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2013年 07月 27日

富士山の世界遺産登録は訪日外客にも確実に影響を与えています【2013年上半期⑪富士山1】

「富士山が世界遺産になるらしい」と最初に報道されたのは、今年4月末のことでした。

世界的な知名度からしても、富士山は日本で最初に世界遺産になってもおかしくないと多くの人が感じていたでしょう。それは、外国の人たちにとってもそうだったようです。以下、登録をめぐる報道を書き出してみます。
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「富士山 世界遺産へ 信仰 芸術 日本文化育む」(朝日新聞2013年5月1日)

「国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に、『富士山』(山梨、静岡両県)が登録される見通しとなった。世界遺産委員会の諮問機関が勧告した。共に登録を目指している『武家の古都・鎌倉』(神奈川県)は、日本が単独で世界遺産に推薦したものでは初の『不登録』の勧告で明暗が分かれた。6月16日からカンボジアのプノンペンで開かれる世界遺産委員会で最終的に決まる」

同紙では、「富士山 積年の正夢 『日本人の心』感無量」と「20年にわたって市民らが進めてきた活動」が認められた関係者らの喜びを報じています。

それからしばらく後、プノンペンで開催された委員会で、ついに富士山の世界遺産登録が正式に発表されました。6月下旬のことです。

「富士 万感の絶景」(朝日新聞201年6月23日)

「土壇場の逆転劇だった。22日、正式に世界遺産入りが決まった富士山。事前の除外勧告を覆し、三保松原の登録も認められた」。

同紙では、各国の代表団が三保松原を登録に入れるよう応援演説してくれた様子をこう報じています。

「三保松原の逆転登録を導いたのは、20分に及ぶ各国からの応援演説だった。口火を切ったのはドイツ代表団だ。『三保松原はすばらしい景観。富士山と一体とみなすべきだ』。するとメキシコ、セネガル、タイが賛同。マレーシアの代表団が『富士山の精神文化を語るうえで三保松原は重要』と述べると、カンボジア、ロシア、フランス……と続いた。三保松原から望む富士の風景が画家にインスピレーションを与えた功績をたたえる意見陳述もあった。それぞれの代表団は、英語、仏語、スペイン語などで、たどたどしい発音ながら『ミホノマツバラ』を連呼し、登録に含めることを訴えた。賛同の意見は、日本を除く世界遺産委員会の委員国20カ国のうち19カ国からあり、登録を決定づけた」。

こうなると富士山観光が俄然注目されることになります。

「富士山ツアー有頂天 はとバス予約倍増」(毎日新聞2013年6月25日)

「世界文化遺産登録を機に、富士山(山梨、静岡県)の登山・周遊ツアーが好調だ。世界遺産の構成資産を巡るコースや、英語が話せる添乗員が付くプランを新設するなどツアー会社も知恵を絞る」

「首都圏発の富士登山ツアーを主催する『はとバス』(東京都大田区)。7月からの富士登山ツアーの予約は昨年の9割増し。広報担当者は『週末を中心に満席もある』と話す。7月からは、忍野八海→旧外川家住宅→白糸ノ滝→富士山本宮浅間神社の4カ所の構成資産を巡る新ツアーを実施する」

「富士山 路線バス売り込め 富士急『世界遺産めぐりルート』」(日本経済新聞2013年7月9日)

「富士急行は12日から『世界遺産めぐりルート』の統一名称で路線バスの需要拡大を目指す。全路線が2日間乗り放題となる切符を発売。富士急ハイランド(富士吉田市)を起点に5カ所の構成資産への立ち寄り可能な循環路線を新設した」

ちなみにぼくの地元のバス会社でも、富士急ハイランドへの往復の高速バスと入場券をパックにした「得Q PACK」のチラシを出していました。「世界遺産」をドーンと打ち出しています。
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一方、登山者の急増による環境破壊や事故を懸念する声もあります。

「弾丸登山 富士悩む 徹夜登頂 事故の恐れ 入山制限の動き」(朝日新聞2013年6月26日)

「来月1日の山開きに向け、山梨、静岡両県などが『弾丸登山』(山小屋などに泊まらず徹夜で登り下りする0泊2日の登山者を指す)の自粛を呼びかけている」。

同紙によると、富士吉田口からの昨年7~8月の登山者は25万人でしたが、今年は30万人を超すと予測されているそうです。7合目以上の山小屋は14軒で宿泊可能なのは3000人。収容能力からすれば、夏山シーズン中の登山者は18万人余りが適正とする意見もあるそうです。そんなこといっても、確実に増えるであろう登山者をどう管理するか、これは大変そうです。

ところで、富士山の世界遺産登録は訪日外客にも確実に影響を与えています。先日、そう話してくれたのは、アジアインバウンド観光振興会(AISO)の王一仁会長です。

「この夏、東南アジア方面からの訪日客が増えてていすが、そのほとんどの人たちが世界遺産に登録された富士山に行きたいと考えているはずです。実際、私の会社でもシンガポール客向けの富士山1泊2日のオプショナルツアーを企画しています。日帰りにしないのは理由があります。彼らは、富士山に登りたいというより、富士山の見える温泉旅館でゆっくり一泊したいと思っているからです。

この夏、このままだと富士山周辺はバスで大混雑になることが予想される。せっかく訪ねた富士山のイメージが悪くなってしまうのが心配です。

特にバスが集中する五合目には、私の会社のツアーでは行かないことにしています。五合目からの眺めが必ずしもいいとはいえないからです。富士山はもっと遠くから眺めたほうが美しい。そういう眺めのいいポイントを選んでお客さんを案内する必要があると感じています」。

東南アジアの人たちは山歩き、いやそもそも外で歩くことがあまり好きではありません。だとすれば、場所や季節によってさまざまに異なる富士山のビューポイントを複数取り入れて案内するといいかもしれません。

プノンペンで富士登山に直接関係のない三保松原を世界遺産登録に導いてくれた世界各国の皆さんの評価から考えても、登山にこだわらず、外国人客向けに眺望に特化したツアーを企画するのは意味があることではないでしょうか。前述の25もあるという世界遺産の構成資産からそれぞれの国の人たちが好みそうなポイントを選んで周遊する特設コースを企画してみる、なんてのはどうでしょう。

どうやらそれは外国人客だけにいえることではないようです。混雑する頂上までの登山をやめて、「ふもと登山」を楽しむというスタイルもあるそうです。

「『山麓の魅力も楽しんで』と、富士吉田市がアピールするのは『ふもと登山』だ。市は7月に4回、富士山の標高に掛けて計223人限定の1人3776円のツアーを企画。山麓の史跡や原生林に親しみながら登り、5合目の山小屋で1泊、頂上には行かず、6合目でご来光を拝んで帰る。担当するJTBコーポレートセールス(東京都新宿区)は『問い合わせが多く、半分が予約で埋まった』と話す」(毎日新聞2013年6月25日)

今年の夏は富士山周辺が相当騒がしくなることは避けられないようですね。富士山観光の新しいスタイルやさまざまなバリエーションがこれからますます求められることになるのだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-27 18:15 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 27日

スカイツリーは外国人客を呼び込めるのか?【2013年上半期⑩ツリー効果】

東京スカイツリーが2013年5月22日で開業一周年を迎えました。各紙は当初の想定以上ににぎわいを見せているスカイツリー現象について、人気の背景や経済効果について分析しています。
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「ツリー人気衰えず 22日で開業1年 来場者はディズニーの1.8陪」(読売新聞2013年5月20日)

「東京スカイツリー(東京都墨田区、634m)が今月22日に開業から1年を迎える。(ツリーと商業施設『東京ソラマチ』に)想定を大きく上回る5000万人以上が訪れた」「事前予測の3200万人を大きく超え、昨年度の東京ディスニー・リゾートの1.8倍になる」と報じています。

人気の理由について、事業主体の東武鉄道は「震災の1年後に開業して、復興の象徴のように好意的に報道された。強風での休業が年間3日で済んだことも大きい」とみているそうです。

●主な観光地の最新の年間入場者数

東京スカイツリーと東京ソラマチ 5000万人(うちツリーは630万人)
六本木ヒルズ 4100万人
東京ディズニー・リゾート 2750万人
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 975万人
東京タワー 243万人

さらに、「東京ディズニーランドの30周年、渋谷ヒカリエやお台場のダイバーシティ東京プラザの開業が重なって、東京全体が観光地化し、相乗効果が生まれている」というJTB関係者のコメントを挙げています。これら話題の商業施設はすべて震災の翌年にオープンしているんですね。

「スカイツリー1周年 笑顔も突き抜けた」(産経新聞2013年5月23日)は、「国内随一の集客力を誇り、『観光ニッポン』の新しいシンボルとなった東京スカイツリー(東京都墨田区)。『訪れる人たちみんなが笑顔』。開業1周年の22日に来た観光客はこう印象を語る。浅草など周辺の観光地では客足が伸びるなどの相乗効果も生まれている。深刻化していたごみ問題もマナー向上で改善しつつあり、ツリーのにぎわいは2年目も続きそうだ」と報じています。

また同紙でも、お台場のダイバーシティ東京プラザや渋谷ヒカリエなど同じ年に開業した商業施設がともに当初の目標を超える売上や来場者数を見せたことを「スカイツリーとの相乗効果」として分析。「スカイツリーの開業以降は観光地としての魅力が東京全体でアップした」と指摘しています。

