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2017年 03月 02日

過去最高400万人超えの台湾客はいま日本で何を楽しみたいのか?

昨年の訪日台湾人数は416万7400人。リピーターが多く、全国各地に足を延ばす台湾客は1980年代から日本を訪れている。彼らはどのような人たちで、日本がなぜ好きなのか。そろそろ飽和市場といわれるなか、さらにこの勢いを盛り上げるために何ができるのか、考えたい。
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昨年の訪日台湾人数が過去最高の416万7400人ということは、人口2300万人のうち6人に1人が日本を訪れたことになる。台湾から毎年これだけ多くの人たちが日本を訪れる理由は何だろうか。

それを理解するうえで参考になる映画がある。中国のオムニバス映画『Cities in Love(恋愛する都市)』(2015)の一編として収録されている『Honeymoon(蜜月)』という約20分の短編作品だ。

台湾人監督が描く北海道ハネムーン旅行

『Honeymoon(蜜月)』は、北海道を舞台にした中国人カップルのハネムーン旅行を描いている。台湾人の傅天余監督は1973年生まれの女性で、岩井俊二監督に影響を受けたという。

恋爱中的城市(YOU TUBE)※『蜜月』は1時間2分40秒頃から。
https://www.youtube.com/watch?v=JT6K7HyzAPE

物語はハネムナーのふたりが窓の外の雪景色を見ながら温泉に入るシーンから始まる。部屋に戻ったふたりが床に就くと、新郎の携帯が鳴る。電話の相手は会社のボスで、彼のスマホに北海道産の干物屋の写真を送ってくる。土産に買ってこいというのだ。
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↑亜熱帯に暮らす台湾人にとって、雪見温泉は極上体験

新婦は北海道で行きたいところ、食べたいもの、体験したいことをいくつも計画していたが、翌朝彼らは温泉宿をキャンセルし、干物屋を探しに行くことになった。彼女は大いに不満である。

小樽駅から電車に乗り、ある無人駅で下車。その後、ふたりは路線バスに乗る。バスを降りて、雪道を歩いているうちに大喧嘩を始める。そして、彼を置き去りにして彼女はひとりで歩いていってしまう。
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↑雪に覆われた無人駅はハネムナーにとってはロマンチックな世界。今年初め、この映画を観た中国人観光客が線路に降りて、電車を停めるという報道があった

ついに日が暮れ、大雪の路上でスーツケースに座って途方に暮れていた彼に電話がかかる。彼女からだった。「見つかったのよ」。

彼女はすでに干物屋を見つけ、自宅に招き入れてもらい、部屋で休んでいたのだった。こうしてふたりは老夫婦の暮らす家にホームステイすることになる。囲炉裏を囲んで片言の日本語で会話をしているうちに、喧嘩ばかりしていたふたりが寄り添うところで終幕となる。

台湾客はローカルバスが好き?

ほのぼのとしたラブコメディであり、この作品に見られる日本の老夫婦に対する温かいまなざしは、いかにも台湾人監督らしい。ハネムーンの話ということで、いまの若い台湾人や、おそらく中国人も(同作品はまがりなりにも中国映画である)、日本で体験したいことがもれなく盛り込まれていると解釈していいかもしれない。

この作品には以下のようなシーンが出てくる。

雪景色、温泉、納豆、ローカル線、駅弁、無人駅、ローカルバス、雪道を歩く、日本酒の熱燗、ホームステイ(民泊)、日本人老夫婦との交流

一見なんの変哲もないようだが、これらは台湾の人たちが日本でやってみたくてたまらない体験のラインナップと見ていいのではないだろうか。わざわざローカルバスに乗ることも、最近の日本のテレビ局が低予算ゆえに盛んにつくっている路線バスの旅番組の影響があるかもしれない。台湾では日本のテレビ番組が多く放映されているからだ。
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↑バスの中でふたりの気持ちは離れてしまったよう。「せっかくのハネムーンなのに、自分はどこに連れて行かれているのだろう…」。彼女の気持ちは理解できる

ここには、彼女が当初計画に入れていた和牛の焼肉やタラバガニの食事もそうだし、ドラッグストアや免税店の買い物といった一般の日本人がイメージする訪日中国客の姿は一切出てこない。彼女が「見つけた」と語る日本の老夫婦との和やかな語らいの時間に比べれば、そんな誰でもできるようなことなど、たいした価値はないのである。

自分たちの住む小さな田舎町を訪ねてきたふたりの様子を訝しがりながら、老夫婦は自分たちの新婚旅行先がハワイだったと話す。おそらく1970年代のことだろう。こうしたエピソードを挿入できるのも、昔から日本のことをよく知っている台湾人監督ゆえの味つけだと思われる。
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↑日本酒の熱燗を酌み交わしながら、老夫婦の思い出話を聞くふたり

台湾版「田舎に泊まろう」ウルルンツアー

長崎県の島原半島の南端にある南島原市では、2013年から台湾の団体客を農家民泊させるツアーを受け入れている。ツアー名は「來去郷下住一晩(田舎に泊まろう)」。催行しているのは、台北にある名生旅行社だ。
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↑「來去郷下住一晩(田舎に泊まろう)」

名生旅行社:http://www.msttour.com.tw/web/major.asp

このツアーで、台湾客たちは民泊先の畑で地元の農産物の収穫をした後、ホスト家族と一緒に料理をし、夕食を味わう。その心温まる体験は、台湾メディアに報じられたことで人気を呼び、毎年多くの台湾客が訪れるようになった。
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↑筆者が同行取材した台北在住の黄さん一家は民泊先のビニールハウスでナスやピーマンを収穫した
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↑民泊先のキッチンで家族と一緒につくった夕食を楽しむ

(参考)台湾版「田舎に泊まろう」ウルルンツアー密着レポート(長崎県南島原市)
http://inbound.exblog.jp/24747209/

南島原市が農家民泊事業を始めたのは2009年から。最初は長崎県の中学生から受け入れを始め、全国の中高生の修学旅行生へと広げていったという。いまでは年間約1万人の民泊を受け入れており、約160の民家が対応している。

民泊ツアーに参加する台湾客について、添乗員の林尚緯さんはこう話す。

「このツアーでは、福岡や壱岐島、湯布院、長崎などを訪ねます。福岡ではグランドハイアット、湯布院では有名な温泉旅館に泊まるように、決して安いツアーではない。お客さんの多くは、すでに東京や大阪、北海道などには行き尽くした、日本をよく知るリピーターです。日本が好きになって、もっと奥まで日本のことを知りたい。今回、南島原の民泊は2回目というリピーターのお客さんもいました。帰国後、アンケートを取ると、ほとんどの方が民泊がいちばん良かったと回答しています」。
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↑台湾から来た8家族(33名)がそれぞれの受入先の農家に分かれて民泊した(2015年7月)

帰り際に地元の公民館に台湾客が全員集まり、お別れの会をするのだが、感極まって涙を見せる人も多いという。一緒に過ごした1日の時間を思い出すと、お互い言葉がわからなくてもどかしいぶん、ぐっとこみ上げてくるものがあるようだ。まさにウルルンツアーなのである。

日本人と触れあいたいという思い

民泊ツアーの添乗員の林尚緯さんが言うように、台湾客は日本のリピーターが多い。一般に市場が成熟すると、団体から個人へと移行するといわれるが、台湾客は個人比率が高いものの、仲間でわいわい楽しみながら旅行をするのが好きな人たちである。日本の情報も、テレビはもちろん、ネットが普及する前の紙メディアが主流の時代から接していたという意味で、年季の入った日本ファンといえる。

そのため、彼らは日本人の好みや流行、考え方を比較的素直に受け取る傾向が強い。台北で現地情報誌の立ち上げに関わった編集者の鈴木夕未さんによると「台湾人の日本旅行の好みは、ほとんど日本人と一緒。よく外国人目線を大切にというけれど、彼らは日本人目線とそんなに変わらない。日本人がカワイイと思うもの、素敵と思うもの、行ってみたいと思うところもほぼ同じ。日本の女性誌に掲載されているような店を台湾人は好みます」という。

「日本が好きになって、もっと奥まで日本のことを知りたい」という台湾客の思いを理解するうえで参考になるのが、台湾出身の日本薬粧研究家の鄭世彬さんが書いた『爆買いの正体』(飛鳥新社)だろう。彼は日本の医薬品や化粧品、美容・健康商品の専門家で、すでに台湾、中国で10冊以上の案内書を出版している。同書は台湾人も含めた華人の「爆買い」を経済現象としてみるのではなく、民族的、歴史的な背景をもった文化現象として描いていることが特徴だ。

さらに、台湾人によるあふれんばかりの日本愛の告白書でもある。なぜ台湾の人たちがこれほど多く日本を訪れるのか、その理由を熱く語ってくれている。それは、ひとことでいえば、日本人ともっと触れあいたいという思いがあるからなのである。
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↑『爆買いの正体』(飛鳥新社)http://goo.gl/DXhOMa

1980年代から日本を旅行していた台湾客

台湾の人たちが日本に旅行に訪れるようなったのは、1979年以降である。その年、台湾人の海外渡航が自由化されたからだ。

アジア映画ファンなら、台湾映画を代表する候孝賢監督が製作に携わった『多桑 父さん』(呉念眞監督 1994年)という作品に登場する老人のことを知っているかもしれない。彼は日本統治時代に教育を受けた世代で、戦後多くの苦労を重ねたが、夢は日本旅行に行って富士山を見ることだった。結局、老人は夢を果たせなかったことで物語は終わるが、多くの台湾の人たちが自由化後に最初に向かった先は日本だったのだ。

とはいえ、80年代当時は年間約40万人、90年代でも約80万人ほどだった。それが一気に増えたのは、2000年代に入ってからである。

引き金になったのは、2005年の愛知万博開催を期に台湾人に対する観光ビザを免除したことだ。さらに、日本への往来を格段に便利にしたのが日本の航空政策である。海外の国々との間で航空便の路線や発着枠、便数を自由化させるオープンスカイ協定の改定や推進で、特に近年の目覚しい路線数の拡充は、米国との協定を締結させた2010年10月以降、続々とアジア各国との同様の協定を進めた。

なかでも地方空港への国際線乗り入れ増加に影響を与えたのは、10年の韓国、11年の台湾、香港、12年の中国との協定締結だろう。台湾と日本のオープンスカイ協定は、11年11月に調印されたが、これにより台湾からの関西国際空港や中部国際空港、そして地方空港への乗り入れは自由化され、就航エアラインやチャーター便の規制も撤廃されたことから、従来のチャイナエアラインやエバー航空に加え、翌年よりマンダリン航空やトランスアジア航空(16年11月解散)の4社が定期便の運航を開始した。

