ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 04月 25日

立ち食いうどん屋の外国人旅行者と豊島区椎名町のインバウンドの話

先週、ある用で西武池袋線の池袋からひとつめの駅、椎名町を降りたところ、駅前にある一軒の立ち食いうどん屋の前に旅行バッグを背負った外国人旅行者の3人組がいました。つい彼らにつられて店に入ってしまいました。
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椎名町を訪ねるのは数年ぶりのことです。めったに利用することのない駅を降りると、『孤独のグルメ』のゴローさんのように、よさげな飲食店をつい探したくなるものです。その立ち食いうどん屋の「南天」は、ボリュームたっぷりの肉うどん(430円)が名物だそうです。
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店内にはトリップアドバイザーの貼り紙がありました。なんでも豊島区のレストランで3623軒中67位(2017年4月24日現在)なんだそうです。
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南天本店
https://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g1066460-d1683449-Reviews-Nanten-Toshima_Tokyo_Tokyo_Prefecture_Kanto.html
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これが肉うどんです。肉の量を2倍にしたダブルは510円、ミニ390円もあります。

店長に聞くと、近所に外国人客が泊まれるゲストハウスがあるそうです。なるほど、だから椎名町のような住宅街に彼らが出没していたわけです。

後日、椎名町にあるというゲストハウスをネットで調べたところ、以下の宿が見つかりました。

シーナと一平(豊島区椎名町のカフェと旅館)
http://sheenaandippei.sakura.ne.jp/

そして、昨日のお昼前、ちょこっと覗きにいきました。場所は、椎名町駅の北口を出て西に向かい、サミット通りという名の商店街を歩いていくと、道沿いにあります。
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そこは「とんかつ一平支店」という古い看板のある建物でした。えっ、ここがゲストハウス? そう思いながら、店の前にいた女性に声をかけると、ずいぶん前に閉店したとんかつ屋だった空き家をリノベーションしてゲストハウス兼カフェとして、昨年3月にオープンさせたのだとか。
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せっかく訪ねたので、カフェでお茶をしながら彼女にさらに話を聞いたところ、このゲストハウスは豊島区の「リノベーションまちづくり」事業の一環で開かれたリノベーションスクールに参加した男性が始めたものでした。

いくつかのメディアがすでにこの宿について紹介していました。

カフェと旅館 一体 シーナタウン、豊島区の空き家活用 (日本経済新聞2016/3/17)
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO98515690W6A310C1L83000/

まちづくり会社のシーナタウン(東京・豊島)は18日、豊島区の空き家活用プロジェクトの一環で、カフェと旅館が一体となった施設を開業する。同区内の空き家率は15.8%と23区で最も高く、区は空き家の再生で地域の魅力を高める構想を進めている。今回の施設は同構想から誕生した第1号となる。

同社が開業するのは「シーナと一平」。昨年3月に区が開催した「リノベーション(大規模改修)スクール」で再生を検討した案件だ。使われていなかった住宅併設型の元とんかつ店を用途変更し、1階はカフェ、2階は主に訪日客が対象の旅館とした。

カフェは1時間300円で、ミシンを自由に使える「ミシンカフェ」。「ミシンに親しむシニアと子育て世代をつなぐ目的」(同社)という。

旅館は5部屋あり、2人で宿泊する場合、1万5120円からとする。相部屋式のドミトリーも備えた。

西武池袋線椎名町駅前の商店街に立地する。カフェでは近隣の総菜店で買ったものの持ち込みも可能にする予定で、利用者の商店街内の回遊も狙っている。


他にもいろいろあります。宿泊施設内の写真などはこちらを参照してください。

民間主導のプロジェクトで誕生した「シーナと一平」。まちに溶け込む「お宿と喫茶」を目指す
http://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00345/

とんかつ店をカフェと宿にリノベーションしてまちの“世代をつなぐ”
http://suumo.jp/journal/2016/03/18/108036/

豊島区のリノベーションまちづくり構想の詳細は以下を参照してください。都内一といわれる空家率の背景に、豊島区における30代(子育て世代)の流出があることから、いかに子供を育てやすい環境をつくるかという観点で民間と公共の空き家や空き地を利用したまちづくりを進めていこうとするものです。

豊島区リノベーションまちづくり構想
http://www.city.toshima.lg.jp/310/kuse/shisaku/shisaku/kekaku/008446/documents/toshima_renovkousou.pdf

リノベーションスクール@豊島区
https://www.facebook.com/renovationschool.toshimaku/
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こうした理念を掲げた取り組みが、当の外国人旅行者にどう受けとめられるかは別の話ですが、昭和の古い飲食店をリノベーションして生まれた空間はとてもユニークで、心地よいものです。

靴を脱いで上がるちゃぶ台が置かれたスペースがカフェで、利用代300円の内訳は、お賽銭箱に200円と飲み物代100円。コーヒーやソフトドリンクなど、セルフサービスとなっています。
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柱を背もたれにして、足を伸ばしてアイスコーヒーをいただいていると、近所のママさんが小さなお子さん連れで現れました。なんでも以前は昼間はただのカフェスペースだった1階は、今後近所の商店街のおばさんたちが先生になって洋裁や編み物、料理などを教えてくれる教室になるそうです。
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その名も「長崎二丁目家庭教室」。(月~木のみ。金~日は以前のとおりセルフカフェ)。教室の運営を担当する地元在住、二児の母である藤岡聡子さんにいただいたチラシによると「まちの誰もが暮らしの先生。家庭科に通ずる暮らしの知恵を学んだり、まちなかの福祉についてしることができます」と書かれていました。
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もともと外国人向けのゲストハウスとして立ち上げた「シーナと一平」でしたが、地元に密着したもうひとつの顔があることを知り、なるほどと思いました。
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確かに、椎名町は池袋に近い徒歩圏内でありながら、昔ながらの商店街が(以前に比べると縮小しているのですが)いまだに残っている町です。外食チェーンは駅前にはありますが、個人経営の個性豊かな食堂がまだたくさんありました。外国人観光客にすれば、商店街で焼き鳥を買って、カフェスペースでビールを飲んだりできる。こういうのが、本当は日本らしい町の楽しみ方なのかもしれません。

実は、藤岡さんに椎名町にあるもう一軒の、しかも都内で外国人にダントツ人気の旅館(トリップアドバイザーの都内の旅館人気ランキングで老舗の澤の屋に次ぐ2位だそう)があることを教えてもらったので、その足で訪ねてみることにしました。

その話はまた今度。

「澤の屋」に次ぐ都内人気旅館の支配人が語る民泊被害とこれからの宿経営
http://inbound.exblog.jp/26813108/
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by sanyo-kansatu | 2017-04-25 11:18 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2017年 04月 24日

「おいしい生活」は誰のもの? PARCOの前をベビーカーで歩くアジアからの観光客

昨日の夕方、池袋駅に向かって歩いていたら、双子の赤ん坊を乗せたベビーカーを押して歩くアジア系のファミリー旅行者の姿を見かけました。
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いまどき、特に珍しい光景でもないのですが、それがPARCOの前だったので、ふといろんなことを思い出してしまいました。

PARCOといえば、1980年代初頭、コピーライターの糸井重里さんの「おいしい生活」なる広告文に過剰なまでの意味が込められ、話題となった象徴的なスポットです。

糸井重里「おいしい生活」☆1980年代、西武池袋本店
https://middle-edge.jp/articles/lmVTC

当時は日本がバブル経済に向かう助走期のような時代でした。個人的には、この種の騒ぎを不機嫌かつ冷ややかにみつめていた自分ですが、それから30年以上たち、アジアから来た観光客が同じ場所で「おいしい生活」を満喫する光景を見かけることになるとは、さすがに思ってもいませんでした。そのことに気づき始めたのは、せいぜい21世紀に入ったばかりの頃です。

「おいしい生活」は、富裕層や特権階層ではなく、いわゆる一般「大衆」からなる社会が「総中流化」したとの「幻想」に多くの人が浸れる時代の到来を意味していたはずです。今日の中国やアジアの国々が、1980年代当時の日本ほど「総中流化」しているとは思えませんが、国単位でみたGDP比率は大きく変わり、アジアの国々でも、そこそこの割合の人たちが「中流化」し、アジアの近隣諸国だけでなく、日本へ海外旅行ができるようになったことは確かです。

彼らが大挙して日本に旅行に来てくれるという程度のことで、今後急ピッチで高齢化が進む日本社会の地盤沈下を押しとどめるには至らないのかもしれませんが、だからといて指をくわえているだけなんて。これを活かさない手はありません。そんな彼らの存在とその意味を考えることは、当ブログの一貫した関心事です。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-24 16:31 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2017年 03月 24日

中国クルーズ船乗客の済州島の下船拒否には呆れたが、今後困るのは中韓双方の民間業者(日本への影響 も)

