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2016年 05月 22日

インド人観光客が増えると、日本のインバウンドはどう変わるだろう?

今朝、ネットで以下の報道を知りました。

観光局、インド事務所開設へ=12億人市場で訪日客誘致(時事通信2016/05/21)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016052100174&g=eco

訪日外国人旅行者の増加に取り組む日本政府観光局(JNTO)が今年度中にインド事務所を開設することが21日、分かった。高度経済発展を続けるインドでは近年、中間所得層が急増。人口12億5000万人を抱え、今後も海外への旅行者が増え続けるとみられるインドを「重点市場」と位置付け、日本の魅力をアピールして観光客誘致に力を入れる。

インド観光省によると、2014年に海外を訪問したインド人旅行者は約1800万人で、10年前の3倍近くに増加。最も多い訪問先としては、サウジアラビアやタイ、シンガポール、米国が90~100万人で上位を争う。

一方、14年に日本を訪れたのは約8万8000人にとどまった。中国(13年で約67万人)や韓国(同約12万人)と比べても「かなり少ない」(日印外交筋)。

日印両国は政治、経済両面で結び付きを強めつつある。その半面、日本へのインド人留学生は15年5月時点で約880人で、訪日観光客と並んで低調だ。外交筋は「両国関係の緊密さに比べ、人的交流は後れを取っている。今後は相互交流を活発化させることがさらなる関係強化につながる」と話す。

以前、インドの旅行会社の人に話を聞いたことがあります。ムンバイの人です。

インド人の日本旅行の訪問地が東京・大阪プラス広島の理由(アセアン・インドトラベルマート2014その2) (2014年6月9日)
http://inbound.exblog.jp/22757002/

彼によると、日本旅行のゴールデンルートは東京、大阪、広島で、東アジアの人たちと比べ、日本に対する認識もずいぶん違うようです。教育もあるのでしょうが、広島の原爆ドーム訪問はたいていツアーコースに入っているそうです。

ちなみに、2015年の訪日インド人は約10万3000人でした。これまで訪日インド客が少なかった背景には、日本への航空運賃の高さがありました。彼らはヨーロッパや東南アジアにはよく旅行に出かけていますが、それは航空運賃が安いからです。

もう6、7年前のことですが、観光庁の主催するトラベルマート(訪日旅行促進のために各国からエージェントを呼んで行う商談会)の海外メディアを集めた記者会見でのある出来事を思い出しました。

※トラベルマートの記者会見とはこういう世界です。以下の話とは関係ありません。
外国人記者説明会(トラベルマート2011 その2)(2011.11.26)
http://inbound.exblog.jp/17093532/

まだ尖閣諸島沖漁船衝突事件(2010年)の起こる前のことで、当時から観光庁は中国市場に大きな期待をかけていました。そこで打ち出されたのは、「中国集中プロモーション」というものでした。

会見場にいたぼくはちょっとびっくりしました。なぜなら、そこには世界各国の記者がいたからです。大きなポテンシャルを持つ中国市場に期待するのは理解できますが、あくまで内輪の話にすべき。中国向けプロモーションに注力するというような話は、なにもそこでするのではなく、中国の関係者だけどこかに集めてすればいいものを……。

実際、記者会見の質疑応答のとき、インドから来た女性記者は「中国の話はわかったが、インドにはどんなプロモーションを考えているのか」と質問していました。彼女がそう思うのも、無理はありません。日本側は「今後いずれ」というような回答でした。

でも、あれから何年もたち、ようやくインドに日本の政府観光局ができるようです。当然、インドの海外旅行市場の調査や研究も始まっていくことでしょう。

インド客が増えると、日本のインバウンドもずいぶん変わっていくことと思います。基本的に英語圏の人たちなので、多言語化の問題はなさそうですが、彼らの文化や習慣など、なかなか独特ですから、最初はいろんな戸惑いもあるでしょう。でも、日本に対する感情は概ね良好な人たちですから、中国や韓国の訪日客に対するような疑心暗鬼や複雑な感情を引き起こすことは比較的少ないと思われます。
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by sanyo-kansatu | 2016-05-22 10:18 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 02月 21日

スプリングジャパン初の国際線(成田・重慶)に乗ってみた(第3ターミナルも初利用)

2月13日、国内LCCのスプリングジャパン(春秋航空日本)が初の国際線として成田・武漢、重慶(14日)線の運航を開始しました。

スプリングジャパンは中国の民営企業でLCCの春秋航空の日本法人です。

成田―武漢(週3便)
IJ1011 成田発10:20-武漢着14:15
IJ1012 武漢発15:15-成田着19:40

成田―重慶(週4便)
IJ1021 成田発9:00-重慶着14:15
IJ1022 重慶発15:15-成田着20:25

スプリングジャパン(春秋航空日本)
http://jp.ch.com/

今回、ぼくは重慶線の初便に乗りました。片道約5時間のフライトでした。

今回成田空港の第3ターミナルを初めて利用しました。第2ターミナルから約600m歩いて移動します。また5分おきにバスが出ていますが、こちらは大回りして行くので10分以上かかります。
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第3ターミナルは、天井の低い簡素なつくりの建物で、陸上競技場のトラックのようなラインが敷かれています。思わず「よーい、ドン!!」と走り出したくなるような気にさせ、面白いです。いかにもLCC専用という感じです。
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それでも、近隣アジアやオセアニア方面へのフライトが充実しています。
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入り口のいちばん手前がスプリングジャパンのチェックインカウンターでした。
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カウンターは「個人」と「団体」に分かれますが、この日は日本からの便ということで、団体は少なめでした。
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チェックインをすませて、出国ロビーに向かう途中にフードコートとショップがあります。さぬきうどんとかハンバーガーとか、空港グルメながらもコストを抑えたラインナップであることが特徴です。
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しかも、隣にベッドとしても使えそうなソファーがあり、実際早朝便を利用するオージーたちは爆睡しています。これもいかにもLCC専用ターミナルっぽい光景でしょう。
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出国手続きをすませ、免税店やお土産ショップを抜けると、「市中免税店引渡しカウンター」があります。ここは今年1月27日にオープンしたばかりの銀座三越店の免税コーナーで購入した商品を受け取れるようになっています。
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市中免税店引渡しカウンター
http://www.naa.jp/jp/press/pdf/20160118-taxfreecounter.pdf

その隣にはムスリム用の礼拝室もあります。
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搭乗ロビーからスプリングジャパンの機体が見えてきました。春秋航空とは違い、B737 だそうです。
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さて、いよいよ搭乗です。初便ということで、すべての乗客にお土産を手渡してくれます。
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機内では、いま同社が企画している「三国志」キャンペーンをPRしていました。重慶や武漢は三国志の舞台のひとつでもあるからです。実は、現地でぼくは4日間滞在したのですが、時間があったので、劉備玄徳らの建国した蜀の都だった成都まで行ってきました。
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ただし、成田便はそれほど席は埋まっていませんでした(帰国便は中国客でいっぱいでしたけれど)。なかなか日本客の取り込みが難しいようです。そもそも日本人はいま中国にあまり行きたがらないから、仕方がないのですけれど。

LCCですから、機内食はないのですが、ここは試しと食事を注文してみました。メニューは数種類あり、親子丼や中華丼、そしてこの写真の牛卵丼などで、900円。ふつうに考えれば安くはありませんが、注文してから客室乗務員がつくってくれます。自分はもともと機内食は口にしないほうなのですが、これは量も少なめでちょうどいいし、味もまずくはありません。少なくとも、中華料理漬けになって帰る便でこれを食べるとほっと一息つけそうです。
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スプリングジャパンが初めての就航地として武漢、重慶を選んだ理由として、日系企業が多く進出していること。中国内陸部の観光地のアクセスに便利と、同社ではあくまで日本客の利用を想定したプレスリリースを出していましたが、実際に乗客の大半は中国客で、日本客は10数名の春秋旅行のツアーに参加したグループ客のようでした。
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隣の席にいた女の子に中国語で声をかけたところ、「私、日本語できます」と言うので、少しおしゃべりしました。彼女は、重慶にある四川外国語学院日本語学科の3年生で、同級生とふたりで日本にインターンで来ていたとか。彼女の両親はともに中学の教師だそうで、「同級生の多くは日本語の教師になりたいと言っているが、教師の家に生まれると裕福にはなれないから、私は一般企業に就職したい」などと話していました。いわゆる「90后(90年代生まれ)」の子らしく、年長世代の80后の皆さんに比べ、人生に対するちょっと冷めた語り口が印象的でした。その後、彼女とは微信友だちになり、重慶の火鍋屋をはじめ、面白いスポットなどを教えてもらいました。
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実は、今回あちこちで彼女と同じ四川外国語学院の卒業生たちに出会うことになるのですが、重慶人たちのほぼ全員が、自分たちと成都人の違いについて語ってくれたことが面白かったです。彼らによると、「成都人はのんびりしていて、重慶人のようにあくせくしていない。いつも茶館で時間を過ごしている。でも、プライドが高くて、つきあいづらい」とかなんとか。かつて四川省の一部だった重慶は直轄都市として独立するのですが、どうやら成都に対するコンプレックスがあるようです。というのも、成都の人たちは重慶人ほどお互いの違いについて気にしていないせいか、そんな話はしないからです。古都と新興都市の違いから来るのでしょうか。

重慶空港に到着し、タラップを降りると、多くの報道陣や花束を抱えた空港の女性スタッフなどが待ち構えていました。
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「熱烈祝賀春秋航空開通重慶=東京航線」の垂れ幕もあります。

このご夫婦は、なんでも春秋旅行のツアーを最初に申し込んだ日本人だそうです。あとで写真を撮ったことを話すと、ぜひ送ってほしいといわれました。横浜在住の方でした。隣に立っているのは、スプリングジャパンの王会長(春秋旅行社の王会長の次男)です。
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重慶空港の国際ターミナルは国内ターミナルのはずれにあり、市内にはモノレール(軽軌)で約40分ほどでした。

重慶の様子については、また今度。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-21 12:22 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 09月 02日