東京の観光シーンに与えたスカイツリー効果については、「下町ツリー 首都席巻 観光、東京一人勝ち」(朝日新聞2013年5月23日)でも報じられました。

同紙で「東京一人勝ち」とコメントしているのは、はとバスの広報室長です。同社では展望デッキ入場券付きツアーが好評だといいます。

ところが、このにぎわい、日本人にだけしか共有されていないようにも見えます。そう、ツリーを訪れる外国人客はそれほど多くないかもしれないのです。

「スカイツリー特需 観光業界“ご満悦”」 (産経新聞2013年5月23日)によると、「東京スカイツリーが予想を超える人出を記録する中、関連業界が『スカイツリー特需』に沸いている。事業主体の東武鉄道だけでなく、ホテルなど幅広い企業が恩恵を受けている」「波及効果も大きい。はとバスが運行し、他の観光スポットと合わせて展望台を訪れるコースは、平均乗車率が約9割で、スカイツリーを含まないコースの6割を大きく上回る」としていますが、その一方で「外国人観光客は現在来場者の1割に満た」ないというのですから。

もっとも、今年に入って浅草には外国人客が増えてはいるようです。「浅草『昭和のにぎわい』 雷門通り路線価9%上昇」(朝日新聞2013年7月1日)では、浅草の雷門通りが東日本の路線価アップのトップになったと別の観点からツリー効果を報じ、さらに「この1年で外国人観光客が急激に増えた。浅草が一番にぎやかだった昭和30年代初めに戻ったようだ」という浅草寺参道仲見世で土産店を営む女性の声を紹介しています。

しかし、浅草に外国人客が増えたことは、ツリー効果とはそれほど関係ないのではないでしょうか。

ぼくがそう考える理由として、訪日客の4分の3を占めるアジアの新興国における近年の高層建築ラッシュがあります。

朝日新聞2012年4月25日の折り込み特集「GLOBE 巨大建築」によると、2012年、世界一高い建築物はドバイのBurj Khakifa(828m 2010)です。以下、トップ10は以下のとおりです。

2位 Taipei 101(508m 2004 台北)
3位 Shanghai World Financial Center(492m 2008 上海)
4位 International Commerce Center (484m 2010 香港)
5位 Petronas TowerⅠ(452m 1998 クアラルンプール)
5位 Petronas TowerⅡ(452m 1998 クアラルンプール)
7位 Zifeng Tower(450m 2010 南京)
8位 Willis Tower(442.1m 1974 シカゴ)
9位 Kingkey 100(441.8m 2011 深圳)
10位 Guangzhou International Finance Center(439m 2010 広州)

現在世界の高層建築のトップ10は、1970年代にシカゴで建てられたWillis Towerを除き、すべてアジアの新興国で建てられたものなのです。

それは何を意味するのか。アジアの新興国から日本を訪れる観光客は、普段から高層建築を見慣れていることから、スカイツリーに対してそれほど特別な魅力を感じていないかもしれないと考えられるのです。

多くの日本人がスカイツリーを「復興の象徴」として見るような、ある意味情緒的な捉え方を、外国人客に期待しても無理があります。このあたりの認識のズレや温度差は、いたし方ないことといえるでしょう。

前述の朝日新聞2013年5月23日では「アジア客誘致へPR」として「訪日外国人の誘客を進める観光庁は、スカイツリーの開業を、震災やウォン安の影響で落ち込んだ韓国からの観光客が増える『切り札』と位置付ける」「韓国の大手テレビ局を東京に招待。平日夜の情報番組で、スカイツリーと東京の魅力を放送してもらう」「中国や香港、台湾の旅行会社なども日本に招き、スカイツリーの魅力を押し出したツアーをつくってもらうことも予定している」とあります。

「観光庁の担当者は『欧米人は伝統的な日本を好むが、アジア人は都会的な日本が好きでスカイツリーはPRにピッタリ』と意気込」んでるそうですが、はたしてそうなのでしょうか。アジアの新興国の人たちから見て、時代の最先端を日本に求めるような感覚は、もしかしたらもう薄らいでいるかもしれないからです。むしろ日本の普段着の生活文化の質の高さに、彼らはだんだん気づき始めているということなのではないか。

そういう意味では、彼らがスカイツリーをどう見ているかという視点を加え、もう少し別の観点からアピールポイントを付加しないとアジアの新興国の人たちを納得させるのは難しいのでは、と思います。

ところで、なぜ上記のランキングにスカイツリーが入っていないかというと、「ランキングをつくった『高層建築と都市居住に関する国際委員会』(CTBUH、シカゴ)によると、高さ比較の対象は『全体の高さのうち少なくとも半分が実用フロアのビル』」だからだそうです。展望台などわずかな実用スペースを持たないスカイツリーはランキングから除外されているのです。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-27 15:44 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 27日

東北に外国人客は戻ったのか?【2013年上半期⑨震災2年後の東北観光】

「東北観光もっと来て 昨年の6県宿泊客 10年比で8割」(朝日新聞2013年3月9日)
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「東北6県を2012年に観光で訪れ、宿泊した人の数が、東日本大震災前の10年より2割ほど少ない水準にとどまったことが8日、わかった。全国的には震災前の水準にほぼ戻っているのとは対照的だ。震災や原発事故の影響が残るが、県によっても差は大きい」といいます。

●東北6県と全国の観光宿泊客(観光庁調べ)

          2012年     10年比    11年比
全国     2億1285万人  ▼1.6%      2.6%
東北6県     1708万人  ▼19.0%   ▼5.9%
青森県       142万人  ▼8.9%    ▼8.2%
岩手県       288万人  ▼0.2%     1.6%
宮城県       369万人  ▼13.8%    0.8%
秋田県       142万人  ▼45.6%   ▼26.9%
山形県       293万人  ▼13.3%   ▼3.5%
福島県       472万人  ▼25.6%   ▼7.7%

観光庁の統計によると、2012年の観光宿泊客は東北6県で延べ約1708万人で、震災前の10年比で19.0%少ないことがわかります。県によってばらつきがあり、特に秋田県の回復の遅れが目立ちます。

「東北の回復の遅れは、東京電力福島第一原発事故による風評被害が続いているとの見方が強い」とのこと。まあそうでしょうね。

ところが、GWが近づくころになると、報道のトーンが大きく変わっていきます。

「東北 観光客戻る 福島・宮城、連休の宿泊2~3割増 復興応援・歴史ツアー人気」(産経新聞2013年4月26日)

「東日本大震災で被災した東北の観光が本格的に回復してきた。5月の大型連休の予約宿泊数は福島県や宮城県で前年を2~3割上回り、震災前の2010年の水準を超える可能性もある。人気を取り込もうとツアーバスを増やす企業もある。円安による旅行需要の国内回帰を追い風に、被災地ツアーや歴史ブーム、格安航空会社(LCC)がけん引役になっている」というのです。

●2013年GW東北各県の宿泊予約数前年度比(楽天トラベル調べ)

青森県 5%増
岩手県 10%増
秋田県 5%増
山形県 15%増
宮城県 21%増
福島県 33%増

けん引役として挙げられるのが「被災地を視察するツアー」です。

「東日本旅客鉄道は東京から宮城県の石巻・女川などへ行く3コースの復興応援バスツアーを4月から増発。月1回の実施だったのを毎週末に増やしたが、すぐに満席になる状態だ。エイチ・アイ・エスは宮城県南三陸町でワカメなどの養殖作業を体験するツアーが好調で、バスの台数を増やした」そうです。

さらに、東北を舞台にした歴史ドラマの人気も観光客を集めているようです。

「観光再生 『八重』が後押し 会津若松盛況」(日本経済新聞2013年4月27日)

「東京電力福島第1原子力発電所事故の風評被害に悩む福島県に観光客が戻ってきた。事故から2年が過ぎ、放射線への過度な懸念が和らいでいることに加え、1月にスタートしたNHK大河ドラマ『八重の桜』の誘客効果により、舞台である会津若松市に観光客が押し寄せている。福島県は2013年、観光立県としての復活を目指す」

同紙では「日銀福島支店の試算によると、NHK大河ドラマ『八重の桜』の県内経済への波及効果は113億円に上る」「実際、誘客効果は県内各地に及ぶ。福島県が県内9カ所を独自に調査したところ、昨年9月以降の観光客数はおおむね8~9割に達した。会津若松市では1月、2月と震災前を上回っており、この数字が県全体をけん引していることを考慮しても、かなりの回復ぶりといえる」と解説しています。

●福島県で集客が回復する県内施設と7月までの行事

【会津若松市】
・鶴ヶ城天守閣…3月の来場者数は5万人超
・大河ドラマ館…1月オープン、10万人突破
【福島市】
・東北六魂祭…6月1、2日に開催
【相馬市・南相馬市】
・相馬野馬追…7月27、28、29日に開催
【いわき市】
・アクアマリンふくしま…入場者数は震災前の6~7割に回復

ドラマ効果は大河だけではないようです。

「じぇじぇ! 観光客倍増 『あまちゃん』舞台 岩手・久慈へGW11万人」(東京新聞2013年5月10日)

「NHK連続テレビ小説『あまちゃん』のロケ地となっている岩手県久慈市でゴールデンウィーク中、市内の観光施設などの利用者数が前年比二倍の約十一万五千人に上ったことが市の調べで十日、分かった」

「『あまちゃん』効果で、北海道や沖縄など全国から観光客が押し寄せたためで、ロケ地の一つ、海女センター周辺では車の乗り入れ規制を実施した。市の担当者は『海女の実演がある夏にはさらに増えそう』と予想」しています。

