ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 05月 25日

なぜ次々と中国人観光客の周辺で違法問題が起こるのか?

ここ数日、日本国内で急増している中国の「越境白タク」の実態を見てきました。それにしても、この問題のみならず、なぜ彼らの周辺では次々と違法問題が起きてしまうのでしょうか。

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/
日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/
中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/
中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?
http://inbound.exblog.jp/26876191/

これまで本ブログで何度も指摘してきたように、無資格ガイドや違法民泊、ブラック免税店問題など、すべてとはいいませんが、その大半は中国人観光客の周辺で起きています。その理由について、少し考えてみたいと思います。

その前に、不用意に話を進めると偏見を助長しかねない、この問題を考えるうえでの、今日の中国と中国人に対する正しい理解の前提となる2つのポイントを挙げておきたいと思います。

よく「中国人は遵法意識がない」と言われます。この点について、良識ある中国人はそれを否定しません。なぜなら、日本や欧米のような民主的な社会を生きていない彼らにとって、法は常に上から降りかかる災厄のようなもの。極端にいえば、彼らが法を守らないのは生きるため、といえなくもないからです。法の網をかいくぐり、利益を得た人間がむしろ評価される社会です。このような国に生きる人たちを、我々と同じ基準でジャッジしてしまうと、彼らのふるまいの背後にある真意を見間違いがちです。

もうひとつは、少しメンドウな話なのですが、中国が急速に経済力をつけ、ECやモバイル決済、そして配車アプリの普及など、明らかに日本の社会より利便性の進んでいる分野が次々と生まれてきたことから、「最先端のサービスを利用する自分たちがなぜ悪い? むしろ、遅れている日本の方が問題では」という心理が彼らの中に芽生えていることです。

この種の心理は、かつて(欧米社会に対するものとして)日本人にもあった気がしますから、やんわり受け流せばすむ話。とはいえ、国民感情として、言うは安しと感じる方も多いかもしれません。よく「中国人は傲慢だ」と言う人がいますが、あまりに単純固定化して彼らの言動を受けとめるのは思慮が欠けているといわざるを得ません。彼らがそう見えるのは、そうなる背景や理由があって、その道筋をある程度頭に入れておけば、理解できない話ではないことは知っておいたほうがいいでしょう。我々とはあらゆる面で価値観が違うのも、そのためなのです。

この2点をふまえたうえで、考えなければならないのは次のことです。

我々の側に、観光客として彼らを受け入れるうえでの原則やルールがあるかどうか。それを彼らにもわかりやすく説明し、理解させているか。それが問われているのです。

しかし、実際にはそのような原則やルールを日本の社会は用意しているとは思えません。そんなことはまるで考えてもいないかのよう。せいぜい観光客がお金を落としてくれるんだから、日本が得意の「おもてなし」をしましょう…。たいていの場合、これだけです。

つまり、結論を先に言ってしまうと、中国人観光客の周辺で起こる違法問題の根本的な原因は、彼らの側だけにあるのではなく、むしろ我々が彼らを賢く受け入れるためのルールづくりをなおざりにしてきたからだ、というべきなのです。

もう半年以上前のことですが、昨年10月、NHKのクローズアップ現代で、中国人観光客の周辺で起こる違法問題を題材にした番組を放映していました。

「「爆買い」から「爆ツアー」へ。いま中国人観光客が目指すのは、都心の百貨店や家電量販店よりも、地方の観光都市。そこは「無資格ガイド」や「白タク」などが暗躍する、無法地帯となりつつある。番組はその実態を探るために潜入取材。その結果明らかになったのは、日本の旅行業法の不備をついて不当に利益を上げる、闇業者の存在だった。急増する中国人観光客がらみのトラブルと、どう向き合えばいいのか。お隣の韓国で成果を上げる、目からウロコの処方箋も紹介!」(同番組HPより)

この番組の詳しい内容は以下のウエブサイトをみてもらえればわかりますが、NHKの取材陣が潜入したという「中国人爆ツアー」の現場のルポと識者らの解説にはいくつかの興味深い指摘がありました。と同時に、つっこみどころもけっこうあったので、解説します。

潜入!中国人 “爆ツアー”の無法現場(NHKクローズアップ現代+2016/10/23)
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3879/

ルポの冒頭の舞台は沖縄です。沖縄はいま全国でいちばん白タク問題で悩んでいるからです。

NHKの中国人スタッフが観光客を装って接触を試みた白タク運転手は20代の中国人。聞けば留学生上がりで、在学中からやっていたといいます。もちろん、彼は通訳案内士の資格もなく、第2種運転免許もありません。明らかな違法営業です。

なぜこんな違法営業がまかり通るかについて、ランドオペレーターのひとりにこう言わせています。「しっかり監督をする組織が、部分がないですから、それが原因で白タクとか不法の民泊に、いま氾濫されている。一番大きいのは税金関係。税金みんな払ってない。資本金も何も必要なく、やり放題。これはおいしい、いっぱいおいしい利益をとるだけ」

そう、そのとおり。監督官庁の存在がまるで不明で、ルールづくりがおざなりにされてきたことが、無法状態の根源だというのです。

こうなってしまった理由として、立教大学の高井典子教授はこう説明します。

「まず前提として、これまでの日本の旅行業界というのは“日本人の、日本人による、日本人のため”の旅行を扱ってきた。

つまり「BtoC」、旅行会社から最終消費者である旅行者、ツーリストに向けてのビジネスに関して旅行業法という法律で管理してきたわけなんですね。

ところが、この数年、急激にアジアの市場が伸びてきていて、これが想定外の成長をしてしまい、いわば真空地帯だった所に新たに登場したのが、今、出てきました、多くの新しいランドオペレーターということになります」。

この指摘は基本的に間違いではないですが、「想定外の成長」「真空地帯」という説明を聞くと、ちょっとつっこみたくなります。というのは、訪日中国人団体客の受け入れは2000年に始まっており、「想定外」などというには時間がたちすぎています。時間は十分あったのに、やるべきことをやってこなかったというべきだからです。「真空地帯」というのも、そうなったのは、急増していくアジア系観光客の受け入れを本来担うべきだった国内業者が、彼らに対する国内の旅行手配や通訳ガイドによる接遇も含めた「おもてなし」をコストに見合わないという理由で投げ出してしまったというのが真相に近い。

とはいえ、言葉も地理もわからない外国人の団体を街に放り出すわけにはいきません。誰かが彼らの接遇を担わなければならなかったのに、国内業者がやろうとしない以上、その役割を買って出たのが在日アジア系の人たちだったのです。彼らは自分たちがそれを担った以上、自分たちなりのやり方でやろうとするのはある意味当然です。観光客の側にとっても、そのほうがわかりやすい。こうなると、日本のビジネス慣行やルールではなく、アジア的なスタイルで運営されていくことになる。それを国内業者は「触らぬ神に祟りなし」と、見てみぬふりをするほかなかった…。これが真相というべきです。

これは日本の家電メーカーがこの20年で中国や韓国の企業に市場を奪われていったケースと基本的に同じだと思います。コストが見合わないという理由で、新しい市場への取り組みを投げ出していった結果という意味で、決して飛躍した話ではありません。中国人観光客の周辺の違法問題を考えるとき、この視点を忘れてはならないと思います。そうでないと、結局、この番組の後半の流れのような、あたりさわりなく聞き流せばすむ議論で終わってしまうからです。

実際、番組では外国人観光客のマナー問題に話を移し、「ルールやマナーを知らない外国人と気持ちのいい関係をどう築いていくのか」と問いかけます。これからの時代は日本人もそれを受け入れていく(乗り越えていく?)気持ちを持たなければという精神論に向かっていきます。

その際、例に挙げられたのが、忍野八海の湧水にコインを投げ入れる中国人観光客の話でした。こういうことがなぜ起こるかについては、以前本ブログで説明していますが、ひとことでいえば、日本に関する知識のない無資格ガイドが案内しているから起こるというべきで、これも監督官庁の野放しが生んだ問題なのです。

〔TBS・Nスタ〕中国人観光客はなぜ民家に侵入して自撮りをするのか?
http://inbound.exblog.jp/26383490/

ところで、番組にひとりの中国人コンサルタントが登場します。この人の存在がなかなか微妙です。彼は白タクや違法民泊問題についても「シェアリング・エコノミーは世界的な流れ。その点では中国の方が進んでいます。日本人の日常生活を味わうのは大きな魅力です」という主旨の話をするのですが、前述したような、最近の中国人によく見られる「むしろ、遅れている日本の方が問題では」という心理がうかがえないではありません。これを聞くと、そういう風に話を丸め込まれてはたまらないと感じる視聴者も多かったのではないでしょうか。なぜなら、違法問題を引き起こしている当の本人が言い訳しているようにも聞こえるからです。

いろいろつっこみを入れましたが、番組のウエブサイトでは、違法問題の背景について以下の解説を試みています。

なぜ、悪質なランドオペレーターを取り締まれないの?