「香港はインバウンドの実験室」:世界に先駆けレンタカー旅行をPR

訪日外国人の増加にともない、レンタカーの外客利用が増えていますが、なかでも香港人の利用は早い時期から始まっています。
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外国人ツーリストのレンタカー利用が増えています(ニッポンレンタカーに聞く)
http://inbound.exblog.jp/24799845/

今年1~7月の香港からの訪日客数は85万300人で、前年同期比66.0%増。中国本土客(275万5500人 前年同期比113.8%増)に次いで高い伸びを見せています。

なぜこれだけ増えているのか。日本政府観光局香港事務所の資料によると、以下の3つの理由を挙げています。

①親日的な素地:世界最大の日本産農水産物の輸出先
②好調な香港経済と物価上昇:円安も相まって、日本は「お買い得」
③LCCを中心とした座席供給量増加:ヘビーリピーターの存在
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さらに、香港の訪日市場の特徴は以下のとおりです。

・2014年の訪日香港人旅行者数:92万5975人(24.1%増)
・国・地域別訪日外客数:5位(2013年)→4位(14年) ※米国を抜く
・人口に占める訪日客数の比率」10人に1人(13年)→7.8人に1人(14年)
・日本国内滞在先の「西高東低」傾向の深化 ※首都圏に偏る国が大半の中、香港のユニークさが光る。
・香港物価高騰、円安継続→買い物の魅力向上による訪日旅行意欲の高まり
・訪日市場に対する「占中(民主化デモ)」の影響はなし

上記の点は、以下のデータから理解することができます。

まず「関西、九州、沖縄のシェアの拡大」。日本のインバウンドがいま最も必要としている「訪問先の分散化(多様化)」が見られます。
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次にリピーターとFIT(個人旅行)比率の高さです。訪日10回以上が21.4%、過半数が4回以上です。FITも75.2%。韓国に次いで高い比率です。

こうしたことから、香港は訪日旅行の最先端市場といえます。日本を訪れる外国客の中で、台湾と並んで最もアクティブかつ成熟した旅行を楽しんでいる人たちなのです。

そんな香港人の日本旅行の必須アイテムとなりつつあるのが、レンタカーというわけです。日本政府観光局(JNTO)香港事務所では、2012年からレンタカー利用促進のプロモーションを始めています。これは世界を先駆けての取り組みです。

香港のレンタカー利用促進を手がけてこられた前香港事務所長の平田真幸さんに話を聞きました。

―2012年度に開始した取り組みについて教えてください。
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「『Rail & Drive』と名付けた香港市場に特化したプロモーションです。香港の旅行会社は早い時期からレンタカー付きの宿泊ツアーを催行していましたが、私が香港に赴任した当時は、震災後の訪日客の落ち込みをリカバーするための施策が求められていました。リピーター8割、訪日10回以上が20%超という成熟市場の香港で、他国・地域(韓国、台湾、タイ、シンガポール)との差別化として何ができるか。

ひとつは鉄道旅行。ただし、新幹線ではなく、観光列車。香港市場へのアンケートによると、「日本を鉄道旅行したい」93%、「自然風景が楽しめる列車に乗りたい」83%、「ジャパン・レールパス利用経験なし」61%というデータがあったからです。

もうひとつがドライブ旅行。これも同じアンケートで「日本でドライブ旅行をしたい」67%、「好きな場所に旅行できる」75%というデータがあった。しかも、香港の免許所持者は約200万人。自家用車台数約52万台。とはいえ、あの狭い都市では、免許と車があっても自由気ままにドライブ旅行を楽しむことは難しい。だったら、日本で楽しんでもらえばいい」。

―こうして開始したのが『Rail & Drive』プロモーションだったわけですね。
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「競合国との差別化も込めて『a different Japan Rail & Drive』というキャッチフレーズで今年度まで続けられています。香港からの訪日客は増えていますが、乗り入れ空港は主要7空港のみです。成熟した香港客の訪問地をさらに多様化させるためには2次交通がどうしても必要です。そこで、香港市場のニーズに合わせてご当地グルメやショッピングシーンも盛り込みながら、シーズンごとに全国各地のドライブ旅行と観光列車のビジュアルイメージを打ち出しました。

香港はまさにインバウンドの実験室。新しい訪日旅行シーンは香港から生まれているのです」。

日本政府観光局(JNTO)香港事務所
http://www.welcome2japan.hk/

2015年は四国、中部・北陸を重点ディスティネーションに設定したPRを実施しています。
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こうしたプロモーションの結果、香港人のレンタカー利用は増えています。現状では、沖縄県と北海道での利用が圧倒的なシェアを占めるようですが、今後は首都圏、中部、関西圏、福岡などの大都市圏を中心に利用が広がっていくものを思われます。

香港の皆さんには、もっとレンタカーを利用して、日本のさらなる奥地へと旅立ってもらいたいものです。
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by sanyo-kansatu | 2015-09-02 13:21 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 04月 16日

「最大の問題は、日本人が中韓両国に行かなくなったこと」なのだろうか?(第7回 日中韓観光大臣会合)

この週末(4月11日、12日)、東京プリンスホテルで日中韓観光大臣会合とフォーラムが開かれました。2006年以降、毎年3カ国の持ち回りで開かれていた同会合は、2012年11月に福島県で開催予定だった回以降、中国側が参加を見送ってきたため中断が続き、今年は4年ぶりの再開です。
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メディアは以下のように伝えています。

日中韓、4年ぶりに大臣会合…観光客増に協力(読売新聞2015年4月11日)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150411-OYT1T50127.html

日中韓の観光相会合、交流規模の目標3000万人に (TBS News i 2015年4月12日)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2467489.html

なかでも会合の内容について、それなりに詳しく説明している朝日の記事を抜粋します。

日中韓交流、20年に1.5倍の3千万人に 担当相会談(朝日新聞2015年4月13日)
http://www.asahi.com/articles/ASH4D54BSH4DULFA004.html

「4年ぶりに開かれた日本、中国、韓国の観光担当大臣会合は12日、3カ国間を行き来する人を2020年に3千万人に増やすなどとした共同声明を採択した。14年の約2050万人から約1・5倍をめざす考えで、日本は、有名な観光地以外もめぐる中韓の旅行先の紹介や、飛行機やクルーズ船の就航を広げることなどを検討する見通しだ。

東京で開かれた会合の終了後、太田昭宏国土交通相は「日本から中韓への旅行者を増やすことが課題だ」と述べた。

14年に3カ国間を行き来した人は過去最多だったが、日本から中韓を訪れた人は500万人と、10年と比べ26%も減った。円安で旅行代が割高になっているうえ、日本が尖閣諸島を国有化した後に、中国で反日デモが起きたことなどが理由とされる。

共同声明には、18年の韓国・平昌(ピョンチャン)五輪や20年の東京五輪に向けて欧米から観光客を呼び込むため、3国間をめぐるツアーをつくり、共同で宣伝することも盛り込んだ。

また、「観光交流における質の向上」も記した。中国から日韓を訪れる一部の観光客が、生活習慣の違いからトラブルを起こしているためで、中国側も対策の必要性を認めた。

会合は、日本と中韓との関係悪化で12年から中断していた。韓国の金鍾徳(キムジョンドク)・文化体育観光相は「観光交流は、厳しい政治状況を克服するうえで非常に大きな意味がある」と、関係改善に期待を示した。次回会合は16年、中国湖北省の武漢市で開く」。

観光大臣会合の概要というのは、まあこういうことですが、午後2時から開催された3カ国の民間業者らを交えた「日中韓観光交流拡大フォーラム」の会場で、各国の関係者から出てくる発言は三者三様で興味深かったです。

そもそも日中韓3カ国の交流人口(それぞれの双方向の渡航者数のことです)は、2000年代半ばくらいまでは、日本から中国・韓国を訪れる人の数が最大でした。それが14年になると、最大は中国から韓国を訪れる人、次いで韓国から中国へと真逆の形勢になっています。

2014年の日中韓国の相互訪問者数

日本→中国 272万人
日本→韓国 228 万人
中国→日本 241万人
中国→韓国 613万人
韓国→日本 276万人
韓国→中国 418万人

なかでも急増しているのは、中国から韓国への訪問者です。ご存知のように、日本への訪問者も増えていますが、それどころの増え方ではありません。

理由は朝日の記事も指摘するように、「円安で旅行代が割高になっているうえ、日本が尖閣諸島を国有化した後に、中国で反日デモが起きたこと」もあるでしょう。また中国在住の業界関係者が指摘するのは「PM2.5の影響」です。

実のところ、世界の国境を越えて移動する観光人口は年々拡大していますが、ここ数年、わずかとはいえ入国者数が減少している数少ない国のひとつが中国です。こうした不人気ぶりは中国の旅行関係者にとってもそうでしょうが、むしろ面子を重んじる中国政府の頭を悩ましているかもしれません。彼らの価値観からすれば、世界の中心である中華(帝国)には、多くの外国人が集まってくるはずだからです。

またかつて多くの日本人旅行者が訪れていた韓国も、いまや中国客が全体の半数を占める片寄りぶり。さらに、訪韓日本人が激減し、訪日韓国人がそれを上回る時代になってしまいました。これまで日本人客を相手にしていた韓国の業者は廃業に追われていると聞きます。しかし、今年はさらに激減し、180万人程度しか訪韓しないという声もあります。

日本の旅行業界も、ここ数年の海外旅行者数の減少に悩んでいます。海外旅行市場の拡大とともに成長してきた業界だけに、減っているとはいえ、依然トップ2の訪問先である中韓への訪問者がこれ以上減少する事態は好ましい話ではありません。

そういう意味では、近年政治的な不和が続くこの3国にとって、珍しくお互いの利害が一致しているように見えるのが観光分野でした。昨秋の北京のAPECの日中首脳会談(中国側はそう呼んでいない?)以降、ようやく両国政府の折衝が始まり、今回の大臣会合にたどりついたということでしょう。

つまり、今回の大臣会合で3カ国に共通する課題として「日本人をもっと中国、韓国に旅行に行かせるにはどうしたらいいか」があるはずでした。少なくとも、日本側関係者(松山良一日本政府観光局理事長、田川博己日本旅行業協会会長)はその点を指摘していました。

