ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 07月 12日

噂のデザインホテル「ホテルアンテルーム京都」に泊まってみた

6月下旬に関西方面に取材に行く機会があり、UDS株式会社の設計・運営するデザインホテルを訪ねてみることにしました。

UDS株式会社
http://www.uds-net.co.jp

同社のホテルは京都に2つあります。ホテル アンテルーム 京都とホテル カンラ京都です。

ちなみに、googleで「デザインホテル」を検索したところ、以下のまとめ記事が見つかりました。ちょっと古い記事でしたが、「1度は行ってみたくなるおしゃれなデザインホテル」のまとめだそうです。

泊まってみたい!スタイリッシュな国内デザイナーズホテルまとめ(2012.9.23)
http://matome.naver.jp/odai/2134863432421489801

ホテル カンラ京都 http://www.hotelkanra.jp/
Hotel SCREEN KYOTO(京都) http://www.screen-hotel.jp/
京都 デザインホテル Mume http://www.hotelmume.jp/
ホテル アンテルーム 京都http://hotel-anteroom.com/
ホテルアラマンダ(奈良) http://www.allamanda.jp/
HOTEL T'POINT (大阪) http://www.tpoint.co.jp/
HOSTEL 64 Osaka http://www.hostel64.com/
CLASKA(東京) http://www.claska.com/
渋谷グランベルホテル(東京) http://www.granbellhotel.jp/
ヴィラ サントリーニ(高知) http://www.villa-santorini.com/
ホテルアークリッシュ豊橋(愛知) http://www.arcriche.jp/
WITH THE STYLE FUKUOKA(福岡) http://www.withthestyle.com/
HOTEL GREGES(オテルグレージュ) ‐ 福岡・神の湊(かみのみなと)http://www.greges.jp/
ベイサイドマリーナホテル横浜(神奈川) http://www.baysidemarinahotel.jp/
軽井沢 ホテルブレストンコート(長野) http://www.blestoncourt.com/

今回ぼくが京都で訪ねたホテルは、2つとも上位ランキングしていました。またCLASKA(東京) や渋谷グランベルホテル(東京) もUDSの設計・運営するホテルです。それにしても、人気のデザインホテルは関西に多いのですね。

京都には1泊しかできなかったので、ホテル アンテルーム 京都のほうに泊まることにしました。両者はそれぞれコンセプトが異なり、アンテルームがビジネスホテルの価格帯であるのに対し、ホテル カンラは少しお高く、出張用というより、お忍びのカップル向きだったからです。

京都駅から地下鉄烏丸線に乗ってひとつ目の九条駅で降り、あまり京都らしくない(というのも、ここは京都駅の南側だからです)地方都市の通りをとことこ南に向かって歩くと、賃貸マンションのような外観の物件が見つかりました。確かに「ANTEROOM」とあります。

玄関を開けると、目の前にいきなり奇態な動物のオブジェが現れました。
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周囲を見渡すと、そこは現代美術のアートギャラリーのようでした。
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フロントには誰もいなかったので、荷物を置いてギャラリーを見て回ることにしました。
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フロントの脇にはアートギャラリーのように画集やノベルティグッズのようなノートやバッグまで置かれていました。
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ここはいったい……。

これがフロントです。脇にスーツケースがいくつか置いてあり、これは新宿グランベルホテルのようです。チェックアウトした客が荷物を置いて、観光に出かけているのでしょう。このある意味、ゆるい感じはぼくがこれまで見てきた外国人ツーリストの多いホテルと共通しています。
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チェックインしようとベルを押すと、若い女性スタッフが現れました。話を聞いた印象では、彼女はホテルのスタッフでありながら、ロビーに広がるギャラリーの運営も行っているようです。

「アート&カルチャーをキーワードに。HOTEL ANTEROOM KYOTOが発行する新感覚のホテル情報誌ANTEROOM JOURNAL issue 4」という小冊子が置かれていて、そこにはこのホテルの成り立ちやギャラリーとしてのもうひとつの顔が紹介されていました。ここでは1年を通じてさまざまなアーティストによる個展が開かれているようです。

ホテルのパンフレットにはこう書かれてあります。

「京都の今を表現するアート&カルチャーが集まる場所
変化を楽しむ新しいスタイルのホテル

ホテルアンテルーム京都は常に変化する京都の“街”“暮し”“アート”そして“カルチャー”を感じていただける新しいスタイルのホテルです。

リノベーションを活かしたラフな空間に感性を刺激する遊び心をプラスし、友人が集う場に遊びに来たかのような心地良いカジュアルな雰囲気の中でお過ごしいただけます」

ホテル アンテルーム 京都
http://hotel-anteroom.com/

フロントの奥には、バーと朝食オンリーのレストランがあります。バーは夜8時からしか開きません。レストランは朝だけです。
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チェックインをすませ、客室に行くには、エレベーターまで細い廊下を歩いて行かなければなりません。その廊下がこれです。
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エレベーターを降りると、客室のある廊下はこんな感じです。温かい照明が当てられていますが、とても無機質な空間といえます。
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アイロンや加湿器のレンタルも可能です。
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客室はとても洗練されていました。品のいい部屋着も用意されていて、調度品も個性的です。
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いったん荷物を部屋に置いて外出しようとしたら、玄関にレンタルサイクルが置かれていました。ここらは外国人ツーリストのニーズを考えてのことのように思いました。
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実は、このホテルの建物は学生寮をリノベーションしたものです。客室のある廊下のそっけない感じはかつて寮だったことを想像させます。もとがシンプルな学生寮だけに大胆にリノベーションしやすかったのかもしれません。

このホテルは、日本の宿泊特化型ホテルやビジネスホテルが全力を挙げて追求してきた機能性、そしていわゆる「おもてなし」という2大看板とは明らかに異なる価値を標榜していることがわかります。

それは前述のパンフレットにあるような“遊び心”なのでしょう。もちろん、彼らも機能性やおもてなしを無視しているわけではないでしょうが、それはほどほどでいい。むしろ宿泊客を喜ばせるのは、もっと違う価値にあるということを実践しているのだと思いました。

おそらく冒頭で紹介した「スタイリッシュなデザイナーズホテル」は、どれも似たような狙いでつくられたものが多いのではないでしょうか。

このような発想で生まれたデザインホテルは、古くはバブルの頃から日本にあったと思うのですが(当時は文字通り過剰で、今の感覚でいえばカッコ悪いものも多かったとは思う)、今日訪日外客が増えることで、彼らに支持されることから、曲がりなりにも運営が可能になっているのは、とても興味深いことです。

実際、ホテルのスタッフによると「外客比率は約4割で、台湾、香港、韓国が多い。予約はほぼ海外ホテル予約サイト経由」だそうです。

それはなぜなのか。ツーリストというのは、普通じゃ面白くない人たちだからです。海の向こうにいる彼らは、エクスペディアを通じて日本各地のホテルを探しているわけですが、リーズナブルで快適で機能性の高い日本の宿泊特化型ホテルばかりを選ぶわけではないのです。客室の写真を見て、なんだこれは? せっかく日本に行くなら、ふだんは泊まることのないホテルに泊まってみたい。日本の最先端のスポットを体験していみたい。そう考える人たちの割合は少なくはないのです。

さらに興味深いのは、ホテルアンテルーム京都もそうですが、この手のデザインホテルを設計する人たちが、あえて価格帯をビジネスホテルに近いものにしていることで集客に成功していることでしょう。外国人がホテル選びする際、まずエリアと価格帯で絞り込みをします。それは我々日本人が海外のホテルを選ぶのと同じこと。ここで日本のホテル価格の相場観を無視した法外な料金を出してしまえば、どんなに斬新なデザインホテルでも選ばれることはないことを彼らは知っているのです。

さて、それからぼくは地下鉄烏丸線に乗って五条駅で降りました。そこはホテルカンラ京都の最寄り駅です。

このホテルのロケーションは少しわかりにくかったです。というのは、烏丸通に面したこのホテルの外観は隣にある代々木ゼミナール京都校と同じだったからです。これは一部メディアで報道され話題になりましたが、同ホテルは予備校校舎の一部を買い取り、リノベーションしたものです。少子化で予備校生が減るなか、その一部をヒップなホテルにつくり変えたというわけです。

代ゼミは不動産業で生き残る 遊休地でホテル、商業施設、貸会議室(2014/8/25)
http://www.j-cast.com/2014/08/25214004.html

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烏丸通から六条の狭い筋に入ると、そこに玄関があります。正直いって、このホテルを知らない人にはわかりにくい玄関です。でも、それで構わないのでしょう。ここは知る人ぞ知る全29室の隠れ家ホテルだからです。

これがフロントです。
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ロビーにはレストランがあります。「京都の伝統的な住宅形式である京町家の考え方を取り入れ、モダンなデザインで表現した“マチヤスタイル”」のホテルだといいますが、大胆な幾何学的なモチーフを多用した館内のデザインは、初めて訪れる者にはかなり刺激的でした。色の使い方が官能的といっていいかもしれません。京都の古い街並みを見てきた目には、異次元空間のようにも思えたからです。
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ホテルのスタッフにいくつか客室を見せていただいたのですが、畳にふとん敷きが基本で、価格帯は3万円から。確かに、これはビジネス仕様ではありません。外客比率は相当高いそうです。桜の季節はほぼ外国客だとか。驚きと遊び心を求めてやまない外国人なら泊まってみたいと思うことでしょう。詳しくは、同ホテルのサイトを見てください。

ホテル カンラ京都
http://www.hotelkanra.jp/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-12 19:15 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 12日

遊び心がなければ、海外客を惹きつけることはできない(UDSの考えるデザインホテル)

歌舞伎町にある新宿グランベルホテルの驚くほど自由な客室デザインは、日本を訪れる外国客にひそかに人気のようでした。

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある
http://inbound.exblog.jp/24676453/

いったいこのホテルはどんな発想に基づいて設計されたのか。外国客の予約が殺到する理由は何なのか。

設計を担当したUDS株式会社の寳田陵クリエイティブデザインディレクターに話を聞くことができました。

UDS株式会社
http://www.uds-net.co.jp

―新宿グランベルホテルはどのようにして生まれたのでしょうか。

「新宿グランベルホテルのコンセプトをお話するには、先にできた渋谷と赤坂のグランベルホテルの話から始めたほうがいいと思います。グランベルホテルの運営会社である(株)フレンドステージから弊社にホテル事業を始めるので、設計を担当してほしいという話があったのは、2002年に遡ります。このとき、同社は都内にいくつかの自社所有の土地があり、その場所ならではのホテルをつくりたいという考えがありました。

