですから、留学生にアルバイトさせるしかなかったと思います。

この種の摘発を全国的規模で本気にやり始めたら、ラオックスだけではなく、多くの小売店、飲食店がパニックに陥ってしまうことは疑う余地はありません。

今年1月、ラオックスの大阪道頓堀店と日本橋店を訪ねています。

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ラオックス大阪道頓堀店
http://www.laox.co.jp/stores/osaka-dotonbori/
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ラオックス大阪日本橋店
http://www.laox.co.jp/stores/osaka-ss/

日本にありながら、日本人客のまったくいないこの不思議な小売り施設の面白さは、実に多国籍の外国人が訪れていることです。たまたまぼくが訪ねたときには、オレンジの袈裟を着たスリランカのお坊さんのグループが買い物を楽しんでいました。
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昨日、一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)の王一仁会長とお話する機会があったのですが、ラオックスのことも話題になりました。王会長が言うには「ラオックスが店を訪れる外国人団体観光客を手配する旅行業者に売り上げに応じたキックバックを支払っていることは、いまでは公然の事実として広く知られているのだが、最近、それが中国でも知られるようになり、中国団体客からラオックスで買い物したくないという声が出ている」のだそうです。キックバックを支払わなければならないぶん、他の家電量販店や免税店に比べて割高になることに彼らは気がつき始めているからです。

もっとも、なぜこんなに多くの中国人観光客が日本を訪れることができるかというと、ラオックスのようなキックバックを支払ってくれる小売店があるから、そのぶん中国で安いツアーが造成できるからでもあるのです。つまり、中国団体客はラオックスに行きたくないなんて虫のいい話はできないはずです。そして、彼らも実はそれはわかっている。だから、王会長の話では、中国団体客は昼間はガイドに従ってラオックスに行くのにつきあうけど、夜ホテルにチェックインしたあと、こそこそドンキホーテに買い物に行くのだそうです。そっちのほうが安いと彼らは知っているからです。

聞けば聞くほどなんだかなあという状況のなか、日本の監督官庁はいろいろあっても、ラオックスのような小売業者に厳しいことは言いにくいでしょう。王会長はこの種の日本のインバウンドが抱える矛盾に満ちた裏話をいつも笑いながら聞かせてくれます。

ですから、今回のささやかな書類送検報道。監督官庁もそうですが、報道する側もどこまでことの次第を理解したうえで報じているのか、興味深く思った次第です。

ラオックスという存在は、訪日中国旅行市場を考えるうえで、欠かせないキープレイヤーであることは間違いありません。今後もウォッチングしていきたいと思います。

新しく新宿にできたLAOXを訪ねてみました(ここは消耗品がおみやげとして販売される店です)
http://inbound.exblog.jp/24791419/

Laoxに行けば“爆買い”中国本土客の欲しいものがすべてわかる
http://inbound.exblog.jp/24187492/

中国クルーズ客専門ドラッグストア「ドラッグオン」を福岡に開店した理由
http://inbound.exblog.jp/24733460/
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by sanyo-kansatu | 2015-12-26 23:52 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 12月 02日

「中国人はこんなに爆買いしてるのに感謝されない」という嘆き

昨日、今年の流行語大賞に「爆買い」が選ばれたことが報じられました。

ユーキャン新語・流行語大賞2015
http://singo.jiyu.co.jp/
【新語・流行語大賞】「トリプルスリー」「爆買い」が受賞、トップテンには「アベ政治を許さない」「SEALDs」も
http://blogos.com/article/147468/

苦笑してしまったのは、「爆買い」の受賞者がラオックスの羅怡文社長だったことです。ちょっとしたブラックジョークのように思えたからです。

それはさておき、先日ある在日中国人からこんな話を聞きました。彼女は黒龍江省ハルビン出身で、すでに来日して20年以上という人ですが、最近になってハルビンから学生時代の友人が日本旅行に来るようになったといいます。中国の内陸部から日本に来るくらいですから、みんな社会的成功者で富裕層だそうです。もっとも、内陸の人たちはお金があっても、北京や上海の人たちのように個人旅行ではなく、安い団体ツアーで日本に来ます。まだ海外旅行はその段階なのです。

それでも、せっかく東京に立ち寄るということで、その在日中国人のKさんはハルビンの友人にホテルに呼び出され、買い物や食事に付き合ったというのです。

ところが、呼び出されたのは木更津でした。中国団体客はツアー料金が安すぎるため、都心で泊まれるホテルが少なく、たいてい八王子や埼玉、千葉など首都圏郊外になります。

オークラ アカデミアパーク ホテル(木更津)
http://www.kap.co.jp/oap/

「ホテルの施設はきれいで良かったけど、木更津まで車で2時間。友人は自分がどこにいるかも首都圏の大きさもわかっていないから、呼び出された側の大変さなど気づいていないのよ。まあそれでも、初めての日本。いい思い出を持って帰ってもらいたいから、木更津のホテルまで東京湾を横断して行ってきたんだけど…」。

結局のところ、木更津くんだりまで行ってやったのは「爆買いのお手伝い」だったとKさんは言うのです。

「友人はとにかく買い物のことしか考えていない。1日だけ自由行動の日があったので、車で木更津のアウトレットまで連れて行った。もう買う買う、これが世間でいう爆買いなんだと初めて知った。買い方が尋常じゃない。なんでも20個単位で買い占める。歯磨き粉でも20個まとめて。私は日本の生活が長いので呆れてしまい、つい皮肉交じりに、そんなに買ってどうするの? と聞いたら、中国では安心・安全が買えない。歯磨き粉だって防腐剤が入っていて、身体によくないの。あなたは日本にいるから、いつでも買えるかもしれないけど、私はいま買っておかないと買えないでしょう、というのよ」。

三井アウトレットパーク木更津
http://www.31op.com/kisarazu/

買い物がすんだら、友人は「神戸牛が食べたい」と言い出したそうです。「私がおごるから、いい店に連れてって」と。でも、木更津周辺で神戸牛がおいしい店なんていきなり聞かれても、わからない。仕方なくホテルの鉄板焼きレストランに行こうとしたら、予約を入れていなかったので入れなかったそうです。