同じことは 「岩手観光 朝ドラ効果」(読売新聞2013年5月14日)でも報じられていました。この時期、NHKの大河と朝ドラ効果で観光客急増だなんて、そりゃ毎度のことかもしれませんが、愉快な話です。こうやってみんなで東北を訪ね、旅を楽しむことが復興を応援していることになるのだとしたら……、同じ日本人としてちょっといい気分ですからね。

このように「円安による旅行需要の国内回帰を追い風」に「復興応援」やドラマ効果が結びついて、今年の上半期は東北観光の回復が顕著に見られるようになったとの報道が相次ぎましたが、外国人客は東北に戻ってきたのでしょうか。

冒頭の朝日新聞2013年3月9日によると、「外国人の落ち込みはさらに大きい。東北6県では震災前より7割近く少ない。宿泊客に占める外国人の割合は10年の1.6%から12年は0.6%に下がった」とあります。

「山形市の蔵王温泉は、韓国人や中国人を中心とする外国人観光客が、震災前より9割減った。リゾートホテル従業員で台湾出身の周依静さん(29)は『よく知らない外国人には、東北は全部一緒に見える』。別のホテルの支配人吉原昌次さん(48)は『きっかけは原発事故だが、領土問題の影響もある』と指摘する。

海外からの誘客の厳しさは、仙台空港の利用状況にも表れている。復興需要で好調の国内線とは対照的に、国際線の利用者は震災前から3割減った。昨夏にはいったん全路線が再開したが、日中関係が悪化した昨秋から中国と結ぶ2路線が再び運休した」

「政府の東北観光の振興策も不発に終わっている。中国人観光客を増やそうと、外務省は昨年7月、中国人観光客に対して、岩手、宮城、福島の被災3県で1泊以上することを条件に、数次ビザ(査証)を出し始めた。3年間なら何度でも日本を訪問できる。しかし、2月までの発給数は662件にとどまる。同じビザを出している沖縄県向けの同時期の10分の1に満たない」。

この施策は、中国人にとっての弱みともいえるビザ発給を逆手にとって被災地訪問と引き換えにするように見えるところから、当初から評判はよくありませんでした。最初から結果はわかっていたことではないかと思います。

それにしても、国内客による東北観光の盛り上がりとは対照的に、この夏も外国人客の姿がまだ東北に見られないのだとしたらちょっと残念です。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-27 12:44 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 24日

無敵の東京ディズニーリゾートも外国人客比率はわずか3%!?【2013年上半期⑧テーマパーク】

2013年4月15日、東京ディズニーリゾート(TDR)は開業30周年を迎えました。
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「東京ディズニーリゾート 30年とけない魔法」(朝日新聞2013年4月14日)によると、「この3月までの1年は(入場者数)2750万人。過去最多だ。使うお金も前年を越す1万420円(入場券込み)との予想」「よちよち歩きの子どもが親となり、自らの子どもの手を引いて同じ場所でカメラにおさまる。入園者も、使うお金も過去最高だ。『夢と魔法の王国』はデフレにも強い」とその好調ぶりを報じています。

背景には「83年、TDLが開園し、01年には隣にディズニーシーがオープン。30年がたち、大きな強みは3世代で楽しむ人たちが増えていること」だと指摘しています。

読売新聞も3回に分けてTDRの「圧倒的な集客力の秘訣」を次のように解説しています。

「3世代でディズニー 大人のファン着実に獲得」(読売新聞2013年4月16日)

「(日本の人口構造における)ファミリー層の減少はレジャー産業には逆風となる。この課題に対応しようと、TDRを運営するオリエンタルランドは経営手法を変えてきた。07年度から『ディズニーのおとな旅』という周遊プランの販売に力を入れている。(中略)こうした取り組みで、TDRの11年度の入場者に占める40歳以上の割合は19%と、97年度から10ポイントも上昇し、全体の入場者数も右肩上がりで伸びている」

「巨額投資と集客 好循環」(同4月17日)

「TDLとTDSが、何度も訪れるリピーターを引きつける力の源泉は、入場者を飽きさせないためにアトラクションなどに投じる巨額の設備投資だ」「(その額は)この10年間、アトラクションの新設、パレード、イベント、直製ホテルの建設など年平均で約351億円」「例えば、約210億円をかけてTDSに作ったタワー・オブ・テラーが誕生した2006年度の入場者数は前年度から105万人増えた」「巨額の投資を客足の増加に確実につなげる好循環が確立しているのだ」

「おもてなし術 業界に浸透」(同4月18日)

「30年間かけて進化したTDRのきめ細かい接客は、テーマパーク業態全体に広がりつつある」と指摘し、ハウステンボスなどもTDRをお手本に接客研修を始めていることを報じています。

「主要テーマパーク好調」(日経MJ2013年4月29日)によると、TDRに限らず、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)やハウステンボスなど、日本を代表する3つのテーマパークが好調な集客を見せているとのこと。「新アトラクション効果や消費改善」が利いているそうです。その一方で、「大手は好調 中小厳しく 遊園地・テーマパーク」(日経MJ2012年11月14日)との報道もあります。テーマパークの集客にも二極化が起きているようです。

ところで、TDRに外国人客はどのくらい来ているのでしょうか。TDRを運営するオリエンタルランドのHPをみると、入場者の外国人比率は、最新の2011年が震災の影響でわずか1.3%、その年の入園者数が2534万7000人ですから、33万人弱の計算になります。過去6年間で最も比率の高かった2007年で4.2%、外国人客は約107万人になります。以後、若干減少して平均すると、わずか3%前後のようです。

TDR 入園者数データ(オリエンタルランド)
http://www.olc.co.jp/tdr/guest/

【追記】
上記データによると、2014年の外国人比率は5%のようです。

とはいえ実際のところ、この数字が少ないといえるのかどうか、判断する指標はありません。たとえば、2007年の訪日外国人数のトータルは835万人、そのうち107万人がTDRに来たとすると、13%弱ということですから、けっこう高い比率といえるかもしれません。他のアジアのテーマパークを例に出すと、香港ディズニーの2011年度の入場客数は590万人と振るいませんが、韓国のロッテワールドは758万人で、前年度比36.6%増。中国からの観光客が増えた結果、これほどの伸びを見せたそうです。

世界のテーマパーク入場者数報告(Global Attractions Attendance Report)http://10rank.blog.fc2.com/blog-entry-36.html

国内では飛びぬけた存在となったTDRは、今後「日本流の独自色を強く打ち出す」そうです。

「日本流で『祭り』に華 参加型の企画、本家も逆輸入」(日本経済新聞2013年1月8日)

たとえば、「TDS限定のダッフィーのぬいぐるみは今やグッズ販売の稼ぎ頭。11年夏には一緒に写真撮影などができるアトラクションが登場し、今回の正月イベントではミッキーと並ぶ主役に躍り出た。その評判は海を渡り、香港ディズニーランドが導入。米国のディズニーランド・リゾート(カリフォルニア州)やウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート(フロリダ州)も『逆輸入』している」。

また夏のイベント「ディズニー夏祭り」は「日本の伝統的な夏祭りをディズニー流に演出したイベントは話題この演奏などに合わせ、キャラクターがダンスを披露。ちょうちんや旗で飾り付けた園内ではお面やうちわなど夏祭りの定番グッズを販売し、お好み焼きやかき氷も用意する」。

「TDLの建設・運営に関し、米ディズニーと基本合意したのは1979年。以来、オリエンタルランド(OLC)は米ディズニーを手本にしてきた。その姿勢を見直し、テーマパーク運営で独自色を打ち出すようになった背景には日本の消費者の変化がある」「参加型の企画」が求められているそうです。

こうして日々独自に進化を続けるTDRは、国内の他のアミューズメント施設のように、入場客の減少を外国人客で補う必要などなさそうです。いまやTDR発の企画が海外に「逆輸入」されるほどなのですから。すごいことですね。

※ちなみに、2013年は国内のテーマパークに多くの東南アジア客が訪れたようです。

テーマパーク、東南アジア客をつかむ
http://inbound.exblog.jp/22017310/

【追記】
この記事は3年前に書かれたものです。最近の報道によると、2015年のTDRの外国人比率は6%になっているそうです。またTDRの入園者数は伸び悩んでいて、代わりに大阪のUSJが好調といいます。

上海では6月中旬、いよいよ上海ディズニーがオープンします。

今年6月にオープンする上海ディズニーの公式ショップを覗いてみた
http://inbound.exblog.jp/25579060/

(2016.4.11)
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by sanyo-kansatu | 2013-07-24 17:58 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 22日

大型クルーズ来航で富裕層は本当に立ち寄るのだろうか【2013年上半期⑦クルーズ】

近年、海外からのクルーズ船を誘致する動きが全国各地で見られるようになっています。
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「大型クルーズで観光振興 富裕層立ち寄り期待」(日経MJ2013年2月18日)

「外国船籍の大型クルーズ船による、国内港を発着するクルーズの就航や寄港が相次ぎ決まった。誘致に成功した地元では富裕層が立ち寄ることで観光振興や経済効果に期待が高まっている」として、横浜や京都(舞鶴)、富山(伏木富山)などの誘致事例を紹介しています。

●横浜
2014年4月から10月にかけて米大型客船「ダイヤモンド・プリンセス」を誘致。北海道、九州など国内15港や韓国、台湾、ロシアなどを巡るクルーズが20回実施される予定。

●京都
2014年春から秋にかけて舞鶴港に前述の「ダイヤモンド・プリンセス」が寄港し、約1万人が同港を訪れる見通し。府は舞鶴や周辺の市町村と連携し、天橋立など日帰りできる観光名所への波及効果を狙う。