しかも、一般のシティホテルではなく、価格帯もビジネスホテルに合わせた宿泊特化型でいきたい。ただし、他のホテルグループと同じスタイルでは勝ち目がないので、たとえば、最初に開業した渋谷グランベルホテル(2006年7月)の場合は、渋谷らしさを強く打ち出すことを考えました。

具体的にいうと、渋谷を日常的な活動の場にしているような若い世代(20~30代)を惹きつけるという意味で、館内や客室全体を「ポップ、アート、ミニマル」というコンセプトで統一するというものです。このホテルは客室数105室のホテルですが、最上階にペントハウススイートを用意しています。我々はまずこのスイートの世界観を作り上げることに注力し、そこでできたイメージをスタンダードルームにも広げていったのです。

しかし、先ほど述べたように、価格帯は他の宿泊特化型ホテルと変わらないものにするということでしたから、14㎡のシングルルームで、東横インと価格は変わらないのに、客室はまったく違う世界がある、というものにしたかったのです。

一方、同じ06年12月に開業した赤坂グランベルホテルは、30~40代以上の大人の社交が楽しめる上質感を打ち出すことにしました。コンセプトは「上質感、色艶、遊び心」です。そのぶん価格帯は渋谷と同じというわけにはいきませんが、やはり上階にこのホテルのイメージを具現化するスイートを設けました。

実は、客室稼働率でいうと、渋谷より赤坂のほうが高く、現在では平均95%以上で、外国客比率も6割を超えています。渋谷も赤坂ほどではないですが、外国客の比率がだんだん高くなってきています」。

―なぜそんなに外国客が多いのでしょうか。

「渋谷や赤坂が開業した頃は、まだトリップアドバイザーが存在していない時代でした。ですから、当初は国内客しかおらず、外国客は近くにあるセルリアンタワーのほうに泊まっていたようです。ところが、あるとき私たちの知らないところで、海外の雑誌に渋谷グランベルホテルのことが紹介されていたのを見つけました。おそらく海外または日本在住の外国人記者がここを見つけて、東京にあるヒップなホテルということで紹介したのでしょう。

その後、SNSの時代がきて、あっという間に海外のデザインホテルに関心のある層に広まったのだと思います。エクスペディアなどの海外ホテル予約サイトが続々と参入してきたのも同じ頃で、ビジネスホテルの価格帯でありながらデザインが面白いということから、予約が入るようになったのです」。

―外国客を惹きつけるデザインホテルとはどういうものなのでしょうか。

「やはり遊び心の要素があることではないでしょうか。一般に日本の宿泊特化型ホテルは設備や機能性は優れていますが、その点は欠けています。最初から追求していない。一方我々の考えるデザインホテルは、機能性よりデザイン性を優先します。

実は、私はこの数年間海外の人気のあるデザインホテルを訪ね、客室を中心にその特徴をスケッチしてきました。それらのホテルは客室の形が三角形だったり、内装のデザインが懲りすぎていたり、使い勝手は必ずしもいいとは限らない。しかし、そうしたルーズさは、日本のビジネスホテルのきちっとした機能性よりも好ましいと評価されるのです。彼らが求めるのは、驚きです。客室の扉を開けた瞬間、Wao!と声を上げたくなるようなデザイン性に惹きつけられるのです。

もっとも、我々は日本人ですから、どこか機能性も追求したくなるところがあるのも確かです。ヒップな外国客が好む客室だけでは、日本人が泊まってくれない。それでは困ります。そこは我々日本人デザイナーのバランス感覚と腕の見せどころともいうべきで、意想外なデザイン性を追求しながら、機能性もきちんと織り込んでいく。そういうものをつくってきたいと考えているんです」。

―新宿グランベルホテルが目指したのは、そういうことであると。

「といいますか、新宿歌舞伎町という立地から考えて、一般の日本人はなかなか足を運んでもらえないのではということも思いました。しかも、新宿は380室。そこそこのボリュームがあり、渋谷や赤坂のようなやり方だけでは難しいと考えました。

その一方で、グランベルホテルの共通するコンセプトに“fun to stay”があります。ステイする楽しみを感じさせる施設でなければならない。そこで初心に戻って、歌舞伎町の街らしさをテーマにすることにしました。ひとことでいうと、歌舞伎町という世界に知られた歓楽街のカオスの具現化。それにふさわしいのはアジアのカルチャーだろうと考えたのです。だったら、アジア出身のネクストアーティストを集めてホテルをつくろう、ということになったんです」。

―もともと外国客向けのホテルをつくろうと考えていたわけではなさそうですね。

「というよりも、歌舞伎町には日本人も含めて、いろんな国籍の人たちが歩いています。そういう彼らにこそ泊まってもらおう。ホテルは街と共存しています。歌舞伎町らしさを具現化したホテルをつくれば、多くの人に泊まってえるはずだと考えていたのです。

結局、日本人を含め、韓国、香港、台湾、カンボジアなど、芋づる式に24名のアーティストが集まりました。アーティストたちには、それぞれ自分の国のイメージを表現してもらうことにしました。歌舞伎町だから、それでいいんです。

もっとも、アジアといってもさまざまなイメージがあり、混沌としています。特に作りこんだのは、4タイプのエグゼクティブルーム、4つのスイートルームです」。

―具体的には、どのような設計手法になるわけですか。

「それぞれのアーティストに、ある特定のテーマを伝えて、自分のイメージするグラフィックやオブジェなどの作品を提案してもらいます。その作品を客室に取り込み、我々がそのイメージを具現化していくべく設計していきます」。

―どこまでそれが伝えられたと思いますか。

「まだよくわかりません。欧米の人たちとアジアの人たちでは感じ方が少し違うかもしれません。面白かったのは、ロフトの部屋を用意したところ、アジアの子連れファミリー客に人気のようです。彼らもこうした遊び心を気に入ってくれているようです。

いまはSNSで広がる時代です。ですから、いかに人にホテルに来てもらうか。これからはいいデザインというだけではなく、そのホテルではいつも何かが起きている、ということが大事なのだと思います。

新宿の街並みが見渡せるルーフトップバーも、最近ではちょっとしたイベントを始めています。これからはイベントをどうつくるかを考えていかなければと思います」。

UDS株式会社は、そのことばを実践するべく、京都に2つのデザインホテル(ホテルアンテルーム京都、ホテルカンラ京都)を設計し、運営も行っています。先日、その2つのホテルを訪ねたので、今度紹介したいと思います。どちらも遊び心あふれる楽しいホテルでした。特にホテルアンテルーム京都はホテルにおけるイベントの可能性を追求しているようでした。それはまたの機会に。
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噂のデザインホテル「ホテルアンテルーム京都」に泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24682467/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-12 15:01 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 10日

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある

今年4月、新宿コマ劇場跡にできた“ゴジラホテル”こと、ホテルグレイスリー新宿。その開業当初、多くのメディアが外国客のあふれる歌舞伎町の変貌ぶりを報じていました。

でも、歌舞伎町にはまだ他にも人知れず外国客が殺到しているスポットがあります。

それは、2013年12月に開業した新宿グランベルホテルです。不動産事業を手がける(株)フレンドステージ(埼玉県上尾市)が運営しているホテルで、場所は歌舞伎町のラブホテル街の中にあります。そんなディープな環境のなか、ひときわ目につく17階建て、客室総数380室といいますから、東新宿周辺ではホテルグレイスリーやプリンスホテルなどに次いで大きなシティホテルといえます。
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新宿グランベルホテル
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku

実は、同ホテルは2014年にエクスペディア経由で予約した外国人旅行者数のランキングで、ホテルサンルートプラザ新宿(渋谷区)に次いで全国2位となっています。サンルートプラザ新宿といえば、昔から外国客を多く受け入れてきたホテルとして知られていますが、開業2年のホテルが堂々ランキング2位になるとはちょっと驚きです。新宿グランベルホテルは、なぜこんなに外国客に人気なのでしょうか?

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)
http://inbound.exblog.jp/24510962/

同ホテルの丸山英男支配人に話を聞きました。

―歌舞伎町の真っただ中に位置していますね。周辺はラブホテルがひしめいている。なぜこの立地を選ばれたのでしょうか。

「弊社がここに土地を所有していたからです。確かに、この周辺はいろんな人種・国籍の人たちが往来していて、一種のカオスといえる。でも、歌舞伎町は世界的に知名度がある。だから、計画の当初からこの土地に合った個性的なホテルをつくろうと考えていました。

ホテルグランベルはわずか3軒のみですが、他には渋谷と赤坂にあります。それぞれ異なるコンセプトで設計されています。

2006年7月に開業した渋谷は、若者のまちらしく、25~35歳のトレンドに敏感な層をターゲットに、また同年12月開業の赤坂は、ビジネスマン向きに大人の落ち着いた雰囲気にしています。

東新宿はホテル激戦区で、周辺に東横インやアパホテル、サンルートホテルなど、同じカテゴリーのホテルが集中しています。この中で差別化するには、知名度のない我々が同じことをやっても勝負できない。だったら、思いっきり個性的なホテルをつくろうと考えたのです」。

―エクスペディアの関係者から、客室のデザインが人気だと聞いています。彼らは貴館をブティックホテルと呼んでいました。

「本館のいちばんの特徴は、アジアの次世代アーティストがデザインした客室を用意していることです。コンセプトは「HIP、エッジ、官能的」。世界的に有名な歓楽街としての歌舞伎町のイメージを具現化したいと考えました。設計をお願いしたのが、キッザニア東京の設計で有名なUDS株式会社です。渋谷や赤坂も同様です」。

UDS株式会社
http://www.uds-net.co.jp

―アジアの次世代アーティストというのはどのような人たちですか。

「代表的なアーティストとしては、カンボジア生まれで、現在ニューヨークで活躍中のTomtorです。彼には近未来の女性をイメージしたこの客室のデザインイメージを提案してもらいました。
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Tomtor(カンボジア)
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/room/sp_double/


他にも、香港や韓国、台湾などのアーティストを起用しています。日本人も含めて関わったアーティストは20名以上。香港のG.O.D.は、香港の油麻地(ヤウマーティ)地区のデザインをイメージして壁一面に銅板パネルやグラフィックアートを飾った客室をデザインしてもらっています」。
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G.O.D.(香港)
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/room/ex_double/

