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2015年 08月 11日

朝鮮でホームステイ その奇妙な世界

海水浴場での昼食が終わった後、案内されたのがとても奇妙な場所でした。
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※2014年7月上旬、北朝鮮咸鏡北道の七宝山を訪ねた話をしています。

七宝山(チルボサン)は金剛山とは似て非なる朝鮮の名峰
http://inbound.exblog.jp/24765755/

そこは「海七宝民泊宿所」と呼ばれる2004年にできた民泊施設です。まるで住宅展示場のように朝鮮式の一戸建て民家が並んでいます。なんでも外国人向けのホームステイのための施設だそうで、それぞれ住人も住んでいるというのです。

一軒の家に案内されました。1階は住人の生活する場所で、2階に外国人を泊めるのだそうです。

応接間にはテレビや冷蔵庫が揃っています。
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厨房を覗くと、きれいに食器が並んでいます。
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お約束の金日成・正日親子の肖像写真が飾られています。
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2階の客室です。
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ベランダもあります。
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トイレです。
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このご夫婦が住人です。
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もう一軒を訪ねました。
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この家には母親と小さな娘が住んでいました。
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男性ふたりはガイドです。金親子の肖像画や娘の写真などが貼られています。
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これらの光景を目の前にしながら、そして促されるまま写真を撮っているときに、平壌の高層マンションに住む模範市民の家庭を金正恩第一書記が訪問したというニュース映像を思い出しました。たぶん、ここも同じような場所ではないか。このさびれた漁村の周辺で電化製品に囲まれた文化生活を送る人たちがいるということ自体、おかしなことだからです。
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このあどけない娘の笑顔には癒されますが、この国の人たちはこの奇妙な世界をどう受け止めているのでしょうか。また住人本人もどう考えているのか。単に外国客の接遇役という職務に従事しているだけなのかもしれませんが。

3軒目に訪ねたのが洋風一戸建て住宅でした。
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2階の客間はベッドがあります。欧米客向けなのでしょう。
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ここには全部で20の民家があり、そのうち西洋式は6軒、朝鮮式が14軒です。ガイドがこんなことを言います。「ここには中国人やヨーロッパ人が泊まっています。現在、あなたがた日本人とアメリカ人は泊まることは許されていません。でも、近いうち日本人も泊まれるようになるでしょう」。
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面白いのは、各民家の前には必ず畑があり、裏手には暖をとるための薪木があり、鶏が飼われています。するめを干している人もいます。確かに、ここは生活の場でもあるようです。
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逆にいえば、こうした電化製品と畑と薪木と鶏に囲まれた生活というものこそ、いまの朝鮮の人たちにとって誰もが思い浮かべる理想の生活なのではないでしょうか。それは外国人に見せても決して恥ずかしいものではないと彼らは考えているのでしょう。接遇役として選ばれたこの宿所の住人も、平壌の模範市民に近い存在として自分の役割を受けとめているのかもしれません。

ガイドに「次回来たときはここに泊まるといい」と言われたものの、苦笑するしかありませんでしたが、これはこれでこの国でこれまで大真面目に行われてきた国際交流のひとつの形態なのかもしれません。彼らが外国人に理解してもらいたい自らの自画像こそ、このような恵まれた暮らしを送る人民の姿ということなのでしょう。

この施設の中にはレストランもあります。海水浴場の食事を用意してくれたのは、ここのレストランのスタッフでした。このあたりには、外国客を受け入れられる施設はここしかなさそうです。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-11 16:39 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 08月 01日

台湾版「田舎に泊まろう」ウルルンツアー密着レポート(長崎県南島原市)

7月上旬、某PR誌の仕事で長崎県南島原市に行ってきました。

南島原市というのは、島原半島の南端に位置する人口約5万人のまちです。今回訪ねた理由は、このまちが2013年から台湾の一般客を農家民泊させるツアーの受入を始めているからでした。

南島原ひまわり観光協会
http://himawari-kankou.jp/

この民泊ツアーで、台湾客たちは民泊先の畑で地元の農産品の収穫をした後、ホスト家族と一緒に料理をし、夕食を味わいます。その心温まる体験は、台湾メディアに報じられたことで人気を呼び、年間約800人の台湾客が訪れています。

実はこの話、以前ぼくのblogでも紹介したことがあります。2013年10月、台北で開催された台北国際旅行博(ITF)の会場でぼくはある現地旅行会社の女性社員に会いました。彼女は元日本留学生で、自分が日本で体験した民泊の感動を多くの人に味わってもらいたいとの思いで旅行商品として実現させたのが、この農家民泊ツアーでした。

台湾発日本行き「ウルルン滞在記」ツアーはこうして生まれた
http://inbound.exblog.jp/21429440

そんなわけで、機会があれば、そのツアーの様子を見てみたいとずっと思っていました。それが今回実現できたのです。

以下、台湾版「田舎に泊まろう」ウルルンツアー密着レポートです。

その日、台湾から来た8家族(33名)がそれぞれの受入先の農家に分かれて民泊します。
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午後3時、台湾客を乗せたバス到着。民泊先の家族が総出でお出迎えします。
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台湾では7月に入るとすぐ夏休みだそうで、子供連れの家族がたくさんいます。
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ホスト家族との対面を「入村式」と呼んでいます。会場は市の武道館。あらかじめそれぞれの家族のホスト農家は決められていて、テーブルごとに分かれます。
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観光協会の担当者から南島原の紹介があります。
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台湾ガイドの林尚緯さんです。
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入村式の最後は、ホスト家族とゲストが握手します。
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その後、流しそうめんで親睦を深めるのが恒例になっているそうです。
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なにしろ南島原市はそうめん生産量全国2位。みんな大喜びです。
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そして、ホストの車に乗ってそれぞれの農家に移動します。
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ここから先はガイドがついていかないので、明日の朝までお互い言葉が通じません。
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さて、ぼくはある農家とそこに民泊する台湾の家族に密着することができました。

これがホストの園田義文さんのお宅です。
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茶の間でしばらく休みながら、ゲストの黄振穎さん一家の話を聞きました。黄さんは台北で写真館を経営する撮影師です。CANONの一眼レフを手にし、写真を撮りまくっています。奥さまと中学生のお兄ちゃん(柄越くん)と小学生の弟(柄升くん)の4人家族です。

1時間後、園田家のビニールハウスで今日の夕飯のおかずとなるナスとピーマンを収穫に行くことになりました。

ひょうきんなお父さん。黄さんは明るい人です。
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ピースしているのは園田家のお母さんです。この日大活躍です。
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長男の柄越くんがナスを採っています。
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こんなに採れました。
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ビニールハウスの外には、少し前までイチゴを植えていた畑があります。春先に来ると、イチゴ狩りができるそうです。
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収穫のあとはみんなで一緒に食事をつくります。

先ほど採ったピーマンを肉詰めにします。
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子供たちはヒマを持て余してゲームで遊んでいます。弟の柄升くんは中学生のお兄ちゃんが持っているスマホが欲しくてたまらないそうです。
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お母さん同士はキッチンでずっと料理をつくっています。この家の嫁でもないのに、なんかいい雰囲気ですね。
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しばらくして観光協会の担当者とガイドの林さんが様子を見に来ました。手前に一緒に写っているお母さんと女の子は、今回ぼくの取材に協力してくれた観光協会の別の担当者の奥さまと娘さんです。
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先ほどまでゲームで遊んでいた柄升くんがお母さんの料理を手伝いにやって来ました。
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はい、出来上がり。長崎名物のちゃんぽんと鶏の唐揚げ、ナスの煮びたし、ゴーヤと肉の炒めもの。家庭料理ですね。
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「いただきます」。子供たちは自分で採った野菜を食べるのは初めての体験だったそうです。
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密着はここまでで、ぼくは園田家を後にしました。

さて、翌朝です。朝8時半、台湾客たちは武道館に戻ってきます。

そして、全員で記念撮影。垂れ幕には「南島原にまた来てくださいね!」と書かれています。
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各々の家族同士、みんな名残惜しそうにしています。
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南島原名物のそうめんがお土産です。
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黄さん一家もいます。昨晩はよく眠れたでしょうか。
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さて、退村式が始まりました。その様子をちょこっと動画に撮りました。特別なことは何もありません。
https://youtu.be/o3hdb6NoGLI

さあ、お別れです。すると、感極まって目頭を押さえてしまうホストのお母さんもいます。お互い言葉が通じないぶん、気持ちが高ぶってしまうのでしょう。
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そして、台湾客はバスに乗り込み、お別れです。
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なんて絵に描いたような美しい世界なのでしょう。参りました。誰かがあざとい演出をしているわけでもないし、まあ進行上こうすればこうなるということは頭ではわかっているんですが、人間というのは面白いものですね。異国の人と触れあうとき、普段とは違う何かを感じてしまうのですね。

どうやらぼくの涙腺はツボにはまってしまったようです。傍で見ているのにすぎないのに、うるうるしてくるのですから。でも、きっとこういうのは台湾の人も好きに違いありません。

南島原市が農家民泊事業を始めたのは2009年からだそうです。といっても、最初は長崎県の中学生などから受け入れを始め、徐々に全国の中高生の修学旅行生へと広げていきました。そして、いまではなんと年間約1万人の民泊を受け入れています。そういう意味では、ホストの皆さんも、ベテランです。この美しい世界も、経験豊富なホスト家族がいてこそ実現できるのだと思います。南島原には160家が民泊を受け入れているそうです。

あと今回は触れませんでしたが、南島原は漁港もあるので、農家だけではなく、漁家の民泊もできます。今回台湾から来たある家族は漁船に乗せてもらって、そのとき釣ったタコを夕食でいただいたそうです。

冒頭で紹介した台湾の名生旅行社の女性社員は郭さん(日本名はYUKIさん)といいます。彼女はこうした南島原の民泊の評判を知り、同市観光協会を視察に訪れたことから、この農家民泊ツアーが始まっています。

実は、台湾客の帰国後、ぼくはゲスト一家のお父さんの黄さんとラインでやりとりしました。

―南島原での民泊はどうでしたか?

「すごく良かったですよ。日本人は親切で温かかった。私たち家族も本当に幸せでした。園田さんに感謝の思いを伝えてください。そして、ぜひ今度は台湾に遊びに来てください。歓迎します」

―今回は九州5泊6日のツアーだったそうですね。どうでしたか。

「九州は自然が豊かでとても純朴な土地でした。今度九州に来るときは、レンタカーを借りてドライブしたいです。そして、日本の風景をもっと深く見てみたいです。また今回は園田さんのお宅に泊めていただいて、日本の農家の生活を知ることができました。子供たちも喜んでいました」

ガイドの林さんともこんな話をしました。彼はガイド歴25年のベテランで、南島原の民泊ツアーにはすでに5回添乗しているそうです。

―こういう農家民泊ツアーは日本以外の国でありますか。お客さんたちはどんな感想を話していますか。

「日本しかありません。やはり民泊ツアーの魅力は心の交流ですね。こういう体験はなかなかできるものではない。日本の農村を初めて訪ねたが、食の安全・安心な理由がわかったという声もありました」。

―民泊ツアーに参加されるお客さんというのはどういう方たちなんでしょう。わざわざ民泊のツアーを選んで来られた方たちですね。

「このツアーでは、福岡や壱岐島、湯布院、長崎などを訪ねます。福岡ではグランドハイアット、湯布院では有名な温泉旅館に泊まります。そんなに安いツアーではありません。民泊は1日のみですが、やっぱり体験してみたいのです。お客さんの多くは、すでに東京や大阪、北海道などは行き尽くした、ある程度日本のことを知っているリピーターです。日本が好きになって、もっと奥まで日本のことを知りたい。そういう気持ちを持っているように思います。今回、南島原の民泊は2回目というリピーターのお客さんもいました。帰国後、アンケートを取ると、ほとんどの方が民泊がいちばん良かったと回答しています」。

台湾の人と話していると、日本のことを実力以上に評価してくれているような気恥しい気分になることがよくあります。ただ近隣諸国を見渡すと、このように言ってくれる人たちは残念ながら少数派なわけで……。なんとかその評価に応えていかなければと思ってしまいます。

ところで、長崎県は来年、南島原市にある原城(島原の乱で天草四郎が立てこもった場所)を「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産のひとつとして世界遺産登録に向けて申請するそうです。キリスト教文化の繁栄、宗教対立、そして弾圧という歴史の現場であったということが理由です。これはユネスコ好みのストーリーのように思います。

今回、原城跡や地元の歴史博物館を訪ねることができたのですが、とても面白いですね。来年はこのまちもいろんな話題を呼びそうで、楽しみです。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-01 14:53 | “参与観察”日誌 | Comments(1)
2015年 07月 30日

歌舞伎町ルネッサンス~外国人観光客の来訪増で街は変わるか?