バカのひとつ覚えみたいに「神戸牛」を連呼する友人を見ながら、やるせない思いになったとKさんは言います。

「去年、ハルビンに帰ったとき、大学の同級生に会うと、みんなお金持ちになっていて、不動産や株の話ばかりしている。豊かになったことは良かったと思うけど、日本に来てもがつがつしてばかりで、ちっとも日本のことなんか関心ない。いまの中国人は見かけは豊かになったようだけど、やっぱり欠乏感のようなものがあるのよねえ」。

帰国後、微信で友人に連絡を取り、「木更津を出たあと、どこに行ったの? 印象に残った場所は?」と聞くと、「なんにも覚えていない」と言ったそうです。

「せっかく日本旅行に来ているのに、まったく観光しないで買い物ばかりしていたっていうの。なんでこうなるかなあ…」。そう嘆くKさん。気持ちはわかります。でも、いまの彼らに何を言っても、きっと聞く耳を持たないんじゃないでしょうか。

これが「爆買い」中国人の実態であることは確かです。上海や北京などの若い世代はずいぶん洗練されてきたものの、いまや「爆買い」の主役は中国内陸部の富裕層というわけです。

話を聞いていると、なんとも気の毒に思えてきたので、「きっとあと10年もすれば、ハルビンの人たちも変わって来るんじゃないかな。あの上海人たちでもそうだったのだから」と言うと、Kさんはこんなことを言いました。

「アウトレットに行ったとき、免税カウンターのレジを打つ日本人店員の態度がひどかったのよ。およそ日本人のサービスとは思えない感じで、笑顔ひとつ見せずに嫌そうに仕事しているわけ。こんな態度を見せられたら、日本人なら怒るだろうに。ああ、こんな光景見たくなかった。どうして中国人が日本でこんなに買い物しているのに感謝されないのかなあ」。

まあそんなこともないと思うけど…。Kさんをそうなだめたものの、そうなる理由は、今回の経験で彼女がいちばんよくわかったかもしれません。

皮肉なことに、普段中国でぞんざいな接客を受けている中国人には、その日本人店員の態度もさほど気になるものではなかったのでしょう。

一方、その店員も、少しでも中国語がわかればコミュニケーションの取りようもあるでしょうけれど、1日中、山のような買い物をレジ打ちしていると、本来の日本人のサービス精神を忘れてしまうものなのかもしれません。それは理解できなくもない気がします。難しいですね。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-02 09:23 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 11月 18日

いまや「ニッポンヤスイネ」の時代~今年1~10月の訪日外客1600万人突破!

ぼくの手元に一冊の興味深い写真集があります。

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1999年に刊行された『ニッポンタカイネ(NIPPON EXPENSIVE!)』(メディアファクトリー刊)です。撮影は吉永マサユキさんという写真家で、1990年代に日本で暮らすモンゴル人や中国人、フィリピン人、ベトナム人、パキスタン人、トルコ人など14カ国のアジア人たちのドキュメンタリー作品です。ネットで調べると、2010年に河出書房新社から復刻版が出ていて、以下の関連イベントもあったようです。

写真家・吉永マサユキ「ニッポンタカイネ展」
http://openers.jp/article/9877

ぼくは吉永さんと同世代で、1980年代以降激増した在日アジア人の事情についてはそこそこ詳しいこともあり、同写真集が刊行されるとすぐに購入したことを思い出します。自分のよく知る世界が描かれていて、シンパシーを感じたからです。

さて、本日JNTO(日本政府観光局)による毎月恒例のリリースが公表され、2015 年1~10 月の訪日外国人数の推計値が1631 万人に達し、累計で過去最高を更新したことがわかりました。

訪日外客数(2015 年10 月推計値)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/151118_monthly.pdf

これまで何度か本ブログでも書いてきましたが、今年は45年ぶりに訪日外国人数が出国日本人数を越えることは確実となっています。

言うまでもないことですが、この数年、訪日外国人旅行者が急増している背景に、円安があります。

いまや「ニッポンヤスイネ」の時代なのです。『ニッポンタカイネ』が刊行された約15年前のことを思うと、隔世の感があると思わざるを得ません。いまでは多くのアジアの人たちが円安の日本を訪れ「爆買い」していくからです。

だからといって、今日の状況に至った「失われた20年」をめぐって自虐的、悲観的にになる必要はないとぼくは思っています。逆をいえば、1990年代に移民労働者に過ぎなかった彼らが、経済力をつけ、日本にレジャー消費者として訪れるに至った事実は、我々にとって決して悪い話ではないと思うからです。

『ニッポンタカイネ』が刊行された1999年当時、正直なことをいうと、もうこれからはそんなこと言っても始まらない時代が来るとぼくは先読みしていました。その翌年、中国本土の団体観光客が解禁されることを知っていたからです。この写真集が描く日本とアジアの関係は、すでに1990年代半ば頃から少しずつ変わり始めていたのです。個人的な感覚では、1980年代末から90年代前半、いわばバブル時代の東京の裏面の記録であり、社会のリアルな実態からは少し遅れて出てきた作品だと思ったものです。

繰り返しますが、「ニッポンヤスイネ」という時代は、我々にとってそんなに悪い話ではない。それを活かすかどうかはその人次第。連日のパリのテロ報道を見るたび、周辺の国々が経済成長し、購買力を持つに至るという、いまアジアで起きていることは、ヨーロッパとはずいぶん事情が違うなと思います。

日中の物価が完全に逆転しています(訪日客急増と「爆買い」の背景)
http://inbound.exblog.jp/24162197/
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by sanyo-kansatu | 2015-11-18 20:22 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 11月 12日

中国客の日本での爆買いも米英に比べればささやかといえるかも!?

