ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2014年 02月 23日

大正期にスイスから学んだ観光宣伝のさまざまな手法

前回、ジャパン・ツーリスト・ビューロー幹事の生野圑六による1912年夏のヨーロッパ視察が、ニッポンのインバウンドにとって記念碑的な意味を持ったことを書きましたが、今回は彼のスイス視察の報告を紹介します。

ツーリスト2号(1913年8月)「欧州各国に於ける外客誘致に関する施設(続き)」では、当時から観光立国として知られたスイスについてこう高く評価しています。

「瑞西と云へば、三才の童子と雖もよく知って居る通り、景色が佳く、欧州の中心に位置して交通の便も善く、登山鉄道、遊覧船、其他各種の設備整ひ、『ホテル』は到る處に経営されて居るといふ有様で、人民は少なくとも二ヶ国の欧州語を語り、其質朴親切で、物価は比較的低廉で、夏時は清涼にして三丈の暑を忘るるに足り、冬期は寒冷ではありますが、近年『ウィンター、スポーツ』の設備をなして、客を呼んで居る。斯く総ての方面より視て、此国は遊覧地たるに適して居る」。

スイスには外客誘致のための以下の3つの観光宣伝の専門機関があると生野は指摘します。

①スイス政府鉄道
②ホテル協会
③デペロップメント・ソサエティ

以下、それぞれの機関の業務や活動について整理します。

①スイス政府鉄道

スイス政府鉄道には「パブリシティ・ビューロー」という独立した旅行奨励宣伝機関があり、「毎年約拾弐萬乃至五萬圓の費用を投じている」。

業務内容は、以下のとおり。

a.外国における出張代理所の監督(ベルリン、パリ、ロンドン、ニューヨークの4カ所。繁華街に人目を惹くスイスの絵画や写真、印刷物を陳列する。新聞、雑誌にスイスの旅行ニュースの配信を行う)

b.各種広告物の出版(各種スイス旅行宣伝雑誌の出版、旅行地図の製作。これらは英仏独伊語で2~3万部発行。外国出張所、汽船会社、鉄道会社、旅行関連業者などに配布)

c.外国新聞雑誌の広告(英独のでは日刊紙、グラビア雑誌など。「日刊新聞には時として瑞西に関するアーチクルを載せることもありますが、又時として小さいスイスの風景写真を載せて、其下に記事を載せることもあり、絵入雑誌には風景等の写真を頁大に挿入する」

d.海外向けスイスの気象報告

e.外国博覧会への参加

②ホテル協会

ホテル協会は、「パブリシティ・ビューロー」が発行する宣伝媒体や外国出張所に多大な寄付を行い、サポートしている。また各地にホテル組合があり、独自で機関雑誌を発行。バーゼルのホテル協会では、海外向けの宣伝活動を行う。毎年、ホテルリストを発行。各ホテルの客室数、料金、食事代、交通の利便、暖房設備などを記載した冊子10万部を発行し、海外に配布。ローザンヌのホテルスクールでは、ホテル業者の子弟に対して外国語や経理、料理、飲料、給仕、管理などを教授し、ホテル従業員を養成している。

③デペロップメント・ソサエティ


これは日本のツーリスト・ビューローのような会員組織で、会員としては全国の「州、市、銀行、交通業者、ホテル業者、商工業組合、其他雑貨、絹、時計、写真、美術品、菓子食料品等各種の商店等、殆ど其地の主なる団体個人を網羅」している。会費は「10フラン以上」で、各地の繁華街にインフォメーション・ビューロー(観光案内所)を設置し、「其處に二三の事務員が居て、旅行に関する各種の報道は勿論、其他のホテル、商店、素人下宿、商工業上のこと迄も、無料にて質問に応じ、店の窓には必ず人の目を惹くべき時々の写真印刷物等を飾り、室内には市内案内所、附近鉄道お汽船ホテルの案内記は申す迄も無く、国内各地の同業者の印刷物を無数に竝べてありまして、随意に與へるやうになっております。又場所によりて各国のダイレクトリー、新聞、雑誌、タイムテーブル等をも備へております」)

これを読む限り、当時からスイスでは外客誘致のために政府をはじめとしたツーリスト事業者たちがいかに協力して広報宣伝の推進と外客受入態勢の整備に努めていたかよくわかります。

こうしたインバウンドの最前線の姿を目撃した生野は大いに刺激を受けたことでしょう。その一方、スイスのホテル関係者の話として次のようなことも述べています。

「尚談話中にこの人は私に向て、漫遊外客を誘致するために広告其他各種の手段を採ることは必要ではあるが、来遊せる外客を満足して帰国せしむることは最大切である。(中略)ホテルは外客にとりて旅行中の吾家である。一日見聞の愉快を追想のも、旅の疲労を静に慰するのも、皆ホテル内のことである。さればホテルの待遇にして十分ならざる以上は、到底外客を満足せしむることは出来ぬ、最重大なる責任を有する者はホテルであると申しておりました。これは大に理由のあることと存じました」。

さらに、同報告の中には、スイスの周辺国との外客誘致の競争がきわめて激しいことも触れられています。ヨーロッパ各国との外客誘致競争に対抗するために、あるスイスの関係者は以下の取り組みを始めようとしていることを紹介しています。

「政府の一省中に外客奨励中央局の設立を以て焦眉の急務なりと述べ、更に其組織に言及し、最後に其事業として旅客交通に関して発布されたる法令規則の統一、新法令の発布をなし、外客交通上の保護を計ること、旅客交通が経済貿易上に及ぼす影響の研究、各種遊覧遊戯的設備の完成、遊戯的大会の開催、外国博覧会への参加、在外案内所の完成、国際的自動車旅行の研究、特に海外に於いて瑞西国内各種の機関が箇々別々の動作をなし、廣告紹介などを行ひつつあるものを統一し、更に有効なる手段を採ると同時に、冗費を除くこと等を述べております」。

ここには、今日の問題多き日本の外客誘致の現状からみても耳の痛い指摘がいくつもあります。たとえば、外客誘致のための法令(制度設計)の不備や、「海外に於いて瑞西国内各種の機関が箇々別々の動作をなし、廣告紹介などを行ひつつあるものを統一し、更に有効なる手段を採ると同時に、冗費を除くこと」などという指摘がそうです。

100年前のスイスでは、今日の日本がいまだに克服できていない(それ以前に、問題として広く認識されているかすらあやしい)数々の問題点が、すでに指摘されていたことにあらためて驚きます。その一方で、大正時代に一から外客誘致を学ぼうとした日本の先人の心意気を思うと、殊勝な気持ちになるものです。その尽力や知見を断絶することなく、きちんと受け継いでいく必要があると思います。
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by sanyo-kansatu | 2014-02-23 16:56 | 歴史から学ぶインバウンド | Comments(0)
2014年 02月 21日

100年前の夏、外国人は日本のどこに滞在していたのか?