その他アーティストのプロフィールとその客室
http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/extra/

―面白いですね。しかし、こんなに自由に客室ごとにデザインを選べるホテルというのは、あまり聞いたことがありません。客室のカテゴリー分けはどうなっているのですか。

「2~11階がスタンダードルーム、12階がロフトルーム。この階はアジアのお子様連れファミリーがよく利用されます。13~16階がエグゼクティブルーム、17階がスイートです。客室タイプは全28種に細分化されています。
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さらに、スタンダードルームには「オモテ」と「ウラ」の異なる客室デザインを用意しています」。

―どういうことですか。
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「この客室は先ほどのTomtorのデザインイメージに沿って設計されたものですが、最初が「オモテ」で、こちらは「ウラ」です。「オモテ」は白と木目調をいかしたすっきりしたデザインですが、「ウラ」は黒とレザーの風合いをいかしたディープな感覚を打ち出しています。前者はビジネス客向けに、後者は客室でゆったりくつろぎたい方向けにと考えられています」。

―ずいぶん凝っていますね。飲食施設はどうですか。

「ロビーのカフェと12階のカジュアルイタリアンレストラン、そして13階のバーの3つです。バーはテラスがあり、新宿の街並みを見渡せます」。
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―ところで、ロビーにスーツケースがたくさん置かれていましたが、これは海外の団体客などチェックアウトをすませた方たちのものですね。エクスペディアで全国2位の予約実績というわけですから、外国客の宿泊比率はかなり高そうですね。
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「現在、外客比率は8割以上です。もともと歌舞伎町のホテルということで、外客の利用は多くなるだろうと考えていましたが、こんなに多くなるとは思ってもいませんでした。外客のうちアジアが6割で欧米が4割。ビジネス客とレジャー客は半々という感じです」。

―どうしてこんなに外国客の人気を呼んだと思われますか。

「実は、開業当初以外はほとんどPRしていません。それだけに最初の3カ月は厳しかったのですが、徐々に予約が入るようになり、2014年秋には平均客室稼働率が80%になりました。ADR(平均客室単価)は約1万3000円となっています。

予約の半分以上はネット経由です。団体客も取るので、リアルエージェントからの予約もありますが、圧倒的に海外の予約サイト経由が多い。エクスペディアやbooking.com、アゴダなど、だいたい同じくらいの比率です」。

―本当にいまはそういう時代なんですね。PRにお金をかけるより、予約サイトに登録し、より効果的な見せ方をすることが集客のカギになる。

「実際、何か特別に外客向けのサービスはやっていません。せいぜいフロントでお客様からよく聞かれる質問を整理して近隣マップをつくったくらいでしょうか。

トリップアドバイザーなどの口コミサイトには、いいことも悪いことも書かれるものですが、ひとつ確実にいえるのは、ネットの世界はまず写真が大事ということ。ホテルグランベルはデザインに特徴があるので、同じ価格帯のホテルと比べて選んでもらえているのだと考えています」。

―しかし、これだけ外客比率が高くなってしまうと、経営上のリスクはどうでしょう。多くの宿泊施設が国内客と外客のバランスを取ることに苦心しているなか、新宿グランベルホテルは、国内客より外国客に知られたホテルといえるかもしれません。

「確かに、外国客の予約がいつもいっぱいで予約が入らないため、国内客に敬遠されてしまうきらいがあるように思います。しかし、ここまで来たら、もう隠しようがないので、状況を見ながらコントロールしていくしかありません」。

―レベニューマネジメントの腕が問われますね。

「まったくそうです。支配人の私ともうひとりのスタッフが担当しているのですが、1日の仕事の大半はレベニューマネジメントに明け暮れるといっていいくらいです」。

ネット予約が一般化した今日、レベニューマネジメントは収益の最大化を左右するだけに、手を抜けないところでしょう。予約経路は複雑化しており、さまざまなファクターを吟味しながら客室の売値のコントロールをしていかなければならないからです。

それにしても、訪日客の増加によってほぼネットだけで集客ができてしまうという状況が起きていることは、ベンチャー企業のホテル業への参入にとって追い風になっていると思われます。このあたりの感覚は、ホテル業の王道にずっといた人たちからすると、時代の変化を強く感じさせる事態かもしれません。

もっとも、丸山支配人は外客向けの特別なサービスはしていないと言っていましたが、宿泊客からの質問や問い合わせに答えるためにスタッフがつくったという自家製近隣マップは、種類も豊富でよくできていると思いました。数種類に分けられたマップをみると、外国客が歌舞伎町周辺のどこで食事や買い物をしているかがよくわかり面白かったです。また設計を手がけたUDSの担当者にも話を聞きました。その内容については、また別の機会で。

遊び心がなければ、海外客を惹きつけることはできない(UDSの考えるデザインホテル)
http://inbound.exblog.jp/24681756/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-10 21:32 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 07月 09日

多言語化に取り組む楽天トラベル。宿泊プランは外国客に支持されるか?

エクスペディアやBooking.comなどの海外ホテル予約サイトの参入によって、日本の国内宿泊マーケットは変わりつつあります。それは単に外国客の利用が増える(国内客の減少を補てんしてくれる)というだけではなく、これまでの宿泊サービスのありように新しい刺激を与えてくれていると思います。

ホテルが外国客を受け入れるメリットは何か(エクスペディアの取材から)
http://inbound.exblog.jp/24669753/

もっとも、外資が参入する以前に、日本にもオンライン旅行会社は存在しました。楽天トラベルやじゃらん、一休などは広く普及しています。

なかでも楽天トラベルは、2001年3月に楽天の旅行部門として立ち上がり、02年に独立。05年には旅行業一種を取得し、本格的なオンライン総合旅行サイトとなりますが、早くとも10年にはJTBに次ぐ国内旅行市場取扱額2位にまで成長しました(その後、近畿日本ツーリストに再び2位の座を明け渡したり、取り戻したりといった状況が続いています。同社が急速に取扱額を拡大できたのは、店舗を持たず、ユーザーと宿泊施設の双方の便宜を追求するオンライン旅行会社の特性を消費者が支持したからでしょう)。

先日、楽天トラベルの関係者に話を聞くことができました。

訪日外客が増えるなか、楽天トラベルはインバウンドに対してどんな取り組みを始めているのか。海外客に人気の宿泊施設にはどんな特徴があるのか。以下、関係者とのやりとりです。

―楽天トラベルでは、訪日外客の取り込みに向けてどんな取り組みを始めているのですか。

「2014年7月、楽天トラベルは多言語化サイトの大幅なリニューアルを行いました。10ドメイン、7言語(英語、フランス語、中国繁体字、中国簡体字、タイ語、韓国語、インドネシア語)のサイトとなり、2020年の東京オリンピックに向けて海外訪日客を取りにいきます」
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―利用者の伸びはどうですか。どこの国が多いですか。

「おかげさまで前年度比60~70%増です。米国、香港、台湾などが多いです。利用者は基本的にFITですから、日本に興味があって、リピーターの多い国や地域が多くなると思います。また楽天グループでは海外拠点づくりを進めていて、特に台湾では楽天のECサイトがあり、台湾楽天カードも発行しています。弊社の場合、トラベル単体ではなく、グループのシナジーを活かしてプロモーションしていくというのが基本の考え方です」。

―確かに、旅行もショッピングも同じプラットフォームで商取引されるのですから、結局、日本のファンを増やしていくことがシナジー効果を生むということですね。日本が好きで旅行に行きたい人たちと、日本の商品をショッピングしたい人たちを分けて考える必要はない。

ところで、御社は海外客の予約件数の多いホテルの情報を有しておられると思います。海外客に人気のホテルを教えていただけますか。

「楽天トラベルでは、全国約2万9500施設の中から、毎年顕著な宿泊実績や高い顧客評価を得られた宿泊施設に対して『楽天トラベルアワード』を表彰しています。いくつかのジャンルに分かれるのですが、海外客に人気という意味では、『インバウンド賞』を受賞されたホテルがそれに当たります」。

楽天トラベルアワード2014
http://travel.rakuten.co.jp/award/2014/

―ここ数年の「インバウンド賞」受賞の施設をみると、エリア的には関東・甲信越が多いようですが、やはり全体でみると、外国客の楽天経由の予約件数はやはりこのエリアが多いといえますか。

「『インバウンド賞』は宿泊施設単位で受賞しているものですが、エリア単位で見た場合は、上記エリア以外でもご予約は多数いただいております。実際、楽天トラベルが全国を約300のエリアに分けているなか、すでに95%のエリアで外国客の予約が入っています」。

―そうですか。楽天経由でほぼ全国の宿泊施設に予約が入っているのですね。

「もちろん、実際に多いのはゴールデンルートとなる東京→富士山→関西エリアと、沖縄県、北海道です。しかし、楽天トラベルはFIT、特にリピーターとなって日本に複数回こられているだろうお客様の予約も多いため、九州エリアの福岡県・大分県・熊本県・鹿児島県や、中部の岐阜県・愛知県・長野県、北陸の石川県、中国四国の広島県や香川県などさまざまなエリアの予約が増えており、全国への分散化が見られます」。

―個別の施設でいうと、上野のノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)はここ数年連続して受賞しているようですね。この圧倒的な強さはどこにあるとお考えですか。禁煙は外客受入にとって重要なファクターといえるのでしょうか。

「日本に比べて海外では禁煙文化が浸透しているため、「禁煙」「喫煙」の区別に関しては日本よりも敏感になっているようです。

(参考) 
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_smoking_bans_in_the_United_States
http://www2u.biglobe.ne.jp/~MCFW-jm/tobacco.htm

ノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)は、インバウンドだけではなく、国内のお客様も含めて「非喫煙ポリシー」を徹底しています。これが圧倒的な強さにつながっていると考えられます。また、浴室はシャワールームにして外国人の方も満足のいく最低限の設備にすることで、その他のスペースを広げた点や価格帯がマッチしていることも選ばれる理由になっているかと思います」。
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ノンスモーカーズホテル(元キューブホテル)
http://www.nonsmokers.jp/nosmoking/

―アパホテルグループの受賞も多いですね。渋谷道玄坂店と京都駅前堀川通店。これらの人気の理由は何でしょうか。

「アパホテルはビジネスホテルのカテゴリーに入りますが、シングルでも横120cmの広いベッドやシャワー、アメニティなどゲストのための細かいサービスが行き届いていて、中級ホテルとしてはサービスレベルが高いと評価されていることが考えられます。また駅に近いことも外国客にとってはホテル選びをするうえでのポイントになっていると思います」。