ところが、中韓両国の関係者からは、そのためにどうしたらいいかという提言はあまり聞かれなかったように思います。あるいは、ご本人たちはそう言っているつもりなのかもしれませんが、少なくともぼくには感じられませんでした。

以下、フォーラムの挨拶および講演として登壇した関係者らのコメントを簡単に書き出してみます。

松山良一日本政府観光局理事長
「日本から中韓両国への渡航者が減少。ドイツとフランスは50年前、ドゴール大統領とアデナウアー首相の間でエリゼ条約を結び、首脳同士の定期会談と青少年相互交流を決め、年間1400万人の交流を実現している。昨日より開催されていた観光大臣会合では、日中韓相互交流の拡大、地域・地方への観光交流の拡大、観光による地方活性化や青少年交流、文化交流、スポーツ交流において連携を深めると合意された。3カ国共同による第三国に対するビジット・イースト・アジア・キャンペーンの推進や、観光交流における品質の向上についても話し合われた。これが日中韓観光交流の潮目となることを願う」。

太田昭宏国土交通大臣
「日中韓観光交流新時代への民間の取り組みを期待したい」。
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李金早中国国家旅游局長
「3カ国の交流人口はいまや2000万人を突破。さらにこれを進めていくには、ビザ緩和や滞在時間の延長、航空路線の拡張に取り組んでほしい。観光交流の品質の向上のためには、共同で監視するシステムの構築やガイドの質を高める取り組みが必要。マナーに関しては生活習慣の違いもあるので、相互理解も必要」。
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金鍾徳韓国文化体育観光長官
「2006年から日中韓観光大臣会合がスタート。2018年には平昌、20年東京と五輪開催が相次ぐなか、3カ国の同伴成長に向けて協力しよう」。
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三田敏雄昇龍道プロジェクト推進協議会会長
「中部北陸9県が参加する昇龍道エリアの知名度はなぜ低いのか。これまで各自治体がバラバラにPRしていたためだ。平成24年度のスケジュールを見てほしい。これは失敗例である。エリア全体が一体となって知名度を上げていくべきだ」。
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宋宇北京観光委員会主任
「2014年の北京市に入境した観光客数は2.6億人。うち外国人は約430万人。日韓は北京のインバウンド市場にとって最も主要な国(14年に北京を訪れた韓国人は38万6800人(2位)、日本人は24万8800人(3位))。両国の観光部門と提携関係を維持している。13年には北京市とソウル市が「北京ソウル混合委員会」を構築し、両市の観光、経済、教育、文化などの分野での交流を進めた。今後は、3カ国間の旅行簡便化、具体的には団体ビザ、航空、クルーズ観光、個人旅行などの推進。また欧米市場に向けて3カ国共同でのプロモーションの実施。市場の監督管理強化と旅行サービスの品質向上において協力してほしい」。

元喜龍済州特別自治道知事
「済州島は現在、180カ国のノービザ入国が可能。クルーズ観光のさらなる拡大のため、新たなクルーズターミナルも開港予定。北朝鮮も参加できる平和クルーズ事業を提案したい」。

また以下は、フォーラムのパネルディスカッションのコメントです。大臣会合をふまえ、1)相互交流人口の拡大のため民間で何ができるか、2)共同プロモーションについて、3)観光交流の品質の向上をいかにはかるか、が議題とされました。

1)相互交流人口の拡大のため民間で何ができるか

田川博己日本旅行業協会会長
「3カ国の相互交流が叫ばれるなか、最大の問題は、日本人が中韓両国に行かなくなったこと。日本旅行業協会としては、日韓共同販売プロジェクトを立ち上げ、韓国の地方を売るためのキャンペーンを行う。また対中国でも、日中観光交流団を組織し、3000人規模の業界関係者を中国に送る予定。また一般消費者が中韓に行きやすい雰囲気づくりを進めたい」。
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張立軍中国旅行社協会会長
「中国の海外旅行市場の歴史は20年と生まれたばかり。歴史は短いが、スピードは速い。日韓両国は、中国人がどこを訪ねたらいいかもっと教えてほしい。また中国人の日本観光ビザの簡素化も進めてほしい。中韓ではホテルのランク付けを国家が行っているが、日本はそれがないので、中国の消費者にどう説明していいか難しいことを理解してほしい」。
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梁武承韓国旅行業協会会長
「韓中1000万人時代は到来している。一方、韓日の航空便も週720便、25空港に運航。韓中は9空港で、韓国はソウルへの集中が大きな課題。地方での広域観光プロジェクトを推進する必要がある」。
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2)共同プロモーションについて

田川博己日本旅行業協会会長
「ヨーロッパから北東アジアへの観光ルートが確立していない。かつて日本では海外旅行の黎明期にロンドン・パリ・ローマの周遊旅行ツアーが人気だったが、同じように東京・北京・ソウルの周遊航空券の設定をつくることも必要では」。

張立軍中国旅行社協会会長
「上海自由貿易特区のような日中韓観光自由区をつくってはどうか」。

梁武承韓国旅行業協会会長
「日中韓共同クルーズはなぜ実現しないのか。文化の共通性を切り口に3カ国を周遊するクルーズをプロモーションしてはどうか。またユーレイルパスのような日中韓域内の鉄道パスを創設して、ビジット・イースト・アジア・キャンペーンを行うのはどうか」。

3)観光交流の品質の向上をいかにはかるか

田川博己日本旅行業協会会長
「質の問題にはふたつある。日本人の海外旅行市場と訪日外国人旅行者の受入態勢だ。前者は日本の場合、1965年に旅行業法を施行し、82年に旅程管理主任制度による消費者保護を進めた。これを学んではどうか。後者に関しては、日本ではまったくうまくいっていない」。

梁武承韓国旅行業協会会長
「近年中国からの訪韓客が急増(2012(280万人)→13(430万人)→14(620万人))し、受け入れ態勢が問題になっている。ガイドやバスと駐車場、宿泊施設など品質の低下をどうするか。またショッピング中心の旅行商品ばかりであることも問題。ソウル市故宮における中国人客のマナー違反も指摘されている。ソウル市内では急ピッチでオフィスビルから宿泊施設への業態転換を進めている」。

張立軍中国旅行社協会会長
「中国は海外旅行者のマナー問題を重視している。ただし、3カ国では発展段階も異なるし、マナー違反はひとにぎりに過ぎないと思う。中国には2万7000社の旅行会社があり、旅行業法を通じて品質向上に努めているが、海外の旅行会社ではその規律が守られているか。共同の監視システムも必要」。

ざっとそれぞれのコメントを整理したにすぎませんが、3カ国ともに相互交流といいながら、自国のアウトバウンド市場に対する言及が多かったように思います。ところが、唯一アウトバウンド市場が減少している日本側の働きかけに対して、中韓両国からそれに呼応する発言はあまりなかったように思えました。一方、中国の拡大するアウトバウンド市場の受け入れ態勢に関して、韓国側からはそれに対応する動きがあるようでしたが、日本側からは、昇龍道PRの失敗に対する反省の弁はあったものの、それ以外の目立った発言はなかったと思います。日本側も中国側の要請に対して呼応していないように受け取られているのでは、と思われます。

この会合やフォーラムの意義について、ぼくは否定的に見ているわけではありません。しかし、事態が思うように好転しない背景を知る必要はある。それぞれの思惑や言い分のどの部分がすれ違っているか、把握しておきたいだけです。

さて、今後この会合は潮目になるのか。この点について全体の流れとしては、このまま中韓から日本への訪問者が増え、逆は停滞を続けるという状況はしばらく変わらないのでは、という気がしました。

というのも、日本側にしてみれば、このまま中国客が爆買いしてくれるのなら、それはありがたい。中国側にしてみれば、日本人が中国に来てもたいして消費するわけでないし、かえって「PM2.5がひどい」などとSNSでまき散らされてはたまらない。国内の実情はなるべく知られたくない、という意味ではこのままでいいかもしれない。韓国側は本音では日本人に来てもらいたいのだけど、プライドが邪魔してそう表向きには言えない…。

つまり、3カ国観光交流の現状のアンバランスを変えたいという意志を(日本の旅行業界を除いて)誰からも感じられないのです。

しかし、こうしたことは、人の移動に象徴される日中韓3カ国の関係性がかつてとは大きく様変わりしたことを強く実感させます。

ぼく個人の意見としては、やはりこの3カ国の交流人口はある程度バランスが取れているべきだと思っています。そのために、非力ながら仲間と一緒に中韓の旅行ガイドブックをせっせとつくっているんですが、最近はあんまり売れないのでつらいところです。
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by sanyo-kansatu | 2015-04-16 11:05 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 04月 04日

2015年、日本政府観光局は九州の訪日旅行プロモーションを強化しています

訪日客の増加で、東京や大阪など大都市圏のホテルの予約が取りにくくなっていることが報じられています。

訪日客全体の5人のうち4人がアジアからの旅行者であることを考えると、都市圏に集中してしまうことは無理もないかもしれません。彼らの大半はアジア新興国の都市住民で、円安の日本を楽しむのであれば、やはり地方より都会のほうがショッピングであれ何であれ、いいに決まっています。

しかし、大都市圏のホテル客室不足はますます冗談ではすまされない状況になっていて、日本に暮らす我々にとっても予約が取りにくいのは同じことなので、なんとかしなければなりません。

観光庁や日本政府観光局(JNTO)が、海外各地で訪日客の訪問地の分散化を図ろうとプロモーションを打ち出しているのもそのためです。

では、今年彼らが掲げる訪日プロモーションの強化エリアはどこか。

それは九州です。
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これまで官民で継続的に続けられてきたプロモーションによって、東京・大阪の大都市圏とそれをむすぶ「ゴールデンルート」、北海道、沖縄といったエリアは海外の旅行マーケットにも浸透し、多くの訪日客が訪れるようになりました。それまで海外の人たちの頭の中で、日本という白地図に記されていた地名は、東京、京都、大阪、広島くらいにすぎなかったのですが、いまでは北海道や沖縄の地名も記されるようになりました。

逆にいえば、知られているのは、それだけなのです。彼らが日本旅行を計画するとき、残念ながら、九州の地名はまったく認識されていません。それは、ひどい言い方をすれば、存在していないことと同じなのです。