このところ、歌舞伎町周辺を訪ね回り、外国人ツーリストの動きをウォッチングしていました。その中間報告というわけでもないのですが、やまとごころに書いています。
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歌舞伎町は今日も多くの外国人ツーリストでにぎわっている。ここ数年、周辺でホテル開業ラッシュも起きている。新宿は都内で最も外国客に人気のホテル地区なのだ。世界的にも知られるこの歓楽街はこれからどう変わっていくのか。周辺のホテルに滞在している外国客にもっと街を楽しんでもらい、お金を落としてもらうには何が必要なのだろうか。考えてみたい。
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やまとごころ.jp
http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_15.html

新宿歌舞伎町のネオンの下には、今日も多くの外国人ツーリストでにぎわう光景が見られる。靖国通りで大型バスから降りてきた中国やタイの団体客たちは添乗員に先導され、セントラルロードから裏道まで列をなして散策している。ドンキホーテの前でスーツケースを広げて大量購入した土産の品定めをするグループもいる。キャリーバックを引きずるアジアの若い個人客も次々と横断歩道を渡ってくる。欧米のツーリストたちもそこかしこを頻繁に往来している。

今年上半期(1~6月)で914万人とますます増加する訪日外国人旅行者。日本政府観光局によると、年間を通じて1800万人前後の見通しと2020年に2000万人という政府目標も前倒しで実現しそうな勢いだ。

彼らの来訪が歌舞伎町の風景を大きく変えようとしている。でも、どうして彼らは歌舞伎町にやって来るのだろうか。

世界の観光地と呼ばれる場所には、誰もがそこで記念撮影を始めてしまうポイントがある。富士山の絶景もそうだが、渋谷センター街の交差点もいまや定番。こうした情報はネットにあふれていて、SNSを通じて世界に発信されている。

では、いまの歌舞伎町でそれはどこだろうか。

今年4月に開業した「ゴジラルーム」が話題のホテルグレイスリー新宿(新東宝ビル)か。あるいは、「歌舞伎町一番街ゲート」の下で自撮りする? いや、むしろ西新宿の高層ビルやヤマダ電機の巨大スクリーンをバックに撮るのがお好みか?

これらは確かに歌舞伎町でよく見かける光景である。いまや歌舞伎町は外国人ツーリストのための都内有数の“回遊”ゾーンとなっているのである。

では、ここで“回遊”した後、彼らはどこに向かうのだろうか。

ロボットレストランは日々進化する

そのひとつが、新宿区役所の裏にあるロボットレストランである。この話はもうよく知られているかもしれない。以前、やまとごころ.jpのインタビューでも紹介した、外国人ツーリストが殺到する都内でも数少ないナイトエンターティンメントスポットである。

歌舞伎町の「ロボットレストラン」になぜ外国客があふれているのか?
http://www.yamatogokoro.jp/inbound-interview/2013/index06.html

日本の女子ダンスチーム《女戦》と巨大アンドロイドが共演するダンスショーが楽しめるというふれこみの同レストラン。その開業3周年も近い6月初旬に訪ねたところ、入り口に以前はなかった多言語の歓迎表示が置かれていた。ロシア語やタイ語まであり、客層の多国籍化が進んでいることがうかがわれる。
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18カ国の多言語が表示されるロボットレストランの看板

きらびやかだが、キテレツというほかない待合室の様子は変わらないが、受付は日本語を話す外国人スタッフだった。そこでは東南アジアのリゾートホテルのラウンジでよく聴く洋楽のライブ演奏が行われている。21時50分開演のその日最後のショーで、観客は若い欧米人がほとんど。アメリカのTVコメディショーに出てくるような外国人司会者が「ようこそ、クレージーショーへ」とあいさつすると、照明が落とされ、ショーは始まった。
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ショーの観客席は外国客だらけ。最近はアジア客も増えてきた

実は、半年前にここに来たとき、早めの時間帯だったせいか、欧米の中高年のツーリストの姿が多く、また小さな子連れの母親もいて、客層は明らかに幅広い年齢層に広がっていた。おそらく彼らは滞在先のホテルのロビーに置かれたチラシを手にしてここに来たものと思われた。

見るからに善男善女である彼らは、海外旅行先の夜を過ごす常としてカップルで、あるいは親子で食事を含めたナイトライフに繰り出そうとしていたのだ。はたしてショーの中身は、彼らを心底楽しませただろうか? 少し違和感を覚えたものだった。

そこに一抹のあやうさを感じながらも、ロボットレストランは外国客の趣向に合わせたナイトライフの受け皿として日々進化しているようだった。もはや開業当初のような欧米メディアや文化人が訪れる特別のスポットではなくなっているかもしれないが、客足は遠のくばかりか増えている。はっきり言って、ショーの中身を除けば、そこはとても日本とは思えない。入場料は1人7000円と以前より値上がりしているが、この1年の円安で外国客にとってはチャラみたいなものかもしれない。

このような“クレージー”な外国客向けのナイトスポットは、実のところ、世界のあらゆる観光地で見られる普遍的な光景ともいえる。それが六本木や赤坂、銀座ではなく、歌舞伎町に見られることは、これからの日本のインバウンドの行方を象徴しているように思う。

エクスペディアが指摘する新宿の3つの魅力

ところで、歌舞伎町に現れる外国人ツーリストはどこから来るのだろうか。

その答えのひとつのヒントとなるのが、ホテル予約サイトの市場動向である。

今日どんなに無名の宿泊施設でも、ホテル予約サイトに登録すれば、外国客を呼び込むことができるといわれる。国内ホテルの外国客受入に実質的に最も貢献をしているのは彼らだろう。

なかでも2006年11月、米国発世界最大のオンライン旅行会社として日本法人を開設したエクスペディアの訪日旅行市場における存在感は日に日に増している。当初、彼らの日本参入の狙いは、日本人の海外旅行市場にあったが、ここ数年、海外、特にアジアからの国内ホテル予約が増えているからだ。

木村奈津子マーケティングディレクターによると「エクスペディアはアジア11カ国・地域に販売拠点があるが、その多くは12~13年にかけて設立されたばかり。円安と日本旅行ブームの時期が重なり、訪日予約が一気に増えた」という。実際、韓国や香港、台湾、タイのエクスペディアによる14年の海外ホテル予約件数はすべて日本がトップだった。

同社の作成した「都内国別人気宿泊エリアマップ」をみると、東京の南半分(東京駅周辺、銀座、赤坂、渋谷)は欧米客に人気で、北半分(新宿、池袋、上野、浅草)はアジア客に人気というエリアの住み分けがあるらしい。
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都内国別人気宿泊エリアマップ(エクスペディア提供)

だが、国籍を問わず最も人気があるのは新宿だ。同社は14年エクスペディア経由で予約件数の多かった宿泊施設を「ホテル」部門と「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門に分けてランキングしている。以下、「ホテル」部門10位までのランキングだ。

1位 ホテルサンルートプラザ新宿(南新宿)
2位 新宿グランベルホテル(東新宿/歌舞伎町)
3位 新宿ワシントンホテル(西新宿)
4位 京王プラザホテル(西新宿)
5位 ホテルモントレ グラスミア大阪
6位 ホテル日航成田
7位 新宿プリンスホテル(東新宿)
8位 品川プリンスホテル(品川)
9位 新宿区役所カプセルホテル(東新宿/歌舞伎町)
10位 ホテル日航関西空港

興味深いのは、ランキング入りした都内の7店中6店が新宿のホテルであること。またどちらの部門も1位(前者:サンルートプラザ新宿、後者:新宿区役所前カプセルホテル)は新宿なのだ。

なぜこれほど新宿のホテルが人気なのか。エクスペディアではその理由は「アクセス面」「街の魅力」「施設面」の3つだとして、以下のように分析する。

①アクセス面:新宿は都内の観光地へのアクセスがいい。また箱根に電車で一本、富士山にもバス一本で行ける。

②街の魅力:大都会を象徴する高層ビル群と、歌舞伎町や思い出横丁のような古き良き日本の雰囲気が両方体験できる。

③施設面:高級シティホテルからビジネスホテルまで選択肢が豊富。六本木や赤坂だと高級ホテルが多く、所得の高い欧米客が集中するが、近年増えているアジア客はリーズナブルなホテルを選ぶ傾向にあり、新宿が最適。

箱根と富士山のゲートウェイであることの優位性が新宿にはある。歌舞伎町が新宿を構成する一要素として欠かせない存在であることもわかる。さらに、新宿のホテルの価格帯のバリエーションの多さが、多様な層の外国客の受け入れを可能としているのだ。

一般に外国人ツーリストはよく歩くという。日本人なら地下鉄を利用する距離でも、彼らは歩くのを好む。そして彼らの行動半径はホテルを基点に形成される。こうしてみると、大型バスで乗りつけるアジア系団体客を除けば、歌舞伎町に現れる外国人ツーリストの多くが、新宿周辺のホテルに滞在している比率は高そうなのである。

外国人ご用達のカプセルホテルの世界

新宿人気の理由となっているリーズナブルな宿泊施設の代表といえば、前述のエクスペディアの「ホステル・ゲストハウス・旅館」部門で1位となった新宿区役所前カプセルホテルだろう。

5月下旬、同ホテルを訪ねると、そこは外国人ツーリストご用達の宿になっていた。

ロビーでは英語が飛び交い、着替えのためのロッカーの脇にはスーツケースが並んでいる。軽食コーナーや自動販売機、コインランドリーなどが置かれた男女共用のラウンジに行くと、スマホを手にした外国客の姿が多く見られた。実際、その日の外客予約比率は39%。アジア客と欧米客の比率は半々という。
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ロッカーの脇に並ぶ外国客のスーツケース

小川周二経営企画室室長によると「外国客が増えたのは2年前から。女性フロアを開設したことでカップルでも利用しやすくなったことが大きいようだ。アジアはタイがいちばん多く、マレーシア、シンガポール、最近はインドネシアが増えている。欧米は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンなどいろいろだ。大半がエクスペディアなどの海外予約サイト経由。連泊が多く、なかには1カ月も泊まっていく外国人もいる」という。
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ポラロイドで撮った宿泊客の記念写真

カプセルホテルは1980年代に成長した業態だが、バブル崩壊以降、斜陽産業と呼ばれた。それでも同ホテルが盛況なのは、サラリーマンから国内外の女性も含めたツーリストへという客層の変化に対応し、ビジネスモデルの組み換えを行ってきたからだろう。

人知れず外客率8割のデザインホテルもある

ホテル予約サイトの驚くべき集客力は、異業種やベンチャー系のホテル事業への参入にも追い風となっている。PRコストいらずで、集客が可能となるからだ。

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある。2013年12月に開業した新宿グランベルホテルだ。
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ひときわ目につく17階建て、客室数380室

立地は歌舞伎町の東のはずれの、なんとラブホテル街の中。だが、ここはエクスペディアの人気ランキング「ホテル」部門2位という。

ロビーを訪ねると、それは一目瞭然だ。フロントの前のラウンジやソファーに多くの外国客がたむろしていて、特に午後のチェックイン・アウトの時間帯にはスーツケースが山のようにロビーに積まれている。

