ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 11月 19日

平壌の高麗飯店で見られるTVチャンネルは?

一般に平壌を訪ねた外国人は、平壌駅の近くにある高麗飯店に宿泊することが多いようです。ホテルのロビーには、さまざまな国籍の人たちが行き交っています(もっとも、数の多い中国からの団体客は大同江の中州に建つ羊角島ホテルに泊まることが多いよう)。日朝首脳会談のとき、小泉首相らが宿泊したのも高麗飯店だそうです。
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客室には、テレビが置かれています。チャンネルは数えると、12ありました。どんなテレビ局の番組が見られるのか、チェックしてみました(2013年8月現在)。
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① 朝鮮中央放送(KCTV)
朝鮮の国営放送局である朝鮮中央放送は、平日は夜間(17:00-23:00)のみ、日曜・祝日は午前中から放送しているようです。

②と③はチェック時には番組が放映されていませんでしたが、朝鮮には他にも「万寿台テレビ(娯楽番組が多い)」や「竜南山テレビ(教養番組、語学番組が多い)」があるそうで、時間帯が合わなかったのかもしれません。

④アルジャジーラ(Al Jazeera)
http://www.aljazeera.com/
カタールの衛星放送局。同国の国営放送とされているが、事実上アラビア語による国際ニュース専門局。

⑤ NHK World(英語)
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/
NHKワールドはNHKの海外向けサービスです。公式サイトの「海外で英語放送を見る」のページを見ると、視聴できる国として北朝鮮は入っていませんが、なぜか高麗飯店では視聴できました。

⑥ 中国中央電視台(CCTV-4 英語)
http://www.cntv.cn/
中国の国営放送局の英語チャンネル。

⑦ 香港フェニックステレビ(香港)
http://v.ifeng.com/live/
香港の衛星放送局。

⑧ 中国中央電視台(CCTV-1 中国語)
中国の国営放送局の総合チャンネル。

⑨ BBC world news(英国)
http://www.bbc.co.uk/news/world_radio_and_tv/
英国BBC放送の国際ニュースチャンネル。

⑩ Утро России (Rossiya 1 ロシア)
http://russia.tv/
ロシアの国営放送局の第1チャンネル。

⑪  RT news(ロシア/英語)
http://rt.com/on-air/
RT(旧称:ロシア・トゥデイ)はモスクワを拠点を置くニュース専門局。

⑫ НТВ МИР(NTV Mir ロシア)
http://www.ntvmir.ntv.ru/
ロシアのケーブルテレビ。ロシアのドラマなどが多い娯楽系チャンネル。

敵国アメリカのテレビ局はさすがに見当たりませんが、かなりの多国籍メディアが視聴できることがわかると思います。そのバランス感覚は興味深いです。

中国系とロシア系が各3チャンネル、欧州系はBBC、そしてアルジャジーラが見られるのも面白いです。NHKワールドが見られるのは、2000年代前半まで、そこそこの数の日本人客が平壌を訪問していたころの名残かもしれません。いまでは、日本人は平壌では圧倒的に少数派です。

一般市民の家庭では、これらのチャンネルは視聴できるとは思えません。金剛山のホテルでは、外国のチャンネルは見られませんでした。

ちょうど平壌に滞在していたころ、中国の中央電視台で薄熙来が山東省済南市中級人民法院で裁判を受ける報道が流されていました。
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平壌にある各国大使館や外交官たちは、どれだけのTVチャンネルを見ることができるのでしょうか。
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by sanyo-kansatu | 2013-11-19 20:19 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2013年 11月 16日

【続編】「ロボットレストラン」はなぜ欧米客に人気なのか?

新宿歌舞伎町にある「ロボットレストラン」はなぜ欧米客に人気なのでしょうか。「やまとごころ.jp」のインタビュー記事で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。

まず、『女戦~ジョセン~』のダンスショーの内容と構成について、もう少し詳しく見せちゃいましょう。ショーは2013年11月現在、以下の5部構成です。ダンサー兼社長の大澤奈美恵さんも語っているように、ショーの内容は随時リニューアルされているそうです。

①女性ダンサーによる和太鼓演奏
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和太鼓から始まるショーって悪くないですね。ジャパネスクな感じで、カッコいいと思います。

②「バーレスク」のショー
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これもなかなかステキです。なぜか大澤さんがポールダンスを披露しているところが面白いです。

③「太古の森」を舞台にしたロボット対戦(森の住人と宇宙から来たロボット軍団との戦い)
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この設定はかなり唐突ですが、女の子がロボットを叩きのめすシーンは爽快です。欧米の女性客の皆さんも一斉にカメラを向けています。女の子が闘う姿は単純にいいですね。

④女性型ロボット「ロボコ」と女性ダンサーの共演
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これが圧巻のダンサーとロボットのダンス共演です。高さ3m超の巨大女性アンドロイド「ロボコ」の腕に抱かれ、踊り狂うダンサーたちの姿に、ぼくはしばし恍惚としてしまいました。

⑤フィナーレ「戦争パレード」:戦闘機と戦車に女の子が乗って踊る
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昔、『タンクガール』という映画がありましたが、そこから生まれたイメージを表現したもののようです。戦闘機の羽にぶら下がるダンサーの子が目の前を通り過ぎる瞬間、ぼくは思わずウォーと雄叫びを上げたくなりました(えーと、ちょっと欧米客のノリが伝染したのかもしれません)。

今回の取材に同行した「やまとごころ.jp」の此松武彦さんも話していましたが、この空間はいわゆる「芝居小屋」に近いと思います。一見派手なパフォーマンスが繰り広げられてるようで、どこか日本の小劇場的な空間が現出しているんです。加えていうと、AKB的な、なんともいえないゆるさもあります。ダンサーの女の子たちは、みんなどこか庶民的な親しみがあって、彼女たちがロボットと一緒にはじけている光景は、まるで近未来の“祭り”のようです。実は、それがロボットレストランの最大の魅力ではないか、とぼくは思います。

さらに、大澤さんも語っていますが、とにかく欧米客の素直な盛り上がりぶりは好感度が高いです。観客には、カップルの姿が目立ちます。親子連れもいます。
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4番目の演目が終わったあとに、記念撮影タイムが設定されています。欧米客の皆さんはロボットたちと記念撮影に興じます。いかにもオタクっぽい人もいます。
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ちなみにお弁当の中身はこんな感じです。東京には欧米のようにショーを観ながら食事を楽しめるエンターテイメントレストランがあまりありません。
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以下は、ロボットレストランの営業担当者が教えてくれた都内のショーレストランですが、ぼくにはどれもそれほど斬新な感じがしませんでした。なぜでしょう。実際に観なくてもだいたい中身がわかってしまうような気がするからです(本当はそうではないかもしれませんけれど)。

六本木香和
http://www.kaguwa.com/
明治時代の遊郭をイメージしたショー

六本木金魚
http://www.kingyo.co.jp/
いわゆるニューハーフショー

ロボットレストランの面白さは、ショーの内容だけでなく、店内の内装の奇抜さにあります。実は、隣接するガールズバー「ギラギラガールズ」に限りなく近い世界があるのも確かです。この界隈にいる客引きに話を聞くと、「ロボットレストランは評価が2つに分かれる」とのこと。きっとガールズバーのお楽しみを期待した客は、ロボットレストランでは裏切られたという感じを持つからでしょうね。

ショーである以上、客は見る側、ダンサーは見せる側。彼女たちとの交流は基本的にないわけですから。しかし、そういう男心をくすぐる期待感も含め、エロとパッションが渾然一体とした歌舞伎町らしさこそ、面白い。見てください。この奇態な空間に白人の女の子が紛れ込んでいる姿はなかなか絵になると思いませんか。
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ギラギラガールズ
http://giragiragirls.com/pc/

ショーの前後で楽しめる待合室もなかなかおかしくていいです。猫耳のウエイトレスも悪くありませんが、注目は給仕を担当するロボットです。
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さて、話は変わりますが、インタビューの中で大澤さんは、オープン時に「日本のメディアより先に海外のメディアが取材に来た」と語っています。欧米メディアは「ロボットレストラン」をどんな風に報じているのでしょうか。以下、ネットで読めるものを紹介しましょう。なにはともあれ、彼らが報じたから、この店は欧米客であふれているのですから。

“Peer into Japan’s raunchy robot restaurant”
(Smart Planet(アメリカ) 1 August 2012)
http://www.smartplanet.com/blog/smart-takes/peer-into-japans-raunchy-robot-restaurant/28069

“The Robot Restaurant in Tokyo”
Nippon News(東京にある外国向け通信社)20 November 2012
http://www.nipponnews.net/en/bizarre/the-robot-restaurant-in-tokyo/

