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2016年 05月 18日

「民泊」の問題は、結局「非居住型」をどうするかにある

今年に入り、メディアは訪日外国人市場の拡大にともなう政府の「規制緩和」をいくつも報じています。

資格不要の有償ガイドを認めるなら、せめて登録制にすべき (2016年 5月17日)
http://inbound.exblog.jp/25807497/

そして、今日は「民泊」の解禁です。以下、朝日のネット記事です。

民泊、住宅地で解禁へ 訪日客増にらみ新法 政府方針(朝日新聞2016年5月18日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12362375.html

空き部屋などに旅行者を有料で泊める「民泊」について、政府は住宅地でも一定の条件を満たせば営業を認め、本格的に解禁する方針を固めた。19日にまとまる規制改革会議の答申を受け、今月末に閣議決定する規制改革実施計画に盛り込み、今秋以降に「民泊新法」を国会に提出する。

民泊をめぐっては4月、旅館業法で許可を出す最低面積が5分の1に緩和されたが、都市計画法の「住居専用地域」では依然として営業は認められていない。

都市部で宿泊施設が不足する中、訪日観光客の増加に対応するため、政府は営業日数制限などを条件に対象地域を全面的に広げる。家主がいる場合だけでなく、ワンルームマンションなどで家主が不在でも騒音など近隣トラブルを防ぐ管理者が登録されれば、行政へ届け出ることで営業を可能にする。インターネット仲介サイトも登録制とし、取引条件の説明などを義務づける。

家主や新設される民泊管理者は、利用者名簿の作成保存のほか、マンションの管理規約や賃貸契約に違反しないことや、民泊営業の「表札」を掲げることなども義務化する。


民泊とは、一般住宅の空いている部屋を旅行者に貸し出すことで、近年の訪日外国人の急増で、大都市圏の客室不足や料金の高騰が背景にあることは広く知られるようになりました。米国系民泊サイトのAirBnBの日本法人の設立は2014年5月。空室を提供する登録数は急増し、2016年1月現在で約2万6000軒を超えたそうです。

実は、ぼくの仕事場の向かいにある一戸建てのお宅でも、数日おきに外国人ツーリストが入れ替わり来て、民泊している様子を窓越しに見かけます。たいてい西洋人のカップルで、彼らを迎え入れるホストであるその家のご夫婦が玄関先で若いツーリストたちと語らっている姿はとても楽しそうです。天気のよい日には、2階の物干しに白いシーツが干してあります。

一般に民泊には3つの類型があります。アイドルのコンサートが地方都市で開かれるときなどの大規模イベント時に臨時に部屋を貸し出す「イベント型」、ホストの自宅内の空いた部屋を提供する「ホームステイ型」、そしてホストの住んでいない賃貸マンションなどを貸し出す「非居住型」です。前述のご夫婦の場合は、「ホームステイ型」でしょう。

結局のところ、問題は「非居住型」民泊にあると思います。

ぼくの知り合いのひとりも、横浜の住人ですが、大阪の賃貸マンションを借りて民泊をやっています。こういうケースが、人ごとながら、とても心配なのです。

なぜなら、民泊を市場にまかせて運営していくうえでの課題を解決するための取り組みが圧倒的に足りないと思われるからです。これは日本に限った話ではなく、世界的にいえることです。

そのため、当然ホテル業界からの反発があります。「ホテルに義務付けられる環境・食品衛生・防火安全対策が(民泊のホストらに)免除されているのは不公平」だからです(実際は、民泊は「簡易宿所」という位置づけで、ホテルとまったく同じ基準ではないですけれど…)。

懸念事項の最たるものは、近隣住民へのケアがおざなりなことでしょう。もし自分の住むマンションの隣の部屋に、数日ごとに見ず知らずの外国人がやって来るとしたら、どう思いますか。

前述のぼくのご近所のケースのような「ホームステイ型」であれば、近隣住民へのケアはご本人たちの努力でそれなりに対処できると思いますが、「非居住型」の場合、旅行者と住民の間に何か問題が起きた場合、誰が対応するのか。

もともと「カウチサーフィン」のような無料で部屋を貸し合うSNSから始まったのが世界の民泊ムーブメントでしたが、AirBnBという金銭の授受を含む民泊サービスが登場してきて以来、状況は変わってきたといえます。要は、儲かるからと始めたホストたちが急増したことで、あやうげなことになってきたのです。彼らの目的ははっきりしているので、グレーゾーンなど気にしません。まずくなれば、すぐに手を引けばすむと考えているはずです。それは、中国人の団体ツアーのビジネスとよく似ています。彼らもまたグレーゾーンの存在をものともしないからです。そうこうするうちに、在日中国人による民泊ビジネスも相当な勢いでうごめき始めています。

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた(2016年3月27日)
http://inbound.exblog.jp/25579904/

こうした「非居住型」民泊に対する懸念の解消は、実際には、最近次々に生まれている民泊運営代行業者が担うことになるのでしょうが、市場の拡大にどこまで追いついているのでしょうか。彼らの取り組みが、今後民泊市場が日本社会に受け入れられるかどうかを決めるのだと思います。でも、大丈夫かしら?

だいたいAirBnBのサイト自体がお粗末なもので、自動翻訳でホストとゲストがやりとりするような世界でもあると聞くと、ゾッとしてしまいます。なぜそんなことで平気なのでしょう? こういうところに、日本のIT系の人たちの甘さを感じてしまいます。

熊本地震の直後、AirBnBが被災者に部屋を無料提供する募集をしていました。彼らとしては、非常時における民泊の意義をアピールし、イメージアップを図りたかったようですが、問題はそっちじゃないと感じた人も多かったのではないでしょうか。

熊本地震  被災者に家を無料提供 民泊サイトが募集(毎日新聞2016年4月16日)
http://mainichi.jp/articles/20160416/k00/00e/040/228000c

こうした客観情勢から、不動産業界でも民泊に対する姿勢は分かれるようです。

民泊、割れる不動産大手 規制緩和、商機狙う動き(朝日新聞2016年5月18日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12362264.html

「ライオンズマンション」を全国展開する不動産大手の大京が、戸建て住宅を使った「民泊」の事業化にこの夏にも乗り出す。政府が進める規制緩和が商機につながるとみる。一方で、新築の分譲マンションの管理規約で民泊を禁止する大手もある。

有料で自宅の空き部屋を旅行者に貸し出す「民泊」は、旅館業法で原則として規制されている。ただ、東京都大田区では1月、国家戦略特区の規制緩和を利用し、民泊が条件付きで認められることになった。

大京は7月にも、保有している大田区の2階建て中古住宅を使って民泊事業に乗り出す。羽田空港から乗り換え無しで行ける京急蒲田駅から徒歩10分。築17年で、ファミリー向けに賃貸していた。民泊ではより高い利益が見込めるという。

大田区の制度では1回の利用で7日以上の滞在が必要だが、周辺のビジネスホテルより割安な料金設定とすることで、「十分に稼げる」(青本隆担当部長)と自信をみせる。羽田、東京都心、横浜へのアクセスの良さが「売り」だ。

大京は、民泊は全国に広がるとみている。今年度には空き家になっている中古住宅100戸程度を買い取り、事業を拡大する計画を描いている。

■住民に配慮、禁止も

民泊の広がりは、不動産会社にとって良いことばかりではない。

管理会社は、マンションの住民たちから「うるさい」「ゴミが散らかっている」などの苦情を受けることが増えた。マンション販売の現場でも、「(民泊で使われると)防犯や衛生面で心配だ」「民泊に使われないマンションが欲しい」との声があがる。

東急不動産は1月下旬に売り出した大阪市内の二つのマンションの管理規約に、「対価を得て宿泊施設として使用することを禁止する」と明記し、民泊に使えないようにした。東京都大田区の物件(2月発売)と横浜市の物件(5月発売)でも、同様の対応をしたという。

野村不動産は、3月以降に販売開始の広告を出した分譲マンションのすべてで、あらかじめ民泊を禁止している。また、すでに分譲済みのマンションでも「専有部分は専ら住宅として使うこと」と定められている場合がほとんどで、民泊はできないと解釈するのが一般的だ。相談があれば明確に民泊を禁止するような管理規約の変更案を示して助言しているという。

マンション管理規約をめぐっては、国交省が現在の標準的な規約を改正しなければ民泊に使えない、と業界などに通達しようとしたところ、民泊を推進したい内閣府などから「待った」がかかった。現時点でも民泊に使えるかどうか、あいまいなままだ。

ニッセイ基礎研究所不動産市場調査室長の竹内一雅氏は、「不動産会社の住民への配慮は当然だ。不安をほぐせるルールが整備されなければ、民泊が大きな商機になるとは考えにくい」と指摘する。(下山祐治)

■民泊をめぐる不動産各社の対応

<大京>    東京都大田区の戸建てで7月にも民泊事業を開始。全国展開も検討
<東急不動産> 大田区や大阪市、横浜市で販売中の一部分譲マンションで民泊を禁止
<野村不動産> 3月以降に販売開始の広告を出した分譲マンションすべてで民泊を禁止
<三菱地所>  マンションの管理組合に対する相談体制の強化を検討
<三井不動産> 当面は大田区などの取り組み状況を見守る


日本には人口減にともなう深刻な空き家問題もあります。その対策として渡りに船ともいえる民泊だけに、政府も規制緩和を進めたいのでしょう。そのためには、民泊の存在を受容する社会のコンセンサスをいかにつくっていくか。いまの民泊をめぐる状況は、中国人団体ツアーのガイド問題にとてもよく似ています。グレーゾーンであることをいいことに、利益を得たい人たちだけが都合よく暗躍しているように見えるからです。

いろいろ気になることばかりではありますが、訪日外国人の増加が、これに限らず、国内へのさまざまな投資を生んでいることは確かです。それこそがインバウンド振興の意義のひとつといえるわけですから、個人的にはうまく進めてほしいと願うばかりです。

民泊の市場動向や問題について詳しい情報を発信しているのが、以下のサイトです。

マンション・チラシの定点観測
http://1manken.hatenablog.com/

このサイトを日々チェックしていると、「民泊」問題のさまざまな側面が見えてきます。

【追記】
あとで知ったのですが、この報道はすでに先週出ていたのですね。

民泊を全面解禁、住宅地で営業認める 政府原案 (日本経済新聞2016/5/13)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H3C_T10C16A5MM0000/

NHKでも以下の記事を配信していました。

民泊 管理者置けば届け出で営業可能に(NHKオンライン2016年5月13日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160513/k10010518831000.html

住宅の空き部屋などを有料で貸し出す「民泊」について厚生労働省と観光庁は家主が同居していなくても管理者を置くことを条件に都道府県への届け出を行えば営業を認める方針を決めました。

住宅やマンションの空き部屋を有料で貸し出す「民泊」を巡っては、外国人観光客の増加で宿泊施設の不足が深刻となる中厚生労働省と観光庁がルール作りを進めています。先月からは「民泊」をカプセルホテルなどと同様に旅館業法で「簡易宿所」と位置づけ、貸主が都道府県から許可を得れば営業が認められるようになりました。

