ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2011年 11月 06日

LCC、海外ドラマを呼び込め!めざすは「東アジアグローバル観光圏」! 地方空港サバイバル奮戦記

航空ジャーナリストの谷川一巳氏は2010年10月上旬、茨城空港発春秋航空で2泊3日の上海旅行に出かけた。渡航費用は、事前のネット予約による航空運賃8000円(片道4000円×2)、燃料サーチャージ4300円(片道2150円×2)、茨城空港の旅客取扱施設利用料500円、上海虹橋空港使用料1200円、カード決済の手数料420円。合計14420円しかかからなかったそうだ。

「乗り心地は、確かにシートのピッチは狭い気はするけど、3時間ちょっとのフライトだからね。機内食は有料だけど、レンジでチンするインスタント軽食で500円。別にそれでかまわないじゃない」

世界の空港事情や航空旅行に関する著作も多い谷川氏はそう話す。

地方空港のほとんどが赤字

片道4000円の激安運賃で話題を呼んだ中国のLCC(ローコストキャリア=格安航空会社)、春秋航空が初めての国際線として乗り入れを決めたのが、2010年3月に国内98番目の空港として開港した茨城空港(小美玉市)だ。

「ただね、LCCの乗り入れでなんとかカッコがついたようだけど、空港経営としては現在の乗り入れ数では成り立たないのが実情だと思う。これは茨城空港に限った話ではない。現在全国のほとんどの地方空港が赤字といわれる。空港が黒字を出すために必要な一定以上の発着数をどこもクリアしていないから」。谷川氏は手厳しい現状認識を付け加えるのを忘れなかった。  

2010年10月、羽田新国際ターミナルがオープンした。24時間運用のメリットを活かし、昼間は韓国や中国、台湾など東アジアへの短距離路線、深夜・早朝は欧米や東南アジアなどへの中・長距離便が就航。そのひとつの目玉がアジアを代表するLCC、エア・アジアXの就航だった。成田空港も09年10月のB滑走路の延伸で航空機の発着回数を増やし、中東系エアラインなどの初就航が相次いだ。羽田と成田の「首都圏デュアル・ハブ」時代の到来と、近年首都圏の空はにぎやかな話題に彩られている。 

その一方で、地方空港のほとんどが赤字という明暗が気にかかる。航空ジャーナリストの杉浦一機氏は『100空港時代を生き残れ』(中央書院)の中で、地方空港総崩れの理由として戦略なき野放図な空港づくりがあったことを、このように説明している。

「(地方空港急増の理由は)グランドデザインのないままに、地域ごとに空港整備を行なったためだ。鉄道や道路への投資では経済の刺激にならなくなった地方公共団体が、空港整備に目をつけ、1980年代から地元出身の国会議員を総動員して陳情に走り、国と運輸省(当時)に圧力をかけた。明確なビジョンを持たない運輸省は調整に苦慮し、86~90年度の第5次空港整備5カ年計画では『1県1空港主義』を掲げた」

その後も懲りずに踏襲された「場当たり的」「画一的に進められた空港整備」が事態を悪化させ、今日に至っているというわけだ。

あまりにお寒い航空行政の罪状を本稿ではこれ以上触れるつもりはない。気が滅入るだけだからだ。そんなことより、地方空港がサバイバルのために取り組み始めた施策とその行方を見ていきたいと思う。これらは近年各地で盛んになってきたインバウンド振興の動きとも連動している。はたして禍転じて福とできるのか。

日韓のオープンスカイ協定

その前に、日本の地方空港を取り巻く新しい動きを確認しておきたい。2010年12月、日本と韓国はオープンスカイ協定を結んだ。「国際線は二国間協定で便数を平等に飛ばす」という原則を韓国との間のみ撤廃し、空港が受け入れられる限り、自由に飛ばせるというルールを両国が採用したことを意味する。これは日本の地方空港にとっては願ってもない話といえる。今後はチャーター便をはじめ両国の民間機が自由に往来することができるからだ。

