ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2014年 07月 29日

LINEとGmailが使えない中国ってどうよ

6月末から7月下旬まで中国の取材に出かけていたのだが、困ったのは、急にLINEやGmailが使えなくなったことだった。

5月に上海に行ったときは、LINEもGmailもふつうに使えた。特にLINEは国際無料通話ができるので、中国の友人との会話はもちろん、日本への連絡にも重宝していた。

上海では、今年5月の時点、地下鉄駅構内でLINEの広告が見られた。
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人民広場駅構内(上海)

ところが、6月末中国に入国した際、数日間はgmailが使えたが、7月に入ると、まずアクセスできても送信が不可となった。それから数日すると、メールの受信も不可となり、ついにgmail自体にアクセスできなくなった。

もっとも、なぜかスマホではgmailの受信だけはできた。そのため、gmailで受信したメールをyahooメールで返信するというメンドーな対応に追いやられた。実際、スマホで受信できたのは幸いだった。もしできなかったら、日本からのメールをいっさい受け取れない、仕事上ヤバイ状況になっていたからだ。

そのうちLINEも使えなくなり、日本との通話もできなくなり、wifi可能なスポットでskype電話を利用した。いまどき、確かにいろんなツールがあるけれど、なんの通達もなく勝手に通信インフラを使用不能にできるなんて政府がこの21世紀に存在していることは信じられない。中国とは世界で最も特殊な国といっていいだろう。

結局、中国の友人たちに教えられて、微信(we chat)のアプリをダウンロードした。これなら以前どおり、日本に帰国しても中国の友人とチャットも無料通話もできる。そこそこ便利である。

ただね、中国以外の国にも友人はいるわけで、中国人相手だけ使い分けなきゃならないなんて、なんとメンドウ臭いことかと思う。

帰国してしばらくして、在日中国人の友人たちと自然に微信友達が増えた。

ちなみに中国では、LINEやGmail以外にも、Facebookはもちろんのこと、YOU TUBEやユーストリーム、ニコニコ動画をはじめ、YahooやExciteのブログも閲覧不可です。ですから、このブログも中国では見ることはできないのです。

やっぱ、よくないですね。こういうの。

こんなことでは、香港のデモ学生に日本人が共感してしまうのは当然です。ところが、中国大陸人たちは、こういう当局による不便も生まれてきてこのかた、当たり前となっているので、すぐにスルーして忘れることにして、悩んだりもしないのでしょう。この違い、ホントは大きいのにね。
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by sanyo-kansatu | 2014-07-29 20:03 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)
2014年 06月 18日

日本の文化をストーリー仕立てで伝え、訪日につなげる多国籍フリーマガジン

成田や羽田空港の到着ロビーに、ひときわ目につく英字フリーマガジンが置かれています。『WAttension Tokyo』は巷にあふれる外国人向けフリーペーパーとはまったく異なるオリジナリティと可能性を持っています。発行元の和テンション株式会社の鈴木康子代表取締役に、どこが他誌とは違うのか、そもそもの成り立ちから今後の展開まで話を聞きました。

目次:
雑誌『和テンション(WAttention)』について
創刊の時期と目的
外客誘致につなげた事例
スマホアプリとの連携
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―『和テンション(WAttention)』とはどんな雑誌ですか?

ひとことでいえば、日本の文化情報に特化して、日本で唯一世界展開している多国籍フリーマガジンです。

現在、年4回発行の東京版をはじめ、世界9カ国・地域(シンガポール、マレーシア、タイ、ロサンゼルス、フランス、台湾、インド、そして今年6月香港版も登場)で展開しています。東京版は、成田・羽田空港の到着ロビーやホテル、大使館、外国人記者クラブなど、都内約350か所で配布しています。海外の旅行博では、各国のスタッフが会場で自国版を配布しています。

日本の情報を発信する以上、記事は東京でつくることが多いですが、編集方針として四季(季節感)を大事にしています。

各国版の共通コンテンツとして「こよみを楽しむ」という連載コーナーがあり、そこでは日本の文化を理解してもらうカギとなる季節の風物や食などを紹介しています。弊誌のこだわりとして、一般の情報誌のような表層的な情報は扱いません。

取材も、日本人とNon-Japaneseとが一緒に行うことで、日本の文化的背景をふまえ、外国人の新鮮な視点を盛り込むことに努めています。

読者ターゲットは海外の日本好きのFITです。台湾版と香港版、タイ版、フランス版以外は英字誌ですが、世界展開することで、日本を訪ねてきた外国人旅行者向けの「着地型メディア(東京版)」と、旅行に行く前に日本への興味を喚起し、誘客につなげる「現地型メディア(各国版)」の2つの機能を併せ持つことができるのです。

―創刊はいつですか。どんな経緯から立ち上がったのですか?

シンガポール版の創刊は2010年で、東京版は11年4月です。もともと弊社はシンガポールで邦人向け現地情報誌『マンゴスティン倶楽部』(1997年創刊)を発行していました。これはシンガポール在留邦人や旅行に来る日本人向けの日本語情報誌で、いってみればシンガポールのインバウンドに貢献するビジネスだったわけです。
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この仕事を通じて私たちはいかにシンガポールの観光政策が優れているか、精通することができました。08年に日本にも観光庁が設立され、日本でも観光誘致を本格的に始めることを知り、海外在住の私たちだからこそできる日本のインバウンドへの貢献はないかと考え始めたのが09年頃です。

シンガポールで仕事をしていて感じるのは“メイド・イン・ジャパン”クオリティに対する信任です。日本人がいいという店に行きたいと彼らは言います。

日本人の評価そのものに価値があると考えられているのです。ところが、外客誘致にそれが十分活かされているとは思えませんでした『和テンション(WAttention)』という誌名も、日本の和に対する気づきから来ています。もっとちゃんと日本を理解してほしい。そのためにふさわしい媒体が必要だと考えたのです。

―貴誌が外客誘致につなげた具体的な事例を教えてください。

東京版2012年冬号で大田区を特集しました。区からの依頼で訪日外国人向けにリサーチを行い、同区内のさまざまな観光ポイントを記事化しました。それを台湾版、ロサンゼルス版、シンガポール版にも転載し、日本政府観光局(JNTO)のFacebook上、WAttention web上でアンケート募集を実施したところ、5カ国から700名強の応募ありました。さらに、大田区特集のコンテンツを別刷りとして別冊“Letʼ’s all go to Ota City Tokyo”を制作しました。
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シンガポール版2014年春号では、山梨県と長野県、岐阜県の3県の「山国紀行」特集を企画しました。海外スタッフと日本人による取材を通じて、3県を訪ねる新しいモデルコースを造成し、シンガポールの旅行会社で実際にツアーを募集してもらいました。
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弊社はこうしたファムトリップ招聘事業を通じて、国内在住、もしくは海外から外国人やメディアを招聘し、さまざまなコンテンツとして記事化し、掲載することができます。

弊誌のもうひとつの特徴は、日本からの広告出稿だけでなく、海外現地企業の広告も多いことです。それだけ現地の方に読まれている証拠といえます。その国にローカライズした内容構成を心がけているからです。

―今後は雑誌以外にも多元的な展開があるそうですね。

弊社のビジネスモデルは、『和テンション(WAttention)』シリーズの発行をベースに自社ウェブサイトで情報発信するメディア事業に加え、これまで述べたように、イベント事業やリサーチ・コーディネーション事業(ファムトリップの手配、企業のシンガポール進出サポート、翻訳・通訳手配など)を行うものです。

我々のミッションは、日本の文化コンテンツをストーリー仕立てで海外に伝え、共感を得てもらい、訪日につなげることにあります。

今後はスマホアプリを雑誌と連携させていきます。7月に「WAttention App-WTN Guide(仮称)」をオープンする予定ですが、事前にダンロードしておけば、現地で店舗の地図やクーポンなどのお得情報を入手できます。

このアプリはKPI(訪問回数などがモニタリングできる重要業績評価指標)を取得できるので、スマホでかざすマーカーを雑誌と店舗の両方で用意しておけば、雑誌から店舗への誘引率などもわかるのが特徴です。

また11月にシンガポールの大型ショッピングモールのジュロン・ポイントに「WAttention Plaza」という催事場をオープンさせます。そこは日本の文化に触れられる常設の展示スペースとして活用していただけると思います。物販やイートインも可能なので、観光に限らずさまざまな日本の情報発信ができるはずです。前述のアプリのダウンロードプロモーションも実施する予定です。
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和テンション株式会社
東京都港区南青山5-18-10-202
www.wattention.com

<編集後記>
成田空港に置かれていた『和テンション(WAttention)』を初めて読んだのは、新宿歌舞伎町特集(2013年夏号)のロボットレストランの記事でした。近未来都市を描いた映画「ブレードランナー」の話から書き起こされる同レストランの記事を読んで、これはサブカルチャーを含めて日本の事情に詳しいライターさんが書いたものだと感じました。その話を鈴木代表に話すと、「日本在住の海外メディアの記者や特定のジャンルの専門ライターに記事を書いてもらっている」とのこと。「表層的な情報は扱わない」という編集方針とはそういうことです。

東京で入手できる英字フリーペーパーといえば、ロンドンをベースに世界展開している『Time Out Tokyo』のことが思い浮かびます。でも、よく考えてみると、同誌は東京でしか入手できないのに対し、『和テンション(WAttention)』は海外でも発行されていることがまったく違います。

ここ数年で外国人向けフリーペーパーは雨後の筍のごとく誕生しましたが、それらと『和テンション(WAttention)』が根本的に違っているのは、編集方針はもちろんですが、ビジネスモデルにおいてもそうです。海外で発行されていることから、単なる訪日誘客メディアとしてだけではなく、海外に進出したいと考えている企業にとっても使い勝手のいい媒体として機能しているからです。

こうした独自性は、シンガポール在住の日本人たちによる自由な発想から生まれたものでしょう。鈴木代表は「シンガポールの観光政策から学ぶことが多かった。MICE誘致しかり、周辺国・地域の観光インフラを開発し、それも含めてシンガポールの外客誘致に結びつけているところなど、日本はもっと学ぶべき」と言います。

彼女と話していてあらためて認識したのは「英語を話す華人」の存在です。2013年の訪日シンガポール人は約19万人。中国・台湾・香港を含めた華人全体から見ればわずかな存在にすぎませんが、英語ゆえのワールドワイドな広がりがあります。次々と海外で雑誌を立ち上げていく手腕には大きな可能性を感じます。こういう先進的なメディアをこれからどう活用していくべきか、考えるだけでも楽しくなります。
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by sanyo-kansatu | 2014-06-18 21:13 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 06月 04日