このうち、一般の家庭で受け入れる「ホームステイ型」については家主がいるため宿泊者の安全管理がしやすいなどとして、今後、許可制ではなく都道府県への届け出だけで認める方針です。

さらに「民泊」を広げるため厚生労働省などは家主が同居していない場合でも管理者を置くことを条件に、旅館などと競合しないよう営業日数の制限を設けたうえで、「ホームステイ型」と同様に都道府県への届け出を行えば営業を認める方針を決めました。管理者は近隣とのトラブルの対応や宿泊者の名簿の作成などが義務づけられるということです。

厚生労働省と観光庁は今後、インターネットなどで仲介を行う業者への規制について検討することにしています。

ここで気になるのは「非居住型」民泊でも、「管理者」を置けば問題ないとのことのようですが、これはどのような存在を指しているのでしょうか。民泊運営代行業者でいいのでしょうか。もうひとつよくわからない内容です。
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by sanyo-kansatu | 2016-05-18 11:00 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(2)
2016年 05月 17日

中国人の旅館買収には理があり、背景には業界の長期低迷がある

ネットで興味深いレポートを読みました。中国人が地方の旅館を次々買収しているという内容です。

ポイントは、老朽化し、後継者もなく、売りに出された旅館を彼らが買い、急増する中国人旅行者の宿として使うこと。さらには、中国富裕層の「資産移転」になること。この種の話題が出ると、すぐに中国脅威論に結びつけたがる人がいますが、彼らの買収には、それなりの理があることを理解すべきだとぼくは考えます。

以下、転載します。

温泉宿を“爆”買収 中国人は地方観光の救世主か
インバウンド裏街道を行く(日本経済新聞2016.5.16)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO99915080R20C16A4000000/

 2015年度の訪日外国人(インバウンド)数が2000万人を超えた。観光地は盛り上がりをみせているが、その裏で異変が起きている。温泉地にある旅館やホテルの経営者が次々と外国人に入れ替わっているのだ。政府や自治体が「観光立国」に熱を上げる一方、経営難や後継者不足にあえぐ旅館やホテルの衰退は確実に進んでいた。経営を断念した売却物件を買っていくのは外国人ばかりで、その多くは中国人だ。日本の温泉旅館を狙う彼らの思惑はどこにあるのか。

■10億円の物件を即決

 「この場でサインしましょう」。中国人男性が3軒の旅館購入を決めた瞬間だった。総額10億円にのぼる。中国人男性は「詳細を詰めるために近いうちに来日する」といって中国に帰っていった。「最初から買うつもりの場合は値引き交渉をしない。そして即決する」。物件を仲介したホテル旅館経営研究所(東京・中央)代表の辻右資はあらためて強く実感した。

 東京・銀座にある辻のオフィスに、中国人男性が訪れたのは3月中旬のこと。約束の10時前に受付のベルを鳴らしたその男性は、上海で複数のホテルを運営している経営者だという。そこから4時間に及ぶ商談が始まった。

 「この旅館の敷地は建て増しできるか」「運営は誰かに任せられるのか」――。中国人の男性は電卓をたたきながら細かい質問をしていく。最大の関心事は投資に対するリターン(利益)がどのくらいあるかだった。辻が提案したのは日本各地の有名温泉地にある5カ所の旅館とホテル。売却額はどれも3億円以上になる。なかには高級旅館で知られる関東近郊の老舗旅館もあった。「いずれの物件も企業や個人が所有していたが、オーナーの高齢化で後継者がみつからず、やむなく手放すことにしたようだ」(辻)。

 金沢、箱根、蔵王……。中国人の男性は辻と面談する前、6泊7日の日程で5カ所の物件をすべて駆け足で視察し、うち2カ所は実際に宿泊した。通訳や物件の案内役など3人を引き連れた「視察ツアー」の目的は、購入する価値があるかどうか。その見極めだった。来訪の目的は旅館側に明かさず、あくまで一般の旅行者としてふるまったという。

 男性はもともと日本の温泉が好きで、観光でなんども来日していた。真剣な表情で建物の状態や客室スタッフのサービスなどを見ていた。夕食にも舌鼓を打った。同行した案内役は「本気で買うつもりできている」と感じたという。

■経営だけ入れ替わる
 外国人による旅館やホテルの買収は増えているが、正確な実態をつかむのは難しいとされる。昨年12月に「雲海テラス」で知られる星野リゾート・トマム(北海道占冠村)の全株式を中国企業が180億円で取得した買収劇。これは大きく報道されたが、通常は表に出ることは少ないという。宿泊客が知らない間にオーナーが入れ替わっているケースがほとんどだ。経営者が交代しても従業員はそのまま雇用されることが多い。

不動産シンクタンクの都市未来総合研究所(東京・中央)によると、公表された案件をまとめただけでも外国企業による旅館・ホテルの売買件数は2015年に46件と前年比2.7倍になった。主任研究員の下向井邦博は増加の背景について「訪日外国人が増え、大都市では旅館やホテルの稼働率が上がっている。客室単価も上昇し、投資先として魅力が高いと感じている」とみる。

 一気に増え始めたのは2020年の東京五輪・パラリンピック開催が決まってからだ。売買を仲介する辻のもとには毎日のように購入を打診する問い合わせが入る。売却リストには箱根や伊豆、金沢、湯布院など日本の代表的な温泉地が並ぶ。最近は中国人だけでなく、台湾やシンガポールの投資家からも問い合わせが増えている。「この物件の概要を送ってほしい」。資料を受け取って気に入ると、あとは現地を見て購入するかどうかすぐ決断する。一見すると強気にも思えるが、彼らが当て込んでいるのが急増する訪日外国人だ。
 
日本政府が政策として推し進める訪日外国人の誘致。その数は2015年度に2000万人を突破した。2020年には2倍の4000万人に増やす計画だ。外国人ツアー客の観光プランは東京、大阪、富士山などいわゆる「ゴールデンルート」を回るものだが、大都市ではホテルなどの部屋不足が深刻化している。その波は地方の温泉地にも波及し、各地で苦境にあえぐ旅館やホテルにとって「救世主」となる可能性を持っている。

■客も中国人に絞る
 「手を挙げたのは中国人だけだった」。2014年冬、大阪府内にある温泉ホテルを売却した不動産会社の関係者は当時を振り返る。大阪市内から離れた場所にあるホテルは客室数35、築40年以上で老朽化が目立っていた。客数も減少し、経営を立て直すには部屋のリニューアルや浴室の改修などに1億円以上が必要だった。ただ改修しても客数が上向く見込みはなく、この不動産会社は売却を決めたという。

 買い手を募ったが、名乗りを挙げた3人すべてが中国人だった。物件としての魅力はそれほど高くはなかったが、「ゴールデンルートにあったことで救われた」という。売却額は1億5000万円。購入したのは訪日外国人を専門に扱う旅行会社の中国人経営者だった。ところが所有権が移った直後、ホテルは様変わりする。宿泊客のターゲットを中国人に絞ったのだ。

 部屋ごとに出していた朝食はバイキング形式になり、宴会場として使っていた大広間は客室に改装。家族客の自家用車がとまっていた駐車場は大型観光バスで埋まった。その結果、日本人客はあっという間に減っていったという。ただ、客室の稼働率は急上昇し、「ほぼ満室に近い状態になっている」(関係者)。運営コストをギリギリまで抑えることで格安の中国人ツアーを取り込み、利益を上げる戦略だ。

 買収された旅館やホテルの多くは中国人専門の宿泊施設へと変わる。それは地元にとっても決して悪いことばかりではないようだ。

■ある旅館の復活
 桃の産地で知られる山梨県笛吹市。東京から電車で1時間半ほどの「奥座敷」といわれる石和温泉がある。全盛期には年間300万人いた日本人の宿泊者は半分弱にまで落ち込んでいる。最近、目立つようになったのが外国人だ。なかでも6割を占める中国人は2~3割増で伸びている。そして、この地でも数年前から中国系企業による買収が相次いでいる。石和温泉で営業している旅館・ホテルは49。このうち6施設を中国人経営者が所有する。

 その一つが「緑水亭 やまぶき」だ。旅館は経営破綻した後、いったん日本語学校になったがそれを中国人が買い取った。旅館にはいまも日本語学校の名残を感じる看板が残されている。JR石和温泉駅前の観光案内所で「いまは営業していないと思いますよ」と言われたが、実際には営業は続いていた。なぜ地元では知られていないのか。

 元留学生だという中国人支配人に聞くと、「うちはPRする必要がない。中国の旅行会社から直接、ツアー客を紹介されるから」と説明する。毎日40人程度の中国人ツアー客が宿泊するという。昼過ぎの館内は電気が消されており、薄暗い。到着はいつも夜7時ごろで、翌朝には次の宿泊地へ慌ただしく出発する。滞在中はホテルの外に出ることがないという。「日本人のようにタクシーに乗って買い物や飲みに行くことはない。お金は落としていかないよね」。タクシー運転手は複雑な表情で話す。

 それでも地元で歓迎の声は少なくない。石和温泉旅館共同組合の理事長で、自らも旅館を経営する山下安広は「中国系の旅館とは共存共栄でやっている」と話す。日本人宿泊者が減り続けるなか、「外国人が来ないと経営が成り立たない」からだ。中国系の旅館だけでは対応できない宿泊客を紹介してもらうことがある。代わりに日本の接客スタイルである「おもてなし」を教えている。

■ステータス目的も
 中国人による旅館への投資は必ずしも利益を上げる目的だけではないようだ。東京都北区にある印刷会社、アールコーポレーション代表の舘正子は中国で生まれ、30年前に来日して日本国籍を取得した。中国の北京市にも事務所を持ち、日本企業の海外進出を支援するビジネスも手がける。彼女の幅広い人脈を見込んで最近、中国の富裕層から「日本の温泉旅館を案内してほしい」という要望が増えているという。

 1月に来日した中国・北京に住む不動産会社の男性経営者は、箱根や鬼怒川温泉、石和温泉に宿泊し、いたく気に入った様子だった。「いい物件があれば買いたい」と話したという。目的は旅館やホテルへの投資の見返りというより、「ステータス」にあると舘はみている。富裕層の多くは日本の食べ物や温泉が好きでしばしば観光に訪れている。ブランド価値の高い有名旅館を自分の所有にできることが、彼らのプライドをくすぐるようだ。

 そして、もう一つの理由が「資産の移転」だ。中国の富裕層は資産を国内だけでなく、海外にも分散して保有している。国内の不動産市場が冷え込んできており、資産を海外に移す動きが加速している。日本もその有力な候補となっているのだ。日本の地価はずっと下がり続けており、今が買い時と判断している。

 宿泊施設の経営に詳しい井門観光研究所(東京・千代田)代表の井門隆夫は「中小規模の旅館は老朽化した施設を改修する余裕がなく、客室の稼働率も低い」と指摘する。復活のカギとなるのが急増する訪日外国人だ。しかし、なかには外国人客のマナーの悪さを口実に積極的に受け入れをしない旅館も少なくないという。そうした旅館の姿勢が井門にはもどかしく見える。「客を増やす可能性があるのに動いていない」