中国客による「爆買い」が今年の流行語大賞にノミネートされたようです。

ユーキャン新語・流行語大賞2015
http://singo.jiyu.co.jp/

確かに、今年の訪日中国人旅行者の数は、2000年の解禁以降、総数、伸び率ともに過去最高の勢いです。

日本政府観光局によると、2015年1~9月までの訪日中国人数は約384万人で、このままいけば年間で500万人を突破すると見られています。訪日客全体も約1449万人と増えていますが、伸び率を見ると中国客の勢いが他を圧しています。

訪日外客数(2015 年9 月推計値)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/151021_monthly.pdf

さらに、今年7~9月の訪日中国人の旅行消費額は4660億円(全体の46.6%)と半数近くを占め、1人当たりの平均消費額も28万788円とトップです。こうなると、中国客の「爆買い」が流行語大賞にノミネートされるのも当然かもしれません。

訪日外国人消費動向調査平成27年7-9月期結果
~ 1四半期で初めて1兆円を突破!7四半期連続で最高値を更新~(2015年10月21日)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000263.html

では、ここで単純な掛け算をしてみましょう。すなはち、年間を通じた訪日中国人の旅行消費額の(ものすごくアバウトですが)推計です。

500万人(2015年訪日中国人数見込み)×28 万円(1人当たりの平均消費額)=1.4兆円

※実際に、観光庁の推計でも、今年1~9月の訪日中国人の旅行消費額はすでに1兆1016億円に達しているようです。

これはなかなかすごい数字といえます。ここで言えるのは、「爆買い」は、彼らの日本およびメイドインジャパンに対する信認の表れであることです。

こうしたことから、「2015年度の訪日外国人客消費が3兆円規模になると予想されるので、訪日外国人客の消費たる「爆買い」が輸出の4パーセント余りを占めることになり、輸出不振の一部を補う構図になるとも予想される」という指摘も出てきます。「訪日中国人旅行者は日本を救う」式のことを言い出す人がまたぞろ現われてくるかもしれませんね。

訪日消費、年3兆円超へ 7~9月、客数・金額とも最高
円安・免税拡大追い風 中国客頼み、持続力懸念も (2015/10/22 日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGKKASDC21H08_R21C15A0EA2000/

ところで、せっかくの景気のいい話に水を注すようで申し訳ないのですが、こうした「爆買い」現象の背景について少し別の視点から冷静に考えてみたいと思います。というのも、今年の秋、中国政府は米英両国に対して「ボーイング300機購入」(価格は計約380億ドル(約4兆5663億円))、「初の原発受注」(投資額は約400億ポンド(約7.3兆円)を立て続きに表明したからです。

「「我が国には13億人の人口がある。5年後には10兆ドルの商品を米国から輸入し、対外投資は5000億ドルを超える」。習氏は22日、中国の地方政府や米国の州のトップが集まる会合で中国の経済規模の大きさを強調した」。

習氏訪米「13億人市場」アピール ボーイングから300機(2015/9/23 日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM23H3L_T20C15A9FF1000/

「英国を国賓として訪問している中国の習近平(シーチンピン)国家主席は21日、キャメロン英首相と会談し、英国での原発新設計画に中国企業が参加することなど、経済関係を強化することで合意した。ロイター通信によると、キャメロン氏は会談後の会合で、両国の企業の間などで結ばれる投資や貿易の規模が総額約400億ポンド(約7・3兆円)になると語った」。

英国、中国製原発導入へ 英中首脳が合意、欧米で初(2015年10月22日 朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASHBQ21L1HBQUHBI004.html

こうした米英に対する破格な「爆買い」表明に比べると、日本での中国人の爆買いなんて、実はささやかすぎるといえるかも!?  そう思わざるを得ないところがあるのです。1.4兆円という推計は、年間を通じて全国のインバウンドに関わる官民を挙げた膨大な関係者の営為による総額なのだとしたら、なおさらです。

だから、こんなことも思います。なぜ中国は米英に対してここまでやるのだろう? また今年日本にこれほど多くの中国客が訪れた理由には何があるのだろう?

前者の問いについては、あとで触れますが、「新型大国関係」や人民元の国際化というキーワードで説明できるのでしょう。一方、後者の問いに対する日本政府観光局による公式な見解としては、円安という基調要因を除くと、以下の3点が指摘されます。

①今年1月の中国人に対する観光ビザの緩和措置
②中国側の訪日路線の積極的な拡充
③中国発クルーズ船の大量寄航

ただし、これらはあくまで表向きの論点といえます。確かに今日の結果を生んだ直接的な背景には間違いないのだけれど、もう少し長い目で見て、なぜ2015年にこれほど多くの中国客が日本を訪れ、「爆買い」することになったのか。その点について、ぼくはこう考えています。

これまで中国政府は外交上に使えるカードのひとつとして訪日客をコントロールしていました。尖閣問題が起きたときは、さまざまな手段を通じて訪日客にストップをかけ、震災が起こると、今度はちょっと無理してでも訪日客を送り込もうと、温家宝さんまで来日しました。反日デモなどで悪化した中国の好感度を上げるためには効果があると考えたからでしょう。

もともと中国政府は自国民の日本での「爆買い」を苦々しく思っていたはずです。なぜ自国で買わず、わざわざ海外で消費するのか。これは内需を拡大したい中国にとって愉快ではない話です。それでも現状を許しているのは理由があります。それは米英の場合と同様、日本に対する「お土産」みたいなものだと考え、割り切っているからだと思うのです。

もちろん個々の中国客がそんなことを考えて行動しているわけではありません。国内より海外の方が安くていいものが買える。合理的な判断ゆえの消費行動にすぎません。しかし、中国政府はそれをふまえ、訪日客の動向がいかに自国に有利に働くかを鑑みながら、さまざまな調整の手を加えているのです。そんな話、にわかには信じられないという人もいるかもしれませんが、実はこうした観光を政治の道具とする発想とその実践は、大学の観光学のテキストに載っていてもおかしくないほど、社会主義国ではきわめてスタンダードなものです。ではなぜそんなことをするのか?

