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2013年 09月 26日

タイ人客の誘致は食のプロモーションと連動させるべき(TITF報告その4)

8月中旬にバンコクで行われたタイのトラベルフェア(Thai International Travel Fair #13)で、日本からの出展団体で構成されるジャパンゾーンが盛況だったことを先日報告しましたが(→圧倒的なにぎわいを見せたジャパンゾーン。その理由は?(TITF報告その2))、その点について以前ぼくはこう書きました。

日本側がこれほど積極的だったのは、出展団体の多くが、昨年以降の中国に対する嫌厭感からにわかに進んだ日本経済の東南アジアシフトの機運と同調しているからだろうと。

ローカルブースに出展しているあるタイ在留邦人も、はっきりこう言います。「こんなに日本からの出展が増えたのは、中国問題にある。中国で痛い目に遭ったから、タイしかないというムードになったにすぎないのでは」。

日タイ関係を長く見てきた現地邦人たちは、今回のジャパンブース盛況の理由を意外に冷静に見ているのです。そして、彼はこう付け加えました。

「今後、日本の皆さんが期待するほどのタイの訪日旅行マーケットの爆発が起こるとは限らない。それは事前に了解しておいてほしいと思います」。

確かに、タイはここ数年、目覚ましい経済成長を遂げ、少なくともバンコクにいて巨大なショッピングモールに繰り出すタイ人たちの旺盛な消費力を目にしていると、この国に多くの海外旅行者が現れても、なんら不思議ではないとぼくは感じました。

実は、タイではこのところ政変や大洪水など、経済成長にブレーキをかける事態が頻発しました。それでも、現地関係者によると「タイの海外旅行市場は、2011年後半(10月末から12月前半)の大洪水の影響で12年度前半は落ち込みが見られましたが、後半は持ち直し、最終的に12年全体の統計では、タイ人の海外旅行者数は前年度比6%増の572万人」とのことです。

タイの海外旅行者数は、2012年時点で572万人という規模です(しかも、数では国境を接したマレーシアなど近隣国が上位を占めます)。そのうち、訪日したのは26万人。たとえば、同じ年の中国の海外出国者数は8300万人で、訪日は140万人です。確かに、インバウンドは市場規模がすべてではありません。むしろ市場の分散の必要こそが、昨年の教訓ですから。しかし、市場規模の違いは歴然としています。タイの人口は約6600万人ですが、広東省の人口だけで約9000万人いるのです。

その点について、別の在留邦人はこう指摘しています。「タイを訪れる日本人は1990年代に入り急増しましたが、2000年代に一時停滞しました。それでもここ数年また東南アジア経済の成長で持ち直し、だいたい年間120~30万人で落ち着いています。

つまり、渡航者数には頭打ちの時期があるのです。では、訪日タイ人数の落ち着きどころはどのくらいか? こればかりは誰にもわかりませんが、私はだいたい50万人くらいではないか、と考えています。根拠があるわけではないですが、タイの人口や経済規模からいって、そのくらいに見積もるのが妥当という考えです」

タイの訪日市場の伸び率は高いけれど、伸びしろには限りがあるのではないか。

昨年、中国で傷ついた日本人は、あらゆる面で好意的なムードと環境に恵まれたタイに来て癒された。実は、今回ぼく自身まったくそうでした。その気持ちはわかるけど、ムードだけで押し寄せても、どれだけの成果を得られるか、冷静に検討する必要があるだろう、という現地の声もあるのです。

タイで富裕層向け訪日旅行のフリーペーパー『The Cue Japan』を発行するO2 Asia Travel Design Co.,Ltd.の吉川歩代表取締役社長は、こう分析しています。
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The Cue Japan
https://www.facebook.com/pages/The-Cue-Japan/232035476859567

「タイの訪日旅行市場の規模を推定するポイントは2つあります。まず、すでにいるリピーターがあと何回日本に来てくれるか? そして、初めて来日するタイ人旅行者があとどれだけ残っているか?」

我々日本サイドが新しく“発見”したと思っていたタイという優良な訪日旅行市場も、現地の感覚ではすでにかなり成熟しているというのです。こうした現地サイドの客観認識をふまえ、これからタイ市場に対して何をすべきなのか。吉川さんはこう提言します。

「まず大事なのは、リピートできる都市を増やすことでしょう。現在、東京、大阪、札幌などがそれに当たると思いますが、もっと候補がないとリピーターを増やすことはできません。では、タイ人が1回しか訪れてくれない都市と何度もリピートしてくれる都市との違いは何か。それは食にあると思います」

タイ人の日本食好きについては、本ブログでも何度か紹介してきましたが(→タイ人はイチゴが大好き!? 旅行作家・下川裕治さんが語る「タイ人客はドーンと受け入れてあげるといい」)、やはり誘致のカギは食にあるというのです。吉川さんは言います。

「タイ人の訪日誘致は観光だけでは十分ではないと思います。地元の食の魅力を打ち出すことが、知名度を上げることにつながります。おいしいものを食べてみたいという動機だけで、その土地に訪れたいと思うのが、タイ人です。もっとそれぞれの地域が地元の食を強くアピールすべきでしょう。

そのためには、今回のトラベルフェアのような場でも、観光PRだけでなく、食のプロモーションと連動させるべきではないでしょうか」

なるほどと思いました。お祭りのようなタイのトラベルフェアですから、きまじめに「観光」PRだけに徹する必要はないのです。

実は、『DACO』(http:www.daco.co.th)という日本人の発行するタイ人向け情報誌の8月号に茨城県の食の物産展の広告が載っていました。そこには、いかにもタイ人が好きそうなイチゴやメロンなどのフルーツや地元食品が写真入りで紹介されていました。
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バンコクではこうした日本の自治体の物産展がよくあるそうですが、残念ながら同県はTITFには出展していませんでした。

つまり、吉川さんは、こうした食の物産展と観光誘致を連動させることが知名度を上げることにつながる。それがタイの訪日旅行市場の開拓にとって重要だと言っているのです。これはすべての国で当てはまる手法ではないかもしれませんが、少なくともタイでは有効なのです。

ところで、話は変わりますが、今回JNTOバンコク事務所がまとめた「TITF速報」には以下のような文面がありました。

・ 開催期間中、VJブースは常に来訪者で賑わっている状況であったが、他国NTOブースは閑散とした状況であり、訪日旅行の人気ぶりが顕著であった。

なかでも中国ブースの閑散とした状況は、たまたま隣にジャパンゾーンがあったことからも、その対照的な光景が印象に残りました。なぜだったのか。これにはいろいろ理由が考えられます。
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まず8月のTITFは2月に比べ、サブ的なイベントであることから、中国側のモチベーションは最初から低かったのかもしれません。いくつかの省ごとに机を並べただけの簡素な出展ブースにパンフレットを置くだけではPRにつながらないことは、最初から彼らもわかっていたことでしょう。午後になると、接客するスタッフすらいなくなっていたほどでした。

実は、先日東京ビッグサイトで開催されたJATA旅博でも、中国ブースでは同様の光景が見られました。「日本からの中国ツアー8割減」というニュースが伝えられる中、商機がないと悟ると、さっさと現場を立ち去る姿は、いかにも「中国人」らしいというべきなのか?

ただし、こんな事情もあるかもしれません。今年、タイを訪れる中国人観光客は過去最高になり、日本人客をはるかにしのいでいます。いまの中国の旅行業界はインバウンドよりもアウトバウンドに関心があるようです。国家旅游局の予算の配分にも影響があるのかも。

それからもうひとつ。日本より数の上では多くのタイ人客が訪れている韓国は、今回のTITFに出展すらしていませんでした(来年2月は出展するでしょうけれど)。今回のTITFにおいてジャパンゾーンが盛況だったことも、競合国のこうしたドライな対応を差し引いて考える必要があるのかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2013-09-26 12:40 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 09月 25日

圧倒的なにぎわいを見せたジャパンゾーン。その理由は?(TITF報告その2)

今回のタイのトラベルフェア(TITF)で最もにぎわいを見せていたのは、ジャパンゾーン(日本の出展ブース)だったといっていいと思います。なにもこんなところで日本を持ち上げても仕方ないのですが、他国のブースと比べても、日本は出展数が多く規模が大きいというだけでなく、力の入れよう、やる気がまるで違っているように見えました。日本の関係者の皆さんはいつも通りの生真面目さで、日本観光のPRにいそしんでおられました。
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では、ジャパンゾーンを見ていきましょう。まず、ジャパンゾーンを束ねている日本政府観光局(JNTO)の「VJブース」です。秋以降の日本ツアーのイメージを打ち出すということもあり、テーマは「祭り」だそうです。
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ここでは日本の特定の地域のPRをすることは基本的にありませんが、来場客からの日本旅行に関する質問に答えるためにタイ人のスタッフを多数常駐させています。
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今回ジャパンゾーンには、以下の24団体が参加しています。

1)日本国観光庁・日本政府観光局(JNTO)
2)北海道観光振興機構
3)北海道観光ブランド育成協議会
4)札幌市
5)仙台市/東北観光推進機構
6)群馬県みなかみ町
7)静岡県
8)北陸国際観光テーマ地区推進協議会
9)日本中部(岐阜県・長野県・名古屋観光コンベンションビューロー)
10)関西&大阪(Jプロデュース)
11)紀伊半島滞在型観光プロモーション事業実行委員会
12)九州観光推進機構
13)ツーリズムおおいた
14)沖縄観光コンベンションビューロー
15)東日本旅客鉄道(びゅうトラベルサービス)
16)東京急行電鉄
17)EDOWONDERLAND日光江戸村
18)ドン・キホーテ
19)東京ディズニーリゾート
20)さっぽろかに本家
21)いわさきグループ
22)JTBグローバルマーケティング&トラベル
23)ジャパニカンドットコム
24)ジャパンショッピング&トラベルガイド