●富山
9月10日、米ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(フロリダ州)の大型客船「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」が伏木富山港に寄港する。ボイジャーは、上海を母港とするアジア最大のクルーズ船で総トン数13万7000トン。定員は乗客3840人、乗務員1176人。天津を9月7日に出発し、伏木富山、室蘭、東京、長崎、釜山を経由して19日に天津に戻る。

今年3月下旬、ぼくは沖縄に寄港する大型クルーズ船の実態(「20回 観光の島、沖縄でいま何が起きているのか?」を取材しましたが、九州や沖縄に寄港する外国の大型クルーズ客船の来航は、街の風景を大きく変えています。
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ただし、そこで紹介した沖縄のカジュアルな台湾クルーズ客の例もそうですが、大型クルーズ客船の乗客が「富裕層」と呼べるかというと、必ずしもそうとはいえません。なぜなら、クルーズ客船には以下の3つのランクがあり、1日当たりの料金も中身もずいぶん違うからです。

●ラグジュアリークラス
1日当たりのクルーズ料金が400ドル以上。1万数トン以下の小型船から、大きくても5万総トン程度が多い。このクラスの客船なら、料金に見合った最高のサービスが提供されます。上級者向け(≒富裕層)のクルーズといえそうです。

●プレミアムクラス
1日当たりのクルーズ料金が200ドル前後。乗客数1200人前後の中型客船が主流だが、最近は10万総トンなど大型化が進んでいます。乗客はシニア世代で、運航エリアはカリブ海、アラスカ、地中海、世界一周など幅広い。前述の「プリンセス・クルーズ」はこのカテゴリといえます。

●スタンダードクラス
1日当たりのクルーズ料金が100ドル前後、またそれ以下の安価なクルーズ。運航エリアは東南アジアやカリブ海など。大型客船も多い。「ロイヤル・カリビアン・インターナショナル」や「コスタ・クルーズ」「スター・クルーズ」などがこのカテゴリ。

要するに、日本に寄港するアジアからのクルーズ船はスタンダードクラスが多いのです。日本のマスコミが「(海外)富裕層」というとき、どういう定義でそれを使っているのかわかりませんが、一般に船が大型になるほどクルーズ船はカジュアル化することは確かでしょう。

大型客船の寄港といえば、「大型クルーズ船 レインボーブリッジくぐれず 大井水産物埠頭に着岸」(日本経済新聞2013年1月11日)という話もありました。

「東京都は大型クルーズ船の着岸場所として、海産物の荷揚げ用の大井水産物埠頭(東京・大田)を4月から活用する。現在は晴海客船ターミナル(東京・中央)に国内外の客船が寄港しているが、船体の高い大型クルーズ船は晴海に向かう途中にあるレインボーブリッジをくぐることができなかった。都心とシャトルバスも運行し、外国人富裕層の観光誘客体制を整える」

同紙では「晴海客船ターミナルは1991年の完成。2年後にできたレインボーブリッジの橋桁は高さ52m。当時世界最大の『クィーンエリザベス2世号(QE2)』が通過できるように設計したが、QE2を上回る大型クルーズ船が次々と完成し、晴海を使えない例が増えている。受け入れ第1弾となるのは、中国・上海から4月末に初入港するバハマ船籍の「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」。全長331m、全幅48m。QE2の2倍、沈没したタイタニックの3倍の大きさを誇る(中略)水面からの高さが63mもあるため、レインボーブリッジをくぐれなかった」と書いています。

ちなみに、2011年の外国船籍のクルーズ船の国内寄港回数は、1位が石垣港(42回)、2位が那覇港(37回)、3位が博多港(26回)。東京港は0回でした。

ともあれ、外国船籍のクルーズ船の来航が増えるにしたがって、入国審査の短縮も受け入れ体制上の課題といえます。次のような報道もあります。

「新時代の入国管理 大型クルーズ船審査急げ」(日本経済新聞2013年6月12日)

「豪華な船旅が楽しめるクルーズ船が人気で、大型船が入稿できる九州の港にも立ち寄るようになった。買い物需要が期待できると地方の誘致熱は高まる。

客の観光上陸(入国)は半日程度。シーズン初めの3月下旬に鹿児島港に入った客船(11万6000トン)は豪州発で乗客1000人。午前8時から30分ごとにバス30台が市内観光に客を運ぶ。出港は午後4時だ。

1分でも長く滞在を楽しんでもらうためには、入国審査時間の短縮がカギを握る。福岡入国管理局鹿児島出張所は福岡から応援部隊を得て18人のチームを編成し審査に臨んだ。未明に集合して乗船すると6階と7階の食堂ラウンジに臨時の審査場を設営した。

午前7時20分、横一列の審査台の前に乗客が並び審査開始。乗客は指紋照合だけ済めば、旅券の写しの表側に仮上陸許可証を貼ってもらい、次々と下船する。乗客誘導など乗員も全面協力し、2時間でほぼ全員が審査場を通過した。

仮上陸許可は審査完了前に入国を認める措置で、クルーズ船に適用した。入国審査官は船内に残り預かった旅券審査にかかる。出国手続きもすませる」

クルーズ客に対する入国審査の合理化、スピードアップは、「観光立国」を目指す日本の国策のひとつというわけです。

※日本のクルーズ振興、とりわけ外客を乗せたクルーズ船の誘致については、下記の国土交通省のまとめた資料に大まかに整理されています。ただし、これが書かれたのは、2012年8月という尖閣事件の直前にあたり、その年の7月までは中国から多くの大型クルーズ客船が九州や沖縄に寄港していた時期のもので、それ以後の状況は一変しています。要するに、中国(上海発がほとんど)からのクルーズ客船は激減しました。それでも、2013年秋頃から、少しずつ上海発クルーズ客船が来航するようにはなってきています。

参考 港湾におけるクルーズ振興を巡る現状と課題(国土交通省資料)(2012年8月)
http://port-of-hakata.city.fukuoka.lg.jp/topic_pdf_2/503f1465d02db7.78882769.pdf
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by sanyo-kansatu | 2013-07-22 16:26 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 21日

アジア系観光客の買い物先が百貨店とアウトレット、量販店だけだとしたら…【2013年上半期⑥小売業】

2013年上半期、日本の宿泊業や飲食サービス、一部の小売業の景況感が回復しているようです。

「宿泊・飲食業 景況感プラス 訪日客が押し上げ 小売業は横ばい」(日経MJ2013年7月3日)

「流通業やサービス業の景況感の改善が進んでいる。日銀がまとめた6月の企業短期経済観測調査(短観)によると企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業・非製造業でプラス12だった。2四半期連続の改善となり、3月調査から6ポイント上昇した。プラス12はリーマン・ショック前の2008年3月調査と同じ水準。宿泊・飲食サービスの回復が目立った」

背景には、訪日外国客の増加の影響があるようです。

「宿泊・飲食サービス業の改善を後押ししているのはこのところの円高修正だ。訪日外国人観光客の増加による押し上げ効果は大きく、京王プラザホテル(東京・新宿)は5~6月の外国人宿泊客の比率が前年同期の50%台から60%台まで上昇。タイやインドネシアなど東南アジアからの旅行客の伸びが目立つという」

※宿泊業の動向については「東京・大阪のホテル稼働率は震災前を大きく上回る水準に【2013年上半期①ホテル】」を参照。

ところが、外国人観光客の買い物による地域経済への波及効果を期待する声は多いにもかかわらず、実際には「小売業は横ばい」と宿泊や飲食サービスに比べ、景況感の回復は見られないようです。

なぜなのか。ひとことでいえば、外国人客が買い物に訪れる場所は限定的だからです。

たとえば、「百貨店では海外高級ブランドなどの高額品に加え、訪日外国人向けの販売も好調。大丸松坂屋店では6月の免税売上高が2.5倍となった」とのこと。

「百貨店の外客売上120%増」(週刊トラベルジャーナル2013年7月8日)

「日本百貨店協会が発表した5月の外国人観光客の売上高・来客動向によると、調査対象44店舗の総売上高は前年同月比122.7%増の33億1615万円となった。(中略)今年2月以降、拡大基調が続いている。伸び率は、中華圏の旧正月時期に当たった2月(115.2%)を上回った」といいます。

ところが、「所得の本格回復が遅れているため、日常的な買い物が中心のスーパーは苦戦が続く。日本チェーンストア協会がまとめた5月の全国スーパー売上高(既存店ベース)は前年同月比1.2%減」(日経MJ2013年7月3日)だったのです。

つまり、訪日外国人の4分の3以上を占めるアジア系旅行者の増加によって恩恵を受けるのは、百貨店とアウトレットモール、各種量販店に限定、といえるかもしれないのです。

実際、訪日外国客の増加を背景に、不動産デベロッパーらのアウトレットモール開発の動きは盛んになっています。

「アウトレット2強 訪日外国人に照準」(産経新聞2013年4月20日)

「売れ残ったブランド品などを格安で売るアウトレットモールで、不動産大手2社の競争が激しくなっている。三菱地所が19日、千葉県酒々井町に新たな施設をオープンしたのに対し、ライバルの三井不動産は同県木更津市のアウトレットの増床を決めた。両社とも成田空港を利用する訪日外国人らを主要ターゲットに集客に工夫を凝らす」

同紙によると、両社の主なアウトレットモールの店舗は以下のとおり。

●三菱地所 
御殿場プレミアム・アウトレットと関西空港に近いりんくうプレミアム・アウトレットほか9施設
http://www.mec.co.jp/j/service/shopping/