取り締まるための法律がなかったからです。1952年に制定された旅行業法は、消費者となる旅行者を保護するために旅行会社を監督する目的で作られました。旅行会社から依頼を受け、バスやホテル・ガイドを手配するランドオペレーターは、旅行会社との取引になるため、旅行業法の規制の対象外になります。中国人観光客の数はこの3年で5倍近く増加し、ランドオペレーターの需要が急拡大する中、法の目が届きにくい現在の法制度の隙間をつく形で、次々と悪質業者が生まれきたと見られています。番組で取り上げたバス会社やレストランへの「突然キャンセル」だけではなく、旅行客を物販店に連れ回し不当に高額な商品を買わせる「ぼったくりツアー」で大きな利益を手にする業者もあります。さらに昨今、団体ツアーから個人旅行にシフトする中で、小回りのきく移動手段として「白タク」(営業届けをしないまま乗客を車に乗せ、運賃を受け取る車)や格安の宿泊場所として「無届け民泊」を手配するなど、悪質行為を行う業者も出てきています。

国はどのような対策を取ろうとしているの?

今年になって、国はようやくランドオペレーターの実態調査に乗り出し、全国で800以上の業者があることをつきとめました。現在、旅行業法を改正して、悪質なランドオペレーターを管理監督出来る仕組み作りを進めています。しかし、その一方で、他の業種では規制緩和を進めています。たとえば、これまで外国人を有償でガイドするためには「通訳案内士」という国家資格が必要でしたが、今後は「無資格」でもガイドすることを可能にする方針を打ち出しています。また、「民泊」もこれまで禁止されていた住宅街での開設を解禁する方向です。「2020年に訪日外国人観光客4,000万人」という目標を掲げる中、入国を許可するビザの発給要件の緩和も続ける日本。様々な規制緩和の中で、いかに悪質業者の横行を防いでいくようなルールやチェック体制が出来るかが、今後の課題となっています。


このように番組では、こうした違法営業が大手を振るっているにもかかわらず、政府の方針は「通訳ガイドは無資格でも可能」「民泊は住宅街でもOK」「ビザの緩和」「悪質業者を監督できる法改正を検討」と、規制を緩める方向にあることに疑問を呈しています。

そのこと自体はいいのですが、あたりさわりなく終わってしまう精神論や経済効果の話だけではなく、また安易に偏見を助長する結果を生みがちな表層的な実態のルポだけでもない、本質的な議論をしていかなければと感じます。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-25 09:58 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 05月 24日

「夜に消える? 訪日客」。背景には民泊による宿泊相場の価格破壊がある

今日の朝日の朝刊を見て、ついにこの話が出たなと思いました。

「訪日外国人数は増えているのに、宿泊者数が伸び悩んでいる」

インバウンド関係者の間では、昨年からすでに大きな問題となっていたからです。

東日本大震災の翌年の2012年以降、好調に推移していた外国人の宿泊者数の伸び率が、15年(46.4%)から16年(8.0%)にかけてガクンと減ったのです。「外国人延べ宿泊者数は、7,088万人泊となり、調査開始以来の最高値」であるにもかかわらずです。
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宿泊旅行統計調査(平成28年・年間値(速報値))
http://www.mlit.go.jp/common/001174513.pdf

記事では、なぜこうしたことが起きたのか、その背景についてさまざまな観点から検討しています。

ユー、夜はどこに? 訪日客は増加でも宿泊者は伸び悩み(朝日新聞デジタル2017年5月24日)
http://www.asahi.com/articles/ASK5R55GBK5RULFA01M.html

日本を訪れる外国人客は増え続けているのに、国内での外国人の延べ宿泊者数が伸び悩んでいる。ホテルや旅館に泊まらないのだろうか。「夜に消える訪日客」の実態をつかみあぐね、観光立国をめざす政府は困惑している。

4月中旬、深夜の成田空港のロビー。欧米系の外国人10人ほどがソファに寝転び、上着やタオルを顔にかけてまどろんでいた。

フランス人の玩具デザイナー、レマル・アモリさん(31)は、この日はここで朝まで過ごすと決めた。「日本のホテルは狭いのに宿泊代が高すぎる」。7日間の日本滞在中、夜はインターネットカフェや友人の家に身を寄せるつもりだ。

関西空港の24時間営業ラウンジでも、朝まで過ごす訪日客が目立つ。個室状のブースは連日満席。空港も仮眠用に無料で毛布を貸し出している。

観光庁によると、今年の訪日外国人客数は13日に1千万人を突破。過去最速のペースだ。1~3月の累計は653万人で前年同期より約14%増えている。ところが、同じ期間の国内の外国人延べ宿泊者数は累計1803万人で、約2%増どまり。訪日客の日本の平均滞在日数は9・5日。前年同期(10・2日)から大きく減っているわけでもない。

背景にあるのは集計方法の違いだ。客数は法務省の入国管理統計から日本に住む人を除いて出すが、宿泊者数は1・5万軒前後のホテル・旅館へのアンケートをもとに推計する。空港やネットカフェは対象外だ。

観光庁は当初、住宅に泊まる「民泊」と、船内に泊まれるクルーズ船の利用増の影響が大きいとみていた。民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」の昨年の延べ利用者数は、前年の2・7倍の370万人超に達した。昨年のクルーズ船による訪日客は199万人で、前年より8割増えている。

だが、最近は「それだけではなさそうだ」(観光戦略課)という。都市部でのホテル不足から宿泊料金が高止まりし、訪日客が「宿代わり」になる安価な施設を探しているという。ネット上での情報交換も盛んになっている。

夜通し営業する東京・新宿の温浴施設「テルマー湯」は今年、外国人客が前年より10~15%増えているという。観光庁が「宿泊主体ではない」と調査対象外にしているラブホテルも、低価格で日本独特の宿泊先として訪日客に人気だ。

移動で深夜に走る高速バスを利用するケースも増えている。高速バス大手のウィラーエクスプレスジャパン(大阪市)では、昨年に専用サイトから申し込んだ外国人客が前年比4割増の14万人だった。

訪日客向けビジネスを支援する「やまとごころ」(東京)の村山慶輔社長は「個人のリピーターや中所得層の訪日客が増え、旅の仕方が多様化しているのに、統計は実態をとらえきれていない」と話す。

政府は2020年までに、年間訪日客数を16年実績の約7割増の4千万人にするほか、地方での外国人延べ宿泊者数を同約2・5倍の7千万人にする目標も掲げる。国土交通省幹部は「政策の効果を確かめるためにも、統計の精度をもっと上げないといけない」。(森田岳穂、石山英明)


この記事では、訪日客数の伸びに見合わない宿泊者数の背景に「住宅に泊まる「民泊」と、船内に泊まれるクルーズ船の利用増の影響が大きいとみていた」が「それだけではなさそうだ」(観光庁)と考えるようになったとあります。

その例として、国際空港のラウンジで仮眠したり、都内の温浴施設に寝泊りする外国人の増加、ラブホテルや深夜バスの利用などを挙げています。ちなみに風営法扱いでこの統計には入らないラブホテルや温浴施設とは違い、外国人利用の多いカプセルホテルは「簡易宿所」にあたり、統計に含まれているため、記事には触れられてはいません。
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羽田空港国際ターミナル午前0時半(2017年3月上旬)
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確かに、羽田空港国際ターミナルの深夜便利用客は想像以上に多く、ロビーのソファで横になる外国人の多さに驚いたことがあります。また羽田空港に近い蒲田などのスーパー銭湯を利用する羽田深夜着や早朝便利用の外国人が多いことも知られています。同じような話は、関空や中部空港などの大都市空港にもあります。

LCCを使えば片道5000円で日本を訪れることができる時代です。なるべくお金をかけずに日本旅行を楽しみたいというニーズは高まるばかりで、こうした宿泊形態の多様化が進むのはもっともな話でしょう。