いまから100年前の大正2(1913)年の訪日外客数は約2万人でしたが、彼らは日本のどこを訪ね、滞在を楽しんでいたのでしょうか。

当時は国内を数日間で移動できるような鉄道網や自動車道は発達してなかったため、今日のような東京・大阪5泊6日コースのような短期間の周遊旅行はありえませんでした。そのため、多くの外国人客は東京や京都といった大都市以外は、国内各地の温泉地や避暑地、また鎌倉や日光、宮島など主要な観光地の周辺に生まれつつあった外国人経営の洋式ホテルや温泉旅館に滞在していたようです。移動型ではなく、滞在型の旅行形態が一般的だったと思われます。

ツーリスト3号(1913年10月)では、この年の7、8月「避暑地、温泉及び都会等に滞在せる外人旅客数」を国籍別に調査しています。同調査に挙げられた滞在地は以下のとおりです。

東京、横浜、鎌倉、熱海、伊東、修善寺、京都、神戸、宝塚、有馬、宮島、道後、別府、長崎、小浜、温泉(雲仙)、伊香保、草津、日光、中宮祠、湯本、鹽原(塩原)、松島、大沼公園、登別温泉
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なかでも外客数のトップは、日光6256人。次いで鎌倉3368人、京都3008人、東京1738人、中宮祠1593人、横浜1127人、湯本1067人、小浜1039人、神戸878人、雲仙765人と続きます。

調査の結果、この年の7、8月中に日本に滞在していた外国人客数は、24736人でした。国籍別にみると、トップが英国人9225人、次いで米国5992人、支那3001人、ドイツ2866人、フランス1440人、ロシア1044人と続きます。

ただし、この調査において「唯外人滞在数最も多き箱根及び軽井沢の調査未だ判明せざるは、甚だ遺憾とする所也」とあり、これが国内のすべての外国人客を捉えきれていないことも正直に明かされています。

その理由として「されど此種の調査は、事頗る煩累を極め、絶対に正確を期せんこと容易に非ざるべく、殊に外人経営のホテルには宿帳を其筋に提出せざるものもあるとのことなれば、愈々其困難なるを察するに足ると共に、詳細なる回答を送られた警察署に対しては玆に感謝の意を表す」とあるように、当時は外国人経営のホテルも多く、調査が難しかったことがうかがえます。

それをふまえたうえで、同誌は当時の外国人の日本の滞在状況について、こう書いています。

「外人旅客頗る多数なるものの如しと雖も、其大部分は従来より滞在せる外人にして、実際漫遊外客は一小部分なりと推すべき事情あり、若し従来の滞在者と漫遊者とを判然区別し得ば、一層有益なる統計を作り得べしと雖も、暫く如上の統計を以て吾人の参考に資せん」。

確かに、当時すでに在留外国人が多くいたため、国内の避暑地や観光地に滞在する外国人の多くが実は彼らであって、その時期海外から訪れた外客(漫遊外客)の比率はまだ少なかったようです。とはいえ、当時から外国人に国内の温泉地や観光地が人気だったこともよくわかります。
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by sanyo-kansatu | 2014-02-21 08:45 | 歴史から学ぶインバウンド | Comments(0)
2014年 02月 13日

27回 ラオスでは片田舎でも東京よりWi-Fi環境は進んでいます(改題)

昨年、史上初の訪日外国人数1000万人を達成し、今年の春節は中国からの訪日客も戻ってきました。街角でよく見かけるようになった外国人ツーリストは、日本でどんな風に過ごし、何を不便に感じているのか。海外の事例と比較しながら日本の受け入れ態勢の課題を検討し、訪日外客にとって居心地のいいツーリストタウンの条件について考えます。
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昨年8月、インドシナ北辺の国境地帯を1週間ほど旅しました。タイの首都バンコクから夜行列車でラオス国境の町ノーンカーイに向かい、国境の橋を渡ってラオスの首都ビエンチャンへ。そこからラオ航空の国内線でルアンナムターという少数民族の集落のトレッキングで知られる町を訪ねました。中国国境(雲南省)からも近い町です。

ルアンナムターでは、ひとりの外国人ツーリストとして、とても居心地のいい時間を過ごせました。

なぜだったのか。

ツーリストに必要なインフラがすべて揃う町

ラオスといえば、昨年11月に安部首相が訪問し、同国との経済協力を約束したことが報じられましたが、アセアン諸国の中では最貧国として知られる途上国です。目覚ましい経済発展が続く他のアセアン諸国と比べると、のんびりしたアジアの風情が残っていて、世界遺産に登録されたルアンプラバーンの仏教遺跡や少数民族の集落を訪ねるトレッキングなどが海外のツーリストの間で人気となっています。

でも、ルアンナムターの居心地がいいのは、それだけが理由ではありません。ツーリストの身になって考えれば、東京よりはるかに便利で快適な滞在が楽しめるからなのです。

どういうことでしょうか。

なぜなら、この小さな町にはツ-リストに必要なすべてのインフラがコンパクトに揃っているからです。

ツーリストに必要なインフラとは何か。それは「住(アコモデーション)」「食(グルメ)」「足(トランスポーテーション)」「観光(アトラクション)」という4つの要素です。

そこで、この小さなツーリストタウンの4つのインフラの中身を見ていきましょう。
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ルアンナムターのゲストハウス兼カフェレストラン

まず「住(アコモデーション)」から。ルアンナムターの市街地は南北2km、東西1kmの範囲にほぼ収まっていて、ほとんどのホテルがメイン通りに沿った100mほどのエリアに並んでいます。市街地から7kmの空港からバスに乗って町に降りたツーリストは、その気になれば、歩きながら料金や客室の快適度などを比較して、ホテルを選ぶことができます。町の規模にしてはホテル数が多く、選り取り見取り。選択肢の自由が多いことで、ホテル選び自体が旅の楽しみにつながります。そういうのが面倒くさい、またホテルの予約なしで旅行するのは不安という人も心配ご無用。この町のホテルにはたいてい英語のHPがあって、ネットで事前に予約ができます。ホテルのスタッフは簡単な英語は話しますから、予約なしでも問題ありません。
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この町のホテルはWi-Fiが完備

外国人ツーリストのホテル選びの条件として、Wi-Fiが使えるかどうかはとても重要です。その点、この町のホテルはどこでもWi-Fiが完備しています。Wi-Fiが使えなければ、ツーリストからスル―されてしまうからです。実際、ぼくはこの町から東京の友人にラインを使って通話したのですが、音声はクリアでまったく問題がありませんでした。Wi-Fiはチェックインのとき、オーナーに渡されたカードに書いてあるパスワードを入れるだけ。無料です。いまどきアセアン諸国のツーリストが多く訪れる町では、これは常識といっていいでしょう。こんなこと、あまり言いたくはないのですが、アジアの片田舎ですら東京よりずっと通信環境は進んでいるのです。

次は「食(グルメ)」です。ホテルの部屋で荷を解き、シャワーを浴びたら、誰でも町を歩いてみたくなるものです。食事をどこで取ろうか、ミネラルウォーターや軽食はどこで買えばいいか。この町にはコンビニはないけれど、ツーリスト向けの雑貨屋が数軒あります。
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これがラオスの屋台そば

この地を訪ねた8月は雨季にあたるので、日本人の姿は少なかったですが、ぼくの泊まったゲストハウスの隣のカフェレストランには、欧米から来た若いツーリストが大勢いました。そこはこの町でいちばん有名なゲストハウスで、ちょっとにぎやかすぎると思ったので、隣の宿にしたのです。朝食だけ隣でとればいいからです。ハムエッグ付きのイングリッシュ・ブレックファストが食べられます。もちろん、近所の屋台で地元のそばを食べるのも自由です。

観光(アトラクション)の手配もストレスなし

「住(アコモデーション)」と「食(グルメ)」の問題がこうしていとも簡単に解決してしまうと、人はたいてい満足してしまうものですが、ツーリストの場合はちょっと事情が違います。「足(トランスポーテーション)」と「観光(アトラクション)」の課題が解決されなくては、旅人としての根本的な欲望が満たされたとはいえません。それがうまくはかどらなければ、ツーリストはストレスを感じるものです。

少数民族の集落へのトレッキングツアーに参加するにはどのトラベルエージェンシーに頼めばいいのか。近郊の町に移動するためのバスや飛行機のチケットはどこで買えばいいか……。だいたいこういった内容ですが、これはツーリストにとって重要な“仕事”といえます。