●三井不動産
三井アウトレットパーク木更津ほか12施設
http://www.mitsuifudosan.co.jp/shopping/

日経MJ2013年5月13日では、今年4月中旬にオープンした「成田の近く 外国人客誘う 酒々井プレミアム・アウトレット」について次のように報じています。
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「三菱地所・サイモン(東京・千代田)が4月19日に開業した酒々井プレミアム・アウトレット(千葉県酒々井町)。成田空港からバスで20分ほどと近いため、外国人客を意識した工夫を凝らした。アウトレット施設の飽和感が指摘される中、リピート客を取り込むためのテナント構成にも気を配るなど他にない特徴を打ち出している」

「通常、アウトレットの主役はアパレル店で、全店舗の5割程度を占めるが、酒々井は5割を切る」「その分、リピート率が高まる雑貨店などのライフスタイル関連の店を充実」「フードコートも集客の目玉だ。アウトレットの中でも最多の800席で飲食テナントは8店が入る」「このほか、国内のアウトレットで初めて外貨両替所を設置。米ドルのほか、中国元やタイバーツといった主要な通貨を扱う」「外国人に親しみやすいテナントも入れた。カジュアル衣料の『ユナイテッドアローズ』やバッグなどのブランド『サマンサタバサ』、時計の『セイコー』『シチズン』は外国人客の評判が良いという」

タイや中国などのアジア系観光客の多くが現状では「弾丸バスツアー」による団体客である以上、百貨店とアウトレットモール、各種量販店に買い物先が限られてしまいがちなのは、ある意味無理もない面があります。ツアー形態が買い物先をある程度固定してしまうからです。最近オープンするアウトレットモールの多くが外国人観光客の一般的なツアーコースの動線に沿った場所に立地しているのもそのためです。

その結果、北海道や九州などでは、いくらアジア系外国人が大挙して来ても、地元の商店街にはお金がまったく落ちないという声が以前からずっと聞かれています。

これはツアー形態の問題だけではなく、アジアの新興国の場合、中間層以上の人たちの日常的な買い物先が自国の巨大なショッピング施設で行われているという実態からも説明できそうです。彼らはショッピングモールのような空間で買い物をすることに慣れているのです。エアコンの効いた場所でのんびり過ごすというのが、週末レジャーの過ごし方であり、それが便利で気が利いていることだと信じているのです。そういわれると、返す言葉がありません。

こうしてみると、訪日外国人客がいくら増えても、その多くがアジア系の新興国の人たちであるとしたら、地域にまんべんなく経済効果をもたらすというものではないことをそろそろ知るべきかもしれません。この点については、すぐに簡単な解決策はありませんが、考える必要はありそうです。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-21 20:06 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 19日

「訪日韓国人 回復進む 円安ウォン高で拍車」【2013年上半期⑤韓国客】

「韓国からの訪日客が回復している。日本政府観光局の19日の発表によると、1月に日本を訪れた韓国人の数は23万人余りで、前年同月を3割強上回った。進む円安ウォン高の効果もあり、東日本大震災前の水準に迫っている。九州などの観光地は韓国人客でにぎわう光景もみられ、足が遠のいたままの中国人客とは対照的だ」(日本経済新聞2013年2月20日)
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「原発事故の影響で減った韓国人客は、昨年春ごろから回復。李明博韓国大統領の竹島(韓国名・独島)訪問で9月に鈍化したが、その後は増加基調を維持する。特に円安がウォン相場を押し上げた昨年11月以降は拍車がかかった」

同記事では、「九州旅客鉄道(JR九州)が韓国・釜山-長崎県・対馬間で運航する高速船は、1月の利用客が50%増加」「福岡市の商業施設『キャナルシティ博多』では、韓国人を中心に外国人客数が『足元は昨年夏の2倍』(運営する福岡地所)。ハウステンボス(長崎県佐世保市)は1月の韓国人入場者数が前年同月比18%伸びた」と報じています。

その一方で、「韓流ブーム 冬の気配 竹島・円安で観光客急減」(朝日新聞2013年4月16日)と韓国を訪れる日本人は急減しているという対照的な構図が報じられています。

「韓国を訪れる日本人が減っている。竹島問題や『アベノミクス』による円安に加え、『北朝鮮リスク』が追い打ちをかける。10年を迎えた韓流は曲がり角を迎えているのか」

「統計も日本人客の減少を裏づける。韓国観光公社によると、日本の観光客数は昨年1~8月まで全円を上回っていた。ところが、翌9月から急減。安部政権が生まれた昨年12月から、前年を2割前後下回る月が続く。特に韓流ブームを支えたとされる50代以上の女性が3割以上減っている」そうです。

訪日韓国人が増えたのは、円安に加えて、「LCC就航拡大 韓台から若者来やすく」(日本経済新聞2013年6月9日)なったこともありそうです。

「格安航空会社(LCC)の就航拡大により、台湾や韓国の若者が日本に旅行しやすくなっている――。観光庁の調べてこんな傾向がわかった。両国・地域からLCCを利用して来日した観光客の5割近くが30歳未満で、一般の航空会社より若年層の利用が多かった」

日本に発着するLCCは今年2月の時点で韓国が16、台湾が3。「両国・地域から日本への航空運賃は、LCCの方が一般の航空会社より2~3割安い」。そのぶん、「日本滞在中の平均支出額をみると、台湾はLCC利用者が9万3000円と一般の航空会社の利用者に比べ、2割少ない。韓国のLCC利用者も5万8000円と同3割少なかった」そうです。

同じことは「LCC訪日客、出費少なく」(日経MJ2013年6月9日)により具体的に報じられていました。ここでも、韓国のLCC利用者は「大手旅行会社の利用者に比べて運賃は約1万円安く、旅行期間中の1人あたりの支出額についても2万円程度少なかった。買い物をする場所はスーパーやショッピングセンター(SC)、若い女性の個人旅行が目立つ」そうです。

さらに、LCCを利用する韓国の若い女性の訪日旅行者は「来日回数では初めてという人が4割」と、必ずしもリピーターばかりではないことが興味深い結果といえます。一般にLCCは旅慣れた旅行者が賢く利用するというイメージが特にヨーロッパの事例などでは指摘されますが、アジア圏の場合、必ずしもそうではなく、これまで飛行機に乗ったことがなかったような層が利用を始めていることがここでもわかります。この点については、別の回で紹介します。

最後に、韓国人が大勢押し寄せている長崎県・対馬についての報道です。

「国境と歴史の島 長崎県・対馬に住んでみる」(日本経済新聞2013年7月6日)によると、「とにかく韓国の人が多い。対馬市厳原を訪ねた最初の印象だ。旧対馬藩府中(城下町)の小道を歩く。出会う人の大半は、団体や家族連れの韓国人観光客だ。昨年の来島者は約15万人。週末、土産店周辺には観光客があふれる。釜山・対馬間にはJR九州高速船、韓国の未来高速など3つの船会社が就航。厳原まで高速船なら2時間だ。釜山からは1万円弱の日帰りツアーもある。『異国情緒が手軽に味わえ、気分転換になる』(母親と来た女性会社員、30歳)、『歴史に関心がある。自然が豊かで町がきれい』(農業の男性、40歳)。登山も釣りも好まれ、対馬は『安・近・短』な観光地と親しまれる。隣国というより隣町感覚だ」

ただこんな声もあるようです。「韓国人観光客は決まったコース、飲食店、ホテルなどを利用するケースが多く、一般商店や飲食店の売り上げには直接つながらない」「観光客の賑やかさとは裏腹に、島の一部にはどこか冷めた視線がある」

「それでも島の活性化を目指す市は状況打開に知恵を絞る。例えば、観光情報や飲食店のメニュー、値段などを写真付きで見られるスマートフォン用韓国語アプリを長崎県観光連盟と協同で昨年秋に開発。対馬全体で約160の店や観光スポットの紹介を始めている」

いま対馬で起きていることは、日本のような島国の場合であっても、国の中央だけでなく、周縁からグローバル化が進んでいくというわかりやすい事例になっていると思います。こうした外からの人の流れによって、過疎といわれた地方も新たに活況を呈してくる。かつてのような日本と周辺国との圧倒的な経済格差が埋まり、富が平準化することで、日本も海外の人たちが自由に往来する「インバウンド社会」へと少しずつ移行しつつあるということでしょう。これからの国や地域のあり方をもっと考える必要がありそうです。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-19 18:01 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 16日

「東南アジア客急増 中間層が拡大 円安も追い風」【2013年上半期②外客動向】

2013年に入り、新聞各紙は訪日外国人観光客が戻ってきたことを報じています。なかでも東南アジア客の動向に注目が集まっています。

「観光地 戻る外国客」(読売新聞2013年5月2日)はこう報じています。

「東日本大震災の影響で一時減った外国人観光客が戻ってきた。背景には、安部政権の経済政策『アベノミクス』による円安や、原発事故に伴う放射能の風評被害が収まってきたことなどがあるとみられる。商機とみて受け入れ態勢を強化する施設もある」

同記事では「円相場を見て5日前に(訪日を)決めた」という浅草を訪れたタイ人客に話を聞き、「アジアを中心に日本旅行は『お得だ』という感覚が広まっている。数か月前に予約が決まるツアー客中心の欧米も延びてきそうだ」(観光庁国際交流推進課)のコメントを紹介。「富士山河口湖町では4月上旬、英語・中国語表記だったガイドマップのタイ語版を2万4000部作成」したこと、「新横浜ラーメン博物館(横浜市港北区)も、今年1~3月の外国人客数は前年同期から6割増」「海外で広がる日本流ラーメンブームの影響もあるとみられる」と分析しています。

