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2016年 12月 10日

今夏の大雨で北朝鮮・南陽のまちの景観は大きく変わりました

2016年8月29日~31日にかけて、北朝鮮北東部を襲った台風10号は、中朝国境を流れる豆満江(中国名:図們江)流域に大雨を降らせ、大洪水を引き起こしました。

多くの被災者や住居を失った北朝鮮住民が出たことは、洪水から数日後、北朝鮮の通信社が伝え、政府が「異例」の支援要請をしたことも報じられました。

北朝鮮北東部で「史上最悪」の洪水、4万4000人が避難(AFP2016年09月03日)
http://www.afpbb.com/articles/-/3099671

北朝鮮で深刻な洪水被害、政府が異例の支援要請(CNN2016.09.13)
http://www.cnn.co.jp/world/35088955.html

もっとも、事態の深刻さは、豆満江の対岸に住む吉林省延辺朝鮮族自治州の住民の目にはすでに明らかでした。とりわけ、北朝鮮との国境ゲートのある図們市からは、川向かいの咸鏡北道・南陽のまちが丸見えだったからです。

実は、北朝鮮北東部を大雨による洪水が襲ったのは、2015年夏に続くことだったのですが、昨年の場合、被災したのは、豆満江流域ではなく、羅先市などの日本海側に面した地域で、中国から見える場所ではありませんでした。今年4月に現地を訪ねた人の話では、中国国境から経済特区の羅先にある羅津港まで結んでいた舗装道路(中国側が羅津港の利用と引き換えに建設した)が、樹木をほとんど伐採してしまったはげ山からの鉄砲水で寸断され、多くの民家が流され、被災者が続出したそうです。それでも、彼の訪ねた8ヵ月後、被災地には仮設住居が建てられていたといいます。

高級車を連ねて経済特区を爆走 中国の観光客と北朝鮮に行ってみた(「週刊東洋経済」2012.9.29号)
http://inbound.exblog.jp/19750680/

今年の洪水後の南陽での復旧作業と住宅建設もまた、かなりのスピードで行われたようです。中国から(つまりは、世界から)丸見えの場所である以上、朝鮮側としては「見られている」ことを意識し、果断な処置を行ったことも考えられます。

その復旧の様子は、朝日新聞瀋陽支局の記者が定期的にウォッチングしていました。

(@図們)北朝鮮の洪水被災地はいま(朝日新聞2016年10月29日)
http://www.asahi.com/articles/ASJBT5W3MJBTUHBI029.html

この記事では、被災前の今年3月10日の南陽の写真から、大雨で豆満江があふれんばかりに増水している8月末、被災直後の9月10日、集合住宅の建設が進む9月24日の写真が掲載されていて、興味深いです。

北朝鮮、過酷な「200日戦闘」手作業で集合住宅建設(朝日新聞2016年11月1日)
http://www.asahi.com/articles/ASJBX7WZQJBXUHBI04Y.html

百年に一度といわれた洪水で被災した南陽は、11月中旬に入ると、約2カ月半の復旧作業によって、この写真のように、集合住宅の並ぶ町並みに一変しました。この写真は、現地在住の知り合いが送ってくれたものです。
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ちなみに、こちらは10月中旬の写真です。この時期には、まだ住宅の工事が続いていました。
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これらの写真を見て、ぼくはかなり驚きました。というのは、今年7月中旬、図們を訪ねていたからです。そのとき、撮った南陽の写真がこれです。
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大水によって荒々しく削り取られた川沿いも、1ヵ月半前はこのように緑で覆われていたのです。

以下、南陽のまちが見渡せる小高い丘から撮った当時の写真を並べてみましょう。
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集落の中に学校が見えます。
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高校生くらいの男子生徒がサッカーをして遊んでいます。
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中朝を結ぶ鉄道国境の朝鮮側です。
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撮影したのは、日光山森林公園の展望台です。
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同じ場所には、2014年夏にも訪ねていて、そのとき撮った写真はここにアップしていますが、今夏までとはほぼ変わっていませんでした。

図們から対岸の南陽(北朝鮮)の町を眺める(2014年夏)
http://inbound.exblog.jp/23906840/

しかも、1ヵ月半後には大水となる豆満江を遊覧ボートに乗って、今回ものんきに中朝国境体験を楽しんだりしていたのでした。

図們江で遊覧ボート乗船。草むらからこちらを覗く北朝鮮兵にドキリ
http://inbound.exblog.jp/23907143/

こうしてのどかなまちの景観は、大雨による洪水で大きく変わってしまいました。もうすぐ豆満江も氷結することでしょう。

【追記】
この記事をアップした3日後、前述の朝日新聞瀋陽支局の記者が図們を訪ね、南陽の写真を配信しました。延辺の友人が送ってくれた写真が撮られてから半月後(12月1日撮影)の様子といえます。

洪水被災地、50日でアパート群完成 北朝鮮、ほぼ手作業で(朝日新聞2016年12月13日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12702547.html

今夏に台風被害を受けた北朝鮮の咸鏡北道南陽で、新たに建設されていたアパート群が完成した。北朝鮮の朝鮮中央通信によると、咸鏡北道の被災地では先月11日までに、約1万1900戸分の住宅の建設が終わったという。

国連人道問題調整事務所によると、北朝鮮北東部を8月末から9月初めにかけて襲った台風による洪水被害の死者・不明者は500人を超え、約6万9千人が住まいを失った。南陽でも軍部隊や住民が動員され、5階建てアパートなどの建設が始まった。毎日早朝から深夜までほぼ手作業で建設にあたり、50日ほどで完成させた。

中朝国境を流れる図們江(北朝鮮名・豆満江)の対岸にある中国・吉林省延辺朝鮮族自治州図們の高台からは、入居したとみられる住民の姿が確認できた。図們の住民は「電気が不足しているのか、部屋の明かりは少ない」と話した。

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by sanyo-kansatu | 2016-12-10 09:35 | ボーダーツーリズム(国境観光) | Comments(0)
2016年 12月 09日

じわじわ増えている医療観光だが、盲点を突くあの手この手の不正も明らかに

ここ1、2年で、海外、特に中国からの医療観光がじわじわ増えてきているのを実感します。以前は、観光の合間にPET検診などを組み込む検診ツアーが多かったのですが、最近では、中国での治療を諦めていた重度のがん患者が日本の医療機関を利用するというケースも出てきています。「検診」から「治療」への切実なニーズの変化です。

医療の現場の国際化が叫ばれて久しいなか、高額な治療費の支払いをいとわない富裕層が訪日するのは、自然の流れだと思っていたのですが、いいことばかりでもないようです。いろんなことが起きています。

こんな記事がありました。

来日中国人が日本の医療費を不正受給している…国民健康保険に加入できる「経営・管理ビザ」を悪用!?(日刊SPA!2016.12.09)
http://nikkan-spa.jp/1246002

国民医療費が40兆円を突破し、日本の財政は危機的な状態にある。こうしたなか、一部の来日中国人が日本の医療制度に“タダ乗り”しようとしている。噂を聞いて取材を開始したところ、とんでもない実態が浮かび上がった!

■治療目的で来日して、国保に加入で恩恵享受!

中国人 爆買いが収束に向かうなか、安倍政権が見据える新成長戦略が医療ツーリズムだ。日本政策投資銀行は、’20年の潜在的市場規模を5500億円と見積もっている。

今や日本の医療の信頼性は世界の知るところとなり、日本での検診や治療を希望する外国人も増えている。しかし中には招かれざる客も紛れているようだ。

中国・広東省出身の40代の中国人女性Wさんは、3年前から患っているC型肝炎の治療のため、2か月前に夫を伴って日本にやってきたばかりだ。

「中国で1年ほどインターフェロン投与による治療を続け、一旦は治ったように見えたのですが、半年後に再発。そんななか、ほぼ完治するという特効薬・ハーボニーの存在を医者から聞いた。ただ、その薬は中国国内では承認されておらず、海外の医療機関で治療する必要があるとのことでした」

興味を持ったWさんは、海外への医療ツアーを斡旋する複数の業者に接触した。ちなみに中国のC型肝炎患者数は約4000万人以上おり、国民病だ。こうした事情を受け、海外でハーボニーによる肝炎治療を仲介する業者は数多く存在するという。ただ、欧米での投与は完治までの滞在費を含め1000万円近くかかる。上位中間層に属するWさんにとっても、即断できる金額ではなかった。

「後発薬が使用されているインドや東南アジアなら100万円以下で済むらしいのですが、不安で踏み切れなかった。そんなとき、ある業者が日本での治療という選択肢を提案してきた」(Wさん)

問題は彼女が支払う費用だ。

「医療費に業者への費用、滞在費をあわせて200万円ほどです」

国が定めるハーボニーの薬価は5万5000円で投薬期間は12週間。完治までには薬代だけで最低465万円がかかる計算となる。

「国民健康保険のおかげです。薬代は月に1万円までしか取られないですから」(同)