それは中国の自己実現のためだと言っていいでしょう。それを「覇権」の拡大と呼ぶかどうかはともかく、「中華民族の復興」を掲げる現政権にとって、それぞれの対象国にとって最も効果的と思われる「お土産」を手渡すことで、なんとか自己実現にこぎつけるための環境を整えたいと考えているのだと思います。それは古来中国の冊封体制に見られた行動様式の延長線上にあるものではないでしょうか。

中国が多くの自国民を観光客として送り込み、「爆買い」させることは、いい意味でも悪い意味でも、情緒的なところのある日本人にとって歓迎こそすれ、それほど抵抗なく受け入れやすいことだと思います。日本には「ボーイング300機」のような大量買いつけに対応できるものは提供できなさそうにない。そのぶん、家電量販店やドラッグストアで販売される日用消耗品の品質の高さには定評がある。またコツコツみんなで積み上げていくような商売のやり方や「おもてなし」を好むという点でもうまくマッチしていると思います。つまり、中国政府はここ数年の対日政策の試行錯誤を通じてそれがわかったことが、今年の訪日中国客急増の結果にも反映しているといえるのではないでしょうか。

ずいぶんうがちすぎな指摘に見えるかもしれません。でも、この15年間の訪日中国旅行市場の変遷を眺めてきた実感として、ぼくはそう思うのです。

ただし、だからといって「爆買い」を懐疑的かつネガティブに捉えるべきだ、などと言いたいのではありません。国際関係というのは、たいていこのような駆け引きの中で存在しているものだからです。「爆買い」現象の背後にもいろいろ事情があるので、それをふまえた上で、うまく活かしていけばいいのだと思います。

では、来年以降この勢いは続くのでしょうか。

一部のメディアによると、中国経済の減速によって「爆買い」はそんなに長くは続かないかもしれないと指摘されています。

「『爆買い』効果でウハウハできるのは、せいぜい今年いっぱいまでと考えておくべきです。これから中国経済の悪化が進むことを思えば、中国人観光客が急減することはないにしても、『並買い』に変わるでしょう」(北京の日本大使館関係者)。

経済の死角
中国の製造業が崩壊する日
〜もはや対岸の火事ではない。中国発の恐慌に備えよ!(2015年11月11日 週刊現代)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46246

しかし、最近中国の内陸部を訪ねたぼくの個人的な見解としては、伸び率は今年のような勢いを見せるとは思いませんが、もうしばらくは「爆買い」は続くと考えます。

確かに、マクロ的にみれば、中国経済は減速しているのでしょうが、だからといって年間約500万人の訪日数も、総人口からすると0.4%にも満たない規模でしかないのです。桁違いの人口を有する中国において、この程度の数はもとよりたいしたことではないといえますし、また何より富の偏りの大きい社会だけに、海外旅行客ができる層は比率は低くても、それを全土からかき集めるだけでも相当なボリュームになるのです。さらにいうと、中国には公的統計に捕捉されない膨大なアンダーグラウンド経済(「未観測経済」というそうです)の存在があります。一般に中国客の「爆買い」の原資は、表向きの収入ではなく、「未観測経済」であると考えた方がよさそうです。このように中国の動向を占うには、我々とはあらゆる尺度が違うことを知らなければなりません。

そもそもいつまで続くかという話も、何を「爆買い」と呼ぶかによります。これは、我々の事情というより、中国側の事情でかなりの部分が決まるため、これからも観察を続けていく必要があります。

なぜ中国人は訪日旅行のいちばんの印象は「干净(きれい、清潔)」だというのか?
http://inbound.exblog.jp/25063841/

株価暴落は中国の訪日旅行市場にどんな影響を与えるか(前編)AISO王会長、大いに語る
http://inbound.exblog.jp/24963833/

“爆買い”はいつまで続くのか?(あるドラッグストア関係者の見方)
http://inbound.exblog.jp/24470851/

日中の物価が完全に逆転しています(訪日客急増と「爆買い」の背景)
http://inbound.exblog.jp/24162197/
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by sanyo-kansatu | 2015-11-12 17:39 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 10月 04日

平壌には「消費者」と呼びうる人たちがいるらしい(第11回平壌秋季国際商品展覧会にて)

2年ぶりに平壌に来て、気がついたことがふたつあります。

いずれも表面的な見聞にすぎませんが、ひとつは市内を走る車が増え、一部の交差点で長い信号待ちの車列ができていること。もうひとつは、どうやら平壌に「消費者」と呼びうる人たちがいるらしいことです。

これまで咸鏡北道や羅先特別市などの地方都市ばかり訪ねていたのと、以前に平壌に来たときも、この国特有の「見せたいものだけ見せ、見せたくないものは見せない」管理された観光で、市民生活に触れるチャンスなどなかったせいか、今回あらためて平壌は北朝鮮国内ではきわめて特殊な場所だと感じました。

それを実感したのが、9月21日~24日に三大革命展示館で開かれた第11回平壌秋季国際商品展覧会(The 11th Pyongyang Autumn International Trade Fair)でした。

この展覧会は、朝鮮貿易省所属の朝鮮貿易国際展覧社が主催する商品展示即売会で、春と秋の年2回開催されます。最初の開催は1998年春で、2005年から春秋年2回の開催となりました。出展しているのは、地元朝鮮企業や中国をはじめイタリア、ポーランド、タイ、マレーシア、シンガポール、台湾などの海外企業です。ジャンルは幅広く、工作機械や設備、自動車、電子・電気製品、アパレル関連やバッグ、靴、調理器具などの軽工業日用品、食品、医薬品、健康食品などさまざまです。

詳細については、これまで開催された展覧会の各種メディアの報告や中国の旅行会社による視察ツアーの告知などがネットでも見られるので、参考になると思います。

北朝鮮でカップルに人気の「意外な商品」
なぜ平壌で「消費ブーム」が起きているのか(東洋経済オンライン2015年6月2日)
http://toyokeizai.net/articles/-/71575
北朝鮮に消費ブームがやって来た
副業で外貨稼ぎ、乗馬から自動車購入まで(東洋経済オンライン2014年11月5日)
http://toyokeizai.net/articles/-/51829
春の平壌国際貿易商品展示会観覧ツアー(大連富麗華国際旅行社)
http://www.dllocal.com/travel/item157.html

何より面白かったのは、平壌市民が大挙して買い物のために訪れていたことです。この展覧会は商品即売会場でもあるからです。

以下、会場と平壌市民の様子を見ていきましょう。

この巨大な地球儀が三大革命展示館のランドマークですが、展示即売会場はその奥にあります。
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これが展示即売会場です。
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中に入ると、それはものすごい人ごみです。
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2階に上がって、展示ブースを眺めると会場全体はこんな感じです。
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各種ブースに群がる女性の姿が目につきます。
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そこで、会場内の女性客を中心に見ていきましょう。彼女たちはアパレル関連やバッグ、キッチン、日用品などのブースを中心に押しかけています。