その点、ルアンナムターのメインストリートには、ホテルやレストラン以外に、トラベルエージェンシーやツーリストオフィス(観光案内所)などの施設が並んでいます。つまり、この町ではツーリストにとって肝心の“仕事”も、徒歩圏内でストレスなく段取りできてしまうのです。
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トラベルエージェンシーの前に置かれたトレッキングツアーの告知

ルアンナムターにはトレッキング以外にも、サブ的なアトラクションがいろいろあります。たとえば、市街地にはルアンナムター博物館があります。この地域に暮らす少数民族の歴史や風俗を展示しています。誰しも旅に出ると、異文化に対する知的好奇心が刺激されるものです。

もうひとつのポイントが、夜をどう過ごすか。ツーリストにとってナイトライフは大切なアトラクションです。都会であれば、繁華街に繰り出せばいいのですが、こんな片田舎では何をすればいいのか。でも大丈夫。ルアンナムターには、夜になると屋台が並ぶナイトマーケットがあります。夕食はここで地元料理を味わえばいいのです。もちろん、前述のカフェレストランでは簡単な洋食が食べられますし、町のいたるところにある屋台そばでしめることもできます。
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ルアンナムターのナイトマーケット

こうした4つのインフラが過不足なく揃った環境こそ、居心地のいいツーリストタウンといえるでしょう。

整理してみましょう。外国人ツーリストにとって居心地のいい町の条件とは?

①ツーリストにとって快適なホテルがあること。Wi-Fi整備は必須。
②ホテルの周辺で「食(グルメ)」「足(トランスポーテーション)」の手配がストレスなく可能なこと。
③メインの観光以外に、知的好奇心を満たしたり、ナイトライフを楽しんだりするためのアトラクションがあること。

はたして日本の観光地はこれらの条件が十分揃っているといえるでしょうか。

※ルアンナムターについての詳細は、中村の個人blog「外国人ツーリストにとって居心地のいい町の必要十分条件とは?」を参照。

東京にはいくつかのツーリストタウンがある

もちろん、ルアンナムターのような小さな町と東京のような大都市では、ツーリストの動線やニーズは違うところもあるでしょう。でも、基本的にツーリストに必要なインフラはそう大きく変わるものではありません。

先日、東京観光財団を取材しました。テーマは「東京“インバウンド”事情 その実態は?」。2020年オリンピック開催決定で注目される東京都の外国人旅行者の実態や受け入れの課題について話を聞きました。以下、東京観光財団観光事業部アジアプロモーション担当課長の田所明人さんへのインタビューの一部抜粋です。

――東京を訪れる外国人の数はどのくらいいるのですか?

「日本を訪れる外国人観光客のうち、70%が東京都を訪れています。昨年は訪日外国人数が過去最高でしたが、それは同時に東京を訪問した外国人数も最高だったことを意味しています。つまり、訪日外客の7がけが大まかに東京を訪れる外国人数と考えていいと思います(※だとすれば、2013年に東京都を訪れた外国人は約700万人)」。

――東京都を訪れた外国人の多くはどこを訪ね、どこに泊まっているのですか?

「東京都が実施した国別外国人旅行者行動特性調査によると、訪問先のトップは渋谷。スクランブル交差点はもはや定番観光スポットです。宿泊エリアのトップは新宿。買い物もでき、歌舞伎町などのナイトスポットも充実。交通の便がよく、比較的低価格のホテルも多数あり、客室数の多いエリアといえるでしょう」。

■訪日外国人観光客の訪問先・宿泊エリア
順位訪問先宿泊エリア
1位渋谷    新宿
2位新宿    東京・丸の内
3位銀座    赤坂、六本木、浅草
4位秋葉原  ―
5位浅草    銀座
(平成24年度国別外国人旅行者行動特性調査より)

この調査から明らかなのは、東京にはホテルの集中するいくつかの地区があり、外国人ツーリストの大半はそこをベースに行動していることです。具体的にいうと、新宿や池袋、東京・丸の内、赤坂、六本木、銀座、品川、浅草などが考えられますが、客室平均単価やロケーション特性の異なるそれぞれの地区に集まるツーリストのタイプや行動形態には違いがありそうです。

つまり、東京のような大都市圏の場合、ホテル集中地区ごとに、今回紹介したラオスの小さな観光の町と同様、ひとつの個性を持ったツーリストタウンとして捉え、それぞれの内実に見合った個別の受け入れ態勢を検討する必要があると思うのです。

東京の滞在で不便なことは?

――外国人旅行者は東京での滞在でどんなことに不便を感じているのでしょうか。東京のウィークポイントは何ですか?

「いくつかありますが、なかでも最大のウィークポイントといえるのは、Wi-Fi整備の遅れです。海外発行のクレジットカードでのキャッシングがどこでできるかもよく知られていません。セブン銀行や郵便局、CITI BANKなどで利用できるのですが、外国人にもわかるような表示がきちんとされていないと指摘されています。羽田の深夜便を利用した外客の都心へのアクセスの問題もあります」。

日本政府観光局と観光庁が実施した調査に、以下のデータがあります。

■いつ、どこでインターネットを利用したいか?(複数回答)
1位宿泊先88.9%
2位空港43.1%
3位街頭40.9%
4位駅・バス停30.5%
5位公共交通機関28.8%
6位観光や買い物時25.9%
(平成24年度TIC利用外国人旅行者調査報告書(JNTO)より)

■日本滞在中に得た旅行情報で役に立ったもの(複数回答)
1位インターネット(PC)45.0%
2位観光案内所(空港を除く)21.3%
3位日本在住の親戚・知人21.2%
4位宿泊施設19.8%
5位空港の案内所19.5%
6位旅行ガイドブック(有料)15.6%
7位フリーペーパー10.1%
8位インターネット(スマートフォン)6.4%
(平成22年度訪日外国人の消費動向(観光庁)より)

これを見てわかるのは、外国人ツーリストが日本を訪れた後、どのように滞在中の情報を入手しているかという実態です。空港やホテルに置かれたフリーペーパーのような紙媒体からではなく、圧倒的にネット経由で情報を探していること。また移動中に街頭でインターネットを利用したいという要望はあるものの、基本的にはホテルでじっくりパソコンを使って情報を探している姿が見えてきます。

それだけに、ホテルのWi-Fi整備の遅れは“おもてなし”という観点からも致命的といえます。逆に言えば、いち早くWi-Fi整備を手がけることが、外国客の集客にきわめて効果的であるということです。

※東京観光財団へのインタビューの詳細は、中村の個人blog「致命的な東京都内のホテルのWi-Fi整備の遅れ」を参照。

急増するアジアFIT客のためのインフラ整備

今年の春節は中国客が戻ってきたようです。

日本経済新聞2014年1月30日によると、「日本向け査証(ビザ)発給のほぼ半分を占める上海の日本総領事館では、個人観光ビザの発給が過去最高のペース」。「昨年12月に発給した個人観光ビザは約1万4400件」で「前年同月の3.6倍」。「今年1月に入ってからも順調に伸びている」(上海の総領事館)といいます。

同紙では、中国の個人ビザ客の実態として「私費旅行」が増えたと分析しています。「習近平指導部が進める綱紀粛正」により、「今年1月から共産党員や公務員を対象に公務を名目とする視察旅行を禁じ」ているが、それでも訪日客数が増えたのは、「欧米よりも割安な日本に私費で旅行する人が増えたとみられる」からだといいます。

中国のFIT客の訪日が本格化することで、アジアの訪日旅行市場も大きく変わっていくことが予測されます。今後ますます増えるであろう海外のFIT客を取り込むためには、アジアの近隣諸国と比べて遅れが指摘されるツーリストのためのインフラ整備は急務となっています。