実は彼女の在留資格は、医療滞在ビザではなく、会社経営のために滞在する場合に発給される経営・管理ビザなのだという。留学ビザや経営・管理ビザ、就労ビザなどで日本に3か月以上合法的に在留するすべての外国人は、国民健康保険(会社員なら社会保険)への加入が義務づけられている。同時に、日本人加入者と同様の恩恵を受けることができる。ハーボニーは肝炎医療費助成制度の対象となっており、国保もしくは社保の加入者は、所得によって自己負担限度額が月額1万円もしくは月額2万円までに制限される。つまり薬価ベースでは465万円かかる投与が、最低3万円で受けられるのだ。さらにハーボニーの薬代以外の診察料や各種検査費用なども、国保なので「3割負担」で済む。Wさんが依頼した業者は、この制度に目をつけ、格安でC型肝炎治療を受けられる方法を彼女に売り込んでいたのだ。

ちなみに医療滞在ビザで来日し、ハーボニー投与を受けた場合、滞在費を含めて600万円以上になると業者から言われたという。

薬価と患者の負担額の差額は、保険料と税金によって賄われていることは言うまでもない。Wさんは「保険料はきっちり払っている」と強調するが、前年に日本で所得のない彼女の保険料は、最低額の月4000円程度だ。

多くの日本人は、健康状態にかかわらず国保や社保の保険料を一生支払い続けなければいけない。治療目的で来日して国保に加入し、支払った保険料を大きく超えるような医療サービスを受けるというのは、公正とはいえない。

ちなみにWさんのビザ申請は「業者任せなのでわからない」と言う。どういうわけか。中国人ジャーナリストの周来友氏が明かす。

「経営・管理ビザは、資本金500万円以上の会社を設立し、その代表取締役になる場合に申請できる在留資格で、まず1年間滞在することができる。500万円の“見せ金”を用意できれば、割と簡単に発給されるため、日本でマンションを爆買いして移住する中国人にも人気のビザです。ビザ申請のためのペーパーカンパニーまで用意してくれる行政書士もいる」

■薬の新薬オプジーボも1回約6万円で済む

国保への加入を目当てにしているのはC型肝炎患者だけではない。北京市出身の50代のFさんは、都内で親族が経営する貿易会社に就労ビザのスポンサーとなってもらい、3か月前に来日した。しかし、Fさんに勤務の実態はない。来日前からステージ3の肺がんを患うFさんは、通院と療養の日々を過ごしているのだ。

Fさんが難病を押して来日したのも、がん免疫薬のオプジーボと、日本の国保の手厚さを知ったのがきっかけだ。

夢の新薬とも言われるオプジーボだが、薬価は100mgで約73万円(来年2月以降に半額になる)。1回の投与では、体重1kgに対して3mgを点滴するため、体重60kgの人であれば約131万円分のオプジーボが必要となる。2~3週間に1回のペースで回復が見られるまで投与する。

「中国でも並行輸入されたオプジーボを1回40万円ほどで投与してもらえる。しかし、どのくらいで治るか見当がつかない。そこで、がん医療が発達しており、中国よりも医療費の安い日本で治療を受けることにしました」(Fさん)

オプジーボの投与には、ハーボニーのような医療費助成制度はない。しかし国保には、一定以上の医療費支払いが免除される高額療養費制度がある。東京都港区国保年金課に問い合わせしたところ「来日したばかりの外国人で、前年度の所得がない場合、高額療養費制度により限度額は月に5万7600円になる」とのことだった。

保険適用を巡り、薬価の高額さゆえ「亡国の劇薬」とも揶揄されたオプジーボ。2か月前にやってきたばかりのFさんは現在、保険適用によるオプジーボ投与の前提となる診察や治療を受けている途中だという。

一部とはいえ、こうした来日中国人の行いは言語道断だろう。

<医療費を圧迫!狙われる高額薬剤と手術>

●オプジーボ…点滴静注100㎎72万9849円
小野薬品工業のがん免疫薬。来年に半額になるが、それでも高額なことには変わりない

●ハーボニー(1錠)…5万5000円
米ギリヤド社が開発したC型肝炎治療薬。3週間の投薬による治癒率は90%以上とも

●副鼻腔炎手術…100万~150万円
蓄膿症を改善するための手術。一般的に2時間未満で終わり、日帰りも可能なため人気だ

●冠動脈バイパス術…200万~400万円
狭心症・心筋梗塞の治療を目的とした手術。天皇が受けたことで、中国でも有名になった

●脊椎固定術…100万~200万円
脊椎の問題部分を固定する、腰痛治療のための外科手術。中国では東洋医学的治療が主流


日本の国民健康保険ほどありがたいものは、世界を探してもそうあるものではありません。こんなにお得な制度をちゃっかり悪用することに躊躇がないところは、免税店からのマージンをもらっても確定申告もせず、帰国してしまうスルーガイドと同じでしょう。いずれも、彼らの存在を知っていながら、それを利用している日本人がいるところも共通しています。彼らがいる以上、今後もこうした「言語道断」はなくなりそうにありません。

こういう報道もありました。

中国人に処方箋薬を横流し容疑、業者・医師逮捕(読売新聞2016年8月26日)
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0826/ym_160826_1404838657.html

中国人観光客向けに処方箋が必要な医療用医薬品を横流ししたとして、警視庁が、医薬品卸売会社「美健ファーマシー」(東京都千代田区)の社長や医師の男ら計4人を、医薬品医療機器法違反容疑で逮捕したことが、捜査関係者への取材でわかった。

中国人ブローカーの自宅からは2万6000点を超える医薬品が押収されており、同庁は、同社が大量の薬品を組織的に横流ししていたとみている。

捜査関係者によると、逮捕されたのは同社社長の財間英信容疑者(49)のほか、40歳代の社員と60歳代の仲介役、40歳代の医師のいずれも男計3人。社員の男が、インターネットの掲示板を通じて中国人ブローカーと知り合い、財間容疑者に紹介したのがきっかけだったという。


この件については、同じ読売新聞で今年9月下旬、連載された特集「ニッポン観光の影」でも報じられていました。

処方薬 広がる横流し(読売新聞2016年9月26日)
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同記事では「訪日観光で爆発的に拡大した日中間の人の流れは、医薬品の『闇ルート』まで広げてしまった。厚生労働省の担当者は言う。『非正規の市場が広がると、偽薬の要綱などによる健康被害にもつながりかねない。不正流通の監視強化も検討しなければならない』」と述べています。

治療代640万 払わず帰国(読売新聞2016年9月28日)
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この記事によると「飛行機で脳卒中を起こしたベトナム系米国人の女性」が成田空港から緊急医療センターに運ばれ命を取り留めたものの、旅行保険に入っていなかったため、約800万円の治療費のうち、160万円分をクレジットカードで支払った後、帰国し、残りの640万円を踏み倒してしまったそうです。

同記事は「訪日観光の急拡大は、国内の医療態勢やサービス、交通網などに想定外の負荷をかけつつある」と指摘しています。

これからもいろんなことが起こるでしょう。情報の共有と態勢づくりがますます必要になってきました。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-09 15:08 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 12月 05日

外国客で行列のできる店 並んでわかった集客に成功した理由

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最近、外国客で行列のできる飲食店を見かける。なぜ彼らはその店だけに並ぶのだろうか。店側はどんな対応をし、集客を図っているのか。モノは試し。実際に、外国客に交じって行列に並んでみた。そこから見えてきた各店のノウハウとは――。

最初に訪ねたのは、JR池袋東口の明治通り沿いにあるラーメン店「無敵家」。

この店は、もう3年以上前から行列ができている。今回、筆者は初めて行列に並ぶことにした。

10月下旬の平日の午前12時少し前に店を訪ねると、明らかに外国客と思われる人たちばかりが列をなしていた。
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↑若いカップルや女性同士、小グループ客などいろいろ。アジア系が多く、自撮り好き?
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↑店の横脇に英語、中国語(繁体字)、タイ語で、列を並ぶ際の注意事項などが書かれている

行列を体験として楽しむアジア客たち

たまたま筆者の列の前にいたのが、キャリーケースを引いた中高年の男性。行列客としてはちょっと珍しいタイプで、試しに中国語で声をかけてみた。

「どちらからいらしたのですか? この店をご存知でしたか?」

すると、中国語がわかる相手がいたことに喜んだ彼は「北京から来た」と答えた。

「ひとりで日本に来ているんですか?」
「そうだよ」
「ホテルはどこに泊まっているんですか?」
「池袋に知り合いが住んでいるので、そこにね」

「この店、どうして知っているんですか? やはり微信(WeChat)?」

すると彼は「行列ができているのを見たからね。こういう店はうまいに違いないと思ったんだ」という。

少し意外だったのは、かつてこの年代の中国の人たちは外食の際、行列まですることはなかったからだ。それでも、最近の人気レストランでは、店の1階が広い待ち合いスペースになっていて、お茶やソフトドリンクなどを提供し、席が空くまで客を待たせているような店も増えている。「うまい店=待つのは当然」という認識が一般化してきたようだ。