派手な柄物や色鮮やかなプリントのブラウス、ワンピースなどを身に付け、手にはバッグを抱える女性が多いです。これらはおそらく中国製でしょう。ここでの熱気は、市民が食べるためだけでなく、おしゃれや生活を快適で豊かにするための消費に目覚めたという意味で、日本の昭和30年代に近い感じでしょうか。
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彼女たちのファッションセンスは、いま日本を訪れている中国内陸出身の観光客のおばさんに近い気がします。
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炊飯器を手にしたお母さんに連れられた娘はこぎれいな白いシャツを着て、頭に飾りを付け、黒い靴を履いています。
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なかにはこんなホットパンツ姿の女性もいます。
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館内で床に座って“戦利品”を広げ、仲間と物色しているおばちゃんたちもいます。訪日中国人観光客がドンキホーテの前でやってるのと同じ構図に見えます。
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こうしてみると、どんな企業が出展していたのか気になりますよね。出展企業のリストは入場料40元を支払った際、手渡されたので、今度時間があったら分析してみようと思います。

会場の外も見てみましょう。

皆さん、いろんな“戦利品”を手にしています。これが他の国であれば、おばさんたちに「何買ったんですか?」とガイドに通訳させて聞くところですが、そんな当初からの予定のない市民との接触は許されるものではないのが残念です。彼らは我々の行動を逐一上部に報告しなければならないからです。
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ベビーカーを押して買い物に来たお母さんなど、子連れもけっこういます。
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これは家庭用マッサージ器でしょうか。両手に荷物をぶらさげた女性の姿は、どこか“爆買い”中国人観光客の姿を連想させます。とはいえ、実際には大半の市民はそれほどの懐具合であるはずはなく、ささやかな買い物を楽しんでいるように見えました。
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現地ガイドの女性の話では、「この展覧会で売られる商品にはニセモノが少ない」と平壌では言われていて、それが人気の理由となっているそうです。彼女も春の展覧会でバッグを買ったとか。つまりは、市場経済化が進む北朝鮮国内でも「ニセモノ」が氾濫している実態があるようです。

会場の周辺は、車でいっぱいです。
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とはいえ、多くの市民はさすがに自家用車で来るというわけにはいかないようで、タクシーやバスを貸し切って来場している人たちもいました。
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これだけの光景を見せられたら、平壌に「消費者」と呼びうる人たちがいることを認めざるを得ません。いったい彼らはどんな人たちなのでしょうか。このような市民の姿は、平壌以外の地方では(一部の特権階層を除き)まず見かけることはないからです。

改革開放に舵を切った1980年代の中国が、最初広東省から経済自由化と外資の導入を進めたことで、他の地方とはまったく異なる都市空間をいち早く現出させたのと似て(その後、上海、北京などの沿海都市、さらには内陸都市も時間差を経て変容していきました)、この国ではまず平壌の都市空間とそこで暮らす人々の生活を変えようとしています。首都を真っ先に変えようという発想は中国にもなかったことを思うと、見かけに比べ北朝鮮は中国より市場経済の誘惑やそれがもたらすであろう影響に対して用心深くないといえるのかもしれません。

いずれにせよ、いまの平壌で起きていることは、北朝鮮のような国にとってだけでなく、アセアンの経済後進国であるラオスやカンボジア、そしてアフリカや南米などの国々と同様、結果的に中国経済の発展が後押ししているといえそうです。

結局、これまで先進国はこれらの国々を相手に援助はできても、同じ土俵で対等に経済関係を取り結び、市場とすることは難しかった。利益が釣り合わないからです。しかし、中国の場合、地方の中小企業の存在があり、彼らは北朝鮮の地元企業と対等とはいえないにせよ、かなり釣り合う形で合弁や投資が行える関係にあるように見えます(本当のところはよくわかりません。以前、丹東で「朝鮮でビジネスして利益を上げるのは簡単ではない」と語る中国人に会ったことがあるからです。彼は売上金の代わりに膨大な数の朝鮮絵画を受け取るほかなく、地元で北朝鮮美術専門の画廊を開いていました)。

実際、出展している中国企業は、東北三省、特に遼寧省や吉林省のローカル企業が多いようです。中国の国有企業や大手がこの国で中小企業と同じことをするのは無理でしょう。中朝の特殊な政治関係もありますし、そもそも経済関係では釣り合わないからです。中国からみれば、北朝鮮一国でもひとつの省より小さな経済体でしかないのです。人口300万人という平壌程度の都市は中国には地方にいくらでもあります。

それでも、これだけの日用品を求める「消費者」がいるわけです。その規模をあまり大きく見積もるのはどうかと思いますが、今後もこうして北朝鮮国内に中国商品があふれることになるのでしょう。地方に行ってもそうですが、この国の人たちの身なりが以前に比べ大きく変わったのは、安価な中国衣料が流通したからです。特に都市部に住む子供たちの身に着けているものは、中国の子供たちとそんなに変わらないスポーツシャツやパンツなど、一見貧困など感じさせません(ただし、足元を見ると、中国の子供はたいていスポーツシューズを履いていますが、こちらの子供はまだ布靴が多いなど、違いがないわけではありませんけれど)。
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こうしてみると、中国の影響力が、これまで援助対象としかみなされていなかった国々の経済を変えていくことに貢献しているという事実は否定できないように思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-04 14:43 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 08月 18日

台湾のドラッグストア研究家の鄭世彬さんがWBSに出演しました

今年の春先、ある台湾の作家に出会いました。鄭世彬さんという日本の医薬品やコスメの研究家で、台湾で多くの関連書籍を上梓しています。彼の経歴やこれまでの活動については、以下のエントリーで紹介しています。

台湾のドラッグストア研究家、鄭世彬さんと知り合う(2015年2月27日)
http://inbound.exblog.jp/24182824/
台湾で売れてる日本のドラッグストア購入ガイドが面白い(2015年4月1日)
http://inbound.exblog.jp/24310398/
台湾で日本のクスリと美容商品が人気の理由(2015年4月2日)
http://inbound.exblog.jp/24314372/
日本ドラッグストアショーは面白くてタメになるイベントでした(2015年4月3日)
http://inbound.exblog.jp/24318021/
これはやばい!? 日本にはおかしな中国語表示があふれている(2015年4月17日)
http://inbound.exblog.jp/24370756/