先日、水道橋の「庭のホテル」を取材しました。同ホテルは外国人宿泊客の多さで知られています。

総支配人は、外国人ツーリストの特性として「よく歩くこと」を指摘されていました。

「うちから都内のいくつかの観光ポイントは徒歩圏内で、外国の方は皇居や秋葉原などへ歩いて行かれるんです」(「庭のホテル」木下 彩総支配人)

この興味深い指摘から、訪日外客の受け入れ態勢を考えるうえで、行政単位とは別の視点が求められること。つまり、ホテルを中心とした「徒歩圏内」で形成されるツーリストタウンという発想が重要であることがわかります。

急増するアジアFIT客に対するインフラ整備を検討するうえで、ホテル集中地区ごとにタウンマップをつくってみるのは意味があります。ホテルを中心とした「徒歩圏内」に、今回ラオスのツーリストタウンで指摘した4つのインフラのうち、どれだけ揃っているのか、地図に落として調べてみるのです。もとより大都市圏では、海外の小さな町のようにすべての要素がコンパクトに揃うというわけにはいかないでしょう。それでも、わが町にはどの要素が足りないのか。またどの要素が弱く、どこを補充しなければならないのか、といったことを確認できるはずです。もちろん、強みも見つかるでしょう。

訪日外客に対する“おもてなし”で大切なのは、ツーリストの身になってわが町を考えるということです。今後は、都内のそれぞれのツーリストタウンの特性を分析していきたいと思います。

※中国からの訪日客の回復の背景については、中村の個人blog「今年の春節に中国客が戻った理由は、上海の訪日自粛がとけたから」、「庭のホテル」総支配人のインタビューは、やまとごころ企業インタビュー「なぜ「庭のホテル」は外国人客に選ばれたのか」、ホテルを中心にしたタウンマップづくりについては「外国人ツーリストにとってうれしい地図とは?」を参照。

※やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/column/2014/column_150.html


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by sanyo-kansatu | 2014-02-13 09:26 | 最新インバウンド・レポート | Comments(0)
2014年 02月 13日

なぜ「庭のホテル」は外国人客に選ばれたのか

先日、インバウンド(訪日外国人旅行)サイト「やまとごころ.jp」の仕事で、水道橋にある「庭のホテル」を取材しました。以下その記事を採録します。

やまとごころ.jp「庭のホテル」総支配人インタビュー
http://www.yamatogokoro.jp/inbound-interview/index01.html

2009年5月に水道橋にオープンした『庭のホテル 東京』は外国人宿泊客の多さで知られています。都心にありながら、緑の木々と中庭を配した「都会のオアシス」としていち早く話題となり、開業年から5年連続でミシュランガイドに紹介されています。なぜ同ホテルは外国人客に選ばれたのか。その理由について、木下 彩総支配人に話を伺ってみました。

目次:
宿泊特化とは違う土俵で勝負したい
コンセプトは“ほどよい和”
外国人客に人気の理由
今後の課題


――旅館の3代目だそうですね。「庭のホテル」開業に至る経緯を教えてください。

1935(昭和10)年、祖父の代にこの地で旅館経営を始めました。商用向けの旅館です。昭和40年代には父の代でビジネスホテルに業態転換。「東京グリーンホテル」といいます。これが大成功で、開業当初から稼働率が高く、とても繁盛したそうです。当時、ビジネスホテルの走りだといわれました。
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1990年代にバブル経済が崩壊すると、必要最低限のサービスと施設でコストパフォーマンスの高い宿泊特化型ホテルが続々登場。弊社の業績は徐々に悪化していきました。私が入社したのがちょうどその頃で、1994年のことです。2000年代に入ると、施設も老朽化してきたので、父がかつて取り組んだように新しい業態にリニューアルしなければならないと考えていました。ただし、宿泊特化とは違う土俵で勝負したいという思いがありました。弊社は大手チェーンのようにスケールメリットで勝負ができませんから。

そのためには、なにか特徴がなければなりません。個性的なホテルでなければ。そこで結論に達したのが、「美しいモダンな和のホテル」というコンセプトでした。

――それはどんなコンセプトなのですか?

ひとことでいえば、「上質な日常」を提供するということです。開業前、よく都内の外資系ラグジュアリーホテルを視察しました。その多くは「和モダン」をコンセプトにしていましたが、「これって本当に和かな?」と思ったのです。やはり日本人としてホッと落ち着く、“ほどよい和”でなければと思いました。日常の感覚からかけ離れた和ではなく、いまの日本人の生活の中で心地よいと感じるものでなければならない。そう考えると、「客室は畳じゃないな。でも障子越しのやわらかな光がさしこむ客室がいい。そこはモダンなデザインにしたい……」。だんだんコンセプトが見えてきたのです。
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「和のホテル」には、四季の感じられる庭があることが重要だと考えていました。1階の日本食とフレンチのレストランの間に雑木林のような中庭を置きました。借景として庭を眺めながら食事ができます。これは旅館時代やビジネスホテル時代から採り入れていたものです。でも、ネーミングも「ガーデンホテル」では和のコンセプトが伝えられないので、「庭のホテル」にしました。
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――日本人にとっての“ほどよい和”を追求したといいますが、外国人客が多い理由は?

いろんな方からよく聞かれる質問なんですが、何か特別なことをしているわけではないんです。ところが、思っていた以上に来てくださった。開業からわずか半年でミシュランガイドに掲載していただきました。日本人にとっての“ほどよい和”を目指した結果として、それが外国の方にウケているのかもしれません。
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外国人客の比率は、開業当初の目標3割をはるかに上回り、いまでは5割前後。桜の季節には7割になります。団体ではなくFIT。 商用というより観光客の割合が高い気がします。予約はインターネット経由がほとんど。宿泊客のトップはアメリカです。それから台湾、オーストラリア、イギリスの順で、国籍は50ヵ国以上になります。トリップアドバイザーなどでの口コミの影響が大きいようで、お客さまがいいコメントを載せてくださるんです。

水道橋というロケーションも、外国のお客さまには人気の理由となっているようです。駅からも近く、新宿や東京駅へも電車で10分ほどですから観光の拠点としては非常に便利ですし、皇居や秋葉原などへ歩いて行かれるんです。

――外国人客向けの課題や今後の展望についてどうお考えですか?

正直なところ、ノープランなんです。実際、こんなに外国の方がいらっしゃるとは予想していませんでしたので、英語の得意なスタッフを増員したくらいです。特にインバウンド対応の専門スタッフがいるわけではありません。

これも特別なことではないのですが、外国のお客さまは平均3泊4日と連泊される場合が多いので、スタッフとお客さまの距離が近い。声をかけられることも多いので、お一人おひとりに丁寧に接客することでしょうか。アットホームな雰囲気づくりを心がけています。

お正月には毎年ロビーでお餅つきをします。外国のお客さまにも大変好評です。昔、武家屋敷が立ち並んでいた水道橋周辺には江戸から明治にかけて名所が数多く残っていることから、それらをめぐる町歩きや、和に関してのイベントを定期的にやっています。まだ日本人のお客さま向けの内容ですが、今後は海外のお客さま向けの町歩きイベントも企画してみたいですね。
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株式会社UHM
東京都千代田区三崎町1-1-16
http://www.hotelniwa.jp
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<取材後記>
「庭のホテル」にはハードとソフトの両面でさまざまなこだわりがあります。挙げればきりがありませんが、たとえばエントランスの巨大なあんどんのような照明や、客室の枕元を照らすヘッドボードなど、和紙を通して放たれる柔らかい光がホテル全体を包んでいます。京都の雅というより、江戸のスッキリした和がコンセプトとなっているそうです。スタッフが外に出入りしやすいように、ロビーのフロントをアイランド形式のカウンターにしているところも、シティホテルのもつクールさとは違い、スタッフと宿泊客の距離を縮めています。昭和初期から日本のホテル近代史の最先端を歩み続けてきた同ホテルの3代目には、押しつけがましくなく、細部にこだわるという和のおもてなしの心が生まれながらに身についているようです。