かつて地方空港は、首都圏や関西圏からの大量の入込み需要を前提に増設されたが、90年代以降、その期待は大きく裏切られることになった。しかし、それは発想の転換を進めるための好機と見なすべきだろう。なぜなら、日本の地方都市は首都圏頼みから脱却して、東アジアの近隣諸国の大都市圏=ソウル、プサン、北京、上海、台北、香港まで含めた人の流れを視野に入れた施策を考えなければならない時代になったことを意味するからだ。こうした状況を「東アジアのグローバル観光人口」の増大というが、近隣諸国の経済成長によってそれもすでに現実のものとなっている。つまり、今日の地方空港は海外の大都市圏から人を呼び込める状況を作り出すことが、生き残りの道といえるのだ。だが、それはどうすれば可能なのか。

「実際のところ、経営の厳しい日系エアラインには地方から国際線を飛ばす余力はない。国内線も増便や新規乗り入れもあてにできないいま、地方空港にとって海外からの国際線乗り入れの期待は大きい。そこで注目されているのがLCCなのだろう」と前述の谷川氏はいう。

はたして地方空港にとってLCCは救世主となるのか? 以下中国を代表するLCC、春秋航空の乗り入れに成功した茨城空港の事情を見ていくことにしたい。

上海便が堅調な茨城空港

JR常磐線石岡駅を午前10時35分に発車した関鉄グリーンバス「茨城空港」行きの車内には、12名の乗客がいた。留学生風の若い女性と男性、ビジネスマン風数名、日中カップルらしい中年の親子連れ3人組など。樹脂製ハードタイプではなく、中国で一般的な布製の大きな黒いスーツケースが並んでいることから、途中下車した地元のおばあさん2名を除くと、ほぼ全員が中国人だとわかる。彼らは13時55分発の春秋航空上海便の乗客だと思われる。

当初はJR東京駅から直行バスで向かうつもりが、1週間前でも予約が満席だったため、JRと路線バスを乗り継ぐことになった。茨城東部の田園風景をバスはのんびり走る。35分後、空港到着。ターミナルビルの前には1300台収容可能な無料駐車場が広がる。ロビーに入ると、アシアナ航空ソウル便と上海便に分かれて搭乗手続きをするツアー客であふれていた。

エスカレーターで2階の送迎デッキに上がると、轟音が周囲を貫いた。茨城空港は航空自衛隊の百里飛行場との共用空港だからである。空港パンフレットには「このため、通常の空港に比べ整備にかかる事業費が低く抑えられています」とある(建設費用は約220億円、そのうち茨城県の負担は3分の1)。長さ2700mの2本の滑走路が並行しており、空軍機と民間機に分かれて利用する。数分おきに飛び立つ空軍機は迫力満点で、近郊の家族連れや老人などの見学する姿が見られた。面白いのは、送迎デッキの正面を仕切るガラスが、目の前の民間機の発着の様子は見えるのに、向かって左側の自衛隊基地方面を向くと磨りガラスになって見えないしくみになっていることだ。

現在、茨城空港には2つの国際線と神戸、中部、新千歳への3つの国内線が就航している。空港ビル管理事務所によると、国際線の搭乗率は毎日運航のソウル便が70%以上、週3便の上海便が80%以上と堅調だという。見学者も含めた空港来場者は1月末時点で81万人を超えた。

茨城県空港対策室の根崎良文課長補佐によると、「開港にあたって成田や羽田のある首都圏で自らをどう差別化し、位置づけるかが課題だった」という。

多くの議論を経て採用されたのが、セコンダリー空港(第二空港)というコンセプトだった。それはヨーロッパのLCC大手ライアンエアーが発着コストを抑えるために、ヒースロー空港ではなく、ロンドンの第二空港であるガトウィック空港や第三空港のスタンステッド空港を利用していることから、茨城空港を首都圏のセコンダリー空港と位置づけ、新規航空会社に乗り入れを募るということだ。構想から開港にこぎつけるまでに20年を費やしたこともそうだが、近年の国内航空需要の低迷や大手航空会社の経営悪化による不採算路線の廃止、新幹線網の拡大など、空港を取り巻く環境が著しく変わったことを根崎氏は痛感していた。こうしたなかで、世界の航空市場におけるLCCの台頭をどう理解すべきか検討した。一般にLCCに共通する特徴は以下の5つの点とされる。