「無敵家」では、店を早く回転させるために、行列客にメニューを渡して入店前に注文を取っている。そこで筆者は彼のために中国語のメニューを取り寄せた。
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↑彼は中国語のメニューを見ながら「のうこく麺(780円)」を注文した

並んでから約20分。入店が近づいてきた。入り口近くに、外国語併記で列を並んでもらうことへの店側のお詫びが書かれている。
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↑同店はトリップアドバイザーのグルメ分野、豊島区の口コミ数ランキングで堂々1位(2015年)。これが行列のできる理由だ

店内はカウンター17席と広くはない。空席がそこしかなく、彼と隣り合って座ることになった。しばらくすると、のうこく麺が出てきた。
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↑同店には英中韓タイ4ヵ国語のメニューが用意されている
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↑海苔に白地で英語と中国語で「welcome」と書かれていた

「どう、おいしい?」と聞くと、「还可以(悪くない)」と彼は答えた。いろいろ世話を焼いたお礼にビールをおごるという。彼の面子に応えるためにふたりで乾杯することに。

外国客で行列のできる店には、そこかしこに彼らを迎え入れるサービスが用意されている。多言語化されたメニューもそうだが、近所に迷惑がかからないように行列時の注意が書かれた告知もそう。一方、外国客は行列を体験として楽しんでいる印象だ。それが可能となるのも、彼らがSNSを通じて、この店は行列するものだとあらかじめ知っているからだ。それも含めて「無敵家に行ってきたぞ」とSNSで自分の追体験を報告できることが楽しみなのだろう。

麺創房 無敵家
http://www.mutekiya.com/

体験のすべてがネットに公開されている

次に並んだのが、渋谷にある「牛かつ もと村」。豚カツ同様に牛肉を衣に包んで揚げた料理一品のみの定食屋である。

11月上旬の午後1時、JR渋谷駅東口から明治通りに沿って恵比寿方面に向かって少し歩くと、すぐに行列が現れた。
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↑30人近い行列。ざっと見た感じ、外国客も多い

この店は9席しかないため、結局、1時間半も並ぶことに。筆者の列の後ろに韓国人の若いカップルがいたので、「どうしてこの店知ってるの?」と聞くと、韓国の旅行情報サイトで評判だという。
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↑彼女がスマホでみせてくれたのが、naver(http://section.blog.naver.com)というまとめサイト

ソウル在住のフォトライターの堀田奈穂さんによると「naverは韓国で最も多く利用されているまとめサイト。naver blogについては、IDを持っているとさらに詳しく見たり、コメントのやりとりができる」という。

実際に、同店を紹介するページをみると、外観から店内、料理まで細かに写真がアップされている。この店の特徴であるレアなカツの断面を見せたり、石板で肉のレア面を焼いているカットなど、ここで体験できるほぼすべてのことが写真で公開されている。これが初めてこの店を訪れる韓国客に安心を与えているようだ。いったん揚げたカツを自分の好みに合わせてさらに焼くというひと手間も、他の店では体験できないことかもしれない。

「牛かつ もと村渋谷店」を紹介するページ
http://choys0723.blog.me/220802039236
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↑「牛かつ もと村」の定食。最近、ソウルにも牛かつの店があるという

背景にアジアの食の多様化がある

それにしても、韓国人はそんなに日本料理が好きだったのか?

前述の堀田さんは言う。「韓国では日本食は単なるブームというよりは、定着に近い気がする。うどん、ラーメン、ハンバーグ、焼き鳥、いろいろある。ブログ全般についていえることは、お金をもらって書くパワーブロガーが書いたものとは違う、個人の経験によるブログを見て、飲食店や旅行先の情報収集するのが主流のようだ」。

宣伝臭の漂うプロのブロガーではなく、一般の個人客の体験を載せたブログの好感度が高いのは、それだけ韓国でも日本への個人旅行が一般化しているからだろう。

韓国における日本食の定着ぶりについては、コリアン・フード・コラムニストの八田靖史さんが今春上梓した『食の日韓論』(三五館)に詳しく書かれている。いま韓国では、日本の外食チェーンが驚くほど出店している。

八田靖史さん「韓食生活」
http://www.kansyoku-life.com/

だが、素朴な疑問がある。日本を団体旅行する韓国人を乗せたバスの運転手に聞くと、彼らの多くはトウガラシを持参して日本に来るという。日本の料理は刺激が足りないからだ。ではなぜ日本食は韓国で定着したのだろうか。

その点を堀田さんはこう説明する。「トウガラシを朝鮮半島に広めたのは日本であり、元々辛い物ばかり食べていたわけでは決してない。とんかつ、おでん、うどんなども日本の統治時代に入ったもの。近年では、諸外国の食べ物が東京のようにソウルなどの都市では普通に食べられるようになり、留学や渡航経験のある若者の影響などもあって、食の多様化が進んでいる。テレビ番組やインターネットの情報も大きい。

いまソウルのデパ地下は東京と遜色ない。日本人と同様で、辛い物は辛い物として食べるし、辛くないものはそのまま食べる、という感じだと思う。トウガラシを持って海外へ行くのは全員ではないし、海外の食文化を楽しむ傾向にある」。

同様の事情は中国でも上海などの経済先進都市では共通している。日本食のチェーンが多数出店していて、ラーメンの一風堂、丸亀製麺、CoCo壱番屋、サイゼリアなどもある。こうして若い世代を中心にアジアの都市では日本食の普及と食の多様化が進んでいるのだ。

おそらく彼らは、自分の国にはまだ出店していない日本の外食チェーンやグルメの流行を見つけて楽しんでいるのだろう。

独自のシステムを体験する面白さ

外国客で行列のできる店といえば、広く知られているのが一蘭ラーメンかもしれない。

では、一蘭ラーメンにはいつ頃から、どんな理由で外国客が行列するようになったのか? 同店の広報・宣伝担当の三浦卓さんに話を聞いた。

-いつ頃から外国客が現れるようになったのか。そのきっかけは何だったのか。

「いつ頃からとははっきり言えないが、特に増えたのは3~4年前から。やはり口コミで広がり、フェイスブックやインスタグラム、微信などのSNSによるものだと思う。

もっとも、すでに10年以上前から外国客は、いまほどでなくてもいた。一方、全国に62店舗展開しているうち、すべての店に外国客が来ているのではなく、渋谷や新宿、池袋、浅草などの外国人観光客の多い特定の店に限られる。JR渋谷駅に近い渋谷店は行列ができるが、スペイン坂店には少ない。これもSNSの影響だと思う」。
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↑今回訪ねたのは、新宿3丁目店。アジア客が多いが、白人女性や黒人男性も並んでいた

-どの国の人たちがよく訪れているのか。

「多いのは、中国や台湾、香港、東南アジアの方だが、最近は欧米の方も増えている。当店のとんこつスープには臭みがないので、欧米の方にも親しんでいただけると思っている。また替え玉という博多ラーメン特有のサービスが体験できることも魅力かと」。

-一蘭ラーメンに外国客の行列ができる理由は何だとお考えか。

「3つあると考えている。まず、SNSで「イイネ」が海外に拡散されたこと。これがご来店の最大の動機になっていると思う。

2つめは、創業以来変わらないとんこつラーメンの味への支持だ。

3つめは、食券購入や独自のオーダー記入用紙、仕切り壁の食空間という独自のシステムを体験してみたいということではないかと思う」。
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↑仕切り壁に隔てられ、各々ラーメンに向き合う独特の空間

三浦さんによると、独自のオーダーシステムや仕切り壁などは、1993年に同店が法人化し、福岡でチェーン展開を始めた当初から導入されていたという。女性でもひとりでラーメンを食べられるようにという配慮があったそうだ。
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↑これが「味集中カウンター」。テーブルにオーダー用紙が置かれている

スープの味や濃さ、特性ダレの量、麺のかたさなど、7項目からを自分の好みで選べるしくみが面白いのは、アジアの屋台で麺を食べるときの習慣に似ていることだ。たとえば、タイで麺を注文するときは、まず麺の種類を選び、唐辛子入りナンプラー(プリック・ナンプラー)、唐辛子(プリックポン)、唐辛子入り酢(プリック・ナムソム)、砂糖(ナムタン)の4種類がテーブルに用意されていて、自分の好みで調合してから食べる。

日本のラーメンは一般的に、その店の味をありがたく、そのままいただくという感じが多いのに対し、一蘭ラーメンでは自分で味の好みを決められるというしくみが外国客、特にアジア客に支持されているのではないかと考えられる。
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↑日本語以外は、英語、中国語(繁体字)、ハングルが用意される
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↑同店も「天然とんこつラーメン」のみの一品メニュー

-今後の展望をどうお考えか。

「国内外にこだわらず、出店を加速したい。10月19日にはニューヨーク店、11月17日には中野店も開業した。中野はサブカルの町として外国人にも知られるようになっているから楽しみだ。ラーメンという日本独自の文化をいかにつきつめるか。ブランドとして維持できるかに、今後も注力していくつもりだ」。