“Japan's raunchy restaurant uses 'fembots' instead of woman to dance for customers – and to watch them perform costs just £25”
Mail Online(イギリス)18 February 2013
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2280465/Japans-raunchy-restaurant-uses-fembots-instead-woman-dance-customers--watch-perform-costs-just-25.html#%E2%80%A6

“Toyko: Food. Fun. Fashion.”
Hollywood on The Potomac(アメリカ) 24 June 2013
http://hollywoodonthepotomac.com/?p=31772

「セクシーアンドロイドが踊る、ロボットレストランは東京のパラダイス―米国記者レポート」
International Business Times(アメリカ) 2013年10月14日
http://jp.ibtimes.com/articles/50152/20131014/335992.htm?utm_source=twitter&utm_medium=official&utm_campaign=jpibtimes

ざっと読んでみて、「ひわい」「みだら」「セックスアトラクション」といった一見ネガティブな評価が目につきます。基本的に、日本の伝統的なイメージ「フジヤマ、ゲイシャ」的な好奇心がベースにあることがうかがわれます。まあいいんじゃないでしょうか。

実際、今年10月に来たというアメリカのWired.comの取材陣は、ショーを観た後、「女性の露出度が激しいのでは? 嫌がるお客様もいるのではありませんか。欧米人から見ると下品と観られるかもしれませんよ」だなんて、ロボットレストランの広報担当者に言ったそうです。確かに、彼女たちの露出度は高いですからね。
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なんだよ、優等生ぶるなよ、とぼくは思いましたね。白人メディアのにわかピューリタン的なスタンスって感じ悪いですよね。でも、その広報担当者ははっきり答えたそうです。「私たちは自分たちのやり方を変えるつもりはありません」と。なんだか頼もしく思ったものです。

もちろん彼らはそれだけの話に終わらせるつもりはありません。基本的には面白がっているからでしょう。『ブレードランナー』や『オースティンパワーズ』『トランスフォーマー』などの自前のハリウッドSF映画を持ち出して、ロボットレストランのショーの魅力を一生懸命解説しようと努めてくれています。『オースティンパワーズ』といえば、おっぱいから機関銃が飛び出すセクシーな女性アンドロイドのfembotsが有名です。そういうバカバカしさの延長線上でロボットレストランを解釈しようとしながらも、ロボットという意匠が放つ「ハイテク・ジャパン」という近未来のイメージと交錯もする。でもやっぱり露出度の高いお色気ダンサーのかわいさもあいまって、とにかくこんなイカした(イカれた?)空間は日本にしかないと観念するというような書きぶりでした。なかには「島国日本の古来からの儀式に思いをはせた」というコメントもあり、これはなかなか鋭いと思いましたね。

英語の記事でいうと、日本で発行されている「WAttension」というフリーペーパーの記事が詳しかったです。きっと海外から来た先入観たっぷりの記者ではなく、日本に住んである程度日本の文化状況に詳しい記者が書いたからではないでしょうか。

WAttension
http://www.wattention.com/

唯一、香港の記事もありましたが、正直いってつまらない内容ですね。もちろん、アジアにもオタクはいるのは確かですが、かの国々のメディアの人たちは、戦後いやというほどアメリカンカルチャーを吸収しつくして開花した日本のポップカルチャーに対する理解、そもそもの現代日本の文化的背景について、まだまだ認識が足りない気がします。きっとまじめすぎるんですね。

「另類日本遊」
壹週刊(香港)2013年10月3日
http://hk.next.nextmedia.com/article/1230/17068490

とはいえこれをもって、ロボットレストランに対する海外メディアの反応は「Cool Japan」だなんて、言っちゃダメだと思います。いえ、まあ言いたきゃ言ってもいいけど、最近このことばがとてもカッコ悪く聞こえるからです。

自己陶酔的なものを感じ、ちょっと引いてしまうのです。だって、もし誰かから「キミ、クールだね」って言われたとしても、そんなのスカして無視するのがフツーでしょう。「ボクってクールでしょ」なんて自分から言うのは、断然カッコ悪いと思う。

ショーが終わったあと、ある西洋人のカップルの若い男性が思わず興奮気味に上げた声が印象的でした。「なんてcrazyなんだ!」。そうです。そういう率直な感想でいいんです。

実は、昨年7月、ロボットレストランがオープンした直後、日本の雑誌メディアもずいぶん取材に来たそうです。その内容については、公式サイトで見ることができますが、ざっと見た感じ、単なるキワモノ扱いなんですね。そういう見方しかできなかったため、日本人の来店は少なかったのではないでしょうか。

ロボットレストラン公式サイト
http://www.shinjuku-robot.com/pc/top.php

ロボットレストランの広報担当者によると、「日本のテレビの地方局に出させていただいこともありましたが、日本ではまだうちの認知度が低いと感じた」そうです。

でもこの日本のメディアの不感症な感じ、よくわかるんです。ロボットレストランの面白さをどう理解していいかわからなかったのでしょう。

それは彼らが外国を旅する人の気持ちを理解していなかったからだと思います。

それはこういうことです。アジアのナイトライフには、バンコクやマニラにあるようなお色気たっぷり、乱痴気騒ぎが付き物です。その世界は、欧米メディアの記者だってよくご存知のはず。しかし、いまの東京にはそういう見世物的な空間が意外に少なかった(外国人が気軽にアクセスできる場所という意味です)。

旅に出ると、人は非日常に惹かれます。だから、ふだんはそんないかがわしい場所に行かないような人でもゴーゴーバーに繰り出すものです。

ロボットレストランはまさにそんな非日常の世界でしたから、欧米客は一斉に足を運んだのです。確かに露出は激しいけど、ニッポンの女の子はどこか幼さも感じられて、セクシーさもきつくない。カップルで訪れた欧米の女性もなんだか許せる気がしたのではないでしょうか。

大澤さんは言います。「なぜ歌舞伎町にオープンしたかというと、日本の疲れたサラリーマンを私たちのダンスで元気づけよう」と。でも、ちょっと内容がぶっ飛び過ぎていたのです。だから、サラリーマンにはウケなかったものの、非日常を求めていた欧米客にウケたのです。

店の外では、欧米客がチケット売り場に並ぶ姿が見られますが、まるでバンコクのパッポン通りのようではないですか。
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今回、ロボットレストランを訪ねて思ったのは、西新宿の焼肉屋『六歌仙』と似ているなあということです。タイ人観光客に大人気の店です。似ているというのは、この店もまったく外国人受けを考えておらず、自らの正しいと信じる道を歩んでいて、それを評価した外国客の口コミで人気となったことです。

訪日外客の誘致も、このあたりにひとつのヒントがあるのかもしれません。

最後に、ロボットレストランの宣伝カーを紹介しましょう。ぼくも新宿3丁目界隈で、この宣伝カーを何度も目撃していました。今では都内のけっこういろんな場所で見られるそうです。2体の「ロボコ」が街を凱旋するきてれつぶりがいいですね。
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そして、㈱ジョセンミュージアム取締役社長兼ダンスチーム女戦(josen)のリーダーで、ショーの演出・構成を手がける大澤奈美恵さんのここだけの個人情報。出身は埼玉県で、前職はアパレルショップで働いていたそうです。とても可憐なニッポン女子です。
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by sanyo-kansatu | 2013-11-16 11:32 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2013年 11月 15日

定説に惑わされるな――激変する中国人の訪日旅行(「週刊東洋経済」2013.10.19号)

b0235153_14225152.jpg中国の国慶節(建国記念日)を迎えた10月1日の正午過ぎ。東京・新宿5丁目の御苑大通りに観光バス4台が列をなした。中から出てきたのは、中国からのツアー客。都心で数少ない、路上駐車できるこのスポットは、ツアーバスの定番の立ち寄り所だ。ツアー客はバスから程近い、中国人が経営する団体客専用の料理店に吸い込まれていった。

減少したのは団体で、
個人旅行客は底堅い


円高是正やビザ緩和の効果で訪日外国人数が過去最高となる中、唯一訪日客が減少しているのが中国だ。2013年1~8月の訪日中国人は前年同期比25・7%減。回復の兆しが見え始めているとはいえ、他のアジア諸国からの順調な拡大とは対照的だ。

だが、中身をよく見ないと実情はわからない。中国人の訪日旅行の実像を理解するには、三つのポイントがある。

まず中国政府の政策動向だ。「中国政府にとって観光は政治の道具」(張廣瑞・中国社会科学院観光研究センター主任)。昨年9月以降の訪日中国人の減少も、「中国当局は訪日ツアーを直接規制しないが、日本に好意的な記事をメディアに掲載させないなどして世論の反日ムードを醸成し、団体ツアーが催行できなくなった」(現地旅行関係者)。日本に代わって韓国へ行く中国人観光客が急増したのも、中国政府による外交利益を勘案した渡航先調整の結果といっていい。