九州はアジアにも距離的に近いのに、なぜなのだろうと思うかもしれませんが、それは単に存在を認識されていないからなのです。日本人なら九州の魅力はよく知っています。海外で認識されるかどうかは魅力の中身ではないのです。

2009年、北海道を舞台にした中国映画がヒットしたおかげで、初めて「北海道」という地名を中華圏の誰もが知るようになり、中国客が北海道を訪れるようになったことからもわかるように、観光地のひとつとして認識されないと、外国客はやって来ないのです。

とはいえ、そんなに簡単に外国人に地名を認識されるものではありません。結局のところ、いろんな手をこつこつ打っていくなかで、なにかのきっかけが生まれる瞬間を待つ、ということなのかもしれません。

今年2月に上海を訪ねたとき、そういうこつこつ型の中国市場向けの九州プロモーションが始まっていることを知りました。以下、報告します。

2月上旬、地下鉄静安寺駅の2号線と7号線の乗換通路に、日本政府観光局による九州プロモーションの大ポスターが貼り出されていました。それがこの写真です。
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ご覧のように、名湯・黒川温泉や阿蘇山などの自然、熊本城、テーマパークのハウステンボスなど、九州の訴求ポイントが表現されています。地下鉄構内のある一画とはいえ、これだけ派手なポスターがデカデカと集中的に貼られている光景は、日本ではあまり見たことがないと思います。でも、これが中国の地下鉄構内広告のスタンダードなスタイルです。

関係者によると「当初、1月1日~28日が掲載の契約期間だったのに、2月12日に同所を通過したときにもまだありました。次の広告主が未定であるため、デザインが残っているようです」とのこと。こういう大雑把なところがいかにも中国らしいですね。逆にいえば、上海も次々と新しい広告が打たれるような景気のいい時代ではなくなったということでしょう。

近年、中国経済の減速が指摘されています。それは北京や上海の地下鉄広告の状況からも実感します。以前は地下鉄路線の飛躍的な拡張にともない、乗換通路もどんどん伸び、ド派手なポスターがあちこちに貼りまくられていました。それが、ここ1、2年で明らかに減っています。あれほどにぎやかだった地下鉄広告は、いまでもないわけではありませんが、ずいぶんおとなしくなってきた印象です。

それでも訪日客が増えるのはなぜか。これは個人的な推測にすぎませんが、バブル崩壊で株価が暴落した1990年代でも、海外旅行者数が増え続けた日本の状況(ただし、2000年代に入り、伸びは止まる)と少し似たことが上海でも起き始めているのではないか、と思います。

こういうことです。不動産価格がついに下がり始めた中国で(ところが、昨秋から株価は上昇中。不動産が期待できないため、株にお金が流れたのでしょう)、人々はバブル志向からやや地道な消費スタイルに移り始めている。日本もそうだったように、経済の伸びが鈍化して初めて人や社会は成熟化するものだと思います。しかし、いったん知った豊かさや消費の楽しみは忘れられない。そんな時代、気軽に消費を楽しめる近場の国はどこか。政治向きの事情もあって、最初は韓国に殺到したものの、やはり日本のほうがいい。

少なくともいま、彼らはそう思っているのではないか、そんな気がします。実は90年代の日本人の海外旅行先も圧倒的に近場のアジア各国でした。

さて、話がそれてしまいましたが、上海の海外市場向けの九州プロモーションとしてメディアがらみのものも、いくつかあるようです。
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たとえば、中国の旅行雑誌『旅行者』2015年2月号では、1冊丸ごとの九州特集をやっていました。これは完全な日本側とのタイアップ企画ですが、一般的な観光地だけでなく、九州の食文化とその担い手となる人物なども続々登場し、きわめて完成度の高いものでした。人や素材を提供したのは九州側だったのでしょうが、中国側の編集スタッフもよくまとめたと思いました。

数年前まで新潮社が出していた『旅』の休刊を最後に、日本にはほぼビジュアル系の旅行雑誌がなくなってしまいましたが、中国ではまだいくつか生き残っています。その一誌が『旅行者』です。しかし、中国でも広告を頼りに旅行雑誌を維持していくのは大変なよう。ネット時代のいま、紙媒体の影響力がどこまであるのか、という指摘もあるかもしれません。

その点、中国の大手ネット旅行会社の途牛(tuniu)での九州キャンペーンは面白そうです。
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途牛
http://www.tuniu.com/zt/jiuzhou/

阿蘇山を背景に熊本城と着物姿の女の子という、日本人の目からみればいかにもこてこて“フジヤマ、ゲイシャ”的な絵柄ですが、海外向けにはこれくらいしないと伝わらないものだと、ここは大目にみてほしいと思います。実際、こうしたトップページは中国人のデザイナーがつくっています。この手のPRとはそういうものなんです。そういう意味では、『旅行者』のイラストを使った表紙は、日本人からみると悪くないと思いますが、中国市場からみてどちらの訴求力があるか。これは判断が難しいですね。

いずれにせよ、このサイトのコンテンツは、九州を中心としたさまざまな旅行商品の特集で、その販促を強化することが目的でした。やはり中国で九州をPRするといっても、まずは海外旅行市場が最も成熟し、個人旅行化も進んでいる上海エリアから始めるのは当然のことでしょう。

はたして今年、中国客は九州を訪れるのでしょうか。

こんな話もあります。実は、最近上海でも「福冈(福岡)」「长崎(長崎)」といった地名をよく見かけるようになりました。なぜなら、上海発の東シナ海周遊クルーズ客船が九州各地をよく訪れるようになっているからです。その話については、昨年5月上海旅行博(WTF)を視察したとき、紹介したことがあります。

上海の海外旅行市場の大衆化を象徴するクルーズ人気(上海WTF2014報告その2)
http://inbound.exblog.jp/22692387/

そして、今年なんと福岡港に約200回クルーズ客船がに寄港することになっています。これは去年の倍増ですから、ちょっと驚くべき話です。当たり年といってもいいかもしれません。そのため、福岡という地名自体は上海の消費者にかなり認識されるようになっています。これは九州にとって絶好のチャンスといえます。

ところが、地元の福岡では、それほど盛り上がっていないという話を耳にしました。どういうことなのか。

次回以降、上海発のクルーズ客船の話をしてみたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-04-04 14:05 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 12月 13日

「原因は日本にあると、怒られっぱなしでは観光する気にならない」(二階元経産相)

日韓関係の悪化が両国の観光業界に影を落としています。特に目立つのが、日本から韓国への観光客の減少。円安・ウォン高も理由のひとつでしょうが、関係悪化に日本人客が敏感に反応している面も大きいといえるでしょう。

訪韓日本人は、2010年303万人、11年329万人、12年352万人と順調に増えていたものの、当時の李明博大統領が12年8月に大統領として初めて島根県竹島(韓国名:独島)に上陸すると、同年後半から減少し始めたといわれています。13年には275万人と前年度比21.9%減。14年も歯止めがかかっていません。

一方、韓国からの訪日客は夏ごろから回復しています。その対照ぶりが、日中関係の悪化で日本人が中国に行かなくなったのに、訪日中国客が増えている状況と似ているのです。

毎日新聞2014年7月5日によると、6月2日日韓の旅行業界関係者がソウルで会合をした際、全国旅行業協会(ANTA)会長の二階俊博元経産相がこんな不満をぶつけたといいます。

「現状の日本と韓国の関係は異常だ。全て原因は日本にあると、怒られっぱなしでは観光する気にならない」

同紙によると、二階氏の怒りには前段があったようです。前日ソウル市内で開かれたNHK交響楽団のコンサート会場周辺で、韓国の市民団体が二階氏を名指しして歴史問題に関する日本への要求をアピールしたためだとか。文化交流の場で政治的な主張が行われたことに憤慨を禁じ得なかったそうです。

結局その日の会議では、韓国側が8月に日本の関係者をソウルに招待し、観光関連のシンポジウムの開催を提案したようです。

日本側もこれに応じて、日本旅行業協会(JATA)は「日韓国交正常化50周年プロジェクト」を立ち上げました。その点について、以下のネットの記事があります。

日韓交流拡大へメガFAM、第1弾520名-数年で700万人へ 2014年12月9日
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=64855

それによると、14年12月から1000人規模の日本の旅行業界関係者を数回に分けて韓国に訪問させる計画「日韓交流拡大のためのメガファムトリップ(視察旅行)」を開始したそうです。まずは旅行業界同士の交流が大事というわけです。

それにしても、「親中派」として知られる二階氏が思わず放ったひとこと、日本人の心情をこれほど素直に吐露しているものはないのではないか。思わず苦笑してしまいました。あるいは、この方、中国には強くモノ申せなくても、韓国になら言えるのだったりして…。

はたして改善はなるのでしょうか。
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by sanyo-kansatu | 2014-12-13 13:48 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2014年 11月 28日

〔検証〕1300万人突破か!? 今年の訪日外国人旅行者数は何が押し上げたのか

今年1~10月の訪日外国人旅行者数が過去最高の1100万9000人(日本政府観光局(JNTO)調べ)になったことを、各メディアが先週一斉に報じた。昨年は年間1036万人で、今年は早くも10月までで1100万人を突破。前年度比27.1%増という高い伸率は、日本の経済指標の中でも数少ない成長事例といえるだろう。「年間では1300万人前後になる見込み」とJNTOは予測している。
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では、今年の訪日外国人旅行者数は何が押し上げたのだろうか? 