そのため、2015年頃まで外国客の利用比率が高かった都内のホテルほど、去年は客室を埋めるのに苦心するという事態が起きていました。記事には「都市部でのホテル不足から宿泊料金が高止まり」とありますが、これらのホテルでは宿泊料金のディスカウント合戦が始まっています。問題は日本のホテル料金にあるというより、やはり民泊による宿泊相場の価格破壊が起きたと考えるべきでしょう。「それだけではない」のは確かですが、影響は大きいのです。

先日も海外在住の知人が帰国し、東京に立ち寄る際、試しにAirbnbで民泊を探したところ、最安値は2000円だったそうです。1泊しかしないので、話のタネにと泊まったところ、そこは五反田にある賃貸マンションの1室で、ワンルームに2段ベッドが6つ置かれており、若い外国人が何人も泊まっていたそうです。

不特定多数の外国人を1室に押し込むドミトリー式の民泊の話を聞き、まるでウォン・カーウェイ 監督の『恋する惑星』の舞台だった重慶マンションではないかと思ったものです。でも、五反田のケースはフロントもなければ、スタッフもいないわけですから、もっと劣悪な環境だといわざるを得ません。「これでは盗難が起きても誰にも訴えられない。二度と泊まる気にはなれなかった」と話してくれました。

団体から個人へと移行したアジアからの観光客の多くは、家族や小グループで日本を訪れます。彼らはどんなに狭くても、民泊でマンション1室にグループごと雑魚寝して泊まれば、ホテルの客室を複数利用するのに比べると、はるかに割安です。これも宿泊相場の価格破壊をもたらした大きな理由だと考えられます。

結局、民泊の実態はこういうものです。でも、自分の若い頃を思い出すと、この種の安宿を利用する外国人旅行者の気持ちはわかります。彼らにすれば、宿泊代を下げられれば、そのぶん長く外国に滞在できる。もっと遠くに旅行に行ける。それが彼らにとって最優先の価値だからです。

そうである以上、監督官庁は「それだけではない」などと逃げないで、明らかに問題のある民泊の存在をこのまま許すかどうか、そろそろ判断しなければなりません。記事にあるように、「統計の精度」は実態の把握のために必要ですが、はっきり言って、この種の違法営業はなにも宿泊関連だけでなく、無資格ガイドや違法バス、白タク、ブラック免税店などの問題も含めて決して最近の話ではなく、広く知られていなかっただけで、10年以上前からずっと起きていたことだからです。背後に存在するモグリの事業者たちがやることは、いまも昔も変わりません。

ちなみに、2016年の国別訪日客数と延べ宿泊者数のトップ5の伸び率を以下に挙げてみます。(左:訪日客数、右:延べ宿泊者数)

中国 27.6%増  3.3%増
韓国 27.2 %増 15.7%増
台湾 13.3 %増 1.3%増
香港 20.7%増 8.2%増
アメリカ 20.3%増 14.3%増

これをみるかぎり、すべての国で訪日客数より延べ宿泊者数の伸び率が低いのですが、特に数の開きが大きいのが中国です。中国の伸び率の開きは、九州を訪れるクルーズ船の増加の影響もあるのですが、やはりここには「途家」などに代表される中国系民泊の影響が感じられます。

都内で民泊をやってる在日中国人の話を聞いてみた
http://inbound.exblog.jp/25579904/

AISO(一般社団法人アジアインバウンド観光振興会)の王一仁会長は「昨年、Airbnbの国内の利用者が前年比2.7倍の370万人超になったというが、『途家』などの中国系民泊の利用も、同じように増えている。彼らは統計を公開していないが、それがホテル市場に与えた影響は想像以上に大きいといわねばならない」と話しています。

世界でいちばん安さにこだわる彼らですから、民泊がホテルより安いとわかれば、そちらに移るのは自然の流れです。なにしろ日本には民泊を経営する中国人も多いからです。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-24 11:50 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 05月 19日

日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?

5月18日の日本テレビの情報番組『エブリィ』が違法営業と報じた中国配車アプリ「皇包車」とはどんなサービスなのでしょうか?

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?
http://inbound.exblog.jp/26867015/

それはひとことでいえば、2009年中国の大ヒット正月映画『非誠勿擾』で多くの中国人が夢見た、ドラマの主人公のように海外をドライバー付きで自由に旅することの実現といえます。

非誠勿擾
http://www.okhotsk.org/news/tyuugoku3.html

これが「皇包車」です。
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皇包車(HI GUIDES)
https://m.huangbaoche.com/app/index.html

このサービスのキャッチコピーはこうです。

「华人导游开车带你玩(中国人ガイドがあなたを乗せてドライブします)」

ここでいう中国人ガイドって誰のこと?

その下に都市名と契約したドライバー数が載っていますが、おそらくこのドライバーこそが「中国人ガイド」というわけでしょう。

東京1659名 台北1643名 大阪1172名 ニューヨーク698名 パリ786名 バリ島101名

このサービスは日本国内のみならず、海外でも展開されているのです。「越境EC」ならぬ、「越境白タク」とでも呼べばいいのでしょうか。

もう少しサービスの中身を知るために、サイトを覗いていきましょう。

これは東京のページです。
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皇包車 東京
https://www.huangbaoche.com/app/lineList.html

このページには、東京発のさまざまなドライブコースが表示されています。たとえば、いちばん頭にあるのが、以下の富士山ドライブコース。1名489人民元とあります。

富士山河口湖→五合目→忍野八海→山中湖温泉 包车一日游,东京往返 ¥489

実は、同様の中国系配車アプリがもうひとつあります。こちらも海外各地で展開していますが、日本のページを見てみましょう。
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DingTAXI日本包車旅遊
https://www.dingtaxi.com/zh_CN/c/japan

トップページには以下のようなコースと料金が記されています。

東京包车一日游(東京1日チャーター)最低 ¥23000JPY
大阪包车一日游(大阪1日チャーター) 最低 ¥25500 JPY
(东京出发) 富士山箱根包车一日游(東京発富士山・箱根1日チャーター) 最低 ¥36000JPY ほか

成田空港から都内へは16500円、羽田からは9500円。一般のタクシーに比べると半額です。

次に「東京1日チャーター」のページをみると、23人のドライバーと自家用車の写真が載っています。それぞれ1日の運行時間と料金に加え、深夜便利用客のニーズに合わせた深夜料金なども書かれています。
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中国客たちは、ドライバーの写真や車種、料金、条件などを比べて選ぶことになります。

それにしても、彼らとアプリ会社との契約はどうなっているのか。一部のドライバーは写真を載せていますが、顔が割れてしまっても大丈夫なのでしょうか…。

琉球新報は、こうした配車アプリを使った白タクサービスが3年前から始まったと報じています。いったい沖縄でどんなことが起きているのか。以下の記事を読むとよくわかります。

中国客も「白タク」利用 沖縄観光、アプリで配車 運転手は県内に100人超(琉球新報2017年5月14日)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-495441.html

台湾人クルーズ客を相手にした白タク行為が沖縄県内で横行する中、中国人客を対象にした「白タク」行為も広がっている。世界各地で事業展開する中国の運転手付き自動車配車サービスアプリを使う手法で、同アプリで手配する運転手は旅客を運送する際に必要な第2種運転免許を持っていない例が多いとみられる。旅客自動車運送事業の許認可を受けないレンタカーや自家用車を使用している。

13日現在、同アプリに登録し、沖縄で操業できる中国人運転手は100人を超える。急増する外国人観光客への多言語対応など、県内の受け入れ態勢の不備が白タクの横行を招いている側面もある。

中国人客は台湾人客と異なり旅行業者を介して白タクを手配するのではなく、スマートフォンがあれば気軽に白タクを手配できるアプリを利用するのが一般的だという。利用者は、飛行機で来沖する中国人客が多くを占める。

県内旅行関係者によると、中国の配車サービスアプリの利用は3年前から始まり、来沖する中国人客の増加につれ、利用件数も急増している。

別の旅行関係者によると、同アプリで販売する4人乗りの車を使った県内1日(10時間)ツアーが平均3万5千円なのに対し、第2種免許を持つ日本人運転手付きのタクシーは平均3万円。「中国語でサービスを提供しているため、日本人運転手の料金よりも高い」という。運転手はサービスを提供する前、乗客とSNSや電話でやりとりし、宿泊先のホテルなどで客を乗せる。

県内旅行関係者は「乗客は配車アプリを通して料金を運転手に支払っているため、現金でのやりとりがなく、(警察などの)摘発は難しい」と現状を述べ「きちんと税金を支払っているわれわれに公平な競争環境を返してほしい」と訴えた。


琉球新報の同記事には、中国客が日本で配車アプリサービスを使えるしくみをわかりやすく図にしてくれています。
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要するに、中国客は日本を訪れる前に、同サービスに対して支払いをすませており、日本でドライバーへ金銭を支払うことはありません。つまり、事業者は日本国内には存在せず、金銭のやりとりもない(おそらくアプリ会社からドライバーへの支払いは、中国の電子決済システムによるのでしょう。ドライバーは日本在住者でありながら、在外華人なので、必要であれば、なんらかの日本円への換金手段があると思われます)。そして、顧客へのドライブサービス活動の実態だけが、日本国内で行われるのです。

問題は、このドライバーたちのほとんどが第2種免許を持っていないであろうこともそうですが、個人営業者として確定申告をしているのかどうか。もしそうでないのであれば、いくら中国人観光客が日本を訪れても、日本にお金が落ちないしくみになっていると言わざるを得ません。

次回以降は、なぜこれほど多くの中国人観光客が日本国内で白タクを利用するようになったのか。中国でライドシェアが一気に普及した背景について説明します。

中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/

(参考)
中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?
http://inbound.exblog.jp/26876191/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-19 16:12 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 05月 19日

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!?