 急増する訪日外国人は、投資家としても、顧客としても、地方の観光産業建て直しの鍵を握る。一方、このブームが去れば何が残るかという不安も残る。温泉地の旅館やホテルの経営者にとっては悩ましい選択だ。=敬称略(古山和弘)


中国の知人・友人から「旅館を買いたい。物件を知らないか」と聞かれることは、数年前からぼくにもありました。なにしろ、いま日本はホテル不足で、料金も高騰しています。中国の旅行関係者らは、自前の宿泊施設がほしいのです。安心して日本に送客したいからです。

一方、日本の旅館業界は、1990年代のバブル崩壊以降、長期低迷しています。

観光庁の宿泊旅行統計調査(平成27年)によると、2015年の延べ宿泊者数は前年比6・7%増の5億545万人泊と過去最高。そのうち訪日外国人は前年比48・1%増の6637万人泊(全体の約13%を占める)と大幅に拡大し、日本の国内客も円安で海外旅行から国内旅行にシフトしたことなどの理由で、2・4%増の4億3980万人泊と増えています。

その結果、宿泊施設全体の客室稼働率は全国平均60・5%と過去最高を記録しました。ところが、宿泊施設タイプ別にみると、シティホテル(79・9%)、ビジネスホテル(75・1%)、リゾートホテル(57・3%)、旅館(37・8%)と明暗が大きく分かれました。
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都道府県別延べ宿泊者数(2015年)
http://www.mlit.go.jp/common/001131278.pdf

観光白書(平成28年版)によると、国内の宿泊施設数は7万9519軒(14年)で、10年前の05年が8万9289軒だったことから、実は減少傾向にあります。ホテル建設は好調に進んでいるように見えますが(ホテルは11%増)、旅館はなんと25%も減少しているからです。この傾向は今後も続くと考えられます。

観光白書 平成28年版
http://www.mlit.go.jp/common/001131318.pdf

バブル期にふくらんだ旅館業界を国内市場で維持することはできなかったのです。そこに現れたのが、中国人でした。

記事の中に、山梨県の石和温泉の話がでてきますが、ここは10年前から中国人団体客の定宿になっていたことから人的交流があるはずで、買収が進むのは自然の流れでした。

しかし、いくら彼らの買収意欲が高いといっても、日本の旅館業を低迷から救うことは難しい話です。では、この事態をどう受け止めればいいのでしょうか。

おそらく彼らが購入した旅館の経営は、中国人スタッフのみで行われることでしょう。ちょうど都内の中華料理店と同じように、同じ出身地の中国人を呼び寄せ、同族経営をするのだと思います。

でも、そんなやり方に任せていてはいけないと思います。彼らの存在をアンタッチャブル化するのではなく、地元にいかに溶け込ませていくか考えるべきでしょう。

「中国系の旅館だけでは対応できない宿泊客を紹介してもらうことがある。代わりに日本の接客スタイルである「おもてなし」を教えている」(上記事より)。

こうした石和温泉旅館協同組合の理事長の言う「共存共栄」のあり方はもっと広く知られていいと思います。

そして、もし中国人投資家や地元の人たちに国際的な視野や経営の手腕があるなら、いっそのこと石和温泉を中国版のニセコリゾートのようにすることはできないものでしょうか。「共存共栄」のモデルケースにするのです。
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【追記】
世界に目を広げると、中国企業によるこんな巨額の買収話もあります。結局、話は流れたようですが…。こういう話に比べれば、日本の旅館買収なんて、かわいいもんじゃないでしょうか。むしろ、彼らの投資をうまく利用してやろうというくらいの心構えでいいのでは。そう思います。

高級ホテルも爆買いの中国 投資手腕はバブル期の日本以上
http://forbesjapan.com/articles/detail/9839

スターウッド買収提案を安邦が撤回(ウォールストリートジャーナル2016年4月1日)
http://jp.wsj.com/articles/SB12495755728542884874804581633713611137524

「中国の安邦保険集団は米ホテルチェーン大手スターウッド・ホテルズ・アンド・リゾーツ・ワールドワイドに対し、安邦率いる企業連合が先に提示した140億ドル(約1兆5800億円)での買収提案を撤回すると伝えた」。

マリオットのスターウッド買収が正式決定 -世界最大のホテル企業が誕生(2016年4月9日)
http://www.travelvoice.jp/20160409-64724

結局、マリオットが買収したようです。
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by sanyo-kansatu | 2016-05-17 15:02 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 03月 27日

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた

上海から戻ってきた翌週、地下鉄の中吊り広告で目にしたのが、『ウェッジ』(4月号)の「中国民泊」の特集でした。
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特集「訪日外国人を囲い込む中国民泊」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6347

今年に入ってぼくは内陸都市の重慶や成都、そして上海を訪ね、現地の旅行関係者らにヒアリングを続けてきました。そのポイントは、中国では訪日客の個人旅行化のスピードが想像以上に早く進んでいるということでした。

その背景には、日本政府によるビザ緩和の推進があります。詳しくは以下参照。

ビザ緩和とLCC日本路線の拡充が日本旅行ブームをもたらした(日経BPネット2016.3.22)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/031800009/

で、その結果、何が起こるかというと、AirBnBを超える勢いの「中国民泊」市場の拡大だったのです。

同特集をざっと読みました。冒頭のレポート「日本でAirBnBを猛追する中国民泊」を執筆しているのは、現代中国事情の専門家の富坂聡さんです。さすがに情報が早いですね。

同記事は、上海に本社を置く中国最大の海外民泊サイト「自在客」の紹介から始まっています。「同社の提供している部屋は、台湾で21都市、韓国で27都市、中国大陸に46都市、そして日本に40都市、さらにアメリカにも4都市」。なかでも「予約の多い都市として挙げられた10都市のうち6都市が日本」「自在客のホームページで「日本」と入力すると、2090件、1万2760室と表示される」。これは「現在日本で2万6000室を提供しているAirBnBが1年前は1万件にも満たなかったことを勘案するとその存在感は既に甚大だ」といいます。

では、実際に「中国民泊」サイトにはどのようなものがあるのでしょうか。上海の旅行関係者に聞いたところ、海外民泊を扱う代表的なものは以下の3つです。
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自在客 http://www.zizaike.com/
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住百家 http://www.zhubaijia.com/
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途家 http://www.tujia.com/

実は、他にもいろいろあるのですが、以下の2つは中国国内の民泊がメインだそうです。
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游天下 http://www.youtx.com/
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蚂蚁短租 http://www.mayi.com/

いまの中国には数多くの民泊サイトがあります。前述の旅行関係者は「人気の理由は、ホテルより安くて、利用者の個別のニーズに応えられること。ホテルが取りにくいオンシーズンに役に立つサービスです。個人旅行の増加で、特に日本の民泊が大人気になっている」といいます。

では、もう少し「ウエッジ」4月号の記事を見ていきましょう。同誌の記事の一部はネットでも閲覧できます。

日本市場に吹き荒れる「中国民泊」旋風
最大手「自在客」CEO独占インタビュー
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6403

ここでは、同サイトの張CEOによるいくつかの興味深いコメントが載っています。一部抜粋してみます。

― 日本でのサービス開始はいつか? 現在どれぐらいの部屋数を提供しているのか?
張 日本では14年12月にサービスを開始した。現在、約2000人のホストがいて、約1万2000室を提供しているが、日々増加しており、1年後にはまったく違った数字になっているはずだ。

― 日本にいるホストは中国人が多いのか?
張 中国人、日本人、その他の国籍の人が、それぞれ3分の1ずつというイメージだ。以前は中国人ホストが多かったが、最近は日本人ホストが急増している。日本のホストのうち7割程度はAirbnbとの重複登録だと思う。

― 「自在客」以外にも、中国系民泊仲介事業者である「途家」や「住百家」なども日本市場へ参入している。
張 中国系民泊事業者のなかで比較すると、当社が日本でのシェアがもっとも高い。途家は中国国内での民泊に強く、住百家は富裕層に強いという特徴をもっている。当社はFIT(Free Individual Travel、個人手配の自由旅行)に強い。


AirBnBのホストたちの多くも、「自在客」に部屋を提供しているのですね。何人かのホストをしている知人がぼくにもいますが、部屋の回転率を上げたい彼らにすれば、窓口は多ければ多いほどいいということでしょう。実際、AirBnBでも中国本土客の利用が増えているからです。

張CEOはこんなことも言っています。

―― 現行の日本の法律では、特区等を除いて民泊は禁止されている。
張 その点は認識している。だが、中国では既に政府が民泊を許可しているなど、世界各国では合法化の流れがある。それに比べると、日本はやや法整備が遅れている印象をもっている。


この発言には少し違和感があります。確かに、中国では自国民を相手にした民泊ビジネスは盛んなのかもしれませんが、はたして外国人の受入は可能なのでしょうか。なぜなら、中国のホテルに泊まったことのある人なら誰でも知っていると思いますが、この国の宿泊施設では外国人のパスポートコピーを地元の公安に提出する義務があります。それは民泊でも同じはずです。そもそも中国では外国人を泊めていいホテルとそうでないホテルがいまだに存在します。それほど外国人の管理にうるさい国なのです。この状況を知る以上、張CEOの発言はずいぶん都合がよすぎる言い分だと思うからです。

さらに、彼はこうも発言しています。

Airbnbはホストとゲストの両方から手数料を取る仕組みだが、当社はゲストからは一銭も取らず、ホストから手数料10%を取る仕組みだ。中国の旅行者はホテルの仕組みに慣れており、「ゲストが手数料を徴収される」ということに慣れていない(笑)

おいおい、これは民泊本来の相互扶助の精神から逸脱するものではないでしょうか。ホテルと民泊は別物であるという感覚が麻痺しているように感じないではありません。経営者がこんな考え方で大丈夫なのでしょうか…。

そもそもAirBnBが登場する前から国を超えた個人同士が無料で部屋を貸し借りするというSNSは存在していました。カウチサーフィンといいます。
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カウチサーフィン
https://www.couchsurfing.com/
http://find-travel.jp/article/4012

上記サイトは、このサービスについて「直訳するとカウチ(ソファ)でサーフィンの意味。カウチゲスト(旅人)がカウチホスト(宿泊地提供者)を見つけることで旅が手軽になります。お金のやりとりはなく、無料でソファーに寝かせてもらうイメージ」と説明しています。

上海に住む友人のカメラマンもよくこのサービスを利用するといいます。地方出張に行くとき、カウチサーフィンに登録している中国人の家に泊まったり、地方から上海に遊びに来た中国人を部屋に泊めてあげたりするそうです。このサービスは2000年代の早い時期から存在していました。