現在、これに加えてLCC(格安航空会社)が日本と台湾を結んでいる。国内系はジェットスターやピーチ・アビエーション、バニラエア。外国系はシンガポールのスクート航空、昨年から仙台や岡山などの地方都市への運航を開始したタイガーエア台湾。もちろん、これに日本航空と全日空が加わる。台湾のエアラインは日本の地方都市にも多く就航していることが特徴で、台湾メディアによれば、「日本と台湾を結ぶ航空便は毎日約100便」(フォーカス台湾2016年5月29日)飛んでいるという。
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↑台湾で開催される旅行博では、日本ブースが最大規模。会場では日本ツアーが大量に販売される

ビザ免除とオープンスカイ協定終結による相乗効果が、昨年台湾からの訪日客が400万人を超えるまでに拡大した最大の理由といえる。

双方向の交流を進め、盛り上げたい

日本政府観光局(JNTO)によると、昨年の1月から10月まで日本は台湾人の海外旅行先トップだったという。数の規模は飛躍的に拡大し、前年からの伸び率も13.3%増と決して低いとはいえないが、一時期の勢いは収まり、市場は飽和状態という声もある。

昨年下半期に若干伸びが落ちた背景には、2015年12月に日本路線の運航を開始したVエアの撤退(16年9月)やトランスアジア航空の解散(11月)などの影響があったと考えられる。

日台間を結ぶ航空便が減れば、当然訪日客数に影響が出る。であれば、航空便の維持のためにも、我々も台湾に出かけるべきではないだろうか。さいわい、日本から台湾を訪れる観光客数はここ数年、わずかではあるが増加傾向にある(2015年で167万2000人)。ただし、台湾から日本を訪れる数に比べると、半分以下だ。双方向の交流こそが、台湾の訪日市場をさらに盛り上げることにつながるはずだ。

台湾が日本からの観光客を待望するのはもうひとつの理由がある。2016年1月の台湾総統選挙の結果、民進党の蔡英文主席が当選したが、それ以後、中国からの観光客が大きく減少しているからだ。

訪日台湾市場を理解するためには、現地をよく知ることが欠かせない。ぜひ多くの日本人が今年は台湾に足を運んでほしい。

※やまとごころ.jp
http://www.yamatogokoro.jp/report/2934/
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by sanyo-kansatu | 2017-03-02 12:19 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2017年 02月 08日

アパホテルとデモ騒動、これじゃ中国の為政者に踊らされすぎです

この週末、新宿で例の「アパホテル問題」を発端にしたデモ騒動が起きました。

在日中国人「反アパホテル」デモ 対抗団体も登場、休日の新宿が混乱(産経ニュース2017.2.5)
http://www.sankei.com/affairs/news/170205/afr1702050015-n1.html

ホテルチェーンのアパホテルが「南京大虐殺」などを否定する書籍を客室に備えているとして、中国当局が猛反発している問題で、日本在住の中国人らが5日、東京都新宿区で同ホテルへの抗議デモを実施した。現場周辺にはデモに抗議する団体メンバーも多数詰めかけ、休日の新宿は混乱した。

デモを行ったのは、このデモのために結成された日本で生活している中国人企業経営者、会社員らで作る「中日民間友好委員会」。約300人(主催者発表)の参加者が午後3時から、新宿中央公園から新宿御苑に近い同ホテル周辺まで行進した。「中日友好」「民族の尊厳を守る」などと書かれたプラカードや横断幕を掲げながら道路を歩いたが、シュプレヒコールを上げることはなかった。

デモには抗議する右翼団体の構成員らが併走。「JAPANが好きだ」と書かれた横断幕を奪い取ろうとしたほか、デモに飛びかかろうとして、警戒に当たっていた警察官に静止される場面が何度も見られた。

デモを主催した来日10年になるという中国人女性は「(周囲の)みなさんにはご迷惑をおかけした。今回声を上げたのは勇気ある中国人だ」などとコメント。年齢や名前などは明らかにしなかった。


騒動の始まりは「ニューヨークに住む米国人女子大学生Katさんと中国人男子大学生Sidさんのコンビ「KatAndSid」が15日夕方に投稿」した「告発」でした。それにしても、アンチデモの連中の暴走のため、まるで中国人のデモ関係者のほうが被害者のように見えてくる始末ですが、彼らもわざわざ垂れ幕に「JAPAN」と書くあたり、なんだか真意がすっきりしませんね。

これらの一連の件について、以前ぼくは中国が日本に限らず対外的に繰り広げてきた「宣伝戦」の一環であると書きました。その目的は、短期的には中国の歴史認識を否定する私企業(標的)に対してなんらかの経営的な打撃を与えることでしょうが、在日中国人まで巻き込んで騒動を拡大することで、結果的に、中国の主張を広く喧伝することでしょう。でも、こういうことはこれまでもしばしばあったことです。

中国SNSでアパホテル炎上 春節はどうなる?(2017年01月17日)
http://inbound.exblog.jp/26563241/

ささやかな記事ですが、BBCが動画付きでこれを報じています。

アパホテルに抗議、在日中国人らが東京でデモ(BBC2017年02月6日)
http://www.bbc.com/japanese/video-38877494

ビジネスホテル大手アパグループが日中戦争時の南京大虐殺を否定する本を客室に置いていることをめぐり、在日中国人らが5日、東京・新宿で抗議デモを行った。

本はアパグループの元谷外志雄代表が執筆したもので、大虐殺は起きていないと主張している。本の客室設置をめぐっては、中国政府が批判したほか、中国国内の予約サイトがアパホテルをボイコットするなどし、反発が広がっていた。


今朝、ネットを見たら、中国専門家の福島香織さんが今回の騒動についてこう書いていました。「結果的には、中国やアンチアパホテル側にとっていい感じの映像や記事が山のように出来上がった」。

「アパホテル問題」はスルーするに限る
中国の「公共外交」に踊らず、日本の魅力を示せ(日系2017年2月8日ビジネス)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/020600087/

まったく同感です。彼女は言います。

「それよりも、南京事件80周年の今年の春節前に、中国の動画サイトや微博で中国人向け投稿を頻繁にしているKat&Sidという米国人女性と中国人男性の二人組が、アパホテルの歴史本の存在を今更のように投稿して、批判し、中国のネットで炎上気味に拡散して、中国政府が旅行代理店や国民にはっきりと、アパホテルを使用するなと通達した一連の流れに、なにかしらの偶然とはいいがたいものを感じる。

もちろん、Kat&Sidが、中国共産党の手先だというつもりは毛頭ない。しかしながら、中国がこれまでとってきた、パブリックディプロマシー(公共外交)や歴史戦、国際世論戦の手法を思い返すと、最初のきっかけが偶然だとしても、中国当局はすぐさま戦略的に有効な展開を考えるものだ。そして、また日本のメディアも活動家も面白いようにそれに呼応してくれる」

さらに彼女は、中国の近年のパブリックディプロマシーの成果として「中国公共外交発展報告(2015)」の内容を紹介しています。その狙いは「安倍晋三の軍国主義復活を喧伝し、日米を離反させ、国際社会で日本を孤立させること」でした。中国出張中、テレビニュースを見ていると、今年に入っても日本に関する報道はそのような内容でほぼ占められていることを知るとき、まったく徹底していると感じます。中国メディアの特徴は、安倍首相が自衛隊といるときの映像を繰り返し使うことです。
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そして、今回の発端に象徴されるように、中国は今後ますますSNSを使った対日世論工作や国際世論形成に力を入れていくことになると指摘しています。

「こういう風に今年、中国が戦略的忍耐でもって、慎重に国際世論戦を展開してくるというなら、日本も慎重に迎え撃つしかない。右翼活動家の罵詈雑言による短絡的なカウンターデモは、はっきり言って、こうした公共外交、国際世論戦にとって日本の足を引っ張る以外の何者でもなかった」

ですから、今回の「カウンターデモ」は、中国の為政者に見事に踊らされてしまったも同然なんです。

最後に、福島さんは書きます。「日本の公共外交は、実のところ中国が歯噛みするほどの底力がある」。

そうなのです。いま多くの中国客が日本を訪れ、美しい風景や食事、サブカルチャーも含めた日本の多様な側面をSNSで広めてくれています。むしろ、こうしたことが中国の為政者に対するカウンターになるはずです。それ自体を目的とするのは本末転倒ですけれど、そのことに自覚的であってもいいと思います。

これからも彼らは私たちの嫌がることをあの手この手で仕かけてくるでしょう。今回は私企業に対する工作でもあり、義憤をおぼえた人も多かったのかもしれませんが、そうだとしたら、相手に乗せられたという話です。次回こうしたことが起きたときは、もう少し頭を冷やして、最も効果のある対応をすべきだと思います。それだけの手持ちは日本には豊富に揃っているのですから。

それからもうひとつ。日中の民間同士がいがみ合うことも、中国の為政者の思うつぼだということを頭に叩き込んでおきたいところです。民意によって選ばれたわけではない中国の為政者と民間人は区別しなければなりません。
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by sanyo-kansatu | 2017-02-08 07:54 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 01月 17日

中国SNSでアパホテル炎上 春節はどうなる?