昨日(5月18日)、中国のSNS「微信(WeChat)」上に、ひとりの日本に住む中国人と思われる人物から、中国系白タクの利用に注意を促す以下のメッセージが発せられました。
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新闻不报道还不知道国内有个叫“皇包车”的软件(2017-05-18)
http://www.sohu.com/a/141506227_559312

メッセージの中身は、その日夕方5時50分過ぎの日本テレビの情報番組『エブリィ』で放映されたニュースに触れたもので、成田空港や羽田空港に急増している中国の配車アプリ「皇包車」を使った白タクが、今後摘発の対象になると言っています。

さらに、中国で広く普及している同アプリによる配車サービスは、日本では合法ではないこと。万一事故に遭ったとき、補償がないことを知るべきだと呼びかけています。

ぼくはこの番組を観ていないのですが、そのメッセージにはニュース映像のカットが2点載っていて、「白タクは普通の自家用車で違法営業」との文面が見られます。同番組のサイトでは、いまのところ、このニュースはアップされていないようです。

日本テレビ『エブリィ』
http://www.ntv.co.jp/every/

中国系白タクの急増が問題になっていることは、関係者の間では数年前から広く知られていました。NHKのクローズアップ現代でも昨年10月下旬、中国人観光客をめぐるさまざまな問題のひとつとして白タクに触れています(このニュースに関しては、あらためて別の機会に解説します)。

潜入!中国人 “爆ツアー”の無法現場(NHKクローズアップ現代+2016/10/23)
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3879/

今年3月、羽田空港から深夜便で上海に行ったのですが、国際ターミナルの周辺にワゴンタイプの白タクと思われる自家用車が何台も中国客を降ろしているのを見ています。
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跋扈する中国系白タク問題にいちばん頭を痛めているのが沖縄県です。今月に入って、沖縄のメディアはこの問題を繰り返し報じています。

沖縄では中国系白タクをめぐるふたつのケースが存在します。ひとつは、台湾からのクルーズ客が上陸観光をする際にレンタカーと第2種運転免許をもたないドライバーをセットで利用するケース。もうひとつが、中国客が配車アプリによる営業許可のない自家用車とドライバーを使うケースで、共通するのはドライバーの多くが県内在住の中国人であることです。

台湾人向け「白タク」中国系運転手がクルーズ客送迎 総合事務局「違法行為」(琉球新法2017年5月1日)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-488190.html
中国客も「白タク」利用 沖縄観光、アプリで配車 運転手は県内に100人超(琉球新報2017年5月14日)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-495441.html

背景には、琉球新報の記事にもあるように「急増する外国人観光客への多言語対応など、県内の受け入れ態勢の不備が白タクの横行を招いている側面」があるわけですが、だからといって営業許可も取らないで、好き勝手に課税逃れの商売をやることは許されません。なんでも「同アプリに登録し、沖縄で操業できる中国人運転手は100人を超える」そうですから、さすがの沖縄メディアも黙認はできないと判断したのでしょう。そのぶん、沖縄県民のドライバーの仕事が奪われてしまっているわけですから。

はたして日本テレビの報道のように、今後成田空港や羽田空港での白タク摘発は始まるのでしょうか?

次回は、この中国系配車サービスアプリについて説明しようと思います。

日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか?
http://inbound.exblog.jp/26867237/

(参考)
中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか?
http://inbound.exblog.jp/26876191/
中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由
http://inbound.exblog.jp/26874125/
なぜ次々と中国人観光客の周辺で違法問題が起こるのか?
http://inbound.exblog.jp/26880001/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-19 14:33 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 05月 18日

「学生の中国離れ」の背景には何があるんだろう?

先日、あるネットメディアに以下の記事が配信されていました。

タダでも中国には行きません 深刻な学生の中国離れ
一方通行の学生交流、このままでは情報格差が広がるばかり(JBPress2017.5.2)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49861

同記事によると「日本の大学生の中国への関心がどんどん低下している」そうです。

ある大学の学生に「なぜ中国に関心を向けないのか」と問いかけてみたところ、出てくるキーワードは「領土問題」「海洋進出」「反日」など。ある女子学生は、トイレなど衛生面の不安を挙げたといいます。

日本の若者が海外に行かなくなったとよく言われますが、2016年の日本人のパスポート取得数(外務省)を調べてみると、20代は2年連続で増加しているようで、若者の場合、「海外離れ」ではなく「中国離れ」が顕著だといえそうです。記事によると、海外には行きたいが、「中国となると“話は別”」なのだそう。

その理由として「おそらく中国という国に魅力を感じたり、憧れたり尊敬したりする人がいないんじゃないでしょうか。大金を投じてまで行く価値があるとは、周りの友人たちは思っていないのだと思います」という回答があったとか。ここまでぴしゃりと言われてしまうと言葉を返しようがありません。

同記事は最後に「(日中間が)「双方向の交流になっていない」という問題が生まれつつある。このまま行くと、「実際に日本を訪れて日本の理解が進む中国人」と「中国についてウェブ上の情報しか持たない日本人」との間で、情報格差が広まるばかりだ」と危惧しています。

もっとも、日中間の旅行市場のアンバランスについては、若い世代に限った話ではありません。2016年の中国からの訪日旅行者数637万人に対して、日本からの訪中旅行者258万人(中国国家観光局)とダブルスコア以上に離れています。

では、こうなる背景には何があるのか。以下の3つの理由があるとぼくは考えます。

①いまの中国に若い日本人からみた魅力や行ってみたいと思わせるスポットが少ないこと(それにはもろもろの事情がある)
②ネットを中心に中国のネガティブな情報しか見当たらないこと
③ラインやインスタグラムなどの日本人にとっての日常的なSNSが使えないこと

まず①から説明します。

中国は歴史の国で、本来そこに魅力があるはずです。ところが、たとえばエジプトやローマなどを訪ねたときと比べるとわかるのですが、経済発展のおかげで多くの歴史建造物が現代的に修復されたぶん、歴史を強く感じさせるスポットが以前に比べ少なくなった気がします。さらに、都市の現代化の結果、全国どこも一緒で、地域性の違いが見えにくくなっています。これは日本の1970年代に似た建設ラッシュによって都市空間が均一化していく時代にある中国特有の過渡的な状況なのかもしれません。

ところが、同じ時代を通ってきたはずの日本では、外国人からみて現代都市と伝統文化が共存し、そこかしこに散見されるように感じられるといわれるのに、中国はそうではなさそうです。その理由はわりとはっきりしています。文革時に多くの封建的とされた宗教建築や民間風俗、少数民族に関わる施設などを葬り去ってしまったことの影響が大きいのです。いま中国の都市には再建された「老街」があふれていますが、テーマパークのようで、味わいがありません。

さらに、政府の規制が強すぎるせいか、好奇心旺盛で元気いっぱいの若い中国人がたくさん生まれているというのに、現代的なソフトパワーの魅力が発揮されにくい。数年前までは、唯一の自由空間としてネット上で繰り広げられていた、いかにも中国的なポップカルチャーのにぎわいも、現政権以降、文化面に対する統制が強まり、かつての活力が見られなくなっています。