ところが、AirBnBという金銭の授受を含む民泊サービスが登場してきて以来、状況は変わってきたといえます。

「中国民泊」について気になることは他にもいろいろあります。

上海でC-Tripのホテル予約を担当している関係者に話を聞いたところ、同サイトをよく利用する香港人と中国人ではホテル選びの考え方がまったく違うといいます。香港人は「要求がとても細かい。ロケーションはもちろん、部屋は何平米で、ベッドサイズはどうかなど、いろいろ聞いてくる。料金が少々高くても、自分の好みの部屋を探す傾向がある」のだとか。

一方、中国人が追求するのは安さのみだというのです。

これはひとことでいうと、香港と中国の消費者の成熟度の違いからくるものだといえるでしょう。海外のホテルの利用に慣れている香港人と、自分では慣れているつもりでも、実際はたいしてよくわかっていない中国人との違い。安さしか求めないというのは、残念ながら、それ以外の選択の基準を知らないからなのです。細かいリクエストを伝えることが身についていないわけです。

こうした中国人の消費感覚は、民泊市場の拡大につながっていると考えられます。いま東京や大阪のホテルは予約が取りにくいだけでなく、価格は高騰し、彼らが考える宿泊相場とは乖離が生まれています。だったら、どんな部屋でもかまわないから、安いところを見つけたい。

では、彼らはいくらくらいで泊まっているのか。

知り合いに池袋のマンションを数室借りて「住百家」で民泊ビジネスを始めた在日中国人がいます。彼は昨年、勤めていた会社をやめ、この商売に乗り換えました。彼によると、ワンルームマンション一部屋を1日800元(約1万5000円)相当で提供しているそうです。

ただし、たいてい家族4人、多い場合は6人くらいが1部屋に泊まるそうです。みんなで雑魚寝のイメージですが、かなり安上がりといえます。最低2泊以上を条件にしているようですが、実際、中国人の個人旅行は、カップルというより5~6人の小グループや家族が多いので、民泊は訪日中国市場に合っているという言い方もできそうです。

なにしろ100万人に近い在日中国人がいるので、できれば知人や親戚の家に泊まって安く上げたい、というのが彼らの本音なのです。本来AirBnBなどの民泊サービスは、海外のふつうの家に泊まって、現地で暮らすように滞在を楽しみたいというニーズから市場が拡大したはずですが、大半の中国人のニーズはそういうことではなさそうです。

実際、1泊800元ではホストである彼も、それほどの利益にはなりません。そこで、彼が始めたのは「空港からの送迎」です。家族や小グループで来日した中国個人客は、東京の交通機関に慣れていません。タクシーは片道数万円と法外な高さだし、香港人や台湾人には可能なレンタカーも利用できない。それゆえ、送迎サービスにはそれなりの需要があり、確実に利益も取れるからというわけです。

前述の富坂さんは記事の中で、在日中国人企業家の民泊ビジネスの実態について、「マンション丸ごと買い取るケースが多い」「外国人向けの寮、さらにはシェアハウスを買い取るか借り上げてしまうパターン」があると指摘しています。確かに、薄利とはいえ、今後も数の増加が見込める中国客相手に利益を上げようとすると、そういう発想になって当然かとは思いますが、彼らだって誰もがそんな資本力を持っているとは限りません。C-Tripや春秋国際旅行社などの中国の旅行会社が日本のホテルや宿泊に利用できる施設を買い上げる動きは起きていますが、民泊用に買い上げることがどれほど進むか、ちょっと疑問です。そもそも安く上げたい人向けのサービスだからです。

それに、言うまでもありませんが、民泊の法的規制の問題はまったく解決していないからです。これは日本に限った話ではなく、全世界的にいえることですが、ホテル業界の反発があります。彼らにしてみれば「ホテルに義務付けられる環境・食品衛生・防火安全対策が(民泊のホストらに)免除されているのは不公平」(「ウエッジ」4月号p31 英国のホテル業界のロビー活動の事例)だからです。

もうひとつは、近隣住民へのケアがおざなりなことです。自分の住むマンションの隣の部屋に、数日ごとに見ず知らずの外国人がやって来ることを、誰しも心よく思わないからです。

こうしたこともあり、富坂さんの記事でも、日本における「中国企業不在の民泊ルールづくり」を批判しており、これには大いに同意します。数の上では、いずれAirBnBを追い抜くかもしれない中国民泊の関係者らが、これまで政府の法規制のルールづくりの会合に呼ばれたことはなかったからです。彼らが外国人であったとしても、日本国内で事業を営む以上、本来は関係ないではすまされません。

中国民泊の話は今月初旬、九州で逮捕された中国人不法ガイドの問題と重なってきます。これほど訪日中国市場が拡大しているのに、団体ツアーの国内手配を実際に手がけている在日中国人関係者らは、日本の旅行業界の蚊帳の外、アンタッチャブルな存在として放置されてきたからです。だから、彼らは気兼ねなく中国式ビジネスを日本国内で続けてこれたわけです。

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は?
http://inbound.exblog.jp/25461430/

もっとも、民泊に関してはAirBnBのホストの多くが日本人でもあるように、ガイド問題とは少し事情が違うのも確かです。市場が拡大し、儲かるとわかっていて、在日中国人らがこのビジネスに手を出さないわけがありませんが、それは日本人も同じなのですから。

いずれにせよ、訪日旅行市場の拡大をうまく仕かけたわりには、この領域に関する日本政府の法制度の整備を進める態度は、あまりに初心でおっかなびっくりという印象がぬぐえません。確かに、年間2000万人の外国人が訪れるということは、日本列島の歴史上初めてのことでしょうから、前例がなく、適正かつ果断な判断が難しいという面はあると思います。でも、これだけ外国人観光客を呼び込むことに成功した以上、それを日本社会の利益になるよう運営していかなければ、何のためにやってるの? という話になりかねません。AISOの王会長ら、外国人関係者ほど、この問題に関する政府の姿勢に首をかしげています。

お役所任せではもうどうにもならないのが、いまの日本なのかもしれせん。だとしたら、残念なことです。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-27 14:40 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 02月 11日

2016年は名古屋のインバウンド躍進に要注目

名古屋というのは、日本の主な大都市の中で、これまでドメスティックなイメージがつきまとっていました。インバウンド市場が盛り上がるなか、これも首都圏と関西圏にはさまれたせいなのか、いまいちぱっとしませんでした。中部地区を売り込むため、中部国際空港をゲートウエイにした「昇龍道」という観光ルートを立ち上げて、ここ数年海外に向けてPRしてきましたが、もうひとつピンとこず、白川郷のような一部の世界遺産のようなスポットを除くと、他の地区の後塵を拝してきた印象は否めません。

そんな名古屋のインバウンドの躍進がようやく注目され始めています。

エクスペディアの国内都市別ランキングでは、名古屋は7位です。しかし、東京や大阪より伸び率は上がってきました。
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エクスペディアの名古屋支社は、昨年10月以下のリリースを配信しています。
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地方都市、札幌や福岡に比べた名古屋におけるアジアからの注目度

「上記の「主要都市における訪問客の構成」を比較してみると、アジア人の割合に差があることがわかります。韓国、香港、タイ、台湾というアジアの主要地域が占める構成比を見てみると、札幌の訪問客の72%、福岡の訪問客の83%をアジア人が占めていますが、名古屋はまだ60%とアジアからの注目度が低いことがわかります。これはアジアにおいて影響力の大きいLCCの便数がまだ名古屋では少ないことが要因のひとつと考えられるため、今後のLCCの就航により市場が成長していくことが予想されます」

名古屋が最も好きな訪日外国人は「香港人」で全体の約4割!

「名古屋に来ている訪日外国人を国別で比較してみると、香港からの旅行客が半数に近い42%も占めていることがわかります。

また名古屋における訪日香港人の2014年1-9月と15年の1-9月の予約件数を比べてみると、572%と急激に伸びており、香港における名古屋の注目度が高いことがうかがえます。

2014年9月に香港エクスプレスが名古屋・香港線を就航したことが要因のひとつであり、今後エアアジアやジェットスターが新たに名古屋と台北を結ぶ便の就航を予定していることから、台湾からの訪日が増え、アジアからの注目度が伸びることが予想されます」


中部国際空港における台湾便LCCの就航
・ジェットスター・ジャパン 2015年12月12日新規就航(週7便)
・Vエア 2015年12月15日新規就航(週4便)
・タイガーエア台湾 2016年1月29日より就航予定(週7便)
・エアアジア・ジャパン 2016年春就航予定

そんな期待の高まる中部国際空港でしたが、エアアジア・ジャパンの名古屋便が延期になることが昨日、発表されました。

エアアジア、中部空港就航先送りへ (日本経済新聞2016/2/10)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO97116790Z00C16A2L91000/

その背景については、以下のレポートを参照ください。

エアアジア・ジャパン就航への課題とは - CEO交代の裏で起きていたこと
http://news.mynavi.jp/articles/2016/01/22/airasia/

もっとも、中部国際空港へ運航する国際線は確実に増えています。背景には関空の入国手続きや大阪府内の宿泊施設はすでに「キャパオーバー」の兆候があり、中国系エアラインなどの新規就航が中部国際空港へとシフトする傾向も見られるからです。

実際、中部国際空港の中国路線は、すでに以下の24都市に就航しています。

北京、上海、長春、長沙、常州、大連、福州、杭州、貴陽、ハルビン、合肥、フフホト、昆明、南通、寧波、青島、瀋陽、石家荘、太原、天津、武漢、西安、煙台、銀川

中部国際空港フライトスケジュール(2016年2月1日~2016年2月29日)より
http://www.centrair.jp/airport/flight_info/monthly/1198613_1744.html

中国の地方都市からの路線は団体客が大半のため、エクスペディアを利用する層ではありません。しかし、訪日客の最大シェアである中国客の増加は名古屋のインバウンドに大きなインパクトを与えていることでしょう。また常に日本旅行の最先端を駆け抜けてきた香港人を乗せた香港エクスプレスの就航の意味は大きいと思います。中部国際空港からレンタカーを利用して「昇龍道」を走るというような動きが起こることも考えられます。

昇龍道
http://go-centraljapan.jp/ja/special/shoryudo/index.html
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by sanyo-kansatu | 2016-02-11 17:54 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 02月 11日

訪日客の沖縄、札幌、福岡のエクスペディア予約件数が伸びている

訪日外国人旅行者数の拡大に伴い、ホテル予約サイトのエクスペディアで地方都市の宿泊施設を予約する件数が増えています。

2015年の国内都市別の予約総数のランキングは以下の通り。
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東京、大阪、京都が圧倒的に多いですが、前年度からの伸び率でいうと、上記右上トップ5、特に熊本のような地方都市でも予約が増えています。なんでも「くまもん」人気で香港人の熊本訪問が増えたことも理由だそうです。もっとも、上記右上5都市はもともと母数が少なかったため、伸び率が大きく見えますが、全体でみると以下の5都市の伸びが要注目です。

沖縄 230%
札幌 203%
福岡 201%
名古屋 175%
大阪 172%

海外FITの地方への分散化にエクスペディアが貢献していることがわかります。同社はさらに地方の宿泊施設の取り込みを進めるため、昨年9月に九州支社、10月に名古屋支社、そして今年2月に沖縄支社を開設しています。

エクスペディアでは、各都市の外客の傾向についてリリースを配信していて、とても興味深い結果が現れています。

まず沖縄から。今年2月のリリースによると、以下のとおりです。
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「香港」と「韓国」からの訪日外国人が全体の約7割超え!