―受賞施設以外にも、最近外国客に人気が出ているホテルはありますか。

「たとえば、「休暇村 大久野島」(香川県)や「高野山の宿坊」(和歌山県)でしょうか。

全国の休暇村でいま積極的に外国客の受け入れに力を入れています。なかでも集客に成功しているのが大久野島です。
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休暇村 大久野島
http://www.qkamura.or.jp/en/ohkuno/rooms/

魅力は大自然を満喫できる宿で、瀬戸内海の離島にあることでしょうか。ネットを通じて予約されるFITのお客様はリピーターも多く、東京や大阪のような大都市圏ではなく、自然の豊かなローカルなエリアへの宿泊が増えています。

同じく、高野山の宿坊も、日本の自然と文化を体験できることで人気が上がっています」。

高野山の宿坊
http://www.shukubo.net/contents/stay/

―これら西日本のローカルな人気宿はどこの国の人たちが多いのですか。

「香港や台湾に加え、欧米の比率が高いです。大阪や広島などの都市部を拠点にしながら、1泊の予約をピンポイントで取り、これらの宿に泊まって地元をゆっくり観光されている傾向が見られます」。

―ところで、ここで少し話を変えますが、現在海外のホテル予約サイトが続々参入し、訪日客の国内予約の取り込みが急ピッチで進んでいます。それに対し、国内オンライン旅行会社(OTA)の雄である楽天トラベルは、どう立ち向かおうとしているのでしょうか。海外サイトに負けないサービスは何でしょうか。

「現在、海外のお客様を受け入れることに同意いただいた1万8000施設が外国語ページを持っています。日付を指定した検索結果には、海外のお客様向けに宿泊プランを作成され、在庫のご登録を頂いた施設が表示されます。

エリア的な偏りは、多少は見られるものの、全国津々浦々までカバーできているのが楽天トラベルの大きな特徴だといえると思います。

例えば、東京、大阪、京都などのインバウンドのメジャーエリアで検索をした際に、他のOTAさんとくらべ楽天は少し多いくらいですが、四国、東北、前述の高野山を含む和歌山などのローカルエリアを検索すると、大きな差が出ます。検索結果が数件では、ユーザーはそのエリアでの宿泊を選べませんので、ある一定以上の施設の数を各エリアで持つことが、インバウンド需要を伸ばすうえで重要なことだと考えています。

全エリアをしっかりカバーできていることが、楽天トラベルの強みであると同時に、日本のOTAとして担っていくべきところである。そうした結果が、先の高野山や大久野島での予約に繋がっていると考えています」。

―確かに「宿泊プラン」というサービスは日本オリジナルなもので、海外サイトにはあまりないですね。しかし、国内客には好評の「宿泊プラン」も、海外客には少し複雑に見えるかもしれません。こういうサービスを知らない海外客に支持してもらうには、少しわかりやすく打ち出す必要があるように思います。

「おしゃるとおりで、外国語サイトでは、なるべく簡単でわかりやすい選択肢を付けることにしています。たとえば。『(客室から)富士山が見える』『世界遺産のまち』『しゃぶしゃぶが食べられる』などです。

(例)[ Features ]
- Wonderful cuisine - Mt. Fuji-viewing - Nice view room - Japanese-style room

たとえば、『富士山』の例はこれです。
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Fuji New Kawaguchiko Onsen Hotel New Century
http://travel.rakuten.com/hotel/info/49256/

こちらの施設は、施設紹介やプランの詳細で、富士山へのアクセスや客室から富士山が見られることをしっかりPRしており、予約が増えています。

また『しゃぶしゃぶ』については、以下のプランがひとつの例です。
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Ryori Ryokan Karaku
http://travel.rakuten.com/hotel/Japan-Kyoto-Kyoto_Ryori_Ryokan_Karaku/1849/

Yufuin Onsen Yufu no Irodori Yadoya Ohashi
http://travel.rakuten.com/hotel/Japan-Oita-Yufu_Yufuin_Onsen_Yufu_no_Irodori_Yadoya_Ohashi/78074/

外国語版では、このようにプラン名に入れて紹介しています。詳しく画像や料理について説明することで、予約に繋がっていると考えています」。

―他にも、日本のOTAならではの仕掛けはありますか。

「たとえば、『楽天朝ごはんフェスティバル』です。旅における「朝ごはん」の大切さに注目し、日本全国のホテル・旅館で提供している美味しい「朝ごはん」を旅のきっかけにしていただきたい! という願いを込め、2010年からスタートしました。2014年には過去最大の宿泊施設様にご参加をいただき、約1000の朝ごはんの中からから日本一の朝ごはんを決定いたしました。

朝ごはんフェスティバルとは?
http://travel.rakuten.co.jp/special/asafesta/about.html

楽天トラベルとして、さまざまなベネフィットをオプションとして付け加えることによってより、宿泊施設の単価や価値を上げることができるのではないかと考えております。その付加価値となるものとして、宿が最大限のおもてなしをもって提供している「朝ごはん」を宿泊施設様ご自身にも再認識(おもてなしのこもった朝ごはんの価値を認識)してもらうきっかけにできればと考えています。実際、お客様の声を見ていると、「夕食よりも朝ごはんが楽しみ」や「朝ごはんが良かった」というお声も見受けられました。

また、お客様に対しては朝ごはんをきっかけに旅に出るという新たな旅行需要の創出やより満足度の高い旅行につなげていきたいと考えております。

なかでも2014年、西日本大会で準優勝した京都センチュリーホテルについては、実際に朝ごはん会場にて朝ごはんフェスティバル受賞を大々的に打ち出していただいています。

京都センチュリーホテル
http://www.kyoto-centuryhotel.co.jp

同朝ごはんページ
http://www.kyoto-centuryhotel.co.jp/restaurant/lajyho/post_95.php

同ホテルには、海外メディアからの取材も来ています。

SUGOI JAPAN - สุโก้ยเจแปน ตอนที่30 "เทศกาลอาหารเช้า" Japanese breakfast (Tokyo)
https://www.youtube.com/watch?v=Yrz6z2x713Q

SUGOI JAPAN - สุโก้ยเจแปน ตอนที่31 "เทศกาลอาหารเช้า 2" Japanese Breakfast (Tokyo)
https://www.youtube.com/watch?v=uAzxjH3StEo

この番組はタイのテレビ放送(チャンネル5)やYOUTUBEでの公開が行われています」。

実は、先月ぼくは京都に行く機会があり、噂の朝ごはんを食べに、わざわざ京都センチュリーホテルに早起きして訪ねてみました。2階ロビーにあるビュッフェレストラン「オールデイダイニング ラジョウ」には、アジアからのツアー客であふれていました。朝食に2600円もかけることはめったにありませんでしたが、自家製ローストビーフはわざわざ食べにくる人がいるというのもうなづけました。宿泊客ならこれがフリーというわけですから、前の晩の夕食は軽めにすませておきたいものです。

国内外に限らず、たいていのホテルで朝食を提供しているわけですから、それが美味しいと評判になれば、集客に活かせることは確かでしょう。

こうした日本流のサービスをベースに訪日客の取り込みを図る楽天トラベルのやり方は、エクスペディアなどの海外サイトとはさまざまな点で違うところがあり、これがかえって興味深いといえます。この際、どちらが正しいとかいう必要はなさそうです。訪日客は多様化しており、それに応じたサービスの領域が拡大していくことに意味があると思うからです。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-09 11:58 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 07月 08日

ホテルが外国客を受け入れるメリットは何か(エクスペディアの取材から)

エクスペディアは、米国生まれの世界最大のオンライン総合旅行サイトです。
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エクスペディア
http://www.expedia.co.jp/

グローバルの月間ユニークユーザー数約9000万人、年間で5兆円の売上があるそうです。本社は米国ワシントン州ベルヴューにあります。

テレビやネットのCMを通じて、エクスペディアがホテル予約サイトであることはすでに知られていると思いますが、ここでいう総合旅行サイトとは、ホテル以外に航空券やその他の旅行サービスをすべて扱っているオンライン旅行会社ということです。楽天トラベルと同じです。違いは、ワールドワイドに拠点を広げ、世界中のマーケットを相手にしていることでしょう。

海外に比べ、日本のオンライン旅行比率は低いといわれていましたが(それだけ日本ではリアル旅行店舗がそれなりの存在感を持ち、低価格化の波に対応してきたからですが)、最近では33%に上昇しているようです。

日本の旅行予約、ネット比率は33%に、オンライン旅行市場規模は2.9兆円(2015年4月23日)
http://www.travelvoice.jp/20150423-41292

先日、エクスペディアの日本法人を取材する機会がありました。都内で外国客に人気のホテルの大半がエクスペディアやBooking.comなどの海外ホテル予約サイトから予約を受けていると聞いていたからです。確かに、海外の訪日旅行者にとって宿の確保をするうえで頼りになるのは、ホテル予約サイトだからです。

日本法人の木村奈津子マーケティングディレクターに話を聞きました。

―エクスペディアの特徴は何でしょうか。

「2006年11月に日本法人を設立し、海外ホテルに強い予約サイトとしてスタートしました。ご存知のように弊社はマイクロソフトの旅行部門として立ち上がっていますから(現在は独立)、本社はアメリカで、その後、ヨーロッパ、オーストラリア、インド、そして日本という順で海外展開を進めてきました。

現在では世界に31の販売拠点があります。それだけに、日本のお客様には海外のあらゆる場所のホテルをご提供できます。ホテルの側からすれば、日本の旅行会社が国内のお客様を中心に何人送客できるかに対し、我々は世界中から送客できるといえるのが強みです。そのため、仕入れ交渉をするうえで世界最大規模のメリットが出る。それが弊社の掲げる「最低価格保証」につながると考えています。

当初はホテルをメインに扱っていましたが、2011年から航空券。今後は保険やレンタカーを強化することで、名実ともにオンライン総合旅行会社となることを目指しています」
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―確かに他の海外サイトはホテルのみの扱いが多いようですが、エクスペディアは違うのですね。ところで、日本進出にはどんな理由があったのでしょうか。

「日本の旅行市場の規模を考えると、グローバル企業にとっても魅力的です。以前は日本のオンライン旅行比率は決して高いとは言えませんでしたが、オンラインのパイが拡大基調にあることを見極めながら進出の時期を決めたといえます。いまやオンライン旅行会社のニーズは拡大していると思います」。