会場をめぐりながら関係者にいくつかヒアリングをしましたが、タイ人が最近急増している北海道や、「昇龍道」という特設ルートを設定し、広域連携する中部や北陸、タイ人誘客を模索している九州、沖縄などのブースが目を引きました。
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北海道のブースでは本物の雪だるまを展示していました。タイの子供たちが寄ってきて、おそるおそる触れていました。ありがちな演出かもしれませんが、常夏の国タイの人たちにはウケるのでしょうね。
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札幌市のブースには日本語を話すタイ人女性が2名いました。「北海道でタイ人がよくツアーに行くのは道南です。札幌、小樽、函館を訪ね、登別温泉に泊まります。雪まつりが人気です」とのこと。
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宮城県仙台市のゆるキャラ「むすび丸」と一緒に記念撮影するタイの女子大生。 
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今年、世界遺産となった富士山はタイ人のツアーには絶対はずせないスポット(静岡県ブース)。
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中部や北陸が広域連携して企画した「昇龍道」。ゴールデンルートに代わる新しい定番ルートになるか?
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ステージで沖縄のエイサーを披露した皆さん。
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Japanレイルパスの販売にも力を入れている。今後増えるであろうタイの個人旅行者の必須アイテムとなるはずだ。
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日光江戸村は早くからタイ人客の誘致に力を入れていた。
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小売業者として唯一日本から出展していたドンキホーテ。
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東京ディズニーリゾートはタイ人にも人気。
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JTBグローバルマーケティング&トラベルの運営する訪日外国人向け宿泊&ツアーサイト「JAPANiCAN」http://www.japanican.com/thai/は今年3月、タイ語のトップページを構築した。
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さらに、ジャパンゾーンとは別の場所で、HISとJTBのバンコク支店のブースがツアー販売を行っていました。彼らは地元の旅行会社と競合しながら、日々タイで営業を行っている現地法人です。興味深いのは、この日本を代表する旅行大手2社が出展したブースの雰囲気とそこに集まる客層、接客スタイルなどを比べると、まるで日本における両社の特徴をそのまま反映しているように見えたことです。
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ひとことでいえば、JTBのブースに集まる客層は比較的裕福に見える中高年が多く、HISには若い客層が多いのです。これは日本でもそうなので、面白いものだと思いました。

タイではJTBもHISもブランド力という観点でみれば、大差はありません。知名度は両社ともまだないといっていい。では、扱う商品や営業スタイルが違うのか。それもあるでしょうが、重要なのは、両社の世界戦略の違いです。つまり、ローカル客に対してどこまで営業に注力しているか、という姿勢の違いでしょう(→「HIS、世界企業へ離陸 東南アジアで消費者開拓」【2013年上半期④HIS】)。

そのせいでしょうか、HISのブースのほうが圧倒的に勢いがありました。その理由については、このブログでも以前少し触れましたが(→「HISタイの訪日旅行の取り組みは要注目です」)、今回は同バンコク支店を取材したので、別の回であらためてもう少し詳しく紹介したいと思います。
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日系企業という意味では、イオンのブースにも興味を持ちました。同社は自社の発行するクレジットカードのPRのための大きなブースを出していたのです。海外旅行者が増えるとクレジットカード需要が増えるのは当然です。イオンはタイで小売分野だけでなく、金融分野でも勢力を伸ばそうとしていると聞きます。
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さて、TITFでは別会場を使った商談会やビジネスセミナーが行われます。今回日本側が強くアピールしたかったのは、8月16日の午後に行われた在タイ日本国大使館による査証免除に関するプレゼンテーションでした。今年7月1日よりタイ人に対する観光ビザの免除が実施されたことに対する広報PRが目的です。
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VJ(JNTO)ブースにも「日本観光に、ビザは不要となりました」とタイ語で書かれたパネルが掲げられていました。

JNTOバンコク事務所のスタッフによると、「今回は8月のTITFとしては日本から過去最大の出展(24団体)となりました。タイ人にとって日本は憧れの国です。ですからビザ免除は、現地メディアでも大きく報道されました。タイの人たちは、今回の決定で自分たちは日本に認められたと喜んでいます」とのことです。

同事務所がまとめた「TITF速報」によると、以下のような問い合わせ、質問があったそうです。

・ 訪問地に関する問い合わせでは、東京~大阪のゴールデンルートに含まれるエリアが最も多く、これに北海道、高山・白川郷が続くといった状況であった。但し、問い合わせは人気地域に集中している訳ではなく、これまで問い合わせの少なかった中国・四国地方などの地域に関する質問も寄せられ、前回2月のTITF旅行フェア同様、FIT旅行者を中心としてタイ人の興味が全国に拡大していることが実感された。

・ 旅行内容についての問い合わせでは、10月をターゲット時期とする旅行フェアのため、紅葉に関する質問が相次いだ。また、FIT層の増加に伴う鉄道パスやレンタカー等の移動手段やWiFi等の携帯電話利用に関する質問、さらには、温泉や食・レストランに関する問い合わせが寄せられた。

・ リピーター増加に連れて質問内容が深化する一方で、「日本のどこに、いつ行くべきか」といった訪日未経験者からの質問も多数寄せられ、訪日旅行市場のすそ野が拡大していることを感じられた。

・ 年末年始に関する問い合わせや、スノーレジャーに関する質問も目立っていた。

・ 査証カウンターでは、滞在可能日数や入国審査時の必要資料について質問を受けた。

(第13回Thai International Travel Fair(通称TTAA旅行フェア)出展についてのご報告(速報)より抜粋)

これらの報告を見る限り、タイの日本旅行客はずいぶん成熟しつつあることを実感します。質問内容からも、彼らが個人旅行の意欲にあふれていることもうかがえます。タイの消費者がこうした状況を迎えた中で実施された観光ビザ免除は、両国にとってきわめて好タイミングだったというべきでしょう。

今回会場で会った多くの関係者に共通していた声があります。それは、ジャパンゾーン(日本の出展ブース)が盛況だったのは「円安、ビザ緩和」が主な理由だろう、というものでした。たまたま2013年が「日本アセアン友好協力40周年」にあたり、「(アセアン客)訪日100万人プラン」という明快な政策目標が掲げられていたこともあるでしょう。しかし、日本側がこれほど積極的だったのは、昨年以降の中国に対する嫌厭感からにわかに進んだ日本経済の東南アジアシフトの機運と同調しているからだと思います。

JNTO関係者によると、来年2月のTITFの日本からの出展団体はさらに増えるだろうと予測しているそうです。

こうしてみると、今回のタイのトラベルフェアにおけるジャパンゾーンの盛況ぶりは、日本とタイ両国の双方のそれぞれの事情が、偶然であれ何であれ、うまく結びついた結果なのだろうと思います。このようなことは、いつでも、どこの国との間でも起こるとは限りません。だからこそ、タイとの関係は大切にすべきだといえるでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2013-09-25 16:39 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 09月 25日

8月中旬、タイのトラベルフェアに行ってきました(TITF報告その1)

8月中旬、タイのトラベルフェア(Thai International Travel Fair #13)に行ってきました。日程は、8月15日(木)~18日(日)。会場はバンコクのシリキット国際会議場(Queen Sirikit National Convention Center)です。
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TITF(ただし、サイトの内容はすでに来年春の告知に更新)
http://www.titf-ttaa.com/
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タイのトラベルフェアは毎年2月と8月の年2回、開かれます。タイの旅行シーズンは4月のソンクラーン(旧正月)と10月のスクールホリデー(夏休み。タイでは10月がいちばん暑い!)なので、それを当て込んで2か月前に催されるのです。

というのも、日本や中国などで開催されるトラベルフェアとの大きな違いは、会場が旅行商品の一大即売会となることです。つまり、タイのトラベルフェアの会場には、単に観光局や旅行関連の展示ブースが並ぶだけでなく、航空券やホテルの宿泊券、パッケージツアーなどが特別価格で販売されるのです。当然会場は、この機を逃すまいと足を運ぶ一般客の姿であふれることになります。
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9月下旬現在、来場者数は集計中ということで発表されていませんが、参考までに昨年8月の同旅行フェアの主催者発表を挙げると、30万人だそうです。総売上も集計中ですが、昨年は3億バーツ(約9.3億円 1バーツ=3.1円)。

総出展ブース数もまだですが(昨年8月は597ブース)、今回出展した海外の主な政府観光局は、中国、台湾、マレーシア、フィリピン、インドネシアなどでした。大体の規模がおわかりになったかと思いますが、実はタイのトラベルフェアはもともと2月がメインで、8月のイベントの規模はそれに比べると小さいそうです(8月の開催は2011年から。また2月の来場者は毎年約80万人、売上も30億円規模とのこと)。

では会場をざっと眺めていきましょう。

会場は大きく各国の政府観光局、エアライン、ホテルといった展示が中心のブースと、海外や地元タイの旅行会社や旅行グッズ、ガイドブックなどの展示即売&物販ブースに分かれています。
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珍しいところでは、ブータンの政府観光局ブースもありました。また、レンタカーやアウトドア関連の物販、クレジットカードの入会など、あらゆる旅行にまつわる商品のブースが集まっています。こうしたブースを眺めているだけで、タイ人の旅行シーンの現在形が見えてきます。
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展示即売ブースでは、各社ともパネルに各種ツアー料金リストを大きく貼り出し、チラシやパンフレットを配るのはもちろんですが、その場に特設カウンターを設け、ツアーを販売しています。来場客はいくつもの会社をめぐり、ツアー商品の中身と料金を見比べ、これぞと思うツアーを見つけると、その場で予約申し込みをします。なぜなら、前述したように、各社はこの会期中限定のスペシャル料金で売上を競い合っているからです。
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会場には、床に座り込んで、ブースめぐりでかき集めた大量のチラシやパンフレットを整理している一般客の姿もよく見かけます。いかにもタイらしい光景ですね。
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また特設ステージも設置されていて、常時各国エリアのプロモーションイベントやショーが繰り広げられています。タイのトラベルフェアにはお国柄がよく表れていて、お祭りのような楽しさにあふれていました。
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最後は会場に華やぎを与えてくれた、エアラインのキャンペーンガールたちのスナップです。ともにタイのLCC、ノック・エアとジェット・アジアの2社です。タイはアジアのLCC先進国のひとつです。その件はまた後日。
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さて、出展していた日本のブースの様子はどうだったでしょうか。次回「圧倒的なにぎわいを見せたジャパンゾーン。その理由は?」をご参照ください。
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by sanyo-kansatu | 2013-09-25 11:35 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 07月 12日

香港客大躍進の背景に「Rail & Drive」プロモーションあり !?