①保有機材を1機種に絞り、整備コスト等を削減
②機内サービスを有料化
③短・中距離を中心にした多頻度運航で効率アップ
④着陸用の安いセコンダリー空港(第二空港)を利用
⑤航空券は自社サイトによるネット直販に特化

茨城県は開港にあたって国際線、とりわけ春秋航空の乗り入れのために、「東京に近い」「空港使用料が安い」というセコンダリー空港としてのメリットをアピール。それが功を奏したのだった。 

春秋航空は在日中国人の生活路線

一方、春秋航空側は茨城県の思いをどう受けとめたのか。同社茨城支社の小坂八哉セールスマネージャーに話を聞いた。実は同社にはもうひとつ聞きたいことがあった。堅調と聞く上海便だが、昨年の尖閣諸島沖漁船衝突事件(以下、尖閣事件)の影響はなかったのだろうか。

――本当に尖閣事件の影響はなかったのですか?

「10月に少しブレーキがかかったが、12月には完全回復し、就航以来平均90%の搭乗率を続けています。いまは週3便ですし、180名乗りのエアバスA320型機ですから、毎回40名程度のツアーが3団体もあれば、個人客を合わせると埋まるため、たいしたハードルではないのです」

――では順調な滑り出しといえるのですね。

「実をいうと、週3便ではうちとしてはメリットがないというのが本音です。ご存知のように、LCCは大手エアラインとは収益構造が違う。限られた飛行機を休ませないで、とにかくたくさん人を乗せる。その効率的な運営にかかっているのです。それに現在の月・水・土の並びではツアーがつくりにくい。やはりデイリー(毎日)運航じゃないと」

春秋側が望むデイリー運航に縛りがかかるのは、茨城空港が国営の共用空港だからである。「防衛上の理由」というのが基地側の回答だという。国内には他にも、新千歳空港や小松空港などが共用空港だが、いずれも中国機やロシア機に対する乗り入れ制限がある。

――だとすれば、週3便なのに搭乗率が高いというのはすごいですね。客層は?

「上海便の利用客の9割が中国人です。この中には日本に帰化した人や永住権を持つ在日中国人も含まれます。茨城県側が期待した県民のアウトバウンドはツアーがなかなか集まらないようです。最近では日本人のビジネス利用も少しずつ増えています」

――在日中国人の利用も多いんですね。

「それがどういう意味かわかりますか。つまり、上海便は彼らの生活路線ということなんです。尖閣事件の影響がほとんどなかったのも、そのためでしょう」

春秋航空上海便の利用者は県民ではなく、日本在住の中国人たちの故郷をつなぐ生活路線として機能していた。この指摘は実に興味深い。アジアを代表するLCCのエア・アジアXもまた、マレーシアやシンガポール在住のフィリピン人労働者などを中心に、バス感覚で気軽に乗れる移民労働者向けの格安運賃を売りにして成長してきたからだ。運賃の高さからこれまで航空機を利用しなかった層の新たな需要を掘り起こし、出張の経費管理に敏感なビジネスパーソン需要も取り込むというのがLCCのビジネスモデルである。はからずも県の思惑や構想を超えて、春秋航空上海便はLCCのあるべき姿を体現していたともいえるのだ。

いまや80万人を超える在日中国人の集住統計を見ると、首都圏4都県で43%を占める一極集中型である。それに加えて新潟や東北地方在住の中国人も利用しているそうだ。上海便の成功のひみつは在日中国人の集住地区に近いことが大きいようだ。

小坂氏は「片道運賃が安いところが、在日中国人にとって使い勝手がいいようです。彼らは日本人と違って故郷に帰るわけですから、滞在が長くなる場合も多い。短期の往復航空券ならどこのエアラインでも安いですが、1年オープンになると高い。親族を呼び寄せるなど、大人数での利用もあるので、片道で安いほうがいいんです」という。これもLCCならではの利点である。