―確かに、自分の周囲でも旅慣れた人ほど、国内の旅行サイトではなく、海外の旅行サイトを利用する人が増えていると思います。それは先ほど言ったように、比較検討できる海外のホテルの数が国内サイトに比べ圧倒的に多いからでしょう。世界中日本人が訪れていない場所はないというけれど、ホテル選びにはできる限り多くの選択肢がほしいというニーズは旅慣れた人間ほどあります。それに応えうるのは、海外の旅行サイトであることは間違いない。

ところで、このところ都内のホテル関係者の話を聞いていると、海外のお客様の予約はたいていエクスペディアのような海外予約サイト経由が多いと聞きます。これは高級シティホテルからゲストハウスのような格安宿まで共通しています。海外経由で日本のホテルを予約するニーズが拡大しているのですね。いま日本法人の取り扱いでは、国内客と海外客ではどちらが多いのですか。

「現状では、やや国内客の海外予約の取り扱いが大きいですが、インバウンド(海外客の訪日予約)は勢いがある。震災直後は打撃が大きかったが、この2、3年で状況は大きく変わってきました」。

―海外客の訪日予約はいつ頃から増えましたか。どこの国の取り扱いが多いのですか。

「訪日の取り扱いでは、アメリカのパイが最大ですが、2位以下はアジアの国々です。特にこの3年でアジアは伸び率が高い。背景には、日本法人設立後しばらくして、2012、13年に一気にアジア市場に販売拠点を開設したことがあります。現在、アジア11カ国・地域に拠点がある。なかでも韓国、シンガポール、タイ、台湾、香港の市場が伸びています。また韓国、香港、台湾、タイのエクスペディアでは訪日市場の売上が最大となっています」。

エクスペディアではアジア各国からの訪日ホテル予約が急増している
http://inbound.exblog.jp/24509107/

―国籍によって都内の人気エリアが異なるそうですね。

新宿は都内で外国客に最も人気なホテル地区(エクスペディア調べ)
http://inbound.exblog.jp/24510962/

「それをまとめたのがこのマップです。これまでエクスペディアの利用の多い欧米客の宿泊エリアは都内の南半分に偏っていましたが、ここ数年、旅行単価の安いアジア客が増えたことで、都内北側のホテル利用も増え、いまではまんべんなく広がっています」
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―なかでも都内で宿泊先の人気エリアはダントツで新宿だそうですね。その理由は何でしょうか。

「ユーザーのコメントなどから、以下のように説明できると思います。

■アクセス面:新宿は都内の各種観光地へのアクセスが良いほか、海外の人に人気の箱根にも電車で一本、富士山にもバスで一本で行けて便利。

■街の魅力:大都会を象徴する大きなビル群と、歌舞伎町や思い出横丁のような古い日本のごちゃごちゃしたところが入り混じっているのがいい。

■施設面:高級ホテルからエコノミーホテルまで選択肢が豊富。六本木や赤坂だと高級ホテルばかりで、所得のある欧米客が集中してしまうが、近年増えているアジア客はエコノミークラスで十分。

ホテル人気ランキング(予約件数)をみると、有名な高級ホテルというより、リーズナブルな宿泊施設が多くなっています」。

―2014年に人気急上昇した都市のランキングの上位に沖縄が入っています。沖縄ではどのようなタイプの施設が人気なのでしょうか。国籍でいうと、どこが多いのですか。

「沖縄は、香港、韓国、台湾のお客様に人気です。近年ではLCCの直行便の乗り入れが多く、家族旅行やゴルフにと、気軽に国内旅行の延長上のような形できていただいています。

沖縄でのウェディングもかなりメジャーになってきました。傾向としては2回目、3回目のリピーター層が多く、那覇や恩納村などの本島王道エリアから足を伸ばして、北部の美ら海水族館周辺エリアや名護のホテルが人気です。

人気ホテルは、ザ・ブセナテラス、オキナワマリオットリゾート&スパ、ザ・リッツカールトン沖縄などのラグジュアリーリゾート。ヨーロッパ圏の方は、離島びいきが多く、石垣・宮古・久米島が人気です」。

―お話をうかがっていると、当初日本の海外旅行市場に狙いを定めて参入したものの、インバウンド市場の急速な拡大にともない、訪日外客向けの国内ホテルの仕入れが急務となっているように思われます。

「おっしゃるとおりです。当初は欧米客が主流でしたが、アジア客はレジャーの比率が高く、リピーターも多いので、東京や大阪だけを押さえていても足りない。弊社の仕入部隊も地方の在庫強化を進めています。アジアからの急速なインバウンド需要に対応していく必要があるからです」。

―ホテル予約サイトには国内客向けと海外客向けの2つの顔がある。海外のホテル予約サイトは国内サイトに比べ、海外客の国内ホテル手配は弱みがあるといえますね。国内ホテルの仕入れ在庫数は国内サイトにはかなわないからです。また国内の宿泊施設のすべてが外国客を受け入れているかというとそうではない。こうしたなか国内ホテルの仕入れはどうしていますか。

(以下、仕入れ担当のレラン・ラビ アソシエイトマーケットマネジャー)

「正直なところ、数年前まではインバウンドの割合が少なかったです。あってもせいぜい東京、京都、大阪のゴールデンルートがほとんど。ところが、最近急速に北海道や沖縄、福岡、箱根などに足を延ばす海外客が増えています。そのため、弊社の仕入部隊も全国を飛び回り、契約施設を拡充しています。しかも、どんな施設でもいいというのではなく、なるべく外国客が泊まりたくなるような宿と契約しようと考えています。」

―外国客が泊まりたくなる宿とはどんなものでしょうか。

「実を言えば、外国客だからといって一括りにはできません。国によって全然違います。同じ欧米でも、なじみのあるヒルトン、ハイアットに泊まりたい人もいれば、日本でしか体験できないカプセルホテルや旅館に泊まりたいという人もいる。

アジア客は一般にリーズナブルな価格帯のホテルにニーズが大きいので、ビジネスホテルとの契約も増やしています」。

―外国客を泊めることに抵抗のある施設もまだ多いのでしょうか。

「インバウンドというキーワードは盛り上がっていますが、地方の旅館などに話をすると、外国客も取っていかなければいけないのはわかっているが、外国語が出来ないからと躊躇する経営者の方もいます。2020年のオリンピックは決まっている以上、どこかのタイミングで始めなければとは考えているが、タイミングを見計らっているような方もいます。ですから、我々はいまこそそのタイミングですと営業しています」。

―外国客を受け入れることのメリットは何でしょうか。

「いくつもあります。ひとつはリードタイムが長いこと。リードタイムとは、予約を入れてから実際に旅行するまでの日数のことで、ホテルの側からすると、予約がギリギリになるより、事前に入っているほうが安心です。海外のお客様は数か月前から予約を入れるケースが多いんです。

もうひとつは連泊が多いこと。一般にインバウンドの滞在は平均3~4泊といわれます。また平日利用も多く、連泊してくれるので、平日の需要の弱い曜日も埋められる。シーツの交換など、コストも軽減できる。アジアの団体客は1日1日動いていくイメージがあるが、エクスペディアはFITのみの扱いです。カプセルホテルから5スターホテルまでさまざまな需要があります」。

-もうひとつうかがいたかったのは、レイティング(ホテルの星付け)についてです。エクスペディアには独自の基準によるレイティングがあるといっていましたが、これはどんなものでしょうか。日本人の評価とは少し違うのでしょうか。

「世界基準でみると、同じ3つ星ホテルでもアジアの国のそれと日本では質が違う面もあります。海外を旅慣れている外国客が日本のホテルに泊まると、シーツがきれいで全然クオリティが違うという印象を持つ場合も。一方、客室の狭さは日本の特徴といえます。

エクスペディアには独自のスターレイティングチームがあって、以下のような基準で星付けをしています。

・施設の充実度
・サービスレベル
・部屋の内装
・共有部の内装・外観
・アメニティの充実度
・ホテルの築年数 など」

―最後に、仕入れ担当者からの宿泊施設に対するアドバイスをお願いします。外国客を受け入れるためにホテルが考えるべきことは何でしょうか。

「確かに、外国人に慣れていない施設では、言葉の面などハードルが高いと考えられるかもしれませんが、外国客も日本人がペラペラと外国語を話せるとは思っていません。最近の外国客はネットやガイドブックでよく調べてから訪日しています。たいていの日本のルールはよく理解している。エクスペディアが扱うのは、団体ツアーの世界ではありません。

ですから、何か特別に改善すべきというより、いままで通りのサービスで外国客は満足してくれると思っていただいていい。無理して外国客に合わせる必要はない。日本人に対するのと同じサービスで十分です。

問題はメンタルにある。その点少し日本人はまじめすぎるかもしれません。

ただし、シンガポールからの出張者が言っていたのは、たとえば、トイレに英語表記がほしいとのこと。日本の温水洗浄器付きトイレは使い方がわかりにくいものです。ボタンひとつ意味がわからないと焦ってしまうそうです。館内の英語表記は必要でしょう」。

訪日外国人の急増で、特にアジアからの団体客の受け入れを始めたホテルや旅館の苦労が並大抵ではないという話をよく聞きます。温泉やトイレの使い方が日本人には信じられないような結果になるといいます。しかし、エクスペディアのような海外ホテル予約サイトは、基本的にFIT(個人旅行者)を対象としていることから、海外旅行も慣れていて、こうした非常識な事態はほとんど考えられません。この違いは大きいといえます。

アジア客を扱うランドオペレーターから、海外と同じように日本でもホテルに対する公的な星付けをしてほしいと要望がよく聞かれます。海外ではツアー料金を決める際、ホテルが2つ星なのか3つ星なのかで差別化することができるが、日本ではそれぞれのホテルの評価があいまいで、料金差を設定するのが難しいからです。これはあからさまな「格差」が可視化することを好まない日本社会の特性からくることなのかもしれません。なぜ日本のホテル業界が星付けを採用しないのか、ぼくには本当のところはよくわかりませんが、こうなってしまうと、少なくともインバウンドの世界ではエクスペディアのレイティングがスタンダードになっていく可能性もあるのではないでしょうか。

いずれにせよ、いまの時代、どんなに無名の施設でも、適正な価格帯でエクスペディアに載せたとたん、予約が入ることはあながち誇張とはいえません。それだけに、今後ますますエクスペディアの国内宿泊マーケットにおける存在感は増していくのではないかと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-08 21:22 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 06月 17日

シェアハウスのホテル化で外客受入に成功=「ゲスト交流型ホテル」とは?