そもそも中国は自らの魅力を海外にPRするのが苦手のようです。以前、北京から来た観光団のセミナーに出席したことがあるのですが、そこで説明されたのは、北京とその郊外の有名スポットの写真をただ順番に見せたありきたりの解説だけ。30年前にはなかったオリンピックスタジアムや劇場、スキー場などを見せたいのかもしれませんが、いまどき海外の誰が魅力を感じることでしょう。彼らには相手のニーズが見えていないのです。

外国人観光客数が伸び悩む中国の観光PRのお寒い中身 (2015年05月14日)
http://inbound.exblog.jp/24475269/

きっと今日の中国人ほど、かくありたい自画像と現実とのギャップに悩んでいる人たちもいないのでしょう。彼らのふるまいを見ていると、よくそう思います。

こうした客観的情勢があるうえ、日本では②「ネットを中心に中国のネガティブな情報しか見当たらない」状況が進んでいます。

確かに、そうなってしまう事情はあると思います。

一般に今日の日本人の「嫌中」「反中」は、2000年代以降に中国人があからさまに見せた「反日」暴動などのふるまいや中国政府によるあまりに非礼な言動に対するリアクションから生まれた国民感情といっていいと思います。よく「日本の書店に行くと、嫌中本ばかりが並んでいる」などとメディアは批判しますが、これも総じていえば、民意の反映といえなくもない。

特に最近の中国政府の台湾や韓国に対する嫌がらせは許しがたいことで、観光を政治利用するような国には行きたくないと思うことを誰が批判できるでしょうか。

だから嫌われる!? 今年の春節も観光を政治の取引に使う中国にうんざり
http://inbound.exblog.jp/26584101/

嫌われる要因をつくり出しているのは、残念ながら、中国側なのです。

よく「日本のメディアが中国のネガティブな報道しかしないせいだ」という人がいます。日本に住む中国人もそう感じている人が多そうです。でも、本当にそうでしょうか。中国における硬直した日本報道をみる限り、とてもじゃないけれど、中国人がそれを言っても始まらないと思いますし、メディアといっても実際はいろいろで、一般に日本の新聞やテレビの「報道」分野においては、むしろ公平中立を重んじるあまり、中国に対するつっこみが甘いと感じさせる内容が多い気がします。

今日の朝日の朝刊にこんな記事がありました。

中国政商の「腐敗暴露」衝撃 習氏右腕の親族ら名指し(朝日新聞2017年5月18日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12942655.html

中国高官の汚職を暴露した在米中国人のインタビュー番組が「中国側の圧力」で突然打ち切りになったそうです。この告発は、今秋の全人代に大きな影響が考えられる以上、政治的な判断があったと考えて不思議はありません。

アメリカでさえ、こういうことが起きる以上、従来どおりの「公平中立」をうたう報道では、読者の多くが疑念をおぼえるのは無理もありませんし、報道の限界は見透かされています。これは世界的に共通する現象なのでしょけれど、多くの人たちが今日の報道を信用していないのです。

問題は、そうした不満があふれ出てくる場として、テレビのバラエティ化した情報番組やネット上の中国ネガティブ情報ばかりがまかり通ってしまう、いまの状況です。「学生の中国離れ」の背景にあるのは、報道のせいというより、こちらの影響でしょう。

率直にいって、相手を貶める話題にしか関心を持てないというのは、哀れというほかありません(同じことは中国人の側にもいえます)。その一方で、多くの日本人にとって今日の中国人のふるまいは得体の知れない理解不能なものにしか見えないであろうことは、ぼくにも理解できます。こういうと、よく友人からも「(中国によく行くくせに)あなたも反中なんですね」と皮肉まじりに言われることがありますが、その種のレッテル貼りは単にその人の中国理解の欠如からくるものなので、やれやれと思うほかありません。人は自分の知らない話をされると、レッテルを貼ることで、無意識のうちに自分を肯定しようとするのでしょう。

日本のネット上の中国ネガティブ情報の増殖は、特に日本の年配世代の心情に起因していると思われます。なんだかんだいって、彼らはそれなりの情報通で、発信者の多数派を占めるからです。彼らはかつて日本の経済力が中国の10倍以上もあった頃(1990年代初め)を知っています。それがこの20数年で追い抜かれ、いまでは日本の2.5倍にまで差を広げられたという現実を、まっすぐ受けとめられない。誰しも自分に落ち度があったと認めたくないからです。そのやむにやまれぬ、自分ではいかんともしがたい不愉快な感情というものは、彼らの立場になれば、理解できなくはないと思います。

ただ彼らはその感情をきちんと言語化したいとは思っていないように見えます。この20数年間に何が起きたのかもよくわかっていたとは思えない。とにかく面白くない。でも、誰にどう文句を言っていいのかわからないので、嫌中本でも読んで、憂さを晴らすしかないわけです。少しは救われた気がするのでしょう。

1980年代にアメリカの自動車産業の労働者たちが日本車をハンマーでぶち壊すという、ある種爽快なパフォーマンスを行ったことがありますが、日本人というのは、そのようなストレートな表現を好まないぶん、ネガティブな感情を内に込めてしまいがちです。

一方、若い世代にすれば、中国政府の容赦のない日本批判を聞いて、自分たちの世代には関係ない時代の、いわれのない中傷と上から目線の言いぶりに反発をおぼえるのも無理はないと思います。

こうした老いも若きもが抱える国民感情が、ネットに蔓延しているのだと思います。

さて、「学生の中国離れ」の3つめの理由として③「ラインやインスタグラムなどの日本人にとっての日常的なSNSが使えないこと」。これは単純すぎるようですが、大きいと思います。いま世界を旅する人たちが当たり前に楽しんでいるエンタメツールであるSNSを使えないのは、世界広しといっても中国だけなのですから(あとは北朝鮮くらい?)。

外国客を呼びたいなら、中国はFacebookやLineを解禁すべきでは!
http://inbound.exblog.jp/25920704/

特に若い世代にとって、日常生活に欠かせないスマホやネットを日本と同じように使えない国があること自体、驚きでしょうし、そんな国に旅行に行こうという気は起こらない気がします。

これだけの幾層もの巨大なハードルがそびえるなか、いまの学生が中国に旅行に行くというのは並大抵のことではなさそうです。わかりやすい動機が見えてこないし、あるとしたら相当の思い入れや覚悟がなければ、わざわざ行くことにはなりそうもない……。

それでも、実際に上海に行ってみようと思う若い子たちがいることも確かです。

今年3月に上海出張に行ったとき、羽田・上海の深夜便を初めて利用したのですが、たまたまそのとき、一緒に乗り合わせたのが、昨年大学を卒業したばかりというふたりのOLさんでした。

帰国後、ふたりの上海“弾丸”旅行の話を聞きました。

彼女らは午前2時発のピーチに乗り、滞在2日間のうち、初日は市内観光と変身写真館でのチャイナドレスのコスプレ撮影、翌日は早朝から上海ディズニーで遊んで、夜便の春秋航空で深夜1時に帰国。羽田からタクシーで自宅に戻り、翌朝出社したそうです。

ふたりは初めての中国旅行で、昨年一緒に台湾に行ったら楽しかったので、今度はディズニーのある上海に行ってみようという話になったとか。それでも、ネット上には中国そのものに対してもそうですが、上海ディズニーに関するネガティブ情報が多く、本当にそうなのだろうか、といぶかしく思っていたそうです。

で、実際に行ってみたら、週末なので東京ディズニーより入場料金は高かったけれど、そんなに混んでないぶん、たくさんのアトラクションに乗れてよかったと話していました。またネットでいうほど極端な環境だとは思えなかったとも。そりゃそうでしょう。

実際、ネット上にはさまざまなネガティブ情報があふれています。たとえば、これ。「上海ディズニーランドはハード面では東京ディズニーランドと遜色ないとしながらも、キャストの態度やサービスは圧倒的な差がある」のだそう。

上海ディズニーと東京ディズニーの最大の違い、それは…=中国報道(サーチナ2017-05-17)
http://news.searchina.net/id/1635848

中国情報専門サイトのサーチナは、以前は中国のポジティブな側面も盛んに発信していたのですが、数年前にYahoo!の記事配信もストップし、最近ではどちらかといえば、世間に迎合的な中国人の日本礼賛話が多い気がします。ネット上ではそのようなどこか卑屈な姿勢にならなければやっていけないのでしょうか。

この記事について、ふたりに聞くと「まあ、そうかもしれないけど…」と苦笑していました。彼女らが上海旅行で体験した楽しいこと、辛かったこと、笑ったことに比べたら、たいしたことには思えないからでしょう。

確かに、上海では地下鉄にトイレがないことが多いし(深夜便利用だと体調管理が大変!)、空気が悪くてマスクが茶色になったとか、困った体験も数々あったそうです。こうした日本では考えられない珍体験も含めて「たった2日では何もわからなかった。おいしいものもほとんど食べられなかったけど、また行ってみたいと思ったし、そういう旅がしたいといつも思っている」とふたりは話しています。

結局のところ、彼女らと話していて思うのは、旅行に行くのに、妙な思い込みや覚悟なんていらないのです。

ぼくは中国の旅行書をつくっている人間なので、「学生の中国離れ」をビジネスの当事者として受けとめざるを得ないところがあります。ですから、前半に書いたような、こうなる客観的な事情をふまえて物事を考えなければならないことを承知しているのですけれど、それとはまったく切り離して考える自由もあります。なにしろ中国は広く、いろいろ面白いことがたくさんあるのは本当です。こればかりは、そう思える人と思えない人がいるのは理解できますから、強制するつもりなどありません。

でも、逆にこれだけネガティブな話題が満載の国に行ってみようというのもありではないか。ネット情報ばかりに感化されてしまうのはシャクじゃないですか?