3月11日、中国クルーズ船乗客が済州島で下船拒否したことが報じられました。中国政府による韓国旅行禁止がスタートする3月15日以前であるにもかかわらず、このようなことをしでかすとはまったく悪辣な輩たちです。

済州島に下船拒否した中国人観光客3400人、ごみ2トンを捨てて出港(中央日報日本語版2017年03月14日)
http://japanese.joins.com/article/813/226813.html

11日、済州(チェジュ)港に入港したが、下船を拒否した遊客(中国人団体観光客)約3400人が済州海にごみを2トン程度捨てて行ったことが分かった。

13日、済州税関などによると、11日に済州港に入港した国際クルーズ船コスタ・セレーナ号(11万4000トン級)が寄港する間、約2トンに達するごみを捨てた後、この日の午後5時ごろに次の寄港地に向かった。

中国のある企業のインセンティブ観光を出た3400人余りの遊客は11日、済州に到着したが、下船するなという会社側の通告を受け、全員が船に留まって寄港4時間後である午後5時ごろ、次の寄港地に出発した。

ごみは全部リサイクルごみのペットボトルや紙くず、缶の種類だ。このごみは済州税関の申告手続きを経て済州道某廃棄物会社で処理し、廃棄物処理の費用は船社側が負担した。

11日に入港したセレーナ号には遊客3400人余りが乗っていた。中国のある企業のインセンティブ観光団だった。イタリア・ドイツなど欧州から来た一部の旅行客もいた。

しかし、遊客は入港したが下船はしなかった。下船せず出港した理由は、中国政府のTHAAD(高高度防衛ミサイル)体系の報復措置の一つとして韓国観光禁止発表に従ったものとみられている。

世界的コスタ船社のクルーズであるコスタ・セレーナ号は、中国を母港にして運営されている。中国共産党機関紙の人民日報はこの日、中国人の大々的な下船拒否事態に対して「中国人観光客のこのような行為は愛国的行動であり、方式も文明的」と評価した。


中国の報復が直撃した韓国のメディアはこのように淡々と事実を伝えています。これだけの仕打ちを受けた以上、もっと怒っていいはずですが、対日報道の場合とは違って、ずいぶんおとなしいんですね。それにしても呆れるのは、ゴミだけ捨てて帰るという不埒ぶり。クルーズ会社と現地の港湾施設との契約を履行したにすぎないのだと思いますが、韓国側も中国の非道ぶりを伝えるうえで、この話をどうしても言いたくなったのではないでしょうか。何より残念なのは、人民日報が「愛国的行動」と称える下船拒否を行ったのが、イタリア系クルーズ会社のコスタ・セレーナ号であること。いまや中国では外資系も政府の恫喝に従うほかないことがわかります。なんとみじめな話でしょう。

普通に考えて、乗客が一斉に同じ行動を取ることはありえないように思われますが、記事によると、同船の乗客が「中国のある企業のインセンティブ観光団」という社員旅行のような組織化されたグループであったことから、それが可能になったのだと理解するほかありません。下船拒否した中国客にこっそり話を聞けば、「自分は本当は下船したかったけど、やむを得なかった」というコメントが聞けそうな気がします。

彼らの下船拒否が悪辣といわねばならないいちばんの理由は、中国側が韓国側関係者へのビジネス契約を一方的に破棄した裏切り行為にあります。

彼らのクルーズ旅行は、寄港地でのバスを利用した上陸観光でのショッピングによる現地手配業者へのキックバックを前提として割安な料金に設定されているからです。この構造は今回のコスタ社の船に限った話ではありません。たとえ「愛国的」理由で下船拒否するとしても、中国側のクルーズ会社または乗客を集めた旅行会社は韓国の手配業者に相応の補填をすべきではないでしょうか。上陸していないのだから、その必要はないと言うことはできるのでしょうが、それでは無責任すぎます。これまで何年も、両者がお互いに協力して継続してきたビジネスモデルなのですから。

要するに、「愛国的行動」を中国メディアに称賛されたこの船の乗客は本来はありえない安いツアーに参加しているくせに、相応の代価を払わなかったということです。

最近は少なくなりましたが、以前はよく日本でも2万9800円上海3泊4日というような激安ツアーがありました。これは今日の中国人の訪日団体旅行と同様、現地のおみやげ屋に連れて行かれ、その購入代のキックバックで現地滞在費などが補填されるしくみなのですが、日本客の中にもみやげもの屋に行くのをパスする人がいました。これと同じです。これがツアー客の中のほんの一部であればともかく、全員が一斉にパスしてしまえば、このモデルは崩壊してしまいます。

ところで、この話はもっと込み入っています。もともと韓国の手配業者はキックバックの一部を中国側の旅行会社に支払っていた経緯もあるからです。手配業者は中国の旅行会社から乗客の手配を請け負う際に、通称「人頭税」と呼ばれる費用を支払います。中国側からすれば、乗客を韓国側に預けるから、せいぜい買い物をたくさんさせて、その上がりで手配費用はまかなってくれ。こちらは送客してやっているんだから、当然その一部をいただきますよ、というわけです。ところが、今回韓国側から渡すものがない以上、中国側も赤字となるはずです。

「中国人は旅行に行くと必ずたくさんおみやげを買う」。それを前提としたこのモデルのおかげで、中国のクルーズ旅行の料金は驚くほど安く販売されています。そう考えると、中国政府の報復により今後痛い目に遭うことになるのは、中韓双方の民間業者といえそうです。

これまで韓国では、2015年のMERS(中東呼吸器症候群)のときもそうでしたし、台風などの天候上の理由でクルーズ船が上陸できなくなることが多々ありました。でも今回は、事情が大きく異なります。

そして、3月15日以降、中国クルーズ船は韓国に寄航しなくなりました。

しかし、日本も「明日はわが身」かもしれません。というのは、中国側が寄港地側に求めていた「人頭税」が、韓国に寄航しなくなることで、日本側からだけ徴収されることになるからです。クルーズ客にはこれまで以上に日本で買い物してもらわないといけなくなるわけですが、「爆買い」の時代は終わり、そうはならないでしょう。でも、それでは今日の不当と思えるほど安価な中国のクルーズ旅行商品が成立しなくなるおそれがあります。

そうなると、中国の旅行会社も困ってしまいます。共倒れです。

まったく中国政府のやることは愚かにしか見えません。
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by sanyo-kansatu | 2017-03-24 13:10 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 03月 16日

日本を訪れる韓国人観光客が中国客を追い抜く勢いで増えています

昨日、恒例の日本政府観光局(JNTO)による「訪日外客数(2017 年2 月推計値)」が公表されました。

◇ 2 月 : 前年同月比7.6%増の203 万6 千人
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/170315_monthly.pdf

これによると「2017 年2 月の訪日外客数は、前年同月比7.6%増の203 万6 千人。2016 年2 月の189万1千人を14 万人以上上回り、2 月として過去最高となった」とあります。
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今回特筆すべきは、これまで2桁の伸びを続けていた訪日客数全体の前年同月比の伸び率が1桁に留まったこと。昨年がうるう年で1日減ったせいもあるとJNTOは言っていますが、台湾や香港、シンガポール、マレーシアは久しぶりに前年割れしています。英仏もそうです。訪日旅行市場はそろそろ頭打ちが近づいているのでしょうか? 

その一方、インドネシアからの訪日客が伸びています。ビジャーブを被るムスリム女性の姿を最近、よく見かけるようになったのも、こういうわけがあったのです。
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↑先日羽田国際ターミナルで見かけたムスリム系ツーリストたち

そして、訪日客のトップが中国から韓国に入れ替わったことも特筆すべきでしょう。

訪日韓国人数はわずか2ヵ月間で「1,225,400人」。前年比で「21.8%」も伸びています(一方、ここ数年トップだった中国は「1,139,700人」、前年比「17.0%」増と、こちらもまずますです)。
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いま韓国の旅行市場は大混乱となっています。中国からの団体旅行が急停止しているからです。

今日から中国人の韓国旅行がストップします(まったくひどい話ではないか!) (2017.3.15)
http://inbound.exblog.jp/26720093/

中国の旅行禁止措置 業界と自治体は活路模索に懸命=韓国 (聨合ニュース2017/03/14)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2017/03/14/0500000000AJP20170314001400882.HTML

にもかかわらず、日本を訪れる韓国人観光客が空前の勢いで増えているのです。これはどうしたことでしょう。

JNTOのリリースでは、韓国客急増について以下のように分析しています。

「韓国は、前年同月比22.2%増の600,000 人で、2 月として過去最高を記録。韓国のアウトバウンド全体が増加傾向にある中、航空路線の拡大や訪日旅行商品の販売拡大・低価格化もあり、20%を超える好調な伸びを示した。当初、前年は2 月にあった旧正月(ソルラル)休暇が本年は1 月末に移行したことによる訪日者数の伸び悩みが懸念されたが、前年同月より約10万人増加し、これにより20 市場の中で訪日者数が最多となった」

でも、この説明からは、なぜ「韓国のアウトバウンド全体が増加傾向にある」のか、「20 市場の中で訪日者数が最多となった」理由については、よくわかりません。

今年の訪日旅行市場であらたに注目すべきは、韓国人観光客の動向といえそうです。なぜこれほど日韓関係が悪化しているこの時期、彼らは日本を訪れるのでしょう。こういうことなら、久しぶりに韓国に足を運んでみようかと思っています。

一方、韓国に客を送らなくなった中国からも多くの観光客が日本に来そうです。こうなると、ますます中韓両国の訪日旅行市場に占めるシェアが高まることになり、これはこれで気がかりといえなくもありません。訪日客の国別シェアは適度なバランスが大切で、特定の国、しかも相手と政治的に問題を抱えている場合、変動も大きく、リスクをともなう面があるからです。

まったくいつ何が起こるか、どう変化していくのか先が読めない。それが日本のインバウンド市場の難しさであり、面白さであるといっていいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-03-16 11:51 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 03月 15日

今日から中国人の韓国旅行がストップします(まったくひどい話ではないか!)