なぜ世界は我々に対してこんなに厳しいのか!~中国の最大の関心事はビザ緩和

今回の上海WTFを見ていても明らかなように、中国の海外旅行市場は、かつてのイケイケ感から退潮しつつあるようですが、なんといってもいまや渡航者数、消費額ともに中国が世界最大の観光大国となっているのは間違いありません。
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そんな彼らにとっての最大の関心事は、観光ビザの緩和です。

要するに、外国に行くのに、中国国籍というだけで、大使館に申請手続きを行う必要があったり、国によっては大使館の人間と面接を行わなければならない(アメリカの場合)。個人資産までやたらと調べられたり、とにかく面倒が多すぎる。他の先進国や香港、台湾の人たちは決してそんな必要ないのに、なぜ世界は我々=中国本土人に対してこんなに厳しいのか? 大いに不満である、という、話を聞けば、なるほどそうだろうなあと同情を禁じ得ない問題なのです。

中国メディアもこの問題については、ことのほか敏感なようで、海外の国々と結ばれる新たなビザ緩和報道を盛んに行っています。

たとえば、こんな感じです。

中国外交部「中国のビザ相互免除国は発展した観光先進国」(人民網日本語版2014年1月29日)
http://j.people.com.cn/94475/8525777.html

「中国のパスポートでは、ビザ(査証)なしで滞在できる国が少ないという声が多いことに関し、中国外交部(外務省)領事司の黄屏・司長は28日、記者会見で、その価値はビザ相互免除を実施している国の数だけで判断するべきでないとの見方を示した。新華社が報じた。

黄司長は、「現在、中国は81カ国とビザ相互免除に関する協定を締結している。うち、サンマリノ、セーシェル、モーリシャス、バハマとの協定は、一般パスポートを所持している中国公民にも適用される。これらの国は、貧しい国でも、危険な国でもない。バハマ、サンマリノ、セーシェルの国民一人当たりの国内総生産(GDP)はいずれも中国より上だ。さらに、モーリシャスは有名な観光名所でもある。いずれの国も景色が美しく、観光業の発展した国だ」と指摘。また、「一国のパスポートの価値は、▽そのパスポートを持っていれば容易に出国できるか▽パスポートを所持している人が国外で問題に遭遇した際、すぐに保護やサポートを得られるか---の2つの視野から測ることができる。ビザ相互免除は、ビザの面で便利な措置の1つにすぎない。現在、上記4カ国以外に、6の国や地域が、一定の条件を満たす一般パスポートを所持している中国公民を対象にビザ免除措置を実施しているほか、35の国や地域が、一定の条件を満たす一般パスポートを所持している中国公民を対象に、到着した空港で取得できるアライバルビザを発給している。そのほか、多くの国が中国と、数次査証(マルチビザ)相互発給協定を締結したり、ビザ取得手続きの簡素化、スピード化の措置を実施したりしている」と述べた。

黄司長はさらに、現在、中国とビザ相互免除協定を締結している国が少ない原因に関して、「中国国民の各国への入国数が増加し始めたのは近年で、中国人が大規模に入国するための準備ができていない国も多い。法律や法規の制定や改正は一夜にしてできることではない」との見方を示した。

●ビザ相互免除国:サンマリノ、セーシェル、モーリシャス、バハマ

●中国人を対象にビザ免除措置を実施している国:サモア、ハイチ、韓国済州(チェジュ)島、北マリアナ諸島(サイパン島)、タークス・カイコス諸島、サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島

●アライバルビザ申請可能国:モルディブ、インドネシア、グルジア、ブルネイ、フィジー、コモロ、パラオ、ミャンマー、東ティモール、バーレーン、ヨルダン、アラブ首長国連邦、ラオス、レバノン、ネパール、スリランカ、タイ、トルクメニスタン、イラン、ベトナム、エジプト、トーゴランド、カーボヴェルデ、ギニアビサウ、ガーナ、コートジボワール、マダガスカル、マラウィ、シエラレオネ、タンザニア、ウガンダ、ガイアナ、セントヘレナ島、ツバル、バヌアツ」

海外諸国の中国に対するビザ免除は、一般的にビーチリゾートを有する地域が多いようです。実際、これらの国・地域の中国で行うプロモーションもそうですし、実際の渡航者数も増加の一途をたどっています。

しかし、本当をいうと、中国がもっとビザ緩和を進めてもらいたいのは、欧米諸国に対してです。

7か国、中国人向けビザ発給手続きを続々と簡略化(2014年3月24日駐名古屋中国領事館)
http://nagoya.china-consulate.org/jpn/zgxw/t1140088.htm

「いよいよ春も本番,海外旅行のベストシーズンを迎えた.この1年,海外諸国は続々と,申請から発給までの時間短縮,申請料金の引き下げ,マルチビザ発給など,中国人向け査証(ビザ)の発給手続簡略化・要件緩和化政策を押し進めてきた.人民網観光チャンネルは,中国人のビザ申請の参考として,主要国家の具体的措置を以下の通りまとめた.人民網が伝えた.

1.フランス:短期滞在ビザの発給所要時間を48時間以内に

Jacques Pellet在中国フランス大使は今月18日,「中仏国交樹立50周年記念に際し,同大使館領事部はビザ発給政策を変更する」と発表した.具体的措置は以下の通り.

○中国人向け短期滞在ビザの申請発給手続を簡略化し,申請から48時間以内に発給する.

○居住地による申請先領事館の制限を廃止する.申請者は,中国国内の任意のフランス領事館でビザの申請を行うことが可能となる.

○就労ビザ取得のための提出書類はこれまで,全てについて英語訳またはフランス語訳のものが必要だったが,今後は就労証明書のみとなる.

○フランスを頻繁に訪れる中国人観光客を対象に,有効期間1年から5年の短期数次査証(マルチビザ)を発給する.

2.イタリア:シェンゲン・ビザ取得歴のある申請者に5日以内にビザ発給

イタリア当局は,3月から,過去にシェンゲン・ビザを取得したことのある申請者に対し,申請から5日以内にビザを発給すると発表した.また,シェンゲン・ビザを初めて申請する人は,資格を持った旅行代理店を通じて申請可能で,ビザ取得のための面接は省略される.

3.米国:オンラインビザ申請予約サービス開始

在中国米国大使館は今月16日より,中国人を対象としたオンラインビザ申請予約サービスを開始した.申請者は,この新たなオンライン予約システムを利用して,面接の予約や手続の進行状況をチェックすることができる.また,コールセンターに電話をかけて予約や問い合わせを行うことも可能で,その際の手数料は不要.新システムでは,申請者は,中信銀行の国内支店約900店の希望する店舗において,発給済ビザが刻印・貼付されたパスポートを受領することができる.また,米国大使館・領事館は引き続き,必要資格を満たし,面談する必要のないビザ更新申請者に対し,非移民ビザの更新・発給業務を行う.

4.オランダ:代理人によるビザ申請が可能に

オランダは2013年9月,中国人向けビザ申請・発給手続の簡素化に着手した.今後,長期滞在(3カ月以上)ビザを申請する中国人に限り,在中国オランダ大使館または在上海・広州オランダ総領事館に本人が赴いてビザ申請を行わなければならないが,その他ビザの申請者は,代理人による申請が可能となる.代理人は,申請者の署名入り委任状と代理人の身分証明書(原本・コピー両方)を申請時に提示するだけでよい.このほか,申請者は,面接を予約した日から5日以内に面接を受けることができるようになり,発給までの総所要時間が大幅に短縮される.申請者は,オランダビザ受付センターの公式サイトやコールセンターを通じ,ビザ申請に関するあらゆる情報を入手できる.また,在中国オランダ総領事館に認可されたビザ代行企業や旅行会社は,「橙色ルート」や「青色ルート」と呼ばれる特別申請ルートや「ADS協定(中国人の不法移民を防ぐ目的で各国と中国の間で結ばれた特別協定)」に基づく申請ルートによる申請代行手続を取り扱っている.

5.英国:ビザ申請料金を引き下げ

厳格なビザ取得条件を貫いてきた英国が,訪問ビザ(有効期間6カ月のマルチビザ)の申請料金を80英ポンド(約1万4千円)に引き下げた.また,2013年11月1日から,複数の指定旅行会社が,シェンゲン・ビザ申請フォームを使って,ツアー客に代わり英国入国ビザの申請を行うことを認めた.中国全国で「移動ビザ業務サービス」を展開,VIPへの訪問サービスを開始した.さらに,2014年夏には,「24時間ビザ発給サービス」をスタートする予定.同サービスによって,英国への出張が多いビジネスマンの申請者を対象に,申請から24時間以内の商務ビザ発給が実現する.

6.ニュージーランド:有効期間2年のマルチビザを発給

ニュージーランドは,2013年5月1日より,中国人を対象とした有効期間2年のマルチビザ発給をスタートした.

7.韓国:中国人向けマルチビザの発給対象範囲を拡大

韓国法務部は,2013年9月1日より,中国人向けマルチビザの発給対象範囲を大幅に拡大すると同時に,東南アジア諸国の観光客のマルチビザ制限も緩和した.新規定によると,中国人がマルチビザを所持している場合,その配偶者と未成年の子供も同種のマルチビザを取得することが可能.メンバーズカードの価格が3千万ウォン(約286万円)を上回る韓国国内の会員制ホテル会員も,マルチビザを取得することが可能となった.北京戸籍や上海戸籍を持つ中国人観光客および「211プロジェクト」に指定されている重点建設大学112校に在籍している中国人大学生も,マルチビザ取得の資格を持つこととなった.