最近、ぼくがつくった旅行サイトを紹介したいと思います。

ボーダーツーリズム(国境観光)を楽しもう
http://border-tourism.jp/

このサイトは中国だけでなく、ロシアやモンゴル、朝鮮半島を含めた北東アジアの旅を誘う内容です。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-18 17:10 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2017年 04月 28日

まだ気がかりな点も多い今年8月のウラジオストクの電子ビザ発給事情

今月中旬、極東ロシアのビザ緩和のニュースが報じられたばかりですが、「日本など18カ国の国民が対象」という文面を見て「どういうこと?」と思われた方もいたかもしれません。

8月1日からウラジオストクは8日間のノービザ渡航が可能になります
http://inbound.exblog.jp/26806617/

この点について、本日届いた「公益財団法人環日本海経済研究所(ERINA)」が発行するメルマガに興味深いふたつの翻訳記事があったので、以下転載します。このメルマガでは、日本海に面した自治体によって運営されている同シンクタンクが、北東アジアの国々の最新動向と日本海側の自治体との交流に関するグローカルなニュースを定期的に伝えています。

ERINA http://www.erina.or.jp/

ロ極東への電子ビザ入国が許可されるのは18カ国(DV.land4月17日)

世界18カ国からの観光客が、簡素化されたビザ発給手続きによって、ロシア極東5地域を訪れることができる。メドベージェフ首相が関連するリストを承認した。

このリストには、中国、日本、北朝鮮、トルコ、インド、イラン、UAE、サウジアラビア、チュニス、モロッコ、メキシコ、シンガポール、オマーン、アルジェリア、バーレーン、グルネイ、カタール、クウェートが入っている。メドベージェフ首相によれば、これらの国々は、相互主義の原則で選ばれた。これらの国々とは将来的に、二国間のビザ無し渡航協定の締結もありうると、首相は説明した。

これらの国々の国民は8月1日から、沿海地方、ハバロフスク地方、サハリン州、チュコト自治管区を訪れることができる。これらの旅行者は到着の4日前までに外務省のサイトで申請し、その後、国境でパスポートを提示するだけでよい。電子ビザが8日間のロシア滞在の権利を与える。電子ビザの有効期限は30日。電子ビザは無料で発給される。同時に、移動が許されるのは、入国した地域内のみとなっている。ウラジオストクの検問所のテストは7月1日から始まる。

入国手続きの簡素化によって、ロシア極東への観光客数は約30%増えるものと、極東開発省では予想している。


ロシア側のいう18カ国のリストをみるかぎり、ビザを緩和したからといって、これらの国々の人たちがウラジオストクへ来ることがあるのだろうか。そう思わざるを得ません。ここ数年の日ロ交渉を尻目に「日本を特別扱いする気なんてないよ」とメドベージェフ首相は言いたいんでしょうか。

同じ違和感は、ロシア側の関係者も感じているようです。現地でも戸惑いが見られることは、次の記事を読むとわかります。

電子ビザに関する首相の命令に旅行業界は困惑(Nakanune.ru 4月19日)

電子ビザでのウラジオストクへの入国が許可された国々のリストは、観光業界関係者を困惑させた。

ロシア観光産業同盟の広報担当者のイリーナ・チュリナさんによれば、リストアップされたうちの8カ国(アルジェリア、バーレーン、ブルネイ、カタール、クウェート、UAE、オマーン、サウジアラビア)は、ロシア連邦保安庁国境局のデータに拠ると、昨年ロシアへの一定数の入国が記録された80カ国に入っていない。「しかも、これらの国々を特恵リストに加える重要な論拠になったと首相の言う『相互主義の原則』は何なのかも、全く分からない」とチュリナさん指摘した。

現実にロシア極東への入国者数を増やし得るのは、18カ国のうち中国と日本の2カ国だけなので、広く宣伝され、期待を持たせたアクションは形式上のものだったとチュリナさんは考えている。同時に、2016年にビジネス、観光、私的目的でのロシアへの渡航者数が140万人を超えた中国とは、3人以上の観光グループのビザ無し交換が始まって久しい。

もしもリストに制限を加えるなら、アルジェリア、バーレーン、ブルネイ、北朝鮮、その他の先行き不明の市場の代わりに、オーストラリアやニュージーランド、カナダ、または昨年の総括のトップ25に入っているブラジルを加える方が論理的だというチュリナさんの発言をインターファクスが報じている。


これの記事で面白いのは、「現実にロシア極東への入国者数を増やし得るのは、18カ国のうち中国と日本の2カ国だけ」だとロシア側も認識していること、すでに中国人は「3人以上の観光グループのビザ無し交換」が実施されており、「2016年にビジネス、観光、私的目的でのロシアへの渡航者数が140万人を超えた」こと。さらに、文面にはありませんが、韓国とは2014年に「二国間のビザ無し渡航協定」を締結していることを考え合わせれば、民間の思いはともかく、ロシア政府側は日本に対するビザ緩和をどこまで積極的に進める気があるのか、疑わしくさえ思うのです。

(中国人のロシア観光が年間140万人を超えたことがわかる実例)
黒龍江省北辺の町、黒河のボート遊覧とロシアへの日帰り観光
http://inbound.exblog.jp/26537280/

今年8月のウラジオストクの電子ビザ発給については、まだ気がかりな点も多そうです。前の記事には「ウラジオストクの検問所のテストは7月1日から始まる」とありますが、結局、その時点にならないと、どんな問題が出てくるかわからない以上、このまますんなりいくかどうかは微妙なところがありそうです。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-28 12:33 | ノービザ解禁間近!極東ロシア | Comments(0)
2017年 04月 25日

立ち食いうどん屋の外国人旅行者と豊島区椎名町のインバウンドの話

先週、ある用で西武池袋線の池袋からひとつめの駅、椎名町を降りたところ、駅前にある一軒の立ち食いうどん屋の前に旅行バッグを背負った外国人旅行者の3人組がいました。つい彼らにつられて店に入ってしまいました。
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椎名町を訪ねるのは数年ぶりのことです。めったに利用することのない駅を降りると、『孤独のグルメ』のゴローさんのように、よさげな飲食店をつい探したくなるものです。その立ち食いうどん屋の「南天」は、ボリュームたっぷりの肉うどん(430円)が名物だそうです。
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店内にはトリップアドバイザーの貼り紙がありました。なんでも豊島区のレストランで3623軒中67位(2017年4月24日現在)なんだそうです。
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南天本店
https://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g1066460-d1683449-Reviews-Nanten-Toshima_Tokyo_Tokyo_Prefecture_Kanto.html
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これが肉うどんです。肉の量を2倍にしたダブルは510円、ミニ390円もあります。

店長に聞くと、近所に外国人客が泊まれるゲストハウスがあるそうです。なるほど、だから椎名町のような住宅街に彼らが出没していたわけです。

後日、椎名町にあるというゲストハウスをネットで調べたところ、以下の宿が見つかりました。

シーナと一平(豊島区椎名町のカフェと旅館)
http://sheenaandippei.sakura.ne.jp/

そして、昨日のお昼前、ちょこっと覗きにいきました。場所は、椎名町駅の北口を出て西に向かい、サミット通りという名の商店街を歩いていくと、道沿いにあります。
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そこは「とんかつ一平支店」という古い看板のある建物でした。えっ、ここがゲストハウス? そう思いながら、店の前にいた女性に声をかけると、ずいぶん前に閉店したとんかつ屋だった空き家をリノベーションしてゲストハウス兼カフェとして、昨年3月にオープンさせたのだとか。
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せっかく訪ねたので、カフェでお茶をしながら彼女にさらに話を聞いたところ、このゲストハウスは豊島区の「リノベーションまちづくり」事業の一環で開かれたリノベーションスクールに参加した男性が始めたものでした。