一蘭ラーメン
http://www.ichiran.co.jp

ラーメンが日本食の一ジャンルとして定着

一蘭ラーメンの躍進の背景について、三浦さんは「何よりラーメンが日本食の一ジャンルとして定着したこと」が大きいという。つまり、日本に来たら、すしやてんぷら、鉄板焼きを食べるのと同じようにラーメンも体験したいと多くの外国客が考えるようになったのだ。

では、それはいつ頃からの話なのだろうか。

台湾や香港でKADOKAWAの現地情報誌の立ち上げに尽力した編集者の鈴木夕未さんによると、2000年代後半頃から日本のラーメン特集が人気企画としてよく取り上げられたという。
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↑『香港ウォーカー』のラーメン特集のページ(2015年)より

前述の池袋のラーメン店「無敵家」の関係者によると、取材を受けた覚えはないのだが、2000年代の半ば頃、台湾に行ったとき、現地の雑誌で同店が紹介されているのを見たそうだ。つまり、SNSが普及する少し前から、台湾や香港などでは、日本のラーメン店が現地メディアで紹介されるようになっていたのだ。

興味深いのは、それらの記事に「ラーメン分析アイコン」という項目があって、紹介する各店ごとに、麺の太さや形、量、ベースとなる味(醤油、とんこつ、魚介など)、濃さなどが記されていることだ。

これは日本の情報誌が以前から採り入れていた編集手法だが、こういう下地が現地情報誌を通じてあったことも、台湾や香港の人たちが一蘭ラーメンのオーダーシステムに慣れていた理由といえそうだ。入店してから自分の好みを用紙に書き込むというひと手間も、体験として面白がられていると考えられる。

これまでみてきたことから、外国客の集客に成功している飲食店の共通点が見えてくる。どの店も、最初から外国客を呼び寄せようと考えていたわけではない。海外のメディアやSNSによって突然、知られるようになり、外国客が増えてくるにつれて、多言語化も含めた臨機応変な対応を無理なく進めてきていることがわかる。また同じチェーン店でも立地により集客状況がまったく違うこともわかった。

外国客が食を体験として楽しむうえでのユニークなひと手間があることも共通している。だが、それはなにも外国客向けに用意されたものではなく、国内客のために提供されていたものだ。

今年6月、トリップアドバイザーが「外国人に人気の日本のレストラン 2016」を発表しているが、上位にランキングされているのは外食チェーンではなく、個性ある単店ばかり。ラーメン店に限らず、今後どんな飲食店が注目されることになるか楽しみだ。

トリップアドバイザーが「外国人に人気の日本のレストラン 2016」
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/06/20160621_TripAdvisorPressRelease.pdf

※やまとごころ特集レポート30回
http://www.yamatogokoro.jp/inbound/report/1447/
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by sanyo-kansatu | 2016-12-05 10:06 | やまとごころ.jp コラム | Comments(0)
2016年 12月 01日

トリップアドバイザーにまつわる数字と日本のインバウンドの話

先日、恵比寿ガーデンプレイスの34Fにあるトリップアドバイザー日本法人オフィスで開かれた同社のメディアラウンドテーブルに出席しました。今年9月に着任した牧野友衛代表取締役の紹介も兼ねたものでした。
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トリップアドバイザーは、世界最大の旅行コミュニティサイトとして知られています。今回のメディアラウンドテーブルの内容は、同サイトが旅行業界にもたらすプラスの効果をはじめ、インバウンドビジネスのトレンド、さらに国内ユーザーに向けた取り組みなどの紹介でした。そのあたりの話は、他に出席していた記者の方々がいたので、おまかせします。ぼくはあくまで日本のインバウンドに関する話題だけを以下、紹介します。

トリップアドバイザー
www.tripadvisor.jp

まず牧野代表取締役の紹介がありました。AOLジャパンやGoogle、Twitter Japanなどの多国籍IT企業を転々としてこられた方のようです。
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そして、トリップアドバイザーにまつわる数字が次々挙げられました。パワポの数字は、若干古いものだそうで、たとえば、サービスを展開する国の数が48カ国とされていますが、最近、ポルトガルが加わり、49カ国になったとか。まあとてつもない数字が並びます。

旅行者からの口コミ情報数 4億3500万件以上
月間利用者数 3億9000万人以上
旅行者からの写真投稿数 8000万件以上
登録施設数(ホテル、レストラン、観光施設) 680万軒以上
49の国と28言語で展開
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本社は東海岸のボストンにあるそうです。日本語でのサービス開始は2008年10月。開設が訪日旅行市場が急拡大する時期と重なったこともあり、外国人が日本を旅行するときに利用する情報サイトとしての存在感を得ていったと思われます。

では、どこの国の人が日本の情報をよく見ているのか。
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トップは米国で17.1%、2位は中国10.9%、以下、台湾10.2%、香港8.0%、オーストラリア7.0%という順です。トップ5で、全体の50%以上を占めるようです。米国発のサービスだけに、米国がトップなのはもちろん、韓国を除くと、訪日旅行者数トップ5が入っているのは当然です。台湾や香港、韓国などは、トリップアドバイザー以外の自国の情報サイトやコミュニティが充実していそうですから、こんなものでしょう。

これはぼくの想像ですが、アジアのユーザーはトリップアドバイザーに北米ユーザーが多いことは承知でしょうから、普段利用している自国サイトとは別の観点からの情報を得たり、参考にする場合に利用するという感じではないでしょうか。また中国人の場合、日本語のわかるコミュニティの人たちではなく、大学で英語を学んだり、外資系に勤めているような人たちがトリップアドバイザーを利用している気がします。

次の円グラフはちょっとわかりにくいのですが、アジア太平洋地区の国々に絞って、どの国がよく見られているかを集計したものですが、左の図は全世界からみた割合で、右はアジア太平洋地区の国々からみた割合です。ともに日本がトップです。以下はインドやオーストラリア、タイなどです。
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ところが、米国ユーザーに絞ってどの国をみているかとなると、日本は大きくダウンします。全体のわずか2%でしかありません。メキシコや欧州の国々が上位に入るのは、まあ当然でしょう。
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一方、中国ユーザーの場合は、トップがタイと日本でともに13%です。
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そんなわけですから、トリップアドバイザーによる世界の人気観光都市ランキングでは、東京は21位といったところです。
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これらの数字は、やはりトリップアドバイザーのメインユーザーが北米であることに起因していると思われます。

ところで、日本のホテルやレストラン、観光施設などの登録物件は現在、70万件だそうです。そのうち、日本語による口コミは全体の92%を占めるそうです。
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トリップアドバイザーは多言語化が進んでいるので、これらの日本語の口コミも海外では自動翻訳されて読むことができます(すべての国・地域ではない)。

さて、この数字をインバウンドの観点からみると、トリップアドバイザーの日本の物件に関する外国人の口コミは全体の8%にすぎないともいえます。同サイトはよく「外国人に人気」の観光スポットやレストランといったプレスリリースを発信していますが、これも8%の口コミの中から集計したものです。

ぼくは、すでに国内にはさまざまな旅行情報サイトやコミュニティがあるため、トリップアドバイザーは日本人が海外に行くときの口コミをチェックするためのサイトかとずっと思っていたのですが、国内物件に関しても日本語の口コミが大半を占めるんですね。

実は、FBにこの話を書いたら、知り合いの旅フリークのひとりが「クチコミ1件で100マイル(月間400マイルまで)をもらえていた時は、地元の情報を含め国内のクチコミをたくさん書きました。今は、ほとんどもらえないので書いていません」なんて教えてくれました。そうか、開設当初はとにかく登録物件数を増やせということで、キャンペーンをやっていたのですね。

この点に関して、ぼくはまったく勘違いをしていました。トリップアドバイザーに登録されている物件に口コミ件数が載っていますが、これは日本語と外国語を合わせたものなのですね。であれば、各都道府県別や地区別のランキングも、日本人と外国人の口コミを合わせた件数で、その比率まではわからないということです。

えっ、そんなの当然だって? そりゃそうか。外国人に限る集計は、トリップアドバイザー内部でしかできないわけで、そうなると貴重です。実際、同サイトのプレスリリースのリストをみていると、なかなか興味深いものが多いです。

たとえば、これなんか面白いですね。

トリップアドバイザー『旅行者物価指数(トリップインデックス)2016』を発表(2016.7.20)
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/07/00da71d62a5a3bd076514bf66c0c1903.pdf

これは世界20都市における旅行費用のランキングです。トップはニューヨークで、2位は東京だそう。最も安いのはハノイです。

またこんなのもありました。

中国人旅行客向けにレストランのモバイルクーポンサービスを開始(2016.11.26)
https://tg.tripadvisor.jp/news/wp-content/uploads/2016/11/20161125_TripAdvisorPressRelease.pdf

これはトリップアドバイザーの中国版「マオトゥイン(猫途鹰)」のモバイルサイトやアプリから利用できるそうです。モバイルサイトや店舗のオフラインQRコードからスペシャルクーポンをダウンロードし、それを提示することで割引や無料のサービスなどを受けられるとか。