丸山英男支配人によると「周辺に東横インやアパホテル、サンルートホテルなど、同じカテゴリーが集中している。ホテル激戦区の東新宿で、知名度のない我々が生き残るには、思いきって個性的なホテルをつくるしかない」と考えたという。

そこで採用したのが、アジアの次世代アーティスト24名を起用してデザインさせた客室だった。世界的に有名な歓楽街としての歌舞伎町のイメージを具現化したかったという。設計を担当したのは、キッザニア東京で知られるUDS株式会社だった。
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NY在住のカンボジア人アーティストが近未来の女性をイメージした人気の客室

結果はどうだったのか。

「開業から3か月は苦戦したが、1年後には平均客室稼働率は8割を超えた。そのうち外客比率は8割以上。歌舞伎町の立地ということで、外国客の利用は多くなるだろうと考えていたが、これほどとは思わなかった。アジア系は6割で欧米系は4割。ビジネス客とレジャー客は半々。予約の半分以上はネット経由。圧倒的に海外の予約サイト経由が多い」(丸山支配人)。

同ホテルを支持したのは、海外の若い個人旅行者たちだった。価格とデザイン性に敏感な彼らのホテル選びは、まず予約サイトでエリアと価格帯で絞り込んでから、各ホテルの写真をじっくり見比べるという。

丸山支配人は同ホテルが外国客に人気の理由をこう説明してくれた。
「確実にいえるのは、ネットの世界は写真が大事ということ。私どものホテルは客室のデザインに特徴があることから、同じ価格帯のホテルと比べたうえで選んでもらえたのだと考えている」。

「歌舞伎町ルネッサンス」の転換点

ところで、歌舞伎町にはいまも「怖い」「汚い」「風俗のまち」というイメージがある。その認識を世間にあらためて印象づけたのが、多くの死傷者も出た2001年9月の雑居ビル火災だった。

この事故に端を発して歌舞伎町の再生に向けた動きが始まっている。それが05年に新宿区や地元商店街振興組合、都や国の関係省庁などが官民一体でスタートさせた「歌舞伎町ルネッサンス」だった。

ところが、発足当時から危ぶまれていた歌舞伎町の顔ともいうべき新宿コマ劇場が08年に、14年にはミラノ座も閉館となった。それまで歌舞伎町では、劇場や映画館、ライブハウスなどの集客施設に来た人たちが周辺の飲食施設に立ち寄ることで歓楽街を成り立たせていた。だが、主要な施設の消滅で来街者が減り、多くの人々が“回遊”することで生まれるにぎわいにも陰りが見え始めていた。

それだけに、今年4月、新宿コマ劇腸の跡地に開業した新宿東宝ビルの誘致は、歌舞伎町再生のための大きな転換点とみなされている。そこにはシネコンやホテル(ホテルグレイスリー新宿)などの新たな集客施設がテナントとして入居してきたからだ。

新宿区では、靖国通りから北に延びるセントラルロードや新宿東宝ビル前の北側道路などの歩道を順次拡幅している。街の混雑を緩和し、かつての歌舞伎町のイメージを刷新させ、女性や家族連れも呼び寄せたいからだという。

だとすれば、ホテルができることはいい話である。実は、歌舞伎町とその周辺では、ホテルグレイスリー新宿や前述の新宿グランベルホテルもそうだが、今年9月開業予定のアパホテルグループの旗艦店「新宿歌舞伎町タワー」など、ホテルの新規開業がここ数年続々と進んでいた。東新宿は今後、ビジネス客というよりもレジャー客の集まるホテルの街になりそうなのだ。当然これらのホテルには、多くの外国人ツーリストが宿泊することになるだろう。
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シックなストライプとゴジラの顔がラウンドマークとなった新宿東宝ビル

ホテルの宿泊客が街で消費を始めている

歌舞伎町商店街振興組合の城克事務局長は「歌舞伎町を再生させるうえで、我々ができることは、投資を誘致するということだけだった。あとは各々の事業者の皆さんが頑張ってくれる。ホテルができることで、宿泊客が歌舞伎町で飲食や買い物をしてくれるようになるといい」と期待する。

地元ではこれまで歌舞伎町に来る外国人は、街を散策しているだけでお金を落とさないという声もあったようだ。確かに、大型バスで乗りつけるアジアの団体客は、せいぜいコンビニで飲み物を購入するくらいだったろう。彼らの買い物は旅行会社が決めた特定の場所でなければならないからだ。

だが、歌舞伎町周辺のホテルに宿泊していれば、近所でお金を落とす機会は自然と増える。その兆しは、たとえば、新宿グランベルホテルのフロントスタッフらが作成したという自家製マップに表れている。

同ホテルのロビーには、以下のような数種類のホテル周辺マップ(英語併記)が置かれている。

「新宿駅までの周辺地図(SHINJUKU area map)」
「周辺のラーメン屋(RAMEN LIST)」
「24時間営業のお食事処(24HOUR OPEN RESTAURANT LIST)」
「周辺のお寿司屋さん(SUSHI RESTAURANT LIST)」

これらの地図はとてもシンプルで情報量も限られているが、宿泊客からの質問をもとに作成されている。地図に落とされているスポットは、歌舞伎町内にあるごく普通のラーメン屋やレストラン、寿司屋にすぎない。だが、これらを見ていると、ホテルを基点とした外国人ツーリストの活動領域が見えてくる。ホテルの宿泊客たちは、街で消費を始めているのだ。

地元の人と一緒に楽しめる体験がほしい

今年に入って歌舞伎町にはこれまで見られなかった女性のグループなども足を運ぶようになったという。外国客には家族連れも多いので、子供の姿も増えた。街の風景に静かな変化が起きているようにも見える。

「だが、歌舞伎町に安心・安全ばかりをアピールするのはどうか。ちょうどいい緊張感は残したほうがいい。それがこの街の個性でもあったのだから」と前述の歌舞伎町商店街振興組合の城事務局長はいう。

確かに、ここは銀座でも渋谷でもない。それでもこれだけの来街者があるというのは、俗に“アジア最大の歓楽街”と呼ばれる独特の街の風貌が人を惹きつけるからだろう。それが薄まることを危ぶむ向きもあろうが、時代は変わる。かつて歌舞伎町は中国やアジアからの移民労働者が多く働く街だったが、いまやレジャー観光客に生まれ変わった彼らが押し寄せるようになった。それも宿命かもしれない。こうして生まれる“ちょうどいい緊張感”を満喫してくれているのは、いまや欧米客も含めた外国人ツーリストたちではないだろうか。彼らは固定観念にとらわれず、歌舞伎町とその周辺のホテルを選んでいるのだから。

そんな彼らはいま歌舞伎町に何を望んでいるのだろうか。

ここに来て、ただあてどなく“回遊”するだけでなく、立ち止まって地元の人たちと一緒に楽しめる体験、もっといえば思い出づくりがしたいのではなかろうか。お金をかけた大がかりなイベントである必要は必ずしもないと思う。もっとささやかで、気軽に日本人も外国人も参加できそうな趣向を考えたほうがよさそうだ。

ロボットレストランの営業担当者に以前こんな話を聞いたことがある。「新宿周辺と都内の主要なホテルにチラシを置いてもらうよう徹底して営業した。その結果がいま出ていると思う」。

せっかくこんなに多くのホテルが周辺にあるのだから、彼らに声をかけない手はないというわけだ。幸い歌舞伎町周辺のホテルの宿泊客には、スケジュールの決まった団体客は少ない。大半は個人旅行者だ。ロビーで退屈そうにスマホを覗いて暇を持て余しているツーリストはたくさんいる。彼らを街に連れ出すためのアイデアがいまこそ求められているのだ。

新宿グランベルホテルでは、新宿全景が見渡せるルーフトップバーで外国人を集めたイベントを始めようとしているそうだ。「ホテルは街と共存している。いまはSNSで情報が広がる時代。だから、ホテルの集客もいいデザインというだけではなく、次のステップはそこではいつも何かが起きていると思わせる場をつくり出すことが大事なのだと思う」。

これは同ホテルの設計を担当したUDS株式会社の寳田陵クリエイティブデザインディレクターのことばだ。

新宿歌舞伎町にあふれる外国人ツーリストにいかに街を楽しんでもらうか。そのためのネタはここにはいくらでもあると思う。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-30 15:46 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2015年 07月 20日

自家製地図でわかる外国人ツーリストが知りたいこと(新宿グランベルホテルの例)

以前、歌舞伎町のラブホテル街の中にある人知れず外国人ツーリストであふれるホテルのことを紹介しました。

2013年12月に開業した新宿グランベルホテルです。

このホテルのロビーには、いつも多くの外国客がたむろしています。特に午後のチェックイン・アウトの時間帯にはスーツケースが山のようにロビーに積まれています。

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある
http://inbound.exblog.jp/24676453/

なぜこんなに外国人ツーリストばかりになったかという理由はすでに書いてしまったので、今回はこのホテルに置かれた宿泊客向けの数種類の自家製地図について触れたいと思います。これらの地図はこのホテルのスタッフたちが宿泊客からよく聞かれる質問を元に作ったものだそうです。だから、この地図を見ていると、外国人ツーリストたちが知りたいことがよくわかるんです。

同ホテルの丸山英男支配人に許可をいただいたので、その一部紹介したいと思います。

「新宿駅までの周辺地図(SHINJUKU area map)」。これは新宿グランベルホテルの周辺にある3つの駅(JR新宿駅、副都心線・大江戸線東新宿駅、副都心・丸ノ内線・都営新宿線新宿3丁目駅)へのアクセスです。実は西武新宿線の新宿駅も近いのですが、マーキングされていません。想像するまでもありませんが、西武新宿線に乗るというニーズはほぼないのでしょう。しかし、最寄りの駅が3つもあるいうことは、外国人ツーリストからすると、とても便利なロケーションだと思うのではないでしょうか。
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地図には、ドラッグストアやドンキホーテ、ゴールデン街、両替所、郵便局、すし屋などがポイントされています。ツーリストの日常にとって必要なモノやコトがうかがえます。

面白いのはこの「周辺のラーメン屋(RAMEN LIST)」でしょうか。歌舞伎町内の7つのそれぞれタイプの異なるラーメン屋が地図に載っています。
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実は、ぼくも自分の仕事場のある東新宿界隈を歩いていると、周辺のホテルに泊まっていると思われる若い欧米のツーリストに「この近くにラーメン屋はない?」とよく聞かれます。ホントにいま日本のラーメンは外国人に人気のようです。何度か新宿3丁目のラーメン屋に連れていったことがありますが、この地図さえあれば、渡せばすむのですから便利というものです。

もうひとつが「24時間営業のお食事処(24HOUR OPEN RESTAURANT LIST)」。やよい軒や松屋などの和風ファストフード店が載っています。確かに、最近この手の店にも外国人が増えてきた気がします。他にも「周辺のお寿司屋さん(SUSHI RESTAURANT LIST)」があり、歌舞伎町内の回転すしなどを載せています。せっかく日本に来たのだから、一度はすしを食べたいでしょうからね。
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その他、新宿区役所のそばのCITI BANKへのアクセス地図や羽田・成田空港へのアクセス方法などが書かれたものもあります。始発から終電の時間、所要時間、料金など詳しく書かれています。便利ですね。

こちらは観光用です。東京スカリツリーと東京ディズニーへのアクセス方法です。わかりやすいです。
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観光用では、築地市場へのアクセス方法もあります。マグロの解体ショーは朝3時半までにタクシーで駆けつける必要があると書かれています。

こうした地図も、ホテルスタッフの皆さんにしてみれば、日々の業務を軽減するための必要に応じて作られたものだったのでしょうけれど、外国人ツーリストの生活圏がほのかに見えてきて面白いです。せっかく歌舞伎町の中のホテルに泊まっているのですから、近所の飲食店を利用してほしいものです。