ネットで嫌なニュースを見つけてしまいました。

「アパホテル」中国のSNSで“炎上”「南京大虐殺を否定するCEOの著書が客室に」 
告発動画「微博」で6800万再生(ITmediaニュース2017年01月17日)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1701/17/news088.html

日本のホテルチェーン・アパホテルが、中国のSNS「微博」で炎上状態になっている。「アパホテルCEOが執筆した、南京大虐殺を否定する内容を含む書籍が全客室に置かれている。中国人はこの事実を知った上で宿泊するかどうか決めるべき」と、米国人の学生が「微博」に動画を投稿して告発。この動画が2日で6800万再生を超え、中国ネットユーザーの批判を浴びている。

動画は、米ニューヨークに住む米国人女子大学生Katさんと中国人男子大学生Sidさんのコンビ「KatAndSid」が15日夕方に投稿したもの。2人は1月、東京に旅行に行った際、アパホテルに宿泊し、部屋にあった書籍を読んでショックを受けたという。

書籍は、アパグループ代表の元谷外志雄さんが「藤誠志」のペンネームで執筆した「理論近現代史学II」(英題は「THEORETICAL MODERN HISTORY II」)で、「南京大虐殺はねつ造だ」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」などと主張している。

動画では、Katさんがアパホテルのフロントで書籍を購入し、ページを開いて英語版の内容を紹介。南京大虐殺を否定している部分などを読み上げ、「彼には、自分の本をホテルに置いたり自分が言いたいことを言う権利はあるが、彼の政治的思想を知らない中国人・韓国人客からお金を取っているのは不誠実だ。このホテルに支払ったお金は、CEOのこのような政治的思想をサポートすることになる」と話す。

2人は日本で素晴らしい時間を過ごしたといい、「日本の人達はとても親切で礼儀正しい」と称賛。アパホテルの書籍を批判する動画を公開するかは迷ったが、「このホテルにお金を払う人は真実を知るべき」と考え、公開に踏み切ったという。「これはこのホテルだけの問題で、この国やこの国の人々には関係ない。日本をディスるつもりはない」としている。

動画は17日午前11時半までに6800万再生を超えた。シェアは60万以上、「いいね」は32万以上、コメントは2万9000以上投稿されており、「客観的なリポートをありがとう」「このホテルには泊まらない」などの声が寄せられている。

中国共産党の機関誌「人民日報」国際版の「GlobalTimes」もこの問題を報道。記事によると、中国の旅行会社・黄光グループは、この問題を受けてアパホテルの予約受け付けを停止したという。アパホテルの公式サイトは17日午前10時現在、つながりづらい状態になっている。


この記事では、悪名高い中国のタブロイド紙「環球時報」の英語版でもこの問題を取り上げていることや、海外向けにはYOU TUBEも活用されていることを紹介しています。

Chinese outraged over books at Japanese hotels that deny Nanjing Massacre(南京虐殺を否定する日本のホテルの本に中国人は憤慨する) (Global Times Published: 2017/1/16)
http://www.globaltimes.cn/content/1029025.shtml

RIGHT-WING NATIONALIST HOTELS IN JAPAN 每个人都应该知道的事实(日本の右翼・国家主義者のホテル)(YOU TUBE)
https://www.youtube.com/watch?v=rmoTcP-G8r8

このように中国は、いつでも対日宣伝戦を用意しているんですね。たまたま今日配信されていたJBPressの以下の記事がそのテーマを扱っていたので、やっぱりなあという感じです。

無から有を創り出す中国のプロパガンダ戦略
『孫子』はいまも生き続けている(JBPress2017.1.17)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48918

今月1月28日は中国の旧正月(春節)ですから、この時期にこの一件を問題にしたのは、中国客の訪問を待つ日本のホテル業界をはじめとするインバウンド関係者とその背後にある世論に対する揺さぶりのためでしょう。もしこれで中国客のキャンセルが続出という事態にまで至るとしたら、「悪いのはアパグループだ」と責任を押しつけることで、同グループの評判を落とし、日本国内での立場を貶め、結果的に、自らの主張を認めさせることを迫るというわけです。そこまで波及することはなくても、アパグループに対して中国客の予約キャンセルを集中的に浴びせるよう自国民を誘導することで、同じ成果を手にすることを目的にしているのです。

※アパグループの客室稼働率は好調で、外国人利用比率も高いことで知られています。国籍的には必ずしも中国客の利用だけでなく、多国籍化が見られるようですが、地方都市では中国の団体客の利用も多そうです。

アパグループの都心出店攻勢は驚異的。今年も続々開業予定
http://inbound.exblog.jp/24543248/
今年4月、アパホテルの宿泊客の4人に1人が外国人だったことの意味
http://inbound.exblog.jp/24687702/
「ホテルは立地産業。五輪前のいまは攻めどころ」(元谷外志雄アパグループ会長)
http://inbound.exblog.jp/24688926/

中国の宣伝戦の特徴は、まず標的を決め、標的とそれ以外の民衆との間に敵対関係を演出し、お互いをいがみ合わせることにあります。最初にアメリカで火をつけ、中国国内に還流させるというやり方もよく計算されたものでしょう。

昨秋、中国政府は香港や台湾に続き、THAAD配備を決めた韓国への観光客を減らす通達を出したばかりです。その狙いは、これらの国々の経済に打撃を与え、中国の意向に従わないことは不利益をもたらすと悟らせることです。中国政府にとって観光は政治の取引に使う道具でもあるのです。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです
http://inbound.exblog.jp/26367228/

さすがに、この並びに日本を加えてしまうと、中国客を送る有望な海外旅行先が減ってしまい、困るのは中国の旅行産業ではないかという事情もありそうですが、中国政府としては、日本に対しても「いつでも観光客を減らすことはできるんだぞ」という脅しの意味はありそうです。

それでも、PM2.5苦にあえぐ中国都市部の中間層は、春節休みを使って海外逃避を図ろうとする動きは強いようです。その人気先は、タイと日本だそうです。

今年の春節休みも「肺を洗う旅」の中国客はどっと来るのだろうか?
http://inbound.exblog.jp/26552082/

さあ、これからどんな展開になるのか。

今回は特定の企業を標的にしましたが、こうしたことは対象を変えて今後も起こりうることでしょう。

それにしても、こんなことして、世界中に争いの種をふりまいてばかりでどうするのでしょう。わかりやすい敵を設定し、民衆同士を盲目的に対立させ、諍いの火を投げ込み、双方を怒りや憎しみで火だるまにすることで、自らへの批判が向かわないようにするというのは、中国の為政者の常套手段です。自国内で散々繰り返されてきた民衆間の対立を煽る「工作」を、彼らは国際社会に持ち込みます。でも、これを仕掛けられたら、文革のときに苦しめられた中国の人たちと同じように、海外の人たちも中国の為政者をますます警戒するようになってしまいますよね。少なくとも、アジアにおいては、逆効果を生み始めているように思います。

【追記】
翌日、中国からアパホテルのネット予約ができなくなりました。これで政府が関与していることがはっきりしましたね。

アパホテル、ネット予約できず=南京事件否定の書籍批判-中国(時事通信2017/01/18)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017011800833&g=soc

【北京時事】中国の複数の大手インターネット旅行代理店で18日、客室に旧日本軍による「南京事件」を否定する内容の書籍が置かれているとして、批判が出ているアパホテルの予約ができなくなった。中国は27日から春節(旧正月)の大型連休に入る。日本も人気の旅行先だが、影響が長引く可能性もある。

このうち、予約サイトの「携程(シートリップ)網」では、18日には検索しても同ホテルが表示されなくなった。

問い合わせ先の担当者は「南京大虐殺を否定するような書籍が置かれているため。国内の多くのサイトでも予約できない」と語った。

書籍はアパグループの元谷外志雄代表の著作で、中国が犠牲者30万人と主張する「いわゆる南京虐殺事件がでっち上げであり、存在しなかったことは明らか」と記述している。同グループは「事実に基づき本当の歴史を知ることを目的としている」として、客室から撤去しない方針を示している。

日本国内のアパホテルは155カ所。アパホテルの公式サイトがつながらない状態になっており、アパグループは「詳細は調査中だが、サイバー攻撃と思われる異常なアクセスが継続している」と指摘した。


【追記その2】
朝日新聞でもこの問題を取り上げています。

南京事件に否定的な本、中国でホテル批判(朝日デジタル2017年1月19日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12754217.html

この記事によると、(ホテルに)「何を置くかは自由」という識者の声がある一方、訪日外国客の受入れを担うインバウンド関係者の以下のようなコメントを載せています。

中国人観光客を受け入れる旅行会社(福岡市)の役員は「日本国内に歴史修正主義的な議論があることは中国人はよく知っている。『またか』と受け止めるのでは」。一方、ある大手旅行会社幹部は「中国の人たちが日本全体のおもてなし業界に不信感を持つことが心配だ」と話す。

記事に客観性を持たせるために、異なる意見を併記するということなのでしょうが、中国側の主張を直接受けとめざるを得ないのがインバウンド関係者であることから、こうしたコメントを引き出すこと自体、中国政府の狙いどおりともいえます。

こんな記事も出てきました。

アパホテルの南京大虐殺否定本に対抗、中国のホテルが「ラーベの日記」を客室に―中国メディア(2017年1月19日レコードチャイナ)
http://www.recordchina.co.jp/a161256.html

(一部抜粋)2017年1月19日、澎湃新聞によると、日本のビジネスホテル大手のアパホテルが客室内に南京大虐殺を否定する本を置いた問題で、中国浙江省台州市のホテルがこのほど、旧日本軍から南京市民を救ったとされるドイツ人、ジョン・ラーベの日記を客室に置くと発表した。

こういうお調子ノリが中国ではすぐ出てくるんですよね。これなど「わかりやすい敵を設定し、民衆同士を盲目的に対立」させる政府の狙いを忖度し、同調する動きといえるでしょう。

【追記その3】
ついに中国政府は表に立ってアパホテルの利用中止を国内業者に強制し始めました。ここまで騒ぎ立てなければ気がすまないやり口をみる限り、特定の企業を標的にした「対日宣伝戦」という見立てどおりでしたね。

アパホテルの利用中止要求 中国政府、国内旅行業者に(朝日新聞2017年1月24日)
http://www.asahi.com/articles/ASK1S5FTNK1SUHBI01G.html

要するに、中国政府は今回の仕掛けによって、毎度のことですが、中国の民衆が日本の「右翼」の「歴史認識」について怒りを持っているというメッセージを広く日本の一般国民に印象付けることが目的だったのです。結果、アパホテルの中国客の利用が減れば、それもまたなおよし。日本国内に波紋をもたらし、自国民の批判の矛先を回避させるというふたつの目的を一挙に達成できる。両国民の関係を険悪にさせることは、いまの中国の為政者にとっては好都合なのです。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-17 14:59 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 23日

ハルビンの「中華バロック」文化街が面白い

近年中国東北地方では、外国人租界のあった上海や青島、天津などで十数年前に起きていた1920年代を復古するレトロブームの東北版ともいうべき「百年老街」が各地に生まれています。その多くは、かつての旧市街の一画を再開発した観光地区や当時の町並みを再現したテーマパークです。