台東区池之端にあるホテルグラフィー根津は、知る人ぞ知る隠れ家ホテルです。開業は2013年3月で、いまや外国客が90%以上を占めるといいます。
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ホテルグラフィー根津
http://www.hotel-graphy.com

海外ホテル予約サイトのエクスペディアを通じて2014年に予約件数の多かったホテルが表彰される「エクスペディアアワード2015」でベストパートナー部門を受賞しています(http://www.travelvoice.jp/20150325-39644)。

このホテルのコンセプトは「ゲスト交流型ホテル」です。運営しているのは、ソーシャルアパートメント(シェアハウスの進化系)という新種の賃貸住宅を手がけてきた株式会社グローバル・エージェンツという会社です。

株式会社グローバルエージェンツ
http://www.global-agents.co.jp/

シェアハウスの発想で運営されている「ゲスト交流型ホテル」が、なぜ外国客に人気なのか。株式会社グローバルエージェンツの山崎剛代表取締役社長に話を聞くことができました。以下、そのやり取りです。

―こちらを初めて訪ねたとき、地下鉄千代田線根津駅から狭い路地を抜けていくと、突然ホテルが現れたという印象でした。こんな住宅街の中にどうしてホテルがあるのだろうと。もともとこの建物は何だったのですか?

「築40年の旅館をリノベーションしたものです。客室数は64室。旅の醍醐味は、地元の人との交流にある、というのが私の考えです。ですから、ここにはホテルの宿泊客だけでなく、日本人のレジデンスも住んでいます」

―ホテルでありながら住人もいる。ゲストとレジデンスが同じ空間を過ごすということが「ゲスト交流型ホテル」ということなのですね。

「『ゲスト交流型ホテル』を説明するためには、もともと弊社が手がけている『ソーシャルアパートメント』について話す必要があるでしょう。

これは、従来のマンションと違い、プライバシーがしっかり確保されたワンルームに加えて、入居者同士が集まれるラグジュアリーな共用ラウンジが備えられている賃貸物件です。

ワンルーム+αという発想です。家の中でもなく外でもない共用ラウンジというセミパブリックなスペースで行われる多様な入居者間のコミュニケーションこそが、ソーシャルアパートメントの一番の醍醐味。多様な世代、属性、国籍の人たちが住み、共用ラウンジでの日常的なコミュニケーションを通しえ、想像を超える気づきや可能性の発見に出会うことができ、自分の世界が数倍に広がるはずです」。
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世界が広がる隣人交流型マンション『SOCIAL APARTMENT』
http://social-apartment.com/

―住人同士のコミュニケーションにこそ価値がある住まい方ということでしょうか。その発想の先にあるのは、宿泊客同士がコミュニケーションできる空間を備えたホテルということなんですね。こういうスタイルは外国客に好まれるものなのでしょうか。実際の宿泊客の国籍はどうですか。

「欧米客とアジア客は半々。最近、アジア客が増えています。実際には、宿泊客のうちどれくらいの方がこのコンセプトを理解しているかはわかりません。それでも、海外を旅したことのある人ならたいていゲストハウスの世界を知っているので、ゲスト同士のコミュニケーションの場があることは喜んでもらえると思っていました。ただし、ホテルを開業する以上、多くの外国客に来てもらえるように、具体的には以下のことを考えました。

まず価格設定を都内のビジネスホテルの価格帯に合わせました。これは海外FITのボリュームゾーンにも見合っています。その代わり、フロントオペレーションを簡素化し、客室の内線電話も外しています。いわゆる“おもてなし”はやらない。サービスを売りにしない。国内のホテルがよくやる宿泊プランも一切なし。

そのぶんリノベーションで力を入れたのはデザインのクオリティです。外国客は海外の予約サイトの写真を見ながらホテル選びをする。価格以上の価値を感じさせるデザイン性、ここで勝負すればいい。むしろこれが外国客にはわかりやすく、選びやすいのです」。
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実際の宿泊客の様子を知りたくて、荒島浩二支配人にも話を聞きました。

―外国客はやはり海外のホテル予約サイトを通して予約されるのですか。

「expediaとBooking.com から予約が入るのがほとんどです。一般に外国客は、エリアと価格帯でホテルを選びます。うちは上野エリアとして検索されます」

―上野は成田空港からのゲートウエイですから、初めて日本を訪れる旅行者にとってホテルのロケーションとしては最適に映るでしょうね。

「でも実際には、上野駅からのアクセスはあまりよくありません。歩くと15分以上かかるので、タクシーでワンメーターと伝えるようにしています」

―確かに、住宅街の中にあり、外国客が歩いて探すのは大変だと思われます。しかし、山崎社長が話していたようにデザイン性と価格帯にそれ以上の価値を見出すことで選ばれているということなのでしょうか。

「そうだと思います。そこに価値を感じる方が選んでくれていると思います」
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―ロビーのカフェや共同スペースで見かけるのは、多国籍の方たちですが、やはり若い世代が多いように見受けられます。

「はい、若い世代の宿泊客が多いと思います。最近、日本にもデザイン性を売りにしたホテルが開業していますが、古い施設をリノベーションしたタイプが増えています。その先駆けが目黒にあるCLASKAというホテルで、若い旅行者に人気です」。

CLASKA
http://www.claska.com/

―いまでもレジデンスの方はいらっしゃるのですか。ゲストの方と一緒に共同キッチンを使ったりするのですね。

「ええ、そうです。開業して2年たちましたが、最初はレジデンスの方の比率も高かったのですが、だんだんゲストが増えてきました。現在では約8割がホテルゲストです」。

―外国客はどんな過ごし方をしているのでしょう。

「アジア客と欧米客ではずいぶん違います。アジア客は連泊といっても、2~3泊がふつう。滞在中の細かいすきのないスケジュールを組んでいて、ショッピングを中心に都内を散策しているようです。ですから、フロントに聞かれる質問も、たいてい『ここに行くにはどうすればいい?』というようなものです。やりたいことは決まっていて、そのための具体的な方法を知りたいのです。
 
一方、欧米客は1~2週間滞在する方が多い。予定もそんなに決まっていなくて、前の晩になって明日富士山に行く、日光に行くなんて言っている。聞かれるのは、『今日ヒマなんだけど、どうすればいい?』というような質問です」。

―なるほど、アジア客と欧米客では行動パターンがずいぶん異なるのですね。

今後、外国客向けに何か新しい取り組みはお考えですか。

「実は、うちのホテルには個室だけでなく、ドミトリー6人部屋があるのですが、先日50代のフランス人男性4人組が1週間滞在されました。欧米客にはそれぞれ自分のスタイルがあり、細かいことは気にしない。それでも、今度ふたつの客室をぶち抜いてスイートルームをつくる予定です。いろんなタイプのゲストがいらっしゃれるようになると思います。

課題に感じているのは、地元の谷根千の面白さをゲストの多くが知らないでいることです。上野に近い、価格帯、デザイン性の観点でうちを選んでくれるのはわかりましたが、せっかくホテルの周辺は面白いエリアなのに、そこを通り過ぎて行ってしまってはつまらない。ですから、今後はホテルを起点とした地元ツアーをやりたいと考えています」。

同社は今年8月、沖縄にホテルエスティネーション那覇を開業する予定です。こちらはホテルゲストのみの施設ですが、地元那覇の人たちも利用できるよう1階にバーを設け、レジとホテルのフロントを一体化しているそうです。 

ホテルエスティネーション那覇
http://hotel-estination.com/

こうした従来のホテル業界の既存概念にとらわれない自在な発想やオペレーションも「100室未満の規模だから可能」といえるのかもしれませんが、大学時代に起業したという若いベンチャー企業家(山崎社長)にとって、今日の訪日外客の増加というトレンドは自らの考える新しいビジネスの可能性を賭けるうえで追い風になっていることがよくわかります。

いまの時代、自分たちが考えるべきことは「多様なインバウンドのニーズのどこにニッチを見つけるか」(荒島支配人)だというのです。こうして新しいスタイルの宿泊施設が生まれていくのだとしたら、いい話だと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-17 14:58 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 06月 12日

6月に入り、政府発の訪日旅行拡大効果を伝える強気の発表続く

6月に入り、訪日外国客増加の統計を背景にした政府発の強気の発表が連日のように続いています。

ニッポン、観光で稼ぐ 消費倍増年4兆円・雇用40万人増 政府新目標(朝日新聞2015年6月6日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11793788.html

昨年の外国人旅行者による国内の消費額が2兆円超えをしたことから、倍増を目指すというものです。

「4兆円は、旅行中の宿泊費や買い物代、食事代などを合計した金額。14年から倍増させる目標だ。目標に据える4兆円は、日本の鉄鋼製品の輸出額(14年)に匹敵する。観光庁の試算では、消費額が2兆円増えることで、地方を中心に40万人の新しい雇用が生まれる。

この目標を実現するため、消費税が免除になる「免税店」を、東京・大阪・名古屋の3大都市圏以外で20年までに今の3倍の2万店に増やす。

売り込む商品も工夫をする。外国人におすすめの商品を認定して、地域ごとの「ブランドマーク」を付ける。

政府は、外国人旅行者を20年に2千万人に増やす目標を立てているが、数年前倒しで達成できるとみている。今後も、今月中旬にブラジル、モンゴルも早期にビザの要件を緩めるなど、外国人旅行者が入国しやすくする方針だ」(一部抜粋)。

さらに興味深い報道は、訪日外国人効果がGDP成長に寄与しているというものです。その要因として、設備投資が増えたことにあり、背景のひとつに「訪日外国人の増加でホテルの改修」があったことに触れています。

GDP、設備投資増え上方修正 年率換算3.9%増に(朝日新聞2015年6月8日)
http://digital.asahi.com/articles/ASH677TH7H67ULFA008.html

「内閣府が8日発表した2015年1~3月期の国内総生産(GDP)の2次速報は、物価の変動をのぞいた実質成長率が、前期(14年10~12月)より1・0%増だった。年率換算では3・9%増。5月20日発表の1次速報では年率2・4%増だったが、企業の設備投資がこのときの想定より大きく伸びたことから、大幅な上方修正となった。プラス成長は2四半期連続。

上方修正の最大の要因は、設備投資が1次速報の前期比0・4%増から、2・7%増へと大きく修正されたことだ。1次速報の後に発表された「法人企業統計」などをもとに推計し直した結果、自動車関連向けの生産能力を上げた電気機械や、物流センターの建設があった卸売業、訪日外国人の増加でホテルの改修があったサービス業などで投資が伸びていた」(一部抜粋)。