次に、地域による旅行市場の成熟度の違いがある。北京や上海、広東、内陸など、地域別にツアーの実態や旅行者の動向をみれば、中国を一つの市場と考えるのは間違いとわかるだろう。

三つ目が、旅行形態だ。一般にパッケージツアーなどの団体旅行と、個人旅行に分かれるが、内実は大きく異なる。実際に「(減少したの)は団体客で、個人旅行客については底堅さを示した」(平成25年版「観光白書」)。問題は目先の数の増減ではなく、市場の中身なのだ。

では、中国の海外旅行市場でどんな変化が起きているのか。

今年4月、北京で開かれた中国出境旅游交易会(COTTM 2013)に国内外約4000人の旅行関係者が集まった。展示会場には海外62カ国、275の多種多様な団体が出展。アフリカや中近東、中南米諸国の観光局や、極地探検、海外ウエディングを扱うヨーロッパの専門会社、富裕層向けに海外の不動産投資ツアーを提案する企業もあった。

今、世界中が中国の海外旅行市場に注目している。国連世界観光機構(UNWTO)の統計では、12年に中国がドイツやアメリカを抜いて世界最大の海外旅行消費国となった。その額は実に年約10兆円に達しており、今後も拡大が予想される。

フォーラム会場で討議されたのは、「New Chinese Tourist(中国新型旅客)とは何者か?」というテーマである。司会を務めたドイツの観光研究者、ウォルフガング・アルト教授は、中国の新しい観光客像をこう提示する。「中国の海外旅行市場は“洗練とセグメント”の時代を迎えている。新しいタイプの客は他人に自慢するために観光地でスナップ写真を撮るだけでは満足せず、特別な場所で特別な体験をしたいと考えている。中国の旅行業界が今後取り組むべきは、ニッチな商品の開発と新しい渡航先の開拓だ」。

のちに討議された四つのテーマはラグジュアリー旅行の展望、旅行業のSNS活用、ビザ問題、不動産投資旅行。中国市場は、確実に新しい段階へ向かいつつある。

日中関係の影響か、会場に日本からの出展者は見られなかった。確かに、現状では日本で目につく中国人の訪日客は、冒頭で触れたように旅程の大半を移動が占め、立ち寄り先が決まっている「弾丸バスツアー」だろう。だが、実際には、日本旅行を自由に楽しむ個人旅行客は増えている。彼らは街に拡散しており、目に見えにくい存在だが、団体ツアーと違って、日中関係に影響を受けにくい層でもある。両者はまったく別の消費特性を持ったマーケットとしてとらえ直すべきなのだ。

消費者保護の動きや
中国LCC国内参入も


これまで中国の募集ツアーでは、料金を安く設定する代わりに、特定店への連れ込みや現地で多額の追加料金を徴収するのが常だった。その帳尻合わせがなければ、現地手配を請け負う事業者は、ホテルやバス会社に対する支払いに支障をきたすという、まるでギャンブルのようなビジネスがまかり通っていたのだ。

そのため、ツアーに参加した旅行客から当局に多くの苦情が寄せられていた。中国政府もついに消費者保護に着手したのだが、「上に政策があれば下に対策あり」のこの国で、従来の商慣行が一掃できるのか。旅行商品の透明化でツアー価格は上がるため、旅行市場にどんな影響を与えるのか。その行方が気になるところだ。

中国の格安航空会社(LCC)が母体の春秋航空日本が国内路線に参入する動きも、中国人の訪日旅行に影響を与えそうだ。

同社は14年の夏季運行から、成田空港を拠点に国内3路線の運航を開始する計画。上海から寄港地経由で国内線に安く乗り継げれば、今後も伸びる個人客だけでなく、ツアー客向けでもLCCの利用が進むことで、評判の悪かったバスの長時間移動や東京―大阪の「ゴールデンルート」に偏した旅行方法の多様化も進む。いずれ大挙して量販店や免税店に押しかけるという奇態な消費行動にも変化が見られるだろう。

激変する中国の海外旅行市場の攻略は、定説やムードに流されることなく、大局とかの地で起こる潮目の変化を同時に見極める必要がある。
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中国の募集ツアーの大半は「弾丸バスツアー」(新宿5丁目にて)
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中国では富裕層向け旅行誌が書店に並ぶ
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春秋航空日本の国内線は、成田―佐賀、成田―高松、成田―広島の3路線が予定される
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by sanyo-kansatu | 2013-11-15 14:24 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2013年 10月 17日

チェンマイはこうして中国人の人気旅行先になった【タイで見かけた中国客 その3】

チェンマイは城壁と堀に囲まれた古都で、タイ第2の都市です。

ここでも多くの中国客を見かけました。バンコクに比べて小さい街だけによく目に付くんです。チェンマイ芸術センターのような観光施設は、どこも中国の団体客でいっぱいです。みんな大声でよくしゃべるので、彼らが現れると一瞬あたりは騒然とします。チェンマイは車こそ多いものの、静かなお寺の街ですから。
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中国本土客を呼び込むための簡体字の表示や看板も街にあふれています。昔はこんなことなかったのに……。久しぶりに来てそう思いました。なにしろ訪タイ外国人数のトップですから、当然のことでしょう。
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中国人だけ1割引というレストランの貼り紙もあったほどです。

中国客急増の背景には、昨年12月12日に中国で公開され、13億元超(約200億円)の大ヒットとなったコメディ映画『Lost in Thailand(人再囧途之泰囧)』の影響があるといわれています。
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Lost in Thailand(人再囧途之泰囧)

タイを舞台にした3人の中国男たちのドタバタ爆笑コメディですが、彼らが外国を自由に移動する姿は、まるでロードムービーです。しかも、中国人の北海道旅行のきっかけとなった中国映画『非誠勿擾』のように、ガイド運転手付きの旅ではありません。主人公たちはタクシーや三輪バイクのトゥクトゥク、そして自らバイクにまたがり、チェンマイの街を疾走していくシーンも出てきます。

非誠勿擾

チェンマイでは同映画のロケ地をめぐるオプショナルツアーも催行されていました。といっても、その内容は、実際のロケ地を訪ねるというものではなく、ゾウのショーを見たり、乗ったりというおなじみのアトラクションに加え、少数民族の村を訪ねたり、竹のいかだに乗って川下りをしたりするというアドベンチャーいっぱいの企画です。わりとよくあるオプショナルツアーですが、映画のイメージに引っかけることで中国客を集めようとしているのでしょう。
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タイとミャンマー、ラオスの3カ国の国境が接するゴールデントライアングルを訪ねるツアーもありました。内容は、タイ最北でミャンマーとの国境ゲイトのあるメーサイや首長族のいる村を訪ねたり、メコン川の遊覧船に乗ったりするものです。
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市内のあちこちにレンタルバイクの店があります。そこには必ず簡体字の説明があります。けっこう事故が起きているのか、その際の対処に関して詳しく書かれています。
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実際、ヘルメットを被ってバイクにまたがるふたり組の中国女性を見かけました。きっと映画に触発されたのでしょう。チェンマイに行ったら、レンタルバイクに乗るものだ、と彼女たちは来る前から決めていたに違いありません。

チェンマイは中国客にとって、ヒット映画が提示してくれたようなちょっとしたアドベンチャーを体験させてくれる海外旅行先となったようです。
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こうしてチェンマイは中国人にとっての新しい人気旅行先になりました。これを旅行業界用語で「デスティネーション」といいます。

デスティネーションというのは、一般の消費者にそこが明確な旅先(目的地)であると広く認知されたときに使われます。無名のうちは、消費者が頭に描く海外旅行地図に存在しないのと同じですが、ひとつのデスティネーションとしてあるイメージが認知されたとき、初めてツアーの候補となるからです。『非誠勿擾』がヒットしたことで、中国の人たちの頭の中にそれまでなかった「北海道」という地名が刻印されたのと同じです。
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『Lost in Thailand』の冒頭で、主人公がタイの空港に降り立ち、タクシーで市内に向かうとき、北京と同じような超渋滞の中、運転手から日本語で話しかけられ、思わず「No,I am Chinese」と英語で否定するシーンがあります。いかにもいまの中国人の心情を表しているようで、「やっぱりなあ」と思ったものです。
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by sanyo-kansatu | 2013-10-17 16:53 | “参与観察”日誌 | Comments(1)
2013年 08月 05日

韓国政府は来年から外国客のホテル増値税10%を返還するそうです

2013年7月17日付の中国メディアの報道によると、韓国政府は来年から外国客のホテル増値税10%を返還するそうです。
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韓国政府による積極的な外国人観光客誘致の取り組みはよく知られていますが、この政策によって、来年から外国人が韓国内の宿泊施設を利用する際、これまで料金に上乗せされていた10%の増値税が差し引かれることで、事実上の値引きとなります。