LCCの誘致は待っていてはダメ

春秋航空は2004年5月に発足した中国初の民間航空会社で、母体は上海春秋国際旅行社だ。日本でいえば、HISがスカイマークエアラインズを立ち上げたのと同じだが、国内旅行を中心に数多くのチャーター便就航で実績を上げてきた。実は、茨城線も事実上定期化しているが、正式にはチャーター便扱いだ。中国の国営企業とは違い、同社は風通しのいい社風で知られ、幹部会議は上海語で行われるという。自社の幅広い販売網を使って集客できることが強みといえる。

――なぜ春秋航空は初めての国際線の就航先として茨城空港を選んだのですか?

「もちろん、春秋には多くの県からアプローチがありました。こちらも受け入れ側の本気度というか腹づもりを見ています。なかでも茨城はその覚悟が抜群でしたね。知事を筆頭に熱心に誘致を働きかけた結果だと思います。やはりLCCの誘致は待っていてはダメなんです。その気を見せなきゃ」

――なるほど。でも、本当は羽田や成田に乗り入れたかったのではないでしょうか。

「発着料の安さは魅力です。成田に比べ国際定期便で3~5割安、チャーター便は半額ですから。都心へのアクセスも東京駅まで車で約85分が目安。実は成田とそれほど大きく変わらない」

――外から見て日本の外国航空会社の誘致の取り組みについてお感じになることは。

「ただ来てください、というだけでは本当にダメなんです。よく全国の自治体が海外に観光団を送り込み、旅行会社に挨拶まわりなどをしているようですが、航空会社にとっては搭乗率の維持が基本ですから、そうしたプロモーションを垂れ流すより、誘致はここだと決めたLCCへの助成なり、確実な手を打つことのほうが効果的ではないでしょうか。これは春秋の母体が旅行会社だからかもしれませんが、我々は乗り入れ前にダマテンもやっていますよ。本社の幹部がおしのびで現地の観光地やホテルの事情を探りにいくんです。招待旅行では本当の姿が見えないですから。乗り入れる側もビジネスですから真剣なんです」

昨年末、韓国のイースター航空と中国の吉祥航空という中韓のLCC2社が11年3月末に新千歳空港に乗り入れるという一部報道があった。北海道庁空港港湾局に確認したところ、どうやら延期になったようだ。もしこの春乗り入れるとしたら、春秋航空のように、早い時期から激安運賃などのキャンペーンを打つのがLCCの常道であることを考えると、2月現在何の動きもないからだという。新千歳空港は国管理空港であり、新規乗り入れの許認可は国土交通省が行うため、道としても強い働きかけはしていなかったようだ。

航空会社の誘致もそうだが、日本の自治体のインバウンドのプロモーション全般にいえるのは、ただ自分の地域を真っ正直にアピールし、受け入れ態勢の整備を強調するだけで、送客する側のニーズを深く探ろうとする姿勢が足りないことだと思う。日本人はパンフレットや地図を作るのは得意なので、山のように外国語の資料を用意したものの、実際の外国人客のニーズには合っていないため利用されていないとの指摘は多い。こちらが提供できることが相手のニーズにうまく合致するとは限らない。そもそも合致する相手を見つけるのはたやすいことではないのだ。

そもそも春秋航空上海便を支える主な乗客が在日中国人というのでは、地元が期待する中国客の買い物や宿泊需要による経済効果は望み薄となる。実際上海便の中国客の多くが東京方面に向かうという。それは茨城県が掲げたセコンダリー空港としての位置づけからすれば当然なわけで、そこには矛盾があることは県の幹部も承知している。そのうえで、県は茨城に一泊してもらえるようなツアーの造成を中国側、韓国側に働きかけている。

LCCのビジネスモデルからすれば、地方空港よりも豊富な需要が見込める羽田か成田への乗り入れを望むのは当然。それだけに、地方空港へのLCC乗り入れはハードルが高いのが現実だ。春秋航空はこうしたなか、次なる就航地を高松に決めたようだが、在日中国人の集住地区ではない四国という地でどのように集客を図るのだろうか。注目したい。