リリースによると「中国版「マオトゥイン(猫途鹰)」にて中国人旅行者が検索できる日本国内のレストランは600,000軒以上で、そのうちの約88,000軒が東京のレストランとなります。現在、同サービスは東京のレストランを中心に展開をしており、引き続きサービスを提供するレストラン店舗の拡大を目指して参ります」とあります。

トリップアドバイザーはぐるなびと提携しているそうなので、こういうサービスが実現できるのでしょう。でも、中国人からいきなりスマホを見せられて対応できる飲食店はどれほどあるのでしょうか。そんなことが気にならないではありません。

ところで、3年前のことですが、トリップアドバイザーの別の関係者の話を聞いたことがあります。

台湾でいまホットな話題は「シニア旅行」と「自由旅行」(台北ITF報告その6)
http://inbound.exblog.jp/21417412/

台北で開かれていた旅行博のフォーラムに登壇したトリップアドバイザーアジア太平洋地区副総裁(当時)のCindy Tanさんで、「他の類似サイトの追随を許していないことから、世界のFITの支持を勝ち得ている。年間書き込まれる1億件のコメントのうち、51%はホテルに関するもの。膨大な口コミ情報をフィードバックできることが、弊社のホテル業界に対するマーケティング・ビジネスを支えている」とコメントしていました。

3年前の口コミ数は1億件だったようなので、いまは4倍以上に増えているのですね。それと、このサービスの収益の大半は、ホテル業界との関係によるものだと彼女も話していましたが、牧野社長も同様の話をしていました。要は「ホテル予約の際のクリック型広告による」ものだそうです。Booking.comと提携しているとか。ホテル予約サイトとは立ち位置が違うところが、このサービスの面白いところだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-01 13:09 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 30日

タイでも「ゼロドルツアー」摘発! キックバックに頼る中国人ツアーは万国共通

こんな記事をネットで見つけました。タイのインバウンド市場に関するニュースです。

タイ、12~2月の観光ビザ申請無料に(newsclip.be2016年11月23日)
http://www.newsclip.be/article/2016/11/23/31278.html

2016年11月22日、タイ国軍事政権は2016年12月1日から2017年2月28日までの3ヵ月間、観光ビザの申請料1000バーツを免除し、到着時ビザの申請料を2000バーツから1000バーツに引き下げることを閣議で承認した。

タイは例年、乾期の11月~2月が観光のピークだが、今年は中国人向けツアーの取り締まりや、プミポン国王死去にともなう自粛ムードなどから、観光者が減少してしまうことが懸念されている。今回の施策はそんな中で旅行者誘致が狙いとみられる。

タイは乾期の11~2月ごろが観光の書き入れ時だが、今年は中国人向け「ゼロドルツアー」の取り締まり、10月のプミポン国王死去にともなう自粛ムードなどで、客足が鈍ることが懸念されている。


えっ、「ゼロドルツアー」って何? 記事は以下のように説明します。

「ゼロドルツアー」はタイでの宿泊費、食費、ツアー費などが全て無料とうたった中国人向けツアー。ツアー参加者がタイ滞在中に宝石店、皮革製品店、絹製品店などに連れて行かれ、高値で商品を買わされるなどトラブルが多く、軍政が取り締まりを進めている。取り締まりの影響で、一部の観光地で中国人旅行者が激減したという報道がある。

なるほど。要するに、日本で行われているような免税店で購入した土産物の売上からキックバックをもらい、ホテルやバス代、食事代などのコストを切り盛りする中国人ツアーがタイでも行われているということです。

ネットで調べると、今年9月、タイでこの種のツアーを扱うランドオペレーターが摘発されたことがわかりました。

中国人向け「ゼロドルツアー」運営会社を摘発(グローバルニュースアジア2016年9月18日)
http://www.globalnewsasia.com/article.php?id=3756&&country=2&&p=2

2016年9月13日、タイ警察は資金洗浄取締法、旅行業法などの違反容疑でバンコクの大手旅行会社OAトランスポートの会長であるタイ人女性(61)と、その息子(26)で取締役の2人を逮捕した。

この逮捕に先立ち、タイ資金洗浄取締局(AMLO)は9日、OAトランスポートが所有する大型バス2000台以上、計90億バーツ相当の他、銀行預金、現金など42億バーツを差し押さえた。

OAトランスポートは「ゼロドルツアー」と呼ばれる、タイでの宿泊費、食費、ツアー費など全て無料とする中国人向けツアーを、中国の旅行会社と組んで運営し、巨額の利益をあげていた。

「ゼロドルツアー」に関しては、ツアー参加者がタイ滞在中に宝石店、皮革製品店、絹製品店などに連れて行かれて、高値で商品を買わされるケースが頻発し、タイ軍事政権が取り締まりを指示していた。


さらに検索すると、以下のブログの記事も見つかりました。

そのブログ「タイ字新聞、タイ語の記事をとりあえず日本語に」(http://taigoshinbum.blog79.fc2.com/blog-entry-1550.html)によると、

摘発されたのは「大手のゼロ・ドル・ビジネスを行っている会社、フーアン社、シンユアン社」の2社。「2社とも、違法にタイのIDカードを用いてツアー会社を設立し、秘密結社法に違反していた。資金洗浄取締局の財産没収罪となる。その後の拡大捜査で、広範なネットワークを持つ大手のオーエー・サーンサポート社に捜査が及び、ツアーバスが押収された」。

「5日間の飛行機代、車代、滞在費と食費を入れて、だいたい2,000~5,000バーツだ。ツアーの主催者はツアー料金があまりに安すぎると考えるが、中国人のツアー客を毎晩引き連れて買い物させ、商品価格の35-50%をサービス料として割り増している」と解説しています。

気になるのは、「フーアン社、シンユアン社」の実態です。あとでタイの知人に聞いてみたいと思います。

さて、これは日本に限らず、香港、台湾、韓国、オーストラリアなどのアジア太平洋地区、そして欧米諸国でも、万国共通で当たり前に行われていることですから、いまさら驚く話ではありませんが、「ゼロドルツアー」というネーミングがいかにもタイらしいというべきか。

結局、こうしたことは、中国国内のビジネス慣行を海外にもそのまま持ち出し、在外華人らと結託することから起きてしまうことですが、摘発による影響で中国人観光客が減少したことから、今度は観光ビザ代の申請料免除で、各国の旅行者を呼び込もうというわけでしょう(日本人はもとからビザ不要なので関係なし)。大挙して来れば問題を起こすし、来ないとなれば困る。それは周辺国の抱えるジレンマです。難しいものですね。

この人騒がせな中国人ツアーをめぐる各国の対応と攻防はこれからも続くことでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-30 14:54 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 30日

フィリピンでも「爆買い」!?  それは中国が観光を政治の取引に使ったという話にすぎない

昨日、ネットで以下の記事を見つけました。フィリピンを訪れる中国人観光客が増えているのだそうです。

ドゥテルテ訪中効果?中国人観光客増で”爆買い”期待(WEDGE2016年11月29日)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8321

フィリピンを訪れる中国人観光客が急増している。比中関係は2012年4月以降、南シナ海における領有権争いの問題で長らく冷え込んでいたが、ドゥテルテ大統領による10月半ばの訪中で関係が回復した。また、中国当局がフィリピンへの渡航自粛勧告を解除したことも追い風になり、今後はさらなる増加が予想されている。

フィリピン観光省の統計によると、今年1~8月の中国人観光客数は約48万4500人に上り、韓国人(約97万6400人)、米国人(約58万4100人)に次いで3番目に多かった。

フィリピンへの外国人観光客数は昨年まで、上位3カ国は韓国、米国、日本の順で長らく変わることはなかった。日本と僅差で4位につけた中国は今年、現段階で4位の日本(約36万7100人)を大きく引き離しているため、通年で中国が3位にランクインするのはほぼ確実な情勢だ。中国人観光客の前年同期比の伸び率は50%と突出して高く、2位の米国をも抜く勢いで増え続けている。

フィリピン観光省によると、中国人観光客が急増している背景には、数年前からチャーター便を利用した団体客が増えたことが大きい。300人程度の団体客が、北京や上海など、中国各地の大都市からフィリピンの有名リゾート地であるボラカイ島やセブ島へ大挙して押し寄せているという。

3泊4日のツアーで客層は中年が多く、1日当たりの出費額はホテル代込みで80ドルに上る。日本で一時期話題になった「爆買い」には及ばないが、この勢いを受けて昨年、フィリピンと中国を結ぶ便数も増え、観光客増に拍車を掛けることになった。

ドゥテルテ大統領が今回の訪中で取り付けた中国からの経済協力は240億ドル(約2兆5000億円)という莫大な額だ。この影響で中国からの観光客増はさらに見込まれるが、観光省の担当者は「これまで通りボラカイ、セブ両島だけでなく、他の魅力ある島への誘致も進めたい」と意気込む。