歌舞伎町に来る外国人は、周辺をふらふら回遊しているだけで街にお金を落とさない、なんて声もあると聞きますが、ホテルがこれだけ増えれば、宿泊客がお金を落とす機会は増えるようになると思います。あとは彼らにとってわかりやすい情報提供のあり方ではないでしょうか。この際、すべてがネットである必要はない気がします。この手の自家製地図は、ツーリストの立場に立ってみると、好ましいものに感じる気がします。

2年前、ラオス北部の小さなトレッキングの町のゲストハウスに泊まったとき、手渡された地図がこれに近いシンプルなものでしたが、情報が絞られているぶん使いやすいと感じたことを思い出します。

ツーリストという生き物は、地図に載っているスポットをすべて制覇してみたいという欲望にかきたてられるところがあります。時間はもてあますほどたっぷりあるからです。でも、情報が多すぎると、最初からそんな野心を持とうとは思いません。豊富な情報の中からどれを選ぼうか、それもときには楽しいことですが、そこまでいらないと思うものなのです。日本に来て、やりたいこと、食べたいもの、いくつもあるとしても、たとえば、ラーメンは1回食べればいい。すしだってそう。たいていのツーリストは、いろいろチャレンジしてみたいのです。日本人向けのガイドマップとはニーズが違うのです。

日本にあふれる外国人向けフリーペーパーの情報満載ぶりを見るにつけ、そんなことが気になります。

外国人ツーリストにとってうれしい地図とは?
http://inbound.exblog.jp/21998151/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-20 15:07 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 15日

ラブホテル? いえ、レジャーホテルで、いま外客の取り込みひそかに進行中

ここ数年、訪日客の増加で東京や大阪などの大都市圏のホテルの需給がひっ迫しています。とりわけ大阪は客室不足が深刻なため、市は外客向けに市内のラブホテルの活用をまじめに検討したそうです。「交通の要所である京橋や天王寺などのラブホテル街を対象拡幅などの設備更新に補助金を出して業態転換を促せないか模索」(朝日新聞2014年8月4日 大阪版)したと報じられています。

ところが、関係者によると「進展はなかった」ようです。ラブホテルは個人経営者が多く、新規施設の投資や多言語化の対応などに難があるためです。

こうしたなか、いわゆるラブホテルではなく、清潔でくつろげる客室やカラオケ、ジャグジーバスなどのエンターテインメント設備を備えたレジャーホテル(ファッションホテル、ブティックホテルともいう)の中に、外国客の受入に取り組む施設が現れています。もともとこの種のホテルでは、カップル利用だけでなく、ファミリーやビジネスマン、さらには女子会といったシティホテル的な使われ方もしていました。

関西を中心に47軒のチェーンを展開する「ホテルファイン」(株式会社レジャー計画・大阪市)では、ここ数年順調に外客の取り込みに成功し、宿泊客数を倍々ゲームで伸ばしています。

ホテルファイン
http://www.hotels-fine.com/

今年1月、ぼくは同社を訪ね、以下のレポートの中で一部紹介しました。

訪日客増加で客室も足りない!?  多様化する宿泊ニーズに対応した新サービスや業態転換はどこまで進むか
http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_11.html

そして先月、同社を再訪し、関則之会長にあらためて話を聞くことができました。

ここでひとつの誤解を解いておく必要があります。同社が展開する「レジャーホテル」という業態は、一般にラブホテルが風俗営業法の管轄にあるのとは違い、一般のシティホテルと同じ旅館業法の管轄の施設です。ただし、立地はたいていラブホテル街などの歓楽地や郊外のロードサイドにあるため、世間は両者を同じジャンルの業態とみなしがちです。これはやむを得ないことだと思いますが、興味深いことに、外国客にはその種の誤解や先入観がないため、受入に際しても影響はまったくなかったといいます。

以下、会長とのやりとりです。

―ホテルファインの外国客取り込みのきっかけや経緯を教えてください。

「弊社はレジャーホテル以外にリゾートホテルの運営もやっている。2008年頃、すでにリゾートホテルではネットで海外のお客様がぽつぽつとお見えになっていた。この年、政府が観光庁を設立させ、これからは海外のお客様を取り込む機運が盛り上がると思った。

そこで、2011年ホテルファインでも自社HPを立ち上げ、一部の客室のネット予約を開始した。当時、この業界では予約を取るという発想はなかった。ウォークインで来るお客様を1日何回転かさせるというのがビジネスモデル。いったん予約を取ってしまうと、部屋を押さえておかなければならない。これは機会損失につながるのではないか、という危惧もあった。だから、全室ではなく、まずは1割程度からネット予約に対応してみようかということでスタートした。

多くの方に誤解されていると思うが、レジャーホテルはラブホテルのように風俗営業の届出をしている施設ではない。ところが、国内の旅行会社やオンライン旅行会社は我々との商談に乗ってくれない(一部取引は始まっている)。関西では「ホテルファイン」という名前が広く知られているのも問題なのだと思う。

その点、海外のホテル予約サイトは理解があった。自社サイトを立ち上げると、エクスペディアやBooking.comなどの営業担当者がすぐに訪ねてきて、登録した。その結果、外国客の予約が入ってくるようになったというわけだ」。

―外客の受入を始めるにあたってどんなご苦労がありましたか。

「最初は外国客のフロントや電話応対が難しかった。外国客は予約を入れた後、よく問い合わせてくる。もちろん、外国語でだ。たとえば、荷物を事前にホテルに送っていいか、ホテルへの行き方など。最初のうちはもたもたしていたが、2年前くらいからようやく対応できるようになった。

海外からどんどん予約が入るが、決済は旅行会社経由の場合もあれば、フロントの場合もある。当然、為替のことを知る必要が出てくる。支払いは事前決済とカードの現地決済があるが、決済トラブルはゼロに近い。海外のサイトでは予約時にクレジットカードを入力する必要があるからだと思うが、むしろ国内客のほうがノーショーがある。

これまでのように、毎日同じ価格で出せなくなった。シーズンや曜日によって価格調整しなければならない。こういった受入態勢づくりはスケールメリットがないとできるものではない。従業員教育やシステム構築には時間とコストがかかるからだ。幸いうちは本社機能があるので、専属でインバウンド担当、予約担当などを配置できた。

こうしたことから、一般のラブホテルやレジャーホテルで外客受入ができるのは一部に限られるだろう。この業界は大半が個人企業。受入には初期コストがかかるし、社員教育が大変。宿泊客が病気になって、病院の手配をしなければならないとき、フロントで外国語対応ができるか。外国客はフロントにいろいろ聞いてくる。近くにおいしいレストランはないか。松坂牛の食べられる店はどこか…。そういうコンシェルジュ機能も求められる」。

―大阪市からラブホテル業界で外国客の受入ができないか相談があったそうですね。

「うちにも大阪観光局の人が来た。そのとき、私はこう説明した。ラブホテルやレジャーホテル業界の経営は、1室月額いくらの売上で組み立ている。それには1日2回転させることも計算に入れている。これらのホテルは初期投資がビジネスホテルより圧倒的にかかる。部屋の広さやお風呂、エンターテインメントの設備などが充実しているからだ。ビジネスホテルの売上額ではとうてい成り立たない。いくら市が施設投資に補助金を出したところで赤字になる。

しかも、うちがいまやっているような運営ができるラブホテルがどれだけあるか。社員教育はどうするのか。

外客受入を始めるとなると、館内案内も多言語化のため全部新しく揃えなければならない。うちもあらゆる表示物を英語と中国語に多言語化した。「トイレは紙を流してください」といったこれまで必要のなかった表示も用意した。食事の問題もある。ベジタリアンやハラル対応だ。外国客は食に対するリクエストが多い。そこで、食事メニューも変更した。うちでは24時間ルームサービスをやっているし、宿泊客には朝食がつく。メニューの種類を増やすことになった。

24時間電話の通訳サービスも始めた。通訳と3者通話ができるシステムだ。フロントにはタブレットも用意した。

外客受入のためには、我々自身が変わらなければならない。経営者が率先して受入態勢をつくっていかないと。海外からお客様がどんどん来るから、なんでもいいから客を取るではいずれしっぺ返しが来る」。

―取り組みを始めて4年、成果は出ているようですね。

「4年前に比べスタッフの語学力が格段に上がっている。最初はクレームも多かったが、最近は店長に宿泊客からお礼の手紙が来るようになった。これまで礼状をもらうなんてことなかった。外国客のリピーターも増えている。

2012年から今年にかけてのネット経由の月ごとの売上、販売客室数をみると、倍々ゲームで伸びている。特に今年3月は単月で約7000室、1室単価も上がり、1万7000円を超えている。
 
ネット予約の8割が外国客だ。やはり桜と紅葉シーズンの売上が高い。特に京都の桜のシーズンは1室単価が4~5万円でも満室になる。というのも、いまの京都の桜シーズンはシティホテルでも1泊10万円がざらになる。それに比べればうちはリーズナブルだからだ。鈴鹿サーキットのときも、ほぼ外国客で埋まる。1週間連泊する客もいる。

これからは限られた部屋をどれだけ高く売れるかが課題だ。レベニューマネジメントの専門スタッフがいて、日々細かく価格調整している」。

―ホテルファインが外国客に人気の理由は何だと思いますか。

「Booking.comでは顧客評価8点以上(10点満点)の施設にアワードを与えているが、うちは多くの施設でいただいている。チェーン47軒のうち外客受入は現在25軒のみ。大阪や京都、滋賀、奈良などだが、少しずつ増やしている。
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考えてみれば、外国客の評価が高いのは当たり前かもしれない。彼らには日本人のような固定観念や先入観はない。スペックそのもので評価するわけだから。なにしろお風呂はジャグジー、室内の音響施設はスピーカー6台装備、100インチのプロジェクタースクリーンがあり、カラオケ、マッサージチェアなど、至れり尽くせりだ。ルームサービスの飲食代も安い。冷蔵庫のドリンクもコンビニ価格。外国客の飲食の利用は多い。

外国客の特徴は連泊が多いこと。たいてい3~4日だが、なかには30日連泊の人もいる。ビジネス出張で利用されているようだ」。

―最近の外国客に新しい傾向は見られますか。また新たなサービスは何かありますか。

「レンタカー利用が増えている。レジャーホテルの特性のひとつが郊外のロードサイド型店舗があること。関西国際空港に14社のレンタカー会社があり、そのうち13社は外国客対応を始めている。そのため、空港からレンタカーに乗ってチェックインされるアジア客が現れるようになった。

日本の交通マナーは世界一。運転しやすい。日本の新車を運転したいというニーズもあるようだ。とにかくレンタカーは安い。関西の場合、大阪を中心に京都や神戸、奈良など各方面に観光地があるが、車で移動すると便利だし、2、3人が乗って移動すると、交通費はかからない。ナビゲーションも多言語化しているので、問題ない。市内に比べ、郊外立地のレジャーホテルは客室料金も安い。駐車場も広くて無料。買い物好きのアジア客は荷物が増えるが、車だと困らない。あとはLCCで来れば、日本の旅行がとことん安くなる。

これからLCCで大阪に来て、レンタカー利用でホテルファインに泊まろうというセットの旅行商品をPRしたいと思う。

また今年に入って中国からのカップルツアーを受け入れている。いわゆるハネムーン旅行で、中国のオンライン旅行会社のC-trip経由で毎月250~300組も予約が入る。中国でも個人旅行が動き出しているのを感じる。

Hotel Fine Garden Juso Osaka (大阪十三精品花园情侣酒店)
http://hotels.ctrip.com/international/686502.html?CheckIn=2015-07-29&CheckOut=2015-07-30&Rooms=2&childNum=2&PromotionID=&NoShowSearchBox=T#ctm_ref=hi_0_0_0_0_lst_sr_1_df_ls_11_n_hi_0_0_0

今年から館内で免税販売も始めた。ホテルのアメニティ、シャンプーや化粧品、香水などの商品に限っているが、客室にカタログを置いている。今後は売り方を工夫する必要がある」。