5月下旬になると、訪日客の主役は東南アジア客だとの報道が急増します。

「首都圏観光、東南アが主役」(日本経済新聞2013年5月25日)

「外国人観光客が急増している。日本政府観光局によると4月の訪日客数は92万人となり、単月で初めて90万人台に達した。特に伸びているのが、経済成長で所得の拡大する東南アジア。格安航空会社(LCC)の増便も追い風で、首都圏の観光地はタイなどからの観光客の姿が目立つ。東京スカイツリーや富士山といった名所ばかりでなく、銭湯やラーメンなども人気を集める」

さらに、日本政府観光局による5月の訪日外客数が発表された6月19日の翌日には、各誌が主役の来訪の動向を取り上げています。

2013年5月の訪日外客数(日本政府観光局)
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/130619_mothly.pdf

「観光 東南アジア客急増 中間層が拡大 円安も追い風」
(朝日新聞2013年6月20日)
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「東南アジアから日本を訪れる観光客が増えている。日本政府観光局が19日発表した5月の訪日外国人数では、タイ人客が昨年5月より7割近くも増えるなど、各国がのきなみ2ケタの伸びを記録。昨秋の尖閣問題をきっかけに低迷が続く中国人客の分を、カバーする勢いだ」

「円安で外国人客増 5月旅行者最多 百貨店『追い風に』」
(読売新聞2013年6月20日)

「最近の円安による割安感から外国人旅行者が増え、百貨店で免税売り上げが伸びるなど、国内経済にもプラス効果が出始めている。5月の百貨店の免税売上高はこれまでの最高水準で、百貨店業界は『業績の追い風にしたい』と期待を寄せている」

「5月の訪日客、31%増 アジアから航空便増、円安も貢献 北海道・九州にも広がる」 (日本経済新聞2013年6月20日)

「日本政府観光局が19日まとめた5月の訪日外国人数は87万5000人と前年同月比で31%増加した。2月から4ヵ月連続のプラスで、5月としては過去最高。円高の修正に加えて航空便の増加が追い風になり、地方のホテルや商業施設でもアジアの観光客が増えている」

各紙のポイントとしては、朝日が東南アジア客の急増で尖閣問題以降の中国客の減少をカバーしたこと。読売が百貨店の免税売上にアジア客が貢献していること。日経が新千歳空港の5月の国際チャーター便の前年同月比2割増や、福岡の商業施設「キャナルシティ博多」を訪れるバスの台数が増えていることなどから、大都市圏だけでなく地方へも訪日客が増えていることを指摘しています。

東南アジア客の急増をふまえ、アセアン3カ国の訪日旅行の背景を分析する記事もあります。

「ASEAN、日本食に関心 旅行先、比較対象1位は韓国」(日経MJ2013年5月1日)

「今年は日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の友好協力40周年にあたる。リクルートライフスタイルの調査によるとシンガポール、タイ、マレーシアの3カ国からの訪日旅行のきっかけは車や家電を抑えて日本食が1位だった。四季の景色や古都への満足度も高く、都市化が進むASEANの人々が高い関心を寄せている姿が浮かんだ」

この記事は、リクルートライフスタイルの観光調査研究部門、じゃらんリサーチセンターが過去3年間に訪日経験がある人を対象に実施した調査を解析したもの。その結果は以下のとおりです。

●ASEAN3カ国からの訪日旅行のきっかけ

1位 日本の食事
2位 自然や風景
3位 ライフスタイル
4位 伝統的な文化
5位 製品・電子機器
6位 日本人の気質や人柄
7位 芸術
8位 アニメや漫画
9位 建築
10位 経済・産業

●訪日旅行で同時に検討した国・地域

1位 韓国
2位 中国
3位 台湾
4位 香港・マカオ
5位 シンガポール

●訪日の満足度(非常に満足したという回答)

1位 花見、紅葉、雪景色など季節の風景を見る
2位 日本式旅館に泊まる
3位 農村風景や田園風景を見る
4位 ローカルフードを食べる
5位 海や山などの自然の景色を見る
6位 刺し身、寿司など、生ものの日本食を食べる
7位 和牛や豚肉の料理を食べる
8位 世界遺産に行く
9位 日本の城を見る
10位 アウトドアスポーツ

同記事は、上記の調査を以下の3つのポイントに整理しています。
①ASEANからの訪日旅行のきっかけは「日本製品・電子機器」を抑え「食事」が1位
②訪日旅行で同時に検討した国・地域は3カ国ともに「韓国」が1位
③日本旅行で満足したことは「季節の風景」「日本式旅館」「農村風景や田園風景」が上位

この結果は、もしかすると意外に思われたかもしれません。でも、東南アジア客が増えている背景に、日本の自然や食事、旅館など、飾ることのない素顔の日本的な要素が挙げられていることは、ちょっとうれしく思いませんか。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-16 19:31 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 16日

東京・大阪のホテル稼働率は震災前を大きく上回る水準に【2013年上半期①ホテル】

2013年に入り、インバウンドを取り巻く状況が変わってきたようです。今年上半期の新聞各紙から興味深い動きをピックアップしていきます。まずはホテルの動向から。
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「都市ホテルの稼働率が一段と上昇している。日本経済新聞社の調査によると、東京では4月の稼働率が9割を超すホテルが続出。円安による外国人客の増加に加え、景気回復基調で国内観光の客足も戻った。大阪でも稼働率は高水準。インターコンチネンタル大阪が5日開業するなど外資系を中心に新規開業が増えており、競争環境は今後激化する見通しだ」(日経MJ2013年6月7日)

同紙では「東京・大阪の主要都市ホテルの稼働率は震災前を大きく上回る水準に」「2013年4月の主要19ホテルの平均客室稼働率は88%と前年同月比5.7ポイント上昇」「ほぼ10年ぶりの高水準となった」「宿泊客に占める外国人比率が4~6割に達する例も目立った」としています。

以下、都内の主なホテルの①客室稼働率と②外国人比率の〔昨年4月→今年4月〕を公表しています。

京王プラザホテル ①86.7→92.8 ②60%台前半→60%台後半
ホテルニューオータニ ①61.8→72.8 ②42.7→40.1
セルリアンタワート東急ホテル ①83.4→91.5 ②53.5→56.9
ホテルオークラ東京 ①66.3→82.6 ②51.8→51.4
品川プリンスホテル ①87.6→90.7 ②21.2→23.5
ホテルメトロポリタン ①91.3→91.8 ②53.1→62.4
八重洲富士屋ホテル ①96.8→99.0 ②16.3→11.7
コートヤード・マリオット銀座東武ホテル ①92.7→95.2 ②71.7→67.8
ホテル日航東京 ①82.6→85.7 ②21.3→10.5
帝国ホテル ①79.7→87.6 ②約4割→約4割

上記のデータから、ホテルによって外国人比率がずいぶん違うこと、どのホテルがインバウンド客への取り組みに積極的かがわかります。ホテルによって欧米系とアジア系の比率が異なる場合もあります。また外国人比率が減っても稼働率は上昇しているホテルも多いことから、景気は回復基調にあるといえそうです。

「外資系高級ホテル、都内に続々 外国人富裕層つかめ」(日本経済新聞2013年6月7日)という記事もあります。

「外資系高級ホテルが東京都心で相次ぎ開業する。港区虎ノ門で建設中の超高層ビルに米ハイアット・ホテルズのブランド『アンダーズ』が日本に初進出する。千代田区大手町のオフィス街にはシンガポールの有名リゾートホテル『アマン東京』が開業する。外国人富裕層のビジネス・観光客の受け皿増加は、東京の国際化を後押しする」

他にもホテルラフォーレ東京(東京・品川)を改装し、13年12月に東京マリオットホテルとして開業予定です。

こうなると「日系ホテル、改装で対抗」となるのは必至で、日系ホテルの取り組み事例を紹介しています。

・ザ・プリンス さくらタワー東京 今秋にリニューアルオープン。ダブルベッド部屋を6割増しに
・京王プラザホテル 4億円を投じ、南館28~33階の客室を改装。Wi-Fi完備

「既存の外資系も集客策続々投入」として、外資系の事例もあります。

・マンダリン オリエンタル 東京 6月フランス料理のシェフとメニューを刷新
・シャングリ・ラ ホテル東京 箱根など近郊への日帰りツアーを拡充
・ザ・ペニンシュラ東京 京都で文化体験できる独自のプログラム

さらに「米ヒルトン 5ホテル改装 外資、日本で攻勢 外国人客増 取り込み狙う」(日本経済新聞2013年7月9日)「2013年からの3年間で100億円超を投じて日本国内のホテルを改装する。東京や大阪など5つのホテルで飲食フロアや客室を刷新する」というヒルトングループの記事もあります。

「ヒルトンは日本で『ヒルトン』ブランドのホテルを9つ展開しており、外資系の都市型高級ホテルでのブランドでは最も多い。そのうち5つの改装に集中投資する」「ヒルトンが日本で過去に例のない集中投資をするのは、外資系を中心に大都市で高級ホテルの開業が相次ぎ、競争が激しくなっているため」です。

同記事では、背景として「タイヤマレーシアのビザ要件緩和などで東南アジアからの観光客の増加が見込める。観光スポットや話題の商業施設の増加で国内各地から日本人旅行者も増えており、大都市の高級ホテルに追い風になっている」と結んでいます。