本日(2017年3月15日)から中国人の韓国旅行、正確にいうと、旅行会社が募集したり、手配する団体ツアーやクルーズ旅行がすべてストップします(個人手配によるビジネス出張などは含みません)。

この影響は想像以上に大きなものがあります。韓国メディアはそれを報じ始めています。

韓国系航空会社、THAADの影響で中国路線相次ぎ減便(中央日報日本語版 3/15)
http://japanese.joins.com/article/876/226876.html

<中国のTHAAD報復>韓国から日本に旅先変える中国人観光客(中央日報日本語版 3/15)
http://japanese.joins.com/article/859/226859.html

今後も続々と韓国からの悲鳴の声が上がることでしょう。もともと韓国のインバウンド市場にとって数的に半数近くを占める中国客の動向(しかも、昨年は過去最高)は影響が大きいからです。その点、日本の場合は中国客の占める比率は4人に1人で、揺さぶりをかけられにくいところがあるのと対照的です。

訪韓外国人が過去最高を更新 中国人観光客がけん引 (聨合ニュース2016/12/27)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2016/12/26/0500000000AJP20161226003600882.HTML

相手国の政策が気に入らないから、突然人的交流をストップさせるよう旅行会社に通達を出す中国政府は、卑劣きわまりないといえます。民間人の交流を否定する政府に、国際社会の信用はありません。こんなことばかりしていては、自国の観光客が海外で尊重されなくなることに気づかないのでしょうか。愚かとしかいいようがありません。

先週、ぼくは上海にいましたが、現地の関係者もこの話題で持ちきりでした。「北京では上からの通達が直接あったが、上海では通達はないものの、自主的に販売停止をしている」のだそうです。ある上海の旅行関係者は「まさか政府がそこまでやるとは思ってもみなかった。これはやりすぎだ」と話しています。こう付け加えるのも忘れませんけれど…。「これまでの経緯でいえば、日中関係のほうがはるかに悪かった。日本旅行に対する制限ならまだわかるけど…」。やれやれ、彼ら中国の民間人というのは、まったくもって無力な存在でしかありません。こうした情勢をみて「明日はわが身」と感じた日本の関係者もいたことでしょう。

2010年以降、急拡大していた東シナ海クルーズも韓国をスルーすることになります。これまで最もスタンダードな4泊5日のコースでは、九州(福岡、長崎、佐世保、熊本、鹿児島、宮崎)および下関や境港などの日本側1都市と、済州島か釜山、仁川の韓国側1都市に寄航していたのですが、今日から韓国側への寄航がいっさいなくなります。日本側への寄航が増えるのは悪くないと思う人もいるかもしれませんが、ここ数年、特に福岡のように寄航数が増えすぎて受け入れが困難になっているケースもあり、手放しで喜んでいる場合ではありません。

韓国観光の「禁止」開始 クルーズ船も経由なし(聨合ニュース2017/03/15 )
http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2017/03/15/0900000000AJP20170315002200882.HTML

<中国のTHAAD報復>韓国から日本に旅先変える中国人観光客(中央日報2017年03月15日)
http://japanese.joins.com/article/859/226859.html

今回の中国側の動きは、今月3日に始まりました。

中国、韓国旅行商品の販売中止=THAAD配備に「報復」か-報道(時事通信2017.3.3)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017030201438&g=int

【ソウル時事】韓国の聯合ニュースなど複数のメディアは2日、中国政府が自国の旅行会社に対し、韓国旅行商品の販売を全面的に中止するよう指示したと報じた。

中国は、在韓米軍への最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備に強く反対しており、韓国ロッテグループによる用地提供で今年前半にも配備される見通しとなったことを受け、「報復措置」を取ったとみられるという。

昨年、韓国を訪れた観光客は約1700万人で、このうち800万人が中国人観光客だった。報道が事実なら、韓国の旅行関連業界が大きな打撃を受けることになり、中韓関係が一層悪化するのは必至。北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐる中韓の協調にも支障が出るのは避けられない。

聯合などによると、中国国家旅遊局は2日、北京の旅行会社を招集して会議を開き、韓国旅行商品の全面的な販売中止を口頭で指示した。

一方、ロッテグループは2日、ショッピングサイト「ロッテオンライン免税店」がサイバー攻撃を受け、一時接続できない状態になったと発表した。攻撃の発信源は中国とみられ、報復の可能性がある。大量のデータを送り付けてシステムをまひさせる「DDoS攻撃」が行われた。


同じことは、ニューズウィークや朝日新聞でも報じていました。

韓国THAAD配備に反発、中国が韓国旅行商品の販売停止へ(ニューズウィーク2017.3.3)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/thaad-6.php

中国、韓国への団体旅行禁止 THAAD計画に報復か(朝日新聞2017年3月3日)
http://www.asahi.com/articles/ASK3304H7K32UHBI02W.html

これらの記事の元ネタは、同日に発せられた以下の中国国家旅游局の通達です。

国家旅游局发布赴韩国旅游提示(2017-03-03)
http://www.globalview.cn/html/societies/info_16598.html

国家旅游局于今日中午11时左右,在官网更新发布一条信息,提醒中国公民赴韩国旅游存在一定风险:

最近一个时期,中国公民入境韩国济州岛受阻事件急剧增多,部分被拒入境者在当地机场等候遣返时间较长,引起舆论和社会各界广泛关注。国家旅游局对此高度重视,先后在京约见了韩国驻华大使馆、韩国文化院、韩国文化体育观光部驻华机构官员,就相关问题提出了严正交涉。

国家旅游局提醒中国公民,清醒认识出境旅行风险,慎重选择旅游目的地。赴韩旅游须于行前认真、全面了解韩国入境政策,并根据要求准备好相关材料。如遇紧急情况、受到不公正对待或发生纠纷,可及时与我驻当地使领馆联系,并收集和保存相关证据,以便日后通过投诉或司法途径解决。


ここでは、理由をはっきり明かしていませんが、その「真相」については、中国メディアが詳しく報じています。

赴韩游被叫停真相:没有收到相关部门正式文件(2017-03-03)
http://news.sina.com.cn/c/nd/2017-03-03/doc-ifycaafm5032380.shtml

3月3日,国家旅游局在官网上发布消息称,最近一个时期,中国公民入境韩国济州岛受阻事件急剧增多,部分被拒入境者在当地机场等候遣返时间较长,引起舆论和社会各界广泛关注。国家旅游局对此高度重视,先后在京约见了韩国驻华大使馆、韩国文化院、韩国文化体育观光部驻华机构官员,就相关问题提出了严正交涉。
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第一财经记者采访了解到,今天下午有不少旅行社正在就韩国旅游相关事宜开会,但目前为止并没有收到正式的文件。途牛、同程等OTA(在线旅游代理商)已经开始下架韩国旅游产品,而航空公司也在观望对韩国航线的影响,以便做出是否调整赴韩运力的决定。

目前韩国游是出境游市场非常主要的路线,业界预计,此次事件会给近期的韩国旅游带来直接的下滑影响。

旅游线路紧急下架

国家旅游局提醒中国公民,清醒认识出境旅行风险,慎重选择旅游目的地。赴韩旅游须于行前认真、全面了解韩国入境政策,并根据要求准备好相关材料。如遇紧急情况、受到不公正对待或发生纠纷,可及时与驻当地使领馆联系,并收集和保存相关证据,以便日后通过投诉或司法途径解决。