すぐに思いつくのは、今秋以降さらに顕著となった円安効果だろう。だが、それだけが理由とはいえない。通貨安となった国がどこでも観光客が増えるかというと、必ずしもそうではないからだ。ならば、背景には何があるのか。以下、JNTOのリリースを基にその要因を検証したい。

5人のうち4人がアジアからの旅行者

2014年1~10月の訪日外国人旅行者数トップ10の国別訪日外客数(推計値)と伸率は以下のとおりである。ここから何が読み取れるのか。

1位 台湾 2,381,200(26.4%)
2位 韓国 2,245,400(6.8%)
3位 中国 2,011,800(80.3%)
4位 米国 744,900(11.9%)
5位 香港 734,400(20.2%)
6位 タイ 513,300(48.2%)
7位 豪州 242,900(22.6%)
8位 英国 184,700(14.0%)
9位 マレーシア 182,500(49.8%)
10位 シンガポール 153,400(17.0%)
※( )内は前年度比

トップ5(台湾、韓国、中国、米国、香港)はこの10年間変わらないが、今年初めて台湾がこれまで不動のトップだった韓国を抜いて1位に躍り出た。背景には、台湾と日本の間で結ばれた航空協定(オープンスカイ)による路線の拡充がある。同協定が調印された2011年11月以降、日台を結ぶ航空便は飛躍的に増加。13年2月以降は21カ月連続で訪日客数が過去最高を更新と、その勢いは今年に入っても変わっていない。台湾の航空便は日本の多くの地方都市と結ばれているのが特徴だ。その結果、訪問地の多様化が進む台湾は訪日旅行市場の中で最も成熟しているといわれる。

※台湾がトップとなった背景については、やまとごころコラム「25回 過去最高200万人超えなるか!? 今年の訪日5人に1人が台湾客となった理由」http://www.yamatogokoro.jp/column/2013/column_143.html 参照。

2位は韓国。他と比べ伸率(6.8%)が低い理由は、4月の旅客船沈没事故の影響が指摘される。ただし、夏以降回復傾向が見られる。4位は米国。米国経済の回復基調が続き、今年4月以降、7カ月連続で各月の過去最高を更新している。5位は香港。こちらも台湾同様、21カ月連続で過去最高を更新。「9月末からのセントラルのデモの影響はまったくない」(現地関係者)という。

一方、伸率でみると、3位の中国は前年度比80.3%増と最も勢いがある。12年秋の尖閣問題で一時激減したが、昨秋以降大幅回復を見せているのだ(その背景については後述する)。タイ(6位)やマレーシア(9位)、シンガポール(10位)など、昨年観光ビザを撤廃したアセアン諸国も急増している。フィリピン(63.5 %増)やベトナム(49.1 %増)などの伸びの高さからも、政府の実施したビザ緩和がアセアン諸国の訪日客急増のもうひとつの要因であることがわかる。

いまや訪日外客数全体でアジア諸国が占めるのは約8割だ。今年、欧米主要国からの旅行者も各国平均10%以上増えており、欧米人ツーリストの姿をよく見かけるようになったと感じた人も多いだろう。だが、実際には5人のうち4人がアジアからの旅行者である。それが訪日旅行市場の実像だ。国別の伸率をみる限り、この傾向はますます強まりそうだ。

アジア各国の精力的な訪日路線の拡充

こうした市場の概況をふまえ、今年訪日旅行者数を押し上げた具体的な要因を考えてみたい。

観光白書(平成26年版)によると、訪日外客数の国別ランキングで日本は27位(2013年)だが、陸路で国々がつながる欧州やアジア諸国と違い、島国である日本が訪日客を増やすには、基本的に航空便の増便や新規就航で座席数を積み上げていくことしかない。つまり、今年伸率の高い国ほど訪日路線が拡充したことを物語っている。

なかでも突出しているのが中国だ。

今年の日中の航空路線の動きで注目すべきは、中国ナンバーワンLCCの春秋航空の路線拡充と天津航空の新規就航だろう。春秋航空は昨年までの上海から茨城、高松、佐賀の3路線に加え、今春以降、関空、新千歳の2路線と、内陸都市の重慶、武漢、天津から関空への3路線を新規就航させ、全8路線となった。夏には春秋航空日本(スプリングジャパン)が国内4社目のLCCとして成田から国内3路線(広島、高松、佐賀)を就航している。これは中国客の乗継需要も活かせるため、外資LCCならではの新しい動きといえる。天津航空は夏季限定の天津・那覇、静岡(ただし、静岡はチャーター便)を就航した。
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春秋航空日本の成田・佐賀線初就航便

※春秋航空については、やまとごころコラム「31回 中国客の訪問地の分散化に期待。中国ナンバーワン旅行会社、春秋国際旅行」 http://www.yamatogokoro.jp/column/2014/column_163.html 参照。

今年6月以降、中国国際航空や中国東方航空などの国営キャリアでも、上海発を中心に関空や新千歳、那覇などの増便が目立っている。7~8月、中国南方航空の広州・新千歳のチャーター便も多数運航された。総計で週に約40便が増便され、路線も拡充した背景には、旺盛な中国の訪日旅行需要があったことは間違いない。

今年出遅れていた韓国も、8月以降回復基調をみせており、10月の訪日客の前年同月比は57.7%増となった。実際、日韓間の増便やチャーター便の運航は増えている。主なところでは、エアプサンの釜山・福岡、ティーウェイのソウル・那覇などのLCCの路線拡充が目立つ。大韓航空のソウル・旭川などの夏季限定のチャーター便など、北海道や九州、沖縄方面への増便が多いのも特徴だ。韓国の訪日旅行市場も台湾同様成熟しており、訪問地の多様化がさらに進むことが期待される。

本来、航空路線の拡充は日本と海外の双方向の人の流れが基調となるべきだが、日本からの中国・韓国方面への渡航者は一方的に減少している。そのため、日系エアラインはこの方面のレジャー路線を絞り、ビジネス路線に傾注せざるを得ない状況にある。つまり、拡大するアジアの訪日旅行市場は海外のエアラインのレジャー路線拡充戦略にかなりの部分握られているといえるだろう。市場規模は中韓に比べればまだ小さいアセアン諸国でも、精力的な路線拡充の動きはみられる。一部、日系LCCのアジア路線の就航の動きもあるが、全般的にみてこの状況は変わりそうにない。

一回の寄航で2000人以上を運ぶ大型クルーズ船

訪日中国客数を押し上げたもうひとつの要因に、大型クルーズ船の寄航の再開がある。なにしろ中国発のクルーズ船は、一回の寄港で2000人以上の乗客を運ぶからだ。

主な出航地は上海と天津。最もスタンダードなのが、東シナ海周遊4泊5日コースで、福岡など九州各地や韓国(済州島、釜山)を寄港する。2000年代後半から欧米や中国国内のクルーズ会社が東シナ海を周遊するクルーズ船の運営を始めており、いまや上海の海外旅行市場では最もポピュラーな商品として定着している。
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今年7月運航した上海発クルーズ船(プリンセス・サファイア号)は福岡と釜山に寄航

もともと東シナ海クルーズは夏がメインシーズンで、中国発クルーズ船の九州寄港は、2012年秋に尖閣問題でいったん休止した。そのため、13年は九州を訪れる海外クルーズ船の総数が半減。ところが、同年秋以降、徐々に運航が再開され、今年に入って一気に増えた。14年寄港した上海発クルーズ船の数は以下のとおりである。

上海発クルーズ船の寄航数(JNTO調べ)
2014年2月 1隻
    3月 5隻
    4月 9隻
    5月 8隻
    6月 6隻
    7月 17隻
    8月 14隻
    9月 16隻

主な九州のクルーズ船寄港状況は以下のサイトで確認できる。

博多港
http://port-of-hakata.city.fukuoka.lg.jp/guide/cruise/index.html
長崎港
http://www.jopa.or.jp/port_detail/nagasaki.html
那覇港(那覇港管理組合)
http://www.nahaport.jp/kyakusen/nyuukouyotei2014.htm

上海のクルーズ人気について、現地の旅行関係者はこう語る。「人気の理由は3つ。寄港地でのショッピングが楽しめること。船が大きいぶん料金が安いこと。祖父母と親子3世代のファミリーが安心して参加できること」。

上海発のクルーズ商品は3つのランクに分かれるが、最も大衆的な価格帯は4泊5日で5000元が相場だ。飛行機やバスで移動し続ける団体ツアーは、シニアや子供連れには大変だが、クルーズの旅ならのんびり船上で過ごせることで、海外慣れしていない層も参加しやすいという。上海では初めての海外旅行がクルーズというケースも一般的だ。

東シナ海の中心に位置する上海は、数日間で周遊できる寄港地が近場にいくつもあり、バリエーション豊かなコースの造成が可能なのだ。今日の東シナ海が、島をめぐる日中の確執の舞台であるだけでなく、中国人の大衆的なレジャー空間になっているという、もうひとつの顔を承知しておいてもいいだろう。

※上海発クルーズの人気の背景は、やまとごころコラム「30回 クールな上海の消費者にいかに日本をアピールすべきか?(上海WTF2014報告)」http://www.yamatogokoro.jp/column/2014/column_161.html 参照。

もちろん日本に寄港するクルーズ船は中国発ばかりではない。欧米からのクルーズ船も全国各地を訪れている。舞鶴港(京都府)では、今年15回の寄港があり、地元では上陸してくる外国人観光客の歓迎ムードが盛り上がっている。地元の高校生らが歓迎のうちわを制作したり、英語によるボランティアガイドに挑戦したりしているという。

一般にクルーズ船の上陸時間は8時間程度で、ホテル利用もなく、買い物も特定の量販店や大型ショッピングモールに限られがちなため、地元に幅広く経済効果をもたらすかについては疑問の声もある。それでも、国際航空便のない地方都市で外国人観光客受入のノウハウを学べる好機となるクルーズ船誘致の動きは全国で広がっている。

※クルーズ船の全国の寄港状況については、以下のサイトを参照。
CRUISE PORT GUIDE OF JAPAN
http://www.mlit.go.jp/kankocho/cruise/jp

10年の積み重ねが巨大な吸引力を生んだ

日本政府観光局(JNTO)は、今年10月の訪日外客数が単月として過去最高の127万2000人となった理由について、以下のように解説している。

「円安による割安感の浸透や、消費税免税制度の拡充、大型クルーズ船の寄航、秋のチャーター便の就航、大型国際会議の開催、中国・国慶節休暇中の集客を狙ったプロモーションや、各市場において紅葉の魅力を集中的に発信したこと」

なかでも10月1日から実施された消費税免税制度の拡充(外国客向けの免税品目の拡大)はひとつのポイントだろう。これまで家電や衣料品などに限られていた免税品目を、食品や化粧品などの消耗品にまで広げたことで、外国人旅行者の購買意欲に火をつけようというのが狙いだ。実際、この情報は中国をはじめアジア各国でいち早く広まったという。