最近、ぼくは訪日客の増加で日本のホテルシーンがどう変わってきたかというテーマで取材を続けています。ここ数年、特に都内のホテルの新規開業ラッシュやリノベーションによる新種の宿泊施設が次々に生まれている事情を知っていたので、なるほどと思いました。いまの時代、マンションよりホテル投資が有望だと考えられているのです。

そして政府は6月9日、2015年版観光白書を公開しました。

「平成26年度観光の状況」及び「平成27年度観光施策」(観光白書)について
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000252.html

あるネットメディアは、国内の宿泊旅行の状況についてこう報じています。

観光白書2015、宿泊施設の客室稼働率が過去最高、国内旅行は減少も外国人増加で宿泊者数はプラス (トラベルボイス2015年6月10日)
http://www.travelvoice.jp/20150610-44369

「2014年の国内旅行で日帰り旅行が前年比1.8%減の3億449万人、宿泊旅行が4.0%減の3億771万人に減少。2011年から続いていたプラス推移はマイナスに転じた。この要因として観光白書では、消費増税や物価上昇、天候不順等の影響を上げている。

ただし、延べ宿泊者数は1.4%増の4億7232万人泊と増加。日本人の減少(1.1%減の4億2750万人)を外国人(9.5%増の4480万人)が補っており、2014年の国内旅行市場の成長はインバウンドが牽引したことが明らかとなった。

全国の客室稼働率も58.4%と調査開始以来過去最高を記録。特に東京都は2011年の68.0%から81.5%、大阪府は68.2%から81.4%と8割を超えた。その一方で47都道府県の稼働率の標準偏差は7.7%から10.2%に拡大し、地域差が広がったことを指摘している」(一部抜粋)。
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これらの統計からいえるのは、いまや国内の宿泊者の10人に1人は外国客であること。東京や大阪などの大都市圏での客室稼働率が過去最高になっていることです。地方都市も稼働率は上がっているものの、そのぶん大都市圏との格差があることもわかります。

2015年版観光白書では、他にも外国客による消費の実情について詳しく解説しています。

その内容については、またいつか検討してみようと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-12 11:20 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 06月 06日

上野には新しいタイプの外客人気ホテルが生まれている

雨上がりの爽やかな空気の中、今日は朝から上野方面に行く用事があり、仕事のあと、外国客に人気のホテルを訪ねてみました。

最初に訪ねたのは、台東区池之端にあるホテルグラフィー根津です。このホテルは、2014年海外ホテル予約サイトのエクスペディアを通じて予約件数の多かったホテルが表彰される「エクスペディアアワード2015」でベストパートナー部門を受賞しています(http://www.travelvoice.jp/20150325-39644)。

ホテルグラフィー根津
http://www.hotel-graphy.com
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地下鉄千代田線根津駅を降りると、そこは「谷根千(谷中・根津・千駄木)」と呼ばれる神社仏閣や古い家並みの残るまちが広がります。地図を見ながら、細い路地を抜け、住宅街の一角にそのホテルはありました。
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ロビーはしゃれていて、フロントの隣にたたみの間のショースペースがあります。
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1Fにはカフェレストランがあります。ここでは多くの外国のゲストが朝食をとっていました。
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関係者の話によると、この4階建ての建物はもともと築40年以上の旅館で、それを買い取りリノベーションして2013年3月に開業したものだそうです。屋上からは東京スカイツリーや上野の森も見えます。周囲は静かな住宅街です。
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全64室で、シングルやツイン、ドミトリー(6人部屋)もあります。ゲストの90%以上は外国客で、アジア系と欧米は半々くらい。香港や台湾、韓国人が多いそうですが、最近はタイ人も増えてきているそうです。
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エクスペディアではアジア各国からの訪日ホテル予約が急増している
http://inbound.exblog.jp/24509107/

なにしろ1泊7000円からと都内のビジネスホテルと同じ価格帯のうえ、部屋はとてもおしゃれなので、エクスペディアやブッキングドットコムを利用した海外からの予約が圧倒的に多いそうです。

ところで、このホテルのいちばんの特徴は「ゲスト交流型ホテル」というコンセプトです。実は、このホテルを運営しているのは、ソーシャルアパートメント(シェアハウスの進化系)というスタイルの賃貸住宅を手がけてきた株式会社グローバル・エージェンツという会社で、このホテルにも現在、レジデンス(賃貸契約している住人)がいるんです。

最近は訪日客の増加に伴い、外国客のゲストが大半だそうですが、開業以来日本人レジデンスも住んでいて、外国客と館内で交流しているというのです。

そのための共有スペースがこのキッチン付きの広い食堂とラウンジです。
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ここでは、レジデンスとゲストが一緒にキッチンを利用したり、食事をしたり、ラウンジでくつろいだりするわけです。
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以前、蔵前にある外客に人気のゲストハウス「Nui. Hostel & Bar」を訪ねた話をしましたが、ホテルグラフィー根津は価格帯こそビジネスホテルに近いものの、旅行者と住人が交流できるという意味で、よく似たコンセプトの宿だといえます。

バックパッカーのまち、蔵前で見つけたもの
http://inbound.exblog.jp/24098909/

Nui. Hostel & Bar
http://backpackersjapan.co.jp/nui/

なぜこのようなホテルをつくったかについては、関係者に話を聞いたので、後日お伝えしようと思います。

さて、次に訪ねたのは、ゲストハウスわさびです。高速バスのVIPライナーでおなじみの株式会社平成エンタープライズが運営していることがメディアでも報じられていたので、足を運んでみました。
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日暮里からJR常磐線に乗ってひとつめの三河島駅のホームの上から大きな看板が見えました。

アポなしでフロントを訪ねると、浴衣を着た若い女性スタッフがいて、部屋を見せてくれました。ドミトリー(2800円~)と個室(4800円~)があります。
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このちょっと薄暗い部屋がドミトリーで2段ベッドが並んでいます。カプセルホテルに近い雰囲気です。同じフロアに共同浴場があります。
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お風呂の入り方や注意事項が書かれていますが、タイ語でも書かれていました。フロントの女性に聞くと、圧倒的にアジアからの旅行者が多いとのことです。
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トリップアドバイザーにコメント書いてね、というお願いの貼り紙ですが、やはりネットによる口コミで外国客がやってくることがわかります。
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面白いのは、館内に浴衣を着たマネキンがたくさん並んでいて、どうやらゲストに貸しているそうです。ロビーには下駄も置かれていて、外国客は浴衣に着替えて谷根千方面まで散策するといいます。

ゲストハウスわさび
http://guesthousejp.com/

最後は、上野に戻り、こちらは楽天トラベルアワード2014のインバウンド賞を受賞したその名もズバリ「ノンスモーカーズホテル」です。上野駅から首都高速1号上野線が頭上を走る高架の下の通りを南に徒歩5分ほどの場所にあります。ホテルが軒を並べている地区の並びにあります。

楽天トラベルアワード2014のインバウンド賞
http://travel.rakuten.co.jp/award/2014/metropolitan.html
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ノンスモーカーズホテル
http://www.nonsmokers.jp/

HPのトップにこのホテルのコンセプトが以下のように記されています。

「喫煙してはいけないという禁止ではなく、喫煙者がいないという安心へ」
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こういう明確なコンセプトを打ち出す姿勢を外国客は評価するのだと思います。

上野は成田からのゲートウエイで、初めて日本を訪れる外国客がエクスペディアなどの予約サイトでホテルを探す際、まず最初に選ばれるエリアだといわれています。彼らは土地勘がない以上、そういうものなのです。

外国客が増えることで、上野にはこれまでなかったような新しいタイプのホテルやサービスが生まれていることをあらためて実感しました。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-06 17:44 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 06月 02日

アパグループの都心出店攻勢は驚異的。今年も続々開業予定

宿泊特化型ホテルチェーンのアパホテルがここ数年、都心に続々出店しています。

特にぼくの仕事場のある東新宿では、2012年11月開業の「アパホテル東新宿駅前」(122室)を皮切りに、14年7月の「AH新宿御苑前」(411室)、14年12月の「AH東新宿 歌舞伎町」(165室)とすでに3軒が開業していますが、今年9月には同グループの東京旗艦店となる28階建ての「AH新宿 歌舞伎町タワー」(620室)が開業予定です。また先ごろ17年2月に「AH東新宿 歌舞伎町Ⅱ」(129室)の計画も発表されました。東新宿だけで5軒のグループホテルが営業することになるわけです。

同グループが攻勢をかけているのは、新宿だけではありません。以下の「アパグループ 東京都心ホテルMAP(2015年5月16日現在)」によると、すでに都心に30軒のホテルが営業中で、直近では今月24日の「AH浅草橋駅北」(161室)開業をはじめ、東京オリンピック開催の2020年までに14軒の開業が予定されているといいます。
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このMAPをみると、新宿、東京・銀座、上野といった東京のホテル地区に集中的に出店すると同時に、外国客に人気の観光地に近い東部地区により多く展開されていることがわかります。

こうした出店攻勢は、2010年に同グループが発表した中期5か年計画「SUMMIT 5-Ⅱ(第二次頂上戦略)」の中で描かれていたものです。

「SUMMIT 5-Ⅱ(第二次頂上戦略)」
http://apa.co.jp/apa_cms/?p=1152

同計画では、以下のような目標が設定されています。

●東京23区内「アパホテル」客室数10,446室(建築・設計・計画中)。
●日本最大2,400室規模アパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉計画。
●マンション「Premiere」シリーズ。東京や大阪の都心部では「CONOE」
●訪日外国人の受入強化として館内サインやホームページ等の多言語化。

●ホテル部門数値目標
①客室数10万室(自社48000室、FC24000室、パートナー28000室)
②2020年度ホテル部門売上高1,200億円
③アパカード会員1,500万人
④訪日外国人の集客強化(2020年年間宿泊者数250万人)

これをみると、アパグループが驚異的ともいうべきスピードで都心に出店攻勢をかける理由のひとつに、急増する訪日外国人マーケットがあることがわかります。またその受け入れ態勢も進めていることがうかがえます。