ただし、昨年末にはボラカイ島のホテルで中国人観光客のグループ約30人が乱闘騒ぎを起こして警察に拘束される事件が起きており、マナーという点で懸念も残されている。


この話、どう思いますか? ぼくはこれを聞いて、呆れてしまいました。なぜなら、香港、台湾、韓国でいま中国政府が何をやっているかと思うと、あからさますぎるからです。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです
http://inbound.exblog.jp/26367228/
韓国は無視? 東京で日中観光大臣会談の気になる背景
http://inbound.exblog.jp/26408250/

中国政府は、自分の気に入らない国には観光客を送るのをブレーキをかけさせ、ドゥテルテ大統領の登場で対中関係を表向き改善したフィリピンには、観光客を送るよう仕向けているわけです。

この記事では、フィリピンでも「爆買い」か!? と面白がっているのかもしれませんが、 それは中国が観光を政治の取引に使ったという話にすぎません。まったくシラけた話です。

それに、増えているのは中国の団体客です。要するに、来るのはキックバックモデルの安いツアーばかり。それを成り立たせるために、土産の大量買いが起こるのでしょうが、数年もすれば、他のアジアの国々と同じように問題も出てくることは必至です。

中国客が増えても大歓迎といえないのは韓国、台湾でも同じらしい
http://inbound.exblog.jp/23872141/

フィリピンを訪れる外国人数で、昨年まで韓国、米国に次ぐ3位だった日本は、今年中国に抜かれるそうです。もっとも、昨年フィリピンを訪れた日本人は37万人相当だったようなので、今年は日本を訪れるフィリピン人の数と変わらなくなるかもしれません(2016年1~10月の訪日フィリピン人数は前年比30.9%増の27万6500人)。

こちらは時代の変化を感じさせる話です。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-30 14:31 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 26日

韓国は無視? 東京で日中観光大臣会談の気になる背景

今週、以下の記事が配信されていました。今年9月に中国の武漢で開催される予定だった日中韓3ヵ国の観光大臣会合が中国側の事情で延期になっていましたが、メディアによると「(中国側代表は)米国での観光イベントに出席した帰路、会談のために日本を訪問」(トラベルヴィジョン2016年11月24日)し、日中のみでの会談が実現したようです。

「ぼったくり追放」も合意 日中両国が観光拡大の覚書(産経ニュース2016.11.24)
http://www.sankei.com/world/news/161124/wor1611240041-n1.html

石井啓一国土交通相と中国の李金早国家観光局長は24日、日中観光の活性化について意見交換し、観光交流の拡大や観光サービスの質向上に向けて協力するなどの内容を盛り込んだ覚書に署名した。また、来年の日中国交正常化45周年、翌年の日中平和友好条約締結40周年の節目に合わせ、共同イベントを企画する方向で合意した。

覚書の合意事項は、(1)地方間交流や青少年交流、文化・スポーツ交流の3分野での観光交流促進(2)東アジア域外からの観光客誘致(3)観光サービスの質向上(4)「ぼったくりツアー」といった違法行為の是正など観光市場の監督と協力の強化(5)重要事項を定期的に協議するメカニズムの整備-の5点。

会談で、石井氏は中国からの訪日客が10月までに551万人に達したと説明し、「双方向の観光交流を一層拡大することが重要」との認識を示した。


両国の合意事項として挙げられる5点のうち、興味深いのは、(2)東アジア域外からの観光客誘致と(4)「ぼったくりツアー」といった違法行為の是正など観光市場の監督と協力の強化でしょうか。これはどういうことを指すのか。

産経の記事は大雑把なので、別の記事を見てみましょう。

中国から国家旅游局長が来日、石井大臣と会談、MOUも(トラベルヴィジョン2016年11月24日)
http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=75421

記事の一部を以下、抜粋します。

「東アジア域外からの観光客の誘致」については、15年の3大臣会合で決定した「ビジット・イースト・アジア・キャンペーン」の推進をはかるとともに、20年夏の東京オリンピックと22年冬の北京オリンピックについて情報と経験を共有することで一致。「観光サービスの質の向上」「観光市場の監督と協力の強化」では、観光客にとってより安全で快適な環境を作るため、不合理な格安ツアー、買い物の強制、ぼったくり行為などの減少に向けて連携することを確認した。観光庁は啓発のための新たなポスターを、近日中に制作する予定。

ここでは両国の合意事項の中身についてもう少し詳しく書いています。(2)については、2020年夏の東京オリンピックと2022年冬の北京オリンピックの開催が決定していることから、東アジア全体で海外からの旅行者の集客について協力しようということでしょう。
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そして(4)については、以前本ブログでも解説した中国のキックバックスキームに依存する安価なツアーの問題と、そのようなツアーがキックバックを得るために客を連れて行かなければなかった日本国内にある「ブラック免税店問題」を指していると思われます。今日、日本を訪れる中国人観光客は日本人の訪中客よりダブルスコア以上に多いことから、中国側としてはこの問題についての日本側の姿勢を問い正したいと考えていても不思議ではありません。要は、多くの訪日中国客を騙す「ブラック免税店」を日本の監督官庁はきちんと取り締まってほしいということなのでしょう。

中国「新旅游法」は元の木阿弥―キックバックを原資としたツアー造成変わらず
http://inbound.exblog.jp/24166349/

日本のブラック免税店が中国客を陥れる!?
http://inbound.exblog.jp/25875503/

それにしても気になるのは、なぜここに韓国側代表がいないのか? お国の事情がそれどころではないのかもしれませんが、なんだか韓国だけ除け者にされているような感じです。2018年には平昌冬季五輪もあるというのに…。

「日中韓観光大臣会合」は2006年から毎年行われていましたが、尖閣諸島「国有化」で、12年以降、中国側が一方的に開催を拒絶していたものの、15年4月、4年ぶりに第7回目として再開され、冒頭で述べたように今年も9月に開催される予定でした。ところが、今夏の中国、特に内陸部は大雨で被災したことから、延期となっていました。

武漢での日中韓観光大臣会合が延期に、理由は水害(トラベルヴィジョン2016年8月7日)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=73790

武漢市各所が豪雨のため冠水、「航海」する車や人々(人民網日本語版2016年06月02日)
http://j.people.com.cn/n3/2016/0602/c94659-9067233.html

当時中国メディアは、被災地の正確な状況や被災者数などを詳しく伝えず、人民解放軍らが復興支援で活躍する様子ばかりをテレビに映すので、知り合いの中国人たちは不安を隠せないと話していました。9月上旬、日本旅行業協会(JATA)の知人から「会合が延期になり、武漢行きがなくなった。どういうことだろう?」と聞かれ、場所が武漢であれば仕方がないと答えたことがあります。この時期、海外メディアには武漢に来てもらいたくないという事情もあったかもしれません。

今年、中国とアメリカは「中米観光年」を迎えていました。両国の観光交流を相互促進しようという年だったのです。

習近平主席が「中米観光年」閉幕式に祝辞(人民網日本語版2016年11月22日)1
http://j.people.com.cn/n3/2016/1122/c94474-9145227.html

米国で開催されたイベントの「帰路」に中国の国家観光局長が日本に立ち寄ったというのは、そういうわけです。

いま中国は香港、台湾のみならず、THAAD配備を決めた韓国に対しても徹底して報復措置を実施しているところですから、お呼びではないということなのかもしれません。日本側もわざわざ声をかけるという気にならなかったということか。

香港、台湾に続き韓国も。中国政府が訪韓中国人観光客を20%減らすよう通達を出したそうです
http://inbound.exblog.jp/26367228/

ここ数年、日本を訪れる外国人観光客が増えている反面、中国を訪れる外国客は伸び悩んでおり、北京冬季オリンピックに向けて、この方面については日本と協力したいという思惑が彼らの側にはあるのかもしれません。

アジアで珍しく外国客数が伸び悩む中国の観光PRのお寒い中身
http://inbound.exblog.jp/24475269/

だとしても、ここまで露骨に観光を政治の取引に使う中国との協力を、どこまで本気に進めればいいものか、考えてしまいます。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-26 14:14 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2016年 11月 16日

〔TBS・Nスタ〕中国人観光客はなぜ民家に侵入して自撮りをするのか?

昨日の夕方にTBSを視ていたら、やれやれ……。中国人観光客のマナー違反を伝える特集が組まれていました。

世界遺産に大量1円玉 外国人客マナーに困惑(TBS Nスタ ニュースアイ2016年11月15日)
http://www.tbs.co.jp/n-st/

最近、この種の番組が多いのは、時代の流れだろうと思います。ただし、番組の作り手があまりに何も知らないため、視聴者をミスリードする傾向が強いことが気になります。

番組では、まず民家の庭で自撮りする迷惑な中国人観光客たちが映し出されます。番組のディレクターは彼らを隠し撮りをします。それでも、ゾロゾロ彼らがやって来るのは(番組では触れられていませんが)、理由があります。

この特集の舞台である山梨県の忍野八海は、東京・大阪ゴールデンルートの定番立ち寄り地です。一般に中国に限らず、アジアからの団体ツアーは、富士山五合目までバスで登る前後に忍野八海に立ち寄ります。

忍野八海は「天然記念物である「忍野八海」は、富士山の伏流水に水源を発する湧水池です。富士信仰の古跡霊場や富士道者の禊ぎの場の歴史や伝説、 富士山域を背景とした風致の優れた水景を保有する「忍野八海」は、世界遺産富士山の構成資産の一部として認定」されています。

忍野八海
http://www.vill.oshino.yamanashi.jp/8lake.html

中国大陸ではめったに見られない美しい湧水池は、彼らにとって観光的にも価値が高いといえますし、東京に向かう途中にあるので、バスで立ち寄りやすいことが、彼らの訪れる理由なのです。東京発の外国人向けはとバス富士山日帰りツアーでも立ち寄り地になっています。

それはともかく、なぜ彼らは民家に侵入して自撮りをしたがるのか?