仕掛け人が激白!「爆買い商品はこうつくれ」(プレジデント2015.6.1)
http://inbound.exblog.jp/24486630/

その鄭世彬さんが8月10日のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」に出演しました。
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爆買いの新定番“神薬”
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/feature/post_95333

「今、中国人観光客に一番人気の土産物が「神薬=かみやく」。日本で一般的に売られる市販薬がこう呼ばれています。ブームのきっかけは、日本のドラッグストアで販売している化粧品や薬を紹介したガイドブック。中国では日本で絶対に買うべき薬として「12神薬」が紹介されています。福岡にある免税ドラッグストアでは、連日中国人観光客が市販薬を「爆買い」していきます。小林製薬は、「神薬」効果で、液体絆創膏「サカムケア」が去年の5倍以上売れていて、インバウンド需要への対応を強化しています。「神薬」ブームの火付け役は、台湾のドラッグストア研究家・鄭世彬さん。来日した鄭さんは10社の日本企業や自治体などと面会しました。外国人ならではの目線で、中国や台湾の観光客の好む商品の販売方法などを提案。今後も、著書などで日本の優れた商品が誤用されないように伝えたいとしています」。

まだ彼と知り合って半年もたたないのですが、どんどん活躍の場を広げていく様子がとてもうれしいです。こういう方には、もっと日本のためにもがんばってもらいたいし、こちらもできる限り応援したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-18 14:25 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 08月 15日

新しく新宿にできたLAOXを訪ねてみました(ここは消耗品がおみやげとして販売される店です)

今年6月6日、新宿にLAOXがオープンしています。

LAOX新宿本店
http://www.laox.co.jp/stores/shinjuku/

中国人ツアー客に限らず新宿は多くの外国人観光客が訪れる場所ですから、当然LAOXはいつか出店してくるだろうと思っていました。場所は伊勢丹の向かいのJTBの入っている同じビルの中です。

今日の午後、新宿三丁目を友人と歩いていて、時間があったので、中を覗いてみることにしました。
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店舗はビルの5階~8階の4フロアです。入り口からエスカレーターで5階まで上がることになります。なんとなく一般の日本人は入りにくい雰囲気です。
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各フロアの構成は以下のとおりです。
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5階は時計や宝飾関係。
6階は化粧品や医薬品、食品など。
7階は家電用品。
8階はブランド品。

6階には、コーセーの雪肌精や花王のメリーズなどの人気定番商品が置かれています。
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またこのフロアにはハラル食品の小さなコーナーもありました。
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キティちゃんのゴーフレット(焼き菓子)もハラル食品だそうです。館内にはムスリム客用の礼拝コーナーも設置されています。なんでも販売スタッフの中にムスリムもいるそうです。
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7階では、炊飯電気釜と温水洗浄便座が山積みされていました。
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これが8階です。ラオックス初の自社アパレルブランド「ORIGAMI」のショップもあります。カフェスペースも併設しています。

オンワードHDが免税店・ラオックスと新会社設立、"メイド・イン・ジャパン"のアパレルをグローバル展開
http://fashionmarketingjournal.com/2015/06/ONWARD-LAOX.html
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店内は閑散としていました。銀座や秋葉原、そして九州のLAOX博多が中国客であふれていたのと比べると、ちょっと意外です。

中国クルーズ客は博多に上陸後、どこへ行くのか?
http://inbound.exblog.jp/24731238/


理由は店の前にバスを停めることができないからでしょうか。銀座や秋葉原のLAOXの店舗の前にはたいていバスが停まっています。店の前で客を降ろすためですが、新宿では無理です。中国ツアーバスの路駐スポットとなっている新宿5丁目からは徒歩3分の近さなので、来店するのにそれほど苦労はなさそうです。ただし、歩道もそれほど広くないので、団体客には利用しにくいかもしれません。

店内にたまたま4人組の欧米の個人客が来店していました。彼らは何かを購入しに来たのでしょうが、5~6階ではさっとフロアを見るだけで、売り場に行く気はなさそうです。彼らにすれば、免税店でおむつや化粧品、医薬品などのような日用品をおみやげに買うという発想がないからです。そもそも旅先で消耗品を帰国後のために山のように買うという消費行動は中国客特有のものだからです。

8階では、浴衣などが当たる抽選会をやっていました。
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https://www.laox.co.jp/cn/laoxinfo/
Laox信息 2015.07.31 纳凉之旅:穿浴衣去哪儿?

こういうキャンペーンはスケジュールの決まった団体客には利用できず、個人客しか楽しめません。

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そういう意味では、新宿の真ん中にずいぶん特殊なショッピングスポットができたものだとあらためて思ってしまいました。もちろん、周辺のドラッグストアや家電量販店、そして伊勢丹でも外国客の買い物が増えています。ただし、それらの店とここが違うのは、中国人が旅先で日用的な消耗品をおみやげとして大量に買うという消費行動をとることと、彼らの海外ツアーがキックバックスキームに支えられているというふたつの条件が前提となって成立していることです。

とはいえ、LAOXもそのスキームだけに頼るのではなく、急増するさまざまな国籍の個人客を取り込みたいと考えているはずです。ムスリム対応もその布石なのでしょう。その試金石となるのが新宿出店なのかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-15 17:59 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 07月 28日

中国クルーズ客専門ドラッグストア「ドラッグオン」を福岡に開店した理由

今年50万人の中国クルーズ客が押し寄せることになっている福岡で、LAOXに負けじとドラッグストアを開店した地元企業が現れています。

今年2月に開店したドラッグオン福岡(株式会社ケアルプラス)で、場所は福岡空港の裏手の住宅街にあります。
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ドラッグオン福岡(訪日外国人観光客インバウンド対応型大型免税ドラッグストア)
https://www.facebook.com/drugonfukuoka

今年上半期、中国客の“爆買い”のターゲットは、ドラッグストアで販売される日本の家庭常備薬や化粧品、健康・美容商品だったことは知られていると思います。当然、クルーズ客の購入ニーズはそこに集中します。

社長もビックリ! 「爆買い」で売れまくる日本の“神薬”
http://www.iza.ne.jp/topics/world/world-7309-m.html

だったら、誰かがその受け皿をつくらなければ…。すべてをLAOXに持っていかれてはたまらないし、もしそうなってしまうと、福岡の人たちはこう思うことでしょう。「所詮、中国人は中国人の店でしか買わない。それなら、我々には関係ない。勝手にすればいい」。