このところ、タイの訪日旅行について報告を続けていますが、日本政府観光局(JNTO)の報道資料によると、香港が5月の統計では対前年同月比82.2%増とトップです。タイは確かに1~5月の総数ではトップですが、5月単月でみると香港がすごい伸びです。

タイ人もそうですが、香港人もたくさん日本旅行に来ているんです。どうしてなのか?

日本政府観光局(JNTO)2013年6月19日報道資料
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/130619_mothly.pdf

実は、先日タイ人に人気の西新宿の焼肉店「六歌仙」を訪ねたとき、「タイ人の来店も多いですが、最近は香港のお客さまの来店も増えていますよ」と社長は話していました。いま東京では特に香港の個人客が多く出没しているようなのです。

JNTOは香港の訪日客大躍進の背景について以下のように分析しています。

「香港は、仏誕節(5月17日(金))により3連休となり、近距離の海外旅行をしやすい環境だったことや、先月から続く航空会社によるプロモーション料金の設定が訪日旅行客数の大幅増加の要因となった。訪日旅行は円高の是正により都市圏へのショッピングを目的とした旅行者の増加が目立った。さらに、鉄道旅行とドライブ旅行のトレンドを醸成し、訪日旅行の需要拡大を図っている」

要するにどういうことなのか--。JNTO香港事務所所長の平田真幸さんに直接お尋ねしたところ、以下のコメントをいただきました。

「(訪日客急増の背景には)円高是正で、今まで我慢していた人たちが一気に動き出したことがあります。4月頃から割安の航空券が出ていることも、それを後押ししています。さらに、我々JNTOが今年から進めている『Rail & Drive』プロモーションで新たな日本の魅力が効果的に打ち出せていることが大きいと思います」

「Rail & Drive」プロモーションって何でしょうか?

JNTO香港の今年度のプロモーション方針によると、「『Rail & Drive』を活用した新しい訪日旅行のスタイルをテーマにプロモーションを『a different Japan Rail & Drive』と名づけて展開」しているそうです。

平成25年度 香港市場プロモーション方針・事業計画概要
http://www.jnto.go.jp/jpn/services/pdf/pp_hongkong.pdf

a different Japan Rail & Drive
http://www.welcome2japan.hk/differentjapan/
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地元香港経済新聞によると、「香港人で日本旅行に行く人は4人に1人が10回以上の渡航経験を持つ。75%がFITと呼ばれる個人旅行客で、最近では電車やレンタカーを駆使して旅行行程を組むパターンも多い。

日本人が観光するのと同じように、香港人が電車を使ったり、レンタカーを予約するなど高度な旅行プランを組めるようになったことで、これまで外国人観光客が訪れることが少なかった地域にも香港人が現れるケースはさらに増えそうだ」そうです。

レール&ドライブで渡航スタイル向上-香港人の日本旅行、過去最高の推移(香港経済新聞2013年5月13日)
http://hongkong.keizai.biz/headline/41/

要するに、我々日本人が鉄道や飛行機とレンタカーを組み合わせて国内旅行するのとまったく変わらないスタイルで香港の人たちが訪日旅行を楽しむようになったということなのです。それは日本人がハワイやアメリカでレンタカーを借りてドライブ旅行しているのと同じです。

香港の訪日客の約8割は、飛行機とホテルのみ予約を入れて来日し、自由旅行を楽しむFITです。日本人が3泊4日で香港グルメの旅に行くのと同じ気軽さで、日本を楽しみに旅行に来るのが香港人というわけです。

同記事の中には、香港客の受け入れをさらに進めるために日本側が努力しなければならない点として、前述の平田真幸JNTO香港支局長が以下の指摘をしています。

「香港人の渡航スタイルの成熟度を受けて、『訪日旅行をもっと増やすためには、日本の皆さんが海外をもっと経験する必要がある』と指摘。『ATMやWi-Fi(ワイファイ)・言語など日本はまだグローバルスタンダードに追いついていない点もある。外国人の求めるものを分かってこそ』」

香港から戻ってきた知り合いの多くが、東京ではWi-Fiが使えないとよく言います。この種のインフラ整備は、紙のパンフレットを量産するよりもっと優先しなければならないことを香港客は我々に教えてくれています。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-12 12:06 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 06月 12日

21回 2012年、世界一の海外旅行大国になった中国で、訪日だけが減少。どう考える?

4月9日~11日、北京で開かれた中国出境旅游交易会(COTTM2013)(http://www.cottm.com/)に行ってきました。
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中国の旅行展示商談会といえば、今年5月で10年目を迎えた上海世界旅游博覧会(WTF http://www.worldtravelfair.com.cn/ ※ただし、今年は主催者側より日本ブース参加停止の要請あり)や、6月21日~23日に北京で開催予定の北京国際ツーリズム・エキスポ(BITE http://www.bitechina.com.cn/)などのB2Cのイベントに、これまで日本からも多くの関係者が出展したことで知られています。一方、COTTMは国内外の旅行業者だけが集まるB2Bの商談会で、今年で9年目を迎えます。
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会場は、北京市朝陽区にある全国農業展覧館。社会主義を標榜したかつての中国を思い起こさせる石造りの重厚な建築(1959年開館)で、さまざまな業界の展示会や商談会が頻繁に行なわれています。

海外から62カ国、275団体・企業が出展し、4000名を超える中国の旅行関係者が来場したと公式サイトは伝えています。展示についてはあとで触れるとして、今回興味深かったのは、国内外の業界関係者が登壇し、さまざまなテーマで意見を交わすフォーラムでした。ここで議論される内容は、現在の中国の海外旅行市場を理解するうえで参考になります。

“New Chinese Tourist”(中国新型旅客)とは何者か?

3日間を通じたフォーラムのテーマは、おおむね以下の4つでした。

①中国のラグジュアリー旅行の展望
②旅行業におけるSNS活用(中国で海外旅行に最も影響のあるメディアとして)
③業界の抱える6つの課題(査証問題を中心に)
④不動産投資旅行に対する業界の取り組み

4つのテーマに共通するキーワードは“New Chinese Tourist”(中国新型旅客)です。

いったい“New Chinese Tourist”とは何者なのか? それが今回の最重要キーワードだというのは、十分すぎるほどの理由があります。

2012年、中国がドイツ、アメリカを抜いて海外旅行マーケットで世界一の規模になったからです。

「Are you ready?」。そう問いかけるのが、フォーラムの司会進行を務めるProf. Dr. Wolfgang Georg Arlt(以下、教授)です。
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ドイツ出身のTourism Scientistである教授は、2004年に自ら設立した中国出境旅游研究所(COTRI)の代表として、中国の海外旅行市場に関する継続的な調査研究を行い、今回のCOTTMの企画運営にも参加しています。

フォーラムの冒頭で、教授はこう語ります。

「今年4月4日、国連世界観光機関(UNWTO)は、2012年中国が8300万人の出国者と1020億ドル超の消費額を記録し、ドイツ(前年度1位)、アメリカ(前年度2位)を抜いて世界最大の海外旅行市場になったと発表しました。2013年には9500万人の出国者が推計されています。これはUNWTOがかつて予測した2020年までに1億人というスピードをはるかに超えたものとなっています」

教授によると「いまや中国の海外旅行市場は“洗練とセグメントの時代”を迎えている。その主人公は、“New Chinese Tourist”である。彼らは“新しい顧客”であり、彼らを取り込むには、新しい流通とチャネル、そして新しい要求に応えていかなければならない。

彼らは他人に自慢するために観光地でスナップ写真を撮るためだけの目的では満足せず、特別な場所で特別な体験をしたいと考えている。これからの中国の旅行業界が取り組むべきは、ニッチな商品の開発と新しい渡航先の開拓だ」と結論しています。

※Prof. Dr. Wolfgang Georg Arltのスピーチの詳細は、中村の個人blog「2012年、中国は米独を抜いて世界一の海外旅行大国になった(COTTM2013報告 その2)」http://inbound.exblog.jp/20499744/を参照。

多様な国々が出展している理由

では、出展ブースを覗いてみましょうか。正面玄関を抜けると、目の前の一等地に左右に分かれて巨大なブースを展開していたのは、メキシコ観光局とトルコ観光局です。
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正面に向かって左に進むと、アフリカ諸国のエリアです。エチオピアやチュニジアなど、色鮮やかなブースが並びます。民族衣装を身につけたスタッフも多く、陽気な雰囲気です。もともと中国にはアフリカ諸国からの留学生が多く、経済関係も深いだけに、なるほどという感じがします。
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一方、右側のエリアはヨーロッパや中近東諸国が中心です。ヨーロッパといっても英仏独といった主要国ではなく、スロバキア(中国語で「斯洛伐克」!?)やクロアチア、アゼルバイジャンといった旧社会主義圏の国々を中心とした観光局のブースが続きます。

奥の広いスペースに、今回最大の出展面積を誇るアメリカ各州の観光局の共同ブースや中南米、アジア各国のブースがありました。

出展国のラインナップを見ながら、中国人はこんなマイナーな国々にも海外旅行に出かけるような時代になったのか、と驚かれるかもしれません。旅行マニア向きとでもいうべき多彩な国々の出展ブースが並ぶ光景は見ているだけでも興味深いです。気になるのは、主要国の中で唯一日本からのブースだけがひとつもないことでした。

ただし、それはCOTTMが一般消費者を対象としたB2Cの展示会ではないからともいえます。確かに、ハワイや香港などのブースもありません。旅行業のプロだけが集まる展示商談会だけに、よく知られた人気ディスティネーションは出展の必要がないためでしょう。消費者が来場しない以上、彼らもPRする効果がないと判断するからです。

それでも、個々のブースは小さいため目立ちませんが、ヨーロッパから28か国の出展者がいることに注目すべきでしょう。それらの出展者の特徴は、前述したスロバキアやクロアチアなど、中国市場における新参のディスティネーションが観光局中心であるのに対し、英仏独などの主要国では、極地旅行や海外ウエディング、自由旅行などの専門ジャンルに特化した旅行会社が出展しています。
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すでに団体ツアーが多数訪れている主要国では、個人客を対象としたSIT(スペシャル・インタレスト・ツアー:特別なテーマや目的に特化したツアー)向けの商品を販売する民間の旅行会社のブースが出展しているということなのです。彼らのターゲットが“New Chinese Tourist”(中国新型旅客)であることは明らかです。