最初に言っておきますが、ぼくは彼らを弁護しようとしているのではありません。しかし、この番組を視て、ただやみくもに腹を立てる前に、彼らの無作法なふるまいの背景を知っておくことは、同じような問題が他の場所で起こったときの解決や予防に役立つのでは、と思うからです。なんだか言い訳がましく聞こえるかもしれませんが、まあ聞いてください。

彼らが民家に侵入してしまうのは、以下の3つの理由があります。

①手入れの行き届いた日本の庭が魅力的に見える
②マンション暮らししか知らない中国人の一戸建てへの憧れ
③門番のいる住宅環境ゆえに、侵入の意識がない

まず①ですが、日本では個人宅でも庭に手を入れることを趣味にする人が多く、中国の庭のコンセプトとはまったく違うことから、彼らにとって新鮮で魅力的に見えることです。中国の代表的な庭園といえば、たとえば上海の豫園に見られるような中国江南的な世界です。

豫園
http://www.yuyuantm.com.cn/yuyuan/Jp/Index/

②は彼らの住環境に由来することです。一般に日本に旅行に来られるようなお金にゆとりのある中国人は、都市部に暮らす中間層以上の人たちですが、たとえどれだけ金融資産を持っていても、人口密度の高さと政策的な理由から高層マンション暮らしが当たり前。都市に暮らす彼らのほとんどは、一軒家に住めることは一生かけてもまず手が届かない憧れです。番組の中で、ある中国人観光客が口にしていたように、地方の民家でも、一軒家に住めるのはさぞ金持ちに違いないと彼らは考えるのです。そのため、彼らはつい自撮りしてみたくなるのです。こういう方面に限っては、彼らはすごく子供っぽいところがあります。

もう7~8年前ですが、ぼくは中国語ガイド付きの富士山日帰りはとバスツアーに取材で乗ったことがあります。そのとき、隣の席にいた若い中国の女の子と道中いろいろ話をしたのですが、忍野八海に来たとき、やはり彼女は一般の民家にとても興味を持ち、写真を撮りたがったことを思い出します。彼女は、TBSの特集に出てきた中国人観光客の男性とほぼ同じことを言っていました。「一戸建てだなんて、きっとこのお家の人はお金持ちに違いない」と。

だからといって、勝手に民家に侵入する言い訳にはなりませんが、③の彼らがなぜ民家に入り込んでしまうのかについても、彼らの住環境と関係があります。

中国の都市では、どんな古い決して豊かとはいえない地区の団地でも、門と門番がいます。外部からの侵入者を自由に入れない構造になっているのです。これは中国の歴史文化と関係があります。北方民族による侵略に耐えかねてきた彼らは、決して日本のようなオープンな構造の住居は考えられないのです。しかも、田舎では家に鍵をかけないなんて、彼らには信じられません。オフィスのデスクでも、引き出しでも、基本的に鍵がつけるのが、中国人の常識です。常に誰かが自分のものを盗むこと、侵入するかもしれないことを想定した社会といえばいいでしょうか。彼らに言わせれば、鍵をしないほうが悪いというわけです。

ところが、日本には、相当な高級住宅でもない限り、門番のいるような民家はほとんどない。門番がいない以上、彼らは入ってもかまわないのではないかと思ってしまうのです。そう思うこと自体、おかしいんじゃないかと思いますが、彼らは旅空の下にいて「旅の恥は掻き捨て」ではないですけれど、つい普段はそこまでやらないことをやってしまうところがあります(中国では、彼らも民家に勝手に侵入したりはしません)。

誰も禁止していない以上、見つからなければかまわないだろうという中国人特有の感覚もあります。彼らは常に政府から監視され、干渉され、地下鉄に乗るにも荷物をX線を通さなければならないような社会を生きています。ですから、日本をはじめとした外国では、中国のようにいつでもどこでも監視、施錠ということがないので、好きにやってしまっていいと勘違いするのです。

では、忍野八海の湧水に中国人観光客が1円コインを投げ入れるのはなぜか。

番組の中で中国人ガイドが「コインを入れるとハッピーになれる」と言ったという話になり、ディレクターが問い詰めるシーンもありました。

実際、中国ではこの種の観光地の水のあるスポットはどこでもコインだらけです。

番組では触れられていませんでしたが、ここで問題にすべきは、中国の無資格ガイドの存在でしょう。彼らの大半は日本の文化やマナーを知らないまま、ガイドをしている在日中国人です。おそらくTBSのスタッフはそういう基本的なことを知らないのではないでしょうか。

この種の番組の作り手たちが本来考えなければならないのは、ただ中国人観光客のマナー違反を指摘するだけでは十分ではないということです。それでは偏見を助長し、固定化することにしかなりません。では何をすればよかったのか。この際、観光庁に取材をすべきでしょう。なぜ忍野八海の湧水にコインを入れるとハッピーになれるというような、間違った案内をする中国人ガイドがいるのか。もし、本気でこのテーマに取り組むつもりなら、なぜ彼らの存在を許しているのかと、監督官庁に問いただすべきではないでしょうか。

監督官庁の側も、国内にある中国の国家観光局と協力して、日本滞在中に中国人が間違えそうなマナー違反を調べ上げ、事前にトラブルが起こらないよう中国向けの周知・指導を促すよう働きかけるべきではないか。この番組を視ながら、そう思った次第です。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-16 20:51 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2016年 11月 09日

一蘭ラーメンに外国客の行列ができる3つの理由

外国客で行列のできる店といえば、広く知られているのが一蘭ラーメンでしょう。

ぼくも以前一度池袋店に行ったことがありますが、「天然とんこつラーメン」のみの一品メニュー、「味集中カウンター」と名づけられた隣の客との仕切り壁と厨房との間にすだれを下げるという個室食空間、スープの味の濃さやこってり度、麺のかたさなどの7項目を事前に書かせる「オーダーシステム」など、独自のシステムが導入された同店は、確かに外国客でにぎわっていました。

外国客に人気と噂の一蘭ラーメン池袋店に行ってみた
http://inbound.exblog.jp/24938081/

それにしても、一蘭ラーメンにはいつ頃からどんな理由で外国客が行列するようになったのでしょうか?

そこで、同店の広報・宣伝担当の三浦卓さんに話を聞くことにしました。
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今回訪ねたのは、新宿3丁目店です。まず店内紹介から。

これが入口にある外国語表記の食券販売機。
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この日は、平日の正午過ぎで、日本人もいましたが、やはりアジア客が多く、白人の女の子や黒人男性なども並んでいました。
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空席がひと目でわかる「空席案内板」があります。これもこの店独自のシステムですね。
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仕切り壁に隔てられ、各々ラーメンに向き合う独特の空間です。
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これが「味集中カウンター」。テーブルにオーダー用紙が置かれています。
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日本語以外は、英語、中国語(繁体字)、ハングルが用意されています。
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これが創業以来変わらない「天然とんこつラーメン」。
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店内にはインスタグラムへの投稿を呼びかけるプレートが置かれていました。
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以下、三浦さんとの一問一答です。

-いつ頃から外国客が現れるようになったのか。そのきっかけは何だったのか。

「実はいつ頃からとははっきり言えないのですが、特に増えたのは3~4年前からです。やはり口コミで広がっている感じで、フェイスブックやインスタグラム、微信などのSNSによるものだと思います。

もっとも、すでに10年以上前から外国客は、いまほどでなくてもいました。またこれはいまでもそうですが、全国に62店舗営業しているうち、すべての店に外国客が来ているのではなく、渋谷や新宿、池袋、浅草などの外国人観光客の多い特定の店に限られます。たとえば、渋谷駅に近い渋谷店は行列ができるほど多い一方、スペイン坂店には少ないんです。これもSNSの影響だと思われます」。

-どんな国の人たちがよく訪れているのか。味の好みに違いはあるか。人気の理由は何だとお考えか。

「やはり多いのは、中国や台湾、香港、東南アジアの方ですが、最近は欧米の方も増えています。当店のとんこつスープには臭みがないので、欧米の方にも親しんでいただけると思っています。また替え玉という博多ラーメン特有のサービスが体験できることも魅力かと。また中国の方はやわらかめな面がお好みという印象もあります。

何よりラーメンが日本食の一ジャンルとして定着したことが大きいと考えています。つまり、日本に来たら、すしやてんぷら、鉄板焼きを食べるのと同じようにラーメンも体験したいと多くの外国客が考えているからだと思っています」。