「エクスペディアの海外サイト経由で沖縄に来ている訪日外国人を国別で比較してみると、香港から38%、韓国から35%と、両国からの訪日客が全体の7割を超えていることがわかりました。

また沖縄における訪日外国人の予約件数を2012年から比較すると、14年から15年にかけて大きく伸びていることがわかります。その背景は、円安により日本に旅行がしやすくなったこと、そしてLCCの新規就航が挙げられます。2015年だけでも、ピーチのソウル・沖縄線、タイガーエア台湾の台北・沖縄線、春秋航空の上海・沖縄線が就航しました」


月別の訪日客の推移も出ています。
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「香港」は6月、「韓国」は12月が沖縄訪問のピーク

「月別に国ごとの訪問数を比較してみると、香港からの訪問は6月がピーク、韓国においては12月がピークということがわかります。香港においては6月に大型連休があること、韓国では12月の寒い時期に沖縄に来てゴルフをする方が多いことが要因になっています。

日本人が沖縄に旅行する際は、7~8月がピークになります。日本人が少ない4~6月に香港人、冬季に韓国人の旅行客が来ることによって、沖縄への旅行需要を年間を通して高めることにつながっているといえます」

もっとも、上記はエクスペディア出ホテル予約をした件数をもとにしたデータで、実際に沖縄を訪れる外国人のうち、最も数が多いのは台湾客です。
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平成27年入域観光客統計概況(平成28年1月21日発表)
http://www.pref.okinawa.jp/site/bunka-sports/kankoseisaku/kikaku/statistics/tourists/h27-c-tourists.html

ただし、台湾客の多い背景には、クルーズ客船による2泊3日のツアーが盛況なことがあります。彼らは客船内に泊まるため、ホテルを利用しません。エクスペディアの予約件数では韓国や香港より少なくなっているのはそのためです。

【前編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメント
http://inbound.exblog.jp/20363867/

札幌のリリースはまだ出ていないようなので、福岡のエクスペディア利用者の動向を見てみましょう。
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福岡が最も好きな訪日外国人は「韓国人」で全体の約4割!

「福岡に来ている訪日外国人を国別でみると、韓国人が半数に近い41%、そして全体ではアジア人が81%を占めていることがわかります。

また福岡における訪日外国人の予約件数を2012年から比較すると、14年から15年にかけて大きく伸びていることがわかります。その背景は円安により日本に旅行がしやすくなったこと、そしてLCCの新規就航が挙げられます。特に韓国と香港においては、チェジュ航空が2015年4月より福岡・釜山線、14年4月より福岡・香港線を就航している香港エクスプレスが15年10月から増便させています」


福岡でも、昨年約260回クルーズ客船が寄港し、中国客を中心に多くの外国人が上陸しましたが、沖縄の台湾客同様、彼らもホテルを利用しないため、エクスペディアの統計には入ってきません。また多くの台湾客が福岡を訪れていますが、彼らはFITではなく、ツアーに参加する比率が高いため、エクスペディアの予約件数は、タイより少なくなっています。

東シナ海クルーズラッシュの背景:博多港にいつ頃から現れていたのか?
http://inbound.exblog.jp/24665654/

沖縄や九州方面に海外の個人客が増えるのはとてもいい傾向だと思います。ここでも中国のFITの動向がよくわかりませんので、シートリップへのヒアリングが必要ですね。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-11 16:53 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 02月 11日

アジアの旅行者は東京より大阪が好き?(エクスペディア調べ)

「いま日本で最もインバウンドが熱い場所はどこなのか? それは大阪です」

先月末、ぼくは以下の記事でそう書きました。

大阪と東京のインバウンドの特徴の違いを外国人の視点で考えてみる
http://inbound.exblog.jp/25315756/

昨年の大阪の訪日外国人数の伸び率は東京より大きかったこと。関空のLCC比率の高さ。東京に比べてコンパクトなぶん、外国人にとって親しみを感じやすいのではないか、などとその理由を説明しました。

先日、エクスペディアのPR会社の人に会い、昨年8月大阪支社が配信したリリースを見せてもらったところ、彼らも同様の指摘をしていることを知りました。

2015年にエクスペディアで予約した件数によるアジア訪日主要国(韓国、台湾、香港、タイ)の人気都市ランキングが以下のとおりです。
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台湾、香港、タイでは大阪は東京には及びませんが、上位3位にすべて入っています。韓国は大阪が東京を抜き1位。総数では、東京は多いですが、大阪の人気ぶりは注目です。

興味深いのは、次の指摘です。※ただし、これは2015年上半期のデータを元にしています。

欧米人は東京・京都、アジア人は大阪を選ぶ傾向にあり そのワケは?
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「東京と大阪で、エクスペディア経由の外国人旅行客の比率を調べてみると、東京にはアメリカ人が30%と一番大きな割合を占めているのに対し、大阪では12%という結果になりました。

また東京では韓国・香港の人達の割合が合わせて20%に対して、大阪では46%と約半数を占めています。東京と大阪で集客層が大きく違うことがわかります。

一方で、東京と京都とを比較すると、傾向が非常に似ています。同じ関西でも、アジアが多い大阪に対し、京都には欧米の人達が多く集まっています。

これらの結果は、欧米の人達とアジアの人達とで、日本への旅行目的が違うからといえます。

上記の日本観光協会の「訪日旅行前の期待」に関する調査でアメリカ人は「歴史的・伝統的な景観、旧跡」や「日本人の生活・日本人との交流」を挙げているのに対し、香港人や韓国人は「ショッピング」メインに訪れていることがわかります。

「伝統」を好むアメリカをはじめとした欧米の人達は、関東近辺でも、箱根や日光といった場所を好みます。そして東京に来る際には、合わせて新幹線で京都を訪れることが多いです。その際、目的は京都なので、大阪に寄ることはほとんどありません。一方、アジアの人達は、1つの旅行で1都市に寄ります。「ショッピング」をメインとしているため、大阪に訪問した際には大阪観光が中心になります。

上記の理由から、大阪においてアジア比率が高くなり、また東京と京都が似た傾向になります」

この分析は、大阪観光局の担当者に聞いた以下の指摘と共通しています。

「関西を訪れる外国客の特徴は、買い物を好む東アジアや東南アジアからの観光客が多いこと。なにしろ関空に乗り入れるLCC比率は全体の30%超と全国一。LCCを利用して賢く旅する外国人旅行者のことを「関西バジェットトラベラー」と呼んでいます。一般に東京には出張や公費で訪れる旅客も多いのに対し、関西は「自分のお金で楽しみたい人が訪れる」といわれ、リピーター比率も東京より高いことも指摘されています」。

エクスペディアのリリースは「なぜアジア人に大阪は人気なの?」と題して以下の理由を挙げています。

①東京より物価が安い
②東京よりも料理の味が濃く、アジア人の舌に合う
③商店街の多さがアジア人には魅力的
④大阪城が人気
⑤「京都」や「神戸」などの観光スポットが近い

①については、日本薬粧研究家の鄭世彬さんも同様のことを話していたので、そうなのでしょう。ただし②はそうなのでしょうか。一般に関西のほうが味が薄口という印象があるのですが、どんな料理を指しているのかな。たとえば、串かつとかお好み焼きのソースのことでしょうか。

③の指摘も面白いですね。ぼくもそうだと思うのですが、なぜアジアの人は商店街が好きなのでしょう。知りたいですね。もしそうなら、圧倒的な大阪の強みでしょう。

④大阪城の日本的でユニークなシルエットもきっと人気なのでしょう。⑤も、大阪を基点にすれば便利ということだと思います。アジアの人たちにとって「ショッピング」が主要関心事だとすれば、大阪をベースに動くというのが合理的です。

エクスペディアでは、さらに面白い分析をしています。

欧米人とアジア人でみる関西観光の流れ

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「大阪ではどのエリアが人気かをエクスペディアの予約数を元に国籍別で調べてみたところ、国籍を問わず、難波が人気ということが明らかになりました。

しかしその中でも欧米人は、難波と梅田の宿泊率が約30%とほぼ同じであるのに対して、アジア人は約半数以上が難波に宿泊していることがわかります。

この結果から、欧米人が大阪に来る際には、東京・京都という新幹線ルートの流れで入り、そのまま梅田に宿泊して新幹線で東京に帰るか、難波に宿泊して関西空港から帰っていることがうかがえます。

一方でアジア人は、関空から大阪に入り、大阪を周遊するため、アクセスのいい難波へ宿泊する率が集中するようです」


なるほど、関西観光もアジア人と欧米人ではこんなに違うんですね。確かに、欧米人の多くは東京を基点に箱根や富士山、関西、広島などに行って、また戻ってくるというのは、都内のホテル関係者からよく聞く話です。

また難波人気という話も、大阪観光局の人から言われました。「難波への偏りがひどく、もっと分散化させたい」というのが悩みだそうです。

エクスペディアを利用しているのは、海外のFITです。ツアー客と違い、個人で旅する彼らの動態はつかみにくいだけに、エクスペディアのデータは貴重です。

ただし、訪日旅行者数で最大シェアとなった中国人のFITは一般にシートリップを利用しているといわれます。同社でもこのようなリリースを出してもらえると面白いと思います。近いうちに取材をしてみたいです。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-11 12:37 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 02月 09日

楽天トラベル vs. Expedia これからが面白いと思いたい(そう思っていたけれど…)

2月8日、お台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAで「楽天トラベル新春カンファレンス2016」(首都圏)が開催されました。
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楽天トラベル、宿泊キャンセル料を代行収受へ、3月からカード払いを事前決済に1本化(トラベルボイス2016年2月8日)
http://www.travelvoice.jp/20160208-60705

今年楽天は創業20周年を迎えるそうです。楽天トラベルも2001年から。当時はいまほどインバウンド市場は大きくありませんでしたが、近年エクスペディアなどの海外のホテル予約サイトが続々参入し、訪日客を奪い合う動きが加速するなか、楽天トラベルは今後どうしていこうとしているのでしょうか。その点については、もうひとつ明快な説明はなかったように思いますが、多言語化の取り組みはかなり進んでいるようです。上記のトラベルボイスの記事によると「中国では訪日前に楽天で購入した商品を訪日中に受け取れるサービスをホテルモントレの3施設と試験的に行なっている」そうです。
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興味深いのは、毎年恒例の前年1年間に顕著な実績を収めた宿泊施設に贈る「楽天トラベルアワード2015」(首都圏地区)の発表です。その中に、外国客の予約件数で実績を残した宿泊施設に与えられる「インバウンド賞」があります。今年の首都圏の「インバウンド賞」は以下のとおりです。