韓国ドラマのロケ誘致―鳥取県の場合

航空便の乗り入れの少ない地方空港にとって、新規乗り入れ以前に、現状の航空路線の存続が課題である場合が多い。搭乗率の低下を助成金で補い続けたとしても、相手があることだ。先方から運航休止を言い渡されてしまえば、元も子もない。

2007年8月、アシアナ航空からソウル・米子便の運休を打診されたのが鳥取県である。背景には隣県の島根県と韓国とでもめた竹島問題の影響もあったようだ。平井伸治鳥取県知事の働きかけでなんとか運休は食い止めたものの、鳥取県はこれを機にインバウンド振興に舵を切る。

まずは韓国での鳥取の知名度を上げたい。韓国のテレビ局や新聞雑誌、マスコミ記者を県に招待して取材記事を書いてもらうアテンドから始めた。いまはどこの自治体でもやっていることだ。

2009年11月頃、韓国ドラマ『アイリス』を見た韓国の若い世代がロケ地となった秋田県に押し寄せるという「アイリス効果」が話題となった。韓国ドラマの日本ロケは2005年頃から日本各地で行われるようになっていた。2006年の『雪の花』は宮崎、『天国の樹』は東京と長野、08年の『甘い人生』は小樽、『スターの恋人』は神戸、大阪などだ。08年末に上映された中国映画『非誠勿擾(邦題:狙った恋の落とし方)』のヒットで中国での北海道の認知度が急上昇、観光客が急増するというロケ地効果も起きていた。

同じ時期、出張先ソウルのホテルで『アイリス』を見た鳥取県文化観光局国際観光推進課の鈴木俊一主幹は「こりゃヒットするな」と思ったという。スパイもので迫力満点のドラマだったからだ。

秋田県の「アイリス効果」は、ロケ誘致のために自治体が海外の制作会社に支援金を出す最初のケースだった。それまでの韓国ドラマや中国映画は、いわば向こうが勝手にロケ地を選んで、自分たちで制作し、日本各地の魅力を広めてくれていたわけだ。だが、秋田県は大韓航空ソウル便の搭乗率の低さに悩んでおり、鳥取県同様運休を打診されていた。どうせ運航継続のために外国航空会社に助成金を出し続けるくらいなら、思い切って賭けに出てみたい。それが両県に共通する思いであり、秋田の
成功を見て、鳥取はそれにならったということだろう。

とはいえ、ロケ誘致を実現するためには、現地の信用できる制作会社とのコネがなければならない。数年前ある県で韓国制作会社のロケ費用未払い事件が起きている。ドラマは日本人俳優も出演していたが、放映されていない。また10年夏、岩手県は韓国ドラマ『シークレット・ガーデン』のロケ誘致を制作会社側の要求する支援金の高騰で断念している。 

鳥取県は10年1月、韓国のテレビ制作会社が『アイリス』の姉妹編にあたるアクションドラマ『アテナ』のロケ地を日本で探しているとの情報を得た。それはすぐに平井知事に伝えられ、韓国側に誘致を働きかけた。4月には制作会社の下見が行われ、5月にはロケ地が決定。撮影は9月に行われた。実にスピーディな誘致劇だった。

NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の舞台としてなど、数多くの国内ドラマのロケで知られる鳥取県だが、海外ドラマのロケ誘致は初めてだった。撮影は鳥取砂丘や浦富海岸、大山花回廊、植田写真博物館、境港水木ロードほか県内30カ所で行われた。160名の制作スタッフが約1ヵ月近く滞在。事前に県から地元に協力を呼びかけると、「アクションシーンを撮るんだったら、ここがいい」と地元からも提案があり、韓国制作会社に伝えると、それを参考に撮影場所が決められた。1000人以上の地元ボランティアの協力や地元温泉旅館の宿泊協力もあったという。