●日本でこれから開業予定の外資系ホテル

東京マリオットホテル(2013年12月)http://www.tokyo-marriott.com/
アンダーズ(14年夏) http://www.andaz.hyatt.com/ja/andaz.html
アマン東京(14年) http://luxury-collection.jp/
ヒルトン沖縄北谷(14年)
フォーシーズンホテル京都(15年)

最後に、外資系ではないですが、「星野リゾート 東京・大手町に高級旅館」(日経MJ2013年3月18日)の記事を挙げておきます。

「旅館、ホテル運営の星野リゾート(、長野県軽井沢町)は三菱地所と組み、2016年をめどに東京・大手町で高級旅館の運営に乗り出す。84の純和風客室や日本食レストランなどを備え、訪日外国人を中心にビジネスから観光まで幅広い用途の利用客を取り込むほか、日本旅館の運営手法を世界に発信。同社の認知度を高めることで、将来的には海外でのホテルの運営の受託にもつなげる」

「星野リゾート、バリ島進出」(日本経済新聞2013年6月7日)、2014年に「現地企業が建てるホテルの運営を受託」するといいます。こうした精力的な同社の動きが、この時期相次いで報じられていることも注目です。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-16 17:41 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 11日

22回 うれしいことに、日本はタイの海外旅行先人気ナンバーワンだそうです

タイから日本を訪れる観光客が増えています。
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日本政府観光局(JNTO)が6月19日に発表した報道資料によると、2013年5月の訪日タイ人は前年同月比62.8%増を記録。1~5月までの総数では18万1000人と前年度比52.9%増でトップの伸びです。上半期ですでに2012年の総数26万人に迫る勢いです。

タイからの訪日客の旅行手配を行なうアサヒホリディサービスの和田敏男国際旅行部長によると、「タイからの客は今年の2月頃から急増しています。5月も多かったですが、3月の花見シーズンも弊社の取扱数は倍増しました。本来、タイの旅行シーズンは旧正月のソンクラーンのある4月と10月だといわれますが、今年は前倒しで来られた方が多かったようです」(※実際、3月の訪日タイ人は前年度比70.4%増)

こうした動向をふまえ、外務省は6月下旬、タイとマレーシアの訪日観光ビザを7月1日から免除することを発表しました。昨今の円高是正にビザ免除という相乗効果で、さらなるタイ人観光客の増加が期待されています。

タイ国民に対するビザ免除(外務省)2013年6月25日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_000361.html

ツアーの目玉はカニ食べ放題とショッピング!?

訪日タイ人客の旅行手配を扱うランドオペレーターの関係者は「日本はタイの海外旅行先人気ナンバーワン」と口を揃えて言います。うれしいではありませんか。彼らの2大関心事は「食事とショッピング」だそうです。

では、いったいタイ人観光客はどんな訪日旅行を楽しんでいるのでしょうか。

タイの海外旅行市場が活況を呈してきたのは2008年頃からだそうで、まだ5年しかたっていません。海外旅行ブームの初期には、どこの国でも微笑ましい珍現象が見られることがあります。タイ人の日本ツアーでも、日本人の目から見るとちょっと意外なアトラクションが目玉となっています。「富士山のふもとの温泉旅館でカニ食べ放題」です。

たとえば、タイの旅行雑誌「TRAVEL GUIDE Magazine」2012年8月号に掲載された現地の旅行会社COMPAXWORLD社のツアー募集広告にふたつのプロモーション商品が紹介されています。それぞれ3つの目玉ポイントが書かれていますが、共通するのは「温泉旅館でカニ食べ放題」と「ショッピング」です。
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①Tokyo Promotion! 4泊6日(タイ航空利用) 37900バーツ(約12万円)
■東京で満足4泊6日、ホテルは4つ星以上
■お楽しみフリーショッピング2日間(オプショナルツアーもあり)
■温泉旅館泊とカニ食べ放題

②Yokoso Hi-light 東京―京都4泊7日(タイ航空利用) 52900 バーツ(約17万円)
■東京観光とフリーショッピング1日間
■世界遺産の京都、金閣寺、清水寺観光
■温泉旅館泊とカニ食べ放題

タイから日本へのフライトは約6時間かかるので、飛行中夜をまたぐため4泊6日が基本。東京滞在型のツアー①では、都内観光は1日、2日間は自由行動なので、ショッピングがたっぷり楽しめる内容です。東京ディズニーランドに行きたい人は、オプショナルツアーで参加できます。残りの1日は、富士山観光のあと河口湖などの温泉旅館に泊まり、カニの食べ放題が付くというものです。いわゆるゴールデンルートの②でも、それは同様です。
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アサヒホリディサービス国際旅行部のタイ人スタッフ、カウィワット氏によると、「タイ人は富士山のふもとの温泉旅館に泊まって温泉にゆっくりつかり、カニの食べ放題を楽しむというのが、日本旅行の醍醐味。これだけは欠かせないと思っているんです。旅行会社のツアーパンフレットにも、よく富士山とカニが合成されているイメージ写真が多いです」。

※タイ人の訪日旅行の2大関心事の詳細は、中村の個人blog「タイ人ツアーの目玉は、温泉旅館でカニ食べ放題とショッピング!?」を参照。

タイ人が日本食を好む理由

タイ人の日本食に対するこだわりはカニだけではありません。タイには約2000軒の日本料理店があり、普段から日本食に親しんでいるからです。

「タイ人の食は保守的です。珍しいものを食べたいという欲求より、普段食べているもので、もっとおいしいものが食べたいと考えています」と語るのは、タイの事情に詳しい旅行作家の下川裕治氏です。

「だから、日本食が人気なのです。バンコクには日本食屋があふれています。吉野家はもちろん、大戸屋、やよい軒、牛角、ココイチ、王将、丸亀製麺、フィンガーハット……その多くは日本でもおなじみの外食チェーン系。もうなんでもあるといってもいい。

タイ人に『日本で何食べたい?』と聞くと、『ラーメン』と答えたりします。その意味は、タイで食べたことのあるラーメンを日本に行って食べてみたい。そのほうがずっとおいしいに決まっているから。彼らはそう考えているのです」。

タイ人の日本のフルーツ好きも、関係者の間ではよく知られています。なかでも日本の大粒のイチゴは大好物です。よくタイ人客は、デパ地下でカットフルーツを買ってきてホテルの客室で食べているそうです。

※タイ人の日本食好きの背景は、中村の個人blog「タイ人はイチゴが大好き!? 旅行作家・下川裕治さんが語る『タイ人客はドーンと受け入れてあげるといい』」を参照。

タイ人客には焼肉にしゃぶしゃぶ、寿司、天ぷら、ラーメンという和食の基本アイテムが断然好まれるそうです。日本の味覚をそのまま提供して喜んでくれるのですから、なんてありがたいお客さんでしょう。

タイ人客がよく訪れる都内のレストランとして有名なのが、西新宿にある焼肉料理店「六歌仙」です。同店はタイのインラック首相もおしのびで何度も訪れており、訪日タイ人に広く知られています。人気メニューは6500円の焼肉食べ放題コースだそうです。
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※「六歌仙」については、中村の個人blog「タイ人観光客に西新宿の焼き肉店『六歌仙』が人気の理由」を参照。

現地メディアが訪日を後押し

今年に入って急増する訪日タイ客の背景について、日本政府観光局(JNTO)は次のように分析しています。

「3月末からの増便やチャーター便による座席供給量の拡大、また円高の是正に加えて、VJ事業だけでなく地方自治体による積極的な観光誘致策が露出拡大につながり、タイからの観光客の増加の要因となっている。またタイのメディアでは、訪日旅行がブームとして複数取り上げられ、日本への旅行の機運を後押ししている」(JNTOプレスリリース/2013年6月19日)

訪日タイ客急増に、タイのメディアの影響があるというのです。

タイを中心とした海外向けマーケティングを手がける株式会社Relation(http://www.relation-inc.jp)の加藤英代表取締役によると、「タイでは日本のテレビ番組が大量に放映されています。日本のテレビ局から版権を買って深夜枠でグルメ番組や旅行番組を毎日のように流しているからです。街にあふれる日本食レストランもそうですが、タイには生活の中に普段着の日本があります。だから、彼らは日本に安心、安全のイメージを持っています。日本では人は優しく、楽しく旅行できると思っているのです」

日本の番組がそのまま流れることも多いですが、自前の番組も制作されています。たとえば、タイのアイドルTikの出演する海外旅行バラエティ番組「Say Hi」は、チャンネル3(http://www.thaitv3.com/)で毎週金曜00:10より放映されています。彼女は世界各地を訪ね、買い物や食べ歩きを楽しみます。日本の温泉旅館でカニの食べ放題を体験するシーンも以前あったそうです。
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こうした事情は、テレビ番組を政府が規制管理する中国とはまったく違います。タイ人にとって日本はとても身近な国となっているのです。

タイで発行されている旅行雑誌でも、日本は多く取り上げられています。
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たとえば、タイの雑誌社Check Tourが発行する「Check Tour magazine」は、テーマ性の強い充実した特集記事が売りの月刊誌です。2012年は、札幌(1月号)、東京ディズニーランド(11月号)など、4回の日本特集を組んでいて、日本への関心の高さを感じます。

バンコク週報というタイの日本語新聞を発行する出版社が制作している現地のグルメ情報誌「Gozzo(ごっつぉ)」もユニークです。
Gozzo(http://www.facebook.com/GozzoThailand
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同誌は、バンコクにある日本食レストランのタイ人向けフリーペーパーです。日本食と旅行の雑誌と銘打たれていて、特に日本の食文化を詳しく紹介しているのが特徴です。