こうしたことから、福岡の人たちは現在のクルーズラッシュをどこかクールに受け流しているという声もあります。

その一方で、「せっかくこれだけ多くの人たちが福岡に来てくれるんだから、彼らのニーズに応えて儲けさせてもらおうじゃないの」。そう考える地元企業が出てきてもおかしくないでしょう。それがドラッグオン博多だというのです。

クァンタム・オブ・ザ・シーズが寄港する日の午前中、ドラッグオン博多を訪ねました。福岡空港からタクシーで15分近く走った場所にその店はありました。店頭に「热列欢迎皇家加勒比海洋量子号游轮贵宾」(ロイヤル・カリビアン社クァンタム・オブ・ザ・シーズのお客様を熱烈歓迎します)と書かれた垂れ幕が掲げられていました。
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店内にはまだクルーズ客は現れていませんでしたが、陳列される商品や中国語簡体字オンリーのポップなどを見る限り、そこは日本のドラッグストアとは思えません。
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昨年秋に中国のネット上で流通した「神薬12種」(日本で買うべき家庭常備薬リスト12種)をまとめた棚もあります。
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日本に行ったら絶対に買うべき12の“神薬”とは?
http://www.recordchina.co.jp/a96011.html

棚の上にはそれぞれのクスリに関する詳しい解説もあります。
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中国客を意識したPM2.5対策商品の棚もあります。
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この店の人気商品のラインナップも。よく中国客は事前に日本で買うべきものをリストにしているといわれますが、クルーズ客は消費が進んだ上海の人たちばかりではなく、内陸の人も多いので、店内には彼らが何を買うべきかについて懇切丁寧に情報提供されています。
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昨年10月以降、クスリなどの消耗品も外国客には免税扱いとなったことから手続きに関する解説です。
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そして、これがこの店の最大の特徴、店員のほとんどは中国人です。これでLAOXと同様に、大量のクルーズ客の受入を可能としたのです。
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ドラッグオン博多については、地元テレビ局のRKB毎日放送で平日の夕方に放映されている情報番組「今感テレビ」の中で紹介されていました。
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店内では、6月中旬に放映された「フクオカの外国人観光客 最新の人気店は免税ドラッグストア」が流されていました。

フクオカの外国人観光客 最新の人気店は免税ドラッグストアhttp://youtu.be/H6LoH61BbTo

この番組では、中国客の人気商品のランキングを伝えていました。

まず3位から。「サンテFXネオ」(参天製薬)。
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2位は「龍角散ダイレクト スティックタイプ」(龍角散)。
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そして1位は「液体ばんそうこう リュウバンS」(大木製薬)。
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この番組を中国客向けに編集した映像には音声がなく、簡体字の字幕が付いていました。それをみると「(中国人)中国国内商品不信任(中国人は国内商品を信用していない)」という番組内の解説コメントも簡体字訳されていました。確かにそれは事実なんですが、はっきり書くものですね。
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さて、同店の関係者にも話をうかがいました。以下、満園昌嗣副社長とのやりとりです。

―こちらの店をオープンされた経緯をお聞かせください。

「博多にはすでに9年前から中国のクルーズ船が寄港していたが、一般の福岡市民とクルーズ客が触れ合う機会は少なく、いわば彼らに場所貸ししているようなものだった。2012年キャナルシティにLAOXができると、クルーズ客は一気に押し寄せるようになった。

とにかく中国客は買い物がしたい。だが、一度にバス何十台ものお客様が来て対応できる店はLAOXしかなかった。それともうひとつはキックバックの問題がある。LAOXはクルーズ客を手配したランドオペレーターやガイドに自分の連れてきた客の売上に応じてキックバックを払う」。

―それは飛行機を利用した中国の団体ツアーの特徴ですが、クルーズ客も同じ構造にあるわけですね。

「そうしないと中国で安い料金のツアーを催行できないからだが、逆に安くしているから、これほどクルーズ市場が急拡大した。もし日本で彼らを相手に商売しようとしたら、この構造に合わせるしかない。つまり、LAOXと同じようにキックバックを支払うということだ」。

―いつごろから開店準備を始めたのですか。

「2014年の9月だ。とにかく中国のスピードは速いので、こちらもそれに合わせないとやっていけないところがあった」。

―そして、今年2月にオープン。クルーズ客はバスで来るから、市内に店舗を置かなくてもいいわけですね。実際のクルーズ客の買い物の様子を見て何か特徴がありますか。

「ひと口にクルーズ客といっても、ロイヤル・カリビアン社のような豪華客船の場合と中国資本の船で4泊5日のツアー代が2000元というような安いものある。客層はまったく違い、販売単価も全く違う。またバスによって旅行会社が違うので、客層も違う。もはやクルーズ客には上海人はほとんどいないといっていいかもしれない。多くは華中エリアの浙江省や江蘇省だが、最近は湖北省や四川省といった内陸からの団体が多くなった」。

―どんな商品をどれくらい買っていくのでしょうか。

「ふつうは1人1~3万円くらいだが、高い客だと一度に50万円お買い上げということもある。健康食品やサプリを1年分。498円の目薬を30個といった感じだ。

中国客は「神薬」のようにネットで流れた情報や口コミを頼りに買いにくる。そして大量購入する。となると、品揃えや在庫の考え方も、一般のドラッグストアとは店づくりも含め、変えなければならない。地元向けの店では、1商品在庫は5~6個でいい。多品種少量が基本だ。しかし、クルーズ客が来ると、1商品が1日で1000~2000個売れる。つまり、ここでは棚に置く商品を絞り込み、在庫を多く用意する必要がある。いまこの店では1200アイテムくらいに絞り込んでいる。一般の日本の店の10分の1だが、在庫は豊富に置いている。

中国客相手の商売は、彼らが欲しいものだけ用意するしかない。選択肢をなるべく減らさないと、在庫がふくれ上がるからだ。そして、最も重要なのが、店にどの商品を置くか。4月から上海事務所を置いて、現地で中国国内のSNSなどを通じて売れ筋商品のマーケティングを行うようにしている」。