※COTOMの出展国のリストや展示ブースの詳しい様子については、中村の個人blog「出展国が渋すぎる!? 北京のB2B旅行展示会(COTTM2013報告 その1)」http://inbound.exblog.jp/20482576/を参照。

中国人はビザ問題に不満を持っている

さて、フォーラム2日目の午後3時からパネルディスカッションがありました。テーマは「中国出境旅游运营商研讨&签证问题(Tour Operators & Visa)」。中国の海外旅行市場でいちばんホットな話題は何か。なかでも市場の個人旅行化のへ動きとビザ問題について、業界としてどう向き合うべきか、というものでした。
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今回のテーマ出しは、中国の旅行関係者の事前の投票によって決められたそうです。彼らがいまどんな問題に頭を悩ましているか。まさに一目瞭然の結果が出ています。 そのうち上位6つの話題が以下のとおりです。

①半自助旅游(160 票)
②中国新型旅客(155票)
③ビザ問題(152票)
④人材育成(149票)
⑤アメリカの新ビザ制度について(赴美签证新规)(143票)
⑥オンライン購入について(129票)

①「半自助旅游」というのは、航空券とホテルを旅行会社で予約するだけの自由旅行のことです。日程と宿泊場所だけが決まっていて、観光や食事などは各自が自由に楽しむツアーで、業界では「スケルトン型」と呼ばれます。日本ではよくあるツアー形態のひとつですが、未だに団体ツアーが主流の中国では、「半自助旅游」が増えることが旅行会社の営業にどんなダメージを与えるのか。それともこれは好機なのか、というのが議論の中心でした。「半自助旅游」が増えれば、旅行会社が顧客のために手配する仕事が減るため、利益も減ることが考えられるからです。

②「中国新型旅客」も①につながるテーマです。まさに“New Chinese Tourist”問題そのもので、旅慣れた「新型旅客」の多様な要求に旅行業界はどこまで応えることができるか、というのがポイントでした。これらのテーマは日本の旅行業界では1980年代からいまに至るまで議論され続けているものです。

一方、③④⑤については、中国固有の問題といえそうです。まず③と⑤ですが、これは共通の内容といえるのでふたつを足せば、ビザ問題が彼らの最大の関心事であることがわかります。

現在、中国人が海外旅行に出かける場合、団体ビザを取得して旅行会社の催行するツアーに参加するのが一般的です。これだけ個人旅行や自由旅行への志向が強まっているにもかかわらず、それを実現できるのは全体で見れば、まだ一部の層にすぎません。これは中国が世界の多くの国々とADS(Approved Destination Status)ビザ協定を結んでいることと関係あります。これは、不法移民を防ぐために各国との間で結ばれた中国在住国民を対象とした特別な協定です。1983年に香港・マカオから始まったこの協定は、2000年代以降、オーストラリアや日本との締結を皮切りに、欧米諸国や南米アフリカ諸国へと急速に広がっていきます。

Approved Destination Status (ADS) policy(China Outbound Travel Handbook 2008)
http://chinacontact.org/information/approved-destination-status-ads-policy

一般にヨーロッパ諸国との締結は2004年以降、アメリカとは2008年。その結果、多くの中国人団体観光客が欧米を旅するようになりました。

最初のうちは、彼らもいろんな国に旅行に行けるようになったことを喜んでいたものの、ふと周囲を見渡すと、日本や香港など他の国・地域の人たちと同じように、自分たちも個人旅行や自由旅行に行きたいと思うようになるのは当然のことでしょう。

近年、日本で中国人に対する個人観光ビザの取得条件が緩和されたり、マルチビザ取得の条件が加わったりしているように、欧米諸国でも同様の緩和措置が徐々に進んでいます。それでも、彼らはまだ不満そうです。「いまや中国は世界一の海外旅行大国になったのに、なぜビザ緩和が進まないのか」と感じているのです。

※パネルディスカッションの詳細については、中村の個人blog「世界一なのに、なぜビザ緩和が進まないのか~中国の不満とその言い分(COTTM2013報告 その4)」http://inbound.exblog.jp/20514969/を参照。

中国の旅行商談会に出展する今日的意味

これまで見てきたとおり、COTTMは中国の旅行業者にとって“New Chinese Tourist”(中国新型旅客)のための新しい旅行先や新機軸の商品を開拓するための情報交換と商談の場となっていることがわかります。それは海外の事業者にとっても絶好のアピールチャンスといえます。

そういう意味では、日中関係が悪化しているとはいえ、この場に日本からの出展者がいないことはちょっと残念でした。中国から見て日本市場はヨーロッパと同様、チープな団体ツアーの大量送客が主流だった段階から、個人客を対象としたSIT(スペシャル・インタレスト・ツアー:特別なテーマや目的に特化したツアー)の時代に移ろうとしているはずなのに、それをPRしようとする事業者がいないというのですから。

確かに、今年は上海世界旅游博覧会(WTF)の主催者側から日本ブースの参加停止の要請があったように、民間ビジネスに「政治」を持ち込む中国の旅行展示商談会に出展する意味をどう考えるかについては、いろんな見方があるとは思います。

とはいえ、これまでのように一般消費者を対象とした海外の旅行展示会に自治体主導で横並びに出展するというスタイルが効果的なのか、いまいちど考え直す必要はあります。一般消費者向けのPRは団体ツアーの集客には適しているかもしれませんが、個人客についてはどうなのか。自分たちが本当に集客したい対象は誰なのかという検討もそうですし、相手のマーケットも時代とともに変容していくことを頭に入れるべきでしょう。

今回の視察を通して、これからは一般消費者向けの展示会はオールジャパン式で毎回特定のテーマに絞り込んだ新しい出展スタイルを採用、競合する他国との差別化を意識して日本独自のPRに徹する。その一方でヨーロッパの専門旅行会社のように、個人客の取り込みを図りたい個別の事業者や団体・地域はB2Bの商談会に出展し、自らの売りを現地のSIT専門の旅行会社にアピールするという2タイプに振り分けてプロモーションするというのが、今日の中国の海外旅行マーケットの実情に即したあり方ではないかと思いました。

※本稿で触れなかったその他、中国の海外旅行マーケットの新しい動向については、以下を参照。
「中国の旅行業界に貢献したアワード2013受賞者の顔ぶれから見えること(COTTM2013報告 その3)」http://inbound.exblog.jp/20501949/
「中国の海外不動産投資ブームをいかにビジネスチャンスとするべきか(COTTM2013報告 その5)」http://inbound.exblog.jp/20520343/

地道な訪日誘客活動は続けられている

中国出境旅游交易会(COTTM2013)の視察や北京の旅行関係者との交流を通して、今回強く感じたことは、中国の海外旅行マーケットの現況に対する日中の温度差でした。今年に入って、日本のインバウンド関係者が中国での営業を諦め、寄りつかなくなったという話を聞きました。この時節、国を挙げた東南アジアシフトのムードに乗りたい気分はわからないではありませんが、現地の旅行関係者からは「なぜこれまであんなに熱心に中国で営業を続けていたのに、あっさりその積み重ねを放り出してしまうのか」と残念がる声もありました。

その一方で、現地では地道な訪日誘客活動が続けられていることも知りました。

今回どうしてもその話を紹介したかったので、日本政府観光局(JNTO)北京事務所の飯嶋康弘所長におうかがいしたところ、以下のコメントをいただきました。昨年秋からの事態の推移と日本側の取り組みについて時系列で語っていただいています。

「昨年9月の尖閣諸島国有化以降、日中関係が悪化し、訪日団体ツアーは相当打撃を受けました。一方で、中国当局は訪日ツアーを直接規制はせず、中国メディアに対し日本に好意的な記事を掲載させないことなどにより、あくまでも中国世論の反日ムードから団体ツアーが催行できなくなったというのが実態でした。

実際、訪日リピーターや親日派は団体でなく個人ツアーで訪日するケースも多いのですが、昨秋も訪日個人ツアーはあまり減っていません。このため、日中関係悪化後も、観光庁とJNTOは、中国当局が正式に訪日ツアーを規制していない以上、訪日誘致プロモーション(VJ事業)を当初計画通り実施する方針を固め、中国側から中止されない限り、予定通り誘致活動を実施してきました(昨年10月の中国旅行会社の日本招請事業や、10月、11月の中国メディア招請事業等)。

ただ、中国の旅行会社は、日中関係悪化後、訪日ツアーの募集広告を出さなくなりました(WEB上での訪日ツアー募集は、昨年12月前後から再開しています)。

その後、10年に一度の権力移行が行なわれた昨年11月の中国共産党大会が終わってからは、中国メディアに対する当局のコントロールも緩和し始め、11月下旬には日本車の広告等が中国の新聞紙上に掲載されるようになりました。

JNTOでは、日中関係悪化後、中国各地の旅行会社に対するヒアリングを集中して実施した結果、彼らが訪日ツアーの募集を躊躇しているのは中国国民世論から叩かれるのを危惧していることが大きな理由と分かったため、中国メディアの流れが11月下旬から変わったのを確認してすぐに中国メディアと調整をはじめ、12月中旬から、地下鉄に広告を出したり、3大市場(北京、上海、広州)の大手新聞にJNTO理事長の歓迎メッセージや日本観光のイメージ広告を出すなど、街中に日本観光の広告を掲出し、訪日しやすい雰囲気作りをすることに専念しました。

さらに、そうした取り組みの結果をJNTO北京事務所から管轄内の中国旅行会社約200社宛てに周知するとともに、訪日ツアー募集広告の再開を要請する異例の協力依頼文書も発出しました。その結果、本年1月には、日中関係悪化の影響が最も強い北京でも、一部の大手旅行会社が新聞紙上での訪日ツアー募集を再開し始めました。

ただ、当時は依然として最大手の旅行会社がまだ紙面上での訪日ツアー募集を躊躇していたため、1月24日には井手観光庁長官が訪中され、中国国家旅遊局長と会談し、中国最大手旅行会社トップに訪日ツアー送客を直接協力要請した結果、ようやく3月中旬には、最大手旅行会社も訪日ツアー募集広告を新聞紙上で開始してくれました。この間も、JNTOは、地下鉄広告や大手ビル内での映像放映等、訪日しやすい雰囲気の醸成に全力で取り組んできました。

日本の観光関係者には、一刻も早く中国へのセールスコールや観光商談会等の誘致活動を再開していただきたい」(2013年6月4日)