-一蘭ラーメンに外国客の行列ができる理由はズバリ、何だとお考えですか。

「3つあると考えています。まず、SNSで「イイネ」が海外に拡散されたこと。これがご来店の最大の動機になっていると思います。

ふたつめは、創業以来変わらないとんこつラーメンの味への支持です。

3つめは、食券購入から、独自のオーダー記入用紙、仕切り壁の食空間という独自のシステムを体験してみたいということではないかと思っています」。

三浦さんによると、同店独自のオーダーシステムや仕切り壁などは、1993年に同店が法人化し、福岡でチェーン展開を始めた当初から導入されていたといいます。女性でもひとりでラーメンを食べられるようにという配慮があったそうです。

7項目のオーダー用紙でスープの味やこさ、特性ダレの量、麺のかたさなどを自分で選べるしくみが面白いと思うのは、タイなどアジアの屋台で麺を食べるとき、たいてい麺の種類を選べるのと同時に、唐辛子入りナンプラー(プリック・ナンプラー)、唐辛子(プリックポン)、唐辛子入り酢(プリック・ナムソム)、砂糖(ナムタン)の4種類がテーブルに用意されていて、自分の好みで調合してから食べるという習慣に似ていることです。

日本のラーメンは一般的に、その店の味をありがたく、そのままいただくという感じが多いのに対し、一蘭はアジア的というべきか、自分で味の好みを決められるというしくみが外国客、特にアジア客に支持されているのではないか、という気がします。

-今後の展望はどうお考えか。

「一部の店舗に外国客が増えているといっても、大半の店は日本人のお客様がメインです。これまでは基本的に都市の繁華街の雑居ビルにビルトインという店舗が多かったのですが、今後は千葉県のロードサイド店を開業しますし、10月19日にはニューヨーク店も開業しました。今月17日には中野店も開業します。中野はサブカルの町として外国人にも知られるようになっていますから、楽しみです。

ラーメンという日本独自の文化をいかにつきつめるか。いかにブランドとして維持できるかに、今後も注力していくつもりです」。

一蘭ラーメン
http://www.ichiran.co.jp

三浦さんの話を聞きながら、あらためて「ラーメンが日本食の一ジャンルとして定着」したことを実感しました。では、それはいつ頃から定着し始めたのでしょうか。

ぼくの友人に、台湾や香港で日本スタイルの現地情報誌の立ち上げに尽力した鈴木夕未さんという編集者がいます。彼女によると、当初は日本と同じように、現地のグルメ情報などを発信していたが、2010年頃から日本旅行のための情報誌を創刊するようになったといいます。

その特集記事に、日本のラーメン特集が人気企画としてよく取り上げられたといいます。

以下は、2015年の香港ウォーカーのラーメン特集の冒頭ページです。彼女によると、日本の編集サイドの協力とともに、香港のグルメ達人などが日本を取材して店選びをしたそうです。
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実は、前回このブログで書いた池袋の「無敵家」の関係者によると、取材を受けた覚えはないのだが、2000年代の半ば頃、台湾に行ったとき、現地の雑誌で同店が紹介されているのを見たそうです。つまり、SNSが普及するずっと前から、台湾や香港などでは、日本のラーメン店が紙媒体で紹介されるようになっていたのです。

行列を体験として楽しむアジア客たち~池袋「無敵家」に並んでみてわかったこと
http://inbound.exblog.jp/26363800/

面白いのは、その特集記事に「ラーメン分析アイコン」なる項目があって、紹介する各店ごとに、麺の太さや形、量、ベースとなる味(醤油、とんこつ、魚介など)、濃さなどが記されていることです。
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これは日本の情報誌が昔からやっていたことで、こういう下地が現地情報誌にあったことは、一蘭ラーメンのオーダー用紙に台湾や香港の人たちが慣れていた理由といえそうです。こういう用紙に自分の好みを書き込むことも、体験として面白がられているのだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-09 10:39 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2016年 11月 02日

「消費」が減れば「薄い恩恵」とは、ちょっと浅ましすぎないか

先月末の31日に、国土交通省は今年の訪日外国人数がこの時点で2000万人を突破したことを報告しました。

その翌日の11月1日、以下の記事が出てきました。

訪日2000万人、薄い恩恵 クルーズ船客が牽引、大台突破も… 地元商店寄らず・宿泊なし(朝日新聞2016年11月1日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12636227.html

今年に入って日本を訪れた外国人客が2千万人を超えたと、国土交通省が31日発表した。年間で2千万人の大台を突破するのは初めて。中国などアジアからのクルーズ船客が急増し、伸びを牽引(けんいん)している。ただ、訪日客の伸び率は鈍化しており、地域経済へのプラス効果も期待されたほどではないようだ。

1年間の訪日客数は、前年比2割増の2400万人前後になる勢いだ。とくにクルーズ船での訪日客が増えており、今年は前年の倍の200万人強になるとみられている。

クルーズ船は日本の地方都市にも寄港する。国交省は「地方創生」につながるとし、港湾整備費として2017年度予算で16年度当初比66%増の137億円を要求した。

だが、地域経済への恩恵は、政府の期待ほど広がっていないのが実情だ。

宮崎県日南市の油津港。10月中旬の朝、マンションのように多くの客室を備えるクルーズ船が岸壁に到着し、降りてきた訪日客が大型バスに乗り込んでいった。宮崎県内の神社を二つ回った後、地元商店街には寄らず、県外企業が運営する免税店に向かった。この店はクルーズ船が来港したときだけ開く。地域に恩恵を広げようと、地元商店などが出店する物産展を日南市などが港で開く動きもあるが、地元商店街のパン店で働く女性は「訪日客が増えても、私たちにはいいことがない」とこぼす。

日本に寄港するクルーズ船ツアーの多くは、中国の旅行会社が企画。韓国と日本を回るコースが典型だ。

寄港地での行き先を決めるのは、ランドオペレーター(ランオペ)と呼ばれる仲介業者。立ち寄る免税店からマージン(手数料)を受けとる。高額なマージンの店ばかりに行き、その店で割高な商品を売りつけられるなどのトラブルも報告されている。中国でも「ぼったくり免税店」と問題視する報道が出始めている。

ランオペを規制する法律は、日本にはない。観光庁は6月に実態調査を始めたばかりで、対応はおくれ気味だ。(柴田秀並)

■消費総額、前年割れ

観光庁の統計によると、8月の外国人の国内宿泊者数は3年半ぶりに前年同月比で減少に転じた。船内で寝泊まりできるクルーズ船による訪日客が増えていることも影響しているようだ。下船して宿泊しないと、国内での食事や買い物の機会も減る。7~9月の訪日客の消費総額は約5年ぶりに前年割れした。

中国当局の関税引き上げや円高などで「爆買い」ブームも去り、訪日客1人あたりの消費額も前年割れが続く。訪日が2回目以上の「リピーター」が買い物にこだわらずに観光を楽しみ始めたとの見方もあるが、リピーター率は50%台半ばから伸びていない。

一方で、ホテル不足は深刻なままだ。政府は年間の訪日客数を「2020年までに4千万人」に増やす目標を掲げるが、宿泊施設を確保できるかは不透明だ。

訪日客に人気の大阪市では、14年度に25件だった宿泊施設の建築計画届が、今年度は上半期だけで183件と急増している。三菱総合研究所によると、18年までに大阪市のホテル客室数は2割近く増え、新たに8500室ができる見通しだ。小泉洋平主任研究員は「それでも訪日客を倍増させる目標に照らすと十分とはいえない」と指摘する。

宿泊施設不足の打開策を期待される「民泊」の普及でも、政府の対応は後手に回っている。法案の提出は、来年の通常国会になる見通しだ。(奥田貫、田幸香純)


言いたいことはよくわかるけど、訪日外国人による消費額が前年割れしたとたん、「薄い恩恵」とは、いささか浅ましすぎるもの言いではないでしょうか。まるで、たくさん買い物しないようなら、外国客はお呼びでない、とでもいうのでしょうか。問い詰めれば、そんなつもりはないと答えるのでしょうが、外国の人たちからすれば、そう受け取れなくもない気がします。

このメディアがこのようなタイトルをつけるのは理由があるように思われます。安倍政権が「アベノミクス」の成果とばかりに持ち上げた訪日旅行市場の盛況について、これ自体は否定しにくいため、「経済効果」が広がらないことで、批判の対象にしたいのではないでしょうか。

自分の手柄のように持ち上げた政権側もどうかと思いますが、基本的に、インバウンドを政治イシューにすることは得策ではないと思います。相手がいる世界だからです。むしろ、インバウンドの本来の目的は「経済効果」ばかりにあるのではないことを説くことが必要ではないでしょうか。

少なくともこの数年、メディアはインバウンドの「経済効果」を、しぶしぶなのかどうかわかりませんが、伝えることに熱心でした。まるで、インバウンドの意義がそこにしかないかのように。

これからは「経済効果」のみにこだわらない議論を始めてほしいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-02 14:14 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)