就在国家旅游局发布信息不久后,第一财经记者联系携程、途牛、同程、驴妈妈、春秋国旅、中青旅、锦江等旅游业者,不少业者透露,今天下午都在开会探讨韩国游线路如何处理的事宜,但是目前还没有收到相关部门的正式文件。目前一部分旅行社还在按照正常程序在走,而有一部分业者则开始主动下架韩国游产品。
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北京万众国旅已经发布公告称,将下架所有赴韩旅游产品。

而途牛在今天已经将所有的韩国跟团游、自助游产品下架,并表示强烈抗议韩国部署“萨德”系统及韩国乐天集团为“萨德”提供部署地。

途牛进一步表示,对于前期已预订相关产品近日出游团期的游客可正常出行,如涉及韩国乐天相关行程将对客沟通进行调整;相关产品远期出游订单途牛将对客沟通取消并全额退款或转至其它目的地。

同程旅游则向第一财经记者表示:“同程旅游对韩国方面部署‘萨德’反导系统以及乐天集团的行径表示强烈愤慨。我们将继续本着国家利益大于一切的原则开展业务,‘萨德事件’严重伤害了中国人民的感情,同程旅游已经采取措施,陆续全部下线赴韩旅游产品线路等相关业务。”

同程旅游进一步表示,对于韩国旅游产品的下架会在今天之内完成。

第一财经记者注意到,在2015年12月10日,同程旅游宣布与韩国乐天观光股份公司达成战略合作,双方将共同出资成立一家合资公司,致力于当地旅游资源的整合与采购。韩国乐天观光股份有限公司录属于韩国乐天集团。

谈及与乐天的合作,同程旅游方面表示,目前业务已经暂停,将视事态发展来决定如何处理与韩方合作者的关系,不排除采取进一步措施的可能。

同时还有部分旅行社表示,虽然还未开始全面下架韩国旅游产品,但是会考虑先将已经成团的旅游线路进行退团处理。至于后续如何与韩国的酒店方、地接旅行社以及景区等业者做进一步的处理,现在还在考虑中。

关于是否下架韩国旅游产品,截至第一财经记者发稿时,携程和驴妈妈方面还没有给予回复。上航旅游则表示3月15日开始不再受理韩国业务。

韩国旅游将受挫

据韩国官方统计数据显示,2016年1月至12月入境外国人为1741.8万余人。其中,中国游客人数最多,为826.8万多人,占47.5%。但2016年下半年中国游客赴韩旅游人数增幅锐减,韩媒称此或与韩国部署“萨德”反导系统带来的负面效应有关。

路透社随即报道称,部分中国旅游企业下架韩国游产品消息发出后,韩国旅游公司Hanatour 股价下挫7%,由此可见,“萨德”事件的持续发酵,引发了一系列连锁反应,而旅游业首当其冲。

“就出境游而言,韩国是非常主要的目的地,基本上日韩旅游是排在出境游前五位的,尤其是这几年,邮轮旅游非常盛行,日韩线路是常规的邮轮出游线路,因此这次部分旅行社下架韩国游产品后,会对韩国旅游、日韩邮轮旅游在近期造成直线下滑的影响。”劲旅咨询首席分析师魏长仁指出。

值得注意的是,中国游客赴韩国旅游的“买买买”热情也非常高涨,尤其是乐天等几家主要的免税店,经常挤满了中国游客。此次部分旅行社对韩国旅游产品下架后,旅游业界预计乐天等主要免税店的生意也会直接遭遇“滑铁卢”。

“以出境游而言,泰国、日本、韩国、欧美线路都是比较热销的,如今韩国游预计会直接下滑,那么接下来出境游的客流或许会分流到泰国、欧美等地区,出境游的格局会有所变化。”魏长仁认为。

航空公司观望

对航空公司来说,日韩航线也是航司开辟国际航线的首选目的地。目前三大国有航空在韩国航线上占有领先的市场份额,而包括春秋、吉祥、奥凯等民营航空近年来也在陆续开辟日韩航线。

据记者了解,目前春秋有国内多个城市直飞济州,以及上海、石家庄飞首尔的韩国航线,吉祥有到济州的航线,而奥凯则刚刚于去年底开始在韩国济州机场放置过夜飞机,希望打造以韩国济州为枢纽通往国内主要城市的航线网络。目前,奥凯已陆续开通天津、长沙、南京、重庆、宁波、杭州等国内城市往返济州的航线。

多家航空公司人士告诉记者,事实上韩国团队游的减少,从去年下半年开始已有体现,不过由于2015年有MERS疫情的影响,2016年的同比数据还是有所增长,北上广、东北地区前往韩国的航线客座率恢复到了同期水平,二线城市韩国航线的运力投入也逐步恢复。

记者从中航信获得的相关数据也显示,从2016年10月开始,中韩航线上国内航司的旅客量同比增减情况如下:10月3.15%,11月为-1.18%,12月8.46%,1月 6%,2月1.76%。

而对于旅行社陆续下架韩国游产品,多家航空公司也表示在密切关注后续的影响,有的已经在开会讨论对策,以便做出是否调整赴韩运力的决定。


記事によると、韓国のTHAAD配備に対する「強烈な抗議」があると政府に同調したもの言いをしていますが、本来メディアがすべきは、中国政府の今回のやり方に抗議することではないでしょうか。彼らには呆れてモノが言えません。

【追記】
中国は5月に実施される大統領選の結果をにらんで、クルーズの韓国寄航再開を決めるようです。THHAD配備を撤回すれば、クルーズ客を送るというわけでしょう。観光を政治の取引に使うこうした汚いやり方に怒りを禁じえません。

中国発クルーズの韓国経由便 6月まで運航中止継続か(朝鮮日報2017.3.16)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/03/16/2017031601446.html
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by sanyo-kansatu | 2017-03-15 12:01 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 02月 15日

「モノ」から「コト」消費へ移行というのはデータからみれば、俗説じゃないかしら

日本のインバウンド市場に関する話題で、ずっと違和感をおぼえていたことがあります。

それは、外国人観光客の消費が「モノからコトへ」移ったという話です。これ、メディアもそうですが、皆さんけっこうよく口にしています。たとえば、「最近の外国人はもうモノを買うより温泉に入るなど、コト消費に変わった」とかなんとか。

本当にそうなんでしょうか。そもそも温泉に行くのが「コト」消費? そうではないですよね。

観光庁が四半期ごとに発表する「訪日外国人消費動向調査」の中に「訪日外国人旅行消費額の費目別構成比」というデータがあります。外国客が日本滞在中に消費した額を「宿泊」「飲食」「交通」「娯楽サービス」「買い物」「その他」に分類し、構成比を集計したものです。この分類によると、温泉は「宿泊」に分類されるはずです。

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観光庁が今年1月中旬に公表した2016年の「訪日外国人消費動向調査」によると、「訪日外国人全体の旅行消費額(速報)は3兆7476億円と推計され、前年(3兆4771億円)に比べ7.8%増加」したそうです。

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一方、「1人当たり旅行支出(速報)は15万5896円と推計され、前年(17万6167円)に比べ11.5%減少」しました。「国籍・地域別にみると、オーストラリアが最も高く(24万7千円)、ついで中国(23万2千円)、スペイン(22万4千円)の順で高い。中国においては、1人当たり旅行支出が前年比18.4%減少し、全国籍・地域の中で最大の減少幅となった」といいます。

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それでも、国籍・地域別の総額でみると、「中国が1兆4754億円(構成比39.4%)と最も大きい。次いで台湾5245億円(同14.0%)、韓国3578億円(同9.5%)、香港2947億円(同7.9%)、米国2130億円(同5.7%)の順となっており、これら上位5カ国で全体の76.5%を占めた」とあります。

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さて、「訪日外国人旅行消費額の費目別構成比」についてですが、「買い物代(38.1%)が最大となったが、前年(41.8%)に比べて減少した。一方、宿泊料金(27.1%)、飲食費(20.2%)及び交通費(11.4%)が前年に比べ増加した」とあります。

これだけみれば「モノからコトへ」という話につながりそうにも思えますが、依然として最大の構成比は「買い物代(38.1%)」で、宿泊費よりも多いというのもそうですし、一般にアクティビティ消費ともいわれる「娯楽・サービス費」は全体のわずか3.0%。これは外国客が訪日後、参加するバスツアーや体験ツアー、テーマパークなどの、いわゆる「コト」消費を指すのですが、あまりにささやかすぎないでしょうか。実は、2016年10~12月期のデータでは、「娯楽・サービス費」の比率は2.7%に下がっているくらいです。

データをみる限り、外国人観光客の消費が「モノからコトへ」移ったというのは俗説にすぎない気がしてきます。

それにしても、「モノからコトへ」だなんて、誰が言い出したのでしょうか。そして、ここでいう「外国人観光客」とは誰のことを指しているのでしょうか。

欧米客についていえば、彼らは以前から「モノ」より「コト」消費でした。つまり、巷でいうこの俗説と彼らは関係ありません。昨年1人当たりの旅行支出トップとなったオーストラリア人は日本でスキーを楽しんでいることが知られていますが、これこそ「コト」消費の代表例でしょう。