―なるほど、このビジネスモデルだと、彼らが何を買いたいか事前につかんでおかないと在庫を抱えることになる。情報収集が最も重要といえるんですね。ところで、このビジネスの今後の展望についてどうお考えですか。

「はっきり言ってこのビジネスが10年続くとは考えていない。とにかく中国の変化のスピードは速いので、3~4年は続くかもしれないが、常にその先を考えておかなければならない。今後は、福岡以外の九州の寄港地にも出店を考えている。4月には長崎にオープンしたが、7月には鹿児島をオープンする予定。

実は、LAOXとは紳士協定を結び、あちらはドラッグストア関連商品を売らないかわりに、こちらも家電には手を出さないという住み分けをしている。もともと地元でクルーズ客専用のドラッグストアを出してほしいという話は中国関係者からずっとあった。彼らも中国客は福岡に来るけど、LAOXでしか買わないという状況は好ましくないと考えていたようだ。地元にも経済効果があるということでなければ、クルーズの受入にも支障をきたすからだ」。

―確かに、東京のLAOXは家電からブランド、宝飾品、クスリまで中国客の買うものはすべて揃えているという感じですが、キャナルシティのLAOXは違うんですね。それにしても、なぜ中国客はこんなに日本のクスリや健康食品を大量購入していくのだと思われますか。

「ひとことでいえば、中国人は自国商品に対する国民総不信任がある。それに加えて、輸入品が高い。関税もそうだが、中国では不動産価格の高騰で小売業が日本のように薄利多売できる環境にはない。流通コストもかかる。そこへきてこの円安。彼らはこんなに安ければ、日本に来て買うのが賢いと考えるようになるのは当然かもしれない」。

いつも思うことですが、中国人の“爆買い”の背後には、なんともいえない不遇なお国事情があるといっていいのです。中国政府もそれを承知しているので、いまのところはクルーズ客の大量送客に目をつぶっているところがあるのかもしれません。

実は、店内には血液検査のコーナーが併設してありました。
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―これは何のためですか。

「確かに、買い物にかけられる時間は限られているが、ここで血液検査をしていただき、その結果を送るので、また日本に来てもらえればと考えている。いまのクルーズ客の博多上陸の様子を見ていて、このやり方が長く続くかどうか疑問はある。なにしろ8時間の上陸で、買い物ばかりでは、ラーメンも食べられない。でも、現状ではそれを言っても仕方がないので、クルーズは次にまた福岡に来てゆっくり過ごしてもらうためのステップと考えるほかない」。

基本的に、中国人の訪日団体ツアーの現状は、クルーズ旅行についても共通していることがよくわかりました。こうした大いなる矛盾をはらみつつも急拡大する中国訪日旅行市場に向き合うには、そして実利を得るには、それらを承知の上で、ひとまず矛盾を呑み込むこと。そして、刻々と変わりゆく市場の行方をにらみ、臨機応変かつスピーディに対応していくという姿勢が必要とされるのだとあらためて思った次第です。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-28 10:13 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 27日

中国クルーズ客は博多に上陸後、どこへ行くのか?

中国からの大型クルーズ客船が今年286回(7月1日現在)寄港する予定という博多港。豪華なクルーズ客船内で楽しんだ中国客も、上陸後は福岡市内にバスで繰り出します。

たいてい早朝に着岸し、夕刻には出発するクルーズの上陸時間は、長く見積もって8時間と言われます。

この間に彼らはどこに行くのか。1日に2隻同時に寄港する日は、100数十台のバスが福岡市内を駆け回ることになるのですが、この寄港地観光の訪問先は、太宰府天満宮と福岡タワー、キャナルシティ博多の3か所が最もポピュラーです。
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まず大宰府の様子を見にいきましょうか。

西鉄大宰府駅の西側に大型バス乗り場があり、何十台ものバスが停車していました。バスを降りたクルーズ客たちは大きなナンバープレートのボードを手にした添乗員について参道を抜け、太宰府天満宮に向かいます。
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首には自分が申し込んだ旅行会社のネームプレートをかけています。バスごとにスケジュールが違うので、道に迷って自分のバスに乗り遅れると大変です。
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参道のお土産屋には中国語のポップがあちこちに見られます。
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境内には中国客以外にも、個人で来たと思われる台湾客やタイ客も多く見られました。
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次に、福岡タワーです。高さ123mの展望台からは博多港全域が見渡せて悪くはないのですが、時間もないせいか、中国客たちはまず上らないそうです。
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で、何をするかというと、タワーを背景に記念撮影をするだけです。
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一応中国語併記の看板もありますが、ここでは買い物することはほとんどなく、近くのヤフオクドームのタウンモールに行くようです。
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この日、福岡市には大型バスがそこらじゅうを走っていました。
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博多港の寄港地観光のメインスポットがキャナルシティ博多です。
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中州にあるこのショッピングモールには大型バスを停めるスペースが十分ないため、周辺はバスで混雑しています。
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キャナルシティ内は中国客であふれています。今年は週に4~5回はこの調子で彼らがやって来るので、地元の人はちょっとびっくりでしょう。
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バスを降りるとみなさん一斉にショッピングモールに向かいます。
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大人から子供、おじいちゃん、おばあちゃんまで、クルーズ客の年齢層は幅広いです。3世代ファミリー旅行も多そうです。

彼らの多くがLAOXの紙袋を手にしています。
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LAOXのある4階に行ってみました。そしたら、すごいことになっていました。
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中国客だらけです。
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店内もそうでした。
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炊飯釜の大量購入コーナーもありました。
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店の外では、買い物予定のない年配の方たちが所在無くベンチに座って家族の買い物を待っていました。
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はてさて、身もふたもない話ですが、LAOXでの買い物が中国クルーズ客の博多寄港地観光のメインイベントなのです。

今年約50万人のクルーズ客が福岡に来る予定ですが、LAOXは大繁盛でしょう。

なぜ中国客がLAOXを目がけてくるのかというと、わりと単純な理由があります。

これだけ大量の中国客の受入可能な家電量販店が他にないということ。ここでは大半の販売員が中国人なのです。

そして、これも身もふたもない話ですが、LAOXで買い物すると、寄港地観光を手配している現地の旅行会社と添乗員に売上に対するキックバックが支払われるからです。

この件については、別の機会に詳しく説明したいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-27 17:00 | “参与観察”日誌 | Comments(0)