上記の国家以外にも,中国とビザ相互免除協定を結んでいるモーリシャス,中国人向けビザが入国時に発給可能なヨルダン,中国とのビザ相互免除協定の締結準備が進んでいるタイなど,中国人の海外旅行がより便利となる環境が,着々と整えられている」

これによると、欧米各国はビザ免除までには至らないものの、
・申請から発給までの所要期間の短縮
・申請料金の引き下げ
・オンライン申請の導入
・査証発給対象の拡大 等による、制度緩和を行っていることがわかります。

一方、近隣アジア諸国でもビザ緩和は進んでいますが、全面的なビザ免除にまで至った例はないようです。

なかでもこの方面で積極的な韓国は、今年新たなビザ関連制度を導入しています。その特徴は、ひとことでいえば、「お金さえあれば」優遇する制度だといえます。

韓国訪問優待カード発行制度の開始(2014年3月17日施行)

○以下のいずれかの条件を満たす場合、韓国訪問優待カードを発給
・直近の5年間に韓国で3万USドル以上の消費を行った
・優待カードを発行する金融機関(友利銀行)に5000万ウォン以上の預金を1年間に渡って行っている
・領事館、KTO、文化体育観光部等の推薦を受けた(中央省庁の局長級以上の政府関係者、有名芸能人等を想定)

○同優待カード所持者には、
・5年間有効の訪韓数次査証発給が行われる他、
・出入国の際に専用ゲートを利用可能
・デパートや免税店でのショッピングにおける割引
・ショッピング補助員の支援
・観光地での通訳による案内 等のサービスが受けられる。

これを以て、韓国政府は同優待カードの申請資格を有する中国人は2000万人と予測しているそうです。

韓国内空港経由で済州島を訪問する中国人団体旅客に対する72時間以内査証免除滞在制度の拡大(2014年4月6日施行)

○済州島を目的地とする中国人団体旅客が韓国内で乗り継ぎを行う際、査証免除で72時間空港周辺地域に滞在できる同制度。
○乗り継ぎ対象空港にこれまでの仁川・金海に加えて、襄陽・清州・務安の3空港を追加。
○これにより、上記5空港を経由して済州島を訪問する場合、首都圏(ソウル市、京畿道、仁川市)及び各空港所在周辺地域の72時間以内の滞在が査証免除で可能。

以前、中国人のビザ緩和に対する関心が、彼らの自尊心や面子に直結する問題であると書いたことがあります。

世界一になったのに、なぜビザ緩和が進まないのか~中国の不満とその言い分(COTTM2013報告 その4)


そういう意味では、安倍政権になって日本のアセアン諸国に対するビザ免除が相次いで進められている現況について、いまの中国人がどんな思いでいるか、想像するに余りあります。もっとも、自国の政治状況に翻弄されるのは彼らにとって日常のことですから、これだけ日中関係が悪ければ仕方がないと割り切っている面もあるでしょう。そこは日本人の感覚とは違うはずです。

ただし、こちらがその話題を安易に振れば、食ってかかってくるだろうということは容易に想像されます。なぜ日本は中国に対してだけ厳しいのか!と。ここはそっとしておくしかなさそうです。
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by sanyo-kansatu | 2014-06-04 11:35 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 05月 01日

29回 好調!訪日タイ個人客のつかみ方~人気ガイドブックから学ぶ“おもてなし”

先ごろ発表された日本政府観光局(JNTO)のプレスリリースによると、今年1~3月までの訪日タイ客数は前年度比64%増と過去最高を記録しています。4月も桜の花見シーズンとタイの旧正月「ソンクラーン」の休暇が重なり、多くのタイ客が日本各地を訪れました。

タイ客の手配を扱うランドオペレーター、株式会社トライアングルの河村弘之代表取締役によると、「今年もタイ市場は勢いがあります。昨年の観光ビザ免除で、日本ツアーが出発ギリギリまで販売されており、日本側のランドは手配が大変です。ホテルの客室やバスの不足も懸念されている」とのこと。先日もタイのLCC、エアアジアXが7月から成田と関空に就航するニュースが出たばかり。この勢いはさらに加速しそうです。

観光ビザが免除された訪日タイ客の特徴は、個人旅行者の比率が高いこと。彼らの旅行意欲を盛り上げるポイントは何か。日本に来て何を楽しみ、また不便を感じているのか。それを知るうえで参考になるのが、現地の各種メディアや旅行書のコンテンツです。

タイ人の訪日旅行を盛り上げるメディア作品

2月21日、タイの国際トラベルフェア(TITF)開催に合わせて、日本政府観光局(JNTO)が訪日旅行促進に貢献した団体・個人を表彰する「Japan Tourism Award in Thailand」の授賞式がありました。同賞には、タイのトップスターから映画、テレビ番組、CMのプロモーションなど、多彩な関係者が選ばれています。これを見ると、どんな作品がタイ人の訪日旅行を盛り上げているか知ることができます。

以下、同事務所の2月24日付けリリースをもとに受賞者を紹介します。それぞれ動画で作品の概要もわかるようにしてみました。

●Thongchai McIntyre (Bird)/ トンチャイ・メーキンタイ氏
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『Praew』 2013年 5月 10 日号「沖縄特集」の表紙

トンチャイ・メーキンタイさんといえば、「バード」の愛称で知られるタイの国民的スターです。1990年代にタイを訪ねた頃、街でよく彼の曲が流れていたことを思い出します。

トンチャイさんが受賞した理由は、精力的な訪日プロモーション活動への貢献です。昨年2月に「HBC国際親善広場大使」として第64回さっぽろ雪祭りへ参加。3月には沖縄県の招請で人気女性誌『Praew』の表紙撮影のために沖縄を訪問。11月にはタイ代表として東京で開催された『日・ASEAN音楽祭』へ参加するなど、日本での活動の様子がタイでも大きく報じられたといいます。これは日・ASEAN音楽祭で歌うトンチャイさんです。
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Bird Thongchai - ASEAN-Japan Music Festival 2013【動画】
https://www.youtube.com/watch?v=Q1KMd2Paki0

さらに、彼は東日本大震災支援のためにチャリティーソング『明日のために』をリリースし、日本の震災復興支援に貢献しています。以下、チャリティーソングの動画です。一部日本語でも歌っています。

明日のため- Bird Thongchai【動画】
https://www.youtube.com/watch?v=9EmtcjNuLac

今回の表彰式のために寄せられたトンチャイさんの受賞メッセージが、日本政府観光局バンコク事務所のHPのトップページに掲載されています。タイ語のサイトなので詳しい内容はわかりませんが、彼は動画の中で日本の魅力について語っています。

トンチャイさん受賞メッセージ【動画】
http://www.yokosojapan.org/

●ジャルン・ポカパン・フード社

タイを代表する食品会社ジャルン・ポカパン・フード社(C.P.Group)は、昨年日本行きのツアーが当る消費者向けプロモーション『CP Surprise!』を実施し、大ブームとなったそうです。以下の動画はタイのテレビで放映された同社のCMフィルムです。映像を見るだけで、コミカルな楽しさが伝わってきます。

CP Surprise!【動画】
https://www.youtube.com/watch?v=d5zOEexrraU

●タイのホラー映画『Hashima Project』

2013年10月に公開されたタイのホラー映画です。タイの若い男女5人のグループが、超常現象を撮影しようと近年話題の長崎県の歴史的廃墟である軍艦島(端島)を訪ねるというストーリーです。

西日本新聞2013年5月1日によると、昨年4月18日から長崎市の平和公園や軍艦島で同作品のロケが行われたそうです。監督のピヤパン・シューペット氏(42)は、インターネットで見た端島(軍艦島)を一目で気に入り、長崎ロケを決めたといいいます。吹き替えや字幕はないため、これも内容を詳しく知ることはできませんが、これまでタイ人にまったく知られていなかった「軍艦島」の名を認知させたことは確かでしょう。ロケ地を訪れたいと実際に軍艦島に足を運ぶタイ人も出てきており、軍艦島訪問を含むツアーも造成されているそうです。以下は、同映画のプロモーションフィルムです。

Hashima Project 【動画】
https://www.youtube.com/watch?v=jQ8ZaSlVBtg

軍艦島上陸クルーズ
http://www.gunkan-jima.net/

●テレビ番組『MAJIDE JAPAN』

昨年4月よりタイのBang Channelで毎週木曜夜11時から放映されている日本旅行をテーマにした人気バラエティ番組です。受賞の理由は、中国地方(鳥取、岡山、山口)や鹿児島、新潟、群馬など、まだあまりタイで知られていない地域を紹介していることです。
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MAJIDE JAPAN【動画】
https://www.youtube.com/playlist?list=PLRVsMETJm4bXsotg7I45xLtG7famnJI9D

もともとタイでは、日本のテレビ局から版権を買ってグルメ番組や旅行番組を深夜枠で毎日のように流していたそうですが、最近は自前の番組も増えています。もしタイ語がわかれば、出演するタレントさんたちが日本の何に驚き、面白がっているのか、わかって面白いことでしょう。それがタイ人誘客のヒントにつながるに違いありません。

人気旅行ガイドブック『一人でも行ける日本の旅』

訪日タイ客たちの多くは前述したように、個人旅行者です。彼らは日本でどんな不自由を感じているのでしょうか。それを知るうえで参考になるのが、昨年の「Japan Tourism Award in Thailand」受賞作の旅行ガイドブック『一人でも行ける日本の旅』です。
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タイの人気旅行ガイドブック『一人でも行ける日本の旅』

タイ人女性カメラマンのBASさん(本名:オラウィン・メーピルン)が執筆した実践的な旅行案内書です。同書は2タイトルあり、彼女が実際に訪ねた日本全国31か所の観光地について見どころや食事、宿泊施設などを詳しく紹介しています。彼女の撮影したユニークな写真(タイ人には、日本がこんな風に見えるのかという新鮮な発見が多数あり)や女性らしいイラストを多用し、日本語がわからないタイ人でも個人旅行が楽しめるような情報が満載です。

もっとも、タイ語が読めないと、詳しい内容はお手上げです。そこで、今回知り合いのタイ人留学生にこの本を読んでもらい、コメントをもらいました。その結果、見えてきたのは、タイ人の日本旅行にとってどんな情報が有用なのか、でした。これを理解すれば、タイ客の“おもてなし”に役立つはずです。
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以下、タイ人留学生ジャムジュン・モンティチャーさんとの同書をめぐる問答集です。ちなみに、彼女はタイのペチャブリー出身で、都内某大学院で観光学を専攻する若手研究者です。

四季の違いやコーディネイト例を詳しく解説

―『一人でも行ける日本の旅』は面白かったですか?

「はい、この本はよくできているなと思いました。日本語ができないタイ人でも旅行が楽しめるよう、いろいろな工夫があります」。

―それはどんなことですか?

「まず四季の違いの解説です。タイには日本のようなはっきりした四季がありませんから、何月から何月までが冬という基本的なことから、それぞれの季節に何が見られるかなど、わかりやすく説明しています」。

―タイ人に人気があるのはどの季節ですか?