ヴィラフォンテーヌ東京汐留 初受賞
三井ガーデンホテル上野 初受賞
レジデンシャルホテル ビーコンテ浅草 初受賞
ドーミーインPREMIUM渋谷神宮前 初受賞

このうち「レジデンシャルホテル ビーコンテ浅草」は知りませんでした。「浅草寺・東京スカイツリー至近のレジデンシャルホテル『ビーコンテ浅草』は、ワンランク上質なキッチン付きホテル」だそうです。

レジデンシャルホテル ビーコンテ浅草
http://www.bconte.com/asakusa/
楽天トラベルでこのホテルの動画が見られますが、なるほどデザイン的にも魅力的なホテルですね。
http://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/130043/130043.html

それにしても、楽天トラベルを通じた訪日客による予約実績の高いこの4軒。エクスペディアのランキングとはずいぶん違います。なにしろエクスペディアの利用者の3割は新宿のホテルなのですから。

エクスペディアで都内のホテルを予約した外国人の3人に1人は新宿を選ぶ
http://inbound.exblog.jp/25331847/

インバウンド予約の総件数や国籍比率がわからない以上、単純に比較してもあまり意味はないのですが、楽天トラベルを利用する訪日外客は、台湾などの日本に精通したリピーターが多いと思われます。エクスペディアが初めて訪日する外国人の利用も多いこととは対照的かもしれません。

そもそも全国の予約可能なホテル物件の数では、日本のOTAの王者・楽天トラベルにはエクスペディアは足元にも及ばないはずです。ただし、彼らも訪日客の増加と地方への分散化の急速な流れの中で、これまでの東京、大阪に続き、昨年9月に九州支社、10月に名古屋支社、そして今年2月に沖縄支社を開設しています。

外資の参入によって国内客ではなく、急増する新規市場としての訪日客を奪い合うという構図は、これまで日本ではなかったことだけに目が離せません。その点、楽天は「英語公用語化」で有名ですが、意外にドメスティックな体質があるように思います。

楽天は以前、中国最大OTAのシートリップに出資していました。

楽天、中国旅行サイト「Ctrip.com」に出資、具体的な連携協議へ(トラベルビジョン2004年6月14日)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=17406

でも、数年後にあっさり同社株を手放しています。

楽天、保有するCtrip株約664万株を売却へ(ロイター2007年8月7日)
http://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-27246320070807

いまではエクスペディア、ブッキングドットコムに並ぶ世界3大OTAと称されるまでに成長したシートリップとの提携がうまくいかなかった背景については、中国メディアも当時いろいろ報じていましたが、要は「お互いのカルチャーが合わなかった」せいでした。

訪日客5千万人時代へ 世界三大OTAの戦略(観光経済新聞 2016年1月1日).
http://www.kankokeizai.com/koudoku/160101/18.pdf

そして、シートリップは2014年5月に日本法人を開設し、拡大する訪日中国市場を貪欲に取り込んでいます。

C-TRIPが日本へ本格進出、中国の地方都市へのビジネス客狙う(NBOnline 2012年3月9日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120309/229645/

観光業界人インタビュー シートリップ・ジャパン社長の梁穎希氏 第2818号(2015年10月24日)
http://www.kankoukeizai-shinbun.co.jp/tokusyukiji/interview/15_10_24.html

はたして楽天はこの状況をどう乗り越えていくのでしょうか。ドメスティックなやり方が一概に悪いとはいえないとぼくは思います。それぞれ良さ悪さがあるはず。日本の宿泊施設のサービスレベルの向上につながる「朝ごはんフェスティバル」みたいな取り組みは外資にはできないでしょうから。

朝ごはんフェスティバル
http://travel.rakuten.co.jp/special/asafesta/

とはいえ、今後訪日外国人がさらに増えていくのだとしたら、ひとまず彼らにもっと伝わりやすいサイトにしていく必要があるのでしょう。「カルチャー」の違いを乗り越えて、もっと歩み寄らないといけないのだと思います。

今後、訪日旅行市場が成熟していくことも確かでしょうから、そうなると楽天の優位性も出てくるはず。これからが面白いと思いたいです。ちょっと優等生的すぎるコメントでしょうか…。

【追記】
後日、こんな記事が出ました。楽天は本業においても外資に追われているのですね。これは大変だ。

楽天ネット通販、成長鈍化 迫るヤフー・アマゾン(朝日新聞2016年2月13日)
http://www.asahi.com/articles/ASJ2D3WJ6J2DULFA00M.html

さらに、こんな記事も出ました。

楽天の海外戦略、地域拡大を転換 東南アジアからネット通販撤退(朝日新聞2016年2月26日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12228322.html

楽天は主力のネット通販で東南アジアから撤退するなど海外戦略の見直しに乗り出した。「脱・日本企業」宣言から5年以上たつが、国内依存の収益構造は変わっておらず、自ら海外事業を広げる道筋はまだ描けていない。

楽天は今月末、インドネシアなど3カ国でネット通販の取引を停止し、サイトも近く閉鎖する。タイの通ログイン前の続き販サイト運営会社も売却する方針で、東南アジアの進出先すべてのネット通販から撤退することになる。

2008年の台湾進出を皮切りに、楽天は地元の有力サイトを買収する形で海外展開を進めた。27カ国・地域に進出して流通総額の海外比率を7割にする目標を掲げ、10年には三木谷浩史会長兼社長が「日本企業をやめ、世界企業になる」と宣言。英語の社内公用語化にも乗り出した。

だが、進出先は12カ国・地域にとどまり、台湾以外は苦戦を強いられた。とくに東南アジアはドイツ系企業などに圧倒され、日本で成功した「楽天市場」モデルは歯が立たなかった。

そこで地域拡大路線を転換し、市場が大きい米欧と好調な台湾に経営資源を集中させる。三木谷氏は「戦略に合わないビジネスは修正する」と12日の会見で語り、「選択と集中」を進める考えを示した。


 一筋の光明は、14年秋に約1千億円で買収した米イーベイツの存在だ。提携サイトで買い物をするとキャッシュバックなどがもらえるサービスで、米国を中心に1千万人超の利用者を抱える。知名度のない楽天にも、客を呼び込むチャンスが見込めるわけだ。ただ、12日に発表した20年の業績目標は依然、利益の9割以上を国内のネット通販と金融部門に頼る内容だ。UBS証券の武田純人シニアアナリストは「薄くても幅広い取引に関わることで、いずれ金融など自前のサービスを海外でも売り込む狙いでは」とみる。

これはまずいのではないでしょうか…。いまエクスペディアでは、東南アジア方面からの訪日予約手配が急増しています。まさに市場が拡大しているこの時期に、その可能性を手放すとは…。

昨年ぼくは楽天トラベルを取材しています。

多言語化に取り組む楽天トラベル。宿泊プランは外国客に支持されるか?
http://inbound.exblog.jp/24671580/

このとき、同社の担当者たちは「グループのシナジーを活かす」という表現を多用していました。もちろん、楽天は旅行事業だけやっているわけではないのですけれど、今回の決定は経営上のゆきづまりが背景にあると思われますが、やはり海の向こうの事情が見えていない経営判断ではないかと思われます。残念というほかありません。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-09 17:44 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 02月 06日

エクスペディアで都内のホテルを予約した外国人の3人に1人は新宿を選ぶ

ホテル予約サイトのエクスペディアが、1月末に配信したリリースによると、2015年に同サイトを通じて都内のホテルを予約した外国人のうち、新宿を選んだ人は30%を占め、2位銀座(11%)、3位東京駅周辺(8%)、浅草(8%)、5位渋谷(6%)などを大きく引き離しています。外国客の新宿人気は昨年同様変わらないようです。
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新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)2015年5月24日
http://inbound.exblog.jp/24510962/

リリースでは、新宿が人気の理由として「高級ホテルからお手ごろなビジネスホテル、カプセルホテルなど、多様な宿泊施設が揃っていること」「都内各所だけでなく、人気スポットの富士山へもバスでアクセスしやすいこと」が理由に挙げられています。

実際、全国を含めたホテルの宿泊数ランキングでも、以下の5つの新宿のホテルがトップ10に入っています。

1位 ホテルグレイスリー新宿  歌舞伎町のコマ劇場跡地にできたゴジラで有名なホテル。以下参照。

※歌舞伎町ルネッサンス~外国人観光客の来訪増で街は変わるか?
http://inbound.exblog.jp/24740768/
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2位 京王プラザホテル  新宿副都心で最初(1971年開業)の高層ホテル 

3位 ホテルサンルートプラザ新宿  JTB系の外国人ご用達老舗ホテル(1978年開業)

4位 新宿グランベルホテル 歌舞伎町ラブホテル街に2013年開業のデザインホテル。以下参照。

※歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある
http://inbound.exblog.jp/24676453/

上記のホテルは、これまで本ブログでも紹介してきた施設ばかりですが、ちょっと意外というか、あまり知られていないホテルのランキング入りとしては、イーホテル東新宿でしょうか。
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8位 イーホテル東新宿 

このホテルは、2008年開業のビジネスホテルで、昨年8月全面リニューアルをすませています。フロントを訪ねたことがありますが、本当にごく普通のビジネスホテルです。人気の理由は、大江戸線東新宿駅前というロケーションと、いまとなってはまったく斬新でもなんでもないのですが、「e Hotel」というネーミングにあるのではないかと思います。特別デジタルリテラシーの高い人ということではなく、むしろエクスペディアを利用するごく一般の外国人ユーザーから見て、日本語のよくわからない地名や世界中どこにでもありそうな「グランド」「シティ」「ロイヤル」「パーク」云々といったネーミングが付けられたホテルに比べると、なんとなくシンプルな印象があり、好感度を上げているのではないか。そんな気がします。自分が海外のホテル予約をするときも、価格やロケーションが同じなら、ちょっとしたネーミングの違いで選びそうな気がするからです。

いうまでもないことですが、エクスペディアのデータは、あくまで同サイトを利用した外国人に限ったもので、訪日外国人全体の傾向をどこまで表しているかについては、なんともいえません。

しかし、もうひとつの面白いデータがあります。

エクスペディアで宿泊予約する訪日外国人のうち、15年最も伸びたのは香港人(前年度比272%)でした。ちなみに、2位韓国、3位タイ、4位インドネシア、5位台湾と続きます。
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もはやエクスペディアもアジア系が多く占める時代になってきているのですね。実際、訪日外国人に占めるアジア系はすでに10人に9人近くになっているはずです。圧倒的に欧米人よりアジア人が多いのですから、当然でしょう。

このリリースには、さらに興味深い指摘があります。なぜ昨年香港人の利用が増えたかという理由について「日本就航2年間で利用客100万人を突破した香港エクスプレスの存在があげられます。2015年の1年間でも、名古屋-香港路線が週9便に増便、新たに広島-香港路線が就航するなど、現在、東京(羽田・成田)や大阪のほか、福岡、名古屋、広島にもフライトが飛んでいます」と説明していることです。