ただでさえ、日本に比べ価格競争で優位に立つ韓国ですが、昨今の円高是正によって周辺諸国からみて相対的にウォン高状況になっていることもあり、韓国政府の自国の観光産業に対する支援策と考えられます。

この政策をいちばん歓迎したのは、現在訪韓外国人数のトップとなった中国だったことは明らかです。日本ではこの手のニュースは報道するほどの扱いとはみなされなかったでしょうから、その関心ぶりは国策的に海外旅行市場を拡大しようとしている中国らしい反応といえます。

記事によると、これにより韓国政府は増値税としては500億ウォン(日本円で44億円)の減収になりますが、結果的に3000億ウォン(98億円)の観光収入の増収が見込まれるとしています。

中国游客赴韩旅游有望享受酒店退税政策
http://money.163.com/13/0717/11/93VVCOMA00254TI5.html
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by sanyo-kansatu | 2013-08-05 18:00 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 08月 05日

外国人向け富士山ツアー、続々登場! ただし、欧米客向けばかり!?【2013年上半期⑬富士山2】

富士山の世界文化遺産登録で、増加が見込まれる外国人観光客向けの新しいツアー商品が続々登場しています。

「富士山観光 外国人を狙え ガイド付き高級ツアー、乗り放題切符」(産経新聞2013年6月19日)

同記事では、旅行大手のJTBの「ガイド付き高級ツアー」とJR東日本と富士急行の提携による「乗り放題切符」などについて、以下のように紹介しています。

「JTBが6日に発売した高級ツアーは、東京の高尾山から富士山頂までの行程約100キロを、温泉旅館などに宿泊しながら4日かけて歩く。料金は1人34万8千円(2人1室)で、外国語を話すガイドが同行。登山に関する装備なども貸し出す。『ほぼ毎日問い合わせが来る』(同社)という」

これはかなり本格的なFIT向けのツアーといえそうです。ただし、対象は旅慣れた欧米客に限られるのではないでしょうか。

「JR東日本と富士急行は、外国人観光客向けに2日間有効の割引切符を7月1日から10月30日まで販売する。東京都区内から大月駅(山梨県)までのJR往復に加え、富士急行の大月駅―河口湖駅間などが乗り放題となる」

JR東海の運行する富士山眺望を売りにした臨時列車も紹介されています。

「JR東海は、静岡県の浜松駅―御殿場駅間で臨時急行列車を7月下旬~8月上旬の週末に1日1往復させる。国内、海外からの観光客が対象で、20日から購入できる。窓が大きく景色が見やすい車両に変更し、『富士山を雄大に感じられる』(同社)という」

週刊トラベルジャーナル2013年7月15日号も、「外客に優しいFUJI」と題する特集を組み、新しい外国客向け富士山ツアー商品を紹介しています。

まず訪日外客を専門に扱うJTBグローバルマーケティング&トラベル(JTB-GMT)の催行する外国人客向けツアーブランド「サンライズツアー」の中から以下の最新ツアーを挙げています。

「富士山世界遺産ネイチャーガイドウォーキング」
英語ネイチャーガイドが同行するウォーキングツアー。文化・歴史の説明に耳を傾けながら、富士山の自然を堪能。

「富士山山岳信仰サイクリング」
英語インストラクターの同行による富士山周辺サイクリングを含むツアー。レンタルマウンテンバイクにて25km約2.5 時間のサイクリングで世界遺産構成資産(河口浅間神社・富士御室神社)を巡りながら河口湖(構成資産)を一周する。

「富士山ゴールデン周遊」
本宮浅間神社、白糸の滝、忍野八海など世界遺産構成資産を中心に巡る、従来よりも「富士山」にフォーカスしたツアー。富士山の見どころを満喫。

「富士山山岳信仰ウォーク」
世界遺産登録の礎となった「山岳信仰」をテーマに富士山周辺を散策します。道者体験プログラムとして金剛杖と菅笠(すげがさ)を身につけてウォーキングいただくと共に、御師住宅などを巡り、地元在住専門ガイドより富士山の歴史や文化を学ぶ。

※詳しくは、JTBの2013年6月24日のプレスリリースを参照。
http://www.jtbcorp.jp/scripts_hd/image_view.asp?menu=news&id=00001&news_no=1715

こちらは前述の「高級ツアー」に比べると誰でも参加しやすい一般的な内容ですが、やはり基本的に欧米客を対象としたツアーといえるでしょう。

一方、はとバスはこれまで中国語圏を対象にしていたバスツアーを英語圏にも広げる動きを見せています。

「はとバスでは、2005年から中国、台湾、香港などの中華圏市場を対象に中国語によるバスツアーの運行を開始。『富士山五合目と山中湖温泉』などの富士山観光の利用者も順調に増加して、11年には年間で1万人を突破する見通しだったものの、東日本大震災の影響により一時的に需要の低迷を余儀なくされる形となった。昨年から再び中華圏市場の回復が進み、『今年は年間利用者が1万人に迫るペースで推移』(はとバス広報室)

(中略)

これまで中国語だけの対応になっていた富士山観光について、より多くの外国人旅行者に楽しんでもらおうと、7月から英語で案内するバスツアーも2コース設定。人気の高い箱根と組み合わせた『富士山五合目と箱根』、富士山とフルーツを楽しむ『富士山五合目と山梨フルーツ狩り』はいずれも日帰りコースで、出発地の浜松町までは都内主要ホテルからの迎えサービスも付加し、初めて来日する外国人旅行者も参加しやすい工夫が加えられている」

「高速乗り合いバス」大手のウィラートラベルでも、外国人向けの富士山ツアーを始めています。

「ウィラートラベルの外国人向け富士山登山ツアーは、富士吉田市に登録された富士山登山専任ガイドが同行するプランに、登山開始から下山まで英語で通訳のできる添乗員が同行。富士山登山の際のペース配分や歩き方の指導を英語で行うと同時に、高山病など緊急時の応急処置や天候悪化への対処が必要な場合なども英語で説明できるようにした」

日本の旅行会社が新しく企画した多彩な富士山ツアーは、内容的にみてもクオリティの高いものが増えていますが、残念ながらその大半は英語圏の人たちを対象にしたものです。訪日客の4分の3を占めるアジア客の中にも、英語を使える東南アジア系の人たちがいるとはいえ、どこまで彼らにアピールできているかが気になります。

同誌では、台湾の女性客向けの新機軸のツアーについても紹介しています。

「台湾から富士山への旅行は、これまで富士五湖周辺が主な目的地で、一般旅行者に向けた現地の温泉やスパなどレクリエーションを中心としたものがコースに組み込まれている。(中略)台湾近畿国際旅行社では、台湾における会社設立以来さまざまな市場に向け、スポーツ、高級、女性向けといったテーマ商品を売り出している。なかでも富士山ツアーに関しては、台北/静岡直行便を利用した台湾人女性向けの富士山登山5日間のツアーを販売中だ。

このツアーは、ティー・ゲートが運営する『旅の発見』と提携したもので、台湾女性向けの富士登山1泊2日コースである。女性専用とあって、プロの女性登山ガイドと、長年の経験を持つプロの登山隊が同行し、参加者に2重の安心が保障されている。登山コースは、景観の美しい富士宮口5合目から出発し、御殿場方面へ下山する。6合目に到着後、皇太子殿下が下山したことからプリンスルートと呼ばれる道を進み、富士宮口5合目へ戻る。

登山のほか、清水港付近のちびまる子ちゃんランドや、大井川鉄道SL列車に乗車、大型アウトレットがある御殿場にも立ち寄る。台湾人女性旅行客の最も好きな要素ばかりを組み込んだ商品として話題を集めている」

2012年に就航したチャイナエアライン(CI)の台北/静岡線を利用したこのツアーは、同年6月に台湾で営業を始めた近畿日本ツーリストの現地法人の台湾近畿国際旅行社が催行したものです。本来、日本のツアーは国内の観光事情に詳しい日本の旅行会社が得意とするはずですが、中華圏の観光客の多くは、在日アジア系の旅行会社の手配するツアーに参加しているのが現実です。中身より安さに流れてしまうからでしょう。

これからは「安かろう悪かろう」に流れがちなアジア客向けにも、日本の旅行会社の現地法人による新機軸の旅行商品の存在をもっとアピールしていく必要があると思います。いつまでも「安かろう悪かろう」では彼らが気の毒ですから。
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by sanyo-kansatu | 2013-08-05 09:32 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 29日