「いちばん人気は春ですね。桜の季節です。タイ人にとって満開の桜は憧れです。次は冬。タイ人は一度雪を見てみたい、触ってみたいと考えているんです。日本旅行にいつ行くべきかを決めるためには、まず四季を理解しなければなりません」。

―これは持ち物チェックリストですね。日本の旅行ガイドブックにもよくあります。右のページは何でしょうか?
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四季を経験したことのないタイ人にとって季節別のコーディネイトは必須

「季節別のコーディネイト例です。タイ人には日本の寒さや暑さの程度がよくわかりませんから、季節ごとにどんな衣類を用意し、何枚くらい重ね着すればいいのかという目安をイラストで説明しています」。

―行く時期を決めたら、次はどうやって行くか、でしょうか。

「最近、タイの旅行会社はさまざまな日本ツアーを販売しているので、そこから選ぶのもいいのですが、いまは観光ビザも免除されているので、若い人たちはツアーに参加せず、個人旅行をしたいと考えています。

ただし、日本を個人で旅行するとき、大変なのは移動手段です。交通運賃がタイに比べて高いので、JRパスのような外国人向け割引券の情報は欠かせません。成田や関空から都市圏へのアクセスや、新幹線に乗って日本各地に行く場合の大まかなルートや所要時間も知りたいです。また東京の地下鉄は複雑なので、うまく乗りこなすためには、自動販売機やスイカの使い方などを知っておくと便利です」

―確かにこの本では、交通の利用法についてたくさんのページを割いているようですね。HyperdiaやJorudanのような乗換サイトの使い方も詳しく説明されています。

「ホテルについても、5ツ星クラスからビジネスホテル、ゲストハウス、旅館、民宿と分けて解説しています。日本に住むタイ人家庭にホームステイする方法も書かれていますよ」。

撮影ポイントや温泉の入り方もイラスト入りで

―タイ人は写真を撮るのが好きだそうですね。それぞれの観光地で、どのポイントから写真を撮ればいいか、そういう細かい情報が必要だと聞きます。

「タイ人は真似するのが大好きなんです。日本旅行に行った友達のFacebookを見て、自分も同じ写真が撮りたい。その点、この本はカメラマンが書いているので、撮影のポイントについて細かく触れているのが人気の理由ではないかと思います」。

―後半には、コンビニの商品や自動販売機の使い方などもありますね。
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コインロッカーやウォシュレットにタイ語の説明があると喜ばれる

「タイにも日本のコンビニはあるのですが、日本でしか売られていない商品も多いので、タイ人は気になるのです。また個人旅行する人に欠かせないなのが、駅のコインロッカーの使い方です。そして、何より日本語のわからないタイ人が知っておきたいのは、ウォシュレットの使用法でしょう」。

―確かに、ボタンがいろいろあってわかりにくいですよね。ここではボタンごとに機能を説明しています。

「いまタイ人がいちばんほしいのはウォシュレットといわれるくらいなんです。ようやくバンコクの新しいショッピングモールなどで導入が始まっていますが、まだ一般的でないので、ウォシュレットと一緒に記念撮影するタイ人もいるほどです。それから日本の和式トイレの座り方がわからないタイ人も多い。実は、日本と逆に座るので……」
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温泉の入り方の説明もこうしてイラストにするとわかりやすい

―タイでは便座のないトイレの場合、扉のほうを向いて用を足すけど、日本の和式トイレは背を向きますものね。なるほど、トイレの使い方は重要ですね。それからこのページでは、温泉に入る作法や浴衣の着方などもイラストでわかりやすく解説しています。

「水着はNGとか、お湯につかる前に掛け湯をするといいとか、お風呂の中で日本酒を一杯というのはダメですよと」。

タイ人は日本のステーショナリーが大好き

―さて、少し話題を変えたいと思います。実はこの『Omiyage』という本は、バンコクの日系出版社が制作した都道府県別のお土産案内です。とても詳しく全国のお土産が紹介されているのですが、実際のところ、いまタイ人は日本でどんなものを買っていくのでしょうか?
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『Omiyage』(Marugoto(Thailand)CO.Ltd刊)
http://www.marugoto.co.th/

「女性の観点でいうと、まず化粧品です。資生堂とDHCのサプリメント。お菓子も大好き。なかでも抹茶味のキットカットが人気です。東京バナナやロイズの生チョコ、タイ人はイチゴが好きなので、イチゴ入りのチョコレートにも目が離せません」

―なぜ抹茶味が人気なんですか?

「なぜでしょう。ほかにも桜味やワサビ味などがありますが、こちらの人気はいまいちです。最近、ブルーベリーチーズケーキ味のキットカット(上・甲信越限定ご当地商品)が出て、これはおいしいですね。キットカットはタイにも売っているけど、少し高いので、日本のコンビニで買えば安いことをみんな知っています。空港でまとめ買いする人も多いです。私もタイに帰省するときは、荷物のほとんどがお土産で、お菓子や化粧品がいっぱい詰まってしまいます。向こうに帰っても着るものはそんなに必要ないからですが、友達に頼まれるので、仕方ないんです」。

―他にも何かありますか?

「日本のステーショナリーが人気です。ふつう人からボールペンをもらっても、何これって感じですが、日本のシャーペンとか、消えるペンをあげるとみんな喜びます。だから、最近のタイ人のツアーでは、ロフトとか東急ハンズに連れて行ってくれというお客さんのリクエストが多いそうです」。

―日本の文房具のどんなところがいいのでしょうか?

「すごくよくできているのと、タイ人は小さくて細かくて、カラフルでいろいろあるという世界が好きなんです。日本のステーショナリーを見ていると、ワクワクします」。

日本旅行ブームを支える背景

―タイ人の感性は日本人と似ていますね。

ところで、タイの皆さんは日本の旅行情報をどのようにして知るのでしょう。どんな話題があると日本に旅行に行きたいという気持ちになるのですか。

「やはり影響力が大きいのはテレビ番組です。日本を紹介する番組は昔から多かったですが、最近はタレントが実際に日本に旅行に行ってレポートする番組が増えています。たとえば、『I am Maru』とか、去年の春から放映している『MAJIDE JAPAN』。おなべの子が日本を訪ねるバラエティです。あの番組、メチャメチャ面白いです。『MAJIDE JAPAN』の影響力はマジですごいです。日本にいても、ネットで視聴できますよ」。

―その番組は、日本政府観光局から訪日旅行促進に貢献した番組として表彰されたんです。みんな観てるんですね。

最後に、モンティチャーさんにタイの観光研究者のひとりとしてご質問があります。いまのようにタイ人が海外旅行にたくさん行くようになってきたのはいつ頃からでしょうか。

「4~5年前からです。LCC(格安航空会社)が飛び始めた頃からで、タイ人の所得がだいぶ上がったことが大きいです。私が大学を卒業した頃は、新卒の初任給は日本円で2万円相当でしたが、いまは約5万円と聞きます。ですから、半年とか1年とかお金を貯めて、海外旅行に行きたいと考える若者が増えています。自分のための1年1回のプレゼントとして。最初は近場の香港やシンガポールに行くけど、本当は日本に行ってみたい」。

―日本旅行ブームの背景には何があるのでしょうか。

「これまでヨーロッパと同じように敷居の高かった日本が観光ビザを免除したり、円安になったりして、行きやすくなったことが、ブームの背景だと思います。なにしろ以前は、特にタイの女性の場合、日本に行くには、半年分の銀行口座の残高証明だとか、いろんな書類を用意しなければなりませんでした。いまはその必要がなくなったのですから。

バンコクなどの都市に暮らす一般の人たちがクレジットカードをつくりやすくなったこともあります。海外旅行ローンも気軽にできるようになった。年に2回のトラベルフェアなどで安いツアーや航空券が買えるようになり、海外旅行のチャンスが広がっているのです」。

実は、今年の「Japan Tourism Award in Thailand」でも、以下の2冊が「訪日旅行の促進に貢献した旅行ガイドブック」として受賞しています。
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●ガイドブック『ガイドやツアーに頼らずに歩く日本』
●ガイドブック『123美味しい関西』

上記2冊はまだ入手していませんが、いずれも個人旅行者向けのガイドブックのようです。さまざまな角度から日本旅行の面白さを伝え、読者に旅を楽しんでもらおうという意欲を感じさせるハイセンスなガイドブックが次々と登場してくるのがいまのタイです。機会があれば、これらの本がどんな内容なのか、確かめてみたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2014-05-01 17:01 | 最新インバウンド・レポート | Comments(0)
2014年 04月 19日

タイの日本旅行番組『MAJIDE JAPAN』の影響力はマジですごいらしい

前回(タイ人留学生とお土産談義~なぜ日本の文房具は人気なのか?)の留学生のコメントにもあったように、タイではさまざまなメディアで盛んに日本旅行を後押しする企画が登場しているようです。では、具体的にはどんな内容の作品なのでしょうか。

参考になるのが、今年2月に開催されたタイのトラベルフェアに合わせて、日本政府観光局(JNTO)バンコク事務所が実施した訪日ツアーを精力的に販売した旅行事業者や、訪日観光に貢献した個人・団体を表彰する「Japan Tourism Award in Thailand」です。2月21日、トラベルフェア会場となるバンコクのシリキット国際会議場で4 回目となる表彰式が行われています。

以下、同事務所の2月24日付けリリースをもとに、「訪日観光に貢献した個人・団体」の受賞者を紹介します。タイのトップスターから映画、テレビ番組、CMなど、実に多様なメディアが受賞していて、興味深いです。それぞれ動画もリンクしているので、作品の概要もわかるようにしてみました。

●Thongchai McIntyre (Bird)/ トンチャイ・メーキンタイ氏

「タイ人なら知らぬ人のいないタイの国民的スター。タイのエンターテインメント界を代表する存在として、デビュー以来約30 年近くにわたり、俳優・モデル・歌手として活躍している。俳優としての代表作は、主役である日本人将校『小堀』役を演じたテレビドラマ『メナムの残照(クーカム)』(1990 年)、同名映画(1996 年)等。歌手としてもヒット曲が あるが、東日本大震災支援のためチャリティーソング『明日のために』をリリースし、タイにおける大震災復興支援に大きく貢献した。2013年は2月にHBC国際親善広場大使として第64回さっぽろ雪祭りへ参加。3月には沖縄県の招請により、人気女性誌『Praew』の表紙撮影のため、沖縄を訪問。また11月にはタイ代表として東京で開催された『日・ASEAN音楽祭』へ参加する等、彼の日本での活動の様子がタイでも大きく報じられ、タイにおける訪日機運を大きく盛り上げた」(リリースより)。

トンチャイ・メーキンタイさんといえば、「バード」の愛称で知られる国民的歌手です。1990年代にタイを訪ねた頃、よく街に流れていたことを思い出します。彼は東日本大震災のためのチャリティーソングを歌っていたのですね。以下、その曲の動画です。一部日本語でも歌っています。

อีกไม่นาน (明日のため) - Bird Thongchai
https://www.youtube.com/watch?v=9EmtcjNuLac

これは昨年11月、日・ASEAN音楽祭で歌うトンチャイさんです。

Bird Thongchai - ASEAN-Japan Music Festival 2013
https://www.youtube.com/watch?v=Q1KMd2Paki0

今回の「Japan Tourism Award in Thailand」表彰式 のために寄せられたトンチャイさんの受賞メッセージが、日本政府観光局バンコク事務所のHPのトップページに掲載されています。タイ語のサイトですから、一瞬面食らいますけど。

トンチャイさん受賞メッセージ
http://www.yokosojapan.org/
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「Praew」 2013年 5月 10 日号沖縄特集表紙