では、アジア客はどうか。旅行関係者に聞くかぎり、「アジア客の関心のメインはいまでも買い物にある」という声が聞こえてきます。もともと彼らは中国客のような「転売」まがいの買い方はしておらず、いまでもお菓子やらドラッグストア商品などをあれこれ買い込んでいます。

じゃあやっぱり、「モノからコトへ」移ったというのは「爆買い」で鳴らした中国客のことでしょうか。

確かに、彼らはもろもろのお国の事情もあって、昨年「爆買い」は終息しています。

中国客の「爆買い」が“強制終了”した3つの理由
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/101800023/
「爆買い」終了で、訪日プロモーションの目的や中身を変える必要あり
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/102500024/

お国事情の最たるものは、2016年4月に中国の税関が海外旅行者に対する荷物開封検査を開始し、関税を取り立てるようになったことです。せっかく海外で安く購入しても、帰国時に高率の関税をかけられてしまうのでは、「爆買い」する意味はなくなるからです。

つまり、中国客の場合も、消費が「モノからコトへ」移ったというよりも、政府によって買い物額に上限を課せられた以上、たくさん買い物しても仕方がないから、買い物額が減ったというのが実情なのです。先ほどの観光庁の調査で「中国においては、1人当たり旅行支出が前年比18.4%減少し、全国籍・地域の中で最大の減少幅となった」というのは、そういうことです。

では、中国客は本当に買い物する意欲を失ったというのでしょうか。そうでもないようです。昨年11月に訪日した中国の友人はこう話しています。「日本に行くとなったら、友人知人にあれを買ってきて、これを買ってきてと頼まれて困る。いま中国の税関では、1人8万円(=5000人民元)までは関税を取らないので、それ以上買わなければならないときは、郵便局から送っているんです」。

いやはや、ご苦労さまです。彼の泊まるホテルの客室を訪ねると、巨大なスーツケースが2つあり、持ち帰る分と郵便局で送る分の仕分けで大変そうでした。こういうのが、いまでもよく見かける中国客の姿です。べつにご本人が買い物したくなくても、買って帰らなければならない事情があるのです。だったら、いっそできる限りたくさん買って帰って転売することで小遣い稼ぎをしてしまおう。そう考えるのが中国の人たちです。そういう自分以外のために大量購入したのが「爆買い」の正体だったのであり、政府の税関検査でそれが急にできなくなったという話です。

もちろん、リピーターが増えている上海人のように「何度も日本に来るから、もうまとめ買いは必要ない」などと、うそぶいている中国客も最近は増えています。彼らはお土産をいっぱい買って帰る中国の地方出身の団体客をどこか小バカにしているところもあります。

今後は中国客の「コト」消費実況レポートが出てくるのでしょうか? ある人が言うには「エステとか、ネイルサロンとか」だそうですが、その種のものはすでに中国にも普通にあります。それでも、医療検診のために日本を訪れる中国客はそこそこ増えているようです。「コト」消費が起こるためには、日本でしかできない体験でなければならないのです。

そのようなわけで、彼らが我々日本人の期待するような「コト」消費を始めているかというと、大いに疑問です。にもかかわらず、なぜこのような俗説が広まったのでしょうか。

ネットをみると、これからはグルメだ「自然体験」が注目だと、なんでもかんでも「コト」消費に結びつけようとしていますけど(まあ、そんなに厳密に区別するような話じゃないからいいんですけど)、それらも「爆買い」は終わったけど、次は「コト」消費があると、世間のインバウンドに対する関心をこのままキープさせたいと願う関係者が発信源? それとも、これはかなりうがっていますが、自国民の「爆買い」を苦々しく思っていた中国政府の意向を忖度した誰かの……???

ともあれ、もっと「コト」消費を盛り上げていかなければならないことは確かでしょう。海外旅行は国籍を問わず、そこでどんな体験をしたかで訪れた国の印象は決まるものだからです。
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by sanyo-kansatu | 2017-02-15 15:46 | “参与観察”日誌 | Comments(1)
2017年 02月 08日

アパホテルとデモ騒動、これじゃ中国の為政者に踊らされすぎです

この週末、新宿で例の「アパホテル問題」を発端にしたデモ騒動が起きました。

在日中国人「反アパホテル」デモ 対抗団体も登場、休日の新宿が混乱(産経ニュース2017.2.5)
http://www.sankei.com/affairs/news/170205/afr1702050015-n1.html

ホテルチェーンのアパホテルが「南京大虐殺」などを否定する書籍を客室に備えているとして、中国当局が猛反発している問題で、日本在住の中国人らが5日、東京都新宿区で同ホテルへの抗議デモを実施した。現場周辺にはデモに抗議する団体メンバーも多数詰めかけ、休日の新宿は混乱した。

デモを行ったのは、このデモのために結成された日本で生活している中国人企業経営者、会社員らで作る「中日民間友好委員会」。約300人(主催者発表)の参加者が午後3時から、新宿中央公園から新宿御苑に近い同ホテル周辺まで行進した。「中日友好」「民族の尊厳を守る」などと書かれたプラカードや横断幕を掲げながら道路を歩いたが、シュプレヒコールを上げることはなかった。

デモには抗議する右翼団体の構成員らが併走。「JAPANが好きだ」と書かれた横断幕を奪い取ろうとしたほか、デモに飛びかかろうとして、警戒に当たっていた警察官に静止される場面が何度も見られた。

デモを主催した来日10年になるという中国人女性は「(周囲の)みなさんにはご迷惑をおかけした。今回声を上げたのは勇気ある中国人だ」などとコメント。年齢や名前などは明らかにしなかった。


騒動の始まりは「ニューヨークに住む米国人女子大学生Katさんと中国人男子大学生Sidさんのコンビ「KatAndSid」が15日夕方に投稿」した「告発」でした。それにしても、アンチデモの連中の暴走のため、まるで中国人のデモ関係者のほうが被害者のように見えてくる始末ですが、彼らもわざわざ垂れ幕に「JAPAN」と書くあたり、なんだか真意がすっきりしませんね。

これらの一連の件について、以前ぼくは中国が日本に限らず対外的に繰り広げてきた「宣伝戦」の一環であると書きました。その目的は、短期的には中国の歴史認識を否定する私企業(標的)に対してなんらかの経営的な打撃を与えることでしょうが、在日中国人まで巻き込んで騒動を拡大することで、結果的に、中国の主張を広く喧伝することでしょう。でも、こういうことはこれまでもしばしばあったことです。

中国SNSでアパホテル炎上 春節はどうなる?(2017年01月17日)
http://inbound.exblog.jp/26563241/

ささやかな記事ですが、BBCが動画付きでこれを報じています。

アパホテルに抗議、在日中国人らが東京でデモ(BBC2017年02月6日)
http://www.bbc.com/japanese/video-38877494

ビジネスホテル大手アパグループが日中戦争時の南京大虐殺を否定する本を客室に置いていることをめぐり、在日中国人らが5日、東京・新宿で抗議デモを行った。

本はアパグループの元谷外志雄代表が執筆したもので、大虐殺は起きていないと主張している。本の客室設置をめぐっては、中国政府が批判したほか、中国国内の予約サイトがアパホテルをボイコットするなどし、反発が広がっていた。


今朝、ネットを見たら、中国専門家の福島香織さんが今回の騒動についてこう書いていました。「結果的には、中国やアンチアパホテル側にとっていい感じの映像や記事が山のように出来上がった」。

「アパホテル問題」はスルーするに限る
中国の「公共外交」に踊らず、日本の魅力を示せ(日系2017年2月8日ビジネス)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/020600087/

まったく同感です。彼女は言います。

「それよりも、南京事件80周年の今年の春節前に、中国の動画サイトや微博で中国人向け投稿を頻繁にしているKat&Sidという米国人女性と中国人男性の二人組が、アパホテルの歴史本の存在を今更のように投稿して、批判し、中国のネットで炎上気味に拡散して、中国政府が旅行代理店や国民にはっきりと、アパホテルを使用するなと通達した一連の流れに、なにかしらの偶然とはいいがたいものを感じる。

もちろん、Kat&Sidが、中国共産党の手先だというつもりは毛頭ない。しかしながら、中国がこれまでとってきた、パブリックディプロマシー(公共外交)や歴史戦、国際世論戦の手法を思い返すと、最初のきっかけが偶然だとしても、中国当局はすぐさま戦略的に有効な展開を考えるものだ。そして、また日本のメディアも活動家も面白いようにそれに呼応してくれる」