「特別なことをしているわけでもない」と言いますが、結果として外国人客の嗜好やニーズにぴたりとハマッたといえるのでしょう。それは、まったくジャンルは違いますが、以前このコーナーで紹介した「ロボットレストラン」などにも通じるところがあるのではないでしょうか。主な観光スポットが東に偏っている東京において、水道橋という都心のロケーションの持つ重要性についても、外客誘致を考えるうえでのヒントがあるように思います。
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by sanyo-kansatu | 2014-02-13 08:42 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2014年 02月 08日

国内のホテル稼働率、依然好調のもよう(2013年下半期)

2013年上半期、好調だった国内ホテルの稼働率は、下半期も引き続き堅調なようです。

週刊トラベルジャーナル2014年1月27日号では、11月の「全国のホテル客室利用率」について以下のように報じています。
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「全日本シティホテル連盟(JCHA)によると、会員ホテルの昨年11月の全国平均客室利用率は前年同月比4.7ポイント増の85.3%だった。8割台は4か月連続。

前年同月を下回った東北と北陸を除き、全10地域のうち8地域でプラス成長。北海道と東海が2桁増の伸びを示したほか、関東・近畿・九州の3地域が全国平均を上回った。なかでも関東は前年同月から2.5ポイント伸ばし、利用率が92.1%に上昇。東京都に絞って見ると、3.5ポイント増の94.1%で、地域をけん引している。

一方、近畿は88.0%で関東に次いで2番目に利用率が高いが、大阪府は87.6%とやや下回った。

利用率が最も低いのは東北の61.5%。ただ6割台に乗せており、全体の底上げが見られる」。

■全国のホテルの月別平均客室利用率

2012年12月 72.4%
2013年1月  65.9%
     2月  75.4%
     3月  78.0%
     4月  78.3%
     5月  75.7%
     6月  74.7%
     7月  78.7%
     8月  85.1%
     9月  80.2%
    10月  83.3%
    11月  85.3%
(全日本シティホテル連盟の資料より)

なかでも東京は、上半期同様、国内のビジネス需要やレジャー客の動きで94.1%という高い客室利用率を維持しています。

特に客室単価が5万円相当の外資系ラグジュアリーホテルの稼働率が注目されています。

「香港ホテル 東京で好調 稼働率軒並み7割」(日本経済新聞2013年8月26日)では、「香港の高級ホテル3社が運営するホテルの収益が急速に改善している。『シャングリ・ラ』『ザ・ペニンシュラ』『マンダリンオリエンタル』の今年1~6月の平均客室稼働率は軒並み70%を超え、50%以下に落ち込んだ東日本大震災の影響から立ち直った」と報じています。

背景には「円安で米ドルや香港ドル建ての客室単価が下がったが、稼働率の上昇が補い、各社の業績にも寄与」「円安などを追い風に日本を訪れる外国人が増加」した」ためだといいます。

■香港ホテル3社の稼働率の推移

                 2012年上半期   2013年上半期   
シャングリ・ラ 東京        64%         80%
ザ・ペニンシュラ東京       62%         75%
マンダリンオリエンタル東京   57%         73%

2014年は、外資系ラグジュアリーホテルの開業ラッシュの年といわれています。

■2014年東京に開業予定の外資系ホテル
アンダーズ東京(ハイアット・ホテルズ)
アマン東京(アマンリゾーツグループ)

ザ・リッツカールトン東京やザ・ペニンシュラ東京が開業した2007年前後は、リーマンショックの影響もあり、客室の供給過多を懸念する声がありましたし、その後東日本大震災も起こり、外資系は苦戦続きでした。

今回は景気の回復基調や円安、ビザ緩和による追い風もあり、史上初の訪日外国人数1000万人突破も実現。07年当時とは市場環境が異なっているといわれます。2020年の東京オリンピック開催の決定でホテル業界は活気づいています。

「IOCの要求満たすが…空室不足の恐れ」(日本経済新聞2013年9月10日)では、「東京招致委員会は国際オリンピック委員会(IOC)の要請を上回る4万6千室を来訪者用に確保し、『この量で充分』(東京都幹部)とするが、競技場が集中する臨海部(江東区有明地区周辺)は手薄」と指摘しています。

今後の需要増をふまえ、「外資系の新規開業計画がこれからも出てくる可能性がある」そうです。
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by sanyo-kansatu | 2014-02-08 13:10 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2014年 02月 05日

外国人ツーリストにとって居心地のいい町の必要十分条件とは?

昨年8月、インドシナ北辺の国境地帯を1週間ほど旅しました。タイの首都バンコクから夜行列車でラオス国境の町ノーンカーイに向かい、国境の橋を渡ってラオスの首都ビエンチャンへ。そこからラオ航空の国内線でルアンナムターという少数民族のトレッキングの拠点として知られる町を訪ねました。中国国境(雲南省)からも近い町です。

ひとりの外国人ツーリストにとって、ルアンナムターはとても居心地のいい町でした。

なぜなら、この小さな町にはツ-リストに必要なすべてのインフラがコンパクトに揃っているからです。

では、ツーリストにとって必要なものとは何か。居心地のいいツーリストタウンの条件について、あらためて考えてみたいと思います。その意味では、このラオスの片田舎にある小さな町は格好のケーススタディの対象といえるでしょう。

ルアンナムターの空港を降り立ったツーリストの動線に沿って、この町を紹介します。
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空港は市街地から7kmほど南にあり、乗り合いトラックで10分ほど。市街地の南にあるバスターミナルで降ろされますが、そこから100mほどの場所にホテルやレストラン、トラベルエージェンシー、ツーリストオフィス(観光案内所)などの施設が並んでいます。市街地は、南北2 ㎞、東西1kmの範囲にほぼ収まっています。1時間もあれば散策できるこの町の適度な大きさが、ツーリストにとっての居心地のよさを生んでいる条件のひとつです。
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まずはホテル探し。ほとんどのホテルがメイン通りに沿って並んでいるので、歩きながら気に入った宿を値段と客室の快適度などを比較して選ぶだけです。町の規模にしてはホテルの数が多く、選り取り見取り。選択肢の自由が多いことは、ホテル選び自体が旅の楽しみにつながります。そういうのが面倒くさい、またホテルの予約なしで旅行するのは不安という人も、心配ご無用。いまの時代、こんな山奥の町のホテルにもたいていHPがあって、ネットでも予約ができます。ホテルのスタッフは簡単な英語は話しますから、予約なしでも問題ありません。

ツーリストにとってホテル選びは旅をエンジョイするうえで最も重要な“仕事”のひとつです。ストレスなく快適なホテルが見つかれば、その町の滞在は半分以上成功したといってもいいほどでしょう。
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外国人ツーリストのホテル選びの条件としてWi-Fiが使えるかはとても重要です。その点、このラオスの片田舎のゲストハウスではたいていどこでもWi-Fiが完備しています。実際、ぼくはこの町から東京の友人にラインを使って通話したのですが、音声はクリアでまったく問題がありませんでした。Wi-Fiはチェックインのときゲストハウスのオーナーに渡されたカードに書いてあるパスワードを入れるだけ。無料です。いまどき、アジア諸国では、ツーリストが訪れるような町ではどこでもこの程度には普及しているといっていいでしょう。こんなこと、あまり言いたくはないのですが、東京よりもずっとアジアの片田舎のほうが通信環境は進んでいるといえるのです。