中国東北のレトロブーム「百年老街」と丹東のテーマパーク「安東老街」
http://inbound.exblog.jp/26446671/

黒龍江省の省都ハルビンの老道外中華バロック歴史文化区も「百年老街」のひとつ。20世紀初頭、ロシアが建設した東清鉄道は満州里から東南に向かって延び、松花江を渡って市内に入り、ハルビン駅に至るのですが、当時、その鉄路(現在の濱州線)の西側はロシア人を中心にした外国人居留地となり、東側の「道外」と呼ばれた地区に中国人が住んでいました。

その後、この「道外」地区に西洋のバロック建築と中国の伝統的な様式が奇妙に融合した「中華バロック」と呼ばれる折衷建築群が生まれました。その特徴は以下のとおり。

「外観は、一見すると西洋古典系建築と、とくにバロック建築に似ていながら、その細部をよく見ると本来の西洋建築とは大きく異なる。また、建物の内部は伝統的な中国の都市建築、すなわち、一階を店舗として、二階から上を住宅にしたり、あるいは、一階の店舗の部分の中央を二階までの吹き抜けとして、建物の奥に住居部分を加えている。また、通路を通って奥に行けば中庭が広がり、それを取り囲んで長屋のような住宅が建てられていることもある。いずれにしても、道路に面した一階部分は商店や飲食店であることがほとんどである」(『「満洲」都市物語 ハルビン・大連・瀋陽・長春』(西澤泰彦著 河出書房新社 1996年))
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こうした構造上の特徴もそうですが、たとえば、最も代表的とされる元同義慶百貨店(現・順化医院)の場合、過剰な装飾性を特色とする西洋バロック建築に似せて、中国の植物などをモチーフとした彫刻を建築の表面に飾り立てていることでしょう。西洋建築では、古代ギリシャ以降、モチーフとして装飾によく使われたのは、聖なる植物とされた地中海産のアカンサスの葉ですが、ここではまったくの別物です。
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日本で最初にハルビンの「中華バロック」建築を紹介した建築学者の西澤泰彦さんの前述の著書には、建物の正面の柱頭部分の装飾について「西洋建築本来のアカンサスの葉を載せたコリント式の柱頭からはほど遠く、よく見れば白菜に似ている」と書かれていますが、本当にそうですね。
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こちらは、順化医院の通りをはさんだ向かい側の建物です。現在は金を扱う金行です。この建物の壁面の装飾も面白いです。
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これが外観は西洋建築でありながら、近づいてよく見ると、東洋的な印象を与える理由でしょう。当時の中国の職人が見様見真似で西洋建築らしく見えるように急ごしらえした事情もあると思われますが、結果的に、世にも不思議な風合いを持つ世界が現出しているのです。

これは20世紀初頭の道外の写真です。
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その特色ある建築群は長い間放置され、老朽化していました。それでも、2000年代半ば頃から少しずつ補修作業が始まりました。それが老道外中華バロック歴史文化区として全面的に再開発され、多くの飲食店が老舗の看板を掲げ、観光スポットとなってきたのは、2010年代になってからです。
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このポスターは、北京の代表的な老街である后海の名を挙げて、ハルビンの老道外も悪くないだろうと訴えています。
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地区には、創業から100年近い歴史をもつ肉まん屋の「張包舗」のような飲食店もあります。
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また東北地方の古い演芸「二人転」などの劇場もあります。
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二人転
http://www.china7.jp/bbs/board.php?bo_table=2_7&wr_id=31

レンガ造りの老建築のレトロな感覚を活かしたゲストハウスやカフェもでき、国内各地から若い旅行者が訪れるようになっています。
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ところで、東北地方で「百年老街」という場合、南京条約(1842年)や北京条約(1860年)で開港された上海などの沿海都市のケースとは違い、ロシアの南進が顕著となった清朝末期の19世紀半ば頃より、山東省などから満洲へ移民労働者が大挙して渡り、各地に華人街ができたという経緯から、そう呼ばれています。あくまで主人公は当時もいまも、外国人ではなく、華人というわけです。

ハルビン老道外中華バロック歴史文化区
http://laodaowai-baroque.com/
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by sanyo-kansatu | 2016-12-23 10:41 | 北東アジア未来形:満洲の今 | Comments(0)
2016年 12月 01日

トリップアドバイザーにまつわる数字と日本のインバウンドの話

先日、恵比寿ガーデンプレイスの34Fにあるトリップアドバイザー日本法人オフィスで開かれた同社のメディアラウンドテーブルに出席しました。今年9月に着任した牧野友衛代表取締役の紹介も兼ねたものでした。
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トリップアドバイザーは、世界最大の旅行コミュニティサイトとして知られています。今回のメディアラウンドテーブルの内容は、同サイトが旅行業界にもたらすプラスの効果をはじめ、インバウンドビジネスのトレンド、さらに国内ユーザーに向けた取り組みなどの紹介でした。そのあたりの話は、他に出席していた記者の方々がいたので、おまかせします。ぼくはあくまで日本のインバウンドに関する話題だけを以下、紹介します。

トリップアドバイザー
www.tripadvisor.jp

まず牧野代表取締役の紹介がありました。AOLジャパンやGoogle、Twitter Japanなどの多国籍IT企業を転々としてこられた方のようです。
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そして、トリップアドバイザーにまつわる数字が次々挙げられました。パワポの数字は、若干古いものだそうで、たとえば、サービスを展開する国の数が48カ国とされていますが、最近、ポルトガルが加わり、49カ国になったとか。まあとてつもない数字が並びます。

旅行者からの口コミ情報数 4億3500万件以上
月間利用者数 3億9000万人以上
旅行者からの写真投稿数 8000万件以上
登録施設数(ホテル、レストラン、観光施設) 680万軒以上
49の国と28言語で展開
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本社は東海岸のボストンにあるそうです。日本語でのサービス開始は2008年10月。開設が訪日旅行市場が急拡大する時期と重なったこともあり、外国人が日本を旅行するときに利用する情報サイトとしての存在感を得ていったと思われます。

では、どこの国の人が日本の情報をよく見ているのか。
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トップは米国で17.1%、2位は中国10.9%、以下、台湾10.2%、香港8.0%、オーストラリア7.0%という順です。トップ5で、全体の50%以上を占めるようです。米国発のサービスだけに、米国がトップなのはもちろん、韓国を除くと、訪日旅行者数トップ5が入っているのは当然です。台湾や香港、韓国などは、トリップアドバイザー以外の自国の情報サイトやコミュニティが充実していそうですから、こんなものでしょう。

これはぼくの想像ですが、アジアのユーザーはトリップアドバイザーに北米ユーザーが多いことは承知でしょうから、普段利用している自国サイトとは別の観点からの情報を得たり、参考にする場合に利用するという感じではないでしょうか。また中国人の場合、日本語のわかるコミュニティの人たちではなく、大学で英語を学んだり、外資系に勤めているような人たちがトリップアドバイザーを利用している気がします。

次の円グラフはちょっとわかりにくいのですが、アジア太平洋地区の国々に絞って、どの国がよく見られているかを集計したものですが、左の図は全世界からみた割合で、右はアジア太平洋地区の国々からみた割合です。ともに日本がトップです。以下はインドやオーストラリア、タイなどです。
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ところが、米国ユーザーに絞ってどの国をみているかとなると、日本は大きくダウンします。全体のわずか2%でしかありません。メキシコや欧州の国々が上位に入るのは、まあ当然でしょう。
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一方、中国ユーザーの場合は、トップがタイと日本でともに13%です。
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そんなわけですから、トリップアドバイザーによる世界の人気観光都市ランキングでは、東京は21位といったところです。
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これらの数字は、やはりトリップアドバイザーのメインユーザーが北米であることに起因していると思われます。

ところで、日本のホテルやレストラン、観光施設などの登録物件は現在、70万件だそうです。そのうち、日本語による口コミは全体の92%を占めるそうです。
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トリップアドバイザーは多言語化が進んでいるので、これらの日本語の口コミも海外では自動翻訳されて読むことができます(すべての国・地域ではない)。

さて、この数字をインバウンドの観点からみると、トリップアドバイザーの日本の物件に関する外国人の口コミは全体の8%にすぎないともいえます。同サイトはよく「外国人に人気」の観光スポットやレストランといったプレスリリースを発信していますが、これも8%の口コミの中から集計したものです。

ぼくは、すでに国内にはさまざまな旅行情報サイトやコミュニティがあるため、トリップアドバイザーは日本人が海外に行くときの口コミをチェックするためのサイトかとずっと思っていたのですが、国内物件に関しても日本語の口コミが大半を占めるんですね。

実は、FBにこの話を書いたら、知り合いの旅フリークのひとりが「クチコミ1件で100マイル(月間400マイルまで)をもらえていた時は、地元の情報を含め国内のクチコミをたくさん書きました。今は、ほとんどもらえないので書いていません」なんて教えてくれました。そうか、開設当初はとにかく登録物件数を増やせということで、キャンペーンをやっていたのですね。

この点に関して、ぼくはまったく勘違いをしていました。トリップアドバイザーに登録されている物件に口コミ件数が載っていますが、これは日本語と外国語を合わせたものなのですね。であれば、各都道府県別や地区別のランキングも、日本人と外国人の口コミを合わせた件数で、その比率まではわからないということです。

えっ、そんなの当然だって? そりゃそうか。外国人に限る集計は、トリップアドバイザー内部でしかできないわけで、そうなると貴重です。実際、同サイトのプレスリリースのリストをみていると、なかなか興味深いものが多いです。

たとえば、これなんか面白いですね。

トリップアドバイザー『旅行者物価指数(トリップインデックス)2016』を発表(2016.7.20)
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/07/00da71d62a5a3bd076514bf66c0c1903.pdf

これは世界20都市における旅行費用のランキングです。トップはニューヨークで、2位は東京だそう。最も安いのはハノイです。

またこんなのもありました。

中国人旅行客向けにレストランのモバイルクーポンサービスを開始(2016.11.26)
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/11/20161125_TripAdvisorPressRelease.pdf

これはトリップアドバイザーの中国版「マオトゥイン(猫途鹰)」のモバイルサイトやアプリから利用できるそうです。モバイルサイトや店舗のオフラインQRコードからスペシャルクーポンをダウンロードし、それを提示することで割引や無料のサービスなどを受けられるとか。

リリースによると「中国版「マオトゥイン(猫途鹰)」にて中国人旅行者が検索できる日本国内のレストランは600,000軒以上で、そのうちの約88,000軒が東京のレストランとなります。現在、同サービスは東京のレストランを中心に展開をしており、引き続きサービスを提供するレストラン店舗の拡大を目指して参ります」とあります。