―今後新規開業などの計画はありますか。

「京都と十三に計画中だ。ただし、ここ数年の土地価格の上昇、特に建築コストの高騰を考えると、採算が合うかどうか頭が痛いところがある。五輪スタジアムが話題になっているように、いまゼネコンはすごい強気になっている。きちんとした技術を持った職人さんの数に限りがあることも影響している。この高値水準は2~3年は続くといわれている。

こうしたことから、新たに土地を買ってゼネコンに頼むと、いまの日本のホテル価格では採算が合わない。世界の主要都市に比べると、東京や大阪はいまでもホテル価格が安いほうだ。ニューヨークやパリでは高級ホテルは10万円台が当たり前。5万円では二流ホテルという感じだ」。

―今後の展望についてお聞かせください。

「結局、ホテルの運営は人の問題だ。施設はつくればいいが、維持管理・運営は難しい。いまの日本には投資したい人間は多いが、運営できる人材が少ないことが問題といわれる。

現在、ホテルファインでは85~90%が国内客(カップルやビジネス利用)、10~15%がインバウンドという比率だが、現在は海外サイトだけと契約している。いまだに国内の旅行会社は色眼鏡で見ているからだが、我々の実績をみれば、いずれ変わっていくだろう。今後我々もさらに変わり続けていく必要があると思っている」。
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ホテルファイン十三店は、大阪市淀川区十三のラブホテル街の一画にあります。
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フロントに置かれたメッセージボードに書かれた外国客による手書きのコメントを見ていたとき、ひとりのブロンドの若い女性がチェックインしてきたのを目撃しました。思わず「あっ」と声を上げそうになりましたが、確かにここは外国人ツーリストがふつうに泊まっているのです。

またホテルのスタッフに客室を案内してもらっているときも、大きなザックを背負ったバックパッカー風の欧米青年が廊下を歩いているのを見ました。実は、十三店にはシングルルームもあり、1泊約5000円で泊まれるのです。しかも、館内には外国客専用のラウンジが用意されています。ここでは食事もできるそうです。
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そもそもこの業態のホテルにフロントがあること自体、ちょっと面白い話ですが、フロントの裏にはスーツケースがいくつも並べて置かれていました。外国人ツーリストたちはチェックアウトした後、昼間は観光に出かけるので、荷物を預かってもらうからです。
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客室は広く、関会長が語るように、大型スクリーンやカラオケ設備、ジャグジー付きの風呂など、至れり尽くせりの環境です。大阪で最高級とされるザ・リッツカールトンやインターコンチネンタルなどの客室と比べても広いうえ、各種スペックに関しては凌駕しているといえます。
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ぼくが20代の頃、北欧から来た友人とその仲間たちが日本のラブホテルは面白いと聞いて、地方に旅行したとき、よく利用していたことを思い出します。彼らはラブホテルという空間に用意されたさまざまな設備や遊び心満点のユニークかつおとぼけデザインを楽しんでいました。

ホテルファインに対する外国客たちのコメントを見せてもらいましたが、多くの人が「ラブホテル」だという認識を持っているようでした。中国のCtripでも、ホテル名は「大阪十三精品花园情侣酒店」。日本名にはない「情侣(カップル)」ということばが添えられています。

たとえば、こんなコメントがありました。

「そう、ここはラブホテルです! しかし、不潔なことは全くありません。宮殿のような客室にプロジェクターが付いています。カラオケと完璧なサウンド設備。テレビの隣にはジャグジーがあります。立地は最高。地下出口のすぐ隣にあります」(梅田店)

コメントの書き手は、それこそ多国籍の人たちで、英仏独語に中国語、ハングル、タイ語もありました。一般に日本のホテルの客室は狭いことで知られているせいか、部屋の広さや設備、アメニティなど好評価のコメントが目立ちました。なかには「立地を除くすべてが良かった」(豊中店)というコメントもありましたけれど。これはラブホテル街という立地をうんぬんしているのではなく、最寄り駅からのアクセスがわかりにくいという意味です。

訪日客の増加で客室不足に悩む大都市圏では、レジャーホテルという業態が外客受入に貢献することが期待されています、ただし、いまの時代、海外予約サイトに登録すれば、予約は入るでしょうが、実際の受入態勢をつくっていくのは、並大抵のことではないことが関会長の話から伝わってきます。

だとしても、この業界にはさまざまな可能性が秘められているのでは、とあらためて思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-15 13:43 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 14日

「ホテルは立地産業。五輪前のいまは攻めどころ」(元谷外志雄アパグループ会長)

先日、アパグループの元谷外志雄会長に話を聞くことができました。

アパグループの都心出店攻勢は驚異的。今年も続々開業予定
http://inbound.exblog.jp/24543248/

今年4月、アパホテルの宿泊客の4人に1人が外国人だったことの意味
http://inbound.exblog.jp/24687702/

お聞きしたかったのは、これほど集中的に東京に出店した理由やホテル経営に関する会長独自の考え方についてです。いまやアパグループの東京都内の客室数は1万室を越え、日本で最大規模のホテル企業となっています。

―都内では高稼働率が続いているようですね。しかも100%超というのはどういう意味でしょうか。

「社員たちが自発的に早くチェックアウトした部屋に客を入れるよう努めたので、一部の客室で1日2回転が起こり、100%超となった」。

―新宿に集中出店されていますね。

「新宿は知名度、ブランド力ともに世界的だ。昨年7月に開業した新宿御苑店は開業以降毎日100%の稼働率が続いている。東新宿ではすでに開業済みは3軒。今年9月に歌舞伎町タワーが開業予定で、さらに歌舞伎町2号店の土地も購入済みだ(2017年開業予定)。

うちの場合、アジア客と欧米客の割合は半々で、アジア系は主に台湾やシンガポール、香港など。新宿以外でも、渋谷道玄坂店や銀座では欧米客が多い。

基本的に、都心では団体客は入れていない。単価の高い個人客のみ。30~40人の団体客は潮見駅前や幕張などの大型ホテルに限っている。こちらは少し単価が安い。幕張は最近は1000室から1500室に増やしたが、さらに500室を増やすことが決定している」。

―いつ頃からこの勢いでしょうか?

「震災後、だんだん良くなっていたが、2013年以降の円安が大きい。1ドル=70円台から120円台になって、海外からみると3分の2にディスカウントされたも同然。海外需要がどっと増えた。

なかでも東京は単価が高く、いつも予約いっぱいだ。最近では大阪も単価が上がり、予約が取れなくなっている。西日本も金沢が新幹線効果で稼働率が上がってきた。東京一点集中から地方中核都市へと勢いは広がっている。

国内レジャー市場も好調で、ビジネス需要も堅調。国内レジャー、ビジネス、海外の3つともいいので、100%近い稼動率が続いている。今年のGWは全グループの1日の売り上げが初めて5億円を超えた。これまでになかった勢いだ。

一般に月・火曜は海外客、水~木はビジネス客、金・土曜は国内レジャー客が集中する。だから、うちの場合、客室単価は日曜がいちばん安く、土曜が高い。土曜は国内・海外が重なるからだ。

「だいこんは朝昼晩と鮮度が変わるので値段が違う」というが、「ホテルも今日の客室は明日売れない」。需要があるときはそれなりの値段だが、少ないときには安く売る。同じ部屋が2万5000円のときもあれば、7000円になるときもある。高収益のためには、各ホテルの支配人が需要予測をしながら、値段を上げたり下げたり調整している。いまではホテルの値付けが収益向上のために重要な鍵となっている」。

―外国客の集客はどうしておられますか。

「うちの場合、客室を埋めるために外国客を必要としているわけではないが、最近はネットで予約が入るものだから、外国客が増えている。これだけ東京に集中的にホテルつくったため、アパの知名度が海外でも上がったのではないかと思う。

「Always Plesant Amenity」の頭文字からとった「APA」というネーミングは外国人にもわかりやすいと思う。何より地下鉄駅徒歩2~3分に立地していることが大きい。ホテルは立地産業だ。いい立地を選び、リーズナブルな価格で提供すればうまくいく」。

―海外客から見てアパホテルの魅力は何でしょうか。

「ひとことで言えば、効率性。シティホテルに比べると、炭酸ガスの排出が3分の1。なぜそれが可能かというと、たとえばお風呂は節水型の卵型浴槽で20%の節水効果がある。サーモスタッドによる定量止水栓は一定量お湯がたまると止まるしくみだ。断熱カーテンで冷暖房の効率を高め、全館LEDで電気代を減らす。これは経費削減につながっている。

「高品質」「高機能」「環境対応型」がうちのテーマだ。部屋は小さいが、ベッドやテレビ(40~50インチ) は大きい。全部手元のスイッチで操作できる」。

―とても日本的だと思うでしょうね。

「かつてはキャデラック、ジャンボジェットの時代だったが、いまはプリウスや787、リーズナブルジェットの時代だ。コンパクトでリーズナブルなことに価値がある。しかも炭酸ガス排出を減らし、経費も削減できる。高収益ホテルの実現というわけだ。

実際、シティホテルは無駄が多い。宴会場に高級飲食施設。でも、レストランは街にある。ホテルは究極の宿泊産業。泊まる人にとっていいホテルとは何か。今度できる旗艦店の歌舞伎町タワーでは最上階に露天風呂をつくる。宴会場より大浴場のほうがいい。私は自分がプラグマチストだから、なるべく無駄を省き、コンパクトな機能性を追求したい。それが「新都市型ホテル」だ。他のホテル経営者とは考え方が違うと思う」。

―今年4月は外国客比率が23%だそうですね。4人に1人は外国客。これは驚きですね。

「例年桜の季節は多いが、単月では過去最大だろう。先日、政府の訪日外国人数の目標が2020年までに2000万人だったものから2500万人に上げられた。でも、円安が変わらなければ私は軽く行くと思う。日本は安全で、食べるものがおいしくて 四季を感じられて、いろんな楽しみが味わえる国。 中国やインド、インドネシアなど世界の人口大国に最も近い先進国でもある。

この先、日本は観光大国化する。外需に依拠した経済から内需に依拠して、国民が生活を楽しめる国になれる。人口減少で未来は暗いという人もいるが、現に私の商売はうまくいっている。日本の未来は明るいと考えている」。

―都心をはじめとした出店攻勢は東京五輪決定以前にスタートしたものですね。

「そうだ。2010年4月1日からの中期経営計画「SUMMIT5-Ⅰ」で、東京の客室数でトップを取ることを目指し、今年それを実現した。別に東京五輪決定とは関係ない。

都心の出店は、リーマンショック後、多くの金融機関がマンション用地の売却を始め、地上げが途中半ばで断念となったとき、その期を逃さず、キャッシュで都心の土地を購入できたことが元になっている。矮小地や変形地はマンションには使いにくいが、ホテルならいけると判断した。

1984年に第1号店を金沢に開業して現在326軒。客室数は約5万2000室。これには会員システムを作ったことが大きいと考えている。現在、会員数は900万人超(2015年5月現在)。いまでも毎月10万人以上増えている」。

―底値の時期にホテル用地を大量購入できたことが出店につながっているのですね。今後の展望をどうお考えでしょうか。

「五輪前のいまは攻めどきだと考えている。今年度は大型案件に挑む。大型物件は完成まで4年かかる。いまやらないとオリンピックに間に合わない。いまやって2019年にオープン。そういう意味では、来年は中型案件(20階建てまで)、再来年は小型案件(15階建てまで)を計画中だ。

では、その翌年はというと、ちょっと休んで様子をうかがうつもり」。

―五輪後の反落期を懸念する声も多いですね。

「もしオーバーホテル現象が起こったとしたら……、その場合はダメになるホテルがあれば買わしてもらえばいい。市況が悪くなれば、買収のチャンスが増えると考えている。あとは海外でFC展開を考える。まずは台湾や香港、シンガポールなどの近隣諸国でパートナーを探す」。