いくつかのメディアがすでにこの宿について紹介していました。

カフェと旅館 一体 シーナタウン、豊島区の空き家活用 (日本経済新聞2016/3/17)
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO98515690W6A310C1L83000/

まちづくり会社のシーナタウン(東京・豊島)は18日、豊島区の空き家活用プロジェクトの一環で、カフェと旅館が一体となった施設を開業する。同区内の空き家率は15.8%と23区で最も高く、区は空き家の再生で地域の魅力を高める構想を進めている。今回の施設は同構想から誕生した第1号となる。

同社が開業するのは「シーナと一平」。昨年3月に区が開催した「リノベーション(大規模改修)スクール」で再生を検討した案件だ。使われていなかった住宅併設型の元とんかつ店を用途変更し、1階はカフェ、2階は主に訪日客が対象の旅館とした。

カフェは1時間300円で、ミシンを自由に使える「ミシンカフェ」。「ミシンに親しむシニアと子育て世代をつなぐ目的」(同社)という。

旅館は5部屋あり、2人で宿泊する場合、1万5120円からとする。相部屋式のドミトリーも備えた。

西武池袋線椎名町駅前の商店街に立地する。カフェでは近隣の総菜店で買ったものの持ち込みも可能にする予定で、利用者の商店街内の回遊も狙っている。


他にもいろいろあります。宿泊施設内の写真などはこちらを参照してください。

民間主導のプロジェクトで誕生した「シーナと一平」。まちに溶け込む「お宿と喫茶」を目指す
http://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00345/

とんかつ店をカフェと宿にリノベーションしてまちの“世代をつなぐ”
http://suumo.jp/journal/2016/03/18/108036/

豊島区のリノベーションまちづくり構想の詳細は以下を参照してください。都内一といわれる空家率の背景に、豊島区における30代(子育て世代)の流出があることから、いかに子供を育てやすい環境をつくるかという観点で民間と公共の空き家や空き地を利用したまちづくりを進めていこうとするものです。

豊島区リノベーションまちづくり構想
http://www.city.toshima.lg.jp/310/kuse/shisaku/shisaku/kekaku/008446/documents/toshima_renovkousou.pdf

リノベーションスクール@豊島区
https://www.facebook.com/renovationschool.toshimaku/
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こうした理念を掲げた取り組みが、当の外国人旅行者にどう受けとめられるかは別の話ですが、昭和の古い飲食店をリノベーションして生まれた空間はとてもユニークで、心地よいものです。

靴を脱いで上がるちゃぶ台が置かれたスペースがカフェで、利用代300円の内訳は、お賽銭箱に200円と飲み物代100円。コーヒーやソフトドリンクなど、セルフサービスとなっています。
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柱を背もたれにして、足を伸ばしてアイスコーヒーをいただいていると、近所のママさんが小さなお子さん連れで現れました。なんでも以前は昼間はただのカフェスペースだった1階は、今後近所の商店街のおばさんたちが先生になって洋裁や編み物、料理などを教えてくれる教室になるそうです。
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その名も「長崎二丁目家庭教室」。(月~木のみ。金~日は以前のとおりセルフカフェ)。教室の運営を担当する地元在住、二児の母である藤岡聡子さんにいただいたチラシによると「まちの誰もが暮らしの先生。家庭科に通ずる暮らしの知恵を学んだり、まちなかの福祉についてしることができます」と書かれていました。
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もともと外国人向けのゲストハウスとして立ち上げた「シーナと一平」でしたが、地元に密着したもうひとつの顔があることを知り、なるほどと思いました。
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確かに、椎名町は池袋に近い徒歩圏内でありながら、昔ながらの商店街が(以前に比べると縮小しているのですが)いまだに残っている町です。外食チェーンは駅前にはありますが、個人経営の個性豊かな食堂がまだたくさんありました。外国人観光客にすれば、商店街で焼き鳥を買って、カフェスペースでビールを飲んだりできる。こういうのが、本当は日本らしい町の楽しみ方なのかもしれません。

実は、藤岡さんに椎名町にあるもう一軒の、しかも都内で外国人にダントツ人気の旅館(トリップアドバイザーの都内の旅館人気ランキングで老舗の澤の屋に次ぐ2位だそう)があることを教えてもらったので、その足で訪ねてみることにしました。

その話はまた今度。

「澤の屋」に次ぐ都内人気旅館の支配人が語る民泊被害とこれからの宿経営
http://inbound.exblog.jp/26813108/
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by sanyo-kansatu | 2017-04-25 11:18 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2017年 04月 24日

「おいしい生活」は誰のもの? PARCOの前をベビーカーで歩くアジアからの観光客

昨日の夕方、池袋駅に向かって歩いていたら、双子の赤ん坊を乗せたベビーカーを押して歩くアジア系のファミリー旅行者の姿を見かけました。
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いまどき、特に珍しい光景でもないのですが、それがPARCOの前だったので、ふといろんなことを思い出してしまいました。

PARCOといえば、1980年代初頭、コピーライターの糸井重里さんの「おいしい生活」なる広告文に過剰なまでの意味が込められ、話題となった象徴的なスポットです。

糸井重里「おいしい生活」☆1980年代、西武池袋本店
https://middle-edge.jp/articles/lmVTC

当時は日本がバブル経済に向かう助走期のような時代でした。個人的には、この種の騒ぎを不機嫌かつ冷ややかにみつめていた自分ですが、それから30年以上たち、アジアから来た観光客が同じ場所で「おいしい生活」を満喫する光景を見かけることになるとは、さすがに思ってもいませんでした。そのことに気づき始めたのは、せいぜい21世紀に入ったばかりの頃です。

「おいしい生活」は、富裕層や特権階層ではなく、いわゆる一般「大衆」からなる社会が「総中流化」したとの「幻想」に多くの人が浸れる時代の到来を意味していたはずです。今日の中国やアジアの国々が、1980年代当時の日本ほど「総中流化」しているとは思えませんが、国単位でみたGDP比率は大きく変わり、アジアの国々でも、そこそこの割合の人たちが「中流化」し、アジアの近隣諸国だけでなく、日本へ海外旅行ができるようになったことは確かです。

彼らが大挙して日本に旅行に来てくれるという程度のことで、今後急ピッチで高齢化が進む日本社会の地盤沈下を押しとどめるには至らないのかもしれませんが、だからといて指をくわえているだけなんて。これを活かさない手はありません。そんな彼らの存在とその意味を考えることは、当ブログの一貫した関心事です。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-24 16:31 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2017年 03月 24日

中国クルーズ船乗客の済州島の下船拒否には呆れたが、今後困るのは中韓双方の民間業者(日本への影響 も)

3月11日、中国クルーズ船乗客が済州島で下船拒否したことが報じられました。中国政府による韓国旅行禁止がスタートする3月15日以前であるにもかかわらず、このようなことをしでかすとはまったく悪辣な輩たちです。

済州島に下船拒否した中国人観光客3400人、ごみ2トンを捨てて出港(中央日報日本語版2017年03月14日)
http://japanese.joins.com/article/813/226813.html

11日、済州(チェジュ)港に入港したが、下船を拒否した遊客(中国人団体観光客)約3400人が済州海にごみを2トン程度捨てて行ったことが分かった。

13日、済州税関などによると、11日に済州港に入港した国際クルーズ船コスタ・セレーナ号(11万4000トン級)が寄港する間、約2トンに達するごみを捨てた後、この日の午後5時ごろに次の寄港地に向かった。

中国のある企業のインセンティブ観光を出た3400人余りの遊客は11日、済州に到着したが、下船するなという会社側の通告を受け、全員が船に留まって寄港4時間後である午後5時ごろ、次の寄港地に出発した。

ごみは全部リサイクルごみのペットボトルや紙くず、缶の種類だ。このごみは済州税関の申告手続きを経て済州道某廃棄物会社で処理し、廃棄物処理の費用は船社側が負担した。

11日に入港したセレーナ号には遊客3400人余りが乗っていた。中国のある企業のインセンティブ観光団だった。イタリア・ドイツなど欧州から来た一部の旅行客もいた。

しかし、遊客は入港したが下船はしなかった。下船せず出港した理由は、中国政府のTHAAD(高高度防衛ミサイル)体系の報復措置の一つとして韓国観光禁止発表に従ったものとみられている。