さて、部屋で荷を解き、シャワーを浴びたら、町を歩いてみたくなるものです。食事をどこで取ろうか、ミネラルウォーターや軽食はどこで買えばいいか、少数民族の村へのトレッキングツアーに参加するにはどのトラベルエージェンシーに頼むのか、近郊の町に移動するためのバスチケットはどこで買えばいいか……。ツーリストには、しなければならないいくつかの“仕事”があるからです。
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でも、ルアンナムターにはそれらのすべてが徒歩1分以内の範囲で段取りできてしまうのです。こんなに便利なことはないでしょう。上記のすべてのことが30分以内に終わってしまうほど。こうしたストレスレスな環境こそ、居心地のいいツーリストタウンの条件だといえます。

以上はツーリストタウンの必要条件ですが、実はそれだけでは十分とはいえません。

8月のルアンナムターは雨季にあたるので、日本人の姿は少なかったですが、ぼくの泊まったゲストハウスの隣のカフェレストランには、欧米から来た若い旅行者が大勢いました。そこはこの町でいちばん有名なゲストハウスで、ちょっとにぎやかすぎると思ったので、隣の宿にしました。朝食だけそこでとればいいからです。ハムエッグ付きのイングリッシュ・ブレックファストが食べられます。もちろん、そこらの屋台で地元の麺を食べたっていいです。
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「住(アコモデーション)」と「食(グルメ)」と「足(トランスポーテーション)」の問題が解決されてしまうと、たいてい人は満足してしまうものですが、ツーリストはちょっと違います。「観光(アトラクション)」がなくては、人はなぜ旅に出るのか、という根本の欲望が満たされたとはいえないからです。

その点、ルアンナムターは、少数民族の村へのトレッキングの拠点であり、これがメインアトラクションです。まあそのために海外のツーリストはこの町を訪れるわけですが、サブ的なアトラクションもいろいろあります。
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たとえば、市街地の北にルアンナムター博物館があります。この地域に暮らす少数民族の歴史や風俗を展示しています。そこそこ立派な施設です。誰しも旅に出ると、異文化に対する知的好奇心が刺激されているものです。トレッキングの前後にぜひ足を運んでみたくなるはずです。
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ホテルの周辺には、民家もたくさんあります。朝早く起きて、知らない町を散策するのは楽しいものです。小さなお寺もあって、足を延ばしてみたくなります。こんなささやかなことも、ツーリストにとっては十分魅力的なアトラクションです。

もうひとつが、夜をどう過ごすかです。都会であれば、繁華街に繰り出せばいいのですが、こんな片田舎では何をすればいいのか。
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ルアンナムターには、夜になると屋台が並ぶナイトマーケットがあります。夜の食事はここで地元料理を味わうわけです。もちろん、前述のカフェレストランでは簡単な洋食が食べられますし、町のいたるところにある屋台の麺でしめることもできます。これだけアトラクションが揃えば、まったくいたれりつくせりだと思いませんか。

整理してみましょう。外国人ツーリストにとってストレスレスで居心地のいい町の必要十分条件とは?

①ツーリストにとって快適なホテルがあること。Wi-Fi整備は必須。
②ホテルの周辺で「食(グルメ)」「足(トランスポーテーション)」の手配が可能なこと。
③メインの観光以外に、知的好奇心を満たしたり、ナイトライフを楽しんだりするためのアトラクションがあること。

はたして日本の観光地にはこれらの条件が揃っているといえるでしょうか。

今回ぼくはこの町でいちばん有名なゲストハウスの隣にあるKhamking Guest Houseという宿に泊まりました。オーナーはまだ28歳の若いラオス青年で、地元の観光専門学校で英語やツーリズムを学び、数年前にゲストハウスをオープンしたそうです。
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実はその町に着いた日、ぼくはラオスの通貨を使い果たしていました。とにかく物価の安いラオスです。長い旅でもないので、日本円しか持っていませんでした。1万円分も両替すると余りそうなので、5000円札を両替してくれないか、と彼に頼みました。ゲストハウスの向かいにATMがあるので、いま考えると、ずうずうしい話です。

オーナーの青年は言いました。「ぼくは1万円札なら見たことあるけど、5000円札は見たことありません。これは本当に日本の紙幣なのですか」。そこでぼくは思わず言いました。「ぼくは日本人です。人をだましたりはしませんよ。どうか信じてほしい」。すると、彼は大きくうなづいて、「では待っていてください。これをラオスキップに両替して、明日のバスチケットと宿代を差し引いたぶんをお渡しします」。そう言って、彼はその場を立ち去り、夜にラオスキップでお釣りを手渡してくれたのです。

なんてことのない話のようですが、こういうのを本物のホスピタリティというのではないでしょうか。ツーリストにとって、何がいちばん不便なことなのか、どうしてもらえるとありがたいのか、彼はよく理解しているのです。

よく日本では“おもてなし”といいますが、結局のところ、ツーリストにとって何がストレスになっているか、その理由がわかっていないと、ひとりよがりなもてなしになってしまうおそれがあります。

ぼくにとって、このゲストハウスのオーナーに出会ったことが、この町の印象を好ましいものにした最大の理由だったといえるかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2014-02-05 14:05 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2014年 02月 04日

致命的な東京都内のホテルのWi-Fi整備の遅れ

東京ガスが発行する「MY DEAR」というホテル経営者向け冊子の仕事で、先日東京観光財団を取材しました。担当編集者の方から与えられたお題は「東京“インバウンド”事情 その実態は?」。2020年オリンピック開催決定で注目される東京都における外国人旅行者の実態や受け入れの課題について話を聞くことができました。
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以下、東京観光財団観光事業部アジアプロモーション担当課長の田所明人さんへのインタビューをまとめています。

――東京を訪れる外国人の数はどのくらいいるのですか。

「日本を訪れる外国人観光客のうち、70%が東京都を訪れています。昨年は訪日外国人数が過去最高でしたが、それは同時に東京を訪問した外国人数も最高だったことを意味しています。つまり、訪日外客の七掛けが大まかに東京を訪れる外国人数と考えていいと思います(※だとすれば、2013年に東京都を訪れた外国人は約700万人)」。

――東京都を訪れた外国人はどこを訪れ、どこに泊まっているのですか。

「東京都が実施した国別外国人旅行者行動特性調査によると、訪問先のトップは渋谷。スクランブル交差点はもはや定番観光スポットです。宿泊エリアのトップは新宿。買い物もでき、歌舞伎町などのナイトスポットも充実。交通の便がよく、比較的低価格のホテルも多数あり、客室数の多いエリアといえるでしょう」。

■訪日外国人観光客の訪問先・宿泊エリア

    訪問先    宿泊エリア     
1位  渋谷     新宿
2位  新宿     東京・丸の内
3位  銀座     赤坂、六本木、浅草
4位  秋葉原       ―
5位  浅草     銀座
(平成24年度国別外国人旅行者行動特性調査より)

――アジア圏と欧米圏の旅行者では東京での行動にどんな違いがあるのですか。

「アジア圏の旅行者はとにかく東京で買い物したい。日本には安くていいものがあると考えています。一方、欧米圏の旅行者の関心には、ヒストリー、ウォーキング、カルチャー、ヘリテージなどのキーワードが挙げられます。ですから、当財団のプロモーションの考え方としても、アジア客にはどうすれば買い物してもらえるか、欧米客には日本の文化や歴史にいかに興味を持ってもらうか、とはっきり分けています」。

――外国人旅行者は東京での滞在でどんなことに不便を感じているのでしょうか。東京のウィークポイントは何ですか。

「いくつかありますが、なかでも最大のウィークポイントといえるのは、Wi-Fi整備の遅れです。海外発行のクレジットカードでのキャッシングがどこでできるかもよく知られていません。セブン銀行や郵便局、CITI BANKなどで利用できるのですが、外国人にもわかるような表示がきちんとされていないと指摘されています。羽田の深夜便を利用した外客の都心へのアクセスの問題もあります」。