―話を聞いていると、会長の考える方向について時代が動いているという感じですね。

「私の座右の銘は「的確な未来予測ができれば事業は成功する」というものだ。 

5年間で一気にホテルをつくったおかげで、東京で客室数ナンバーワンのホテルになった。高すぎて以前ならホテルが建てられなかった場所をリーマンショック後に一気に買って、ホテルを建てた。短期集中拡大が話題を呼び、海外でも知られるようになった。

振り返れば、バブル前夜、撤退戦がうまくいった。1990年代まで日本には土地神話があった。当時、日本は土地が狭く希少性があるから必ず上がるとみんな信じていた。だが、私はブラックマンデーを見て、すぐに手を引いた。そして、読みどおりバブルははじけた。攻めるときは攻めるが、引くときは引く。すべては未来予測にかかっている。

いまは東京中どこのホテルでも稼働率は好調でしょう。しかし、うちは東京に集中してつくったぶん、勢いがある。今後は地方の中核都市への展開も加速していく。会員が900万人超もいたら、部屋がないでは申し訳ない。五輪後の反落のときは近隣国でFCを始める。私はそれを見込んでいる。決して無理してやっているわけではない」。

終始上機嫌で語る元谷会長の話を聞きながら、反落期や五輪後を見越してどちらかといえば抑制的と伝えられる国内のホテル投資の趨勢とその対照的な姿勢の違いを興味深く思いました。今後もアパグループの快進撃は続くのか…。

これもまた訪日客の増加がもたらすホテルシーンの変化のひとコマであることに違いありません。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-14 17:33 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 14日

今年4月、アパホテルの宿泊客の4人に1人が外国人だったことの意味

訪日客の増加で国内に新しいホテルシーンが生まれていますが、外国人旅行者のボリュームゾーンが利用しているのは、やはりビジネスホテルや宿泊特化型ホテルといえます。格上のシティホテルやゲストハウスなどのエコノミー系に比べると、圧倒的に物件数および客室数が多く、海外客からみればビジネスホテルの料金が日本のホテル価格の相場観とみなされています。

宿泊特化型チェーンはどこもそれなりに好調のようですが、なかでも都心への出店攻勢で目立っているのがアパホテルです。
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アパグループの都心出店攻勢は驚異的。今年も続々開業予定
http://inbound.exblog.jp/24543248/

先日、アパグループに取材する機会があり、以下の質問を用意しました。

1)東京五輪開催や訪日外客の増加などで大都市のホテル需給が逼迫しているといわるなか、相次ぐ新宿地区への出店の狙いなど
2)外国客の集客について独自の取り組みをしておられるか。特別なサービスはあるのか。どのような層をターゲットとして考えているのか。
3)実際の宿泊客の主な国籍、その利用状況、大都市圏と地方での違いなど
4)外国客はどのようにして貴ホテルを知り、予約してくるのか。PRはどうしているのか。
5)今後の展望、取り組みについての考え方

以下、同社広報からの回答です。

1)東京五輪開催や訪日外客の増加などで大都市のホテル需給が逼迫しているといわるなか、相次ぐ新宿地区への出店の狙いなど

「現在、新宿地区にはアパホテル<新宿御苑前>(411室)、アパホテル<東新宿歌舞伎町>(165室)、アパホテル<東新宿駅前>(122室)と3ホテルが営業しており、月間稼働率は100%を超えています。

新宿地区は世界的な知名度も高く、アジア圏のみならず欧米系からも訪日が期待できます。2015年9月に開業予定のアパホテル<新宿 歌舞伎町タワー>(620室)は、日本最大の繁華街「歌舞伎町」の中心部かつ旧コマ劇場の目の前に位置していることから、地名ブランド・立地双方に申し分なく、アパホテルのブランドアップに寄与するものと考えています。

またアパホテル&リゾート<東京ベイ幕張>は2013年8月に月間稼働率が100.5%を記録し、その後も月間平均稼働率95%超を継続してきたことから、14年4月10日に増築の第一弾として、客室数500室(全室ツイン)、大浴場・露天風呂を併設した「WEST WING」を開業しました。全1501室となった後も、年間稼働率93.4%を記録したことで、増築の第二弾として「EAST WING」の建設を決め、16年10月には2001室となる予定です」。

2)外国客の集客について独自の取り組みをしておられるか。特別なサービスはあるのか。どのような層をターゲットとして考えているのか。

「訪日外国人へのCS向上のため、全客室およびロビーに通信速度やセキュリティ面で優れたWi-Fi無線接続を全店で導入。快眠を追求したアパホテルオリジナルベッド「Cloud Fit」(シングルでも120~140cmのワイドベッド)を設置。2015年9月開業予定のアパホテル<新宿 歌舞伎町タワー>においては、最上階28階に露天風呂付き大浴場の設置を計画しています。

アパホテルが提唱する「新都市型ホテル」では、シティホテルでもビジネスホテルでもない全く新しいカテゴリーとして「高品質」「高機能」「環境対応型」をキーワードとしています。

訪日外国人のメインターゲットは、ネットを中心とした海外宿泊予約サイトからのFIT(訪日個人客)としています」。

3)実際の宿泊客の主な国籍、その利用状況、大都市圏と地方での違いなど

「訪日需要が高まった今年4月において、全宿泊者数の約23%が訪日外国人となりました。大都市圏では欧米のFIT客も多く、中国や韓国、台湾といった近隣アジア圏からの訪日客は全体の50%に留まっています。地方でも訪日客は好調で、前年同月比220%の実績となっています」。

4)外国客はどのようにして貴ホテルを知り、予約してくるのか。PRはどうしているのか。

「海外宿泊予約サイト大手のexpedia、Agoda、Booking.comに登録し、販路を広げています。多くの訪日客にこれらの海外サイト経由で予約をいただいています」。

5)今後の展望、取り組みについての考え方

「本年4月1日より新たな中期経営計画「SUMMIT5-Ⅱ」がスタートし、2020年3月末までにFC・提携ホテルを含め、ホテル客室数10万室を目指していきます。このうち直営ホテルはこれまでどおり東京都心部での出店に注力していきますが、訪日外国人の増加やホテル需要の全国的な広がりをふまえ、地方中核都市でのホテルの新規開発も積極的に検討していきます。さらに、日本で培ったホテルの開発・運営ノウハウを活かし、海外ホテルとの提携やFC方式によるアパホテルの海外展開も視野に入れていきます」。

以上がAPAグループ広報による公式コメントですが、ちょっとびっくりしたのは、今年4月の桜シーズン、アパホテルの全宿泊客のうち4人に1人が外国人だったことです。観光庁の宿泊旅行統計(2014)によると「全国の宿泊者(延べ)に占める外国人は前年比33.8%増の4482万人で、9.5%」、すなはち10人に1人が外国人というのが全国平均です。それに比べ、単月とはいえAPAホテルの外国客比率がこんなに高いとは思いませんでした。それを可能としているのは、海外ホテル予約サイト経由のFIT予約が増えていることで、これもいまや日本のホテル業界では常識といえるのでしょう。

さらには、2015年4月にスタートした中期経営計画「SUMMIT5-Ⅱ」でホテル客室数10万室を目指すといいます。5年前の計画では5万室が目標だったことを考えると、同ホテルがいかに上り調子であるかがわかります。

この回答をふまえ、以下の追加質問をしました。かなり細かいことまで聞いていますが、回答をいただいています。

A)今年4月、貴グループのホテル全体の宿泊客の23%が外国客ということで、海外FITの取り込みに成功しておられることがわかりました。しかも、アジア系と欧米客の比率も半々ということは(訪日全体の80%はアジア客)、欧米客の取り込みも成功していると思われます。貴ホテルに欧米客が多い理由は何でしょうか。

「販路拡大のため、海外大手宿泊予約サイト(Expedia、Agoda、Booking.com)に登録し、販売に注力していますが、特に北米からの集客に強いExpediaからの集客にも成功していることが要因です」。

B)上記に関連して、都心は海外のFIT、地方は逆にアジアの団体客も受けているという理解でよろしいでしょうか。その理由は客室単価の違いでしょうか。

「アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉(全1501室)、アパホテル&リゾート〈札幌〉(全903室)といった一部の地方大型ホテルについては、団体宿泊料金を設け、宿泊料金が合致するツアー団体の受け入れを行っております。

アパホテルでは、ネット予約依存率が、平成26年度は全店の平均が72%を超え、東京に限らず、都市部においても、多くのホテルで90%超を記録しています。需要に応じて、柔軟に料金の変更を行い、需要予測に基づいた適正な単価販売が行えるため、戦略的にネットでの販売に注力しています」。

C)海外FIT取り込みのため、Expedia、Agoda、Booking.comなど海外のホテル予約サイトに登録されているそうですが、それぞれサイトによって客層の違いや特徴があるものでしょうか。特定の都市や地方によってどのサイトの利用度が高いなど、違いを使い分けることはありますか。

「・Expedia :北米からの集客に強い。
・Agoda :東南アジアからの集客に強い。
・Booking.com :特に依存した地域がなく、全世界から集客できる。

海外宿泊予約サイト別に集客力の高いエリアは異なっていますが、適正な単価販売において、販路を広く持つことが重要であり、上記3つの海外宿泊予約サイトにおいてサイトごとの区別をすることなく、同一条件で販売しています」。

D)外客向けのサービスとしてWi-Fiの導入はいつごろから始められましたか。これは大都市圏のホテルだけですか。

「他社に先駆け、2012年10月より順次、全店導入を開始しました。地方のホテルも含め、全ホテルの全客室及びロビーで通信速度とセキュリティ面で優れたWi-Fiを無料でご利用いただけます」。

E)環境を意識した水回り(卵型浴槽、サーモスタット付定量止水栓)のコンパクトでかつ機能性の高い施設の外国客の反応はいかがでしょうか。
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「卵型浴槽・サーモスタット付定量止水栓に限らず、高品質・高機能・環境対応型を理念とする新都市型ホテルの客室設備について、トリップアドバイザーなどでも、好意的なクチコミもいただいており、多くの訪日外国人の方に好評を頂いております」。

いまアパホテルで起きていることは、国内のホテルで今後起こるであろうことを先取りしているといえるのではないでしょうか。次回は、アパグループの元谷外志雄会長の話を聞いてみたいと思います。

「ホテルは立地産業。五輪前のいまは攻めどころ」(元谷外志雄アパグループ会長)
http://inbound.exblog.jp/24688926/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-14 09:10 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 12日

噂のデザインホテル「ホテルアンテルーム京都」に泊まってみた

6月下旬に関西方面に取材に行く機会があり、UDS株式会社の設計・運営するデザインホテルを訪ねてみることにしました。

UDS株式会社
http://www.uds-net.co.jp

同社のホテルは京都に2つあります。ホテル アンテルーム 京都とホテル カンラ京都です。

ちなみに、googleで「デザインホテル」を検索したところ、以下のまとめ記事が見つかりました。ちょっと古い記事でしたが、「1度は行ってみたくなるおしゃれなデザインホテル」のまとめだそうです。

泊まってみたい!スタイリッシュな国内デザイナーズホテルまとめ(2012.9.23)
http://matome.naver.jp/odai/2134863432421489801

ホテル カンラ京都 http://www.hotelkanra.jp/
Hotel SCREEN KYOTO(京都) http://www.screen-hotel.jp/
京都 デザインホテル Mume http://www.hotelmume.jp/
ホテル アンテルーム 京都http://hotel-anteroom.com/
ホテルアラマンダ(奈良) http://www.allamanda.jp/
HOTEL T'POINT (大阪) http://www.tpoint.co.jp/
HOSTEL 64 Osaka http://www.hostel64.com/
CLASKA(東京) http://www.claska.com/
渋谷グランベルホテル(東京) http://www.granbellhotel.jp/
ヴィラ サントリーニ(高知) http://www.villa-santorini.com/
ホテルアークリッシュ豊橋(愛知) http://www.arcriche.jp/
WITH THE STYLE FUKUOKA(福岡) http://www.withthestyle.com/
HOTEL GREGES(オテルグレージュ) ‐ 福岡・神の湊(かみのみなと)http://www.greges.jp/
ベイサイドマリーナホテル横浜(神奈川) http://www.baysidemarinahotel.jp/
軽井沢 ホテルブレストンコート(長野) http://www.blestoncourt.com/