全国の免税販売対応店は、10月1日現在9,361店。メイド・イン・ジャパンを掲げる「ショッピング・ツーリズム」の推進は、アジア新興国の旅行市場のニーズに合っているのは間違いない。だが、実際にはクルーズ客の事情と同様、一部の量販店や百貨店、大型ショッピングモールの利用が集中。恩恵を受けるのは大都市圏の一部であり、全国での「幅広い経済効果」は難しいとの指摘もある。

この点をふまえ、日本政府観光局(JNTO)の鈴木克明海外マーケティング部次長は次のように指摘する。「訪日客の増加は円安効果が大きいとよく言われる。確かに円安は訪日のひとつの動機になるが、通貨安だからといって急に観光客が増えるというものではない。これまで10年かけて培ってきたプロモーションによる日本のイメージがあり、日本に行きたいというニーズが生まれた。国と民間が一体となってやってきた努力が実を結んだと思う」。

政府が「観光立国」を目指してビジットジャパンキャンペーンを開始したのが2003年。これまで10年をかけて積み重ねてきた官民一体のプロモーションの相乗効果が海外の消費者に対する日本への理解や期待を高め、訪日旅行市場に巨大な吸引力を生んできたことは確かだろう。円安効果は日本に対する認知度があってこそ追い風となるのであり、何事も実を結ぶには10年くらいの地道な営みが必要だと考えるべきなのだ。

このまま増え続ける保証はない

では、20年までに2000万人という目標を掲げる訪日外国人旅行者数はこのまま増え続けるのだろうか。

実際には、来年も今年のような高い伸びが続く保証はどこにもない。なぜか。

まずこの1、2年高い伸率をみせたアセアン諸国のビザ講和の効果はすでに一巡し、伸率は鈍化するかもしれない。そして、今年トップの台湾や香港の1~10月の訪日客数を人口比率でみると、台湾(人口約2300万人、238万人)、香港(人口約700万人、73万人)とすでに1割を超えている。これは十分驚くべき数字であるが、伸びしろは多くないと考えても不思議ではない。

そう考えると、頼りは巨大なポテンシャルを感じさせる中国市場となる。今年1億人超という中国の海外渡航者数は、うち4000万人を占める香港を除いても、桁違いに大きな市場である。

日中関係が最悪といわれるなか、中国からの訪日客が増えている状況に戸惑いを感じるむきもあるかもしれない。この点について日中間には認識の違いがあるようだ。中国の消費者の立場で考えれば、中国メディアがどんなに騒ごうと、個人レベルでは日本に行ってみたいというニーズは、とりわけ中国で最も消費社会が進んだ上海を中心に確実に存在する。

一方、日中の航空路線の拡充は上海発に集中しており、全国的な動きとはいえない面もある。地方都市の旅行関係者からはこんな声も聞かれる。「中国は一様ではない。もし日中関係が良好なら、いまの2倍は日本に行ってもおかしくない。多くの中国人はまだ政府に遠慮している」。事実上中国客は増えているが、政治的な理由でまだ相当抑制されている地域の消費者も多いという。

今年韓国に約600万人もの中国客が訪れると聞けば、政治の影響がいかに大きいか物語っている。先般、実現した日中首脳会談が今後どう市場に影響を与えるか、気をもんでいる日中両国の関係者も多いだろう。

ともあれ、手をこまぬいていては何も始まらない。台湾や韓国、香港といった成熟した訪日旅行市場はまだ全体の一部である。中国の訪日客は個人ビザ客が増えているにもかかわらず、訪問先は圧倒的に東京や大阪などの大都市圏に集中しているといわれる。訪問地の多様化はそれほど進んでいないのだ。これはアセアン諸国の市場も同じだろう。

訪日外国人旅行者を今後も順調に増やしていくには、訪問先を全国各地へと分散化していく戦略が不可欠なのだ。これは「地方創生」にもつながる話である。

現在、海外で広く知られている日本の旅行先および商品群は、①東京・大阪ゴールデンルート周遊、②首都圏・関西圏の都市観光、③北海道、④沖縄などに限られるのが現実だ。今後、仕掛けなければならないのは、これらに次ぐ新しい「顔」の創出だ。その点でいえば、アジアから距離的に近い九州をまずは優先すべきだろう。

残念ながら、海外での九州の認知度はいまひとつのようだ。上海の旅行会社の担当者から、九州の売り方がわからないという話を聞く。アジア新興国市場ほどこの傾向が強い。一方、韓国のように九州を舞台に自ら新しい旅のスタイルを生み出している市場もある。両地域の歴史的なつながりがいかに深いか感じさせる話だ。
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九州では韓国客が始めたハイキングコース(オルレ)が人気

日本人の目で見れば、九州には火山もあるし、自然も温泉もある。歴史もグルメもある。しかし、いろいろある、だけではダメなのだ。対外的にすでに認知された4つの旅行先とは明らかに異なる明快な九州イメージの確立が求められている。それがなければ、外国客には選んでもらえない。イメージ確立のためには、持ち札のすべてを見せようとするとかえって逆効果だ。むしろ、まず何かひとつに絞り込むしかない。相手国に合わせてまったく別の「顔」を見せてもいい。

言うは易く行うは難しだが、これは九州に限らず、まだ海外で認知されていないほとんどの地方が抱える共通の課題でもある。

ともあれ、訪日外国人旅行市場には明らかに追い風が吹いている。課題は数々あれど、いまの日本、これほど先行き楽しみなチャレンジはそうあるものではない。

※やまとごころレポート7回 http://www.yamatogokoro.jp/report/2014/report_07.html
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by sanyo-kansatu | 2014-11-28 16:15 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2014年 06月 27日

30回 クールな上海の消費者にいかに日本をアピールすべきか?(上海WTF2014報告)

日本政府観光局(JNTO)の6月18日付けプレスリリースによると、2014年5月の訪日外客数は109万7200人。44年ぶりに出国日本人数を訪日外国人数が上回った4月に続く過去2番目の記録となりました。1~5月までの累計もすでに500万人を突破し、過去最高ペースで推移しています。市場別では、中国が第3位(1位は台湾、2位韓国)で前年同月比でなんと103.3%増の16万5800人。昨年9月から9ヵ月連続で各月の過去最高を記録するという勢いだそうです。

これだけ日中関係が悪化し、南シナ海でも紛争が起こるという政治的な異常事態が続くなか、中国客が日本に押し寄せているという状況を、私たちはどう受けとめればいいのでしょうか。中国の海外旅行市場で今何が起きているのか。もっと知る必要があるでしょう。

訪日中国客の最大の送出地は上海です。2014年5月9日~11日に開かれた上海旅游博覧会(WTF2014)に行ってきました。今回は、その視察を通じて中国の海外旅行市場の最近のトレンドを報告します。

上海でも始まったツアー即売会

今回のWTFは、上海市旅游局が主催する16回目の旅行博覧会で、海外旅行市場も含めた博覧会としては11回目になります。


上海では毎年5月にWTFが開催されますが、2年に1度、11月に中国国際旅游産業博覧会(CITM)も開催され、今年の秋はCITMがあります。後者は中国国家旅游局が主催するイベントで、浦東の新国際博覧中心が会場です。国家旅游局主催のイベントだけに、全国から業界関係者が集まるぶん、規模的には後者がはるかに大きいですが、逆にいえば、WTFはローカルなイベントだけに、上海の旅行マーケットの現状が見えやすいともいえます。

では、会場に入ってみましょう。

正面入り口すぐ前の向かって左手に陣取るのは、韓国観光公社のブースです。この博覧会で最も良いポジション取りはここ数年、韓国の定位置となっているそうです。おなじみの韓流イメージを総動員させたプロモーションです。

中韓関係の蜜月化が訪韓中国人観光客を激増させています。現地メディアの新華網も「中国の旅行会社は引き続き韓国への大規模な送客計画を執行する」と報じているようですから、これは既定路線というわけです。中国ではいかに政治が観光と直結しているか、よくわかります。

我国旅行社继续执行大规模向韩国“送客计划”(新華網2014年4月6日) http://finance.china.com.cn/roll/20140406/2314165.shtml

海外からは他にも、タイやバンコク市、フィリピン(中国との関係悪化はここでは関係なしか)、マカオなどのアジア各国・地域、欧州方面ではスイスやエジプトなどが出展していました。

昨年、大盛況だったタイのバンコクや台北での旅行博(24回、25回参照)を見てきたせいか、それらと比較すると、上海のWTFは少し地味に見えなくもありません。以下は公式データです。

出展者数:50の国と地域より570団体が出展(合同出展含む)
出展面積:約15000㎡(前回比16.5%増)※販売エリアの面積は前年比24%増
業界関連来場者(業界エリア来場者数):のべ7948人
一般来場者(一般エリア来場者数):のべ約3万8300人※業界エリア入場者の重複カウントはせず
旅行商品他の現場販売金額:約1801.6万元(前年比33.7%増)

実際、海外からの出展者数は以前ほど多くはないようです。会場には中高年が多く、若い世代の比率はそれほど高くないと感じました。こうしたこともあってか、数年前からWTFでも、タイや台湾と同じように、会場での旅行商品の即売会を始めています。上海の大手旅行会社が、会期中限定の割引商品の販売を行っていました。

上海の海外旅行市場の大衆化を象徴するクルーズ人気

なかでも目立ったのが、クルーズの販売です。昨年さっぱり姿を見せなかった上海発クルーズ船も、今年は福岡などを中心に九州各地を寄港しています。

これは6月30日発サファイア・プリンセス号のセールスボードです。済州島、福岡、長崎を寄港する5泊6日のクルーズで、上海中旅国際旅行社が販売しています。料金はデラックスルームで1名8999元。会期中1部屋4200元のディスカウントをうたっています。

会場にはクルーズの特設イベント会場が設置されていて、旅行会社やクルーズ会社によるPRや懸賞イベントが繰り広げられていました。

上海のクルーズ人気について、日本政府観光局(JNTO)上海事務所の中杉元氏は「最近の上海の旅行会社のファーストプライオリティはクルーズ販売といえます。上海発のクルーズは4泊5日で韓国や九州を寄港するものが主流です。人気の理由は、寄港地でのショッピングが楽しめること。祖父母と親子3世代のファミリーが気軽に参加しやすいこと。船が大きくボリュームがあるぶん料金が安いことにある」といいます。