●Charoen Pokphand Foods Public Company Limited

「1978年に創業したジャルン・ポカパン・フード社(C.P.Group)は、現在タイを代表する食品企業であり、世界有数のアグリビジネス企業として、海外でも広く活動を展開している。タイ国内では、常に巧みな消費者向けキャンペーンを実施しているが、2013年の『CP Surprise!』プロモーションでは、同社の加工食品を購入すると、日本行きのツアーが当たるというもので、日本をイメージさせながら消費者の興味をそそる同社の広告は、街の話題となり、同社のプロモーションの成功は、2013年のタイの訪日市場に大きな影響を与えた」(リリースより)。
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以下の動画はタイのテレビで放映された同社のCMフィルムです。これもタイ語なので、何を言っているのかわかりませんが、コミカルな雰囲気は伝わってきます。

CP Surprise!
https://www.youtube.com/watch?v=d5zOEexrraU

●タイ映画『Hashima Project』

「2013年10月に公開されたタイのホラー映画『Hashima Project』(配給:M39制作:ForFilm)は、映画のタイトルとなったハシマが、長崎県内に実在する歴史的廃墟の端島(別名:軍艦島)であり、実際に端島で撮影が行われたことでも大きな話題を呼び、最終的な興行成績は4000万バーツ(約1.2億円)となった。同映画の長崎ロケを支援した長崎県の観光プロモーションに映画製作チームが積極的に協力した結果、ロケ地を訪れたいと実際に軍艦島に足を運ぶタイ人も増えており、軍艦島訪問を含むツアーも造成されている」(リリースより)。
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以下は、同映画のプロモーションフィルムです。

ตัวอย่าง ฮาชิมะ โปรเจกต์ - Hashima Project [Official Trailer HD]
https://www.youtube.com/watch?v=jQ8ZaSlVBtg

タイ人の若い男女5人のグループが、超常現象を撮影しようと長崎県の軍艦島(端島:ハシマ)を訪ねるという設定です。吹き替えや字幕はないため、これも内容を詳しく知ることはできませんが、タイ人にこれまでまったく無名だった「軍艦島」の存在を認知させたことは確かでしょう。

地元紙は、同映画のロケについて、以下のように伝えています。

タイ映画、長崎市でロケ 平和公園、軍艦島などで撮影(西日本新聞2013年5月1日)

長崎市を舞台にしたタイ映画「PROJECT H」のロケが市内であり、4月18日に平和公園(同市松山町)の平和祈念像前で冒頭シーンの撮影が行われた。

監督はピヤパン・シューペット氏(42)で、インターネットで見た端島(通称・軍艦島)を一目で気に入り、長崎ロケを決めたという。県観光連盟は昨年10月、タイ側からのロケ協力の呼び掛けに応じて、長崎市と計約250万円の滞在費助成をした。同連盟の土井正隆専務理事は「映画を通して長崎をPRし、タイからの観光客を増やしたい」としている。

9月にタイで上映予定の映画は、動画サイトなどに投稿するのが趣味の主人公が、仲間5人で軍艦島に撮影に訪れるという内容。主演は日本で「Kitty GYM(キティジム)」の名でデビュー経験もあるピラット・ニティパイサンクンさん(24)。「長崎は初めてだが、景色がとてもきれい。たくさんの人に映画を見てもらいたい」と笑顔で話していた。

世界遺産申請などの話題も出てきた軍艦島ですが、最近は海外からの観光客も訪れているそうです。軍艦島には、以下の航路があるようです。

軍艦島上陸クルーズ
http://www.gunkan-jima.net/

●テレビ番組『MAJIDE JAPAN』

「昨年4月よりBang Channelで毎週木曜夜11時から放映されているテレビ番組『Majide Japan』は、訪日観光に特化して、魅力的な観光地や、観光地へのアクセス方法をタイの視聴者に紹介している。レポーターのウムさんは、中国地方(鳥取、岡山、山口など)や鹿児島、新潟、群馬など、まだタイ人に知られていない日本各地の知られざる観光地を訪れ、個人旅行者向けのアクセス情報も含め、詳細かつ楽しくレポートしているため、番組で紹介した観光地を訪れるタイ人観光客も増えている」(リリースより)。
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これがタイ人留学生モンティチャーさんの教えてくれた日本旅行バラエティ番組です。彼女によると、『MAJIDE JAPAN』の影響力は「マジですごい」らしいです。以下のYou Tubeの動画で彼女もたまに見ているそうです。ちなみにMCのウムさんはおなべだとか。いかにもタイらしいですね。

MAJIDE JAPAN
https://www.youtube.com/watch?v=AskZIWDlpIQ&list=PLRVsMETJm4bXsotg7I45xLtG7famnJI9D

もともとタイでは、日本のテレビ局から版権を買って深夜枠でグルメ番組や旅行番組を毎日のように流していたそうですが、最近は自前の番組も増えているそうです。タイ語がわかれば、出演するタレントさんたちが、日本の何に驚き、面白がっているのか、わかって面白いでしょうね。それがどんなタイ人誘客のヒントにつながるかもしれません。

実は、モンティチャーさんに内容を紹介してもらった旅行ガイドブック『一人でも行ける日本の旅(Japan ญี่ปุ่น คนเดียวก็เที่ยวได้)』は、昨年の「Japan Tourism Award in Thailand」受賞作でした。今年も以下の2冊が「訪日旅行の促進に貢献した旅行ガイドブック」として受賞しています。

●ガイドブック『ガイドやツアーに頼らずに歩く日本(ญี่ปุ่น เที่ยวไม่ง้อไกด์ ไปไม่ง้อทัวร์)』
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「ガイドブック『ガイドやツアーに頼らずに歩く日本』(2013年8月Tip Thai Interbook社より発行)は、日本へ旅行する際に必要な情報を、様々な角度から紹介しており、例えば、東京周辺を5日で旅行する場合、何を用意すればよいか等の情報も網羅している。著者のポンサコーン・プラトゥムウォンさんは、今まで何度も日本を訪れ、数冊のガイドブックを執筆しているだけでなく、3年間日本へ滞在した経験を持つ。著者の詳細な観光案内と豊富な写真により、特に初めて日本を訪れる観光客にとって、非常に役立つ内容となっている」(リリースより)。

●ガイドブック『123美味しい関西(123 อิ่มอร่อยคันไซ)』

「2013年8月に出版されたガイドブック『123美味しい関西』は、大阪、神戸、京都、奈良を中心とする関西地域のレストランについて、寿司、ラーメン、カニ料理、ベーカリーから懐石料理に生鮮市場まで、幅広いジャンルの店を紹介している。著者であるピムマライさんは、自らすべての店を取材し、写真撮影と執筆を担当した。タイでは、まだ日本のレストランガイドは少なく、同ガイドブックは、日本を自分の足で旅行し、美味しい店を自分で選んで訪れたいというタイの個人旅行者のニーズに合致した内容となっている」(リリースより)。

上記2冊はまだ入手していませんが、さまざまな角度から日本旅行を面白がってやろう、楽しんでやろうという意欲を感じさせる企画が、次々と登場するのがいまのタイです。機会があれば、これらの本もどんな内容なのか、確かめてみたいと思っています。
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by sanyo-kansatu | 2014-04-19 11:24 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2014年 02月 23日

100年前、日本は欧州から外客誘致のイロハをこうして学んだ

1912(明治45)年、日本はジャパン・ツーリスト・ビューローを創立し、国家として外客誘致を企図するのですが、当時の日本には西欧の国々から訪れる外国人を心地よく受け入れるためのインフラが、ハード、ソフトの両面でほとんど整備されていませんでした。

そのため、ツーリスト誌においても、外客誘致のために何が必要なのかについて啓蒙するため、西洋諸国をはじめ海外の事情の紹介に努めています。とりわけ創刊号から10号くらいにかけては毎回、外客誘致のための広報機関や宣伝方法、案内所の運営、ツーリスト業者の組合組織のあり方などが提言されています。

それらの海外レポートの多くを執筆しているのは、ジャパン・ツーリスト・ビューロー幹事の生野圑六です。生野は鉄道省の役人で、のちに京浜電気鉄道社長になる人物ですが、1912年夏、ヨーロッパ諸国を視察し、各国の外客誘致の現状について報告しています。彼は日本のインバウンド黎明期に最も積極的に啓蒙活動に取り組んだ論客といえそうです。
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以下、ツーリスト創刊号(1913年6月)「欧州各国に於ける外客誘致に関する施設」という生野の報告を紹介します。これを読むと、今日日本では当たり前になっている外客誘致のための施設や諸施策の導入に向けた取り組みが100年前にようやく始まろうとしていたことがわかります。ニッポンのインバウンドはこの時期、ヨーロッパをモデルに一から形成されていったことが生々しく伝わってきます。

生田圑六がシベリア鉄道経由でヨーロッパ視察に出かけたのは、1912年6月末から9月末にかけてです。ベルリンで開催された国際旅客交通会議に出席するためでした。その目的について、彼はこう記しています。

「欧州に於ける一般鉄道の視察旁々、漫遊外客誘致待遇に関する機関、組織、方法の研究、玆に現場における実況を視察致しましたのでありますが、可也廣くと思ひまして、各国に旅行して、漫遊客の集合するところを出来る丈見物しました。七月上旬には、丁度ストックホルムにオリンピック、ゲームが開会されるので、世界各国の人々が集合して、混雑致すところを見るのには、何よりの好機会と思ひまして、其地に出掛けました」。

その年のオリンピックには日本人選手はわずか2名しか参加していなかったそうですが、オリンピック開催都市となったストックホルムについて彼はこう書いています。

「兎に角、数万人の外国人が入り込んでいるに関はらず、市内秩序整然としているのには感心しました。特にホテル、商店、其他外人が接するのは、待遇上大に注意を払っておりました。日本などではかかる場合、動もすれば目前の利益のみを事として、永遠の利害を打算せず、暴利を貪ると云ふやうなことがあるやうでありますが、之は大に注意しなければならぬことと思ひます」。

生野はそのときスウェーデンのツーリスト・ビューロー本部を訪問し、「スカンジナビア半島では、夏季には外客を誘致することに大に力めて居ることを承知」したといいます。また、コペンハーゲンのチボリパークを訪ね、そこには「各種の音楽、遊戯、カフェ、レストラン等が多数ありまして、夕刻より夜半まで、非常に賑はつて」いること、「概して欧米人は夕食後散歩するとか、音楽を聴くとか、芝居を見るとか云ふような習慣があるので、欧米の遊覧地、海水浴場、其他のリゾートには必ずさう云ふものがあり、又一方にはローンテニス、ゴルフ、其他遊戯、運動の設備」があり、「此點は今後日本でも相当に考慮を要することと思ひます」と述べています。帰国後、彼はツーリスト誌上において、外客誘致のため、日本に西洋的な遊覧地を開発するよう呼びかけますが、このときの見聞がベースになっているものと考えられます。