トリップアドバイザーはぐるなびと提携しているそうなので、こういうサービスが実現できるのでしょう。でも、中国人からいきなりスマホを見せられて対応できる飲食店はどれほどあるのでしょうか。そんなことが気にならないではありません。

ところで、3年前のことですが、トリップアドバイザーの別の関係者の話を聞いたことがあります。

台湾でいまホットな話題は「シニア旅行」と「自由旅行」(台北ITF報告その6)
http://inbound.exblog.jp/21417412/

台北で開かれていた旅行博のフォーラムに登壇したトリップアドバイザーアジア太平洋地区副総裁(当時)のCindy Tanさんで、「他の類似サイトの追随を許していないことから、世界のFITの支持を勝ち得ている。年間書き込まれる1億件のコメントのうち、51%はホテルに関するもの。膨大な口コミ情報をフィードバックできることが、弊社のホテル業界に対するマーケティング・ビジネスを支えている」とコメントしていました。

3年前の口コミ数は1億件だったようなので、いまは4倍以上に増えているのですね。それと、このサービスの収益の大半は、ホテル業界との関係によるものだと彼女も話していましたが、牧野社長も同様の話をしていました。要は「ホテル予約の際のクリック型広告による」ものだそうです。Booking.comと提携しているとか。ホテル予約サイトとは立ち位置が違うところが、このサービスの面白いところだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-01 13:09 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 17日

都内に続々生まれるゲストハウスの世界~ムック『東京ゲストハウス』を手にして

ぼくの仕事場のある東新宿は、外国人観光客の泊まるリーズナブルなビジネスホテルやゲストハウス、そして「民泊」の集積地になっています。

毎日通る道すがらに、昨年11月にオープンした「IMANO TOKYO HOSTEL」があり、ときどきお茶しに行くことがあります。

ここは1階がフロント兼カフェになっているので、昨日もちょっと足を運んでみました。遅めのランチを取るために。

東新宿の新ゲストハウス「IMANO TOKYO HOSTEL」の宿泊客国籍別トップは台湾人 (2015年12月02日)
http://inbound.exblog.jp/25142528/

お店を出ようとしたとき、入口のそばにこんなムックが置かれていました。
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ムック『東京ゲストハウス』
http://guesthousepress.jp/tokyo_guesthouse_mook/

ここ数年、東京都内に生まれた外国人向けのゲストハウスを紹介する内容です。どの宿も写真をかっこよく撮っているので、眺めているだけでも楽しいムックです。「IMANO TOKYO HOSTEL」も紹介されていました。ドミトリーの中はこんな風になっているのか。初めて知りました。

他にも十数軒載っていて、いくつかはぼくも訪ねたことがありました。

訪ねたことはあるけれど、都内に住んでいるぼくはこれらのゲストハウスには泊まったことがありません。

「IMANO TOKYO HOSTEL」のスタッフの女の子に聞くと、基本的に外国客が多く、国籍はシーズンによっていろいろ変わるそうですが、ときどき就活で地方から上京してきた学生さんなども泊まることがあるそうです。

同じようなことは、歌舞伎町のカプセルホテルでも聞きました。やはり、こちらにも就活の女子学生さんが1週間くらい滞在することもあるそう。

ぼく自身は、ゲストハウスでたむろしているみなさんとは世代的に少し離れていますが、若い頃はよく海外のゲストハウスを利用していたものなんだぜ、なんて話をスタッフの女の子にしてみたくなるような、ならないような……(まだしてません)。

でも、最近は、地方出張に行くとき、わざわざゲストハウスに泊まることも増えています。

なぜそんなことをするかって? そりゃ最近、ホテル料金が高騰してたまらないってのもあるけれど、やっぱりゲストハウスにいるみなさんの様子を見ているのが楽しいからです。

彼らは旅空の下にいるからです。

そんな境遇を少しうらやましがりながら、日々の仕事の合間にひと息つくのが、最近の楽しみになっているのです。

ここ数年の東新宿については、以下を参照ください。

東新宿は新しい外国客向けホテル地区になりつつあります(2013年07月02日)
http://inbound.exblog.jp/20672715/

東新宿のビジネスホテルにはロシアや東欧の旅行者が多いらしい (2015年05月28日)
http://inbound.exblog.jp/24525927/

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)(2015年05月24日)
http://inbound.exblog.jp/24510962/
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by sanyo-kansatu | 2016-11-17 15:17 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 10月 12日

これ、嫌なニュースだな。ゲストハウスでバイトした旅行者を逮捕

これも、最近ちょっと増えてきたインバウンドがらみの報道のひとつ。嫌なニュースですね。

宿泊料代わりに働いた疑い 外国人観光客2人逮捕 札幌(朝日新聞2016年10月11日)
http://www.asahi.com/articles/ASJBC5W6YJBCIIPE02G.html

札幌市内のホステル(宿泊施設)で働く代わりに無料で宿泊したとして、北海道警は11日、観光客のマレーシア人の女(30)と中国人の女(19)を出入国管理法違反(資格外活動)の疑いで現行犯逮捕した。また、女2人に不法就労させたとして、道警は、ホステルの運営会社「万両」(東京都台東区)の社長の男(45)やホステル責任者の女(34)ら3人を同法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕する方針。

道警によると、2人は11日午前、同市中央区の「カオサン札幌ファミリーホステル」で宿泊料2千円をそれぞれ免除される代わりに、無資格で館内の清掃やベッドメイキングなどをした疑いがある。2人は容疑を認め、「観光ビザで働けないと分かっていたが、現金をもらっておらず大丈夫だと思った」などと供述しているという。

同社は主に外国人向けのホステルやゲストハウスを東京や大阪など6都道府県で計13店展開。ホームページに「就労資格がなくても清掃などに従事すれば無料で宿泊できる」との内容を英語で掲載しており、道警は組織的な犯行とみている。

札幌市によると、昨年度に市内で宿泊した外国人は191万8千人で、過去最多を記録。中国、台湾、韓国などアジアの客が多くを占める。北海道労働局によると、今年8月のホテル従業員らの有効求人倍率は2・63倍と全体の1・07倍を大きく上回り、人手不足の状態となっている。


この報道をネットで知って、最初に思ったのは、誰がふたりをチクったのだろうか、ということです。

すごく不愉快な感じがします。だって、これを不法就労などと言い出せば(まあ実際はそうなのかもしれませんけれど)、もっと悪質な不法就労をこれだけほっておいて、弱いものいじめはやめろよ、と言いたくなります。

例の免税店から中国人観光客の買い物の売上に応じてもらったマージンを所得申告しなかった不法ガイド(最近は国税局も調べ始めているようで、年間数千万円という人もいます)なんて、もう数え切れないほどいるのに、そちらは「実態を把握できていない」と頬かむりをしておいて、わずか1日2000円のドミトリー代金(1部屋にベッドがいくつも並んでいる部屋の料金)のことで不法就労とは……。

金額の問題ではないと言う人もいるでしょうが、このふたりが2000円を現金で支給されていたわけでもなければ、そもそもお金に困っていたとは思えません。彼らはかつて1990年代にいた不法就労者とは違い、いわばレジャー消費者なのです。いまどき不法就労する外国人は、ゲストハウスになんかいません。なんと時代の変化に鈍感すぎることか。やはり法の使い方が間違っている、いや下手すぎるのではないでしょうか。

マレーシア人は2013年7月以降、3ヵ月以内の滞在に限り、観光ビザが免除されています。また中国人には、2010年以降、個人観光ビザが発給されるようになり、昨年1月よりビザの種類によって15日から90日間の滞在が認められています。

マレーシア国民に対するビザ免除(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_000362.html
中国団体観光・個人観光ビザ (外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/topics/china.html

詳しい事情は知らないのでこれ以上本当は何も言えないのですが、今回いきなり逮捕の前に、いくつかの段階をふんで執行に至ったのかもしれません。執行に至る前に不法就労に当たることを口頭で知らせ、やめさせればすむことだったのに、そうならなかった理由があるのでは(そう信じたいです)。その理由いかんかとは思いますが(たとえばの話ですが、このゲストハウス経営者が警察に対してやたらと反抗的な態度を取り続けたとか。で、くだらない警察の面子が適正な判断より優先された? ちょっとテレビドラマの観すぎかな)、もしそうでないのなら、ここまでやる必要はなかったでしょう。それとも、やっぱりこのゲストハウスの存在を快く思わない誰かが密告した?

昔、友人の作家、岡崎大五さんがトルコのイスタンブールの絨毯屋兼ゲストハウスで、住み込みアルバイトをしていたことを思い出します。もちろん、彼は就労ビザなど持っていたはずがありません(こんなところで話を持ち出してすいませんねえ)。

1980年代の「第三世界(当時、アジアやアフリカ、中南米のことはそう呼ばれていました)」ことで、今日の世界情勢とはまったく違うのんきな話をしても仕方がないかもしれませんが、いつの時代も、ゲストハウスで繰り広げられるような浮世離れした世界があっていいとぼくは思います。彼らは旅空の下にいるのです。一生そんなことをするつもりもないのです。もちろん、若い人はときに羽目をはずすこともあるでしょう。でも、そんなことは、程度問題で、若い頃に同じような経験をしたはずの大人がどこかで判断を示せばいいはずです。いまの大人はそういう意味での判断力が低下している気がします。

同記事では、まるでエクスキューズのように、札幌のホテル業界の人材不足について触れていますが、どこまでこの件に関係があるのでしょうか。言外に、今回の逮捕はやりすぎと言いたいのでしょうか。

この問題を「今日の日本社会の寛容さの欠如」などといった一般論でどうこう言いたくはありませんが、ゲストハウスのような世界がいまの社会でどう受けとめられているのか、そして、どういう事情でこんなことが起きたのか知りたく思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-10-12 08:53 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 07月 05日

ついに報道された中国系「民泊」の実態~でも、正式解禁がアダとなりそうな気配も……

このところ、日経の古山和弘記者が「民泊」をめぐる実態を精力的に報道しています。今朝のネット記事では、ついに中国系「民泊」の実態が明かされました。

本ブログでも、この動きを身近な知り合いを通じて観察していました。中国ではすでにさまざまな「民泊」サイトが存在し、日本に中国客を送り込んでいることがうかがわれていました。

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた
http://inbound.exblog.jp/25579904/