昨年9月以降の日中関係悪化で神経のすり減るような現地での対応に尽力された関係者の皆さんの心中は察するに余りあるものがあります。また飯嶋所長のコメントから、昨年秋以降いくつかの潮目があったこともわかります。

依然続く日中関係の不和から中国の旅行展示商談会への出展を見合わせなければならない状況が続く中、こうした潮目をつかんでモノにするためには、今後も現地の視察や関係者の皆さんから教えていただかなければならないことはたくさんあります。ムードに流されるだけでなく、大局を見極めることの必要を実感します。

やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/column/2013/column_129.html
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by sanyo-kansatu | 2013-06-12 13:41 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2013年 05月 30日

中国の海外不動産投資ブームをいかにビジネスチャンスとするべきか(COTTM2013報告 その5)

COTTM2013で開催されたフォーラムの最後のテーマは、「中国の旅行業界は海外不動産投資ブームをいかにビジネスチャンスとするか」というものでした。
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こういうストレートなテーマをビジネスフォーラムで討議するというのは、日本の旅行業界ではあまり考えられない気がします。個人投資家を集めた海外不動産投資セミナーを企画するのは異業種の領域だと信じられているからでしょう。日本の旅行業界人の多くは、消費者とともに一途に “旅のロマン”を追い求めることが業界としての使命なのだという自画像を好んでいるように見えます。

これは別に皮肉ではなく、実は中国の旅行業界の人たちも同じなのです。今回B2Bの商談会であるCOTTMの展示会場で見かけた中国の旅行業界人の顔だちを見ていると、これは直感的な言い方にすぎませんが、日本の旅行業界人と同じ人種だと思ったのです。そうそう、こういう顔だちの人、ファッションセンスの人、日本にもいるいる。たとえていえば、育ちがよくて、子供のころから両親に連れられ海外に出かける機会に恵まれ、留学もしたから英語もそこそこじゃべれるのだけど、バリバリビジネスをやる気もないので、つい知り合いのつてで海外の観光局で働くことになった……というようなタイプとでもいいましょうか。中国の対外開放の歴史は30年ですから、日本に比べると、その種のタイプが業界に集まる傾向はより強いといえるのかもしれません。ある意味、“中国人”離れしたタイプ、香港や東南アジアの華僑の資産家の子弟に近い感じといえばおわかりになるかもしれません。

もっとも、その種のタイプが多い業界といえども、ここは中国。“旅のロマン”だけを追いかけても生き延びてはいけない世界です。しかも、これまで述べてきたとおり、「新型旅客」の登場で、従来型のビジネスモデルでは立ち行かなくなりつつある。そんなこの国の業界人にとって“福音”となるのが、中国人の海外不動産投資家のニーズに業界としていかに貢献できるか、という話だというわけです。
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登壇したのは、司会進行のProf. Dr. Wolfgang Georg Arlt、CBN China Business Network(中国商務集団)総裁のDr.Adam Wu,Coo、そしてスペインのカナリア諸島で一戸建てヴィラなどの不動産販売を手がけるM&S Fred Olsen SAのCamilla von Guggenbergさんです。

CBN China Business Network(中国商務集団)
http://www.chinabn.org/

M&S Fred Olsen SA
http://fis.com/fis/companies/details.asp?l=e&filterby=companies&=&country_id=&page=1&company_id=11802

まず、おなじみProf. Dr. Wolfgang Georg Arlt(以下、教授)による趣旨説明から始まりました。なぜ中国の旅行業界は海外不動産投資ビジネスに関心を持つべきなのか、という話です。

教授はこんな話から始めます。先月(2012年3月)、ヨーロッパの主要な都市のいくつかの商工会議所で中国人観光客をテーマとしたワークショップが開かれたそうです。そこでは、いかに中国人観光客を呼び込み、ショッピングをしてもらうか。さらには、中国の投資家にどのようにプロモーションしていくべきか、といった内容が話し合われたといいます。それだけヨーロッパ諸国では、中国の観光客の来訪を歓待しているというメッセージが告げられます。

この話を聞きながら、ぼくは2008~10年頃の日本を思い出していました。その頃、日本ではいまのヨーロッパのような機運が盛り上がっていたからです。この約4年のタイムラグは、ヨーロッパ諸国が中国人団体観光ビザ(ADSビザ)の解禁を日本(2000年)に遅れること、2004年に実施したことを思うと、なるほどという感じもします。

次に、教授は中国の富裕層(high net worth individuals)の海外志向性について触れます。すなはち、1000万人民元以上の個人資産を持つ中国人富裕層の44%は、移住を考えていること。さらに85%が子弟の海外留学を計画している、と指摘します。
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そして、中国経済の成長は近年鈍化しているものの、海外旅行は依然拡大基調にあることが説明されます。なんだかバブルが崩壊した1990年代以降も、海外旅行市場が拡大し続けた日本と似ていますね。
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いよいよ本題です。中国の旅行業界は、なぜ海外不動産投資ブームをビジネスチャンスとみなすべきなのか。その理由は、ひとことでいえば、業界として顧客のニーズに応えるべきだから、というものです。わかりやすいですね。

教授は説明を続けます。

中国の個人投資家にとって、海外旅行は休暇や買い物を楽しむだけでなく、投資の機会と結びつけて考えられているのがふつうである。彼らは海外の高級な宿泊施設やサービスを体験するだけでなく、投資の機会を狙っている。なぜなら、中国の富裕層は、欧米と違ってすべて自らが起業した第一世代。海外の不動産投資情報についても、代理人に委託するよりも、自分の目で見極め考えるタイプが多い。それが中国の企業家の特性である。

彼らのサポートをするのが旅行業界の役割で、これはビジネスの好機といえる。中国の投資会社も、顧客のために海外の正確な投資情報を入手したいので、海外の事情に通じた旅行業界と協力したいと考えている。近年、中国でも投資家を集めた会員制クラブがいくつもできており、今後彼らを世界に案内する機会は増えるだろう。

実をいえば、中国の不動産投資ブームはいまに始まったものではありません。一般に「旅游地产(Tourism real estate)」と呼ばれ、1990年代にはすでに海南島や広東省などでリゾートホテル開発として進められていました。その動きが進化していくのが2000年代以降です。単なるホテルではなく、一戸建ての別荘やゴルフ場などがまずは国内各地に開発され、2007年のリーマンショック以降、海外に触手が伸びていったのです。

ですから、その動きに旅行業界も貢献するべくビジネスチャンスとしようという話は、ある意味、ごく自然な流れといえるのです。

さて、教授の講釈が終わると、座談会に移りました。登壇者のひとり、Camilla von Guggenbergさんは、欧米の観光客でにぎわうスペインのカナリア諸島でヴィラの投資を呼びかけるため、中国に来たといいます。一方、CBN China Business Network(中国商務集団)総裁のDr.Adam Wu,Cooは、いかにも1980年代早期の海外留学組といった感じの人物で、中国の旅行関係者に向かって投資ビジネスに関心を持つよう語りかけます。

これは日本でもそうですが、中国の大手旅行会社などは、これまで自ら投資して、国内に多数のホテル物件を開発し、運営してきました。しかし、ここで話題となっているのは、自らオーナーとなることではなく、富裕層の海外投資のサポート役となることが、新しいビジネスの可能性なのだということです。薄利多売で大量送客するだけの団体ツアービジネスでは、今後生き延びることは難しいため、富裕層を対象にビジネスを再構築しようという話ですから、それはそれで理にかなっているとは思います。さて、観衆の反応はどうだったでしょうか。

質疑応答の時間はたっぷり用意されていました。この種のイベントでは、中国の人たちは旺盛な好奇心と物怖じしない性格で、どんどん質問が出てくるというのが一般的な光景ですが、さすがに今回ばかりは挙手する人がなかなか出てきません。

そんな息苦しい雰囲気を気にしてか、ある女性が思い立って挙手しました。質問の内容は、Camilla von Guggenbergさんが紹介したヴィラ物件の広さと価格を問うものでした。いきなりカナリア諸島のヴィラに投資しませんか、と言われても、「それっておいくらくらいするものですか?」と聞くのがせいぜいというものでしょう。
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その質疑応答が無事すんで、その場もなんとなくホッとしていたところに、突然後ろの席のほうからひとりの男性が立ち上がりました。ちょっと聞き取りにくい英語でしたが、要するに、「カナリア諸島のヴィラにどれだけの投資価値があるのか。もっと詳しく説明しろ」という、かなり詰問調の質問でした。

おそらく彼は本気でその質問をしているのではなかったと思います。むしろ、そんな誰も知らない海の向こうの投資話をここですることに、どんな意味があるのか。もっと現実的で、業界のビジネスに直結する話をするべきではないか、というワークショップの主催者に対する異議申し立てのように感じました。その気持ち、わかりますよね。なぜなら、観衆としてここにいるのは、投資家の人たちではないからです。

こうして最後はちょっと気まずい雰囲気のまま、「詳しい物件の話は、あとで個人的にご質問ください」という教授のことばで締めくくられたという次第ですが、いかにもいまどきの中国らしい光景だと思いました。

中国で不動産投資を目的に海外に出かけようと考えている個人投資家はずいぶんいると考えられます。実際、彼らは日本にもやって来ています。

最近では、中国の投資家もただ海外の物件を購入し、資産価値を担保したうえで、家賃収入で儲けようという従来通りのタイプだけではなく、中国にはまだないさまざまな優良施設の運営ノウハウを取り入れ、自国で投資したいというニーズもあるようです。

彼らの存在をどう扱うかという話は、実のところ、我々にとっても新しいインバウンドビジネスの可能性のひとつとして、決して遠い話とは言えないのです。
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by sanyo-kansatu | 2013-05-30 11:44 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 05月 29日

世界一になったのに、なぜビザ緩和が進まないのか~中国の不満とその言い分(COTTM2013報告 その4)

フォーラム2日目の午後3時からパネルディスカッションがありました。
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タイトルは「中国出境旅游运营商研讨&签证问题(Tour Operators & Visa)」。中国の海外旅行市場における今いちばんホットな話題、とりわけ個人旅行化とビザ問題について、業界としてどう考えるべきか、というのがテーマでした。