LCCが香港-広島を飛ぶ時代なのですね。関係者によると、広島線を飛ばすことで、福岡や大阪、名古屋などとOJ(オープンジョー:入国地と出国地を変えた往復航空券のこと)が可能となることで利用客のニーズに合わせることができたのだといいます。実際、昨年名古屋を訪れる香港客が相当増えたと聞きます。

それにしても、昨年152万人もの訪日客があったという香港。確か、人口700万人ほどの香港から、そんなに多くの訪日客があったとは驚きです。彼らは個人客が大半なため、日本での動きがつかみにくい存在ですが、ホテルは誰でも利用するわけで、エクスペディアのデータは彼らの動きを知るうえで有効といえます。

台湾人以上に全国各地に足を伸ばし、訪日旅行の最先端のトレンドを先取りしているのが香港人です。もっと彼らのことを知りたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-06 10:20 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 12月 30日

タトゥーが入っていてもOKの日暮里「斉藤湯」でひと風呂浴びてみた

先日のとある午後、タトゥーが入っていても入浴OKで知られる斉藤湯でひと風呂浴びてきました。場所はJR日暮里駅から徒歩3分。住宅街のちょっとわかりにくい場所にあります。80年前の創業だそうですが、今年4月に改装したばかりのきれいな銭湯でした。
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斉藤湯
http://saito-yu.com

なぜこの銭湯がタトゥー客OKだと知ったかというと、以下のネット情報からです。

タトゥー入っててもOKな温泉・銭湯・プールまとめ【関東編】(Find Travel)
http://find-travel.jp/article/18883

訪日外国人の増加で全国の温浴施設やプール、海水浴場でタトゥーを入れた外国人観光客と管理者の間で入店・入場をめぐってトラブルが起きているようです。その問題に関する報道は以前、本ブログでも紹介しています。

入れ墨・タトゥーの外国人の入浴、やっぱり気になりますか?
http://inbound.exblog.jp/25180252/

そんな事情もあり、都内でタトゥーOKをうたう銭湯というのはどんなところなのか、気になっていたのです。

午後2時開店とほぼ同時にぼくは斉藤湯に入りました。すでに2、3人の利用客はいて、その後も続々入店してきます。この銭湯の売りは、高濃度人工炭酸泉と超微細粒気泡がシルクのように身を包む露天風呂です。ぼくはまず通常のお湯風呂に浸かって、常連の誰かにこの銭湯について尋ねることにしました。

しばらくすると、映画『テルマエ・ロマエ』の銭湯シーンで見かけたちょっとふやけたスルメのような(ごめんなさい!)おじいさんが隣に入ってきました。映画を思い出し、笑いをこらえつつ、聞いてみました。

―あのぉ、こちらの常連さんですか。
「そうだよ。でも、最近はたまにだけどね」
―この銭湯、外国人がよく来るんですか?
「そうなの? 俺は知らないね。家族連れはよく来るよ。いろんな風呂があるからね。ここは昔からある銭湯だから」。

あまりご存知ないようです。そこで、次にシルキー風呂に行ってみました。天井には屋根がありますが、露天気分を味わえます。ひとりの若い男性がいたので声をかけてみました。

―この銭湯、外国人が多いんですか?
「どうかなあ。ぼくは週末しか普段は来ないから」
―なんでもタトゥーを入れた外国人さんもこの銭湯は入浴OKだと聞いて、どんなところだろうと思ってきたんです。
「ああその話ね。ここ、改装する前からずっと入れ墨OKでしたよ」
―あっ、そうなんですか。

どうやら日暮里という土地柄で古くから銭湯を営んできたことから、外国人観光客うんぬんとは関係なく、その筋の人も含め、ずっとOKだったようです。実際、ここの客層は中高年のおじさんおばさんを中心に子供連れなど、昔ならではの光景です。たまにその筋の人が見えても、皆さん普通にお風呂に入っているのでしょう。

風呂上りに入浴客のおじさんたちにならってビールを注文し、オーナーの奥さんに話を聞いてみました。

―こちらは外国人のお客さんが多いんですか。
「まあそうね。けっこういらっしゃいますよ。夏休みなんか、家族連れで韓国や中国の人たちが来て、ここはどこなのかしらという感じになります。でも、普段はふつうの銭湯ですよ」
―インターネットでこちらは入れ墨やタトゥーのお客さんの入浴もOKと聞きました。
「ここは下町だから。昔からねえ、そうなんですよ」

奥さんは「中国の人」と言っていますが、たぶん台湾や香港の個人客なのでしょう。彼らが多く宿泊している上野のホテル街に近いことから、彼らも利用しやすいと考えられます。

オーナーの息子さんが英語で紹介する以下の動画をYOU TUBEで発信していることも影響があるに違いありません。

Visiting a japanese bath house
http://saito-yu.com/publicBath.html

いまや日本人のよく知らないラーメン屋がトリップアドバイザーなどで外国人に広まり、行列ができる時代です。この銭湯が外国人であふれるようになってしまうと、地元のお客さんは困ってしまいますが(たぶん、そんなことにまではならないでしょう)、タトゥーうんぬんの問題も、土地柄しだいでクリアできる面もあるのだと思いました。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-30 16:50 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 12月 15日

入れ墨・タトゥーの外国人の入浴、やっぱり気になりますか?

最近、訪日外国客の受け入れをめぐる報道が増えてきたと感じます。昨年くらいまで日本のメディアが好んで扱うのは「外国人の消費による経済効果」の話ばかりだったことを思えば、いいことだと思います。それだけ一般の日本人も訪日外国客と日常的に接触する場面が増えており、ただ経済効果の話として説明するだけではすまない社会の変化が生まれているからでしょう(実際、一部の小売店を除けば、経済効果なんてぴんとこない話ですから)。

今日の朝日新聞の朝刊で報じられたのが、「入れ墨・タトゥーの外国人の入浴」をめぐる話題です。以下、転載します。

入れ墨お断り、見直す動き 外国人増え「隠せばOK」も(朝日新聞2015年12月14日)
http://www.asahi.com/articles/ASHD346LTHD3UTIL014.html

入れ墨・タトゥーの方の利用はお断りします――。公衆浴場や旅館で、こうした表示を見直す動きが出ている。風習やおしゃれで彫る外国人や若者が増えているからだ。観光庁も海外の風習を周知する考えだ。

「タトゥーのある方の利用を試験中」。さいたま市の温浴施設「おふろcafe utatane」は入り口に貼り紙を出した。フロントで200円のシール(約13×18センチ)を買い、入れ墨に貼って隠せば入浴できるようにし、8月から月10人前後の利用がある。

広報担当の野村謙次さんは「日本人と外国人観光客が半々。2020年の東京五輪を前に、若者のファッションや外国人の文化としてのタトゥーを受け入れる必要がある」と話す。

高級旅館を運営する星野リゾートも10月、一部の温泉旅館で同様の試みを始めた。「タトゥーに抵抗感があるお客様に安心してもらう狙い。半年間試行して続けるか決める」という。

対応に悩む施設もある。河口湖温泉(山梨県)の観光案内には年9万人近くの外国人が訪れるが、ホテルや旅館は入れ墨禁止。「何でだめなの」との問答も時にある。河口湖温泉旅館協同組合の功刀(くぬぎ)忠臣事務局長は「タトゥーを認めなければ時代に追いつかないが、クレームもある。行政がルールを示して欲しい」。

一方、北海道恵庭市の温泉施設は、あごに入れ墨をしたニュージーランドの先住民族の女性の入浴を一昨年断り、「時代遅れ」と抗議を受けたが、今も同じ対応だ。「国際化も大切だが常連客を犠牲にできない」と話す。

入れ墨はいつから嫌われるようになったのか。

関東弁護士会連合会が昨年出した冊子によると、入れ墨は江戸時代まで黙認されたが、明治時代に禁止された。軽犯罪法の前身の「警察犯処罰令」に規定され、1948年の同令廃止まで規制された。

一般社団法人・日本温泉協会によると、公衆浴場法に入れ墨に関する規定はないが、禁止する施設は「衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない」の条文を踏まえている。

約500万円かけて全身に蛇などの図柄を彫った元暴力団員の40代男性は「入れ墨の男がいれば周りは怖いと思う。時間帯によってはOKにするといったやり方もあるんじゃないか」。

東京を観光していたポーランド人のクジェストフ・ベプフアさん(34)も両腕や背中にタトゥーがびっしり。来日後、温泉の入れ墨禁止を聞いてがっかりした。「日本の文化を尊重しルールは守る。でも、タトゥーは子どもの誕生記念や親への思いをこめたものでもある」と訴えた。

3度目の来日というイタリア人古物商エミリアーノ・ロレンツィさん(38)も左腕の手首近くまでタトゥーがある。「最初は温泉に入れず戸惑ったが、今は入れ墨と日本のマフィアの関係が深いことも理解している」。松山市の道後温泉に行く前にネットで入浴できる施設を調べるという。(岩崎生之助、後藤遼太)

日本政府観光局によると、昨年の訪日外国人は10年前の約2倍の1341万人。観光庁の1~3月の外国人への調査で「最も期待していたこと」は日本食、ショッピングに次いで温泉入浴が3位だった。

観光庁は6月、温泉や旅館など3768施設にアンケートし、581施設が回答。入れ墨がある人に対し、325施設(56%)は入浴を断り、178施設(31%)は受け入れていた。シールで隠すなど条件付き許可は75施設(13%)だった。

断る経緯について59%が「風紀・衛生面で自主的に」、13%は「業界・地元事業者で申し合わせた」と答えた。入れ墨をした人の入浴でトラブルがあったと回答したのは19%だった。

田村明比古長官は「観光立国を目指す中、一律お断りがいいのか。それぞれの事情に配慮があってもいい」と述べた。同庁は今後、業界団体と連携し、タトゥーはファッションや宗教的慣習の一つと周知する方針だ。(中田絢子)

〈著書「いれずみの文化誌」がある皮膚科医の小野友道さんの話〉 反社会的とみなされてきた入れ墨と、ファッションや文化としてのタトゥーが混在し、線引きが難しい。シールのように大きさで区別するのは一つの手だ。東京五輪を控えて外国人が増える中、温かい目で見る必要がある。「入浴お断り」ではなく「お断りすることもあります」と表現を変えるだけで印象が違う。

〈暴力団に詳しいフリージャーナリストの鈴木智彦氏の話〉 暴力団員のうち入れ墨持ちは7割くらいの印象。近年は減少傾向だ。現役でも入れ墨が無ければ公衆浴場に入れるし、逆に暴力団から足を洗っても入れ墨持ちだと入れないなど、一律入浴禁止のルールは現実的でない面もある。入れ墨を背にした暴力団員が威嚇していた過去は覚えておくべきだが、彼らにいつまで我慢させるのだろうか。

ちょっとLGBT(性的少数者)をめぐる議論と似ているようにも感じるこの話題を朝日新聞が取り上げたのは、記事中にもありますが、観光庁が今年10月に公表した以下の宿泊施設に対する調査結果を受けてのものだと思われます。