『アテナ』の放映は10年12月から始まり、鳥取ロケの出てくるシーンは11年1月上旬に放映された。すでに県ではハングル版のロケ地MAPを制作しており、韓国旅行大手のハナツアーからロケ地めぐりツアーが催行されている。1月下旬頃から、県下に韓国人ツアーが現れ始めている。

ロケ効果の持続性が課題

前述の鈴木主幹によると、鳥取県が今後取り組むのは、韓国人ツアー客の受け入れ態勢の整備であり、日本海に面した山陰地方として環日本海南端の国際リゾートを目指すという。視野にはロシアも含めた対岸の市場がある。

だが、こうした取り組みがどこまで地方空港のサバイバルにつなげられるかはまだ未知数だ。好調だった大韓航空秋田便の韓国客も、10年夏以降は伸び悩みが見られ、「アイリス特需しぼむ」との報道もある(読売新聞2010年8月3日付)。ロケ効果の持続性には確かに疑問もある。

韓流エンターテインメント誌編集者の野田智代氏によると、「韓国人が行きたい場所ナンバー.ワンは北海道。彼らは雪景色に心打たれるようです。日本でロケした韓国ドラマは雪のシーンが多い。秋田で若い韓国人がかまくらで記念撮影を好んで撮ろうとしたのも、『アイリス』にかまくらのシーンがあるから。外国人の撮る日本の風景は我々とは観点が違うぶん、とても美しいと思う」

確かに、外国人が描く日本は、観光庁の作るポスターより、ずっとインパクトがある。また自治体が観光プロモーションと称して海外の旅行会社を詣でたり、旅行博覧会にブースを出展したりすることに比べても、ドラマや映画の影響力の大きさは計り知れない。海外の視聴者は一瞬で映像を記憶してくれるからだ。

だからこそ、どうやってロケ効果を持続させるか。そのノウハウを見つけるのが、これからの課題だろう。

伝え聞くところによると、鳥取県でロケを行った『アテナ』は『アイリス』ほどヒットはしなかったようだ。 はたして韓国人は鳥取県にやって来るだろうか? 惜しむらくはロケは雪のシーンが撮れる冬場に行うべきではなかったろうか?

海外ドラマや映画のロケ誘致は費用対効果の点でもともとギャンブルに近いところがある。そこをどう考えるかが悩ましいところだ。でも、だからといって、何もしないで手をこまぬいてもいられない。

「データでわかる日本の未来 観光資源大国ニッポン」(洋泉社)2011年3月刊行 より
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by sanyo-kansatu | 2011-11-06 21:48 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2011年 11月 06日

「中国人から儲ける本――爆買いする年間100万人の観光客&商用客をつかめ!」宝島社

中国からの訪日旅行者が急増した2010年初旬に刊行された同書では、中国人客の地域別特徴やボッタクリ問題などいくつかの指摘をしています。中国インバウンドの盛り上がりがピークを迎えた同年9月、尖閣諸島沖漁船衝突事故が起き、関係者らはいきなり冷水を浴びせられることになります。

北海道を舞台にした中国映画がヒット!ロケ地観光に参加する中国人の心象風景とは(p48-)
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今後、中国人旅行客の趣向がどうなるかは、台湾人や香港人の動向を見れば分かる!(p50-)
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北京、上海、広東、内陸都市――出身地によって大きく違う旅のスタイル(p60-)
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ボッタクリや無資格ガイド問題も浮上。日中双方が解決すべき中国人ツアーの課題(88-)
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by sanyo-kansatu | 2011-11-06 21:40 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2011年 11月 06日

「中国人を狙え!日本版「医療ツーリズム」の光と影」

「中国人を狙え!日本版「医療ツーリズム」の光と影」
プレジデント 2011年1.3号
 近年注目されている医療観光をめぐる各地の動きを追っています。ただし、これは2010年夏から秋にかけて取材したものです。震災後、一気に停滞しましたが、最近ようやく新しい動きも始まっています。
中国人を狙え!日本版「医療ツーリズム」の光と影
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by sanyo-kansatu | 2011-11-06 20:29 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)