登壇したのは、北京の旅行会社2社のトップの男性ふたりと、ネット旅行社最大手C-Tripのマーケティングディレクターの女性、そして北欧に拠点を置くアフリカのサファリツアーで有名なアルバトロス・トラベル中国支社長で、彼だけが外国人です。司会進行はPATA(Pacific Asia Travel Association)中国支部の代表・常紅さんです。

今回討議されるテーマは、中国の旅行関係者の事前の投票によって決められたそうです。彼らがいまどんな問題に頭を悩ましているか。まさに一目瞭然の結果が出ています。

The most interested topics voted by Tour Operators
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そのうち上位6つの話題が以下のとおりです。

①半自助旅游(160 票)
②中国新型旅客(155票)
③ビザ問題(152票)
④人材育成(149票)
⑤アメリカの新ビザ制度について(赴美签证新规)(143票)
⑥オンライン購入について(129票)

では、ひとつずつ簡単に解説していきましょう。

まず、①「半自助旅游」ですが、要するに、航空券とホテルを旅行会社で予約するだけの自由旅行のことです。日程と宿泊場所だけが決まっていて、観光や食事は各自が自由に楽しむツアーのことで、日本の旅行業界では「スケルトン型」とも呼ばれます。
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中国の大手検索サイト「百度」によると、「半自助旅游」について以下の説明があります。
http://baike.baidu.com/view/1617048.htm

「半自助游是一种介于参团游与自助游之间的旅游方式,其特点是旅行社只负责交通和住宿等环节,而游览行程、餐饮等全让游客自己安排」

日本ではよくあるツアー形態のひとつですが、未だに団体ツアーが主流の中国では、「半自助旅游」が増えることで、旅行会社の営業にどんなダメージを与えるのか。それともこれは好機なのか、というのが討議の中心でした。「半自助旅游」が増えれば、旅行会社が顧客のために手配する仕事が減り、利益もそれに応じて減ると考えられるからです。

登壇者たちの多くは(こういう場に出てくる以上、当然なのかもしれませんが)、業界にとって「半自助旅游」が増えることは歓迎すべきだという趣旨の発言をしていたように思います。それが現在の中国の旅行業界の主流の考え方といえるかどうかは定かではありません。

次の②「中国新型旅客」も①につながるテーマです。COTRIのProf. Dr. Wolfgang Georg Arltが強調していた“New Chinese Tourist”問題です。旅慣れた新型旅客の要求に旅行業界はどこまで応えることができるか、というのがポイントでした。
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ここ数年、中国では「新型旅游方式」ということばは一種の流行語といっていいでしょう。ネットで検索すると、渡航先の珍しさだけでなく、滞在のスタイル、各種体験型など、いろんな旅行のスタイルが紹介されています。それらは、日本のような海外旅行の成熟した市場からみるとそれほど目新しいものではありませんが、問題はその大半が、中国の旅行会社が現在催行しているツアーでは実現することが難しい内容ばかりなので、彼らは頭を抱えることになります。

中国の「新型旅客」といえば、以前ぼくは若い世代のバックパッカーブームについて書いたことがありますが、もはやそれも若者だけの特権ではなさそうです。昨年、北京在住の老夫婦の旅が中国で大きな話題となったからです。

中国の中央電視台で放映された以下のニュース動画をご覧ください。

“花甲背包客”走红 新型旅游方式受追捧(央视国际:2012-10-02)

北京在住の張廣柱(63)さんと奥さんの王鍾津(61)さんは、定年退職後の2008年から11年にかけて北米や南米、ヨーロッパなど数十カ国をバックパッカーとして自由旅行しました。その旅行記は『花甲背包客(Happy Backpacker)』というタイトルで出版され、多くの読者を得たことで、ニュース番組にも取り上げられたのです。
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ご夫婦のブログ:花甲背包客(Happy Backpacker)
※YOU TUBE http://www.youtube.com/watch?v=c998WEjZq3k

中国で最も人気とされる同電視台の白岩松キャスターは、番組の中で「新浪微博(中国版ツィッター)」を利用して「あなたは普段どの旅行スタイルを採用しますか?」というアンケートを10月2日行なった結果、「自由旅行73.2%、団体旅行26.8%」と、圧倒的に自由旅行が支持されたことを伝えていました。 この数字は、現実と大きく乖離していますが、それだけいまの中国の人たちの願望を反映していると思われます。

番組の中で、若い記者のインタビューに快活に答えるご夫妻の微笑ましい様子を見ながら、ぼくはちょっとしたデジャヴュを覚えました。それは1980年代のことです。当時、こういう元気なシルバー世代のバックパッカーが日本でも話題になったものです。ここだけ切り取れば、いまの中国はかつての日本の雰囲気に本当によく似ていると思います。

しかしそれは、いまの中国の旅行業界が当時の日本と同じような新たな問題に直面していることを意味します。若い世代だけでなく、この老夫婦のような「新型旅客」ばかりになってしまったら、旅行会社はどうやって利益を得ていけばいいのか。どう生き延びていけばいいのか……。

一方、③④⑤については、中国固有の問題といえます。まず③と⑤ですが、共通の内容といえるのでふたつを足せば、いまの中国の旅行業界にとってビザ問題が最大の関心事であることがわかります。
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現在中国人が海外旅行に出かける場合、団体ビザを取得して旅行会社の催行するツアーに参加するのが一般的です。これだけ個人旅行や自由旅行への志向が強まっているにもかかわらず、それを実現できるのはまだ一部の層にすぎません。これは中国が世界の多くの国々とADS(Approved Destination Status)ビザ協定を結んでいることと大きく関係あります。これは、不法移民を防ぐために各国との間で結ばれた中国在住国民を対象とした特別な協定です(海外在住の中国人に対しては少しゆるい規定になっています)。詳しくは下記サイトに説明されていますが、1983年に香港・マカオとの間で始まったこの協定は、2000年代以降オーストラリアや日本との締結を皮切りに、欧米諸国や南米アフリカ諸国へと一気に広がっていきます。

Approved Destination Status (ADS) policy(China Outbound Travel Handbook 2008)
http://chinacontact.org/information/approved-destination-status-ads-policy

ADSビザ協定国増加の推移(中国国家旅行局) 
http://www.cnta.gov.cn/html/2009-5/2009-5-13-10-53-54953.html

一般にヨーロッパ諸国との締結は2004年以降、アメリカとは2008年。以後、多くの中国人団体観光客が欧米を旅するようになったのです。

今日の中国の人たちは、欧米とアジアに序列をつけて見ようとする傾向が強いため、最初は欧米に行けるだけで満足していたのですが、数年もすると、自分たちも日本人や香港人など他の国の人たちと同じように個人旅行や自由旅行に行きたいと思うようになります。実際、日本でも中国人に対する個人観光ビザが適用されたり、ビザ取得資格の緩和が行われたりしているように、欧米諸国でも同様の措置が徐々に進んでいます。今回のCOTTMに出展しているヨーロッパの旅行会社の中にも自由旅行専門の会社がいくつかありました。

それでも、多くの中国人にとっては公平とは思えないのです。「いまや中国は世界一の海外旅行大国になったのに、なぜビザ緩和が進まないのか」と感じているわけです。とりわけ、彼らの関心が集中するのが、アメリカのビザ制度に対してです。

というのは、欧米先進国の中で最後に中国人の団体観光ビザを解禁したアメリカは、いまだにビザ取得の条件として、領事館での個別面接を義務付けているからです。北京のアメリカ大使館の前によく行列ができているのを見かけますが、そこまで課していることに対して、彼らは大いに不満を感じているのです。

とはいえ、さすがに昨年、大使館での面接内容の一部が軽減されたと聞いています。それでもまだ十分ではないと彼らは考えているため、⑤の話題が独立して出てくるのでしょう。今回のフォーラムでも、欧米諸国とのビザ条件をどうしたら緩和できるかについて多くの時間を割いていたようです。

彼らの気持ちはわからないではありません。これはぼくが北京で知り合った多くの旅行関係者にも共通している思いです。彼らにすれば、中国人だけ差別されているように感じるからです。

この問題に対する不満は、とりわけ中国メディアの記者などに強いように見えます。彼らはビザ問題を、中国人としての自尊心や面子の問題とすり替えようとしがちです。その主張を強く後押しするのが、前述の「いまや中国は世界一の海外旅行大国になったのに、なぜビザ緩和が進まないのか」という苛立ちです。

この点、中国の旅行業界の人たちは、メディアの人間に比べるといくぶん理性的に見えます、というのも、彼らは仮に欧米諸国や日本がビザ緩和を必要以上に進めると、不法移民が発生しかねない国情がいまの中国にあることを一方で理解しているからです。それは旅行業界の人たちが、中国の一般の人たちやメディアの人間に比べ、海外の事情をよく知っていて、冷静に物事を考えることのできる人材が多いからだと思います。

④人材育成の問題に彼らが高い関心を持っているのも、ビジネス上日常的に海外と中国の実情とを比較することができる立場にあるからでしょう。なんといっても、中国の海外旅行の歴史はわずか15年です。基本的に中国の旅行業界は長い時間、インバウンド(外客の受け入れ)で成長してきたわけですから、アウトバウンド・ビジネスに適応する人材は圧倒的に不足しており、その育成は急務となっています。さらに「新型旅客」の登場は、海外事情に詳しい人材を育てなければ業界そのものが生き残れないことを強く意識させています。

また、⑥オンライン購入の話題についても、ネットが旅行業のビジネスモデルを大きく変えようとしている中、時代の変化に適応した人材をこの業界でも必要としていることがわかります。

そうした事情は国家旅游局の役人も当然のことながら意識しているようで、以下のようなネットの記事も見つかりました。

新旅游业态呼唤新型旅游专业人才(2013-05-07)
http://www.lifedu.net/news/zhijiao/41092.html

この記事からもわかるように、いま中国の海外旅行マーケットはモデルチェンジとアップグレードの時代に向かっています。専門性の高い人材を育成するため、中国政府は大学の旅行専門学部や専門学校を急ピッチで開校させています。彼らは量だけでなく、人材の質を高めることが課題であることも認識しています。もっと日本との人材交流が進むと面白いと思います。
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by sanyo-kansatu | 2013-05-29 11:37 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 05月 26日

2012年、中国は米独を抜いて世界一の海外旅行大国になった(COTTM2013報告 その2)