日本政府観光局と観光庁が以前実施した調査に、以下のデータがあります。

■いつ、どこでインターネットを利用したいか?(複数回答)

1位 宿泊先 88.9%
2位 空港 43.1%
3位 街頭 40.9%
4位 駅・バス停 30.5%
5位 公共交通機関 28.8%
6位 観光や買い物時 25.9%
(平成24年度TIC利用外国人旅行者調査報告書(JNTO)より)

■日本滞在中に得た旅行情報で役に立ったもの(複数回答)

1位 インターネット(PC) 45.0%
2位 観光案内所(空港を除く) 21.3%
3位 日本在住の親戚・知人 21.2%
4位 宿泊施設 19.8%
5位 空港の案内所 19.5%
6位 旅行ガイドブック(有料) 15.6%
7位 フリーペーパー 10.1%
8位 インターネット(スマートフォン) 6.4%
(平成22年度訪日外国人の消費動向(観光庁)より)

これを見てわかるのは、外国人旅行者が日本を訪れた後、どのように旅行情報を入手しているかという実態です。やはりフリーペーパーのような紙媒体からではなく、圧倒的にネット経由で情報を探していること。また確かに、観光や移動中もインターネットを利用したいとはいえ、ホテルでじっくりパソコンを使って情報を探している姿が見えてきます。

それだけに、ホテルのWi-Fi整備の遅れは“おもてなし”という観点からも致命的といえます。逆に言えば、都内のホテルにとって、いち早くWi-Fi整備を手がけることが、外国人客の集客にきわめて効果的であるということです。

今後ますます増えることが予想される海外のFIT客を取り込むためには、アジアの近隣諸国と比べても遅れていると指摘されるWi-Fi整備は急務となっているのです。
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by sanyo-kansatu | 2014-02-04 12:04 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 11月 19日

平壌の高麗飯店で見られるTVチャンネルは?

一般に平壌を訪ねた外国人は、平壌駅の近くにある高麗飯店に宿泊することが多いようです。ホテルのロビーには、さまざまな国籍の人たちが行き交っています(もっとも、数の多い中国からの団体客は大同江の中州に建つ羊角島ホテルに泊まることが多いよう)。日朝首脳会談のとき、小泉首相らが宿泊したのも高麗飯店だそうです。
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客室には、テレビが置かれています。チャンネルは数えると、12ありました。どんなテレビ局の番組が見られるのか、チェックしてみました(2013年8月現在)。
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① 朝鮮中央放送(KCTV)
朝鮮の国営放送局である朝鮮中央放送は、平日は夜間(17:00-23:00)のみ、日曜・祝日は午前中から放送しているようです。

②と③はチェック時には番組が放映されていませんでしたが、朝鮮には他にも「万寿台テレビ(娯楽番組が多い)」や「竜南山テレビ(教養番組、語学番組が多い)」があるそうで、時間帯が合わなかったのかもしれません。

④アルジャジーラ(Al Jazeera)
http://www.aljazeera.com/
カタールの衛星放送局。同国の国営放送とされているが、事実上アラビア語による国際ニュース専門局。

⑤ NHK World(英語)
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/
NHKワールドはNHKの海外向けサービスです。公式サイトの「海外で英語放送を見る」のページを見ると、視聴できる国として北朝鮮は入っていませんが、なぜか高麗飯店では視聴できました。

⑥ 中国中央電視台(CCTV-4 英語)
http://www.cntv.cn/
中国の国営放送局の英語チャンネル。

⑦ 香港フェニックステレビ(香港)
http://v.ifeng.com/live/
香港の衛星放送局。

⑧ 中国中央電視台(CCTV-1 中国語)
中国の国営放送局の総合チャンネル。

⑨ BBC world news(英国)
http://www.bbc.co.uk/news/world_radio_and_tv/
英国BBC放送の国際ニュースチャンネル。

⑩ Утро России (Rossiya 1 ロシア)
http://russia.tv/
ロシアの国営放送局の第1チャンネル。

⑪  RT news(ロシア/英語)
http://rt.com/on-air/
RT(旧称:ロシア・トゥデイ)はモスクワを拠点を置くニュース専門局。

⑫ НТВ МИР(NTV Mir ロシア)
http://www.ntvmir.ntv.ru/
ロシアのケーブルテレビ。ロシアのドラマなどが多い娯楽系チャンネル。

敵国アメリカのテレビ局はさすがに見当たりませんが、かなりの多国籍メディアが視聴できることがわかると思います。そのバランス感覚は興味深いです。

中国系とロシア系が各3チャンネル、欧州系はBBC、そしてアルジャジーラが見られるのも面白いです。NHKワールドが見られるのは、2000年代前半まで、そこそこの数の日本人客が平壌を訪問していたころの名残かもしれません。いまでは、日本人は平壌では圧倒的に少数派です。

一般市民の家庭では、これらのチャンネルは視聴できるとは思えません。金剛山のホテルでは、外国のチャンネルは見られませんでした。

ちょうど平壌に滞在していたころ、中国の中央電視台で薄熙来が山東省済南市中級人民法院で裁判を受ける報道が流されていました。
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平壌にある各国大使館や外交官たちは、どれだけのTVチャンネルを見ることができるのでしょうか。
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by sanyo-kansatu | 2013-11-19 20:19 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2013年 10月 17日

【ホテル・飲食関係者必読】タイ人客はタバコがNGです

8月にタイの国際トラベルフェア(TITF)を視察した話を以前書きましたが、そのときぼくはHISバンコクの支店長にインタビューしています。

その内容については、後日刊行される書籍の中で記事にしている関係で、まだブログには出せないのですが、同社の企業戦略に関わらない、タイの消費者の特性に関する部分については、興味深い指摘が多く含まれていたので、ここに公開したいと思います。

お話いただいたのは、中村謙志支店長です。日々ローカル客と向き合いながら営業活動に取り組んでいる方の貴重な提言です。
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――先日、バンコクの旗艦店であるトラベルワンダーランドを訪ねましたが、日本と同じような店舗で、旅行商品のパンフレットがたくさん置かれていましたね。

「タイでは、日本のような旅行パンフレットやチラシはそれほど流通していません。しかし、タイ人はパンフレットを読むのが大好きです」

――市内を走る高架鉄道のBTSでも地下鉄でも、東京と同じように乗客はみんなスマホに夢中。いまさら紙のパンフレットなんですか。

「確かに、いまの時代、電子化すべきだと思いがちですが、やはり紙は有効なんです。日本と違ってタイは海外旅行の情報が紙の時代を経ずに、いきなり電子化から始まった。だから、ツアーの内容がぎっしり書き込まれたパンフレットをみると、手に取りたくなるところがあるようです。なにしろこちらでつくるツアーパンフレットのアイテナリー(旅行日程の説明)はすごく細かい。日本のパンフレットより詳しいくらいです」

――どんなことが書かれているのですか。

「どこに行って、何を観て、何を食べて、すべて書いてあります。観光地についても、バスを降りて歩くのか、車窓から眺めるだけなのか。とくに食事の内容は重要です。どんな料理が食べられるのか、詳しく書かないとタイのお客さまは納得しないんです」
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この話を聞きながら、紙に書かれた内容を信用せず、口コミに頼ろうとする中国の消費者との違いにあらためて気が付きました。中国の消費者は、いまや過去となった社会主義時代の経験からくるのか、もともと他人を信じない社会なのか、紙に書かれたものは最初から疑ってかかるところがあります(出版物は基本的にお上が検閲したもので、情報管理されている社会だったからです。これが彼らの著作権意識の低さにもつながっています)。

だから、日本の旅行会社がつくりあげてきたパッケージツアーを軸としたビジネスモデル(そのベースは年2回改訂され、新商品が掲載されるパンフレットです)がまったく通用しません。紙(情報誌)の時代を経ずに、いきなりネット時代に突入したところは、タイも中国も同じですが、基本的に(いい意味で)パンフレットに書かれた内容を疑うことを知らない(考えてもみない)のが、日本とタイの消費者に共通するところだといえそうです。だから、タイではビジネスがやりやすいといわれるのでしょう。

――タイのお客さんは日本旅行に何を望んでいるのでしょうか?