この記事を読むと、東京や大阪の一部エリアでは「民泊」が一気に拡がっていることがわかります。以下、転載します。

「ヤミ民泊」中国系が荒稼ぎ 新宿・心斎橋を侵食
インバウンド裏街道を行く (日本経済新聞20160704)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO03920240S6A620C1000000/?n_cid=MELMG002

一般住宅に旅行者を有料で泊める「民泊」。訪日外国人(インバウンド)の急増でホテルが足りず、政府は民泊を解禁する方針だが、すでにフライング気味の「ヤミ民泊」は全国で急増している。最近目立ってきたのは中国人や台湾人などのアジア勢だ。泊まる側ではない。貸す側として、もうかる「民泊ビジネス」に押し寄せているのだ。その過熱ぶりにバブルを懸念する声も上がり始めた。

■新築マンションに観光客ゾロゾロ

「またや、まちごうて入ってきたで」。大阪市中央区の町工場「東洋タイマー製作所」の社長、北村久雄は事務所のドアを開けて入ってこようとする外国人の姿を見て声を上げた。工場のすぐ隣に新しい賃貸マンションができたのは昨年の秋だ。同時に近所でスーツケースをゴロゴロと引っ張りながら歩く外国人旅行者が増え始めた。いまでは毎週、1~2組の旅行者が間違えて事務所に入ってくるようになったという。

「大阪の台所」とされる「黒門市場」は事務所の目と鼻の先だ。外国人に人気の観光スポットは格好の民泊エリアでもある。民泊の仲介サイトで示されたマンションの場所をみてみると、確かに事務所と同じ場所に誤表示されていた。「マンションで民泊をしとるからや」。北村はため息をつくと、けげんな顔でドアの前に立っている来訪者に説明を始めた。

このマンションは全室が賃貸であるため、入居者が観光客を有料で泊めているとしたら「転貸」に当たる。賃貸契約上問題はないのか。管理会社に取材すると、「実際、マンションで民泊が行われていた」と認めた。どういう風に部屋を利用しているのか、入居者に確認を取っているという。

いま、世界で最も注目されている民泊エリアが大阪市中央区だ。民泊仲介の世界最大手、米エアビーアンドビーは「2016年に訪れるべき16の地域」の第1位に大阪市中央区を選び、世界中のゲスト(宿泊者)に滞在を薦めている。心斎橋や道頓堀といった、「ディープ大阪」を体感できる人気スポットが多いためか、現地はものすごい数の外国人観光客であふれかえっていた。道行く外国人に声をかけたら2人目で民泊の利用者が見つかった。

「オーサカの民泊は快適だったよ」。6月16日、台湾から彼女と来日した大学院生の林(25)は心斎橋のアーケード街にあるロブスターロール専門店の前で取材に応じた。1週間の日本滞在のうち、大阪市内のマンションに民泊で3泊した。エアビーアンドビーのサイトで予約。ワンルームの部屋は狭かったが、宿泊料は2人で1泊6000円。京都や神戸で泊まったホテルに比べると3分の1の安さだ。「学生だから安いほうが助かる」

■中国版エアビーアンドビー

年間2000万人規模の外国人が日本を訪れるようになり、東京や大阪などの都市部ではホテル不足が深刻だ。稼働率の上昇による宿泊料の値上がりも懸念されている。こうした事態を打開しようと浮上したのが民泊の活用だ。ただし、現在の法律のもとでは民泊は旅館業法に基づいた許可を受ける必要がある。民泊の仲介サイトに登録されている物件の多くは、許可を受けていない「ヤミ民泊」とされている。ただ仲介サイトの登録物件には許可を得ずに自宅やマンションを登録しているケースが目立つ。

民泊の仲介サイトは米エアビーアンドビーが有名だが、同じようなサイトは中国企業も運営している。そのひとつが「自在客(じざいけ)」だ。日本版サイトには1万4000室を超える物件が載っている。日本人だけでなく、外国人も登録しているようだ。その多くが中国人という。ほかにもいくつかの中国系サイトが日本に展開している。実際にどのような人物が登録しているのだろうか。あるサイトに掲載されている物件の住所をたよりに現地を訪ねてみた。

物件の住所が示していたのは東京都新宿区。JR山手線の駅から歩いて10分ほどのところにあるマンションだ。築40年という建物は、にぎやかな駅前とはうって変わって静かな場所にあった。目的の部屋にたどり着いてインターホンを鳴らすと若い日本人男性が出てきた。驚いた様子の男性に事情を話すと、この部屋で民泊をやっているのは同居している中国人男性で、「彼はいま、大学で授業を受けている」と教えてくれた。

連絡先を残して帰ったところ後日、男性(25)が電話をかけてきてくれ、会って話をきくことができた。男性は都内の大学に在籍する留学生だ。日本人2人と2LDKのマンションにシェアハウスで住んでおり、1部屋を民泊に使っている。物件は自在客とエアビーアンドビーに掲載している。新宿という場所柄、中国からの旅行者が利用するという。「多い月で25日くらい埋まり、家賃を差し引いて5万円程度の利益が出る」と話す。

■「双方が得ならいいじゃないか」

部屋は賃貸物件だという。賃貸で借りた部屋を民泊として貸している。「部屋のオーナーからOKもらっている」と説明するが、法的な問題について聞くと、「日本人は繊細だね。貸し手と借り手の双方にメリットがあるからいいのではないか」という答えが返ってきた。

いくつかの民泊仲介サイトをみると、賃貸物件を使っているケースが多くみられる。それらは部屋の大家であるオーナーから了解を得てから使っている場合もあるが、不動産会社と契約を交わす際に第三者に貸し出す契約を結んでいるとは限らない。なかには不動産会社にも大家にも無断で民泊として使っている物件も少なくない。そのため、「もし見つかったらすぐに退去させられる」(都内の不動産会社)というリスクを伴っている。

日本の大手企業で働く都内の台湾人男性(36)が副業として手がける民泊ビジネスも賃貸物件だ。昨年に東京の赤坂と新宿で民泊用にマンションを賃貸で借りた。めざましい稼働率をみせているのが新宿の物件で、家賃が月13万5000円のマンションは広さが2LDK。これを1人あたり1泊3000~4000円で貸している。外国人が多いエリアのため、多いときには月の9割ほどは埋まっている。5~7万円が利益として入ってくる計算だ。男性は「“利回り”は30%以上だ」と胸を張る。

オーナーから民泊で使うことの了解は得ているというが、「法律上はグレーということは知っている。でも、法律に合わせるとビジネスが成立しない」と男性は言う。今月には京都市内に4件の物件を見つけた。

なぜ京都かと聞くと、「もう東京は価格競争になっているし、バブルでしょう。京都はそこまでじゃない」と話した。その後も物件をもっと増やしたいと男性は語った。「日本はアジアの中でもマネーが集まりやすいし、東京オリンピックなど投資の条件がそろっている。民泊ビジネスやるなら、今がチャンスだ」

■分譲マンションにも波及

はたして賃貸物件を民泊として使うことは可能なのか。大阪市の心斎橋駅に近い不動産会社の担当者によると、「普通はNGですよ」と即答した。民泊と知っていて貸す不動産会社はほとんどないという。「客の話を聞いて怪しい場合に『民泊ですか』と聞くと、ズバリだったりする」。それでも不動産業界で今、引く手あまたなのが「民泊可能物件」だという。

「民泊可能物件を紹介してほしい」。大阪市内の不動産会社には同業他社からこうした問い合わせの電話が時々、かかってくる。電話の主は「賃料20万円でも30万円の物件でも借りたい。外国人旅行者の多い難波や梅田で民泊物件を出したら明日にでも契約が取れる」と持ちかけてくるという。それだけ民泊をやりたい人が多いということだ。仲介する不動産会社にとっては家賃が入ってきさえすれば、賃貸収入なのか民泊収入なのかは問わないようだ。

「民泊目的で分譲マンションを購入する外国人は増えていると思う」。大阪市内で不動産の仲介や販売を手がけるユーシン(大阪市)の高橋宏知は昨年に扱ったある物件のことをよく覚えている。それは築30年の1LDKだった。リフォームして1600万円でフィリピン人女性に販売した。その後、エアビーアンドビーにその物件が載っていると知らされ、サイトを見て驚いた。「最初から民泊目的で買うたんや」

日本の不動産を「爆買い」する外国人投資家。その勢いは衰えていない。不動産投資の多くは購入したマンションや一軒家を貸し出して賃貸収入を得ている。ところが、いま彼らの狙いは「民泊」に移っている。「チンタイよりもうかる」。そう信じているのだ。

「ここは駅から近くていいですよ」。中国人との取引がほとんどという都内の不動産会社社長は5月、上海から来た投資家の男性をJR山手線の駅に近い中古のワンルームマンションに案内した。最寄りの駅から徒歩10分という立地を気に入った投資家は築15年の物件を1800万円で購入した。「民泊でやりたい」と話していたという。

「10%は欲しい」。民泊を考えている中国人投資家が求めてくる利回りだ。年間の賃貸収入を購入価格で割った数字のことで、物件がどのくらいもうかるかを示している。都内では中古の場合「賃貸だと5~8%」(不動産会社社長)とみられ、10%の水準が高い要求ということがわかる。

■ホテル・旅館から規制の声

都市部ではバブルの声が上がり始めている民泊ビジネス。政府は民泊を全面的に解禁する方針で、これが追い風になると思いきや、民泊への熱気が一気にしぼみかねない「制限」が検討されている。観光庁と厚生労働省が設置した「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」は6月20日に最終報告書をまとめた。そこでは年間の提供日数に180日の上限が設けられている。これは単純に年間の稼働率が50%に制限されることを意味しており、民泊サービスの事業者からは「これでは利益が出ない」と悲鳴の声が出始めている。

一方、ホテルや旅館などの業界団体はさらに厳しい「年間30日」の制限を設けるべきだと主張している。既存の宿泊施設にとっては、お客を奪い合う存在と映っている民泊ビジネス。だが、ホテルや旅館などの宿泊施設を予約する旅行サイトの世界では、もはや両社を区別するのが難しくなっている実態があった。

たとえば、大手サイトの「エクスペディア」。宿泊施設を選ぶジャンルにホテルや旅館と一緒に「アパートメント」という項目がある。これをクリックすると、「○○アパート」「△△マンション」などの物件がずらりと並ぶ。写真ではマンションの外観や部屋がみられ、多くの物件の紹介ページで「この施設にはフロントデスクがありません」と表記してある。まさに民泊そのものといえる。