COTTM(中国出境旅游交易会)を視察して興味深かったのは、国内外の業界関係者が登壇し、さまざまなテーマで意見を交わすフォーラムでした。ここで議論される内容は、現在の中国の海外旅行市場を理解するうえでいろいろと参考になります。
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COTTM2013 http://www.cottm.com/

3日間を通じたフォーラムの主要なテーマは、おおむね以下の4つでした。

①中国のラグジュアリー旅行の展望
②SNSの現在形(中国で海外旅行に最も影響のあるメディアのいま)
③業界の抱える6つの課題(査証問題を中心に)
④不動産投資旅行に対する業界の取り組み

このうち、残念なことに①だけ都合が悪くて出席できませんでしたが、②~④については、追って紹介しようと思います。とりわけ、④は日本の旅行業界ではあまり話題にならないような、中国らしい生々しいテーマといえるかもしれません。

さて、この4つのテーマに共通するキーワードは“New Chinese Tourist”です。今回多くの登壇者たちが語ろうとしていたのは、「いったい“New Chinese Tourist”とは何者か?」という問いを明らかにする試みだったと思います。

こうした問いが生まれるのは、十分すぎるほどの理由があります。2012年、中国がドイツ、アメリカを抜いて海外旅行マーケットで世界一の規模になったからです。この事実の意味するところを世界はどう受けとめ、対応するかが問われているというわけです。

「Are you ready?」。そう繰り返し問いかけるのが、COTTMのフォーラムの司会進行を務めるProf. Dr. Wolfgang Georg Arlt(以下、教授)です。
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ドイツ出身のTourism Scientistである同教授は、2004年に自ら設立したCOTRI(中国出境旅游研究所)の代表として、中国の海外旅行市場に関する精力的で継続的な調査研究を行い、今回のCOTTMの企画運営にも参加しているという学者です。2004年12月から05年3月まで、日本学術振興会の研究員として筑波大学に招かれたこともあります。

COTRI(China Outbound Tourism Research Institute)
http://china-outbound.com/

フォーラムの冒頭で、教授はこう語ります。

UNWTO(国連世界観光機関)は、今年4月4日、中国は2012年に8300万人の出国者と1020億ドル超の消費を記録し、ドイツ(前年度1位)、アメリカ(前年度2位)を抜いて世界最大の海外旅行市場になったと発表しました。2013年には9500万人の出国者が推計されています。これはUNWTOがかつて予測した2020年までに1億人の中国人が出国するというスピードをはるかに超えたものとなっています」
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※とりわけ2012年の出国者数の伸びは大きく、前年度比約20%増。伸び率の高い国のランキングでいうと、タイ+62%、台湾+57%、スペイン+55%、アメリカ+41%となります。ちなみに、日本は1~9月までは+71%とトップなのですが、10~12月は-37 %という皮肉な結果となっています。また、消費額は前年度比40%増という驚くべき数字です。

※2012年の海外旅行消費額ランキング(UNWTO)

1位 中国 1020億ドル 40.5%増 ※伸び率でも他を圧倒。
2位 ドイツ 838億ドル 5.8%増
3位 アメリカ 837億ドル 6.4%増
4位 イギリス 523億ドル 4.1%増
5位 ロシア 428億ドル 31.8%増 ※中国に次ぐ高い伸び率。「新興国の中間層が世界の旅行市場を塗り替えようとしている」タレブ・リファイUNWTO事務総長のコメントより。
6位 フランス 381億ドル 6.4%減
7位 カナダ 352億ドル 6.7%増
8位 日本 281億ドル 3.1%増
9位 オーストラリア 276億ドル 2.9%増
10位 イタリア 262億ドル 1.0%減

これまで中国の海外旅行者数として挙げられる数字には、香港、マカオへの渡航者数も含まれており、その数が3000万人程度あったため、全体像をかなり割り引いて考えなければならないという指摘もあったのですが、2012年度においては、8300万人中3000万人ということで(これでも十分多いですが)、中国人の海外旅行に渡航先の多様化が起きており、その結果、香港・マカオの比率が減少していることがわかります。 

実は今回、多くの登壇者が合言葉のように共通して口にした話題ですが、教授はさらにこんな話をしました。

「4月7日、習近平主席は今後5年間、中国は4億人以上の中国客を海外に送ることになるだろうとコメントしました。中国の政治リーダーのこうした発言は、市場の拡大に向けた大きな推進力となります。
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以前は『中国の海外旅行市場にどんな意味があるのか』とよく聞かれましたが、いまはもう古い質問となりました。『Yes, No1 in the World』と答えるだけですむからです。

新しい質問はこうです。『中国の海外旅行市場はどのように発展するのでしょうか』。それに対する2013年の答えはこうです。『Scientifically solid forecasting needed』(科学的で実質的な予測が必要とされます)」

教授によると、劇的な成長を遂げる中国の海外旅行市場ですが、1978年の改革開放以降、以下の4つの時期をへてきたといいます。( )内は出国者数。

①1983-96 VFR and delegations(外交団と各種代表団の時代) (1996 8 mio)
②1997-2004 ADS and chaotic growth(ADSビザと無秩序な成長の時代) (2004 29 mio)
③2005-10 Gaining experience and scope(経験の獲得と渡航地域の広がった時代) (2010 57 mio)
④2011-? The second Wave of china’s Outbound Tourism: sophistication and segmentation(中国の海外旅行の2度目の波:洗練とセグメントの時代) (2012 70 mio ,12 83 mio)

※ADS(Approved Destination Status)は、不法移民を防ぐために各国との間で結ばれた中国在住国民を対象としたビザ協定のこと。現在の中国人と旅行業界にとっての最大の関心事でもあるので、詳しくは別の回で。

教授は言います。「いまや中国の海外旅行市場は“洗練とセグメントの時代”を迎えている。その主人公は、“New Chinese Tourist”である。そして、

“New Chinese Tourist”-becoming “noramal”(like us?)」と問いかけます。

私たち(先進国)と同様に、“New Chinese Tourist”は普通に存在している、というのが教授の主張です。その理由として、以下の事例を挙げています。

①1997年以降、15年間の海外旅行の経験
②1978年以降、150万人の留学生が帰国していること
③アメリカとヨーロッパに累計で各100万人の留学生がいたこと
④中国の富裕層の平均年齢は39歳であること
⑤100万ユーロの個人資産の所有者100万人
⑥1億元の個人資産の所有者6万人
⑦10億元の個人資産の所有者4000人
⑧5.5億人のインターネット利用者

さらに、“New Chinese Tourist”には以下のような特徴があると指摘します。

①団体ツアーに対してネガティブなイメージを持っている
②ブータンでバードウォッチングをしたいというような専門的な旅を求めている
③経験と語学を身につけることで、旅行会社の手配するビザや航空券、ホテルを利用する以外の別の形を求めるようになる
④とはいえ、たとえ中国人が個人旅行化しても欧米的な“individual” travellerとは同じではない
⑤“New Chinese Tourist”といえども中国人である。他国で中国語の表示やサインを見つけることで、その国から尊敬を得ていると感じる
⑥彼らは同じ中国人の仲間からの情報を信用する傾向にある
⑦彼らは単なる休暇ではなく、名声や教育、投資のためにアジア以外の国に旅行することを好む。「Money-rich, Time-poor」な人たちである

こうした特性を持つことから、2013年、中国の海外旅行者の30%以上が旅行会社の手配を必要としなくなるだろう、といいます。
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“New Chinese Tourist”とは「New customers(新しい顧客)」であり、彼らを取り込むには「new distribution, channels, new denmands(新しい流通とチャネル、そして新しい要求)」に応えていかなければならない。

そのためには、「Niche products and distinations」(ニッチな商品と渡航先)」が必要とされている。彼らは他人に自慢するために観光地でスナップ写真を撮るためだけの目的では満足せず、特別な場所で特別な体験をしたいと考えている。これからの中国の旅行業界が取り組むべきは、ニッチな商品の開発と新しい渡航先の開拓だ、と結論しています。

いかがでしょうか。前回紹介したCOTTMの渋すぎる出展国のラインナップは、中国の旅行業界がニッチな渡航先を開拓する段階に至っていることを意味していたのです。

もっとも、一連の教授の話を聞きながら、規模と実態をきちんと区別する必要がありそうだと感じたのも事実です。日本で目にする中国からの観光客の大半は、まだとても“New Chinese Tourist”と呼びうるとは思えないからです。

ニッチの市場規模をどの程度に見積もるべきかについては、依然考慮を要すると思われます。また教授が指摘するように、“New Chinese Tourist”といえども中国人であり、欧米や日本の個人旅行者と同じようにイメージしてしまうと、勘違いも起こりそうです。

CNNが同様のテーマについて以下の記事を配信しているのを見つけました。記事の中には、教授もコメンテーターとして登場しています。

Chinese tourism: The good, the bad and the backlash(CNN)  April 12, 2013

ここでは、基本的に中国の海外旅行マーケットの成長を歓迎しつつも、個別の受け入れ国の側に中国客のマナーやふるまいをめぐって戸惑いがあることや、逆に中国人の側にも、欧米先進国に対する複雑なコンプレックスがあることを指摘しています。

“Chinese tourists often say they feel treated like second class people, even when they spend a lot of money” (CNNの同記事より)

こっちはお金をたくさん使っているのだから、一等国民として扱うべきだ……。なんとも痛々しい叫びともいえますが、そういう態度が他国の人から見ていかに傲慢に映るのか。それに気づいたとき初めて、世界の人たちは中国客に対して普通に接するようになるということを、もっとこの国の知識層は国民に啓蒙したほうがいいのだろうと思います。すでにブログなどでは、そういう議論がよくなされているのも事実ですけれど。この問題は彼らの自尊心とビザの話にもつながってくるので、また別の機会で。

さて、それはそれとして、2012年、中国はドイツ、アメリカを抜いて海外旅行マーケットで世界一の規模になり、今年も出国者数を順調に伸ばしているにもかかわらず、ほとんど唯一の例外として、訪日旅行市場だけが減少しているという事態について、やはりあらためて考える必要はあると思います。

そのためにも、中国の旅行業界でいま何が起きているのか。どんなことを彼らが議論しているのかについて、ある程度知っておく必要があるはずです。それが、この記事をぼくがブログに書いている動機のひとつとなのですが、中国の事情に詳しくない方でも、たとえば、2012年のJATA旅博のフォーラムで日本の旅行業界関係者が議論したテーマと今回ぼくの紹介した中国のケースをちょっと比べてみてください。