上海発のクルーズのスタンダードな価格帯は4泊5日で5000元が相場だそうです。この手ごろな価格が人気の理由です。飛行機やバスで移動し続ける旅行は、シニアや子供連れでは大変ですが、クルーズは寄港地での岸上観光以外はのんびり船上で過ごせることで、海外慣れしていない層も参加しやすいからです。

今日の上海における海外旅行の大衆化を象徴しているのがクルーズ旅行です。上海では初めての海外旅行がクルーズというケースもかなり一般的なようです。これは島国に暮らす日本人にはピンとこない感覚かもしれませんが、東シナ海の中心に位置する上海は、数日間で周遊できる近隣国の寄港地がいくつもあり、バリエーション豊かなコースをつくることが可能なのです。

チラシに見る上海人の海外ツアーの中身

中国の海外旅行シーンを手っ取り早く理解するには、現地の旅行会社でどんな海外ツアーのチラシが作成しているかを見るに限ります。

会場で、出展規模や集客状況も含め、最も目立っていたのが、春秋グループでした。展示スペースの中央に旅行即売コーナーを置き、その周辺にビーチリゾート、クルーズ、春秋航空などの展示ブースを並べており、各ブースごとのイベントも次々繰り出されています。
活気あふれる春秋旅行社の即売ブース

同社の即売コーナーでは、黄色いTシャツを着た数十人のスタッフを動員し、旅行エリア別に分かれて来場客相手に接客する熱気に包まれた光景が見られました。

そこで置かれていたツアーチラシの中から目についたものを紹介しましょう。

●ドナウの恋11日間
珍しく情緒的なネーミングのついた商品です。プラハinでウィーンを抜けブダペストout

●クロアチア・スロベニア10日間の旅
フランクフルトinリュブリャナ(スロベニアの首都)out。「アドリア海、魅力の旅。世界文化遺産、グルメ、市街地4つ星ホテル泊」という売り文句が掲げられています。

●トルコ10日間の旅
イスタンブールin-out。「新欧亚之魅―深度全景之旅」。「コンヤ、カッパドキア、イスタンブール、パムッカレ、アドリア」」などを訪ねます。「全行程ショッピング強制なし。純粋な旅行体験を楽しめます」。

●アメリカ16日間の旅
ハワイ、サンフランシスコ、ワシントン、ナイアガラの滝、ニューヨーク、ラスベガス、ロサンゼルスなど、アメリカを大周遊します。中国客にとってカジノのあるラスベガスは欠かせません。

●サイパン5日間8499元から(2014年1月21日25日、29日、2月2日発)
サイパンは中国公民の観光ビザを免除している関係で、人気があります。「親子」「ハネムーン」「ゴルフ」「サンセット」「SPA」「ショッピング」などが楽しめると書かれています。

●86日間世界一周クルーズ
コスタ・ビクトリア号による上海発世界一周クルーズの料金は129999元(約220万円)からです。2015年3月1日発、帰国は5月26日です。初めてのツアー商品らしく、今年いっぱいをかけてクルーズ客を集めるそうです。金額もそうですが、長期休暇が取れる富裕層向けですね。横浜港にも立ち寄ります。

●大阪3泊4日/4泊5日
今年3月15日春秋航空は関空線を就航しました。自社便を利用した大阪、京都、神戸の旅です。

これらのチラシから、今の上海ではそれなりにバリエーション豊かな海外ツアーが販売されていることがわかります。こうした多様な選択肢の中から日本が選ばれるためには、どう差別化して他国との違いをアピールすればいいのか。複眼的に考える必要がありそうです。

春秋旅行社
http://sh.springtour.com/

※シーズンによって航空運賃やホテル料金など変わるので、チラシには料金が書かれていませんが、詳しく知りたい方は、春秋旅行社のサイトをご覧ください。

クールな上海の消費者にいかにアピールするか

最後に、日本からの出展者のブースも見てみましょう。

今回日本からのWTF出展は2年ぶりでした。2012年9月の尖閣問題の影響で、同年11月に上海で開催されていた中国国際旅游交易会(CITM)と昨年5月のWTFへの出展を中国側から断られていたからです。あらゆる民間交流を政治と結びつけるのが中国政府の常套手段ですから、こうしたことが常に繰り返されるわけですが、先ごろ「民間交流と政治は分ける」との中国側の表明もあったばかり。その真意はともかく、こうしてようやく今回の出展に至ったといえます。

もっとも、中国の政治的リスクを嫌って日本企業のアセアン諸国へのシフトが強まるなか、日本の出展者も以前に比べると、かなり少なかったことは確かです。

いくつか目についた出展者に話を聞いたので、ざっと紹介しましょう。まず北海道観光振興機構から。2013年入域外国人数が初めて100万人を突破した北海道は、昨秋から戻ってきた中国客の誘致に今年は力を入れるとのこと。上海地区はFIT比率が高いので、リピーターのための細かい足の手段(JRパス、高速バス)の情報を提供しているそうです。

少し意外だったのは、九州からの出展者がなかったことでした。これまで報告してきたように、上海の海外旅行市場におけるメイン商品はクルーズ旅行です。今年は多くのクルーズ船が福岡港を中心に九州各港に寄港することがわかっています。であれば、せめてクルーズの寄港地だけでもPRに来てもよかったのでは、と思わないではありません。

日本政府観光局(JNTO)のブースでは、上海の旅行会社に交替でブースの一部を貸して日本ツアー商品の販売を行っていました。たとえば、春秋旅行社では自社便を使った佐賀や高松を起点としたツアーなど、特徴的なものもいくつかありました。安さで勝負する旅行会社の販売ブースとは一味違う商品ラインナップが見られましたが、どれだけの入場者に気づいてもらえたか、そこが課題かもしれません。

日本ブースの中でもユニークな存在だったのが、上海雅遊旅遊諮詢有限公司(ZEEWALK)でした。同社は上海にある日本の高級旅館のPR会社です。北海道朝里川温泉の「小樽旅亭 藏群」、長野県昼神温泉の「石苔亭いしだ」、兵庫県宝塚温泉の「若水」、同じく塩田温泉の「夕やけこやけ」、岡山県湯原温泉の「八景」などと提携関係にあるようです。

同社の代表は、張凌藺(愛称:りんりん)さんです。

張凌藺さんについて
http://shanghai-zine.com/topics/442

彼女は「日本宅人」http://blog.sina.com.cn/nihontatsujinという微博を主宰し、上海と日本を往復しながら、訪日旅行のプロモーションに尽力している女性企業家です。彼女が会場でこっそり話してくれた次のことばが、とても印象的でした。

「実は、この会場にいる上海人のうち、うちの旅館を利用してくれるような客層はたぶん2割もいない。それでもブースを出したのは、日本の関係者も含めて、我々の存在を知ってもらいたかったから」

今回出展した日本ブースの中に、彼女ほど上海の旅行市場を正確に理解し、的を得たコメントをしてくれた人物はどれだけいたでしょうか。彼女がターゲットにしているのは、この会場にやって来るような人たちとは異なる別の階層だというのです。

どういうことでしょうか?

今回、WTF内の別会場で行われたフォーラムで、国連世界観光機関(UNWTO)中国代表の徐汎女史による「中国の主要3地区の海外旅行市場」報告がありました。

その中で、徐女史は中国のクルーズ市場を以下の3つにランク分けしています。

①大衆消費層向け…中国発4泊5日、5000元相当(初めてのクルーズ体験)
②ミドルクラス消費層向け…「フライ&クルーズ」、5~10万元(クルーズライフを楽しむ)
③富裕層向け…「フライ&クルーズ」、10万元以上、極地クルーズ(特別な体験を求める)

業界関係者を集めたフォーラムで報告されたのは、明快に区分された上海の階層社会の実像でした。上海の海外旅行の大衆化を象徴しているクルーズ商品のスタンダードな価格帯に比べると、ミドルクラス向けは10倍、富裕層向けは最低でも20倍以上。こうした価格帯は万国共通存在するといえますが、中国の専門家はこれからの海外旅行市場の発展のためには、この階層差を直視せよ、ビジネスチャンスはそこにあると啓蒙しているのです。旅行ビジネスにおいても、厳然とした階層差をふまえたものでなければ成り立たないというのが、彼らの現実認識です。こうした認識は日本人が苦手とするものかもしれません。

今回のWTFでいちばん感じたことは、すでに海外旅行の大衆化の時代を迎えた上海の消費者にとって、現状の旅行博というイベントはもうそれほど目新しくもなく、自分たちを夢中にさせてくれる体験を提供してくれる場だとは思われていないということです。ネットによる情報が行き交うなか、特に若い世代にとって、旅行博でなければ入手できないものはないと考えられているからでしょう。台北やバンコクでは旅行博はお祭りとして盛り上がっていましたが、上海ではどうやらそうでもないようです。

ことほどさように、上海人というのはクールな消費者なのです。その背景には、クールな階層社会の現実があります。上海の消費者に日本をアピールしていくには、大衆層向けのPRだけでなく、中国的な階層社会のリアリティをふまえた戦略が必要となるのでしょう。

次回は、ボリュームゾーンである大衆層の動向予測について。春秋国際旅行社日本出境部経理の唐志亮氏に同グループの訪日旅行戦略を語ってもらいます。

※中国の海外旅行市場についての詳細は、中村の個人ブログ「2014年の中国人の海外旅行、調子はどうですか(上海WTF2014報告その3)」、「春秋旅行社のチラシに見る上海人の海外ツアーの中身(上海WTF2014報告その4)」などを参照のこと。
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by sanyo-kansatu | 2014-06-27 08:29 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2014年 06月 18日

日本の文化をストーリー仕立てで伝え、訪日につなげる多国籍フリーマガジン

成田や羽田空港の到着ロビーに、ひときわ目につく英字フリーマガジンが置かれています。『WAttension Tokyo』は巷にあふれる外国人向けフリーペーパーとはまったく異なるオリジナリティと可能性を持っています。発行元の和テンション株式会社の鈴木康子代表取締役に、どこが他誌とは違うのか、そもそもの成り立ちから今後の展開まで話を聞きました。

目次:
雑誌『和テンション(WAttention)』について
創刊の時期と目的
外客誘致につなげた事例
スマホアプリとの連携
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―『和テンション(WAttention)』とはどんな雑誌ですか?