今回ぼくが京都で訪ねたホテルは、2つとも上位ランキングしていました。またCLASKA(東京) や渋谷グランベルホテル(東京) もUDSの設計・運営するホテルです。それにしても、人気のデザインホテルは関西に多いのですね。

京都には1泊しかできなかったので、ホテル アンテルーム 京都のほうに泊まることにしました。両者はそれぞれコンセプトが異なり、アンテルームがビジネスホテルの価格帯であるのに対し、ホテル カンラは少しお高く、出張用というより、お忍びのカップル向きだったからです。

京都駅から地下鉄烏丸線に乗ってひとつ目の九条駅で降り、あまり京都らしくない(というのも、ここは京都駅の南側だからです)地方都市の通りをとことこ南に向かって歩くと、賃貸マンションのような外観の物件が見つかりました。確かに「ANTEROOM」とあります。

玄関を開けると、目の前にいきなり奇態な動物のオブジェが現れました。
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周囲を見渡すと、そこは現代美術のアートギャラリーのようでした。
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フロントには誰もいなかったので、荷物を置いてギャラリーを見て回ることにしました。
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フロントの脇にはアートギャラリーのように画集やノベルティグッズのようなノートやバッグまで置かれていました。
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ここはいったい……。

これがフロントです。脇にスーツケースがいくつか置いてあり、これは新宿グランベルホテルのようです。チェックアウトした客が荷物を置いて、観光に出かけているのでしょう。このある意味、ゆるい感じはぼくがこれまで見てきた外国人ツーリストの多いホテルと共通しています。
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チェックインしようとベルを押すと、若い女性スタッフが現れました。話を聞いた印象では、彼女はホテルのスタッフでありながら、ロビーに広がるギャラリーの運営も行っているようです。

「アート&カルチャーをキーワードに。HOTEL ANTEROOM KYOTOが発行する新感覚のホテル情報誌ANTEROOM JOURNAL issue 4」という小冊子が置かれていて、そこにはこのホテルの成り立ちやギャラリーとしてのもうひとつの顔が紹介されていました。ここでは1年を通じてさまざまなアーティストによる個展が開かれているようです。

ホテルのパンフレットにはこう書かれてあります。

「京都の今を表現するアート&カルチャーが集まる場所
変化を楽しむ新しいスタイルのホテル

ホテルアンテルーム京都は常に変化する京都の“街”“暮し”“アート”そして“カルチャー”を感じていただける新しいスタイルのホテルです。

リノベーションを活かしたラフな空間に感性を刺激する遊び心をプラスし、友人が集う場に遊びに来たかのような心地良いカジュアルな雰囲気の中でお過ごしいただけます」

ホテル アンテルーム 京都
http://hotel-anteroom.com/

フロントの奥には、バーと朝食オンリーのレストランがあります。バーは夜8時からしか開きません。レストランは朝だけです。
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チェックインをすませ、客室に行くには、エレベーターまで細い廊下を歩いて行かなければなりません。その廊下がこれです。
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エレベーターを降りると、客室のある廊下はこんな感じです。温かい照明が当てられていますが、とても無機質な空間といえます。
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アイロンや加湿器のレンタルも可能です。
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客室はとても洗練されていました。品のいい部屋着も用意されていて、調度品も個性的です。
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いったん荷物を部屋に置いて外出しようとしたら、玄関にレンタルサイクルが置かれていました。ここらは外国人ツーリストのニーズを考えてのことのように思いました。
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実は、このホテルの建物は学生寮をリノベーションしたものです。客室のある廊下のそっけない感じはかつて寮だったことを想像させます。もとがシンプルな学生寮だけに大胆にリノベーションしやすかったのかもしれません。

このホテルは、日本の宿泊特化型ホテルやビジネスホテルが全力を挙げて追求してきた機能性、そしていわゆる「おもてなし」という2大看板とは明らかに異なる価値を標榜していることがわかります。

それは前述のパンフレットにあるような“遊び心”なのでしょう。もちろん、彼らも機能性やおもてなしを無視しているわけではないでしょうが、それはほどほどでいい。むしろ宿泊客を喜ばせるのは、もっと違う価値にあるということを実践しているのだと思いました。

おそらく冒頭で紹介した「スタイリッシュなデザイナーズホテル」は、どれも似たような狙いでつくられたものが多いのではないでしょうか。

このような発想で生まれたデザインホテルは、古くはバブルの頃から日本にあったと思うのですが(当時は文字通り過剰で、今の感覚でいえばカッコ悪いものも多かったとは思う)、今日訪日外客が増えることで、彼らに支持されることから、曲がりなりにも運営が可能になっているのは、とても興味深いことです。

実際、ホテルのスタッフによると「外客比率は約4割で、台湾、香港、韓国が多い。予約はほぼ海外ホテル予約サイト経由」だそうです。

それはなぜなのか。ツーリストというのは、普通じゃ面白くない人たちだからです。海の向こうにいる彼らは、エクスペディアを通じて日本各地のホテルを探しているわけですが、リーズナブルで快適で機能性の高い日本の宿泊特化型ホテルばかりを選ぶわけではないのです。客室の写真を見て、なんだこれは? せっかく日本に行くなら、ふだんは泊まることのないホテルに泊まってみたい。日本の最先端のスポットを体験していみたい。そう考える人たちの割合は少なくはないのです。

さらに興味深いのは、ホテルアンテルーム京都もそうですが、この手のデザインホテルを設計する人たちが、あえて価格帯をビジネスホテルに近いものにしていることで集客に成功していることでしょう。外国人がホテル選びする際、まずエリアと価格帯で絞り込みをします。それは我々日本人が海外のホテルを選ぶのと同じこと。ここで日本のホテル価格の相場観を無視した法外な料金を出してしまえば、どんなに斬新なデザインホテルでも選ばれることはないことを彼らは知っているのです。

さて、それからぼくは地下鉄烏丸線に乗って五条駅で降りました。そこはホテルカンラ京都の最寄り駅です。

このホテルのロケーションは少しわかりにくかったです。というのは、烏丸通に面したこのホテルの外観は隣にある代々木ゼミナール京都校と同じだったからです。これは一部メディアで報道され話題になりましたが、同ホテルは予備校校舎の一部を買い取り、リノベーションしたものです。少子化で予備校生が減るなか、その一部をヒップなホテルにつくり変えたというわけです。

代ゼミは不動産業で生き残る 遊休地でホテル、商業施設、貸会議室(2014/8/25)
http://www.j-cast.com/2014/08/25214004.html

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烏丸通から六条の狭い筋に入ると、そこに玄関があります。正直いって、このホテルを知らない人にはわかりにくい玄関です。でも、それで構わないのでしょう。ここは知る人ぞ知る全29室の隠れ家ホテルだからです。

これがフロントです。
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ロビーにはレストランがあります。「京都の伝統的な住宅形式である京町家の考え方を取り入れ、モダンなデザインで表現した“マチヤスタイル”」のホテルだといいますが、大胆な幾何学的なモチーフを多用した館内のデザインは、初めて訪れる者にはかなり刺激的でした。色の使い方が官能的といっていいかもしれません。京都の古い街並みを見てきた目には、異次元空間のようにも思えたからです。
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ホテルのスタッフにいくつか客室を見せていただいたのですが、畳にふとん敷きが基本で、価格帯は3万円から。確かに、これはビジネス仕様ではありません。外客比率は相当高いそうです。桜の季節はほぼ外国客だとか。驚きと遊び心を求めてやまない外国人なら泊まってみたいと思うことでしょう。詳しくは、同ホテルのサイトを見てください。

ホテル カンラ京都
http://www.hotelkanra.jp/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-12 19:15 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 12日

遊び心がなければ、海外客を惹きつけることはできない(UDSの考えるデザインホテル)

歌舞伎町にある新宿グランベルホテルの驚くほど自由な客室デザインは、日本を訪れる外国客にひそかに人気のようでした。

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある
http://inbound.exblog.jp/24676453/

いったいこのホテルはどんな発想に基づいて設計されたのか。外国客の予約が殺到する理由は何なのか。

設計を担当したUDS株式会社の寳田陵クリエイティブデザインディレクターに話を聞くことができました。

UDS株式会社
http://www.uds-net.co.jp

―新宿グランベルホテルはどのようにして生まれたのでしょうか。

「新宿グランベルホテルのコンセプトをお話するには、先にできた渋谷と赤坂のグランベルホテルの話から始めたほうがいいと思います。グランベルホテルの運営会社である(株)フレンドステージから弊社にホテル事業を始めるので、設計を担当してほしいという話があったのは、2002年に遡ります。このとき、同社は都内にいくつかの自社所有の土地があり、その場所ならではのホテルをつくりたいという考えがありました。

しかも、一般のシティホテルではなく、価格帯もビジネスホテルに合わせた宿泊特化型でいきたい。ただし、他のホテルグループと同じスタイルでは勝ち目がないので、たとえば、最初に開業した渋谷グランベルホテル(2006年7月)の場合は、渋谷らしさを強く打ち出すことを考えました。

具体的にいうと、渋谷を日常的な活動の場にしているような若い世代(20~30代)を惹きつけるという意味で、館内や客室全体を「ポップ、アート、ミニマル」というコンセプトで統一するというものです。このホテルは客室数105室のホテルですが、最上階にペントハウススイートを用意しています。我々はまずこのスイートの世界観を作り上げることに注力し、そこでできたイメージをスタンダードルームにも広げていったのです。

しかし、先ほど述べたように、価格帯は他の宿泊特化型ホテルと変わらないものにするということでしたから、14㎡のシングルルームで、東横インと価格は変わらないのに、客室はまったく違う世界がある、というものにしたかったのです。

一方、同じ06年12月に開業した赤坂グランベルホテルは、30~40代以上の大人の社交が楽しめる上質感を打ち出すことにしました。コンセプトは「上質感、色艶、遊び心」です。そのぶん価格帯は渋谷と同じというわけにはいきませんが、やはり上階にこのホテルのイメージを具現化するスイートを設けました。

実は、客室稼働率でいうと、渋谷より赤坂のほうが高く、現在では平均95%以上で、外国客比率も6割を超えています。渋谷も赤坂ほどではないですが、外国客の比率がだんだん高くなってきています」。

―なぜそんなに外国客が多いのでしょうか。

「渋谷や赤坂が開業した頃は、まだトリップアドバイザーが存在していない時代でした。ですから、当初は国内客しかおらず、外国客は近くにあるセルリアンタワーのほうに泊まっていたようです。ところが、あるとき私たちの知らないところで、海外の雑誌に渋谷グランベルホテルのことが紹介されていたのを見つけました。おそらく海外または日本在住の外国人記者がここを見つけて、東京にあるヒップなホテルということで紹介したのでしょう。

その後、SNSの時代がきて、あっという間に海外のデザインホテルに関心のある層に広まったのだと思います。エクスペディアなどの海外ホテル予約サイトが続々と参入してきたのも同じ頃で、ビジネスホテルの価格帯でありながらデザインが面白いということから、予約が入るようになったのです」。

―外国客を惹きつけるデザインホテルとはどういうものなのでしょうか。

「やはり遊び心の要素があることではないでしょうか。一般に日本の宿泊特化型ホテルは設備や機能性は優れていますが、その点は欠けています。最初から追求していない。一方我々の考えるデザインホテルは、機能性よりデザイン性を優先します。

実は、私はこの数年間海外の人気のあるデザインホテルを訪ね、客室を中心にその特徴をスケッチしてきました。それらのホテルは客室の形が三角形だったり、内装のデザインが懲りすぎていたり、使い勝手は必ずしもいいとは限らない。しかし、そうしたルーズさは、日本のビジネスホテルのきちっとした機能性よりも好ましいと評価されるのです。彼らが求めるのは、驚きです。客室の扉を開けた瞬間、Wao!と声を上げたくなるようなデザイン性に惹きつけられるのです。