JATA国際観光フォーラム2012
http://www.b.tabihaku.jp/data/jataReport_ja.pdf

JATA旅博の場合、基調講演にしてもそうですが、シンポジウムの内容も「これでいいのか日本のインバウンド~真の観光立国となるために」「新たなマーケットの可能性と旅行会社の役割」(アウトバウンド部門)といった調子で、北京と比べると、テーマも抽象的でどこか予定調和的な印象が拭えません。あるいは、国際的なマーケットの動きや業界を超えたビジネスの広がりについてどこまで視野が及んでいるのか、ちょっと疑問です。

もちろん、国情や市場環境が違う以上、単純に比較しても意味はないのですが、いまや世界最大の海外旅行送り出し国となった隣の国の旅行商談会で繰り広げられている熱い議論についても関心を持つべきだろうと思います。
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by sanyo-kansatu | 2013-05-26 16:30 | “参与観察”日誌
2013年 05月 23日

出展国が渋すぎる!? 北京のB2B旅行展示会(COTTM2013報告 その1)

4月9日~11日、北京で開催されたCOTTM2013(中国出境旅游交易会)(http://www.cottm.com/)に行ってきました。
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一般に旅行展示会といえば、日本ではJATA旅博(http://www.tabihaku.jp/)、中国では今年5月の開催で10年目を迎えたWTF(上海世界旅游博覧会 http://www.worldtravelfair.com.cn/)や、6月21日~23日に北京で開催予定のBITE(北京国際ツーリズム・エキスポ http://www.bitechina.com.cn/)などB2Cのイベントが知られていますが、COTTMはB2B、すなはち国内外の旅行業者だけが集まる商談会で、今年で9年目を迎えます。
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会場は、北京市朝陽区にある農業展覧館。2012年のWTF会場だった上海展覧館と同様、社会主義を標榜した時代の中国を思い起こさせる石造りの重厚な建築(1959年開館)で、現在さまざまな業界の展示会や商談会が頻繁に行なわれています。

今回の展示会では、海外から62カ国、275団体・企業が出展し、4000名を超える中国の旅行関係者が来場したと公式サイトは伝えています。では、会場の様子を覗いてみましょうか。
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正面玄関を抜けると、目の前の一等地に左右に分かれて巨大なブースを展開していたのは、メキシコ観光局とトルコ観光局でした。
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正面に向かって左に進むと、アフリカ諸国のエリアです。エチオピアやチュニジアなど、色鮮やかなブースが並びます。
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アフリカの民族衣装を身につけたスタッフも多く、陽気な雰囲気です。もともと中国にはアフリカ諸国からの留学生が多く、経済協力関係の深い地域だけに、なるほどという感じもします。あまり深読みしても仕方ありませんが、中国では観光がマーケットの都合だけで動いているわけではなく、「政治」が大きく影響していることを実感する光景です。
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一方、右側のエリアはヨーロッパや中近東諸国が中心です。もっとも、英仏独といった主要国ではなく、スロバキア(中国語で「斯洛伐克」)やクロアチア、アゼルバイジャンといった旧社会主義圏の国々を中心とした観光局のブースが続きます。
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奥の広いスペースに、今回最大の出展数だったアメリカ各州観光局の共同ブースや中南米、アジア各国のブースがありました。
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以下、公式パンフレットに掲載されていた出展企業・団体の国別リストです。

●アジア(16)
UAE、イラン、インド、韓国、カンボジア、シンガポール、ネパール、バングラディシュ、フィリピン、ブータン、ベトナム、マカオ、マレーシア、モルジブ、モンゴル、オーストラリア
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●アフリカ(12)
エジプト、エチオピア、ガーナ、カメルーン、ケニア、セーシェル、タンザニア、チュニジア、ブルンジ、マダガスカル、マラウィ、モンテネグロ

●中近東(5)
アゼルバイジャン、イスラエル、ウズベキスタン、ドバイ、トルコ

●中南米・太平洋(5)
コスタリカ、タヒチ、フレンチポリネシア、ベネズエラ、メキシコ

●欧米ほか(28)
USA、アイスランド、アイルランド、イタリア、ウクライナ、英国、オーストリア、カナダ、ギリシャ、クロアチア、ジブラルタル、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベラルーシ、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、ロシア

※トータルすると、国の数が公式発表より多くなるのは、一部出展を見合わせた国・地域があるからかもしれません。すべてをつき合わせてチェックしているわけではないので、ご了承ください。

出展国のリストだけ見ていると、なんという渋すぎるラインナップだと思うかもしれません。また逆に、中国人はこんなマイナーな国々へも海外旅行に行くようになったのか、と驚かれるかも。だいいち、人気のハワイもNYも、パリや香港のブースもないのですから。すでにお気づきと思いますが、主要国の中で唯一日本からのブースだけがひとつもありませんでした。

もっとも、それはCOTTMが一般消費者を対象としたB2Cの展示会ではないからといえます。旅行業のプロだけが集まる展示会だけに、よく知られた人気ディスティネーションのブースは必要がないのです。消費者が来場しない以上、彼らもPRする意味がないからです。

それでも、個々のブースは小さいため目立ちませんが、ヨーロッパから28か国の出展者がいることは興味深いです。それらの出展者の特徴は、前述したスロバキアやクロアチアなど、中国市場における新しいディスティネーションが観光局中心であるのに対し、英仏独などの主要国では、極地旅行や海外ウエディング、欧州個人旅行などの専門ジャンルに特化した旅行会社が出展していることです。つまり、すでに団体ツアーが多数訪れている主要国では、個人客を対象としたSIT(スペシャル・インタレスト・ツアー:特別なテーマや目的に特化したツアー)向けの商品を販売する民間の旅行会社のブースだけが出展しているということです。
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さらに興味深かったのは、ラグジュアリー旅行を提供する海外の旅行会社のブースだけを集めた特設コーナーもあったことです。
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つまり、COTTMは、中国の旅行業者にとって、これまで知られていなかった新しい旅行先や新機軸の旅行ジャンルを開拓するための貴重な情報交換の場となっているのです。そのことは、中国の海外旅行市場がすでにアフリカや中南米、旧社会主義圏のヨーロッパなどの国々やSITの世界へ触手を伸ばそうとしていることを意味しています。

そういう意味では、確かに日中関係が悪化しているとはいえ、この場に日本からの出展者がないことはちょっと残念だといえます。中国から見て日本市場はもうヨーロッパと同様、個人客を対象としたSITの時代に入っているというのに、それをPRしようとする業者がいないというのですから。

実は、日本に代わって多くの中国客が訪れている韓国からのブースは、唯一DICAPACというカメラや携帯の防水ケースを販売する会社でした。どれだけアピールできたかわかりませんが、この場に出展すべきなのは、たとえばこういう業者なのだと思います。
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確かに、COTTMに出展する意義をどう考えるかについては、いろんな見方があるとは思いますが、これまでのように一般消費者を対象とした旅行博に自治体主導で横並びに出展するスタイルが効果的かどうか、いまいちど考え直す必要があると思います。もはや中国から見た日本市場は、ヨーロッパと同じように、個別のSITツアーを打ち出すべき段階に入っているからです。

そのことは、COTTM会場で連日繰り広げられたフォーラムに登壇した中国の旅行関係者らが語っていたことです。その内容については、次の機会に
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by sanyo-kansatu | 2013-05-23 09:52 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 05月 20日

京都で日本初のラグジュアリー・トラベル商談会「ILTM JAPAN2013」開催

3月上旬、京都で日本初のラグジュアリー・トラベル商談会「ILTM JAPAN2013」開催されたので、視察に行ってきました。以下は、「月刊宝島」2013年6月号に寄稿したレポートです。


3月11日~13日、京都市で日本初の富裕層向け旅行の商談会「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット・ジャパン(以下、ILTMジャパン)が開催された。

ILTMは毎年カンヌで開催され、世界各国から1300社以上の観光業者が集まる商談会だ。2007年からアジアでは上海でも開催されている。世界の富裕層旅行市場の重心が欧米からアジアに移行するなか、世界で二番目に富裕層が多く、観光資源に恵まれた日本がILTMを誘致した背景には、「富裕層旅行者の取り込みを強化したい」観光庁と、日本を代表する世界遺産都市・京都の連携があった。

ILTMジャパンには、国内外のラグジュアリーホテルや高級旅館などの出展者と、バイヤーである旅行会社の約120社が集い、海外と日本それぞれの富裕層旅行者獲得のための商談会が繰り広げられた。
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会場は、出展者でもあるコンサルティング会社のプラン・ドゥ・シーが運営するThe SODOH Higashiyama Kyoto。京都画壇を代表する竹内栖鳳の旧邸宅を改装した高級結婚式場だ。

初日に観光庁主催で外国人富裕層受入に関心のある宿泊・観光業者を対象としたセミナーが開かれたが、テーマは「富裕層旅行とは何か」。俗に個人資産100万ドル、年収30万ドルで、プライベートジェットを乗りこなすといわれる富裕層旅行について、ILTMジャパン日本地区代表の福永浩貴氏は「『本物』の価値を理解し、さらなる豊かさを追い求める人たち」と定義する。彼らが求めているのは「一生に一度の体験」という。

ILTMディレクターのアリソン・ギルモア氏は「日本にはポテンシャルがある。しかし、世界に知られていない」と指摘する。

相変わらず「アピール下手」とされる日本だが、海外バイヤー30社中、中国7社、シンガポール4社など、中華系が半数を占めるように、日本の高品質の旅行資源に対する近隣諸国の関心は高い。マスを対象としない富裕層旅行市場だが、米国帰りの中国人富裕層の婚活ラブコメ映画『非誠勿擾』のヒットが中国客の北海道旅行を急増させたように、新たなビジネストレンドを生み出す起爆剤となる。商談会を通じて多くの関係者が語っていたように、日本をどうアピールするか、今問われている。

ILTM Japan日本事務局
http://www.iltm.net
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初日夜に建仁寺で開催されたオープニングパーティ。中央の着物姿の女性はILTMディレクター、アリソン・ギルモア氏
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by sanyo-kansatu | 2013-05-20 12:56 | “参与観察”日誌 | Comments(0)