ひとことでいえば、日本の文化情報に特化して、日本で唯一世界展開している多国籍フリーマガジンです。

現在、年4回発行の東京版をはじめ、世界9カ国・地域(シンガポール、マレーシア、タイ、ロサンゼルス、フランス、台湾、インド、そして今年6月香港版も登場)で展開しています。東京版は、成田・羽田空港の到着ロビーやホテル、大使館、外国人記者クラブなど、都内約350か所で配布しています。海外の旅行博では、各国のスタッフが会場で自国版を配布しています。

日本の情報を発信する以上、記事は東京でつくることが多いですが、編集方針として四季(季節感)を大事にしています。

各国版の共通コンテンツとして「こよみを楽しむ」という連載コーナーがあり、そこでは日本の文化を理解してもらうカギとなる季節の風物や食などを紹介しています。弊誌のこだわりとして、一般の情報誌のような表層的な情報は扱いません。

取材も、日本人とNon-Japaneseとが一緒に行うことで、日本の文化的背景をふまえ、外国人の新鮮な視点を盛り込むことに努めています。

読者ターゲットは海外の日本好きのFITです。台湾版と香港版、タイ版、フランス版以外は英字誌ですが、世界展開することで、日本を訪ねてきた外国人旅行者向けの「着地型メディア(東京版)」と、旅行に行く前に日本への興味を喚起し、誘客につなげる「現地型メディア(各国版)」の2つの機能を併せ持つことができるのです。

―創刊はいつですか。どんな経緯から立ち上がったのですか?

シンガポール版の創刊は2010年で、東京版は11年4月です。もともと弊社はシンガポールで邦人向け現地情報誌『マンゴスティン倶楽部』(1997年創刊)を発行していました。これはシンガポール在留邦人や旅行に来る日本人向けの日本語情報誌で、いってみればシンガポールのインバウンドに貢献するビジネスだったわけです。
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この仕事を通じて私たちはいかにシンガポールの観光政策が優れているか、精通することができました。08年に日本にも観光庁が設立され、日本でも観光誘致を本格的に始めることを知り、海外在住の私たちだからこそできる日本のインバウンドへの貢献はないかと考え始めたのが09年頃です。

シンガポールで仕事をしていて感じるのは“メイド・イン・ジャパン”クオリティに対する信任です。日本人がいいという店に行きたいと彼らは言います。

日本人の評価そのものに価値があると考えられているのです。ところが、外客誘致にそれが十分活かされているとは思えませんでした『和テンション(WAttention)』という誌名も、日本の和に対する気づきから来ています。もっとちゃんと日本を理解してほしい。そのためにふさわしい媒体が必要だと考えたのです。

―貴誌が外客誘致につなげた具体的な事例を教えてください。

東京版2012年冬号で大田区を特集しました。区からの依頼で訪日外国人向けにリサーチを行い、同区内のさまざまな観光ポイントを記事化しました。それを台湾版、ロサンゼルス版、シンガポール版にも転載し、日本政府観光局(JNTO)のFacebook上、WAttention web上でアンケート募集を実施したところ、5カ国から700名強の応募ありました。さらに、大田区特集のコンテンツを別刷りとして別冊“Letʼ’s all go to Ota City Tokyo”を制作しました。
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シンガポール版2014年春号では、山梨県と長野県、岐阜県の3県の「山国紀行」特集を企画しました。海外スタッフと日本人による取材を通じて、3県を訪ねる新しいモデルコースを造成し、シンガポールの旅行会社で実際にツアーを募集してもらいました。
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弊社はこうしたファムトリップ招聘事業を通じて、国内在住、もしくは海外から外国人やメディアを招聘し、さまざまなコンテンツとして記事化し、掲載することができます。

弊誌のもうひとつの特徴は、日本からの広告出稿だけでなく、海外現地企業の広告も多いことです。それだけ現地の方に読まれている証拠といえます。その国にローカライズした内容構成を心がけているからです。

―今後は雑誌以外にも多元的な展開があるそうですね。

弊社のビジネスモデルは、『和テンション(WAttention)』シリーズの発行をベースに自社ウェブサイトで情報発信するメディア事業に加え、これまで述べたように、イベント事業やリサーチ・コーディネーション事業(ファムトリップの手配、企業のシンガポール進出サポート、翻訳・通訳手配など)を行うものです。

我々のミッションは、日本の文化コンテンツをストーリー仕立てで海外に伝え、共感を得てもらい、訪日につなげることにあります。

今後はスマホアプリを雑誌と連携させていきます。7月に「WAttention App-WTN Guide(仮称)」をオープンする予定ですが、事前にダンロードしておけば、現地で店舗の地図やクーポンなどのお得情報を入手できます。

このアプリはKPI(訪問回数などがモニタリングできる重要業績評価指標)を取得できるので、スマホでかざすマーカーを雑誌と店舗の両方で用意しておけば、雑誌から店舗への誘引率などもわかるのが特徴です。

また11月にシンガポールの大型ショッピングモールのジュロン・ポイントに「WAttention Plaza」という催事場をオープンさせます。そこは日本の文化に触れられる常設の展示スペースとして活用していただけると思います。物販やイートインも可能なので、観光に限らずさまざまな日本の情報発信ができるはずです。前述のアプリのダウンロードプロモーションも実施する予定です。
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和テンション株式会社
東京都港区南青山5-18-10-202
www.wattention.com

<編集後記>
成田空港に置かれていた『和テンション(WAttention)』を初めて読んだのは、新宿歌舞伎町特集(2013年夏号)のロボットレストランの記事でした。近未来都市を描いた映画「ブレードランナー」の話から書き起こされる同レストランの記事を読んで、これはサブカルチャーを含めて日本の事情に詳しいライターさんが書いたものだと感じました。その話を鈴木代表に話すと、「日本在住の海外メディアの記者や特定のジャンルの専門ライターに記事を書いてもらっている」とのこと。「表層的な情報は扱わない」という編集方針とはそういうことです。

東京で入手できる英字フリーペーパーといえば、ロンドンをベースに世界展開している『Time Out Tokyo』のことが思い浮かびます。でも、よく考えてみると、同誌は東京でしか入手できないのに対し、『和テンション(WAttention)』は海外でも発行されていることがまったく違います。

ここ数年で外国人向けフリーペーパーは雨後の筍のごとく誕生しましたが、それらと『和テンション(WAttention)』が根本的に違っているのは、編集方針はもちろんですが、ビジネスモデルにおいてもそうです。海外で発行されていることから、単なる訪日誘客メディアとしてだけではなく、海外に進出したいと考えている企業にとっても使い勝手のいい媒体として機能しているからです。

こうした独自性は、シンガポール在住の日本人たちによる自由な発想から生まれたものでしょう。鈴木代表は「シンガポールの観光政策から学ぶことが多かった。MICE誘致しかり、周辺国・地域の観光インフラを開発し、それも含めてシンガポールの外客誘致に結びつけているところなど、日本はもっと学ぶべき」と言います。

彼女と話していてあらためて認識したのは「英語を話す華人」の存在です。2013年の訪日シンガポール人は約19万人。中国・台湾・香港を含めた華人全体から見ればわずかな存在にすぎませんが、英語ゆえのワールドワイドな広がりがあります。次々と海外で雑誌を立ち上げていく手腕には大きな可能性を感じます。こういう先進的なメディアをこれからどう活用していくべきか、考えるだけでも楽しくなります。
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by sanyo-kansatu | 2014-06-18 21:13 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 06月 09日

インド人の日本旅行の訪問地が東京・大阪プラス広島の理由(アセアン・インドトラベルマート2014その2)

アセアン・インドトラベルマート2014会場で、もうひとり話を聞いた海外バイヤーが、ムンバイから来たNarayan Kabraさんでした。彼はインドのオンライン旅行社Yatra Online Pvt Ltdの社員で、今回初めて来日したそうです。
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Yatra Online Pvt Ltd
http://www.yatra.com

商談の合間に少し時間をつくってもらい、話を聞きました。

―インド人の日本ツアーの一般的なコースとツアー代金の相場を教えてください。

「ツアー期間は1週間で、東京3日、大阪3日、広島1日の滞在が一般的です。ツアー代金は約10万5000ルピー(約30万円)です。航空運賃が高いのが問題です」

―広島を訪ねる理由は何ですか。他のアジアの国ではあまり聞いたことがないからです。

「インド人は第二次世界大戦の歴史に関心がありますから、広島の原爆ドームや平和資料館を訪ねたいと考えているのです」

―日本旅行中、気になることはありますか。

「インド人はヴェジタリアンが多いので、食事の問題があります。ホテルを選ぶ際も、近くにインドレストランがあるのが条件です」

―最近、日本にもインドレストランのチェーン店が増えています。

「今回私もよく見かけました。でも、カウンター席しかない小さなレストランは利用しにくいです。インド人の海外旅行は家族連れが多く、使いづらいし、ビジネスマンもあのようなカジュアルなレストランは使いたがりません」

―なるほど。他には要望はありますか。

「インド人は海外旅行に行くと、ナイトライフを楽しみたいと考えていますが、日本には外国人が楽しめるようなナイトエンターテインメントがほとんどありません。インド人は夜が遅いので、食事を楽しみながら見られるショーなどがあれば、喜んで行くと思いますよ」

話を聞きながら、日本に来た以上、広島には必ず足を運ぶというインド人は、さすがパール判事を生んだ国だと思いましたね。昨年訪日したインド人は約7万5000人といいますから、富裕層やビジネスマンに限られ、基本的に知的な層が大半を占めると思われますが、その国の歴史教育によって観光地の選択も、これほど影響があるものなのだとあらためて思いました。インド向けのプロモーションにおいて、広島をどうPRするか、知恵を絞る必要があるようです。
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by sanyo-kansatu | 2014-06-09 08:59 | “参与観察”日誌 | Comments(0)