もっとも、我々は日本人ですから、どこか機能性も追求したくなるところがあるのも確かです。ヒップな外国客が好む客室だけでは、日本人が泊まってくれない。それでは困ります。そこは我々日本人デザイナーのバランス感覚と腕の見せどころともいうべきで、意想外なデザイン性を追求しながら、機能性もきちんと織り込んでいく。そういうものをつくってきたいと考えているんです」。

―新宿グランベルホテルが目指したのは、そういうことであると。

「といいますか、新宿歌舞伎町という立地から考えて、一般の日本人はなかなか足を運んでもらえないのではということも思いました。しかも、新宿は380室。そこそこのボリュームがあり、渋谷や赤坂のようなやり方だけでは難しいと考えました。

その一方で、グランベルホテルの共通するコンセプトに“fun to stay”があります。ステイする楽しみを感じさせる施設でなければならない。そこで初心に戻って、歌舞伎町の街らしさをテーマにすることにしました。ひとことでいうと、歌舞伎町という世界に知られた歓楽街のカオスの具現化。それにふさわしいのはアジアのカルチャーだろうと考えたのです。だったら、アジア出身のネクストアーティストを集めてホテルをつくろう、ということになったんです」。

―もともと外国客向けのホテルをつくろうと考えていたわけではなさそうですね。

「というよりも、歌舞伎町には日本人も含めて、いろんな国籍の人たちが歩いています。そういう彼らにこそ泊まってもらおう。ホテルは街と共存しています。歌舞伎町らしさを具現化したホテルをつくれば、多くの人に泊まってえるはずだと考えていたのです。

結局、日本人を含め、韓国、香港、台湾、カンボジアなど、芋づる式に24名のアーティストが集まりました。アーティストたちには、それぞれ自分の国のイメージを表現してもらうことにしました。歌舞伎町だから、それでいいんです。

もっとも、アジアといってもさまざまなイメージがあり、混沌としています。特に作りこんだのは、4タイプのエグゼクティブルーム、4つのスイートルームです」。

―具体的には、どのような設計手法になるわけですか。

「それぞれのアーティストに、ある特定のテーマを伝えて、自分のイメージするグラフィックやオブジェなどの作品を提案してもらいます。その作品を客室に取り込み、我々がそのイメージを具現化していくべく設計していきます」。

―どこまでそれが伝えられたと思いますか。

「まだよくわかりません。欧米の人たちとアジアの人たちでは感じ方が少し違うかもしれません。面白かったのは、ロフトの部屋を用意したところ、アジアの子連れファミリー客に人気のようです。彼らもこうした遊び心を気に入ってくれているようです。

いまはSNSで広がる時代です。ですから、いかに人にホテルに来てもらうか。これからはいいデザインというだけではなく、そのホテルではいつも何かが起きている、ということが大事なのだと思います。

新宿の街並みが見渡せるルーフトップバーも、最近ではちょっとしたイベントを始めています。これからはイベントをどうつくるかを考えていかなければと思います」。

UDS株式会社は、そのことばを実践するべく、京都に2つのデザインホテル(ホテルアンテルーム京都、ホテルカンラ京都)を設計し、運営も行っています。先日、その2つのホテルを訪ねたので、今度紹介したいと思います。どちらも遊び心あふれる楽しいホテルでした。特にホテルアンテルーム京都はホテルにおけるイベントの可能性を追求しているようでした。それはまたの機会に。
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噂のデザインホテル「ホテルアンテルーム京都」に泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24682467/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-12 15:01 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 10日

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある

今年4月、新宿コマ劇場跡にできた“ゴジラホテル”こと、ホテルグレイスリー新宿。その開業当初、多くのメディアが外国客のあふれる歌舞伎町の変貌ぶりを報じていました。

でも、歌舞伎町にはまだ他にも人知れず外国客が殺到しているスポットがあります。

それは、2013年12月に開業した新宿グランベルホテルです。不動産事業を手がける(株)フレンドステージ(埼玉県上尾市)が運営しているホテルで、場所は歌舞伎町のラブホテル街の中にあります。そんなディープな環境のなか、ひときわ目につく17階建て、客室総数380室といいますから、東新宿周辺ではホテルグレイスリーやプリンスホテルなどに次いで大きなシティホテルといえます。
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新宿グランベルホテル
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku

実は、同ホテルは2014年にエクスペディア経由で予約した外国人旅行者数のランキングで、ホテルサンルートプラザ新宿(渋谷区)に次いで全国2位となっています。サンルートプラザ新宿といえば、昔から外国客を多く受け入れてきたホテルとして知られていますが、開業2年のホテルが堂々ランキング2位になるとはちょっと驚きです。新宿グランベルホテルは、なぜこんなに外国客に人気なのでしょうか?

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)
http://inbound.exblog.jp/24510962/

同ホテルの丸山英男支配人に話を聞きました。

―歌舞伎町の真っただ中に位置していますね。周辺はラブホテルがひしめいている。なぜこの立地を選ばれたのでしょうか。

「弊社がここに土地を所有していたからです。確かに、この周辺はいろんな人種・国籍の人たちが往来していて、一種のカオスといえる。でも、歌舞伎町は世界的に知名度がある。だから、計画の当初からこの土地に合った個性的なホテルをつくろうと考えていました。

ホテルグランベルはわずか3軒のみですが、他には渋谷と赤坂にあります。それぞれ異なるコンセプトで設計されています。

2006年7月に開業した渋谷は、若者のまちらしく、25~35歳のトレンドに敏感な層をターゲットに、また同年12月開業の赤坂は、ビジネスマン向きに大人の落ち着いた雰囲気にしています。

東新宿はホテル激戦区で、周辺に東横インやアパホテル、サンルートホテルなど、同じカテゴリーのホテルが集中しています。この中で差別化するには、知名度のない我々が同じことをやっても勝負できない。だったら、思いっきり個性的なホテルをつくろうと考えたのです」。

―エクスペディアの関係者から、客室のデザインが人気だと聞いています。彼らは貴館をブティックホテルと呼んでいました。

「本館のいちばんの特徴は、アジアの次世代アーティストがデザインした客室を用意していることです。コンセプトは「HIP、エッジ、官能的」。世界的に有名な歓楽街としての歌舞伎町のイメージを具現化したいと考えました。設計をお願いしたのが、キッザニア東京の設計で有名なUDS株式会社です。渋谷や赤坂も同様です」。

UDS株式会社
http://www.uds-net.co.jp

―アジアの次世代アーティストというのはどのような人たちですか。

「代表的なアーティストとしては、カンボジア生まれで、現在ニューヨークで活躍中のTomtorです。彼には近未来の女性をイメージしたこの客室のデザインイメージを提案してもらいました。
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Tomtor(カンボジア)
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/room/sp_double/


他にも、香港や韓国、台湾などのアーティストを起用しています。日本人も含めて関わったアーティストは20名以上。香港のG.O.D.は、香港の油麻地(ヤウマーティ)地区のデザインをイメージして壁一面に銅板パネルやグラフィックアートを飾った客室をデザインしてもらっています」。
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G.O.D.(香港)
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/room/ex_double/

その他アーティストのプロフィールとその客室
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/extra/

―面白いですね。しかし、こんなに自由に客室ごとにデザインを選べるホテルというのは、あまり聞いたことがありません。客室のカテゴリー分けはどうなっているのですか。

「2~11階がスタンダードルーム、12階がロフトルーム。この階はアジアのお子様連れファミリーがよく利用されます。13~16階がエグゼクティブルーム、17階がスイートです。客室タイプは全28種に細分化されています。
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さらに、スタンダードルームには「オモテ」と「ウラ」の異なる客室デザインを用意しています」。

―どういうことですか。
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「この客室は先ほどのTomtorのデザインイメージに沿って設計されたものですが、最初が「オモテ」で、こちらは「ウラ」です。「オモテ」は白と木目調をいかしたすっきりしたデザインですが、「ウラ」は黒とレザーの風合いをいかしたディープな感覚を打ち出しています。前者はビジネス客向けに、後者は客室でゆったりくつろぎたい方向けにと考えられています」。

―ずいぶん凝っていますね。飲食施設はどうですか。

「ロビーのカフェと12階のカジュアルイタリアンレストラン、そして13階のバーの3つです。バーはテラスがあり、新宿の街並みを見渡せます」。
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―ところで、ロビーにスーツケースがたくさん置かれていましたが、これは海外の団体客などチェックアウトをすませた方たちのものですね。エクスペディアで全国2位の予約実績というわけですから、外国客の宿泊比率はかなり高そうですね。
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「現在、外客比率は8割以上です。もともと歌舞伎町のホテルということで、外客の利用は多くなるだろうと考えていましたが、こんなに多くなるとは思ってもいませんでした。外客のうちアジアが6割で欧米が4割。ビジネス客とレジャー客は半々という感じです」。

―どうしてこんなに外国客の人気を呼んだと思われますか。

「実は、開業当初以外はほとんどPRしていません。それだけに最初の3カ月は厳しかったのですが、徐々に予約が入るようになり、2014年秋には平均客室稼働率が80%になりました。ADR(平均客室単価)は約1万3000円となっています。

予約の半分以上はネット経由です。団体客も取るので、リアルエージェントからの予約もありますが、圧倒的に海外の予約サイト経由が多い。エクスペディアやbooking.com、アゴダなど、だいたい同じくらいの比率です」。

―本当にいまはそういう時代なんですね。PRにお金をかけるより、予約サイトに登録し、より効果的な見せ方をすることが集客のカギになる。

「実際、何か特別に外客向けのサービスはやっていません。せいぜいフロントでお客様からよく聞かれる質問を整理して近隣マップをつくったくらいでしょうか。

トリップアドバイザーなどの口コミサイトには、いいことも悪いことも書かれるものですが、ひとつ確実にいえるのは、ネットの世界はまず写真が大事ということ。ホテルグランベルはデザインに特徴があるので、同じ価格帯のホテルと比べて選んでもらえているのだと考えています」。

―しかし、これだけ外客比率が高くなってしまうと、経営上のリスクはどうでしょう。多くの宿泊施設が国内客と外客のバランスを取ることに苦心しているなか、新宿グランベルホテルは、国内客より外国客に知られたホテルといえるかもしれません。

「確かに、外国客の予約がいつもいっぱいで予約が入らないため、国内客に敬遠されてしまうきらいがあるように思います。しかし、ここまで来たら、もう隠しようがないので、状況を見ながらコントロールしていくしかありません」。

―レベニューマネジメントの腕が問われますね。

「まったくそうです。支配人の私ともうひとりのスタッフが担当しているのですが、1日の仕事の大半はレベニューマネジメントに明け暮れるといっていいくらいです」。

ネット予約が一般化した今日、レベニューマネジメントは収益の最大化を左右するだけに、手を抜けないところでしょう。予約経路は複雑化しており、さまざまなファクターを吟味しながら客室の売値のコントロールをしていかなければならないからです。

それにしても、訪日客の増加によってほぼネットだけで集客ができてしまうという状況が起きていることは、ベンチャー企業のホテル業への参入にとって追い風になっていると思われます。このあたりの感覚は、ホテル業の王道にずっといた人たちからすると、時代の変化を強く感じさせる事態かもしれません。

もっとも、丸山支配人は外客向けの特別なサービスはしていないと言っていましたが、宿泊客からの質問や問い合わせに答えるためにスタッフがつくったという自家製近隣マップは、種類も豊富でよくできていると思いました。数種類に分けられたマップをみると、外国客が歌舞伎町周辺のどこで食事や買い物をしているかがよくわかり面白かったです。また設計を手がけたUDSの担当者にも話を聞きました。その内容については、また別の機会で。

遊び心がなければ、海外客を惹きつけることはできない(UDSの考えるデザインホテル)
http://inbound.exblog.jp/24681756/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-10 21:32 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)