さらに彼女は、中国の近年のパブリックディプロマシーの成果として「中国公共外交発展報告(2015)」の内容を紹介しています。その狙いは「安倍晋三の軍国主義復活を喧伝し、日米を離反させ、国際社会で日本を孤立させること」でした。中国出張中、テレビニュースを見ていると、今年に入っても日本に関する報道はそのような内容でほぼ占められていることを知るとき、まったく徹底していると感じます。中国メディアの特徴は、安倍首相が自衛隊といるときの映像を繰り返し使うことです。
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そして、今回の発端に象徴されるように、中国は今後ますますSNSを使った対日世論工作や国際世論形成に力を入れていくことになると指摘しています。

「こういう風に今年、中国が戦略的忍耐でもって、慎重に国際世論戦を展開してくるというなら、日本も慎重に迎え撃つしかない。右翼活動家の罵詈雑言による短絡的なカウンターデモは、はっきり言って、こうした公共外交、国際世論戦にとって日本の足を引っ張る以外の何者でもなかった」

ですから、今回の「カウンターデモ」は、中国の為政者に見事に踊らされてしまったも同然なんです。

最後に、福島さんは書きます。「日本の公共外交は、実のところ中国が歯噛みするほどの底力がある」。

そうなのです。いま多くの中国客が日本を訪れ、美しい風景や食事、サブカルチャーも含めた日本の多様な側面をSNSで広めてくれています。むしろ、こうしたことが中国の為政者に対するカウンターになるはずです。それ自体を目的とするのは本末転倒ですけれど、そのことに自覚的であってもいいと思います。

これからも彼らは私たちの嫌がることをあの手この手で仕かけてくるでしょう。今回は私企業に対する工作でもあり、義憤をおぼえた人も多かったのかもしれませんが、そうだとしたら、相手に乗せられたという話です。次回こうしたことが起きたときは、もう少し頭を冷やして、最も効果のある対応をすべきだと思います。それだけの手持ちは日本には豊富に揃っているのですから。

それからもうひとつ。日中の民間同士がいがみ合うことも、中国の為政者の思うつぼだということを頭に叩き込んでおきたいところです。民意によって選ばれたわけではない中国の為政者と民間人は区別しなければなりません。
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by sanyo-kansatu | 2017-02-08 07:54 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 02月 07日

中国団体客が減って困る人、ほくそ笑む人?

今年の春節休み、ぼくは中国黒龍江省ハルビンの氷雪祭りを観に行っていました。LCCのスプリング・ジャパンが成田・ハルビン線を就航し、その初便に乗ることになったからです。この写真は、零下20度以下に冷え込んだハルビン国際空港に着陸し、初就航ということで歓迎垂れ幕が用意されていたときのものです。ピリピリと肌を刺すような寒さでした。
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189人乗りのボーイング737-800機のハルビン線は行きも帰りも満席で、往路の乗客の多くは日本在住の黒龍江省出身者の帰省客で、日本人客は10数名といったところ。もっとも、復路は一部日本ツアーに参加した中国の団体客もいました。
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黒龍江省出身者といえば、都内の在日中国人経営の中国料理店に出稼ぎとして数年単位で働いている中高年の女性たちのイメージが浮かびます。実際、今回乗ったハルビン線には、家族客もいましたが、それ以上に中高年の女性の姿が多く見られました。かつてはなかば出稼ぎ労働者だった彼女たちが、いまやレジャー目的の観光客として日本を訪れるようになったことは、時代の変化を感じさせます。

ところで、メディアは今年の春節休みの中国団体客が減っていると報じています。

春節も続く中国人客減 富士山麓の土産物店など悲鳴「団体客が前年の半分以下に」(産経news2017.2.2)
http://www.sankei.com/life/news/170202/lif1702020024-n1.html

1月27日から始まった中国の旧正月にあたる「春節」休暇は、2日で幕を閉じるが、山梨県の富士北麓エリアでは宿泊施設や土産物店から「客数が激減した」「爆買いがなくなった」と悲鳴が上がっている。県によると、中国人の宿泊者数は昨年10月、前年同月比49%減の3万4640人と3年2カ月ぶりにマイナスに転じ、11月も3万820人(同32%減)と落ち込みが続いている。春節期間中、日帰り客も多い大規模施設では例年並みに集客を確保したものの、“爆買い”を含め、中国人の姿はめっきり減っている。関係者は今後もこの傾向が続くのか、気をもんでいる。

中国人客の減少の影響は春節にも出ている。外国人客が多い河口湖畔のレストランでは、「団体客が前年の半分以下に減った」と嘆く。土産物店を併設する郷土料理店も「理由は分からないが中国人客が減っているのは確実。春節後の見通しはつかない」とため息をついた。

これらに対し、富士急ハイランド(富士吉田市)では中国人観光客向けの恒例の「春節イベント」を開催中。富士急行は「春節の来場者数は過去3年、横ばいで推移しており、今年も前年並みでは」と見込む。

外国人客が宿泊者総数の9割近くを占める富士河口湖町のホテルのフロント担当者は、「中国人団体客が前年同期と比べ約2割減。その分は個人客を増やして補った」と苦労を明かした。

ただ、同ホテルも昨年11月以降、中国人客を中心に宿泊客数の減少が前年比1割強の水準で続いた。「春節後は以前の状況に戻ると思う」と懸念する。

富士河口湖町観光連盟は「団体から個人へのシフトは昨年の春節から続く傾向だ。店舗でも“爆買い”が見られなくなっている」と指摘する。

山梨県観光企画課は「中国経済低迷による旅行離れや静岡空港の中国路線の大幅縮小などが影響している」と分析。「要因は複合している。過去のような伸びを期待するのは難しい」と今後を厳しく見通している。


富士河口湖町といえば、中国団体ツアーのゴールデンルート上に位置し、富士山観光の拠点のひとつとなる温泉郷でした。もう7~8年前ですが、中国団体客向けの温泉ホテルを始めた経営者に話を聞きにいったことがあります。当時から河口湖温泉では一部のホテルや旅館しか中国団体客の受入れをしていませんでした。むしろ山梨県では石和温泉郷が中国団体客の受け皿として知られています。こちらの入りはどうだったのでしょうか。

こんな記事もあります。この筆者は毎回興味深い上海事情を報告してくれますが、今回に関しては若干煽り気味に感じます。

宿泊業界大混乱、中国の団体旅行客はどこへ消えた?
キャパ拡大の設備投資は完全に裏目(JBPRESS2017.2.7)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49099

記事にはこうあります。「東京~富士山~大阪を結ぶ「ゴールデンルート」といえば、訪日客が最も集中する行程だ。ここでも異変が起きていた」。

「現地のホテルに問い合わせてみたところ、次のような回答が返ってきた。「今年の春節は、中国の個人客は何組かいらっしゃいますが、団体のお客様はいないのです」 過去には30~40名ほどの中国からの団体客を扱ったこともあると言うが、「なぜか今年の春節は来ない」のだという」。

そりゃあそうでしょう。中国の訪日客の客層が団体から個人へ移行する動きはすでに2015年から始まっていました。

2015年の上海の訪日客、個人が団体を逆転 その意味するものとは? (2016年04月08日)
http://inbound.exblog.jp/25638388/

上海市場に限れば、すでに2015年に初めて団体客の数を個人客が上回っていたのです。そうなった背景には、15年1月の日本政府による個人マルチビザ取得要件の緩和がありますが、それをさらに加速させたのは、以下のような、いかにも中国的な事情がありました。

上海で個人旅行化が進んだ理由は貧乏人だと思われたくないから!? (2016年04月10日)
http://inbound.exblog.jp/25647061/

そして、個人化への流れはすでに半年遅れくらいで、地方の主要都市でも始まっていました。

中国内陸都市でも若い世代を中心に個人旅行化の機運が起きている(2016年03月09日)
http://inbound.exblog.jp/25481978/

その意味では、今年の春節休みの中国団体客の減少はすでに予測されていたものだったのです。

同記事は、その最も顕著な例として、静岡空港の中国路線が16年秋以降、一気に減ったことを挙げています。

「2014年7月末に3路線13便だった中国路線は、2015年7月末には13路線47便にまで拡大した。静岡空港における国際線の搭乗者数は40万人目前に迫った。ところが2016年は一転して減少し、約28万人にとどまった。減少の理由はほかでもない、中国からの団体客が減ったためである。

静岡県文化・観光部が行った調査によれば、2015年に静岡空港を利用した中国人客は97%が団体ツアーの客だったという。だが、そうした団体ツアーの利用客がめっきり減ってしまった。

その結果、2016年は中国からの旅客機の運休が相次いだ。結局、静岡空港では、13あった中国路線が上海経由武漢、寧波、杭州、南京の4路線だけに縮小してしまっている」

この点については、本ブログでも、ちょうど1年前に報告していました。ぼくは静岡空港を訪ね、関係者に話を聞いていましたが、彼らも当時はこれほど急増したことに疑心暗鬼のところもありました。ですから、16年に入って急減したことも、あり得ることとある程度予測していたと思います。