その後、彼はいったんベルリンに戻り、7月下旬から約1か月間をかけてウィーン、ブダペスト、インスブルック、ベニス、フィレンツェ、ローマ、ポンペイ、そこで折り返してスイスに向かってしばらく滞在し、ニース、モンテカルロ、リオン、パリ、ロンドン、そして再びベルリンに戻り、シベリア鉄道で帰途についています。これはまさに20世紀初頭のヨーロッパに誕生しつつあったモダンツーリズムの最前線をくまなく訪ね歩いたという意味で、ニッポンのインバウンドの歴史にとって記念碑的な出来事といえるでしょう。

この視察で、生野は多くのことに「驚き」「感心」しています。以下、書き出してみます。

・当時のスイスはすでに外客受入態勢が完備していたこと。

「瑞西は何度参りましても實に心地善い處であります。外客に対する遊覧設備の完備せること、案内上の用意の行届いていること、廣告印刷物等の豊富なること、山水風光明媚なると共に、隅々まで清潔なること、停車場などに長さ数間の大写真などが掲げてあること、ホテルの空室の有無を停車場内に掲示する設備などもあること」。

・フランスのエビアンからニースまでモンブラン山脈付近を横断する約700㎞の自動車専用道路が作られていたこと。

「近時欧米に於ける自動車の発達は非常なもので、従て自動車で自国内のみならず、外国に旅行に出掛ける者は甚だ多いのであります。此道路の如きもツーリストを招致するのが目的であります。鉄道会社も夏期は乗合自動車を運転して、一定の賃金を以て旅客の需に応じております。吾国に於いても将来或地方には、自動車道路を設けることなども一の問題であろうと思ひます」。

日本では戦後を待たなくてはならなかった本格的なモータリゼーションによる観光市場の促進が、ヨーロッパではすでに戦前期から始まっていたことがわかります。

・パリには観光客を惹きつけるハードのインフラが充実していたこと。

「巴里には其近郊に風光明媚なる處や、名所旧蹟が沢山ありますが、外客を惹付けるには寧ろ人工的設備、或は人為的方法が興つて力あることと思ひます。即美術博物館の完備せる、公園の大規模なる、市内交通機関の便利なる、市街の美観を保つが為に用意周到なる、皆之であります。暇令ば、公設建造物、廣場、凱旋門、スタチュー、橋梁等一として美術的ならざるはなく、電柱などは一本もなく、電車も高架式は許されて居ません。ホテルの設備は完全にして、而も比較的低廉である。劇場には国立竝に準国立とも称すべきものも四ヶ所を始め、多数あり、名優少なからず、他の諸国に於いては夏時は大劇場は休業する例なるに、巴里は無休で、料理や葡萄酒は廉価にして、而も美味である。尚巴里人はコスモポリタンで、外国人を外国人扱ひせず、吾々の如き異人種でも、白人同様に扱ふ等、其他外国人の為に特に利便を計っていることは、列挙すれば沢山あることと思ひます。之等のことは必ずしも吾国に於いて総て模倣すべきでもないが、又中には大に学ぶべきことがあると思ひます」。

ほとんど手放しの称賛ぶりですが、これが100年前の日本人の正直な実感だったと思われます。

・ヨーロッパでは新聞広告による外客誘致が広く行われていたこと。

「(ヨーロッパ各地で発行される英国のデーリーメール新聞は)英米人の大陸旅行者に中々よく読まるるのでありますが、此新聞社は倫敦竝に巴里の中心に、立派なる案内所を持っておりまして、欧州のみならず世界各国の鉄道、汽船、ツーリスト・ビューロー、ホテル等は固より、静養地、遊覧地、シーズン、遊覧設備、自動車旅行、飛行、学校、貸家、貸別荘等に関する報告を與ふること」。

外客誘致のために、宣伝媒体(メディア)がいかに効果的であるかを生野は知ったのでした。

生野はこうして外客誘致のためのハード面、ソフト面でのインフラ整備やメディア活用のイロハを学んで帰国するのですが、一点のみ、イタリアでの「不快な」体験を反面教師的にこう指摘しています。

「伊太利では一方に流石美術国のこととて、絵画と云はず、彫刻と云はず、建築と云はず、其立派にして豊富なることに驚きましたが、一方には軽微なること乍ら、随分不快なる念を與へられたことがありました。夫は下級鉄道員の吾々に対する態度、行為、或は寺院其他にて付き纏ふ案内者のうるさきこと、馬車の御者の不正直なること等でありましたが、夫に付けて思ひ浮んだのは、我日本の現在漫遊外人に対する関係であります。直接外人に接するものの中には、随分不正直、不親切なるものがあるやう耳にします。是等は日本に於いてツーリストが風景其他より折角得た美威を傷けることがありはせぬか、是に対して吾がツーリスト、ビューローとしても大に注意して、相当の方法を講じなければなりませぬ」。

当時日本ではこういうことが多々あったろうと思います。なにしろ、ときは激動の明治がようやく終わったばかりで、訪日外客数は年間わずか2万人。日露戦争になんとか勝利したものの、まだまだ日本は貧しく、生野の啓蒙する中身が実現できるまでには、相当な時間が必要と考えられていたはずです。

さらにいうと、彼が訪れたわずか2年後、あれほど先進的で華やかに見えたヨーロッパが第一次大戦の戦火に包まれたという事実は、国際観光の歴史を考えるうえで無視できないことです。生野は、のちに「時局と外客誘致策」その他の論説で、当時の国際情勢とインバウンドの関係についてさまざまな提言をしていますが、それはあとで紹介します。

※「歴史から学ぶインバウンド」参照。http://inbound.exblog.jp/i38

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by sanyo-kansatu | 2014-02-23 16:36 | 歴史から学ぶインバウンド | Comments(0)
2014年 02月 05日

外国人ツーリストにとってうれしい地図とは?

前回、ラオスのルアンナムターという小さな少数民族の町をケーススタディとしながら、外国人ツーリストにとって居心地のいい町の必要十分条件とは何かについて考えました。

ひとことでいえば、ツーリストのストレスをできる限り軽減させてくれる施設やサービスがどれだけ揃っているかどうか、です。ルアンナムターはまさにそういう条件を兼ね備えたツーリストタウンでした。

では、はたしてそのような環境が日本で実現できているだろうか。そうぼくは疑問を呈したわけですが、まだまだ実現できているとは思えません。たとえば、最近、外国人向けゲストハウスが急増している台東区周辺や欧米客の多い北海道や信州のスキーリゾート地の一部のように、ある程度実現している地域があるとは思いますが、少ないと言わざるを得ません。

自分の町はツーリストタウンにふさわしい要件をどこまで満たしているだろうか。それを見極めるために有効なのが、わが町のタウンマップの中身の検討です。

ルアンナムターには外国人ツーリスト向けのこんな地図があります。
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これは、あるカフェレストラン兼ゲストハウスが制作したものです。どんな印象をもたれたでしょうか。意外にそっけないな、とお感じになったかもしれません。

確かにこのタウンマップは、パッと見、とてもシンプルにできています。でも、よく見てください。こんな小さな街にも関わらず、ホテルやゲストハウスが27軒、レストランが24軒も載っています。たいした情報量です。さらに、ツーリストオフィス(観光案内所)や銀行、ビザの更新のための入国管理局、警察所、博物館、病院、バスターミナル、空港行きバス乗り場など、ツーリストに必要と思われる情報はほぼ落とされています。

これはあくまでツーリストのための地図であって、地元の人間のためにつくられたものではありません。そうである以上、地図に落としてある情報は、厳選された情報だけに絞り込まれています。

この地図の特徴を整理してみましょう。

①外国人ツーリスト目線で必要最小限な情報に絞り込まれていること。
②掲載する物件の大半は数字とアイコンで記されて、見やすくなっていること。
③縮尺はないが、すっきりとしたシンプルなデザイン。自由に書き込めるスペースがあること。

そのため、外国人ツーリストの目から見て、手っ取り早く町の概要をつかむことができるのです。

初めてその土地を訪れた外国人にとって大事なのは情報量ではありません。むしろコンパクトに厳選されているほど使い勝手がいい。

さて、ここで考えたいのが、日本でつくられた外国人向けの観光マップとの比較です。この地図に比べ、日本の地図は一般的に、情報過多なうえ、肝心なことが抜けていたりするのが目につきます。いったい誰のための地図なのか? 特に無料のマップは広告クライアントの要請でつくられている関係上、ツーリストの利便性より、見かけの広告の訴求効果を重視してしまいがちです。これでは本末転倒といわれても仕方がありませんし、これで本当に広告が読まれているのか、実のところあやしいものです。

広告に頼ったビジネスモデルである以上、ある程度それは致し方ないとしても、工夫のしようはあるはずです。というのも、一般に市販されている日本の旅行ガイドブックの地図はよくできているものが多いからです。それは作り手が、日本人のニーズをよく理解しているからでしょう。ところが、訪日外国人向けになると、とたんにわからなくなる。たいてい日本人用の地図を流用してお茶をにごすケースが多い。そこに問題があるのだと思います。

なぜなら、日本人の好む旅のストーリーを外国人ツーリストに押し付けても仕方がないからです。本来ツーリストマップというのは、自分の目と足で歩いて地域の魅力を発見するための橋渡しであればいい。白地図のように自由に書き込める余白があるくらいがいいのです。

もちろん、ルアンナムターのような小さな観光の町と東京のような大都市では、ツーリストの動線やニーズは違うところがあるでしょう。でも、基本的にツーリストに必要な情報は大きく変わりません。

最近、都内でも外国客の多いホテルでは、自前の周辺マップを用意しているところも多いようです。それらの地図には、ルアンナムターのタウンマップに落とされていたようなツーリストが必要とする情報がすべて記載されているでしょうか。たとえば、怪我や病気、盗難に遭ったときのための病院や警察署、入国管理局などは、欠かせない情報です。  

ホテルはツーリストにとってのベースキャンプです。ツーリストの行動は、すべてホテルが起点となります。それだけに、ホテルを中心に描かれたタウンマップは、ツーリストのストレスを軽減し、旅の面白さを倍増させる重要なツールなのです。こればかりは、いかに通信技術が進んでも、地元を知悉した人の手による地図にはかないません。

せっかくつくっても、それが価値を生むかどうかは、外国人目線でつくられたかどうかで決まります。

外国人目線を理解するためにも、海外の小さなツーリストタウンを訪ねてみることをおすすめします。ツーリストにとってどんな情報があると重宝するか、肌身で実感することができるからです。
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by sanyo-kansatu | 2014-02-05 14:25 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 11月 19日

平壌の高麗飯店で見られるTVチャンネルは?