LCCはアジア客の訪日旅行の促進につながるか?【2013年上半期⑫LCC】

国内初の格安航空会社(LCC)、ピーチ・アビエーションが就航して今年3月で1年を迎えました。ジェットスター・ジャパンとエアアジア・ジャパン(その後、ANAとエアアジアは合併解消。バニラエアとして生まれ変わる)も少し遅れて昨夏営業開始。2012年は日本の空に本格的なLCC時代が到来したといわれています。新聞各紙は、「空の価格破壊」と話題を呼んだ就航1年後のLCCをめぐる国内外の動向を伝えています。
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「LCC新路線で需要開拓 海外勢との競争激化」(読売新聞2013年5月18日)

「国内の格安航空会社(LCC)3社が路線拡充に力を入れている。就航からほぼ1年で認知度も上がり、4~5月の大型連休中の乗客数も順調に推移した。海外勢の参入など競争激化が予想されるなか、新規路線の開設で新たな需要を取り込む考えだ」

●主な国内LCC(2013年7月31日現在)
       ピーチ・アビエーション ジェットスター・ジャパン エアアジア・ジャパン
就航時期     2012.3.1        2012.7.3     2012.8.1
拠点空港   関西国際空港      成田国際空港    成田、中部国際空港 
路線数  10路線(国内7、国際3)  13路線(国内のみ) 9路線(国内5、国際4)
主な路線 関空-新千歳、仙台、那覇  成田-関空、新千歳、 成田-新千歳、福岡、那覇 
     関空-仁川、香港、台北   大分、関空-福岡   成田-台北、中部-仁川
主な新路線 関西-新石垣(6.14)   成田-鹿児島(5.31)   成田-台北(7.3)
       関西-釜山(9.13)     成田-松山(6.11)
使用機体       9機          13機         5機
累計利用者  200万人(5.7現在)  100万人(3.22現在)  50万人(5月末)
搭乗率      80%前後         72.0%        62.6%
遅延率      18.74%         19.77 %       35.84% 
主な株主     ANA        JAL、カンタス  ANA、エアアジア(合弁解消)

「ただ、エアアジアが就航予定の成田-台北先には、シンガポール航空の子会社のLCCが既に就航している。茨城-上海線など国際3路線を運航する中国の春秋航空も、日本の国内線への就航方針を表明した。拡大する日本のLCC需要の取り込みを狙う海外勢との競争は激しくなる」としています。

では、LCCは日本の旅行シーンにどんな影響を与えたのでしょうか。

「LCC就航1年 生活スタイル変わった 沖縄に移住、東京へ“通勤”」(日経MJ2013年3月20日)

「大手航空会社に比べて半分以下の運賃で提供する移動サービスは、消費者のライフスタイルを大きく変え始めた。手軽にアジアや北海道の日帰り旅行を楽しむ若者が増え、沖縄県に移住して都内に“通勤”する人も出てきた」といいます。

同紙では、「長距離移動のコストは下がっている」として、LCCによる長距離移動と既存の交通手段による近距離移動の運賃格差が消滅している事例を挙げています。

・東京~札幌 往復4960円(エアアジア・ジャパン セール運賃の最安値)
・東京~松山 往復3980円(ジェットスター・ジャパン キャンペーン運賃)
・大阪~ソウル 日帰り往復7400円(ピーチ・アビエーション、平日)

・東京~箱根 往復4040円(小田急電鉄特急利用)
・大阪~白浜(和歌山県) 往復9240円(JR特急利用)
・神戸~大分 往復1万円(フェリーさんふらわあ、週末)

「移動コストの安さなら国内の観光地より、距離的に遠いアジアを選ぶ動きがLCCで加速する」「宿泊旅行が中心だった北海道や沖縄、近隣のアジア地域も、近所に行く感覚で旅行する『日帰りエリア』に一変させた」そうです。

そのぶん、「浮いたお金、旅行先で消費」(同上)「日帰りしない人は、安い航空運賃で浮いたお金を節約せずに、ホテルの宿泊や買い物の予算を増やすケースなどが少なくない」と、大手航空会社を利用した場合との運賃の差額分を現地での消費に使うという傾向が出てきたといいます。

LCCの登場は、他の交通機関にも影響を与えています。

「フェリーや高速バス 『移動+α』で対抗探る」(同上)では、大分~神戸を結ぶ大型フェリー「さんふらわあ」の0泊3日往復1万円(週末)の人気を紹介しています。いわばそれは「弾丸フェリー」。LCCと同程度の安さに加え、寝ているうちに目的地まで運んでくれることで、2泊分の宿泊代を浮かすことができます。

その一方、「安さを武器に年間750万人が利用する高速ツアーバスは、LCCの登場で顧客が流出する路線が出てきた」そうです。確かに、LCCと高速ツアーバスは競合関係にあるのかもしれません。

週刊トラベルジャーナルでは、「日系LCC効果を検証する ピーチ就航から1年」(2013年3月11日号)という特集を組んでいます。LCC効果は以下の3点です。
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①「航空市場の変化 若年女性中心に新規需要創出」

ここでは、LCCを誰が利用しているのか検証しています。同誌によると、「LCC利用者のプロフィール」」として以下の5つの属性を挙げています。

・旅行頻度の低い層ほど利用
・収入階層の低い層ほど利用
・20代の利用率が最も高い(40代以上は低い)
・泊数の長い旅行ほど利用
・ひとり旅の利用率が高い(家族旅行は低い)
(公益財団法人日本交通公社「旅行者動向調査2012年」結果速報から)

これは日本のLCCの利用実態を物語る興味深い指摘といえます。

「LCCの先駆的存在であるライアンエアーが新規需要を40%創出したという、いわゆるライアン効果が認められたヨーロッパでは、高頻度で旅行を繰り返すリピーターがLCC需要を支えた。旅慣れた人々がLCCの価値を認め、良さを引き出した。一方、東南アジアでは高速バスからLCCへ需要がシフトし、これまで飛行機を使った旅行に縁のなかった人々が猛然と旅行に出るようになった。

では日本ではどうなのか。(中略)『旅行頻度の低い層ほど利用率が高く、収入階層の低い層ほど利用率が高い』。また年代別では20代の利用率が最も高く、40代以上の利用率は低い傾向も確認された」といいます。

日本人のLCC利用は、現状では、旅慣れた旅行者の利用が多いヨーロッパ型というより、これまで飛行機に乗ることのなかった層の利用率が高い東南アジア型に近いようです。

②「人的流動の変化 就航地の客数増くっきりと」

ここでは、LCCが就航地への観光客数にどんな影響を与えたかを検証しています。たとえば、LCC3社のうち、ジェットスター・ジャパンとエアアジア・ジャパンの2社が運航している成田/新千歳、成田/福岡、成田/那覇の場合、宿泊者統計をみると、それぞれ観光客は増えているようです。

LCC就航による観光客の押し上げ効果について、福岡市議の以下のコメントを紹介しています。

「LCCには、既存の航空会社から需要を奪うというよりは、低運賃を武器に手軽に観光やビジネスを飛行機で利用する機会を作り出し、これまで航空機を利用しなかった人の掘り起こしによる新規需要の創出、市場拡大が期待されている」。

③「ビジネスの変化 新商品開発など商機うかがう」

ここでは、新たに登場したLCCを利用したツアー商品について紹介しています。たとえば、JTBはジェットスター・ジャパン就航と同時に同社利用の北海道や沖縄ツアーを催行。エイチ・アイ・エスも、北海道や沖縄、福岡線を利用した長崎のハウステンボスのツアーを始めているそうです。ネットによる直販がビジネスモデルのLCCですが、現状の日本のマーケットでは旅行会社との連携は欠かせないようです。

さて、順風満帆に見える日本のLCCですが、6月11日、エアアジアとANAの提携解消が報道されました。

「ANA、エアアジアと合弁解消 『日本流』文化の溝埋まらず」(産経新聞2013年6月30日)

「価格破壊で話題を呼んだ日本の格安航空会社(LCC)が岐路を迎えている。ANAホールディングス(HD)と、マレーシアのLCC大手エアアジアが、不振が続く合弁事業の解消で合意した。ANAHDは、両者が共同出資するLCCエアアジア・ジャパンを完全子会社化する。破談に至ったのは、日本流ビジネスをめぐる対立の溝を埋められなかったからだ」。

同紙によると、「合弁解消の理由」として、以下の点を挙げています。

①利用客の低迷
「月別の利用率は、直近でも53%台と採算ラインとされる約7割を割り込んだまま。84%に達する同じANA系のピーチ・アビエーションとは対照的」「主要拠点に成田空港を選んだことが響いた。成田は騒音問題を抱え、夜11時以降は原則、離着陸できない。1日に何度も機体を往復させて利益を絞り出すLCCは、“門限”に戻れなければ翌朝の初便が欠航するなどの打撃を受ける。運航ダイヤが正確な日本の空の旅に慣れた利用客が離れる一つの要因となった」