静岡空港行きの中国路線はなぜ1年でこんなに増えたのか? (2016年01月25日)
http://inbound.exblog.jp/25298380/

富士山静岡空港
http://www.mtfuji-shizuokaairport.jp/

同記事では「富士山静岡空港もその1つで、「急激に増えた中国人客により、手荷物検査や税関などで対応に苦慮した」(同観光部)という。そこで昨年11月より、ターミナルビルの増改築に乗り出している」「しかし、その目論見は早くも頓挫している。中国人の団体客が姿を消した今、「投資を回収できるのかという深刻な問題に直面している」(前出のホテル経営者)」と、中国団体客急増に備えて投資をした一部のホテルや同空港の「目論見は早くも頓挫」したと決めつけています。

まったく訪日中国旅行市場というのは、急に増えたり減ったり、人騒がせなところがあります。でも、こうしたアップダウンは、11年の東日本大震災、13年の「尖閣諸島国有化」への反発などで、これまでも数年おきに起きていたことです。ですから、いまさら「目論見は頓挫」というのはどうでしょう。

それにしても、2015年に中国の地方都市から一気に日本路線が拡充したものの、その後運休が相次いだ理由には、やはり中国の地方経済の問題がありそうです。要するに、地方都市では思ったほど団体客が集められないのでしょう。

さらにいうと、いまの中国の旅行会社も、特色もなく安いだけの、しかもキックバックモデルに依存した団体ツアーをいくらやっても儲からないので、以前のようなやる気を失っていることも考えられます。個人化とオンライン化が進んでいることが背景にあります。

こうして中国団体客が減ることで困る人たちも大勢いると思いますが、その一方でほくそ笑んでいる人たちもいるように思います。たとえば、不法ガイドやブラック免税店への対処を問われている監督官庁の関係者。要するに、これらの問題は団体客が多いから発生しているわけで、それが減れば問題も勝手に沈静化していくかもしれないからです。そう簡単にはいかないと思いますけれど。

それはともかく、今年の春節休みに中国客はどのくらい日本に来たのでしょうか。中国の海外旅行市場の専門家によると、今年の冬もPM2.5は猛威を振るっており、海外逃避旅行は増えると言っていました。方面としては、台湾、香港、韓国は政治的な理由で減少する一方、タイや日本が増えるとのことでした。

今年の春節休みも「肺を洗う旅」の中国客はどっと来るのだろうか? (2017年01月13日)
http://inbound.exblog.jp/26552082/

実際のところ、どうなのでしょう。今月中旬に、日本政府観光局(JNTO)が1月分の各国別訪日数を公表しますので、それを待つことにしましょう。
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by sanyo-kansatu | 2017-02-07 11:17 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 02月 04日

日本人は出不精、アジアの人たちは出たがり!? その理由は日本の高齢化にあると考えざるを得ない

今朝、ネットで以下の記事を読みました。

21世紀は世界中で高齢化が進行 日本以上の速さで高齢化が進むのはどの国? (THE PAGE2017.02.03)
https://thepage.jp/detail/20170203-00000005-wordleaf

「総務省が2016年10月発表した平成27年国勢調査確定値で、大正9(1920)年の調査開始以来、初の減少に転じた日本の総人口。人口減と合わせて問題になっているのが、世界で最も進んでいる社会の高齢化です。では、世界の人口の推移、高齢化の進行はどのようになっているのでしょうか」

記事によると、内閣府の「平成28年版高齢社会白書」は、世界の総人口は今後も増え続け、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)も上昇するとみているそうです。

そして、日本は2005年以降、高齢化率は世界一(26.7%(2015年))となっています。しかも、高齢化進行の速さも際立っています。

他国の情勢について、記事では以下のように述べています。

「現在先進国の中で、高齢化が進んでいるのがイタリア22.4%(2015年)、ドイツ21.2%(同)です。しかし、2060年まで高齢化率が上昇し続けるとみられる日本に対し、イタリアは2050年(35.1%)がピーク値になると推測。ドイツは、2035年ごろから上昇が緩やかになり、2060年は33.1%と見込んでいます。

一方、アジア諸国は、今後、急速に高齢化が進むとみられています。特に韓国は、日本以上のスピードで高齢化が進行し、現在の13.1%(2015年)から2060年には、日本を除く他の先進諸国よりも高い37.1%にまで達すると推計。同様に2060年の高齢化率は、シンガポールが36.3%、中国32.9%となって、軒並み現在より20数ポイント上昇すると考えられています」

※同記事の元ネタはこれです。

平成28年版高齢社会白書(概要版)> 第1節 高齢化の状況
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/gaiyou/s1_1.html

詳細なデータは以下のとおり。

①高齢化率は26.7%
•我が国の総人口は平成27(2015)年10月1日現在、1億2,711万人。
•65歳以上の高齢者人口は3,392万人。
•65歳以上を男女別にみると、男性は1,466万人、女性は1,926万人で、性比(女性人口100人に対する男性人口)は76.1。
•総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は26.7%。
平成72(2060)年には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上

②平成72(2060)年には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上
•総人口が減少するなかで、高齢化率は上昇。
•高齢者人口は、いわゆる「団塊の世代」(昭和22(1947)~24(1949)年に生まれた人)が65歳以上となる平成27(2015)年には3,392万人となり、その後も増加。54(2042)年に3,878万人でピークを迎え、その後は減少に転じるが高齢化率は上昇すると推計される。
•平成72(2060)年には高齢化率は39.9%に達し、2.5人に1人が65歳以上。

③我が国は世界で最も高い高齢化率である
•先進諸国の高齢化率と比較すると、我が国は、1980年代までは下位、90年代にはほぼ中位であったが、平成17(2005)年には最も高い水準となった。
•アジア諸国についてみると、今後、急速に高齢化が進み、特に韓国においては、我が国を上回るスピードで高齢化が進行し、平成17(2005)年の9.3%から72(2060)年には37.1%まで達すると見込まれている。
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さて、これらのデータを訪日旅行市場の観点から読み直してみたいと思います。ここ数年、訪日旅行市場が拡大した背景にアジア客の増加があります。2016年に日本を訪れた外国人のうち、アジアからの訪問客は85%を占めます。いまや世界で最も高齢化率の高い国となってしまった日本と比べて、これらアジアの国々のそれは日本より相当低いことが、こうなる理由のひとつとして考えざるを得ません。その鍵は、出国意欲の違いではないでしょうか。

ここにもうひとつのデータがあります。

世界150数ヵ国が加盟する国連世界観光機関(UNWTO)によると、2015年に国境を越えて移動した「国際観光客到着数」は世界全体で11億8600万人だといいます。伸び率は4・6%で、年間で5200万人増。こうした数字だけ挙げられてもピンときませんが、いわゆる「グローバル観光人口」が右肩上がりで増加していることは明らかです。その結果、日本でも多くの外国人観光客の姿を見かけるようになっているわけです。実際、14年から15年かけての訪日外国人数は1340万人から1970万人に増えており、アジア全体の5200万人の増加分のうち、日本は630万人を占めているのです。

(図表18)世界のインバウンド観光の推移(UNWTO)
http://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2016/09/Tourism-Highlight-s-20116.pdf

アジアの観光人口は世界全体の24%を占める約3億人。先進国の多さや移動の自由ゆえに世界の半分を占める欧州にはかないませんが、伸び率は最も高い6・6%です。

こうしたアジアの勢いを担っているのは、残念ながら、この十数年間、海外旅行市場が伸びていない日本ではなく、東アジアの中国や韓国、台湾、香港、そしてアセアンの国々です。国土と人口が桁違いに大きい中国はすでに2012年に世界一の海外旅行市場になっていますが、韓国も15年の海外旅行者数は1930万人と日本より多いし、台湾は2300万人の人口なのに1320万人で、出国率でいうと60%近い。その点、日本は人口1億2700万人で1620万人(15年)だから、出国率は13%程度にすぎません。

先ほどの「平成28年版高齢社会白書」によると、アジアの国々の高齢化率は以下のとおりです。

日本26.7
中国9.6
インド5.6
インドネシア5.2
フィリピン4.6
韓国13.1
シンガポール11.7
タイ10.5

今後、アジアの国々でも高齢化率が上昇することが予測されていますが、現状においては日本だけが突出して高いといえます。このことと出国率の低さには相関関係があってもおかしくないだろうと考えます。日本人は出不精になってしまいましたが、アジアの人たちは出たがりになっているというのは、そういうことです。

しかも、こんな記事があります。

外出する人の割合過去最低…特に20代低下(日本テレビ2016/12/26)
http://www.news24.jp/articles/2016/12/26/07350031.html