一般に平壌を訪ねた外国人は、平壌駅の近くにある高麗飯店に宿泊することが多いようです。ホテルのロビーには、さまざまな国籍の人たちが行き交っています(もっとも、数の多い中国からの団体客は大同江の中州に建つ羊角島ホテルに泊まることが多いよう)。日朝首脳会談のとき、小泉首相らが宿泊したのも高麗飯店だそうです。
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客室には、テレビが置かれています。チャンネルは数えると、12ありました。どんなテレビ局の番組が見られるのか、チェックしてみました(2013年8月現在)。
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① 朝鮮中央放送(KCTV)
朝鮮の国営放送局である朝鮮中央放送は、平日は夜間(17:00-23:00)のみ、日曜・祝日は午前中から放送しているようです。

②と③はチェック時には番組が放映されていませんでしたが、朝鮮には他にも「万寿台テレビ(娯楽番組が多い)」や「竜南山テレビ(教養番組、語学番組が多い)」があるそうで、時間帯が合わなかったのかもしれません。

④アルジャジーラ(Al Jazeera)
http://www.aljazeera.com/
カタールの衛星放送局。同国の国営放送とされているが、事実上アラビア語による国際ニュース専門局。

⑤ NHK World(英語)
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/
NHKワールドはNHKの海外向けサービスです。公式サイトの「海外で英語放送を見る」のページを見ると、視聴できる国として北朝鮮は入っていませんが、なぜか高麗飯店では視聴できました。

⑥ 中国中央電視台(CCTV-4 英語)
http://www.cntv.cn/
中国の国営放送局の英語チャンネル。

⑦ 香港フェニックステレビ(香港)
http://v.ifeng.com/live/
香港の衛星放送局。

⑧ 中国中央電視台(CCTV-1 中国語)
中国の国営放送局の総合チャンネル。

⑨ BBC world news(英国)
http://www.bbc.co.uk/news/world_radio_and_tv/
英国BBC放送の国際ニュースチャンネル。

⑩ Утро России (Rossiya 1 ロシア)
http://russia.tv/
ロシアの国営放送局の第1チャンネル。

⑪  RT news(ロシア/英語)
http://rt.com/on-air/
RT(旧称:ロシア・トゥデイ)はモスクワを拠点を置くニュース専門局。

⑫ НТВ МИР(NTV Mir ロシア)
http://www.ntvmir.ntv.ru/
ロシアのケーブルテレビ。ロシアのドラマなどが多い娯楽系チャンネル。

敵国アメリカのテレビ局はさすがに見当たりませんが、かなりの多国籍メディアが視聴できることがわかると思います。そのバランス感覚は興味深いです。

中国系とロシア系が各3チャンネル、欧州系はBBC、そしてアルジャジーラが見られるのも面白いです。NHKワールドが見られるのは、2000年代前半まで、そこそこの数の日本人客が平壌を訪問していたころの名残かもしれません。いまでは、日本人は平壌では圧倒的に少数派です。

一般市民の家庭では、これらのチャンネルは視聴できるとは思えません。金剛山のホテルでは、外国のチャンネルは見られませんでした。

ちょうど平壌に滞在していたころ、中国の中央電視台で薄熙来が山東省済南市中級人民法院で裁判を受ける報道が流されていました。
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平壌にある各国大使館や外交官たちは、どれだけのTVチャンネルを見ることができるのでしょうか。
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by sanyo-kansatu | 2013-11-19 20:19 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2013年 11月 16日

【続編】「ロボットレストラン」はなぜ欧米客に人気なのか?

新宿歌舞伎町にある「ロボットレストラン」はなぜ欧米客に人気なのでしょうか。「やまとごころ.jp」のインタビュー記事で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。

まず、『女戦~ジョセン~』のダンスショーの内容と構成について、もう少し詳しく見せちゃいましょう。ショーは2013年11月現在、以下の5部構成です。ダンサー兼社長の大澤奈美恵さんも語っているように、ショーの内容は随時リニューアルされているそうです。

①女性ダンサーによる和太鼓演奏
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和太鼓から始まるショーって悪くないですね。ジャパネスクな感じで、カッコいいと思います。

②「バーレスク」のショー
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これもなかなかステキです。なぜか大澤さんがポールダンスを披露しているところが面白いです。

③「太古の森」を舞台にしたロボット対戦(森の住人と宇宙から来たロボット軍団との戦い)
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この設定はかなり唐突ですが、女の子がロボットを叩きのめすシーンは爽快です。欧米の女性客の皆さんも一斉にカメラを向けています。女の子が闘う姿は単純にいいですね。

④女性型ロボット「ロボコ」と女性ダンサーの共演
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これが圧巻のダンサーとロボットのダンス共演です。高さ3m超の巨大女性アンドロイド「ロボコ」の腕に抱かれ、踊り狂うダンサーたちの姿に、ぼくはしばし恍惚としてしまいました。

⑤フィナーレ「戦争パレード」:戦闘機と戦車に女の子が乗って踊る
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昔、『タンクガール』という映画がありましたが、そこから生まれたイメージを表現したもののようです。戦闘機の羽にぶら下がるダンサーの子が目の前を通り過ぎる瞬間、ぼくは思わずウォーと雄叫びを上げたくなりました(えーと、ちょっと欧米客のノリが伝染したのかもしれません)。

今回の取材に同行した「やまとごころ.jp」の此松武彦さんも話していましたが、この空間はいわゆる「芝居小屋」に近いと思います。一見派手なパフォーマンスが繰り広げられてるようで、どこか日本の小劇場的な空間が現出しているんです。加えていうと、AKB的な、なんともいえないゆるさもあります。ダンサーの女の子たちは、みんなどこか庶民的な親しみがあって、彼女たちがロボットと一緒にはじけている光景は、まるで近未来の“祭り”のようです。実は、それがロボットレストランの最大の魅力ではないか、とぼくは思います。

さらに、大澤さんも語っていますが、とにかく欧米客の素直な盛り上がりぶりは好感度が高いです。観客には、カップルの姿が目立ちます。親子連れもいます。
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4番目の演目が終わったあとに、記念撮影タイムが設定されています。欧米客の皆さんはロボットたちと記念撮影に興じます。いかにもオタクっぽい人もいます。
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ちなみにお弁当の中身はこんな感じです。東京には欧米のようにショーを観ながら食事を楽しめるエンターテイメントレストランがあまりありません。
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以下は、ロボットレストランの営業担当者が教えてくれた都内のショーレストランですが、ぼくにはどれもそれほど斬新な感じがしませんでした。なぜでしょう。実際に観なくてもだいたい中身がわかってしまうような気がするからです(本当はそうではないかもしれませんけれど)。

六本木香和
http://www.kaguwa.com/
明治時代の遊郭をイメージしたショー

六本木金魚
http://www.kingyo.co.jp/
いわゆるニューハーフショー

ロボットレストランの面白さは、ショーの内容だけでなく、店内の内装の奇抜さにあります。実は、隣接するガールズバー「ギラギラガールズ」に限りなく近い世界があるのも確かです。この界隈にいる客引きに話を聞くと、「ロボットレストランは評価が2つに分かれる」とのこと。きっとガールズバーのお楽しみを期待した客は、ロボットレストランでは裏切られたという感じを持つからでしょうね。

ショーである以上、客は見る側、ダンサーは見せる側。彼女たちとの交流は基本的にないわけですから。しかし、そういう男心をくすぐる期待感も含め、エロとパッションが渾然一体とした歌舞伎町らしさこそ、面白い。見てください。この奇態な空間に白人の女の子が紛れ込んでいる姿はなかなか絵になると思いませんか。
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ギラギラガールズ
http://giragiragirls.com/pc/

ショーの前後で楽しめる待合室もなかなかおかしくていいです。猫耳のウエイトレスも悪くありませんが、注目は給仕を担当するロボットです。
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さて、話は変わりますが、インタビューの中で大澤さんは、オープン時に「日本のメディアより先に海外のメディアが取材に来た」と語っています。欧米メディアは「ロボットレストラン」をどんな風に報じているのでしょうか。以下、ネットで読めるものを紹介しましょう。なにはともあれ、彼らが報じたから、この店は欧米客であふれているのですから。

“Peer into Japan’s raunchy robot restaurant”
(Smart Planet(アメリカ) 1 August 2012)
http://www.smartplanet.com/blog/smart-takes/peer-into-japans-raunchy-robot-restaurant/28069

“The Robot Restaurant in Tokyo”
Nippon News(東京にある外国向け通信社)20 November 2012
http://www.nipponnews.net/en/bizarre/the-robot-restaurant-in-tokyo/

“Japan's raunchy restaurant uses 'fembots' instead of woman to dance for customers – and to watch them perform costs just £25”
Mail Online(イギリス)18 February 2013
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2280465/Japans-raunchy-restaurant-uses-fembots-instead-woman-dance-customers--watch-perform-costs-just-25.html#%E2%80%A6

“Toyko: Food. Fun. Fashion.”
Hollywood on The Potomac(アメリカ) 24 June 2013
http://hollywoodonthepotomac.com/?p=31772

「セクシーアンドロイドが踊る、ロボットレストランは東京のパラダイス―米国記者レポート」
International Business Times(アメリカ) 2013年10月14日
http://jp.ibtimes.com/articles/50152/20131014/335992.htm?utm_source=twitter&utm_medium=official&utm_campaign=jpibtimes

ざっと読んでみて、「ひわい」「みだら」「セックスアトラクション」といった一見ネガティブな評価が目につきます。基本的に、日本の伝統的なイメージ「フジヤマ、ゲイシャ」的な好奇心がベースにあることがうかがわれます。まあいいんじゃないでしょうか。

実際、今年10月に来たというアメリカのWired.comの取材陣は、ショーを観た後、「女性の露出度が激しいのでは? 嫌がるお客様もいるのではありませんか。欧米人から見ると下品と観られるかもしれませんよ」だなんて、ロボットレストランの広報担当者に言ったそうです。確かに、彼女たちの露出度は高いですからね。
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なんだよ、優等生ぶるなよ、とぼくは思いましたね。白人メディアのにわかピューリタン的なスタンスって感じ悪いですよね。でも、その広報担当者ははっきり答えたそうです。「私たちは自分たちのやり方を変えるつもりはありません」と。なんだか頼もしく思ったものです。

もちろん彼らはそれだけの話に終わらせるつもりはありません。基本的には面白がっているからでしょう。『ブレードランナー』や『オースティンパワーズ』『トランスフォーマー』などの自前のハリウッドSF映画を持ち出して、ロボットレストランのショーの魅力を一生懸命解説しようと努めてくれています。『オースティンパワーズ』といえば、おっぱいから機関銃が飛び出すセクシーな女性アンドロイドのfembotsが有名です。そういうバカバカしさの延長線上でロボットレストランを解釈しようとしながらも、ロボットという意匠が放つ「ハイテク・ジャパン」という近未来のイメージと交錯もする。でもやっぱり露出度の高いお色気ダンサーのかわいさもあいまって、とにかくこんなイカした(イカれた?)空間は日本にしかないと観念するというような書きぶりでした。なかには「島国日本の古来からの儀式に思いをはせた」というコメントもあり、これはなかなか鋭いと思いましたね。