②コスト削減の手法の溝
「エアアジアなど海外の一般的なLCCは、航空券販売をウェブサイトによる直販にほぼ特化している。ただ、日本では旅行会社経由の販売の比重が大きい。そこでピーチは直販にこだわらず、旅行会社15社に航空券を卸している。エアアジア・ジャパンも1月から、中堅旅行会社のビッグホリデーに航空券を卸し、3月の利用率は76%台に増えた。ところが、『コストがかさむとマレーシアの本社が待ったをかけた』(関係者)こともあり、4月以降の利用率は急降下した」

③サイト運営
「費用節約のためにエアアジアと共通化したサイトは当初、英語が多用されるなど日本人にとって使い勝手が悪かった」

結果的には、「合弁解消は、業績低迷に業を煮やしたエアアジアが持ち出した」といいます。

もっとも、両社の提携解消は“異文化ギャップ”だけが理由ともいえなさそうです。

「日本の空、ガラパゴス化? LCC時代 世界に広がる航空再編」(日本経済新聞2013年7月10日)

同紙は、海外に比べ、「日本のLCCの旅客の伸びはいまひとつ」と指摘し、その理由をこう述べています。

「(日本のLCC旅客の伸びに)弾みがつかない理由の一つは空港の制約だ。日本はLCCの育成策を打ち出したのが航空自由化推進を宣言した09年以降。しかも、羽田空港の発着枠がほとんどLCCに与えられないまま政策が進められた。東京から遠い成田や地方空港だけでは経営は難しい」。

これはエアアジアがANAとの提携を解消した理由と重なります。

一方、海外に目を転じると、世界の航空再編のなかで、LCC台頭の動きが最も著しいのはアジア・オセアニアだといいます。もともとオーストラリアのカンタス航空から生まれたジェットスターはいまやカンタスの売上高を上回る規模に成長しているとか。レガシーキャリアからLCCへの規模逆転が起きているというのです。

「ボーイングの予測によれば、アジアの旅客需要は32年まで毎年6.5%と最も高いペースで膨らむ。LCCがけん引役となり、南アジアや東南アジアではLCCの比率が現在の5割超から7割程度まで伸びる可能性がある」といいます。

だとすれば、アジア・オセアニアのLCCは今後日本への乗り入れを加速することでしょう。それは、アジア客の訪日をますます促進することにつながると考えられます。

実際、今年3月に開港した沖縄県の新石垣島空港には、台湾からすでにLCCの新規就航が始まっているようです。

「新空港開港で石垣にインバウンド客は増えるのか?」を参照。

また以前、本ブログでも、訪日韓国人や台湾人が増えた背景として、円安に加えて、LCCの相次ぐ就航もあることを「LCC就航拡大 韓台から若者来やすく」(日本経済新聞2013年6月9日)という記事を通して紹介したことがあります。今後、東南アジア発の新規のLCCが就航すれば、東南アジア客にも同じような動きが起こることでしょう。

※「「訪日韓国人 回復進む 円安ウォン高で拍車」【2013年上半期⑤韓国客】」を参照。

最後に、主なアジア・オセアニアのLCCグループを挙げておきます。

●エアアジア(マレーシア)  
エアアジア・タイ、エアアジア・インドネシア、エアアジア・フィリピン、エアアジア・インディア、エアアジアX (エアアジア・ジャパンはANAとの合弁解消)
●ジェットスター航空(オーストラリア)
  ジェットスター・アジア、ジェットスター・パシフィック、ジェットスター・ジャパン、ジェットスター香港
●タイガー・エアウェイズ(シンガポール)  
  タイガー・オーストラリア、マンダラ航空(インドネシア)、SEエア(フィリピン)
●ライオン・エア(インドネシア
  マリンド(マレーシア)

これらに中国や韓国、台湾、タイ、そして日本のLCCが加わることで、日本のインバウンドの中身も変わっていくことになるのでしょう。

【追記】
2013年7月30日、ANAホールディングスは先ごろエアアジアとの提携を解消したエアアジア・ジャパンを12月末から新ブランドで運航すると発表しました。

「LCC 2年目の一手」(朝日新聞2013年7月31日)

「日本の空にLCC3社が登場して1年。各社とも、先行した海外流の安さだけでない日本型を模索する」

同紙では、エアアジアとの提携を解消した背景を紹介しつつ、「ビジネス客は羽田の方が厚いが、成田は内外のリゾート路線で利用が見込める。国際線は単価が高い」というANA執行役員のコメントを紹介し、同社の新ブランドへの切り替えの方向性を伝えています。

そして最後にこう付け加えています。
「『LCC元年』とされた12年度、国内線の旅客数は6年ぶりに増えた。ただし3社のシェアは計3.2%で、3割超の欧米やアジアにはまだ遠い」
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by sanyo-kansatu | 2013-07-29 17:19 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 27日

富士山の世界遺産登録は訪日外客にも確実に影響を与えています【2013年上半期⑪富士山1】

「富士山が世界遺産になるらしい」と最初に報道されたのは、今年4月末のことでした。

世界的な知名度からしても、富士山は日本で最初に世界遺産になってもおかしくないと多くの人が感じていたでしょう。それは、外国の人たちにとってもそうだったようです。以下、登録をめぐる報道を書き出してみます。
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「富士山 世界遺産へ 信仰 芸術 日本文化育む」(朝日新聞2013年5月1日)

「国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に、『富士山』(山梨、静岡両県)が登録される見通しとなった。世界遺産委員会の諮問機関が勧告した。共に登録を目指している『武家の古都・鎌倉』(神奈川県)は、日本が単独で世界遺産に推薦したものでは初の『不登録』の勧告で明暗が分かれた。6月16日からカンボジアのプノンペンで開かれる世界遺産委員会で最終的に決まる」

同紙では、「富士山 積年の正夢 『日本人の心』感無量」と「20年にわたって市民らが進めてきた活動」が認められた関係者らの喜びを報じています。

それからしばらく後、プノンペンで開催された委員会で、ついに富士山の世界遺産登録が正式に発表されました。6月下旬のことです。

「富士 万感の絶景」(朝日新聞201年6月23日)

「土壇場の逆転劇だった。22日、正式に世界遺産入りが決まった富士山。事前の除外勧告を覆し、三保松原の登録も認められた」。

同紙では、各国の代表団が三保松原を登録に入れるよう応援演説してくれた様子をこう報じています。

「三保松原の逆転登録を導いたのは、20分に及ぶ各国からの応援演説だった。口火を切ったのはドイツ代表団だ。『三保松原はすばらしい景観。富士山と一体とみなすべきだ』。するとメキシコ、セネガル、タイが賛同。マレーシアの代表団が『富士山の精神文化を語るうえで三保松原は重要』と述べると、カンボジア、ロシア、フランス……と続いた。三保松原から望む富士の風景が画家にインスピレーションを与えた功績をたたえる意見陳述もあった。それぞれの代表団は、英語、仏語、スペイン語などで、たどたどしい発音ながら『ミホノマツバラ』を連呼し、登録に含めることを訴えた。賛同の意見は、日本を除く世界遺産委員会の委員国20カ国のうち19カ国からあり、登録を決定づけた」。

こうなると富士山観光が俄然注目されることになります。

「富士山ツアー有頂天 はとバス予約倍増」(毎日新聞2013年6月25日)

「世界文化遺産登録を機に、富士山(山梨、静岡県)の登山・周遊ツアーが好調だ。世界遺産の構成資産を巡るコースや、英語が話せる添乗員が付くプランを新設するなどツアー会社も知恵を絞る」

「首都圏発の富士登山ツアーを主催する『はとバス』(東京都大田区)。7月からの富士登山ツアーの予約は昨年の9割増し。広報担当者は『週末を中心に満席もある』と話す。7月からは、忍野八海→旧外川家住宅→白糸ノ滝→富士山本宮浅間神社の4カ所の構成資産を巡る新ツアーを実施する」

「富士山 路線バス売り込め 富士急『世界遺産めぐりルート』」(日本経済新聞2013年7月9日)

「富士急行は12日から『世界遺産めぐりルート』の統一名称で路線バスの需要拡大を目指す。全路線が2日間乗り放題となる切符を発売。富士急ハイランド(富士吉田市)を起点に5カ所の構成資産への立ち寄り可能な循環路線を新設した」

ちなみにぼくの地元のバス会社でも、富士急ハイランドへの往復の高速バスと入場券をパックにした「得Q PACK」のチラシを出していました。「世界遺産」をドーンと打ち出しています。
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一方、登山者の急増による環境破壊や事故を懸念する声もあります。

「弾丸登山 富士悩む 徹夜登頂 事故の恐れ 入山制限の動き」(朝日新聞2013年6月26日)