入れ墨客の入浴、56%が拒否=外国人増で宿泊施設調査-観光庁(時事通信2015/10/21)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201510/2015102100737&g=eco

観光庁は21日、温泉や大浴場への入れ墨(タトゥー)客の入浴を認めるかについて、全国の宿泊施設を対象としたアンケート調査の結果を公表した。外国人観光客が入浴を断られるケースがあるためで、56%の施設が拒否していることが分かった。一方で、31%が許可、13%が入れ墨をシールで隠すなどの条件付きで認めていた。

近年はファッション感覚で入れ墨をする外国人が増えているほか、民族の慣習で入れる場合もあるという。観光客の入浴を一律に断ることについては議論があり、実態を調べていた。

アンケートはホテルや旅館など3768施設を対象に実施し、回答率は15.4%だった。入れ墨客の入浴に関するトラブルは19%の施設で発生。また、一般客から入れ墨に関する苦情を受けたことがある施設は47%だった。同庁は実態をより詳しく把握し、今後の対応を検討する。

「入れ墨・タトゥーの外国人の入浴」をめぐる議論は、実はずいぶん前から国内の宿泊&温浴施設関係者らの間で起きていました。

今年5月、外国客に人気の新宿区役所前カプセルホテルの小川周二経営企画室室長に話をうかがったときも、当然のようにこの話題が出てきました。小川室長はこの件について、以下のようにお答えになっていました。

「タトゥーの方はチェックイン時にお断りしています。これを外国の方に説明するのが難しいですね。刺青のもつ社会的な意味が日本と外国では違うからです。外国の方にとってはおしゃれとしてタトゥーをしてらっしゃるのでしょうが、日本のお客さまにはアレルギーのようなものもあり、これは日本政府観光局でも、どう外国客に説明していくべきか検討していると聞きます」

※いまどきの都心のカプセルホテルがどんなことになっているかについては、以下をご参照ください。

外国客に人気と噂の新宿区役所前カプセルホテルに泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24526002/
カプセルホテルのどこが外国客に人気なのだろうか?
http://inbound.exblog.jp/24532753/
時代はサラリーマンからツーリストへ(新宿区役所前カプセルホテルの顧客が変わった理由)
http://inbound.exblog.jp/24532781/

同じ問題は、ホステル系の宿泊施設だけではなく、高級温泉旅館でも起きていたことを知ったのは、最近トマムリゾートを買収した中国の投資会社トップが失踪したことで話題となった星野リゾートの以下の取り組みでした。

温泉旅館ブランド「界」では タトゥーカバーシールの試験運用を開始いたします(星野リゾート ニュースリリース2015年4月15日)
http://www.hoshinoresort.com/information/release/2015/04/9362.html

2015年10月1日より、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」の全施設で、タトゥーカバーシールを試験的に使用することにいたしました。

日本では社会通念として、タトゥーのある方が大浴場を利用することを制限しているケースが多いのが現状です。しかし、国内外の若い世代では、ファッションとしての小さなタトゥーが容認されてきており、温泉旅館の大浴場をご利用になったお客様から、タトゥーのある方と一緒に入浴することへのご不満をいただくこともあります。

このような状況から、一つの試みとして8cm✕10cmのシール1枚でタトゥーをカバー出来る場合に限り、入浴を可能とすることを10月より行い、今後の方針を考えていく契機にいたします。タトゥーカバーシールは、ご希望の方に無料で配布いたします。

海外顧客の増加に伴い、ニュージーランドのマオリの方々のような事例にあるように、民族文化としてタトゥーのある方が温泉入浴を希望されるケースが増えてきております。今回の試みが契機となり、このような方々にも日本の温泉文化を楽しんでいただける、新しいルールの模索に発展して行くことを願っております。


この取り組みについては、朝日新聞もすでに報道していました。

小さなタトゥー、隠せば入浴OK 星野リゾートの旅館(朝日新聞2015年4月16日)
http://www.asahi.com/articles/ASH4H51JPH4HULFA01K.html

小さな入れ墨(タトゥー)ならシールで隠せばお風呂に入れます――。高級旅館チェーンの星野リゾートは15日、自社で運営している13の温泉旅館で、小さな入れ墨がある人の大浴場への入浴を試験的に認めると発表した。

静岡県の熱海などにある高級温泉旅館「界」で、10月から6カ月間試行する。旅館が用意する白色の8センチ×10センチのシールで隠れる大きさなら入浴を認める。

「暴力団関係者のシンボルで、ほかの客に恐怖心を与える」などとして、日本では多くの宿泊施設や公衆浴場で入れ墨がある人の入浴を禁止している。ただ、若者の間でタトゥーがファッションとして広がり、民族や文化的な理由で入れている外国人も多い。星野佳路(よしはる)代表は「旅館や観光庁、温泉ファンも含め、ルールのあり方を考える契機にしたい」と話す。(土居新平)

さらには、産経新聞も埼玉県の温浴施設でのタトゥーシール導入の取り組みをすでに報じていました。

タトゥー隠せば入浴OK さいたまの浴場、11月まで試験運用 海外客増、認識も進む(産経新聞2015.9.15)
http://www.sankei.com/region/news/150915/rgn1509150025-n1.html

入浴施設の大半が「タトゥー(入れ墨)お断り」を掲げる中、さいたま市北区の温浴施設「おふろcafe utatane」で、小さなタトゥーならシールを貼って隠すことで入浴を受け入れる取り組みが始まっている。8月1日から1カ月間の試験的な運用だったが、「新しい層の来客があり、既存利用者の方からの批判的な意見もない」として11月末まで期間を延長した。県は「全国的にも珍しい取り組み」として注目している。

同店を運営する温泉道場(ときがわ町玉川)は、「おふろから文化を発信する」をモットーに県内3カ所で温浴施設を運営。中でも約2年前にオープンした同店は、宿泊施設を備えて駅に近いため、若者や外国人の利用が多いという。

シール導入の背景には、若い世代に小さなタトゥーがファッションとして認識されつつあることや、文化としてタトゥーを施す外国人旅行客の増加がある。大手宿泊事業会社「星野リゾート」が10月からの導入を決めたことも後押しし、「今まで店を利用したことのない人にも楽しんでもらおう」とスタートした。

シールは縦12・8センチ、横18・2センチのB6サイズで、申し出を受けるか、スタッフがタトゥーを見つけた際に声をかけ、1枚200円で販売。1枚以内で隠しきることが条件で、数カ所にタトゥーがあってもシールを切り分けて隠せれば問題ない。利用者には男女それぞれのスタッフが脱衣所まで同行し、シールからタトゥーがはみ出していないかをチェック。隠しきれない場合は入浴を断っている。

1カ月間で利用者は20人ほどだったが、「20年ぶりに大衆浴場に入れてうれしい」など好意的な意見が多かったほか、「術後の傷を隠せてありがたい」と想定外の利用者もいたという。

店を利用した同市の女性(41)は「タトゥーが見えないなら入っていても気にならない。外国人が利用できるのはいいかも」と理解を示した。一方、母親(68)は「やっぱりタトゥーには怖い印象がある。これも時代の流れなのかな」と話していた。

県生活衛生課などによると、県内の銭湯や公衆浴場は26年度で666カ所(暫定値)。多くの施設でタトゥーがある人の入浴を禁止しているが、県の条例や公衆浴場法では規制する法令はなく、あくまで浴場運営業者の判断という。

温泉施設は減少傾向にあるが、「これまでの利用者も納得できて、新たなニーズを取り入れようという工夫は応援したい」と同課。同店は「取り組みの過程でタトゥーに対するイメージや感覚が変わってくる可能性もある。試験の結果次第では本格的な導入も検討したい」と話している。(川峯千尋)

外国人に入浴してもらうために、タトゥーをシールで隠しちゃおうというこのアイデア。このシールをめぐっては、「縦12・8センチ、横18・2センチでは小さすぎる(からすべてを隠せない)」とかいろいろ議論があるそうです。関係者らが大真面目に考えたことだと思うので、笑っちゃいけないのかもしれないけれど、外国人がシールを貼ってお風呂に入っている様子を想像すると……。

だいたい彼らも、日本人客の気持ちを理解して、こころよくシール貼ってくれるものなのでしょうか。自分が貼る側だとしたら、面倒くさい気がします。それ以上に、なぜ日本人がタトゥーを好まないかについて個別の外国人一人ひとりに理解させることはそんなに簡単なことではないのでは。この問題は日本人の感情だけでなく、外国人の気持ちも考えたうえでの相互理解が必要なように思えます。つまり、どう周知させるかについても双方に対して丁寧に行う必要がありそうです。

ところが、ネットでこの種の議論の意識調査をすると、このとおり。ネットの特性がもろに出てしまいますね。「ここは日本なんだから、郷に入れば郷に従え」。そう言いたくなる人の気持ちもわからないではありませんが…。

Yahoo!意識調査
「タトゥー・入れ墨のある外国人を入浴拒否」どう思う?

現在の総投票数252,462,630票(2015年12月15日現在)
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/domestic/17462/result

日本人も外国人も入浴拒否にすべき 59.9% 232,099票
日本人も外国人も入浴拒否にすべきではない 18.6% 72,221票
外国人については許可すべき 17.0% 65,981票
どちらでもない/わからない 4.5% 16,975票

それでも、世の中にはいろんな情報が発信されているようです。

タトゥー入っててもOKな温泉・銭湯・プールまとめ【関東編】(Find Travel)
http://find-travel.jp/article/18883

このサイトの記事では、関東のタトゥーOKな温泉・銭湯・プールのうち以下の8軒を紹介しています。

日暮里 斉藤湯
成田の命泉 大和の湯
伊香保石段の湯
ふくの湯
元町公園プール
千歳温水プール
本牧市民プール
目黒区民センタープール

実際、どんな感じなのか見てみたいものですね。

こんなサイトもありました。

Tatto Spot
http://tattoo-spot.jp/

「タトゥースポットは、近年厳しくなってきている"刺青お断り"ではないお店を掲載しているサイトです。タトゥーや刺青が入っていてもお店に入ることができ、各種施設を使うことができる店舗のみが全国のタトゥーユーザー達から投稿されるサイトです。

タトゥースポットでは、全国のタトゥーユーザーや、海外からの旅行者の方などが各店舗様のルールにのっとってご利用できるよう常に情報提供をお待ちしております」。

訪日外国客の増加は、我々の社会に、たとえば共同風呂に入るというような、きわめて個人的な生活の一場面の中で、外国人との相互理解をはかる必要を迫られることも意味しています。あんまり優等生的な発言はしたくないのですが(誰だって目の前に大きなタトゥーが現れたらびっくりしますから!)、なるべくこのような場面に出くわしても、穏健に対処する心構えというか、心の弾力性を身につけておきたいものだと思います。

もしそういう場面に出くわしたときは、映画『テルマエ・ロマエ』で阿部寛が扮するルシウス・モデストゥスが見せた爆笑お風呂シーンを思い起こして、気を紛らせてみたりすることは有効ではないでしょうか。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-15 07:53 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)