民泊の運営代行サービスを手がけるオックスコンサルティング(東京・品川)社長の原康雄は「利用者にとっては泊まる場所がホテルなのか、民泊なのかはあまり意味がない。旅行サイトに民泊の物件が出ていたり、民泊の仲介サイトに旅館が出ていたりする」と説明する。ホテル側にとっても民泊サイトに載せることで、稼働率を上げられるメリットがあるという。もちろん民泊にとっても同じだ。

中国の仲介サイト「自在客」に掲載している京都市内の老舗旅館は「『楽天』や『じゃらん』と同じつもりで載せている。旅行者を紹介してくれるサイトなので違和感はない」(旅館の経営者)と話す。旅館組合から抗議されたこともないという。

政府は2020年に訪日旅行者数を4000万人に引き上げる計画で、さらに6000万人超えも視野に入れる。東京オリンピックに向けて過熱しつつある民泊サービス。アジア勢の投資熱が入り交じり、ホテルや旅館、民泊事業者らの様々な思惑にも翻弄されている。=敬称略(古山和弘)

この記事のポイントはいくつかあります。まず利用者側の事情。「いま、世界で最も注目されている民泊エリアが大阪市中央区だ。民泊仲介の世界最大手、米エアビーアンドビーは「2016年に訪れるべき16の地域」の第1位に大阪市中央区を選び、世界中のゲスト(宿泊者)に滞在を薦めている」。実際の利用者に聞くと「ワンルームの部屋は狭かったが、宿泊料は2人で1泊6000円。京都や神戸で泊まったホテルに比べると3分の1の安さだ。「学生だから安いほうが助かる」」というわけです。

若い世代の旅行者にとっては当然そうでしょう。リーズナブルな価格帯の宿泊施設として、ゲストハウスなどのホステル系宿も増えていますが、多くの旅行者との共同部屋では落ち着かないという人もいそうです。カップルの場合は、特にそうでしょう。

一方、供給する側の動きとして「民泊目的で分譲マンションを購入する外国人は増えている」こと。結局、在日外国人は自国から来た旅行者の受け入れが当て込めるぶん、ビジネスになるのでしょう。

だから、外国人投資家が民泊用のマンションを次々と購入する動きが起きているのです。

「日本の不動産を「爆買い」する外国人投資家。その勢いは衰えていない。不動産投資の多くは購入したマンションや一軒家を貸し出して賃貸収入を得ている。ところが、いま彼らの狙いは「民泊」に移っている。「チンタイよりもうかる」。そう信じているのだ」。

もっとも、皮肉なことに、政府が正式に「民泊」を解禁したとたん、野放図なまま増殖してきた「民泊」ビジネスが一気にしぼむ可能性があるというのです。

「都市部ではバブルの声が上がり始めている民泊ビジネス。政府は民泊を全面的に解禁する方針で、これが追い風になると思いきや、民泊への熱気が一気にしぼみかねない「制限」が検討されている。観光庁と厚生労働省が設置した「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」は6月20日に最終報告書をまとめた。そこでは年間の提供日数に180日の上限が設けられている。これは単純に年間の稼働率が50%に制限されることを意味しており、民泊サービスの事業者からは「これでは利益が出ない」と悲鳴の声が出始めている」。

なんだか笑ってしまいますね。この記事には、周辺住民の声などについては一部しか触れていませんが、今後はこのあたりの問題もクローズアップされていくことでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2016-07-05 10:29 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 06月 10日

ラブホ支援は施設改修より人材育成が課題

今朝、ネットで以下の報道を知りました。訪日客の増加で大都市圏の宿泊施設が不足しているため、ラブホテルの事業者向けに政府が支援するそうです。
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ラブホテル改装で訪日客受け入れ 政府が条件付きで後押し(サンケイBiz2016.6.10)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160609/mca1606090500019-n1.htm

政府は9日、訪日外国人旅行客の急増に伴うホテル不足の解消を目指し、比較的稼働率に余裕があるラブホテルの事業者が観光客向けの一般ホテルに改装する場合、条件付きで後押しする方針を固めた。改装のための融資が受けやすくなるよう政府系金融機関の対応を進める。一般住宅に有料で観光客らを泊める民泊の規制緩和とも併せ、受け入れ態勢整備を進める。

事業者が改装のための融資を受けやすいよう、ホテルや旅館業の受け皿となる日本政策金融公庫に対し、厚生労働省が4月、「資金に関する相談に特に配慮するよう」通達した。政府系金融機関は公序良俗に反する業者は融資対象外だが、「(観光立国に資する)一般ホテルへの改装という条件なら、一般ホテルへの融資に該当する」(厚労省)としている。

観光庁の調査では、訪日客増加などで、ビジネスホテルやシティホテルの平均稼働率は4月も7、8割で推移するが、日本中小ホテル旅館協同組合によると、全国で約1万2000店ともされるラブホテルの平均稼働率は平日で約4割。風俗営業法の規定で、利用客が従業員と面接せずに鍵が受け渡せる一方で、18歳未満の利用が禁じられるなどの営業規制を受ける。

訪日客の増加を受け、業者からは一般ホテルへの転換を模索する動きも出ている。ただ風営法の営業規制を外すにはフロントや客室の改装が必要だが、中小事業者も多く、改装資金の調達が課題となっていた。

政府の観光ビジョンでは2020年に訪日客数を4000万人とする目標を掲げているが、都市部を中心に宿泊施設の需給逼迫(ひっぱく)が課題となっている。民間の調査機関は、東京オリンピック・パラリンピックに向けた今後のホテル開業計画を加味しても、同年には全国の客室数が1万室以上不足すると試算している。


全国にラブホテルは1万2000店もあるのですね。実は、この動き、ちょうど1年半前に取材していて、ビジネス誌の「プレジデント」で、ぼくは以下のような記事を書いています。

訪日外国人はラブホやカプセルホテルがお好き!? 日本全国、ホテル業界大異変(プレジデントオンライン2015年8月31日号)
http://president.jp/articles/-/16082
http://president.jp/articles/-/16083

タイトルだけみると、ラブホテルの外客利用の話だけのように見えますが、記事全体としては、外国客の利用の多いビジネスホテルチェーンや最新デザインホテル、カプセルホテルやゲストハウスなどのエコノミータイプまで、さまざまなタイプの宿泊施設の新しい動向を紹介しています。

さて、ラブホがらみでいうと、プレジデントの取材の際、実際に訪ねたのが、大阪のレジャーホテルチェーン「ホテルファイン」でした。

ラブホテル? いえ、レジャーホテルで、いま外客の取り込みひそかに進行中 (2015年 07月15日)
http://inbound.exblog.jp/24691630/

このとき、ホテルファインの会長に話を聞いていますが、ラブホテルやレジャーホテルが外国客を受け入れていくには、施設改装コストだけではすまない、さまざまな課題があることを指摘し、以下のようにコメントしています。

「一般のラブホテルやレジャーホテルで外客受入ができるのは一部に限られるだろう。この業界は大半が個人企業。受入には初期コストがかかるし、社員教育が大変。宿泊客が病気になって、病院の手配をしなければならないとき、フロントで外国語対応ができるか。外国客はフロントにいろいろ聞いてくる。近くにおいしいレストランはないか。松坂牛の食べられる店はどこか…。そういうコンシェルジュ機能も求められる」。

―大阪市からラブホテル業界で外国客の受入ができないか相談があったそうですね。

「うちにも大阪観光局の人が来た。そのとき、私はこう説明した。ラブホテルやレジャーホテル業界の経営は、1室月額いくらの売上で組み立ている。それには1日2回転させることも計算に入れている。これらのホテルは初期投資がビジネスホテルより圧倒的にかかる。部屋の広さやお風呂、エンターテインメントの設備などが充実しているからだ。ビジネスホテルの売上額ではとうてい成り立たない。いくら市が施設投資に補助金を出したところで赤字になる。

しかも、うちがいまやっているような運営ができるラブホテルがどれだけあるか。社員教育はどうするのか。外客受入を始めるとなると、館内案内も多言語化のため全部新しく揃えなければならない。うちもあらゆる表示物を英語と中国語に多言語化した。「トイレは紙を流してください」といったこれまで必要のなかった表示も用意した。食事の問題もある。ベジタリアンやハラル対応だ。外国客は食に対するリクエストが多い。そこで、食事メニューも変更した。うちでは24時間ルームサービスをやっているし、宿泊客には朝食がつく。メニューの種類を増やすことになった。

24時間電話の通訳サービスも始めた。通訳と3者通話ができるシステムだ。フロントにはタブレットも用意した。

外客受入のためには、我々自身が変わらなければならない。経営者が率先して受入態勢をつくっていかないと。海外からお客様がどんどん来るから、なんでもいいから客を取るではいずれしっぺ返しが来る」。

館内の多言語化や通訳サービスなどの新規コストもそうですが、会長は何より人材育成の問題を指摘しています。ホテルファインでそれが可能となっているのは、チェーンの規模が大きいことから、予約システムの構築も一括でき、外国客の接遇を行うスタッフ教育などにも対応できるからだそうです。

個人経営者の多いラブホテル業界では、経営者の高齢化もそうですし、多言語化ひとつとっても、なかなか難しい面がありそうです。問題は、旅館業界と似ています。

とはいえ、、ラブホテルの客室はエンターテインメント性の高さがポイントだと思うので、外国客にウケる要素はあると思います。他のシティホテルに比べコストパフォーマンスはいいですし。先入観のない外国客にとっては、賢い選択肢と映るようです。

今後はホテルファインのような先行事例もあることから、チェーン化が進むかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2016-06-10 09:23 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 05月 22日

「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」を続けてはいけない理由

今日もこんな記事が報じられています。要するに、現在の民泊市場の実態は「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」だということです。

民泊 35自治体、緩和せず フロント設置義務付け(毎日新聞2016年5月22日)
http://mainichi.jp/articles/20160522/ddm/041/010/126000c

個人宅を旅行者に有料で貸す「民泊」について、国が今年4月からフロント(玄関帳場)を設置しなくても営業許可が得られるよう規制緩和したにもかかわらず、47都道府県、20政令市、東京23区の約4割に当たる35自治体が今も条例でフロント設置を義務付けていることが、毎日新聞の調査で分かった。このうち都内の9区を含む17自治体は近隣トラブルの懸念などから当面は条例改正しないとしており、民泊の需要が高い都心部などで普及のめどが立っていない実態が浮かぶ。【熊谷豪、黒田阿紗子】