世界的コスタ船社のクルーズであるコスタ・セレーナ号は、中国を母港にして運営されている。中国共産党機関紙の人民日報はこの日、中国人の大々的な下船拒否事態に対して「中国人観光客のこのような行為は愛国的行動であり、方式も文明的」と評価した。


中国の報復が直撃した韓国のメディアはこのように淡々と事実を伝えています。これだけの仕打ちを受けた以上、もっと怒っていいはずですが、対日報道の場合とは違って、ずいぶんおとなしいんですね。それにしても呆れるのは、ゴミだけ捨てて帰るという不埒ぶり。クルーズ会社と現地の港湾施設との契約を履行したにすぎないのだと思いますが、韓国側も中国の非道ぶりを伝えるうえで、この話をどうしても言いたくなったのではないでしょうか。何より残念なのは、人民日報が「愛国的行動」と称える下船拒否を行ったのが、イタリア系クルーズ会社のコスタ・セレーナ号であること。いまや中国では外資系も政府の恫喝に従うほかないことがわかります。なんとみじめな話でしょう。

普通に考えて、乗客が一斉に同じ行動を取ることはありえないように思われますが、記事によると、同船の乗客が「中国のある企業のインセンティブ観光団」という社員旅行のような組織化されたグループであったことから、それが可能になったのだと理解するほかありません。下船拒否した中国客にこっそり話を聞けば、「自分は本当は下船したかったけど、やむを得なかった」というコメントが聞けそうな気がします。

彼らの下船拒否が悪辣といわねばならないいちばんの理由は、中国側が韓国側関係者へのビジネス契約を一方的に破棄した裏切り行為にあります。

彼らのクルーズ旅行は、寄港地でのバスを利用した上陸観光でのショッピングによる現地手配業者へのキックバックを前提として割安な料金に設定されているからです。この構造は今回のコスタ社の船に限った話ではありません。たとえ「愛国的」理由で下船拒否するとしても、中国側のクルーズ会社または乗客を集めた旅行会社は韓国の手配業者に相応の補填をすべきではないでしょうか。上陸していないのだから、その必要はないと言うことはできるのでしょうが、それでは無責任すぎます。これまで何年も、両者がお互いに協力して継続してきたビジネスモデルなのですから。

要するに、「愛国的行動」を中国メディアに称賛されたこの船の乗客は本来はありえない安いツアーに参加しているくせに、相応の代価を払わなかったということです。

最近は少なくなりましたが、以前はよく日本でも2万9800円上海3泊4日というような激安ツアーがありました。これは今日の中国人の訪日団体旅行と同様、現地のおみやげ屋に連れて行かれ、その購入代のキックバックで現地滞在費などが補填されるしくみなのですが、日本客の中にもみやげもの屋に行くのをパスする人がいました。これと同じです。これがツアー客の中のほんの一部であればともかく、全員が一斉にパスしてしまえば、このモデルは崩壊してしまいます。

ところで、この話はもっと込み入っています。もともと韓国の手配業者はキックバックの一部を中国側の旅行会社に支払っていた経緯もあるからです。手配業者は中国の旅行会社から乗客の手配を請け負う際に、通称「人頭税」と呼ばれる費用を支払います。中国側からすれば、乗客を韓国側に預けるから、せいぜい買い物をたくさんさせて、その上がりで手配費用はまかなってくれ。こちらは送客してやっているんだから、当然その一部をいただきますよ、というわけです。ところが、今回韓国側から渡すものがない以上、中国側も赤字となるはずです。

「中国人は旅行に行くと必ずたくさんおみやげを買う」。それを前提としたこのモデルのおかげで、中国のクルーズ旅行の料金は驚くほど安く販売されています。そう考えると、中国政府の報復により今後痛い目に遭うことになるのは、中韓双方の民間業者といえそうです。

これまで韓国では、2015年のMERS(中東呼吸器症候群)のときもそうでしたし、台風などの天候上の理由でクルーズ船が上陸できなくなることが多々ありました。でも今回は、事情が大きく異なります。

そして、3月15日以降、中国クルーズ船は韓国に寄航しなくなりました。

しかし、日本も「明日はわが身」かもしれません。というのは、中国側が寄港地側に求めていた「人頭税」が、韓国に寄航しなくなることで、日本側からだけ徴収されることになるからです。クルーズ客にはこれまで以上に日本で買い物してもらわないといけなくなるわけですが、「爆買い」の時代は終わり、そうはならないでしょう。でも、それでは今日の不当と思えるほど安価な中国のクルーズ旅行商品が成立しなくなるおそれがあります。

そうなると、中国の旅行会社も困ってしまいます。共倒れです。

まったく中国政府のやることは愚かにしか見えません。
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by sanyo-kansatu | 2017-03-24 13:10 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 03月 16日

日本を訪れる韓国人観光客が中国客を追い抜く勢いで増えています

昨日、恒例の日本政府観光局(JNTO)による「訪日外客数(2017 年2 月推計値)」が公表されました。

◇ 2 月 : 前年同月比7.6%増の203 万6 千人
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/170315_monthly.pdf

これによると「2017 年2 月の訪日外客数は、前年同月比7.6%増の203 万6 千人。2016 年2 月の189万1千人を14 万人以上上回り、2 月として過去最高となった」とあります。
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今回特筆すべきは、これまで2桁の伸びを続けていた訪日客数全体の前年同月比の伸び率が1桁に留まったこと。昨年がうるう年で1日減ったせいもあるとJNTOは言っていますが、台湾や香港、シンガポール、マレーシアは久しぶりに前年割れしています。英仏もそうです。訪日旅行市場はそろそろ頭打ちが近づいているのでしょうか? 

その一方、インドネシアからの訪日客が伸びています。ビジャーブを被るムスリム女性の姿を最近、よく見かけるようになったのも、こういうわけがあったのです。
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↑先日羽田国際ターミナルで見かけたムスリム系ツーリストたち

そして、訪日客のトップが中国から韓国に入れ替わったことも特筆すべきでしょう。

訪日韓国人数はわずか2ヵ月間で「1,225,400人」。前年比で「21.8%」も伸びています(一方、ここ数年トップだった中国は「1,139,700人」、前年比「17.0%」増と、こちらもまずますです)。
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いま韓国の旅行市場は大混乱となっています。中国からの団体旅行が急停止しているからです。

今日から中国人の韓国旅行がストップします(まったくひどい話ではないか!) (2017.3.15)
http://inbound.exblog.jp/26720093/

中国の旅行禁止措置 業界と自治体は活路模索に懸命=韓国 (聨合ニュース2017/03/14)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2017/03/14/0500000000AJP20170314001400882.HTML

にもかかわらず、日本を訪れる韓国人観光客が空前の勢いで増えているのです。これはどうしたことでしょう。

JNTOのリリースでは、韓国客急増について以下のように分析しています。

「韓国は、前年同月比22.2%増の600,000 人で、2 月として過去最高を記録。韓国のアウトバウンド全体が増加傾向にある中、航空路線の拡大や訪日旅行商品の販売拡大・低価格化もあり、20%を超える好調な伸びを示した。当初、前年は2 月にあった旧正月(ソルラル)休暇が本年は1 月末に移行したことによる訪日者数の伸び悩みが懸念されたが、前年同月より約10万人増加し、これにより20 市場の中で訪日者数が最多となった」

でも、この説明からは、なぜ「韓国のアウトバウンド全体が増加傾向にある」のか、「20 市場の中で訪日者数が最多となった」理由については、よくわかりません。

今年の訪日旅行市場であらたに注目すべきは、韓国人観光客の動向といえそうです。なぜこれほど日韓関係が悪化しているこの時期、彼らは日本を訪れるのでしょう。こういうことなら、久しぶりに韓国に足を運んでみようかと思っています。

一方、韓国に客を送らなくなった中国からも多くの観光客が日本に来そうです。こうなると、ますます中韓両国の訪日旅行市場に占めるシェアが高まることになり、これはこれで気がかりといえなくもありません。訪日客の国別シェアは適度なバランスが大切で、特定の国、しかも相手と政治的に問題を抱えている場合、変動も大きく、リスクをともなう面があるからです。

まったくいつ何が起こるか、どう変化していくのか先が読めない。それが日本のインバウンド市場の難しさであり、面白さであるといっていいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-03-16 11:51 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)