「来月1日の山開きに向け、山梨、静岡両県などが『弾丸登山』(山小屋などに泊まらず徹夜で登り下りする0泊2日の登山者を指す)の自粛を呼びかけている」。

同紙によると、富士吉田口からの昨年7~8月の登山者は25万人でしたが、今年は30万人を超すと予測されているそうです。7合目以上の山小屋は14軒で宿泊可能なのは3000人。収容能力からすれば、夏山シーズン中の登山者は18万人余りが適正とする意見もあるそうです。そんなこといっても、確実に増えるであろう登山者をどう管理するか、これは大変そうです。

ところで、富士山の世界遺産登録は訪日外客にも確実に影響を与えています。先日、そう話してくれたのは、アジアインバウンド観光振興会(AISO)の王一仁会長です。

「この夏、東南アジア方面からの訪日客が増えてていすが、そのほとんどの人たちが世界遺産に登録された富士山に行きたいと考えているはずです。実際、私の会社でもシンガポール客向けの富士山1泊2日のオプショナルツアーを企画しています。日帰りにしないのは理由があります。彼らは、富士山に登りたいというより、富士山の見える温泉旅館でゆっくり一泊したいと思っているからです。

この夏、このままだと富士山周辺はバスで大混雑になることが予想される。せっかく訪ねた富士山のイメージが悪くなってしまうのが心配です。

特にバスが集中する五合目には、私の会社のツアーでは行かないことにしています。五合目からの眺めが必ずしもいいとはいえないからです。富士山はもっと遠くから眺めたほうが美しい。そういう眺めのいいポイントを選んでお客さんを案内する必要があると感じています」。

東南アジアの人たちは山歩き、いやそもそも外で歩くことがあまり好きではありません。だとすれば、場所や季節によってさまざまに異なる富士山のビューポイントを複数取り入れて案内するといいかもしれません。

プノンペンで富士登山に直接関係のない三保松原を世界遺産登録に導いてくれた世界各国の皆さんの評価から考えても、登山にこだわらず、外国人客向けに眺望に特化したツアーを企画するのは意味があることではないでしょうか。前述の25もあるという世界遺産の構成資産からそれぞれの国の人たちが好みそうなポイントを選んで周遊する特設コースを企画してみる、なんてのはどうでしょう。

どうやらそれは外国人客だけにいえることではないようです。混雑する頂上までの登山をやめて、「ふもと登山」を楽しむというスタイルもあるそうです。

「『山麓の魅力も楽しんで』と、富士吉田市がアピールするのは『ふもと登山』だ。市は7月に4回、富士山の標高に掛けて計223人限定の1人3776円のツアーを企画。山麓の史跡や原生林に親しみながら登り、5合目の山小屋で1泊、頂上には行かず、6合目でご来光を拝んで帰る。担当するJTBコーポレートセールス(東京都新宿区)は『問い合わせが多く、半分が予約で埋まった』と話す」(毎日新聞2013年6月25日)

今年の夏は富士山周辺が相当騒がしくなることは避けられないようですね。富士山観光の新しいスタイルやさまざまなバリエーションがこれからますます求められることになるのだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-27 18:15 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 27日

スカイツリーは外国人客を呼び込めるのか?【2013年上半期⑩ツリー効果】

東京スカイツリーが2013年5月22日で開業一周年を迎えました。各紙は当初の想定以上ににぎわいを見せているスカイツリー現象について、人気の背景や経済効果について分析しています。
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「ツリー人気衰えず 22日で開業1年 来場者はディズニーの1.8陪」(読売新聞2013年5月20日)

「東京スカイツリー(東京都墨田区、634m)が今月22日に開業から1年を迎える。(ツリーと商業施設『東京ソラマチ』に)想定を大きく上回る5000万人以上が訪れた」「事前予測の3200万人を大きく超え、昨年度の東京ディスニー・リゾートの1.8倍になる」と報じています。

人気の理由について、事業主体の東武鉄道は「震災の1年後に開業して、復興の象徴のように好意的に報道された。強風での休業が年間3日で済んだことも大きい」とみているそうです。

●主な観光地の最新の年間入場者数

東京スカイツリーと東京ソラマチ 5000万人(うちツリーは630万人)
六本木ヒルズ 4100万人
東京ディズニー・リゾート 2750万人
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 975万人
東京タワー 243万人

さらに、「東京ディズニーランドの30周年、渋谷ヒカリエやお台場のダイバーシティ東京プラザの開業が重なって、東京全体が観光地化し、相乗効果が生まれている」というJTB関係者のコメントを挙げています。これら話題の商業施設はすべて震災の翌年にオープンしているんですね。

「スカイツリー1周年 笑顔も突き抜けた」(産経新聞2013年5月23日)は、「国内随一の集客力を誇り、『観光ニッポン』の新しいシンボルとなった東京スカイツリー(東京都墨田区)。『訪れる人たちみんなが笑顔』。開業1周年の22日に来た観光客はこう印象を語る。浅草など周辺の観光地では客足が伸びるなどの相乗効果も生まれている。深刻化していたごみ問題もマナー向上で改善しつつあり、ツリーのにぎわいは2年目も続きそうだ」と報じています。

また同紙でも、お台場のダイバーシティ東京プラザや渋谷ヒカリエなど同じ年に開業した商業施設がともに当初の目標を超える売上や来場者数を見せたことを「スカイツリーとの相乗効果」として分析。「スカイツリーの開業以降は観光地としての魅力が東京全体でアップした」と指摘しています。

東京の観光シーンに与えたスカイツリー効果については、「下町ツリー 首都席巻 観光、東京一人勝ち」(朝日新聞2013年5月23日)でも報じられました。

同紙で「東京一人勝ち」とコメントしているのは、はとバスの広報室長です。同社では展望デッキ入場券付きツアーが好評だといいます。

ところが、このにぎわい、日本人にだけしか共有されていないようにも見えます。そう、ツリーを訪れる外国人客はそれほど多くないかもしれないのです。

「スカイツリー特需 観光業界“ご満悦”」 (産経新聞2013年5月23日)によると、「東京スカイツリーが予想を超える人出を記録する中、関連業界が『スカイツリー特需』に沸いている。事業主体の東武鉄道だけでなく、ホテルなど幅広い企業が恩恵を受けている」「波及効果も大きい。はとバスが運行し、他の観光スポットと合わせて展望台を訪れるコースは、平均乗車率が約9割で、スカイツリーを含まないコースの6割を大きく上回る」としていますが、その一方で「外国人観光客は現在来場者の1割に満た」ないというのですから。

もっとも、今年に入って浅草には外国人客が増えてはいるようです。「浅草『昭和のにぎわい』 雷門通り路線価9%上昇」(朝日新聞2013年7月1日)では、浅草の雷門通りが東日本の路線価アップのトップになったと別の観点からツリー効果を報じ、さらに「この1年で外国人観光客が急激に増えた。浅草が一番にぎやかだった昭和30年代初めに戻ったようだ」という浅草寺参道仲見世で土産店を営む女性の声を紹介しています。

しかし、浅草に外国人客が増えたことは、ツリー効果とはそれほど関係ないのではないでしょうか。

ぼくがそう考える理由として、訪日客の4分の3を占めるアジアの新興国における近年の高層建築ラッシュがあります。

朝日新聞2012年4月25日の折り込み特集「GLOBE 巨大建築」によると、2012年、世界一高い建築物はドバイのBurj Khakifa(828m 2010)です。以下、トップ10は以下のとおりです。

2位 Taipei 101(508m 2004 台北)
3位 Shanghai World Financial Center(492m 2008 上海)
4位 International Commerce Center (484m 2010 香港)
5位 Petronas TowerⅠ(452m 1998 クアラルンプール)
5位 Petronas TowerⅡ(452m 1998 クアラルンプール)
7位 Zifeng Tower(450m 2010 南京)
8位 Willis Tower(442.1m 1974 シカゴ)
9位 Kingkey 100(441.8m 2011 深圳)
10位 Guangzhou International Finance Center(439m 2010 広州)

現在世界の高層建築のトップ10は、1970年代にシカゴで建てられたWillis Towerを除き、すべてアジアの新興国で建てられたものなのです。

それは何を意味するのか。アジアの新興国から日本を訪れる観光客は、普段から高層建築を見慣れていることから、スカイツリーに対してそれほど特別な魅力を感じていないかもしれないと考えられるのです。

多くの日本人がスカイツリーを「復興の象徴」として見るような、ある意味情緒的な捉え方を、外国人客に期待しても無理があります。このあたりの認識のズレや温度差は、いたし方ないことといえるでしょう。