「これについては、私は日本人ですから、どんなに話を聞いても本当のところはわかりません。所詮推測にすぎない。だから、実際のツアーにもなるべく同行するようにしています。タイのお客さまが日本に来て、何を観て喜んでいるのか。何をおいしいというのか。どんな景色をバックに写真を撮りたがるのか……。勘が鈍るのがいちばんまずい。お客さまにも自分のことを明かすんです。お客さまもトップの人間が一緒だということで、安心なさるみたいです」

――ツアー客の方とどんなお話をされるのですか。

「何か感じたこと、困ったことがあったら話してくださいね、というと、これがよかった。これが気に入らない。けっこう話してくださいます。

なかでも、日本の関係者にいちばんわかってほしいのは、タイ人はタバコが嫌いということです。意外に知られていないことかもしれませんが、彼らは基本的にタバコを吸いません。一部の上流階級が吸うことはありますが。ところが、日本のホテルの部屋はとにかくタバコ臭い。タイ人はそう感じています。

だから、ホテルのアサイン(予約手配)は禁煙ルームがmustです。タバコが吸えるレストランも選びません。隣にいる日本人にタバコを吸われるのが嫌でしょうがない。お酒もあまり飲みません。夕食でビールを飲む人も、そんなにいません。皆さん、おとなしく食事をする。大声を出したりしない。中国や韓国の人たちとは違うんです。海外に出かけてまで、飲んで騒いでコミュニケーションするということはないんです。

日本人はアジア人ということで、一括りしてしまいがちですが、もしタイのマーケットを本格的にやりたいなら、それを知って対応していただきたいですね。タバコの問題は、タイ人の受け入れにとってとても大切なことです」

――それは知りませんでした。確かに、タイのレストランでタバコを吸っている人を見ることはほとんどありませんね。

「彼らは世界における自分たちの国や立場のことをよく自覚しています。世界の中心だなんて思っていない。控えめなんです。しかし、だからといって物事にあまりこだわらない(いい意味で鷹揚な)中国客と同じように扱われると傷つきます。

温泉旅館に泊まりたいというリクエストが多いですが、タイ人はシャイなので、人前で裸になりたがりません。最近は、慣れてきて共同浴場に裸で入る人も増えてきましたが、基本はバス付の部屋を好みます。共同風呂は足だけちょこっと浸かるか、人がいない時間を見計らってこっそり入るとか。タイは中国や韓国のようなサウナがある社会ではないんです」

――タイの人たちはとても繊細なんですね。食事についてはどうですか。

「これがいちばん重要です。タイ人は日本食が大好きで、滞在中すべて日本食でも構いません。よく日本人の海外ツアーだと日本食を入れたりしますが、タイ料理店に案内することはまずありません。

気をつけないといけないのは、生ものです。タイにも日本の寿司屋は増えていますが、出回っているネタは限られています。せいぜいサーモンやマグロ、イカ、しめ鯖。それ以外の、たとえば生だこや白身の魚は食べたがりません。初めて日本ツアーに参加したグループなどでは、おすしのランチのほとんどを残すということもありました。こちらがいいと思って高級なネタを出しても、それがいいとは限らない」

――だとしたら、事前に食事の中身はレストランと密に打ち合わせておかないと、お互い嫌な気分になってしまいますね。

「それからタイ人の中には牛肉はダメだという人がまだ多い。タイでは水牛が耕作に使われ、食べるものではないという観念があるようです。そのせいか、おいしい牛肉は市場に出回っていません。ところが、最近『和牛』はおいしい、ということになってきた。ビーフと『和牛』は別物なんです(笑)」

――観光地ではどんな様子なんですか?

「とにかく写真を撮るのが好きですね。お寺と神社の違いがどこまでわかっているのかわかりませんが、日本は自分たちと同じ仏教の国だと思っているので、熱心にお参りしています。タイの仏像は黄金色で日本とはまったく違いますが、法隆寺のような古い寺院に行くと、歴史の重みを感じるようです。アユタヤやスコタイに比べると、法隆寺はずっと古いことに気づかされますからね。

そして、周辺のお土産屋さんでいろいろ買いまくります。お菓子だけではなく、記念品のようなものも買っていかれます」
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――同じ仏教の国ということで、鎌倉や奈良などが定番の訪問地になるのは理解できますが、それ以外にはどんなところに行きたいのでしょうか。

「テレビの旅番組の影響が大きいと思います。いい例が、白川郷や高山です。あと富良野のラベンダー、岩国の錦帯橋、瀬戸内海のしまなみ街道、指宿温泉の砂蒸し風呂。これらはすべて旅番組で火がつきました。いきなり局地的な人気が起こるんです」

――だとすれば、タイ人の誘客にとってメディア戦略は有効ですね。ビザも不要となったことで、今後は個人旅行者も増えていくのでしょうね。

「確かに、個人客は増えるでしょう。ただし、ビザの障害がないから好きなところに行けるといっても、自分たちはタイ語しかわからないという人も多いので、ツアー客も増えていくと思います。団体ツアーの需要は、母国語の強い(=英語が通じない)国には残ります。日本はまさにそうですから」

タイの訪日旅行市場について、これまでぼくは多くの方に話を聞いてきましたが、ローカルの消費者にいちばん近い場所にいる方でなければわからないことはたくさんあります。それにしても、タバコの話は盲点でした。

ちなみに、HISタイについては、以下を参照。

「HISタイの訪日旅行の取り組みは要注目です」
「HIS、世界企業へ離陸 東南アジアで消費者開拓」【2013年上半期④HIS】
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by sanyo-kansatu | 2013-10-17 20:18 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 08月 05日

韓国政府は来年から外国客のホテル増値税10%を返還するそうです

2013年7月17日付の中国メディアの報道によると、韓国政府は来年から外国客のホテル増値税10%を返還するそうです。
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韓国政府による積極的な外国人観光客誘致の取り組みはよく知られていますが、この政策によって、来年から外国人が韓国内の宿泊施設を利用する際、これまで料金に上乗せされていた10%の増値税が差し引かれることで、事実上の値引きとなります。

ただでさえ、日本に比べ価格競争で優位に立つ韓国ですが、昨今の円高是正によって周辺諸国からみて相対的にウォン高状況になっていることもあり、韓国政府の自国の観光産業に対する支援策と考えられます。

この政策をいちばん歓迎したのは、現在訪韓外国人数のトップとなった中国だったことは明らかです。日本ではこの手のニュースは報道するほどの扱いとはみなされなかったでしょうから、その関心ぶりは国策的に海外旅行市場を拡大しようとしている中国らしい反応といえます。

記事によると、これにより韓国政府は増値税としては500億ウォン(日本円で44億円)の減収になりますが、結果的に3000億ウォン(98億円)の観光収入の増収が見込まれるとしています。

中国游客赴韩旅游有望享受酒店退税政策
http://money.163.com/13/0717/11/93VVCOMA00254TI5.html
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by sanyo-kansatu | 2013-08-05 18:00 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)