英語の記事でいうと、日本で発行されている「WAttension」というフリーペーパーの記事が詳しかったです。きっと海外から来た先入観たっぷりの記者ではなく、日本に住んである程度日本の文化状況に詳しい記者が書いたからではないでしょうか。

WAttension
http://www.wattention.com/

唯一、香港の記事もありましたが、正直いってつまらない内容ですね。もちろん、アジアにもオタクはいるのは確かですが、かの国々のメディアの人たちは、戦後いやというほどアメリカンカルチャーを吸収しつくして開花した日本のポップカルチャーに対する理解、そもそもの現代日本の文化的背景について、まだまだ認識が足りない気がします。きっとまじめすぎるんですね。

「另類日本遊」
壹週刊(香港)2013年10月3日
http://hk.next.nextmedia.com/article/1230/17068490

とはいえこれをもって、ロボットレストランに対する海外メディアの反応は「Cool Japan」だなんて、言っちゃダメだと思います。いえ、まあ言いたきゃ言ってもいいけど、最近このことばがとてもカッコ悪く聞こえるからです。

自己陶酔的なものを感じ、ちょっと引いてしまうのです。だって、もし誰かから「キミ、クールだね」って言われたとしても、そんなのスカして無視するのがフツーでしょう。「ボクってクールでしょ」なんて自分から言うのは、断然カッコ悪いと思う。

ショーが終わったあと、ある西洋人のカップルの若い男性が思わず興奮気味に上げた声が印象的でした。「なんてcrazyなんだ!」。そうです。そういう率直な感想でいいんです。

実は、昨年7月、ロボットレストランがオープンした直後、日本の雑誌メディアもずいぶん取材に来たそうです。その内容については、公式サイトで見ることができますが、ざっと見た感じ、単なるキワモノ扱いなんですね。そういう見方しかできなかったため、日本人の来店は少なかったのではないでしょうか。

ロボットレストラン公式サイト
http://www.shinjuku-robot.com/pc/top.php

ロボットレストランの広報担当者によると、「日本のテレビの地方局に出させていただいこともありましたが、日本ではまだうちの認知度が低いと感じた」そうです。

でもこの日本のメディアの不感症な感じ、よくわかるんです。ロボットレストランの面白さをどう理解していいかわからなかったのでしょう。

それは彼らが外国を旅する人の気持ちを理解していなかったからだと思います。

それはこういうことです。アジアのナイトライフには、バンコクやマニラにあるようなお色気たっぷり、乱痴気騒ぎが付き物です。その世界は、欧米メディアの記者だってよくご存知のはず。しかし、いまの東京にはそういう見世物的な空間が意外に少なかった(外国人が気軽にアクセスできる場所という意味です)。

旅に出ると、人は非日常に惹かれます。だから、ふだんはそんないかがわしい場所に行かないような人でもゴーゴーバーに繰り出すものです。

ロボットレストランはまさにそんな非日常の世界でしたから、欧米客は一斉に足を運んだのです。確かに露出は激しいけど、ニッポンの女の子はどこか幼さも感じられて、セクシーさもきつくない。カップルで訪れた欧米の女性もなんだか許せる気がしたのではないでしょうか。

大澤さんは言います。「なぜ歌舞伎町にオープンしたかというと、日本の疲れたサラリーマンを私たちのダンスで元気づけよう」と。でも、ちょっと内容がぶっ飛び過ぎていたのです。だから、サラリーマンにはウケなかったものの、非日常を求めていた欧米客にウケたのです。

店の外では、欧米客がチケット売り場に並ぶ姿が見られますが、まるでバンコクのパッポン通りのようではないですか。
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今回、ロボットレストランを訪ねて思ったのは、西新宿の焼肉屋『六歌仙』と似ているなあということです。タイ人観光客に大人気の店です。似ているというのは、この店もまったく外国人受けを考えておらず、自らの正しいと信じる道を歩んでいて、それを評価した外国客の口コミで人気となったことです。

訪日外客の誘致も、このあたりにひとつのヒントがあるのかもしれません。

最後に、ロボットレストランの宣伝カーを紹介しましょう。ぼくも新宿3丁目界隈で、この宣伝カーを何度も目撃していました。今では都内のけっこういろんな場所で見られるそうです。2体の「ロボコ」が街を凱旋するきてれつぶりがいいですね。
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そして、㈱ジョセンミュージアム取締役社長兼ダンスチーム女戦(josen)のリーダーで、ショーの演出・構成を手がける大澤奈美恵さんのここだけの個人情報。出身は埼玉県で、前職はアパレルショップで働いていたそうです。とても可憐なニッポン女子です。
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by sanyo-kansatu | 2013-11-16 11:32 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2013年 11月 15日

定説に惑わされるな――激変する中国人の訪日旅行(「週刊東洋経済」2013.10.19号)

b0235153_14225152.jpg中国の国慶節(建国記念日)を迎えた10月1日の正午過ぎ。東京・新宿5丁目の御苑大通りに観光バス4台が列をなした。中から出てきたのは、中国からのツアー客。都心で数少ない、路上駐車できるこのスポットは、ツアーバスの定番の立ち寄り所だ。ツアー客はバスから程近い、中国人が経営する団体客専用の料理店に吸い込まれていった。

減少したのは団体で、
個人旅行客は底堅い


円高是正やビザ緩和の効果で訪日外国人数が過去最高となる中、唯一訪日客が減少しているのが中国だ。2013年1~8月の訪日中国人は前年同期比25・7%減。回復の兆しが見え始めているとはいえ、他のアジア諸国からの順調な拡大とは対照的だ。

だが、中身をよく見ないと実情はわからない。中国人の訪日旅行の実像を理解するには、三つのポイントがある。

まず中国政府の政策動向だ。「中国政府にとって観光は政治の道具」(張廣瑞・中国社会科学院観光研究センター主任)。昨年9月以降の訪日中国人の減少も、「中国当局は訪日ツアーを直接規制しないが、日本に好意的な記事をメディアに掲載させないなどして世論の反日ムードを醸成し、団体ツアーが催行できなくなった」(現地旅行関係者)。日本に代わって韓国へ行く中国人観光客が急増したのも、中国政府による外交利益を勘案した渡航先調整の結果といっていい。

次に、地域による旅行市場の成熟度の違いがある。北京や上海、広東、内陸など、地域別にツアーの実態や旅行者の動向をみれば、中国を一つの市場と考えるのは間違いとわかるだろう。

三つ目が、旅行形態だ。一般にパッケージツアーなどの団体旅行と、個人旅行に分かれるが、内実は大きく異なる。実際に「(減少したの)は団体客で、個人旅行客については底堅さを示した」(平成25年版「観光白書」)。問題は目先の数の増減ではなく、市場の中身なのだ。

では、中国の海外旅行市場でどんな変化が起きているのか。

今年4月、北京で開かれた中国出境旅游交易会(COTTM 2013)に国内外約4000人の旅行関係者が集まった。展示会場には海外62カ国、275の多種多様な団体が出展。アフリカや中近東、中南米諸国の観光局や、極地探検、海外ウエディングを扱うヨーロッパの専門会社、富裕層向けに海外の不動産投資ツアーを提案する企業もあった。

今、世界中が中国の海外旅行市場に注目している。国連世界観光機構(UNWTO)の統計では、12年に中国がドイツやアメリカを抜いて世界最大の海外旅行消費国となった。その額は実に年約10兆円に達しており、今後も拡大が予想される。

フォーラム会場で討議されたのは、「New Chinese Tourist(中国新型旅客)とは何者か?」というテーマである。司会を務めたドイツの観光研究者、ウォルフガング・アルト教授は、中国の新しい観光客像をこう提示する。「中国の海外旅行市場は“洗練とセグメント”の時代を迎えている。新しいタイプの客は他人に自慢するために観光地でスナップ写真を撮るだけでは満足せず、特別な場所で特別な体験をしたいと考えている。中国の旅行業界が今後取り組むべきは、ニッチな商品の開発と新しい渡航先の開拓だ」。

のちに討議された四つのテーマはラグジュアリー旅行の展望、旅行業のSNS活用、ビザ問題、不動産投資旅行。中国市場は、確実に新しい段階へ向かいつつある。

日中関係の影響か、会場に日本からの出展者は見られなかった。確かに、現状では日本で目につく中国人の訪日客は、冒頭で触れたように旅程の大半を移動が占め、立ち寄り先が決まっている「弾丸バスツアー」だろう。だが、実際には、日本旅行を自由に楽しむ個人旅行客は増えている。彼らは街に拡散しており、目に見えにくい存在だが、団体ツアーと違って、日中関係に影響を受けにくい層でもある。両者はまったく別の消費特性を持ったマーケットとしてとらえ直すべきなのだ。

消費者保護の動きや
中国LCC国内参入も


これまで中国の募集ツアーでは、料金を安く設定する代わりに、特定店への連れ込みや現地で多額の追加料金を徴収するのが常だった。その帳尻合わせがなければ、現地手配を請け負う事業者は、ホテルやバス会社に対する支払いに支障をきたすという、まるでギャンブルのようなビジネスがまかり通っていたのだ。

そのため、ツアーに参加した旅行客から当局に多くの苦情が寄せられていた。中国政府もついに消費者保護に着手したのだが、「上に政策があれば下に対策あり」のこの国で、従来の商慣行が一掃できるのか。旅行商品の透明化でツアー価格は上がるため、旅行市場にどんな影響を与えるのか。その行方が気になるところだ。

中国の格安航空会社(LCC)が母体の春秋航空日本が国内路線に参入する動きも、中国人の訪日旅行に影響を与えそうだ。

同社は14年の夏季運行から、成田空港を拠点に国内3路線の運航を開始する計画。上海から寄港地経由で国内線に安く乗り継げれば、今後も伸びる個人客だけでなく、ツアー客向けでもLCCの利用が進むことで、評判の悪かったバスの長時間移動や東京―大阪の「ゴールデンルート」に偏した旅行方法の多様化も進む。いずれ大挙して量販店や免税店に押しかけるという奇態な消費行動にも変化が見られるだろう。

激変する中国の海外旅行市場の攻略は、定説やムードに流されることなく、大局とかの地で起こる潮目の変化を同時に見極める必要がある。
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中国の募集ツアーの大半は「弾丸バスツアー」(新宿5丁目にて)
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中国では富裕層向け旅行誌が書店に並ぶ
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春秋航空日本の国内線は、成田―佐賀、成田―高松、成田―広島の3路線が予定される
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by sanyo-kansatu | 2013-11-15 14:24 | “参与観察”日誌 | Comments(0)