政府は、今後さらに民泊の規制緩和を進める構えだが、近隣トラブルの増加や既存の旅館・ホテルの反対を懸念して拡大に慎重な自治体が、国に歩調を合わせるかどうかは不透明だ。

空き家や空き部屋を利用した民泊は、これまで事実上放置されていたが、国は外国人観光客の増加などを見越したルール化を検討。4月から民泊を旅館業法が定める「簡易宿所」と位置付けて営業できる場所などを制限する一方、一般住宅にはないフロントの設置は許可要件から外すことを決め、営業許可を出す自治体に必要な条例改正などを促す通知を3月末に出した。

しかし、厚生労働省のまとめや、毎日新聞の5月中旬の調査によると、12道県、13政令市、都内の10区が、条例でフロント設置を求めていた。このうち約半数の18自治体は条例改正や弾力的な運用で要件を緩和する意向だったが、残りは義務化を当面続けるとし、9自治体(2県6市1区)が「条例改正するか検討中」、8区が「条例改正しない」と答えた。フロント設置義務があると、現行の無許可営業の民泊のほとんどは許可を得るのが難しいとみられる。

国は6月にも、住宅地での営業も認めるなど民泊のさらなる規制緩和策をまとめる方針で、大阪市などは「住民の安全が保てるのか、国の動向を見たい」としている。一方、世田谷区は「良好な住環境を悪化させる必要はない」、渋谷区は「民泊利用者の安全確保にも必要な規制だ」と指摘。台東区は国の通知と逆行する形で、3月末に条例改正してフロント設置要件を加えた。

また、都内各区に4月以降に民泊を簡易宿所として許可したケースがあったか聞いたところ実績はゼロだった。

■「無許可のまま営業が得」 条例で要件、改修の負担重く

4月から旅館業法に基づく合法的な営業が認められたはずの民泊だが、許可権限を持つ自治体の条例などが壁になり、違法営業が依然として横行している。東京都心部では、慎重姿勢を崩さない行政に業者も申請を尻込みし、民泊の「解禁」にはほど遠いのが実情だ。

「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」。今年3月から渋谷区の住宅地にある2階建て集合住宅(計9室)を仲介サイト「Airbnb」に登録した男性(35)は、違法を承知で旅行者に部屋を貸している。

シェアハウスだった物件を丸ごと借り、民泊を始めた。今月、所有者に促され、要件が緩和された「簡易宿所」の許可申請の相談に保健所に行った。だが、区はラブホテルの乱立を防ぐため、フロントの設置や会議室、食堂の整備など、条例で独自の要件を課している。これらを満たすには高額な設備投資が必要だ。窓口の職員からは「最低でも3カ月はかかる」「まずは近隣住民を集めて説明会を開いて」と言われ、申請をあきらめた。

「最大20人が集団で泊まれる」と人気の物件は、月の8割以上が予約で埋まり、許可が出るまで営業を中止するのは痛手という。男性は「お金のある大企業でないと民泊営業はできなくなるのでは」と悲観的だ。

浅草などの観光地を抱える台東区の条例も、3月の改正でフロント設置と営業中の従業員常駐が義務化された。マンションや集合住宅での民泊を事実上認めない措置だ。

区によると、2014年度に4件だった無許可民泊に関する苦情・相談は、15年度は25件に増えた。今もごみ捨てのマナーや騒音などの苦情が相次いでおり、斎藤美奈子・生活衛生課長は「住民の生活環境を守る対策が不十分。国は安全安心の確保を先にすべきだ」と指摘する。

ただし、こうしたトラブルは、民泊を合法化すればさらに増えるとは限らない。1月から国家戦略特区として独自の民泊制度を始めた大田区は、事前に近隣住民の理解を得ることを努力義務にした。今月17日までに一戸建て6軒とマンション8棟(30室)の計14物件が認定を受けたが、うち12物件を管理する業者によると、近隣からの具体的な苦情はないという。【黒田阿紗子、早川健人、柳澤一男】

フロント設置を義務化している自治体と今後の対応(○は条例改正などで要件緩和予定、△は検討中、×は改正予定なし)

<都道府県>
北海道○
群馬県○
神奈川県○
新潟県△
岐阜県○
愛知県○
三重県○
奈良県○
島根県△
徳島県○
高知県○
宮崎県○

<政令市>
札幌市△
仙台市△
さいたま市○
横浜市△
川崎市○
新潟市○
静岡市○
名古屋市○
京都市△
大阪市△
堺市○
北九州市△
福岡市○

<東京23区>
千代田区×
中央区×
新宿区×
文京区×
台東区×
大田区△
世田谷区×
渋谷区×
杉並区○
豊島区×


「無許可のまま、ばれるまで続けた方が得」。

これは、前にも言いましたが、中国人ツアーのガイド問題と同じです。今後規制緩和されるにせよ、現行においては違法となる就労資格や通訳案内士資格がなくても、ばれなければ気にせずガイドを続けている人たちが多数派を占めている問題のことです。

気になるのは、後者(中国人ガイド)の場合は、一般の日本人の預かり知らない場所で、よくわからないまま起きていることなのでピンとこない話だとしても、民泊の実態はいずれ広く一般の日本人の目にも明らかになると思われることです。

「民泊」の問題は、結局「非居住型」をどうするかにある
http://inbound.exblog.jp/25811104/

毎日新聞の調査のように、民泊の需要の高い東京などの大都市圏の自治体ほど、政府の規制緩和を受け入れようとしない背景には、「非居住型」民泊の増加が地元にもたらすであろう問題を避けたいと考えているからでしょう。もっとも、すでに新宿区や渋谷区などでは、無許可民泊が相当数あることがわかっている以上、規制緩和を受け入れないと言っていても、あまり意味がないともいえるわけですけれど。これらの区では、現状の市場をどう管理するかが問われています。

23区内でAirbnb物件が最も密集している新宿区が無法地帯になっている?
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/04/12/083740

地方自治体の取り組みとしては、京都市の事例が知られています。ただし、なかなか難しい問題もありそうです。なぜなら民泊サイトは海外に拠点があるからです。詳しくは以下をご参照ください。

外国の民泊仲介サイトに無視された「京都市民泊実態調査」
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/05/10/120000
違法民泊退治!京都市長・市議会あげての口コミ介入に成果?
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/05/12/120000

でも、もしこのまま何も手を打たずにいると、民泊のホストたちに対する世間の非難がいずれわき起こる日が来るかもしれません。なぜなら一般の地域住民は、小売店や飲食店の関係者とは違い、外国客との間に利害関係はないからです。彼らを受け入れなければならない理由はないのです。にもかかわらず、ホストたちが近隣住民の許可も得ず、「非居住型」民泊を始めたとしたら、いろんな声が出てくるのは当然でしょう。

違法民泊の監視は「近隣住民・宿泊者等からの通報」に頼らざるを得ない?
http://1manken.hatenablog.com/entry/2016/04/23/103713

これが未許可民泊の実態だ! 部屋をこっそり貸し出す入居者と管理会社の攻防を追った(産経新聞2016.5.2)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1605/02/news045.html

懸念するのは、こうした騒ぎが飛躍して、こんなことなら、もうこれ以上外国人観光客なんか誘致しなくてもいいではないか、という論調すら生まれるかもしれないことです。日本で多くの買い物をしてくれる外国人観光客なのだから、少々気になることはあっても歓迎すべきだろうとの国民的なコンセンサスが、これまではある程度共有されていたと思われますが、それが変わる可能性もあると思うのです。これは本来のインバウンド振興の意義からいって大変残念なことです。

※ぼくの考える日本のインバウンド振興の意義については以下のとおり。
戦前期も今も変わらない外客誘致の3つの目的(このブログの目的その4)
http://inbound.exblog.jp/22361086/

さらに別の視点でも、思うことがあります。この記事には触れられていませんが、そもそも地方では民泊の緩和よりも先にすべきことがあるのでは、と思います。

それは、地元旅館の外客受入を促進するための取り組みです。

以前、本ブログでも書きましたが、大都市圏のホテルをはじめとした宿泊施設の客室稼働率は高くなっていますが(それゆえ、民泊需要も高まっている)、地方に目を転じると、それほどでもないですし、旅館に関しては、おそろしく低い稼働率となっています。
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※2015年の全国の宿泊施設タイプ別の客室稼働率は、シティホテル(79・9%)、ビジネスホテル(75・1%)、リゾートホテル(57・3%)、旅館(37・8%)。加えて、都道府県別客室稼働率も見てください。地方によって稼働率が相当違います。

都道府県別延べ宿泊者数(2015年)
http://www.mlit.go.jp/common/001131278.pdf

中国人の旅館買収には理があり、背景には業界の長期低迷がある
http://inbound.exblog.jp/25808051/

なぜこうなるかという理由として、地方の場合、特に旅館業者らの間で、外国人を受け入れたくないという意向が未だ強いことが考えられます。ですから、このネット予約時代でも、外客も利用可能な宿泊サイトに登録していない施設も多そうです。民泊市場の急拡大は、AirBnBをはじめとしたマッチングサイト(事実上の予約サイト)がなければありえなかったことです。本当は地方の旅館こそ、宿泊予約サイトに登録すべきなのですが、そういったモチベーションがあまり感じられないケースが多そうです。いやむしろ、そんなことをして外国人が来られたら困るとすら考えている可能性があります。

ですから、地方では民泊を推進する前に、既存の旅館を外客に利用してもらうための手立てや支援策を打つべきだと思います。そうでないと、本末転倒の話だからです。自治体の関係者は、民泊市場が急拡大しているいまこそ、地元の旅館業界に働きかけて、外客の受入を促進すべきではないでしょうか。

旅館であれば、民泊の規制緩和でも問題になっていることなど、当たり前ですが、最初からクリアしています。こうした既存の施設をどう活用するかという議論ももっと必要だと思います。

【追記】
そんなことを思っていたら、6月に入り、こんな話になってきました。AirBnBが近隣問題の解決に向けて動き出そうとしたようですが、一方で政治的にはかなり厳しい裁定が下りそうなのです。

Airbnb、近隣民泊への苦情報告ツールを公開(2016.6.1)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1606/01/news095.html

民泊ビジネス終了か?「民泊180日以下」で閣議決定(2016.6.3)
http://airstair.jp/minpaku_180/

さあ、これからどうなるか。民泊推進派のため息が聞こえるようです。でも、もう少し状況を見ていきましょう。
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by sanyo-kansatu | 2016-05-22 16:18 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)