前述の朝日新聞2013年5月23日では「アジア客誘致へPR」として「訪日外国人の誘客を進める観光庁は、スカイツリーの開業を、震災やウォン安の影響で落ち込んだ韓国からの観光客が増える『切り札』と位置付ける」「韓国の大手テレビ局を東京に招待。平日夜の情報番組で、スカイツリーと東京の魅力を放送してもらう」「中国や香港、台湾の旅行会社なども日本に招き、スカイツリーの魅力を押し出したツアーをつくってもらうことも予定している」とあります。

「観光庁の担当者は『欧米人は伝統的な日本を好むが、アジア人は都会的な日本が好きでスカイツリーはPRにピッタリ』と意気込」んでるそうですが、はたしてそうなのでしょうか。アジアの新興国の人たちから見て、時代の最先端を日本に求めるような感覚は、もしかしたらもう薄らいでいるかもしれないからです。むしろ日本の普段着の生活文化の質の高さに、彼らはだんだん気づき始めているということなのではないか。

そういう意味では、彼らがスカイツリーをどう見ているかという視点を加え、もう少し別の観点からアピールポイントを付加しないとアジアの新興国の人たちを納得させるのは難しいのでは、と思います。

ところで、なぜ上記のランキングにスカイツリーが入っていないかというと、「ランキングをつくった『高層建築と都市居住に関する国際委員会』(CTBUH、シカゴ)によると、高さ比較の対象は『全体の高さのうち少なくとも半分が実用フロアのビル』」だからだそうです。展望台などわずかな実用スペースを持たないスカイツリーはランキングから除外されているのです。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-27 15:44 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2013年 07月 27日

東北に外国人客は戻ったのか?【2013年上半期⑨震災2年後の東北観光】

「東北観光もっと来て 昨年の6県宿泊客 10年比で8割」(朝日新聞2013年3月9日)
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「東北6県を2012年に観光で訪れ、宿泊した人の数が、東日本大震災前の10年より2割ほど少ない水準にとどまったことが8日、わかった。全国的には震災前の水準にほぼ戻っているのとは対照的だ。震災や原発事故の影響が残るが、県によっても差は大きい」といいます。

●東北6県と全国の観光宿泊客(観光庁調べ)

          2012年     10年比    11年比
全国     2億1285万人  ▼1.6%      2.6%
東北6県     1708万人  ▼19.0%   ▼5.9%
青森県       142万人  ▼8.9%    ▼8.2%
岩手県       288万人  ▼0.2%     1.6%
宮城県       369万人  ▼13.8%    0.8%
秋田県       142万人  ▼45.6%   ▼26.9%
山形県       293万人  ▼13.3%   ▼3.5%
福島県       472万人  ▼25.6%   ▼7.7%

観光庁の統計によると、2012年の観光宿泊客は東北6県で延べ約1708万人で、震災前の10年比で19.0%少ないことがわかります。県によってばらつきがあり、特に秋田県の回復の遅れが目立ちます。

「東北の回復の遅れは、東京電力福島第一原発事故による風評被害が続いているとの見方が強い」とのこと。まあそうでしょうね。

ところが、GWが近づくころになると、報道のトーンが大きく変わっていきます。

「東北 観光客戻る 福島・宮城、連休の宿泊2~3割増 復興応援・歴史ツアー人気」(産経新聞2013年4月26日)

「東日本大震災で被災した東北の観光が本格的に回復してきた。5月の大型連休の予約宿泊数は福島県や宮城県で前年を2~3割上回り、震災前の2010年の水準を超える可能性もある。人気を取り込もうとツアーバスを増やす企業もある。円安による旅行需要の国内回帰を追い風に、被災地ツアーや歴史ブーム、格安航空会社(LCC)がけん引役になっている」というのです。

●2013年GW東北各県の宿泊予約数前年度比(楽天トラベル調べ)

青森県 5%増
岩手県 10%増
秋田県 5%増
山形県 15%増
宮城県 21%増
福島県 33%増

けん引役として挙げられるのが「被災地を視察するツアー」です。

「東日本旅客鉄道は東京から宮城県の石巻・女川などへ行く3コースの復興応援バスツアーを4月から増発。月1回の実施だったのを毎週末に増やしたが、すぐに満席になる状態だ。エイチ・アイ・エスは宮城県南三陸町でワカメなどの養殖作業を体験するツアーが好調で、バスの台数を増やした」そうです。

さらに、東北を舞台にした歴史ドラマの人気も観光客を集めているようです。

「観光再生 『八重』が後押し 会津若松盛況」(日本経済新聞2013年4月27日)

「東京電力福島第1原子力発電所事故の風評被害に悩む福島県に観光客が戻ってきた。事故から2年が過ぎ、放射線への過度な懸念が和らいでいることに加え、1月にスタートしたNHK大河ドラマ『八重の桜』の誘客効果により、舞台である会津若松市に観光客が押し寄せている。福島県は2013年、観光立県としての復活を目指す」

同紙では「日銀福島支店の試算によると、NHK大河ドラマ『八重の桜』の県内経済への波及効果は113億円に上る」「実際、誘客効果は県内各地に及ぶ。福島県が県内9カ所を独自に調査したところ、昨年9月以降の観光客数はおおむね8~9割に達した。会津若松市では1月、2月と震災前を上回っており、この数字が県全体をけん引していることを考慮しても、かなりの回復ぶりといえる」と解説しています。

●福島県で集客が回復する県内施設と7月までの行事

【会津若松市】
・鶴ヶ城天守閣…3月の来場者数は5万人超
・大河ドラマ館…1月オープン、10万人突破
【福島市】
・東北六魂祭…6月1、2日に開催
【相馬市・南相馬市】
・相馬野馬追…7月27、28、29日に開催
【いわき市】
・アクアマリンふくしま…入場者数は震災前の6~7割に回復

ドラマ効果は大河だけではないようです。

「じぇじぇ! 観光客倍増 『あまちゃん』舞台 岩手・久慈へGW11万人」(東京新聞2013年5月10日)

「NHK連続テレビ小説『あまちゃん』のロケ地となっている岩手県久慈市でゴールデンウィーク中、市内の観光施設などの利用者数が前年比二倍の約十一万五千人に上ったことが市の調べで十日、分かった」

「『あまちゃん』効果で、北海道や沖縄など全国から観光客が押し寄せたためで、ロケ地の一つ、海女センター周辺では車の乗り入れ規制を実施した。市の担当者は『海女の実演がある夏にはさらに増えそう』と予想」しています。

同じことは 「岩手観光 朝ドラ効果」(読売新聞2013年5月14日)でも報じられていました。この時期、NHKの大河と朝ドラ効果で観光客急増だなんて、そりゃ毎度のことかもしれませんが、愉快な話です。こうやってみんなで東北を訪ね、旅を楽しむことが復興を応援していることになるのだとしたら……、同じ日本人としてちょっといい気分ですからね。

このように「円安による旅行需要の国内回帰を追い風」に「復興応援」やドラマ効果が結びついて、今年の上半期は東北観光の回復が顕著に見られるようになったとの報道が相次ぎましたが、外国人客は東北に戻ってきたのでしょうか。

冒頭の朝日新聞2013年3月9日によると、「外国人の落ち込みはさらに大きい。東北6県では震災前より7割近く少ない。宿泊客に占める外国人の割合は10年の1.6%から12年は0.6%に下がった」とあります。

「山形市の蔵王温泉は、韓国人や中国人を中心とする外国人観光客が、震災前より9割減った。リゾートホテル従業員で台湾出身の周依静さん(29)は『よく知らない外国人には、東北は全部一緒に見える』。別のホテルの支配人吉原昌次さん(48)は『きっかけは原発事故だが、領土問題の影響もある』と指摘する。

海外からの誘客の厳しさは、仙台空港の利用状況にも表れている。復興需要で好調の国内線とは対照的に、国際線の利用者は震災前から3割減った。昨夏にはいったん全路線が再開したが、日中関係が悪化した昨秋から中国と結ぶ2路線が再び運休した」

「政府の東北観光の振興策も不発に終わっている。中国人観光客を増やそうと、外務省は昨年7月、中国人観光客に対して、岩手、宮城、福島の被災3県で1泊以上することを条件に、数次ビザ(査証)を出し始めた。3年間なら何度でも日本を訪問できる。しかし、2月までの発給数は662件にとどまる。同じビザを出している沖縄県向けの同時期の10分の1に満たない」。

この施策は、中国人にとっての弱みともいえるビザ発給を逆手にとって被災地訪問と引き換えにするように見えるところから、当初から評判はよくありませんでした。最初から結果はわかっていたことではないかと思います。

それにしても、国内客による東北観光の盛り上がりとは対照的に、この夏も外国人客の姿がまだ東北に見られないのだとしたらちょっと残念です。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-27 12:44 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)