観光庁の宿泊旅行統計(2014)によると、全国の宿泊者(延べ)に占める外国人は前年比33.8%増の4482万人で、9.5%になるそうです。

宿泊旅行統計(2014)
http://www.mlit.go.jp/common/001084394.pdf

つまり、日本国内のホテルを利用する10人に1人は外国人という時代になっているのです。1990年代初頭のバブル崩壊以降、右肩下がりで減少を続けてきたホテル宿泊数を外国人の伸びがカバーしていることがわかります。特に、東京や大阪などの大都市圏のホテル利用が圧倒的に伸びていて、春や秋の旅行シーズンには客室不足が叫ばれるほどです。

こうした時代の流れを先読みした出店攻勢が見事に奏功しているアパグループですが、代表の元谷外志氏は独自の成長戦略についてあるネットメディアで次のように語っています(以下は簡約したもの)。

アパグループ 元谷外志雄代表に長期成長戦略を聞く
http://sogyotecho.jp/motoya-interview/

●アパグループのホテルは高級感、利便性、使い勝手の良い設備とサービスを兼ね備えた「新都市型ホテル」と呼ぶべきもの。

●企業には以下の「三段階成長論」がある。

第1段階:信用累積型経営 信用金庫で全国初の長期住宅ローン制度「頭金10万円で家が建つ」。注文住宅→建売住宅→マンション→ホテル

第2段階:資産拡大

第3段階:自己増殖 2010年から始めた「アパの頂上戦略」(5年間で東京都心部においてホテル所有数No.1・マンション供給数No.1という目標を掲げ、それに向かって事業を進めているアクションプラン)。4年半で東京の一等地に56件の物件を買い、ホテルとマンションに。減価償却で節税し、償却費と税引き後の利益を集めて次のホテルを作るので、借金があまり増えず、収益力の高いホテルを着実に建てられる。

従来のシティホテルに付きものだった料飲部門をそぎ落とし、客室の付加価値を追求する「宿泊特化」業態は、コンパクトなスペースながら満足度を高める客室設計とIT化を進めることが特徴です。アパグループはまさにこの特徴を活かして出店を伸ばしてきたといえますが、実はこれは日本国内の利用者はもちろんのこと、外国客のニーズに沿ったものだったといえます。さらに、前述のMAPからも立地の見極めが絶妙だったことは明らかです。

実は、先日あるビジネス誌の取材で元谷外志会長にインタビューする機会がありました。そこでは相次ぐ新宿地区への出店の狙いや外国客の集客に関する独自の取り組み、実際の宿泊客の国籍や利用状況などについてうかがっています。その話はあらためて別の機会にさせてもらいます。
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2014年7月の開業以来、連日満室状態が続くというアパホテル新宿御苑前店
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by sanyo-kansatu | 2015-06-02 08:48 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 05月 30日

サラリーマンからツーリストへ(新宿区役所前カプセルホテルの客層が変わった理由)

新宿区役所前カプセルホテルに泊まった翌日、同ホテル経営企画室室長の小川周二さんとフロントの川本レダさんにお話をうかがいました。

外国客に人気と噂の新宿区役所前カプセルホテルに泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24526002/

以下、そのやり取りです(敬称略)。

―昨日は、実際に泊まってみていろんな発見がありましたが、本当に外国客は多いですね。いつ頃からこんなに多く利用するようになったのですか。

小川「やはり増えたのは2年前でしょうね」
川本「でも、外国の方がいらしたのはもっと前からです」

―いつ頃ですか。

川本「震災の前からです。震災後は3か月ほど来ませんでしたが、すぐに回復しました」

―いまは毎日100人近い外国客が泊まっているようですね。

小川「そうですね。曜日にもよります。平日のほうが外国客の比率は高いと思います」

―どこの国の人が多いかなど、国籍に傾向はありますか。

小川「外国客はアジアと欧米半々です。アジアはタイがいちばん多く、マレーシア、シンガポール、最近はインドネシアの方が増えています。欧米は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンなどいろいろです」

―実は、共同スペースでマレーシアから来た7人組の若いグループと話しました。訪日初日からカプセルホテルに泊まっているそうです。

小川「その話を聞いて調べたのですが、あの方たちは、昨年の9月頃予約をされています」

―そんなに前からですか。リードタイム(予約から旅行実施までの期間)が長いですね。つまり、半年以上前から日本旅行を計画していた。でも、初日からカプセルホテル。なるべくお金をかけないで日本を体験したいというアジアの旅行者が増えているのですね。

ところで、外国客はどういう経路で予約して来るのですか。

川本「ExpediaやAgoda、Booking.comなどの海外の予約サイトを通してです。他にもHostelworldやJTBのJapanicanの利用もあります。これらのサイトには『Capsule Hotel』という独立したカテゴリーがあり、リーズナブルな宿を探したい方は簡単に見つけることができます。ありがたいのは、宿泊されたお客さまがご自身のブログやSNSで広めてくれることです」

―みなさん、カプセルホテルについてどんなことを書いているのでしょうか。

小川「スペースシップみたいだとか。あとは欧米の方は身体が大きいので、足がはみ出しちゃうけどOKとか。良かったこと、困ったことなど、いろいろ書き込まれています」

カプセルホテルのどこが外国客に人気なのだろうか?
http://inbound.exblog.jp/24532753/

―そういえば、ロッカールームの脇にポラロイドで撮った外国客の写真がたくさん貼ってありましたね。

小川「あれは4年ほど前、当時の支配人が外国客へのサービスとしてポラロイドで撮った写真を記念に渡していたのです。いまはやっていませんが」
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―外国客の対応のためにどんなことをやっていらっしゃいますか。

小川「フロントには英語を話せるスタッフを常駐させています。最近はアジアのお客さまも多いので、中国語や韓国語、タイ語、フィリピン語を話せるスタッフもいます。館内の英語表示も徹底しています」

―やはり外国語対応は大事なのですね。

小川「実際に予約をしてフロントに来られて、思っていたのとはイメージが違うと感じたのかキャンセルされる外国の方もたまにいます。そんなとき、外国語できちんと対応できれば、やっぱり泊まろうかという気になってもらえるかもしれません。またうちは食べ物の持ち込みOK」

―共同ルームで先ほどのマレーシア人たちはコンビニで買った焼き鳥を食べていました。風呂上りに何か軽くお腹に入れたい。そう思って買い込んでくるのでしょうね。そういうゆるさも、こちらが数あるカプセルホテルの中で外国客の予約件数がナンバーワンとなった理由なのでしょう。

「もうひとつ大きいのは、2年前(2013年7月)に女性フロアをオープンしたことです。それ以後、客層が大きく変わりました。以前は男性客のみでしたから、サラリーマンが大半。そこに女性客や外国客が加わることで、旅行者の比率が増えたからです。一般に女性の方はウォークインで利用されることはありません。地方から旅行で来た方や東京で就活しているという大学生もいます。女性客も外国客も事前に予約されるお客さまだという点で共通しています」
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―確かに、共同ロビーで見かけたのは若い方が多かったです。カプセルホテルでよく見かける酔客という感じの人はいませんでした。実際、外国の女性がたくさんいるような場所では、酔っ払いおじさんも気を抜いていられませんものね。もはやここは、外国人に限らず、旅行者のための宿泊施設になっているのですね。

ところで、もうひとつお聞きしたかったのは、一般に外国の個人客はひとつのホテルに連泊する傾向が高いといわれますが、こちらに連泊される方はいるのでしょうか。

小川「いますよ。2~3日は当たり前。長い人は2週間の連泊もよくあります。実は、ここ数か月連泊している外国人もいます。オランダの方です」

―数か月ですか。もうアパート代わりですね。よほどここが気に入ったのでしょうか。

もっとも、外国客が増えると、これまでになかった問題なども起きたりするのではないでしょうか。

川本「そうですね。カプセルの中でもwi-fiフリーなので、スカイプ電話をかけたり、グループでおしゃべりしたり、他のお客さまに迷惑なことがあります。あとみなさん荷物が大きいので、深夜にその整理をごそごそ始めたり」
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―彼らは海外旅行をしているのですから、それもまた楽しみでしょう。でも、それでは一般の日本のお客さまはたまらない。だから、『Please be quiet!』とあちこちに貼り紙してあるのですね。

小川「あとはタトゥーの方はチェックイン時にお断りしています。これを外国の方に説明するのが難しいですね。刺青のもつ社会的な意味が日本と外国では違うからです。外国の方にとってはおしゃれとしてタトゥーをしてらっしゃるのでしょうが、日本のお客さまにはアレルギーのようなものもあり、これは日本政府観光局でも、どう外国客に説明していくべきか検討していると聞きます」

―今後についてはどうお考えでしょうか。

小川「女性フロアを増やしたいと考えています。現在はワンフロアしかないのですが、おかげさまで予約がいっぱいだからです。またこことは別に女性専門のカプセルホテルもつくりたいですね。スタッフは全員女性です」

小川室長によると、同カプセルホテルの開業は1983年。80年代にこの業界は一気に成長したものの、バブル崩壊以降、斜陽業界と呼ばれてきたといいます。

「多少景気が良くなってきたといっても、これからは日本客相手だけではやっていけません。何より平日の稼働率を稼いでくれる外国客の存在は貴重です。2年前の女性フロアの新設も相乗効果となり、予想以上に外国のお客さまに来てもらえるようになりました。

おかげさまで現在、稼働率は8~9割と高推移していますが、課題は海外サイトによる予約が増えたことで、ウォークインが減り、割安な料金の利用が多くなっていることです。今後の課題はいかに客単価を上げるかです」

海外からのネット予約が増えることで稼働率は上がったものの、収益を上げるためには、客単価を上げる必要があるという状況は、今日のホテル業界に共通しています。国内外の予約サイトや自社サイトなど、売値の異なる複数のチャネルを通じた予約の配分をいかに調整するかは、予約担当者のレベニューマネジメントの腕にかかっています。

「見極めのポイントとなるのは、イベントと天候でしょうか。たとえば、東京マラソンや最近では嵐フェス、東京ドームでの東方神起のコンサート、年末のコミケの当日などは、数か月前から予約がいっぱいになります。また台風が近づいてくると、電車が止まることを予想して予約がどっと入ってくることもあります」

今後この傾向はますます強まり、ホテル経営におけるレベニューマネジメント担当者の責任が大きくなることでしょう。

サラリーマンから国内外の(女性も含めた)ツーリストへ。新宿区役所前カプセルホテルの人気の理由は、こうした客層の変化という市場のニーズに柔軟に対応し、ビジネスモデルの組み替えを無理なく行なってきたことにあるようです。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-30 10:17 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)