国土交通省が全国の都市で人の動きを調査した結果、家から外出する人の割合が過去最低を記録したことが分かった。

昨年度、調査日に外出した人の割合は平日で80.9%、休日で59.9%と1987年の調査開始以来、過去最低となった。特に20代の休日1日の移動回数は1.43回と70代の1.6回を下回り、若者が以前よりも外出しなくなっていることが明らかになった。

また、買い物や食事など私用目的で外出する回数も大きく減少している。中でも就業していない人は就業者よりも外出が少なく、外出率の減少の割合も大きいという。


高齢化率が世界でトップの日本で、若い世代の外出率が減少しているとなれば、出国率が低くなるのも無理はないでしょう。

もちろん、これには経済的要因など、それ以外の理由もいくつか考えられますが、いまさらそれ自体をどうこう論じても意味はあまりないと思います。日本の海外旅行者数は、1990年代までは堅調に伸びていましたが、それが止まるのが2000年代に入ってからです。高齢化率の影響もそうですが、一般に出国意欲は経済成長にともなって高まる傾向にあると考えられるからです。

であれば、日本の周辺の国の人たちがこれほど出たがりになっているという現実をどう受けとめるか。UNWTOが予測するように、今後も長期的にアジアのグローバル観光人口が増え続けるかはともかく、いま起きていることをしっかり見て、自分が何をすべきか考えればいいのだと思います。

こうした情勢もあってか、国内の旅行業者団体が今月中旬に「アウトバウンド(海外旅行者)促進協議会」を設立するそうです。

日本人の海外旅行低迷を打開へ 中国人観光客増え「日本人の地位低下」(SankeiBiz2017.1.30 )
http://www.sankeibiz.jp/business/news/170130/bsd1701300500006-n1.htm

記事によると、日本人出国者が伸び悩む一方、中国をはじめとしたアジアの国々の出国者が増加していることから、「海外旅行市場における日本人の地位が低下している」(日本旅行業協会関係者)のだそうです。

でも、この種の話はもう10年以上前から業界では言われていたことです。「地位」がどうとかいう話ではなく、今後多くの外国人観光客が日本を訪れるであろうことは確かのようなのですから、我々日本人もせめてもう少し海外の事情を知っておくべきだという観点から、若い世代を中心にもっと出国意欲を高められるような情報発信をしていく必要があると考えます。本来、人の移動は双方向であるべきなのです。
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by sanyo-kansatu | 2017-02-04 12:31 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 01月 26日

だから嫌われる!? 今年の春節も観光を政治の取引に使う中国にうんざり

まもなく春節休みに入りますが、ロイター通信が以下の記事を配信しています。

中国旧正月休暇の観光客渡航先、外交関係が影響も(ロイター2017.1.23)
http://jp.reuters.com/article/lunar-newyear-china-tourism-idJPKBN1570NQ

[上海/北京 22日 ロイター] - 中国は1月27日から2月2日まで旧正月の長期休暇に入り、連休中に海外を訪れる中国人観光客は600万人に上ると予想されている。台湾の旅行会社を経営するLi Chi-yueh氏にとって、旧正月は非常に重要な時期となる。

同氏の会社は売り上げの3分の1を中国本土の観光客から得ているが、今年は大きな期待は寄せていない。昨年5月に台湾で蔡英文政権が発足して以降、本土からの観光客は36%減少した。

同氏は「中国は観光客を外交面での武器として使っている」とし、「現状が改善しなければこの業界は生き残れないという懸念は強い」と述べた。

昨年8月に韓国を訪問した中国人観光客は前年同月比70.2%増、9月は22.8%増だったが、11月には増加率がわずか1.8%に急減。これは中東呼吸器症候群(MERS)の流行を受けて32%減となった2015年8月以来、最悪の数字となる。

米国は昨年11月、THAADが8-10カ月以内に韓国に配備される予定だと明らかにした。

<フィリピンやマレーシアでは急増>

対照的に、フィリピンとマレーシアについては、渡航勧告の解除やビザ規制の緩和を背景に中国人観光客の伸びが顕著だ。両国はいずれも過去数カ月間で中国との外交関係が緊密化している。

昨年3─12月にマレーシアを訪れた中国人観光客は前年同期比83%増加した。

マレーシアのナジブ首相は昨年11月に訪中し、約340億ドル相当の契約を締結した。

南シナ海の領有権をめぐって中国と対立してきたフィリピンでは、ドゥテルテ大統領が米国と距離を置く一方、中国に近づく姿勢を示している。昨年1─10月の中国からフィリピンへの観光客は前年同期比40%増となった。

中国人観光客は海外での支出額が最も大きく、ユーロモニターのデータによると、今年の支出額は2100億ドルに達する見通し。中国企業による2016年の海外企業合併・買収(M&A)総額の2倍となる。

<観光業は外交の一部>

中国本土の旅行会社はロイターに対し、一部の国への観光客の数が変わってきていることは認めたものの、特定の旅行先への訪問を控えさせるよう政府から指示があったかどうかについてはコメントしなかった。

国営旅行会社大手の中青旅(CYTS)の最高ブランド責任者は、「観光客は、訪れても歓迎されない可能性のある国は避ける」と述べ、「観光業は多くの面で外交の一部であることから政治・外交上の問題も影響する」と指摘。ただその上で、「パッケージ旅行を企画する際に基本となるのは旅行者の需要だ」と述べた。

春秋航空(601021.SS)の親会社である上海春秋国際旅行社はロイターに対し、台湾ツアーの運行頻度は減り規模も縮小したと明らかにした。韓国への団体ツアーは20%減少したという。「よく知られている」理由から、中国人観光客が「より友好的な他の旅行先を選びつつある」との見方を示した。

中国国際航空(エア・チャイナ)(601111.SS) (0753.HK)によると、欧州や東南アジアへの旅行者は増加している。同社のマーケティング責任者は「市場の需要に基づき運航路線を調整している」と説明した。


これまで本ブログで何度も指摘してきた話です。中国の旅行関係者から「観光客は、訪れても歓迎されない可能性のある国は避ける」というもっともらしいコメントを引き出していますが、上からの通達で彼らがそうしていることはすでに知られています。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです
http://inbound.exblog.jp/26367228/
フィリピンでも「爆買い」!?  それは中国が観光を政治の取引に使ったという話にすぎない
http://inbound.exblog.jp/26418629/

いまの中国において相手が「友好的」な国かどうかを判断するのは国民ではなく政府です。「観光は外交の一部」という言葉じりだけとれば、そのとおりなのかもしれませんが、本来、民間レベルの国際親善や異文化交流など、さまざまな意義のある観光をここまで露骨に政治の取引に使ってばかりいると、逆に多くの国々の人たちが旅行先として中国を選ばなくなるだろうということです。ここ数年の統計をみるかぎり、中国を訪れる外国人の数は伸び悩んでいることがそれを証明しています。

【追記】
先日、中国の旅行関係者から聞いた話では、今年中国から韓国へのチャーター便を利用したツアーはすべて禁止するよう当局からの通達があったそうです。航空機の座席を丸ごと旅行会社が買い取り、集客を図るチャーター便は大量送客の最も有効なビジネスモデルです。それを政府が民間企業に禁じるお国柄であることを知っておくべきでしょう。

そんなこともあって、いま韓国の旅行業者は日本客の誘致に力を入れようとしています。なかなか難しいのではないでしょうか。(2017.2.5)

【追記その2】
こんな記事も出ました。訪台中国人数が初の前年割れしたようです。

台湾に2016年、中国から訪れた旅行客の数が前年より約16%減少した。08年に中国人客の旅行が解禁されて以来、前年割れは初めて。一方、日本や韓国などからの訪問は増加し、海外から台湾を訪れた旅行客全体は1千万人を超えて、過去最高を記録した。

台湾の行政院(内閣)が今月、統計をまとめた。中国は昨年1月に当選した台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統に対して、台湾は中国の一部であるという「一つの中国」原則を認めるよう圧力を強めている。中国側の台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室の報道官は先月、「台湾当局の政策変更により、両岸(中台)の交流の雰囲気が悪化し、台湾に向かう民衆の意欲に影響している」などと述べていた。

統計によると、昨年の旅行客は1069万人(前年比2・4%増)。最多は中国からの351万人(同16・1%減)で、減少したとはいえ全体では最大の3割以上を占める。日本は2番目の190万人(同16・5%増)、3番目の韓国は88万人(同34・3%増)だった。

蔡氏は9日、自身のツイッターで全体数の記録更新を報告。英語や中国で使われている簡体字、日本語、ハングルなどで、「ありがとうございました!」とつぶやいた


台湾への中国人客、初の前年割れ 全旅行客では過去最高(朝日新聞2017年2月9日)
http://www.asahi.com/articles/ASK2944RHK29UHBI00T.html
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by sanyo-kansatu | 2017-01-26 03:07 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)