たとえば、2013年7月号では、焼肉特集が組まれています。焼肉の種類や細かい牛肉の部位の解説もしています。もともと宗教的な理由でタイ人の中には牛肉を食べない人も多いと聞きますが、最近は「和牛」ブームだそうです。こうしたきめの細かい現地での情報提供がタイ人の日本食に対する理解を深めているのでしょう。

このように、タイでは日本の情報が偏りなく、比較的まっすぐに紹介されていることがわかります。タイ人が素直に日本旅行を楽しんでくれる背景には、こうした現地での自由な情報流通があるのです。

※タイの旅行雑誌についての詳細は、中村の個人blog「タイの旅行雑誌には日本がこんな風に紹介されています」を参照。

ツアー代金は中国人ツアーの2倍近い

では、タイ人の日本ツアーはどんなコースが催行されているのでしょうか。現状では、以下の3コースが主流だそうです。

①東京・大阪ゴールデンルート4泊6日
②東京滞在(+富士山)3泊5日/4泊6日
③北海道周遊(札幌、小樽、登別、富良野など)4泊6日

すでに①と②は定着しており、この夏は③の北海道周遊が急増しそうとのこと。昨年10月に新規就航したタイ国際航空のバンコク・新千歳線は現在週4便ですが、秋から毎日運航になるそうですから、今年の冬は北海道を訪れるタイ人観光客がさらに増えそうです。

他にも、九州周遊(福岡、別府、阿蘇、熊本、長崎など)4泊6日も動き出しています。主流ではないけれど、東京・大阪ゴールデンルートの別バージョンとして、大阪か名古屋inで北陸や信州を周遊、東京outのコースも好評といいます。沖縄に行くツアーもあります。

次に、ツアーの価格帯について見ていきましょう。ツアー料金は日程やコースによって当然違います。以下、「Check Tour」2013年6月号に掲載された現地旅行会社のツアー募集広告から平均的な料金(7~8月出発のコース)をいくつか挙げてみましょう。

・東京・大阪ゴールデンルート4泊7日 50900バーツ(約16万5000円)
・北海道3泊5日 43900バーツ(約14万円)
・東京滞在(+富士山)3泊5日 39900 バーツ(約13万円)
・沖縄3泊5日 33900バーツ(約11万円)

前述のカウィワット氏によると、「タイ人の日本ツアーの価格帯は1日換算で約1万バーツ(約3万2000円)が目安」だそうです。

以前、本連載「18回 春にはちょっぴり中国客が戻ってきそうな気配ですが……。中国の旅行会社のHPを読み解く」の中で、北京、上海、広東の旅行会社のツアー料金を比較したことがありますが、この夏の中国本土発の平均的な日本ツアーの価格帯が1日換算で約1000元(1万6000円)が目安であるのに比べると、タイ人のツアーは2倍近いといえます(最近の円安で、円換算では価格差は以前より縮まっているようですが)。

ツアー行程を比較しても、当然とはいえ、中国人ツアーの内容はタイ人のツアーに比べ見劣りします。宿泊ホテルも観光や買い物には不便な場所にあったり、観光地もなるべく費用のかからない場所を選んだりと、「安かろう悪かろう」を地でいくケースが多いです。

とりわけ食事にかける費用が違います。広東省の南湖国旅(http://www.nanhutravel.com/)のHPには、「昼食代1000円、夕食代1500円」とはっきり書かれていますが、タイのツアー客はこんなに安い食事では満足しないでしょう。カウィワット氏は言います。

「タイ人は食事にこだわるので、とくに夕食は5000円以上かけるのがざらです。西新宿の『六歌仙』が人気なのもそのためです。弊社では、タイにある日本企業の関係者のインセンティブツアーの企画をよく担当するのですが、とにかく食事の要望は細かいです。ご案内しようとしているレストランのメニューを用意して、具体的にどんな料理が食べられるのか、タイのクライアントのツアー担当者にプレゼンテーションすることもあるほどです」

「タイ人は中国人に比べて日本旅行に対する思い入れが強い」というのは、タイ人客を扱うランドオペレーターに共通する声です。タイ人は「せっかく日本に行くのだから、いろんな体験をし、お金をかけてもおいしいものを食べたい」と素直に期待をふくらませているといいます。だから、食に限らずツアーの中身に対する関心が高いのです。そうした日本に対する期待値の高さが、中国人ツアーに比べてタイ人ツアーが比較的高い価格帯を維持している理由になっていると思われます。

※タイ人の日本ツアーの価格帯については、中村の個人blog「タイ人の日本ツアーの料金は中国人ツアーの2倍近いです」を参照。

今後の展望とツアー料金値崩れの懸念

これまでずいぶんいいことずくめの話をしてきましたが、訪日タイ客急増にはもっと大きな背景、すなわち近年の日本企業の東南アジアシフトがある、と前述の加藤英代表取締役は指摘します。

「2015年のアセアンの市場統合(ASEAN自由貿易地域<AFTA>)をにらんでインフラ整備の進むタイに日本企業の進出が加速し、タイ人社員の研修や視察のための日本へのインセンティブツアーの需要が大きくなっています。同じ東南アジアでもシンガポールやマレーシアに比べてタイがダントツの伸びを見せているのには、日本企業の存在があります」

実際、日本のランドオペレーターが受注するタイの団体客は、日本企業のインセンティブツアーであることが多いようです。それは現地の旅行会社が一般募集するパッケージツアーとは違って、個別のクライアントの要望に応じてツアーの中身を組み立てる手配旅行です。クライアントが日本企業なので、比較的安定した取引が可能といえます。

ところが、今回のビザ免除による客層の拡大で市場が荒れるのでは、という現場の懸念の声はすでにあります。

社団法人アジアインバウンド観光振興会理事で、訪日タイ人客のランドオペレーターでもある株式会社トライアングルの河村弘之代表取締役は、タイの旅行業界の現状をふまえた以下の点を指摘しています。

「タイ人は純粋でおとなしい、とてもいいお客さまなのですが、少々ワガママなところがある。ツアーの立ち寄り先だけでなく、来日後の宿泊ホテルやレストランの変更もしばしば。タイのガイドはお客さまの言いなりになりがちで、現場が混乱するケースも多い。

タイは海外旅行マーケットが動き出してまだ5年という国。旅行業界のルールも整備されていません。本来であれば、彼らはもっと海外の現状を知って、業務のマニュアル化を考えるべきなのだが、まだすぐには対応できないでしょう。

これから訪日タイ客が増えると、ガイド不足も顕在化するはずです。タイの日本ツアーはほぼスルーガイド、つまり現地タイ人が担っており、通訳案内士制度は機能していません。

さらに、今後いちばん懸念するのは『中国プライス』問題です。ここ数年、中国の旅行エージェントが日本の一部のホテルなど観光関連企業との間で結んだ過度に安い中国向けの仕入れ値を東南アジアの市場に持ち込もうとしています。せっかく定着している東南アジア発の日本ツアーの値崩れが起こるおそれがあります」

中国の訪日旅行市場で起きたのと同じ道を東南アジア市場でも繰り返すことになるとしたら、これは大きな問題です。それは避けねばなりません。誰のためにもならないからです。

もうひとつの懸念材料は、ビザ免除をめぐってタイではこれを歓迎するどころか、おかしな反応があることです。

日本の観光ビザ免除、タイ外相が不法就労者増に懸念(バンコク週報2013年6月14日)
http://www.bangkokshuho.com/article_detail.php?id=2207

以前、ニュージーランドがタイ人の観光ビザ免除を実施したところ、観光で入国した後、失踪者が続出したため、免除が取り消された前例があったそうです。タイの外相は同じことが起こらないようにと国民に訴えたというのです。日本でも同じことが起きるのでしょうか?

※ビザ免除をめぐるタイ側の反応については、中村の個人blog「タイのビザ免除で、むしろタイ政府側に不法就労再発の懸念があるらしい」を参照。

もっとも、いまの段階でこうした懸念を言い出したらキリがありません。物事はすべてがきれいごとで進むはずもないのですから、今後の行方を見守っていくほかないでしょう。

最後にあらためて、タイ人の訪日旅行を盛り上げる話を書いておこうと思います。

それは、日本には確実にタイ人に喜んでもらえる自然の魅力があるということです。

タイと日本の風土や気候の違いが、来日する彼らを魅了しています。四季があることが、彼らをリピーターにするのを強く後押ししてくれるのです。たとえば、3~4月は桜、6~7月はラベンダー、秋は紅葉、冬は雪景色と、1年を通じてタイ人の目を喜ばせるのは、季節による風景の変化があるからです。実際、タイの旅行雑誌やパンフレットに描かれる日本にはあでやかな色味があふれています。我々は熱帯の国タイのほうが日本よりずっとカラフルだと思いがちですが、彼らにすれば日本は自分たちの知らない美しい色彩にあふれる国なのです。

常夏の国からわざわざ訪ねてくれるタイ人に対して、四季という1年を通して訴求できる日本の強みを生かさない手はないといえるでしょう。訪日タイ客の増加で、ニッポンのインバウンドに新しい風を吹かせることを期待したいと思います。

※すでにタイ側でも訪日旅行に積極的に取り組む動きは起きています。詳しくは、中村の個人blog「HISタイの訪日旅行の取り組みは要注目です」を参照。

やまとごころ.jp http://www.yamatogokoro.jp/column/2013/column_132.html
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by sanyo-kansatu | 2013-07-11 16:33 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)